(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】プッシュボタン
(51)【国際特許分類】
G05G 1/02 20060101AFI20240315BHJP
F16H 25/16 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
G05G1/02 B
F16H25/16 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558165
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 US2022021348
(87)【国際公開番号】W WO2022204148
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518030139
【氏名又は名称】ペン エンジニアリング アンド マニュファクチュアリング コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PENN ENGINEERING & MANUFACTURING CORP.
【住所又は居所原語表記】5190 Old Easton Road,Danboro,PA 18916 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブランク,ジョナサン
【テーマコード(参考)】
3J062
3J070
【Fターム(参考)】
3J062AB31
3J062AC07
3J062BA16
3J062CC16
3J062CC22
3J062CG84
3J070AA07
3J070BA65
3J070CB40
3J070CC12
3J070DA70
(57)【要約】
【構成】
プッシュボタンの構成部材はプランジャー、バネおよび端部キャップである。プランジャーは上部にボタンを、拡大径の正方形横断面をもつ中間部を、そして下端部に縮径ピンを有する。プランジャーは、プランジャーの上部においてボタンを密接状態で保持し、かつプランジャーの正方形中間部を受け取るサイズの直線状凹部を有するリテーナ内を上下にスライドする。リテーナの中間部は上下を対向するルーフ面およびフロア面によって上下を仕切られた円筒形の拡大キャビティを有する。これらルーフ面およびフロア面はプランジャー中間部の角部に係合し、プランジャーの上下スライド時にこの中間部を回転させるカムを有する。リテーナ内に設けたバネによってプランジャーが上向きに偏倚する。これら部材を有する装置はリテーナの端部キャップによって保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部、下端部、およびこの上端部から下端部まで延在する軸方向のボアを有するリテーナであって、このリテーナは、
正方形の横断面を有する軸方向に延在する凹部および最上端に小径穴のカラーを有する上側部分、および、
上部のルーフ部分および下部のフロア部分によって仕切られた中心キャビティであって、このルーフ部分に第1セットのカムを設け、かつ前記フロア部分に第2セットのカムを設けた、大径に拡げた前記中心キャビティ、
を有し、そして、
軸方向の前進位置と後退位置との間でスライドできる状態で、このリテーナの前記ボアに密接して受け入れられるプランジャーが在り、
このプランジャーは、遠位した上側端部にあるボタン部分、遠位した下側端部にあるピン、およびこれら上側端部および下側端部の間に位置する横断面が正方形に拡大した中間部分を有し、
このプランジャーは、前記後退位置および前記前進位置間の移動時に前記カムにこのプランジャーの前記中間部分の角部が作用することによって、回転して、
さらに、
前記プランジャーを前記リテーナ内部に取り込むために、このリテーナの前記下端部に取り付けた端部キャップ、および
前記プランジャーおよび前記端部キャップの間で作動して、前記プランジャーを前記リテーナの上部に向けて上向きに押し出すバネ、
を有することを特徴とするプッシュボタンの装置。
【請求項2】
前記プランジャーの第1の上向き動作時に、前記プランジャーの前記中間部分が前記カラーに当接したさいにプランジャーを停止し、前記リテーナ内に前記プランジャーの安定な後退位置を確保するように構成した請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の上向き動作後の前記プランジャーの次の上向き動作時に、前記リテーナの前記中心キャビティの前記ルーフ部分によって前記プランジャーを停止させて、そして、前記プランジャーの前記ピンが前記リテーナの前記下端部から突き出る前記プランジャーの安定な前進位置を確保する請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記端部キャップの取り付け手段によって前記リテーナの下部に前記端部キャップが取り付けられる請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プランジャーの第1のダウンストローク、およびこれに連続する前記プランジャーの第2のアップストロークによって前記プランジャーの安定な前記前進位置および前記後退位置それぞれを交互に一方から他方に変化させ、このアップストロークおよびダウンストロークがプランジャーサイクルを形成する請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記プランジャーの前記第1のダウンストローク時に前記第2セットのカムが前記プランジャーの中間部分に係合し、かつ前記プランジャーのアップストローク時に前記第1セットのカムが前記プランジャーの前記中間部分に係合する請求項5に記載の装置。
【請求項7】
各セット内の前記カムすべては同じ形状を備え、かつ360度円形アレーが周状に等間隔で離間する請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記プランジャーのボタンをプレスし、次にこれをリリースすることによる前記後退位置および前記前進位置の変更により、前記プランジャーの安定位置を変える請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記プランジャーの軸方向の上昇および下降の各サイクルにおいて、同一回転方向に前記プランジャーに回転力を印加するように前記カムのセットを配向して、前記プランジャーにおける回転位置の移動が付加されるようにした請求項5に記載の装置。
【請求項10】
ブローチングで前記リテーナに前記端部キャップを取り付ける請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1セットのカムおよび前記第2セットのカムを22.5度の角度で相互に半径方向にオフセットする請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記カムが前記プランジャーの前記中間部分の角部のみに係合する請求項6に記載の装置。
【請求項13】
前記プランジャーのサイクルの各々が、前記プランジャーを45度回転する請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記端部キャップが前記プッシュボタンの装置を対象物に取り付ける外部取り付け手段を有する請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記第2セットのカムを有するカムリングの挿入体を支持する前記端部キャップの上面が前記中心キャビティの前記フロア部分になる請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記カムリングの挿入体が前記リテーナの下端部の座ぐり穴を占有するものであり、前記プッシュボタンの装置の組み込み時に、この挿入体が前記リテーナの座ぐり穴に挿入される請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記カムリングの挿入体の周囲に、前記座ぐり穴内の対応するキー溝を占有する半径方向外向きに延在するキーを有する請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記挿入体が前記中間面に対して対称的になるように前記カムリングの挿入体の上面および下面に前記カムが位置する請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記端部キャップと前記座ぐり穴の上部にあるカラーとの間において、前記カムリングの挿入体を前記リテーナに取り付ける請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記カムのセットが軸方向に突き出しかつ対向面になる請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年3月22日を出願日とし、“プッシュボタン”を発明の名称とする仮特許出願第63/164,140号の優先権を主張するPCT特許出願である。
【0002】
本発明は機械式アクチュエータとして用いられる手動式プッシュボタンに関する。より具体的には、本発明は中心プランジャーを安定な前進位置と後退位置との間で作動させる交互作動機構を利用するプッシュボタンに関する。
【背景技術】
【0003】
前進位置と後退位置との間で中心プランジャーを作動させる交互作動機構を備えたプッシュボタンは特に筆記用具、ドアラッチハードウェア、スイッチ作動や油圧面作動を始めとする各種の用途で利用されている。場合にもよるが、特にペン筆記用具の分野では、プランジャーを同じ方向に繰り返しプッシュするさいに、プランジャーは安定な前進位置と後退位置との間を交互に作動する。これについては、“交互作動”と呼ばれることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、これら装置の場合、製造コストが高いか、あるいは強い力を利用する産業用途では耐久性が十分ではない複雑な、あるいは精妙な機構であるため、問題が生じる。従って、厳しい操作環境に対応できる製造コストが低く、かつ耐久性のある構造が簡単な交互作動式プッシュボタン機構が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記需要を満足するために、本出願人は産業適応性の高い交互動作式プッシュボタンを考案した。即ち、本発明のプッシュボタンは最小数の構成部材からなり、各部材が耐久性のある構成を有する。一つの実施態様では、これら構成部材はプランジャー、リテーナ、バネおよび端部キャップのみからなる。プランジャーは三つの部分を有する。上部には平坦な端部を有するため、使用者が装置を押し下げ、これを操作する。中間部は正方形に拡げて大きくした横断面を有し、底部に径の細いピンを有する。作動時には、ピンが実際の用途に応じて必要とする構造に対応して動作する。
【0006】
プランジャーは、3つの主要部を有するリテーナ内で上下にスライドする。プランジャーの上側部分にあるボタンを密接して保持するリテーナの上部は、プランジャーの正方形状の中間部分を受け入れることができる直線状凹部を有する。そして、リテーナの中間部は、プランジャーの拡大した正方形状の中間部分を回転させるために、側部クリアランスを設けて大きく拡げたキャビティを有する。このキャビティは円筒形であり、天井面であるルーフ面に対向して床面であるフロア面によって上下が仕切られている。ルーフおよびフロアをプランジャーの中間部分の角部に係合してこれを回転させるカム作用構造を有する。さらに、リテーナ内部のバネによってプランジャーが上方向に偏倚する。そしてさらに、リテーナの底部に固着した端部キャップがプランジャーおよびバネの組み立て体を係留して、プランジャーのピンを近接して保持する。リテーナの底部端部から延在する端部キャップの軸部が、プッシュボタン装置を支持構造などの物体に固着する固着手段になる。
【0007】
より具体的に説明すると、本出願人は対向する上端部および下端部を有するリテーナを有するプッシュボタン装置を発明した。即ち、径を小さくしたカラーがリテーナの最上部の端部に位置し、正方形の横断面を有する軸方向に伸びる穴(bore:ボア)がカラーから下向きに延在する。凹部は径を大きく拡大した中心キャビティとして拡げてある。このキャビティは床部であるフロア部および天井部であるルーフ部の二つの部位として互いに対向関係になるカムセットを有し、キャビティの上部および底部を形成する。同軸でプランジャーがリテーナのボア(retainer bore:リテーナボア)内をスライドし、安定な位置になる前進位置と後退位置との間を移動できる。プランジャーは円筒形ボタンを有し、このボタンはリテーナの上端から上向きにカラーを通過して突き出ている。プランジャーの遠位部分に当たる底部分にある円筒形ピンは、プランジャーが前進位置にある時には、リテーナの下端部から出ている。プランジャーが大きく拡がる中間部分は、カムがプランジャーの中間部分の角部に作用し、プランジャーの上下往復ストローク毎にプランジャーを同じ回転方向に回転させるために横方向に拡がり正方形状の横断部およびサイズになっている。
【0008】
プランジャーの中間部分は、後退位置にある時に、リテーナ上部の正方形状の凹部に密接して受け入れられるので、プランジャーを後退させることができる。リテーナは下端部に端部キャップを有し、これをリテーナの本体に取り付け、プランジャーをリテーナ内部に取り込む。バネが端部キャップとプランジャーの中間部分との間で作動し、後退位置に向けてプランジャーを上向きに押す。プランジャー中間部分がリテーナのカラーに当接し、後退位置においてはその上向き動作を停止する。この端部キャップは、リテーナに設けたリテーナの座ぐり穴(counterbore:端ぐり、穴ぐり、座ぐり、カウンターボア)に受け入れられる。端部キャップは、リテーナを支持構造体に取り付ける外部取り付け手段を有しており、リテーナの下部から延びるシャンクを有する。
【0009】
リテーナ内の各カムは、プランジャーの中間部分の角部に係合可能な鋭角面を有する。各セットのカムはリテーナの中心キャビティの周囲壁に沿って円状に配置した円形アレー(circular array:円形状に並ぶ)カムを有する。対向するカムの一対のセットは各カムの弧長の半分だけ相互に角度的にオフセットする。各セットのカムについては、鋭く尖った垂直に延在する歯を有するのが好ましい。
【0010】
第2実施態様では、第1実施態様とは別のカムリングの挿入体(cam ring insert:カムリングインサ-ト)を使用して、カムの下側のセットを中心キャビティの床であるフロアに設ける。いずれの実施態様も、前述の実施態様と同じく、プランジャーがリテーナ内で伸長位置および後退位置をとることに変わりはなく、凡そ同じ動作を行う。カムリングの挿入体はリテーナ内に位置させ、端部キャップによって固定する。第1および第2の実施態様で使用するプランジャーの構成は同一である。
【0011】
この別の実施態様では、組み立て中に挿入するカムリングを受け入れるリテーナの内部構造が異なっている。この挿入のために、リテーナボアの底部には挿入体が入るように径を拡大した座ぐり穴が設けられている。この座ぐり穴にカムリングに噛み合うキー溝があるので、このリングは径方向で適切な向きになる。この挿入するリングは上側および下側のカムのセットがその中間平面で対称であり、互いの面合わせはたいへん容易に組み合わせできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施態様を図示する添付図面および記載から、当業者ならば、前記需要を満足し、かつ堅固な上に耐久性のあるプッシュボタンを本発明が提供できることを理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図8】
図8は前進位置を示す正面立面断面図である。
【
図9】
図9は後退位置を示す正面立面断面図である。
【
図10】
図10は第2実施態様を示す正面断面の立面図である。
【
図12】
図12は第2実施態様のカムリング構成部材を上から見た平面図である。
【
図14】
図14は第2実施態様に係る組立状態のプッシュボタン装置を示す立面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して行う以下の記載では、相互参照を容易にするため、またある図面に示す各要素に個々に言及する必要をなくすため、異なる図面に示す同じ要素については同じ参照符号で示す。以下に示す実施態様の場合、円形本体内の中心軸に対して回転対称であるが、円形ではない外面を備えた本体も適用可能である。
【0015】
図1に本発明の一実施態様を示す。図示する本発明のプッシュボタン10は全体として円筒形のリテーナ(保持部材)13、同軸プランジャー11、および端部キャップ15を有する。
図8および
図9に示す内部バネを使用して組立を終える。本発明の一つの作用効果はこれら4つの構成部材のみを必要とするデザインの単純性にある。
【0016】
図2にはプッシュボタンプランジャー11を単体の形で示す。図示のプランジャーは3つの部分、即ち円筒形上部ボタン17、より大きく拡げた正方形の中間部分18、およびプランジャーの作動端部である底部のピン部分19を有する。
【0017】
図3~
図7に、
図1および
図2に示すリテーナ13の細部を示す。いずれも上面断面図、下部断面図および立面断面図に示すように、単体の形で示す。
【0018】
図3、
図4および
図5には、内部カムの上部セットおよび下部セットおよびリテーナの他の細部を明瞭に示してある。
図3を参照して説明すると、このリテーナは、リテーナのカラー20に連なる上部に凹部23があって、この凹部23の上部隅までの横断面が正方形であることが主な特徴になる。本実施態様におけるリテーナは、プッシュボタンの軸線A-Aを中心にして対称性を有する。凹部23は縦長で、断面が正方形である。凹部23はリテーナ13の最上端に径の小さい円形開口21の上端部になるカラー20まで上向きに延在する。凹部23はその上端から下向きに続き、リテーナの中間部分にある円筒形状で径を大きくした中心キャビティ24まで続いている。2つの面が対向する一対のセットになるカム27および29については、それぞれキャビティ24の天井になるルーフおよび床になるフロア上の円形周囲縁にそって設ける。リテーナの底部にある座ぐり穴25が、
図8および
図9に示すように、端部キャップ15を受け入れる。
【0019】
各カムは先の尖った歯として構成し、22.5の角度に等しい各カムの弧長の半分だけリテーナの軸線から相互に角度的にオフセットする。このように構成すると、カムがプランジャーの中間部に作用してこれを回転させる、あるいは捩じって回す。プランジャーが回転するたびに、プランジャーは接触しているカムに整合し、対向するカムセットから角度的にオフセットする。次のプランジャーのストロークで、対向カムがプランジャー中間部の角部のみに接触した時に、さらに22.5度回転する。これは、プランジャーの交互往復ストロークの度に発生する。各プレス/リリースサイクルの一体化した上下ストロークの組み合わせでプランジャーは角度45度で回転する。
【0020】
図6および
図7に、
図4に対応する断面の
図5に示す断面図が示すように、上から見た、そして下から見たカムの中心キャビティのフロアおよびルーフをセットにする構成を示す。上部のルーフ側のカムセット27は4つのカムを有し、そして下部のフロア側のカムセット29は8つのカムを有する。フロア側のセットは等間隔に離間したカムが360度の円形状に並ぶ円形アレーを有する。そして、動作中に各カムはプランジャーの中間部分の角の一つに係合する。また、各カムには、プランジャーの中間部分の角の 1 つと係合する鋭角な面がある。
図7に示すリテーナ13の上部における凹部の開口23はプランジャーの中間部分を密接状態で受け入れて、キャビティのルーフから上向きに延在する構成である。ここでは、開口23のキャビティのルーフ側のカム27に対する関係を示す。各カムはプランジャーの中間部分の長径および短径の境界内に位置するため、プランジャーの中間部分の角部のエッジのみがカムに接触する。各セットの個々のカムは凡そ同じであり、鋭角をなし、尖った尖端を形成する。そして、プランジャーの両垂直方向の各往復ストロークによって、プランジャーに同じ回転方向の回転力を印加させて、これらカムの回転位置が逐次、同一方向の回動を行なうように、カムのセットは配向して配置されている。
【0021】
図8および
図9に本発明のプッシュボタンの安定な前進状態および後退状態を示す。ここで、
図8において、組み立てたプッシュボタン装置の内部構成が縦横断図で示せる。プッシュボタン装置は以下の3つの主特徴をもつ端部キャップによって一体化する。即ち、バネ16の底部を受け取る凹部、端部キャップのブローチング(broaching:穴開け)でリテーナの底部を開ける外部取り付け体、および、端部キャップの遠位側の端部にある軸部(shank:先端軸)への取り付け手段14の3つであり、取り付けパネル(図省略)の穴にプシュボタン装置が取り付けられるクリンチ手段であることを示している。
【0022】
図3~
図7から理解できるように、リテーナの中心キャビティ24はキャビティのフロア9に、そして、キャビティのルーフ12にカム作用を与える構造を有し、これら構造が、ボタンのプレス時に、そしてボタンのリリース時に、カムセット27および29に押圧されるため、捩り力即ちトルクをプランジャー11に印加する。
図6および
図7から理解できるように、これらカムセットはリテーナの円筒形の中心キャビティ24の周囲において対向する垂直方向に向けて配置する。これらカムはプランジャーの軸線から十分離れているため、プランジャーの中間部分18の角部のみに係合する。
【0023】
図8に前進位置にあるプランジャーを示す。プランジャー11を前進位置に置く際に、最初に、プランジャー11はその正方形の中間部分18の角部が中心キャビティのフロアのカム29に押し付けられるまで手動で、あるいは機械的に押し下げてその位置にする。ボタンをリリースするさいには、次にピン11を所定の付加量の回転をさせるキャビティのルーフ上のカムに接触するまでバネ16の力によってプランジャーを上方移動させる。この状態では、プランジャー中間部分18がリテーナの上部にある横断面を正方形状にした凹部との整合から外れ、カム間の中心キャビティのルーフ12に整合した状態で停止する。このように、プランジャー11の端部ピン19がリテーナの端部キャップ15の底部から延びた状態で、プランジャー11がこの前進位置に保持されることになる。プランジャーの位置は、プランジャーの中間部分18の底部に作用するバネ16の力によって安定して維持される。
【0024】
図9を参照して説明を続けると、この図には後退位置にあるプランジャーを示す。
図8に示す前進位置からプランジャーを後退位置にもってくるには、同様にプランジャーを45度ほど再度回転させて、プランジャーのボタン17のプッシュおよびリリースを行えばできる。次にプランジャーを45度回転させ、プランジャーの中間部分18をリテーナの正方形状の凹部23に新たに整合させる。このように構成すると、ボタンのリリース時に、バネ16の力によって、凹部の穴(ボア)内にプランジャーの中間部分が上向きに受け入れられる。これによって、プランジャー11の端部ピン19が端部キャップ15内に後退する。プランジャーのこの動作は、
図3に要素20として示すカラーによって上向き状態で停止する。プランジャー11の完全後退時に、プランジャーのボタンがリテーナの上部からさらに延びるようにカラー20の小さな円形開口は、プランジャーのボタンを受け入れることができる。プランジャー11は、端部キャップ15とプランジャーの中間部分18の下部(底部)との間に作用するバネ16の力によってこの安定な後退位置に保持されることになる。
【0025】
これらの機械的に関係によって、本発明のプッシュボタンは以下に説明するように動作する。プランジャーを連続的にプッシュおよびリリースすると、対向する軸方向の両方のカム作用によって、プランジャーの回転力が同じ回転方向になり、即ち捩れが加わる。プランジャーに加わる各捩じれが22.5度の回転であるため、プッシュおよびリリースの繰り返しサイクル後にプランジャーが上向きに戻ると、プランジャーの回転角度の合計は45度になる。
【0026】
この状態では、プランジャーの正方形状に拡がった中間部分はリテーナの上部凹部に嵌め込んだ整合から外れるため、プランジャーの中間部分の角部が中心キャビティのルーフに当接し、プランジャーがさらに上向きに後退することはない。このため、プッシュボタン装置の前進位置が安定化する。プランジャーを再度プッシュ(depress:押し込)およびリリースすると、交互に作用するフロア側のカムおよびルーフ側のカムがとともに合計45度の回転でプランジャーに作用するため、リテーナの上部の凹部に整合する。この位置では、内部バネの力によってプランジャーが上向きに移動し、リテーナの上部凹部に入り、安定な後退状態になる。
【0027】
図10~
図14に本発明の別な実施態様を示す。まず
図14を参照して説明すると、この第2実施態様では、異なるカムリング35の挿入体を使用して、下部セットのカムを中心キャビティのフロアに設けることができる。なお、本実施態様では、このフロアは端部キャップ36の上面である。両実施態様の動作は、第1実施態様の
図8および
図9に示すように、想定する前進位置および後退位置がリテーナ内部にあるプランジャーと本質的に同じである。
図12および
図13には、カムリングの挿入体(cam ring insert:カムリングインサート)を単体で示し、そのリテーナ34内の位置は
図11および
図14に示す通りである。両実施態様では、同じ構成のプランジャーを使用する。
【0028】
本発明の第2実施態様において、リテーナの内部構成はカムリング35を受け入れる構造が異なる。
図10から理解できるように、リテーナに設けた径の大きな座ぐり穴(カウンターボア)31は下部(底部)にあるため、リングを挿入できる。リテーナ34の座ぐり穴の上部にあるカラー33が、端部キャップと座ぐり穴の上部との間に取り込まれたリングの上面に当接する。リテーナ34は、
図11にも示すようにキー溝40および41を有し、これらがカムリングの周囲から同軸に突き出て嵌め込み整合するカムリングのキー(cam ring key:カムリングキー)を受け入れる。
【0029】
ここで
図11を参照して説明を続けると、カムリング35の真下から見た底部平面断面図であり、図示のように、リングキー37および39はリテーナのボア側壁のリテーナボアキー溝40および41内に位置する。カムの位置および形状によって、最初のリテーナへの組み付け時にプランジャーを受け取る正方形開口を設定する。
【0030】
次に
図12および
図13を参照して説明を続けると、カムリングは2つの半径方向外向きに延在するキー37および39を備え、内向きに突き出るカム32を有する。これらカム32は、プランジャーに対して動作し、第1実施態様と同様にプランジャーを回転させる。しかしながら、このカムは向きの異なる配向である。第1実施態様のような軸方向ではなく、本実施態様では、カムは半径方向内向きに延在する。カム32はリング35の上面および下面に設けられており、リングが中間面において対称である。これによって、上向きかあるいは下向きでリテーナ34に挿入できるリング35になるので、組立プロセスは簡略化される。図示のリングは各面において最小数である2個の操作カムを示しているが、リングは最大8個のカムで構成できる。
【0031】
図14にリテーナ34内に位置するカムリング35を示す。組立時、リングは端部キャップ36の上部と座ぐり穴の上部のカラー33との間に締め付ける。このリテーナはカムリングのキーを受け取るキー溝を有するため、
図11に示すように、リングカムを正確に半径方向に向けた配向にする。端部キャップ36の上面が中心キャビティのフロアになるが、
図1~
図9に示す第1実施態様と同じ取り付け構成を採用することも可能である。リテーナ34の他の構成は同じであり、プランジャー38に対して同様に作用する。
【0032】
図示の実施態様に示す寸法は具体的な用途に応じて変更可能である。例えば、正方形部分の側部長さやプランジャーピンの直径は、必要に応じて任意の寸法に応じて変更可能である。また中心キャビティの上下境界部間の距離も簡単に変更可能であり、プランジャーのピンの寸法長さを決めることによって、ピンはリテーナの端部キャップの底部から突き出すようにできる。なお、座ぐり穴を有する本体の底部領域は、端部キャップがリテーナ本体に穴を開けるために十分な量の材料で、
図8、
図9および
図14に示すようにリテーナ装置が保持できる。また、端部キャップの遠位位置の端部は、受け取り穴をもつパネルなどの支持構造体に取り付けるために適切な取り付け手段を備えることができる。
【0033】
以上本発明の2つの実施態様を説明してきたが、添付図面に例示し、本発明の範囲および精神に包含される各種の変更が可能である。本発明は特許請求の範囲およびその法的な等価事項のみによって定義されるものである。
【符号の説明】
【0034】
9 キャビティのフロア
10 プッシュボタン
11 プランジャー、同軸プランジャー、プッシュボタンプランジャー
12 キャビティのルーフ
13 リテーナ(保持部材)
14 取り付け手段
15 端部キャップ
16 バネ
17 円筒形上部ボタン プランジャーのボタン
18 プランジャーボタン、プランジャー中間部分、プランジャーの中間部分
19 ピン部分、端部ピン、プランジャーの端部ピン
20 保持カラー、リテーナのカラー
21 円形開口
23 凹部、凹部開口、凹部の開口、正方形状の凹部23
24 キャビティ、中心キャビティ
25 座ぐり穴、カウンターボア
27 カム、ルーフカムセット、ルーフ側のカム
29 カム、フロアカムセット、フロア側のカム
31 リテーナに設けた径の大きな座ぐり穴
32 カム
33 カラー
34 リテーナ
35 リング、カムリング
36 端部キャップ
37 キー、リングキー
38 プランジャー
39 キー、リングキー
40 リテーナボアキー溝、キー溝
41 リテーナボアキー溝、キー溝
【国際調査報告】