(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】移植物の足場用の管状半仕上げ製品を製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B21C 23/08 20060101AFI20240315BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20240315BHJP
A61F 2/82 20130101ALI20240315BHJP
A61F 2/91 20130101ALI20240315BHJP
A61F 2/06 20130101ALI20240315BHJP
【FI】
B21C23/08 A
A61L31/02
A61F2/82
A61F2/91
A61F2/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541077
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2022052951
(87)【国際公開番号】W WO2022199922
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512238276
【氏名又は名称】バイオトロニック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホイス、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】バイエル、ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】アノピュオ、オケチュクゥ
(72)【発明者】
【氏名】ショーフ、アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ブロック、ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ハンネマン、ヤン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
4C267
4E029
【Fターム(参考)】
4C081AC09
4C081BA16
4C081CG08
4C081DA03
4C081EA02
4C097AA15
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC01
4C097DD09
4C097MM04
4C267AA49
4C267CC08
4C267CC19
4C267FF05
4C267GG23
4C267HH08
4E029AA05
4E029AC02
4E029AC07
4E029HD01
4E029SA01
(57)【要約】
移植物足場用の管状半仕上げ製品(10)を製造する方法であって、足場の拡張性の改善につながり、半仕上げ製品(10)がマグネシウム合金からなる、方法が、a)加熱ダイ(3)によって管状半仕上げ製品(10)を押出成形するステップ、又は押出成形済みの管状半仕上げ製品を加熱装置によって焼戻しするステップと、b)ダイ(3)又は加熱装置から出る半仕上げ製品(10)の材料中に、クランプ装置(19)を有する管引抜装置(13)によって、引張応力及び/又はねじり応力を導入するステップであって、クランプ装置が、管状半仕上げ製品(10)の既定の部分(20)に固定され、管引抜装置(13)によって生成された引張力及び/又は管引抜装置(10)によって生成されたねじりモーメントが、半仕上げ製品(10)に伝達する、引張応力及び/又はねじり応力を導入するステップとを含む方法が記載されている。対応する装置もまた、記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植物の足場用の管状半仕上げ製品(10)を製造する方法であって、前記半仕上げ製品(10)がマグネシウム合金及び/又は亜鉛合金からなり、前記方法が、
a)加熱ダイ(3)によって前記管状半仕上げ製品(10)を押出成形するステップ、又は押出成形された前記管状半仕上げ製品を加熱装置によって焼戻しするステップと、
b)前記ダイ(3)から出る前記半仕上げ製品(10)、又は前記加熱装置によって焼戻しされた前記半仕上げ製品(10)の材料中に、クランプ装置(19)を有する管引抜装置(13)によって、引張応力及び/又はねじり応力を導入するステップであって、前記クランプ装置が、前記管状半仕上げ製品(10)の既定の部分(20)に固定され、前記管引抜装置(13)によって生成された引張力及び/又は前記管引抜装置(10)によって生成されたねじりモーメントが、前記半仕上げ製品(10)に伝達する、引張応力及び/又はねじり応力を導入するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ダイ(3)内で加熱される前記半仕上げ製品の前記材料に加えられる温度が、200℃~450℃の間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱装置内で管状半仕上げ製品(10)に加えられる温度が、180℃~270℃の間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記引張応力が前記管引抜装置(13)のスライド(17)によって生成され、前記スライドがガイド上で移動可能であり、前記クランプ装置(19)が前記スライド(17)に接続されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ねじり応力が、長手方向軸を中心に回転可能な回転ヘッド(18)によって生成され、前記回転ヘッド(18)の回転の前記長手方向軸が、前記クランプ装置(19)によって保持されている前記管状半仕上げ製品(10)の前記長手方向軸(24)に平行に延びており、前記クランプ装置(19)が、前記回転ヘッド(18)に接続されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
管状半仕上げ製品(10)を押出成形するための加熱ダイ(3)と共に、又は押出成形済みの管状半仕上げ製品(10)を焼戻しするための加熱装置と共に使用するための移植物の足場用の管状半仕上げ製品(10)を製造するための装置(13)であって、前記装置(13)が、クランプ装置(19)を有し、前記半仕上げ製品(10)の材料に引張応力及び/又はねじり応力を生成するように設計されており、前記装置(13)によってこの目的のために生成された引張力及び/又は前記装置(13)によって生成されたねじりモーメントが、前記クランプ装置(19)によって、前記ダイ(3)又は前記加熱装置から出る前記半仕上げ製品(10)の前記材料に伝達可能であり、前記クランプ装置(19)が、前記管状半仕上げ製品(10)の既定の部分(20)に固定可能である、装置。
【請求項7】
前記装置(13)が、ガイド上又はガイド内で移動可能なスライド(17)を有し、前記スライド(17)が、前記引張力を生成し、前記クランプ装置(19)に接続されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置(13)が、長手方向軸を中心に回転可能でありかつ前記ねじりモーメントを生成する回転ヘッド(18)を有し、前記回転ヘッド(18)が、前記クランプ装置(19)に接続されており、前記回転ヘッドの回転の前記長手方向軸が、前記クランプ装置(19)によって保持されている前記管状半仕上げ製品(10)の前記長手方向軸(24)に平行に延びていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
請求項6から8に記載の装置と、
・前記管状半仕上げ製品(10)を押出成形するための加熱ダイ(3)を備える押出成形装置(1)、又は
・押出成形済みの管状半仕上げ製品を焼戻しするための加熱装置と
を備えるシステム。
【請求項10】
マグネシウム合金からなり、前記ダイ(3)内で加熱される前記半仕上げ製品の材料に加えられる温度が、200℃~450℃の間であることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記加熱装置内で管状半仕上げ製品に加えられる温度が、180℃~270℃の間であることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法によって製造された移植物の足場用の管状半仕上げ製品。
【請求項13】
例えばレーザ切断によって、請求項12に記載の管状半仕上げ製品から切断することによって製造された移植物足場。
【請求項14】
身体の管腔内に移植するための移植物であって、マグネシウム合金及び/又は亜鉛合金を備える管状基本構造の形状である足場を備え、前記マグネシウム合金及び/又は前記亜鉛合金が、混在した結晶粒配向をもち均一かつ均等に分布した結晶粒から成形された結晶粒構造を有し、開始状態における前記管状基本構造が、少なくとも部分的に周方向に配向された複数のバーを有する、移植物において、前記移植物が、塑性変形によって圧縮され、後の塑性変形によって、前記周方向に少なくとも部分的に配向された前記バーが破断することなく、前記開始状態における直径の最大150%まで膨張させられ得ることを特徴とする、移植物。
【請求項15】
前記結晶粒が、最大でも15マイクロメートル、好ましくは最大でも10マイクロメートルの平均結晶粒度を有することを特徴とする、請求項14に記載の移植物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用移植物の構造的な足場用の管状半仕上げ製品であって、マグネシウム合金及び/又は亜鉛合金からなる管状半仕上げ製品を製造するための方法、並びに対応する装置及び本方法によって製造される半仕上げ製品に関する。本明細書では以降、構造的な足場は足場と呼ばれる。本発明はまた、管状基本構造の形状である構造的な足場を有する移植物に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金から成形されている生体吸収性の足場は、血管手術向けの吸収性移植物に使用され、これは、例えばステント用又は心臓弁置換術における例えば冠状動脈移植物又は末梢移植物である。足場は、例えばレーザによって管状半仕上げ製品から切り出されることにより製造される。足場は、しばしば患者の体内へ低侵襲的に導入される。この種の移植の場合、例えば患者の血管に沿って治療部位まで足場を輸送するために、足場は直径が小さな状態を有する。そこで、そのような足場は移送されて、患者の体内で所望の機能、例えば血管の支持機能を実行するために、例えばバルーンによって、直径がより大きな(膨張し、拡張した)状態になる。
【0003】
マグネシウム合金から成形されている生体吸収性の足場は、それらの六方格子構造及びそれらの映進面の数が限られていることが理由で、拡張などの塑性成形プロセスにおける基本的な欠点を有する。したがって過去には、足場用の管状半仕上げ製品に関して、合金化及びプロセス関連の手段によって改善を提供する試みがなされていた。その場合には、最適化された結晶粒度と、及び金属間相の可能な限り均質な分布とをもたらす試験が重要な役割を果たした。これは通常、熱機械成形(thermomechanical forming)プロセスの最適化によって、既定の合金組成で達成されてきた。
【0004】
半仕上げ管は、様々な方法で製造され得る。管引抜き、ロッド引抜き、又は押出成形などの既知の方法は、微細構造における結晶粒の好ましい配向をもたらす。この異方性微細構造又は結晶粒構造は、半仕上げ製品から製造される移植物足場の機械的特性に大きく影響する。半仕上げ管は、管の長手方向軸の方向に有利な機械的特性を有する。この事情は、管の特性には好都合であるが、これらの管から製作される足場では最大限に利用することができない。その理由は、この足場が、拡張プロセス中に変形方向と一致しない応力モーメントにも耐えなければならないことである。
【0005】
例えば、段階間に焼鈍を行う既知の多段階管引抜プロセスでは、六方最密充填のマグネシウム格子により生じる室温での成形性が、制限されることを考慮する。このため室温では、1回の引抜ステップあたりに小さな成形度しか達成され得ない。中間焼鈍ステップによって、変形能力が改善され、内部に穴の開いた半加工品の形状である半仕上げ製品は、所望の端部寸法が達成されるまで変形される。反復性のある変形能力には、完全に再結晶化した微細構造が必要になる。これが中間焼鈍ステップ後に達成されない場合、半仕上げ製品の破壊又は不可逆的な亀裂成形を排除することはできない。成形ステップ及び必須の中間焼鈍ステップが多いため、この方法は、経済的な観点からも非常に不利である。
【0006】
また、前方又は後方中空押出成形を用いた単段階の加温押出成形も先行技術である。そのような押出成形プロセスにおいて、穴の開いた半加工品は加熱ダイを通して押し出される。このプロセス中に作用する熱的影響は、機械的特性の特徴に対して決定的なものである。成形温度が高いと、微細構造中に完全な再結晶が生じ、そうしてほぼ等方性の材料特性がもたらされる。しかしながら、既知の方法では、引張強度及び破断伸度を低下させ得る結晶粒成長が起こる。あるいは成形温度が低いと、結晶粒成長は防止され、又は妨げられる。しかしながら低温により、微細構造は部分的にのみ動的に再結晶化されて強い組織をもたらし、高度な異方性のある材料特性をもたらす。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を最小化又は克服することである。半仕上げ製品から製造される移植物足場の拡張性を改善する方法及び作成された装置が記載されている。
【0008】
上記の目的は、請求項1に記載の方法及び請求項6に記載の装置によって達成される。
【0009】
特に、本発明による方法は、
a)加熱ダイによって管状半仕上げ製品を押出成形するステップ、又は押出成形済みの管状半仕上げ製品を加熱装置によって焼戻しするステップと、
b)クランプ装置を有する管引抜装置によって、ダイ又は加熱装置から出る半仕上げ製品の材料中に、引張応力及び/又はねじり応力を導入するステップであって、クランプ装置が、管状半仕上げ製品の既定の部分に固定され、管引抜装置によって生成された引張力及び/又は管引抜装置によって生成されたねじりモーメントが、半仕上げ製品に伝達する、引張応力及び/又はねじり応力を導入するステップと
を含む。
【0010】
1つの例示的な実施形態では、管状半仕上げ製品を押出成形するためのダイは、押出成形装置の一部であり、この押出成形装置はダイ以外にラムをも備える。
【0011】
したがって、本発明による装置(管引抜装置)は、クランプ装置を備え、半仕上げ製品の材料に引張応力及び/又はねじり応力を生成するように設計されており、この目的のために装置によって生成された引張力、及び/又は管引抜装置によって生成されたねじりモーメントは、クランプ装置によって、ダイ又は加熱装置から出る半仕上げ製品の材料に伝達可能であり、クランプ装置は、管状半仕上げ製品の既定の部分に固定可能である。
【0012】
管状半仕上げ製品の材料はマグネシウム合金であり、例えばWE43、マグネシウム-亜鉛-アルミニウム、マグネシウム-アルミニウム、又はマグネシウム-亜鉛-カルシウムである。ここでは、超純マグネシウム合金を使用することが好ましい。例えば、0~4%重量のZn及び2~10%重量のAlを有するマグネシウム-亜鉛-アルミニウム、又は1.5~7%重量のZn及び0.5~3.5%重量のAlを有するマグネシウム-亜鉛-アルミニウム、例えば、5~10%重量、特に5.5~7%重量、特に好ましくは6.25%のAlを有するマグネシウム-アルミニウム、例えば、3~7%重量のZn及び0.001~0.5%重量のCaを有するマグネシウム-亜鉛-カルシウム、又は0~3%重量のZn及び0~0.6%重量のCaを有するマグネシウム-亜鉛-カルシウムである。そのような超純マグネシウム合金は、述べた合金元素に加えて、他の元素(Fe、Cu、Co、Si等の不純物又は希土類)を0.006%未満の重量で含有することが好都合である。
【0013】
代替的に又は組み合わせて、管状半仕上げ製品の材料は亜鉛合金を備え、特に、0.2~3%重量、特に0.5~1.5%重量のMg、及び0~1.5%重量、特に0.01~0.5%重量のCaを有し、残りは亜鉛及び不可避の不純物によって成形されている亜鉛-マグネシウム-カルシウム合金を備える。
【0014】
本発明による方法及び本発明による装置によって実施される本発明者らの基本的な思想は、管状半仕上げ製品中に追加の応力(引張応力及び/又はねじり応力)を導入することに基づいている。この応力は、(例えば高温で実行される)管押出成形プロセスの直後に、又は後に、加熱装置を用いた追加の熱アシスト仕上げステップの範囲内で、管に導入され得る。このようにして、結晶粒の好ましい配向が管軸の方向、したがって半仕上げ製品の変形方向に対応しない結晶粒を含む金属組織の微細構造がもたらされる。本発明による方法によって製造された微細構造の多くの結晶粒の好ましい配向は、管状半仕上げ製品の長手方向軸に対して斜め方向又は横方向に延びており、その結果、全体的に混在した結晶粒配向が作成される。この混在した結晶粒配向の利点は、これらの管から作製された足場が、拡張プロセス中に機械的に負荷をかけられ、塑性変形される場合に効果を発揮する。拡張プロセス中に最も大きな塑性膨張を有する足場領域は、後の足場の破壊につながる亀裂の起点と同一である。自然なねじり応力を与えられている混在した結晶粒配向が理由で、進行中の足場の塑性変形によって生じる亀裂伝播は遅くなり、その結果、本発明によって製造される半仕上げ製品から製造される足場は、平均して遅れて故障する。その結果として、半仕上げ製品から製造された移植物足場の拡張性又は塑性変形能力が改善され、臨床的安全性の観点から極めて望ましいより大きな拡張直径を使用することができ、さらにこのクラスの医薬製品の安全性を著しく高める。
【0015】
本発明による装置を用いて実施される本発明による方法は、さらに結晶粒微細化を引き起こす。この結晶粒微細化は、新たな結晶粒の成形に加えて、結晶粒配向に関連した上述の効果も含み、半仕上げ製品から製造された足場に機械的負荷がある場合に亀裂伝播を打ち消すことが有利である。本発明による解決策は、亀裂伝播を伴う塑性変形の状況に合わせて調整され、本発明による半仕上げ製品の結晶粒は(したがって、それらから製造される足場の結晶粒も同様に)、それらの配向が理由で亀裂伝播を遅延させる。加えられた引張応力及び/又はねじり応力により、微細構造のアモルファス領域の再結晶がもたらされる。成長中の結晶粒の結晶粒配向は異なっており、特に管状半仕上げ製品の長手方向軸に対して斜め方向又は横方向に延びている。この状態は、再結晶化が到達されないと、各結晶粒内で「凍結」される。
【0016】
マグネシウム合金からなり、ダイ内で加熱される半仕上げ製品の材料に適切な温度範囲は、200℃~450℃の間、特に240℃~290℃の間である。あるいは、引張応力及び/又はねじり応力の効果に対する準備のために、マグネシウム合金からなる押出成形済みの管状半仕上げ製品を焼戻しするのに適切な温度範囲は、180℃~270℃の間である。
【0017】
亜鉛合金からなり、ダイ内で加熱される半仕上げ製品の材料に適切な温度範囲は、140℃~310℃の間、特に150℃~250℃の間である。あるいは、引張応力及び/又はねじり応力の効果に対する準備のために、マグネシウム合金からなる押出成形済みの管状半仕上げ製品を焼戻しするのに適切な温度範囲は、250℃~450℃の間である。
【0018】
引張力を生成するために、管引抜装置は、例えば、ガイド上又はガイド内で移動可能でありクランプ装置が締結されているスライド(プラー)を有し、スライドのガイドは、対応する保持装置又は対応するスタンド上に配置されている。ガイドは、例えばダブテールガイドとして成形され得る。ガイド内でスライドを移動させるために、例えば、ステッパモータ又は空気圧駆動部が設けられる。スライドが移動すると引張力が生成され、引張力は、スライドに接続されたクランプ装置を介して半仕上げ製品の材料に伝達される。スライドが空気圧で駆動される場合、例えば、電子比例弁の使用によって、力/距離図が指定及び実施され得る。
【0019】
クランプ装置は、さらに回転可能に取り付けられ、同様に駆動部、特に空気圧駆動部を設けられ得る。回転の長手方向軸は、クランプ装置によって保持されている管状半仕上げ製品の長手方向軸に平行に延びている。クランプ装置は半仕上げ製品にねじりモーメントを伝達し、ねじり応力は管の長さの関数として調整され得る。
【0020】
開始状態のクランプ装置は、ダイの数十分の1ミリメートルから5mm上方に配置されていることが好ましく、半仕上げ製品を平行グリッパ又は中心グリッパと係合させる。グリッパのダイからの距離は、管の長さにわたって増加する。グリッパのクランプ直径は、例えばミリメートルねじによって調整され得る。
【0021】
上記の目的は、上述の装置(管引抜装置)と、
・管状半仕上げ製品を押出成形するための加熱ダイを備える押出成形装置、又は
・押出成形済みの管状半仕上げ製品を焼戻しするための加熱装置と
を備えるシステムによって達成される。
【0022】
マグネシウム合金又は亜鉛合金に有利である、押出成形装置のダイ又は加熱装置の温度範囲は、既に上記で述べた。
【0023】
上記の目的はまた、上記の方法によって製造された移植物足場用の管状半仕上げ製品、及び例えばレーザ切断によって管状半仕上げ製品から切断することによって製造された移植物足場によって、対応して達成される。切り出された足場は、次いで必要に応じて、電解研磨及びコーティングされ得る。
【0024】
上記の目的は、身体の管腔内に移植するための移植物によって同様に達成され、移植物は、マグネシウム合金及び/又は亜鉛合金を含む管状基本構造を含み、マグネシウム合金及び/又は亜鉛合金は、混在した結晶粒配向をもち均一かつ均等に分布した結晶粒から成形された結晶粒構造を有し、開始状態における管状基本構造は、少なくとも部分的に周方向に配向された複数のバーを有する。移植物は、塑性変形によって圧縮され、後の塑性変形によって、少なくとも部分的に周方向に配向されたバーが破断することなく、開始状態における直径の最大150%まで膨張させられ得る。
【0025】
少なくとも部分的に周方向に配向されたバーとは、本出願の範囲内で、周方向に対する角度が<90°、特に<50°であるバーを意味すると理解される。したがって、周方向に対する角度が0°であるバーは、周方向に配向されている。しばしばストラットとも呼ばれるバーとは、直線状、又は巻線状の、特にS字形状に巻かれた細長い構造体を意味すると理解される。このように巻かれた構造体の配向は、重心ベクトルに対応する。
【0026】
身体の管腔内に移植するための移植物は、特に、血管内移植ためのステントである。
【0027】
開始状態とは、管状半仕上げ製品から切り出された後、そして任意選択の電解研磨及び/又はコーティングの後に得られる移植物を意味すると理解される。したがって移植物の開始状態とは、移植物が、移植物の挿入のために、カテーテル、特にバルーンカテーテル上へと圧縮される前の状態である。カテーテル上への移植物の圧縮、したがって締結は、しばしば圧着とも呼ばれる。
【0028】
バーの破断とは、本出願の範囲内で、バーの断面全体を少なくとも1回通過する亀裂を意味すると理解される。
【0029】
1つの実施形態における結晶粒は、最大でも15マイクロメートル、好ましくは最大でも10マイクロメートルの平均結晶粒度を有する。
【0030】
本発明は、本明細書において以降、例示的な実施形態に基づいて図面を参照して説明される。独立してあるいは任意の組み合わせで記載され及び/又は図示されているすべての特徴は、特許請求の範囲又は特許請求の範囲の従属参照におけるそれらの編集から独立して、本発明の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による装置を備える本発明によるシステムの部分断面側面図である。
【
図2】本発明による引張応力及び/又はねじり応力の導入なしで、275℃で押出成形され、マグネシウムと6.25%重量のアルミニウムとのマグネシウム合金から成形された押出成形済みの管状半仕上げ製品の微細構造の微細断面図である。
【
図3】本発明によるシステムを用いて275℃で50Nの引張力を使用して製造され、マグネシウムと6.25%重量のアルミニウムとのマグネシウム合金から成形された押出成形済みの管状半仕上げ製品の微細構造の微細断面図である。
【
図4】a)本発明による引張応力及び/又はねじり応力の導入なしで製造され、マグネシウム合金から押出成形された管状半仕上げ製品から製造された移植物足場と、 b)本発明によるシステムを用いて製造され、マグネシウム合金から押出成形された管状半仕上げ製品から製造された移植物足場と の拡張性(仕様値を超えるRFD:単位%)の比較を示す図である。
【0032】
図1に示す本発明によるシステムは、移植物の足場用の管状半仕上げ製品を製造するためのものである。システムは、加熱ダイ3を備える押出成形装置1を有する。押出成形されるべき材料5は、ダイの凹部に配置されている。材料5は、ラム7を用いて、形状を定める出口開口部8から押し出される。ラム7とダイ3との相互作用から作成される出口開口部8は、中空円筒形状を有し、その結果、管状又は中空円筒状の半仕上げ製品10が作成される。ダイ3は、例えば240℃~450℃の間の温度範囲で、材料5を加熱する。
【0033】
図1はまた、L字形ホルダ15と、ホルダ15のレール内に案内されるスライド(プラー)17とを備える管引抜装置13を示している。空気圧駆動部(図示せず)を備える回転ヘッド18が、スライド17から突出するアーム上に配置されている。この駆動部はクランプ装置19に接続されており、その結果スライド17もクランプ装置19に接続されている。出口開口部8から出た半仕上げ製品10は、押出成形装置1のダイ3とは反対側の端部においてクランプ装置19によって係合され、クランプ装置19は、この部分20において半仕上げ製品10に固定的に接続される。
【0034】
スライド17は、例えば空気圧駆動部によって、ホルダ15のレール内を
図1で見て上方に移動させられる(矢印22参照)。スライド17は引張力F(矢印22参照)を生成し、引張力Fは、クランプ装置19を介して半仕上げ製品10に伝達され、半仕上げ製品10の材料に引張応力をもたらす。スライド17用の空気圧駆動部は、電子比例弁を備え得、それによって力/距離図が既定及び実施され得る。
【0035】
代替的又は追加的に、スライド17のアーム内に回転可能に保持されているクランプ装置19を、回転ヘッド18によって回転させる。この回転は、さらなる空気圧駆動部(図示せず)によるものであり、さらなる空気圧駆動部は、管状半仕上げ製品10の長手方向軸24に平行に延びている(例えば、長手方向軸24と一致する)長手方向軸を中心とする。このことは、
図1において矢印26で示されている。これによりねじりモーメントMが生成され、ねじりモーメントMは、クランプ装置19を介して半仕上げ製品10に伝達され、半仕上げ製品10の材料にねじり応力をもたらす。ねじりモーメントは、半仕上げ製品10の長さの関数として調整される。
【0036】
この時点では、半仕上げ製品10に作用する本発明による管引抜装置13によって、押出成形装置1から出る半仕上げ製品10の材料に、引張応力、ねじり応力、又は引張応力とねじり応力との両方を生成し得ることが強調されるべきである。引張力又はねじりモーメントは、ここで、押出成形装置から出る半仕上げ製品に直接作用する。
【0037】
クランプ装置19は、開始状態では、出口開口部8から一定の距離を置いて半仕上げ製品上に配置されており、この距離は少なくとも0.2mmである。
【0038】
あるいは、押出成形済みの管状半仕上げ製品は、初めに冷却され、加熱装置によって180℃~270℃の間の温度範囲で焼戻しされ得る。次いで、引張応力及び/又はねじり応力は、上述のパイプ引抜装置13によって半仕上げ製品の加熱された材料中に導入される。
【0039】
半仕上げ製品10の材料中に導入される引張応力は、20N/mm2から100N/mm2までの範囲にあり、好ましくは40N/mm2であり、導入されるねじり応力は、導入される引張応力の0~100%の範囲にあり、好ましくは引張応力の50%である。
【0040】
引張応力及び/又はねじり応力を与えられたる半仕上げ製品10は、次いで、両方の実施形態において冷却される。
【0041】
本発明による移植物、例えばステントは、レーザ切断及びその後の電解研磨を用いた既知の方法で、半仕上げ製品10から製造され得る。
【0042】
半仕上げ製品10の材料、したがって足場又は移植物の材料は、この実施形態ではマグネシウム合金であり、例えばWE43、マグネシウム-亜鉛-アルミニウム、マグネシウム-アルミニウム、又はマグネシウム-亜鉛-カルシウムである。
【0043】
上記で既に説明したように、導入される応力は結晶粒微細化を引き起こし、微細構造の隣接する結晶粒はわずかに異なる配向を有する。したがって、結晶粒はもはや、従来の方法のように管状半仕上げ製品の長手方向軸に沿った好ましい方向のみに配向している(
図2参照)のではなく、混在した配向を有し、より小さい。このことは、
図3において非常によく理解され得、
図3は、本発明による管引抜装置13によって引張応力及び/又はねじり応力が導入された後の微細構造を示している。したがって、より多くのすべり面が利用可能であり、塑性変形の場合、結晶粒内の応力ピークが次の結晶粒によって再び除去される。さらに、材料に含まれるねじりモーメントの結果として、結晶粒内の亀裂がそれらの方向を変えるように強いられるため、亀裂が成長する速さが低下する。導入された引張応力及び/又はねじり応力はさらに、再結晶速度の増加(動的再結晶)を確実にする。これらの応力により、成形中の核生成が容易になる。したがって、より多くの新たな結晶粒が作成され、それによって再結晶微細構造の割合が増加する(
図3参照)。このプロセスの結果、等方性の材料特性は、熱機械プロセスが影響する結果として結晶粒成長することなく促進される。さらに、管状半仕上げ製品10全体の微細構造の均質性が高められ、その結果、管の全長及び管の全断面に沿って周方向にも均一な組織が製造される。このことは、処置される身体の管腔内の移植物として足場を使用する必要条件としての圧着又は拡張の間に、半仕上げ製品から製造された足場の等方性応答を増加させた。
【0044】
図4に示すグラフから、材料特性の改善は明白である。「定格フラクチャ直径(rated fracture diameter:RFD)」として知られているもの、すなわち、足場が破断まで拡張する間に、統計的確実性をもって得られる足場の直径を測定することによって、拡張性を評価することができる。
図4は、従来の半仕上げ製品(a))から製造された足場と、本発明による方法によって製造された半仕上げ製品(b))の足場とのRFDの比較を示している。拡張性は、16%よりも大きく増加すると判定された。
【符号の説明】
【0045】
1 押出成形装置
3 加熱ダイ
5 押出成形されるべき材料
7 ラム
8 出口開口部
10 管状半仕上げ製品
13 管引抜装置
15 ホルダ
17 スライド(プラー)
18 回転ヘッド
19 クランプ装置
20 半仕上げ製品10の部分
22 矢印
24 半仕上げ製品10の長手方向軸
26 矢印
【国際調査報告】