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  • 特表-霧化コア構造部材及びその製造方法 図1
  • 特表-霧化コア構造部材及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】霧化コア構造部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/117 20060101AFI20240315BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C04B35/117
C04B35/80
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551097
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 CN2021114132
(87)【国際公開番号】W WO2023023905
(87)【国際公開日】2023-03-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523317548
【氏名又は名称】深▲ゼン▼市安芯精密組件有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】陳平
(57)【要約】
霧化コア構造部材及びその製造方法において、霧化コア構造部材は、原料及びその質量部として、本体材料30~50部、低融点ガラス粉末5~20部、炭素繊維0~20部、グラフェン0~20部、添加剤0~30部及びバインダー0~10部を含む。炭素繊維、グラフェン及び添加剤の少なくとも1つは0部ではない。本体材料は、酸化アルミニウム、ボーキサイト、コランダムのうちの少なくとも1種類を含む。添加剤には、質量分率90%のリン酸二水素アルミニウム溶液を選択する。当該霧化コア構造部材は、従来のシリコーン構造部材と比べて、マイクロ孔及び比較的高い強度を有し、霧化コアによる霧化時に液漏れ及び空焚きを有効に予防可能であるとともに、構造部材の内部に装着される綿芯に対し保護作用を発揮することも可能である。また、製造が容易であり、低コストであり、成形しやすい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料及びその質量部として、本体材料30~50部、低融点ガラス粉末5~20部、炭素繊維0~20部、グラフェン0~20部、添加剤0~30部及びバインダー0~10部を含み、前記炭素繊維、グラフェン及び添加剤の少なくとも1つは0部ではなく、
前記本体材料は、酸化アルミニウム、ボーキサイト、コランダムのうちの少なくとも1種類を含み、前記添加剤には、質量分率50~95%のリン酸二水素アルミニウム溶液を選択することを特徴とする霧化コア構造部材。
【請求項2】
前記本体材料の粒度は、200~2000メッシュであることを特徴とする請求項1に記載の霧化コア構造部材。
【請求項3】
前記低融点ガラス粉末の粒度は、80~600メッシュであることを特徴とする請求項1に記載の霧化コア構造部材。
【請求項4】
前記グラフェンの厚さは、3~9nmであることを特徴とする請求項1に記載の霧化コア構造部材。
【請求項5】
前記炭素繊維の粒度は、80~600メッシュであることを特徴とする請求項1に記載の霧化コア構造部材。
【請求項6】
前記バインダーは、ポリビニルアルコール、マルトデキストリン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルブチラールのうちの少なくとも1種類を調合した質量分率1~10%の溶液であることを特徴とする請求項1に記載の霧化コア構造部材。
【請求項7】
前記溶液に用いられる溶媒は水であることを特徴とする請求項6に記載の霧化コア構造部材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の霧化コア構造部材の製造方法であって、
S1:原料を混合及び造粒して混合材料を形成し、
S2:前記混合材料を金型に投入して乾式プレス成形し、
S3:乾式プレス成形で得た素地を400~700℃下に置いて焼結し、霧化コア構造部材を取得する、
とのステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
ステップS1において、混合及び造粒時には、原料中の添加剤とバインダーを滴下方式で分割して加え、
ステップS2において、乾式プレス成形の圧力は0.1~10MPaであり、圧力を0~5min保持することを特徴とする請求項8に記載の霧化コア構造部材の製造方法。
【請求項10】
ステップS3において、前記素地の焼結に先立ち、まず、90~150℃で乾燥させることを特徴とする請求項8に記載の霧化コア構造部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霧化の技術分野に関し、特に、霧化コア構造部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場で見られるアトマイザーは、通常、繊維索又は有機綿に発熱線を加えて構成される綿芯霧化コアである。綿芯霧化コアの主な成形方式には、綿を取り囲む方式又は綿を包む方式等があるが、発熱線が綿に固定されないため、綿と発熱線との結合が緊密であるとはいえない。よって、綿芯霧化コアによる霧化時に液漏れや空焚き等の現象が発生しやすく、ユーザエクスペリエンスや綿芯霧化コアの使用寿命に極めて大きな影響を及ぼす。また、綿芯霧化コアに使用されるシリコーン栓やシリコーンカバー等の構造支持部材は、液漏れや空焚き等の予防面での効果に劣り、強度も低いため、内部に装入される綿芯の保護にも限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする技術的課題は、霧化コアの液漏れ及び空焚きの予防効果を向上させる霧化コア構造部材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は以下の通りである。即ち、原料及びその質量部として、本体材料30~50部、低融点ガラス粉末5~20部、炭素繊維0~20部、グラフェン0~20部、添加剤0~30部及びバインダー0~10部を含む霧化コア構造部材を提供する。前記炭素繊維、グラフェン及び添加剤の少なくとも1つは0部ではない。
【0005】
前記本体材料は、酸化アルミニウム、ボーキサイト、コランダムのうちの少なくとも1種類を含む。前記添加剤には、質量分率50~95%のリン酸二水素アルミニウム溶液を選択する。
【0006】
好ましくは、前記本体材料の粒度は200~2000メッシュである。
【0007】
好ましくは、前記低融点ガラス粉末の粒度は80~600メッシュである。
【0008】
好ましくは、前記グラフェンの厚さは3~9nmである。
【0009】
好ましくは、前記炭素繊維の粒度は80~600メッシュである。
【0010】
好ましくは、前記バインダーは、ポリビニルアルコール、マルトデキストリン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルブチラールのうちの少なくとも1種類を調合した質量分率1~10%の溶液である。
【0011】
好ましくは、前記溶液に用いられる溶媒は水である。
【0012】
本発明は、更に、霧化コア構造部材の製造方法を提供する。当該方法は、特徴として以下のステップを含む。
【0013】
S1:原料を混合及び造粒して混合材料を形成する。
【0014】
S2:前記混合材料を金型に投入して乾式プレス成形する。
【0015】
S3:乾式プレス成形で得た素地を400~700℃下に置いて焼結し、霧化コア構造部材を取得する。
【0016】
好ましくは、ステップS1において、混合及び造粒時には、原料中の添加剤とバインダーを滴下方式で分割して加える。
【0017】
好ましくは、ステップS2において、乾式プレス成形の圧力は0.1~10MPaであり、圧力を0~5min保持する。
【0018】
好ましくは、ステップS3において、前記素地の焼結に先立ち、まず、90~150℃で乾燥させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の霧化コア構造部材は、本体材料や添加剤等の原料を調合することで、構造部材の低温焼結成形を実現する。また、炭素繊維及び/又はグラフェンを加えることで、構造部材の空間充填率と曲げ強さを向上させる。本発明の霧化コア構造部材はセラミック構造部材であり、従来のシリコーン構造部材と比べてマイクロ孔及び比較的高い強度を有し、霧化コアによる霧化時に液漏れ及び空焚きを有効に予防可能であるとともに、構造部材の内部に装着される綿芯に対し保護作用を発揮することも可能である。また、製造が容易であり、低コストであり、成形しやすい。
【0020】
以下に、図面と実施例を組み合わせて、本発明につき更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施例における霧化コア構造部材のSEM画像である。
図2図2は、本発明の別の実施例における霧化コア構造部材のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の霧化コア構造部材は、原料及びその質量部として、本体材料30~50部、低融点ガラス粉末5~20部、炭素繊維0~20部、グラフェン0~20部、添加剤0~30部及びバインダー0~10部を含む。
【0023】
炭素繊維、グラフェン及び添加剤の少なくとも1つは0部ではない。炭素繊維は、0部ではない場合、3~20部としてもよい。グラフェンは、0部ではない場合、3~20部としてもよい。添加剤は、0部ではない場合、5~30部としてもよい。
【0024】
具体的に、霧化コア構造部材の原料のうち、本体材料は、酸化アルミニウム、ボーキサイト及びコランダム等のうちの少なくとも1種類を含んでもよい。
【0025】
バインダーは、ポリビニルアルコール、マルトデキストリン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルブチラールを含む材料のうちの少なくとも1種類を調合して形成される溶液であり、その質量分率は1~10%である。溶液の調合に必要な溶媒としては、上記の各材料に応じて、溶媒に水を用い、好ましくは蒸留水を用いてもよい。
【0026】
粒度の選択については、本体材料の粒度は200~2000メッシュであり、低融点ガラス粉末の粒度は80~600メッシュであり、炭素繊維の粒度は80~600メッシュである。また、グラフェンの厚さは3~9nmである。
【0027】
本発明において、添加剤には、質量分率50~95%のリン酸二水素アルミニウム溶液を選択し、好ましくは、質量分率を90%とする。
【0028】
本発明の霧化コア構造部材では、炭素繊維及び/又はグラフェンを加えることで、構造部材の曲げ強さを向上させる。グラフェンは、本体材料の粒子の間に混在して粒子を包み、巻き付くことで、アンカーメカニズムを形成する。一方、炭素繊維は、繊維の強靭化作用を発揮可能である。また、添加剤としてのリン酸二水素アルミニウムを加えることで、構造部材の強度を向上させることも可能である。これは、主として、リン酸又はリン酸塩が酸化アルミニウム又はボーキサイト中の酸化アルミニウムと反応することで、熱硬化性結合する鱗珪石及び方珪石タイプのリン酸アルミニウムを形成可能であり、強度を向上させるからである。
【0029】
本発明における霧化コア構造部材の製造方法は、以下のステップを含み得る。
【0030】
S1:所望の質量部の原料を計量したあと、混合及び造粒して混合材料を形成する。
【0031】
バインダー及び添加剤はいずれも溶液状態であるため、混合及び造粒時には、原料中の添加剤及び/又はバインダーを滴下方式で分割して加える。造粒時間は1~5hとする。また、混合材料の状況に応じて、造粒時間を適切に増減させてもよい。
【0032】
S2:混合材料を金型に投入し、乾式プレス成形する。
【0033】
乾式プレス成形の圧力は、0.1~10MPaであり、圧力を0~5min保持する。
【0034】
S3:乾式プレス成形で得た素地を400~700℃下に置いて焼結し、霧化コア構造部材を取得する。
【0035】
素地の焼結に先立ち、まず、90~150℃で乾燥させて水分を除去する。
【0036】
焼結時には、雰囲気を空気、真空又は希ガス雰囲気とする。焼結後に得られる霧化コア構造部材は、一定の空間充填率及び強度を有している。
【0037】
上記の製造方法において、霧化コア構造部材の原料がグラフェンを含んでいる場合、SEM画像(50.0μm)は図1に示す通りとなる。図面より、グラフェンは本体材料の粒子の間に均一に分散し、構造部材の緻密度を大幅に向上させることがわかる。霧化コア構造部材の原料が炭素繊維を含んでいる場合、SEM画像(50.0μm)は図2に示す通りとなる。図面より、焼結後に炭素繊維は構造部材のマトリックスをしっかりと覆うことで、繊維を強靭化する作用を発揮することがわかる。
【0038】
本発明における霧化コア構造部材は、実際に必要とする形状に応じて、乾式プレス時に対応形状のキャビティを有する金型を使用することで、乾式プレス成形される素地を実際に必要とする形状の構造部材に対応させてもよい。これにより、後続の焼結後にも、例えば、円形の筒状、多角形の筒状等の所望の形状の構造部材が形成される。
【0039】
本発明の霧化コア構造部材の応用時には、発熱線を備える吸液部材(例えば、綿芯)を構造部材の内部に装入することで、全体的な霧化コアを形成可能である。
【0040】
以下に、具体的実施例によって、本発明につき更に説明する。
【0041】
実施例1:
酸化アルミニウムを35部、低融点ガラス粉末を15部、10%のバインダーを4部、90%のリン酸二水素アルミニウム溶液を5部取り、混合及び造粒したあと、金型に投入して乾式プレス成形した。成形圧力は0.1~10Mpaとし、成形圧力保持時間は1~2minとした。成形した素地をオーブンに投入し、90~150℃で乾燥させてから、焼結炉に置いて660℃で焼結することで霧化コア構造部材を取得した。
【0042】
実施例2:
バインダーを加えないことを除き、実施例1と同様とした。
【0043】
実施例3:
リン酸二水素アルミニウム溶液を2部の炭素繊維に変更した点を除き、実施例1と同様とした。
【0044】
実施例4:
リン酸二水素アルミニウム溶液を2部のグラフェンに変更した点を除き、実施例1と同様とした。
【0045】
実施例5:
バインダーを加えず、2部の炭素繊維を加えた点を除き、実施例1と同様とした。
【0046】
実施例6:
酸化アルミニウムを30部、低融点ガラス粉末を20部、90%のリン酸二水素アルミニウム溶液を5部取り、混合及び造粒したあと、金型に投入して乾式プレス成形した。成形圧力は0.1~10Mpaとし、成形圧力保持時間は1~2minとした。成形した素地をオーブンに投入し、90~150℃で乾燥させてから、焼結炉に置いて660℃で焼結することで霧化コア構造部材を取得した。
【0047】
実施例7:
酸化アルミニウムを40部、低融点ガラス粉末を10部、90%のリン酸二水素アルミニウム溶液を5部取り、混合及び造粒したあと、金型に投入して乾式プレス成形した。成形圧力は0.1~10Mpaとし、成形圧力保持時間は1~2minとした。成形した素地をオーブンに投入し、90~150℃で乾燥させてから、焼結炉に置いて660℃で焼結することで霧化コア構造部材を取得した。
【0048】
実施例8:
酸化アルミニウムを50部、低融点ガラス粉末を5部、90%のリン酸二水素アルミニウム溶液を10部取り、混合及び造粒したあと、金型に投入して乾式プレス成形した。成形圧力は0.1~10Mpaとし、成形圧力保持時間は1~2minとした。成形した素地をオーブンに投入し、90~150℃で乾燥させてから、焼結炉に置いて660℃で焼結することで霧化コア構造部材を取得した。
【0049】
比較例1:
酸化アルミニウムを35部、低融点ガラス粉末を15部、10%のバインダーを4部とし、実施例1の方法を参照して霧化コア構造部材を製造した。
【0050】
比較例2:
酸化アルミニウムを80部、長石を15部、リチア雲母を5部取り、混合及びプレスすることで素地にしたあと、焼結炉に置いて1000~1200℃で焼結し、霧化コア構造部材を取得した。
【0051】
上記の実施例1~8及び比較例1~2で取得した霧化コア構造部材について、空間充填率及び曲げ強さを測定したところ、結果は下記の表1に示す通りとなった。
【0052】
【表1】
【0053】
表1の結果から明らかなように、実施例1~8で取得した霧化コア構造部材は、空間充填率と曲げ強さが比較例1及び2よりも明らかに優れていた。特に、実施例3~実施例5のように、霧化コア構造部材にグラフェンや炭素繊維を加えた場合には、曲げ強さが明らかに向上した。
【0054】
以上の記載は本発明の実施例にすぎず、これにより本発明の権利範囲は制限されない。本発明の明細書及び図面の内容を用いてなされる等価の構造又は等価のフローの変更、或いは、その他関連の技術分野における直接的又は間接的な運用は、いずれも同様の理由で本発明の権利保護の範囲に含まれる。
図1
図2
【国際調査報告】