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▶ エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】経口薄フィルム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20240315BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 11/10 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240315BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K45/00
A61K31/122
A61P25/04
A61P5/00
A61P25/20
A61P25/08
A61P25/00
A61P25/28
A61P37/08
A61P9/10
A61P9/06
A61P13/02
A61P9/12
A61P9/00
A61P25/24
A61P11/14
A61P11/10
A61P5/14
A61P5/24
A61P3/10
A61P35/00
A61P31/00
A61P23/00
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/42
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023553227
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022055284
(87)【国際公開番号】W WO2022184770
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102021105268.8
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マーリオ・フィッカー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA89
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC30
4C076CC32
4C076EE06A
4C076EE09
4C076EE10A
4C076EE13A
4C076EE16A
4C076EE23A
4C076EE30A
4C076EE32A
4C076EE36A
4C076EE37A
4C076EE38A
4C076EE42A
4C076EE43A
4C076FF16
4C076FF39
4C076FF51
4C076FF52
4C076FF53
4C076FF57
4C076FF68
4C076GG50
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA57
4C084NA10
4C084NA11
4C084NA12
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4C084ZA022
4C084ZA041
4C084ZA042
4C084ZA051
4C084ZA052
4C084ZA061
4C084ZA062
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA121
4C084ZA122
4C084ZA291
4C084ZA292
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA421
4C084ZA422
4C084ZA431
4C084ZA432
4C084ZA621
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4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA831
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4C084ZC032
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4C084ZC352
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4C206MA77
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4C206ZA29
4C206ZA36
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4C206ZA43
4C206ZA62
4C206ZA63
4C206ZA66
4C206ZA83
4C206ZB13
4C206ZB26
4C206ZB32
4C206ZC03
4C206ZC06
4C206ZC10
4C206ZC11
4C206ZC35
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのマトリックスポリマーと、少なくとも1つの医薬活性成分とを含む経口薄フィルムであって、少なくとも1つの医薬活性成分は、酸または塩基である経口薄フィルムにおいて、少なくとも1つの医薬活性成分は、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の形態で存在することを特徴とする、経口薄フィルムに関する。また、本発明は、経口薄フィルムを製造するための方法、および薬物としてのそのような経口薄フィルムの使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマトリックスポリマーと、少なくとも1つの医薬活性成分とを含む経口薄体であって、少なくとも1つの医薬活性成分は、酸または塩基である経口薄体において、少なくとも1つの医薬活性成分は、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の形態で存在することを特徴とする、経口薄体。
【請求項2】
少なくとも1つのマトリックスポリマーは、水溶性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の経口薄フィルム。
【請求項3】
少なくとも1つのマトリックスポリマーは、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースまたはプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン、ならびに天然ガムを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の経口薄フィルム。
【請求項4】
少なくとも1つのマトリックスポリマーは、経口薄フィルムの総重量に対して、10~90重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項5】
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の他に、さらなる酸、塩基、塩、および/または緩衝系を含まないことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項6】
少なくとも1つの医薬活性成分は、カルボキシル基、アミノ基、スルホニル基、および/またはホスホネート基を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項7】
少なくとも1つの医薬活性成分は、活性成分クラスの鎮痛薬、ホルモン薬、睡眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、蘇生薬、精神神経薬、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、抗うつ薬、鎮咳薬、去痰薬、甲状腺ホルモン薬、性ホルモン薬、抗糖尿病薬、抗腫瘍活性成分、抗生物質、化学療法薬、および麻薬を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項8】
少なくとも1つの医薬活性成分は、ケタミンを含み、特に好ましくは(S)-ケタミンを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項9】
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物は、遊離塩基としてのケタミンとケタミン塩酸塩とを含み、好ましくは遊離塩基としての(S)-ケタミンと(S)-ケタミン塩酸塩とを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項10】
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物は、経口薄フィルムの総重量に対して、35~55重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項11】
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物は、遊離酸または遊離塩基の形態の少なくとも1つの医薬活性成分と、医薬として許容される塩の形態の少なくとも1つの医薬活性成分とを、モル比3:1~1:3で含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項12】
3.5~9.5、好ましくは4.5~8.8のpHを有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項13】
着色剤、香料、甘味剤、可塑剤、矯味剤、乳化剤、増強剤、保湿剤、防腐剤、および/または酸化防止剤を含む群から選択される少なくとも1種の補助剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の経口薄フィルムを製造するための方法であって、下記の工程:
a)少なくとも1つのマトリックスポリマーと、
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の形態の少なくとも1つの医薬活性成分と
を少なくとも含有する溶液、分散体、または溶融物を製造する工程と、
b)フィルムを得るために、工程a)からの溶液、分散体、または溶融物を展延する工程と、
c)経口薄フィルムを得るために、工程b)からのフィルムを乾燥させる工程と
を含む、方法。
【請求項15】
医薬としての、請求項1~13のいずれか1項に記載の経口薄フィルムまたは請求項14に記載の方法によって得ることができる多層経口薄フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのマトリックスポリマーと、少なくとも1つの医薬活性成分とを含む経口薄フィルムであって、少なくとも1つの医薬活性成分は、酸または塩基であり、少なくとも1つの医薬活性成分は、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の形態で存在する、経口薄フィルム、前記経口薄フィルムを製造するための方法、および医薬としてのそのような経口薄フィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
経口薄フィルムは、口腔内にまたは口腔粘膜に対して直接置かれ、そこで溶解するかまたは柔らかくなり、そのようにして活性成分を送達する、少なくとも1つの医薬活性成分を含有する薄いフィルムである。これらのフィルムは、特に、薄くて、1層または多層で、活性成分を含有し、ポリマーを主成分とするフィルムであり、粘膜、特に口腔粘膜に適用されると、その中に活性成分を直接送達することができる。口腔粘膜への血液供給は非常に良好であるため、活性成分の血流内への迅速な移送が確実に行われる。この投与システムは、活性成分はその大部分が粘膜を通って吸収されるという利点を有するため、活性成分の従来の剤形である錠剤形態の場合に生じる初回通過効果を回避する。活性成分は、フィルム内で溶解させてもよく、乳化させてもよく、または分散させてもよい。
【0003】
医薬活性成分が粘膜を通って吸収され、医薬活性成分の安定性および医薬組成物の全体としての安定性を確保するために、pH値は、鍵となる要因である。特に、経口薄フィルムを患者の口腔内で溶解させる場合、経口薄フィルムが溶解する位置で生じるpH値は、医薬活性成分の吸収にとって決定的に重要である。
【0004】
所望のpH値は、通常、酸もしくは塩基を添加することによって、または緩衝系によって設定される。しかしながら、この設定は、医薬製剤に有害な影響を及ぼす場合がある。酸または塩基を製剤に添加することで活性成分を中和することによって、副生成物として塩が生成され、その塩は、その後の作用をもたらさないため、製剤に悪影響を及ぼす。結果として生じる塩は、特に、経口薄フィルムの面積密度も増加させ、加えて、製剤の安定性および味に悪影響を及ぼす場合がある。緩衝系の使用も同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、先行技術の上記欠点を克服することにある。特に、本発明の目的は、経口薄フィルムのpH値、特に経口薄フィルムが溶解したときのpH値を、経口薄フィルムにさらなる酸、塩基、または緩衝系を添加する必要なく、有利に設定することができる経口薄フィルムを提供することにある。また、経口薄フィルムによって、患者の唾液中のpH値をできる限り最も広い範囲内に、しかもできる限り最も安定した仕方で設定することが可能になる。さらに、経口薄フィルムをできるだけ簡単かつ経済的に製造することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、請求項1に記載の多層の経口薄フィルムによって、特に、少なくとも1つのマトリックスポリマーと、少なくとも1つの医薬活性成分とを含む経口薄フィルムであって、少なくとも1つの医薬活性成分は、酸または塩基であり、少なくとも1つの医薬活性成分は、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の形態で存在することを特徴とする、経口薄フィルムによって対処される。
【0007】
そのような経口薄フィルムは、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物である結果として、さらなる酸、塩基、または緩衝物質を添加する必要なく、緩衝系が経口薄フィルム中にもたらされるので、有利である。医薬として許容される塩の形態の少なくとも1つの医薬活性成分に対する遊離酸または遊離塩基の形態の少なくとも1つの医薬活性成分の比を調整することによって、製剤のpH値を調整することが可能である。そのような製剤には、さらなる酸、塩基、または緩衝物質を添加する必要がないため、その製剤、ひいては最終的な経口薄フィルムは、中和の際の塩の生成によっても緩衝系の存在によっても悪影響を受けない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
酸および塩基の定義については、特に当業者に公知のブレンステッド酸・塩基の概念を参照することができる。したがって、本発明による経口薄フィルムは、特に、ブレンステッド酸・塩基の概念に従う酸または塩基である少なくとも1つの医薬活性成分を含む。
【0009】
本明細書において、単語「含む」は、「からなる」を意味することも可能である。
【0010】
本発明による経口薄フィルムは、少なくとも1つのマトリックス層が、水溶性ポリマーを含むことを特徴とすることがさらに好ましい。
【0011】
水溶性ポリマーは、化学的に非常に異なる、天然または合成のポリマーを含むが、それらの共通の特徴は、水または水性媒体へのそれらの溶解性である。必要条件は、これらのポリマーが水溶性のための十分な数の親水性基を有しており、架橋されていないことである。親水性基は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および/または双性イオン性であってよい。
【0012】
水溶性とは、水への溶解度が25℃で100g/Lより大きいことを意味すると理解されることが好ましい。
【0013】
少なくとも1つの水溶性ポリマーは、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースまたはプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン、ならびに天然ガム、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを含む群から選択されることが好ましく、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0014】
また、本発明による経口薄フィルムは、少なくとも1つのマトリックスポリマー、好ましくは水溶性ポリマーが、経口薄フィルムの総重量に対して、10~90重量%、好ましくは20~60重量%、特に好ましくは30~50重量%の量で存在することも特徴とすることが好ましい。
【0015】
本発明による経口薄フィルムは、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の他に、さらなる酸、塩基、塩、および/または緩衝系を含まないことを特徴とすることが好ましい。
【0016】
特に、経口薄フィルムは、いずれの塩酸、NaOH、KOH、NaCO、NaHCO、KCO、および/または硫酸も含有しない。
【0017】
さらに、本発明による経口薄フィルムは、NaCl、KCl、リン酸塩緩衝液、TRIS緩衝液、クエン酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、硫酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、および/またはアンモニウム緩衝液を含有しない。
【0018】
少なくとも1つの医薬活性成分は、その医薬活性成分が酸または塩基であることを除けば、原理上、いかなる制限も受けないが、好ましくは、経口投与および/または経粘膜投与に適したすべての医薬活性成分から選択される。
【0019】
本発明による経口薄フィルムは、少なくとも1つの医薬活性成分が酸である場合、その医薬活性成分のpKが、3~11、好ましくは4~9であることを特徴とすることが好ましい。
【0020】
本発明による経口薄フィルムは、少なくとも1つの医薬活性成分が塩基である場合、その医薬活性成分のpKが、3~11、好ましくは4~9であることを特徴とすることが好ましい。
【0021】
本発明による経口薄フィルムは、少なくとも1つの医薬活性成分が、カルボキシル基、アミノ基、スルホニル基、および/またはホスホネート基を含むことを特徴とすることが好ましい。
【0022】
好ましい活性成分は、活性成分クラスの鎮痛薬、ホルモン薬、睡眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、蘇生薬、精神神経薬、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、抗うつ薬、鎮咳薬、去痰薬、甲状腺ホルモン薬、性ホルモン薬、抗糖尿病薬、抗腫瘍活性成分、抗生物質、化学療法薬、および麻薬を含む群から選択されるが、この群はすべてを網羅しているわけではない。
【0023】
少なくとも1つの医薬活性成分は、ケタミンであることが特に好ましい。
【0024】
ケタミンは、(S)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン、(R)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン、およびラセミ体である(RS)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オンを意味すると理解される。
【0025】
(S)-ケタミンは、ケタミンの単一の立体異性体として存在することが特に好ましい。何故なら、(S)-ケタミンの鎮痛および麻酔の効力は、(R)体の効力よりも約3倍高いからである。
【0026】
本発明による経口薄フィルムは、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物が、遊離塩基としてのケタミンとケタミン塩酸塩とを含み、好ましくは遊離塩基としての(S)-ケタミンと(S)-ケタミン塩酸塩とを含むことを特徴とすることが好ましい。
【0027】
遊離塩基としてのケタミンとケタミン塩酸塩との混合物を用いることにより、さらなる酸、塩基、または緩衝系を添加する必要なく、特に好適なpH値を設定することができる。
【0028】
経口薄フィルム中の活性成分の含有量は、比較的広い範囲内で異なり得る。経口薄フィルムの総重量(乾燥総重量)に対して、10~60重量%の範囲が好適であると言える。一実施形態において、経口薄フィルム中の活性成分の割合は、むしろより少ない範囲にあり、例えば、有効成分が強い不快な味を有し、その味をより多量の矯味剤で打ち消さなければならない場合である。この場合、10~40重量%の範囲が適切な活性成分の分率であると言える。別の実施形態において、本発明による剤形中の活性成分の割合は、むしろより多い範囲にあり、40~60重量%の含有量、特に45~55重量%の含有量が特に好ましいと言える。
【0029】
本明細書において、医薬活性成分の量は、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物、すなわち、遊離酸または遊離塩基の形態の少なくとも1つの医薬活性成分の量と医薬として許容される塩の形態の少なくとも1つの医薬活性成分の量との合計に関する。
【0030】
したがって、本発明による経口薄フィルムは、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物が、経口薄フィルムの総重量に対して、35~60重量%の量で存在することを特徴とすることが特に好ましい。
【0031】
ケタミンは、医薬として許容されるその塩として、特に遊離塩基としてのケタミンとケタミン塩酸塩として、好ましくは遊離塩基としての(S)-ケタミンと(S)-ケタミン塩酸塩として、経口薄フィルムの総重量に対して、合計35~60重量%の量で存在することが特に好ましい。
【0032】
pH値を設定するためには、医薬として許容される塩の形態の少なくとも1つの医薬活性成分に対する遊離酸または遊離塩基の形態の少なくとも1つの医薬活性成分のモル比が、決定的に重要である。
【0033】
したがって、本発明による経口薄フィルムは、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物が、遊離酸または遊離塩基の形態の少なくとも1つの医薬活性成分と、医薬として許容される塩の形態の少なくとも1つの医薬活性成分とを、モル比3:1~1:3、好ましくは1.5:1~1:1.5、特に好ましくは約1:1、非常に特に好ましくは1:1で含むことを特徴とすることが好ましい。
【0034】
遊離塩基としてのケタミンと医薬として許容される塩としてのケタミンとのモル比は、3:1~1:3、好ましくは1.5:1~1:1.5、特に好ましくは約1:1、非常に特に好ましくは1:1であることが好ましい。
【0035】
本発明による経口薄フィルムは、遊離塩基としてのケタミンとケタミン塩酸塩とを、モル比3:1~1:3、好ましくは1.5:1~1:1.5、特に好ましくは約1:1、非常に特に好ましくは1:1で含むことが非常に特に好ましい。
【0036】
別の好ましい実施形態において、本発明による経口薄フィルムは、遊離塩基としての(S)-ケタミンと(S)-ケタミン塩酸塩とを、モル比3:1~1:3、好ましくは1.5:1~1:1.5、特に好ましくは約1:1、非常に特に好ましくは1:1で含む。
【0037】
本発明による経口薄フィルムは、経口薄フィルムが、3.5~9.5、好ましくは4.5~8.8のpHを有することをさらに特徴とすることが好ましい。
【0038】
これは、経口薄フィルムを純水に溶解させることによって調製される溶液で確立する(20℃における)pH値を意味すると理解される。
【0039】
本発明による多層経口薄フィルムは、マトリックス層が、着色剤、香料、甘味剤、可塑剤、矯味剤、乳化剤、増強剤、pH調節剤、保湿剤、防腐剤、および/または酸化防止剤を含む群から選択される少なくとも1種の補助剤を含むことを特徴とすることがさらに好ましい。
【0040】
これらの補助剤のそれぞれは、マトリックス層の総重量に対して、0.1~40重量%、好ましくは0.1~30重量%、特に好ましくは0.1~15重量%、非常に特に好ましくは0.1~10重量%、または0.1~5重量%の量でこの層に含まれることが好ましい。
【0041】
本発明による多層経口薄フィルムは、原理上、含まれる層の数において限定されない。
【0042】
例えば、本発明による経口薄フィルムが、いくつかの活性成分を含有する層を含む実施形態を考えることもできる。
【0043】
一実施形態において、本発明による経口薄フィルムは、実質的に平滑なフィルムであってもよい。
【0044】
本発明による経口薄フィルムは、空隙を有する固化した発泡体の形態で存在することを特徴とすることが好ましい。
【0045】
空隙および空隙に関連してフィルムの表面積がより大きいことにより、特に、水または唾液またはその他の体液が剤形の内部に進入することが容易になり、その結果、剤形の溶解および活性成分の放出が促進される。
【0046】
急速に吸収される活性成分の場合、経粘膜の吸収は、マトリックス層の急速な溶解によっても向上させることができる。
【0047】
一方、前記空隙の壁の厚さは、小さいことが好ましい。何故なら、これら空隙は、固化した気泡に相当するので、例えばこれら空隙の急速な溶解または崩壊が起こるからである。
【0048】
この実施形態のさらなる利点は、発泡体として製剤化することによって、面積密度が比較的高いにもかかわらず、同等の非発泡組成物よりも速い乾燥を達成できることである。
【0049】
本発明による経口薄フィルムは、空隙が互いに隔離され、好ましくは気泡の形態で存在し、空隙が、空気またはガス、好ましくは不活性ガス、特に好ましくは窒素、二酸化炭素、ヘリウム、またはこれらのガスの少なくとも2種の混合物で充填されていることを特徴とすることが好ましい。
【0050】
別の実施形態によれば、空隙は、互いに連結され、好ましくはマトリックスを貫通する連続的な流路系を形成することによって互いに連結されることが提供される。
【0051】
前記空隙の体積分率は、マトリックス層の総体積に対して、5~98%、好ましくは40~80%であることが好ましい。このようにして、薄フィルムの溶解を促進するという有利な効果は、好都合に影響を受ける。
【0052】
さらに、乾燥の前または後の発泡体の安定性を向上させるために、発泡体形成のための経口薄フィルムまたは乾燥の前もしくは後に得られた発泡体に、界面活性物質または界面活性剤を添加することができる。
【0053】
本発明による経口薄フィルムの特性に影響を及ぼす別のパラメータは、空隙または気泡の直径である。気泡または空隙は、発泡機を用いて作り出されることが好ましく、それにより気泡の直径を広い範囲でほぼ任意に調整することができる。このようにして、気泡または空隙の直径は、0.01~60μmの範囲にあり得る。その直径は、10~50μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0054】
本発明による経口薄フィルムの面積は、好ましくは0.5cm~10cm、特に好ましくは1.5cm~8cmである。
【0055】
本発明による経口薄フィルムの面積密度は、好ましくは少なくとも10g/m、より好ましくは少なくとも20g/m、もしくは少なくとも30g/m、もしくは最も好ましくは少なくとも50g/m、または400g/m以下、より好ましくは350g/m以下、もしくは300g/m以下、もしくは最も好ましくは150g/m以下である。面積密度は、好ましくは10~400g/m、より好ましくは20~350g/m、または30~300g/m、最も好ましくは50~200g/mである。
【0056】
本発明による経口薄フィルムの厚さは、好ましくは約10μm~約500μm、特に好ましくは約20μm~約300μmである。
【0057】
また、本発明は、本発明による経口薄フィルムを製造するための方法であって、下記の工程:
a)少なくとも1つのマトリックスポリマーと、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の形態の少なくとも1つの医薬活性成分とを少なくとも含有する溶液、分散体、または溶融物を製造する工程と、
b)フィルムを得るために、工程a)からの溶液、分散体、または溶融物を展延する工程と、
c)経口薄フィルムを得るために、工程b)からのフィルムを乾燥させる工程と
を含む、方法に関する。
【0058】
また、本発明による方法は、酸または塩基を添加することによって、少なくとも1つの医薬活性成分を完全にまたは部分的に中和する工程を含まないことが好ましい。
【0059】
本発明による方法は、経口薄フィルム中にさらなる緩衝系が存在しないことも特徴とすることが好ましい。
【0060】
本発明による方法は、ガスもしくはガス混合物を導入することによって、ケミカルガスを発生させることによって、または溶解ガスを膨張させることによって、工程a)からの溶液、分散体、または溶融物を発泡させることを含む、任意選択の工程a1)を含むことが好ましい。経口薄フィルムが空隙を有する固化した発泡体の形態で提供される予定の場合のみ、工程a1)が必要であることは、当業者には明らかである。
【0061】
さらに、本発明は、上記の通りのまたは上記の方法によって得ることができる、医薬としての経口薄フィルムに関する。
【0062】
本発明は、加えて、疼痛および/もしくはうつ病の治療、特に自殺のリスクを低減するためのうつ病の治療における使用のための、ならびに/または全身麻酔薬、好ましくは全身麻酔を開始し実行するための全身麻酔薬、もしくは局所麻酔の場合の補助薬、および/もしくは鎮痛薬としての使用のための、上記の通りのまたは上記の方法によって得ることができる経口薄フィルムであって、遊離塩基としてのケタミンと医薬として許容される塩としてのケタミンとの混合物、好ましくは遊離塩基としてのケタミンとケタミン塩酸塩との混合物、特に遊離塩基としての(S)-ケタミンと医薬として許容される塩としての(S)-ケタミンとの混合物、特に好ましくは遊離塩基としての(S)-ケタミンと(S)-ケタミン塩酸塩との混合物が使用される、経口薄フィルムに関する。
【0063】
本発明による多層経口薄フィルムについて上述した好ましい実施形態は、本発明による方法、この方法によって得られる多層経口薄フィルム、および医薬としてのその使用にも適用可能である。
【0064】
以下、非限定的な実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例
【0065】
ケタミンを医薬活性成分として含有する経口薄フィルムの開発において、患者の口腔内のpH値が活性成分の放出に影響を及ぼし得ることが判明した。用いられるケタミン塩酸塩は、試験された製剤(表1参照)中ではpHが5.32であるが、そのケタミン塩酸塩を部分的に中和された状態にするために、ケタミン塩酸塩をNaOHと混合した。これによりNaClが生成されるが、NaClは、組成物中で考慮に入れなければならないため、製剤を損なう。遊離塩基としてのケタミンとケタミン塩酸塩とのモル比が1:1の混合物を製剤化した場合、NaOHで等モル50%中和した場合と実質的に同じpH値を達成することができた。
【0066】
【表1】
【0067】
表1による組成物の経口薄フィルムを次のように製造した。活性成分または活性成分の混合物を提供し、マトリックスポリマーの水溶液を添加した。その後、残りの成分を入れて撹拌した。経口薄フィルムを得るために、その溶液を展延し、乾燥させた。
【0068】
(S)-ケタミン(遊離塩基)と(S)-ケタミン塩酸塩との混合物(4)は、中和された製剤(2)と実質的に同じpH値を有することに注目すべきである。
【0069】
NaOHを添加しない(S)-ケタミン(遊離塩基)と(S)-ケタミン塩酸塩とを含む製剤(4)の利点は、下記の通りである:
【0070】
中和による塩の生成はなく、それに関連する悪影響もない。
【0071】
(S)-ケタミン(遊離塩基)の分子量が低いため、用いられる活性成分の割合はより少なくなり、すなわち、その他の成分の割合を、活性成分に対して相対的に増やすことができる。
【0072】
(S)-ケタミン(遊離塩基)および対応するプロトン化化合物は、緩衝系を形成する。
【0073】
(S)-ケタミン(遊離塩基)は、HClによってさらに安定化される。
【0074】
pH値は味(酸性または塩基性(=石けんのような))に影響を及ぼすことがあるため、味が改善される可能性がある。
【0075】
(S)-ケタミン(遊離塩基)および(S)-ケタミン塩酸塩の量を変えることによって、塩基と塩との間の任意のpH値を設定することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマトリックスポリマーと、少なくとも1つの医薬活性成分とを含む経口薄フィルムであって、少なくとも1つの医薬活性成分は、酸または塩基である経口フィルムにおいて、少なくとも1つの医薬活性成分は、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の形態で存在し、遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物は、遊離酸または遊離塩基の形態の少なくとも1つの医薬活性成分と、医薬として許容される遊離酸または遊離塩基の塩の形態の少なくとも1つの医薬活性成分とを、モル比3:1~1:3で含むことを特徴とする、経口薄フィルム。
【請求項2】
少なくとも1つのマトリックスポリマーは、水溶性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の経口薄フィルム。
【請求項3】
少なくとも1つのマトリックスポリマーは、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースまたはプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン、ならびに天然ガムを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の経口薄フィルム。
【請求項4】
少なくとも1つのマトリックスポリマーは、経口薄フィルムの総重量に対して、10~90重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項5】
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物の他に、さらなる酸、塩基、塩、および/または緩衝系を含まないことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項6】
少なくとも1つの医薬活性成分は、カルボキシル基、アミノ基、スルホニル基、および/またはホスホネート基を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項7】
少なくとも1つの医薬活性成分は、活性成分クラスの鎮痛薬、ホルモン薬、睡眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、蘇生薬、精神神経薬、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、抗うつ薬、鎮咳薬、去痰薬、甲状腺ホルモン薬、性ホルモン薬、抗糖尿病薬、抗腫瘍活性成分、抗生物質、化学療法薬、および麻薬を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項8】
少なくとも1つの医薬活性成分は、ケタミンを含み、特に好ましくは(S)-ケタミンを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項9】
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物は、遊離塩基としてのケタミンとケタミン塩酸塩とを含み、好ましくは遊離塩基としての(S)-ケタミンと(S)-ケタミン塩酸塩とを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項10】
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物は、経口薄フィルムの総重量に対して、35~55重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項11】
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含む混合物は、遊離酸または遊離塩基の形態の少なくとも1つの医薬活性成分と、医薬として許容される塩の形態の少なくとも1つの医薬活性成分とを、モル比1.5:1~1:1.5で含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項12】
3.5~9.5、好ましくは4.5~8.8のpHを有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項13】
着色剤、香料、甘味剤、可塑剤、矯味剤、乳化剤、増強剤、保湿剤、防腐剤、および/または酸化防止剤を含む群から選択される少なくとも1種の補助剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の経口薄フィルム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の経口薄フィルムを製造するための方法であって、下記の工程:
a)少なくとも1つのマトリックスポリマーと、
遊離酸または遊離塩基の形態および医薬として許容される塩の形態の両方の少なくとも1つの医薬活性成分を含み、遊離酸または遊離塩基の形態の少なくとも1つの医薬活性成分と、医薬として許容される遊離酸または遊離塩基の塩の形態の少なくとも1つの医薬活性成分とを、モル比3:1~1:3で含む、混合物の形態の少なくとも1つの医薬活性成分と
を少なくとも含有する溶液、分散体、または溶融物を製造する工程と、
b)フィルムを得るために、工程a)からの溶液、分散体、または溶融物を展延する工程と、
c)経口薄フィルムを得るために、工程b)からのフィルムを乾燥させる工程と
を含む、方法。
【請求項15】
医薬としての、請求項1~13のいずれか1項に記載の経口薄フィルムまたは請求項14に記載の方法によって得ることができる多層経口薄フィルムの使用。
【国際調査報告】