(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ベースライン復元回路
(51)【国際特許分類】
G01T 1/17 20060101AFI20240315BHJP
H04N 25/30 20230101ALI20240315BHJP
H04N 25/773 20230101ALI20240315BHJP
【FI】
G01T1/17 C
H04N25/30
H04N25/773
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556563
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2022059579
(87)【国際公開番号】W WO2022218901
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548733
【氏名又は名称】アーエムエス インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AMS INTERNATIONAL AG
【住所又は居所原語表記】Eichwiesstrasse 18b, Jona, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー マティアス
【テーマコード(参考)】
2G188
5C024
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188AA25
2G188BB02
2G188BB15
2G188CC29
2G188EE01
2G188FF22
5C024CX03
5C024HX17
5C024HX29
5C024HX31
5C024HX35
5C024HX44
(57)【要約】
コントローラと、増幅器を備える回路段から出力される入力電圧信号を受信するように配置され、コントローラからの第1制御信号の受信に応じて、サンプリング時間に前記入力電圧信号のサンプルを取り込むように構成される、サンプル制御回路と、サンプルと一定のベースライン基準電圧とを受信し、サンプルを選択的に処理して出力電圧を供給するように配置されたアナログ処理段と、前記出力電圧を補償電流に変換し、前記補償電流を前記回路段の入力に供給するように構成されたトランスコンダクタンス段と、前記入力電圧信号が前記サンプリング時間周辺の期間中に変化したかどうかを監視するように構成された変化検出器と、を備え、前記期間中に前記入力電圧信号の変化が検出されない場合、前記コントローラはサンプルを処理するように前記アナログ処理段を制御する、ベースライン復元回路。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラ(324)と、
増幅器(106)を備える回路段(104)から出力される入力電圧信号を受信するように配置され、前記コントローラからの第1制御信号の受信に応じて、サンプリング時間に前記入力電圧信号のサンプルを取り込むように構成される、サンプル制御回路(302)と、
前記入力電圧信号のサンプルと一定のベースライン基準電圧とを受信し、前記入力電圧信号のサンプルを選択的に処理して出力電圧を供給するように配置されたアナログ処理段(326)と、
前記出力電圧を補償電流に変換し、前記補償電流を前記回路段の入力に供給するように構成されたトランスコンダクタンス段(328)と、
前記入力電圧信号が前記サンプリング時間周辺の期間中に変化したかどうかを監視するように構成された変化検出器(314、802)と、を備え、
前記期間中に前記入力電圧信号の変化が検出されない場合、前記コントローラはさらに第2制御信号を前記アナログ処理段に送信して、前記入力電圧信号のサンプルを処理するように前記アナログ処理段を制御する、
ベースライン復元回路(300)。
【請求項2】
前記変化検出器は、前記入力電圧信号を連続的に受信するように配置された変化検出器段(314)を備える、
請求項1に記載のベースライン復元回路。
【請求項3】
前記期間の開始および終了は、前記コントローラが前記変更検出器に第3制御信号を送信することによって制御される、
請求項2に記載のベースライン復元回路。
【請求項4】
前記変化検出器は、前記期間の開始時に、前記入力電圧信号の瞬時値を取り込み、前記入力電圧信号と前記入力電圧信号の前記瞬時値との比較を行うことによって、前記期間中に前記入力電圧信号が変化したかどうかを監視するように構成される、
請求項3に記載のベースライン復元回路。
【請求項5】
前記変化検出器は、
前記比較に基づいて電圧差値を求め、
前記電圧差分値が第一の負の所定の閾値電圧未満であることを検出した場合、および
前記電圧差分値が第二の正の所定の閾値電圧よりも大きいことを検出した場合、のうち少なくとも一方の場合に、
前記期間中に前記入力電圧信号が変化したと判定する、ように構成される、
請求項4に記載のベースライン復元回路。
【請求項6】
前記変化検出器は、エネルギー弁別器(112)から出力されるデジタル信号を受信するように配置された変化検出器段(802)を備え、
前記デジタル信号は、前記入力電圧信号の大きさと少なくとも1つの閾値との比較に基づいて前記エネルギー弁別器によって生成され、
前記変化検出器段(802)は、前記デジタル信号に基づいて、前記入力電圧信号が前記サンプリング時間周辺の期間中に変化したかどうかを監視するように構成される、
請求項1~5のいずれかに記載のベースライン復元回路。
【請求項7】
前記変化検出器段(802)は、前記デジタル信号の状態の変化を検出することによって、前記期間中に前記入力電圧信号が変化したことを判定するように構成される、
請求項6に記載のベースライン復元回路。
【請求項8】
前記変化検出器は、前記コントローラに出力信号を供給するように配置され、
前記出力信号は、前記入力電圧信号が前記期間中に変化したかどうかを示す、
請求項1~7のいずれかに記載のベースライン復元回路。
【請求項9】
前記コントローラは、前記変化検出器が前記期間中に前記入力電圧信号の変化を検出した場合、さらに前記第2制御信号を前記アナログ処理段に送信して、前記入力電圧信号のサンプルを破棄するように前記アナログ処理段を制御するように構成される、
請求項1~8のいずれかに記載のベースライン復元回路。
【請求項10】
前記入力電圧信号のサンプルと前記一定ベースライン基準電圧とを受信するように配置された比較器(312)をさらに備え、前記比較器は、
前記入力電圧信号のサンプルを前記一定のベースライン基準電圧と比較して、差動電圧値を求め、
前記差動電圧値を使用して、前記入力電圧信号のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあるかどうか判定し、
前記入力電圧信号のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあるかどうかを示す第4制御信号を前記プロセッサに出力する、ように構成され、
前記第2制御信号を前記アナログ処理段に送信して、前記入力電圧信号のサンプルを処理するように前記アナログ処理段を制御することは、さらに、前記入力電圧信号のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあることを示す前記第4制御信号に基づく、
請求項1~9のいずれかに記載のベースライン復元回路。
【請求項11】
前記比較器は、
前記差動電圧値が第3の負の所定の閾値電圧よりも大きいことを検出した場合、および
前記差動電圧値が第4の正の所定の閾値電圧よりも小さいことを検出した場合、のうち少なくとも一方の場合に、
前記入力電圧信号のサンプルが、前記一定のベースライン基準電圧の許容可能な範囲内にあると判定するように構成される、
請求項10に記載のベースライン復元回路。
【請求項12】
前記コントローラは、さらに、前記比較器が、前記入力電圧信号のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の前記許容範囲外であると判定した場合、前記第2制御信号を前記アナログ処理段に送信して、前記入力電圧信号のサンプルを破棄するように前記アナログ処理段を制御するように構成される、
請求項10または11に記載のベースライン復元回路。
【請求項13】
前記コントローラは、さらに、
前記比較器によって出力された前記第4制御信号のみに起因して破棄される前記入力電圧信号のサンプルの数をカウントし、
カウントされたサンプルの数が閾値を超える場合、前記コントローラが前記変化検出器の出力信号のみに応じて前記入力電圧信号の他のサンプルを処理する動作モードに入るように構成される、
請求項12に記載のベースライン復元回路。
【請求項14】
前記コントローラは、前記入力電圧信号の所定数のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の前記許容範囲内にあることを示す前記第4制御信号に応答して、前記動作モードを終了するように構成される、
請求項13に記載のベースライン復元回路。
【請求項15】
前記比較器によって受信した前記入力電圧信号のサンプルは、前記サンプル制御回路によって取り込まれた前記入力電圧信号のサンプルである、
請求項10~14のいずれかに記載のベースライン復元回路。
【請求項16】
前記比較器によって受信された前記入力電圧信号のサンプルは、他のサンプル制御回路によって取り込まれ、前記他のサンプル制御回路は、前記回路段から出力される前記入力電圧信号を受信するように配置される、
請求項10~14のいずれかに記載のベースライン復元回路。
【請求項17】
前記サンプル制御回路(302)は、前記一定のベースライン基準電圧を受信するように配置されて、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを取り込むように構成され、
前記比較器は、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを受信するように配置される、
請求項10~15のいずれか一項に記載のベースライン復元回路。
【請求項18】
前記他のサンプル制御回路は、前記一定のベースライン基準電圧を受信するように配置されて、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを取り込むように構成され、
前記比較器は、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを受信するように配置される、
請求項16に記載のベースライン復元回路。
【請求項19】
前記サンプル制御回路(302)は、前記一定のベースライン基準電圧を受信するように配置されて、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを取り込むように構成され、
前記アナログ処理段(326)は、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを受信するように配置される、
請求項1~18のいずれかに記載のベースライン復元回路。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載のベースライン復元回路300と、
光子感応領域を有し、前記光子感応領域への光子の入射に応じて電流信号を生成するように構成された光子検出器(102)と、
増幅器を備え、前記電流信号を受信して、前記電流信号に応じて前記入力電圧信号を供給するように配置された回路段(104)と、
前記フロントエンド電子回路(104)に接続され、前記入力電圧信号の大きさと少なくとも1つの閾値との比較に基づいてデジタル信号を生成するように構成されたエネルギー弁別器(112)、とを備える、
光子計数回路(100)。
【請求項21】
請求項20に記載の光子計数回路(100)を備え、X線装置またはコンピュータ断層撮影スキャナとして構成される、
医療診断用装置(900)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光子計数システムのためのベースライン復元回路に関する。さらに、本開示は、ベースライン復元回路を備える、光子計数システムおよび医療診断用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線センサでは、患者の身体の軟組織を通過しやすい光子を検出するために、間接的な検出原理が用いられている。間接検出器は、X線を可視光線に変換するシンチレータを含み、この可視光線は、受光素子またはフォトダイオードによって取り込まれ、シンチレータの材料に入射するX線に応じた電気信号が供給される。
【0003】
光子計数システムでは、直接検出原理を用いることで、強度およびスペクトル情報を得るための単一光子イベントの検出および計数が可能となる。従来の画像またはX線センサーシステムが、全体の入力強度のみを測定するのに対して、光子計数システムは、個々の光子を検出するので、光子エネルギーを抽出することもできる。
【0004】
図1は、フロントエンド電子回路104と、光子検出器102と、エネルギー弁別器112とを備える光子計数回路100のブロック図を示す。光子検出器102は、光子が光子検出器102の感光領域に入射することによって生じる過渡電流パルスI
detを生成する。単一光子の検出は、光子を電流パルスId
etに変換する感光領域の特殊なセンサ材料(通常、X線変換のためのCdTeまたはCdZnTe)によって可能になる。これらの電流パルスI
detは、フロントエンド電子回路104の入力で受信され、フロントエンド電子回路104の出力で生成される電圧パルスV
shaに変換される。
【0005】
出力電圧ピークの高さは光子エネルギーに比例するため、スペクトル情報を有する。スペクトル情報(出力パルスの高さ)のデジタル化は、エネルギー弁別器112、例えば、異なる閾値Vth1、...、VthN-1、VthNを有する数個の比較器114,118を備えるフラッシュADCを用いて行うことができる。その後、比較器114,118の出力信号がカウンタ116,120によって個別にカウントされ、スペクトル分布が得られる。
【0006】
入力に電流パルスがない場合のフロントエンド電子回路104の出力静電電圧は、ベースライン信号Vblと呼ばれ、エネルギー弁別器112の比較器114,118によるパルス高さの弁別のための基準として機能する。結果として、ベースラインの変化は、観察される計数率およびパルスエネルギー測定に直接影響を及ぼす。
【0007】
図2は、
図1に示す光子計数回路100のタイミング図の一例を示す。
図2に示すように、曲線200で示される検出器電流I
detは、光子によるパルスと、隣接する検出器画素とのクロストークによるパルスを示す。また、検出器リークおよび検出器バイアスとの結合による誤差電流I
errが重畳している。その結果、曲線250で示されるフロントエンド電子回路104の出力電圧V
shaは、ベースライン電圧V
blに乗る電圧パルスを示す。このようなパルスがパルス弁別器112の比較器閾値(V
th1、V
th2)を超えるたびに、パルスはそれぞれのカウンタ116,120の1つ以上をインクリメントする。
【0008】
これを正確に機能させるためには、フロントエンド電子回路104の入力でIerrを補償して、パルスのないときにフロントエンド電子回路104の出力を規定のベースライン電圧Vbl,refに保つ必要がある。そうしないと、フロントエンド電子回路104の出力に誤差が生じ、パルス列がずれることにより、電圧パルス弁別器112のパルス認識閾値(Vth1、Vth2)がずれる。
【0009】
フロントエンド電子回路104の入力から光子検出器102の出力までのDC経路では、漏れ電流はベースラインの安定性に直接影響を及ぼし得る。検出器のアイドル電流は、「ベースライン復元器」(BLR)回路122によって正確に補償される必要がある。電圧パルス間からベースラインを抽出し、補正電流Iblrを注入することによって、ベースライン信号Vblを正確に調整する作業は、ベースライン復元回路122によって行われる。
【発明の概要】
【0010】
ベースライン復元器(BLR)は、パルス間のベースライン電圧Vblを抽出するための電圧監視機構を必要とする。この機構は、高パルス密度時に残る短いアイドル時間を取り込めるように高速に反応する必要があり、またベースライン電圧Vblの適切な調整、ひいてはパルス弁別器の正確な判定を確保するため、正確である必要がある。
【0011】
光子検出器は、画素のマトリクス(例えば、16×16画素のマトリクス)を備えていてもよい。光検出器の各画素は、その画素に入射する光子をカウントするため、自身の光子計数回路と対応付けられてもよい。高速で正確なBLR用の電圧モニタは、領域および電力に関してコストがかかる一方、BLRは、1つの検出器ピクセルの面積に収まる必要があるため、利用可能な面積は限定される。したがって、速度および精度と領域との最適な妥協点が望ましい。
【0012】
さらに、従来技術が教示するように、絶対閾値に基づいた電圧監視判定を行うと、システムが動かなくなるリスクにさらされる。これは、始動時または静電気放電(ESD)や電源グリッチなどの予期せぬチャージイベント時に、実際のベースライン電圧Vblと所望のベースライン基準電圧Vbl,refとの間に大きなずれが生じる可能性があり、その後のベースライン電圧を抽出するための試みすべてが失敗することになるからである。システムが動かなくなるもう1つの原因として考えられるのは、検出器のリーク電流の急激な変化である。一定時間後に監視の許容範囲を広げることでこれに対処することもできるが、高パルス流入時に真のベースラインの損失が生じてしまう。絶対閾値モニタが、上記の真のベースライン誤差と、パルスによる一時的な偏差とを区別することができないためである。
【0013】
概して、本開示は、上記の問題を克服することを提案する。
【0014】
本開示の一態様に係るベースライン復元回路は、コントローラと、増幅器を備える回路段から出力される入力電圧信号を受信するように配置され、コントローラからの第1制御信号の受信に応じて、サンプリング時間に入力電圧信号のサンプルを取り込むように構成される、サンプル制御回路と、入力電圧信号のサンプルと一定のベースライン基準電圧とを受信し、入力電圧信号のサンプルを選択的に処理して出力電圧を供給するように配置されたアナログ処理段と、出力電圧を補償電流に変換し、補償電流を回路段の入力に供給するように構成されたトランスコンダクタンス段と、入力電圧信号がサンプリング時間周辺の期間中に変化したかどうかを監視するように構成された変化検出器と、を備え、期間中に入力電圧信号の変化が検出されない場合、コントローラはさらに第2制御信号をアナログ処理段に送信して、入力電圧信号のサンプルを処理するようにアナログ処理段を制御する。
【0015】
これにより、変化検出器は、ベースライン電圧に対する絶対差ではなく、入力電圧信号の変化を感知する。
【0016】
本開示の実施形態は、システムが動かなくなるという上述の問題を回避できるという効果を有する。
【0017】
いくつかの実装態様において、変化検出器は、入力電圧信号を連続的に受信するように配置された変化検出器段を備える。
【0018】
期間の開始および終了は、コントローラが変更検出器に第3制御信号を送信することによって制御されてもよい。
【0019】
変化検出器は、期間の開始時に、入力電圧信号の瞬時値を取り込み、入力電圧信号と入力電圧信号の瞬時値との比較を行うことによって、期間中に入力電圧信号が変化したかどうかを監視するように構成されてもよい。
【0020】
変化検出器は、比較に基づいて電圧差値を求め、電圧差分値が第一の負の所定の閾値電圧未満であることを検出した場合、および電圧差分値が第二の正の所定の閾値電圧よりも大きいことを検出した場合、のうち少なくとも一方の場合に、期間中に入力電圧信号が変化したと判定する、ように構成されてもよい。
【0021】
変化検出器は、エネルギー弁別器から出力されるデジタル信号を受信するように配置された変化検出器段を備えてもよく、デジタル信号は、入力電圧信号の大きさと少なくとも1つの閾値との比較に基づいてエネルギー弁別器によって生成されてもよく、変化検出器段は、デジタル信号に基づいて、入力電圧信号がサンプリング時間周辺の期間中に変化したかどうかを監視するように構成されてもよい。変化検出器段は、デジタル信号の状態の変化を検出することによって、期間中に入力電圧信号が変化したことを判定するように構成されてもよい。
【0022】
これにより、ベースライン復元回路が光子計数回路内で使用される実施形態において、上記変化検出器段は、入力電圧信号を連続的に受信するように配置される他の変化検出器段を備える変化検出器の精度を高めるために使用されてもよく、または上記変化検出器段を変化検出器の唯一の変化検出器段として使用して、変化検出器を簡素化してベースライン復元回路による回路面積を低減するようにしてもよい。
【0023】
変化検出器は、コントローラに出力信号を供給するように配置されてもよく、出力信号は、入力電圧信号が期間中に変化したかどうかを示してもよい。
【0024】
コントローラは、変化検出器が期間中に入力電圧信号の変化を検出した場合、さらに第2制御信号をアナログ処理段に送信して、入力電圧信号のサンプルを破棄するようにアナログ処理段を制御するように構成されてもよい。
【0025】
いくつかの実装態様において、2つの監視機構、すなわち、変化検出器と比較器(例えば、ウィンドウ比較器)との組合せが設けられる。これにより、いくつかの実装態様では、変化検出器と比較器とを組み合わせて使用し、入力電圧信号におけるパルス間の真のベースライン電圧サンプルを効率的に抽出する(すなわち、識別する)。
【0026】
詳細には、入力電圧信号のサンプルと一定ベースライン基準電圧とを受信するように配置された比較器をさらに備えてもよく、比較器は、入力電圧信号のサンプルを一定のベースライン基準電圧と比較して、差動電圧値を求め、差動電圧値を使用して、入力電圧信号のサンプルが一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあるかどうか判定し、入力電圧信号のサンプルが一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあるかどうかを示す第4制御信号をプロセッサに出力する、ように構成され、第2制御信号をアナログ処理段に送信して、入力電圧信号のサンプルを処理するようにアナログ処理段を制御することは、さらに、入力電圧信号のサンプルが一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあることを示す第4制御信号に基づく。
【0027】
比較器は、差動電圧値が第3の負の所定の閾値電圧よりも大きいことを検出した場合、および差動電圧値が第4の正の所定の閾値電圧よりも小さいことを検出した場合、のうち少なくとも一方の場合に、入力電圧信号のサンプルが、一定のベースライン基準電圧の許容可能な範囲内にあると判定するように構成されてもよい。このため、比較器は、ウィンドウ比較器であってもよい。
【0028】
コントローラは、さらに、比較器が、入力電圧信号のサンプルが一定のベースライン基準電圧の許容範囲外であると判定した場合、第2制御信号をアナログ処理段に送信して、入力電圧信号のサンプルを破棄するようにアナログ処理段を制御するように構成されてもよい。
【0029】
この組み合わせによる監視は、以下の様々な効果を有する。
【0030】
比較器の速度は、入力電圧を受信してから、そのデジタル出力で判定に達するまでに要する時間に反映される。比較器の速度は、内部ゲインステージのチェーンが必要とするセトリング時間に影響される。セトリング時間は、より多くの電源電流を使うか、部品サイズを小さくするか、ゲインまたはゲインステージの数を減らすことで短縮(高速化)できる。後者の2つの要因は、精度を低下させる。逆に、比較器が低速であればあるほど、より少ない電源電流による動作、および/またはより精度を高める大きな部品の使用、および/またはより精度を高める大きな利得の使用が可能となる。本開示の実施形態では、比較器は、入力電圧信号の定数(サンプリング)バージョンで動作し、1度の判定だけで済むため、比較器は低速でよい。比較器の判定時間の間、サンプル制御回路は、後に使用するため、サンプリングされた入力電圧信号を記憶する。
【0031】
比較器の精度は、主にランダムオフセット(サンプル間スプレッド)によって定義される。実際の比較器は、入力電圧が正確に0mV(または、ゼロ以外の所望のトリップポイント)でトリップするのではなく、平均トリップポイントを中心としたサンプル間のばらつきを示す。この精度は、通常、標準偏差値として設定され、例えば1.0mV等に設定され得る。本開示の実施形態では、スタンドアロンのウィンドウ比較器(変化検出器なし)を利用する公知技術と比較して、比較器は、精度を低くすることができる。これは、後続パルスのわずかな開始または先行パルスの残存減衰を識別する必要がないため、閾値ウィンドウをより広くすることができるためである。サンプリング時点(サンプリングが行われる時点)周辺のパルスの存在は、代わりに変化検出器によって認識される。すなわち、所与のBLR決定性能のために、変化検出器を備える本開示の実施形態は、スタンドアロンのウィンドウ比較器(変化検出器を伴わない)を利用する公知技術と比較して、精度の低い比較器(例えば、ウィンドウ比較器)を必要とする。
【0032】
また、ウィンドウ比較器の範囲をより広くすることで、アナログ処理段のオフセット精度を緩和することも可能になる。ウィンドウ比較器の範囲が狭い既知のソリューションでは、通常、ウィンドウ比較器とアナログ処理段の両方で、専用のオフセットキャンセル技術が必要となる。これは、BLR回路が停止中に反対のオフセットによって動作することを回避するためであり、すなわち、アナログ処理段がその入力をそのオフセット電圧に調整しており、それが、その範囲を狭くする必要がある場合にウィンドウ比較器の範囲に収まらない可能性があり、結果として、BLRがベースラインサンプルを見つけることができなくなる。本開示の実施形態は、そのような専用のオフセットキャンセル技術を必要としなくてもよいという効果を有する。
【0033】
高いパルス密度では、パルスの開始および減衰は、(パルスピークが変化検出器をトリガするのに十分な大きさである限り)ベースライン調節に影響を及ぼし始めない、すなわち、絶対閾値の監視のみを伴う従来の解決策と比較して、ベースラインは、より高いパルスレートにおいて、より安定したものとなる。
【0034】
比較器が所望のベースライン精度レベルの正確性を必要とする絶対閾値の監視のみを行う既知の解決手段とは対照的に、変化検出器は、パルスのピーク電圧を検出するため、比較器よりも正確性が低くてもよい。
【0035】
いくつかの実装態様において、コントローラは、さらに、比較器によって出力された第4制御信号のみに起因して破棄される入力電圧信号のサンプルの数をカウントし、カウントされたサンプルの数が閾値を超える場合、コントローラが変化検出器の出力信号のみに応じて入力電圧信号の他のサンプルを処理する動作モードに入るように構成される。
【0036】
コントローラは、入力電圧信号の所定数のサンプルが一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあることを示す第4制御信号に応答して、動作モードを終了するように構成されてもよい。
【0037】
動作モードにより、大きいものの一定であるベースライン誤差(実際のベースライン電圧Vblと所望のベースライン基準電圧Vbl,refとの間の偏差)の通過と調整が可能となり、また、システムが予期せぬチャージイベントや始動時から復帰することが可能となる。比較器が再び低いベースライン誤差を報告した場合、動作モードは解除される。
【0038】
ベースライン復元回路は、高パルス密度操作をほとんど犠牲にすることなく、この動作モードで大きなベースライン誤差から回復することができる。この動作モードでは、依然としてパルスを備えるすべてのサンプルは破棄される。これにより、絶対閾値を広げる(または除去する)ことによって、パルスによって汚染されたサンプルがベースラインサンプルとして処理され、高パルス密度の場合において誤ったベースライン調整が生じる、従来の解決策とは対照的となる。
【0039】
いくつかの実装態様において、比較器によって受信した入力電圧信号のサンプルは、サンプル制御回路によって取り込まれた入力電圧信号のサンプルである。あるいは、比較器によって受信された入力電圧信号のサンプルは、他のサンプル制御回路によって取り込まれ、他のサンプル制御回路は、回路段から出力される入力電圧信号を受信するように配置される。
【0040】
サンプル制御回路は、一定のベースライン基準電圧を受信するように配置されて、一定のベースライン基準電圧のサンプルを取り込むように構成されてもよく、比較器は、一定のベースライン基準電圧のサンプルを受信するように配置されてもよい。
【0041】
他のサンプル制御回路は、一定のベースライン基準電圧を受信するように配置されて、一定のベースライン基準電圧のサンプルを取り込むように構成されてもよく、比較器は、一定のベースライン基準電圧のサンプルを受信するように配置されてもよい。
【0042】
サンプル制御回路は、一定のベースライン基準電圧を受信するように配置されて、一定のベースライン基準電圧のサンプルを取り込むように構成されてもよく、アナログ処理段は、一定のベースライン基準電圧のサンプルを受信するように配置されてもよい。
【0043】
サンプル制御回路は、通常、システムの誤差をもたらす。また、一定のベースライン基準電圧をサンプリングすることによって、より良好な整合が得られるという効果を奏する。この誤差が、一定のベースライン基準電圧と入力電圧信号の両方で発生する場合、後の減算演算で相殺されるため、差動システムの利点が生かされる。これは、より高い精度が要求されるシステムにおいて望ましいものとなり得る。
【0044】
ただし、いくつかの実施形態においては、ベースライン復元回路に比較器が設けられない。そのような態様では、ベースライン復元回路は簡略化され、回路面積が小さくなる。さらに、上述の動作モード(本明細書ではリカバリモードとも呼ばれる)が不要であり、コントローラの設計が簡略化される。
【0045】
本開示の別の態様に係る光子計数回路は、上記ベースライン復元回路と、光子感応領域を有し、光子感応領域への光子の入射に応じて電流信号を生成するように構成された光子検出器と、増幅器を備え、電流信号を受信して、電流信号に応じて入力電圧信号を供給するように配置された回路段と、フロントエンド電子回路に接続され、入力電圧信号の大きさと少なくとも1つの閾値との比較に基づいてデジタル信号を生成するように構成されたエネルギー弁別器、とを備える。
【0046】
本開示の別の態様に係る医療診断用装置は、上記光子計数回路を備え、X線装置またはコンピュータ断層撮影スキャナとして構成される。
【0047】
これらの態様および他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになるであろう。本開示の範囲は、この概要によって限定されることも、記載された欠点のいずれかまたはすべてを必ずしも解決する実装形態に限定されることも意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
ここで、本開示のいくつかの実施形態を、あくまでも一例として、添付の図面を参照して説明する:
【
図1】
図1は、ベースライン復元回路を備える光子計数回路を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示す光子計数回路のタイミング図の一例を示す。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係るベースライン復元回路を示す。
【
図4】
図4は、
図3に示すベースライン復元回路を備える光子計数回路を示す。
【
図5】
図5に、
図3に示すベースライン復元回路のタイミング図の一例を示す。
【
図6】
図6は、
図3に示すベースライン復元回路で使用する変化検出器の一態様例を示す。
【
図7】
図7は、
図3に示すベースライン復元回路で使用する変化検出器の別の態様例を示す。
【
図8】
図8は、光子計数回路のパルス弁別器からの情報を監視するベースライン復元回路を備える光子計数回路を示す。
【
図9】
図9は、医療診断用装置の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を参照して実施形態の詳細について説明する。
【0050】
まず、本開示の一実施形態に係るベースライン復元回路300を示す
図3を参照する。
【0051】
図3に示すように、ベースライン復元回路300は、サンプルホールド段302(本明細書ではサンプル制御回路と呼ぶ)、変化検出器段314、コントローラ324、アナログ処理段326、およびトランスコンダクタンス段328を備える。また、ベースライン復元回路300は、比較器312を備えてもよい。
【0052】
図3は、サンプルホールド段302の一態様例を示す。図示のように、サンプルホールド段302は、光子計数回路のフロントエンド回路段104から出力される入力電圧信号V
shaを受信するように配置される。
【0053】
サンプルホールド段302は、コントローラ324からの制御信号(sh)の受信に応じて、サンプリング時間に入力電圧信号V
shaのサンプルを取り込むように構成される。これは、
図3に示すように、制御信号(sh)に応じて制御可能なスイッチ308と、コンデンサ310とによって実施してもよい。詳細には、制御信号(sh)がロー(例えば論理0)のとき、スイッチ308は開に制御され、制御信号(sh)がハイ(例えば論理1)のとき、スイッチ308は閉に制御される。スイッチ308が閉から開に遷移すると、サンプルホールド段302は、入力電圧信号V
shaのサンプルを取り込む(例えば、フリーズ、記憶する)。サンプルホールド段302は、アナログ処理段326に、取り込まれた入力電圧信号V
shaのサンプルを供給するように配置される。
【0054】
サンプルホールド段302は、所望のベースライン基準電圧V
bl,refを受信するように配置されてもよい。サンプルホールド段302は、所望のベースライン基準電圧V
bl,refのサンプルを取り込むように構成される。これは、
図3に示すように、制御信号(sh)に応じて制御可能なスイッチ304と、コンデンサ306とによって実施してもよい。詳細には、制御信号(sh)がロー(例えば論理0)のとき、スイッチ304は開に制御され、制御信号(sh)がハイ(例えば論理1)のとき、スイッチ308は閉に制御される。スイッチ304が閉から開に遷移すると、サンプルホールド段302は、所望のベースライン基準電圧V
bl,refのサンプルを取り込む(例えば、フリーズ、記憶する)。したがって、サンプルホールド段302は、取り込まれた所望のベースライン基準電圧V
bl,refのサンプルをアナログ処理段326に供給するように配置されてもよい。
【0055】
サンプルホールド段302は、所望のベースライン基準電圧Vbl,refのサンプルを、入力電圧信号Vshaのサンプリング時間と同じタイミングで取り込むように構成されてもよい。所望のベースライン基準電圧Vbl,refのサンプリングは、必ずしも入力電圧信号Vshaのサンプリング時間と同じタイミングである必要はない。例えば、Vbl,refが一定であり、VshaとVbl,refの差が対象であることは、最初にVbl,refを取り込み、次に2番目のステップでVshaのサンプリングと減算を一度に行うスイッチドコンデンササンプリングネットワークに利用され得る。
【0056】
あるいは、サンプルホールド段302が、所望のベースライン基準電圧Vbl,refをサンプリングせず、代わりに、アナログ処理段326が連続的な非サンプリング入力として所望のベースライン基準電圧Vbl,refを受信するようにしてもよい。
【0057】
変化検出器段314は、入力電圧信号Vshaを連続的な非サンプリング入力として受信するように配置される。
【0058】
変化検出器段314は、コントローラ324からの制御信号(chen)の受信に応じて、入力電圧信号V
shaの瞬時値を取り込むように構成される。これは、
図3に示すように、制御信号(chen)に応じて制御可能なスイッチ316、およびコンデンサ318によって実施してもよい。詳細には、制御信号(chen)がロー(例えば論理0)とき、スイッチ316は閉じられるように制御され、制御信号(chen)がハイ(例えば論理1)とき、スイッチ316は開に制御される。スイッチ316が閉から開に遷移すると、変化検出器段314は、入力電圧信号V
shaのサンプルを取り込む(例えば、フリーズ、記憶する)。
【0059】
変化検出器段314は、入力電圧信号Vshaが、サンプルホールド段302によって実行される入力電圧信号Vshaのサンプリング時間周辺の期間中に変化するかどうかを監視するように構成される。変化検出器段314は、出力信号(chg)を制御装置324に供給するように構成され、出力信号(chg)は、入力電圧信号Vshaが、サンプルホールド段302によって実行される入力電圧信号Vshaのサンプリング時間周辺の期間中に変化したかどうかを示す。
【0060】
変化検出器段314は、連続的な非サンプリング入力として入力電圧信号Vshaと、変化検出器段314によって取り込まれた入力電圧信号Vshaの瞬時値とを受信する比較器320を備える。変化検出器段314は、入力電圧信号Vshaと、変化検出器段314によって取り込まれた入力電圧信号Vshaの瞬時値の差分を求めることによって、電圧差値(x)を求めるように構成される。
【0061】
図3に示す比較器320は、電圧差値(x)がV1≦X≦V2で定義される電圧範囲内であるか否かを判定するように構成されるウィンドウ比較器である。
【0062】
電圧差分値(x)が常にウィンドウ比較器320によって定義された電圧範囲内、例えば、電圧差分値(x)が第1の負の所定閾値電圧V1よりも大きく(例えば-20mV)、第2の正の所定閾値電圧(例えば+20mV)よりも小さい場合、変化検出器段314は、サンプルホールド段302によって実行される入力電圧信号Vshaのサンプリング時間周辺の期間中、入力電圧信号Vshaが変化していないと判定する。この場合、比較器320は、記憶素子322に変化のフラグを立てることはない。このため、ロー(例えば、論理0)値を有する出力信号(chg)をコントローラ324に供給することによって、コントローラ324に「変更なし」が通知される。記憶素子322は、例えば、フリップフロップまたはRSラッチであってもよい。
【0063】
電圧差値(x)が、ウィンドウ比較器320によって規定された電圧範囲から少なくとも1回離れる場合、例えば、電圧差値(x)が、第1の負の所定閾値電圧V1(例えば-20mV)より小さいか、または第2の正の所定閾値電圧(例えば+20mV)より大きい場合、変化検出器段314は、サンプルホールド段302によって実行される入力電圧信号Vshaのサンプリング時間周辺の期間中に、入力電圧信号Vshaが変化したと判定する。この場合、比較器320は、記憶素子322に1回以上の変化のフラグを立てる。これにより、ハイ(例えば、論理1)値を有する出力信号(chg)をコントローラ324に供給することによって、トリップし、コントローラ324に「変化」を通知する。
【0064】
図3に示す比較器320はウィンドウ比較器であるが、他の実施態様では、変化検出器段314は、一方向にのみ感度のある比較器320を備える。
【0065】
コントローラ324は、アナログ処理段326に制御信号(exe)を送信して、アナログ処理段326を制御して、入力電圧信号Vshaのサンプルを破棄または処理するように構成される。
【0066】
アナログ処理段326は、コントローラ324から入力される制御信号(例えば、ロジック1)がハイである場合、入力電圧信号Vshaのサンプルを処理する。アナログ処理段326は、コントローラ324から入力される制御信号(exe)がロー(例えば、ロジック0)の場合、入力電圧信号Vshaのサンプルを破棄する(処理しない)。
【0067】
ベースライン復元回路300が比較器312を含まない実施形態では、制御信号(exe)の値は、変化検出器段314から受信された出力信号(chg)のみに依存する。
【0068】
すなわち、コントローラ324は、コントローラ324がサンプルホールド段302によって実行される入力電圧信号Vshaのサンプリング時間周辺の期間中に入力電圧信号Vshaが変化していないことを示すローの出力信号(chg)(例えば、論理0)を受信すると、ハイ(例えば、論理1)値を有する制御信号(exe)を供給して、入力電圧信号Vshaのサンプルの処理を許可するように構成される。同様に、コントローラ324は、コントローラ324がサンプルホールド段302によって実行される入力電圧信号Vshaのサンプリング時間周辺の期間中に入力電圧信号Vshaが変化したことを示すハイの出力信号(chg)(例えば、論理1)を受信すると、ロー(例えば、論理0)値を有する制御信号(exe)を供給して、入力電圧信号Vshaのサンプルを破棄するように構成される。
【0069】
アナログ処理段326は、サンプルホールド段302から入力電圧信号Vshaのサンプルを受信するように配置される。さらに、アナログ処理段326は、サンプルホールド段302から所望のベースライン基準電圧Vbl,refのサンプルを受信するように配置される。または、アナログ処理段326は、連続的な非サンプリング入力として所望のベースライン基準電圧Vbl,refを受信してもよい。また、アナログ処理段326は、コントローラ324から制御信号(exe)を受信する。アナログ処理段326は、入力電圧信号Vshaのサンプルを選択的に処理して、出力電圧を供給する。
【0070】
アナログ処理段326は積分器(例えば、スイッチトコンデンサ積分器)であってもよい。動作中、アナログ処理段326は、所望のベースライン基準電圧V
bl,refとアンプ出力V
shaとの差分(すなわち、サンプリングされたベースライン誤差)を計算し、それを所定の係数で重み付けし、既に合算しておいたものに加算する(exe=1で、制御装置により許可された場合)。例えば、V
bl,ref=500mVかつV
sha=505mV(誤差が+5mV)であり、アナログ処理段326にすでに記憶されている電圧が+123mVであり、0.2の重み付け(ゲイン)がある場合、アナログ処理段326の出力電圧は、この期間、+123mVから+124mV(=+123mV+0.2*(505mV-500mV))に変化する。このようにして、結果として得られる補償電流I
blrは、より良い補償へと少し変化し、ベースライン誤差を低減しようとする。調整ループ内の符号には関連性がある。すなわち、正の誤差は、より誤差の少ない方向(より低いV
sha)への変化を必ず引き起こすが、これは、
図1に示すように、負の位相を有する増幅器(104)によるものか、または反転されたベースライン復元回路(図に示されていない)によるものかのいずれかであり得る。
【0071】
トランスコンダクタンス段328は、アナログ処理段326から出力電圧を受信し、出力電圧を補正電流Iblrに変換するように配置される。したがって、トランスコンダクタンス段328は、電圧電流変換器とみなすことができる。トランスコンダクタンス段328は、補償電流を光子計数回路のフロントエンド回路段104の入力へ、例えば増幅器106の入力へ供給するように配置される。
【0072】
コントローラ324の機能は、複数の処理ユニットを備えたプロセッサ上で実行するように配置され、1つ以上の記憶媒体を備えるメモリ上に記憶されたコード(ソフトウェア)で実施されてもよい。コードは、メモリから取得されてプロセッサ上で実行され、以下に説明する実施形態に従って動作を行うように構成される。また、コントローラ324の機能の一部または全部が、専用のハードウェア回路、またはFPGAのような設定可能なハードウェア回路で実施されることは、排除されない。
【0073】
上述のように、ベースライン復元回路300は、比較器312を備えてもよい。比較器312は、サンプルホールド段302から入力電圧信号Vshaのサンプルを受信するように配置される。さらに、比較器312はサンプルホールド段302から所望のベースライン基準電圧Vbl,refのサンプルを受信するように配置されてもよく、または連続的な非サンプリング入力として所望のベースライン基準電圧Vbl,refを受信してもよい。比較器312は、出力信号(inw)を制御器324に供給するように構成され、出力信号(inw)は、入力電圧信号Vshaのサンプルが所望のベースライン基準電圧Vbl,refの許容範囲内にあるか否かを示す。
【0074】
比較器312は、入力電圧信号Vshaのサンプルと所望のベースライン基準電圧Vbl,refとの差分を求めることによって、差分電圧値(x)を求めるように構成される。
【0075】
図3に示す比較器312は、差動電圧値(x)がV3≦X≦V4で定義される電圧範囲内にあるか否かを判定するように構成された、ウィンドウ比較器である。
【0076】
差動電圧値(x)が、ウィンドウ比較器312によって定義された電圧範囲内にある場合、例えば、差動電圧値(x)が、第3の負の所定閾値電圧V3(例えば-5mV)よりも大きく、第2の正の所定閾値電圧(例えば+5mV)よりも小さい場合、ウィンドウ比較器312は、入力電圧信号Vshaが、所望のベースライン基準電圧Vbl,refの許容可能な範囲内にあると判定する。この場合、比較器312は、ハイ(例えば論理1)値を有する出力信号(inw)をコントローラ324に出力する。
【0077】
差動電圧値(x)が、ウィンドウ比較器312によって定義される電圧範囲外である場合、例えば、差動電圧値(x)が、第3の負の所定の閾値電圧V3(例えば、-5mV)未満であるか、または第2の正の所定の閾値電圧(例えば、+5mV)よりも大きい場合、ウィンドウ比較器312は、入力電圧信号Vshaが、所望のベースライン基準電圧Vbl,refの許容範囲外であると判定する。この場合、比較器312は、ロー(例えば論理0)値を有する出力信号(inw)をコントローラ324に出力する。
【0078】
図3に示す比較器312はウィンドウ比較器であるが、他の実施態様では、比較器312は一方向のみに感度を有する。
【0079】
ベースライン復元回路300が比較器312を備える実施形態では、制御信号(exe)の値は、変化検出器段314から受信した出力信号(chg)と比較器312から受信した出力信号(inw)の両方に依存する。
【0080】
これらの実施形態では、コントローラ324は、(i)変化検出器段314から、サンプルホールド段302により実行された入力電圧信号Vshaのサンプリング時間周辺の期間中に、入力電圧信号Vshaが変化していないことを示すローの出力信号(chg)(例えば、ロジック0)、かつ(ii)比較器312から、ハイの出力信号(inw)(例えば、ロジック1)、をコントローラ324が受信したときのみ、入力電圧信号Vshaのサンプルの処理を可能にする、ハイ(例えば、ロジック1)値の制御信号(exe)を供給するように構成されている。
【0081】
比較器320と比較器312の両方がウィンドウ比較器である実施形態では、好ましくは比較器320のV1&V2が選択され、比較器312に対応するV3&V4の値よりも広い(より大きい)範囲が供給される。これは、処理する1つの定数入力を受け取るだけのサンプルウィンドウ比較器との正確な比較が容易である一方、変化検出器段314は、よりコストのかかる動作である入力電圧信号Vshaの高速変化に迅速に反応しなければならないためである。したがって、所与のベースライン抽出性能全体に対して、変化検出器段314の精度を低くし、サンプルウィンドウ比較器312の精度を高くすることが一般的に望ましい。
【0082】
図3は、単一のサンプルホールド段302を示すが、他の実施態様では、ベースライン復元回路300は、並列に動作する2つのサンプルホールド段を備える。すなわち、第1サンプルホールド段302は、アナログ処理段326に供給し、他のサンプルホールド段302は、比較器に供給する。2つのサンプルホールド段は、コントローラ324から制御信号(sh)を受信し、これにより同じ入力電圧信号V
shaのサンプルで動作する。2つのサンプルホールド段は、単に高インピーダンス入力を介してそれらの電圧を感知するのではなく、サンプリングコンデンサに蓄積された電荷を直接使用するスイッチドコンデンサネットワークに組み込める。このような構成では、電荷は消費され、1つの回路(アナログ処理段326または比較器312のいずれか)によってのみ使用することができる。すなわち、電荷を使用することにより、通常はコンデンサがリセットされ、第2回路には何も残らない。
【0083】
本明細書で説明する実施形態では、コントローラ324は、入力電圧信号Vshaの規定数のサンプルを、比較器312、すなわちinw=0(変化検出器はそれらを解放)によってのみ破棄しなければならなかった場合に起動される、「リカバリモード」に入るように、動作可能であってもよい。リカバリモードにおいて、コントローラ324は、他のサンプルの処理が変化検出器段314から受信された出力信号(chg)のみに依存するように、比較器312の出力信号(inw)を無視するように構成される。これにより、大きいものの一定であるVsha誤差は通過し、規制されるため、予期せぬチャージイベントや始動時からシステムを復帰させることができる。リカバリモードにおいて、コントローラ324は、比較器312からデジタル信号inwを受信し続けるが、それらをリカバリモード中にサンプルを破棄すべきかどうかの判定に使用しない。コントローラ324は、比較器312により低ベースライン誤差が再び報告されると、リカバリモードを終了するように構成される。すなわち、リカバリモードによる動作中、コントローラ324は、比較器312の出力信号(inw)を使用して、例えば、比較器312からのハイ(例えば論理1)値を有する出力信号(inw)で示される、対象誤差範囲に入る所定数の連続したサンプルを待つことによって、サンプルが対象誤差範囲内に戻ったかどうかを確認する。
【0084】
図4は、光子計数回路100におけるベースライン復元回路300の使用を示す。
【0085】
図4を参照すると、光子計数回路100は、光子感応領域を有する光子検出器102を備える。光子検出器102は、光子感応領域への光子の入射に応じて電流信号I
detを生成するように構成される。光子計数回路100は、光子検出器102から電流信号I
detを受信し、電流信号に応じた電圧信号V
sha(ベースライン信号V
bl+ΔV)を供給するフロントエンド回路段104を備える。フロントエンド回路段104は電荷感応増幅器(CSA)106を備える。CSA106の反転入力は、電流信号I
detを受信する。帰還コンデンサ110は、CSA106の反転入力とCSA106の出力との間に接続されてもよい。帰還抵抗108は、CSA106の反転入力とCSA106の出力との間に接続されてもよい。フロントエンド回路段104はその入力で電荷を検知し、その出力で電圧を成形してベル型パルスを生成する。フロントエンド回路段104は、I
det電流を受信し、アンプ106に供給するために、反転電流バッファ段(図示せず)を備えてもよい。
【0086】
光子計数回路100は、フロントエンド回路段104に接続されたエネルギー弁別器112を備える。詳細には、フロントエンド回路段104は、エネルギー弁別器112に電圧信号Vshaを供給する。
【0087】
エネルギー弁別器112は、電圧信号Vshaの大きさと少なくとも1つの閾値Vth1、...、Vthnとの比較に基づいて、デジタル信号を生成するように構成される。詳細には、エネルギー弁別器112は、異なる閾値Vth1、...、VthN-1、VthNを有する数個の比較器114,118を備えてもよい。次に、比較器114,118の出力信号は、カウンタ116,120によって個別にカウントされる。ただし、エネルギー弁別器112は任意の数の比較器(それぞれ対応するカウンタを有する)を備えてもよい。
【0088】
図4に示すように、ベースライン復元回路300は、フロントエンド回路段104から出力される電圧信号V
shaを受ける。ベースライン復元回路300は、CSA106から直接、電圧信号V
shaを受信してもよい。ベースライン復元回路300は、CSA106から間接的に電圧信号V
shaを受信してもよい。すなわち、電圧信号V
shaは、CSA106によって出力された後、フロントエンド回路段104(
図4には図示せず)の1つ以上の他の構成要素、例えば、整形増幅器段を通過し、その後、ベースライン復元回路300に供給されてもよい。
【0089】
図4に示すように、トランスコンダクタンス段328は、フロントエンド回路段104の入力に補正電流I
blrを供給するように配置されている。
図4に示すように、トランスコンダクタンス段328の出力は、CSA106の反転入力に接続される。
【0090】
光子計数回路100は、様々な光子計数用途、特に低ノイズ強度測定や場合によってはスペクトル情報も必要とする用途に使用することができる。これには、医療用の画像、分光法、セキュリティスキャナ、コンピュータ断層撮影などが含まれる。
【0091】
図5は、
図3に示すベースライン復元回路300の動作を説明するために、3つの例示的なタイミング図を示す。
図5において、時間t
1は、変化検出器段314が、コントローラ324からの制御信号(chen)の受信に応じて、電圧信号V
shaの瞬時値を取り込み(フリーズ、記憶し)、連続(非サンプリング)入力電圧信号V
shaとこの基準を比較し始める時点に対応する。時刻t
2は、コントローラ324からの制御信号(sh)を受けて、サンプルホールド段302が入力電圧信号V
shaのサンプル(サンプリング時点)を取り込み、ウィンドウ比較器312がその処理を開始する時点に対応する。時間t
3は、変化検出器段314の検出周期の終了時点に対応する。時間t
4において、ウィンドウ比較器312の結果は準備完了となる。時間t
5は、コントローラ324が、電圧信号Vshaのサンプルを使用できる場合に、アナログ処理段326にフラグを立てる準備ができた時点に対応する。時間t
6は、サンプリング試行の終了時点に対応し、コントローラ324では、次回のサンプリング試行の準備が整う。サンプリング試行は、時間t
1と時間t
6との間の時間に対応し、変化検出器段314と比較器312がそのサンプルに対して行うすべての関連するチェックと共に、電圧信号V
shaのサンプルの取り込みを含む。
【0092】
したがって、時間t1と時間t2との間の間隔は、サンプルホールド段302が入力電圧信号Vshaのサンプルを取り込む前の、変化検出器段314の監視期間に対応する。時間t2と時間t3との間の間隔は、サンプルホールド段302が入力電圧信号Vshaのサンプルを取り込んだ後の変化検出器段314の監視期間に対応する。時間t2と時間t4との間の間隔は、ウィンドウ比較器312の判定時間に対応する。時間t4と時間t5との間の間隔は、コントローラ324が最終判定を計算するのに要する時間に対応する。時間t5と時間t6との間の間隔は、アナログ処理段326がサンプルホールド段302から現在の入力電圧信号Vshaのサンプルを使用する(通常は積分する)のに要する時間に対応する。
【0093】
図5は、サンプルホールド段302が、入力電圧信号V
sha500をサンプリングする第1例を示す。第1例では、サンプルホールド段302は、入力電圧信号V
sha500でパルスをサンプリングする。ウィンドウ比較器312および変化検出器段314の両方が、パルスを認識し(inwがローに留まり、chgがハイになる)、その結果、コントローラ324はサンプルを破棄する(exeがローに留まる)。
【0094】
図5は、サンプルホールド段302が、入力電圧信号V
sha502をサンプリングする第2例を示す。第2例では、サンプルホールド段302のサンプリング時点周辺にパルスが存在しない。ウィンドウ比較器312は、時間t
4の判定時間の後にinw=1とすることによってこれにフラグを立て、変化検出器段314は、出力信号(chg)をローに保つ。その結果、コントローラ324は、制御信号(exe)をハイにして、サンプルの処理を許可する。
【0095】
図5は、サンプルホールド段302が、入力電圧信号V
sha504(右側波形)をサンプリングする第3例を示す。第3例では、サンプルホールド段302のサンプリング時点の直後にパルスが発生し、サンプルホールド段302にパルスの開始をサンプリングさせる。ウィンドウ比較器312は、この小さな誤差を認識しない(inwがハイになる)が、変化検出器段314は、パルスを正常に認識し、コントローラ324にサンプルを破棄させる(exeがローに留まる)。
【0096】
図6は、
図3に示すものとは異なるスイッチ/コンデンサ構成を有する変化検出器段314の変形例を示す。詳細には、
図6に示す変化検出器段314は、入力電圧信号V
shaを連続的に受信するように、スイッチ316の入力に配置されたコンデンサ318を有する。
図6に示す変化検出器段314は、
図3に示す変化検出器段314と同じ動作に従う。詳細には、コントローラ324からの制御信号chen(変化検出器イネーブル)がハイになるとすぐに、変化検出器の内側の粗ウィンドウ比較器320は、chen立ち上がりエッジのタイミングにおける電圧との比較における入力電圧信号V
shaの変化を監視する。監視期間(chen=1期間)中のいずれかの方向における上記のような変化は、記憶素子322に記憶される。コンデンサが行うACカップリングは、変化検出器段314の他の回路が、入力電圧信号V
shaとは別のDCレベルで動作することを可能にするという効果を奏する。
図7は、入力コンデンサ318を使用して、トランジスタ704と電流源702とから成るゲイン段のオートゼロ(AZ)動作も実行し、粗ウィンドウ比較器320の前でオフセットを低減する変化検出器段314の変形例を示す。ゲイン段は、増幅された信号を粗ウィンドウ比較器320に供給することにより、粗ウィンドウ比較器320の精度要件を低減する。ウィンドウ比較器320は、スイッチ316が開いたタイミングのその入力電圧(chen立ち上がりエッジ)と監視期間中のその入力電圧(chenhigh)との間の電圧差xを導出し、この電圧差を閾値V1およびV2と比較するように構成される。また、
図7は、記憶素子322(例えば、Dフリップフロップ)が、監視期間中に検出された変化を記憶するためにどのように使用され得るかを示す。監視期間の開始時(chen立ち上がりエッジ)、Dフリップフロップ322は、そのクロック入力およびD入力を使用してロー状態に初期化される。その後、そのセット入力におけるハイ信号は、状態をハイに変更し、そのままにする。これにより、たとえウィンドウ比較器の閾値の短期の超過であっても、Dフリップフロップ322に取り込まれ記憶される。
【0097】
図6および
図7の変化検出器内の比較器320は、ウィンドウ比較器であってもよいが、他の実装形態において、これらの変化検出器段は、一方向にのみ感度を有する比較器320を備えてもよい。
【0098】
上述した変化検出器段314は、入力電圧信号V
sha専用の監視を行う。これに加えて、またはこれに代えて、
図8に示す変化検出器段802を使用して、入力電圧信号V
shaの変化を確認してもよい。すなわち、本開示の実施形態では、変化検出器は、変化検出器段314および変化検出器段802の一方または両方を備える。
【0099】
【0100】
図8に示すように、変化検出器段802は、光子計数回路100のエネルギー弁別器112の比較器114,118の各々から出力されるデジタル信号を受信するように配置され、各デジタル信号は、入力電圧信号V
shaの大きさと閾値との比較に基づいてエネルギー弁別器112によって生成される。変化検出器段802は、比較器114,118から受信されたデジタル信号に基づいて、サンプルホールド段302によって実行される入力電圧信号V
shaのサンプリング時間周辺の期間中に、入力電圧信号V
shaが変化するかどうかを監視するように構成される。
【0101】
変化検出器段802の監視期間(
図5のt
1とt
3の間の期間に対応)中に、パルス識別子比較器のいずれかの状態が変化した場合、変化検出器段802は、これを「V
shaの変化が検出された」状態とみなし、ハイ(例えば、論理1)値を有する出力信号(chg)をコントローラ324に供給する。
【0102】
上述の実施形態において、真のベースラインサンプルを見つける可能性を高める目的で、ベースライン復元回路300を、入力電圧信号Vshaをサンプリングする周波数を増加させるように、検出器画素ごとに複数回複製することができる。すなわち、同じベースライン復元回路を複製し、時相をずらして駆動することで、入力電圧信号Vshaの時差センシング(例えば、サンプリング試行期間の半分ずつずらす)を行うことができる。
【0103】
上述の実施形態において、サンプル反復は、定義されたBLRループ調整速度を得るためにクロック信号によって制御されてもよい。すなわち、コントローラ324は、1クロックサイクルで所定のサンプリング試行回数(例えば10回)を実行するようにベースライン復元回路300を制御するように構成されてもよい。これらの実施態様では、コントローラ324は、アナログ処理段326に制御信号(exe)を送信して、アナログ処理段326を制御して、クロックサイクル内の入力電圧信号Vshaの最初の有効サンプルを処理する一方で、同じクロックサイクル内の後の有効サンプルをその後意図的に無視するように構成されてもよい。このように、アナログ処理段326は、クロックサイクル内の入力電圧信号Vshaのすべての有効なサンプルを処理しない。
【0104】
上述の実施形態において、より頻繁にサンプリングすることによって真のベースラインサンプルを見つける機会を増加させることを目的として、サンプリングを早期に再トリガしてもよい。詳細には、コントローラ324は、変化検出器がハイ(例えば、論理1)値を有する出力信号(chg)で示される変化を見つけるとすぐに、完全なサンプリング試行が終了するのを待つのではなく、代わりに、直ちに新しいサンプリング試行を開始するように構成されてもよい。すなわち、違反が検出された場合、コントローラ324は、時間t6まで待って実行する代わりに、(変化検出器をリセットするためにchen=0となる期間を介して)次のt1まで早送するようにしてもよい。
【0105】
図9は、本明細書に記載される実施形態に係るベースライン復元回路300を備える光子計数回路100が、医療診断用装置900に設けられる適用例を示す。装置900は、例えば、X線装置またはコンピュータ断層撮影スキャナとして構成されてもよい。
【0106】
以上、本開示を、上述の好ましい実施形態に関して説明したが、これらの実施形態はあくまでも一例であり、特許請求の範囲はこれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。当業者は、添付の特許請求の範囲内にあると考えられる開示を考慮して、修正および代替を行うことができるであろう。本明細書に開示または例示される各特徴は、単独で、または本明細書に開示または例示される任意の他の特徴との任意の適切な組み合わせで、任意の実施形態に組み込まれ得る。
【符号の説明】
【0107】
100 光子計数回路
102 光子検出器
104 フロントエンド回路段
106 電荷感応増幅器
108 帰還抵抗
110 帰還コンデンサ
112 エネルギー弁別器
114 比較器
116 カウンタ
118 比較器
120 カウンタ
122 ベースライン復元回路
200 検出器電流Idetの曲線
250 フロントエンド回路段の出力電圧Vshaの曲線
300 ベースライン復元回路
302 サンプルホールド段
304 スイッチ
306 コンデンサ
308 スイッチ
310 コンデンサ
312 比較器
314 変化検出器段
316 スイッチ
318 コンデンサ
320 比較器
322 記憶素子
324 コントローラ
326 アナログ処理段
328 トランスコンダクタンス段
500 電圧信号Vsha
502 電圧信号Vsha
504 電圧信号Vsha
702 DC電流源
704 スイッチ
706 インバータ
802 変化検出器段
900 装置
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラ(324)と、
増幅器(106)を備える回路段(104)から出力される入力電圧信号を受信するように配置され、前記コントローラからの第1制御信号の受信に応じて、サンプリング時間に前記入力電圧信号のサンプルを取り込むように構成される、サンプル制御回路(302)と、
前記入力電圧信号のサンプルと一定のベースライン基準電圧とを受信し、前記入力電圧信号のサンプルを選択的に処理して出力電圧を供給するように配置されたアナログ処理段(326)と、
前記出力電圧を補償電流に変換し、前記補償電流を前記回路段の入力に供給するように構成されたトランスコンダクタンス段(328)と、
前記入力電圧信号が前記サンプリング時間周辺の期間中に変化したかどうかを監視するように構成された変化検出器(314、802)と、を備え、
前記期間中に前記入力電圧信号の変化が検出されない場合、前記コントローラはさらに第2制御信号を前記アナログ処理段に送信して、前記入力電圧信号のサンプルを処理するように前記アナログ処理段を制御する、
ベースライン復元回路(300)。
【請求項2】
前記変化検出器は、前記入力電圧信号を連続的に受信するように配置された変化検出器段(314)を備える、
請求項1に記載のベースライン復元回路。
【請求項3】
前記期間の開始および終了は、前記コントローラが前記変更検出器に第3制御信号を送信することによって制御される、
請求項2に記載のベースライン復元回路。
【請求項4】
前記変化検出器は、前記期間の開始時に、前記入力電圧信号の瞬時値を取り込み、前記入力電圧信号と前記入力電圧信号の前記瞬時値との比較を行うことによって、前記期間中に前記入力電圧信号が変化したかどうかを監視するように構成される、
請求項3に記載のベースライン復元回路。
【請求項5】
前記変化検出器は、
前記比較に基づいて電圧差値を求め、
前記電圧差分値が第一の負の所定の閾値電圧未満であることを検出した場合、および
前記電圧差分値が第二の正の所定の閾値電圧よりも大きいことを検出した場合、のうち少なくとも一方の場合に、
前記期間中に前記入力電圧信号が変化したと判定する、ように構成される、
請求項4に記載のベースライン復元回路。
【請求項6】
前記変化検出器は、エネルギー弁別器(112)から出力されるデジタル信号を受信するように配置された変化検出器段(802)を備え、
前記デジタル信号は、前記入力電圧信号の大きさと少なくとも1つの閾値との比較に基づいて前記エネルギー弁別器によって生成され、
前記変化検出器段(802)は、前記デジタル信号に基づいて、前記入力電圧信号が前記サンプリング時間周辺の期間中に変化したかどうかを監視するように構成される、
請求項
1に記載のベースライン復元回路。
【請求項7】
前記変化検出器段(802)は、前記デジタル信号の状態の変化を検出することによって、前記期間中に前記入力電圧信号が変化したことを判定するように構成される、
請求項6に記載のベースライン復元回路。
【請求項8】
前記変化検出器は、前記コントローラに出力信号を供給するように配置され、
前記出力信号は、前記入力電圧信号が前記期間中に変化したかどうかを示す、
請求項
1に記載のベースライン復元回路。
【請求項9】
前記コントローラは、前記変化検出器が前記期間中に前記入力電圧信号の変化を検出した場合、さらに前記第2制御信号を前記アナログ処理段に送信して、前記入力電圧信号のサンプルを破棄するように前記アナログ処理段を制御するように構成される、
請求項
1に記載のベースライン復元回路。
【請求項10】
前記入力電圧信号のサンプルと前記一定ベースライン基準電圧とを受信するように配置された比較器(312)をさらに備え、前記比較器は、
前記入力電圧信号のサンプルを前記一定のベースライン基準電圧と比較して、差動電圧値を求め、
前記差動電圧値を使用して、前記入力電圧信号のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあるかどうか判定し、
前記入力電圧信号のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあるかどうかを示す第4制御信号を前記プロセッサに出力する、ように構成され、
前記第2制御信号を前記アナログ処理段に送信して、前記入力電圧信号のサンプルを処理するように前記アナログ処理段を制御することは、さらに、前記入力電圧信号のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の許容範囲内にあることを示す前記第4制御信号に基づく、
請求項
1に記載のベースライン復元回路。
【請求項11】
前記比較器は、
前記差動電圧値が第3の負の所定の閾値電圧よりも大きいことを検出した場合、および
前記差動電圧値が第4の正の所定の閾値電圧よりも小さいことを検出した場合、のうち少なくとも一方の場合に、
前記入力電圧信号のサンプルが、前記一定のベースライン基準電圧の許容可能な範囲内にあると判定するように構成される、
請求項10に記載のベースライン復元回路。
【請求項12】
前記コントローラは、さらに、前記比較器が、前記入力電圧信号のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の前記許容範囲外であると判定した場合、前記第2制御信号を前記アナログ処理段に送信して、前記入力電圧信号のサンプルを破棄するように前記アナログ処理段を制御するように構成される、
請求項1
0に記載のベースライン復元回路。
【請求項13】
前記コントローラは、さらに、
前記比較器によって出力された前記第4制御信号のみに起因して破棄される前記入力電圧信号のサンプルの数をカウントし、
カウントされたサンプルの数が閾値を超える場合、前記コントローラが前記変化検出器の出力信号のみに応じて前記入力電圧信号の他のサンプルを処理する動作モードに入るように構成される、
請求項12に記載のベースライン復元回路。
【請求項14】
前記コントローラは、前記入力電圧信号の所定数のサンプルが前記一定のベースライン基準電圧の前記許容範囲内にあることを示す前記第4制御信号に応答して、前記動作モードを終了するように構成される、
請求項13に記載のベースライン復元回路。
【請求項15】
前記比較器によって受信した前記入力電圧信号のサンプルは、前記サンプル制御回路によって取り込まれた前記入力電圧信号のサンプルである、
請求項1
0に記載のベースライン復元回路。
【請求項16】
前記比較器によって受信された前記入力電圧信号のサンプルは、他のサンプル制御回路によって取り込まれ、前記他のサンプル制御回路は、前記回路段から出力される前記入力電圧信号を受信するように配置される、
請求項1
0に記載のベースライン復元回路。
【請求項17】
前記サンプル制御回路(302)は、前記一定のベースライン基準電圧を受信するように配置されて、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを取り込むように構成され、
前記比較器は、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを受信するように配置される、
請求項1
0に記載のベースライン復元回路。
【請求項18】
前記他のサンプル制御回路は、前記一定のベースライン基準電圧を受信するように配置されて、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを取り込むように構成され、
前記比較器は、前記一定のベースライン基準電圧のサンプルを受信するように配置される、
請求項16に記載のベースライン復元回路。
【請求項19】
請求項1~
18のいずれかに記載のベースライン復元回路(300)と、
光子感応領域を有し、前記光子感応領域への光子の入射に応じて電流信号を生成するように構成された光子検出器(102)と、
増幅器を備え、前記電流信号を受信して、前記電流信号に応じて前記入力電圧信号を供給するように配置された回路段(104)と、
前記フロントエンド電子回路(104)に接続され、前記入力電圧信号の大きさと少なくとも1つの閾値との比較に基づいてデジタル信号を生成するように構成されたエネルギー弁別器(112)、とを備える、
光子計数回路(100)。
【請求項20】
請求項
19に記載の光子計数回路(100)を備え、X線装置またはコンピュータ断層撮影スキャナとして構成される、
医療診断用装置(900)。
【国際調査報告】