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特表2024-513328打撃されて移動するゴルフボールのスピン算出方法及びこれを用いたスピン算出装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】打撃されて移動するゴルフボールのスピン算出方法及びこれを用いたスピン算出装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20240315BHJP
   A63B 69/36 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G01P3/36 C
A63B69/36 541W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556738
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 KR2022004180
(87)【国際公開番号】W WO2022211377
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0040978
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315019182
【氏名又は名称】ゴルフゾン カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】735, YEONGDONG-DAERO, GANGNAM-GU, SEOUL, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、スー ホ
(72)【発明者】
【氏名】シム、ミン キュン
(57)【要約】
本発明の一実施例による打撃されて移動するゴルフボールのスピン算出方法 は、複数のマーカーが表示されたゴルフボールが打撃されて移動することに対して連続したイメージである第1イメージと第2イメージをそれぞれ取得する段階と、前記第1イメージのゴルフボール部分に該当する第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーと前記基準マーカー周辺の複数の周辺マーカーに関する情報を算出する段階と、前記第2イメージのゴルフボール部分に該当する第2ボールイメージにおいて、前記第1ボールイメージの基準マーカー及び複数の周辺マーカーに対応するマーカーとの組み合わせを特定する段階と、前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を利用してスピン軸とスピン量を算出する段階を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマーカーが表示されたゴルフボールが打撃されて移動することに対して連続したイメージである第1イメージと第2イメージをそれぞれ取得する段階と、
前記第1イメージのゴルフボール部分に該当する第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーと前記基準マーカー周辺の複数の周辺マーカーに関する情報を算出する段階と、
前記第2イメージのゴルフボール部分に該当する第2ボールイメージにおいて、前記第1ボールイメージの基準マーカー及び複数の周辺マーカーに対応するマーカーとの組み合わせを特定する段階と、
前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を利用してスピン軸とスピン量を算出する段階と、
を含む、打撃されて移動するゴルフボールに対するスピン算出方法。
【請求項2】
前記対応するマーカーの組み合わせを特定する段階は、
前記第1ボールイメージ上の基準マーカーに対する前記複数の周辺マーカーそれぞれの相対的な関係に関する情報とマッチングされる相対的関係を有する第2ボールイメージ上のマーカーの組み合わせを特定する段階を含む、打撃されて移動するゴルフボールに対する請求項1に記載のスピン算出方法。
【請求項3】
前記対応するマーカーの組み合わせを特定する段階は、
前記第1ボールイメージ上の基準マーカーに対する前記複数の周辺マーカーそれぞれの傾きに対する相対角度情報である特徴情報を算出する段階と、
前記第2ボールイメージ上で任意の基準マーカーとこれに対する複数の周辺マーカーの組み合わせごとに各組み合わせでの傾きに対する相対角度情報を算出する段階と、
前記第1ボールイメージ上のマーカーに対する特徴情報と第2ボールイメージ上のマーカーに対する相対角度情報をマッチングさせてマッチングされた第2ボールイメージ上のマーカーの組み合わせを特定する段階を含む、打撃を受けて移動するゴルフボールに対する請求項1に記載のスピン算出方法。
【請求項4】
前記スピン軸とスピン量を算出する段階は、
前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を一つの球体に表す段階と、
前記対応するマーカーの対の各中心点を連結する線と、前記球体の中心点から導出される二つ以上の平面が出会う線をスピン軸として算出する段階を含む、打撃されて移動するゴルフボールに対する請求項1に記載のスピン算出方法。
【請求項5】
前記スピン軸とスピン量を算出する段階は、
前記対応するマーカーの対の各中心点から前記スピン軸に垂直な方向へのベクトルをそれぞれ算出する段階と、
前記スピン軸に垂直な基準面に前記算出されたベクトルをそれぞれ射影する段階と、
前記基準面に射影されたベクトルを利用して前記スピン軸を中心とする前記スピン量を算出する段階を含む、打撃されて移動するゴルフボールに対する請求項4に記載のスピン算出方法。
【請求項6】
前記移動するゴルフボールに対する連続する二つのイメージの間でカメラの視線固定によってイメージ内位置別視線回転量を算出し、
前記スピン軸とスピン量を算出する段階を通じて算出されたスピン量から前記算出された視線回転量を減算する補正を行う段階をさらに含む、打撃されて移動するゴルフボールに対する請求項1に記載のスピン算出方法。
【請求項7】
打撃されて移動するゴルフボールの運動情報を算出するセンシング装置のカメラシステムとは別に備えられ、複数のマーカーが表示されたゴルフボールが打撃によって移動することに対する連続したイメージである第1イメージと第2イメージをそれぞれ取得するシングルカメラと、
前記第1イメージのゴルフボール部分に該当する第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーと前記基準マーカー周辺の複数の周辺マーカーに関する情報を算出し、前記第2イメージのゴルフボール部分に該当する第2ボールイメージで前記第1ボールイメージの基準マーカー及び複数の周辺マーカーに対応するマーカーとの組み合わせを特定するマーカーマッチング処理部と、
前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を用いて幾何学的計算によりスピン軸とスピン量を算出するスピン算出部と、
を含む、打撃されて移動するゴルフボールに対するスピン算出装置。
【請求項8】
打撃されて移動するゴルフボールの運動情報を算出するセンシング装置のカメラから複数のマーカーが表示されたゴルフボールが打撃によって移動することに対する連続したイメージである第1イメージと第2イメージをそれぞれ伝達してもらい、前記第1イメージのゴルフボール部分に該当する第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーと前記基準マーカー周辺の複数の周辺マーカーに関する情報を算出し、前記第2イメージのゴルフボール部分に該当する第2ボールイメージで前記第1ボールイメージの基準マーカー及び複数の周辺マーカーとの組み合わせを特定するマーカーマッチング処理部と、
前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を利用して幾何学的計算によりスピン軸とスピン量を算出するスピン算出部と、
を含む、打撃されて移動するゴルフボールに対するスピン算出装置。
【請求項9】
前記マーカーマッチング処理部は、
前記センシング装置から前記ゴルフボールが置かれた座標情報を伝達され、これに基づいて前記シングルカメラが取得する映像の領域を関心領域として設定し、前記設定された関心領域の映像を前記第1イメージ及び第2イメージとして取得するように構成される、打撃を受けて移動するゴルフボールに対する請求項7に記載のスピン算出装置。
【請求項10】
前記マーカーマッチング処理部は、
前記第1ボールイメージ上の前記基準マーカーに対する前記複数の周辺マーカーそれぞれの傾きに対する相対角度情報である特徴情報を算出し、前記第2ボールイメージ上で任意の基準マーカーとこれに対する複数の周辺マーカーの組み合わせごとに各組み合わせでの傾きに対する相対角度情報を算出し、前記第1ボールイメージ上のマーカーに対する特徴情報と第2ボールイメージ上のマーカーとの相対角度情報をマッチングさせてマッチングされた第2ボールイメージ上のマーカーの組み合わせを特定するように構成される、打撃されて移動するゴルフボールへの請求項7又は8に記載のスピン算出装置。
【請求項11】
前記スピン算出部は、
前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーの対の各中心点を一つの球体に表し、前記対応するマーカーの対の各中心点を連結する線と前記球体の中心点から導出される二つ以上の平面が出会う線を前記スピン軸として算出し、
前記対応するマーカーの対の各中心点から前記スピン軸に垂直な方向へのベクトルをそれぞれ算出し、前記スピン軸に垂直な基準面に前記算出されたベクトルをそれぞれ射影して、前記基準面に射影されたベクトルを利用して前記スピン軸を中心とする前記スピン量を算出するように構成される、打撃されて移動するゴルフボールへの請求項7又は8に記載のスピン算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用者がゴルフクラブにゴルフボールを打撃することによって移動するゴルフボールが速く回転するスピン情報を、ゴルフボールに対して撮影された映像でゴルフボールの表面に表示されたマーカーの分析を通じて算出できる、打撃されて移動するゴルフボールのスピン算出方法及びこれを利用したスピン算出装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ボールを利用するスポーツ競技、特にゴルフの場合、ゴルファーによって打撃されて運動するボールの物理的特性を正確にセンシングし、そのセンシングされた値を利用して打球分析をしたり、これを映像で具現していわゆるスクリーンゴルフのようなシミュレーションゴルフ分野に適用する試みは常に行われてきた。
【0003】
特に打撃によって飛んでいくボールのスピン(Spin)は三次元空間上の軸を中心に非常に高速で回転するため、これを測定することはかなり難しく、また正確な測定のためにはかなり高価な装備が必要だが、代表的にレーダーセンサー(Radar Sensor)を利用する方式がある。
【0004】
しかし、このような高価なセンシング装置は、使用者がゴルフスイングによって打撃したボールをセンシングしてボールの軌跡を算出し、それから仮想のゴルフコースでのゴルフシミュレーションが行われるようにするいわゆるスクリーンゴルフやゴルフ練習場での打球分析などに汎用的に利用されるセンシング装置としては適しておらず、比較的安価で低能性のシステムでも速く正確にボールのスピンをセンシングできる技術の開発が必要な実情だ。
【0005】
前述したようなレーダーセンサーの他に、ゴルフボールのスピンをセンシングするための装置としてカメラを利用したセンシングシステムが利用されている。
【0006】
前述したカメラセンシングシステムはゴルフボールが打撃されて移動する時、カメラがそれに対する映像を撮影し、その撮影された映像からゴルフボールに該当する部分を分析することで被写体であるゴルフボールのスピンを算出できるようにする。
【0007】
ゴルフボールは打撃されて移動する時のスピンが相当な高速回転であるため、前述したようなカメラセンシングシステムを利用してゴルフボールのスピンを算出する場合、撮影速度の高い超高速カメラを利用することが望ましい。
【0008】
カメラセンシングシステムを利用してゴルフボールのスピンをセンシングする方式は大きく二つに区分できるが、ゴルフボールに特定形状を持つ表示を人為的にしておき、カメラが撮影したゴルフボール映像からその特定形状の表示を抽出してそれがどのように動いたかを分析してスピンを算出する方式と、ゴルフボールに人為的な表示をせずにゴルフボール自体に本来から表示されていたロゴやゴルフボールのディンプルなどを撮影されたゴルフボール映像を通じて分析し、これに基づいてスピンを算出する方式がある。
【0009】
後者の場合、ゴルフボールに表示された不特定の表示などを分析しなければならないため、高い解像度の超高速カメラが要求されるなど高仕様のカメラシステムが必要であり、センシングをするたびに映像を通じて不特定の表示を探して類似度を判断しなければならないため、スピン算出結果の正確性が一定でない問題点がある。
【0010】
前述の前者に該当する従来の技術として韓国登録特許第10-1386793号 、韓国登録特許第10-1182393号 、日本登録特許第3235987号 、米国登録特許第7324663号 などが公開されている。
【0011】
前述したような従来の技術は、ゴルフボールに表示された特定マーカーの形状的特徴に基づいて連続する二つのボールイメージの間で特定マーカーの形状的な類似度を通じてマーカーを互いにマッチングし、そのマッチング結果を利用してスピンを計算するため、ある程度正確なスピン算出が可能な長所がある。
【0012】
しかし、前述したようなゴルフボールに表示された特定マーカーの形状的特徴に基づいてスピンを算出する場合、速いスピン速度でも撮影された映像上で特定マーカーを確保しなければならないため、映像取得の速度がかなり速い高価なカメラ装置を利用しなければならないという点と、取得された映像に対するイメージ処理を通じて特定マーカーを抽出し、二つのボールイメージそれぞれの特定マーカーに対する形状的類似度を判断するなど演算量が相当であるため演算速度が遅いという点などの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1386793号
【特許文献2】韓国登録特許第10-1182393号
【特許文献3】日本登録特許第3235987号
【特許文献4】米国登録特許第7324663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はゴルフボールに複数のマーカーを表示し、カメラによって設定された領域に対する撮影映像を早く取得して、その取得されたボールイメージから複数のマーカー間の相対的な関係を利用して連続する二つのボールイメージ間で正確にマーカーをマッチングしてスピン算出をすることでスピン算出のための演算速度を増加させることができ、正確なスピン算出ができるようにする、打撃されて移動するゴルフボールに対するスピン算出方法及びこれを利用したスピン算出装置を提供するためだ。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施例による打撃されて移動するゴルフボールのスピン算出方法 は、複数のマーカーが表示されたゴルフボールが打撃されて移動することに対して連続したイメージである第1イメージと第2イメージをそれぞれ取得する段階と、前記第1イメージのゴルフボール部分に該当する第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーと前記基準マーカー周辺の複数の周辺マーカーに関する情報を算出する段階と、前記第2イメージのゴルフボール部分に該当する第2ボールイメージにおいて、前記第1ボールイメージの基準マーカー及び複数の周辺マーカーに対応するマーカーとの組み合わせを特定する段階と、前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を利用してスピン軸とスピン量を算出する段階を含む。
【0016】
また、好ましくは、前記対応するマーカーの組み合わせを特定する段階は、前記第1ボールイメージ上の基準マーカーに対する前記複数の周辺マーカーそれぞれの相対的な関係に関する情報とマッチングされる相対的関係を有する第2ボールイメージ上のマーカーの組み合わせを特定する段階を含む。
【0017】
また、好ましくは、前記対応するマーカーの組み合わせを特定する段階は、前記第1ボールイメージ上の基準マーカーに対する前記複数の周辺マーカーそれぞれの傾きに対する相対角度情報である特徴情報を算出する段階と、前記第2ボールイメージ上で任意の基準マーカーとこれに対する複数の周辺マーカーの組み合わせごとに各組み合わせでの傾きに対する相対角度情報を算出する段階と、前記第1ボールイメージ上のマーカーに対する特徴情報と第2ボールイメージ上のマーカーに対する相対角度情報をマッチングさせてマッチングされた第2ボールイメージ上のマーカーの組み合わせを特定する段階を含む。
【0018】
また、好ましくは、前記スピン軸とスピン量を算出する段階は、前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を一つの球体に表す段階と、前記対応するマーカーの対の各中心点を連結する線と、前記球体の中心点から導出される二つ以上の平面が出会う線をスピン軸として算出する段階を含む。
【0019】
また、好ましくは、前記スピン軸とスピン量を算出する段階は、前記対応するマーカーの対の各中心点から前記スピン軸に垂直な方向へのベクトルをそれぞれ算出する段階と、前記スピン軸に垂直な基準面に前記算出されたベクトルをそれぞれ射影する段階と、前記基準面に射影されたベクトルを利用して前記スピン軸を中心とする前記スピン量を算出する段階を含む。
【0020】
また、好ましくは、前記移動するゴルフボールに対する連続する二つのイメージの間でカメラの視線固定によってイメージ内位置別視線回転量を算出し、前記スピン軸とスピン量を算出する段階を通じて算出されたスピン量から前記算出された視線回転量を減算する補正を行う段階をさらに含む。
【0021】
一方、本発明の他の一実施例による打撃されて移動するゴルフボールに対するスピン算出装置は、打撃されて移動するゴルフボールの運動情報を算出するセンシング装置のカメラシステムとは別に備えられ、複数のマーカーが表示されたゴルフボールが打撃によって移動することに対する連続したイメージである第1イメージと第2イメージをそれぞれ取得するシングルカメラと、前記第1イメージのゴルフボール部分に該当する第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーと前記基準マーカー周辺の複数の周辺マーカーに関する情報を算出し、前記第2イメージのゴルフボール部分に該当する第2ボールイメージで前記第1ボールイメージの基準マーカー及び複数の周辺マーカーに対応するマーカーとの組み合わせを特定するマーカーマッチング処理部と、前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を用いて幾何学的計算によりスピン軸とスピン量を算出するスピン算出部を含む。
【0022】
一方、本発明の他の一実施例による打撃されて移動するゴルフボールに対するスピン算出装置は、打撃されて移動するゴルフボールの運動情報を算出するセンシング装置のカメラから複数のマーカーが表示されたゴルフボールが打撃によって移動することに対する連続したイメージである第1イメージと第2イメージをそれぞれ伝達してもらい、前記第1イメージのゴルフボール部分に該当する第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーと前記基準マーカー周辺の複数の周辺マーカーに関する情報を算出し、前記第2イメージのゴルフボール部分に該当する第2ボールイメージで前記第1ボールイメージの基準マーカー及び複数の周辺マーカーとの組み合わせを特定するマーカーマッチング処理部と、前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を利用して幾何学的 計算によりスピン軸とスピン量を算出するスピン算出部を含む。
【0023】
また、好ましくは、前記マーカーマッチング処理部は、前記センシング装置から前記ゴルフボールが置かれた座標情報を伝達され、これに基づいて前記シングルカメラが取得する映像の領域を関心領域として設定し、前記設定された関心領域の映像を前記第1イメージ及び第2イメージとして取得するように構成される。
【0024】
また、好ましくは、前記マーカーマッチング処理部は、前記第1ボールイメージ上の前記基準マーカーに対する前記複数の周辺マーカーそれぞれの傾きに対する相対角度情報である特徴情報を算出し、前記第2ボールイメージ上で任意の基準マーカーとこれに対する複数の周辺マーカーの組み合わせごとに各組み合わせでの傾きに対する相対角度情報を算出し、前記第1ボールイメージ上のマーカーに対する特徴情報と第2ボールイメージ上のマーカーとの相対角度情報をマッチングさせてマッチングされた第2ボールイメージ上のマーカーの組み合わせを特定するように構成される。
【0025】
また、好ましくは、前記スピン算出部は、前記第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーの対の各中心点を一つの球体に表し、前記対応するマーカーの対の各中心点を連結する線と前記球体の中心点から導出される二つ以上の平面が出会う線を前記スピン軸として算出し、前記対応するマーカーの対の各中心点から前記スピン軸に垂直な方向へのベクトルをそれぞれ算出し、前記スピン軸に垂直な基準面に前記算出されたベクトルをそれぞれ射影して、前記基準面に射影されたベクトルを利用して前記スピン軸を中心とする前記スピン量を算出するように構成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明による打撃されて移動するゴルフボールに対するスピン算出方法及びこれを利用したスピン算出装置は、ゴルフボールに複数のマーカーを表示し、カメラによって設定された領域に対する撮影映像を早く取得して、その取得されたボールイメージから複数のマーカー間の相対的な関係を利用して連続する二つのボールイメージとの間で正確にマーカーをマッチングしてスピン算出することでスピン算出のための演算速度を増加させることができ、正確なスピン算出ができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施例によるスピン算出装置の構成と、他の一実施例によるスピン算出装置の構成をそれぞれ示したブロック図。
図2】本発明の一実施例によるスピン算出方法に関して示したフローチャート。
図3】本発明の一実施例によるスピン算出装置及びスピン算出方法に利用されるゴルフボールとして、その表面に複数のマーカーが表示されたゴルフボールに対するボールイメージの一例とそのボールイメージからマーカーを探してその中心点座標を特定することに関して示した図面。
図4図3の(b)に示すようにボールイメージ上のマーカーを特定し、それぞれのマーカーの傾き情報を算出した結果を示した図面。
図5】本発明の一実施例によるスピン算出装置及びスピン算出方法によって第1ボールイメージから第2ボールイメージに回転しながら移動した状態を示した図面。
図6】本発明の一実施例によるスピン算出装置及びスピン算出方法によって第1ボールイメージ上のマーカーと第2ボールイメージ上のマーカーをマッチングする過程について説明するための図面。
図7図6などで説明したように、第1ボールイメージと第2ボールイメージとの間のマーカーのマッチングによって各マッチングされるマーカーの中心点を一つの球体に示したことを示した図面。
図8図7に示す球体から各マーカーの中心点を用いてスピン軸を算出する方法の一例について示した図面。
図9図8に示す球体でのスピン軸と各マーカーの中心点を用いてスピンを算出する方法の一例について示した図面。
図10】本発明の一実施例によるスピン算出装置において、カメラの視線固定によって第1ボールイメージから第2ボールイメージへの無回転移動時に回転量が発生することを説明するための図面。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による打撃されて移動するゴルフボールに対するスピン算出方法及びこれを利用したスピン算出装置に関する具体的な内容を図面を参照して説明する。
【0029】
本発明は基本的に使用者がゴルフクラブにゴルフボールを打撃することを所定のカメラで撮影し、その撮影されたイメージを分析することによって打撃されたボールのスピンを算出するようにしたもので、本発明によるスピン算出装置はゴルフボールの動きをセンシングするセンシング装置のカメラを利用することでセンシング装置の一機能として具現されることもでき、前述したセンシング装置とは別にスピン算出のためのシングルカメラを備え、これを通じて取得されたイメージを利用してスピン算出する装置として具現されることもできる。
【0030】
前述した前者に関する一例は図1の(a)で示しており、前述した後者に関する一例は図1の(b)で示している。
【0031】
まず、本発明に関して図1の(a)に示した実施例を説明すれば、本発明の一実施例によるスピン算出装置はセンシング装置SDのカメラを利用してスピンを算出する装置であり、マーカーマッチング処理部510とスピン算出部520とを含んで構成されることができる。
【0032】
ここで、センシング装置SDは使用者Pがゴルフクラブにゴルフボールを打撃することによって移動するゴルフボールに対して撮影をし、その撮影されたイメージを分析することによって、空間上で移動するゴルフボールの三次元座標情報と、その三次元座標情報に基づいてゴルフボールの初期速度、方向角、高さ角などの運動特性に関する情報を算出する装置でありうる。
【0033】
前述のセンシング装置SDは、使用者のゴルフスイングによるボールの打球分析や仮想現実基盤のシミュレーションを利用した仮想ゴルフなど多様な分野に適用できる。
【0034】
前述のセンシング装置SDは、カメラ110、120及びセンシング処理部200を含んで構成されることができる。
【0035】
前述のセンシング装置SDのカメラは、移動するゴルフボールを眺める画角で連続してイメージを取得するように構成されるが、移動するゴルフボールに対する三次元空間上での位置情報を算出するためには、カメラが異なる視野角で同一の対象に対してそれぞれイメージを取得する複数のカメラ、例えば図1の(a)及び(b)に示すように第1カメラ110と第2カメラ120が互いに同期化されてステレオスコピック方式で構成されることが望ましい。
【0036】
前述したようにセンシング装置のカメラを複数のカメラ110、120が互いに同期化されたステレオスコープ方式で構成することで、同じオブジェクト(ゴルフボール)に対して、第1カメラ110を通じて取得したイメージと、第2カメラ120を通じて取得したイメージそれぞれから抽出した該当ゴルフボールの二次元情報を三次元情報に変換することができる。
【0037】
センシング装置SDのセンシング処理部200は、図1の(a)及び(b)に示すように、複数のカメラ110、120それぞれから画像を収集して所定の画像処理を行って当該ゴルフボールを抽出するイメージ処理部210と、画像から抽出されたゴルフボールの二次元位置情報から三次元位置情報などを算出する情報算出部220とを含むことができる。
【0038】
センシング処理部200は、前述の各カメラ110、120を通じて収集されたイメージそれぞれから移動するゴルフボールを抽出し、当該ゴルフボールの位置情報を算出してクライアント300にその算出された情報を伝送し、クライアント300が送信したゴルフボールの位置情報を利用して新しい情報を算出したり分析情報を算出するなどのクライアント固有の機能を遂行できるようにする。
【0039】
例えば、クライアント300をスクリーンゴルフシステムに利用されるシミュレーターとして具現する場合、そのシミュレーターはセンシング処理部200からゴルフボールとゴルフクラブの位置情報を伝送され、これを利用して仮想のゴルフコース上で仮想のゴルフボールが飛行する軌跡のシミュレーション映像を具現することができる。
【0040】
また、クライアント300をゴルフスイング分析装置として具現する場合、その分析装置はセンシング処理部200からゴルフボールとゴルフクラブの位置情報を伝送され、これを利用して使用者のゴルフスイングに対する分析情報、スイングの問題点診断及びこれを解決するためのレッスン情報などを提供するように具現できる。
【0041】
イメージ処理部210は、カメラ110、120によって連続して取得されるイメージそれぞれに対する基準イメージの差演算イメージを抽出するためにイメージ処理を行うように構成され、情報算出部220は前述のイメージ処理部によって抽出された差演算イメージそれぞれから移動するゴルフボールの位置情報を算出するように構成されることができる。
【0042】
取得されたイメージから移動するゴルフボールを抽出する方法として、前述したような差演算イメージを利用する方法の他にも、ゴルフボールに対するテンプレートイメージを予め準備しておき、それぞれの取得されたイメージ上でゴルフボールに対するテンプレートイメージとの類似度を通じてゴルフボールに該当する部分を抽出する方法が利用されることもありうる。
【0043】
図1の(a)に示すような本発明の一実施例によるスピン算出装置は、前述したセンシング装置SDの複数のカメラのうち一つのカメラからボールイメージを伝送され、マーカーマッチング処理部510とスピン算出部520によって移動するゴルフボールのスピンが算出されてクライアント300に伝達される構成である。
【0044】
一方、図1の(b)に示した本発明のもう一つの実施例によるスピン算出装置はセンシング装置SDとは別にゴルフボールに対するスピン算出のためのシングルカメラ600を備え、そのシングルカメラ600が撮影したボールイメージを利用してスピンを算出するマーカーマッチング処理部510とスピン算出部520を含んで構成されることができる。
【0045】
前述した図1の(a)に示した実施例で、センシング装置SDの複数のカメラ110、120のいずれかのカメラまたは図1の(b)に示した実施例でのシングルカメラ600は、複数のマーカーが表示されたゴルフボールが打撃されて移動することに対して連続したイメージである第1イメージと第2イメージをそれぞれ取得するように構成されることができる。
【0046】
例えば、前述したカメラまたはシングルカメラのn番目のフレームのイメージを第1イメージ、n+1番目のフレームのイメージを第2イメージとすることができる。
【0047】
前述の第1イメージに含まれたゴルフボールに該当する部分を抽出して第1ボールイメージで、前述の第2イメージに含まれたゴルフボールに該当する部分を抽出して第2ボールイメージとし、マーカーマッチング処理部510とスピン算出部520は前述の第1ボールイメージ及び第2ボールイメージをそれぞれ分析することでスピンを算出することができる。
【0048】
マーカーマッチング処理部510は、それぞれのボールイメージ上で複数のマーカーを探して特定し、第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーとその基準マーカー周辺の複数の周辺マーカーに関する情報を算出し、第2ボールイメージで第1ボールイメージの基準マーカー及び複数の周辺マーカーに対応するマーカーの組み合わせを探して特定する役割を果たすことができる。
【0049】
スピン算出部520は、第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーの対の各中心点を利用して幾何学的計算によってスピン軸とスピン量を算出することができる。
【0050】
前述したマーカーマッチング処理部とスピン算出部の具体的な作用については後述する。
【0051】
一方、図2に示したフローチャートを参照して、本発明の一実施例による打撃を受けて移動するゴルフボールに対するスピン算出方法について説明する。
【0052】
まず、センシング装置のカメラまたはシングルカメラにより、複数のマーカーが表示されたゴルフボールに対する第1イメージおよびこれに連続した第2イメージを含む連続したイメージが取得される(S110)。
【0053】
前述したように取得されたイメージを利用してマーカーマッチング処理部はスピン算出のためにゴルフボールに表示された複数のマーカーをイメージから抽出し、これを分析して第1イメージ上のゴルフボールと第2イメージ上のゴルフボールのマーカーに対して互いに対応するマーカーの組み合わせを特定し、これは図2のフローチャート上でS120からS160段階を通じて行うことができる。
【0054】
前述のS110段階で第1イメージと第2イメージを取得した後、第1イメージ上でゴルフボールに該当する部分が第1ボールイメージとして抽出され、第2イメージ上でゴルフボールに該当する部分が第2ボールイメージとして抽出される(S120)。
【0055】
マーカーマッチング処理部は、第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーと複数の周辺マーカーを定義し(S130)、第1ボールイメージ上の基準マーカーに対する複数の周辺マーカーそれぞれの相対的な関係に関する情報を算出することができる。
【0056】
前述した基準マーカーに対する複数の周辺マーカーの相対的な関係は、ゴルフボールに表示された複数のマーカーの形状や位相などによってどのような相対的な関係を定義することができる。 例えば、ゴルフボールに表示された複数のマーカーがそれぞれ異なる位相を持つ場合、即ち互いに異なる傾斜で傾いている場合、前述の基準マーカーに対する複数の周辺マーカーそれぞれの相対的な関係は、基準マーカーに対する複数の周辺マーカーそれぞれの傾きに対する相対角度情報として算出することができる。
【0057】
即ち、マーカーマッチング処理部は第1ボールイメージ上の複数のマーカーに対して基準マーカーと複数の周辺マーカーを定義し(S130)、第1ボールイメージ上の基準マーカーに対する複数の周辺マーカーそれぞれの傾きに対する相対角度情報である「特徴情報」を算出することができる(S140)。
【0058】
マーカーマッチング処理部は、第2ボールイメージ上で任意の基準マーカーとこれに対する複数の周辺マーカーの組み合わせごとに各組み合わせでの傾きに対する相対角度情報を算出し(S150)、第1ボールイメージ上のマーカーに対する特徴情報と第2ボールイメージ上のマーカーに対する相対角度情報をマッチングさせてマッチングされた第2ボールイメージ上のマーカーとの組み合わせを特定することができる(S160)。
【0059】
前述したようなマーカーのマッチングに係る具体例は、図3から図6に示す。
【0060】
図3は、本発明の一実施例によるスピン算出装置及びスピン算出方法に利用されるゴルフボールとして、その表面に複数のマーカーが表示されたゴルフボールに対するボールイメージの一例とそのボールイメージからマーカーを探してその中心点座標を特定することに関して示した図面である。
【0061】
図4は、図3の(b)に示すようにボールイメージ上のマーカーを特定し、それぞれのマーカーの傾き情報を算出した結果を示した図面である。
【0062】
図5及び図6は、第1ボールイメージ上のマーカーと第2ボールイメージ上のマーカーをマッチングする過程について説明するための図面である。
【0063】
まず、図3を参照すると、図3の(a)は複数のマーカーが表示されたゴルフボールに対して撮影した画像のボールイメージを表し、図3の(b)は(a)に示したボールイメージ上の各マーカーに対してマーカー領域を通じて各マーカーを特定し、各マーカーの中心点座標を算出した結果を示し、図3の(c)及び(d)は(b)に示した各マーカーとマーカー領域を拡大して表したものである。
【0064】
図3の(a)に示すように、本発明に利用されるゴルフボールは表面に複数のマーカーが表示されており、ボールイメージBI上で複数のマーカーmkを確認することができる。
【0065】
ゴルフボールに表示される複数のマーカーは、図3の(a)に示すように、同じ形状を持つ複数のマーカーであることもでき、互いに異なる形状を持つ複数のマーカーであることもありうる。
【0066】
いかなる場合であれ、複数のマーカーは一つの基準マーカーを基準にその周辺の他のマーカーとの関係で相対的な情報を算出できる場合であることが望ましい。
【0067】
例えば、図3の(a)に示すように、同じ形状を持つ複数のマーカーmkがそれぞれ互いに異なる位相、即ち傾きを持つように表示された場合、一つの基準マーカーを基準として異なるマーカーそれぞれの傾きに対する相対角度情報を算出することができ、これがマーカーマッチングのための特徴情報になりうる。
【0068】
図3の(a)に示すボールイメージBIにおいて、マーカーマッチング処理部は図3の(b)に示すように、それぞれのマーカーmkを特定し、それぞれのマーカーmkに対するマーカー領域R、即ち、各マーカーmkを含む領域を特定でき、それぞれのマーカー領域Rによって各マーカーmkの中心点Cを特定することができる。
【0069】
図3の(c)に示すように、傾いたマーカーmk1を含むようにマーカー領域R1を生成し、そのマーカー領域R1の中心点C1をマーカーの中心点としてその中心点座標(cx1、cy1)を算出することができる。
【0070】
図3の(d)の場合、マーカーmk2が水平に現れているが、マーカー領域R2をマーカーmk2に密着するように設定するよりは、マーカー領域R2が所定の大きさを持つようにしてマーカーmk2とある程度の背景を含むように設定することが望ましい。
【0071】
図3の(d)の場合にもマーカー領域R2が特定されれば、その中心点C2をマーカーmk2の中心点として座標(cx2、cy2)を算出することができる。
【0072】
また、特定されるそれぞれのマーカーの中心点座標だけでなく、それぞれのマーカーの傾き情報も算出できる。
【0073】
それぞれのマーカーの傾き角度はマーカー領域内のピクセルが成す方向グラジェントの主成分を抽出し、それをマーカーの角度で定義することができる。ピクセルグラジェントの主成分を抽出する方法は、特異値分解(SVD)を利用できる。
【0074】
前述したようにボールイメージで特定される複数のマーカーそれぞれの傾き角度を算出した結果の例を図4に示している。
【0075】
このようにボールイメージ上に現れたそれぞれのマーカーの傾き角度情報を算出することは、第1ボールイメージと第2ボールイメージの両方に適用される。
【0076】
一方、図5を参照すると、図面番号610は第1ボールイメージを、図面番号620は第2ボールイメージを示し、第1ボールイメージで示したゴルフボールが回転しながら移動して第2ボールイメージで示したゴルフボールになるが、この時第1ボールイメージ610上のマーカー710と第2ボールイメージ620上のマーカー720を互いに同一のマーカー同士マッチングすることが必要である。
【0077】
前述したようなマーカーのマッチングに対して、従来は複数のマーカーそれぞれを互いに異なる形状を持つ図形に設定し、第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の同一マーカー同士、図形の形状の類似度としてマッチングさせる方法が用いられていた。
【0078】
しかし、そのようにマーカーの形状の類似度として同じマーカー同士をマッチングさせるためには、ボールイメージを取得するためのカメラの解像度がかなり高くなければならない問題点があり、解像度が高くてもイメージ上に現れたマーカーの形状が完全に現れない場合が多いため、形状の類似度を通じてマーカーをマッチングさせることは正確性も落ち限界があった。
【0079】
本発明では図形の形状でマーカーをマッチングさせず、前述した複数のマーカーそれぞれの傾きのような情報を利用してマーカーをマッチングさせるため、マーカーのマッチング処理のための演算速度をかなり速くすることができ、その一方で非常に正確にマーカーのマッチングが可能な長所がある。
【0080】
マーカーの図形形状をマッチングさせる場合、二次元データを処理しなければならないため演算速度がかなり遅い反面、本発明によりマーカーの傾き情報を利用してマッチングさせる場合には、傾き情報が一つの値として算出されるため、そのような傾き値を利用してマッチングさせるという点で演算速度をかなり速くすることができる。
【0081】
これに対して図6を参照してより具体的に説明すれば、第1ボールイメージ610上に表示された複数のマーカーのうち一つを基準マーカーと定義し、その基準マーカー周辺のマーカーを周辺マーカーとして定義することができる。
【0082】
例えば、図6に示すように、第1ボールイメージ610の中心点に最も近いマーカー711を「基準マーカー」と定義し、その基準マーカー711を基準とした周辺マーカーに対して時計回りに第1周辺マーカー712、第2周辺マーカー713、第3周辺マーカー714、第4周辺マーカー715などと定義することができる。
【0083】
このように第1ボールイメージ610上のマーカーに対して定義された基準マーカー711と周辺マーカー712~715にマッチングされる第2ボールイメージ620上の基準マーカー・周辺マーカーの組み合わせを探す。
【0084】
このために、第1ボールイメージ610上の基準マーカー711と周辺マーカー712~715に対してそれぞれの傾き角度情報を利用して以下のように相対角度情報を算出することができ、これを「特徴情報」と呼ぶ。
【0085】
<特徴情報>
【表1】
【0086】
即ち、第2ボールイメージ上の複数のマーカーに対して前述した特徴情報による相対角度情報を持つ基準マーカー-周辺マーカーの組み合わせを探すことによってマーカーのマッチングが行われる。
【0087】
第2ボールイメージ620は、第1ボールイメージ610から回転した状態であるため、第1ボールイメージ610上の基準マーカー-周辺マーカーの組み合わせを直ちに特定することはできず、第2ボールイメージ620上のすべてのマーカーが基準マーカーになることができるため、第2ボールイメージ620上で任意の基準マーカーを定め、これを基準として周辺マーカーを定める方法により、すべての場合に対して基準マーカー-周辺マーカーに対する相対角度情報をそれぞれ算出する。
【0088】
例えば、図6に示すように、S1の場合、第2のボールイメージ621上で723番マーカーを基準マーカーとして定め、残りの周辺マーカーをそれぞれ定義して相対角度情報を算出することができる。S2の場合、第2のボールイメージ622上で721番マーカーを基準マーカーとして定め、残りの周辺マーカーをそれぞれ定義して相対角度情報を算出することができる。S3の場合、第2ボールイメージ623上で722番マーカーを基準マーカーとして定め、残りの周辺マーカーをそれぞれ定義して相対角度情報を算出することができるが、このような方式ですべてのマーカーそれぞれを基準マーカーとする場合の基準マーカー-周辺マーカー組合に対して各々の相対角度情報を算出することができる。
【0089】
図6において、S1の場合の第2ボールイメージ621上の基準マーカー723及び周辺マーカーとの組み合わせの場合の相対角度と、S2の場合の第2ボールイメージ622上の基準マーカー721及び周辺マーカーとの組み合わせにおける相対角度情報を以下に示すことができる。
【0090】
<S1の場合>
【表2】
【0091】
<S2の場合>
【表3】
【0092】
前述の特徴情報と、S1の場合の相対角度情報を比較すると、互いに一致しないことがわかるので、前述したS1の場合は除外される。
【0093】
前述の特徴情報と、S2の場合の相対角度情報を比較すると、互いに一致することがわかる。したがって、第1ボールイメージ上の特徴情報とマッチングされる第2ボールイメージ上のマーカー組み合わせはS2の場合であることが分かる。
【0094】
即ち、図6からS2の場合において、第1ボールイメージ610から第2ボールイメージ622への変化がスピンによる変化であることを特定でき、この時の第1ボールイメージ610上の基準マーカー・周辺マーカーの組み合わせが第2ボールイメージ622上の基準マーカー・周辺マーカーの組み合わせとマッチングできる。
【0095】
前述した図3から図6に示すような過程が、図2に示すフローチャートのS120からS160のプロセスを通じて進められる。
【0096】
一方、図2に示すように、前述したマーカーのマッチングが完了した後、スピン算出部は前述のようにマッチングされた結果を利用してスピン軸とスピン量を計算することができる。
【0097】
スピン軸とスピン量の計算のために、まず第1ボールイメージと第2ボールイメージ上の対応するマーカーとの対の各中心点を一つの球体に示すことが望ましい(S210)。
【0098】
そして、対応するマーカーの対の各中心点を連結する線と球体の中心点から導出される二つ以上の平面が出会う線をスピン軸として算出できる(S220)。
【0099】
前述したようにスピン軸を算出した後、対応するマーカーの対の各中心点からスピン軸に垂直な方向へのベクトルをそれぞれ算出し(S230)、スピン軸に垂直な基準面に前述したように算出されたベクトルをそれぞれ射影(projection)する(S240)。
【0100】
前述したように基準面に射影されたベクトルを利用してスピン軸を中心とするスピン量を算出する(S250)。
【0101】
前述したようにスピン軸とスピン量を算出することで、第1ボールイメージから第2ボールイメージへのスピン情報を算出することができる。
【0102】
ところが、第1ボールイメージから第2ボールイメージへのスピンによる変化は、実際のゴルフボールのスピンだけによるものではない。 なぜなら、第1ボールイメージと第2ボールイメージをそれぞれ撮影するカメラの視線は固定されており、第1ボールイメージを撮影する時のゴルフボールの位置から第2ボールイメージを撮影する時のゴルフボールの位置に移動されたため、第1ボールイメージから第2ボールイメージへの無回転移動によって回転する回転量が発生する。
【0103】
このように第1ボールイメージから第2ボールイメージへの無回転移動による回転量はカメラの視線が固定されているため発生するものであるため、カメラの視線固定による、イメージ内位置別視線回転量を計算して前述したようにスピン量が算出された後、その算出されたスピン量から前述したように計算された視線回転量を減産する補正をすることで正確なスピン量が算出される(S260)。
【0104】
前述したようなスピンの算出に関する具体例は、図7から図10で示している。
【0105】
図7図6などで説明したように、第1ボールイメージと第2ボールイメージとの間のマーカーのマッチングによって各マッチングされるマーカーの中心点を一つの球体に示したものを示した図面であり、図8図7に示した球体から各マーカーの中心点を利用してスピン軸を算出する方法の一例に関して示した図面である。
【0106】
図9図8に示した球体でのスピン軸と各マーカーの中心点を利用してスピンを算出する方法の一例に関して示した図面であり、図10はカメラの視線固定によって第1ボールイメージから第2ボールイメージへの無回転移動時に回転量が発生することを説明するための図面である。
【0107】
まず、図7を参照すると、図7の(a)に示すように、第1ボールイメージ610のマーカー712、714と第2ボールイメージ620のマーカー722、724がそれぞれマッチングされ、各マッチングされたマーカーの中心点(Ca1-Cb1、Ca2-Cb2)を図7の(b)に示すように、一つの球体Obに示すことができる。
【0108】
図7の(b)を見ると、球体ObがCa1→Cb1に、Ca2→Cb2に回転することがわかる。ここで、球体Obはボールイメージの輪郭に基づいて仮想的に想定された球体でありうる。
【0109】
ここで、Ca1→Cb1への回転によるスピン軸及びスピン量と、Ca2→Cb2への回転によるスピン軸及びスピン量が互いに一致しないことがある。
【0110】
このように互いに一致しないのは、マーカーに対するピクセル分析などの過程でマーカーを示すピクセルが一部流失する可能性があるなど、映像分析の過程で発生する誤差に起因するためかもしれない。
【0111】
図7では各マーカーの中心点の対が二対表示された例について示したが、これに限らずマーカーの個数などによって三対、四対などさらに多くのマーカー中心点の対が現れることは言うまでもない。
【0112】
図7の(b)に示すように、球体Obにマッチングされる各マーカーの中心点の対が表示された状態で各中心点を利用してスピン軸を算出することができるが、これに対しては図8で示している。
【0113】
図8の(a)から(c)において球体Obの中心点は「Co」であり、Ca1とCb1、そしてCa2とCb2は互いにマッチングされたマーカーの中心点の対である。
【0114】
図8の(a)に示すように、マーカーの中心点Ca1とCb1とを連結する直線L1と垂直を成し、球体Obの中心点Coを通過する平面PL1を想定し、図8の(b)に示すようにマーカーの中心点Ca2とCb2とを連結する直線L2と垂直を形成しながら球体Obの中心点Coを通過する平面PL2を想定する。
【0115】
そして、平面PL1とPL2の交線を求めれば、これをスピン軸SAとして算出することができる。
【0116】
前述のような方式で三対以上のマーカー中心点の組合せについて、二対ずつ全体組合についてそれぞれスピン軸を算出して多数のスピン軸の算出結果を利用して、例えば、平均値によるスピン軸を算出することもできる。
【0117】
一方、前述したようにスピン軸が算出されれば、対応されるマーカーの対の各中心点からスピン軸に垂直な方向へのベクトルをそれぞれ算出して、スピン軸に垂直な基準面に前述したように算出されたベクトルをそれぞれ射影し、そのように基準面に射影されたベクトルを利用して、スピン軸を中心とするスピン量を算出することができる。
【0118】
図9に示したように、スピン軸SAに垂直な基準面POを定義して、球体Obに表示されたマッチングされたマーカーの対の各中心点からスピン軸SAにそれぞれ垂直な方向にベクトルを算出し、その算出されたベクトルを基準面POにそれぞれ正射影ができる。
【0119】
図9に示したとおり基準面POに射影されたスピン軸SAの中心点はCp点であり、Ca1点でスピン軸SAに垂直なベクトルは基準面PO上のPa1点でCp点へのベクトルv1で射影されて、Cb1点でスピン軸SAに垂直なベクトルは基準面PO上のPb1点でCp点へのベクトルv2で射影され、Ca2点でスピン軸SAに垂直なベクトルは基準面PO上のPa2点でCp点へのベクトルv3に射影されて、Cb2点でスピン軸SAに垂直なベクトルは基準面PO上のPb2点でCp点へのベクトルv4で射影されことができる。
【0120】
これによって基準面POに射影されたv1及びv2ベクトルを利用してスピン軸Cpを中心にスピン量Q1を算出することができ、v3及びv4ベクトルを利用してスピン軸Cpを中心にスピン量Q2を算出することができる。
【0121】
スピン量Q1の値は基準面PO上での中心点Cpを中心にv1ベクトルとv2ベクトルが成す角度と、元の周りを利用して得たり、Pa1-Pb1-Cpを連結する三角形で中心角を利用してPa1-Pb1の弧の長さとして求められる。スピン量Q2の値も同様に基準面PO上での中心点Cpを中心にv3ベクトルとv4ベクトルが成す角度と、元の周りを利用して得たり、Pa2-Pb2-Cpを連結する三角形で中心角を利用してPa2-Pb2の弧の長さとして求められる。
【0122】
このように複数のスピン量の値Q1、Q2に対しては平均値を最終的なスピン量として求めることができ、もしスピン量の値の個数がより多く算出されれば、これらそれぞれのスピン量の値の統計的分析、例えば平均と分散、標準偏差などを利用して統計的に正確なスピン量の値を算出することができる。
【0123】
ところで、前述したように、第1ボールイメージから第2ボールイメージへのスピン量はカメラの視線固定によって発生する第1ボールイメージから第2ボールイメージへの無回転移動による回転量、即ちイメージ内の位置によって変わる視線回転量が含まれているので、その視線回転量を先に算出したスピン量から減産する必要がある。
【0124】
第1ボールイメージから第2ボールイメージへの無回転移動によって回転量(視線回転量)が発生することは図10を通じて確認できる。
【0125】
図10の(a)に示すように、ジグZGの一方にゴルフボールが固定された状態で、図10の(b)に示すようにジグZGの他方に固定された状態のゴルフボールをそのまま直線移動させる時、それぞれの場合についてボールイメージを取得すると、図10の(a)に示す第1ボールイメージB1から図10の(b)に示した第2ボールイメージB2へ移動する時、無回転移動であるにもかかわらず回転量が発生したことが確認できる。即ち、イメージ内で位置別に視線回転量が発生するという事実が分かる。
【0126】
したがって、第1ボールイメージB1から第2ボールイメージB2への無回転移動時に発生する回転量(視線回転量)を測定してあらかじめ設定しておき、先に図7から図9で説明したような方式で算出されたスピン量から前述したあらかじめ設定された視線回転量を減産する補正をすることによって最終的に正確なスピン量を算出することができる。
【0127】
このような視線回転量はあらかじめ測定しておき、これをカメラキャリブレーション過程でこれを考慮するようにあらかじめ設定しておくこともでき、使用者がゴルフショットをする度に前述したような視線回転量を算出してこれを利用してスピン量を補正することもできる。
【0128】
以上説明したように、本発明はゴルフボールに複数のマーカーを表示し、カメラによって設定された領域に対する撮影映像を早く取得して、その取得されたボールイメージから複数のマーカー間の相対的な関係を利用して連続する二つのボールイメージ間で正確にマーカーをマッチングしてスピン算出をすることで、従来の技術より速く正確なスピン算出が可能だという長所がある。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明による打撃されて移動するゴルフボールのスピン算出方法及びこれを用いたスピン算出装置は、ゴルフスイング時、ゴルフクラブによって打撃されたボールに対する分析を基盤とするゴルフ分析に関する分野や仮想ゴルフシミュレーションシステムに関する分野で利用できる。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図3(d)】
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図9
図10(a)】
図10(B)】
【国際調査報告】