(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】鼻洞病状のためのインプラント型コルチコステロイドマトリックス
(51)【国際特許分類】
A61K 31/58 20060101AFI20240315BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240315BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K31/58
A61P11/02
A61M37/00 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554322
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022019379
(87)【国際公開番号】W WO2022192283
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517437829
【氏名又は名称】ライラ・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】サービン,アンダース
(72)【発明者】
【氏名】リマー,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ローベル,アグニエシュカ
(72)【発明者】
【氏名】アベラク,ヨーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ブレイトン,リンジー
(72)【発明者】
【氏名】クアン,イナ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C267
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA59
4C086MA67
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZA34
4C267AA74
4C267EE08
4C267GG16
(57)【要約】
本発明は、重度の慢性副鼻腔炎(CRS)症状を有する(又はそのリスクを有する)患者を含む鼻洞病状を有する患者の治療に用いるための材料、デバイス、キット、及び方法に関する。より詳細には、いくつかの実施形態では、デバイスは、長期作用コルチコステロイドマトリックスである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻洞病状を治療する方法であって、a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを提供することであって、前記第一のインプラントは、患者の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成され、前記第二のインプラントは、前記患者の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されている、提供すること、b)前記第一及び第二のインプラントを、鼻洞病状の症状を有する患者の第一及び第二の中鼻道に埋め込むこと、及び、c)1又は複数の症状における低減を検出することによって、前記鼻洞病状を治療すること、を含む、方法。
【請求項2】
各インプラント中に配置された前記モメタゾンフロ酸エステルが、12週間以上の計画された埋め込み期間にわたってゼロ次放出を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1又は複数の症状における前記低減が、SNOTスコアに反映される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記鼻洞病状が、慢性の鼻洞病状である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記鼻洞病状が、12週間にわたって継続する、鼻汁、鼻閉塞若しくは鼻閉感、嗅覚減弱、及び顔面圧迫感若しくは顔面痛から成る群より選択される2つ以上の症状を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、シートとして構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、巻かれたシートとして構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記低減が、前記埋め込み期間の第24週において、SNOT-22スコアの50%の改善を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記低減が、前記埋め込み期間の第24週での無症状を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
副鼻腔手術の候補である対象において手術が必要となることを防止するための、中鼻道の内部にフィットするように構成されたインプラントであって、前記インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含むコーティングを備え、前記インプラントは、前記モメタゾンフロ酸エステルの少なくとも60%に対してゼロ次放出を呈するように構成されており、前記インプラントは、手術の前に前記対象に送達されることを特徴とする、インプラント。
【請求項15】
前記対象が、少なくとも4か月間にわたって治療される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項16】
最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項17】
前記ゼロ次放出が、37℃の2%SDSを含有するpH7.4のPBS緩衝液中、生体外で呈される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項18】
慢性の鼻洞病状を治療する方法に用いるためのものである、請求項12に記載のインプラント。
【請求項19】
前記慢性の鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、請求項16に記載のインプラント。
【請求項20】
網目状構造である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項21】
管状構造である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項22】
自己拡張型である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項23】
少なくとも13mmの直径を有する、請求項12に記載のインプラント。
【請求項24】
少なくとも10mmの長さを有する、請求項12に記載のインプラント。
【請求項25】
鼻洞病状を治療する方法であって、a)第一及び第二のインプラントを、鼻洞病状を有する患者の第一及び第二の中鼻道に埋め込むことであって、前記患者は、副鼻腔手術の候補であり、各インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを備える、埋め込むこと、及びb)1又は複数の症状における低減を検出すること、を含み、20週間後、前記患者は、もはや副鼻腔手術の候補ではなくなることによって、前記鼻洞病状が治療される、方法。
【請求項26】
前記患者が、症状のSNOTスコアに基づいて、副鼻腔手術の候補である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が、SNOTスコアに基づいて、もはや副鼻腔手術の候補ではない、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記患者が、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び鼻汁を含む3つの主症状のコンポジットスコア(3CS)に基づいて、もはや副鼻腔手術の候補ではない、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記患者が、3CS≦4である場合に、もはや副鼻腔手術の候補ではない、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
副鼻腔手術の候補である対象において手術が必要となることを防止するための組み合わせであって、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを含み、前記第一のインプラントは、前記対象の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、前記モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたってゼロ次放出を有するように構成され、及び前記第二のインプラントは、前記対象の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、前記モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたってゼロ次放出を有するように構成されており、前記組み合わせは、手術の前に前記対象に送達されることを特徴とし、前記対象は、少なくとも4か月間にわたって治療される、組み合わせ。
【請求項31】
前記対象が、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補である、請求項30に記載の組み合わせ。
【請求項32】
前記第一及び第二のインプラントが、最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、請求項30に記載の組み合わせ。
【請求項33】
前記第一及び第二のインプラントの前記各々が、第1週の後に、ゼロ次放出を呈するように構成される、請求項30に記載の組み合わせ。
【請求項34】
前記ゼロ次放出が、37℃の2%SDSを含有するpH7.4のPBS緩衝液中、生体外で呈される、請求項30に記載の組み合わせ。
【請求項35】
慢性の鼻洞病状を治療する方法に用いるためのものである、請求項30に記載の組み合わせ。
【請求項36】
前記慢性の鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、請求項35に記載の組み合わせ。
【請求項37】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、請求項30に記載の組み合わせ。
【請求項38】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、請求項30に記載の組み合わせ。
【請求項39】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、らせん状ストランドを備える、請求項15に記載の組み合わせ。
【請求項40】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、請求項15に記載の組み合わせ。
【請求項41】
鼻洞病状を治療する方法であって、
a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、
b)前記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する第一の患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、
c)前記第二のインプラントを、前記第一の患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、及び
d)前記第一の患者の鼻洞病状を、少なくとも12週間の期間にわたってモニタリングすること、を含み、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第一の患者は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた鼻洞病状を有する第二の患者と比較した場合、レスキュー治療の必要性の低減を呈する、方法。
【請求項42】
前記第一及び第二のインプラントが、最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第一の患者の前記鼻洞病状が、2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第二の患者よりも素早く改善する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記鼻洞病状が、慢性の鼻洞病状である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記インプラントが、らせん状ストランドを備える、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも16週間の期間にわたって行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも20週間の期間にわたって行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記第一及び第二のインプラントが、各々少なくとも1つのコーティングを備え、前記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
鼻洞病状を治療する方法であって、
a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、
b)前記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する第一の患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、
c)前記第二のインプラントを、前記第一の患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、及び
d)前記第一の患者の鼻洞病状を、少なくとも12週間の期間にわたってモニタリングすること、を含み、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第一の患者は、生理食塩水による洗浄治療のみが与えられモメタゾンフロ酸エステルは与えられていない鼻洞病状を有する第二の患者と比較した場合、レスキュー治療の必要性の低減を呈する、方法。
【請求項54】
前記第一及び第二のインプラントが、最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第一の患者の前記鼻洞病状が、前記第二の患者と比較した場合に改善する、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記鼻洞病状が、慢性の鼻洞病状である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
前記インプラントが、らせん状ストランドを備える、請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも16週間の期間にわたって行われる、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも20週間の期間にわたって行われる、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
前記第一及び第二のインプラントが、各々少なくとも1つのコーティングを備え、前記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する、請求項53に記載の方法。
【請求項65】
鼻洞病状を治療する方法であって、
a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、
b)前記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する第一の患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、
c)前記第二のインプラントを、前記第一の患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、及び
d)前記第一の患者の鼻洞病状を、少なくとも8週間の期間にわたってモニタリングすること、を含み、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第一の患者は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた鼻洞病状を有する第二の患者よりも素早く改善する、方法。
【請求項66】
約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第一の患者における前記改善が、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第二の患者と比較した場合、前記インプラントの埋め込み後、少なくとも8週間という早さで観察される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記第一及び第二のインプラントが、最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記鼻洞病状が、慢性の鼻洞病状である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、請求項65に記載の方法。
【請求項72】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、請求項65に記載の治療法。
【請求項73】
前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも16週間の期間にわたって行われる、請求項65に記載の方法。
【請求項74】
前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも20週間の期間にわたって行われる、請求項65に記載の方法。
【請求項75】
前記第一及び第二のインプラントが、各々少なくとも1つのコーティングを備え、前記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する、請求項65に記載の方法。
【請求項76】
前記インプラントが、らせん状ストランドを備える、請求項65に記載の方法。
【請求項77】
前記第一の患者が、鼻ポリープを有する患者である、請求項65に記載の方法。
【請求項78】
前記7500μgインプラントが、前記第一の患者のためのレスキュー治療使用を低減した、請求項65に記載の方法。
【請求項79】
前記7500μgインプラントが、前記第一の患者における第24週でのX線篩骨洞陰影を低減した、請求項65に記載の方法。
【請求項80】
e)前記第一の患者におけるモメタゾンフロ酸エステルの血漿中濃度を測定すること、をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項81】
前記患者が、用量依存的血漿中濃度を示した、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記患者が、56日間にわたって前記用量依存的血漿中濃度を示した、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含む自己拡張型インプラント型デバイス。
【請求項84】
網目状構造である、請求項83に記載のデバイス。
【請求項85】
管状構造である、請求項83に記載のデバイス。
【請求項86】
らせん状ストランドを備える、請求項83に記載のデバイス。
【請求項87】
少なくとも1つのコーティングを備え、前記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する、請求項83に記載のデバイス。
【請求項88】
中鼻道空間に追随するように構成される、請求項83に記載のデバイス。
【請求項89】
鼻洞病状を治療する方法であって、
a)モメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、
b)前記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、
c)前記第二のインプラントを、前記患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、
d)前記第一及び第二のインプラントを前記患者から除去すること、及び
e)前記インプラントを除去した後、少なくとも4週間の期間にわたって前記患者の鼻洞病状の改善を検出すること、
を含む、方法。
【請求項90】
前記患者が、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれる、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記患者が、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれる、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記患者の鼻洞病状において検出される前記改善が、鼻づまり、顔面痛、鼻汁(前側/後側)、及び/又は嗅覚消失の低減である、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記患者の病状が、インプラントを除去した後、少なくとも8週間の期間にわたって改善を継続する、請求項89に記載の方法。
【請求項94】
前記患者の病状が、インプラントを除去した後、少なくとも12週間の期間にわたって改善を継続する、請求項89に記載の方法。
【請求項95】
前記患者の病状が、インプラントを除去した後、少なくとも16週間の期間にわたって改善を継続する、請求項89に記載の方法。
【請求項96】
前記インプラントが、24週間後に除去される、請求項89に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重度の慢性副鼻腔炎(CRS)症状を有する(又はそのリスクを有する)患者を含む鼻洞病状を有する患者の治療に用いるための材料、デバイス、キット、及び方法に関する。より詳細には、いくつかの実施形態では、デバイスは、長期作用コルチコステロイドマトリックスである。
【背景技術】
【0002】
局所用ステロイドは、慢性副鼻腔炎(CRS)のための第一選択治療であるが、多くの患者において、適切な症状の制御を提供することができていない。しかし、現行の診療ガイドラインは、共通して、局所用コルチコステロイドをCRS患者のための第一選択治療として推奨している2,3。コルチコステロイドは、既知のCRSエンドタイプに伴う炎症を低減し、T2(T細胞II型)炎症の抑制に特に有効である。
【0003】
しかし、経鼻コルチコステロイド(INCS)は、副鼻腔道(sinonasal passages)内深くの炎症に到達する能力が限定的であること、速いクリアランス速度、及び低い患者コンプライアンスのうちの1又は複数に起因して、患者に対して適切な症状の制御をもたらしていない7,8。CRS患者のおよそ40~60%が、医学的管理に失敗し9、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補となっている。医学的治療の失敗を経験したこれらの患者の多くは、手術を行う選択をしておらず、なぜなら、それは、根本的なCRSの炎症に対処するものでも、医学療法の継続が必要であることを回避するものでもないからである。さらに、患者のおよそ65%は、FESS後の最初の1年以内に症状を再発している10。
【発明の概要】
【0004】
したがって、現行の医学的管理に失敗した、鼻ポリープを有する及び有しないCRS患者のために、新規な治療様式が求められている。
本発明は、重度の慢性副鼻腔炎(CRS)症状を有する(又はそのリスクを有する)患者を含む鼻洞病状を有する患者の治療に用いるための材料、デバイス、キット、及び方法に関する。1つの実施形態では、本発明は、患者又は患者集団における鼻洞病状を治療する方法を企図する。1つの実施形態では、インプラントは、例えば、手術で改変した鼻洞空間(sinus spaces)、又は手術による改変をこれまでに受けていない中鼻道などの空間において、鼻洞の開放性を改善するために用いられ得る。さらに、これらの足場は、例えば、副鼻腔手術の代わり(例:FESSの代わり)である治療プログラムの一部として、又は他の例では、いくつかの実施形態におけるFESSの術後ケアの一部として、を含む、モメタゾンフロ酸エステル(MF)などの局所用治療剤を鼻空間に送達するために用いられ得る。1つの実施形態では、インプラント型副鼻腔治療は、鼻ポリープを有する及び有しない未手術CRS患者の第一及び第二の中鼻道におけるMF溶出インプラントの単一の両側投与から、24週間(又はそれ以上)の有益性を実現する。1つの実施形態では、対象は、インプラントが除去された後であっても改善を継続し、持続的な応答を示す。重要なことには、除去は、有害な症状の即時の増加をまったく伴わなかった。
【0005】
1つの実施形態では、上記患者は、第一の試験スコアに基づいて、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)などの副鼻腔手術の候補である。1つの実施形態では、上記第一の試験スコアは、上記第一のインプラントの埋め込みの前での、22項目の鼻副鼻腔疾患評価項目(SNOT-22)における重篤度スコア20以上である。1つの実施形態では、MF溶出インプラントの両側埋め込み後、上記患者は、第二の試験スコアに基づいて、もはや機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)などの副鼻腔手術の候補ではない。1つの実施形態では、上記第二の試験スコアは、上記第一のインプラントの埋め込み後での、22項目の鼻副鼻腔疾患評価項目(SNOT-22)における重篤度スコア20未満である。1つの実施形態では、上記第一のインプラントの埋め込みの1か月後、上記患者は、上記第二の試験スコアに基づいて、もはや機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補ではない。1つの実施形態では、上記第一のインプラントの埋め込みの3か月後、上記患者は、上記第二の試験スコアに基づいて、もはや機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補ではない。1つの実施形態では、上記第一のインプラントの埋め込みの6か月後、上記患者は、上記第二の試験スコアに基づいて、もはや機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補ではない。CRSの治療において手術介入を回避することは、患者にとって好ましく、なぜなら、これらの手順は、手術に付随するリスクを伴い、術後の疼痛及び不快感を引き起こし、煩わしくコストも掛かる術後洗浄が必要となるからである。
【0006】
いくつかの実施形態では、足場又はインプラントは、対象の第一及び第二の中鼻道に、診療所環境で容易に両側配置することができる(後から取り除くことも容易にできる)。いくつかの実施形態では、薬物溶出足場又はインプラントを有する患者は、7日間で著しい症状の緩和を経験し、少なくとも12週間までの、16週間までの、3か月間までの、4か月間までの、5か月間までの、6か月間までの、及びそれを超える継続期間の持続的効果を伴う。いくつかの実施形態では、足場又はインプラントを有する患者は、モメタゾンフロ酸エステル(MF)を含むインプラント又は足場の埋め込み前はCRS手術の候補患者であったが、もはや手術を必要としない患者に変わった(すなわち、患者の症状が、患者を手術の候補と指定する基準を患者が満たさなくなるように低減される)。いくつかの実施形態では、足場は、早ければ1週間という迅速な症状改善をもたらす。いくつかの実施形態では、患者の大多数が、手術候補である状態から手術候補であるための基準をもはや満たさない状態に変わるという多大な効果が、3カ月間で観察される。
【0007】
1つの実施形態では、方法は、a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、b)上記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する第一の患者(又は第一の患者集団)の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、c)上記第二のインプラントを、上記第一の患者(又は第一の患者集団)の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、d)第一の患者(又は第一の患者集団)の鼻洞病状を、少なくとも12週間の期間にわたってモニタリングすること、を含み、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第一の患者(又は第一の患者集団)は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた鼻洞病状を有する第二の患者(又は第二の患者集団)と比較した場合、レスキュー治療の必要性の低減を呈する。モニタリングは、週1回、2週間ごとに1回、4週間ごとに1回を例として、間欠的に行われてよく、連続的である必要はない。モニタリングは、医師、看護師、技師、又は他の医療スタッフによって行われてよい。モニタリングは、対面で、例えば診療所で行われても、又はリモートで、例えば電話によって行われてもよい。モニタリングは、例えば、症状がある場合はそのレベル及び数など、患者から患者自身の状態についての主観的な報告を得るような単純なものであってよい。
【0008】
本発明は、前治療に関して患者(又は患者集団)に限定されることを意図するものではない。しかしながら、好ましい実施形態では、第一の患者は、医学的管理(例:局所用ステロイド)に失敗し、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補となった患者である。好ましい実施形態では、患者(又は患者集団)は、未手術であり、すなわち、彼らは、これまでにいかなる副鼻腔手術/鼻手術も受けたことがない。1つの実施形態では、患者は、鼻ポリープを有する又は鼻ポリープを有しない。
【0009】
本発明は、レスキュー治療の性質に限定されることを意図するものではない。1つの実施形態では、レスキュー治療は、薬物治療である。そのようなレスキュー薬物治療としては、経鼻コルチコステロイド(INCS)、経口コルチコステロイド、抗生物質、抗ヒスタミン剤、経口うっ血除去薬、及びモノクローナル抗体が挙げられ得る。
【0010】
本発明は、インプラントの薬物放出動態の性質に限定されることを意図するものではない。しかしながら、好ましい実施形態では、薬物は、埋め込みの少なくとも12週間にわたって、例えば第2週から第13週まで、実質的に直線的に放出される。より好ましい実施形態では、インプラントは、埋め込みの少なくとも12週間にわたって、例えば第2週から第13週まで、ゼロ次放出を呈する。1つの実施形態では、上記第一及び第二のインプラントは、最初の12週間の間に、上記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される。1つの実施形態では、上記モメタゾンフロ酸エステルの80%は、24週間にわたって放出される。
【0011】
約7500マイクログラムの薬物(各インプラント中)に対する応答が、レスキュー治療の低減に関してのみ発現されることを意図するものではない。1つの実施形態では、上記第一の患者(又は第一の患者集団)の鼻洞病状は、2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第二の患者(又は第二の患者集団)よりも素早く改善する。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、LYR-210(7500μg)の場合に、LYR-210(2500μg)及び生理食塩水の両方と比較して、全体としてより少ない回数の頭痛を経験する。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、LYR-210(7500μg)の場合に、LYR-210(2500μg)と比較して、より少ない治療関連有害事象を有する。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、LYR-210(7500μg)の場合に、LYR-210(2500μg)及び経鼻生理食塩水の両方と比較して、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び/又は鼻汁において症状の改善を呈する。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、LYR-210(7500μg)の場合に、LYR-210(2500μg)及び生理食塩水治療のみによるコントロールの両方と比較して、嗅覚消失において症状の改善を呈する。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、LYR-210(7500μg)の場合に、LYR-210(2500μg)と比較して、SNOT-22スコアによって測定される症状の改善を呈する。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、ポリープを有する患者において、LYR-210(2500μg)と比較して、LYR-210(7500μg)のより大きい早期のSNOT-22の改善を示す。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、LYR-210(2500μg)及び生理食塩水治療のみによるコントロールの両方と比較して、LYR-210(7500μg)による篩骨洞炎症のより大きい低減を示す。
【0012】
1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、慢性の鼻洞病状である。1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする。1つの実施形態では、CRSは、鼻汁(鼻漏又は後鼻漏)、鼻閉塞又は鼻閉感、嗅覚減弱、及び顔面圧迫感又は顔面痛の症状(少なくとも12週間継続)のうちの2つ以上を特徴とする。
【0013】
本発明は、インプラントに対する特定の構造に限定されることを意図するものではない。しかしながら、好ましい実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、網目状構造(braided structure)である。好ましい実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、管状構造である。好ましい実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、自己拡張型である。別の実施形態では、上記インプラントは、らせん状のストランドを備える。例示的なインプラントを
図9Cに示す。別の実施形態では、インプラントは、シートである。透過性又は半透過性シートが、拡げられた状態又は巻かれた状態で埋め込まれ得る。巻かれた実施形態では、巻かれたシートは、内部空洞を備える。この例示的な実施形態では、薬物送達デバイスは、オスモゲン(osmogen)の非存在下又は存在下、薬物又は有効活性成分(API)で充填された半透過性ポリマー中空シートを備える。例を
図11~
図12に示す。
【0014】
モニタリングは、12週間のみに限定されることを意図するものではない。別の実施形態では、第一の患者の鼻洞病状の上記モニタリングは、少なくとも16週間の期間にわたって行われる。なお別の実施形態では、第一の患者の鼻洞病状の上記モニタリングは、少なくとも20週間の期間にわたって行われる。なお別の実施形態では、上記モニタリングは、24週間以上の期間にわたって行われる。モニタリングは、週1回、2週間ごとに1回、4週間ごとに1回を例として、間欠的に行われてよく、連続的である必要はない。モニタリングは、医師、看護師、技師、又は他の医療スタッフによって行われてよい。モニタリングは、対面で、例えば診療所で行われても、又はリモートで、例えば電話によって行われてもよい。モニタリングは、例えば、症状がある場合はそのレベル及び数など、患者から患者自身の状態についての主観的な報告を得るような単純なものであってよい。
【0015】
本発明は、インプラントに薬物を充填する方法に限定されることを意図するものではない。しかし、好ましい実施形態では、上記第一及び第二のインプラントは、各々、少なくとも1つのコーティングを備え、上記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有し、これは、7000マイクログラム~8000マイクログラム、より典型的には7500マイクログラム±10%を意味する。好ましい実施形態では、上記コーティングは、ポリマーコーティングである。さらなる実施形態では、薬物含有コーティングは、薬物を含まない別のポリマーコーティング又は「トップコート」で(少なくとも部分的に)上塗りされる。1つの実施形態では、トップコートの厚さが、薬物放出の量及び/又はタイミングを制御する。
【0016】
1つの実施形態では、本発明は、鼻洞病状を治療する方法を企図し、それは、a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、b)上記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する第一の患者(又は第一の患者集団)の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、c)上記第二のインプラントを、上記第一の患者(又は第一の患者集団)の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、d)第一の患者(又は第一の患者集団)の鼻洞病状を、少なくとも12週間の期間にわたってモニタリングすること、を含み、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第一の患者(又は第一の患者集団)は、生理食塩水による洗浄治療のみが与えられ、モメタゾンフロ酸エステルは与えられていない鼻洞病状を有する第二の患者(又は第二の患者集団)と比較した場合、レスキュー治療の必要性の低減を呈する。モニタリングは、週1回、2週間ごとに1回、4週間ごとに1回を例として、間欠的に行われてよく、連続的である必要はない。モニタリングは、医師、看護師、技師、又は他の医療スタッフによって行われてよい。モニタリングは、対面で、例えば診療所で行われても、又はリモートで、例えば電話によって行われてもよい。モニタリングは、例えば、症状がある場合はそのレベル及び数など、患者から患者自身の状態についての主観的な報告を得るような単純なものであってよい。
【0017】
本発明は、前治療に関して患者(又は患者集団)に限定されることを意図するものではない。しかしながら、好ましい実施形態では、第一の患者は、医学的管理(例:局所用ステロイド)に失敗し、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補となった患者である。好ましい実施形態では、患者(又は患者集団)は、未手術であり、すなわち、彼らは、これまでにいかなる副鼻腔手術/鼻手術も受けたことがない。1つの実施形態では、患者は、鼻ポリープを有する又は鼻ポリープを有しない。1つの実施形態では、CRSは、鼻汁(鼻漏又は後鼻漏)、鼻閉塞又は鼻閉感、嗅覚減弱、及び顔面圧迫感又は顔面痛の症状(少なくとも12週間継続)のうちの2つ以上を特徴とする。
【0018】
本発明は、レスキュー治療の性質に限定されることを意図するものではない。1つの実施形態では、レスキュー治療は、薬物治療である。そのようなレスキュー薬物治療としては、経鼻コルチコステロイド(INCS)、経口コルチコステロイド、抗生物質、抗ヒスタミン剤、経口うっ血除去薬、及びモノクローナル抗体が挙げられ得る。
【0019】
本発明は、インプラントの薬物放出動態の性質に限定されることを意図するものではない。しかしながら、好ましい実施形態では、薬物は、埋め込みの少なくとも12週間にわたって、例えば第2週から第13週まで、実質的に直線的に放出される。より好ましい実施形態では、インプラントは、埋め込みの少なくとも12週間にわたって、例えば第2週から第13週まで、ゼロ次放出を呈する。1つの実施形態では、上記第一及び第二のインプラントは、最初の12週間の間に、上記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される。
【0020】
1つの実施形態では、上記第一の患者(又は第一の患者集団)の鼻洞病状は、上記第二の患者と比較して改善する。本発明は、この改善がどのように発現されるかに限定されることを意図するものではない。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、LYR-210(7500μg)の場合に、生理食塩水のみを受けた患者と比較して、全体としてより少ない回数の頭痛を経験する。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、LYR-210(7500μg)の場合に、生理食塩水のみを受けた患者と比較して、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び/又は鼻汁において症状の改善を呈する。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、LYR-210(7500μg)の場合に、生理食塩水治療のみによるコントロールと比較して、嗅覚消失において症状の改善を呈する。1つの実施形態では、第一の患者(又は第一の患者集団)は、生理食塩水治療のみによるコントロールと比較して、LYR-210(7500μg)による篩骨洞炎症のより大きい低減を示す。
【0021】
1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、慢性の鼻洞病状である。1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする。1つの実施形態では、CRSは、鼻汁(鼻漏又は後鼻漏)、鼻閉塞又は鼻閉感、嗅覚減弱、及び顔面圧迫感又は顔面痛の症状(少なくとも12週間継続)のうちの2つ以上を特徴とする。
【0022】
本発明は、インプラントに対する特定の構造に限定されることを意図するものではない。しかしながら、好ましい実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、網目状構造である。好ましい実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、管状構造である。好ましい実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、自己拡張型である。別の実施形態では、上記インプラントは、らせん状のストランドを備える。例示的なインプラントを
図9Cに示す。別の実施形態では、インプラントは、シートである。透過性又は半透過性シートが、拡げられた状態又は巻かれた状態で埋め込まれ得る。巻かれた実施形態では、巻かれたシートは、内部空洞を備える。この例示的な実施形態では、薬物送達デバイスは、オスモゲンの非存在下又は存在下、薬物又は有効活性成分(API)で充填された半透過性ポリマー中空シートを備える。
【0023】
モニタリングは、12週間のみに限定されることを意図するものではない。別の実施形態では、第一の患者の鼻洞病状の上記モニタリングは、少なくとも16週間の期間にわたって行われる。なお別の実施形態では、第一の患者の鼻洞病状の上記モニタリングは、少なくとも20週間の期間にわたって行われる。なお別の実施形態では、上記モニタリングは、24週間以上の期間にわたって行われる。モニタリングは、週1回、2週間ごとに1回、4週間ごとに1回を例として、間欠的に行われてよく、連続的である必要はない。モニタリングは、医師、看護師、技師、又は他の医療スタッフによって行われてよい。モニタリングは、対面で、例えば診療所で行われても、又はリモートで、例えば電話によって行われてもよい。モニタリングは、例えば、症状がある場合はそのレベル及び数など、患者から患者自身の状態についての主観的な報告を得るような単純なものであってよい。
【0024】
本発明は、インプラントに薬物を充填する方法に限定されることを意図するものではない。しかし、好ましい実施形態では、上記第一及び第二のインプラントは、各々、少なくとも1つのコーティングを備え、上記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステル(MF)を含有し、これは、7000マイクログラム~8000マイクログラム、より典型的には7500マイクログラム±10%を意味する。好ましい実施形態では、上記コーティングは、ポリマーコーティングである。さらなる実施形態では、薬物含有コーティングは、薬物を含まない別のポリマーコーティング又は「トップコート」で(少なくとも部分的に)上塗りされる。1つの実施形態では、トップコートの厚さが、薬物放出の量及び/又はタイミングを制御する。MFの副鼻腔粘膜への持続的送達は、インプラントの単一投与からの持続的な症状低減と共に実現される(薬物を繰り返し再投与するのではなく)。好ましい実施形態では、インプラントは、医学的管理に失敗した患者を含む、鼻ポリープあり又はなしの未手術の成人患者におけるCRSの治療のために送達される。
【0025】
1つの実施形態では、本発明は、鼻洞病状を治療する方法を企図し、それは、a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、b)上記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する第一の患者(又は第一の患者集団)の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、c)上記第二のインプラントを、上記第一の患者(又は第一の患者集団)の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、d)第一の患者(又は第一の患者集団)の鼻洞病状を、少なくとも8週間の期間にわたってモニタリングすること、を含み、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第一の患者(又は第一の患者集団)は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた鼻洞病状を有する第二の患者(又は第二の患者集団)よりも素早く改善する。モニタリングは、週1回、2週間ごとに1回、4週間ごとに1回を例として、間欠的に行われてよく、連続的である必要はない。モニタリングは、医師、看護師、技師、又は他の医療スタッフによって行われてよい。モニタリングは、対面で、例えば診療所で行われても、又はリモートで、例えば電話によって行われてもよい。モニタリングは、例えば、症状がある場合はそのレベル及び数など、患者から患者自身の状態についての主観的な報告を得るような単純なものであってよい。
【0026】
本発明は、この改善がいつ検出されるかに限定されることを意図するものではない。しかし、1つの実施形態では、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第一の患者(又は第一の患者集団)における上記改善は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第二の患者(又は第二の患者集団)と比較した場合、上記インプラントの埋め込み後、少なくとも8週間という早さで(又は10、12、14、又は16週間という早さで)観察される。さらに、1つの実施形態では、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第一の患者(又は第一の患者集団)における上記改善は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第二の患者(又は第二の患者集団)と比較した場合、上記インプラントの埋め込み後、4週間という早さで、しかしより典型的には8週間又はそれ以降に観察される。24週間の治療期間の間、LYR-210(7500μg)治療群では、慢性副鼻腔炎の急性増悪の発生が減少した。
【0027】
本発明は、インプラントに対する特定の構造に限定されることを意図するものではない。しかしながら、好ましい実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、網目状構造である。好ましい実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、管状構造である。好ましい実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、自己拡張型である。別の実施形態では、上記インプラントは、らせん状のストランドを備える。別の実施形態では、上記インプラントは、シートを備える。さらなる実施形態では、上記インプラントは、折り畳まれたシートを備える。例示的なインプラントを
図9Cに示す。別の実施形態では、インプラントは、シートである。透過性又は半透過性シートが、拡げられた状態又は巻かれた状態で埋め込まれ得る。巻かれた実施形態では、巻かれたシートは、内部空洞を備える。この例示的な実施形態では、薬物送達デバイスは、オスモゲンの非存在下又は存在下、薬物又は有効活性成分(API)で充填された半透過性ポリマー中空シートを備える。
【0028】
モニタリングは、8週間のみに限定されることを意図するものではない。別の実施形態では、第一の患者の鼻洞病状の上記モニタリングは、少なくとも12週間の期間にわたって行われる。なお別の実施形態では、第一の患者の鼻洞病状の上記モニタリングは、少なくとも16週間の期間にわたって行われる。なお別の実施形態では、上記モニタリングは、20週間以上の期間にわたって行われる。モニタリングは、週1回、2週間ごとに1回、4週間ごとに1回を例として、間欠的に行われてよく、連続的である必要はない。モニタリングは、医師、看護師、技師、又は他の医療スタッフによって行われてよい。モニタリングは、対面で、例えば診療所で行われても、又はリモートで、例えば電話によって行われてもよい。
【0029】
本発明は、インプラントに薬物を充填する方法に限定されることを意図するものではない。しかし、好ましい実施形態では、上記第一及び第二のインプラントは、各々、少なくとも1つのコーティングを備え、上記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有し、これは、7000マイクログラム~8000マイクログラム、より典型的には7500マイクログラム±10%を意味する。好ましい実施形態では、上記コーティングは、ポリマーコーティングである。さらなる実施形態では、薬物含有コーティングは、薬物を含まない別のポリマーコーティング又は「トップコート」で(少なくとも部分的に)上塗りされる。1つの実施形態では、トップコートの厚さが、薬物放出の量及び/又はタイミングを制御する。1つの実施形態では、上記第一及び第二のインプラントは、最初の12週間の間に、上記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される。
【0030】
1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、慢性の鼻洞病状である。1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする。1つの実施形態では、CRSは、鼻汁(鼻漏又は後鼻漏)、鼻閉塞又は鼻閉感、嗅覚減弱、及び顔面圧迫感又は顔面痛の症状(少なくとも12週間継続)のうちの2つ以上を特徴とする。
【0031】
1つの実施形態では、本発明は、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含む自己拡張型のインプラント型デバイスを企図する。本発明は、自己拡張の量に限定されることを意図するものではない。しかしながら、1つの実施形態では、本開示のデバイスは、好ましくは、捲縮させた(crimped)後(例:送達を促進するためにより小さい形状に捲縮させた後)、その製造されたままの構成の70~100%まで拡張する。
【0032】
本発明は、デバイスに対する特定の構造に限定されることを意図するものではない。しかしながら、好ましい実施形態では、上記デバイスは、網目状構造である。好ましい実施形態では、上記デバイスは、管状構造である。好ましい実施形態では、上記デバイスは、らせん状のストランドを備える。好ましい実施形態では、上記デバイスは、中鼻道空間に追随するように構成される。ある特定の実施形態では、デバイスは、鼻の形(nasal features)を開いた状態に維持することができるように、比較的高いRRFを有するが、中鼻道の壁部に対して損傷を起こす可能性のある力が加わることを回避するように、比較的低いCOFを有するように構成される。例示的なデバイスを
図9Cに示す。1つの実施形態では、デバイスは、送達デバイスを含むキットの一部である。
【0033】
本発明は、デバイスに薬物を充填する方法に限定されることを意図するものではない。しかし、好ましい実施形態では、上記デバイスは、少なくとも1つのコーティングを備え、上記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有し、これは、7000マイクログラム~8000マイクログラム、より典型的には7500マイクログラム±10%を意味する。好ましい実施形態では、上記コーティングは、ポリマーコーティングである。さらなる実施形態では、薬物含有コーティングは、薬物を含まない別のポリマーコーティング又は「トップコート」で(少なくとも部分的に)上塗りされる。1つの実施形態では、トップコートの厚さが、薬物放出の量及び/又はタイミングを制御する。
【0034】
本発明は、インプラントの薬物放出動態の性質に限定されることを意図するものではない。しかしながら、好ましい実施形態では、薬物は、埋め込みの少なくとも12週間にわたって、例えば第2週から第13週まで、実質的に直線的に放出される。より好ましい実施形態では、インプラントは、埋め込みの少なくとも12週間にわたって、例えば第2週から第13週まで、ゼロ次放出を呈する。1つの実施形態では、上記デバイスは、最初の12週間の間に、上記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される。
【0035】
1つの実施形態では、本発明は、中鼻道空間の形状に追随する足場を企図し、a)第一のポリマー材料を含む複数のポリマーストランドを備えた足場、b)架橋エラストマーを含む、足場の上にあるコーティング、及びc)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含む層、を備える。1つの実施形態では、デバイスはさらに、d)モメタゾンフロ酸エステルを含む上記層の上にあるトップコートを備え、上記トップコートの厚さは、上記モメタゾンフロ酸エステルが、中鼻道の中に足場を配置した後6週間超にわたって実質的に直線的に放出されることになるように構成される。1つの実施形態では、上記トップコートは、薬物を含有していない。1つの実施形態では、実質的に直線的な放出は、第1週の後である。1つの実施形態では、ポリマー材料は、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)を含む。1つの実施形態では、エラストマー材料は、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)を含む。1つの実施形態では、エラストマー材料は、ラクチドのモルパーセントが30~50%の範囲内であり、カプロラクトンのモルパーセントが50~70%の範囲内であるポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)を含む。1つの実施形態では、本発明は、上記足場をヒトの中鼻道空間に送達することを企図する。1つの実施形態では、ヒトは、鼻洞病状を有する。1つの実施形態では、鼻洞病状は、慢性である。1つの実施形態では、本発明は、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二の足場の、ヒトの第一及び第二の中鼻道への両側送達を企図する。1つの実施形態では、ヒトは、鼻洞病状を有する。1つの実施形態では、鼻洞病状は、慢性である。
【0036】
1つの実施形態では、本発明は、鼻洞病状を治療する方法において使用するための併用療法を企図し、それは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを含み、第一のインプラントは、患者の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたって第一の鼻腔中に放出されるように構成され、及び第二のインプラントは、上記患者の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたって第二の鼻腔中に放出されるように構成される。
【0037】
1つの実施形態では、本発明は、中鼻道の内部にフィットするように構成されたインプラントを企図し、上記インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含むコーティングを備え、上記インプラントは、上記モメタゾンフロ酸エステルの少なくとも60%に対してゼロ次放出を呈するように構成される。1つの実施形態では、上記インプラントは、1~12週間にわたってゼロ次放出を呈するように構成される。1つの実施形態では、上記インプラントは、埋め込み後、20~55日にわたってゼロ次放出を呈するように構成される。1つの実施形態では、本発明は、上記インプラントをヒトの中鼻道空間に送達することを企図する。1つの実施形態では、ヒトは、鼻洞病状を有する。1つの実施形態では、鼻洞病状は、慢性である。1つの実施形態では、本発明は、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントの、ヒトの第一及び第二の中鼻道への両側送達を企図する。1つの実施形態では、ヒトは、鼻洞病状を有する。1つの実施形態では、鼻洞病状は、慢性である。
【0038】
1つの実施形態では、本発明は、中鼻道の内部にフィットするように構成されたインプラントを企図し、上記インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含むコーティングを備え、上記インプラントは、100ピコグラム/ml未満であるおよそ一定のモメタゾンフロ酸エステル血漿中濃度が得られるように構成される。1つの実施形態では、およそ一定のモメタゾンフロ酸エステル血漿中濃度は、第1週後で60ピコグラム/ml以下であり、典型的には、第1週後で約50ピコグラム/ml以下である(
図10に示されるように)。1つの実施形態では、本発明は、上記インプラントをヒトの中鼻道空間に送達することを企図する。1つの実施形態では、ヒトは、鼻洞病状を有する。1つの実施形態では、鼻洞病状は、慢性である。1つの実施形態では、本発明は、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二の足場の、ヒトの第一及び第二の中鼻道への両側送達を企図する。1つの実施形態では、ヒトは、鼻洞病状を有する。1つの実施形態では、鼻洞病状は、慢性である。
【0039】
本発明は、1つの実施形態において、患者が、インプラントを除去した後であってもある期間にわたって(例:除去後2~4週間、4~8週間、さらには16週間)、自身の鼻洞病状に関して改善を継続することを企図する。したがって、1つの実施形態では、本発明は、鼻洞病状を治療する方法を企図し、それは、a)モメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、b)上記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、c)上記第二のインプラントを、上記患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、d)上記第一及び第二のインプラントを上記患者から除去すること、及びe)上記インプラントを除去した後、少なくとも4週間の期間にわたって上記患者の鼻洞病状における改善を検出すること、を含む。1つの実施形態では、患者は、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれる。1つの実施形態では、患者は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれる。1つの実施形態では、上記患者の鼻洞病状において検出される上記改善は、鼻づまり、顔面痛、鼻汁(前側/後側)、及び/又は嗅覚消失の低減である。改善は、これらの症状の1つ又はすべてに関するものであり得る。1つの実施形態では、上記患者の病状は、インプラントを除去した後、少なくとも8週間の期間にわたって改善を継続する。1つの実施形態では、上記患者の病状は、インプラントを除去した後、少なくとも12週間の期間にわたって改善を継続する。1つの実施形態では、上記患者の病状は、インプラントを除去した後、少なくとも16週間の期間にわたって改善を継続する。本発明は、インプラントを除去するいかなる厳密な時点にも限定されることを意図するものではない。しかし、好ましい実施形態では、上記インプラントは、12週間、16週間、20週間、24週間又はそれ以上の後に除去される。
【0040】
本発明は、1つの実施形態において、患者の症状が、インプラントを除去した後、ある期間にわたって(例:除去後2~4週間、4~8週間、さらには16週間)、治療の最終週のレベル(例:SNOTスコアに基づいて)で維持されることを企図する。この持続的な応答は、この手法が、インプラントを除去した後であっても有益性を有することを示す。したがって、1つの実施形態では、本発明は、鼻洞病状を治療する方法を企図し、それは、a)モメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、b)上記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、c)上記第二のインプラントを、上記患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、d)上記第一及び第二のインプラントを上記患者から除去すること、及びe)上記インプラントを除去した後、上記患者の症状を測定すること、を含み、上記症状は、除去後少なくとも4週間の期間にわたって同じレベル(例:SNOTスコアに基づいて)を維持する。1つの実施形態では、患者は、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれる。1つの実施形態では、患者は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれる。1つの実施形態では、測定される上記症状は、鼻づまり、顔面痛、鼻汁(前側/後側)、及び/又は嗅覚消失を含む。維持されるレベルは、これらの症状の1つ又はすべてに関するものであり得る。1つの実施形態では、上記患者の症状レベルは、インプラントを除去した後、少なくとも8週間の期間にわたって維持される。1つの実施形態では、上記患者の症状レベルは、インプラントを除去した後、少なくとも12週間の期間にわたって維持される。1つの実施形態では、上記患者の症状レベルは、インプラントを除去した後、少なくとも16週間の期間にわたって維持される。
【0041】
1つの実施形態では、本発明は、副鼻腔手術の候補である対象において手術が必要となることを防止するための、中鼻道の内部にフィットするように構成されたインプラントを企図し、上記インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含むコーティングを備え、上記インプラントは、上記モメタゾンフロ酸エステルの少なくとも60%に対してゼロ次放出を呈するように構成されており、インプラントは、手術の前に対象に送達されることを特徴とする。1つの実施形態では、インプラントは、治療を少なくとも4か月間にわたって行うように構成される。1つの実施形態では、上記副鼻腔手術は、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)である。1つの実施形態では、上記インプラントは、最初の12週間の間に、上記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される。1つの実施形態では、上記インプラントは、1~12週間にわたってゼロ次放出を呈するように構成される。1つの実施形態では、上記ゼロ次放出は、37℃の2%SDSを含有するpH7.4のPBS緩衝液中、生体外で呈される。1つの実施形態では、上記インプラントは、鼻洞の開放性を改善するための方法に用いるためのものである。1つの実施形態では、上記インプラントは、慢性の鼻洞病状を治療する方法に用いるためのものである。1つの実施形態では、上記慢性の鼻洞病状は、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする。1つの実施形態では、上記インプラントは、網目状構造である。1つの実施形態では、上記インプラントは、管状構造である。1つの実施形態では、上記インプラントは、らせん状のストランドを備える。1つの実施形態では、上記インプラントは、自己拡張型である。1つの実施形態では、上記インプラントは、少なくとも13mmの直径を有する。1つの実施形態では、上記インプラントは、少なくとも10mmの長さを有する。1つの実施形態では、対象の、22項目の鼻副鼻腔疾患評価項目(SNOT-22)における重篤度スコアは、20以上である。
【0042】
なお別の実施形態では、本発明は、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補である対象において手術が必要となることを防止するための、中鼻道の内部にフィットするように構成されたインプラントを企図し、上記インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含むコーティングを備え、上記インプラントは、上記モメタゾンフロ酸エステルの少なくとも60%に対してゼロ次放出を呈するように構成されており、インプラントは、手術の前に対象に送達されることを特徴とし、対象は、少なくとも4か月間にわたって治療される。1つの実施形態では、上記インプラントは、最初の12週間の間に、上記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される。1つの実施形態では、上記インプラントは、1~12週間にわたってゼロ次放出を呈するように構成される。1つの実施形態では、上記ゼロ次放出は、37℃の2%SDSを含有するpH7.4のPBS緩衝液中、生体外で呈される。1つの実施形態では、上記インプラントは、鼻洞の開放性を改善するための方法に用いるためのものである。1つの実施形態では、上記インプラントは、慢性の鼻洞病状を治療する方法に用いるためのものである。1つの実施形態では、上記慢性の鼻洞病状は、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする。1つの実施形態では、上記インプラントは、網目状構造である。1つの実施形態では、上記インプラントは、管状構造である。1つの実施形態では、上記インプラントは、らせん状のストランドを備える。1つの実施形態では、上記インプラントは、自己拡張型である。1つの実施形態では、上記インプラントは、少なくとも13mmの直径を有する。1つの実施形態では、上記インプラントは、少なくとも10mmの長さを有する。1つの実施形態では、対象の、22項目の鼻副鼻腔疾患評価項目(SNOT-22)における重篤度スコアは、20以上である。
【0043】
1つの実施形態では、本発明は、鼻洞病状を治療する方法を企図し、それは、a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを提供することであって、第一のインプラントは、患者の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成され、第二のインプラントは、上記患者の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されている、提供すること、b)上記第一及び第二のインプラントを、鼻洞病状の症状を有する患者の第一及び第二の中鼻道に埋め込むこと、並びにc)1又は複数の症状における低減を検出することによって、上記鼻洞病状を治療すること、を含む。1つの実施形態では、各インプラント中に配置されたモメタゾンフロ酸エステルは、12週間以上の計画された埋め込み期間にわたってゼロ次放出を呈する。1つの実施形態では、1又は複数の症状における上記低減は、SNOTスコアに反映される。1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、慢性の鼻洞病状である。1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする。1つの実施形態では、インプラントは、薬物含有コーティングを少なくとも部分的に覆う追加のコーティングを備える。1つの実施形態では、この追加のコーティングは、薬物を含まない。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、網目状構造である。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、管状構造である。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、自己拡張型である。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、シートとして構成される。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、巻かれたシートとして構成される。1つの実施形態では、上記低減は、埋め込み期間の第24週において、SNOT-22スコアの50%の改善(ベースラインからの、すなわち、埋め込み前又は埋め込み期間の最初に測定した数値からの)を含む。1つの実施形態では、上記低減は、埋め込み期間の第24週での無症状(又は軽度の症状のみ)を含む。
【0044】
なお別の実施形態では、本発明は、睡眠障害を低減する方法を企図し、それは、a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを提供することであって、第一のインプラントは、患者の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成され、第二のインプラントは、上記患者の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されている、提供すること、b)上記第一及び第二のインプラントを、睡眠障害の症状を有する患者の第一及び第二の中鼻道に埋め込むこと、並びにc)1又は複数の症状における低減を検出することによって、上記睡眠障害を治療すること、を含む。1つの実施形態では、睡眠障害の症状としては、入眠困難、夜間覚醒、良好な夜間の睡眠の不足、起床時倦怠感、及び疲労が挙げられる。1つの実施形態では、1又は複数の症状における上記低減は、SNOTスコアに反映される。1つの実施形態では、睡眠障害を有する上記対象は、鼻洞病状を有する。1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、慢性の鼻洞病状である。1つの実施形態では、上記鼻洞病状は、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする。1つの実施形態では、インプラントは、薬物含有コーティングを少なくとも部分的に覆う追加のコーティングを備える。1つの実施形態では、この追加のコーティングは、薬物を含まない。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、網目状構造である。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、管状構造である。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、自己拡張型である。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、シートとして構成される。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、巻かれたシートとして構成される。1つの実施形態では、上記低減は、埋め込み期間の第24週において、SNOT-22スコアの50%の改善(ベースラインからの、すなわち、埋め込み前又は埋め込み期間の最初に測定した数値からの)を含む。
【0045】
1つの実施形態では、本発明は、鼻洞病状を治療する方法を企図し、それは、a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを提供することであって、第一のインプラントは、患者の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、モメタゾンフロ酸エステルは、12週間以上の計画された埋め込み期間にわたってゼロ次放出を有するように構成され、第二のインプラントは、上記患者の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、モメタゾンフロ酸エステルは、12週間以上の計画された埋め込み期間にわたってゼロ次放出を有するように構成されている、提供すること、b)上記第一及び第二のインプラントを、鼻洞病状の症状を有する患者の第一及び第二の中鼻道に埋め込むこと、並びにc)1又は複数の症状における低減を検出及び/又は測定することによって、上記鼻洞病状を治療すること、を含む。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、鼻洞病状を治療する方法を企図し、それは、a)第一及び第二のインプラントを、鼻洞病状を有する患者の第一及び第二の中鼻道に埋め込むことであって、上記患者は、副鼻腔手術の候補であり、各インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを備える、埋め込むこと、及びb)1又は複数の症状における低減を検出及び/又は測定すること、を含み、20~24週間後(より好ましくは、僅かに8週間後、10週間後、12週間後、又は16週間後)、上記患者は、もはや副鼻腔手術の候補ではなくなることによって、上記鼻洞病状が治療される。1つの実施形態では、上記患者は、症状のSNOTスコアに基づいて、副鼻腔手術の候補である。1つの実施形態では、上記患者は(工程bの後)、SNOTスコアに基づいて、もはや副鼻腔手術の候補ではない。1つの実施形態では、患者は、鼻づまり、鼻汁、顔面痛/顔面圧迫感、及び嗅覚消失を含む4つの主症状のコンポジットスコア(4 cardinal symptom composite score、4CS)に基づいて、もはや副鼻腔手術の候補ではない。1つの実施形態では、上記患者は、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び鼻汁を含む3つの主症状のコンポジットスコア(3CS)に基づいて、もはや副鼻腔手術の候補ではない。1つの実施形態では、上記患者は、3CS≦4である場合、もはや副鼻腔手術の候補ではない。
【0047】
1つの実施形態では、本発明は、副鼻腔手術[機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)など]の候補である対象において手術が必要となることを防止するための組み合わせを企図し、それは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを含み、第一のインプラントは、対象の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたってゼロ次放出を有するように構成され、及び第二のインプラントは、上記対象の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたってゼロ次放出を有するように構成されており、組み合わせは、手術の前に対象に送達されることを特徴とし、対象は、少なくとも4か月間にわたって治療される。1つの実施形態では、上記第一及び第二のインプラントは、最初の12週間の間に、上記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される。1つの実施形態では、上記第一及び第二のインプラントの上記各々は、1~12週間にわたってゼロ次放出を呈するように構成される。1つの実施形態では、上記ゼロ次放出は、37℃の2%SDSを含有するpH7.4のPBS緩衝液中、生体外で呈される。1つの実施形態では、上記組み合わせは、慢性の鼻洞病状を治療する方法に用いるためのものである。1つの実施形態では、上記慢性の鼻洞病状は、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする。
【0048】
1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、網目状構造である。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、管状構造である。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、らせん状のストランドを備える。1つの実施形態では、上記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方は、自己拡張型である。
【0049】
本特許のファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面付きの本特許の複写は、請求し、必要な費用を支払うことによって、米国特許商標庁から入手される。
【0050】
例示的な実施形態を、参照図面で例証する。本明細書で開示される実施形態及び図面は、限定的ではなく例示的なものとして見なされるべきであることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、LANTERN第II相試験デザインの概略;2500μg~7500μgの範囲のLYR-210インプラントを含む。
【
図2】
図2は、LANTERN第II相試験の患者内訳(CONSORT)図。ITT=治療の意図。
【
図3】
図3A~3Cは、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び鼻汁における患者の症状改善。鼻づまり(
図3A)、顔面痛/顔面圧迫感(
図3B)、及び鼻汁(前側/後側)(
図3C)における、7日間平均スコアでのベースラインからの平均変化(CFBL)。データはLSMを表す。P<0.05は、コントロールに対して統計的に有意であると見なされる。
【
図4】
図4A~4Cは、中度から重度のベースライン疾患を有する患者における嗅覚消失の患者の症状改善。中度から重度のベースライン嗅覚脱失を有する患者(嗅覚消失のベースラインスコア≧2)における嗅覚消失の7日間平均スコアでのベースラインからの平均変化(CFBL)。
図4A 4CSスコアにおけるCFBL。
図4B 3CSスコアにおけるCFBL。
図4C 嗅覚消失におけるCFBL。LYR-210(7500μg)(n=15人の患者)、LYR-210(2500μg)(n=20人の患者)、コントロール(n=20人の患者)。データはLSMを表す。P<0.05は、コントロールに対して統計的に有意であると見なされる。
【
図5-1】
図5A~5Bは、4つの主症状(4CS)(
図5A上部)及び3つの主症状(3CS)(
図5B)のコンポジットスコアによって測定した患者の症状改善。鼻づまり、顔面痛、鼻汁(前側/後側)、及び嗅覚消失を含む4CSの7日間平均スコアでのベースラインからの平均変化(CFBL)。3CSは、鼻づまり、顔面痛、及び鼻汁(前側/後側)を含む。データはLSMを表す。P<0.05は、コントロールに対して統計的に有意であると見なされる。
図5A下部。平均の傾向は、LYR-210の除去後に治療効果が継続していることを示す。治療後期間全体にわたって、毎日の生理食塩水による鼻洗浄に対しておよそ73%の平均コンプライアンス。
*治療後分析から除外:治療後フォローアップの80%を完了する前にレスキュー治療を受けた患者、及び治療後期間にデータが欠落している患者。
【
図5-2】
図5A~5Bは、4つの主症状(4CS)(
図5A上部)及び3つの主症状(3CS)(
図5B)のコンポジットスコアによって測定した患者の症状改善。鼻づまり、顔面痛、鼻汁(前側/後側)、及び嗅覚消失を含む4CSの7日間平均スコアでのベースラインからの平均変化(CFBL)。3CSは、鼻づまり、顔面痛、及び鼻汁(前側/後側)を含む。データはLSMを表す。P<0.05は、コントロールに対して統計的に有意であると見なされる。
図5A下部。平均の傾向は、LYR-210の除去後に治療効果が継続していることを示す。治療後期間全体にわたって、毎日の生理食塩水による鼻洗浄に対しておよそ73%の平均コンプライアンス。
*治療後分析から除外:治療後フォローアップの80%を完了する前にレスキュー治療を受けた患者、及び治療後期間にデータが欠落している患者。
【
図6-1】
図6A~6C SNOT-22によって測定した患者の症状改善。(
図6A)SNOT-22合計スコアでのベースラインからの平均変化(CFBL)。データはLSMを表す。P<0.05は、コントロールに対して統計的に有意であると見なされる。
図6B 両側LYR-210(2500μg)、両側LYR-210(7500μg)、又はコントロールを投与して、第24週でのSNOT-22合計スコアで臨床的に意義のある最小変化量(MCID)を実現した患者のパーセント。
【
図6-2】
図6A~6C SNOT-22によって測定した患者の症状改善。
図6C 両側LYR-210(2500μg)、両側LYR-210(7500μg)、又はコントロールを投与して、第24週でのSNOT-22合計スコアでMCIDを実現した、鼻ポリープあり対鼻ポリープなしの患者のパーセント。
【
図7】
図7は、両側Zinreich MRIスコアによって測定した篩骨洞炎症の低減。24週間における両側篩骨洞Zinreichスコア(前篩骨洞及び後篩骨洞のZinreichスコアのコンポジットスコア)でのベースラインからの平均変化(CFBL)。データは平均を表す。P<0.05は、コントロールに対して統計的に有意であると見なされる。
【
図8】
図8は、24週間の間における最初のレスキュー治療使用までの時間。イベントは、いつ最初のレスキュー治療が使用されたかである。イベントを達成しなかった患者は、最終治療日又は早期中止日に打ち切りとした患者であった。LYR-210(7500μg)(n=1人の患者)、LYR-210(2500μg)(n=2人の患者)、生理食塩水洗浄コントロール(n=7人の患者)が、24週間の治療期間の間にレスキュー治療を使用した。
【
図9-1】
図9Aは、カラー表示の冠状断MRI画像としての解剖学的ラベリングを示す図である。
【
図9-2】
図9Bは、参考として、左(患者から見て)鼻孔を見ている拡大した内視鏡画像を示し、中隔(S)、中鼻甲介(MT)、及び中鼻道(MM)を示す。
図9Cは、単なる例示の目的で鼻の外部において、アプリケータシースの端部から足場を部分的に配置した状態を示す。LYR-210マトリックスは、アプリケータから配置されると、拘束された状態から自己拡張する。
【
図10】
図10は、1)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラント、又は2)約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントのいずれかを、鼻洞病状を有する対象、例えばCRS患者の中鼻道に両側埋め込みした後における、経時での得られたモメタゾンフロ酸エステル血漿中濃度を示すグラフである。実現された血漿中濃度は、第5日~第55日において比較的一定に維持されており、インプラントからの薬物放出が、実質的に直線的であり、ゼロ次でさえあることを示している(例:第5日~第55日、特に第25日~第55日において)。56日間を通しての、LYR-210(2500μg)及びLYR-210(7500μg)に対する血漿中MF濃度-時間プロファイル。データは、平均及び標準偏差として表す。Css=定常状態濃度。
【
図11】
図11は、1又は複数の送達開口部(500)、半透過性ポリマー膜(501)、API(502)、及びオスモゲン(503)を備えた、巻かれた浸透圧薬物送達シート(rolled osmotic drug delivery sheet)の実施形態の模式図を示す。
【
図12】
図12は、開口部(601)を備えた浸透圧薬物送達繊維(600)を備えた自己拡張型インプラントの実施形態の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
定義
本明細書で用いられる場合、「鼻洞」及び「鼻洞腔」の用語は、上顎洞、前頭洞、及び篩骨洞、篩骨漏斗、並びに蝶形骨洞を含む空洞部を意味する。中鼻道は、鼻洞腔ではない鼻腔を意味する。中鼻道自然口ルートは、前頭洞、前篩骨蜂巣、及び上顎洞を中鼻道と繋げるチャネルであり、空気流及び粘液排泄を可能とする。
【0053】
本明細書で用いられる場合、「病状」とは、存在の特定の病状を意味する。1つの例としては、「医学的病状」であり、ヒトの身体状態が良い又は悪い様子を意味する。「医学的病状」はまた、障害、疾患、病変、及びそれらの症状を含む広い用語でもある。医学的病状はまた、身体の領域の特定のタイプを含む場合もあり、「主症状」又は「典型的症状」を含む症状のいずれか1つ以上を意味する「鼻洞病状」の用語を用いる場合などである。
【0054】
「慢性の鼻洞病状」又は「CRS」とは、以下の症状のうちの2つ以上が12週間超の期間にわたって存在することを特徴とする鼻及び副鼻腔の炎症を意味する:1)鼻づまり/鼻閉塞/鼻閉感;2)鼻汁;3)顔面痛/顔面圧迫感;4)嗅覚減弱又は嗅覚消失(参考文献1)。診断の客観的確認は、CRSsNP又はCRSwNPのフェノタイプも決定する鼻洞のCTスキャン又は鼻の内視鏡検査によって成される。CRSは、鼻ポリープの存在に基づいて、2つのサブタイプ、鼻ポリープありのCRS(CRSwNP)及び鼻ポリープなしのCRS(CRSsNP)、に分類される。成人の場合、鼻ポリープは両方の鼻道に見られ得るものであり、いかなる片側ポリープも、悪性腫瘍などの別の病因が懸念されるべきである。
【0055】
「慢性副鼻腔炎」は、悪化した鼻閉塞、鼻閉感、鼻をかんだ時の鼻汁、片方又は両方の鼻孔からの自発的な鼻汁、喉領域への鼻汁、顔面痛、顔面圧迫感、顔面膨満感、頭痛、嗅覚消失などを含むがこれらに限定されない少なくとも2つの症状を有する鼻洞病状を意味する。いくつかの場合では、CRSは、重度なCRSであり得る。
【0056】
鼻ポリープありの慢性副鼻腔炎(CRSwNP)は、慢性副鼻腔炎症の主観的及び/又は客観的証拠の存在を伴う臨床的診断を意味する。
「鼻ポリープ」は、鼻気道(空洞部)に突出している炎症性病変を意味する。ポリープは、典型的には両側に存在するが、ポリープが、両方ではなく片方の鼻気道中に見られる場合もある。ポリープは、鼻気道又は鼻洞の内面上にある柔らかく、無痛で、非癌性の成長物であり得る。CRSwNPは、多くの場合、喘息及びアレルギー性鼻炎を伴う。
【0057】
「主症状」は、特定の疾患若しくは病状に特異的に特徴的又は暗示的である(徴候又は症状の)、診断及び/又は病徴であり得る症状を意味する。単なる例として、CRSは、12週間超の期間にわたって継続する前鼻漏若しくは後鼻漏、鼻閉感、嗅覚減弱、及び/又は顔面圧迫感若しくは顔面痛などの症状を含む鼻づまり、顔面痛、鼻汁(前側/後側)、及び嗅覚消失のうちの1つ以上であり得る。4つの主症状のコンポジットスコアは、鼻づまり、鼻汁、顔面痛/顔面圧迫感、及び嗅覚消失を含む。3CSコンポジットスコアは、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び鼻汁を含む。好ましい実施形態では、3CSは、鼻づまり/鼻閉塞/鼻閉感、前側/後側鼻汁、及び顔面痛/顔面圧迫感の3つの主症状の7日間平均コンポジットスコアである。
【0058】
本明細書で用いられる場合、「概略管状」は、円形断面又は非円形断面(例:楕円形など)の中空形状、及び一定直径又は可変直径(例:中空円錐台などの漸減する直径)の中空形状を含む。
【0059】
本開示のある特定の実施形態のインプラント型医療用デバイスは、一般に、自己拡張型デバイスである。いくつかの実施形態では、それらは、概略管状デバイスであるが、いくつかの実施形態では、シート又は折り畳まれたシートとして構成されることが企図される。好ましい実施形態では、デバイスは、「ストランド」及び「フィラメント」を備える。本明細書で用いられる場合、「デバイス」、「足場」、「ステント」、「キャリア」、及び「インプラント」は、同義に用いられ得る。
【0060】
本開示のある特定の実施形態に従う足場は、足場をその意図する目的のために効果的とするのに適する拡張及び機械的特性を備える。本明細書で用いられるそのような機械的特性の2つの尺度は、「半径方向抵抗力(radial resistive force)」(「RRF」)及び「持続的な外向きの力(chronic outward force)」(「COF」)である。RRFは、捲縮力に対抗して足場が作用させる力であり、COFは、静的隣接面(static abutting surface)に対して足場が作用させる力である。ある特定の実施形態では、足場は、身体の内腔、空洞部、及び鼻の形などを開いた状態に維持することができるように、比較的高いRRFを有するが、身体の内腔の壁部、視神経、脳などに対して損傷を起こす可能性のある力が加わることを回避するように、比較的低いCOFを有するように構成される。例えば、本開示の足場は、好ましくは、捲縮後、その製造されたままの構成の70~100%まで拡張し、50~300mmHgの範囲内のRRFを有し、及び/又は10~100mmHgの範囲内の短時間のCOF(送達時)を有する。本開示のある特定の実施形態に従う足場は、典型的には、様々な直径及び長さを含む様々なサイズであってよく、様々な鼻洞用途に用いられてよい管状デバイスである。非円形断面の物体の場合、「直径」は幅を意味する。
【0061】
本明細書で用いられる場合、「強度」及び「剛直性」は、半径方向の力又は静的隣接物に対して足場が作用させる力による変形に対する、本開示の医療用足場の抵抗力を意味するために同義で用いられ得る。本開示の医療用足場を特徴付けるために用いられる場合、強度及び剛直性の尺度の例は、本明細書でさらに述べるように、半径方向抵抗力及び持続的な外向きの力を含む。
【0062】
本開示のある特定の実施形態のインプラント型医療用デバイスは、一般に、自己拡張型デバイスである。本明細書で用いられる場合、「自己拡張型」は、身体中に送達するために小さくされた送達用構成に捲縮され、その後、いかなる追加の拡張デバイスの補助もなしに、又はバルーン支援若しくは類似の支援による拡張の部分的補助と共に、送達構成から開放された場合により大きい適切な構成に拡張する傾向にあるデバイスを含むことを意図している。本開示の多くの足場実施形態は、第一の直径で製造され、続いて送達用カテーテル内に配置するために第二の低減された直径に小さくされ又は「捲縮」され、埋め込み部位で送達用カテーテルから押出されると、第一の直径に向かって自己拡張するという意味で、自己拡張型である。第一の直径は、いくつかの実施形態において、それが埋め込まれる身体の内腔の直径よりも少なくとも10%大きくてよい。足場は、いくつかの実施形態では、その製造された第一の直径の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、最大約100%を回復するように設計され得る。
【0063】
本明細書で用いられる場合、「ストランド」及び「フィラメント」は、交換可能に用いられてよく、単一繊維のストランド及びフィラメント(モノフィラメントとも称される)、及び多繊維のストランド及びフィラメントを含む。らせん状のストランド。実施形態のいずれとも合わせて用いられ得るいくつかの実施形態では、網目状構造は、対向するらせん状ストランドのセットを備え得る。例えば、らせん状ストランドの各セットは、2~64の構成部分を、より典型的には、8~32の構成部分を備え得る。
【0064】
いくつかの好ましい実施形態では、インプラントは、インプラントが鼻洞組織と最大20週間、より好ましくは24週間以上接触し得るという「長期間」インプラントである。いくつかの好ましい実施形態では、インプラントは、鼻洞組織と接触したインプラントを有する患者が、最大4週間、最大8週間、最大12週間、最大16週間、最大20週間、最大24週間以上にわたって鼻洞組織の効果を示し得るという「長期作用」インプラントである。
【0065】
本明細書で用いられる場合、「コード化」は、「有害事象」又は「AE」としての症状を、臨床データの一貫した分析のための用語に変換するために、標準化された(又は選択された)用語を用いることを意味する。AEは、「重篤な有害事象」又は「SAE」として記載される場合もある。より詳細には、MedDRAコードは、各用語に対して割り当てられた8桁の番号を意味しており、用語自体の文字列と混同してはならない。MedDRAにある各用語は、データ分析に用いられる独特の非表現的(non-expressive)8桁コードを有する。
【0066】
1つの例として、コードは、Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA)のバージョン23.0に記載のように使用するために選択した。MedDRAは、本明細書において簡潔に述べるように、生物学的製剤及び医療用製品の開発のいかなるフェーズにも適用可能なコード化の一般的方法を提供する。https://www.meddra.org/how-to-use/case-studies/industry-case-study https://www.meddra.org/glossary。MedDRAの1つの有益性は、分かりやすく洗練もされた分析をそれが補助することにある。MedDRAは、その階層的な構造を用いて、個別の医学的事象(例:「慢性副鼻腔炎」)、又はシステム、器官、若しくは病因(例:感染)が関与する課題を分析するために用いることができる。AEは、MedDRAのバージョン23.0を用いてコード化した。
【0067】
「モニタリング」は、週1回、2週間ごとに1回、4週間ごとに1回を例として、間欠的に行われてよく、連続的である必要はない。モニタリングは、医師、看護師、技師、又は他の医療スタッフによって行われてよい。モニタリングは、対面で、例えば診療所で行われても、又はリモートで、例えば電話によって行われてもよい。モニタリングは、例えば、症状がある場合はそのレベル及び数など、患者から患者自身の状態についての主観的な報告を得るような単純なものであってよい。
【0068】
「約」及び「およそ」などの用語は、数値と共に用いられる場合、±10%の範囲を示すことを意図している。
発明の記載
本発明は、重度の慢性副鼻腔炎(CRS)症状を有する(又はそのリスクを有する)患者を含む鼻洞病状を有する患者の治療に用いるための材料、デバイス、キット、及び方法に関する。1つの実施形態では、本発明は、標準的な医学的治療後に失敗した鼻洞病状を有する患者に使用するために設計されたインプラントを企図する。1つの実施形態では、本発明は、鼻ポリープあり及びなしの未手術のCRS患者において、8~12週間にわたって、より好ましくは24週間以上にわたってモメタゾンフロ酸エステルを局所的に溶出する(例:中鼻道から炎症を起こした副鼻腔組織へ)インプラント型マトリックス(LYR-210)(7500μgのMF)を企図する。オープンラベル第I相試験において、LYR-210は、22項目の鼻副鼻腔疾患評価項目(SNOT-22)での臨床的に意味のある改善を示した。CRSにおけるLYR-210(7500μg)の安全性及び有効性について、LANTERN第II相試験でさらに評価した。
【0069】
方法:これまでの医学的管理に失敗し、さらなる治療を求めている67人の未手術成人CRS患者を、多施設盲検比較対照用量設定LANTERN試験に登録した。患者は、SNOT-22及び4つの主CRS症状の7日間平均コンポジットスコア(4CS)に基づいて中度から重度の疾患を有し、鼻内視鏡検査及びMRIによって診断を確定した。患者を、生理食塩水洗浄のみのコントロール又はLYR-210-2500μg若しくはLYR-210-7500μgの診療所での両側投与に、無作為化した(1:1:1)。安全性及び有効性を、24週間にわたって評価した。
【0070】
LYR-210(7500μg)は、モメタゾンフロ酸エステル(MF)を、例えば中鼻道(インプラント部位)から局所的な副鼻腔粘膜へ、最大24週間にわたって、一定に溶出するように設計された、XTreo(商標)薬物送達技術プラットフォーム11に基づいたインプラント型薬物マトリックスである。LYR-210は、中鼻道内にフィットし、中鼻道に動的に追随するように設計される。中鼻道は、副鼻腔の排泄を可能とし、CRSにおける二次感染に繋がる物理的な閉塞の開始部位である中鼻道自然口ルート(osteomeatal complex)を中に有している12。活性成分であるMFは、MFを単一の両側投与から副鼻腔粘膜へ徐々に持続的に送達する補助となる生体適合性及び生体吸収性ポリマーから構成される不活性成分中に埋め込まれる。LYR-210(7500μg)は、医学的管理に失敗した未手術の成人患者におけるCRSの治療のために開発中である。オープンラベル第I相試験において(ClinicalTrials.gov識別名:NCT02967731)、LYR-210は、20人の未手術のCRS患者に対して24週間にわたり、充分な耐容性を示し、22項目の鼻副鼻腔疾患評価項目(SNOT-22)での臨床的に意味のある改善を示した13。LYR-210の安全性及び有効性をさらに評価するために、発明者らは、多施設無作為盲検比較対照用量設定LANTERN第II相試験(ClinicalTrials.gov識別名:NCT04041609)を行った。
【0071】
結果:LYR-210の両方の用量は、24週間の治療期間にわたって安全であり、充分な耐容性を示した。LYR-210は、4CS及びSNOT-22に基づいて、迅速で持続的な用量依存的症状改善を示し、LYR-210-7500μgは、コントロールと比較して、8週間という早さで及び24週間まで、統計的有意差を実現した。LYR-210(7500μg)は、コントロールと比較して、第24週でレスキュー治療の使用及びX線篩骨洞陰影を低減した。
【0072】
1つの実施形態では、インプラントは除去され、患者は、鼻洞病状の症状の低減という意味で、改善を継続する及び/又は改善を維持する。1つの実施形態では、患者は、少なくとも2週間、さらには4週間にわたって改善を継続した。重要なことには、除去は、有害な症状の即時の増加をまったく伴わなかった。実際、例えばSNOT及び/又は4CSスコアによって測定した場合の症状レベルは、維持されていた。
【0073】
実験結果
患者特性
LANTERN第II相試験では、医学的管理に失敗し、副鼻腔手術を受けたことのない150人までの成人CRS患者の登録を予定した。患者登録は、COVID-19の世界的なパンデミックのために、早期に締め切った。2019年5月から2020年3月までの間に、71人の患者を無作為化し、70人が計画した試験治療手順を受け、67人を問題なく登録した。そのうちの23人の患者が、LYR-210(2500μg)の両側投与を受け、21人が、LYR-210(7500μg)の両側投与を受け、23人が、両側シャム手順(生理食塩水洗浄のみのコントロール)を受けた。各試験アーム中の6人の患者が、計画された24週間を完了する前に治療を中止した。第22週において、投与したLYR-210薬物マトリックスの80%が保持されていた。患者の内訳を
図2に示す。
【0074】
問題なく登録した67人の患者のうち、35人(52.2%)が男性であり、37人(55.2%)が、内視鏡検査によって両側の鼻ポリープを有すると診断され、各々、各試験アーム中の患者のおよそ半分であった。鼻ポリープは、かなり大きく、大半は中鼻道の外まで延びていた。患者は、ベースラインで平均SNOT-22スコアが68.2±18.4(範囲25~107)及び平均4CSスコアが9.7±1.59(範囲7.0~12.0)である中度から重度のCRS症状を報告した16。加えて、患者は、彼らのベースラインZinreichスコア(平均20.3±12.33(メジアン値17、範囲1~53))に基づいて、副鼻腔炎症を呈していた。患者は、スクリーニング前に、INCSを少なくとも1回試しており、一方患者の19.4%、49.2%、及び73.1%が、それぞれ、CRSのための経口コルチコステロイド、抗生物質、及び生理食塩水洗浄をこれまでに使用していた。患者の人口統計学特性、CRS既往歴、及びベースライン臨床疾患重篤度測定値を表1にまとめて示す。
【0075】
【0076】
安全性
表2には、いずれかの試験アームにおいて2人以上の患者から報告された治療下で発現したAEをまとめて示す。LYR-210(2500μg)アームで報告された最も一般的なAEは、慢性副鼻腔炎、鼻血、及び鼻漏であり(各々n=4)、LYR-210(7500μg)アームでは、慢性副鼻腔炎及び鼻炎であり(各々n=4)、コントロールアームでは、慢性副鼻腔炎であった(n=7)。これらよりも頻度の少ない他のAEには、上気道感染症、中咽頭痛、鼻閉感、顔面痛、めまい、及び高カリウム血症が含まれた。この試験では、重篤有害事象(SAE)が1つだけ報告され、それは、LYR-210(2500μg)アームの患者がダニ皮膚炎を発症したものであり、担当医師によって試験治療とは無関係であると判断された。
【0077】
第24週でのIOPの平均CFBLは、LYR-210(7500μg)アーム(-0.5±2.8、範囲-5.5~7.5)及びLYR-210(2500μg)アーム(-0.1±2.5、範囲-6.3~4.0)で低下し、コントロールアームで上昇した(0.9±2.7、範囲-4.0~9.5)。この試験の患者はいずれも、臨床的に有意なIOPの上昇を起こさなかった。コントロールアームの1人の患者は、この試験中に臨床的に有意な核白内障を発症した。第4週、12週、又は24週において、朝の血清コルチゾールレベルに有意な低下はなかった。副腎不全を示すAEの報告はなかった。
【0078】
【0079】
有効性
LYR-210の治療効果を、患者の症状改善、副鼻腔炎症の低減、及びレスキュー治療の必要性の低減に基づいて24週間にわたって評価した。LYR-210は、24週間の治療期間全体にわたって、CRS患者の鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び鼻汁において、用量依存性の改善を示した(
図3A~3C)。具体的には、LYR-210(7500μg)は、鼻づまり(第16週、20週、及び24週)(
図3A)、顔面痛/顔面圧迫感(第12週、16週、20週、及び24週)(
図3B)、及び鼻汁(第16週、20週、及び24週)(
図3C)において、コントロールと比較して統計的に有意な改善を実現した。嗅覚消失のベースラインスコア≧2によって定められる、ベースラインで中度から重度の嗅覚脱失を呈した登録患者の分析から、LYR-210(7500μg)が患者の嗅覚を改善したことが示された(
図4C)。
【0080】
4つの主症状を、有効性の主要評価項目であるコンポジットスコア(4CS)として24週間の治療期間全体にわたって分析した。4つの主症状のコンポジットスコアは、鼻づまり、鼻汁、顔面痛/顔面圧迫感、及び嗅覚消失を含む。LYR-210は、24週間全体でより顕著となった4CSスコアでの用量依存的改善を示した(
図5A、上のグラフ)。LYR-210(7500μg)は、第16週、20週、及び24週で、コントロールと比較して、ベースラインからの統計的に有意な改善を示した。第24週では、患者は、異なるステージの良好な健康状態を有し、LYR-210(7500μg)の場合にコントロールと比較して有意に改善した。
【0081】
LYR-210治療患者がマトリックスを除去した後にどのように応答したかを特定するために、彼らの第24週でのスコアを新たなベースラインとして設定した(
図5A、下のグラフ)。この分析のために、治療後フォローアップの80%を完了する前にレスキュー治療を必要とした患者、及び治療後期間にデータが欠落している患者を除外した。数が少なかったにもかかわらず、平均の傾向は、LYR-210の除去後に治療効果が継続していることを示し、一方コントロールは、第24週のベースラインからの悪化を示した。患者は、治療後期間全体にわたって生理食塩水による鼻洗浄が与えられ、毎日の使用に対してこの24週間全体の時間のうちのおよそ73%のコンプライアンスであった。治療後期間に強いリバウンド効果はなかった。したがって、インプラントを除去することができ、患者は、継続的な治療効果を体感することができ、継続的に改善することさえできる。
【0082】
患者のサブセットのみがベースラインで中度から重度の嗅覚脱失を呈したことから、本発明者らは、この試験での予め指定した評価項目ではなかったが、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び鼻汁(3つの主症状(3CS))からの7日間平均スコアのコンポジットスコアも分析した。LYR-210は、用量依存的治療効果を示し、LYR-210(7500μg)は、第12週から第24週にわたって、コントロールと比較して3CSスコアでの有意な改善を実現した(
図5B)。
【0083】
SNOT-22調査は、CRS患者の負担及び生活の質に関する臨床的至適基準測定である
14。
図6Aに示されるように、LYR-210(7500μg)、LYR-210(2500μg)、及びコントロールの間で、24週間の治療期間にわたって用量応答が観察された。LYR-210は、SNOT-22スコアにおいて、迅速で持続的であり臨床的に意味のあるベースラインからの改善を示した。LYR-210(7500μg)の両側投与を受けた患者は、第8、16週、20週、及び24週で、コントロールと比較して、統計的に有意な改善を呈した。特に、LYR-210(7500μg)は、第24週において、コントロールと比較して19ポイントのSNOT-22の改善を実現し、臨床的に意義のある最小変化量(MCID)である8.9ポイントの2倍超であった
14。
【0084】
SNOT-22レスポンダー分析から、LYR-210(7500μg)は、第24週でMCIDを実現した対象のパーセントにおいて優れていることが明らかとなり[LYR-210(2500μg)及びコントロールと比較して、オッズ比>999.999(<0.001、>999.999)]、LYR-210(2500μg)の70%及びコントロールアームの65%と比較して、LYR-210(7500μg)が投与された患者の100%が、第24週においてSNOT-22合計スコアで≧MCIDを実現した(
図6B~
図6C)。
【0085】
LYR-210(7500μg)が投与された患者をさらに評価すると、70%が、第4週という早さで、SNOT-22合計スコアでの≧MCIDを実現していた(表3A)。重要なことには、この早期の開始は、大きい鼻ポリープのある患者及び鼻ポリープのない患者で観察された。LYR-210(7500μg)アームのCRSsNP患者の80%及びCRSwNP患者の60%が、第4週においてSNOT-22合計スコアでの≧MCIDを実現していた(表3B)。この強い治療効果は、試験全体を通して持続し、第24週までには、SNOT-22合計スコアでMCIDを実現したLYR-210(7500μg)アームの患者が100%に増加した(表3A~表3B)。
【0086】
【0087】
【0088】
睡眠障害又は睡眠不良は、生活の質の低下を伴い、一般集団の8%~18%と比較して、CRSを有する個人のおよそ60%~75%の共通する不満である17。LYR-210の睡眠に対する治療効果を評価するために、SNOT-22から誘導される睡眠障害ドメインを分析した。睡眠障害ドメインの尺度としては、入眠困難、夜間覚醒、良好な夜間の睡眠の不足、起床時倦怠感、及び疲労が挙げられる18。LYR-210(7500μg)は、24週間の治療期間全体にわたって睡眠障害の症状を改善し、第24週で、90%の患者が、Chowdhury et al.19によって定められるSNOT-22睡眠障害ドメインにおいて、MCIDの2.9ポイントを実現した(表3C)。
【0089】
【0090】
第24週でSNOT-22睡眠障害ドメインが有意に改善するというこの発見は、手術ではない医学的治療を用いた場合にそのような改善が見られないことを指摘した他の研究者によるこれまでの研究に基づくと、驚くべきことであった。1つの例として、DeConde, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 4(12): 972-979, 2014は、手術ではない医学的治療は、2つの一般的な健康関連のQOL(生活の質)ドメイン、すなわち、睡眠障害及び心理的機能障害を有意に改善しなかったが、医学的管理を継続しながらの手術による治療は有意に改善したことを示した。実際には、手術ではない医学的治療に対して手術による治療を選択する患者は、一般に、手術前におけるより高い心理的機能障害に加えて、有意により高い治療前睡眠障害を報告していた。医学的治療の例としては、経口、広域、又は培養による抗生物質が挙げられており、局所用経鼻コルチコステロイドスプレー又は全身ステロイド治療の5日間の試験であった。
【0091】
さらに、DeConde, et al.は、ベースラインSNOT-22スコアがより悪いことと患者が手術を選択する可能性がより高いこととの間に直接の関連性があることを報告した。ベースライン症状重篤度の指標は、性格特性、リスク回避、社会的支援の度合い、経済的因子、及び患者-医師の関係性を含む様々な他の尺度よりも、患者による治療様式選択の予測により有効であると思われた。DeConde, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 4(12): 972-979, 2014。
【0092】
実際、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)は、すべてのSNOT-22カテゴリーにわたって、医学療法の継続よりも有効な介入治療であることが示されたが、ある特定のドメインにわたって差異的な効果を示すことも見出された。DeConde, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 4(12): 972-979, 2014。SNOT-22調査の因子分析から、医学的治療に対して、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)によって差異的に影響を受ける5つの別個のドメインを識別した。最初の2つのドメインは、手術によって改善したが医学的治療によっては改善しなかったとして上記で述べたものである(すなわち、睡眠障害及び心理的機能障害)。対照的に、3つの鼻洞特異的症状ドメイン(すなわち、鼻科学的症状、鼻科学外(Extra-rhinologic)の症状、及び耳/顔面の症状)は、条件付きであるが、これらの治療のいずれかによって改善した。ESS及び非LYR-210医学的治療の両方で、すべてのドメインスコアにわたって有意な差異的である平均の改善が報告されたものの、最も大きい改善は、副鼻腔手術を選択してそれを受けた群であった。
【0093】
手術及び医学的治療の両方の様式で、すべてのドメインにわたる改善が得られたものの、手術による介入を選択した対象は、より大きい相対的な改善を体験した。とは言え、ESSを受ける対象は、すべてのドメインにわたって医学的管理よりも大きい利益を体験するものの、これらの利益は、睡眠障害及び心理的機能障害のドメインで最も小さかった。DeConde, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 4(12): 972-979, Published online 2014。したがって、患者は、医学的管理の場合よりも手術介入の場合に、疾患特異的生活の質(QOL)スコアをより大きく改善する。
【0094】
本明細書で示されるように、手術ではないLYR-210による医学的治療で治療した患者から、睡眠障害がSNOT-22スコアの統計的に有意な改善を示したという驚くべき発見に後押しされ、非治療コントロール患者群と比較して、LYR-210(7500μg)を用いた手術ではない医学的治療を用いて改善される可能性のあるさらなるドメインを調べるために、以下の試験を行った。
【0095】
加えて、臨床的改善を追跡するためのSNOT-22を例とする患者報告アウトカム尺度(PROM)の使用は、患者の自己報告によるこれらのより抽象的な値を、臨床的に意味のあるコンテクストで、すなわち、LYR-210医学的治療の経時での効果を測定する方法、LYR-210の治療アウトカムが手術介入のアウトカムに類似するかどうかを測定する方法などの1又は複数の方法のためのガイドとして用いるように、いかにして分析するかという問題に繋がる。いくつかの実施形態では、治療アウトカムを測定する方法は、LYR-210医学的治療の比較、すなわち2500μg対7500μgの比較である。いくつかの実施形態では、治療アウトカムを測定する方法は、LYR-210医学的治療のコントロール又はシャム患者に対する比較である。いくつかの実施形態では、LYR-210の治療アウトカムを測定する方法は、治療のタイプの提案又は療法(治療)の変更に用いられる。
【0096】
したがって、SNOT-22などの検査は、ある特定の時点での疾患の信頼のおける尺度として数多くの刊行物で確認されたものであるが、この確認プロセスは、経時でのスコアの変化を解釈する方法についての手引きをほとんど与えない。したがって、本明細書における1つのさらなる目的は、CFBLを例とするスコアの変化が健康状態の実際の変化を反映するものであり、及びアウトカム研究に用いるためのものであるこれまでに確立されている閾値を用いることである。この閾値は、臨床的に意義のある最小変化量(MCID)として一般的に知られており、例えば、Cook. "Clinimetrics corner: the minimal clinically important change score (MCID): a necessary pretense." Journal of Manual & Manipulative Therapy 16, no.4: 82E-83E (2008)、を参照されたい。
【0097】
SNOT-22合計及びSNOT-22(サブ)ドメインのMCIDを、ESSの前後で、SNOT-22合計及びSNOT-22ドメインの両スコアに対して平均MCID値として計算した。Chowdhury, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 7(12): 1149-1155, 2017、を参照されたい。1つの例として、Chowdhury, et al.は、CRSの治療アウトカム研究において、8.9が、副鼻腔手術後の改善のためのMCID閾値として一般的に許容されることを提案したが、さらに、ESS治療CRS患者に対して9.0を代わりに用いることもさらに提案した。
【0098】
したがって、本明細書で示されるように、慢性副鼻腔炎を有する患者を、CRS手術治療患者に対してはHopkins, et al., Clinical Otolaryngology, 34, 447-454, 2009に、ESS手術治療CRS患者に対してはChowdhury, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 7(12): 1149-1155, 2017に提供される所定のMCIDを用いてさらに評価した(棒グラフ及び表を参照)。分布に基づく方法におけるMCIDの1単位の変化は、SNOT-22合計スコア又はSNOT-22ドメインスコアの平均MCIDである。本明細書で用いるSNOT-22合計スコアの平均MCIDは、およそ9.0であった。用いた鼻科学的ドメイン、鼻科学外ドメイン、耳/顔面ドメイン、心理的ドメイン、及び睡眠ドメインのスコアに対する平均MCIDは、それぞれ、3.8、2.4、3.2、3.9、及び2.9であった。手術のアウトカムに対して計算を行ったものの、これらの閾値は、LYR-210による医学的治療の結果を測定するために用いた。以下のAを参照されたい。
【0099】
さらに、本明細書で用いられる場合、臨床的に意義のある最小変化量(MCID)は、統計的に有意な結果が、臨床的に意味のある結果も与えると考えられ得る閾値を定めることを意味する。1つの例として、LYR-210 7500μgにおける心理的機能障害に対する第24週でのSNOT-22の結果は、ベースラインからの統計的な有意差を示し、それと共に、少なくとも1単位分3.9のコントロールからの変化であると考えられるMCIDを示す。さらに、患者の90%が、第24週において少なくともMCIDについて実現した。表9A及び表9Bを参照されたい。
【0100】
MCIDは、表9Bの第4週及び第8週で3.9に近づいていると思われるが、コントロールからの統計的有意差はない。表9Bに示されるように、その同じ期間にわたって、少なくとも1つのMCIDを実現した患者のパーセントは、約65%から75%に上昇した。患者をポリープありの群対ポリープなしの群に分けた場合、第12週~24週での睡眠障害のMCIDの改善として、鼻ポリープありの患者は、80~90%、なしの患者は、70~90%のLYR-210 7500μgに対する応答を示す。表9Cを参照されたい。
【0101】
したがって、全体として、第12~24週からの結果は、臨床的に意味があると見なされるが、第4週~8週での値は、およそ第12週までに臨床的MCIDに到達する改善を示している。
【0102】
別の例では、LYR-210 7500μgにおける睡眠障害に対する第8週~第24週でのSNOT-22の結果は、改善の統計的差異を示すが、患者の少なくともおよそ65~90%が、コントロールからの少なくとも2.9のMCIDを有する。表9Aを参照されたい。患者をポリープありの群対ポリープなしの群に分けた場合、やはり第12週~24週での睡眠障害のMCIDの改善として、鼻ポリープありの患者は、80~100%のLYR-210 7500μgに対する応答を示す。表9Bを参照されたい。
【0103】
まとめると、この分析は、LYR-210 7500μgの治療が、睡眠障害を改善するという驚くべき結果を支持するものであり、これらの知見を、心理的機能障害の改善のための手術ではない医学的治療という驚きへと拡張するものである。
【0104】
A.慢性副鼻腔炎を有する患者における、長期作用インプラント型コルチコステロイドマトリックスのSNOT-22(サブ)ドメインに対する影響:LANTERN試験からの結果
LYR-210は、慢性副鼻腔炎(CRS)患者の炎症を起こした副鼻腔粘膜へモメタゾンフロ酸エステルを24週間にわたって放出するように設計されたインプラント型マトリックスである。LANTERN試験では、LYR-210は、22項目の鼻副鼻腔疾患評価項目(SNOT-22)合計スコアにおいて、コントロールと比較して用量依存的で有意な改善を示し、すべてのLYR-210(7500μg)治療患者が、第24週で8.9ポイントの臨床的に意義のある最小変化量(MCID)を実現した。LANTERN試験からの各SNOT-22(サブ)ドメインにおいて、第24週でのベースラインからの変化及びMCIDを実現した患者の割合を評価した。SNOT-22調査項目におけるより低い(より負の)CFBLスコアは、患者がより良好に機能していること及び症状が改善されたことを示唆している。SNOT-22は、臨床的に意義のある最小変化スコア(MCID)が存在するかどうかを判断するために続いて用いられ得る群平均を得るために用いられる患者報告アウトカム測定値を意味する。MCIDは、群の患者の管理を変更することを示唆する可能性のある所定のCFBLスコアを例とするスコアの変化を意味する。Cook. "Clinimetrics corner: the minimal clinically important change score (MCID): a necessary pretense." Journal of Manual & Manipulative Therapy 16, no.4: 82E-83E (2008)。
【0105】
方法:これまでの医学的管理に失敗した中度から重度のCRSを有する未手術の成人を、多施設無作為比較対照用量設定(LANTERN)試験に登録した。23人の患者が、シャム手順を受け(コントロール)、21人又は23人の患者が、それぞれLYR-210(7500μg)又はLYR-210(2500μg)の両側投与を受けた。鼻科学的ドメイン、鼻科学外ドメイン、耳/顔面ドメイン、心理的ドメイン、及び睡眠(障害)ドメインのスコアに対するMCID値は、それぞれ、3.8、2.4、3.2、3.9、及び2.9である(Chowdhury et al. 2017)。各SNOT-22サブドメインにおける平均CFBL及びMCIDを実現した患者のパーセントを、それぞれANCOVAモデル及びロジスティック回帰モデルを用いて分析した。
【0106】
結果:LYR-210は、LYR-210(7500μg)によって用量依存的な症状改善を示し、第24週で、各SNOT-22(サブ)ドメインにおいて、コントロールと比較した統計的有意差(p<0.05)を実現した。第24週で、コントロールと比較して、鼻科学的ドメイン(90%対65%)、鼻科学外ドメイン(71%対52%)、耳/顔面ドメイン(80%対48%)、心理的ドメイン(90%対78%)、及び睡眠ドメイン(90%対61%)において、より多くのLYR-210(7500μg)治療患者がMCIDを実現した。表4A~4Bから表9A~9Cまでを参照されたい。
【0107】
表4A~4Bから表9A~9Cまでは、LYR-210が、LYR-210(7500μg)によって用量依存的な症状改善を示し、第24週で、各SNOT-22ドメインにおいて、コントロールと比較した統計的有意差(p<0.05)を実現したことを示す。
【0108】
表は、SNOT-22合計スコア又はサブドメインスコアにおいてMCID(臨床的に意義のある最小変化量)を実現した対象のパーセントを示す。データは、良好に治療手順を受け、少なくとも1つの無作為化後有効性評価を有するすべての対象を含むITT(治療の意図)集団に対して、LOCF(直近観察データによる補完(Last Observation Carried Forward))を用いて分析した。
【0109】
表4A及び4Bは、SNOT-22合計スコアにおける例示的なMCID応答を示す。データは、Hopkins, et al., Clinical Otolaryngology. 34, 447-454, 2009に定められるように、SNOT-22合計スコアにおいて、少なくとも8.9ポイント減少のMCIDを実現した対象の%を表す。
【0110】
【0111】
【0112】
表5Aは、SNOT-22鼻科学的ドメインスコアにおける例示的なCFBLを示す。
【0113】
【0114】
表5B及び表5Cは、SNOT-22鼻科学的ドメインスコアにおける例示的なMCID応答を示す。データは、Chowdhury, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 7(12): 1149-1155, 2017に定められるように、SNOT-22鼻科学的ドメインスコアにおいて、少なくとも3.8ポイント減少のMCIDを実現した対象の%を表す。
【0115】
【0116】
【0117】
表6Aは、SNOT-22鼻科学外ドメインスコアにおける例示的なCBFLを示す。
【0118】
【0119】
表6B及び表6Cは、SNOT-22鼻科学外ドメインスコアにおける例示的なMCID応答を示す。データは、Chowdhury, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 7(12): 1149-1155, 2017に定められるように、SNOT-22鼻科学外ドメインスコアにおいて、少なくとも2.4ポイント減少のMCIDを実現した対象の%を表す。
【0120】
【0121】
【0122】
表7Aは、SNOT-22耳/顔面ドメインスコアにおける例示的なCFBLを示す。
【0123】
【0124】
表7B及び表7Cは、SNOT-22耳/顔面ドメインスコアにおける例示的なMCID応答を示す。データは、Chowdhury, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 7(12): 1149-1155, 2017に定められるように、SNOT-22耳-顔面ドメインスコアにおいて、少なくとも3.2ポイント減少のMCIDを実現した対象の%を表す。
【0125】
【0126】
【0127】
表8Aは、SNOT-22心理的機能障害ドメインスコアにおける例示的なCFBLを示す。
【0128】
【0129】
表8B及び表8Cは、SNOT-22心理的機能障害ドメインスコアにおける例示的なMCID応答を示す。データは、Chowdhury, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 7(12): 1149-1155, 2017に定められるように、SNOT-22心理的ドメインスコアにおいて、少なくとも3.9ポイント減少のMCIDを実現した対象の%を表す。
【0130】
【0131】
【0132】
表9Aは、SNOT-22睡眠障害ドメインスコアにおける例示的なCFBLを示す。
【0133】
【0134】
表9B及び表9Cは、SNOT-22睡眠障害ドメインスコアにおける例示的なMCID応答を示す。データは、Chowdhury, et al., Int Forum Allergy Rhinol. 7(12): 1149-1155, 2017に定められるように、SNOT-22睡眠障害ドメインスコアにおいて、少なくとも2.9ポイント減少のMCIDを実現した対象の%を表す。
【0135】
【0136】
【0137】
結論:LYR-210は、すべてのSNOT-22(サブ)ドメインで改善を示し、未手術のCRS患者のための有望な長期作用副鼻腔炎治療であり得る。
さらに、患者が手術候補である場合、これらの改善は、そのような患者がLYR-210 7500μgで治療されると、もはやESSの候補として見なされない可能性があることを示す。意義のある最小変化量を決定することは、臨床的コンテクストでスコアを解釈する方法を提供し、手術を行うかLYR-210の2500μg若しくは7500μgなどの医学的治療を選択するかについて、患者の治療選択を向上する、又は治療医師若しくは患者の選択を手引きする補助と成り得る。言い換えると、患者が主として睡眠障害を改善したいと考えている場合、その患者は、LYR-210 7500μgの治療を選択することができる。
【0138】
LYR-210(2500μg)及び/又はLYR-210(7500μg)による手術ではない医学的管理が、22項目の鼻副鼻腔疾患評価項目(SNOT-22)の一部としての生活の質を、ESS治療患者と同様に向上するというこの驚くべき発見を部分的な理由として、MCID値に照らして用いるためにこの驚くべき知見を支持する目的で、さらなる試験を行った。
【0139】
B.長期作用インプラント型コルチコステロイドマトリックスで治療した慢性副鼻腔炎患者における36項目ショートフォーム健康調査(36-item short form health survey)を用いた生活の質評価
LANTERN試験患者の生活の質を、36項目ショートフォーム健康調査バージョン2(SF-36v2)を用いて評価した。LYR-210は、慢性副鼻腔炎(CRS)患者の炎症を起こした副鼻腔粘膜へモメタゾンフロ酸エステルを24週間にわたって放出することを意図したインプラント型マトリックスである。無作為比較対照LANTERN試験において、LYR-210(7500μg)は、臨床的に意味のある症状の改善を示し、第24週で篩骨洞陰影及びレスキュー薬物治療の必要性を低減した。
【0140】
方法:これまでの医学的管理に失敗した中度から重度のCRSを有する未手術の成人を、多施設無作為比較対照用量設定試験に登録した。患者を、LYR-210(2500μg)(n=23)若しくはLYR-210(7500μg)(n=21)の両側投与、又はシャム手順コントロール(n=23)のいずれかに無作為化した(1:1:1)。SF-36v2は、ベースライン及び第24週において、ePROによって完了した。精神的側面のサマリー(MCS)及びその(サブ)ドメイン(活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康)、及び身体的側面のサマリー(PCS)及びその(サブ)ドメイン(身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感)を、ベースラインからの変化として分析した。LYR-210群を、ANCOVAモデルを用いてコントロールと比較した。P<0.05を統計的有意差とした。
【0141】
結果:LYR-210の両方の投与量は、第24週で、コントロールと比較して>8ポイントと、MCSスコアを大きく改善した。LYR-210(7500μg)は、4つのMCSドメイン(活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、及び心の健康)の各々において、統計的有意差を実現した。LYR-210(2500μg)及び(7500μg)は、第24週で、コントロールと比較してPCSスコアを数字上で増加させ、LYR-210(7500μg)は、3つのPCSドメイン(身体機能、日常役割機能(身体)、及び体の痛み)において、統計的有意差を実現した。ドメインスコアの各々は、より高いスコアがより良好な健康を表すような方向とされている。表10~表11を参照されたい。
【0142】
表10~表11は、SF-36v2健康調査を用いた生活の質の評価を示す。データは、ITT集団に対して、ANCOVAモデルを用いて分析した。欠落したデータの代入は行わなかった。提示したデータは、最小二乗平均値である。LYR-210(2500μg)及びLYR-210(7500μg)はいずれも、第24週で、平均の精神的側面のサマリー(MCS)スコアを有意に改善した。LYR-210(7500μg)は、4つの精神的側面(MCS)ドメイン(活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、及び心の健康)の各々において、統計的有意差を実現した。LYR-210(2500μg)及び(7500μg)は、第24週で、コントロールと比較して身体的側面(PCS)スコアを数字上で増加させ、LYR-210(7500μg)は、3つのPCSドメイン(身体機能、日常役割機能(身体)、及び体の痛み)において、統計的有意差を実現した。(サブ)ドメインスコアの各々は、より高いスコアがより良好な健康を表すような方向とされていた。*は、統計的有意差を示す(片側 p<0.05対コントロール)。
【0143】
表10A~表10Eは、精神的側面のサマリー(MCS)、並びに活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、及び心の健康のスコアの場合のSF-36v2スコアにおける例示的なCFBLを示す。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
表11A~表11Eは、身体的側面のサマリー(PCS)、並びに身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、及び全体的健康感のスコアの場合のSF-36v2スコアにおける例示的なCFBLを示す。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
結論:LYR-210は、これまでの医学的管理に失敗した未手術のCRS患者の生活の質を向上することができる。さらに、SF-36v2スコアの結果は、治療前のスコアと比較した場合に、精神的側面、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、及び全体的健康感の改善を例として、LYR-210 7500ugの治療中及び/又は治療後における統計的に有意に高い生活の質を示す。SF-36v2スコアの結果は、治療前のスコアと比較した場合に、精神的側面、社会生活機能、日常役割機能(精神)、及び全体的健康感の改善を例として、LYR-210 2500ugの治療中及び/又は治療後における統計的に有意に高い生活の質を示す。SF-36v2スコアの結果は、治療前のスコアと比較した場合に、身体的側面、身体機能、日常役割機能(身体)、及び体の痛みの改善を例として、LYR-210 7500ugの治療中及び/又は治療後における統計的に有意に高い生活の質を示す。SF-36v2スコアの結果は、治療前のスコアと比較した場合に、体の痛みを例として、LYR-210 2500ugの治療中及び/又は治療後における統計的に有意に高い生活の質を示す。
【0156】
したがって、SNOT-22ドメインでの改善を測定する一部として特定の治療において予め設定したMCID値を用いることにより、特定の治療がCRS患者の生活の質にどのように影響を及ぼすかをより良好に評価可能となる。この点を例証するために、手術又はLY10を例とするCRSに対する2つの競合する介入が同様の合計SNOT-22の改善を有し、両方が、睡眠障害ドメインでの改善のMCIDを実現するが、他の非手術治療はそうではないという仮想シナリオを考える。睡眠障害の著しい減少(impairment)を求めるCRS患者に対する臨床的オプションを提供する場合、医師は、睡眠ドメインでのMCIDを実現する治療を、たとえそのような治療が少なくとも1つの他の症状ドメインをそれほど改善し得ない場合であっても、より促進しがちであり得る。
【0157】
副鼻腔粘膜炎症に対するLYR-210の治療効果を評価するために、患者は、ベースライン及び治療終了時(第24週)に、副鼻腔のMRI検査を受けた。LYR-210は、中鼻道に配置され、周囲の鼻組織にMFを局所的に送達するように設計されていることから、中鼻道に最も近い鼻洞である篩骨洞の炎症に対するLYR-210の効果を調べた。LYR-210は、第24週で、両側篩骨洞のZinreich MRIスコアにおける改善を用量依存的に示し、LYR-210(7500μg)は、コントロールと比較して有意な改善を示した(
図7)。
【0158】
最初のレスキュー治療使用までの時間も評価し、レスキュー治療の必要性は医師の判断とした。言い換えると、本発明者らが特定し、少なくとも部分的に本明細書に記載した(表2参照)鼻洞「事象」のリスクのある患者を、治療なし、LYR-210(2500μg)、及びLYR-210(7500μg)の少なくとも3つの試験群に分けた。したがって、リスクのある患者が最初の有害事象を有するにしたがって、その患者にレスキュー薬物治療を施す。
【0159】
別の例として、そのような健康事象を有しない患者の数を、
図8のチャートの下に列挙する。
LYR-210は、レスキュー治療の必要性の用量依存的な減少を示し、LYR-210(7500μg)アームが必要としたレスキュー治療は、コントロールよりも有意に少なかった(ハザード比=0.1、P<0.05)。24週間の治療期間にわたって、コントロールアームの患者7人と比較して、LYR-210(7500μg)投与患者の1人及びLYR-210(2500μg)投与患者の2人のみが、レスキュー治療を必要とした(
図8)。さらに、コントロールアームの最初のレスキュー治療の発生は、第2週で起こったが、LYR-210(7500μg)でレスキュー治療を受けた唯一の患者は、治療の18週間後までそれを必要としなかった。
【0160】
実験結果の考察
LYR-210は、両方の用量で、24週間の治療期間全体にわたって、安全であり、患者による充分な耐容性を示した。治療関連SAEは報告されず、発生したすべての治療関連AEは、MFの既知の安全プロファイルに沿ったものであった20。この試験では、第22週において、投与したLYR-210薬物マトリックスの80%が保持されていた。これは、LYR-210の弾性特性が、副鼻腔粘膜との長期間の接触を可能とし、したがって、24週間の治療期間全体にわたる治療的に有効な局所的MF送達を可能としたことを示している。
【0161】
CRSの主症状及びSNOT-22に焦点を当てたコンポジットスコアはいずれも、患者に対するCRSの影響及び治療の有効性に関する情報を提供する。この試験では、LYR-210(7500μg)は、第16週、20週、及び24週で、生理食塩水洗浄コントロールと比較して、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び鼻汁の有意な改善を示した。さらに、LYR-210(7500μg)は、ベースラインで中度から重度の嗅覚脱失を呈した患者(嗅覚消失のベースラインスコア≧2)の嗅覚を改善した。この試験に登録した患者のサブセットのみが嗅覚障害を有していたことから、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び鼻汁の3CSコンポジットスコアの方が、鼻ポリープあり及びなしの未手術のCRS患者における症状改善を測定するためのより適切な評価項目であり得、なぜなら、それらは、この試験集団中により確実に存在するからである。LYR-210(7500μg)は、第12週、16週、20週、及び24週で、生理食塩水洗浄コントロールと比較して統計的に有意な3CSコンポジットスコアでの症状改善を示した。LYR-210(7500μg)はまた、第8週、16週、20週、及び24週で、生理食塩水洗浄コントロールと比較して、SNOT-22での統計的に有意な改善も実現した。LYR-210(7500μg)は、篩骨洞陰影及びレスキュー治療の必要性を、コントロールと比較して有意に低減した。
【0162】
さらに、LYR-210(7500μg)を両側投与した患者は、MRIによって評価した場合の粘膜炎症の低減を呈した。コントロールと比較して、LYR-210(7500μg)は、レスキュー治療の必要性及び最初のレスキュー治療までの時間を有意に低減し、LYR-210(7500μg)アームの1人の患者のみが、18週間後にレスキュー治療を必要とした。
【0163】
67人の患者で登録を締め切ったにもかかわらず、LYR-210は、24週間全体にわたって迅速で持続的な用量依存的症状改善を示した。LANTERN第II相試験の有効性の主要評価項目は、第4週での4CSスコアにおける平均CFBLであり、これは、LYR-210(2500μg)に対しては-2.2ポイントであり、LYR-210(7500μg)に対しては-2.5ポイントであった(
図5A)。有効性の主要評価項目として第4週を選択した理由は、LANTERN試験デザイン時の規制上の先例に従うことであり、それは、FDAが承認したステロイド溶出副鼻腔インプラントに対する4週間であった
21,22。いずれの用量も、第4週では、生理食塩水洗浄コントロールと比較して統計的な有意差を実現しなかったものの、臨床的に意味のある治療効果は、第4週においてLYR-210の両方の用量で見られ、それは、QOL評価において広く許容されている統計的通例であるベースライン値の標準偏差の半分を超える改善(4CSスコアのCFBLにおいて-0.8ポイント)によって示された[Norman et al 2003;Soler et al 2010;Philips et al 2018;Levi et al 2017]。LYR-210(7500μg)は、第16週、20週、及び24週において、生理食塩水洗浄コントロールと比較して4CSスコアでの有意な改善を示し、長期作用で持続的な治療効果を示している。SNOT-22評価では、LYR-210(7500μg)を投与した患者の70%が、第4週でSNOT-22のMCIDを実現し、これは持続してより顕著に増加し、第24週までには、患者の100%がMCIDを実現した(表3A)。CRS患者におけるLYR-210(7500μg)の有効性をさらに評価するために、より大規模な多施設無作為盲検比較対照臨床試験を計画している。
【0164】
この試験でのコントロールアームは、特に最初の4週間以内で、4CS及びSNOT-22評価に基づく症状改善を報告した。この応答は、手順に帰するものであり得、患者は、うっ血除去薬を受け、鼻洞を洗浄されると共に、毎日患者が実施する生理食塩水による鼻洗浄を行った。生理食塩水による鼻洗浄は、CRSにおけるケア療法の主要ガイドライン主導の標準(mainstay guideline-driven standard)であり2,3、単独療法として用いた場合、ベースラインからおよそ20ポイントのSNOT-22スコアの改善を示した23。重要なことには、この試験の患者は、24週間の治療期間全体にわたる生理食塩水による鼻洗浄レジメンの高いコンプライアンスを示し(平均82.6%±26.7%、メジアン94.6%)、これは、現実での使用よりも非常に高い8。
【0165】
LANTERN第II相試験は、CRS患者において、単一投与から24週間にわたる持続的なコルチコステロイド療法を提供するインプラント型副鼻腔治療を用いて用量応答を示す最初の臨床試験である。LYR-210は、2つの異なる臨床試験において、ポリープ状態にかかわらず未手術のCRS患者で再現性のある治療効果を示した。LANTERN第II相試験でLYR-210(2500μg)において24週間の治療期間にわたって見られたSNOT-22でのCFBLは、第I相試験での同じ用量のLYR-210のものと一致しており13、この臨床試験及びXTreo(商標)薬物送達プラットフォームでの知見をさらに確認するものであり、それによって、何か月にもわたる薬物治療の持続的な送達を実現することができる。
【0166】
現時点でFDAが承認しているステロイド溶出副鼻腔インプラントは、FESSを受けたことのあるCRSwNP患者の鼻洞に対する最大90日間までの治療を提供するものであり21,22、未手術であり鼻ポリープなしであるCRSに罹患している患者の大部分を考慮していない。炎症を起こした副鼻腔粘膜への、患者にかかわらず発動する長期間にわたる一定の高用量薬物送達は、CRSの適切な症状制御を実現するための因子として識別されてきた24,25。LYR-210(7500μg)は、現時点でFDAが承認しているステロイド溶出副鼻腔インプラントを改良したものであり、およそ5.5倍高い総ステロイド用量を有し、CRS患者での単一投与で、ポリープ状態にかかわらず最大24週間の臨床的有益性を示す。さらに、LYR-210を中鼻道に配置することは、CRSの炎症部位に対して直接、長期作用療法を施すことを可能とし、これは、INCSの欠点に対処し得るものである。LYR-210は、CRS治療パラダイムにおいて早期に配置されることから、CRS(すなわち、患者の症状)を制御するための医学的管理を最適化するための有望な新しい治療法を提供することができる。
【0167】
結論及びハイライト
LYR-210は、ポリープ状態にかかわらず未手術のCRS患者において最大24週間の有益性を示す最初の抗炎症インプラント型薬物治療である。LYR-210は、鼻ポリープあり及びなしの未手術のCRS患者において、単一投与から最大24週間の有益性を実現する最初のインプラント型副鼻腔治療である。LYR-210は、医学的管理を失敗した患者において、侵襲的な副鼻腔手術又は全身治療の代替としての有望な治療オプションであり得る。治療効果は、インプラントを除去した後であっても継続し得る。重要なことには、除去は、有害な症状の即時の増加をまったく伴わなかった。
【0168】
慢性副鼻腔炎(CRS)は、その高い有病率、患者の生活の質に対するその実質的な影響、及び治療オプションが著しく限定的であることに起因して、「認識されていない流行病」であると文献に記載されている1。CRSは、12週間超にわたって患者が4つの主症状(鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、鼻汁、及び嗅覚消失)のうちの少なくとも2つを呈する副鼻腔の炎症を特徴とする2,3。歴史的に、CRSは、鼻ポリープの存在又は非存在に基づいて、2つの表現型に分類されてきた(それぞれ、CRSwNP及びCRSsNP)。より最近では、CRSは、組織の炎症に対するパターンを支持する分子機構によって定められるエンドタイプに分類されてきた4,5。この観点から、西洋のCRSwNP患者の85%は、著しい好酸球増加を伴う2型(T2)炎症を呈する6。西洋のCRSsNPは、これよりも不均一であり、患者のおよそ50%がT2炎症を示す6。重要なことには、T2 CRSエンドタイプは、重度な症状及び高い比率での治療失敗を伴ってきた3。CRSに対する治療法が存在しないことから、現行の医療介入及び手術介入は、炎症を低減すること、及び既存のいかなる感染症も根絶することによって、CRSの症状を管理する方向に向けられる。さらに、CRSsNPを治療するための現時点でFDAが承認している薬物療法は存在しないが、鼻ポリープに対して承認されている一部の薬物は、この集団においてオフラベルで用いられる。
【0169】
参考文献
Norman et al 2003;Soler et al 2010;Philips et al 2018;Levi et al 2017.
1.Tan BK, Kern RC, Schleimer RP, Schwartz BS. Chronic rhinosinusitis: the unrecognized epidemic. Am J Respir Crit Care Med. Dec 1 2013; 188(11): 1275-7. doi: 10.1164/rccm.201308-1500ED
2.Orlandi RR, Kingdom TT, Hwang PH. International Consensus Statement on Allergy and Rhinology: Rhinosinusitis Executive Summary. Int Forum Allergy Rhinol. Feb 2016;6 Suppl 1:S3-21. doi:10.1002/alr.21694
3.Fokkens WJ, Lund VJ, Hopkins C, et al. European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps 2020. Rhinology. Feb 20 2020;58(Suppl S29): 1-464. doi:10.4193/Rhin20.600
4.Tomassen P, Vandeplas G, Van Zele T, et al. Inflammatory endotypes of chronic rhinosinusitis based on cluster analysis of biomarkers. J Allergy Clin Immunol. May 2016; 137(5): 1449-1456 e4. doi:10.1016/j.jaci.2015.12.1324
5.Tan BK, Min JY, Hulse KE. Acquired Immunity in Chronic Rhinosinusitis. Curr Allergy Asthma Rep. Jul 2017;17(7):49. doi:10.1007/s11882-017-0715-0
6.Stevens WW, Peters AT, Tan BK, et al. Associations Between Inflammatory Endotypes and Clinical Presentations in Chronic Rhinosinusitis. J Allergy Clin Immunol Pract. Nov - Dec 2019;7(8):2812-2820 e3. doi:10.1016/j.jaip.2019.05.009
7.Moeller W, Schuschnig U, Meyer G, et al. Ventilation and aerosolized drug delivery to the paranasal sinuses using pulsating airflow - a preliminary study. Rhinology. Dec 2009;47(4):405-12. doi:10.4193/Rhin08.180
8.Nabi S, Rotenberg BW, Vukin I, Payton K, Bureau Y. Nasal spray adherence after sinus surgery: problems and predictors. J Otolaryngol Head Neck Surg. Apr 2012;41 Suppl 1:S49-55.
9.Young LC, Stow NW, Zhou L, Douglas RG. Efficacy of medical therapy in treatment of chronic rhinosinusitis. Allergy Rhinol (Providence). 2012;3(l):e8-el2. doi:10.2500/ar.2012.3.0027
10.Schaitkin B, May M, Shapiro A, Fucci M, Mester SJ. Endoscopic sinus surgery: 4-year follow-up on the first 100 patients. Laryngoscope. Oct 1993;103(10):1117-20. doi:10.1288/00005537-199310000-00007
11.Sharma U, Concagh D, Core L, et al. The development of bioresorbable composite polymeric implants with high mechanical strength. Nat Mater. Jan 2018;17(1):96-103. doi:10.1038/nmat5016
12.Stammberger H. Endoscopic endonasal surgery - concepts in treatment of recurring rhinosinusitis. Part I. Anatomic and pathophysiologic considerations. Otolaryngol Head Neck Surg. Feb 1986;94(2):143-7. doi:10.1177/019459988609400202
13.Douglas RG, Psaltis AJ, Rimmer J, Kuruvilla T, Cervin A, Kuang Y. Phase 1 clinical study to assess the safety of a novel drug delivery system providing long-term topical steroid therapy for chronic rhinosinusitis. Int Forum Allergy Rhinol. Apr 2019;9(4):378-387. doi:10.1002/alr.22288
14.Hopkins C, Gillett S, Slack R, Lund VJ, Browne JP. Psychometric validity of the 22-item Sinonasal Outcome Test. Clin Otolaryngol. Oct 2009;34(5):447-54. doi:10.1111/j.1749-4486.2009.01995.x
15.Zinreich SJ. Imaging for staging of rhinosinusitis. Ann Otol Rhinol Laryngol Suppl. May 2004;193:19-23. doi:10.1177/00034894041130s506
16.Toma S, Hopkins C. Stratification of SNOT-22 scores into mild, moderate or severe and relationship with other subjective instruments. Rhinology. Jun 2016;54(2):129-33. doi:10.4193/Rhinl5.072
17.Mahdavinia M, Schleimer RP, Keshavarzian A. Sleep disruption in chronic rhinosinusitis. Expert Rev Anti Infect Ther. May 2017;15(5):457-465. doi:10.1080/14787210.2017.1294063
18.DeConde AS, Mace JC, Bodner T, et al. SNOT-22 quality of life domains differentially predict treatment modality selection in chronic rhinosinusitis. Int Forum Allergy Rhinol. Dec 2014;4(12):972-9. doi:10.1002/alr.21408
19.Chowdhury NI, Mace JC, Bodner TE, et al. Investigating the minimal clinically important difference for SNOT-22 symptom domains in surgically managed chronic rhinosinusitis. Int Forum Allergy Rhinol. Dec 2017;7(12): 1149-1155. doi:10.1002/alr.22028
20.Zitt M, Kosoglou T, Hubbell J. Mometasone furoate nasal spray: a review of safety and systemic effects. Drug Saf. 2007;30(4):317-26. doi:10.2165/00002018-200730040-00004
21.Marple BF, Smith TL, Han JK, et al. Advance II: a prospective, randomized study assessing safety and efficacy of bioabsorbable steroid-releasing sinus implants. Otolaryngol Head Neck Surg. Jun 2012;146(6):1004-11. doi:10.1177/0194599811435968
22.Kern RC, Stolovitzky JP, Silvers SL, et al. A phase 3 trial of mometasone furoate sinus implants for chronic sinusitis with recurrent nasal polyps. Int Forum Allergy Rhinol. Apr 2018;8(4):471-481. doi:10.1002/alr.22084
23.Behera SK, Radhakrishnan ST, Swain S. Nasal irrigation using saline at room temperature or body temperature: which is more beneficial in chronic rhinosinusitis? Nasal irrigation, Temperature, Chronic rhinosinusitis, Saccharine transit time. 2019. 2019-06-27 2019;5(4):4. doi:10.18203/issn.2454-5929.ijohns20192720
24.Liang J, Lane AP. Topical Drug Delivery for Chronic Rhinosinusitis. Curr Otorhinolaryngol Rep. Mar 1 2013;1(1):51-60. doi:10.1007/s40136-012-0003-4
25.Illum L. Nasal drug delivery: new developments and strategies. Drug Discov Today. Dec 1 2002;7(23):1184-9. doi:10.1016/sl359-6446(02)02529-1。
【0170】
LYR-210の薬物動態及び薬物放出
血漿中MF濃度を、LYR-210(2500μg)又はLYR-210(7500μg)を両側投与した患者から、配置後1時間(第1日)、第2日、第3日、第7日、第14日、第21日、第28日、第42日、及び第56日に評価した。
図10は、56日間の試験期間全体にわたる一定かつ用量依存的血漿中MF濃度を示す。LYR-210(2500μg)群及びLYR-210(7500μg)群において、血漿中MF濃度は、それぞれ第2日(C
max=21.5pg/mL)及び第3日(C
max=58.9pg/mL)にピークとなった。血漿中MF濃度は、第7日の後に僅かに低下し、安定状態となった。この56日間の試験では、LYR-210は、MFの一定した一日量を送達し、LYR-210(2500μg)及びLYR-210(7500μg)においてそれぞれ、12.2pg/mL及び41.2pg/mLの定常状態濃度(C
ss)を実現した。
【0171】
第56日に患者から除去したLYR-210マトリックス上に残っている総MFパーセントを、HPLC-UVで特定した。56日間の治療後に、LYR-210マトリックス上に充填した総MFのおよそ80%が残っており、LYR-210(2500μg)及びLYR-210(7500μg)マトリックスのそれぞれから、総MF用量の18.3±5.2%及び19.1±4.7%が放出されたことが分かった。
【0172】
【0173】
表12は、7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステル(MF)を含むインプラントの12週間まで薬物を送達する能力を示す。
治療のさらなる有益性
モメタゾンフロ酸エステル7500μgの用量をマトリックス当たりに含む(すなわち、鼻の各々の側に7500μg、合計で患者当たり15000μg)治療のさらなる有益性を、以下で述べる。
【0174】
2つのモメタゾンフロ酸エステルインプラント、すなわち7500μgずつのインプラントを有する患者で用量応答が見られ、それは2つの2500μgインプラントを有する患者よりも大きい改善が得られる結果であり、例えば、7500μgは、CRS症状の1又は複数のカテゴリーによって測定された場合に、中度/重度の病状を有する患者において、第24週に慢性副鼻腔炎(CRS)症状を改善する。具体的な改善したCRS症状カテゴリーとしては、限定されるものではないが、3CS、4CS、鼻づまり、鼻汁、顔面痛、及びSNOT-22スコアが挙げられる。
【0175】
LYR-210(7500μg)治療は、第24週で、3CS、4CS、鼻づまり、鼻汁、顔面痛、又はSNOT-22において、患者のCRS症状をベースラインからより重度なカテゴリーへ悪化させることはない。
【0176】
LYR-210(7500μg)は、第24週で、3CSに基づいて、軽度なCRS症状又はCRS症状なしという結果となり得る。LYR-210(7500μg)は、第24週で、一部の患者のSNOT-22スコアにおいてベースラインから50%の改善を示す。
【0177】
LYR-210(7500μg)は、治療の終了までに(第24週)、手術候補を非手術候補に変換する。変換は、少なくとも部分的に、非手術候補への変化が第24週において3CS≦4によって明確とされた場合に判断される。
【0178】
いくつかの好ましい実施形態では、治療を受けた手術候補患者は、第24週で患者の3CS≦4の場合、もはや手術候補ではない。
LYR-210(7500μg)は、治療期間中における慢性副鼻腔炎の急性増悪の発生を低減し得る。
【0179】
LYR-210(7500μg)から放出されるモメタゾンフロ酸エステルは、少なくとも第24週まで血漿中で検出可能である。
さらなるデータ分析
以下のデータは、限定されるものではないが、2500μgのモメタゾンフロ酸エステルインプラントを含むインプラントで治療した患者と比較することを含む、7500μgのモメタゾンフロ酸エステルインプラントを含む患者治療のいくつかの有益性を支持するものである。
【0180】
LANTERN:LYR-210(7500μg)は、ベースラインで中度/重度疾患を有する患者において、第24週でCRS症状の重篤度を改善する(3CSスコアに基づいて)。
【0181】
データ分析から、第24週で、少なくとも1つの3CS症状カテゴリーでの改善が示され、ベースラインで重度疾患を有する一部の患者において、中度に改善し、又は中度疾患を有する状態から軽度疾患まで改善した。データ分析から、第24週で重度疾患を有する一部の患者において、軽度疾患へ、又は中度疾患から無疾患へ、少なくとも2つの3CS症状カテゴリーで改善が示された。以下の表13を参照されたい。
【0182】
第24週において、LYR-210(7500μg)で治療した患者で、より重度なカテゴリーに悪化した患者はいなかった(3CSスコアに基づいて)。
特に、ベースラインで重度疾患を有しており、7500μgのモメタゾンフロ酸エステルインプラントで治療した患者は、第24週までに、少なくとも1つの3CS重篤度カテゴリーで改善した。より具体的には、重度疾患の7人中5人の患者(71.4%)が、中度疾患に改善し、重度疾患を有する1人の患者(14.3%)が、軽度疾患を有する状態に改善し、重度疾患を有する1人の患者(14.3%)が、疾患症状のない状態まで改善した。以下の表13を参照されたい。
【0183】
用量応答が、ある特定の疾患カテゴリー及び時間点で観察された。特に、LYR-210(2500μg)治療が、第24週においてLYR-210(7500μg)ほどの有効ではないというような用量応答が、ベースラインで重度疾患を有する患者で見られ、その場合、重度疾患を有する患者の21.4%が、重度症状を継続して有していた。比較として、ベースラインで重度疾患を有していたシャム/コントロール患者12人のうち4人が(33.3%)、第24週で重度疾患を継続して有していた。
【0184】
さらに、2500μg治療患者とは異なり、ベースラインで中度疾患を有していたLYR-210(7500μg)治療患者13人のうち12人が(92.3%)、第24週で軽度又は疾患なしの状態までの改善を示した。比較として、ベースラインで中度疾患を有していたシャム/コントロール患者11人のうち8人が(72.7%)、第24週で、改善なし(すなわち、中度のまま変わらず)又は悪化(重度へ)を経験した。以下の表13を参照されたい。
【0185】
【0186】
LANTERN:LYR-210(7500μg)は、第24週で鼻づまりの重篤度を改善する。
データ分析から、第24週で鼻づまり重篤度の改善が示され、第24週で、ベースラインで重度疾患を有する一部の患者において、中度疾患を有する状態まで改善し、又はベースラインで中度疾患を有する患者において、軽度疾患を有する状態まで改善した。データ分析から、少なくとも2つの症状カテゴリーで改善が示され、重度疾患を有する一部の患者において、第24週で軽度疾患に改善した。データ分析から、少なくとも3つの症状カテゴリーで改善が示され、重度疾患を有する一部の患者において、第24週で疾患なしの状態に改善した。
【0187】
第24週において、LYR-210(7500μg)で治療した患者で、より重度なカテゴリーに悪化した患者はいなかった。
より具体的には、ベースラインで重度疾患を有しており、LYR-210 7500μgのモメタゾンフロ酸エステルインプラントで治療した患者の100%が、第24週までに、少なくとも1つの重篤度カテゴリーで改善した。特に、重度疾患を有する患者12人のうちの7人が(58.3%)、第24週までに中度疾患に改善し、重度疾患を有する患者12人のうちの4人が(33.3%)、第24週までに軽度疾患に改善した。なおさらに、重度疾患を有する患者12人のうちの1人が(8.3%)、第24週までに疾患なしの状態に改善した。比較として、ベースラインで重度疾患を有していたシャム/コントロール患者14人のうち4人が(28.6%)、第24週で重度疾患を有するままであった。以下の表14を参照されたい。
【0188】
【0189】
LANTERN:LYR-210(7500μg)は、第24週で鼻汁の重篤度を改善する。
データ分析から、少なくとも1つの症状カテゴリーで改善が示され、第24週で、ベースラインで重度疾患を有する一部の患者において、中度疾患を有する状態に改善し、又はベースラインで中度疾患を有する患者において、軽度疾患を有する状態に改善した。データ分析から、少なくとも2つの症状カテゴリーで改善が示され、ベースラインで重度疾患を有する一部の患者において、第24週で軽度疾患を有する状態に改善した。表15を参照されたい。
【0190】
第24週において、LYR-210(7500μg)で治療した患者で、鼻汁のより重度なカテゴリーに悪化した患者はいなかった。
より具体的には、ベースラインで重度疾患を有しており、7500μgのモメタゾンフロ酸エステルインプラントで治療した患者の100%が、第24週までに、少なくとも1つの重篤度カテゴリーで改善した。特に、重度疾患を有する患者8人のうちの5人が(62.5%)、中度疾患を有する状態に改善し、一方重度疾患を有する患者8人のうちの3人が(37.5%)、軽度疾患を有する状態に改善した。ベースラインで中度であったLYR-210(7500μg)で治療した患者12人のうち11人が(91.6%)、第24週で軽度疾患を有する状態又は疾患なしの状態に改善した。比較として、ベースラインで重度疾患を有していたシャム/コントロール患者13人のうち4人が(30.8%)、第24週で重度疾患を継続して有していた。表15を参照されたい。
【0191】
【0192】
LANTERN:ベースラインから第24週までの顔面痛の改善のシフト
LYR-210(7500μg)は、第24週で、患者の顔面痛重篤度を低減する。第24週において、データ分析から、少なくとも1つの症状カテゴリーで改善が示され、第24週で、ベースラインで重度疾患を有する一部の患者において、中度疾患を有する状態に改善し、又はベースラインで中度疾患を有する患者において、軽度疾患を有する患者に改善した。データ分析から、少なくとも2つの症状カテゴリーで改善が示され、ベースラインで中度疾患を有する一部の患者において、第24週で疾患なしの状態に改善した。データ分析から、少なくとも3つの症状カテゴリーで改善が示され、ベースラインで重度疾患を有する一部の患者において、第24週で疾患なしの状態に改善した。以下の表16を参照されたい。
【0193】
第24週において、LYR-210(7500μg)で治療した患者で、顔面痛のより重度なカテゴリーに悪化した患者はいなかった。
より具体的には、ベースラインで重度疾患を有しており、7500μgのモメタゾンフロ酸エステルインプラントで治療した患者の100%が、第24週までに、少なくとも1つの重篤度カテゴリーで改善した。特に、重度疾患を有する患者4人のうちの3人が(75%)、中度疾患を有する状態に改善し、一方重度疾患を有する患者4人のうちの1人が(25%)、疾患なしの状態に改善した。さらに、ベースラインで中度疾患を有していたLYR-210(7500μg)で治療した患者15人のうち12人が(80%)、第24週で軽度疾患を有する状態又は疾患なしの状態に改善した。比較として、ベースラインで重度疾患を有していたシャム/コントロール患者12人のうち3人が(25%)、第24週で重度疾患を有するままであった。以下の表16を参照されたい。
【0194】
【0195】
LANTERN:2つの7500μgインプラントで治療した患者は、第24週で3CS症状応答の改善を示した。
2つのLYR-210 7500μgモメタゾンフロ酸エステルインプラントで治療した患者の100%が、第24週で、3CS症状重篤度において少なくとも1ポイントの減少を報告した。この改善は、コントロール/シャム患者の65.2%の改善と比較して、統計的に有意な改善を表している。
【0196】
さらに、LYR-210(7500μg)治療患者の90.5%が、第24週で、3CS症状重篤度において少なくとも2ポイントの減少を報告した。この改善は、コントロール患者の43.5%の改善と比較して、統計的に有意である。
【0197】
さらに、用量応答が示され、7500μgインプラントを有する患者は、2500μgインプラントを有する患者よりも大きい応答を示した。以下の表17を参照されたい。
【0198】
【0199】
LANTERN:2つの7500μgインプラントを有する患者は、第24週に観察される、2つの2500μgインプラントを有する患者と比較した改善の4CS用量応答を示した。
【0200】
2つのLYR-210 7500μgモメタゾンフロ酸エステルインプラントで治療した患者の100%が、第24週で、4CS症状重篤度において少なくとも1ポイントの減少を報告した。この改善は、コントロール患者の65.2%の改善と比較して、統計的に有意な改善である。2500μg治療患者と比較した7500μg治療患者の用量応答が示された。
【0201】
さらに、LYR-210(7500μg)治療患者の90.5%が、第24週で、4CS症状重篤度において少なくとも2ポイントの減少を報告した。この改善は、コントロール患者の52.2%の改善と比較して、統計的に有意である。
【0202】
なおさらに、LYR-210(7500μg)治療患者の76.2%が、第24週で、3CSにおいて少なくとも3ポイントの減少を報告した。この改善は、コントロール患者の43.5%の改善と比較して、統計的に有意である。以下の表18を参照されたい。
【0203】
【0204】
LANTERN:第24週でのSNOT-22 MCID応答(改善≧8.9)
7500μgモメタゾンフロ酸エステルインプラントで治療した患者の100%が、第24週で、SNOT-22スコアにおいて、臨床的に意義のある最小ポイント変化量である少なくとも8.9ポイント改善した。この結果は、シャム(コントロール)群の患者での改善と比較して統計的に有意である。SNOT-22の改善は、コントロールに対して統計的に有意である(p=0.0034)。以下の表19を参照されたい。
【0205】
【0206】
LANTERN:第24週における手術候補としての患者の非手術候補への変換
驚くべきことに、各インプラントに7500ugである2つのLYR-210が埋め込まれた患者のこの第24週の観察時間点において、手術候補の71.4%が、症状が3CS≦4の値を有する状態に変化した時に、非手術候補に再分類(変更)された。比較として、コントロール患者の26.1%が、同じ基準に基づいて再分類された。篩骨洞Zinreichスコア=0を有することが、再分類のための基準であると決定したものの、ここで評価した患者のいずれも、Zinreichスコア=0を有していなかった。以下の表20を参照されたい。
【0207】
さらに、高用量(7500ug)対低用量(2500ug)のインプラントを有する患者の間で、再分類における用量応答が観察された。
【0208】
【0209】
LANTERN:治療期間中のCSの急性増悪
24週間の治療期間の間、LYR-210(7500μg)治療群では、慢性副鼻腔炎の急性悪化の発生はほとんど発生しなかった。以下の表21を参照されたい。
【0210】
【0211】
LANTERN:第24週における3CSでの変化とSNOT-22での変化との間の相関
この第24週の観察時間点において、SNOT-22と3CSとは互いに強く相関しており、ベースライン疾患からの統計的に有意な改善を示している。
【0212】
さらに、3CSは、第24週でのCRSの症状に対する治療の影響の臨床的に意味のある評価を提供する。以下の表22を参照されたい。
【0213】
【0214】
LANTERN:第24週でのMFインプラントに対する少なくとも1つの正の応答
各々2つのLYR-210(7500μg)インプラントを埋め込んだ患者群は、第24週において、未治療コントロール(すなわち、インプラントなし又はMFなしのシャムインプラント)の場合よりも有意に高い割合のレスポンダーを示した。この観察結果は、表23に挙げたパラメータに基づいている。
【0215】
言い換えると、患者は、上記患者が表23に挙げたパラメータの中で少なくとも1つの正の応答を経験し、負の応答がなかった場合に、レスポンダーと見なされた。
【0216】
【0217】
LANTERN:LYR-210(7500μg)治療は、第24週での軽度又はCRS症状なしの結果となる(3CSに基づいて)。
LYR-210(7500μg)で治療した患者の70%が、第24週において軽度又はCRS症状なしへの改善を示した。これは、シャム/コントロールと比較して統計的に有意である。さらに、この分析において、LYR-210 2500μgの患者とLYR-210 7500μg治療患者との間で、用量依存的効果が見られた。
【0218】
軽度疾患を有する患者は、この分析から除外し、その除外人数は、LYR-210(7500μg)群からは1人の患者、シャム群からは0人の患者であった。以下の表24を参照されたい。
【0219】
【0220】
LANTERN:LYR-210(7500μg)は、3CSに基づいて、少なくとも1つの重篤度カテゴリーにより、CRSの症状を改善する。
インプラント埋め込み後の第24週の患者において、少なくとも1つの3CS疾患カテゴリーでの疾患重篤度改善の用量依存的効果が見られた。
【0221】
より具体的には、LYR-210(7500μg)で治療した患者の90.5%が、第24週で、少なくとも1つの3CS重篤度カテゴリーによって改善した。これは、シャム/コントロールと比較して統計的に有意である。以下の表25を参照されたい。
【0222】
【0223】
LANTERN:第24週での≧1のカテゴリーの3CS重篤度の症状なし/軽度及び改善
インプラント埋め込み後の第24週で症状なし又は軽度症状を示した患者において、少なくとも1つの3CS疾患カテゴリーでの疾患重篤度改善の用量依存的効果が見られた。
【0224】
より具体的には、LYR-210(7500μg)で治療した患者の66.7%が、第24週で症状なし又は軽度CRS症状であり、第24週で、3CSの少なくとも1つの重篤度カテゴリーで改善した。この結果は、シャム/コントロールと比較して統計的に有意である。以下の表26を参照されたい。
【0225】
【0226】
物質及び方法
治験用製品
LYR-210は、Lyra Therapeutics,Inc.(Watertown,MA,USA)によって設計、製造されている治験用製品である。LYR-210は、全体にわたって菱形の繰り返しパターンを有する管状メッシュ形状を有し、2500μgまでの(LYR-210(2500μg))又は7500μgまでの(LYR-210(7500μg))MFの24週間にわたる緩やかな放出を精密に制御し、経時で徐々に軟化するように製剤された生体適合性及び生体吸収性ポリマーから構成される。巧妙に設計された弾性特性によって、LYR-210は、解剖学的標的に対して動的に拡張することができ、24週間の期間にわたる有効で一定した局所的MF送達のために周囲の粘膜に連続的に並置することが促進される。LYR-210は、単回使用アプリケータを用い、局所麻酔後、内視鏡視野下の診療所ベースの手順で、CRS患者の、これまでの手術介入によって変形されていない中鼻道内に両側配置される。
図9Cは、アプリケータからの配置時に拘束された状態から自己拡張しているLYR-210を示す。LYR-210は、24週間で、又は医師の判断でそれよりも早期に、標準的な器具を用いて除去されることを意図している。
【0227】
試験デザイン
LYR-210(2500μg)及びLYR-210(7500μg)の有効性、安全性、及び耐容性を評価するために、これまでの医学的管理に失敗したCRS患者を、多施設無作為盲検比較対照用量設定LANTERN第II相試験に登録した。患者は、ポーランド、チェコ共和国、オーストラリア、及びニュージーランドの14の耳鼻科診療所で募集し、登録した。試験は、ヘルシンキ宣言及び医薬品の臨床試験の実施の基準ガイドラインに従って行った。試験プロトコル及び患者のインフォームドコンセントは、各国の規制要件に従って各試験施設の倫理委員会によるレビュー及び承認を受けた。患者は、試験に参加する前に、インフォームドコンセントにサインした。
【0228】
選択規準には、年齢が18歳以上の患者で、12週間以上にわたってCRSの4つの主症状(4CS)のうちの少なくとも2つを有し2,3、それまでの7日間にわたるベースライン平均4CSスコアが、0~12のスケールで7以上であることを含めた。患者は、鼻内視鏡検査で、化膿、炎症、及び/又は鼻ポリープを呈し、副鼻腔のCT又はMRIで、副鼻腔炎の放射線診断による証拠を有していた。登録患者は、「ESSまでの適切な医学療法の長さ(Length of appropriate medical therapy prior to ESS)」に対するICAR-2016ガイダンス(Orlandi RR, Kingdom TT, Hwang PH. International Consensus Statement on Allergy and Rhinology: Rhinosinusitis Executive Summary. Int Forum Allergy Rhinol. Feb 2016;6 Suppl 1:S3-21)に基づいた期間である最小で4週間にわたる経鼻コルチコステロイドスプレー(INCS)の少なくとも1回の過程を含む、CRSに対する医学的治療の少なくとも2回の試験を、LANTERN試験とは無関係に過去に受けていた。この試験に登録した患者は、この1年間だけで、スクリーニング前に平均でINCSの1.9回の過程(メジアン:2回、最大:5回)を用いたと報告した。LYR-210(7500μg)は、コントロールと比較して、INCSなしで最大で24週間までの臨床的に有意な改善を実現し、これは、単独療法としてのその使用の可能性を支持するものである。したがって、LYR-210の考え得る利点は、現実でのINCSによる患者コンプライアンスの問題を排除し、治療負担を軽減する見込みがあることである。LYR-210(7500μg)を投与した患者の100%が、第24週でSNOT-22におけるMCIDを実現し、これは、LYR-210(2500μg)及びコントロールアームのいずれよりも優れていた。この試験で報告されたデータは、SNOT-22におけるMCIDとして8.9ポイントを用いて分析しているが14、MCIDはまた、医学的に管理されたCRS患者において12ポイントであるとも報告されている26。代わりにこの12ポイントのMCIDを用いた場合、この試験のコントロールアームの患者の65%と比較して、LYR-210(7500μg)を投与した患者の90%が、第24週でこのMCIDを実現した。
【0229】
患者の除外規準には、これまでのFESS歴、鼻内視鏡検査による著しい粘膜損傷の証拠(例:潰瘍又はびらん)、鼻中隔穿孔、中鼻道へのアクセス又はその視覚化を妨げる鼻ポリープによる重度な鼻づまり、同時発症の季節性アレルギー性鼻炎(無作為化の4週間以内に症状の発症が予測される場合)、通年性アレルギー性鼻炎(INCSの定期的な使用によって充分に制御されている場合)、又は重度な喘息を含めた。加えて、患者が、スクリーニングMRIで、後篩骨洞、前頭洞、及び蝶形骨洞の3対において4未満の両側Zinreichスコア(各鼻洞に対して0~5のスケール)を呈した場合は、除外した。局所麻酔若しくはコルチコステロイドに不耐容性であった、スクリーニング前の1カ月以内に全身コルチコステロイド(SCS)を受けた、又は免疫不全の病歴若しくは証拠、頭蓋内若しくは眼窩合併症、菌腫/真菌球の証拠、鼻洞粘液嚢胞、若しくは侵襲性真菌性副鼻腔炎を有していた患者も除外した。
【0230】
試験評価に干渉する可能性があり得るある特定の薬物治療は、レスキュー治療としてそれらを使用する場合を除いて、スクリーニング来院の時点から試験の終了まで許容されなかった。そのようなレスキュー薬物治療としては、経鼻コルチコステロイド(INCS)、経口/筋肉内コルチコステロイド(スクリーニング前の少なくとも3か月間にわたって投与されており、試験期間全体にわたって維持されることになる喘息のための吸入コルチコステロイドの安定レジメン以外)、経口うっ血除去薬、及びモノクローナル抗体が挙げられ得る。抗アレルギー薬物治療は、患者が、スクリーニング来院から試験期間を通して一定用量でそのような薬物治療を継続する場合にのみ許可された。
【0231】
スクリーニング評価の後、患者は、14日間の最小ウォッシュアウト期間を経た。患者は、ウォッシュアウト期間の開始から24週間の治療期間の終了まで毎日、鼻生理食塩水洗浄を提供され、使用するように指示された。患者は、ウォッシュアウト期間の間、CRSのための他の有効治療を受けなかった。ウォッシュアウト期間の後、手順を行う日(第1日)に、患者を、中鼻道へのLYR-210(7500μg)の両側投与、中鼻道へのLYR-210(2500μg)の両側投与、又は毎日の生理食塩水洗浄のみのコントロール、の3つの試験アームのうちの1つに無作為化した(1:1:1)。試験治療の割り当てに対する患者の盲検化を確実に維持するために、コントロールアームに無作為化された患者は、アプリケータを中鼻道へ挿入し、引き抜くというシャム手順も受けた。患者は、手順の前に局所麻酔及びうっ血除去薬を受け、治療割り当てに対する盲検化を確保するために、目隠しを着用した。臨床試験責任者及び臨床スタッフは、LYR-210対コントロールに対しては非盲検化されていたが、投与したLYR-210の用量に対しては盲検化されていた。スポンサーは、試験に対して盲検化されていた。
【0232】
患者は、第4週、12週、及び24週に、フォローアップ評価のために再来院し、第8週、16週、及び20週には、電話でのフォローアップを受け、何らかの有害事象(AE)及び付随する薬物治療/手順を記録した。試験治療割り当てに対する盲検化を維持するために、患者は、すべてのスクリーニング後来院において、内視鏡検査時のみアイマスクを着用した。第24週(治療終了)の来院時に、標準的な器具を用いてLYR-210(2500μg)又はLYR-210(7500μg)を除去し、コントロール患者は、シャム除去手順を受けた。治療終了の来院後、患者は、およそ24週間継続する治療後フォローアップ期間を経た。LANTERN第II相試験デザインを、
図1にまとめて示す。
【0233】
安全性評価
安全性は、AE率、並びに研究室検査、バイタルサイン、朝の血清コルチゾールレベル、鼻内視鏡検査評価、眼圧(IOP)、及びスリットランプ検査における変化によって評価した。AEは、Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA)の辞書のバージョン23.0を用いてコード化した。AEは、試験全体にわたって記録し、重篤度及び試験治療又は手順との関連性について報告した。AEの重篤度は、試験責任者によって、軽度、中度、又は重度にランク付けした。
【0234】
眼の安全性は、ベースライン、及び第4週、12週、及び24週でのIOPの測定、並びにベースライン及び第24週での水晶体混濁の存在についての水晶体の散瞳(dilated)スリットランプ検査を介して評価した。水晶体混濁度は、WHO/PBD Simplified Cataract Grading Systemを用いてランク付けした。眼の評価は、患者が受けた試験治療に対して盲検化されている眼科医が実施した。
【0235】
有効性評価
患者報告による症状及び毎日の生理食塩水洗浄の使用は、電子的患者報告アウトカム(ePRO)システムを用いて捕捉した。患者は、CRSの各4CSに対するスコアを、第1日の来院の少なくとも7日前から開始し、24週間の治療期間全体にわたって継続して、ePRO上で毎朝報告した。4つの症状(鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、鼻汁、及び嗅覚消失)の各々を、0~3のスケールでランク付けした(0=なし、1=軽度、2=中度、3=重度)。患者はまた、ベースライン、並びに第2週、4週、8週、12週、16週、20週、及び24週に、SNOT-2214を介してCRSの症状の重篤度及び社会的/感情的結果も記録した。副鼻腔炎症の低減におけるLYR-210の効果を評価するために、患者は、ベースライン及び治療終了時(第24週)に副鼻腔のMRI検査を受けた。各前篩骨洞及び後篩骨洞における鼻洞陰影のレベルを、0~5のスケール(0=0%、1=1~25%、2=26~50%、3=51~75%、4=76~99%、及び5=100%又は完全に隠された状態)で陰影のパーセントを分類するZinreich(改変Lund-Mackay)スコアシステムを用い、独立した画像診断コアラボによってスコア付けした15。最初のレスキュー治療使用までの時間も評価し、これは、責任者がINCS、SCS、うっ血除去薬、及び/又はFESSを推奨する結果となる登録対象でのCRSの悪化又は急性増悪として定義した。
【0236】
データ分析
未完了の又は成功した試験治療手順を受けた患者は、安全性分析に含めた(安全性集団)。有効性分析は、成功した試験治療手順を受け、少なくとも1つの無作為化後有効性評価を行った患者を含む治療の意図(ITT)集団に対して実施した。患者の人口統計学特性、既往歴、及びベースライン疾患特性を、ITT患者集団内での患者の頻度又はパーセントとして報告した。治療下で発現したAEは、その事象を経験した患者のカウント数として報告した。ベースラインからの変化(CFBL)の主要評価項目及び副次的評価項目については、治療群、ベースラインスコア、及び層別化変数(鼻アレルギー、鼻ポリープ)に対して調節した共分散分析(ANCOVA)モデルを用い、0.05の片側有意水準で検定した。
【0237】
多重性に対する調節は行わなかった。CFBLの平均は、特に記載のない限り、ANCOVAモデルからの最小二乗平均値(LSM)として、標準誤差(SE)と共に報告した。最初のレスキュー治療使用までの時間は、Kaplan-Meier法及びハザード比を用いて分析した。イベントを実現しなかった対象は、最終治療日又は早期中止日に打ち切りとした。ハザード比、両側90%CI、及びp値は、0.05の片側有意水準で検定し、Cox比例ハザードモデルから得られる。症状ベースの評価項目では、患者が、試験から脱落した場合、又はそれ以外では、試験期間中に特定に時間点に対するデータを報告しなかった場合、直近観察データによる補完(LOCF)の手法を用いて欠落した値を代入した。加えて、治療期間中にレスキュー治療を必要とした患者の場合、レスキュー後のデータは欠落したものと定め、レスキュー後の時間点に対する値は、LOCFを用いて代入した。統計分析は、SASバージョン9.4以上を用いて実施した。
【0238】
様々な実施形態が、本明細書で具体的に示され、記載されるが、本開示の改変及び変更が、上記教示内容によって包含され、本開示の趣旨及び意図する範囲から逸脱することなく、添付の請求項の範囲内であることは理解される。
【0239】
別の選択肢としての実施形態
本発明のインプラント型デバイスの1つの例示的実施形態では、活性成分を含有する透過性、非透過性、又は半透過性のシートを備えたデバイスである。シートは、透過性、非透過性、又は半透過性の膜と見なされ得る。シートを備えたデバイスの実施形態は、
図11に見られるように、浸透圧薬物送達コンポーネントを含有し得る。透過性又は半透過性シートが、拡げられた状態又は巻かれた状態で埋め込まれ得る。巻かれた実施形態では、巻かれたシートは、内部空洞を備える。この例示的な実施形態では、薬物送達コンポーネントは、オスモゲンの非存在下又は存在下、薬物(例:MF)又は他の有効活性成分(API)を含有する半透過性ポリマー中空シートを備える。
【0240】
インプラント型デバイスは、1又は複数の繊維又はシートなどの、透過性、非透過性、又は半透過性の膜を備え得る。1つの実施形態の流体に対する透過性は、透過性材料の使用によって実現される。別の実施形態では、透過性は、中空繊維又はシート壁上にある1又は複数の送達開口部によって実現される。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、25、50、100、200、1000などが挙げられるがこれらに限定されないいかなる数の開口部も企図される。孔を有する金属管を例とする非透過性の実施形態も企図され、上記孔は、ドリル加工され得る。
【0241】
1つの実施形態では、本明細書のデバイスは、コーティング又は被覆されていてもよい。本発明は、エラストマーなどの種類、厚さ、又はコーティングの被覆度(例:部分的に又は完全に)によって限定されることを意図するものではない。デバイスは、完全にコーティングされていても、又は部分的にコーティングされていてもよい。1つの実施形態では、中空繊維又はシートなどの透過性又は半透過性の膜の上に、いずれかの送達開口部を被覆している又はいずれの送達開口部も被覆していないエラストマーコーティングが存在し得る。エラストマーは、インプラントに自己拡張性を付与するために、インプラント上にコーティングされ得る。1又は複数の開口部が、エラストマーコーティングの前又は後のいずれかに、半透過性膜上に形成され得る。コーティングは、数ある可能性の中でも、例えば、約1μm~約25μmの範囲内(例:約1~2~5~20~25μmの厚さの範囲内)の厚さであり得る。コーティング厚さはまた、1μm未満であっても、又は25μm超であってもよい。
【0242】
1つの実施形態では、本明細書のデバイスは、コーティング又は被覆されていてもよい。本発明は、種類、厚さ、又はエラストマーなどのコーティングの被覆率によって限定されることを意図するものではない。デバイスは、完全にコーティングされていても、又は部分的にコーティングされていてもよい。1つの実施形態では、
図11に見られるように、中空繊維又はシートなどの透過性又は半透過性の膜の上に、いずれかの送達開口部を被覆している又はいずれの送達開口部も被覆していないエラストマーコーティングが存在し得る。エラストマーは、インプラントに自己拡張性を付与するために、インプラント上にコーティングされ得る。1又は複数の開口部が、エラストマーコーティングの前又は後のいずれかに、半透過性膜上に形成され得る。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
副鼻腔手術の候補である対象において手術が必要となることを防止するための、中鼻道の内部にフィットするように構成されたインプラントであって、前記インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含むコーティングを備え、前記インプラントは、前記モメタゾンフロ酸エステルの少なくとも60%に対してゼロ次放出を呈するように構成されており、前記インプラントは、手術の前に前記対象に送達されることを特徴とする、インプラント。
【請求項2】
前記対象が、少なくとも4か月間にわたって治療される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記ゼロ次放出が、37℃の2%SDSを含有するpH7.4のPBS緩衝液中、生体外で呈される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
慢性の鼻洞病状を治療する方法に用いるためのものである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記慢性の鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、請求項3に記載のインプラント。
【請求項7】
網目状構造である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
管状構造である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
自己拡張型である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
少なくとも13mmの直径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
少なくとも10mmの長さを有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
副鼻腔手術の候補である対象において手術が必要となることを防止するための組み合わせであって、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを含み、前記第一のインプラントは、前記対象の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、前記モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたってゼロ次放出を有するように構成され、及び前記第二のインプラントは、前記対象の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、前記モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたってゼロ次放出を有するように構成されており、前記組み合わせは、手術の前に前記対象に送達されることを特徴とし、前記対象は、少なくとも4か月間にわたって治療される、組み合わせ。
【請求項13】
前記対象が、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補である、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項14】
前記第一及び第二のインプラントが、最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項15】
前記第一及び第二のインプラントの前記各々が、第1週の後に、ゼロ次放出を呈するように構成される、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項16】
前記ゼロ次放出が、37℃の2%SDSを含有するpH7.4のPBS緩衝液中、生体外で呈される、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項17】
慢性の鼻洞病状を治療する方法に用いるためのものである、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項18】
前記慢性の鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、請求項17に記載の組み合わせ。
【請求項19】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項20】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項21】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、らせん状ストランドを備える、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項22】
前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項23】
約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含む自己拡張型インプラント型デバイス。
【請求項24】
網目状構造である、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
管状構造である、請求項23に記載のデバイス。
【請求項26】
らせん状ストランドを備える、請求項23に記載のデバイス。
【請求項27】
少なくとも1つのコーティングを備え、前記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する、請求項23に記載のデバイス。
【請求項28】
中鼻道空間に追随するように構成される、請求項23に記載のデバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0242
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0242】
1つの実施形態では、本明細書のデバイスは、コーティング又は被覆されていてもよい。本発明は、種類、厚さ、又はエラストマーなどのコーティングの被覆率によって限定されることを意図するものではない。デバイスは、完全にコーティングされていても、又は部分的にコーティングされていてもよい。1つの実施形態では、
図11に見られるように、中空繊維又はシートなどの透過性又は半透過性の膜の上に、いずれかの送達開口部を被覆している又はいずれの送達開口部も被覆していないエラストマーコーティングが存在し得る。エラストマーは、インプラントに自己拡張性を付与するために、インプラント上にコーティングされ得る。1又は複数の開口部が、エラストマーコーティングの前又は後のいずれかに、半透過性膜上に形成され得る。
[1]鼻洞病状を治療する方法であって、a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを提供することであって、前記第一のインプラントは、患者の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成され、前記第二のインプラントは、前記患者の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されている、提供すること、b)前記第一及び第二のインプラントを、鼻洞病状の症状を有する患者の第一及び第二の中鼻道に埋め込むこと、及び、c)1又は複数の症状における低減を検出することによって、前記鼻洞病状を治療すること、を含む、方法。
[2]各インプラント中に配置された前記モメタゾンフロ酸エステルが、12週間以上の計画された埋め込み期間にわたってゼロ次放出を呈する、[1]に記載の方法。
[3]1又は複数の症状における前記低減が、SNOTスコアに反映される、[1]に記載の方法。
[4]前記鼻洞病状が、慢性の鼻洞病状である、[1]に記載の方法。
[5]前記鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、[1]に記載の方法。
[6]前記鼻洞病状が、12週間にわたって継続する、鼻汁、鼻閉塞若しくは鼻閉感、嗅覚減弱、及び顔面圧迫感若しくは顔面痛から成る群より選択される2つ以上の症状を特徴とする、[1]に記載の方法。
[7]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、[1]に記載の方法。
[8]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、[1]に記載の方法。
[9]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、[1]に記載の方法。
[10]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、シートとして構成される、[1]に記載の方法。
[11]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、巻かれたシートとして構成される、[9]に記載の方法。
[12]前記低減が、前記埋め込み期間の第24週において、SNOT-22スコアの50%の改善を含む、[3]に記載の方法。
[13]前記低減が、前記埋め込み期間の第24週での無症状を含む、[1]に記載の方法。
[14]副鼻腔手術の候補である対象において手術が必要となることを防止するための、中鼻道の内部にフィットするように構成されたインプラントであって、前記インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含むコーティングを備え、前記インプラントは、前記モメタゾンフロ酸エステルの少なくとも60%に対してゼロ次放出を呈するように構成されており、前記インプラントは、手術の前に前記対象に送達されることを特徴とする、インプラント。
[15]前記対象が、少なくとも4か月間にわたって治療される、[12]に記載のインプラント。
[16]最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、[12]に記載のインプラント。
[17]前記ゼロ次放出が、37℃の2%SDSを含有するpH7.4のPBS緩衝液中、生体外で呈される、[12]に記載のインプラント。
[18]慢性の鼻洞病状を治療する方法に用いるためのものである、[12]に記載のインプラント。
[19]前記慢性の鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、[16]に記載のインプラント。
[20]網目状構造である、[12]に記載のインプラント。
[21]管状構造である、[12]に記載のインプラント。
[22]自己拡張型である、[12]に記載のインプラント。
[23]少なくとも13mmの直径を有する、[12]に記載のインプラント。
[24]少なくとも10mmの長さを有する、[12]に記載のインプラント。
[25]鼻洞病状を治療する方法であって、a)第一及び第二のインプラントを、鼻洞病状を有する患者の第一及び第二の中鼻道に埋め込むことであって、前記患者は、副鼻腔手術の候補であり、各インプラントは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを備える、埋め込むこと、及びb)1又は複数の症状における低減を検出すること、を含み、20週間後、前記患者は、もはや副鼻腔手術の候補ではなくなることによって、前記鼻洞病状が治療される、方法。
[26]前記患者が、症状のSNOTスコアに基づいて、副鼻腔手術の候補である、[24]に記載の方法。
[27]前記患者が、SNOTスコアに基づいて、もはや副鼻腔手術の候補ではない、[24]に記載の方法。
[28]前記患者が、鼻づまり、顔面痛/顔面圧迫感、及び鼻汁を含む3つの主症状のコンポジットスコア(3CS)に基づいて、もはや副鼻腔手術の候補ではない、[24]に記載の方法。
[29]前記患者が、3CS≦4である場合に、もはや副鼻腔手術の候補ではない、[24]に記載の方法。
[30]副鼻腔手術の候補である対象において手術が必要となることを防止するための組み合わせであって、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する少なくとも1つのコーティングを各々が備える第一及び第二のインプラントを含み、前記第一のインプラントは、前記対象の第一の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、前記モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたってゼロ次放出を有するように構成され、及び前記第二のインプラントは、前記対象の第二の中鼻道の内部にフィットするように構成されて、前記モメタゾンフロ酸エステルは、12週間超にわたってゼロ次放出を有するように構成されており、前記組み合わせは、手術の前に前記対象に送達されることを特徴とし、前記対象は、少なくとも4か月間にわたって治療される、組み合わせ。
[31]前記対象が、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)の候補である、[30]に記載の組み合わせ。
[32]前記第一及び第二のインプラントが、最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、[30]に記載の組み合わせ。
[33]前記第一及び第二のインプラントの前記各々が、第1週の後に、ゼロ次放出を呈するように構成される、[30]に記載の組み合わせ。
[34]前記ゼロ次放出が、37℃の2%SDSを含有するpH7.4のPBS緩衝液中、生体外で呈される、[30]に記載の組み合わせ。
[35]慢性の鼻洞病状を治療する方法に用いるためのものである、[30]に記載の組み合わせ。
[36]前記慢性の鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、[35]に記載の組み合わせ。
[37]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、[30]に記載の組み合わせ。
[38]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、[30]に記載の組み合わせ。
[39]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、らせん状ストランドを備える、[15]に記載の組み合わせ。
[40]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、[15]に記載の組み合わせ。
[41]鼻洞病状を治療する方法であって、
a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、
b)前記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する第一の患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、
c)前記第二のインプラントを、前記第一の患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、及び
d)前記第一の患者の鼻洞病状を、少なくとも12週間の期間にわたってモニタリングすること、を含み、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第一の患者は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた鼻洞病状を有する第二の患者と比較した場合、レスキュー治療の必要性の低減を呈する、方法。
[42]前記第一及び第二のインプラントが、最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、[41]に記載の方法。
[43]前記第一の患者の前記鼻洞病状が、2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた第二の患者よりも素早く改善する、[41]に記載の方法。
[44]前記鼻洞病状が、慢性の鼻洞病状である、[41]に記載の方法。
[45]前記鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、[41]に記載の方法。
[46]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、[41]に記載の方法。
[47]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、[41]に記載の方法。
[48]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、[41]に記載の方法。
[49]前記インプラントが、らせん状ストランドを備える、[41]に記載の方法。
[50]前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも16週間の期間にわたって行われる、[41]に記載の方法。
[51]前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも20週間の期間にわたって行われる、[41]に記載の方法。
[52]前記第一及び第二のインプラントが、各々少なくとも1つのコーティングを備え、前記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する、[41]に記載の方法。
[53]鼻洞病状を治療する方法であって、
a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、
b)前記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する第一の患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、
c)前記第二のインプラントを、前記第一の患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、及び
d)前記第一の患者の鼻洞病状を、少なくとも12週間の期間にわたってモニタリングすること、を含み、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第一の患者は、生理食塩水による洗浄治療のみが与えられモメタゾンフロ酸エステルは与えられていない鼻洞病状を有する第二の患者と比較した場合、レスキュー治療の必要性の低減を呈する、方法。
[54]前記第一及び第二のインプラントが、最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、[53]に記載の方法。
[55]前記第一の患者の前記鼻洞病状が、前記第二の患者と比較した場合に改善する、[53]に記載の方法。
[56]前記鼻洞病状が、慢性の鼻洞病状である、[53]に記載の方法。
[57]前記鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、[53]に記載の方法。
[58]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、[53]に記載の方法。
[59]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、[53]に記載の方法。
[60]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、[53]に記載の方法。
[61]前記インプラントが、らせん状ストランドを備える、[53]に記載の方法。
[52]前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも16週間の期間にわたって行われる、[53]に記載の方法。
[63]前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも20週間の期間にわたって行われる、[53]に記載の方法。
[54]前記第一及び第二のインプラントが、各々少なくとも1つのコーティングを備え、前記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する、[53]に記載の方法。
[65]鼻洞病状を治療する方法であって、
a)約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、
b)前記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する第一の患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、
c)前記第二のインプラントを、前記第一の患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、及び
d)前記第一の患者の鼻洞病状を、少なくとも8週間の期間にわたってモニタリングすること、を含み、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第一の患者は、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた鼻洞病状を有する第二の患者よりも素早く改善する、方法。
[66]約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第一の患者における前記改善が、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれた前記第二の患者と比較した場合、前記インプラントの埋め込み後、少なくとも8週間という早さで観察される、[65]に記載の方法。
[67]前記第一及び第二のインプラントが、最初の12週間の間に、前記モメタゾンフロ酸エステルの20~80%を放出するように構成される、[65]に記載の方法。
[68]前記鼻洞病状が、慢性の鼻洞病状である、[65]に記載の方法。
[69]前記鼻洞病状が、鼻閉塞、鼻閉感、鼻道を通しての呼吸困難、鼻ポリープ、鼻汁、嗅覚消失、及び顔面痛から成る群より選択される少なくとも2つの症状を特徴とする、[65]に記載の方法。
[70]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、網目状構造である、[65]に記載の方法。
[71]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、管状構造である、[65]に記載の方法。
[72]前記第一又は第二のインプラントのうちの少なくとも一方が、自己拡張型である、[65]に記載の治療法。
[73]前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも16週間の期間にわたって行われる、[65]に記載の方法。
[74]前記第一の患者の鼻洞病状の前記モニタリングが、少なくとも20週間の期間にわたって行われる、[65]に記載の方法。
[75]前記第一及び第二のインプラントが、各々少なくとも1つのコーティングを備え、前記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する、[65]に記載の方法。
[76]前記インプラントが、らせん状ストランドを備える、[65]に記載の方法。
[77]前記第一の患者が、鼻ポリープを有する患者である、[65]に記載の方法。
[78]前記7500μgインプラントが、前記第一の患者のためのレスキュー治療使用を低減した、[65]に記載の方法。
[79]前記7500μgインプラントが、前記第一の患者における第24週でのX線篩骨洞陰影を低減した、[65]に記載の方法。
[80]e)前記第一の患者におけるモメタゾンフロ酸エステルの血漿中濃度を測定すること、をさらに含む、[65]に記載の方法。
[81]前記患者が、用量依存的血漿中濃度を示した、[80]に記載の方法。
[82]前記患者が、56日間にわたって前記用量依存的血漿中濃度を示した、[81]に記載の方法。
[83]約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含む自己拡張型インプラント型デバイス。
[84]網目状構造である、[83]に記載のデバイス。
[85]管状構造である、[83]に記載のデバイス。
[86]らせん状ストランドを備える、[83]に記載のデバイス。
[87]少なくとも1つのコーティングを備え、前記コーティングは、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを含有する、[83]に記載のデバイス。
[88]中鼻道空間に追随するように構成される、[83]に記載のデバイス。
[89]鼻洞病状を治療する方法であって、
a)モメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを提供すること、
b)前記第一のインプラントを、鼻洞病状を有する患者の第一の中鼻道内部に埋め込むこと、
c)前記第二のインプラントを、前記患者の第二の中鼻道内部に埋め込むこと、
d)前記第一及び第二のインプラントを前記患者から除去すること、及び
e)前記インプラントを除去した後、少なくとも4週間の期間にわたって前記患者の鼻洞病状の改善を検出すること、
を含む、方法。
[90]前記患者が、約7500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれる、[89]に記載の方法。
[91]前記患者が、約2500マイクログラムのモメタゾンフロ酸エステルを各々が含む第一及び第二のインプラントを埋め込まれる、[89]に記載の方法。
[92]前記患者の鼻洞病状において検出される前記改善が、鼻づまり、顔面痛、鼻汁(前側/後側)、及び/又は嗅覚消失の低減である、[89]に記載の方法。
[93]前記患者の病状が、インプラントを除去した後、少なくとも8週間の期間にわたって改善を継続する、[89]に記載の方法。
[94]前記患者の病状が、インプラントを除去した後、少なくとも12週間の期間にわたって改善を継続する、[89]に記載の方法。
[95]前記患者の病状が、インプラントを除去した後、少なくとも16週間の期間にわたって改善を継続する、[89]に記載の方法。
[96]前記インプラントが、24週間後に除去される、[89]に記載の方法。
【国際調査報告】