(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】スキュー制限軸受ケージ
(51)【国際特許分類】
F16C 33/46 20060101AFI20240315BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16C33/46
F16C19/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558602
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 US2022024952
(87)【国際公開番号】W WO2022221620
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595016783
【氏名又は名称】ザ・ティムケン・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE TIMKEN COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100147511
【氏名又は名称】北来 亘
(72)【発明者】
【氏名】サディンスキー,ロバート,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハノン,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA34
3J701BA44
3J701FA02
3J701GA01
3J701GA24
(57)【要約】
転がり軸受アセンブリは、中心回転軸周りで、転がり軸受アセンブリの動作中、複数の転動体を離隔するための転がり軸受アセンブリのケージを含む。ケージは、第1の軸方向エンド・リングと、第2の軸方向エンド・リングと、第1の軸方向エンド・リングと第2の軸方向エンド・リングとの間に延びる複数のブリッジとを含む。複数のブリッジは、それらの間にころポケットを画定する。複数のブリッジのうちの少なくとも1つは、その表面上に配置されたレイリー・ステップ・アレイを含む。この表面は、ころポケットの内部に面する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心回転軸周りで、転がり軸受アセンブリの動作中、複数の転動体を離隔するための転がり軸受アセンブリのケージにおいて、
第1の軸方向エンド・リングと、
第2の軸方向エンド・リングと、
前記第1の軸方向エンド・リングと前記第2の軸方向エンド・リングとの間に延びる複数のブリッジとを備え、前記複数のブリッジは、それらの間に対応する複数のころポケットを画定し、前記複数のブリッジのうちの少なくとも1つは、その表面上に配置されたレイリー・ステップ・アレイを含み、前記表面は、前記ころポケットの内部に面する、ケージ。
【請求項2】
前記レイリー・ステップ・アレイが面する前記ころポケットは、4つの象限を含み、前記レイリー・ステップ・アレイは、前記象限の第1の象限内に配置され、他の3つの象限のそれぞれは、レイリー・ステップ・アレイを含む、請求項1に記載のケージ。
【請求項3】
前記複数のころポケットのそれぞれはテーパーが付けられており、そのテーパー付の複数のころポケットは、テーパーが付けられた転動体をその中に受け取るように構成される、請求項1に記載のケージ。
【請求項4】
請求項1に記載のケージを備える転がり軸受アセンブリであって、
内輪と、
外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に位置し、前記ケージの前記複数のブリッジによって互いに周方向に離隔された複数の転動体とをさらに備え、前記複数の転動体は、前記内輪と前記外輪との間の相対回転を容易にするように構成される、転がり軸受アセンブリ。
【請求項5】
前記複数の転動体周りに配置された作動流体をさらに備え、前記レイリー・ステップ・アレイは、前記作動流体内に流体力を選択的に生成するように構成され、前記流体力は、前記転動体と前記レイリー・ステップ・アレイとの間の距離が閾値未満であるとき前記転動体に作用する、請求項4に記載の転がり軸受アセンブリ。
【請求項6】
前記複数のころポケットのそれぞれは、レイリー・ステップ・アレイを含む、請求項1に記載の転がり軸受アセンブリ。
【請求項7】
作動流体を含む転がり軸受アセンブリ内の複数の転動体を離隔するためのケージにおいて、
第1の軸方向エンド・リングと、
第2の軸方向エンド・リングと
前記第1の軸方向エンド・リングおよび前記第2の軸方向エンド・リングを通って中心に延びる中心回転軸と、
前記ケージ周りで周方向に離隔される複数のころポケットとを備え、前記複数のころポケットのそれぞれは、転動体をその中に受け取るように構成され、
前記複数のころポケットのうちの少なくとも1つは、前記ころポケット内の前記転動体の回転軸と前記中心回転軸との間のスキュー角に応答して前記作動流体内に流体力を選択的に生成するように構成されるレイリー・ステップ・アレイを含む、ケージ。
【請求項8】
前記レイリー・ステップ・アレイを有する前記ころポケットは、4つの象限を含み、前記4つの象限のそれぞれは、レイリー・ステップ・アレイを含む、請求項7に記載のケージ。
【請求項9】
隣接する象限内の前記レイリー・ステップ・アレイは、反対の幾何学的なステップの方向性を有する、請求項8に記載のケージ。
【請求項10】
各レイリー・ステップ・アレイは、複数の異なるレイリー・ステップ・ジオメトリを含む、請求項9に記載のケージ。
【請求項11】
レイリー・ステップ・アレイ内の各レイリー・ステップ・ジオメトリは、同じ幾何学的なステップの方向性を有する、請求項10に記載のケージ。
【請求項12】
前記複数のころポケットのそれぞれは、レイリー・ステップ・アレイを含む、請求項7に記載のケージ。
【請求項13】
請求項7に記載のケージを備える転がり軸受アセンブリであって、
内輪と、
外輪と、
前記複数のころポケット内に配置された複数の転動体とをさらに備え、前記複数の転動体は、前記内輪と前記外輪との間の相対回転を容易にするように構成される、転がり軸受アセンブリ。
【請求項14】
前記複数の転動体は、テーパーが付けられた転動体であり、前記複数のころポケットは、テーパーが付けられたころポケットである、請求項13に記載の転がり軸受アセンブリ。
【請求項15】
前記複数のころポケットのそれぞれは、レイリー・ステップ・アレイを含む、請求項13に記載の転がり軸受アセンブリ。
【請求項16】
前記レイリー・ステップ・アレイは、前記外輪が第1の方向で前記内輪に対して回転されるとき前記複数の転動体上で第1の流体力を生成するように構成され、前記レイリー・ステップ・アレイは、前記外輪が前記第1の方向とは反対の第2の方向で前記内輪に対して回転されるとき前記複数の転動体上で第2の流体力を生成するように構成され、前記第2の流体力は、前記第1の流体力とは異なる方向で作用する、請求項15に記載の転がり軸受アセンブリ。
【請求項17】
前記第1の流体力は、前記第2の流体力とは異なる場所において前記複数の転動体に作用する、請求項16に記載の転がり軸受アセンブリ。
【請求項18】
転がり軸受アセンブリを動作させる方法であって、
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体と、前記転がり軸受アセンブリ周りで前記複数の転動体を周方向に離隔するように構成されたケージとを提供するステップであって、前記ケージは前記複数の転動体が中に位置する複数のころポケットを含み、前記複数のころポケットのうちの少なくとも1つは、レイリー・ステップ・アレイを含む、ステップと、
前記外輪および前記内輪と転がり接触するように前記複数の転動体を設定するために前記外輪と前記内輪との間の相対回転を与えるステップであって、前記回転は、前記複数の転動体のうちの少なくとも1つにスキューを与える、ステップと、
前記複数の転動体のうちの前記少なくとも1つの前記スキューに応答して、前記レイリー・ステップ・アレイを用いて前記複数の転動体のうちの少なくとも1つ上で流体力に反対に作用するスキューを生成するステップとを備える、方法。
【請求項19】
前記複数のころポケットのそれぞれは、レイリー・ステップ・アレイを含み、前記レイリー・ステップ・アレイのそれぞれは、前記複数の転動体の前記スキューに応答して、前記複数の転動体上で流体力に反対に作用するスキューを生成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記外輪は、前記外輪と前記内輪との間で前記複数の転動体を固定するように構成されたリブを含み、前記リブは、回転中、前記複数の転動体に前記スキューを与える、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月16日に出願された米国特許仮出願第63/175,886号に対する優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、軸受アセンブリ、より詳細には、転動体のスキューを制限するように構成された軸受ケージを含む軸受アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
大部分の軸受アセンブリは、動作中、転動体の向きを制御するための手段を有していない。場合によっては、高速動作が軸受をスキューさせる可能性があり、過剰な摩擦および熱を生み出し、したがって軸受アセンブリを損傷させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本発明は、中心回転軸周りで、転動体の軸受のアセンブリ即ち転がり軸受アセンブリの動作中、複数の転動体を離隔するための転がり軸受アセンブリのケージを提供する。ケージは、第1の軸方向エンド・リングと、第2の軸方向エンド・リングと、第1の軸方向エンド・リングと第2の軸方向エンド・リングとの間に延びる複数のブリッジとを含む。複数のブリッジは、それらの間にころポケットを画定する。複数のブリッジのうちの少なくとも1つは、その表面上に配置されたレイリー・ステップ・アレイを含む。この表面は、ころポケットの内部に面する。
【0005】
別の態様では、本発明は、作動流体を含む転がり軸受アセンブリ内の複数の転動体を離隔するためのケージを提供する。ケージは、第1の軸方向エンド・リングと、第2の軸方向エンド・リングと、第1の軸方向エンド・リングおよび第2の軸方向エンド・リングを通って中心に延びる中心回転軸と、ケージ周りで周方向に離隔される複数のころポケットとを含む。複数のころポケットのそれぞれは、転動体をその中に受け取るように構成される。複数のころポケットのうちの少なくとも1つは、ころポケット内の転動体の回転軸と中心回転軸との間のスキュー角に応答して作動流体内に流体力を選択的に生成するように構成されるレイリー・ステップ・アレイを含む。
【0006】
さらに別の態様では、本発明は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に配置された複数の転動体と、内輪と外輪との間に配置されたケージとを含む転がり軸受アセンブリを提供する。ケージは、転動体が中に位置する複数のころポケットを含む。複数のころポケットは、転がり軸受アセンブリ周りで転動体を周方向に離隔するように構成される。ころポケットは、転動体をころポケット内で位置合わせするように構成されたレイリー・ステップ・アレイを含む。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、転がり軸受アセンブリを動作させる方法を提供する。方法は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に配置された複数の転動体と、転がり軸受アセンブリ周りで複数の転動体を周方向に離隔するように構成されたケージとを提供するステップを含む。ケージは、転動体が中に位置する複数のころポケットを含む。各ころポケットは、レイリー・ステップ・アレイを含む。方法は、外輪および内輪と転がり接触する転動体を用いて内輪に対する外輪の相対回転を与えるステップと、転がり軸受アセンブリの回転軸に対する転動体スキューに応答して、レイリー・ステップ・アレイを用いて転動体上で流体力を生成するステップとをさらに含む。
【0008】
本発明の他の特徴および態様は、以下の詳細な説明および添付の図面を検討することによってより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】転動体スキューを示す軸受アセンブリの概略図である。
【
図3】
図1の軸受アセンブリの1つのころポケットの側面図である。
【
図4】
図3における断面線4-4に沿った断面図である。
【
図5A】第1の方向においてスキューを受ける1つの転動体の概略側面図を示す図である。
【
図5B】第2の方向においてスキューを受ける1つの転動体の概略側面図を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態による単一の転動体を含む軸受ケージの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について詳細に述べる前に、本発明は、その適用例において、以下の説明に記載されている、または以下の図面に示されている構造の詳細および構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な形で実践される、または実施されることが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明のためのものであり、限定するものとみなされるべきでないことを理解されたい。
【0011】
図1は、内輪8と、外輪(図示せず)と、内輪と外輪との間に配置された複数の周方向に分散された転動体12とを含む軸受アセンブリ4を示す。内輪および外輪は、軸受アセンブリ4のための中心回転軸である共通の支承軸Aを共有する。様々な適用例が可能であるが、軸受アセンブリ4は、第2の構成要素(たとえば、静的ハウジング)内で第1の構成要素(たとえば、回転シャフト)の低摩擦(即ち、転がり)支持を提供する。内輪8は、第1の構成要素(図示せず)と固定される径方向内側表面を含み、外輪は、第2の構成要素(図示せず)と固定される径方向外側表面を含む。転動体12のそれぞれは、内輪および外輪の軌道表面とそれぞれ接触する転がり表面16(
図4)を画定する。内輪8の軌道表面20が
図2に示されている。図の実施形態では、転動体12は、テーパーが付けられた即ち円すい形状の転がり表面16を有するが、他の構造(即ち、円筒のもの)が任意選択である。
図1に示されているように、ケージ24は、ケージ24が複数の転動体12と共通の径方向位置を占有するように、内輪8と外輪との間にある径方向位置において支承軸A周りで周方向に延びる。ケージ24は、一対の反対向きの軸方向リング28、32と、2つの軸方向リング28、32間で概して軸方向に延びる複数のブリッジ36とを含む。いくつかの実施形態では、一方または両方の軸方向リング28、32は、フランジ(たとえば、曲がった、または丸められた部分)を含み得る。ころポケット40は、ブリッジ36の隣接する各対間に画定され、したがって、ケージ24は、転動体12をころポケット40内に配置することによって転動体12の隣接する対間の間隔を維持する(
図6)。
【0012】
内輪および外輪の一方または両方は、転動体12を中に保持するために、1つまたは2つのリブを含むことができる。たとえば、
図2に示されているように、内輪8は、軸受アセンブリ4の両軸方向端部上で複数の転動体12の軸方向端面48と重なるように軌道表面20を越えて径方向外向きに延びる2つのリブ44、46を含む。第1のリブ44は、軸受アセンブリ4の直径の大きい方の端部に位置するので大リブと称される。第2のリブ46は、軸受アセンブリ4の直径の小さい方の端部に位置するので小リブと称される。当業者なら、様々な異なるリブ構成が任意選択であることを理解するであろう。どのようなリブ-ころ界面が存在しようとも、軸受アセンブリ4が動作状態にあり、転動体12が内輪および外輪に対して周方向に移動するとき、摩耗の可能性(たとえば、金属-金属)が存在する。大リブ44と転動体12との間の界面は、転がり運動および摺動運動を共に受ける。転がり運動と摺動運動との組合せによりリブ-ころ界面において生成されるけん引力は、転動体12および軌道20のジオメトリ(幾何図形的配置、形状)頂点中心Aに対して、転動体12上でスキュー角θを誘導する可能性がある(
図2)。転動体12のスキュー角θは、大リブ44と転動体12との間の界面において潤滑の欠乏を引き起こす可能性があり、前記界面に関連付けられる摩擦力を著しく増大する。円すいころ軸受の従来の使用は、一般に、転動体12のスキューの影響が問題にならない条件で有効である。とりわけ電気自動車パワートレイン内のシャフト位置など高速動作では、軸受アセンブリの必要とされる回転速度は、15,000RPMを超える可能性がある。高回転速度では、リブ-ころ界面でのけん引力は、転動体12をスキューさせるのに十分なほど大きなものになり得、転動体12の潤滑を枯渇させ、軸受アセンブリ4を損傷させる。しかし、本開示によるケージ24は、下記でさらに詳細に述べるように、転動体12のスキューに反対に作用するためのジオメトリを備える。
【0013】
図3は、軸受アセンブリのケージ24の1つのころポケット40内の転動体12を示す。ころポケット40は、ケージブリッジ36から等距離かつそれに対して平行の軸B、およびケージ24の反対向きの軸方向リング28、32から等距離かつそれに対して平行の軸Cによって4つの象限Q1、Q2、Q3、およびQ4に分割される。2つの軸B、Cは、スキューを受けるとき転動体12がその周りで回転される転動体12上の点で交差する。4つの象限Q1、Q2、Q3、およびQ4のそれぞれの中には、転動体12に面し、それと選択的に相互作用する、ブリッジ36の内面56上に配置されたレイリー・ステップ・アレイ52がある。レイリー・ステップ・アレイ52は、軸Cから離隔される。換言すれば、ケージブリッジ36は、内面56の各端部にありそれぞれの反対向きの軸方向リング28、32に近接するレイリー・ステップ・アレイ52を特徴とする。
【0014】
レイリー・ステップ・アレイ52は、それらが同時に有効化されるように共に配置され向きを決められた1つまたは複数のレイリー・ステップ・ジオメトリをグループ化したものである。本開示におけるレイリー・ステップのジオメトリは、従来のレイリー・ステップの一般的な形状に従っており、転動体12上で流体力Fを生成するために使用される。レイリー・ステップ・ジオメトリの各特徴の寸法は、特定の適用例に合わせることができる。図の実施形態では、各象限Q1、Q2、Q3、Q4は、複数のレイリー・ステップ・ジオメトリをそれぞれが含む1つのレイリー・ステップ・アレイ52を有する。
図6は、ケージブリッジ36上にレイリー・ステップ・アレイ52を含む軸受ケージ24の斜視図を示す。他の実施形態では、いくつかの象限は、レイリー・ステップ・アレイなしで提供されることができ、または、レイリー・ステップ・アレイ52内のステップ・ジオメトリの異なる数または配置を含むことができる。たとえば、一方向に回転するだけである軸受アセンブリは、軸受アセンブリが一方向においてスキューが反対の作用を受けることを必要とするにすぎないことになるので、象限の1つの対角セットだけに位置するレイリー・ステップ・アレイ52を有することができる(たとえば、第1の象限Q1および第3の象限Q3であり、第2の象限Q2および第4の象限Q4にはレイリー・ステップ・アレイがない)。同様に、ころポケット40は、好適な適用例のために効果的とみなされる場合、象限の1つだけにレイリー・ステップ・アレイを備えてもよい。レイリー・ステップ・アレイ52を含む各象限内において、アレイが有効化されるとき生成される流体力であって結果として生じる流体力が転動体12に対して効力を有して作用するように、ステップ・ジオメトリは配置される。アレイ52内の各レイリー・ステップの特定の場所は、使用可能な製造技法およびアレイ52からの、得られる流体力の所望の方向に基づいて様々であり得る。図の実施形態は、単一の円すいころ軸受アセンブリ上でのレイリー・ステップ・アレイ52の使用を示す。しかし、記載のレイリー・ステップ・アレイ52は、ケージを利用し、ケージと転動体表面との間に潤滑を含む他の軸受アセンブリ上で使用することができる。たとえば、円筒ころ軸受アセンブリ、多列円すいころ軸受アセンブリ、および多列円筒ころ軸受アセンブリはすべて、本開示の態様によるレイリー・ステップ・アレイを用いるケージを特徴とすることができる。
【0015】
ころポケット40内に配置された転動体12に対して、レイリー・ステップ・アレイ52は、転動体12の表面上の4つの象限Q1’、Q2’、Q3’、およびQ4’に対応するブリッジ36上の位置に位置する。4つの転動体象限Q1’、Q2’、Q3’、Q4’は、転動体12の回転中心線Dと、転動体12の軸方向端面48に対して平行であり前記端面48から等距離である軸Eとによって分割される。各象限Q1’、Q2’、Q3’、およびQ4’は、レイリー・ステップ・アレイ52から流体力Fを選択的に受け取るようにころポケット40の対応する象限Q1~Q4内に位置するレイリー・ステップ・アレイ52と界接するように構成される。転動体12がスキューしていないとき、ころ象限Q1’~Q4’は、ころポケット象限Q1~Q4と位置合わせされ、転動体12とレイリー・ステップ・アレイ52を有する表面56との間の隙間は、閾値以上である。転動体12がスキュー角θを受けるとき(
図5Aおよび
図5B)、象限Q1~Q4は、象限Q1’~Q4’から位置ずれし、転動体12とケージ表面56との間の隙間は、1つの対角象限の対内で閾値未満である。閾値未満では、レイリー・ステップ・アレイ52は、下記でさらに述べるように、流体力学的な休眠状態から流体力学的に有効化された状態に移行する。
【0016】
図4は、支承軸Aに沿って見た転動体12のうちの1つの一部分を示す。この図からわかるように、レイリー・ステップ・アレイ52は、生成された流体力Fがころ中心線Dにおいて軌道20に対してほぼ正接に作用するように位置する。レイリー・ステップ52によって生成される流体力Fの正接成分は、図の実施形態における転動体スキューに反対に作用することに責任を担う。
【0017】
本開示の軸受アセンブリ4は、流動する潤滑剤を利用する。従来、潤滑剤は、軸受アセンブリ内で、動作に関連付けられる摩擦力を制限するために使用される。本開示の軸受アセンブリ4における潤滑は、流体力Fが転動体スキューに応答して生成される作動流体としてレイリー・ステップ・アレイ52と相互作用することにも責任を担う。本明細書に記載のレイリー・ステップ・アレイ52は、流体力Fを生成するように潤滑剤および第2の表面(即ち、転動体表面16)と相互作用する、ケージ24のブリッジ36上に含まれる受動的なジオメトリである。流体力Fがあるかどうかは、潤滑剤が転動体12とレイリー・ステップ・アレイ52を含むケージブリッジ表面56との間にあること、および転動体12とレイリー・ステップ・アレイ52との相対速度によって決まる。転動体12とレイリー・ステップ・アレイ52との間の相対速度が増大すると、より大きな流体力Fが生成されることになる。
【0018】
動作時には、各ころポケット40内に位置するレイリー・ステップ・アレイ52は、ポケット40内の転動体12が長い間スキューを受けるのを防止するように働く。さらに、レイリー・ステップ・アレイ52は、ころのスキューによって有効化され、有効化された後、レイリー・ステップ・アレイ52において潤滑剤内に生成される流体力を用いてスキューに反対に作用するように構成される。
図5A~
図5Bは、転動体12の2つの潜在的なスキュー角θ、θ’を概略的に示す。第3の転動体位置は、ゼロのスキュー角に対応し、図示されていない。転動体12のスキュー角θ、θ’は、軸受アセンブリ4の回転方向に基づく。レイリー・ステップ・アレイ52と転動体12との間の一方向の相対運動だけが、流体力Fを生成する。両方の潜在的な方向のスキュー角(即ち、角度θ、θ’)を補償するために、対角線上で反対向きのレイリー・ステップ・アレイ52は、同じ幾何学的ステップ方向性を有し、一方、隣接するレイリー・ステップ・アレイ52は、反対の幾何学的ステップ方向性を有する。したがって、2つの隣接するレイリー・ステップ・アレイ52は、同時に有効状態になることができない - これは、単に相殺する流体力Fを引き起こすことになり、スキューθ、θ’は、補償されないことになる。第1のスキュー角θ(
図5A)を有する転動体12は、第2の象限Q2および第4の象限Q4内のレイリー・ステップ・アレイ52を有効化し、一方、第1の象限Q1および第3の象限Q3内のレイリー・ステップ・アレイ52を無効化されたままにする。第2の象限および第4の象限のレイリー・ステップ・アレイ52からの流体力Fは、組み合わさってスキュー角θに反対に作用するように転動体12に作用する偶力を生成する。有効化されるレイリー・ステップ・アレイ52は、スキュー角を許容可能な量まで低減し、またはスキュー角θを完全に解消し得る。軸受アセンブリ4の回転方向が逆転され、転動体12がスキュー角θ’を受ける場合(
図5B)、第2の象限Q2および第4の象限Q4のレイリー・ステップ・アレイ52は、無効化されたままであり、一方、第1の象限Q1および第3の象限Q3のレイリー・ステップ・アレイ52が有効化される。転動体12がスキューを受けない、またはほとんど受けない場合、4つの象限Q1、Q2、Q3、およびQ4すべてにおけるレイリー・ステップ・アレイ52は、単に無効化されたままであり、ケージブリッジ36は、従来のように機能し、転動体12の間隔を維持する。レイリー・ステップ・アレイ52によって生成される流体力Fは、転動体12とレイリー・ステップ・アレイ52との相対速度の関数である。軸受アセンブリ4のより大きな回転速度により相対速度が増大するにつれて、レイリー・ステップ・アレイ52は、より大きな流体力Fを生成する。この効果は、レイリー・ステップ・アレイ52が軸受アセンブリ4の回転速度に基づいて異なる大きさの転動体スキューを補償することを可能にする。高い回転速度を有する軸受アセンブリは、転動体12上により大きなスキューを誘導することになる。同時に、より高い回転速度は、有効状態のレイリー・ステップ・アレイ52からより大きな流体力を生成することになる。したがって、少なくとも1つのレイリー・ステップ・アレイを有するケージ24の設計は、そうでない場合高速動作に適さない、またはそれに値するものにすることができない軸受アセンブリを、いまや高速動作に適した、またはそれに値するものにすることができる。1つのそのような例は、電気自動車ドライブトレイン内での円すい転がり軸受の使用である。
【0019】
本発明について、いくつかの好ましい実施形態を参照して詳細に述べたが、変形形態および修正形態が、記載されている本発明の1つまたは複数の独立の態様の範囲および精神内で存在する。
【0020】
本発明の様々な特徴が以下の特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】