(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】熱伝導性フィラー
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20240315BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240315BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240315BHJP
【FI】
C09K5/14 E
C08L101/00
C08K3/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555608
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2022058251
(87)【国際公開番号】W WO2022207633
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518453383
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーア バッティスティ
(72)【発明者】
【氏名】ジャマル フトゥーニ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリツィオ オルランド
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル エッギマン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AB011
4J002AB021
4J002AB041
4J002AC011
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4J002DE076
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4J002DF016
4J002FD016
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物と少なくとも1つの無機マグネシウム化合物とを含むフィラーの混合物を含有する熱伝導性フィラー組成物であって、これらのフィラーが、0.1~500μmの体積メジアン粒径d50を有する粒子の形態であり、かつこのフィラーの混合物が、第1のフィラー画分Aと第2のフィラー画分Bとを含む熱伝導性フィラー組成物に関する。さらに、本発明は、この熱伝導性フィラー組成物を含むポリマー組成物並びにこの熱伝導性フィラー組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの無機アルミニウム化合物と少なくとも1つの無機マグネシウム化合物とを含むフィラーの混合物を含有する熱伝導性フィラー組成物であって、
前記フィラーが、0.1~500μmの体積メジアン粒径d
50を有する粒子の形態をしており、かつ
前記フィラーの混合物が、体積メジアン粒径d
50(A)を有する第1のフィラー画分Aと、体積メジアン粒径d
50(B)を有する第2のフィラー画分Bとを含み、
d
50(A)がd
50(B)よりも大きく、かつd
50(A)がd
50(B)と少なくとも10%異なっている、
熱伝導性フィラー組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラー組成物が、少なくとも0.75W/m・K、好ましくは少なくとも1W/m・K、より好ましくは少なくとも1.2W/m・K、最も好ましくは少なくとも1.5W/m・Kの熱伝導率を有し、
前記フィラー組成物の前記熱伝導率が、標準ポリマー組成物の形態で測定され、ここで、前記標準ポリマー組成物が、65体積%のフィラー組成物及び35体積%の標準溶液からなり、前記標準溶液が、50重量%のジイソノニルフタレート及び50重量%のヒドロキシル末端ポリブタジエンからなり、かつ
前記熱伝導率が、デュアルニードルのSH-3センサーを備えたTEMPOS熱特性分析装置を用いて決定される、
請求項1に記載の熱伝導性フィラー組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラー組成物が以下を含んでいる、請求項1又は2に記載の熱伝導性フィラー組成物:
前記フィラー組成物の総体積に基づいて、1~99体積%、好ましくは5~90体積%、より好ましくは10~85体積%、さらに一層好ましくは20~80体積%、最も好ましくは25~75体積%の量の前記第1のフィラー画分A、及び
前記フィラー組成物の総体積に基づいて、1~99体積%、好ましくは10~95体積%、より好ましくは15~90体積%、さらに一層好ましくは20~80体積%、最も好ましくは25~75体積%の量の前記第2のフィラー画分B。
【請求項4】
前記少なくとも1つの無機アルミニウム化合物が、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは水酸化アルミニウムであり、かつ/又は
前記少なくとも1つの無機マグネシウム化合物が、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは酸化マグネシウム、最も好ましくは、死焼酸化マグネシウムである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物。
【請求項5】
前記フィラーが、0.5~450μm、好ましくは1~400μm、より好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~250μmの体積メジアン粒径d
50を有し、かつ/又は
前記第1のフィラー画分Aが、10~450μm、好ましくは15~400μm、より好ましくは20~300μm、最も好ましくは25~250μmの体積メジアン粒径d
50(A)を有し、かつ/又は
前記第2のフィラー画分Bが、0.1~250μm、好ましくは0.5~200μm、より好ましくは1~100μm、最も好ましくは2~70μmの体積メジアン粒径d
50(B)を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物。
【請求項6】
d
50(A)がd
50(B)と、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%異なっている、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物。
【請求項7】
前記フィラーの混合物が、体積メジアン粒径d
50(C)を有する第3のフィラー画分Cを含み、
d
50(C)がd
50(B)よりも小さく、かつd
50(C)がd
50(B)と少なくとも10%異なっているか、又はd
50(C)がd
50(A)よりも大きく、かつd
50(C)がd
50(A)と少なくとも10%異なっている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物。
【請求項8】
前記熱伝導性フィラー組成物が少なくとも1つの追加のフィラーを含み、前記フィラー組成物の総体積に基づいて、好ましくは0.1~50体積%の量で、より好ましくは1~40体積%の量で、最も好ましくは2~30体積%の量で、少なくとも1つの追加のフィラーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの追加のフィラーが、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、タルク、酸化亜鉛、窒化ホウ素、黒鉛、金属フィラー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
好ましくは、前記少なくとも1つの追加のフィラーが、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
最も好ましくは、前記少なくとも1つの追加のフィラーが、炭酸カルシウムである、
請求項8に記載の熱伝導性フィラー組成物。
【請求項10】
前記第1のフィラー画分Aが、前記少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含み、かつ前記第2のフィラー画分Bが、前記少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、かつ/又は
前記第1のフィラー画分Aが、前記少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、かつ前記第2のフィラー画分Bが、前記少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物。
【請求項11】
前記第1のフィラー画分Aが前記少なくとも1つの追加のフィラーを含み、かつ/又は前記第2のフィラー画分Bが前記少なくとも1つの追加のフィラーを含み、かつ/又は前記第3のフィラー画分Cが前記少なくとも1つの追加のフィラーを含み、
好ましくは、前記少なくとも1つの追加のフィラーが、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
最も好ましくは、前記少なくとも1つの追加のフィラーが、炭酸カルシウムである、
請求項7~10のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのポリマーと、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物とを含む、ポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリマー組成物の前記総体積に基づいて、少なくとも50体積%の量で、好ましくは少なくとも60体積%の量で、より好ましくは少なくとも70体積%の量で、最も好ましくは少なくとも80体積%の量で、前記熱伝導性フィラー組成物を含む、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つのポリマーが、樹脂、熱可塑性ポリマー、エラストマー、又はそれらの混合物であり、
好ましくは、前記少なくとも1つのポリマーが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィンのホモポリマー及び/又はコポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリウレタン、ハロゲン含有ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、イソプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブテン-イソプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、多硫化ゴム、熱可塑性ゴム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項12又は13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
熱伝導性マスターバッチ、熱伝導性グリース、熱伝導性成形用組成物、熱伝導性押出加工用組成物、熱伝導性ギャップフィラー、熱伝導性接着剤、熱伝導性ゲル、熱伝導性ポッティング用コンパウンド、熱伝導性封止剤、又は熱伝導性ペーストである、請求項12~14のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む物品であって、
電気部品、電子部品、自動車部品、航空宇宙部品、鉄道部品、船舶用部品、医療用部品、放熱装置、又は不織材料であり、
好ましくは、自動車動力用電気部品、航空宇宙動力用電気部品、鉄道動力用電気部品、船舶動力用電気部品、バッテリー、バッテリーセル、バッテリーモジュール、集積回路、発光ダイオード、ランプソケット、半導体パッケージ、冷却用ファン、コネクター、スイッチ、ケース、ハウジング、粘着テープ、粘着パッド、粘着シート、制振用品、ガスケット、スペーサー、シーラント、ヒートシンク、ヒートスプレッダ、防火用毛布、又はオーブンクロスである、
請求項12~15のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む物品。
【請求項17】
ポリマー組成物のための熱伝導率増強剤としての、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物の使用。
【請求項18】
航空宇宙用途、自動車用途、鉄道用途、船舶用途、電子的用途、電動乗物用途、又は医療用途における、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性フィラー組成物、この熱伝導性フィラー組成物を含むポリマー組成物、このポリマー組成物を含む物品、及びこの熱伝導性フィラー組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子又は電気デバイスにおいては、デバイスの性能を維持又は改善するため、並びにデバイスの長く信頼性の高い耐久寿命を達成するために、デバイスからの効率の良い放熱が不可欠である。温度管理の鍵を握る部分は、異種材料の界面間で熱伝達を確立し、かつそれを増強することにある。典型的には、2つの部品間の熱的結合を増強するために熱界面材料(熱伝導性材料)が使用され、これは、例えば、ペースト、接着剤、ギャップフィラー、パッド、又はテープの形態で使用することができる。例えば熱界面材料を、発熱装置、例えば、集積回路、バッテリーセル又は照明装置と、ヒートシンク又は熱交換器などの放熱装置との間に挿入することができる。
【0003】
熱界面材料は、多くの既知の方法で調製可能であり、一般的な手法は、ポリマーマトリクスに熱伝導性フィラーをブレンドすることである。窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、又は炭化ケイ素などの高い熱伝導性を有する複数のセラミック材料が、その電気的絶縁性及び安定性のために、フィラーとして広範に研究されている。さらに、酸化アルミニウムは、そのコストが低いこと及び電気抵抗率が高いことに起因して、商業的熱伝導性フィラー用の材料として現在最も一般的に使用されているものの一つである。用途的に電気的絶縁性及び軽量性が考慮されない場合には、アルミニウム、銀、銅、又はニッケルなどの金属が、フィラーとして使用される(Cuiら、J.Mater.Chem.C,2020,8,10568-10586を参照)。
【0004】
持続可能なエネルギー及び輸送へと技術が移行するにつれて、エレクトロモビリティがその重要性を増してきている。温度管理も同様に、電気自動車の高圧バッテリーのために重要な役割を担っている。バッテリーセルは、ある特定の温度範囲内で最大限の性能を与えることができるが、その一方で過熱してはならない。その上、最新のリチウムイオンバッテリーの加熱は、熱反応をひき起こし、それ自体が大きく揺れ動いて、バッテリー内の火災さらには爆発の原因となり得る。セルの動作が引き起こした熱を、周囲環境に対して効率的に伝達するために、放熱ギャップフィラーをバッテリートレイに適用し、次いでセルユニットを液体材料に取り付ける。現在、ほとんどの放熱ギャップフィラーは、酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムを充填したポリマーから製造されている。非常に優れた熱伝導性を有する材料、例えば窒化ホウ素又は窒化アルミニウムなどが利用可能であるが、それらはコストが高く、かつこれらのフィラーで充填した配合物は極端に増粘することから、大量に使用する自動車用途には不適当なものとなっている。さらに、十分に高い熱伝導率を達成するためには、放熱ギャップフィラー中の酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムのレベルを高いものとする必要がある。その結果、ギャップフィラー組成物の粘度が高くなり、ひいては流れ抵抗が高くなり、これが、費用対効果が高くかつ迅速な製造を損うことになる。その上、高いフィラー含有量は、摩滅の増加により加工機械を激しく摩耗させる可能性があり、このために、例えば、投入機の部品をより頻繁に交換することが必要となる可能性がある。
【0005】
国際公開第2004/108852 A1号は、熱界面材料の製造方法であって、25,000を超える数平均分子量を有するポリマーホットメルト感圧性接着剤を、少なくとも25重量%の熱伝導性フィラーと溶融ブレンドして混合物を形成し、かつこの混合物を熱界面材料へと成形する方法について記載している。熱伝導性フィラー、可塑剤、アクリル酸、及びアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む組成物が、国際公開第2021/006646 A1号に記載されている。
【0006】
したがって、当技術分野には、新規の熱伝導性フィラー材料、特に、適度なコストで大量生産するのに適した熱伝導性フィラー材料の開発に対する継続的なニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明の目的は、適度なコストで大量生産するのに適した熱伝導性フィラー組成物を提供することにある。さらに、粒径及び形態を調整しかつ企図されている用途に適応させることのできる熱伝導性フィラー組成物を提供することが望ましい。また、ポリマーとブレンドしたときに、とりわけ、高いフィラー濃度でブレンドしたときに、低いレオロジーを示す熱伝導性フィラー組成物を提供することが望ましい。さらに、摩損性が低減した熱伝導性フィラー組成物を提供することが望ましい。
【0008】
また、ポリマーの熱伝導率を増強させ、かつ効率的な放熱を提供する熱伝導性フィラー組成物を提供することが、本発明の目的である。さらに、熱伝導性フィラー組成物が、それが充填されたポリマー材料の加工性に対し悪影響を及ぼさないことが望ましい。また、フィラーが、少なくとも部分的に天然供給源から誘導可能であり、環境的にやさしく、かつ廉価である熱伝導性フィラー組成物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的及び他の目的は、独立請求項に定義されている主題によって解決される。
【0010】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物と少なくとも1つの無機マグネシウム化合物とを含むフィラーの混合物を含有する熱伝導性フィラー組成物が提供され、この熱伝導性フィラー組成物は、
フィラーが、0.1~500μmの体積メジアン粒径d50を有する粒子の形態をしており、かつ
フィラーの混合物が、体積メジアン粒径d50(A)を有する第1のフィラー画分Aと、体積メジアン粒径d50(B)を有する第2のフィラー画分Bとを含み、
ここで、d50(A)がd50(B)よりも大きく、かつd50(A)がd50(B)と少なくとも10%異なっている。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つのポリマーと、本発明に係る熱伝導性フィラー組成物とを含むポリマー組成物が提供される。
【0012】
本発明のなおさらなる実施形態によれば、本発明のポリマー組成物を含む物品が提供され、ここで、この物品は、電気部品、電子部品、自動車部品、航空宇宙部品、鉄道部品、船舶用部品、医療用部品、放熱装置、又は不織材料であり、
好ましくは、自動車動力用電気部品、航空宇宙動力用電気部品、鉄道動力用電気部品、船舶動力用電気部品、バッテリー、バッテリーセル、バッテリーモジュール、集積回路、発光ダイオード、ランプソケット、半導体パッケージ、冷却用ファン、コネクター、スイッチ、ケース、ハウジング、粘着テープ、粘着パッド、粘着シート、制振用品、ガスケット、スペーサー、シーラント、ヒートシンク、ヒートスプレッダ、防火用毛布、又はオーブンクロスである。
【0013】
本発明のなおさらなる態様によれば、ポリマー組成物のための熱伝導率増強剤としての、本発明に係る熱伝導性フィラー組成物の使用が提供される。
【0014】
本発明のなおさらなる態様によれば、航空宇宙用途、自動車用途、鉄道用途、船舶用途、電子的用途、電動乗物用途、又は医療用途における、本発明に係る熱伝導性フィラー組成物の使用が提供される。
【0015】
本発明の有利な実施形態は、対応する従属請求項で定義されている。
【0016】
一実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、少なくとも0.75W/m・K、好ましくは少なくとも1W/m・K、より好ましくは少なくとも1.2W/m・K、最も好ましくは少なくとも1.5W/m・Kの熱伝導率を有し、
フィラー組成物の熱伝導率が、標準ポリマー組成物の形態で測定され、ここで、標準ポリマー組成物が、65体積%のフィラー組成物及び35体積%の標準溶液からなり、標準溶液が、50重量%のジイソノニルフタレート及び50重量%のヒドロキシル末端ポリブタジエンからなり、かつ
熱伝導率が、デュアルニードルのSH-3センサーを備えたTEMPOS熱特性分析装置を用いて決定される。
【0017】
一実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、フィラー組成物の総体積に基づいて、1~99体積%、好ましくは5~90体積%、より好ましくは10~85体積%、さらに一層好ましくは20~80体積%、最も好ましくは25~75体積%の量の第1のフィラー画分Aと、フィラー組成物の総体積に基づいて、1~99体積%、好ましくは10~95体積%、より好ましくは15~90体積%、さらに一層好ましくは20~80体積%、最も好ましくは25~75体積%の量の第2のフィラー画分Bとを含んでいる。さらなる実施形態によれば、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは水酸化アルミニウムであり、かつ/又は少なくとも1つの無機マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは酸化マグネシウムである。
【0018】
一実施形態によれば、フィラーは、0.5~450μm、好ましくは1~400μm、より好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~250μmの体積メジアン粒径d50を有し、かつ/又は第1のフィラー画分Aは、10~450μm、好ましくは15~400μm、より好ましくは20~300μm、最も好ましくは25~250μmの体積メジアン粒径d50(A)を有し、かつ/又は第2のフィラー画分Bは、0.1~250μm、好ましくは0.5~200μm、より好ましくは1~100μm、最も好ましくは2~70μmの体積メジアン粒径d50(B)を有する。さらなる実施形態によれば、d50(A)はd50(B)と、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%異なっている。
【0019】
一実施形態によれば、フィラーの混合物は、体積メジアン粒径d50(C)を有する第3のフィラー画分Cを含み、d50(C)がd50(B)よりも小さく、かつd50(C)がd50(B)と少なくとも10%異なっているか、又はd50(C)がd50(A)よりも大きく、かつd50(C)がd50(A)と少なくとも10%異なっている。
【0020】
さらなる実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、少なくとも1つの追加のフィラーを含み、フィラー組成物の総体積に基づいて、好ましくは0.1~50体積%の量で、より好ましくは1~40体積%の量で、最も好ましくは2~30体積%の量で、少なくとも1つの追加のフィラーを含む。
【0021】
一実施形態によれば、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、タルク、酸化亜鉛、窒化ホウ素、黒鉛、金属フィラー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは炭酸カルシウムである。さらなる実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含み、かつ第2のフィラー画分Bは、少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、かつ/又は第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、かつ第2のフィラー画分Bは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含む。なおさらなる実施形態によれば、第1のフィラー画分Aが少なくとも1つの追加のフィラーを含み、かつ/又は第2のフィラー画分Bが少なくとも1つの追加のフィラーを含み、かつ/又は第3のフィラー画分Cが少なくとも1つの追加のフィラーを含み、好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーが、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウムである。
【0022】
一実施形態によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総体積に基づいて、少なくとも50体積%の量で、好ましくは少なくとも60体積%の量で、より好ましくは少なくとも70体積%の量で、最も好ましくは少なくとも80体積%の量で、熱伝導性フィラー組成物を含む。さらなる実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、樹脂、熱可塑性ポリマー、エラストマー又はそれらの混合物であり、好ましくは、少なくとも1つのポリマーが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィンのホモポリマー及び/又はコポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリウレタン、ハロゲン含有ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、イソプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブテン-イソプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、多硫化ゴム、熱可塑性ゴム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0023】
一実施形態によれば、ポリマー組成物は、熱伝導性マスターバッチ、熱伝導性グリース、熱伝導性成形用組成物、熱伝導性押出加工用組成物、熱伝導性ギャップフィラー、熱伝導性接着剤、熱伝導性ゲル、熱伝導性ポッティング用コンパウンド、熱伝導性封止剤、又は熱伝導性ペーストである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の目的のために、以下の用語は以下の意味を有することを理解されたい。
【0026】
本発明の意味における「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)とは、石炭石、大理石、又は白亜などの天然源から得られ、かつ例えば、サイクロン又は分級機によって、粉砕、スクリーニング、及び/又は分画などの湿式処理及び/又は乾式処理で処理された炭酸カルシウムである。
【0027】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)とは、水性、半乾燥又は湿潤環境における二酸化炭素と石灰との反応後の沈殿によって得られるか、又は水中におけるカルシウム及び炭酸イオン源の沈殿によって得られる合成材料である。PCCは、パテライトの、カルサイトの、又はアラゴナイトの結晶形であってよい。PCCは、例えば、欧州特許出願公開第2 447 213 A1号公報、欧州特許出願公開第2 524 898 A1号公報、欧州特許出願公開第2 371 766 A1号公報、欧州特許出願公開第1 712 597 A1号公報、欧州特許出願公開第1 712 523 A1号公報、又は国際公開第2013/142473 A1号に記載されている。
【0028】
本明細書におけるフィラーの「粒径」は、体積基準の粒径分布として記述されている。Malvern Mastersizer2000又は3000レーザー回析システムを用いて測定される体積メジアン粒径d50(vol)又は体積トップカット粒径d98(vol)は、粒子のそれぞれ50体積%又は98体積%がこの値より低い直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データは、Mie理論を用いて、粒子屈折率1.57及び吸収係数0.005として解析する。
【0029】
本明細書中で使用されている「ポリマー」なる用語は概して、例えば、ブロック、グラフト、ランダム、及び交互コポリマーなどのホモポリマー及びコポリマー、並びにそれらのブレンド及び改質物を含む。ポリマーは、非晶質ポリマー、結晶性ポリマー、又は半結晶性ポリマー、すなわち、結晶性画分と非晶質画分とを含むポリマーであってよい。結晶化度は、百分率で特定され、かつ示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。非晶質ポリマーは、そのガラス転移温度によって特徴付けることができ、結晶性ポリマーは、その融点によって特徴付けることができる。半結晶性ポリマーは、そのガラス転移温度及び/又はその融点によって特徴付けることができる。
【0030】
本明細書中で使用されている「コポリマー」なる用語は、1つを超えるモノマー種から誘導されたポリマーを意味する。2つのモノマー種の共重合により得られるコポリマーは、バイポリマーとも呼ばれ、3つのモノマーから得られるものはターポリマー、4つのモノマーから得られるものはクアターポリマーなどとも呼ばれる(IUPAC Compendium of Chemical Terminology 2014、「コポリマー」参照)。したがって、「ホモポリマー」なる用語は、1つのモノマー種から誘導されたポリマーを意味する。
【0031】
本発明の意味における「ガラス転移温度」なる用語は、非晶質材料(又は半結晶性材料内の非晶質領域)における、硬質で比較的脆い状態から溶融又はゴム様状態への可逆的転移であるガラス転移が発生する温度を意味する。ガラス転移温度は、結晶状態の材料が存在する場合には、その材料の結晶状態の融点よりも常に低い。本発明の意味における「融点」なる用語は、固体が大気圧で固体から液体の状態へと変化する温度を指す。融点において、固相と液相とは平衡状態で存在する。ガラス転移温度及び融点は、10℃/分の加熱速度で、ISO 11357によって決定される。
【0032】
別段に示されていないかぎり、材料の「含水量」は、220℃まで加熱した試料から脱着し得る湿分(すなわち水)の割合を意味する。含水量は、カールフィッシャー電量滴定法にしたがって測定することができ、オーブン内において220℃で少なくとも10分間水分を脱着し、かつ少なくとも10分間、100mL/分で乾燥窒素を用いて、それをカールフィッシャー電量計(Mettler Toledoオーブン DO 0337と組み合わされたMettler Toledo電量KF滴定装置 C30)に連続的に通すことで測定できる。水を用いた較正曲線を記録し、かつ試料無しの10分間の窒素流のブランクを考慮に入れることができる。
【0033】
本発明の意味における「表面反応」なる用語は、ある材料が、水性環境内でこの材料の部分的な溶解を含むプロセスに付され、それに続き、さらなる結晶化添加剤の不在下又は存在下で起こり得る、この材料の表面及びその周りでの結晶化プロセスに付されたことを示すために使用されるものとする。
【0034】
本発明の意味における「表面処理フィラー(表面処理したフィラー)」なる用語は、表面処理剤と接触させたフィラーであって、このフィラーの表面の少なくとも一部にコーティング層が得られるようになっているフィラーを指す。
【0035】
本明細書全体を通して使用される材料の「比表面積」(m2/g単位で表現される)は、吸着ガスとして窒素を用いるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法によって、かつMicromeritics社製のASAP 2460計器を使用することによって決定することができる。この方法は、当業者にとって周知であり、ISO 9277:2010に定義されている。試料は、測定に先立ち30分間、真空下において100℃で調整される。この材料の総表面積(m2単位)は、比表面積(m2/g単位)にこの材料の質量(g単位)を乗じることによって得ることができる。
【0036】
本明細書中で言及されている「溶液」は、特定の溶媒と特定の溶質の単相混合物であり、例えば水溶性塩と水との単相混合物であるものとして理解される。したがって、本明細書中で使用される「溶解、溶解した(dissolved)」なる用語は、溶液中の溶質の物理的状態を指す。
【0037】
本発明の意味における「懸濁液」又は「スラリー」は、溶解していない固体と水、及び任意にさらなる添加剤を含み、通常は、大量の固体を含有し、したがって、それを形成する液体に比べてより粘度が高く、かつより密度が高いものであり得る。
【0038】
本発明の目的のために、「粘度」又は「ブルックフィールド粘度」なる用語は、ブルックフィールド粘度を意味する。ブルックフィールド粘度は、この目的では、ブルックフィールド RVスピンドルセットの適切なスピンドルを用いて100rpmで25℃±1℃でブルックフィールド DV-II+Pro粘度計によって測定され、mPa・s単位で規定される。当業者であれば、自らの技術的知識に基づいて、測定すべき粘度範囲に好適なスピンドルをブルックフィールド RV-スピンドルセットから選択することになる。例えば、200~800mPa・sの粘度範囲については、スピンドル番号3を使用することができ、400~1,600mPa・sの粘度範囲については、スピンドル番号4を使用でき、800~3,200mPa・sの粘度範囲については、スピンドル番号5を使用でき、1,000~2,000,000mPa・sの粘度範囲については、スピンドル番号6を使用でき、4,000~8,000,000mPa・sの粘度範囲については、スピンドル番号7を使用することができる。
【0039】
単数の名詞に言及するときに、例えば、「a」、「an」又は「the」などの不定冠詞又は定冠詞が使用される場合、特に明記されていない限り、これには、その名詞の複数も含まれる。
【0040】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~を含む(comprising)」なる用語が使用されている場合、それは、他の要素を排除しない。本発明の目的では、「~からなる(consisting of)」なる用語は、「~を含む(comprising)」なる用語の好ましい実施形態であるものとみなされる。以下で、ある1つの群が、少なくともある特定の実施形態を含むものとして定義されている場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群も開示するものであるということを理解すべきである。
【0041】
「得られる、得ることのできる(obtainable)」又は「定義される、定義可能な(definable)」及び「得られた(obtained)」又は「定義された(defined)」などの用語は、互換的に使用される。例えば、このことは、文脈上明白に他の指示がなされているのでないかぎり、「得られた」なる用語は、例えばある実施形態が、例えば「得られた」なる用語の後に続く工程の順番によって得られなければならないということを示すことを意味するものではないが、このような限定された理解は、好ましい実施形態として、「得られた」又は「定義された」なる用語の中に常に含まれる、ということを意味する。
【0042】
「~を含む(including)」又は「~を有する(having)」なる用語が使用される場合、これらの用語は、上記で定義した「~を含む(comprising)」と等価であることを意味する。
【0043】
本発明によれば、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物と少なくとも1つの無機マグネシウム化合物とを含むフィラーの混合物を含有する熱伝導性フィラー組成物が提供される。これらのフィラーは、0.1~500μmの体積メジアン粒径d50を有する粒子の形態であり、かつフィラーの混合物は、体積メジアン粒径d50(A)を有する第1のフィラー画分Aと、体積メジアン粒径d50(B)を有する第2のフィラー画分Bとを含み、ここで、d50(A)はd50(B)よりも大きく、かつd50(A)はd50(B)と少なくとも10%異なっている。
【0044】
以下に、本発明の組成物の詳細及び好ましい実施形態をより詳細に説明する。これらの技術的詳細及び実施形態は、本発明の方法、本発明の使用、及び本発明の組成物を含む製品にも適用されることを理解されたい。
【0045】
熱伝導性フィラー組成物
本発明による熱伝導性フィラー組成物は、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物と少なくとも1つの無機マグネシウム化合物とを含むフィラーの混合物を含有する。
【0046】
少なくとも1つの無機アルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、オキシ窒化アルミニウム、ジルコニア強化アルミナ、又はケイ酸アルミニウムなどの、当技術分野において既知の任意の好適な無機アルミニウム化合物から選択することができる。一実施形態によれば、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは水酸化アルミニウムである。
【0047】
少なくとも1つ無機マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、窒化ケイ素マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、ドロマイト、ケイ酸マグネシウム、又はメタケイ酸マグネシウムなどの、当技術分野において既知の任意の好適な無機マグネシウム化合物から選択することができる。一実施形態によれば、少なくとも1つの無機マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは酸化マグネシウムである。
【0048】
本発明の目的のために、「酸化マグネシウム」なる用語は、また、苛性か焼マグネシア、硬焼マグネシア、死焼マグネシア、焼結マグネシア、又は溶融マグネシアなどの、さらに加工された酸化マグネシウムグレードを含む。より低い温度(700~1000℃)で酸化マグネシウムをか焼すると、軽焼マグネシア、すなわち、苛性か焼マグネシアとしても知られている反応性形態が製造される。反応性が限定的である硬焼マグネシアは、1000~1500℃のか焼温度で製造される。死焼マグネシア(死焼酸化マグネシウム)は、利用可能な表面積を減少させるために1500~2000℃の高温に付された、反応性の低い酸化マグネシウムである。溶融マグネシアは、酸化マグネシウムの溶融点より高い温度(2800℃)で製造され、酸化マグネシウムの非反応性グレードである。
【0049】
一実施形態によれば、酸化マグネシウムは、天然酸化マグネシウム、合成酸化マグネシウム、苛性か焼マグネシア、硬焼マグネシア、死焼マグネシア、焼結マグネシア、溶融マグネシア、又はそれらの混合物である。
【0050】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは水酸化アルミニウムであり、かつ少なくとも1つの無機マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは酸化マグネシウムである。
【0051】
少なくとも1つの無機アルミニウム化合物は、単一の無機アルミニウム化合物又は2つ以上の無機アルミニウム化合物の混合物であってよい。少なくとも1つの無機マグネシウム化合物は、単一の無機マグネシウム化合物又は2つ以上の無機マグネシウム化合物の混合物であってよい。例えば、少なくとも1つの無機マグネシウム化合物は、異なるグレードの酸化マグネシウムの混合物であってよい。好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物は水酸化アルミニウムであり、かつ少なくとも1つの無機マグネシウム化合物は酸化マグネシウム、好ましくは、天然酸化マグネシウム、合成酸化マグネシウム、苛性か焼マグネシア、硬焼マグネシア、死焼マグネシア、焼結マグネシア、溶融マグネシア、又はそれらの混合物である。
【0052】
原産地及び製造方法に応じて、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び/又は少なくとも1つの無機マグネシウム化合物は、カルシウム、鉄、ケイ素、ナトリウム、マンガン、塩素、ホウ素又はアルミニウムなどの不純物を含み得る。これらの不純物は、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び/又は少なくとも1つの無機マグネシウム化合物の総重量に基づいて、10重量%未満の量で存在し得る。
【0053】
フィラーの混合物におけるフィラーは、0.1~500μmの体積メジアン粒径d50を有する粒子の形態をしている。一実施形態によれば、フィラーは、0.5~450μm、好ましくは1~400μm、より好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~250μmの体積メジアン粒径d50を有する。一実施形態によれば、フィラーは、0.5~300μm、好ましくは1~200μm、より好ましくは1.5~100μm、最も好ましくは2~50μmの体積メジアン粒径d50を有する。別の実施形態によれば、フィラーは、1~450μm、好ましくは10~400μm、より好ましくは20~300μm、最も好ましくは50~250μmの体積メジアン粒径d50を有する。
【0054】
本発明によれば、フィラーの混合物は、異なる粒径分布、すなわち、異なる体積メジアン粒径d50を有する少なくとも2つの異なるフィラーを含む。したがって、フィラーの混合物は、粗いフィラー画分と微細なフィラー画分との混合物であってよい。
【0055】
フィラーの混合物は、体積メジアン粒径d50(A)を有する第1のフィラー画分A及び体積メジアン粒径d50(B)を有する第2のフィラー画分Bを含み、ここで、d50(A)はd50(B)よりも大きく、かつd50(A)はd50(B)と少なくとも10%異なっている。一実施形態によれば、d50(A)はd50(B)と、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%異なっている。別の実施形態によれば、d50(A)はd50(B)と、少なくとも40%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも150%、最も好ましくは少なくとも200%異なっている。なおも別の実施形態によれば、d50(A)はd50(B)と、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも30μm、最も好ましくは少なくとも40μm異なっている。
【0056】
一実施形態によれば、第1のフィラー画分Aが、10~450μm、好ましくは15~400μm、より好ましくは20~300μm、最も好ましくは25~250μmの体積メジアン粒径d50(A)を有し、かつ/又は
第2のフィラー画分Bが、0.1~250μm、好ましくは0.5~200μm、より好ましくは1~100μm、最も好ましくは2~70μmの体積メジアン粒径d50(B)を有する。
【0057】
一実施形態によれば、フィラーは、2~1200μm、好ましくは10~800μm、より好ましくは20~700μm、最も好ましくは50~600μmの体積メジアン粒径d98を有する。
【0058】
所望の粒径分布を得るために、フィラー粒子を粉砕及び/又はふるいがけすることができる。好適な方法は、当技術分野において知られている。
【0059】
d50(A)とd50(B)の間の差及び第1のフィラー画分Aと第2のフィラー画分Bの間の重量比に応じて、フィラーの混合物の全体的粒径分布曲線は、少なくとも2つのピークを示し得る。本発明の好ましい実施形態によれば、第1のフィラー画分Aの粒径分布曲線と第2のフィラー画分Bの粒径分布曲線とから構成されているフィラーの混合物の全体的粒径分布曲線は、二峰性の粒径分布曲線である。
【0060】
一実施形態によれば、フィラーは、窒素及びBET法を使用して測定された、0.1m2/g~150m2/g、好ましくは0.5m2/g~100m2/g、より好ましくは1m2/g~75m2/gの比表面積を有する。
【0061】
第1のフィラー画分Aは、フィラー組成物の総体積に基づいて1~99体積%の量で存在していてよく、かつ第2のフィラー画分Bは、フィラー組成物の総体積に基づいて1~99体積%の量で存在していてよい。一実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、フィラー組成物の総体積に基づいて、5~90体積%、好ましくは10~85体積%、より好ましくは20~80体積%、最も好ましくは25~75体積%の量で存在し、かつ第2のフィラー画分Bは、フィラー組成物の総体積に基づいて、10~95体積%、好ましくは15~90体積%、より好ましくは20~80体積%、最も好ましくは25~75体積%の量で存在する。
【0062】
一実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、フィラー組成物の総体積に基づいて、1~99重量%、好ましくは5~90重量%、より好ましくは10~85重量%、さらに一層好ましくは20~80重量%、最も好ましくは25~75重量%の量で存在し、かつ第2のフィラー画分Bは、フィラー組成物の総体積に基づいて、1~99重量%、好ましくは10~95重量%、より好ましくは15~90重量%、さらに一層好ましくは20~80重量%、最も好ましくは25~75重量%の量で存在する。
【0063】
フィラー画分は、フィラー材料から独立して選択することができる。例えば、一方のフィラー画分は少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含んでいてよく、かつ他方のフィラー画分は少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含んでいてよい。しかしながら、一方のフィラー画分が少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、他方のフィラー画分が少なくとも1つの無機マグネシウム化合物又は少なくとも1つの無機アルミニウム化合物のみを含むということも、本発明の教示の範囲内である。さらに、両方のフィラー画分が共に、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含むことも可能である。
【0064】
一実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含み、かつ第2のフィラー画分Bは、少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含む。付加的に又は代替的には、第1のフィラー画分Aは少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含むことができ、かつ第2のフィラー画分Bは少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含むことができる。
【0065】
一実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、かつ第2のフィラー画分Bは少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含む。別の実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、かつ第2のフィラー画分Bは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含む。
【0066】
一実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含み、かつ第2のフィラー画分Bは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含む。別の実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、かつ第2のフィラー画分Bは少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含む。さらに別の実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、かつ第2のフィラー画分Bは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含む。
【0067】
一実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物からなるフィラーの混合物で構成されている。好ましい実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの無機アルミニウム化合物と、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの無機マグネシウム化合物とからなるフィラーの混合物で構成されている。別の好ましい実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、水酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムからなるフィラーの混合物で構成されている。
【0068】
1つの好ましい実施形態によれば、フィラーは、1.5~300μm、好ましくは2~250μmの体積メジアン粒径d50を有する粒子の形態であり、
第1のフィラー画分Aは、20~300μm、好ましくは25~250μmの体積メジアン粒径d50(A)を有し、
第2のフィラー画分Bは、1~100μm、好ましくは2~70μmの体積メジアン粒径d50(B)を有し、
d50(A)はd50(B)と、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも80%、さらに一層好ましくは少なくともの150%、最も好ましくは少なくとも200%異なっている。さらに、好ましくは、第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含むことができ、かつ第2のフィラー画分Bは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含むことができる。
【0069】
本発明のフィラー組成物は、「熱伝導性」であり、すなわち、これは熱を伝導することができる。フィラーの混合物は、最終的な熱伝導性フィラー組成物の所望される熱伝導率レベルが提供されるように選択される。例えば、所望される熱伝導率は、比較的高い熱伝導率を有するフィラーと比較的低い熱伝導率を有するフィラーとを混合することによって得ることができる。熱伝導性フィラー組成物の熱伝導率は、当業者にとって既知の任意の好適な方法によって測定することができ、W/m・K単位で表現される。
【0070】
一実施形態によれば、熱伝導率は、65体積%のフィラー組成物及び35体積%の標準溶液からなる標準ポリマー組成物の形態で測定される。標準溶液は、50重量%のジイソノニルフタレート及び50重量%のヒドロキシル末端ポリブタジエンからなるものであってよい。熱伝導率は、デュアルニードルのSH-3センサーを備えたTEMPOS熱特性分析装置(METER Group AG、ドイツ)を用いて決定することができる。
【0071】
一実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、少なくとも0.75W/m・K、好ましくは少なくとも1W/m・K、より好ましくは少なくとも1.2W/m・K、最も好ましくは少なくとも1.5W/m・Kの熱伝導率を有し、ここで、フィラー組成物の熱伝導率は、標準ポリマー組成物の形態で測定され、標準ポリマー組成物は、65体積%のフィラー組成物及び35体積%の標準溶液からなり、標準溶液は50重量%ジイソノニルフタレート及び50重量%のヒドロキシル末端ポリブタジエンからなり、熱伝導率は、デュアルニードルのSH-3センサーを備えたTEMPOS熱特性分析装置を用いて決定される。
【0072】
一実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物及び少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含むフィラーの混合物を含有し、ここで、フィラーは、0.1~500μmの体積メジアン粒径d50を有する粒子の形態であり、かつフィラーは、体積メジアン粒径d50(A)を有する第1のフィラー画分Aと、体積メジアン粒径d50(B)を有する第2のフィラー画分Bとを含み、ここで、d50(A)はd50(B)よりも大きく、かつd50(A)はd50(B)と少なくとも10%異なっており、
この組成物は、フィラー組成物の総体積に基づいて1~99体積%の量の第1のフィラー画分Aと、フィラー組成物の総体積に基づいて1~99体積%の量の第2のフィラー画分Bとを含み、かつ
この熱伝導性フィラー組成物は、少なくとも0.75W/m・Kの熱伝導率を有し、フィラー組成物の熱伝導率は、標準ポリマー組成物の形態で測定され、ここで、標準ポリマー組成物は65体積%のフィラー組成物及び35体積%の標準溶液からなり、標準溶液は50重量%のジイソノニルフタレート及び50重量%のヒドロキシル末端ポリブタジエンからなり、かつ熱伝導率は、デュアルニードルのSH-3センサーを備えたTEMPOS熱特性分析装置を用いて決定される。
【0073】
熱伝導性フィラー組成物は、乾燥及び湿潤形態で、好ましくは乾燥形態で、フィラーを混合することによって調製することができる。乾燥フィラーの含水量は、フィラーの総重量に基づいて、5.0重量%未満、好ましくは2.5重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満であってよい。
【0074】
本発明の熱伝導性フィラー組成物はさらなる構成成分を含むことができる。
【0075】
一実施形態によれば、フィラーの混合物は、体積メジアン粒径d50(C)を有する第3のフィラー画分Cを含み、ここで、d50(C)はd50(B)よりも小さく、かつd50(C)はd50(B)と少なくとも10%異なっており、あるいはd50(C)はd50(A)よりも大きく、かつd50(C)はd50(A)と少なくとも10%異なっている。したがって、フィラーの混合物は、粗いフィラー画分、中間のフィラー画分、及び微細なフィラー画分の混合物であり得る。
【0076】
一実施形態によれば、d50(C)はd50(B)よりも小さく、かつd50(C)はd50(B)と、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%異なっている。別の実施形態によれば、d50(C)はd50(A)よりも大きく、かつd50(C)はd50(A)と、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%異なっている。一実施形態によれば、d50(C)はd50(B)よりも小さく、かつd50(C)はd50(B)と、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μm、より好ましくは少なくとも15μm、最も好ましくは少なくとも20μm異なっている。別の実施形態によれば、d50(C)はd50(A)よりも大きく、かつd50(C)はd50(A)と、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μm、より好ましくは少なくとも15μm、最も好ましくは少なくとも20μm異なっている。
【0077】
一実施形態によれば、第3のフィラー画分Cは、0.1~500μm、好ましくは0.5~450μm、より好ましくは1~400μm、さらに一層好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~250μmの体積メジアン粒径d50(C)を有する。別の実施形態によれば、第3のフィラー画分Cは、0.1~250μm、好ましくは0.5~200μm、より好ましくは1~150μm、さらに一層好ましくは1.5~100μm、最も好ましくは2~50μmの体積メジアン粒径d50(C)を有する。
【0078】
d50(A)、d50(B)、及びd50(C)の間の差分及び第1のフィラー画分A、第2のフィラー画分B及び第3のフィラー画分Cの間の重量比に応じて、フィラーの混合物の全体的粒径分布曲線は、少なくとも2つのピーク、好ましくは3つのピークを示すことができる。本発明の好ましい実施形態によれば、第1のフィラー画分Aの粒径分布曲線、第2のフィラー画分Bの粒径分布曲線、及び第3のフィラー画分Cの粒径分布曲線から構成されているフィラーの混合物の全体的粒径分布曲線は、三峰性の粒径分布曲線である。
【0079】
一実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、フィラー組成物の総体積に基づいて、0.1~50体積%の量で、より好ましくは1~40体積%の量で、最も好ましくは2~30体積%の量で、少なくとも1つの追加のフィラーを含む。別の実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、フィラー組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.1~50重量%の量で、より好ましくは1~40重量%の量で、最も好ましくは2~30重量%の量で、少なくとも1つの追加のフィラーを含む。
【0080】
追加のフィラーは、当技術分野において既知の任意の好適なフィラーから選択することができる。一実施形態によれば、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、タルク、酸化亜鉛、窒化ホウ素、黒鉛、金属フィラー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウムである。金属フィラーの例は、アルミニウム、銅、ニッケル、スズ、銀、鉄、それらの合金及びそれらの混合物からなる群から選択された金属の粒子である。一実施形態によれば、炭酸カルシウムは、粉砕炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム(PCC)、表面反応炭酸カルシウム、及びそれらの混合物から選択される。表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のH3O+イオン供与体との反応生成物であり、ここで、この二酸化炭素は、H3O+イオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給される。表面反応炭酸カルシウムの調製についてのさらなる詳細は、例えば、国際公開第00/39222 A1号、国際公開第2004/083316 A1号、国際公開第2005/121257 A2号、国際公開第2009/074492 A1号、欧州特許出願公開第2 264 108 A1号公報、欧州特許出願公開第2 264 109 A1号公報、米国特許出願公開第2004/0020410 A1号公報、及び国際公開第2009/074492 A1号に開示されている。
【0081】
少なくとも1つの追加のフィラーの形状は、特に限定されない。フィラーの形状の例には、球形又は円形粒子、凝集粒子、管形状、ナノチューブ形状、ワイヤ形状、ロッド形状、ニードル形状、プレート形状、非晶質形状、ラグビーボール形状、六面体形状、又はそれらの混合物が包含される。
【0082】
一実施形態によれば、少なくとも1つの追加のフィラーは、球形又は円形形状を有する。一実施形態によれば、少なくとも1つの追加のフィラーは、0.1~500μm、好ましくは0.5~450μm、より好ましくは1~400μm、さらに一層好ましくは1.5~300μm、最も好ましくは2~250μmの体積メジアン粒径d50を有する粒子の形態である。別の実施形態によれば、少なくとも1つ追加のフィラーは、0.1~250μm、好ましくは0.5~200μm、より好ましくは1~150μm、さらに一層好ましくは1.5~100μm、最も好ましくは2~50μmの体積メジアン粒径d50を有する粒子の形態である。
【0083】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの追加のフィラーは、プレート形状を有する。一実施形態によれば、プレートレットは、少なくとも1:2、好ましくは少なくとも1:4、より好ましくは少なくとも1:6、最も好ましくは少なくとも1:8のアスペクト比を有していてよい。本発明の意味における「アスペクト比」は、粒子の最短寸法対最長寸法の比率を意味し、走査型電子顕微鏡法を使用することによって決定することができる。
【0084】
一実施形態によれば、少なくとも1つの追加のフィラーは、タルク、酸化亜鉛、窒化ホウ素、黒鉛、金属フィラー、及びそれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態によれば、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0085】
熱伝導性フィラー組成物に含有されているフィラーのタイプに応じて、熱伝導性フィラー組成物は、導電性であっても又は電気絶縁性であってもよい。本発明の目的のために、「電気絶縁性」とは、1×109Ω・m以上の電気抵抗を有することを意味する。一実施形態によれば、本発明の熱伝導性フィラー組成物はまた、電気絶縁性である。電気絶縁性フィラーの好適な例は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、タルク、窒化ホウ素、及びそれらの混合物である。
【0086】
一実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの追加のフィラーを含み、かつ/又は第2のフィラー画分Bは、少なくとも1つの追加のフィラーを含み、かつ/又は第3のフィラー画分Cが存在する場合、それは少なくとも1つの追加のフィラーを含み、ここで好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウムである。一実施形態によれば、第1のフィラー画分Aは、少なくとも1つの追加のフィラーを含み、かつ/又は第2のフィラー画分Bは、少なくとも1つの追加のフィラーを含み、ここで、好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは炭酸カルシウムである。付加的に又は代替的には、フィラーの混合物は、第3のフィラー画分Cを含み、かつ第3のフィラー画分Cは、少なくとも1つの追加のフィラーを含み、ここで、好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは炭酸カルシウムである。
【0087】
好ましい実施形態によれば、熱伝導性フィラー組成物は、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物と少なくとも1つの無機マグネシウム化合物とを含むフィラーの混合物を含有し、
ここで、フィラーは、0.1~500μmの体積メジアン粒径d50を有する粒子の形態であり、フィラーの混合物は、
体積メジアン粒径d50(A)を有する第1のフィラー画分A、
体積メジアン粒径d50(B)を有する第2のフィラー画分B、
体積メジアン粒径d50(C)を有する第3のフィラー画分C、
を含み、
ここで、d50(A)はd50(B)よりも大きく、かつd50(A)はd50(B)と少なくとも10%異なっており、
d50(C)はd50(B)よりも小さく、かつd50(C)はd50(B)と少なくとも10%異なっているか、又はd50(C)はd50(A)よりも大きく、かつd50(C)はd50(A)と少なくとも10%異なっており、
第1のフィラー画分Aは、10~450μm、好ましくは15~400μm、より好ましくは20~300μm、最も好ましくは25~250μmの体積メジアン粒径d50(A)を有し、
第2のフィラー画分Bは、0.1~250μm、好ましくは0.5~200μm、より好ましくは1~100μm、最も好ましくは2~70μmの体積メジアン粒径d50(B)を有し、
第3のフィラー画分Cは、0.1~250μm、好ましくは0.5~200μm、より好ましくは1~150μm、さらに一層好ましくは1.5~100μm、最も好ましくは2~50μmの体積メジアン粒径d50(C)を有し、
第1のフィラー画分Aは、フィラー組成物の総体積に基づいて、1~99体積%、好ましくは5~90体積%、より好ましくは10~85体積%、さらに一層好ましくは20~80体積%、最も好ましくは25~75体積%の量で存在し、かつ
第2のフィラー画分Bは、フィラー組成物の総体積に基づいて、1~99体積%、好ましくは10~95体積%、より好ましくは15~90体積%、さらに一層好ましくは20~80体積%、最も好ましくは25~75体積%の量で存在し、かつ
熱伝導性フィラー組成物は、好ましくは、フィラー組成物の総体積に基づいて、好ましくは0.1~50体積%の量で、より好ましくは1~40体積%の量で、最も好ましくは2~30体積%の量で、少なくとも1つの追加のフィラーを含む。さらに、好ましくは、少なくとも1つの無機アルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択することができ、好ましくは水酸化アルミニウムであり、かつ/又は少なくとも1つの無機マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択することができ、好ましくは酸化マグネシウムであり、かつ/又は少なくとも1つの追加のフィラーが存在する場合、それは炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、タルク、酸化亜鉛、窒化ホウ素、黒鉛、金属フィラー、及びそれらの混合物からなる群から選択することができ、好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つの追加のフィラーは、炭酸カルシウムである。さらに、第1のフィラー画分Aが少なくとも1つの追加のフィラーを含み、第2のフィラー画分Bが少なくとも1つの無機マグネシウム化合物を含み、かつ第3のフィラー画分Cが少なくとも1つの無機アルミニウム化合物を含むことが好ましい。
【0088】
一実施形態によれば、フィラーの混合物は、さらなるフィラー画分、例えば、体積メジアン粒径d50(D)を有するフィラー画分D、体積メジアン粒径d50(F)を有するフィラー画分Fなどを含む。これらのさらなるフィラー画分のd50値は、d50(A)及び/又はd50(B)及び/又はd50(C)よりも大きいか又は小さいものであってよく、かつd50(A)及び/又はd50(B)及び/又はd50(C)と少なくとも10%異なるものであってよい。
【0089】
分散を容易にしかつ/又は熱伝導性フィラー組成物の加工性をさらに改善するために、いくつかの実施形態において、フィラーを、例えばシラン、脂肪酸、アルキル化無水コハク酸又はパラフィン油で表面処理することができる。さらに、フィラーの表面処理は、フィラーの吸湿感受性を低減することができ、かつ/又は熱伝導性フィラー組成物の粘度を低減できるということが見出された。
【0090】
一実施形態によれば、フィラーを、C4~C24の総炭素原子数を有する脂肪族カルボン酸、置換基中にC2~C30の総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族、及び環式基から選択された基で一置換された無水コハク酸からなる一置換無水コハク酸、1つ又は複数のリン酸モノエステルと1つ又は複数のリン酸ジエステルとのリン酸エステルブレンド、パラフィン油、及びそれらの混合物からなる群から選択された表面処理剤で表面処理する。しかしながら、当業者にとって既知の他の任意の好適な表面処理剤を使用することも可能である。
【0091】
1つの例示的実施形態によれば、少なくとも1つの無機マグネシウム化合物、好ましくは酸化マグネシウム、最も好ましくは死焼酸化マグネシウムを、1つ又は複数の脂肪酸、好ましくはC4~C24の総炭素原子数を有する脂肪族カルボン酸、最も好ましくはステアリン酸とパルミチン酸の混合物で表面処理する。別の例示的実施形態によれば、追加のフィラーは、炭酸カルシウムであり、かつパラフィン油で表面処理される。
【0092】
発明者らは、意外にも、本発明の熱伝導性フィラー組成物が、フィラー粒子の効果的なパッキングを提供し、したがって、ポリマーとフィラーのブレンドの加工可能な粘度を維持しながら、ポリマー配合物中に大量に取り込むことができるものであるということを見出した。次に、このことは、高い熱伝導率を有するポリマー組成物を製造する可能性を提供する。本発明の1つの利点は、水酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムなどの廉価なフィラー材料を使用することによって、この高い熱伝導率を得ることができるという点にある。同様に、本発明の熱伝導性フィラー組成物が、従来の熱伝導性フィラー組成物に比べて低い摩損性を示すことも見出された。さらに、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及びそれらの混合物から選択された追加のフィラー、好ましくは炭酸カルシウムを添加することによって、ポリマーとフィラーのブレンドの粘度をさらに低下させることができるということが見出された。その上、このフィラーは、天然資源から得ることができ、かつ非毒性である。
【0093】
本発明の熱伝導性フィラー組成物は、乾燥形態又は懸濁液の形態をとり得る。好ましくは、熱伝導性フィラー組成物は、乾燥形態であり、好ましくは粉末の形態である。乾燥した熱伝導性フィラー組成物の含水量は、熱伝導性フィラー組成物の総重量に基づいて、5.0重量%未満、好ましくは2.5重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満であってよい。
【0094】
代替的には、熱伝導性フィラー組成物は、懸濁液の総重量に基づいて、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは80重量%の固形分を有する水性懸濁液の形態で提供することができる。本発明の目的のために、液体組成物の「固形分」(固体含有率)は、すべての溶媒又は水を蒸発させた後に残る材料の分量である。必要な場合、本発明の意味における重量%で示された懸濁液の「固形分」は、Mettler-Toledo社製の水分分析装置 HR73(T=120℃、自動オフ切換え3、標準乾燥)を用いて5~20gの試料サイズで決定可能である。
【0095】
ポリマー組成物
本発明の熱伝導性フィラー組成物は、有利にはポリマー組成物に実装可能である。したがって、さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つのポリマーと本発明に係る熱伝導性フィラー組成物とを含有するポリマー組成物に言及する。
【0096】
当業者であれば、ポリマー組成物中に含まれる熱伝導性フィラー組成物の量が、ポリマーの量及びタイプ、熱伝導性フィラー組成物に含まれるフィラーの量及びタイプ、及びポリマー組成物を用いて製造される物品の最終用途を含めた様々な要因に左右されるということを理解する。
【0097】
一実施形態によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総体積に基づいて、少なくとも50体積%の量で、好ましくは少なくとも60体積%の量で、より好ましくは少なくとも70体積%の量で、最も好ましくは少なくとも80体積%の量で、熱伝導性フィラー組成物を含む。
【0098】
少なくとも1つのポリマーは、当技術分野において既知の任意の好適なポリマーを含んでいてよい。例えば、少なくとも1つのポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム及び交互コポリマー、異相コポリマー及びランダム異相コポリマー並びにそれらのポリマーブレンド、改質物又は混合物を含むことができる。少なくとも1つのポリマーはまた、再生ポリマー材料を含むこともできる。少なくとも1つのポリマー中の再生ポリマーの含量は、少なくとも1つのポリマーの総重量に基づいて、0.01~100重量%の範囲内であってよい。
【0099】
「少なくとも1つ」のポリマーなる表現は、1つ又は複数のポリマーのタイプが、本発明のポリマー組成物中に存在し得ることを意味している。一実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは単一のポリマーであってよい。別の実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、2つ又はそれを超えるタイプのポリマーの混合物であってよい。
【0100】
一実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、樹脂、熱可塑性ポリマー、エラストマー、又はそれらの混合物から選択される。
【0101】
好適な樹脂の例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又はフェノール樹脂が挙げられる。
【0102】
好適なエラストマーの例としては、アクリルゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、イソプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブテン-イソプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、多硫化ゴム、又は熱可塑性ゴムがある。
【0103】
好ましくは、この少なくとも1つのポリマーは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーから選択することができる。本発明に好適なこのような熱可塑性ポリマーは、非限定的に以下のものを含み得る:
- オレフィン及びジオレフィン由来のポリマー、例えば、ポリエチレン類(LDPE、LLDPE、VLDPE、ULDPE、MDPE、HDPE、UHMWPE)、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリシクロオクテン、並びにランダム又はブロックコポリマー、例えば、エチレン/ブタ-1-エンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマー、エチレン-メチルペンテンコポリマー、エチレン-オクテンコポリマー、ポリプロピレン-ポリエチレン(EP)、EPM、EPDM、エチレン-ビニルアセテート(EVA)及びエチレン-アクリル酸エステルコポリマー、
- ポリスチレン、ポリメチルスチレン、スチレン-ブタジエンコポリマー(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)及びその水素化ポリマー(SEBS)、スチレン-イソプレン、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル(ABS)、スチレン-アクリロニトリル-アクリレート(ASA)、スチレン-無水マレイン酸、及びグラフト化ポリマー、例えば、スチレン-グラフト化ブタジエン、無水マレイン酸-グラフト化SBS、又はメチルメタクリレート、スチレン-ブタジエン及びABS(MABS)由来のグラフト化ポリマー、
- ハロゲン含有ポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、又はポリテトラフルオロエチレン、
- 不飽和エステル由来のポリマー、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリブチルアクリレート、
- 不飽和アルコールから誘導されたポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、又はポリビニルブチラール(PVB)、
- ポリアセタール、例えば、ポリオキシメチレン及びそのコポリマー、
- ポリフェニレンオキシド、並びにそのポリスチレン又はポリアミドブレンド、
- ポリウレタン(PU)、特に、線状ポリウレタン(TPU)、
- ポリアミド(PA)、例えば、PA-6、PA-6.6、PA-6.10、PA-4.6、PA-4.10、PA-6.12、PA-12.12、PA-11、PA-12並びに部分芳香族ポリアミド(例えばポリフタルアミド)、
- ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリフェニレンスルフィド、
- ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、
- ポリカーボネート
- セルロース誘導体、例えば、硝酸セルロース、酢酸セルロース、又はプロピオン酸セルロース、
- 植物油脂、トウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、又は微生物叢などの再生可能バイオマス源から誘導された部分的に又は完全にバイオベースのポリマー、脂肪族バイオポリエステル、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、又はポリ乳酸(PLA)などのポリエステル、
- 上述したポリマーのうちの少なくとも1つを含むブレンド、混合物、合金、及び組み合わせ。
【0104】
一実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、ポリオレフィンのホモポリマー及び/又はコポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリウレタン、ハロゲン含有ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、及びそれらの混合物からなる群から選択される熱可塑性ポリマーである。
【0105】
一実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、ポリエチレンのホモ及び/又はコポリマー、ポリプロピレンのホモ-及び/又はコポリマー、ポリブチレンのホモ-及び/又はコポリマー、又はそれらの混合物から選択されたポリオレフィンである。別の実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、又はそれらの混合物を含むポリオレフィンである。例えば、少なくとも1つのポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、例えば、ポリプロピレンホモポリマー、ランダムポリプロピレン、異相ポリプロピレン、又はポリプロピレン単位を含むブロックコポリマー、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HI-PS)、及びポリアクリレートを含む群から選択することができる。
【0106】
一実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、樹脂、熱可塑性ポリマー、エラストマー又はそれらの混合物であり、好ましくは、少なくとも1つのポリマーは、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィンのホモポリマー及び/又はコポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリウレタン、ハロゲン含有ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、イソプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレン、水素化ニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、クロロ-イソブテン-イソプレンゴム、臭素化イソブテン-イソプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンゴム、ポリウレタンゴム、多硫化ゴム、熱可塑性ゴム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0107】
少なくとも1つのポリマーはさらに、当業者にとっては周知である1つ又は複数の添加剤を含むことができる。このような添加剤には、非限定的に、紫外線吸収剤、光安定剤、加工安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、核形成剤、金属不活性化剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー調節剤、加工助剤、顔料、染料、蛍光増白剤、抗菌剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロック剤、カップリング剤、分散剤、相溶化剤、脱酸素剤、脱酸剤、マーカー、防曇剤、表面改質剤、難燃剤、発泡剤、発煙抑制剤、強化材、例えば、ガラス繊維、炭素繊維及び/又はガラスバブル、あるいは上記の添加剤の混合物が含まれる。添加剤の量は、企図された用途によって左右され、ポリマー組成物の総重量に基づいて0~20重量%の範囲内であってよい。
【0108】
少なくとも1つのポリマーと熱伝導性フィラー組成物をブレンドする方法は、特に限定されず、当技術分野において既知である。例えば、少なくとも1つのポリマーは、熱伝導性フィラー組成物及び任意の他の構成成分と組み合わされ、かつ従来からの混合技術を用いて密に混合されるか、又はいくつかの異なる方法で、例えば溶融ブレンド又は溶液ブレンドすることにより処理することができる。
【0109】
一実施形態によれば、ポリマー組成物は、少なくとも1つのポリマーと熱伝導性フィラー組成物を溶融ブレンドすることによって製造される。溶融ブレンドには、せん断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、又は上記の力若しくはエネルギー形態のうちの少なくとも1つを含む組み合わせの使用が関与し、かつ溶融ブレンドは加工用設備で行なわれ、この設備で、単軸スクリュー、多軸スクリュー、噛合型共回転又は二重反転スクリュー、非噛合型共回転又は二重反転スクリュー、往復運動スクリュー、ピン付きスクリュー、スクリーン付きスクリュー、ピン付きバレル、ロール、ラム、ヘリカルローター又は上述したもののうちの少なくとも1つを含む組み合わせによって、上記の力又はエネルギー形態を加える。上述した力が関与する溶融ブレンドは、単軸又は多軸スクリュー押出し機、ブッスニーダ、ヘンシェル、ヘリコーン、ロスミキサー、バンバリー、ロールミル、成形機、例えば、射出成形機、真空成形機、ブロー成形機など、あるいは上述の機械のうちの少なくとも1つを含む組み合わせといった機械の中で行うことができる。
【0110】
代替的には、少なくとも1つのポリマーは、粉末形態、ペレット形態、シート形態などで提供され、最初にヘンシェル内又はロールミル内で熱伝導性フィラー組成物と乾燥ブレンドされてから、押出し機又はブッスニーダなどの溶融ブレンド装置の中に供給される。熱伝導性フィラー組成物はまた、マスターバッチの形で溶融ブレンド装置内に導入されてもよい。このようなプロセスにおいて、マスターバッチは、少なくとも1つのポリマーが導入される箇所の下流側で溶融ブレンド装置内に導入することができる。
【0111】
また、少なくとも1つのポリマー及び熱伝導性フィラー組成物は、粉砕、撹拌、ミリング又はタンブリングによっても混合可能であり、かつ多数回のブレンディング及び成形工程に付すことができる。例えば、成形可能な組成物は、最初に押出し加工されて、ペレットへと成形することができる。このペレットは、次に成形機内に供給され、そこで任意の望ましい形状又は製品へと成形することができる。
【0112】
代替的には、本発明に係るポリマー組成物を製造するために、溶液ブレンドを使用することができる。溶液ブレンドはまた、せん断、圧縮、超音波振動などの追加のエネルギーを使用することができ、少なくとも1つのポリマー内で熱伝導性フィラー組成物の均質化を促進することができる。
【0113】
一実施形態によれば、ポリマー組成物は、熱伝導性マスターバッチ、熱伝導性グリース、熱伝導性成形用組成物、熱伝導性押出加工用組成物、熱伝導性ギャップフィラー、熱伝導性接着剤、熱伝導性ゲル、熱伝導性ポッティング用コンパウンド、熱伝導性封止剤、又は熱伝導性ペーストである。
【0114】
一実施形態によれば、ポリマー組成物は、少なくとも0.75W/m・K、好ましくは少なくとも1W/m・K、より好ましくは少なくとも1.2W/m・K、最も好ましくは少なくとも1.5W/m・Kの熱伝導率を有する。一実施形態によれば、熱伝導率は、65体積%のフィラー組成物及び35体積%の標準溶液からなる標準ポリマー組成物の形態で測定される。標準溶液は、50重量%のジイソノニルフタレート及び50重量%のヒドロキシル末端ポリブタジエンからなるものであってよい。熱伝導率は、デュアルニードルのSH-3センサーを備えたTEMPOS熱特性分析装置(METER Group AG.、ドイツ)を用いて決定することができる。
【0115】
本発明のポリマー組成物は、さまざまな用途、例えば、航空宇宙用途、自動車用途、鉄道用途、船舶用途、電子的用途、電動乗物用途、又は医療用途において利用することができる。
本発明のさらなる態様によれば、航空宇宙用途、自動車用途、鉄道用途、船舶用途、電子的用途、電動乗物用途、又は医療用途における、本発明に係る熱伝導性フィラー組成物の使用が提供される。好ましくは、本発明に係る熱伝導性フィラー組成物は、自動車用途、より好ましくは、自動車動力用電気用途において使用することができる。例えば、本発明に係る熱伝導性フィラー組成物は、電気自動車用のバッテリーセル又はバッテリーモジュール用のギャップフィラーにおいて使用することができる。
【0116】
本発明のさらなる態様によれば、本発明に係るポリマー組成物を含む物品が提供され、この物品は、電気部品、電子部品、自動車部品、航空宇宙部品、鉄道部品、船舶用部品、医療用部品、放熱装置、又は不織材料であり、好ましくは、自動車動力用電気部品、航空宇宙動力用電気部品、鉄道動力用電気部品、船舶動力用電気部品、バッテリー、バッテリーセル、バッテリーモジュール、集積回路、発光ダイオード、ランプソケット、半導体パッケージ、冷却用ファン、コネクター、スイッチ、ケース、ハウジング、粘着テープ、粘着パッド、粘着シート、制振用品、ガスケット、スペーサー、シーラント、ヒートシンク、ヒートスプレッダ、防火用毛布、又はオーブンクロスである。
【0117】
一実施形態によれば、この物品は、本発明の熱伝導性フィラー組成物を含む熱伝導性ギャップフィラーの層によってベースプレートに接続された複数のバッテリーセルを含むバッテリーモジュールである。
【0118】
なおさらなる態様によれば、ポリマー組成物のための熱伝導率増強剤としての本発明に係る熱伝導性フィラー組成物の使用が提供される。
【0119】
本発明の範囲及び利点は、本発明のいくつかの実施形態を例示することが意図されておりかつ非限定的である以下の実施例に基づいてより良く理解される。
【実施例】
【0120】
1. 材料及び方法
【0121】
【0122】
1.2 化学物質
Jayflex DINP(エクソンモービルケミカル)は、高分子量のフタル酸エステル系可塑剤である(CAS 28553-12-0)。Poly bd(登録商標)R45 HTLO樹脂(Cray Vally)は、低分子量で液体のヒドロキシル末端ブタジエンポリマーである(CAS 69102-90-5)。
【0123】
1.3 粒径分布(PSD)
体積決定メジアン粒径d50(vol)及び体積決定トップカット粒径d98(vol)並びに体積粒径d90(vol)及びd10(vol)は、Malvern Mastersiger2000又は3000レーザー回析システム(Malvern Instuments Plc.、英国)を用いて、湿式ユニット内で値を求めることができる。以下の実施例のセクションでは、別段に示さない限り、体積粒径をMalvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction System(Malvern Instruments Plc.、英国)を用いて、湿式ユニットで値を求めた。d50(vol)又はd98(vol)値は、粒子のそれぞれ50体積%又は98体積%がこの値よりも小さい直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データを、粒子屈折率1.57及び吸収係数0.005で、Mie理論を用いて分析した。この方法及び計器は当業者に知られており、かつフィラー及び顔料の粒径分布を決定するために一般的に使用されている。いかなる前処理も行わずに、乾燥条件下で試料を測定した。
【0124】
重力場における沈降挙動の分析である沈降法によって、重量決定メジアン粒径d50(wt)を測定した。測定は、Micromeritics Instrument Corporation、米国のSedigraph(商標)5120を用いて行った。この方法及び計器は、当業者に知られており、かつフィラー及び顔料の粒径分布を決定するために一般的に使用されている。0.1重量%のNa4P2O7の水溶液中で測定を実施した。高速撹拌器を用いて試料を分散させ、かつ超音波処理した。このプロセス及び計器は、当業者に知られており、かつフィラー及び顔料の粒径を決定するために、一般的に使用されている。
【0125】
1.4 材料のBET比表面積
本明細書全体を通して使用される材料の「比表面積」(m2/g単位で表現)は、吸着ガスとして窒素を用い、Micromeritics社製のASAP 2460計器を使用して、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)法によって決定される。この方法は、当業者にとって周知のものであり、かつISO 9277:2010で定義されている。測定に先立ち、試料を60分間、真空下100℃で調整する。この材料の総表面積(m2単位)は、材料の比表面積(m2/g単位)と質量(g単位)の乗算によって得ることができる。
【0126】
1.5 粘度測定
平行なプレート幾何形状を備えたAnthon Paar Physical MCR-301レオメーターを用いて、液体試料のレオロジー特性を決定した。測定ギャップ(間隔)を1.000mmに設定し、かつペルティエ底板を用いて、温度を23.00℃に制御した。1秒ごとに粘度を測定しながら、1s-1の一定のせん断速度を10秒間加えた。一連の測定の最後の測定値を計算のために使用する。
【0127】
1.6 熱伝導率の評価
デュアルニードル(長さ30mm、直径1.3mm)のSH-3センサーを備えたTEMPOS熱特性分析装置(METER Group)を用いて、試料の熱伝導率を測定した。この分析装置が利用する測定原理においては、設定した加熱時間にわたり被加熱ニードルに熱を加え、加熱中及び加熱に続く冷却期間中に、間隔6mmのモニタリングニードルで温度を測定する。その後、周囲温度及びドリフトレートを減算することによって、測定値を処理する。結果として得たデータを、最小二乗法を用いて以下の方程式1及び方程式2にあてはめる。
【0128】
【数1】
式中、
ΔTは、測定ニードルにおける温度上昇であり、
qは、被加熱ニードルにおける流入熱(W/m)であり、
kは、熱伝導率(W/m・K)であり、
rは、被加熱ニードルから測定ニードルまでの距離であり、
Dは、熱拡散率(m
2/s)であり、
tは、時間(秒)であり、かつ
t
hは、加熱時間(秒)である。
E
iは、指数積分であり、かつ多項式を用いて近似される(Abramowitz及びStegun、1972)。
【0129】
TEMPOS分析装置は、少なくとも30秒間データを収集して温度ドリフトを決定する。ドリフトが閾値よりも低い場合、ヒーターニードルに対し30秒間電流を加え、この時間中、検知用ニードルの温度を監視する。30秒経過時点で電流を遮断し、かつさらに90秒間温度を監視する。その後、温度から開始温度とドリフトを減算し、方程式1及び方程式2を解くために必要とされるΔT値を得る。q、r、t及びthの値がわかっているので、k及びDの値の解を得ることができる。これは、伝統的な非線形最小二乗法(Marguant、1963)を用いて行うことができるが、これらの方法は多くの場合、極小値で行き詰まり、正しい結果を与えることができない。方程式1及び方程式2中のDについて値を選択した場合、その計算は線形最小二乗法の問題となる。このとき、測定上の温度とモデリングされた温度の間の差分の二乗を最小化するDの値が求められる。この方法は、最小値を提供し、かつ伝統的な非線形最小二乗法と同等に高速で行うことができる。k及びDがひとたび決定されると、以下の方程式3を用いて容積比熱容量を算出することができる。
【0130】
【0131】
試料を分析するために、ポリマー配合物(以下の項目2に記載する)を、直径34mm、高さ75mmのポリプロピレン容器に移し、かつ30秒間800rpmでSpeed Mixer DAC 600.1 FVZで撹拌して、含有空気を除去した。試料を4時間以上にわたり室温(20±2℃)で調整しておいた。軸ケーブル構成を有するSH-3タイプのセンサーを、実験用クランプを用いて液体試料の中心に位置付けした。その後、液体試料とニードルとの間の接触を確保しながら、実験用ジャックモデル110(Rudolf Grauer AG)を用いて、液体試料中に二股センサーを完全に浸漬させた。最終的に、以上の説明にしたがって熱伝導率を測定した。
【0132】
1.7 吸湿感受性測定
本明細書中で言及する材料の吸湿感受性は、+23℃(±2℃)の温度で50時間、10%及び85%の相対湿度の雰囲気にそれぞれ曝露した後の、材料1gあたりの湿分(水分)のmg数単位で決定した。Gintronic社製のGraviTest 6300装置で測定を行った。このために、試料をまず相対湿度85%の雰囲気に50時間保持し、その後、この雰囲気を10%の相対湿度に変更し、この相対湿度で試料をさらに50時間保持した。次いで、2回の高湿度と2回の低湿度のサイクルとなるようにこの手順を繰り返した。10%相対湿度と85%相対湿度との間の試料の重量増加を用いて、材料が湿分を「取り込む」傾向の標示を計算した。吸湿感受性は、試料1gあたりの湿分のmg数単位で報告されている。
【0133】
2. ポリマー配合物の調製
プロピレンのスピードミキサーカップ内に等量の可塑剤とポリオールを添加し、Speed Mixer DAC 600.1 FVZにおいて30秒間800rpmで撹拌した。得られた液体ポリマー相の保管寿命は、周囲温度で4時間であった。
【0134】
プロピレンのスピードミキサーカップ内に、異なるサイズ範囲からのフィラーで構成されている熱伝導性フィラー組成物を下記表1にしたがって秤量した。その後、調製した液体ポリマー相を添加した。混合物を、周囲温度で30秒間、2300rpmで、Speed Mixer DAC 600.1 FVZで撹拌した。
【0135】
3. 表面処理酸化マグネシウム(MGO4、MGO5)の調製
酸化マグネシウムを表面処理剤(ステアリン酸とパルミチン酸のブレンド:重量比39:61)で処理することによって、表面処理酸化マグネシウムを調製した。2kgの酸化マグネシウム(死焼酸化マグネシウム)を2.5Lのミキサー容器(Somakon MP-LB Mixer、Somakon Verfahrenstechnik、ドイツ)に入れ、5分間撹拌することによって調整した(700rpm、120℃)。その後、未処理の酸化マグネシウム100重量部に対して0.1又は0.3重量部の表面処理剤を混合物にゆっくりと添加した。その後、さらに15分間、撹拌と加熱を続行した(120℃、700rpm)。その後、混合物を冷却し、かつ処理した粉末を回収した。
【0136】
本明細書中で言及されている材料の吸湿感受性は、+23℃(±2℃)の温度で、10%及び85%の相対湿度(RH)の雰囲気にそれぞれ曝露した後の材料1gあたりの湿分(水分)のmg数単位で(又は同様に%単位で)決定した。Gintronic社製のGraviTest 6300装置で測定を行なった。
【0137】
このために、試料をまず相対湿度10%の雰囲気に200分間保持し、その後、相対湿度を段階的に85%まで増大させた。200分間の段階は、30%RH、50%RH、及び70%RHとし、200分間で85%RHに到達させた。次いで、70%RH、50%RH、及び30%RHで止めながら、再び10%RHに到達させ、200分間の段階で85%RHから10%RHまで相対湿度を低下させた。
【0138】
次に、10%相対湿度と85%相対湿度との間の試料の重量の増加を使用して、材料が湿分を「取り込む」傾向の標示を計算した。吸湿感受性は、試料1g当たりの湿分のmg数単位で報告されている。
【0139】
3つの試料の吸湿感受性を分析した:
- 未処理の死焼酸化マグネシウム(MGO3)
- 表面処理した死焼酸化マグネシウム(MGO4)
- 表面処理した死焼酸化マグネシウム(MGO5)
【0140】
未処理の試料は、85%RHで0.1%の吸湿感受性を有していた。この値は、表面処理剤の存在によって大幅に低下した(0.1及び0.3重量%の異なる濃度を使用)。
【0141】
また、相対湿度が85%RHから10%RHまで低下したとき、未処理試料では、吸湿感受性が20%低下したことがわかった。対照的に、表面処理した酸化マグネシウムの場合には、吸湿感受性は37%低下した。
【0142】
さらに、上記1.7の項目に記載した、吸湿性、又はフィラー表面への水吸着の評価方法を使用して、未処理のMgOフィラー及び処理したMgOフィラーを試験した。
【0143】
測定結果を
図3に示す。試料を0~3000分、85%の相対湿度(RH)に曝し、かつ次の3000分でRHを10%に低減させて、6000分の一サイクルを完了したことがわかる。その後、試料を高いRH及び低いRHのもう一つのサイクルに曝した。未処理のフィラーの重量は、サイクルの高湿度区域で増加し、低湿度区域では初期に試料の重量がわずかに低下したもののほとんど変化は観察されなかったことが理解できる。
【0144】
0.1重量%で表面処理した酸化マグネシウムと、0.3重量%で表面処理した酸化マグネシウムとの間には、ほとんど差がないように見え、両者とも、2つの高い湿度状態の間に重量の非常に小さな増加を示し、かつ低い湿度状態の間にわずかな減少を示している。0.1%の処理水準であっても、吸湿感受性は、未処理のフィラーの吸湿感受性よりも著しく低下している。
【0145】
4. 実施例
4.1 実施例1
粗粒画分、中間粒画分、及び微細粒画分として示される2つ又は3つの異なるフィラー画分で構成されている熱伝導性フィラー組成物を使って、以下の表1にしたがってポリマー組成物を調製した。MGO1は死焼酸化マグネシウムである。
【0146】
【0147】
上述した方法にしたがって、調製したポリマー組成物の熱伝導率及び粘度を測定し、かつ統計学的方法(Design Exoert version 10.0.8,Stat-Ease Inc.)を用いて、その結果を処理した。得られた熱伝導率及び粘度値を下記の表2に示す。
【0148】
【0149】
本発明のポリマー組成物はすべて、優れた熱伝導率及び加工可能な範囲内の粘度を示した。粗粒画分及び微細粒画分で構成された熱伝導性フィラー混合物を含むポリマー組成物(試料6)について、最も高い熱伝導率が得られた一方で、3つの画分で構成された熱伝導性フィラー組成物を使用することによって粘度は最小化した。
【0150】
4.2 実施例2
粗粒画分、中間粒画分、及び微細粒画分として示される2つ又は3つの異なるフィラー画分で構成されている熱伝導性フィラー組成物を用いて、下記の表3にしたがってポリマー組成物を調製した。MGO2は、死焼酸化マグネシウムである。
【0151】
【0152】
上述した方法にしたがって、調製したポリマー組成物の熱伝導率及び粘度を測定し、かつ統計学的方法(Design Exoert version 10.0.8,Stat-Ease Inc.)を用いて、その結果を処理した。得られた熱伝導率及び粘度値を下記の表4に示す。
【0153】
【0154】
調製されたポリマー組成物はすべて、優れた熱伝導率及び加工可能な範囲内の粘度を示した。本発明のポリマー組成物(試料15)は、優れた熱伝導率で低い粘度を示した。
【0155】
4.3 実施例3
粗粒画分、中間粒画分、及び微細粒画分として示される2つ又は3つの異なるフィラー画分で構成されている熱伝導性フィラー組成物を用いて、以下の表5にしたがってポリマー組成物を調製した。MGO1及びMGO2は、死焼酸化マグネシウムである。
【0156】
【0157】
上述した方法にしたがって、調製したポリマー組成物の熱伝導率及び粘度を測定し、かつ統計学的方法(Design Exoert version 10.0.8,Stat-Ease Inc.)を用いて、その結果を処理した。得られた熱伝導率及び粘度値を下記の表6に示す。
【0158】
【0159】
図1及び2から、同じ熱伝導性フィラー組成物を異なる濃度で含有する本発明の試料22~24(組成物2)が、比較用試料25~27(組成物3)と比べて低い粘度でより高い熱伝導率を示したということを読み取ることができる。さらに、このデータは、同じ熱伝導性フィラー組成物を異なる濃度で含有する本発明の試料19~21(組成物1)が、組成物3に比べて、匹敵する粘度でより高い熱伝導率を提供したことを示している。したがって、本発明の熱伝導性フィラー組成物は、従来の熱伝導性フィラー組成物に比べて、より低いか又は匹敵する粘度で、より高い熱伝導率を提供することができる。
【0160】
4.4. 実施例4
プロピレンのスピードミキサーカップに、異なるサイズ範囲からのフィラーで構成されている熱伝導性フィラー組成物を下記表8にしたがって秤量した。その後、以下の表7に列挙した樹脂、可塑剤、触媒、接着促進剤及び水分捕捉剤を含めた液体ポリマー相を添加した。混合物を、周囲温度で30秒間、2300rpmで、Speed Mixer DAC 600.1 FVZで撹拌した。MGO3~MGO6は、死焼酸化マグネシウムであり、ここで、MGO4及びMGO5は、上記の項目3で説明したとおり、表面処理されていた。
【0161】
【0162】
【0163】
以上で製造した試料は、3つの明確に異なる実験セット、すなわち、未処理のMgOフィラーと表面処理したMgOフィラーとの比較(試料28、29、30)、鉱物ブレンドの一部としての未処理のCaOと表面処理したCaOとの比較(試料31及び32)、及び鉱物ブレンドの一部としての表面処理したCaOを用いたフィラー充填量の増加(試料32及び33)として説明することができる。
【0164】
熱伝導率の測定のために、それぞれの調製したポリマー組成物100gに対し1gの水を添加し、かつ木製スパチュラを用いて穏やかに、ただし完全に材料を混合した。これは材料を硬化させ、ブレンドへの水の添加からおよそ2分以内に固体ポリマーをもたらした。試験前に、得られたポリマーを周囲の室温と平衡状態にした(最低4時間)。上記の項目1.6で記載した方法にしたがって、熱伝導率を測定した。
【0165】
調製したポリマー組成物の粘度を以下の方法にしたがって測定した:
平行なプレート幾何形状を備えたAnthon Paar Physical MCR-301レオメーターを用いて、液体試料のレオロジー特性を決定した。測定ギャップ(間隔)を1.000mmに設定し、かつペルティエ底板を用いて、温度を23.00℃に制御した。0.01s-1から100s-1までのせん断スイープを実施し、ここで、21箇所の対数的に決定した点で測定を行った。0.1s-1及び10s-1における測定値は、それぞれ、押出性(材料がカートリッジから押出される)及び加工性(工具を用いて手作業で材料を適用できる)に相関しているものとみなされる。
【0166】
【0167】
すべての試料は、上述した方法を用いて容易に加工することができた。熱伝導率は、未処理のフィラー材料に比べ表面処理したフィラー材料の方がわずかに高く、かつ脂肪酸の表面コーティングの量を増加させることは、ポリマー組成物の粘度を下げると思われる。表面処理したMgOを含有するポリマー組成物の粘度は、
図4に示されているように、押出性範囲(0.1 1/s)及び加工性範囲(10 1/s)の両方においてより低いものであった。
【0168】
【0169】
表10を見ればわかるように、鉱物ブレンドの一部としての未処理のCaOと表面処理したCaOとの比較(試料31及び32)から、熱伝導率には変化がないことが明らかである一方で、
図5にさらに示すとおり、高いせん断速度と低いせん断速度の両方で、試料32に粘度の低下が認められた。
【0170】
【0171】
表11からわかるように、ポリマー組成物の熱伝導率は、フィラーの充填量の増加とともに増大した。
図6は、より高い充填レベルに関連して増大した粘度のプロットである。75%のフィラー充填量では、粘度は接着剤用としては低い。80%の充填量では、材料はペースト状であるが、これらの値は、押出性及び加工性が良いことを示している。
【国際調査報告】