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特表2024-513339平行電力線に伝送される過渡電磁障害から電気コンポーネントを保護する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】平行電力線に伝送される過渡電磁障害から電気コンポーネントを保護する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/09 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
H03H7/09 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557241
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 US2022019577
(87)【国際公開番号】W WO2022197509
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】17/204,527
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522296413
【氏名又は名称】アドバンスド フュージョン システムズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ビルンバッハ,カーティス エー.
(72)【発明者】
【氏名】カッペレッティ,ジョン アンソニー
【テーマコード(参考)】
5J024
【Fターム(参考)】
5J024AA01
5J024CA06
5J024DA22
5J024DA23
5J024DA33
5J024EA09
5J024FA04
(57)【要約】
電力システム内の同相の複数の隣接する平行電力線のグループ内の電力線上の有害なEMIによって誘導される信号が、複数の電力線のうちの1つに接続されている電気コンポーネントに到達するのを防ぐための装置であって、この装置が、同相の複数の隣接する電力線を受け入れるための複数の穴を含むディスク状構造を有する少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子を含み、各ディスク状構造が、複数の平行電力線すべての直径よりも大きな外径を有し、導電性インピーダンス遷移素子と複数の電力線の隣接部分との間にインピーダンスの不整合を意図的に生じさせる。インピーダンスの不整合により、導電性インピーダンス遷移素子が、有害なEMIによって複数の電力線に誘導された信号の高周波成分の反射を生じさせ、高周波成分は反射されて熱として放散される。
【選択図】図30

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電、送電、及び配電システム内の同相の複数の隣接する平行電力線のグループ内の1つまたは複数の電力線上の有害なEMIによって誘導される電気信号が、前記複数の平行電力線の1つに接続されている電気コンポーネントに到達するのを防止するための装置であって、
少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子を含み、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス素子は、前記同相の複数の隣接する電力線のうちの1つを受け入れて取り囲むように寸法決めされ、互いに離間した複数の穴を有するディスク状構造を含み、前記ディスク状構造は前記複数の平行電力線すべての直径よりも大きい外径を有し、前記導電性インピーダンス遷移素子と前記複数の電力線の隣接部分との間にインピーダンスの不整合を意図的に生じさせ、
前記インピーダンスの不整合により、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子が、有害なEMIによって前記複数の電力線に誘導された信号の高周波成分の反射を生じさせ、
前記高周波成分が反射され、熱として放散される、前記装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの導電性遷移素子が、2つの隣接する平行電力線を受け入れるための2つの中央穴を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インピーダンスの不整合の大きさが、周波数に依存し、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子から、前記誘導される過渡電磁信号の前記不要な高周波スペクトル成分を反射させながら、前記誘導された過渡電磁信号の低周波スペクトル成分が、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子を通過できるようにする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子のうちの1つまたは複数が、全体的または部分的にフェライト材料で構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子のうちの1つまたは複数が、2つ以上の異なるフェライト材料から構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子の前記外径と前記複数の電力線の前記直径との比が、約1.5:1から100:1の範囲内である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子の前記直径と前記複数の電力線の前記直径との前記比が、好ましくは約2:1から80:1の範囲内である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子のそれぞれが、第1の部分(section)及び第2の部分(section)を含み、前記第1の部分(part)及び前記第2の部分(section)のそれぞれが複数の締結ハブを含み、前記締結ハブのそれぞれが前記電力線を受け入れるためのノッチを有し、前記第1及び前記第2の部分(section)の前記締結ハブが前記電力線に取り付けられたときに前記第1及び前記第2の部分(part)を共に固定するために互いに締結される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子の前記締結ハブが、前記複数の電力線に切り込み、それによって前記導電性インピーダンス遷移素子を前記電力線に固定するように適合された切開素子を支持する内面を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の部分(part)及び第2の部分(section)の前記複数の締結ハブがそれぞれ、複数の半円筒部分及び足部分を含み、前記第1の部分(section)の前記足部分がラチェット素子を有し、前記第2の部分(section)の前記足部分が、前記ラチェット素子と一致する特徴を有するレセプタクルを有し、前記第1及び前記第2の部分(section)が互いに固定されることを可能にする、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
発電、送電及び配電システムの等位相の複数の平行電力線のグループの電力線に結合されたコンポーネントを有害なEMIから保護する方法であって、
前記電力線の直径よりも大きい直径を有する少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子(CITE)を、前記電力線の延長された長さと前記コンポーネントとの間の位置で前記等位相の電力線すべてに取り付けることによって、意図的にインピーダンスの不整合を生じさせることを含み、
前記CITEと前記電力線の前記直径の差異により、前記2つ以上の導電性インピーダンス遷移素子と前記電力線の隣接部分との間にインピーダンスの不整合が意図的に引き起こされ、前記インピーダンスの不整合により、前記有害なEMIによって前記電力線に誘導された信号の高周波成分が、前記複数の導電性インピーダンス遷移素子のペアの間に形成された減衰共振器によって反射され放散する、前記方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子の前記直径と、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子が取り付けられる前記電力線の前記直径との比が、約1.5:1から100:1の範囲内である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子の前記直径と、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子が取り付けられる前記電力線の前記直径との前記比が、好ましくは約2:1から80:1の範囲内である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子がディスクの形状に形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子が、減衰共振器を形成する少なくとも1つのペアに配置された複数の導電性インピーダンス遷移素子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
発電、送電、及び配電システム内の同相の複数の隣接する平行電力線のグループ内の1つまたは複数の電力線上の有害なEMIによって誘導される電気信号が、前記複数の平行電力線の1つに接続されている電気コンポーネントに到達するのを防止するための装置であって、
少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子を含み、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子が、上部及び下部を含むディスク状構造を含み、前記上部及び前記下部の少なくとも一方が、前記同相の複数の隣接する電力線を受け入れるためのさらなるノッチを含む、インサートを受け入れるためのノッチを含み、前記ディスク状構造が、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子と、前記複数の電力線の隣接部分との間にインピーダンスの不整合を意図的に作り出すために、前記複数の平行電力線のすべての直径よりも大きい外径を有し、
前記インピーダンスの不整合により、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子が、有害なEMIによって前記複数の電力線に誘導された信号の高周波成分の反射を生じさせ、
前記高周波成分が反射され、熱として放散される、前記装置。
【請求項17】
前記インサートが多角形の形状であり、前記インサートの前記ノッチが、前記少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子の前記上部及び前記下部のうちの一方の対応するノッチと一致する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記導電性インピーダンス遷移素子の前記ディスク状構造が、第1の厚さを有する半径方向外側部分と、前記第1の厚さより小さい第2の厚さを有する半径方向中間部分とを有し、前記構造は、プラスチック及びガラス繊維素材のうちの1つから構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記導電性インピーダンス遷移素子の前記外側部分が、導電性材料でコーティングされている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記導電性材料が、銅及びニッケルのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記導電性インピーダンス遷移素子の前記中間部分が、高透磁率の材料でコーティングされている、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記高透磁率の材料がミューメタルである、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記高透磁率の材料が高純度鉄である、請求項21に記載の装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月17日に出願された米国特許出願第17/204,527号(‘527出願)の優先権及び利益を主張するものであり、共通譲渡され同時係属中の、2018年8月30日に出願された米国特許出願第16/773,418(‘418出願)の一部継続出願であり、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、自然発生的にまたは人為的に発生し得る電磁パルスなどの過渡電磁障害を含む有害なEMIから電子機器(電気コンポーネント(EC))を保護するための方法及び装置に関する。
定義
コンポーネント:個別の電気または電子素子、または定義された回路またはシステムに接続された複数のその素子。
【0003】
導電性インピーダンス遷移素子(CITE):導体に結合され、導体に対して直径が急激に増大する導電性素子。
【0004】
減衰共振器:導体上に間隔をあけて配置された2つのCITE素子またはCITE素子のクラスタ。電磁信号の高周波成分がCITE素子間で往復反射し、信号が熱として消散するまで反射が継続する。CITE素子間の間隔は、選択された周波数帯域の電磁信号が衝突せず、建設的干渉を介して追加されるように選択される。
【0005】
電磁攻撃:一部の電気または電子機器またはシステムに、そのシステムにおける損傷、混乱、または混乱を引き起こす目的で、有害なEMI信号が意図的に加えられるシナリオ。
【0006】
電磁干渉(EMI):電磁放射線、それを電気系統で受けると、伝達される信号またはその系統に結合された機器に干渉する可能性があるため、望ましくない。EMIは、本明細書では、以下に定義される多数のサブタイプを包含する広範な用語として定義される。
【0007】
電磁パルス(EMP):通常5ナノ秒未満という立ち上がり時間が速い電磁放射線の有害な過渡バーストであり、潜在的に損傷を与える電流及び電圧サージを発生させる可能性がある(したがって、有害なEMIのサブセットとみなされ得る)。一般的なEMP強度は、数万ボルト/メートル程度である。EMPは、核爆発(NEMP、立ち上がり時間は通常5ナノ秒未満)、またはコロナ質量放出など、突発的な電磁場の揺らぎを発生させる非核発生源(NNEMP、立ち上がり時間は通常5ナノ秒未満)によって発生し得る。
【0008】
電磁的脅威:システムの損傷、混乱、または混乱を引き起こす目的で、電気または電子機器またはシステムに対して、有害で意図的な電磁信号が使用される可能性がある状況。
【0009】
異常電磁パルス:US8,300,378で以前に定義されている、本明細書に記載されているさまざまな電磁脅威をすべて包含するEMPのクラス。異常なEMPは、核爆発から生じる過渡パルス(NEMP)、電力系統のコンポーネントに到達して動作不能にするのに十分な強度の非核電磁パルス(NNEMP)、または太陽嵐からのコロナ質量放出の結果として生じる地磁気誘導電流(GIC)を含む。
【0010】
有害なEMI:電磁干渉、それを電気系統で受けると、その系統に結合されている電気機器、例えば、これらに限定されないが、発電機、電子回路基板及び変圧器などが損傷する、または動作不能になる可能性が高くなる。この干渉は、パルスまたは連続放射である可能性がある。
【0011】
高高度電磁パルス(HEMP):これもNEMPのサブセットである。HEMPは、核兵器が地表の上空(大気圏外)で爆発したときに発生し、大気と相互作用して強力な電磁エネルギー場を生成するガンマ線を生成する。この電磁エネルギー場は、外部に放射されるため人体には無害だが、回路には、落雷に似ているが落雷よりもはるかに迅速に損傷を与える影響を与える過負荷がかかる可能性がある。
【0012】
高透磁率:高透磁率は、本明細書では1×10-3μ(H/m;絶対透磁率)(>1000μ/μ0(相対透磁率))以上の透磁率として定義される。
【0013】
意図的電磁干渉(IEMI):対象となる電気系統に悪影響を与えるように意図的に(人為的に)生成される電磁干渉。この干渉は、パルスまたは連続放射である可能性がある。
【0014】
狭帯域幅EM信号:中心周波数の25パーセント以下の帯域幅を有するEM信号。
【0015】
核電磁干渉(NEMI):核装置の爆発によって発生し、初期立ち上がり時間が3ナノ秒未満である電気干渉。NEMIは、立ち上がり時間の速い電磁パルス(以下に定義)と、立ち上がり時間が遅く持続時間の長い放射線を含む。これは通常、電磁パルス(EMP)として知られている(上記参照)。
【0016】
位相線:互いに隣接して配置され、単相または多相電力線の同じ位相を伝送する2つ以上の導体。
【0017】
電力線:複数の同期された発電源を含む電力網を含む発電、送電、または配電システム。より具体的には、電力線は、3つの別個の導体を有する「三相線」を含むことができ、各導体は、他の導体と位相シフトした関係で電力信号を伝送する。第4の導体は中性であり得る。
【0018】
無線周波数(RF):数キロヘルツから数テラヘルツの範囲の、スペクトルの無線部分の電磁放射及び信号。
【0019】
発生源領域電磁パルス(SREMP):核電磁パルス(NEMP)のサブセット。SREMPは、低高度(大気圏内)の核爆発によって生成される。有効な正味の垂直電子流は、大気中と地面の電子の非対称堆積によって形成され、この電流の形成と減衰により、電流に垂直な方向に電磁放射のパルスが放出される。低高度爆発による非対称性は、下方に放出された電子の一部が地表の上部ミリメートルに捕捉される一方で、その他の電子は上方及び外側に移動して大気中を長距離移動し得、イオン化と電荷分離を引き起こすために発生する。高高度での爆発では、大気の密度勾配により、より弱い非対称性が存在する可能性がある。
【0020】
システム生成EMP(SGEMP):SGEMPは、機器の筐体内で反射したエネルギーの結果として発生する特別なクラスのEMP信号である。通常、ミサイルに関連し、ミサイル内で見られるが、他の場所でも発生する可能性がある。これは、EMP放出の二次的な形式であるという点でユニークである。
【0021】
超高帯域幅EM信号:信号の中心周波数の75パーセント以上の帯域幅を有するEM信号。
【0022】
NEMP、HEMP、SREMP、SGEMPなどはすべて、核装置の爆発(核分裂、核融合、熱核融合)によって発生する電磁パルスであることに留意する。いずれも、通常5ナノ秒未満の非常に速い立ち上がり時間が特徴であり、立ち上がり時間がサブナノ秒の範囲になる場合もある。これらすべてのEMPタイプは、非核EMPクラス(NNEMP)と同様に、通常数キロヘルツから数ギガヘルツの範囲にある非常に広いRF帯域幅に代表されるパルスを発生させる。さらに、スペクトルのこの部分にわたる、いかなる個々の周波数での信号レベルも均一ではないが、エネルギーの大部分は約200メガヘルツ未満に位置していることに留意する。これらの境界は固定されておらず、そのパルスの発生の瞬間に存在するいくつかのパラメータによって決定される。
【背景技術】
【0023】
特定の事象が発生すると、電力インフラに極めて壊滅的な影響を及ぼす可能性のある電磁放射線が発生する可能性があることがよく知られている。この広範なカテゴリーの電磁放射線に対して本明細書で使用される用語は、「有害な電磁干渉(EMI)」である。核兵器及び同様の破壊技術の拡散に関する懸念を考慮して、核爆発(NEMI)によって放出される有害なEMIの強力なバーストの影響を調査する研究が行われてきた。研究によると、核爆発は非常に速い立ち上がり時間(5ナノ秒未満程度)で電磁パルス(EMP)のバーストを発生させ、その後、信号のより遅く長く持続する部分を伴うことが示されるが、それは長時間持続することがあり、時には数分に及ぶことがある。核によって発生するEMPパルスの最終的な形状を決定する主な要因の1つは、核が爆発する高度である。一般的なEMP強度は、数万ボルト/メートル程度である。これと比較して、近くのレーダーが200ボルト/メートル、通信機器が10ボルト/メートル、及び一般的な大都市圏の環境が0.01ボルト/メートル程度である。Federal Communication Commission(FCC)のガイドラインでは、この種の放射に対して、送電サイトの敷地境界線の端で0.5ボルト/メートルの制限を義務付けていることにも留意されたい。
【0024】
電気機器にとって脅威となるEMPの特性には、非常に速い立ち上がり時間、非常に短いパルス幅、及び広い周波数スペクトルの信号を発生させる電場振幅などがある。導電構造体へのEM結合には3つの基本機構、すなわち、線状導体の基本機構である電気誘導、導電構造体が閉ループを形成するときの主要機構である磁気誘導、及びアース(すなわち物理的な惑星)を介した信号伝達がある。電気的過渡現象による機能損傷の影響を受ける可能性のある装置には、能動電子装置、受動電子コンポーネント、半導体装置、スクイブ及び発火装置、メーター、ならびに電源系統、ケーブル、送電網スイッチング素子及び配電素子が含まれる。デジタル処理システム、メモリユニット、誘導システム、及び配電系統では、動作上の混乱及び障害が予想され得る。障害機構には、絶縁破壊、熱影響及び相互接続、スイッチング、変圧器及び発電機の故障が含まれる。
【0025】
あらゆるタイプの核EMPのスペクトルとエネルギー分布は、主に大気中で爆発が起こる高さに依存する。地表から40km以下で発生する爆発は大気圏内爆発と呼ばれ、発生源領域電磁パルス(SREMP)を生成する。一方、地表から40km以上で発生する爆発は大気圏外爆発と呼ばれ、高高度電磁パルス(HEMP)を生成する。SREMPは、ガンマ線からの光子と大気中の分子との衝突によって生成される。これらの高エネルギーの光子は周囲の空気分子から電子を放出し、イオン化した空気分子を生成する。この莫大な電荷分離により、数十万ボルト/メートルにも達し得る強力な電場が生成され、5000アンペアターン/メートルにも達し得る大きな関連磁場が発生する。図19Aは、例示的な100キロトンの大気圏内爆発によって生成される例示的なEMP波形の経時的なグラフである。図19Aに示すように、SREMPの波形(E1)の始まりは、約1ナノ秒で250KV/メートルに達し得る最大値まで上昇し、10ナノ秒以内に約10KV/メートルまで下降する非常に強力なパルスである。上で特定したシナリオでは、波形の第2の部分(E2)では、電場は10KV/メートルでほぼ一定のままであり、爆発後の10ナノ秒の標示から約100μsまで続く。爆発後約100μsで始まる波形の第3の部分(E3)では、電場は、1ミリ秒の標示までに10KV/メートルから約ゼロに下降する。図19Bは、SREMP波形の相対エネルギー対周波数のグラフである。示されているように、SREMP波形の周波数成分は1MHz未満の周波数範囲にあり、スペクトル成分の大部分は10kHz未満にある。正確な電界強度、パルスの立ち上がり時間、持続時間は、装置の形状、装置の収量、爆発の高さ、爆発時の大気条件などの複数の要因の組み合わせに依存することに留意する。
【0026】
対照的に、HEMPは高度40キロメートル超で大気分子に吸収されるガンマ光子によって生成される。この吸収により、電子が地球の磁場によって磁力線の周りの螺旋経路に偏向され、電磁エネルギーを放射する。図20Aは、例示的な大気圏外爆発によって生成されるEMI波形の経時的なグラフである。示されているように、HEMPの波形はSREMPの波形とは大きく異なる。5キロトンから1メガトンの範囲の装置の場合、この電子放射エネルギーは、数十キロボルト/メートルの範囲の大きくて多様な電界と、10から300アンペアターン/メートルの範囲の関連する磁場を生成する。HEMP波形の一部の継続時間はSREMPよりも長くなり、場合によっては数秒続くことがある。上述のように、波形の特定の部分の継続時間は、装置の形状、装置の収量、爆発の高さ、爆発時の大気条件などの多くの要因に依存する。図20Bは、HEMP波形の相対エネルギー対周波数の概略グラフである。示されているように、エネルギーの約90パーセントは100KHzから10MHzの範囲に含まれている。
【0027】
EMP対雷
上述のように、本明細書に開示される装置及び方法は、速い立ち上がり時間の電磁パルス(EMP)だけでなく、比較的遅い落雷を含む有害なEMIからの保護を提供する。例えば、大気圏内の外延から発生するEMP(SREMP)は、立ち上がり時間が速く(通常はサブナノ秒)、パルス持続時間が短い(500ナノ秒以下)。このEMPは、通常10KV/メートルから500KV/メートルの範囲にあるが、これに限定されない、かなりの電場強度を有する。雷によって発生する電力線の電気パルスは、SREMPパルスと同様に挙動するが、核により、または他の人為的手段により発生したEMPよりも立ち上がり時間が遅く(通常約20ナノ秒)、長いパルス幅を有する。この結果、低Q値減衰共振器は、SREMPまたは非核発生源からの過渡誘導信号を抑制する場合よりも、雷からの過渡誘導信号を抑制する効果が若干劣る傾向がある。しかしながら、さまざまな実施形態及び構成において減衰共振器のQ値を調整することにより、どちらのタイプのEMPが、特定の電力線において、より重大な脅威であると見なされるかに応じて、極めて短いEMP(SREMP)またはより長いパルスのEMP(例えば、雷)をターゲットとすることが可能である。
【0028】
従来の保護スキーム
電磁攻撃シナリオの大部分では、その攻撃で単一パルスより多いパルスが使用されることに留意されたい。この結果、保護スキームが実行可能であるためには、そのような保護スキームが実行可能な保護手段とみなされるために、複数回の連続電磁攻撃、場合によっては絶え間のない電磁攻撃に耐えることができなければならない。一部の保護スキームは単発または単発の可能性があるため、現在広く使用されているにもかかわらず、保護サービスには真の意味で適していない。
【0029】
上述のように、核の提供(SREMP及びHEMP)によって生成される有害なEMIに加えて、電気及び電子機器は、非核電磁パルス、意図的な電磁バースト、コロナ質量放出(太陽嵐)及び雷雨などの他の事象によって損傷を受ける可能性がある。電気系統を有害なEMIから保護するために、特定の対策が講じられている。例えば、EMP及び雷などの有害なEMIを抑制するための従来のシステム及び装置には、電子管保護装置、金属酸化物バリスタ及び他の固体装置、スパークギャップ、ならびにインダクタが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
電子管保護装置:本出願の発明者は、電気及び電子機器を前述の電磁的脅威のいずれかによる損傷から保護するための好ましい手段として、高速高出力冷陰極電界放出電子管を利用した保護手段を以前に開発した。この保護用冷陰極電界放出電子管は、Birnbachによる米国特許第8,300,378号「Method and apparatus for protecting power systems from extraordinary electromagnetic pulses」に記載されている。このクラスの電子管装置のテストでは、パルス繰り返し率が500キロヘルツを超える繰り返しパルスの用途での保護サービスに適していることが示されている。
【0031】
金属酸化物バリスタ(MOV):MOVは、静止状態で非常に高いインピーダンス(通常は10MΩから100MΩ)を示す固体装置であるが、これに限定されない。ある所定の閾値を超える電圧がMOVの両端に印加されると、MOVはその内部インピーダンスを非常に低いインピーダンス状態に変化させる。これにより、MOVを使用して重要な回路素子の周囲の過電圧を分流することができる。このインピーダンスの変化が起こる速度は、そのMOVの特定の設計と材料内容の関数である。MOV装置の重大な制限は、MOV装置が半導体であるため、基板の結晶構造に障害が発生すると修復できず、自己修復できないことである。前述のタイプの障害は、MOVの主な障害モードである。その結果、MOVを信頼して複数の過電圧状況に対する保護を提供することができなくなる。この制限にもかかわらず、MOVは現在公共事業で使用されている主なサージ抑制手段である。
【0032】
さらに、ほとんどのMOVは、核爆発(NEMP)によるEMPの抑制に役立つほど十分に速い立ち上がり時間(通常は約20ナノ秒)を有さないため、MOVを指定する場合、特にSREMPのE1部分とHEMPの速い立ち上がり時間部分に留意する必要がある。速い立ち上がり時間(約2から5ナノ秒の立ち上がり時間)に適応した速い反応時間を含むMOVであっても、通常サブナノ秒の立ち上がり時間を有するすべてのE1パルスに対して効果を発揮するには遅すぎる。この速度差により、保護動作が発生する前に壊滅的に大量のエネルギーが通過することになり、その結果、保護対象装置が故障し、場合によっては保護装置(MOV)も故障する。したがって、MOVは一般にNEMPに対して効果がない。
【0033】
市場には、接続ワイヤの直径が0.125インチ(1/8インチ)未満であっても、5,000アンペアを超えるパルスから保護する用途に適していると主張するMOVがいくつかある。パルスが十分に短く、持続時間が1ナノ秒未満であれば、接続ワイヤは蒸発しない可能性があるが、現実世界の電磁攻撃シナリオでは、ワイヤが蒸発して装置が役に立たなくなる。このような装置の使用は、現実世界の電磁脅威に対する保護を提供するには不十分であることは、当業者には明らかであろう。
【0034】
その他の半導体装置:過渡現象抑制用途のために、その他にもさまざまな半導体装置が使用中または開発中であることに留意する。この例としては、窒化ガリウムアバランシェダイオードがある。これは、十分に堅牢なパラメータを含む高速立ち上がり時間スイッチングダイオードであり、特定の用途に応じて直列または並列でいくつかを一緒に使用すると、グループの速度は、相互接続と必須の平衡回路網によってもたらされる寄生インダクタンスと寄生容量によって、個々の装置の速度よりも遅くなる。関連するすべての半導体装置は、圧電効果に関連した結晶構造の破損により故障する可能性がある。このクラスの半導体装置は、前述したようにMOV装置と同じ故障モードの影響を受けやすい。
【0035】
スパークギャップ:スパークギャップは、有害なEMIからの保護に使用されることがある、高速スイッチの形態である。敏感なコンポーネントの周囲の過電圧を分流するために、スパークギャップを配線する。閾値電圧は、スパークギャップの電極の間隔によって決まる。スパークギャップの問題は、それらを、ある所定の電圧で確実にトリガさせることである。さらなる問題は、一度発火するとスパークギャップの接触面が腐食により劣化し、電極間隔の変化を引き起こして、その後の発火事象では通常、スパークギャップが新品のときと同じ電圧で発火しないことである。スパークギャップには非常に高度なメンテナンスが必要であり、その使用は一般に実験室のパルスパワー実験に限定されている。配電及び送電業界のみで使用されるスパークギャップの別の形態は、「ホーン」と呼ばれることが多い、1セットの特に間隔を空けた湾曲したロッドである。立ち上がり時間の速いEMPに対する保護には立ち上がり時間が遅すぎるが、ホーンは雷保護のための簡単なアプローチであることが示されており、広く使用されている。ホーンの主な欠点は、損傷しやすく、頻繁に交換する必要があることである。
【0036】
インダクタ:回路と直列に接続すると、高速な過渡信号を抑制できる。直列接続されたインダクタを保護装置として使用する場合の問題は、電気絶縁要件と、過熱することなく一定量の電流を処理する能力に関連するインダクタの導体の直径の許容差が非常に厳しいことである。一般に、直列インダクタだけでは、有害なEMI信号を適切に抑制できない。複数の反復パルスに耐えるインダクタの能力は、その設計、特に絶縁と熱定格の関数である。インダクタはエネルギーを消費するため、通常、余剰エネルギーがすぐに利用できる変電所でのみ使用される。
【0037】
したがって、前述の欠点を確実かつ効率的に克服することができ、有害なEMIから電子機器を保護することができる方法及び装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0038】
本開示は、発電、送電、及び配電システム内の同相の複数の隣接する平行電力線のグループ内の1つまたは複数の電力線上の有害なEMIによって誘導される電気信号が、複数の平行電力線の1つに接続されている電気コンポーネントに到達するのを防止するための装置を提供する。この装置は、少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子を含み、この少なくとも1つの導電性インピーダンス素子は、複数の隣接する同相の電力線のうちの1つを受け入れて取り囲むように寸法決めされ、互いに離間した複数の穴を有するディスク状構造を含み、各ディスク状構造は複数の平行電力線すべての直径よりも大きい外径を有し、導電性インピーダンス遷移素子と複数の電力線の隣接部分との間にインピーダンスの不整合を意図的に生じさせる。インピーダンスの不整合により、導電性インピーダンス遷移素子は、有害なEMIによって複数の電力線に誘導された信号の高周波成分を反射し、高周波成分は反射されて熱として放散される。
【0039】
本開示はさらに、発電、送電及び配電システムの等位相の複数の平行電力線のグループの電力線に結合されたコンポーネントを有害なEMIから保護する方法を提供する。この方法は、電力線の直径よりも大きい直径を有する少なくとも1つの導電性インピーダンス遷移素子(CITE)を、電力線の延長された長さと素子との間の位置で等位相のすべての電力線に取り付けることによって、意図的にインピーダンスの不整合を生じさせることを含む。CITEと電力線の直径の差により、2つ以上の導電性インピーダンス遷移素子と電力線の隣接部分との間にインピーダンスの不整合が意図的に引き起こされ、このインピーダンスの不整合により、有害なEMIによって電力線に誘導された信号の高周波成分が、複数の導電性インピーダンス遷移素子のペアの間に形成された減衰共振器によって反射され消散する。
【0040】
インピーダンス不整合の大きさは周波数に依存し、誘導過渡電磁信号の低周波成分が複数の導電性インピーダンス遷移素子を通過することを可能にする一方で、誘導過渡電磁信号の高周波を複数のインピーダンス遷移素子から反射する。
【0041】
導電性インピーダンス遷移素子の効率を高めるために、複数のその導電性インピーダンス遷移素子のうちの1つまたは複数は、フェライト材料で構成され得るか、またはフェライト材料の部分を含み得る。このフェライト材料は、別個のディスクユニットとして組み込むことも、導電性ディスク素子に統合することもできる。
【0042】
1つまたは複数のCITEは、カーボン、グラファイトなどの部分導電または半導電性材料で構成され得ることに留意する。これにより、ディスクは入射エネルギーの一部を吸収できる。この吸収性CITEは、当業者には理解されるように、個別に、等間隔のセットで、不等間隔のセットで、及び他の構成で使用され得る。
【0043】
発明のさらなる特徴及び利点は、同様の参照番号が同様の要素を指す添付図面と以下の詳細な説明を併せ読むことにより明らかになるであろう。図面及びその一部は例示的なものであり、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】電力線(104)に接続され、過渡電磁干渉信号(14)による損傷を受けやすい電気コンポーネント(E.C.)の先行技術の概略図である。
図2】本開示による、少なくとも1つの図示された導電性インピーダンス遷移素子(CITE;106、107)によって、過渡電磁干渉信号の破壊的な結果から保護される電気コンポーネント(P.C.)を有する実寸ではない電力線の概略図である。
図3】本開示による、電力線が2つのCITE(125)によって保護される、別の実施形態の概略図である。
図4図3の構成の点線で囲まれた長方形の部分の変形である。
図5】本開示による、電力線が3つのCITE(178、179)によって保護される、別の実施形態の概略図である。
図6】本開示によるCITEが、第1の保護対象コンポーネント(100)及び第2の保護対象コンポーネント(102)を有する電力線上で使用される別の実施形態の概略図である。
図7図6と同様で、左側のコンポーネントを保護するCITEのより一般的な位置と、右側のコンポーネントを保護するCITEのより一般的な位置を示す。
図8】CITEが電力線に沿って3つのグループ(235)で配置される、別の実施形態の概略図である。
図9】本開示による導電性インピーダンス遷移素子(CITE)の第1の実施形態の片面の平面図である。
図10】ヒンジ素子を中心に下部素子に対して枢動されたCITEの上部コンポーネントを示す平面図であり、電力導体への取り付けを可能にする、部分的に開いた状態の第1の実施形態を示す。
図11】CITEの第1の実施形態のヒンジ端面図である。
図12】部分的に開いたCITEの第1の実施形態の斜視図である。
図13】CITEの第1の実施形態の下部コンポーネントの斜視図である。
図14】CITEの第1の実施形態の上部コンポーネントの斜視図である。
図15図11の軸15-15に沿った、CITEの第1の実施形態の縦断面図である。
図16】本開示によるCITEの別の実施形態の片面の平面図である。
図17】本開示による導電性インピーダンス遷移素子(CITE)の別の実施形態の斜視図である。
図18A】楕円形の断面形状を有するCITEの別の実施形態の平面図である。
図18B】多角形の断面形状を有するCITEの別の実施形態の平面図である。
図18C】非対称の断面形状を有するCITEの別の実施形態の平面図である。
図18D】ミューメタルコーティングを有するCITEの一実施形態の側断面図である。
図19A】例示的な大気圏内爆発(SREMP)によって生成されるEMI波形の経時的なグラフである。(Sandia National Laboratoryより、以下「Sandia」)。
図19B】SREMP波形の相対エネルギー対周波数のグラフである。(Sandiaより)。
図20A】例示的な大気圏外(HEMP)爆発によって生成されるEMI波形の経時的なグラフである。(Sandiaより)。
図20B】HEMP波形の相対エネルギー対周波数のグラフである。(Sandiaより)。
図21】本開示による、フェライトビーズとして形成された導電性インピーダンス遷移素子(CITE)の別の実施形態の斜視図である。
図22】A及びBは、本開示によるCITEを組み立てる方法の一実施形態を示す、CITEの縦断面の平面図である。
図23】球形を有するCITEの代替的な実施形態の斜視図である。
図24】蛍光ガスが充填された透明な外周部分を有するCITEの正面平面図である。
図25】グラフェンなどの吸収性材料(A)、アルミニウムなどの金属(B)、及びフェライト材料(C)など、それぞれ異なる材料で形成された中央部分を有するCITEの実施形態を示す。
図26A】金属製の中央部分を有する、本開示によるCITEの別の実施形態の第1の側面の斜視図である。
図26B】吸収性の中央部分を有する、本開示によるCITEの別の実施形態の第2の側面の斜視図である。
図27A】ケーブルの長さに沿って差動インピーダンスを有する半導体層を有する地中同軸電力ケーブルの軸方向断面図である。
図27B図27Aに示す地中同軸電力ケーブルの縦断面図である。
図28A】CITEの上部及び下部コンポーネントを固定するためのさねはぎを有する、CITEの別の実施形態の側面図である。
図28B図28Aに示す実施形態の正面平面図である。
図29A】平行位相線に適合したCITEの一実施形態の正面平面図である。
図29B図29Aに示すCITEの中央部分の拡大図である。
図30図29Aに示すCITEの斜視図である。
図31】三相線に適合したCITEの一実施形態の別の視点からの正面平面図である。
図32】ミューメタルコーティングを有するCITEの一実施形態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書に開示される装置(システム)及び方法は、電子機器、電気コンポーネント、及びそれらのシステムを、過渡電磁パルス(EMP)を含む有害なEMIから保護するように構成される。
【0046】
前述したように、EMPは核爆発と関連して最初に注目された。しかし、近年、電気的手段(人工兵器及びシミュレータ)によって、核爆発によって生成されるものと同等またはそれを超えるEMP信号を生成することが可能になった。問題となる電磁パルスは、通常、10KV/メートルから500KV/メートル以上の範囲にあるが、これに限定されない。本明細書に開示される装置及び方法は、核(NEMP)発生源及び非核(NNEMP)発生源から生じるEMPを含む有害なEMIから電気インフラを保護する。
【0047】
意図的に生じさせたインピーダンスの不整合
開示された装置(システム)及び方法は、指定されたタイプの電力線に沿ったインピーダンスの意図的な不整合によって、入射する有害なEMIのかなりの部分が反射する原理を利用しており、この有害なEMIはEMPまたは干渉信号の形式であり得る。本明細書で使用されるこの「電力線」は、複数の同期した発電源を含む電力網を有する発電、送電、または配電システムの電力線であり得る。より具体的には、電力線は、3つの別個の導体を有する「三相線」を含むことができ、各導体は、他の導体と位相シフトした関係で電力信号を伝送する。第4の導体は中性であり得る。しかしながら、このシステム及び方法は、一般的に、配電システムで使用される位相の全範囲に適用でき、通常は1から場合によっては6以上の範囲に及ぶ。システムでの位相の数は、中性を含むすべての位相に1つまたは複数のCITE装置またはその装置のセットを装備しなければならないという制約を課すこと以外は、CITE技術の使用には影響しない。有害なEMI信号のかなりの部分が反射すると、電気コンポーネントがその信号によって損傷したり動作不能になったりすることを防ぎ得る。周波数依存インピーダンスの意図的な不整合は、電力線に導電性インピーダンス遷移素子(CITE)を組み込むことによって実現される。CITEは、電力線への導電性アタッチメントと考えることができる。導電性アタッチメント(CITE)は、電力線と同じ断面形状を有し得るが、直径は電力線の直径より数倍大きくなる。
【0048】
例えば、以下の円形断面の素子の低周波インダクタンスの合計を考える。
【0049】
【数1】
式中:
dcは、ナノヘンリー(nHまたは10-9H)を単位とする「低周波」または直流インダクタンスである。
lは素子または構造の長さ(cm)である。
rは素子または構造の半径(cm)である。
【0050】
(E.B.Rosa、「The Self and Mutual Inductances of Linear Conductors」、Bulletin of the Bureau of Standards、Vol.4、No.2、1908、301ページ以降)。インダクタのリアクタンス(すなわち、一種のインピーダンス)は次のとおりである。
=2πfL
この式から、素子の半径の変化によりインダクタンス(L)の変化が生じ、次に、それに比例して、インピーダンス(X)に変化が生じることがわかる。ここでの「f」は、インダクタに入力される信号の周波数である。換言すると、電力線上のCITEの存在によって変数r(電力線の半径)がr+xへ意図的に変更(ここで、xはrに対するCITEの正の直径の変化を表す)された場合、CITEと、元の値rを有する隣接する長さの電力線との間に、対応するインピーダンスの意図的な不整合が発生する。上の方程式は、Lの差異によるインピーダンスの不整合が周波数値で乗算され、周波数が高くなるほど不整合が大きくなるということをさらに示す。
【0051】
1つの非限定的な例として、電力線が直径1インチのワイヤを含む場合、CITEは直径15から20インチのディスクとして構成され得る。この実施形態は、複数の電力線が通常、電力線間に十分な距離を置いて、並んで、または互いに重なり合っている従来の電力線設定での使用に適している。特に、各電力線を他の電力線から離間する距離を規定する、当業者によく知られた規格がある。CITEが電力線よりも大きな幅(直径)を有するため、CITEは電力線から隣接する電力線に向かって外側に延びることが理解されるであろう。2本の導体が近接することによるアーク放電またはその他の悪影響を回避するには、CITEの外縁と隣接する電力線、または隣接する電力線上のCITEの周縁との間に十分な距離を維持する必要がある。電力線が揺れてテザリングから離れ、隣接する線間の距離が短くなる可能性があるため、この現象を考慮して追加の許容誤差も追加される。いくつかの実施態様では、電力線が約18インチ離れている場合、CITEの周縁は、隣接する電力線から所定の距離、例えば約6から12インチに位置する。CITEハードウェアの設置を可能にするために、送電システム内の個々の線を離間する距離を延ばすことは比較的簡単な問題であることに留意する。
【0052】
電力線間の間隔に関する考慮事項とは別に、CITEの直径も電力線の電圧レベルに依存する。電力線で使用される電圧が高くなるほど、電力線に取り付けられるCITEの直径も大きくする必要がある。
【0053】
本明細書で論じられるように、CITEの例示的な実施態様は、ユニットとして一緒に結合され、電力線に沿って配置される2つ以上のCITEの配置を含む。システム全体の効率は、少なくとも部分的に、電力線に沿って所定の様式で配置されるCITEまたはCITEのグループの数、ならびにそのCITE及びCITEのグループの間隔に基づき得る。
【0054】
インピーダンスの不整合により、送電線に沿って定在波が発生し、電圧定在波比(VSWR)が、線に沿った波腹での部分的な定在波の電圧振幅(最小)と、波節での電圧振幅(最大)の比として定義される。VSWRは、送電線の特性インピーダンスに対する電源及び負荷のインピーダンスの整合(または不整合)の尺度である。CITEまたはCITEのグループと電力線の間のインピーダンスの意図的な不整合によって引き起こされる高いVSWRは、入射する有害なEMI信号(例えば、EMP)の高周波成分(MHzからGHzの範囲)の反射を引き起こすが、電力線に電力を供給する電流信号のはるかに低い基本周波数成分(例えば、50から400Hz)への影響は小さい。過渡信号の高周波成分の反射は、(1)変圧器、発電機、モータへの熱または絶縁損傷など、そのコンポーネントの設計電圧よりも高い電圧が、電力線に接続された磁気巻線を含む電気コンポーネントに到達して動作不能にすることによる破壊的な結果、及び/または、(2)電力線の電流を遮断するために配置されている開閉装置コンポーネントにその高周波成分が到達して動作不能にすることによる破壊的な結果、を防ぐために行われる。他の障害メカニズムも考えられることに留意する。
【0055】
破壊的干渉と建設的干渉の影響
上述の電力線内で反射された過渡信号の破壊的または建設的干渉が存在する状況を意図的に作り出すことが可能であることに留意する。CITEシステムを設計する際には、この点を考慮することが重要である。さらに、CITEシステムを最適化して、高周波成分の破壊的干渉を意図的に生成し、CITEシステムの通常動作とは無関係に高周波成分が自ら打ち消すことができるようにすることが望ましい。
【0056】
破壊的干渉を確実にするには、電力線の両端のCITEの間隔が、建設的干渉を引き起こす大きさでないことが必要である。保護対象線の電源をオフにし得る設置の場合、簡単なテストを実施して最適な間隔を決定し得る。
【0057】
このテストでは、適切な立ち上がり時間、パルス幅、及び振幅の直接注入パルス源が、CITE構造の設置後に電力線に容量結合される。最小1GHzの瞬時帯域幅を有する高速オシロスコープが、CITE構造の1つの反対側の線に結合される。パルスを注入して波形を観測する。電力線の注入側からサンプリングされたパルスと比較してパルスの振幅が小さい場合、間隔は適切である。パルスが大きい場合は、最小パルスサイズが観察されるまで1セットのCITE構造を移動する必要がある。このテストは、CITE構造の適切な動作を検証するために電力線が認証される方法でもある。
【0058】
図1は、電気コンポーネント(E.C.)(電気または電子機器)10が従来技術による発電、送電及び配電システムの電力線104に接続されている、縮尺通りではないシステムの概略図である。電力線104は、導電性であることを示すために網掛けで示されている。電磁パルス(EMP)などの外部の有害な電磁信号12(有害なEMI)は、電力線104上にパルス14として電磁信号を誘導し、電気コンポーネント(E.C.)10に向けられる。電気コンポーネント(E.C.)10に到達する電圧パルス14の大きさが、前述した1つまたは複数の故障メカニズムによって高すぎる場合、電気コンポーネント(E.C.)10は動作不能になる。
【0059】
図2は、保護対象コンポーネント100(「P.C.」と図示)、電力線104、及び単一の導電性インピーダンス遷移素子(CITE)106の、縮尺通りではない概略図である。CITE106は、保護対象コンポーネント(P.C.)100を有害なEMIの影響から保護する手段または技術として、電力線104に沿って意図的に生成された周波数依存のインピーダンスの不整合を導入している。代表的なCITE106が概略的に示されており、より詳細な実施形態が以下に説明され、後続の図に示されている。CITE106は導電性であり(例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、フェライトなどの金属、それらの何らかの組み合わせ、または他の導電性材料で、形成されるかコーティングされる)、電力線104の長さに向かって保護対象コンポーネント(P.C.)100とは反対側を向く第1の側面107を有する。一般に、CITEは、素子の一方の側(「第1の」側面と呼ばれる)が素子と電力線との間の直径比を最大化するように構造化されている。取り付け中、CITEの第1の側面は、保護対象コンポーネントとは反対側を向くように取り付けられる。CITE106の第1の側面107と電力線104の軸方向に隣接する部分との間には、急激なインピーダンスの不整合が存在する。単一のCITEが不要な高周波成分を100%反射するわけではないことに留意する。これを達成するには、図3から図8に示すような、より複雑な構造が必要になるが、以下で説明する。図2から図5は、単一の保護対象コンポーネントを含む電力線の一端を指すことに留意する。さらに、わかりやすくするために信号は電力線から空間的にずらして示されているが、すべての信号は電力線の導体上を伝わることに留意する。
【0060】
潜在的に有害なEMI信号108は、電力線104に影響を与える外部の有害なEMI109(例えば、EMP)によって電力線104上に誘導される(場合によっては、注入される)。信号108は、本明細書では「過渡誘導信号108」とも呼ばれる。電力線104に沿ったCITE106の存在によって導入される意図的なインピーダンスの不整合により、CITE106の第1の側面107は、過渡誘導信号108の第1の部分110を保護対象コンポーネント(P.C.)100から遠ざけるように反射する。反射部分110は、上述の反射により、過渡誘導信号108と比較して極性が反転する。過渡誘導信号108のより小さい振幅の第2の部分112は、保護対象コンポーネント100に向かって伝送される。保護対象コンポーネントから離れて伝送される第1の部分110は、第2の部分より(振幅において)はるかに大きく、その比はインピーダンスの不整合の程度の関数である。図2は、過渡電磁干渉信号の描写、ならびに過渡電磁干渉信号の伝送部分及び反射部分の描写に関して(同様の図と同様に)簡略化されていることを理解されたい。例えば、図2では、過渡誘導信号108及び過渡誘導信号の反射された第1の部分110は、垂直距離によって離間されて示される別個の経路に沿って伝わるように見える。しかし、これらの信号108、110は、実際には、電力線104を含む重複する経路に沿って反対方向に伝わる。さらに、図2(及び同様の図)には、説明を簡略化するために、過渡電磁干渉信号108の代表的な伝送部分及び反射部分のほんの一部のみが示されている。図2の構成は実行可能かつ動作可能ではあるが、好ましい実施形態ではなく、主に例示の目的でここに提供されていることに留意する。
【0061】
電力線104上のCITE106(及び他のCITE)の設計及び配置は、保護対象コンポーネント(P.C.)100の両端に印加される電圧が、そのコンポーネントが動作不能になるという破壊的な結果を回避するのに十分に低いことを保証することを目的としている。上述のように、(CITE106による)周波数依存のインピーダンスの不整合により、保護対象コンポーネント(P.C.)100から離れた電力線に電力を供給する電流の基本周波数での、電力線104上の電圧の反射も回避される。この基本周波数は、通常、例えば、50、60、または400Hzであり得る。
【0062】
保護対象コンポーネント(P.C.)100に伝送される過渡誘導信号108の部分112の最大閾値電圧を決定するための1つの有用なガイドラインは、配電網に結合された電気コンポーネントを保護するための基準として世界的に使用される、国境を越えた基準「Basic Insulation Level」(BIL)である。知られているように、システムの機器の絶縁は、インパルス(例えば、雷インパルス)過電圧がサージ保護装置などを通じて放電される前に、特定の最小電圧に耐えるように設計されなければならない。したがって、サージ保護装置の動作電圧レベルは、機器の最低耐電圧レベルよりも低い必要がある。この最小電圧定格は、電気機器のBILまたは基本絶縁レベルとして定義される。多くの場合、電気機器が確実に保護されるように、BILはサージ保護装置の動作電圧レベルより6倍から7倍高くなる。BILの倍数は動作電圧に依存し、動作電圧が上昇するにつれて低下することに留意する。
【0063】
したがって、1つまたは複数のCITEは、CITE(複数可)を通過して保護対象機器(P.C.)100に到達する部分112が、その機器のBIL定格(または何らかの設定された基準もしくは閾値)内に収まるように、保護対象機器(P.C.)100に十分に近接して配置される。
【0064】
また、本明細書で説明するように、保護対象コンポーネント(P.C.)100は、幅広い用途にわたって任意の数の異なる形態をとり得る。例えば、保護対象コンポーネント(P.C.)100は、住居(住宅)またはそのサブコンポーネントの形態であってもよいし、変電所または発電機などの産業用電力機器の形態であってもよい。
【0065】
図3は、2つのCITE120、122が結合される電力線104の別の実施形態を示す。CITE120、122のそれぞれは、保護対象コンポーネント(P.C.)100から離れる方向を向く第1の側面と、保護対象コンポーネント(P.C.)100に向かう方向を向く第2の側面とを有する。CITE120の第1の側面及びCITE122の第1の側面は、電力線104の部分を挟んで互いに向かい合い、過渡誘導信号のエネルギーを放散するための減衰共振器125を形成する。過渡誘導信号126は、外部の有害なEMI127によって電力線104上に誘導される。過渡誘導信号126の一部は、伝送部分128としてCITE122を通って左に通過する。過渡誘導信号の別の一部は、反射部分134としてCITE122の第2の側面から反射される。CITE122を通過する伝送部分128の一部は、反射部分130としてCITE120の第1の側面から右側に反射される。反射部分130の一部は、伝送部分131としてCITE122を通過する。伝送部分128の別の一部は、伝送部分132としてCITE120を通って左側に通過する。有害なEMI127の受信から、誘導信号126及び伝送部分128、132を介した保護対象コンポーネント100への信号の伝送部分は、破線のボックス150で囲まれている。
【0066】
反射部分130の一部は、さらなる反射部分136としてCITE122の第1の側面から左側に反射される。反射部分136の一部は、伝送部分140としてCITE120を通って左側に通過する。反射部分136の別の一部は、さらなる反射部分138としてCITE120の第1の側面から右側に反射される。信号が反射されると、さらなる反射部分が入射部分と比較して減衰する。例えば、反射部分138は、反射部分136と比較して減衰する。反射部分138の一部は、伝送部分142としてCITE122を通って右側に通過する。外部の有害なEMI127の部分から始まり、電力線126上の誘導信号、最初にCITE122を介して伝送される信号126の部分128、及びCITE120を介して伝送される信号128の部分132を含む誘導信号の主な伝送成分は、破線の長方形のボックス150で囲まれている。「左」及び「右」という用語は、図3に示されるシステム、及び部品の相対的な配置ならびにさまざまな信号の相対的な進行方向を説明する際の便宜のためにのみ使用されることが理解されるであろう。
【0067】
本明細書で説明するように、CITE120、122は、所定の距離だけ互いに離間することができ、その値は、電力線104の種類などのいくつかの動作パラメータに依存する。以下に説明するように、CITEは、CITEを互いに離間した望ましい距離に自動的に配置する内部スペーサまたはガイドを提供するように構築され得る。
【0068】
図3及び前述の段落から、最初の伝送部分がさらなる反射部分のカスケードを引き起こすこと、具体的には、伝送部分128が反射部分130を生じさせ、これがさらなる反射部分136を生じさせ、さらに、反射部分136がさらなる反射部分138を生じさせることを理解されたい。図3は、強度が連続的に減少していく反射部分のそれぞれを概略的に示す。その結果、CITE120及び122は、有害なEMIへの曝露によって生じる過渡誘導信号のエネルギーを無害に放散するための減衰共振器125を形成する。
【0069】
図3では、信号131、134、及び142は、CITE122から電力線104に沿って右側に進み、そこでそれらのエネルギーが電力線内で熱として無害に放散される。減衰共振器125内では、過渡誘導信号126の一部の減衰共鳴反射も、電力線104内で熱として無害に放散される。CITE120から保護対象コンポーネント100に向けられた部分132及び140のそれぞれの電圧は、保護対象コンポーネント100が動作不能及び/または損傷することを避けるために十分に低く保たれる。CITEの間隔によって、建設的干渉または破壊的干渉が可能になることを理解されたい。しかし、当業者には、対象となる周波数での建設的干渉を回避すべきであることは明らかであろう(上記の建設的干渉と破壊的干渉についての議論を参照)。
【0070】
図3に示される実施形態では、外部EMIがCITE120、122の両方の右側に信号を誘導する。図4は、有害なEMIがCITE120、122の間の電力線の一部を攻撃する別のシナリオの概略図である。図4は、図3のボックス150との比較の基礎として、破線のボックス150a内の伝送部分を示す。図示の通り、図4では、図3とは異なり、示された有害なEMIがCITE120と122との間の電力線の部分で受信されている。過渡電磁信号160は、有害なEMI162によって電力線104上に誘導され、信号の伝送部分165はCITE120を通過して電気コンポーネント(図4には図示せず)に向かう。
【0071】
一般に、保護対象コンポーネント(P.C.)100と第1のCITE(すなわち、120)との間の電力線104の長さを実用的である限り短く保つことが望ましい。外部の有害なEMIからの影響の確率は、露出した電力線の長さに比例するため、これにより、前述の電力線104の長さが過渡電磁信号(誘導信号)に露出することが制限され、その結果、この長さが外部の有害なEMIによる影響を受ける可能性が制限される。一例として、電力線が第1の変圧器と第2の変圧器の間に延びる場合、CITEの第1のセットが第1の変圧器に近接して配置され、CITEの第2のセットが第2の変圧器に近接して配置され、CITEの両方のセットが本明細書に記載される方法で第1及び第2の変圧器を保護するように、1つまたは複数の、好ましくは複数のCITEが電力線の両端に配置される必要がある。もちろん、変圧器の代わりに、電力線の端を、本明細書で説明する例示的なものや他のものなど、任意の保護対象電気コンポーネントに接続し得ることが理解されるであろう。
【0072】
図5は、過渡電磁妨害から生じる過渡誘導信号から電気コンポーネントを保護するために、3つのCITEが電力線104に結合される本開示の別の実施形態の概略図である。この実施形態では、CITE170、172、174は、2つの減衰共振器、CITE170と172との間の第1の共振器178、及びCITE172と174との間の第2の共振器179を形成する。
【0073】
図5では、上記と同じ規則が適用され、CITE170、172、174は、保護対象コンポーネント(P.C.)100から離れる方向を向く第1の側面と、保護対象コンポーネント(P.C.)100に向かう方向を向く第2の側面とを有する。
【0074】
図5では、外部の有害なEMI182は、電力線104上に信号180を誘導または注入する。信号180の一部は、CITE174の第1の側面で反射部分184として右側に反射される。過渡電磁(誘導または注入)信号180のさらなる部分は、伝送部分186としてCITE174を通って左側に伝送される。次に、伝送部分186の一部はCITE172の第1の側面に到達し、反射部分188としてまた右側に反射される。伝送部分186の別の一部は、伝送部分187としてCITE172を通って左側に通過する。伝送部分187の一部は、CITE170を介して伝送信号198としてさらに伝送される。振幅に関して、伝送部分186は伝送部分187よりも大きな振幅を有し、伝送部分187は部分198よりも大きな振幅を有することにさらに留意されたい。伝送部分187の別の一部は、CITE170によって反射部分195として右側に反射される。反射部分188がCITE174の第2の側面に到達すると、信号の第1の部分は信号190として伝送され、第2の部分は信号192として左側に反射される。左側に向かう信号192の第1の部分は信号194としてCITE172を介して伝送され、信号192の第2の部分は信号196としてCITE172の第1の側面で反射される。信号194がCITE170の第1の側面に到達すると、信号の第1の部分は信号200として反射され、第2の部分は伝送部分202としてCITE170を介して伝送される。さらに、信号196がCITE174の第2の側面に到達すると、信号の一部が伝送部分197としてCITE174を介して伝送される。
【0075】
部分198及び202のそれぞれの電圧は、保護対象コンポーネント(P.C.)100が動作不能になるのを避けるために十分に低く保たれる最終的な伝送部分である。伝送部分184、190、197はCITE122から右側に向けられ、そのエネルギーを熱として電力線104に沿って放散する。
【0076】
図5では、2つの減衰共振器178及び179の使用により、図3に示される単一の減衰共振器125の使用と比較して、過渡電磁干渉信号のより多くのエネルギーの放散が可能になるが、これは、CITE間での反射信号及び伝送信号の通過回数が多くなり、電力線に沿って熱放散が増加するためである。したがって、減衰共振器の複数のペアの使用は、保護対象コンポーネント100に到達する過渡誘導信号の任意の部分を最小限に抑えるのに役立つ可能性がある。CITE構造がヒートシンクとして機能することはあっても、それ自体がヒートシンクとして機能することを意図したものではないことが理解されよう。むしろ、熱は、放射プロセスによって電力線104自体によって放散されることが予想される。
【0077】
図6は、本開示によるCITEが、第1の保護対象コンポーネント201及び右端に第2の保護対象コンポーネント203を有する電力線上で使用される、別の実施形態の概略図である。したがって、図2から図5とは対照的に、図6から図8は電力線の両端を示しており、それぞれが各保護対象コンポーネント201、203を有する。図6の例示的な実施形態では、第1及び第2の保護対象コンポーネントは変圧器である。それらは同様に(上で定義したような)他のコンポーネントであり得ることを理解されたい。図6では、可変CITE素子230が、保護対象コンポーネント201に関連付けられたCITE及びCITEグループの可変数(1からN)を表し、可変CITE素子232は、保護対象コンポーネント203に関連付けられたCITEの可変数n(1からN)を表す。さらに、可変CITE素子230が、可変CITEの個々の素子(1からN)を示すために右側に独立して示されている。素子230、232のそれぞれは、素子内のCITEの数から1を引いた数(n-1)に等しい数の隣接する減衰共振器を含む。例えば、1、2、3の番号が付けられた3つのCITEが電力線上に直列に配置されている場合、CITE1と2の間に1つの減衰共振器が存在し、CITE2と3の間には別の減衰共振器が存在することになる。図6に示される例では、共振器235-1は、例示的な可変CITE素子であるCITE1と2の間に配置され、共振器235-2はCITE2と3の間に配置される。
【0078】
図7は、1つまたは複数のCITEを含む可変CITE素子を設置するためのより多くの場所を含む、図6と同様の別の実施形態の概略図である。例えば、素子240、242、244、246、248、250、252、254は、保護対象コンポーネント100、102の間で電力線104に結合される。再び、可変CITE素子240から254のそれぞれは、1からN個のCITEを含み得る。図7は、可変CITE素子240から252のそれぞれが、CITEの数から1を引いた数(n-1)に等しい数の、隣接する減衰共振器を含むことを示す凡例を有する。図7に示す例では、共振器235-3は例示的な可変CITE素子のCITE1と2の間に現れ、共振器235-4はCITE2と3の間に現れる。図7に示す配置で組み合わせ得る多数のCITEは、有害なEMIによって誘導される任意の信号を放散するために多数の減衰共振器を提供し得る。例えば、電力線上で互いに近接して位置する可変CITE素子240及び242が、それぞれ3つのCITEを含む場合、素子240、242の一般的な位置におけるCITEの総数は6つのCITEとなり、その間に5つの減衰共振器を提供することになる。
【0079】
図8は、CITEが電力線104に沿って3つのグループで配置される、別の実施形態の概略図である。グループ内のCITEは、互いに比較的近接して配置される(例えば、約1センチメートルから10,000センチメートルの間)。この間隔を、以下グループ内間隔と呼ぶ。CITE260、261、及び262が第1のグループを形成する。CITE265、266、及び267は第2のグループを形成する。CITE270、271、及び272は第3のグループを形成する。CITE275、276、277は第4のグループを形成する。前述の3つのCITEのグループのそれぞれは、グループ内間隔と比較してより大きなグループ間距離で、3つのCITEの隣接するグループから離間され得る。グループ内間隔及びグループ間距離は、当業者には知られているように、相対論的速度を達成するために必要な電圧レベルと比較した実際の電圧によって決定される光の速度の一部である、電力線上の誘導信号の速度によって決定される建設的干渉の生成を回避するために選択される。真空での光の速度はナノ秒あたり約1フィートであることに留意する。ここで考えられるタイプの送電線(例えば、線104)では、電磁波の速度は、多くの物理的考慮事項に応じて、1.25から7ナノ秒当たり約1フィート程度遅くなる。送電線上の電磁波の速度低下に基づいて、各CITE間の減衰共振器の間隔を選択すると、各CITE間の減衰共振器の最適な距離が得られる。いくつかの実施形態では、共振器間の間隔は約800フィートから約1200フィートである。しかしながら、この範囲は本質的に単に例示的なものであり、限定的なものではないことが理解されるであろう。このタイプの送電線におけるパルスの伝播はよく知られており、電磁パルス理論の教科書で説明されている。
【0080】
図8は、さらに、グループ内(すなわち、第1のグループの235-5及び235-6、第2のグループの235-8及び235-9、第3のグループの235-11及び235-12、第4のグループの235-14及び235-15)、ならびにグループ間(すなわち、235-7、235-10、235-13)の隣接する減衰共振器を示す。
【0081】
減衰共振器のCITEのペアは、別の減衰共振器のCITEの別のペア内にネストされ得る。例えば、図8では、第1のグループのCITE262及び第2のグループのCITE265は、その間に共振器235-7を画定するが、第1のグループのCITE261と第2のグループのCITE266は、共振器235-7を含む大きな共振器235-15を画定すると考えることができる。前述の方法でCITEをネストすることにより、過渡誘導信号の減衰の程度が増大する。これにより、システムを設計する便利な方法が得られる。システムが保護するように設計されている誘導信号の最大振幅を取得し、それを減衰共振器のCITEのネストされたペアごとの減衰係数で割って、必要なネストされたセットの数を取得する。
【0082】
従来のローパスフィルタとの比較
さらに、本開示のCITEは、従来のローパスフィルタと比較して有用な特性を有する。本開示のCITEは、電気的には、低Q値のローパスフィルタとして説明され得る。Q値はリアクタンスと抵抗の比であり、発振器または共振器の減衰がどの程度であるかを表し、中心周波数に対する共振器の帯域幅を特徴付ける。Q値が高いほど、共振器の蓄積エネルギーに比べてエネルギー損失率が低いことを示し、振動は、よりゆっくりと消える。通常、フィルタは可能な限り高いQ値を有するように設計されるが、本発明は、フィルタによって捕捉されたエネルギーをフィルタによって散逸させるのに最適な構成であるため、特に低いQ値に対して最適化される。さらに、本発明のCITEは、CITEが非共振設計を有し、アクロマティックで動作し、特有で固有の周波数応答曲線を有するという点で、従来のローパスフィルタとは区別される。従来のフィルタが熱として内部にエネルギーを吸収するように設計されているのに対し、CITEは不要なエネルギーの一部を反射するように設計されていることが理解できよう。
【0083】
従来のローパスフィルタは通常、インダクタ、コンデンサ、及び抵抗器を使用してさまざまなタイプの共振回路を形成する。これらのタイプのコンポーネントをさまざまに組み合わせて使用することで、ほぼすべての伝達関数のフィルタを構築できる。このアプローチの問題は、50から60ヘルツで従来のAC電圧と電流で動作する一般的な送電及び配電システムでは、個々のコンポーネントが非常に大きく、扱いにくく、高価になることである。本発明は、インダクタ、コンデンサ、または抵抗器の使用を回避し、代わりに著しく不整合な導電性インピーダンス遷移素子(CITE)と置き換えることによってこの問題を解決する。本開示のCITEは、単に信号の不要な部分を吸収する、インダクタ、コンデンサ及び/または抵抗器の任意の組み合わせで構成される同調共振電子回路の使用とは対照的に、選択的なインピーダンスの不整合を使用して信号の不要な部分の反射を生成するため、従来のローパスフィルタ設計とは区別される。
【0084】
本発明のCITEは、約1メガヘルツ未満の周波数が妨げられずに通過し、より高い周波数が選択的に減衰されるという点で、よりアクロマティックな周波数応答を提供する。従来のフィルタ設計の場合のように成分値を変更する必要がなく、周波数が高くなるほど減衰係数も高くなる。複数の減衰共振器を使用すると、高周波成分の減衰がさらに大きくなる。本明細書で説明する設計方法は、ほぼ階段関数の周波数応答を提供する。
【0085】
ローパスフィルタは、サイズが大きく関連するコンポーネントのコストが大きいため、歴史的に落雷抑制には使用されていないことに留意する。
【0086】
低「Q」、すなわち品質係数が低い(Q<1/2)システムは、過減衰していると言われる。このようなシステムは振動に十分耐えられないが、平衡定常状態出力から外れると、指数関数的減衰によって平衡定常状態出力に戻り、漸近的に定常状態の値に近づく。これは、異なる減衰率を有する2つの減衰指数関数の合計であるインパルス応答を有する。品質係数が減少するにつれて、より遅い減衰モードがより速いモードに比べて強くなり、システムの応答を支配し、結果としてシステムが遅くなる。非常に低い品質係数を有する2次ローパスフィルタは、ほぼ1次のステップ応答を有する。システムの出力は、漸近線に向かってゆっくりと上昇することによってステップ入力に応答する。
【0087】
E1パルスに関連して本発明に適用されるように、トラップされたEMPまたは他の過渡電磁妨害からの不要なエネルギーを減衰共振器(複数可)内で消滅させ、熱として放散させるため、低Q値を有するフィルタが望ましい。E1パルスのパルス幅は通常500ナノ秒未満と非常に短いため、装置のQ値をさらに下げるために複数の減衰共振器を使用することが望ましい。
【0088】
CITEの実施形態
本明細書で説明するように、本システムのコンポーネントの1つは、インピーダンス遷移素子(CITE)であり、通常、好ましくは少なくとも2つのCITEのセットで配置される。
【0089】
したがって、減衰共振器の片面を形成する導電性インピーダンス遷移素子(CITE)は、それが取り囲む電力線よりも直径が大きい導電性ディスクとして実装することができ、導電性ディスクは電力線に電気的に結合される。前述のように、結果として生じる、CITEと電力線の隣接部分との間の直径の差異により、CITEと電力線の隣接部分との間のインピーダンスの不整合の比率の結果として、過渡電磁(誘導)信号の高周波に対して高いVSWRを示す構造が作成される。
【0090】
本開示によるCITEの例示的な一実施形態及びその一部について、図9から図15に関連して説明する。図9は、CITE300の片面の平面図である。CITE300は、全体としてディスク状に形成されており、中央穴302の形状の開口部を有している。CITE300は、第1の(例えば、上部)部分305及び第2の(例えば、下部)部分310が、2つの部分305、310が少なくとも部分的に相互に離間される開位置と、図9に示される閉位置との間で移動できるように、ヒンジ素子315によって結合された、第1の部分305及び第2の部分310から形成される。
【0091】
図9に示すように、CITE300は、図示のようにトロイダル形状を有し得る外周部分と、中間部分と、中央穴302が形成される中央部分とを有する。CITE300が、第1の部分305と第2の部分310によって画定されるため、これらの部分のそれぞれは、外周部分と、中間部分と、中央部分とを有する。したがって、外周部分は、コロナ放電を除去及び/または制御することを目的とする、丸みを帯びた縁を含む。
【0092】
図示の実施形態では、上部コンポーネントは幅が増大した外周部分312を有し、下部コンポーネントは幅が増大した対応する外周部分313を有する。一実施態様では、外周部分312はトーラスの約1/2であり、外周部分313も同様にトーラスの約半分であり、その結果、2つの部分312、313が組み合わされると、CITE300の外周に沿ってほぼトロイダル形状を画定する。換言すれば、これらの部分312、313は丸みを帯びた表面を有する。312及び313の内面は、穴を開けてこれらの素子に含まれる電源導体との電気的接触を増加させるために、テクスチャー加工されているか、または均等なスパイク形状であり得ることに留意する(図9から図11には示されていないが、図12から図15に示されている)。
【0093】
第1の部分305は、外周部分312に対して凹んだ中間部分314を有し、第2の部分310は、外周部分313に対して凹んだ対応する中間部分315を有する。外周部分のトロイダル形状と比較して、中間部分312、314は平面形状であり得、一般に半円形状を有する。
【0094】
第1の部分305は、保護対象コンポーネントに面するCITEの第2の側面に位置する突出締結ハブ316(図9の図ではページの外に延在する)をさらに含み、第2の部分310はCITEの第2の側面に同様に位置する、対応する突出締結ハブ317を含む。図示のように、締結ハブ316、317は、中央穴302の周囲にリップを形成する。締結ハブは、CITEを電力線に確実に結合するために、また、図10から図12を参照して以下でさらに説明するように、上部305及び下部310を互いに確実に固定するために使用される。図9に示す図では、上部コンポーネント305は下部コンポーネント上に設置される。
【0095】
図10に示すように、ヒンジ素子315を介して、上部コンポーネント305は下部コンポーネント310から離れる方向に反時計回りに旋回し得る。旋回すると、上部コンポーネント305と下部コンポーネント310との間に隙間または空間が開く。図示のように、この隙間の開口部は、その周囲にCITEが配置される電力線(ケーブル)を受ける締結ハブ316、317の間に画定される中央開口部へのアクセスを同様に提供する。同様に、図10には、締結ハブ316及び317のそれぞれの足部分321、327を通る隙間穴307及びネジ穴308が示されている。再び図9に戻ると、上部と下部を接合する(枢動を解除する)と、ボア穴307、308が一致し、ネジまたはボルトなどの締結素子を挿入し得る連続穴を形成し、CITEの上部と下部を共に固定する。そのような締結素子を表すために、例示的なネジ頭303が図9に示されている。いくつかの実施形態では、部分321、327は、CITEの上部と下部の締結ハブ間の緊密な結合をさらに確実にするために、追加のネジまたはボルトを受け入れるための追加のボア穴を含み得る。また、リベットを使用してもよく、その場合にはネジ素子を必要としない。さらに図12には、上部コンポーネント305の相補的な接触面(図示せず)に着座する下部コンポーネントの傾斜接触面328が示されている。
【0096】
いくつかの実施形態では、締結ハブ316、317は、CITE300の片側に配置され(すなわち、ディスクの面に対して一方向に垂直に外側に突出する)、複数のCITE300が直列に結合される場合、2つの隣接するCITE300が、突出締結ハブ316、317が隣接するCITE300の反対面に接触するか、または近接するように配置され得るため、締結ハブはスペーサとして機能し得る。したがって、2つの隣接するCITE300が互いに押し付けられて接触すると、締結ハブ部分316、317は、2つの隣接するCITE300間の距離を決定し得る。締結ハブ316、317の長さは、CITEのグループが1つのユニットにまとめられる実施形態において、2つの隣接するCITE300間の距離(ギャップ)を画定するために使用され得る。したがって、第1のCITE300から保護対象電気コンポーネントに向かって移動する伝送された過渡誘導信号は、第1のCITE300から所定の設定距離(突出する内側部分316、317の長さとして画定される)離れた位置にある第2のCITE300に遭遇する。このようにして、直列のCITE300を電力線に沿って制御された間隔で配置し得る。直列に隣接するCITE300間の間隔は均一であり得ることが想定されるが、2つの隣接するCITE300間に少なくとも第1の距離があり、他の2つの隣接するCITE300間に異なる第2の距離があり得るという点で、間隔が不均一であり得ることも理解されよう。CITE300の不均一な間隔は、電力線104に沿って複数の破壊的干渉状態を提供するのに役立つ可能性がある。入射する有害なEMIはさまざまなスペクトル成分を含む可能性があるため、不均一な間隔が存在すると、さまざまな周波数範囲にわたって破壊的干渉を確実にする。
【0097】
いくつかの実施形態では、CITE300の本体は、プラスチックまたはガラス繊維などの軽量材料から作成される。それ自体は絶縁性である、主にそのような材料で構成されたCITEを導電性とするために、例えば、銅、ニッケル、鉄、またはミューメタルの導電性コーティングが、電気メッキ(電流の有無にかかわらず)及び真空蒸着を含むがこれらに限定されない、当業者に知られている技術を使用して外周部分に塗布される。CITEの外周部分への導電性コーティングの密着性を高めるために、形成中にCITEの本体を構成する材料に金属片または粒子が注入され得る。塗布されるコーティングと同じ組成の粒子(例えば、鉄またはニッケル)を使用することが好ましい。あるいは、あまり好ましくない実施形態では(重いため)、CITEの本体全体が、銅、ニッケル、鉄、もしくはミューメタルなどの導電性材料、またはそれらの組み合わせから構成され得る。
【0098】
以下でさらに説明するように、CITEの性能は、CITE314の中間部分の透磁率を増加させることによって改善することができ、中間部分は高透磁率を有する材料でコーティングされ得る。好ましい実施形態では、中間部分は、ミューメタルまたは高純度鉄でコーティングまたはメッキされ得る。別の実施形態では、中間はフェライト材料でコーティングされ得る。
【0099】
図11は、上部及び下部コンポーネント305、310が着座位置から離れる方向に枢動されている図10に示すCITEのヒンジ端面図である。この図では、上部コンポーネントの底面322がギザギザの輪郭を有し、下部コンポーネントの上面324が上部コンポーネントの底面と協働して係合するように適合された相補的なギザギザの輪郭を有することが分かる。しかしながら、表面322、324は面一には係合しておらず、CITE内に内側に延びるノッチ325が残る。
【0100】
図12は、わずかに枢動した位置にあるCITE300の斜視図であり、締結ハブ316、317をより明確に示している。締結ハブ316は、半円形のリップ部分319と、足部の長方形の「足」部分321とを含む。同様に、締結ハブ317は、半円形のリップ部分323及び長方形の足部分327を含む。各締結ハブの「足」部分321a、327aは、図9及び図10に示す締結機構とは異なる締結機構を有する。この実施形態では、(締結ハブ316の)足部分321aの底面は、締結ハブ317の足部分327bのレセプタクル345内に配置された対応する歯に対して所定の位置に屈曲してスナップする能力を有する可撓性の歯を含むラチェット素子343を含む。このラチェット式ファスナに使用される製造方法及び材料特性は、当業者には既知である。CITEが閉じられ、ラチェット素子343がレセプタクル345に入るとき、上部305と下部310は所定の位置に共に固定される。また、図12には、上部コンポーネント305の相補的な接触面(図示せず)に着座する下部コンポーネントの傾斜接触面328が示されている。
【0101】
締結ハブの半円形部分319、323の内面は、鋭い切開素子341(まとめて識別される)を含む。切開素子は、CITEが取り付けられ、締結ハブ316、317が電力線の周りで閉じるときに、電力線の外面に切り込むように適合されている。電力線に切り込むことにより、CITEと電力線の間の安定した安全な導電性接続が確保される。切開素子341は、図示のようなスパイク様のピラミッド形状、または当業者に知られている切開素子の機能的目的をサポートする他の形状に形成され得る。使用される個々の切開素子の数とサイズは、電力線の既知の特性に基づいて変更され得る。
【0102】
アーク放電を防ぐために、CITE内のすべての接合部及びCITEと電力線の間の界面に導電性ペーストが塗布される。例えば、電力線に設置する際、OregonのLake OswegoのCool Amp ConductoLube Co.によって製造されたConductoLubeなどの導電性ペースト、または同等品が、表面328及び上部コンポーネント305、及び下部コンポーネント310の間の他のすべての界面に塗布され得る。図示の実施形態では、ヒンジ素子でのアーク放電も防止するために、導電性ペーストが同様にヒンジ表面322、324に塗布される。CITEが電力線の周囲に取り付けられ、電力線がCITEの中央穴302内に配置されると、中央穴の縁の周囲に導電性ペーストを塗布して、CITEと電力線との間の均一な導電接続を確保し得る。
【0103】
図13はCITEの下部コンポーネント310の斜視図であり、図14は上部コンポーネント310の斜視図である。図13及び図14のコンポーネント図は、上部コンポーネントと下部コンポーネントが接続される傾斜接触面328、329をより明確に示している。表面328、329の両方は不連続であり、中央で途切れており、中央穴302が設けられている。図15は、図11の軸15-15に沿った縦断面図である。図15は、上部及び下部コンポーネントのそれぞれのヒンジ素子315以外の、外側部分312、313の大部分が中空であり、これがCITEの重量及びコストの削減に役立つことを示している。
【0104】
したがって、CITE300の構造は、その構造を容易に開いてケーブルを受け入れることができ、その後、上部コンポーネント305及び下部コンポーネント310を密閉して閉じることによってケーブルが捕捉され、それによってCITE300がケーブルに確実に結合される。
【0105】
図28A及び図28Bに示すCITE1300のもう一つの実施形態では、CITEの上部コンポーネントが、図9から図16に示される実施形態の上部コンポーネントと同様に、コンポーネントの底面から突出する舌素子355を有する。下部コンポーネントは、確実な電気接触を達成するために、わずかな公差で舌素子をしっかりと受け入れるサイズの相補的な溝357を含む。舌部と溝部のペアは、締結ハブと共に、CITEを電力線に取り付けた後、上部コンポーネント及び下部コンポーネントを共に固定するのに役立つ。
【0106】
図16は、本開示によるCITEの別の実施形態の斜視図である。CITE600は、ヒンジ素子に取り付けられていない上部605及び下部610を含む。図示の実施形態では、部分605の締結ハブ616は、cite602を通る中央穴の周囲に縁を形成する半円形のリップ621と、半円形のリップ621の両側に位置する2つの足部623、624を含む。同様に、部分610の締結ハブ617は、中央穴602の周りに配置された半円形のリップ631と、2つの足部633、634を含む。上部の足部623は下部の足部633に結合し、上部の足部624は下部の足部634に結合して、上部と下部を互いに固定する。好ましい実施形態では、一致するネジ付きボア穴が部分623/633及び624/634に穿設され、ネジ、ボルト、リベットまたは同様の締結素子が一致する部分を貫通し確実に結合できるようにする。電力線に取り付ける際、上部と下部の間の界面全体に導電性ペーストが塗布され、部分間の隙間でのアーク放電を防ぐ。
【0107】
一方、図9から図16に示す実施形態では、CITEの断面形状は円形であるが、使用される1つまたは複数のCITEは、楕円形、多角形、及び不均一(例えば、非対称及び/または不規則)を含む他の形状を有し得る。このようなすべての実施形態において、CITEの断面寸法は、CITEが取り付けられる電力線の直径よりも大きく、円形のCITEの場合と同様に、意図的なインピーダンスの不整合が生じる。
【0108】
信号伝達目的でのCITE素子の使用
図9から図16に示される実施形態のCITEは、例えば、遠くまで視認できるように高圧送電線の存在を知らせることが有用な空港及びその他の施設において、高圧送電線の存在を知らせるのに有効に適合させ得る。図24に示されるCITE1000の一実施態様では、外周「トーラス」部分1010の壁は、少なくとも部分的に、プラスチックまたはガラス繊維などの透明な材料で作成され得る。トーラス部分は中空であるため、高電場の存在下で蛍光を発するネオンなどのガスで満たされ得る。外周部分1010から発せられる蛍光放射線、例えば1015が示されている。このようなガスが充填された透明(または部分的に透明)なトーラスを含むCITEが高圧送電線に取り付けられると、電力線によって生成される電場によってガスが蛍光を発する。この蛍光により、CITEが遠くからでも視認できるようになり、CITEが取り付けられている高電圧電力線の存在を知らせる。
【0109】
ガス放電発光の通常の成分が存在する必要があることに留意する。したがって、好ましくはネオンまたはアルゴンなどの希ガスである蛍光ガスの純度を維持するために、ゲッターポンプが望ましい。
【0110】
追加のCITEの実施形態
図17は、番号500が付されたインピーダンス遷移素子(CITE)の代替的な実施形態を示す。本明細書で説明されるすべてのCITEと同様に、CITE500は導電性であり、電力線104と導電接触し、電力線104を一周する(取り囲む)。CITE500は、右側に示されるほぼ平坦な面505と、面510から左に向かって傾斜する円錐状の面510とを有する。第1の反射面としての平坦な面505は、直径の急激な変化により、電力線104の隣接部分(面505の右側)のインピーダンスと比較して、急激なインピーダンスの変化を示す。左側の円錐形の面は、電力線104の隣接部分(平坦な面510の左側)のインピーダンスと比較して、より緩やかなインピーダンスの変化を示す。したがって、平坦な面505は、過渡電磁干渉信号を反射するために使用される。先の実施形態と同様に、CITE500は、電力線の寸法(直径)と比較してはるかに大きな直径(寸法)を有する結果として機能する。
【0111】
図18Aから図18Cは、異なる断面形状を有するCITEの実施形態を示す。図18Aは、組み立てられたときに楕円形の断面形状を有する上部705及び下部710を有するCITE701の実施形態を示す。図18Bは、組み立てられたときに多角形(この場合は六角形)の形状を有する上部715及び下部720を有するCITE711の実施形態を示し、図18Cは、組み立てられたときに非対称の断面形状を有する上部725及び下部730を有するCITE712の実施形態を示す。図示の実施形態では、CITE701、711、及び721は、その他の点では、図16に示した実施形態と構造的に同様である(例えば、それぞれ、電力線に取り付けるための中央穴の両側にネジ素子を含む同様の締結ハブを含む)。
【0112】
上述のように、ガラス繊維またはプラスチックなどの軽量素子からCITEを形成し、導電性と高い透磁率を有する材料でCITEをコーティングすることが実用的である。好ましい実施形態では、CITEの外側「トーラス」部分は、電気メッキまたは真空蒸着を使用して、銅、ニッケル、高純度鉄またはミューメタルなどの導電性金属でコーティングされ得る。CITEの中間部分は、非常に高い透磁率を有するミューメタルでメッキされ得る。中央部分は外側トーラス部分よりも表面積が小さいため、適用されるミューメタルまたは高純度鉄の体積が減り、透磁率を大幅に向上させながら全体のコストを削減する。いくつかの実施形態では、ミューメタルまたは鉄はCITEの片面のみにコーティングされるが、他の実施形態では両面がコーティングされる。ミューメタルまたは鉄を追加すると、はるかに小さいCITE構造(すなわち、直径がより小さい)を使用して、同程度のE1パルスの減衰を得ることができる。
【0113】
さらに、磁気シールドの性能は、高透磁率材料と低透磁率材料の交互層でシールドを構成することによって改善され得る。改善の程度は、使用される材料の比透磁率、厚さ、間隔などを含む多くの要因に依存する。追加の実施形態では、CITEは、その両側に対称的に配置されたミューメタルまたは高純度鉄の層を追加し、高-低-高(HLH)透磁率の断面を有する「サンドイッチ」構造を生成することによって構築され得る。図32は、そのような「サンドイッチ」構造を有する側面の実施形態を示す。図示のように、CITE1400は、CITEの第1の側面の表面にコーティングされた第1のミューメタルまたは高純度鉄層1410と、CITEの第2の側面の表面にコーティングされた第2のミューメタルまたは高純度鉄層1420とを有する。追加の層を追加することも可能だが、実用的な目的では、3層のCITEの設計が好ましい。
【0114】
他の実施態様では、全体的または部分的にフェライトコンポーネントからCITEを形成することが実用的である。フェライトの使用には、物理的サイズの縮小及びQ値の低下など、多くの利点があるが、コストは増加する。図21は、電力線104上の同軸上に配置されたフェライトビーズの形態の導電性インピーダンス遷移素子(CITE)の別の実施形態を示す。フェライトビーズのCITE570の形状と電磁特性により、電力線上の外部の有害なEMIによって誘導される比較的高い周波数の信号を減衰させ、さらに高周波無線干渉(RFI)電子ノイズを減衰させる、高周波信号に対して比較的高いインピーダンスが得られる。これらのエネルギー源からのエネルギーは、電力線104に沿って誘導信号源に向かって反射されるか、電力線に沿って低レベルの熱として放散される。極端な場合にのみ、熱が顕著になる。フェライトはエネルギーの一部を反射するだけでなく、エネルギーも吸収することに留意する。
【0115】
CITEは通常、エネルギーを放散しないが、その代わりに、過渡電磁干渉信号の比較的高い周波数の流れを妨げるリアクタンスを生成する。このリアクタンスは一般に単にインピーダンスと呼ばれるが、インピーダンスは抵抗とリアクタンスを任意に組み合わせたものになり得る。フェライトは磁場を集中させ、インピーダンスを増加させ、したがってリアクタンスを増加させ、高周波信号を妨害または「除去」する。フェライトビーズは通常、既存の電力線への取り付けを容易にする分割構成で製造される。
【0116】
フェライトコンポーネントがそのように設計されている場合、フェライト自体の抵抗加熱の形で追加の損失が発生し得る。インダクタのQ値は、特定の周波数におけるリアクタンスと抵抗の比である。フェライトインダクタのQ値が低い場合、抵抗が比較的高いため、抵抗加熱を受けやすくなる。用途に応じて、フェライトの抵抗損失特性が望ましい場合と望ましくない場合がある。(電気コンポーネントを過渡電磁干渉信号から保護することに加えて)ノイズフィルタリングを向上させるためにフェライトビーズを使用するフェライトCITEの設計では、フェライトCITEを含む回路の特定の特性と、ブロックする周波数範囲も考慮する必要がある。フェライト材料が異なれば、周波数に関する特性も異なる。当業者であれば、製造業者の資料が周波数範囲に対して最も効果的な材料を選択するのに役立ち得ることが理解されよう。2つ以上の異なるフェライト組成からなるフェライト構造を利用して、CITEの反射特性と吸収特性の両方を最適化し得ることに留意されたい。2つ以上のフェライトコンポーネントを組み合わせるさまざまな方法が当業者には知られているであろう。
【0117】
当業者には知られているように、フェライトの透磁率は、使用される特定のフェライト混合物に依存する。一般に、フェライトの透磁率は1500から3000(相対)の範囲である。同じ相対スケールで80,000から100,000の範囲の透磁率を持つミューメタル(ニッケル75%から80%、バランスは特定の合金に依存)など、実質的に高い透磁率を有する材料が使用される場合、少なくとも同等の透磁率特性を有しながら、CITEのサイズを縮小し得る。したがって、上述のように、ミューメタルを追加すると、はるかに小さなCITE構造を使用して、同じ程度のE1パルスの減衰を得ることができる。いくつかの実施形態では、縮小サイズのCITEは、CITEの片面の表面上にコーティングされたミューメタルの層を含み得る。
【0118】
ミューメタルまたは高純度鉄を使用する実施形態では、ミューメタルまたは高純度鉄とアルミニウムとの間に導電性結合を形成する必要がある。これは、導電性エポキシ接着、はんだ付け、ろう付け、圧力(摩擦)による接着などを含むがこれらに限定されない、多くの手段によって実現され得る。
【0119】
さらに、CITEの一方の側からミューメタルまたは高純度鉄を中心線を横切って延在させて、装置の反対側のミューメタルまたは高純度鉄と重なるようにし、電気的に接続することが望ましい。これにより、磁気特性が、ギャップを有するリングではなく、磁気特性の連続したリングであることを確実にする。ギャップを有する設計を使用する場合、ギャップはアーク放電を防ぐのに十分な広さである必要がある。そのギャップの寸法は、CITEが動作するように設計されている動作電圧によって決まる。
【0120】
当業者には知られているように、最適な動作のためには、ミューメタルまたは高純度鉄の製造後、水素で焼成し、アニールする必要があることに留意されたい。
【0121】
導電性インピーダンス遷移素子(CITE)の形状に関係なく、反射された過渡電磁干渉信号の減衰を大きくするために複数のCITEのペアが使用され得ることに留意することが重要である。このインピーダンス遷移素子の複数のペアは、本発明の好ましい実施形態を構成する。さらに、インピーダンス遷移素子は、アーク、コロナ放電、及び電気的短絡の形成を防止または最小限に抑えるための、適切な高電圧工学の実行と一致するように設計及び形成されることに留意されたい。これらの形状は、高電圧技術の当業者にはよく知られている。
【0122】
導電性インピーダンス遷移素子(CITE)は、さまざまな方法で製造され得る単純な物理構造を有する。これらの方法は、機械加工、鋳造、ダイカスト、射出成形、鍛造、スタンピング、ロストワックス鋳造、粉末冶金及び焼結、3D積層造形、ジェット水流によるプロファイリング、レーザーによるプロファイリングなど、及びこれらの方法の組み合わせを含むが、これらに限定されない。さらに、CITEは、外周に取り付けられたコロナ防止リングを含むディスクや、中央に取り付けられたクランプ機構などの構成部品から組み立てられ得る。選択される特定の方法(複数可)は、当業者にとってありふれたものであり、通常は、所定の期間にわたって必要な数の装置を製造するための最も費用効果の高い方法(複数可)、及び、メーカーが利用できる製造プロセスに基づくものである。
【0123】
多くの実施態様では、CITEは上部コンポーネント及び下部コンポーネントから組み立てられ、それぞれが別々に製造される。他の実施形態では、CITEは、縦断面からの製造を含む他の方法で製造され得る。図22A及び図22Bは、2つの縦断面からCITEを組み立てる方法を示す平面図である。図22Aは、ディスク状の第1の部分805の正面図を示す。図示されている部分の前面は、「断面の平面」を画定する。第1の部分は、ディスクの外周から中心に延在するスロット808を有する。スロット808の直径は、図示のように電力線804がスロット内に受け入れられるように設定される。取り外し可能なブラケット815が、部分805の中央のスロット808の内端の下に配置されて示されている。ブラケットは、ネジまたはボルトなどのネジ素子817、818を受け入れるための隙間穴を含む。部分805キャブの背面は、部分の平面(図22Aには図示せず)に対して垂直に、横方向に延びるネジまたはボルトなどの締結具を受け入れるための追加の締結素子(例えば、穴)を含む。
【0124】
図22Bは、相補的なディスク形状の第2の部分820の背面図である。第2の部分820は、CITEを組み立てるために部分805に適合するように設計されている。第2の部分820は、電力線804を受け入れるために、部分805のスロット808と同様の形状のスロット822を含む。上部のブラケット815と相補的なブラケット825が、スロット822の内端の上に示されている。ブラケット825は、第1の部分の相補的なブラケット815のネジ素子817、818を受け入れるように適合したネジ穴827、828を含む。このようにして、第1の部分は、電力線804の周りにしっかりと嵌合するブラケット815、825で第2の部分に固定され得る。さらに、第2の部分の表面は、追加の締結素子を受け入れるためのネジ穴、例えば831、832を含み得る。このようにして、各部分は、第1及び第2の部分を部分の平面内に固定する相補的なブラケット815、825を介して、さらに、第1及び第2の部分を部分の平面に対して横方向に沿って固定する追加の締結素子を介して、互いに固定され得る。
【0125】
図23に示すように、別の実施形態では、CITE900が、電力線904の直径よりも大きな直径を有する球体905の形状に形成される。これはCITEにとって好ましい形式ではないが、球体はさらに、入射する有害なEMIの反射を引き起こすインピーダンスの不整合を提供する。
【0126】
さらに、本発明のCITEは、既存の電力線にクランプする単純な構造を含む。これらはアクティブな電子回路を持たず、事実上あらゆる運用シナリオで損傷または劣化する可能性のある内部コンポーネントも含んでいない。
【0127】
さらに、物理的に単純な設計による機能として、インピーダンス遷移素子は容易に大量生産され得る。したがって、減衰共振器を形成するCITEのペアのコストは、他のソリューションのコストのほんの一部で済む。さらに、CITEは通電中の電力線に簡単に設置できるように設計され得るため、他の技術と比較して設置時間とコストを大幅に削減できる。電力線を介した電力供給が中断されないため、節約は特に顕著になる。
【0128】
吸収体素子
上述のCITE素子は導電性であり、入射する有害なEMIのエネルギーを吸収しない。図2から図8に示される実施形態では、入射するEMIのエネルギーは電力線に沿って熱として放散される。放散率を高め、電力線が単位時間当たりに放散する必要があるエネルギー量を減らすために、CITE素子と連携して、またはCITE素子に加えて、1つまたは複数の吸収体素子が電力線に取り付けられ得る。吸収体素子は、CITEと同様の方法で形成され得るが、グラフェンなどの抵抗性または半抵抗性(または半導電性)材料から作成される。抵抗性材料は、入射する有害なEMIからのエネルギーを吸収し、電磁エネルギーを熱に変換するように設計される。このようにして発生した熱は、放射冷却または伝導冷却によって、時間の経過と共に環境中に放散される。1つまたは複数の吸収体素子が、電力線に沿って規則的または不規則な間隔で追加され得る。CITEのグループが一緒に組み立てられる一例では、吸収体素子は各アセンブリに追加され得るか、各アセンブリに隣接して配置され得る。これは一例にすぎず、追加の熱放散能力を提供するという目的に応じて、吸収体素子がさまざまな数及び構成で追加され得ることが当業者には容易に理解されよう。
【0129】
吸収体素子は、別個のスタンドアロン素子であってもよく、または、いくつかの実施形態では、吸収体素子は、CITE素子の一部として統合されてもよい。別個の吸収体素子と統合された吸収体素子とを組み合わせて使用することもできる。図25Aから図25Cは、ディスクの中央部分が異なる材料で作成されたディスク素子を示している。図25Aでは、中央部分1025が、吸収体素子として機能するグラフェンなどの抵抗性材料または半導電性材料から作成される。図25Bでは、中央部分1035がアルミニウムなどの金属から作成される。この実施形態は、図9から図16を参照して上述したCITEと同様である。図25Cは、中央部分1045が、入射する有害なEMIの反射体及び吸収体の両方として機能し得るフェライト系材料から作成されるディスク素子を示している。
【0130】
一体化されたCITE/吸収体素子の別の実施形態が、図26A及び図26Bに示されている。この実施形態では、CITE1105の片面は導電性の中央部分1115を含み、CITE1110の反対側の面はその中央部分1120素子に吸収性材料(抵抗性または半導電性)を含む。CITEアセンブリが、入射信号の不要な高周波成分の最大限の抑制を達成するために、(図8に示されるような)CITEのアレイにおける導電性材料、吸収性材料、及びフェライト系材料のさまざまな組み合わせで構成され得ることに留意されたい。
【0131】
同相の隣接する電力ケーブルの実施形態
多くの高電圧電力線設備は、複数の平行の位相線のセットを有する。このような設備では、電力線の各セットの複数の位相は、通常はフィート単位で測定される相互の距離を置いて配置されるが、同相の平行電力線は、通常はインチ単位で測定される距離で、互いに非常に近くに配置される。換言すれば、相間の導体間隔は、同相の導体の間隔よりも一桁大きい。これは、同相の隣接する電力線が同じ電圧であるため、それらの間隔をかなり近づけることができるという事実による。実際の間隔は、直径及びその他の要因など、電力線の特性によって異なる。いくつかの実施形態では、同位相の隣接する電力線のセット間の距離は、例えば、2インチから36インチであってもよく、より典型的には6インチから12インチ離れていてもよい。一般に、平行な電力線はすべて同じ直径を有する。
【0132】
図29Aは、同相の2つの隣接する平行電力線に、有害なEMIに対する保護を提供するように特に適合されたCITEの一例を示す。当業者であれば、図示の実施形態が、2つより多い別個の隣接する平行な電力線のセットを有する設備に延長され得ることを理解するであろう(その一例を図31に示し、以下で説明する)。図29Aに示される実施形態では、電力線が互いに水平方向に隣接するように示されている。これは考えられる配置の1つであるが、隣接する電力線は、平行を保ち、他の相の電力線に近づきすぎない限り、互いに対して任意の角度または向きに設定され得る。図29Aに戻ると、CITE1150は、上部1155及び下部1160を含む。上部1155は上部中央ハブ1157を含み、下部1160は下部中央ハブ1162を含む。図示の実施形態では、上部中央ハブ部分1157は2つの弓形半円筒形ノッチを含み、下部中央ハブ部分1162は相補的な弓形半円筒形ノッチを含む。識別できるように、上部1155及び下部1160が組み立てられると、上部及び下部の中央ハブのノッチが結合して、隣接する平行電力線を受け入れ得る2つの中央穴1171、1172を形成する。切開素子、例えば1174、1175が、穴1171、1172の内面に配置される。
【0133】
図29Bは、上部及び下部の中央ハブ157、162ならびに中央穴1171、1172の拡大図を示す。図29Bでは、中央穴1171、1172間の最近接距離(D)が示されている。上述のように、距離(D)は電力線の設置によって決定され、2インチから36インチの範囲になり得る。したがって、複数の隣接する電力線に対するCITE1150のハブ領域は、通常、単一の電力線のためのCITEの実施形態よりも大きい。より大きなハブに対応するために、CITEの直径もそれに応じて大きくなり得る。他の実施形態と同様に、CITE1150は、アルミニウムまたは銅などの金属を使用して作成され得る。CITEはフェライト材料を含んでもよく、いくつかの実施態様では、上述のように吸収体素子を含み得る。
【0134】
図30は、二相線用のCITE1150の斜視図である。図30は、わずかに開いた位置にあるCITEを示し、この位置では、CITEは平行電力線を中央穴1171、1172に挿入して、平行電力線に設置され得る。この図は、CITEの上部1155と下部1160を相互に固定するためのラチェットロック機構も明確に示す。図示の実施形態では、ロック機構は、歯を含むラチェット素子1180と、ラチェット素子を確実に受け入れるように適合された対応する輪郭を含む対応するレセプタクル1182とを備える。上述の、図9から図28Eに示される単一の電力線に適合した設計の態様は、さらに、同相の複数の隣接する平行電力線に取り付けるように適合し得る点に留意されたい。例えば、複数の線に適合したCITEはヒンジを含み得、図30に示す機構とは異なるロック機構を使用し得る。
【0135】
図31は、三相線に適合したCITE1200の実施形態の別の正面平面図であり、中央ハブ及び切開要素なしで示されている。CITE1200は、上部1205及び下部1210を含む。上部及び下部は両方とも、弓形の外周と平面の面取りされた縁部(図12に示すように)を含む、図示のような半円形の形状であることが好ましい。上部1205は、平面縁部から現れる2つの弓形ノッチ1207を含む。この例示的な実施形態では、下部1210は上部の正確な鏡像ではない。特に、下部の平面縁部は、平面縁部の広い側面と、下部の外周に向かう狭い側面とを有する中央多角形ノッチ1212によって変形される。図示の実施形態では、多角形ノッチは台形であるが、多角形ノッチは非対称または対称の他の形状に形成され得る。多角形ノッチの狭い縁部は、中央弓形ノッチ1214をさらに含む。下部の多角形ノッチ1212は、下部の平面縁部上に位置する広い縁部と、下部の多角形ノッチの狭い縁部上に位置する狭い縁部を有する、対応する形状の多角形インサート1220で塞がれる。多角形インサート1220の幅広部分は、上部のそれぞれの作動ノッチ1207及び1209と位置が一致して嵌合する2つのさらに弓形のノッチを有する。多角形インサートの狭い縁部の弓形ノッチ1226は、下部の弓形ノッチ1214と位置が一致して嵌合する。多角形インサート1220と、上部及び下部の縁部の機械表面は、さねはぎ機構または他の嵌合素子を用いて機械加工することができ、多角形インサートは多角形ノッチ1212内に位置決めされると所定の位置に固定され、電力線導体の軸に沿ってインサートのあらゆる動きが妨げられる。多角形のインサート及び関連するノッチは、下部ではなく上部にあってもよいことにも留意されたい。
【0136】
識別できるように、対応する弓形ノッチ1207/1222、1209/1224、及び1226/1214は、同相の電力線を設置し得る穴を形成する。CITE1200の設置中、電力線は下部のノッチ1214に取り付けられ得る。次に、多角形インサート1220がこの電力線の上に配置され得る。追加の電力線をインサートのノッチ1222、1224上に配置することができ、上部は追加の電力線の上に配置することができる。これらの部分は、上述の実施形態で説明した締結具を使用して固定され得る。さらに、弓形ノッチは、上述したような切開素子を含み得る。導電性ペーストを使用して、多角形インサート1220をCITEの下部1210に接合する縁部をシールする必要がある。特定の実施形態では(図31には示されていない)、CITEの上部及び下部は、(例えば、図10に示すように)ヒンジで連結され得る。
【0137】
地中電力ケーブルのインピーダンスの不整合
上記の実施形態は、露出した地上の電力線に関する。特に大都市圏では、かなりの数の電力線が露出せずに地下を通っている。地下ケーブルにインピーダンスの不整合素子を設けて、それに取り付けられた電気及び電子コンポーネントの保護を提供することが有用であろう。図27A及び図27Bは、それぞれ、本開示による、インピーダンスの周期的変化を有する同軸電力ケーブル1200の軸方向断面図及び縦断面図である。ケーブルは、1つまたは複数の導電性ワイヤを有するコア1205、コアを取り囲む半導電層1210、導電性シールド層1215、及びシールド層を取り囲む絶縁層1220を含む。図27Bに示すように、半導体層110は、インピーダンスの周期的変化(差動)に対応する容量の周期的変化を有する。例えば、領域1232及び1234は、それぞれの隣接する領域1233及び1235と比較して高い抵抗を有する。
【0138】
差動インピーダンスの隣接領域は、地上の電力線に沿った誘導信号がCITE素子によって反射されるのと同様の方法で、受信した有害なEMIが反射されるインピーダンスの不整合境界面を生成する。
【0139】
半導体層のインピーダンスの変動を実現するにはいくつかの方法があることに留意されたい。これらは、半導体層の組成の導電率の変動、半導体層の厚さの変動、及び同軸タイプのケーブルの製造における当業者には明らかなその他の変更を含むが、これらに限定されない。
【0140】
当業者には明らかなように、本明細書に記載のCITEは、電力会社が有害なEMIから保護するために使用する、真空管装置などの他の保護手段と組み合わせて使用され得るが、これらに限定されない。
【0141】
特許請求の範囲は、本明細書に記載の好ましい実施形態及び実施例によって限定されるべきではなく、全体として記載された説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。当業者には、本明細書の範囲内に含まれる多くの可能な変形が存在することが明らかであろう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25A
図25B
図25C
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図30
図31
図32
【国際調査報告】