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特表2024-513356濃厚物質搬送システムの安定性監視機能
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】濃厚物質搬送システムの安定性監視機能
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
E04G21/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558215
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2022057307
(87)【国際公開番号】W WO2022200252
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107141.0
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519044656
【氏名又は名称】プツマイスター エンジニアリング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PUTZMEISTER ENGINEERING GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, アンスガル
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアーネ
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA31
2E172CA44
2E172CA46
(57)【要約】
本発明は、ポンプ周波数を有するダブルピストン型コアポンプ(15)を備える、濃厚物質を搬送するための濃厚物質ポンプ(16)と、ポンプ周波数によって切り替え可能なS字管(24)と、搬送される濃厚物質を分配するための濃厚物質分配マスト(18)と、濃厚物質分配マスト(18)及び濃厚物質ポンプ(16)が配置される下部構造(30)と、少なくとも1つの第1及び第2の時点における少なくとも1つの動作情報を順次検出するセンサユニット(11)と、第1の時点において検出された少なくとも1つの動作情報と、第2の時点において検出された少なくとも1つの動作情報と、ポンプ周波数とに基づいて、濃厚物質搬送システム(10)の安定性パラメータを決定するように設計される処理ユニット(12)と、を備える濃厚物質搬送システム(10)に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃厚物質搬送システム(10)であって、
ポンプ周波数を有するダブルピストンコアポンプ(15)と、前記ポンプ周波数で切り替え可能なS字管(24)と、を備える、濃厚物質を搬送するための濃厚物質ポンプ(16)と、
搬送される前記濃厚物質を分配するための濃厚物質分配マスト(18)であって、前記濃厚物質分配マスト(18)が、少なくとも2本のマストアーム(41)を有する、濃厚物質分配マスト(18)と、
前記濃厚物質分配マスト(18)及び前記濃厚物質ポンプ(16)が配置される下部構造(30)であって、前記下部構造(30)が、水平方向及び/又は鉛直方向に変位可能な少なくとも1本の支持脚(32)によって前記下部構造(30)を支持するための支持構造体(31)を備える、下部構造(30)と、
少なくとも第1及び第2の時点において少なくとも1つの動作情報の項目を順次取り込むセンサユニット(11)と、
前記第1の時点で取り込まれた前記少なくとも1つの動作情報の項目と、前記第2の時点で取り込まれた前記少なくとも1つの動作情報の項目と、前記ポンプ周波数とに応じて、前記濃厚物質搬送システム(10)の安定性パラメータを決定するように構成される処理ユニット(12)と、
を備える、濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項2】
前記センサユニット(11)が、前記ポンプ周波数を取り込むための1つ又は複数のセンサを有し、前記処理ユニット(12)が、前記取り込まれた動作情報の項目及び前記取り込まれたポンプ周波数に応じて前記濃厚物質搬送システム(10)の前記安定性パラメータを決定するようにさらに設計される、請求項1に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項3】
前記第1の時点と前記第2の時点との間の時間間隔が、前記ポンプ周波数に依存する、請求項1又は2に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項4】
前記第2の時点が、前記第1の時点と比較してポンピング期間の半分の持続期間だけシフトされるか、又は遅延する、請求項3に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項5】
前記第1の時点で取り込まれた前記動作情報の項目が、最新の取り込まれた動作情報の項目である、請求項1~4のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項6】
前記処理ユニット(12)が、平均値形成の結果に応じて前記安定性パラメータを決定するようにさらに構成され、前記平均値形成が、前記取り込まれた複数の動作情報の項目に応じて行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項7】
前記処理ユニット(12)が、複数の第1の時点及び複数の第2の時点で取り込まれた動作情報の項目に応じて前記安定性パラメータを決定するようにさらに構成され、前記複数の第2の時点の各々が、前記複数の第1の時点のそれぞれの対応する時点に対してポンピング期間の半分の持続期間だけ遅延する、請求項1~6のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項8】
前記処理ユニット(12)が、前記第1の時点より前の時点で取り込まれた複数の動作情報の項目を少なくとも一時的に格納するようにさらに構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項9】
前記処理ユニット(12)が、最大で1ポンピング期間の持続期間だけ前記第1の時点より遅延する時点で取り込まれた複数の動作情報の項目を格納するようにさらに構成される、請求項8に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項10】
前記センサユニット(11)が、同じセンサによって、少なくとも第1及び第2の時点で順次取り込まれる前記動作情報の項目を記録するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項11】
前記センサユニット(11)が、
前記マストアーム(41)のうちの少なくとも1本の関節トルクと、
前記マストアーム(41)のうちの少なくとも1本のシリンダ力と、
少なくとも1本のマストアーム(41)の傾斜角度と、
マストアーム(41)の少なくとも1つのアクチュエータのアクチュエータ力と、
マストアーム(41)の少なくとも1つのアクチュエータの動作速度と、
前記濃厚物質分配マスト(18)の荷重取付け点における荷重重量と、
旋回ギヤ(19)の回転速度と、
前記濃厚物質搬送システム(10)の傾斜角度と、
前記少なくとも1本の支持脚(32)の水平脚力と、
前記少なくとも1本の支持脚(32)の鉛直脚力と、のうちの1つの特性を示す動作情報の項目を順次記録するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項12】
前記処理ユニット(12)が、すべてのマストアーム(41)の前記関節トルクを示す取り込まれた動作情報の項目に基づいて負荷トルクを計算し、前記計算された負荷トルクに応じて前記安定性パラメータを決定するようにさらに構成される、請求項11に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項13】
前記処理ユニット(12)が、特に異なる種類の取り込まれた複数の動作情報の項目から前記濃厚物質搬送システム(10)の全体的な重心の現在位置を計算し、前記全体的な重心の前記計算された現在位置に応じて前記安定性パラメータを決定するようにさらに構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項14】
前記濃厚物質搬送システム(10)の前記決定された安定性パラメータが、前記濃厚物質搬送システム(10)の最大安定性パラメータよりも大きい場合、第1の制御信号を送信し、前記濃厚物質搬送システム(10)の前記決定された安定性パラメータが前記濃厚物質搬送システム(10)の前記最大安定性パラメータ以下である場合、第2の制御信号を送信する制御ユニット(13)をさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項15】
前記制御ユニット(13)は、前記濃厚物質搬送システム(10)の前記決定された安定性パラメータが前記最大安定性パラメータよりも大きい場合、前記濃厚物質分配マスト(18)の動作範囲を現在許容されている動作範囲に制限するように構成される、請求項14に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項16】
前記下部構造(30)が、車両(33)上に配置される、請求項1~15のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項17】
濃厚物質搬送システム(10)を動作させるための方法(100)であって、前記濃厚物質搬送システム(10)は、濃厚物質を搬送するための濃厚物質ポンプ(16)と、搬送される前記濃厚物質を少なくとも2本のマストアーム(41)によって分配するための濃厚物質分配マスト(18)と、前記濃厚物質分配マスト(18)及び前記濃厚物質ポンプ(16)が配置される下部構造(30)と、少なくとも1つの動作情報の項目を順次に取り込むためのセンサユニット(11)と、処理ユニット(12)と、を備え、前記濃厚物質ポンプ(16)が、ポンプ周波数を有するダブルピストンコアポンプ(15)と、前記ポンプ周波数で切り替え可能なS字管(24)とを備え、前記下部構造(30)が、水平方向及び/又は鉛直方向に変位可能な少なくとも1本の支持脚(32)によって前記下部構造(30)を支持するための支持構造体(31)を備え、前記方法は、
前記センサユニット(11)によって、少なくとも第1の時点(101b)及び第2の時点(101a)で少なくとも1つの動作情報の項目を順次取り込むステップと、
前記処理ユニット(12)によって、前記第1の時点で取り込まれた前記動作情報の項目、前記第2の時点で取り込まれた前記動作情報の項目、及び前記ポンプ周波数に応じて、前記濃厚物質搬送システム(10)の安定性パラメータを決定するステップ(104)と、
を含む、方法(100)。
【請求項18】
前記濃厚物質搬送システム(10)の前記決定された安定性パラメータが前記濃厚物質搬送システム(10)の最大安定性パラメータよりも大きい場合に、前記濃厚物質搬送システム(10)の制御ユニット(13)により、第1の制御信号を送信するステップ(105)と、
前記濃厚物質搬送システム(10)の前記決定された安定性パラメータが前記濃厚物質搬送システム(10)の前記最大安定性パラメータ以下である場合に、前記制御ユニット(13)によって第2の制御信号を送信するステップ(106)と、
をさらに含む、請求項17に記載の方法(100)。
【請求項19】
前記第1の制御信号を送信するステップ(107)が、
前記濃厚物質分配マスト(18)の動作範囲を現在許容されている動作範囲に制限するステップ(107)を含む、請求項18に記載の方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、濃厚物質ポンプ、濃厚物質分配マスト、下部構造、センサユニット、及び処理ユニットを有する濃厚物質搬送システム、ならびに濃厚物質搬送システムを動作させるための方法に関する。
【0002】
従来技術から、一般的な濃厚物質又はスラリー搬送システムが知られている。後者の安定性監視のために、様々な動作パラメータが観察され、その結果、そのような動作パラメータの臨界値を超えると、それに応じて濃厚物質搬送システムを定義された方法で作動させることができ、典型的には、濃厚物質搬送システムの規則に従った動作が調整される。負荷トルク、全体的な重心の位置、マストアームのシリンダ力、又は支持脚の脚力などの、この目的のために考慮される動作パラメータは、濃厚物質搬送システムの濃厚物質ポンプの動作によって影響を受ける。濃厚物質ポンプの動作は、動作パラメータの周期的な変動を引き起こす。しかしながら、ここで問題となるのは、周辺状況において、及び動作パラメータの影響による安定性の上限において、濃厚物質ポンプの動作の結果、濃厚物質搬送システムを使用すると、濃厚物質搬送システムの動作の上限値を超えたり下回ったりする望ましくない再発や、一定のスイッチオフやスイッチオンが発生することである。
【0003】
したがって、上述の問題を背景として、本発明の目的は、改良された濃厚物質搬送システム及び濃厚物質搬送システムを動作させるための改良された方法を提供することである。
【0004】
本発明による達成は、独立請求項の特徴にある。有利な改良は、従属請求項の主題である。
【0005】
本発明によれば、ポンプ周波数を有するダブルピストンコアポンプと、ポンプ周波数で切り替え可能なS字管とを備える濃厚物質を搬送するための濃厚物質ポンプと、搬送される濃厚物質を分配するための濃厚物質分配マストであって、濃厚物質分配マストは、少なくとも2本のマストアームを有する、濃厚物質分配マストと、濃厚物質分配マスト及び濃厚物質ポンプが配置される下部構造であって、下部構造は、水平方向及び/又は鉛直方向に変位可能な少なくとも1本の支持脚によって下部構造を支持するための支持体を備える、下部構造と、少なくとも第1の時点及び第2の時点において少なくとも1つの動作情報の項目を順次取り込むためのセンサユニットと、第1の時点で取り込まれた少なくとも1つの動作情報の項目、第2の時点で取り込まれた少なくとも1つの動作情報の項目、及びポンプ周波数に応じて、濃厚物質搬送システムの安定性パラメータを決定するように構成される処理ユニットと、を有する厚い物質搬送システムが開示される。
【0006】
本発明による濃厚物質搬送システムは、例えば、トラック搭載型のコンクリートポンプである。
【0007】
本発明は、安定性パラメータによって安定性を決定するために、センサユニットによって取り込まれた動作情報の項目が考慮されるだけでなく、さらに、濃厚物質ポンプの特定の動作パラメータも考慮される、濃厚物質搬送システムの特に有利な設計実施形態である。これにより、濃厚物質ポンプの動作の結果として取り込まれた動作情報の項目への影響を判定することができる。したがって、濃厚物質搬送システムの安定性パラメータは、濃厚物質ポンプの動作とはほとんど無関係に決定することができる。
【0008】
本発明は、この目的のために、S字管のスイッチング周波数に対応するコアポンプのポンプ周波数を考慮することが特に適切であることを認識している。ポンピング期間は、ポンピングプロセスが繰り返される前の持続期間を意味すると理解されるべきである。これは、ポンプ周波数の逆数に対応する。考慮される動作情報の項目と同様に好ましくはセンサユニットによって同様に取り込まれる、この定義可能な濃厚物質ポンプの動作パラメータに起因して、濃厚物質ポンプの動作の結果としてのそれぞれの動作情報の項目に対する影響を特に確実かつ正確に決定することができる。複雑で時間のかかるフィルタリングを省略することができる。これにより、特に低時間遅延で安定性の信頼できる決定が可能になり、したがって特に効率的良い。また、ポンプ周波数を考慮しないフィルタアルゴリズムと比較して、より良好な平滑化を提供する。したがって、安定性を損なわない濃厚物質搬送システムの停止を回避することが可能になり、その結果、濃厚物質搬送システムの制御された動作を周辺状況で行うことができる。
【0009】
まず、いくつかの用語を以下に説明する。
【0010】
濃厚物質は、搬送の困難な媒体の総称である。濃厚物質は、例えば、粗粒子状の成分を有する物質、腐食性の成分を有する物質などであり得る。濃厚物質はバルク材料であってもよい。一実施形態では、濃厚物質は生コンクリートである。生コンクリートは、30mmを超えるサイズまでの粒子を含むことができ、結合し、空隙内に堆積物を形成し、したがって搬送が困難である。濃厚物質の例には、800kg/mから2300kg/mまでの密度を有するコンクリート、又は2300kg/mを超える密度を有する重コンクリートが含まれる。
【0011】
濃厚物質ポンプは、2つ、例えば正確には2つの搬送シリンダを有するコアポンプを備えることができる。この場合、第1の搬送シリンダから第2の搬送シリンダへの切り替えと、第2の搬送シリンダから第1の搬送シリンダへの切り替えとが交互に行われる。搬送シリンダ間でS字管を周期的に切り替えることができる。さらに、各移行部を橋渡しするように補助シリンダを構成することができる。
【0012】
S字管は、それによって搬送シリンダが、濃厚物質ポンプの出口に交互に接続されるパイプの可動部分である。管部及び補助シリンダは、濃厚物質ポンプに解放可能に接続されたアセンブリの要素とすることができる。これにより、濃厚物質ポンプの保守及び洗浄を容易にすることができる。
【0013】
濃厚物質分配マストは、少なくとも2本のマストアームを備えるが、3本、4本、又は5本のマストアームを備えてもよい。典型的には、マストアセンブリは、3~7本のマストアームを備える。マストアームは、その近位端において、濃厚物質分配マストの旋回ギヤに接続されることができ、その遠位端において、隣接するマストアームの近位端に接続されることができる。他のマストアーム(複数可)は連続しており、その近位端で隣接するマストアームの遠位端にそれぞれ接続される。連続する最後のマストアームの遠位端は、その遠位端にさらなる接続部を有さず、荷重取付け点を画定する。
【0014】
マストアームは、少なくとも、例えば、他のマストアームとは少なくとも独立して一次元にのみ移動することができるように、マストジョイントを介してそれぞれ互いに接続される。各マストアームには、その近位端にマストジョイントが割り当てられる。
【0015】
旋回ギヤへの1つのマストアームの接続は、旋回ギヤが軸線を中心に回転するとき、このマストアーム又はすべてのマストアームもこの軸線を中心に回転するように設計することができる。例えば、マストアームは、前記マストアームが、例えば、旋回ギヤとは独立して鉛直方向にのみ移動することができ、例えば、そのマストジョイントによって回転され得るように、旋回ギヤに締結される。マストアームが伸縮機能を有し、その長手方向軸線に沿って伸縮式に連続的に伸長又は縮小することができることも考えられる。例えば、マストアームは、マストアームの少なくとも遠位端が3つの空間方向(x、y、及びz方向)のうちの少なくとも1方向に移動可能であるように調整可能である。
【0016】
代替的又は追加的に、マストアームは、その長手方向軸線を中心に回転可能であり得る。例えば、そのマストジョイント用のマストアームは、油圧若しくは空気圧シリンダ、電気機械式アクチュエータ、又は複数のさらに異なる種類のアクチュエータの組み合わせなどの少なくとも1つのアクチュエータを備え、それによって前記マストアームは、少なくとも別のマストアーム、特に近位端に接続されたマストアームに対してその位置を変更することができる。アクチュエータは、例えば、マストアームを水平軸線を中心に回転的に回転するように構成することができ、マストアームは、例えば、そのマストアーム接合部を通って延び、及び/又は前記マストアームを並進的に1つ、2つ、又はすべての空間方向に移動させるように構成することができる。
【0017】
代替的又は追加的に、マストアームは、それによってマストアームが、例えば伸縮式に、伸長、縮小又は回転することができるさらなるアクチュエータを有することができる。
【0018】
下部構造は、例えばシャーシなどの基本構造であり、その上に、濃厚物質分配マスト及び濃厚物質ポンプが配置される。例えば、濃厚物質分配マスト及び/又は濃厚物質ポンプは、下部構造に締結される。下部構造は、固定式(例えば、プラットフォームとして)又は可動式(例えば、車両として)に構成することができる。濃厚物質分配マスト及び濃厚物質ポンプが下部構造に配置される結果として、濃厚物質搬送システム全体は、ユニットとして特にコンパクトに、例えばトラック搭載型コンクリートポンプの形態で構成されることができる。
【0019】
下部構造は、水平方向及び/又は鉛直方向に変位可能な少なくとも1本の支持脚によって下部構造を支持するための支持構造体を備える。濃厚物質搬送システムの支持脚は、濃厚物質搬送システムの安定性を高めるのに役立つ支持構造体の構成要素を表す。安定性に対する支持構造体の影響は、特に支持脚の個々の配置及びセットアップに依存する。この目的のために、支持脚は、支持プレートによって表面上に支持され得る。4本の支持脚が、通常、支持構造体用に設けられる。
【0020】
濃厚物質搬送システムは、本発明による方法を実行又は制御するための手段を備える。これらの手段は、特にセンサユニット及び処理ユニットを備えるが、濃厚物質搬送システムの制御ユニットを備えることもでき、それぞれ別個のハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素として、又は様々な組み合わせで統合されたハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素として構成することができる。この手段は、例えば、コンピュータプログラムのプログラム命令を有する少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのメモリからのプログラム命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサとを備える。
【0021】
センサユニットは、特に自動的に、かつユーザ入力とは無関係に、少なくとも1つの動作情報の項目を記録するように構成される。少なくとも1つの動作情報の項目の取り込みは、順次、すなわち決定された時間間隔で繰り返し実行されるべきである。動作情報の項目は、構成された時間間隔で繰り返し取り込まれたと考えられる。さらに、動作情報の項目は、少なくとも第1及び第2の時点で取り込まれることが予定されている。このようにして、例えば、センサユニットの同じセンサによって連続的に取り込まれた、同じ種類の少なくとも2つの動作情報の項目が存在する。
【0022】
例えば、動作情報の項目の取り込みは、この動作情報の項目の特性である測定変数を測定することによって行うことができる。この目的のために、センサユニットは、同じ種類又は異なる種類の1つ又は複数のセンサを含むことができる。例示的なセンサは、力及び圧力センサ(例えば、マストジョイントのシリンダ力、マストアームのアクチュエータに作用する力、又は支持脚の脚力を取り込むための)、位置センサ(例えば、GPS、GLONASS又はGalileoなどの衛星ベースの位置システムのセンサ)、位置センサ(例えば、マストアームの傾斜角度を取り込むためのスピリットレベル又は傾斜センサ)、電気センサ(例えば、誘導センサ)、光学センサ(例えば、光バリア、レーザセンサ又は2Dスキャナ)、又はポンプ周波数を取り込むための振動センサとして音響センサ(例えば、超音波センサ)を含む。同様に、センサユニットの複数のセンサの相互作用によって動作情報の項目を取り込むこともできる。例えば、取り込まれる動作情報の項目は、振動センサ及び圧力センサの測定値を組み合わせることによって特に正確に確認することができる。
【0023】
代替的又は追加的に、センサユニットはまた、1つ又は複数の(例えば、無線)通信手段を備えることができ、それによって、取り込まれ(例えば、外部から)、ユーザ端末でのユーザ入力を介してユーザによって提供される動作情報の項目は、例えば、当業者に知られている方法でセンサユニットにおいて受信することができる。
【0024】
処理ユニットは、濃厚物質搬送システムの安定性パラメータを決定するように構成されると理解されるべきである。これは、第1の時点で取り込まれた、少なくとも1つの、特にすべての動作情報の品目(複数可)、第2の時点で取り込まれた、少なくとも1つの、特にすべての動作情報の項目(複数可)、及びポンプ周波数に依存するように行われる。この目的のために、前記処理ユニットは、例えば、センサユニットによって取り込まれた情報の項目にアクセスすることができる。安定性パラメータを決定することはまた、安定性パラメータが、例えば、それらの質量又はそれらの空間的範囲など、一定であると仮定される濃厚物質搬送システムの構成要素の定義された特性を参照することによって計算されることを含むと理解されるべきである。この目的のために、処理ユニットはまた、経時的なポンプ周波数の発展を考慮に入れることができる。
【0025】
濃厚物質搬送システムの安定性は、接触面の傾斜縁部からの、濃厚物質搬送システムに作用するすべての力を考慮に入れる作用線の間隔が大きくなるほど増大する。しかしながら、安定性に関する信頼できる記述は、少なくとも濃厚物質搬送システムに作用する重量力を考慮に入れた作用線に基づいて既になされてもよい。作用線に実際に作用する力がより多く考慮されるほど、この記述をより正確に行うことができる。したがって、濃厚物質搬送システムの安定性は、接触面の傾斜縁部からの作用線の間隔を表す安定性パラメータによって特に好適に特徴付けることができる。安定性パラメータは、定義された、又は動的に決定可能な安定性範囲内に位置し、その範囲内で、傾斜縁部の各々からの作用線の間隔は0以上であり、ここでは、安全マージンも考慮されることが好ましい。濃厚物質搬送システムの安定性は、安定性範囲内に提供される。安定性範囲の上限は、最大安定性パラメータによって定義される。最大安定性パラメータは、傾斜縁部のうちの1つからの作用線の間隔が0であるときに存在する。したがって、傾斜縁部の少なくとも1つからの作用線の間隔は、安定性パラメータが増加すると減少する。上限を超えると、感覚は0未満であり、濃厚物質搬送システムの安定性はもはや提供されない。濃厚物質搬送システムの各動作状況に対する安定性範囲は、例えば、一定であると仮定される濃厚物質搬送システムの考慮される構成要素の特性を考慮に入れて定義される、又は決定可能であることが考えられる。例えば、支持構造体の各可能な配置について、例えば、支持脚の決定されたセットアップによって、この目的のために接触面を画定又は決定することができる。
【0026】
傾斜縁部のうちの1つからの作用線の間隔及び作用線の向きは、それぞれの場合、少なくとも濃厚物質搬送システムの重量力に依存し、例えば処理ユニットによって計算することができる。作用線の向きは、鉛直方向成分及び水平方向成分を有してもよく、作用方向及び/又は複数の力の値に依存してもよい。例えば、考慮される1つ又は複数の力は、ユーザ(例えば、適切なユーザインターフェースによる)によって定義され得る、又は選択可能であり得る。例えば、濃厚物質搬送システムの重量力のみが考慮される場合、作用線は、全体的な重心を通る鉛直線に対応する。この場合の作用線の向きは、鉛直線の位置と同一である。作用線の向きが、濃厚物質搬送システムの側面に作用する風力などの水平方向成分を有する力にさらに依存する場合、作用線の向きは少なくとも1つの水平方向成分も含み、その位置は鉛直線の位置と等しくない。作用線の向きは、処理ユニットが、好ましくは、1つ又は複数の特定の条件の発生時にのみ、例えば、濃厚物質搬送システムの動作において一般的な風力より上の場合、例えばそれぞれの場合に、定義された方向に定義された量だけ、位置を徐々に適合させることができるように、1つ又は複数の追加の力に依存することが考えられる。作用線の向きは、作用の方向及び/又はセンサユニットによって取り込まれた力を示す1つ又は複数の、好ましくはすべての動作情報の項目に依存することも考えられる。
【0027】
動作情報の項目は、多数の可能な特性のうちの一特性又は動作パラメータ及び濃厚物質搬送システムの動作パラメータ又は濃厚物質搬送システムの個々の構成要素を示し、その特性又はその動作パラメータを表す。したがって、構成要素に動作情報の項目を割り当てることができることが可能であるべきである。そのような特性又はそのような動作パラメータは、例えば、測定変数によって特徴付けることができる。これらは、早くも搬送プロセスの開始前に又は開始後にのみ明らかになる特性及び動作パラメータであり得る。
【0028】
好ましくは、センサユニットは、ポンプ周波数を取り込むための1つ又は複数のセンサを有し、処理ユニットは、取り込まれた動作情報及び取り込まれたポンプ周波数に応じて、濃厚物質搬送システムの安定性パラメータを決定するように構成される。
【0029】
例えば、センサユニットは、ポンプ周波数を取り込むための1つ又は複数の光学振動センサを有することができる。このようにして、処理ユニットは、ポンプ周波数の現在の値を考慮に入れることができる。したがって、潜在的に誤差が生じやすいポンプ周波数の予測を省略することができる。その結果、ポンプ周波数の設定点からの小さな変動であっても安定性パラメータの決定に含めることができ、決定の精度が大幅に向上する。
【0030】
別の実施形態では、第1の時点と第2の時点との間の時間間隔は、ポンプ周波数に依存する。例えば、高いポンプ周波数における間隔は、低いポンプ周波数における間隔よりも小さくなり得る。好ましくは、第2の時点は、第1の時点と比較してポンピング期間の半分の持続期間だけ遅延される。
【0031】
このようにして、取り込まれた動作情報の項目に対する濃厚物質ポンプの動作の影響は、第1の時点及び第2の時点で取り込まれた動作情報の項目に基づいて、例えば平均値形成及び/又は畳み込みによってポンプ周波数を考慮しながら、特に好適に低減され得る。
【0032】
任意選択で、第1の時点で取り込まれた動作情報の項目は、最新の取り込まれた動作情報の項目である。
【0033】
これにより、理想的に最新の動作情報の項目に基づいて安定性を決定することができる。したがって、決定された安定性パラメータが、古い情報の使用に起因して現在の状況において全く正確でない可能性があるというリスクを最小限に抑えることができる。
【0034】
一実施形態では、処理ユニットは、平均値形成の結果に応じて安定性パラメータを決定するように構成され、平均値形成は、取り込まれた動作情報の項目に応じて行われる。
【0035】
これは、フィルタアルゴリズムの使用などの計算集約的な手順に頼る必要なしに、濃厚物質ポンプの動作の結果として取り込まれた動作情報の項目への影響を確認することができ、したがって、複雑さをほとんど伴わずに安定性パラメータを決定することができる特に単純な方法を表す。
【0036】
例として、処理ユニットは、複数の第1の時点及び複数の第2の時点において取り込まれた動作情報の項目に応じて安定性パラメータを決定するように構成され、複数の第2の時点の各々は、複数の第1の時点の対応する時点と比較して、ポンピング期間の半分の持続期間だけそれぞれ遅延される。
【0037】
したがって、2つの対応する動作情報の項目が取り込まれる時点は、それぞれの場合にポンピング期間の半分の持続期間によって分離される。複数の第1の時点で取り込まれた動作情報の項目は、最新の取り込まれた動作情報の項目であってもよく、最新の取り込みの直前の2つの時点で同じセンサによって順次取り込まれた動作情報の項目であってもよい。この場合、複数の第2の時点で取り込まれた動作情報の項目は、最新の取り込まれた動作情報の項目の前のポンピング期間の半分に同じセンサによって取り込まれた動作情報の項目であってもよく、順次取り込まれた動作情報の2つの項目の前に、ポンピング期間の半分で同じセンサによって同様にそれぞれ順次取り込まれた動作情報の2つの項目であり得る。
【0038】
したがって、この例では、同じセンサによって取り込まれた合計6つの動作情報の項目が安定性パラメータの決定に含まれる。これらのうち、第1の動作情報の項目は、最新の取り込まれた動作情報の項目であり、第2及び第3の動作情報の項目は、それぞれ、過去の異なる時点で順次取り込まれ、第4の動作情報の項目は、最新の取り込まれた動作情報の項目の前のポンピング期間の半分で取り込まれ、第5は、第2の動作情報の項目の前のポンピング期間の半分で取り込まれ、第6は、第3の動作情報の項目の前のポンピング期間の半分で取り込まれる。したがって、それぞれがポンピング期間の半分で分離された対で取り込まれる、6つの動作情報の項目が得られる。したがって、この例では、第1及び第4、第2及び第5、ならびに第3及び第6の動作情報の項目はすべて、それぞれ互いに対応すると理解されるべきである。
【0039】
処理ユニットのそのような設計実施形態は、安定性パラメータの特に簡単で迅速な決定を可能にし、したがって複雑なフィルタアルゴリズムを使用したフィルタリングによる時間のかかる決定と比較してより時間遅延がより短くなる。その結果、周辺状況での動作中に計算に基本的に含まれなければならず、業界で通常のように控えめなサイズにしなければならない許容範囲を小さく保つことができる。
【0040】
好適には、処理ユニットは、第1の時点より前の時点で取り込まれた複数の動作情報の項目を少なくとも一時的に格納するように構成される。
【0041】
このようにして、処理ユニットは、例えば、複数の動作情報の項目を格納するように構成され、十分なサイズの対応するメモリを有することができる。処理ユニットが動作情報の履歴項目にアクセスできる場合、広範な統計ツールを使用して安定性パラメータを決定することが可能であり、これにより決定の精度がさらに向上する。
【0042】
さらに、処理ユニットは、第1の時点から最大で1ポンピング期間後の時点で取り込まれている取り込まれた動作情報の項目を格納するように構成することができる。
【0043】
これにより、記憶サイズ及び記憶持続期間に関する要件を低く保つことができるので、サイズが小さく複雑さがほとんどない費用効果の高いストレージソリューションを利用することができる。
【0044】
好ましくは、センサユニットは、少なくとも第1及び第2の時点において同じセンサによって順次取り込まれる動作情報の項目を記録するように構成される。
【0045】
実際、取り込まれる動作情報の項目は、例えば、技術的理由から誤っているセンサの取り込みに気付くことができるように、同じ種類の異なるセンサによって取り込まれることが考えられる。しかしながら、同じセンサが使用される場合にのみ、安定性パラメータを決定するときに可能な限り最高の信号忠実度及びそれに対応して高い精度を達成することができる。
【0046】
濃厚物質搬送システムの一実施形態では、センサユニットは、濃厚物質搬送システムのマストアームの関節トルク、少なくとも1本のマストアームの傾斜角度、マストアームの少なくとも1つのアクチュエータのアクチュエータ力、マストアームの少なくとも1つのアクチュエータの動作速度、濃厚物質搬送システムの荷重取付け点における荷重重量、旋回ギヤの回転速度、濃厚物質搬送システムの傾斜角度、及び/又は濃厚物質搬送システムの少なくとも1本の支持脚の水平又は鉛直脚力を示す動作情報の項目を順次記録するように構成される。
【0047】
マストアームの関節トルクは、そのマストジョイントに作用するモーメントである。これは、とりわけ、マストアセンブリの総重量、風荷重、現在搬送されている濃厚物質の重量、又はマストピーク荷重に対応するマストアセンブリの第1のマストアームの遠位端に作用する重量にも依存するモーメントを表す。関節トルクに関する結論は、例えば、それぞれの関節角度の測定値などの1つ又は複数の他の測定値と併せて、マストアームのアクチュエータに作用するシリンダ力又はマストアームのアクチュエータに作用するシリンダ圧力を測定することによって導き出すことができる。例えば、マストアームの関節トルクは、それぞれのマストアームのマストジョイントのシリンダ力及び関節角度から伝達関数によって計算することができる。マストアームの傾斜角度は、絶対的な傾斜角度、すなわち鉛直方向に対するマストアームの位置を決定する角度、又は相対的な傾斜角度、すなわち2つの、特に隣接するマストアームの傾斜角度の間の角度差とすることができる。後者の場合、角度差は遠位マストアームの開口角度に対応する。この場合の荷重重量は、荷重取付け点で作用する重量力に対応する。傾斜角度は、鉛直方向に対する、例えばその下部構造の、濃厚物質搬送システムの角度である。例えば、濃厚物質搬送システムの傾斜角度は、旋回ギヤの回転軸線と鉛直方向との間の角度に対応する。水平又は鉛直脚力は、支持脚に作用する水平又は鉛直力を意味すると理解されるべきである。
【0048】
さらなる例示的な動作情報の項目は、充填された及び/又は充填されていないコンベヤラインを有するすべてのマストアームの重量、すべてのマストアームの重心の位置、追加の負荷の重量、追加の重量取付け点の位置、マストアームに作用する風力、すべてのマストアームの風の重心の位置、下部構造の重量、下部構造の重心の位置、ならびに格納状態及び/又は拡張状態における支持脚の接触面の位置を示す。
【0049】
濃厚物質搬送システムの安定性パラメータは、これらの特性によって確実に決定することができる。これにより、ひいては、濃厚物質搬送システムの安定性に関する信頼できる記述を行うことが可能になる。
【0050】
さらに、処理ユニットは、すべてのマストアームの関節トルクを示す取り込まれた動作情報の項目に基づいて負荷トルクを計算し、計算された負荷トルクに応じて安定性パラメータを決定するように構成することができる。
【0051】
このようにして、処理ユニットは、例えば、それぞれのマストアームのシリンダ圧力及び傾斜角度を考慮しながら、リアルタイムで安定性パラメータの特に正確な決定を実行することができる。したがって、この場合のセンサユニットは、すべてのマストアームのシリンダ力及び傾斜角度を示す動作情報の項目を記録するように構成されなければならず、例えば、この目的のための複数の適切なセンサを含む。
【0052】
一実施形態によれば、処理ユニットは、複数の、特に異なる種類の取り込まれた動作情報の項目から濃厚物質搬送システムの全体的な重心の現在位置を計算し、全体的な重心の計算された現在位置に応じて安定性パラメータを決定するように構成される。例えば、処理ユニットは、接触面の傾斜縁部から濃厚物質搬送システムに作用する少なくとも1つの力の作用線のそれぞれの距離を計算し、計算された距離に応じて安定性パラメータを決定するように構成することができ、濃厚物質搬送システムに作用する少なくとも1つの力は、濃厚物質搬送システムの全体的な重心の現在位置に作用する濃厚物質搬送システムの重量力を含む。
【0053】
例として、この場合のセンサユニットは、旋回ギヤの位置を示す動作情報の項目、マストアームの少なくとも1本の位置を示す動作情報の項目、支持脚の位置を示す動作情報の項目、濃厚物質搬送システムの傾斜角度を示す動作情報の項目、及び濃厚物質搬送システムの延長部を示す動作情報の項目を記録するように構成される。処理ユニットは、実際には、例えば、1つ、複数、又はすべての構成要素の質量及び重心などの、濃厚物質搬送システムの多数の特性へのアクセスを必要とする。それにもかかわらず、安定性パラメータの特に信頼できる決定をこのように行うことができる。
【0054】
好ましくは、濃厚物質搬送システムは、濃厚物質搬送システムの決定された安定性パラメータが濃厚物質搬送システムの最大安定性パラメータよりも大きい場合に第1の制御信号を送信し、濃厚物質搬送システムの決定された安定性パラメータが濃厚物質搬送システムの最大安定性パラメータ以下である場合に第2の制御信号を送信する制御ユニットを備える。代替的又は追加的に、例えば、決定された安定性パラメータと最大安定性パラメータとの間の所定の最小距離に達しない場合、制御ユニットによってさらなる制御信号の送信がもたらされ得る。
【0055】
制御ユニットは、有線又は無線信号出力などの制御信号を送信する対応する手段を含む。上述の方法での制御信号の出力の結果として、制御ユニットは、濃厚物質搬送システムの少なくとも1つの構成要素を制御し、構成要素の動作パラメータに作用することができる。第2の制御信号を送信することにより、規則に従った動作が継続されるが、一方で、第1の制御信号を送信することにより、濃厚物質搬送システムの規則に従った動作の中断を引き起こすことが考えられる。さらなる制御信号を送信することにより、例えば、濃厚物質搬送システムの1つ又は複数の構成要素の動作を、規則に従った動作と比較して低速で行わせることができる。
【0056】
例えば、制御ユニットは、濃厚物質搬送システムの決定された安定性パラメータが最大安定性パラメータよりも大きい場合、濃厚物質分配マストの動作範囲を現在許容されている動作範囲に制限するように構成することができ、その目的のために、制御ユニットは対応する手段を備える。
【0057】
濃厚物質搬送システムの1つ又は複数の構成要素の動作範囲を制限することは、それぞれの構成要素の動作パラメータを制限し、制限された動作パラメータに従って構成要素を動作させると理解される。これは、それぞれの動作パラメータが、決定された安定性パラメータに応じて、構成要素の依然として許容可能な作用範囲又は依然として許容可能な作用強度に制限され得ることを意味する。特に、許容動作範囲外での構成要素の動作が防止される。限定すると、作用範囲又は作用強度は、原則として、例えば、規則に従った動作中に構成要素にそれぞれ提供される最大作用範囲、及び基本的に提供される最大作用強度よりも小さい。例えば、濃厚物質分配マストの動作範囲の制御ユニットは、現在許容されている上限を決定することができ、濃厚物質分配マストが指定された上限を下回ってのみ偏向されるように、濃厚物質搬送システムの動作を実行することができる。したがって、例えば、濃厚物質分配マストのマストアームの開口角度又はアクチュエータ力が、対応して決定された限界を超えることを防止することができる。この目的のために、それぞれのアクチュエータは、例えば、制御ユニットによって送信される、適切な制御信号を受信することができる。したがって、例えば、制御ユニットは、アクチュエータによってマストアームの偏向を制限することができる。さらに、濃厚物質分配マストの動作範囲を制限することは、追加的又は代替的に、濃厚物質分配マストの旋回ギヤの回転角度範囲を制限することとしても理解される。
【0058】
さらに、本発明によれば、濃厚物質を搬送し、ポンプ周波数を有するダブルピストンコアポンプと、ポンプ周波数で切り替え可能なS字管とを備える濃厚物質ポンプと、搬送される濃厚物質を分配するための濃厚物質分配マストであって、濃厚物質分配マストは、少なくとも2本のマストアームを有する、濃厚物質分配マストと、濃厚物質分配マスト及び濃厚物質ポンプが配置される下部構造であって、下部構造は、少なくとも1本の水平方向及び/又は鉛直方向に変位可能な支持脚によって下部構造を支持するための支持構造体を備える、下部構造と、を有し、少なくとも1つの動作情報の項目を順次取り込むためのセンサユニット(11)を有し、処理ユニット(12)を有する濃厚物質搬送システムを動作させるための方法であって、本方法は、センサユニットによって、少なくとも第1及び第2の時点で少なくとも1つの動作情報の項目を順次取り込むステップと、処理ユニットによって、第1の時点で取り込まれた少なくとも1つの動作情報の項目、第2の時点で取り込まれた少なくとも1つの動作情報の項目、及びポンプ周波数に応じて、濃厚物質搬送システムの安定性パラメータを決定するステップと、を含む、方法。
【0059】
一実施形態では、方法は、濃厚物質ハンドリングシステムの決定された安定性パラメータが濃厚物質ハンドリングシステムの最大安定性パラメータよりも大きい場合に、濃厚物質ハンドリングシステムの制御ユニットによって第1の制御信号を送信するステップと、濃厚物質ハンドリングシステムの決定された安定性パラメータが濃厚物質ハンドリングシステムの最大安定性パラメータ以下である場合に、制御ユニットによって第2の制御信号を送信するステップと、をさらに含む。
【0060】
追加で、第1の制御信号の送信は、濃厚物質分配マストの動作範囲を現在許容されている動作範囲に制限することを含むことができる。
【0061】
本方法のさらに有利な改良点のさらなる説明のために、濃厚物質搬送システムの上述の改良を参照する。
【0062】
本発明はまた、コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されるときに、プロセッサに本発明による方法を実行及び/又は制御させるためのプログラム命令を有するコンピュータプログラムを含む。本発明によるコンピュータプログラムは、例えば、コンピュータ可読データキャリアに格納される。
【0063】
上述の実施形態及び設計実施形態は、例示としてのみ理解されるべきであり、決して本発明を限定することを意図するものではない。
【0064】
本発明は、添付の図面を参照して、有利な実施形態により例示的な方法で以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】本発明による濃厚物質搬送システムの例示的な実施形態の概略図を示す。
図2】本発明による濃厚物質搬送システムの濃厚物質ポンプの概略図を示す。
図3】取り込まれる動作情報の項目に対する濃厚物質ポンプの動作の影響を示す図を示す。
図4】本発明による方法の実施形態の概略フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1には、濃厚物質を搬送するための濃厚物質ポンプ16と、搬送される濃厚物質を分配するための濃厚物質分配マスト18とを備え、濃厚物質分配マスト18は、鉛直軸線を中心に回転可能な旋回ギヤ19と、複数のマストアーム41を有する、濃厚物質搬送システム10が示される。さらに、マストアーム41を横切って延在し、かつ濃厚物質ポンプ16に接続される搬送ライン17が、図示される。
【0067】
さらに、濃厚物質搬送システム10は、その上に濃厚物質分配マスト18及び濃厚物質ポンプ16が配置される下部構造30を備える。下部構造30は、下部構造30を支持するため4本の支持脚32を有する支持構造体31を有する。下部構造30は、例として、車両33上に配置されているものとして示されている。
【0068】
さらに、センサユニット11及び処理ユニット12が設けられる。センサユニット11は、少なくとも第1及び第2の時点において、少なくとも1つの動作情報の項目を順次記録するように構成される。例えば、これは、この目的のために、有線又は無線信号線を介して1つ又は複数のセンサによってそれぞれ繰り返し取り込まれる動作情報にアクセスすることができる。
【0069】
任意選択で、センサユニット11は、コアポンプ15又はS字管24のポンプ周波数を取り込むように構成することもでき、例えば、1つ又は複数の適切な振動センサを有することができる。
【0070】
処理ユニット12は、第1の時点で取り込まれた動作情報の項目、第2の時点で取り込まれた動作情報の項目、及びポンプ周波数に応じて、濃厚物質搬送システム10の安定性パラメータを決定するように構成される。安定性パラメータは、支持構造体31の、したがって濃厚物質搬送システム10の現在の安定性を特徴付ける。したがって、処理ユニット12は、少なくとも第1及び第2の時点で順次に取り込まれる動作情報の項目、ならびにコアポンプ15のポンプ周波数にアクセスすることができる。この目的のために、濃厚物質搬送システム10には、必要なハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素を有するセンサユニット11及び処理ユニット12の対応する設計の実施形態が提供される。このようにして、処理ユニット12は、例えば、必要に応じて、メモリに格納されたデータ、濃厚物質搬送システム10のすべての構成要素のそれぞれの質量及び/又はそれぞれの空間的範囲、特にポンプ周波数に関する情報の項目にアクセスすることができる。動作パラメータポンプ周波数は、センサユニット11によって定義されるか、又は同様に取り込まれ、次いで処理ユニット12にアクセス可能にされ、例えば対応するメモリに格納され得る。
【0071】
図2は、濃厚物質を搬送するための濃厚物質ポンプ16を示す。濃厚物質ポンプ16は、ダブルピストンコアポンプ15と、切り替え可能なS字管24とを備える。コアポンプ15は、ここでは、S字管24のスイッチング周波数に対応するポンプ周波数を有し、それによって、S字管24の一端はコアポンプの2つのピストンの間で前後に切り替えられる。S字管24の他端は、濃厚物質ポンプ16の出力28において、濃厚物質分配マストの搬送ライン17に接続される。
【0072】
例示的な設計実施形態の処理ユニット12は、取り込まれる動作情報の項目に対する濃厚物質ポンプ16の動作の影響を示す図を表す図3によってより詳細に説明される。ここで、観測された動作情報8の値は、コアポンプ15のポンプ周波数で振動する成分を有する。このような動作情報8の項目の一例として、旋回ギヤ19に接続されたマストアーム41のシリンダ力を示す動作情報の項目を用いることができる。図3の図では、動作情報Sの項目の取り込まれた値を時間Tにわたってプロットしている。時間T=0は現在、T=-xは動作情報Sが取り込まれた過去の第xの時間を表し、時間T=-1で取り込まれた動作情報は最新の取り込まれた動作情報を表す。したがって、処理ユニット12は、少なくとも26の履歴時点で取り込まれた動作情報を格納するように構成される。ポンピング期間は、この場合、T=-x~T=x-25の期間を含み、したがって、ポンプ周波数は、この期間にわたる逆数値である。T_Uは、S字管24の切り替えの時間を示し、したがってポンプ周波数に関する情報も提供する。
【0073】
処理ユニット12は、第1の時点で取り込まれた動作情報の項目、及び第2の時点で取り込まれた動作情報の項目に応じて、安定性パラメータを決定するように構成される。第2の時点は、第1の時点と比較してポンピング期間の半分の持続期間だけ遅延される。平均値は、時間T=-1で取り込まれた最新の動作情報Sの項目(T=-1)と、それに先立つポンピング期間の半分、すなわち時間T=-14で取り込まれた動作情報Sの項目(T=-14)とから形成される。結果は、取り込まれた動作情報の項目に対するポンプの動作の影響が軽減された、平滑化S_mod(T=-1)によって修正された動作情報の項目を表す。
【0074】
さらに、処理ユニット12は、複数の第1の時点及び複数の第2の時点で取り込まれた動作情報の項目に応じて安定性パラメータを決定するように構成することができ、複数の第2の時点の各々は、複数の第1の時点の対応する時点と比較してポンピング期間の半分の持続期間だけ遅延される。
【0075】
このプロセスでは、センサユニット11のセンサによって取り込まれ、処理ユニット12にアクセス可能な動作情報の項目のさらに又はすべてさえ見ることができる。上述の修正された動作情報S_modの項目(T=-1)に加えて、さらに修正された動作情報S_modの項目(T=-x)を計算することができる。次いで、これらのさらに修正された動作情報の項目は、第1の時点T=-xで取り込まれた動作情報の項目と、第2の時点T=-x-13で取り込まれた動作情報の項目とからの平均値を表すことができ、したがって、それより前のポンピング期間の半分を表すことができる。精度をさらに向上させるために、S_faltの平均値はまた、すべての修正された動作情報の項目から形成することもでき、これは次に、最新の取り込まれた第1の動作情報の項目の逆畳み込みに対応する。
【0076】
【数1】
また、より早い時点で取り込まれた動作情報の項目の重みがより小さくなることも考えられる。このため、修正された動作情報S_modの項目(T=-x)の重み付けは、xが大きくなるにしたがって徐々に又は連続的に小さくすることができる。
【0077】
次いで、ポンプ周波数に応じて修正された動作情報の項目又は平均値をそれぞれ利用して、安定性パラメータを決定することができる。例えば、濃厚物質搬送システム10の全体的な重心の現在位置は、この目的のために、例えばマストアームなどの濃厚物質システムの関連する構成要素の質量及び空間的範囲を考慮しながら、異なる種類の複数の適切な修正された動作情報の項目から計算することができる。全体的な重心に作用する濃厚物質搬送システムの少なくとも重量力を考慮する、接触面の傾斜縁部からの作用線の感覚が小さいほど、安定性が低くなり、安定性パラメータが高く決定される。
【0078】
さらに、本例では、濃厚物質搬送システム10の任意選択の制御ユニット13は、処理ユニット12によって決定された安定性パラメータに応じて、制御信号によって濃厚物質搬送システム10の1つ又は複数の構成要素を作動させるようにさらに構成される。したがって、制御ユニット13は、処理ユニット12によって決定された安定性パラメータが、濃厚物質搬送システム10の最大安定性パラメータよりも大きい場合、第1の制御信号を送信するように構成される。この場合、制御ユニット13は、次に、濃厚物質分配マスト18の動作範囲を現在許容されている動作範囲に制限する。さらに、制御ユニット13は、決定された安定性パラメータが最大安定性パラメータ以下である場合、第2の制御信号を送信するように追加で構成される。
【0079】
図4は、本発明による方法100の例示的な実施形態のフローチャートを示す。
【0080】
ステップ101aでは、センサユニット11は、濃厚物質搬送システム10の動作情報の項目を記録する。次いで、順次続くステップ101bでは、センサユニット11は、動作情報の項目を再び記録する。ここで適用される慣例によれば、ステップ101aにおける取り込みの時点は第2の時点であり、ステップ101bにおける取り込みの時点は第1の時点である。例として、ステップ101aは、ここでは、ステップ101bと比較してポンピング期間の半分の持続期間だけ遅れる。ステップ101bで取り込まれた動作情報の項目は、最新の取り込まれた動作情報の項目である。ステップ102及び103において、ポンプ周波数は同様に、センサユニット11によって取り込まれた可能性がある。
【0081】
第1及び第2の時点でステップ101b及び101aにおいてセンサユニット11によって順次取り込まれた動作情報の項目に応じて、またポンプ周波数に応じて、ステップ104では、濃厚物質搬送システム10の安定性パラメータが処理ユニット12によって決定される。図3の文脈で既に説明したように、ここでは、ステップ101bで取り込まれた動作情報の項目及びステップ101aで取り込まれた動作情報の項目から平均値が形成される。結果として、取り込まれた動作情報の項目に対するポンプの動作の影響が軽減された、修正された動作情報の項目が取得される。これに基づいて、処理ユニット12は、次に、例えば、すべてのマストアーム41の質量及び空間的範囲を考慮に入れながら、濃厚物質搬送システム10の全体的な重心の現在位置を計算することによって、安定性パラメータを決定する。
【0082】
ここで任意選択で、この後にステップ105及び106のうちの一方が続く。
【0083】
処理ユニット12によって決定された濃厚物質搬送システム10の安定性パラメータが、濃厚物質搬送システム10の最大安定性パラメータよりも大きい場合、ステップ105において、濃厚物質搬送システム10の制御ユニットは、第1の制御信号を送信する。そのような制御信号によって、制御ユニットは、濃厚物質搬送システム10の少なくとも1つの構成要素を作動させ、したがって構成要素の動作パラメータに作用する。これは、例えば、濃厚物質分配マスト18の動作範囲を現在許容されている動作範囲に制限する形態のさらなるステップ107を含むことができる。
【0084】
反対の場合、すなわち、処理ユニット12による濃厚物質搬送システム10の安定性パラメータが濃厚物質搬送システム10の最大安定性パラメータ以下であるという判定では、制御ユニットは、ステップ106において第2の制御信号を送信することができる。例えば、制御ユニットは、このようにして、ポンプ周波数が増大される又は低減されるように、濃厚物質ポンプ16を駆動することができる。
【0085】
本明細書に記載された本発明の実施形態ならびにこれに関してそれぞれ列挙された任意の特徴及び特性はまた、互いにすべての組み合わせで開示されていると理解されるべきである。特に、実施形態によって含まれる特徴の説明は、現在、明示的に反対のことが述べられていない限り、その特徴が実施形態の機能にとって重要又は不可欠であるように理解されるべきでもない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】