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  • 特表-ガス燃料を製造するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ガス燃料を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240315BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240315BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20240315BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20240315BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240315BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
F02M21/02 F
H01M8/12 101
H01M8/04014
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555175
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022055989
(87)【国際公開番号】W WO2022189484
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】PA202100250
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ホイロン・ニルスン・ポウル・イーレク
(72)【発明者】
【氏名】ハンスン・ジョン・ブーイル
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB22
5H127AB24
5H127AC15
5H127AC18
5H127BA01
5H127BA21
5H127BA28
5H127BA43
5H127BA44
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127DB43
5H127DC53
(57)【要約】
本発明は、以下の含むガス燃料の製造方法に関する:
(a)アンモニアのガス流を供給するステップ;
(b)アンモニアのガス流を、第1のサブストリームと第2のサブストリームとに分割するステップ;
(c)第1のサブストリームを固体酸化物燃料電池に導入するステップ;
(d)固体酸化物燃料電池内で行われる電気化学反応によって生じる熱によって、第1のサブストリーム中のガスアンモニアを水素と窒素に分解するステップ;
(e)ステップ(d)で形成された水素と窒素を含むオフガスを固体酸化物燃料電池から取り出すステップ;
(f)オフガスをガスアンモニアの第2のサブストリームと混合してガス燃料を供給するステップ、ここで固体酸化物燃料電池は35~70%の燃料利用率で作動する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アンモニアのガス流を供給するステップ;
(b)アンモニアのガス流を、第1のサブストリームと第2のサブストリームとに分割するステップ;
(c)第1のサブストリームを固体酸化物燃料電池に導入するステップ;
(d)固体酸化物燃料電池内で行われる電気化学反応によって生じる熱によって、第1のサブストリーム中のガスアンモニアを水素と窒素に分解するステップ;
(e)ステップ(d)で形成された水素と窒素を含むオフガスを固体酸化物燃料電池から取り出すステップ;
(f)オフガスをガスアンモニアの第2のサブストリームと混合してガス燃料を供給するステップを含むガス燃料の製造方法であって、
固体酸化物燃料電池は35~70%の燃料利用率で作動する、前記製造方法。
【請求項2】
固体酸化物燃料電池からのオフガスの一部が燃料電池のアノードにリサイクルされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アンモニアのガス流が、加圧された液体アンモニア源から供給され、この液体アンモニア源は、エキスパンダで加熱膨張されてアンモニアのガス流を形成する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
電気エネルギーがエキスパンダ中で生成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
電気エネルギーが、固体酸化物燃料電池のカソード室に空気を吹き込むためのブロワーの作動に利用される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
電気エネルギーが、固体酸化物燃料電池からのオフガスの一部を燃料電池のアノード室にリサイクルするためのコンプレッサーの作動に利用される、請求項4記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアと水素に基づくガス燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、本発明によるガス燃料は、燃料利用率を低下させて燃料電池が作動する際に、固体酸化物燃料電池中のアンモニア供給物の一部を水素と窒素に分解し、燃料電池からの水素と窒素を含有するオフガスを、ガス燃料へのアンモニア供給物の残りと混合することによって製造される。このようにして、ガスエンジン用の有用な燃料が製造される。
【0003】
現在、再生可能なアンモニアを燃料として使用し、燃焼エンジン、ガスタービン、または燃料電池で動力を生産することへの関心が急速に高まっている。
【0004】
燃焼エンジンは、燃焼特性が悪いため純粋なアンモニアでは作動できず、より優れた特性を持つ別の燃料を共供給する必要がある。
【0005】
そこで、水素をアンモニアと一緒に燃焼させる研究が進められてきた。水素は、燃焼エンジンの上流にある専用の分解装置でアンモニアの一部を分解することで簡便に製造できる。しかし、このような分解装置は高価であり、処理されたアンモニアに含まれる低位発熱量の最大13%を使用する。
【0006】
固体酸化物燃料電池(SOFC)も、非常に高効率の独立型プラントで、アンモニアを熱と電力に変換するのに使用できる。SOFCプラントは、残念ながらガスエンジンに比べてはるかに資本コストが高い。しかし、SOFCスタックは、燃料電池作動からの廃熱を利用してアンモニア分解を駆動し、同時に電力を生産する、非常に効率的なアンモニア分解機(アンモニアクラッカー)として作動される。
【0007】
すでに述べたように、燃焼エンジンは純粋なアンモニアでは作動しない。これは、専用のアンモニア分解装置でアンモニアの一部を水素と窒素に分解することで解決できる。しかし、これには多額の投資が必要で、効率の低下も伴う。あるいは、例えば、DMEのような別の燃料を燃焼特性向上剤として使用することもできるが、この場合、貯蔵設備を含む二重燃料システムが必要となり、また、代替燃料は、再生可能資源から生産される場合、アンモニアよりも高価になる可能性が高い。
【0008】
SOFCの燃料としてアンモニアを使用した発電はよく知られており、未反応のアノードオフガスを変換するためにガスエンジンを使用することも提案されている。しかし、その焦点は常にSOFCからの電気出力と効率を最大化することであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アンモニアを水素と窒素に分解するSOFCの能力をガスエンジンと組み合わせて利用することに基づいており、SOFCの燃料利用率を低い範囲に維持しながら、SOFC中においてアンモニアを十分に変換する。これにより、ガスエンジンへの燃料混合中の最小量の水素は、SOFCプラントからの非変換オフガスによって供給される。
【0010】
したがって、本発明は、以下のステップを含むガス燃料の製造方法を提供する:
(a)アンモニアのガス流を供給するステップ;
(b)アンモニアのガス流を、第1のサブストリームと第2のサブストリームとに分割するステップ;
(c)第1のサブストリームを固体酸化物燃料電池に導入するステップ;
(d)固体酸化物燃料電池内で行われる電気化学反応によって生じる熱によって、第1のサブストリーム中のガスアンモニアを水素と窒素に分解するステップ;
(e)ステップ(d)で形成された水素と窒素を含むオフガスを固体酸化物燃料電池から取り出すステップ;
(f)オフガスをガスアンモニアの第2のサブストリームと混合してガス燃料を供給するステップ、
ここで固体酸化物燃料電池は35~70%の燃料利用率で作動する。
【0011】
SOFCの燃料としてアンモニアを使用する場合、アノード室で2つの反応が起こる:
【化1】
【0012】
燃料利用率、すなわちSOFC中において変換されるアンモニアと水素の量は次のように定義される:
【数1】
【0013】
一例として、0.7V、0.8V、0.9Vの作動電圧では、それぞれ33.5%、40.4%、50.9%の最小燃料利用率が得られる。
【0014】
本発明は以下の利点を提供する:
-専用の分解装置への投資を回避できる。
-分解反応を駆動するためのアンモニアの寄生損失がない。それどころか、アンモニアを水素と窒素に変換する間に電力を発生する。
-SOFCユニットは低燃料利用率(アンモニアと水素の変換)で作動できるため、SOFCスタックへの投資が安価になる。
-SOFCの燃料利用率が低いため、カソード側の過剰な空気流によって除去される廃熱が少なくなり、空気圧縮機とカソード供給/排出交換の節約につながる。
【0015】
一実施形態においては、アンモニアのガス流は、加圧された液体アンモニア源から供給され、この液体アンモニア源は、加熱され、エキスパンダで膨張されてアンモニアのガス流を形成する。
【0016】
一実施形態においては、固体酸化物燃料電池からのオフガスの一部は、燃料電池のアノードにリサイクルされる。
【0017】
加圧されたアンモニアをエキスパンダで膨張させる際、エキスパンダで電気エネルギーを発生させることができる。電気エネルギーは、本発明による方法における多数の装置の駆動に利用することができる。
【0018】
したがって、一実施形態においては、電気エネルギーはエキスパンダ内において生成される。
【0019】
一実施形態においては、電気エネルギーは、固体酸化物燃料電池のカソード室に空気を吹き込むためのブロワー(送風機)を作動させるために利用される。
【0020】
一実施形態においては、電気エネルギーは、固体酸化物燃料電池からのオフガスの一部を燃料電池のアノード室にリサイクルするためのコンプレッサーの作動に利用される。
【0021】
本発明は、船舶に搭載されるエンジンのガス燃料の製造や、既存のエンジンのガス燃料システムの改修に有利に利用できる。さらに、本発明は、熱と電気の組み合わせプラントの作動にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明を図1参照してさらに詳細を説明する。図1は、本発明の具体的な実施形態による方法を示すフローシートである。
【0023】
供給原料は加圧されたアンモニアであり、加圧タンクから取り出されるか、または液体の冷蔵アンモニアの形で圧送される。このアンモニアは、熱交換器E1においてガスエンジンからの排気ガス中の顕熱によって気化され、ターボエキスパンダで大気圧近くまで膨張される前に、熱交換器E2において同じ排気ガスによってさらに加熱される。
【0024】
このエキスパンダが発電に使用され、アンモニアプラントでアンモニアを凝縮する際に投入されるエネルギーが利用される。その後、アンモニアの一部は、オプションの冷却器E9を経由してガスエンジンに送られる。残りのアンモニアは、SOFCのアノードから再循環されたガスと混合され、供給/排出熱交換器E3でSOFCの作動温度まで加熱される。アンモニアと再循環されたアノードオフガスは、SOFCのアノード室で電気と熱に変換される。アンモニアは、アノード室内で水素の酸化による廃熱によって効果的に分解される。
【0025】
SOFCにおける水素の変換は、ガスエンジンへの水素供給が主目的であるため、意図的に低く抑えられている。
【0026】
SOFCを出た後、アノードオフガスはアノード供給/排出交換器E3で冷却され、2つの流れ2081と1070に分かれる。次に、マイナーストリーム2081は、アノードリサイクル供給/排出熱交換器E200でさらに冷却され、アノードのリサイクルガスブロワーに入る前に冷却器E100で冷却される。
【0027】
アノードリサイクルガス流は、以下に従う純アンモニアによる窒化によって材料劣化を避けるため、水素リッチガスをE3およびSOFCに供給するために提供される:
3Ni+NH=NiN+1.5H
【0028】
アノードオフガスの残りの流れ1070は、交換器E7で冷却され、SOFC内の水素の酸化によって形成された水は、流れ1016中でSOFCをバイパスするアンモニアと混合される前に、分離器で分離される。
【0029】
適切な量の空気が燃料流に加えられ、混合物はガスエンジンで燃焼され、(電)力と高温の排気ガスが供給される。排気ガスは、熱交換器E2でアンモニアを予熱するために使用され、次いで、冷却器E5でさらに冷却され、最後にE1でアンモニアを蒸発させるために使用される。
【0030】
SOFCのカソード室においては、空気が空気ブロワーによって供給され、カソード供給/排熱熱交換器E4に送られ、SOFCの作動温度まで温度を上昇させる。SOFCのカソードを出た枯渇空気は、E4で予熱に使用され、最後に冷却器E6で冷却される。
【0031】
E、E6、E100、および、E7で放出された熱は、地域暖房として利用することができる。
【0032】
現在のSOFCの設備投資は非常に高額であるため、本発明はSOFC+ガスエンジンの複合システムの投資を最小限に抑えることに重点を置いている。そのため、SOFCの燃料利用率を低くし、ガスエンジンに最低限の水素を供給できるようにすると同時に、SOFC全体の温度を十分に上昇させ、熱交換器E3およびE4の熱交換表面を過度に大きくすることなく作動できるようにする作動レジュメにする。実際、燃料利用率が低いことで、燃料利用率が高いSOFCと比較して、空気流によって除去されなければならない廃熱の量が少なくなり、空気ブロワーおよび熱交換器E4のサイズと投資が削減されることになるため、他の利点も得られる。さらに、空気ブロワーで使用される寄生電力も削減される。ガスエンジンに水素を供給するアンモニア分解機を備えたシステムと比較すると、分解機への投資が回避されるだけでなく、反応を駆動するための燃料の寄生使用も回避される。それどころか、SOFCはアンモニア分解機としての機能と並行して、高効率で発電された電力を供給する。
【実施例
【0033】
実施例
図1を参照して、本発明の実施方法を説明するために詳細な計算を行い、SOFCの燃料利用率を高くすることで電気効率を最大化するように設計されたSOFC+ガスエンジンプラントの作動結果と比較した。結果は、10MWの低位発熱量に対応するアンモニアの入口流と、ガスエンジンへの供給におけるアンモニア中の15vol%について、表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
スタックの相対数は、以下の関係を用いて概算した:
スタック面積=(平均ネルンスト電位-作動電圧)/面積比抵抗
【0036】
専用SOFCの平均作動温度が高いため、このオプションのスタック面積はいくぶん過大評価されているが、その一方で、本発明における低い作動温度のため、スタックの寿命は長くなる。
【0037】
本発明によるSOFC+ガスエンジンは、明らかに電気効率が低いが、ガスエンジンの投資額はおそらく500ドル/kW程度であることを想起すべきであり、現時点ではSOFCシステムの方が4~10倍高く、スタックの交換も高価である。
図1
【国際調査報告】