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特表2024-513280基板から構造部を分離するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】基板から構造部を分離するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240315BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240315BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240315BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L33/48
H01L33/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525623
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021058318
(87)【国際公開番号】W WO2022207083
(87)【国際公開日】2022-10-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ポヴァザイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタ ラーガヴェンドラ スブラーマンヤ シャルマ モッカパーティ
【テーマコード(参考)】
5F131
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA51
5F131BA60
5F131CA32
5F131CA70
5F131EC42
5F131EC72
5F142BA32
5F142CB07
5F142FA32
5F142FA34
5F241CA40
5F241CA64
5F241CA77
(57)【要約】
本発明は、基板から構造部を分離するための方法および装置に関する。さらに、本発明は、第1の基板から第2の基板に構造部を転写するための方法および装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板から構造部(3)を分離するための方法であって、
前記方法は、特に以下の順序で、少なくとも、
i)第1の基板(1)上に少なくとも1つの構造部(3)を提供するステップと、
ii)前記第1の基板(1)と前記少なくとも1つの構造部(3)との間の境界領域(6)に電磁ビーム(5)を照射するステップと、
iii)前記少なくとも1つの構造部(3)を、前記第1の基板(1)から分離するステップと、
を含み、
前記電磁ビーム(5)が、最初に、前記少なくとも1つの構造部(3)を貫通し、その後、前記境界領域(6)に入射することを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの構造部(3)の分離は、選択的に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの構造部(3)は、0μm~1000μmの間、好適には0μm~500μmの間、さらに好適には0μm~200μmの間、最も好適には0μm~150μmの間、すべての中で最も好適には0μm~100μmの間の厚さを有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの構造部(3)は、分離する前に前記第1の基板(1)上に生成され、好適には成長させられる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ステップii)における照射の際、照射手段が、電磁ビーム(5)を放出し、前記少なくとも1つの構造部(3)に配向される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第1の基板(1)は、ケイ素からなる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの構造部(3)は、窒化ガリウム(GaN)からなる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記電磁ビーム(5)の波長は、300nm~2000nmの間、好適には310nm~1800nmの間、さらに好適には320nm~1600nmの間、最も好適には340nm~1400nmの間、すべての中で最も好適には370nm~1250nmの間にある、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記電磁ビーム(5)に対する前記少なくとも1つの構造部(3)の透過率は、10%よりも大きく、好適には25%よりも大きく、さらに好適には50%よりも大きく、最も好適には75%より大きく、すべての中で最も好適には90%よりも大きい、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記電磁ビームに対する前記第1の基板の透過率は、90%未満、好適には75%未満、さらに好適には50%未満、最も好適には25%未満、すべての中で最も好適には10%未満である、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記電磁ビームの強度は、100mWatt~10kWattの間、好適には1Watt~1kWattの間、さらに好適には5Watt~500Wattの間、最も好適には7Watt~250Wattの間、すべての中で最も好適には10Watt~100Wattの間にある、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
基板(1)から構造部(3)を分離するための装置であって、
前記装置は、少なくとも:
-第1の基板(1)上に提供可能な少なくとも1つの構造部(1)を有する第1の基板(1)と、
-前記第1の基板(1)と前記少なくとも1つの構造部(3)との間の境界領域(6)に電磁ビーム(5)を照射するための照射手段と、
-前記少なくとも1つの構造部(1)を分離するための分離手段と、
を含み、
前記照射手段は、前記電磁ビーム(5)が、最初に、前記少なくとも1つの構造部(3)を貫通し、その後、前記境界領域(6)に入射するように構成されている
ことを特徴とする、装置。
【請求項13】
第1の基板(1)から第2の基板(1’)に構造部(3)を転写するための、特に電子部品を転写するための方法において、
前記構造部(3)が、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を用いて第1の基板(1)から分離されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記第2の基板(1’)は、前記電磁ビーム(5)に対して透過的であり、前記ステップii)における照射の際に、照射手段と少なくとも1つの構造部(3)との間に配置される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
第1の基板(1)から第2の基板(1’)に構造部(3)を転写するための、特に電子部品を転写するための装置において、
前記第1の基板(1)上に提供された前記構造部(3)が、請求項12記載の装置を用いて前記第1の基板(1)から分離可能であることを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板から構造部を分離するための方法および装置に関する。さらに、本発明は、第1の基板から第2の基板に構造部を転写するための方法および装置に関する。基板から分離すべき構造部は、特に、薄層から個別化された部品であるか、そのような部品としての薄層である。薄層ないしは個別化された構造部は、特に、基板上で生成され、好適には基板上で成長させていた。それゆえ、これらの薄層と構造部とが本明細書のさらなる過程では同義に使用される。したがって、分離すべき構造部は、それぞれ個別化された構造部または薄層に関連して開示される。
【0002】
従来技術は、電磁ビームを用いた基板からの薄層または個別化された構造部のアブレーションとの関わりがある。基板からの薄層の剥離を実行するために、レーザーを、特に電磁ビームに対して透過的なこの基板の裏側から境界領域に作用させることが通例である。この薄層は、この場合、貫通照射されるのではなく、薄層が固定されている基板の側から照射される。このプロセスは、従来技術ではレーザーリフトオフ(LLO)プロセスと称される。
【0003】
LLOプロセスは、薄層~極薄層を、基板、特に成長基板から分離することができる非接触プロセスである。分離に対する前提条件の1つには、使用されるレーザービームに対して基板が透過的であることが挙げられる。さらに、従来技術では、基板と薄層との間に吸収層を準備することが多くの場合想定され、それによって、剥離が、このいわゆる剥離層に対するレーザーの作用によって行われている。この場合、レーザービームは、最初に、基板の裏側から基板を通って導かれ、続いて剥離層もしくは薄層に入射する。レーザービームと吸収層との相互作用により、物理的および/または化学的な反応によるアブレーションが起こる。
【0004】
例えば、光化学的、光熱的、または複合的な分離プロセスが考えられる。また、薄層自体がレーザービームに対する高い吸収能力を有し、吸収層を省くことも考えられる。この場合、これらのプロセスは、基板と薄層との境界領域もしくは境界面において行われる。さらに、基板からの薄層の剥離を改善するために、プラズマを使用することが非常に多い。
【0005】
前述の手順は、基板と薄層との間の接着力を著しく低減させる。特に、基板と薄層との間のガス形成は、接着力の減衰にも寄与する。ガスは、とりわけ、基板と薄層との間の付加的吸収層を使用する場合に生じる。
【0006】
LLOプロセスは、典型的には、基板の透過特性と、基板と薄層もしくは薄層自体との間の境界面の吸収特性とを活用する。
【0007】
従来技術における例では、窒化ガリウム/サファイア系がある。非常に薄い窒化ガリウム(GaN)層は、サファイア基板上で成長させられる。アブレーションは、UV照射を用いて行われる。この系では、GaNは、使用されるUVビームを非常に強く吸収し、それに対してサファイア基板は、この波長領域では非常に透過的である。さらに、以下のような光化学反応が起こり、
2GaN→2Ga+N2
その際には窒素ガスが発生し、ここではその体積膨張により、アブレーションが促進される。境界面での化学反応によって生じる純金属ガリウムのより高い吸収率と反射率とがこのプロセスをさらに促進させる。
【0008】
レーザーと物質との相互作用は、ここでは、特に電子を経由して起きる。稀なケースとして、共鳴が結合状態との直接的な相互作用を可能にさせることもある。そのためには、正確なエネルギーを有するレーザービームが必要となる。金属中の準自由電子、すなわち、支配的なポテンシャルに大きく影響されるだけの電子は、レーザービームを吸収するための高効率な広帯域吸収体として用いることができる。エピタキシャル成長したGaN層は、3.3eVのバンドギャップを有し、それに対して、サファイアのバンドギャップは約9.9eVにある。サファイア上のGaNに対するLLOプロセスについては、例えば、サファイア基板を貫通し、GaNもしくはGaN-サファイア境界面と相互作用するために、UVレーザーを使用することができる。
【0009】
そのような薄層、例えばGaN層は、多くは、アブレーションのために使用されるべき使用電磁ビームについて非常に僅かな透過率を有する成長基板上に生成される。したがって、成長基板は、電磁ビームを吸収し、この電磁ビームは、薄層と成長基板との間の境界領域内もしくは境界面には到達しないので、薄層の分離は、必ずしも電磁ビームを用いて可能になるわけではない。
【0010】
この問題を解決するための1つの手段として、電磁ビームに対して透過的な成長基板の選択が挙げられよう。ただし、成長基板には、所期の薄層が最適に成長させられるものを選択する必要がある。したがって、特に成長した薄層を成長基板から分離する場合、薄層もしくは構造部が提供される基板の材料に関して制限がある。
【0011】
成長基板からの薄層の分離を実施する1つの手段は、薄層と成長基板との間の境界面に到達するために透過率が十分に高い対応する周波数もしくは波長を有する電磁ビームの選択にある。ただし、レーザーの薄層に対するアブレーション能力は周波数に強く依存しており、そのため、一方では基板に対する高い透過率を可能にし、他方では高いアブレーション能力を可能にする周波数の最適な選択は非常に困難である。さらに、特にレーザーでは、任意に変化させたり適合化させたりすることが不可能な程よく定められた周波数を有する電磁ビームのみが利用可能である。
【0012】
それゆえ現下では、例えばGaN-LED(GaN light emitting diode)などの薄層は、小型でかつ高価なサファイア基板上に製造もしくは生成されている。これらは、UVレーザービームを用いて裏側からサファイア基板を貫通するLLOプロセスを可能にする。経済的な理由から見れば、そのような薄層(例えばGaN層)は、より好適なケイ素上に生成する方が理にかなっているように見える。ただし、ケイ素は、紫外線波長領域では不透過的であるため、GaNアブレーションを実施するために紫外線レーザーを使用することはできない。それゆえ、生成された薄層、特にGaN層もしくはGaN構造部を、電磁ビームを用いて基板から剥離することにはコストがかかる。
【0013】
さらに、基板や生成すべき薄層の材料の選択には制限がある。なぜなら、薄層の分離は、電磁ビームに対する材料の透過率の程度に依存するからである。電磁ビームを用いて選択的に実施可能な分離方法は、特に、電子部品の製造に望まれている。この場合、従来技術では、構造部の分離を電磁ビームを用いた成長基板自体の貫通照射によって可能にする成長基板は、特定の材料に限定される。
【0014】
それゆえ、本発明の課題は、従来技術に挙げられた欠点を少なくとも部分的に排除し、特に完全に排除する方法および装置を呈示することにある。特に、本発明の課題は、基板から構造部を分離するための改善された方法および装置を呈示することにある。さらに、本発明の課題は、基板から構造部を分離するための代替的方法および代替的装置を呈示することにある。さらに、本発明の課題は、提供側基板から受け取り側基板への構造部の転写を改善する方法および装置を呈示することにある。
【0015】
本発明の課題は、並列的独立請求項の特徴部分によって解決される。本発明の好適な発展形態は、従属請求項に示されている。本発明の枠内には、明細書、特許請求の範囲、および/または図面に示された少なくとも2つの特徴のすべての組み合わせも含まれる。呈示された値領域の場合、挙げられた限界内にある値も、開示された限界値とみなされ、任意の組み合わせで要求できるようにされるべきである。
【0016】
したがって、本発明は、基板から構造部を分離するための方法に関するものであり、該方法は、特に以下の順序で、少なくとも以下のステップ、
i)第1の基板上に少なくとも1つの構造部を提供するステップと、
ii)第1の基板と少なくとも1つの構造部との間の境界領域に電磁ビームを照射するステップと、
iii)少なくとも1つの構造部を、第1の基板から分離するステップとを含み、
ここで、電磁ビームが、最初に、少なくとも1つの構造部を貫通し、その後、境界領域に入射する。
【0017】
したがって、電磁ビームのビームパスは、光源から最初に分離すべき構造部を通り、それに続いて初めて境界領域に入射する。境界領域もしくは境界面は、構造部と第1の基板との間の領域に存在する。第1の基板と構造部との間に剥離のためのさらなる層(剥離層)が配置されている場合、境界領域は、ほぼこの層によって形成される。
【0018】
この場合、薄層は、第1の基板上に、特に基板表面に提供される。この薄層は、ここでは、第1の基板上に生成することができる。薄層は、任意選択的なさらなるステップにおいて複数の構造部に個別化される。この場合、個別化された構造部は、特に機能を備えた電子部品である。しかしながら、1つの薄層によって構造部が形成されてもよく、それによって、個別化された構造部の代わりに薄層全体を分離することも可能である。したがって、1つの薄層も構造部を示す。
【0019】
電磁ビームは、構造部を分離もしくは剥離するための方法では、第1の基板を通って放射されない。それどころか、電磁ビームは、少なくとも1つの構造部に配向され、ここで、少なくとも1つの構造部は、電磁ビームに対して少なくとも部分的に透過的である。このようにして、少なくとも1つの構造部は、ビームが第1の基板を通って境界領域に案内される必要性なしに、第1の基板から好適に分離することができる。したがって、この分離するための方法は、より効率的である。なぜなら、第1の基板を通って電磁ビームを案内することによるエネルギー損失が生じないからである。さらに、この方法を用いることにより、電磁ビームに対して不透過的である材料からなる第1の基板から構造部を剥離することができる。さらに、第1の基板を好適に保護することができる。なぜなら、電磁ビームは、境界領域においてのみ第1の基板によって吸収され、第1の基板を通って照射されないからである。このようにして、好適に、UV領域の電磁ビームを使用することができる。さらに、少なくとも1つの分離すべき構造部も同様に保護される。なぜなら、この構造部は、電磁ビームに対して実質的に透過的に構成されているからである。したがって、この分離は、特に欠陥のなく実施することができる。さらに、電磁ビームは、好適には、構造部が提供される第1の基板の側から行うことができる。
【0020】
さらに、本発明は、基板から構造部を分離するための装置に関するものであり、該装置は、少なくとも、
-第1の基板上に提供可能な少なくとも1つの構造部を有する第1の基板と、
-第1の基板と少なくとも1つの構造部との間の境界領域に電磁ビームを照射するための照射手段と、
-少なくとも1つの構造部を分離するための分離手段とを含んでおり、
ここで、照射手段は、電磁ビームが、最初に、少なくとも1つの構造部を貫通し、その後、境界領域に入射するように構成されている。
【0021】
照射手段は、好適には、特定の波長の電磁ビームを放出するレーザーである。使用される材料と、それに伴って引き起こされる境界領域における接着特性を減少させる物理的効果とに依存して、照射手段は、分離手段とみなすこともできる。しかしながら、装置が、第1の基板から構造部を分離するための付加的な機械的分離手段を含むことも考えられる。構造部を分離するための装置を用いることにより、構造部を分離するための方法が特に好適に実施可能である。上述した利点は、構造部を分離するための装置との関連においても当てはまる。
【0022】
さらに、本発明は、第1の基板から第2の基板に構造部を転写するための、特に電子部品を転写するための方法に関するものであり、ここで、構造部が、構造部を分離するための方法を用いて第1の基板から分離される。第1の基板上に提供された構造部は、特に効率的に第2の基板に転写することができる。さらに、第1の基板が好適に保護され、実質的に境界領域においてのみ電磁ビームが吸収される。
【0023】
さらに、本発明は、第1の基板から第2の基板に構造部を転写するための、特に電子部品を転写するための装置に関するものであり、ここで、第1の基板上に提供された構造部が、構造部を分離するための装置を用いて第1の基板から分離可能である。構造部の転写は、好適には、この装置を用いて効率的に実施可能である。
【0024】
本発明の別の好適な実施形態では、少なくとも1つの構造部の分離は、選択的に行われることが想定されている。境界領域が電磁ビームで照射される場合、このビームは、好適には、少なくとも1つの構造部の対応する境界領域に局所的に制限して取り込むことができる。それゆえ、第1の基板は、構造部の境界領域においてのみ電磁ビームを吸収する。したがって、この方法によれば、第1の基板が保護される。なぜなら、境界領域の選択された領域にのみ電磁ビームが取り込まれるからである。さらに、第1の基板上に提供される個々の構造部の分離は、選択的に行うことができ、そのため、分離のための方法についてより広い適用分野が可能になる。例えば、欠陥のある構造部は、意図的に第1の基板から分離できないようにするか、特定の特性を有する特定の構造部のみが所期のように第1の基板から剥離できるようにすることが可能である。
【0025】
本発明の別の好適な実施形態では、少なくとも1つの構造部は、0μm~1000μmの間、好適には0μm~500μmの間、さらに好適には0μm~200μmの間、最も好適には0μm~150μmの間、すべての中で最も好適には0μm~100μmの間の厚さを有することが想定されている。これによって、薄層もしくは構造部は、特に保護され、電磁ビームによって効率的に貫通照射され得る。
【0026】
本発明の別の好適な実施形態では、少なくとも1つの構造部は、第1の基板から分離する前に、第1の基板上に生成され、好適には成長させられることが想定されている。換言すれば、第1の基板は、好適には、薄層もしくは個別化された構造部が直接生成される、好適には成長させられる、成長基板である。さらに、第1の基板上に、薄層もしくは構造部が生成され、ひいては分離するための方法のために提供される成長層が被着されることが考えられる。特に、この場合の成長層は、同時に剥離層としても機能し得る。薄層もしくは少なくとも1つの構造部が基板上に生成される場合、これらは、好適には、第1の基板を電磁ビームに対して透過的に構成する必要性を生じさせることなく、分離するための方法を用いて第1の基板から分離することができる。
【0027】
本発明の別の好適な実施形態では、ステップii)における照射の際に、照射手段が、電磁ビームを放出し、少なくとも1つの構造部に配向されることが想定されている。照射手段は、好適にはレーザーである。これらのレーザーは、特に好適には、パルス制御されて集束され、それによって、電磁ビームは、好適には局所的に取り込むことができる。電磁ビームは、少なくとも1つの構造部を通過し、この構造部によってほぼ吸収されない。照射手段は、この場合、少なくとも1つの構造部に配向されている。しかしながら、電磁ビームが最初に少なくとも1つの構造部に入射し、続いて境界領域に入射する前に、さらなる層または他の要素が電磁ビームによって貫通されることが考えられる。例えば、コーティングを構造部の第1の基板とは反対側に被着させることができ、それによって、分離された構造部は、より良好に別の表面に被着もしくは固定され得る。
【0028】
本発明の別の好適な実施形態では、第1の基板は、ケイ素からなることが想定されている。したがって、この第1の基板は、実質的にケイ素からなる。驚くべきことに、ケイ素からなる基板の構造部は、分離のための方法を用いて特に容易にかつ効率的に分離できることが判明している。
【0029】
本発明の別の好適な実施形態では、少なくとも1つの構造部は、窒化ガリウム(GaN)からなることが想定されている。特に好適であるのは、窒化ガリウムからなる薄層または構造部を分離するための方法である。驚くべきことに、電磁ビーム、特にUV領域の電磁ビームを用いて分離するための方法は、窒化ガリウムからなる構造部と共に特に効率的にかつ容易に実施可能であることが判明している。電磁ビームの波長に依存して、窒化ガリウムからなる少なくとも1つの構造部は、特に保護され、第1の基板から分離させることができる。電磁ビームは、GaNからなる構造部の貫通の際にはほとんど吸収されず、そのため、この分離するための方法では、窒化ガリウムからなる構造部のために予め想定されたものである。
【0030】
本発明の別の好適な実施形態では、電磁ビームの波長は、300nm~2000nmの間、好適には310nm~1800nmの間、さらに好適には320nm~1600nmの間、最も好適には340nm~1400nmの間、すべての中で最も好適には370nm~1250nmの間にあることが想定されている。この方法は、これらの波長領域において、特に効率的に実施することができる。特に好適には、波長は、構造部もしくは薄層の材料に適合化され、それによって、これらは、電磁ビームをほとんど吸収しない。短波長の電磁ビーム、特にUVビームの使用により、第1の基板内への電磁ビームの浸透を境界領域までに限定することができる。それにより、好適には成長基板である第1の基板が、好適に保護される。さらに、短波長の電磁ビーム、特にUVビームの、特にピコ秒領域からナノ秒領域のパルス時間での使用により、境界面におけるプラズマの発生が促進され得る。このようにして、特に構造部の欠陥のない保護された分離が可能になる。
【0031】
本発明の別の好適な実施形態では、電磁ビームに対する少なくとも1つの構造部の透過率は、10%より大きく、好適には25%よりも大きく、さらに好適には50%よりも大きく、最も好適には75%よりも大きく、すべての中で最も好適には90%よりも大きいことが想定されている。少なくとも1つの構造部もしくは薄層は、可及的に僅かしか加熱されないので、構造部内での熱またはビーム導入に基づく欠陥は低減される。
【0032】
本発明の別の好適な実施形態では、電磁ビームに対する第1の基板の透過率は、90%未満、好適には75%未満、さらに好適には50%未満、最も好適には25%未満、すべての中で最も好適には10%未満であることが想定されている。このようにして、好適には、境界領域に局所的に影響を与えることができる。第1の基板内への電磁ビームの浸透が好適に阻止可能となり、それによって、第1の基板が保護され、結果として頻繁に、構造部の提供もしくは生成のために使用することができる。
【0033】
本発明の別の好適な実施形態では、電磁ビームの強度は、100mWatt~10kWattの間、好適には1watt~1kWattの間、さらに好適には5watt~500wattの間、最も好適には7watt~250wattの間、すべての中で最も好適には10watt~100wattの間にあることが想定されている。驚くべきことに、構造部を分離するための方法を実施するために、これらの領域のためのエネルギー導入が最適であることが判明している。
【0034】
本発明の別の好適な実施形態では、第2の基板が、電磁ビームに対して透過的であり、ステップii)における照射の際に、照射手段と少なくとも1つの構造部との間に配置されることが想定されている。第2の基板が、電磁ビームに対してほとんど透過的に構成されている場合、転写するための方法は特に効率的に実施することができる。このようにして、例えば、照射手段は、好適には、省スペース的に第2の基板の、第1の基板とは反対側に配置することができる。さらに、照射過程において、同一の照射手段による構造部の分離を実施するだけでなく、第2の基板への構造部の転写を行うことも可能である。
【0035】
したがって、本発明の一態様は、電磁ビーム、特にレーザービームを、薄層もしくは構造部を貫通して境界領域もしくは境界面に集束させることにある。これにより、使用すべき電磁ビームに対して不透過的であることが非常に多い基板の貫通照射を省くことが可能になる。それゆえ、基板に対向する側からの薄層のアブレーションもしくは分離が可能である。さらに、提案された方法を用いて分離を実施する場合、成長基板についての材料の選択が不要に制限されることはない。
【0036】
このことは、特に、分離すべき構造部と基板との間の境界領域もしくは境界面に到達させるために、電磁ビーム、特にレーザービームが剥離すべき薄層を通って照射される照射方向の選択によって行われる。つまり、レーザービームは、従来技術のように基板を通ってではなく、薄層もしくは構造部を通って境界面に到達する。
【0037】
したがって、この方法は、基板の裏側にアクセスする必要性を生じさせることなく、構造部の分離を可能にする。さらに、このようにして、成長したもしくは生成された薄層または構造部(例えばGaNベースのパワー構成素子)の安価な製造が可能になる。なぜなら、これらは、不透過的な基板上でも生成することができるからである。
【0038】
例えば、ケイ素基板は、小さなバンドギャップを有しており、そのため、UV領域や可視波長領域の電磁ビームは吸収される。それゆえ、従来技術では、アブレーションについては赤外線領域の波長を有するレーザーが必要とされる。
【0039】
提案された、特にGaNについての構造部を分離するための方法では、薄層が、使用される電磁ビームの波長領域において高い吸収率を有する基板上に存在する。この目的のために、薄層は、自身のアブレーションのために使用される電磁ビームに対して少なくとも部分的に透過的であることが必要である。約3.3eVのバンドギャップを有するGaNは、UV波長領域において透過的である。したがって、ケイ素上のGaN層/構造部は、最初に電磁ビームによって照射され、このビームによって貫通される。続いて、その後にあるケイ素は、境界領域において電磁ビームを吸収する。次いで、この吸収は、薄層もしくは構造部のアブレーションをもたらす。
【0040】
GaNは、約710℃~980℃の間で純金属ガリウムと窒素ガスとに熱分解する。この温度は、局所的にレーザービームによって達成される可能性がある。この温度には、レーザービームによって、特にレーザービームによってプラズマも境界面に発生する場合に局所的に達成することができる。短いパルス持続時間は、加熱作用を局所的に制限することができる。さらに、基板のドーピングによって解離に影響を与えることができる。
【0041】
この方法は、好適には、薄層を生成するために、任意の基板、特に成長基板の使用を可能にする。特に、サファイア基板に対するより安価な代替手段を示す成長基板としてケイ素の使用が可能になる。それにより、薄層は、より安価でより容易に入手でき、より大きくてまたはより能力の高い不透過的な基板上に製造することができる。
【0042】
アブレーションは、好適には、より高い周波数にある電磁ビームを用いて実施することができる。さらに、個々の構造部または層領域の選択的な分離が可能になる。
【0043】
さらに、薄層を貫通するもののその加熱は僅かなものにすぎない電磁ビームを利用することができる。したがって、薄層もしくはそこから生成される構造部には、より少ない負担しかかからない。
【0044】
特に好適には、貫通照射の順序により、成長基板におけるダメージが最小化され、低減される。なぜなら、成長基板は貫通照射されるのではなく、境界領域においてビームが吸収されるだけだからである。
【0045】
提案された方法は、薄層を貫通し、成長基板によって吸収される電磁ビームを生成することができる限り、他の第1の基板/成長基板上の他の材料もしくは他の薄層に対しても好適に適用可能である。
【0046】
成長基板と、薄層もしくは構造部が転写される任意選択的な第2の(転写または製品)基板とは、損傷が少ないため、より頻繁に使用することができる。
【0047】
したがって、この方法は、薄層またはこの薄層から生成された構造部を、第1の基板から分離する新規の手段を説明している。構造部も同様に薄層から生じ、さらなるプロセスステップによって適宜個別化されるだけなので、簡略化の理由から、本明細書のさらなる過程では、好適には構造部についてのみ述べることとする。構造部および薄層は、要素としての構造部が当該薄層よりも多くのものから構築されている可能性がある場合であっても、同義に使用され得る。
【0048】
好適には、薄層は、第1の基板上で直接製造され、特に成長させられる。それゆえ、第1の基板は、成長基板とも称され得る。
【0049】
電磁ビームのパルス時間は、好適には1.0ピコ秒~100ピコ秒の間、好適には2.0ピコ秒~75ピコ秒の間、さらに好適には3.0ピコ秒~50ピコ秒の間、最も好適には4.0ピコ秒~25ピコ秒の間にあり、すべての中で最も好適であるのは約5ピコ秒の場合である。
【0050】
ピコ秒領域のパルスは、フェムト秒領域のさらに短いパルスが本方法にとっては欠点となり得る非線形効果を生成する理由からも好適となる。さらに、短くパルス制御された電磁ビームの作用により、熱拡散がほとんど回避される。
【0051】
パルスレートの周波数とは、毎秒放出される電磁ビームにおけるパルスの数を意味するものと理解される。パルスレートの周波数は、10kHz~1000kHzの間、好適には50kHz~900kHzの間、さらに好適には100kHz~800kHzの間、最も好適には250kHz~700kHzの間にあり、すべての中で最も好適であるのは約500kHzの場合である。
【0052】
さらに、電磁ビームの理想的なエネルギー表面密度は、4*10J/mに対応する約10μJ/25μmの場合にあることが判明している。それゆえ、エネルギー表面密度は、特に好適には、10J/m~10J/mの間、好適には10J/m~10J/mの間、最も好適には10J/m~10J/mの間にあり、すべての中で最も好適であるのは約4*10J/mの場合である。
【0053】
薄層は、0μm~1000μmの間、好適には0μm~500μmの間、さらに好適には0μm~200μmの間、最も好適には0μm~150μmの間、すべての中で最も好適には0μm~100μmの間の厚さを有する。相応に、個別化された構造部は、好適には、同じ厚さを有する。
【0054】
一実施形態では、成長基板上に、電磁ビームが吸収される吸収層が存在する。この場合、後から分離すべき薄層は、吸収層上で製造され、特に成長させられる。吸収層は、好適には、非常に薄く、後述する分離プロセスの電磁ビームに対して最大の吸収能力を有する。したがって、境界領域は、第1の基板と薄層との間に配置された吸収層によってほぼ形成される。電磁ビームを吸収する境界領域は、第1の基板と薄層もしくは構造部との間の分離の箇所を設定する。吸収層は、好適には、第1の基板と同じ結晶学的方位を有する。
【0055】
実施形態の極めて好適な変形形態では、吸収層および第1の基板の結晶系および格子系は、同一である。同様に好適な実施形態では、吸収層および第1の基板の格子パラメータは同一である。
【0056】
つまり、吸収層は、生成すべき薄層のための成長層として用いることができる。このことは特に、この(吸収)層が、成長層および吸収層として用いるための最適な特性を有している場合には利点となる。
【0057】
境界領域もしくは境界面とは、分離すべき薄層もしくは構造部が分離されなければならない領域であることが理解される。薄層を第1の基板上に直接成長させた方がよいのであれば、境界領域は、薄層と第1の基板との間にある。薄層を吸収層上に成長させた方がよいのであれば、境界領域は、薄層と吸収層との間にある。
【0058】
吸収層は、0μm~100μmの間、好適には0μm~50μmの間、さらに好適には0μm~20μmの間、最も好適には0μm~10μmの間、すべての中で最も好適には0μm~1μmの間の厚さを有する。
【0059】
境界面の両側の材料は、吸収および/またはガス化が改善されるように適合化することができる。例えば、第1の基板、すなわち成長基板の基板表面、および/または薄層自体に、電磁ビームのもとで特にガスとして流出し、アブレーションを支援する1つまたは複数の元素を埋め込むことが考えられる。また、第1の基板、成長基板の基板表面に、電磁ビームの特に効率的な吸収を可能にし、第1の基板のより良好な加熱をもたらす元素を埋め込むことも考えられる。この場合、例えば、吸収層の使用を完全に省くことができ、薄層を直接第1の基板、成長基板上に製造することができる。
【0060】
この方法は、好適には、特定の周波数、強度、およびコヒーレンスを有する電磁ビームを用いて実施される。基本的には、薄層を貫通照射することができ、基板からの薄層のアブレーションをもたらすあらゆる電磁ビームを使用することができる。本明細書のさらなる過程では、レーザービームが電磁ビームについての例示として使用される。
【0061】
使用される電磁ビームは、この場合、薄層における不所望な吸収現象を引き起こさない波長を有し、もしくは薄層における不所望な吸収現象を引き起こさない周波数を有する。波長は、1000μm~10nmの間、好適には500μm~25nmの間、さらに好適には250μm~50nmの間、最も好適には100μm~75nmの間、すべての中で最も好適には10μm~100nmの間にある。
【0062】
ケイ素上に成長したGaNの特殊なケースについて、好適な波長領域は以下の通りである。この波長は、300nm~2000nm、好適には310nm~1800nm、さらに好適には320nm~1600nm、最も好適には340nm~1400nm、すべての中で最も好適には370nm~1250nmの間にある。
【0063】
すなわち、この波長領域の電磁ビームは、GaNを非常に良好に貫通し、ケイ素によって十分良好に吸収される。それに応じて、構造部を第2の基板に転写するための方法では、GaNが転写される第2の基板は、この波長に対して透過的である方がよい。それゆえ、第2の基板は、好適には、GaN構造部/層を収容することができ、使用される波長領域において十分良好な透過率を有する。好適には、第2の基板は、サファイアからなる。
【0064】
2つの基板の厚さは、0μm~2000μm、好適には100μm~1500μmの間、さらに好適には200μm~1300μmの間、最も好適には300μm~1200μmの間、すべての中で最も好適には500μm~1000μmの間にある。第1の基板は成長に用いられ、第2の基板はアブレーション後の固定に用いられるため、より大きな厚みが有利となり得る。なぜなら、より大きな厚みは、2つの基板の十分な安定化をもたらすからである。
【0065】
基板と電磁ビーム源との間で、相対移動を実施することができる。特に好適な実施形態では、すべての光学コンポーネントは静止しているが、基板ホルダーに固定された基板は移動する。この基板ホルダーは、この場合、電磁ビームを第1の基板と薄層との間の境界面に集束できるように設計されている。相対移動は、蛇行状および/または直線的および/または回転的に行われる。所定の表面がパスに沿って走査されるこの種の相対移動は、時折スキャンとも称される。
【0066】
特定の実施形態では、薄層または薄層から作製された構造部の第1の基板からの分離は、機械的分離プロセスによって支援され得る。
【0067】
赤外線領域のレーザービームが主に使用される従来技術とは対照的に、改善された方法では、より高い周波数領域からのレーザービームを使用することができる。好適には、UV領域からのレーザービームが使用される。
【0068】
マイクロ(p)LED転写のようないくつかの用途では、GaNを支持体上に予め構造化することができる。経済的な理由から、支持体あたりのLEDの数は可及的に多くした方がよい。ただし、技術的には、他の部品と組み合わせることができるようにするためには、LEDを個別に支持体から剥離することが必要である。この場合、構造部の剥離もしくは分離は、好適には選択的に行うことができる。
【0069】
部品を転写するための方法は、構造化されていない、特にエピタキシャル(薄)層のために使用することもできる。この場合、成長した薄層が第1の基板から分離される。この場合、個々の領域を選択的に分離することができ、あるいは電磁ビームを全面的に境界領域に取り込むことができる。
【0070】
部品を転写するための方法は、多数の層や構造部に関して適用可能である。しかしながら、GaNベースの構造部、例えば、p-LED、パワー構成素子または純粋なGaN薄層などの転写が好適である。ここでは、電磁ビーム、特にレーザーが、構造部を貫通し、構造部の境界面において、第1の基板から構造部を分離するためのアブレーションを引き起こすことによって、第1の基板上で好適に成長し個別化された構造部が、第2の基板に転写される。
【0071】
構造部を分離するための方法の重要な態様および利点は、例えば、以下の通りである。
・第1の基板もしくは吸収層が電磁ビームを吸収し、特に構造部の欠陥のないアブレーションをもたらす、
・電磁ビームは、パルス制御されて集束され、つまり局所的に取り込まれる、
・電磁ビームは、従来技術とは対照的に、第1の基板、成長基板を通るのではなく、構造部を通って境界面に作用する、
・短波長の電磁ビーム、特にUVビームの使用により、第1の基板、成長基板への電磁ビームの浸透が阻止され、このことは、成長基板の保護につながる、
・短波長の電磁ビーム、特にUVビームの使用により、特にピコ秒領域~ナノ秒領域までのパルス時間によって、境界面におけるプラズマの発生が促進され、このことは、改善されたアブレーションをもたらす、および
・第1の基板の基板表面の変更により、吸収および/またはガス化プロセスを向上させることができる。
【0072】
以下の表では、本発明による構造部を分離するための方法を実施することができる3つの可能な系が示されている。
【表1】
【0073】
これらの系は、本発明による方法のために予め想定されたものである。しかしながら、さらなる系および/またはそれらの組み合わせも同様に本発明による方法の実施のために考えられる。各系は、成長基板として用いられる第1の基板のための材料、構造部もしくは薄層のための材料、ならびに構造部もしくは薄層が転写されるべき好適な第2の基板のための材料を含んでいる。さらに、可能な波長領域が示され、その光子波長がこれらの波長領域にあるレーザーが示される。当業者には、一般に、呈示された波長領域についての複数のレーザーが周知である。
【0074】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、好適な実施例の以下の説明から、ならびに図面に基づいて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1a】本発明による例示的な方法の第1のプロセスステップを概略的に示した図である。
図1b】本発明による例示的な方法の第2のプロセスステップを概略的に示した図である。
図1c】本発明による例示的な方法の第3のプロセスステップを概略的に示した図である。
図1d】本発明による例示的な方法の第4のプロセスステップを概略的に示した図である。
図1e】本発明による例示的な方法の第5のプロセスステップを概略的に示した図である。
図1f】本発明による例示的な方法の第6のプロセスステップを概略的に示した図である。
図2】ケイ素内への浸透深さdを、使用される電磁ビームの波長λの関数として概略的に示した線図である。
図3】ケイ素(上方)およびGaN(下方)についての透過率(左縦線、実線)および吸収率(右縦線、破線)を波長の関数として概略的に示した2つの線図である。
【0076】
図中、同一の部品または同一の機能を有する部品には、同一の参照符号が付されている。
【0077】
以下の図面には、本発明による例示的な方法の実施形態が示されている。ここでは、薄層2が、第1の基板1上、すなわち成長基板上に直接生成される。薄層2は、分離すべき構造部2であるか、または任意選択的なステップにおいて、複数の構造部3に分割され、これらは特に個別にかつ選択的に剥離することができる。特に、同時に成長層として用いることもでき第1の基板上に存在する吸収層の描写はここでは省かれる。したがって、吸収層のケースでは、電磁ビーム5の吸収は、主に第1の基板1上ではなく、主に吸収層で行われる。したがって、境界面6は、薄層2と吸収層との間の境界面である。基板1および/または吸収層は、ここでは、照射手段に対して主に、好適には完全に、不透過的に構成されている。
【0078】
図1aは、第1の基板1上に薄層2が生成された第1のプロセスステップを示す。薄層2は、任意の方法によって、例えばPVDまたはCVD法によって生成することができる。薄層2は、好適には、エピタキシャル層である。それゆえ、基板1は、所期の薄層2を表面上に成長させるのに適したものであってよい。特に、結晶学的方位、格子パラメータ、および基板1の材料は、薄層2が最適に、特にエピタキシャルに、単結晶で、好適には可及的に欠陥なく成長できるように選択すべきである。これらの条件によれば、所期の薄層2を提供するための適切な基板1についての選択肢が制限される。しかしながら、好適には、基板1が照射手段に対して透過的に構成されることは必要ではない。
【0079】
図1bは、薄層2が個別化される任意選択的な第2のプロセスステップを示す。薄層2の個別化のためには、一般に、複数のプロセスステップが必要である。このプロセスステップが行われないことも考えられるであろうし、その場合は、薄層2全体が転写され、転写すべき構造部2を形成する。薄層2を個別化することにより、複数の個別化された構造部3が生じ、これらは多くの場合機能性を有するため、部品と称される。例えば、複数の構造部3からLEDが生じることも考えられるであろう。当業者には、どのような部品を生成することができるかは周知である。
【0080】
図1cは、構造部3がコーティングされ、特に酸化される、任意選択的な第3のプロセスステップを示す。コーティング4は、図1bによる個別化の第2のステップ前に既に行うこともできる。コーティング4は、任意の理由を有することができるが、好適には、構造部3を第2の基板1’に転写する際の接合の改善に用いられる。特に、酸化物層は、構造部3と第2の基板1’との間の結合を改善することができる。
【0081】
図1dは、第1の基板1の構造部3と第2の基板1’との間で接触接続、いわゆる結合が行われる第4のプロセスステップを示す。2つの基板1および1’は、好適には、事前に相互に位置合わせされる。また、構造部3が、第2の基板1’における位置合わせマークに対して相対的に位置合わせされることも考えられる。また、構造部3と第2の基板1’との間の結合を改善するために、接触接続後に熱処理を実施することも考えられる。第2の基板1’は、この場合、次のプロセスステップで使用される電磁ビーム5に対して透過的である。
【0082】
図1eは、照射手段が、所定の電磁ビーム5を構造部3を通って構造部3と第1の基板1との間の境界面に照射する第5のプロセスステップを示す。電磁ビーム5、特にレーザーを用いることにより、第1の基板1と構造部3との間の境界面6が照射される。ここでは、電磁ビーム5は、本発明によれば構造部3を貫通照射する。使用される第2の基板1’は、常に、それぞれ使用される電磁ビームに対して透過的であるように選択することができる。つまりこの場合、電磁ビームは、成長基板として非常に特殊な要件を満たさなければならない第1の基板1を通って境界面6に照射されるのではなく、その物理的特性に関して比較的自由に選択可能な第2の基板1’、ならびに可能なコーティング4および構造部3を貫通する。
【0083】
既存のコーティング4は、通常、非常に薄いので、稀なケースでは、電磁ビームの高い吸収を引き起こす。さらに、多くのケースでは、コーティング4はいずれにせよ酸化物であり、これは広い波長スペクトルにおいて透過的である。図面では、プロセスの選択可能性を明らかにするために、2つの構造部3の照射が示されている。これらの構造部3は、必要に応じて、個別に剥離および転写させることができる。使用される電磁ビーム5は、好適にはパルス制御される。パルス制御されたエネルギーは、境界面6に沿った第1の基板1からの構造部3のアブレーションをもたらす。
【0084】
アブレーションは、種々異なる化学的および/または物理的効果によって実現され得る。例えば、構造部3および第1の基板1の材料の熱膨張が異なっていることが考えられる。これは、熱膨張差をもたらし、ひいては熱緊張をもたらす。熱緊張は、最終的にアブレーションをもたらす。また、境界面6においてガスが生じることも考えられる。特に、構造部3が、窒素、炭素、または水素を含む材料から作製されていた場合、窒素ガス、二酸化炭素、一酸化炭素、水素ガス、近傍に酸化物が存在する場合には水の形成も境界面6に沿ったアブレーションにつながり得る。なぜなら、形成されたガスおよび/または液体がその体積膨張により圧力上昇を引き起こし、これが第1の基板1からの構造部3のアブレーションをもたらすからである。同様に、境界面6におけるプラズマの発生も考えられ、これは、アブレーションをさらに向上させる。
【0085】
図1fは、2つの構造部3が第2の基板1’上に存在し、それに対して、残りのすべての構造部3は第1の基板1上に残されている第6のプロセスステップを示す。もちろん、基板1’が既に他の構造部(図示せず)を有し、転写された構造部3は、第2の基板1’の基板表面1o’に直接転写されるのではなく、既に第2の基板1’に存在する構造部(図示せず)に転写されることも考えられるであろう。この場合、第2の基板1’上に構造部3の軽いスタックを、特に複数生成することができよう。境界面6に到来し、構造部スタックを通って延びる使用される電磁ビーム5は、場合によっては、上下に配置された複数の構造部3によって減衰される。それに応じて照射手段を設計する必要がある。
【0086】
図2は、ケイ素内への浸透深さdを、使用される電磁ビームの波長λの関数として読み取ることができる概略的なトレース線図を示す。ケイ素における浸透深さは、吸収の領域を最適化するために使用することができる。この線図では、使用される波長が約900nm未満の場合、浸透深さは数μmに制限されることが認識可能である。チタンイオンベースのレーザーは、例えば、この波長の光子を放出する。800nm~1100nmの間の波長領域では、浸透深さは依然として最大100μmである。この波長領域については、例えば、λ~1064nm、λ~1043nmのネオジムレーザーまたはイットリウムレーザーが使用可能であろう。
【0087】
図3は、ケイ素(上方)およびGaN(下方)の2つの線図である。各線図には、透過率(左縦線、実線)および吸収率(右縦線、破線)が波長の関数として示されている。これによれば、ケイ素は、約1200nmを超える波長の電磁ビームに対して透過的であり、つまり光子をほぼ吸収しない。GaNは、約380nmを超える波長を有する電磁ビームに対して透過的である。この場合、電磁ビームは、薄層、本ケースでのGaNを貫通するが、境界領域6、本ケースでのケイ素では吸収されるべきである。それに応じて、この例示的な組み合わせについては、約380nm~900nmの間の波長領域の透過窓7が適している。ケイ素内への電磁ビームの浸透を受け入れるならば、約1100nmまで拡張された透過窓7’を使用することができる。したがって、本線図は、例示的な系GaN/Siに対してのみ関連する。他の系については、最適な透過窓を得るために、対応する線図を分析する必要がある。
【符号の説明】
【0088】
1 第1の基板(提供側基板、成長基板)
1’ 第2の基板(受け取り側基板、転送基板)
1o’ 基板表面
2 薄層
3 構造部
4 コーティング
5 電磁ビーム
6 境界領域、境界面
7,7’ 透過窓
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2
図3
【国際調査報告】