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  • 特表-親水性膜分離層 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】親水性膜分離層
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/00 20060101AFI20240315BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20240315BHJP
   B01D 71/54 20060101ALI20240315BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20240315BHJP
   B01D 71/80 20060101ALI20240315BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20240315BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20240315BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B01D69/00 500
B01D71/68
B01D71/54
B01D71/52
B01D71/80
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558685
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 US2022022319
(87)【国際公開番号】W WO2022212357
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,478
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100214639
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】バッゲ,ビタ
(72)【発明者】
【氏名】バッゲ,ロブ
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン,シジュン
(72)【発明者】
【氏名】リィン,ウェイピィン
(72)【発明者】
【氏名】ウアン,パァン
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA10
4D006MA18
4D006MB20
4D006MC07
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC29
4D006MC33
4D006MC36
4D006MC37
4D006MC38
4D006MC39
4D006MC40
4D006MC45X
4D006MC48
4D006MC53
4D006MC54X
4D006MC57
4D006MC58
4D006MC60
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC69
4D006MC81
4D006MC87
4D006MC88
4D006NA46
4D006NA49
(57)【要約】
本明細書には、ガター層と、多孔性支持体及び/又はガス分離層との親和性が向上したガス分離膜が記載される。このような複合膜は、水/空気の選択透過性が高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、
親水性ポリマー及び架橋剤を含む中間ガター層と、
少なくとも1つのイオン液体と、ポリマーとを含むガス分離層と、
を備え、
前記中間ガター層は、前記多孔性基材と前記ガス分離層との間に位置する、ガス分離膜。
【請求項2】
前記多孔性基材がポリスルホンを含む、請求項1のガス分離膜。
【請求項3】
前記中間ガター層の前記親水性ポリマーがポリウレタンを含む、請求項1又は2のガス分離膜。
【請求項4】
前記中間ガター層の前記架橋剤が多官能アジリジン液体架橋剤を含む、請求項1、2又は3のガス分離膜。
【請求項5】
前記中間ガター層は、約97wt%のポリウレタン及び約3wt%の多官能アジリジン液体架橋剤を含む、請求項1、2、3又は4のガス分離膜。
【請求項6】
前記中間ガター層は、実質的にシリコンフリーである、請求項1、2、3、4又は5のガス分離膜。
【請求項7】
前記ガス分離層の前記イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート、又は、これらの任意の組み合わせを含む、請求項1、2、3、4、5又は6のガス分離膜。
【請求項8】
前記ガス分離層の前記ポリマーは、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレングリコール、又は、これらの組み合わせを含む、請求項1、2、3、4、5、6又は7のガス分離膜。
【請求項9】
前記ガス分離層において、前記イオン液体及び前記ポリマーは、約92.2及び約7.8の相対量で存在する、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8のガス分離膜。
【請求項10】
保護層をさらに備える、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9のガス分離膜。
【請求項11】
前記保護層は、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、又は、これらの組み合わせを含む、請求項10のガス分離膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Bita Bagge、Robb Bagge、Shijun Zheng、Weiping Lin、Peng Wang
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/168,478号に基づく優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本開示に別段の指示がない限り、本開示に記載された詳細は、本願の特許請求の範囲の先行技術ではなく、この部分に含まれることによって先行技術であるとは認められない。
【0004】
ガス分離膜は、多孔性支持層と活性層(例えば、ガス識別層、ガス選択層又はガス分離層)によって形成することができ、ガス分離層の細孔サイズや構造特性を利用して、ガス混合物からガスを選択的に分離するために用いられる。したがって、ガスの透過性や選択性は、膜の性能を表す重要な指標として利用される。このような性能は、活性層を形成する材料に大きく影響される。
【0005】
このようなガス分離膜の共通部材としては、中間層又は「ガター層」がある。ガター層は、ガス透過性のポリマー層であり、通常、支持層とガス分離層の間に、ガス透過性の滑らかな中間面を与えるために用いられる。ほとんどのガター層は、疎水性の性質があり、一般的には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリアルキルシロキサン又はポリアルコキシシロキサンを含む。PDMSは、疎水性材料であり、支持材料及び/又はガス分離層に通常用いられる材料と接合しにくく、これらの各層の接合を損なって、膜の早期剥離を引き起こすことがある。この問題に対応するために、この表面に対して、高エネルギーのプラズマによる処理、及び/又は、親水性官能基による官能基化が行われることがある。しかし、これらの解決策では、効果を発揮するために、追加の表面活性化工程が必要であり、シロキサンのガター層を用いて作製される膜の製造コストを増加させうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、中間ガター層と、支持層及びガス分離層との親和性を向上させる手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
多孔性基材と、
親水性ポリマー及び架橋剤を含む中間ガター層と、
少なくとも1つのイオン液体と、ポリマーとを含むガス分離層と、
を備える、ガス分離膜を包含する。
【0008】
いくつかの実施形態では、多孔性基材がポリスルホンを含む。いくつかの実施形態では、中間ガター層の親水性ポリマーがポリウレタンを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、中間ガター層の架橋剤が多官能アジリジン液体架橋剤を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、ガス分離膜のガター層は、約97wt%のポリウレタン及び約3wt%の多官能アジリジン液体架橋剤を含む。いくつかの実施形態では、ガス分離膜のガター層は、実質的にシリコンフリーである。いくつかの実施形態では、ガス分離層のイオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート、又は、これらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ガス分離層のポリマーは、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレングリコール、又は、これらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ガス分離層において、イオン液体及びポリマーは、約92.2及び約7.8の相対量で存在する。
【0011】
いくつかの実施形態では、ガス分離膜は、保護層をさらに備える。いくつかの実施形態では、保護層は、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、又は、これらの組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、選択的脱水膜の考えうる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[概要]
本開示は、選択透過性のガス分離膜に関するものであり、多孔性支持体とガス分離層との間に位置するガター層を備える膜を包含する。
【0014】
選択透過性膜は、1つのガスに対して比較的透過性を有し、かつ、他のガスに対して比較的非透過性を有する膜を包含する。例えば、膜は、二酸化炭素に対して比較的透過性を有し、かつ、窒素及び/又は水素に対して比較的非透過性を有していてもよい。異なる物質に対する透過率の比は、選択透過性(例えば選択性)の説明に役立つことがある。
【0015】
いくつかの実施形態は、膜10(図1参照)などのガス分離膜を包含する。膜は、多孔性支持体14などの多孔性支持体と、親水性ポリマー及び架橋剤を含み、支持体の上に配置された層16などの中間ガター層と、ガス識別層であり、ガター層の上に配置された層20などのガス分離層とを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、ガス分離膜は、ガス分離層の外側、又はガス分離層の上に配置された層22などの保護層を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、ガター層の親水性ポリマーは、ポリウレタンを含んでいてもよい。
【0016】
[多孔性支持体]
多孔性支持体は、任意の適切な材料、及び任意の適切な形状であってもよく、その上に、選択透過性膜の層などの層が堆積又は配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、多孔性支持体は、中空繊維又は多孔質材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、多孔性支持体は、ポリマー又は中空の単繊維などの多孔質材料を含んでいてもよい。多孔性支持体は、不織布を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリアミド(ナイロン)、ポリイミド(PI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、(延伸ポリプロピレンを含む)ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル(例えば、PA200)、又は、これらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、多孔性支持体は、非晶質ポリマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、多孔性支持体のガラス転移温度は、150℃超、175℃超又は180℃超であってもよい(例えば、ポリスルホンのガラス転移温度は、190℃~230℃でありうる)。いくつかの実施形態では、多孔性支持体の連続使用温度は、140℃を上回ってもよく、例えばポリスルホン(PSF)では約150℃である。連続使用温度を決定するための適切な手段は、Underwriters Laboratory (UL) 746に記載された方法でありうる。いくつかの実施形態では、多孔性支持体はPSFを含む。
【0017】
[中間層(ガター層)]
いくつかの実施形態では、ガス分離膜は、多孔性支持体とガス分離層との間に配置された中間層を備える。本開示の目的のために、中間層は、中間ガター層又はガター層と呼ぶことがある。いくつかの実施形態では、ガター層は、親水性ポリマーを含んでいてもよい。ガター層は、支持層の表面を滑らかにし、ガス分離層の組成が支持層に侵入することを防止するために用いられうると考えられる。いくつかの実施形態では、ガター層の親水性ポリマーは、ポリ(ビニルピロリドン)、又は、ビニルピロリドン基を含むモノマー単位から構成された任意のコポリマーであってもよい。ガター層の適切な親水性ポリマーの他の例としては、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(2-エチルアクリル酸)、ポリ(2-プロピルアクリル酸)、ポリ(スルホプロピルアクリレート)カリウム塩、ポリ(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、又は、これらの基の1つ以上を含む任意のコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ガター層の親水性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、又はポリ(エチレンオキシド)であってもよい。他の実施形態では、ガター層の親水性ポリマーは、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、又はポリアクリルアミドであってもよい。特定の実施形態では、ガター層の親水性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(硫酸ビニル)カリウム塩、ポリ(ビニルスルホン酸、ナトリウム塩)、ポリ(スチレンスルホン酸塩)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、又は、他の類似の水溶性高分子電解質などの高分子電解質であってもよい。他の実施形態では、ガター層の親水性ポリマーは、デンプン、グリコーゲン、アラビノキシラン、キチン、アルギン酸塩、ペクチン、ヒアルロン酸、酸性多糖類、又は、天然若しくは合成の他の水溶性多糖類などの多糖類であってもよい。
【0018】
ガター層に用いられる親水性ポリマーの他の例としては、ヒドロキシル化酸化シリコン、ポリエチレングリコール、ポロキサミン、ポリソルベート、ポリプロピレングリコール、ポリウレタン、イソシアネート、ポリエチレンオキシド、他の類似化合物、及び、これらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
ガター層に用いるために、上記の親水性ポリマーの組み合わせも想定される。
【0020】
他の実施形態では、ガター層の親水性ポリマーの分子量の範囲は、例えば、1k~2000k、2k~1000k、3k~700k、5k~500k、7k~400k、又は10k~300kである。
【0021】
いくつかの実施形態では、ガター層の親水性ポリマーは、静的水接触角θが<90°である材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、当該材料の静的水接触角θは、<70°、75°、80°、85°又は90°であってもよい。いくつかの実施形態では、ガター層の親水性ポリマーは、熱可塑性でありうる。いくつかの実施形態では、熱可塑性の親水性ポリマーは、ポリウレタン、ポリエーテル-アミドブロックコポリマー、ポリエチレン-アクリル酸コポリマー、ポリエチレンオキシドコポリマー、エチレンアクリル酸エステルコポリマー、ポリ乳酸及びコポリマー、ポリアミド、ポリエステルブロックコポリマー、スルホン化ポリエステル、ポリエーテル-エステルブロックコポリマー、ポリエーテル-エステル-アミドブロックコポリマー、ポリアクリレート、ポリアクリル酸及び誘導体、アイオノマー、ポリエチレン-酢酸ビニルと酢酸ビニル、ポリビニルアルコール及びそのコポリマー、ポリビニルエーテル及びそのコポリマー、ポリ-2-エチル-オキサゾリン及び誘導体、ポリビニルピロリドン及びそのコポリマー、熱可塑性セルロース誘導体、又は、これらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ガター層は、親水性ポリマーを、少なくとも50wt%、少なくとも55wt%、少なくとも60wt%、少なくとも65wt%、少なくとも70wt%、少なくとも75wt%、少なくとも80wt%、少なくとも85wt%、少なくとも90wt%、少なくとも95wt%、又は少なくとも99wt%含みうる。いくつかの実施形態では、ガター層の親水性ポリマーは、ウレタンモノマーを含むポリウレタンであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、脂肪族ポリウレタンであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールと、ジオール又はジアミンの鎖延長剤とを含んでいてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、ガター層は、親水性ポリマー及び架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、任意の適切なものを用いてもよい。いくつかの実施形態では、架橋剤は、多官能アジリジン液体架橋剤である。いくつかの実施形態では、ガター層は、親水性のポリウレタンポリマー、及び多官能アジリジン液体架橋剤を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、ガター層の成分の相対量は、重量百分率で、ポリウレタン約97wt%、及び、架橋剤約3wt%である。
【0024】
いくつかの実施形態では、ガター層は、シリコン及び/又はシロキサンを、0.5wt%未満、1.0wt%未満、2.5wt%未満、5.0wt%未満、又は7.5wt%未満含みうる。いくつかの実施形態では、ガター層は、実質的にシリコンフリーでありうる。例えば、ガター層は、実質的にシリコンを含まない。
【0025】
[ガス分離層]
本開示のガス分離膜は、ガス分離層を備える。いくつかの実施形態では、ガス分離層は、イオン液体及びポリマーを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、ガス分離層は、イオン液体を含む。いくつかの実施形態では、イオン液体は、イミダゾリウム系イオン液体を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、イミダゾリウム系イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-テトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([C2mim][NTf2])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート([C2mim][OAc])、又は、これらの組み合わせでありうる。
【0027】
いくつかの実施形態では、ガス分離層は、ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、親水性ポリマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX、例えばPEBAX1657(Akema))、ポリエチレングリコール(PEG)、又は、これらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、ガス分離層において、イオン液体とポリマーの相対量は、イオン液体が約70%~約99%であり、親水性ポリマーが約1%~約30%であってもよい。いくつかの実施形態では、イオン液体の量は、約70~75%、約75~80%、約80~85%、約85~90%、約90~95%、約95~99%、約92.2%、又は、これらの値により区切られる範囲内の任意の百分率であってもよい。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーの量は、約1~5%、約5~10%、約10~15%、約15~20%、約20~25%、約25~30%、約7.8%、又は、これらの値により区切られる範囲内の任意の百分率であってもよい。一実施形態では、ガス分離層は、相対量で、92.2%のイオン液体と、7.8%のポリマー、PEBAX1657とを含む。
【0028】
[保護層]
いくつかの実施形態では、ガス分離膜は、保護層を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、保護層は、ガス分離層の上に配置され、多孔性基材に対して遠位にある。いくつかの実施形態では、保護層は、ガス分離膜における他のガス分離膜部材と同じ硬化性組成物を含んでいてもよい。これにより、製造や原料のコストについて、効率化することができる。いくつかの実施形態では、保護層を作製するために用いられる各成分の量は、ガター層を作製するために用いられる同じ成分の量について、最大で10%の範囲内であり、より好ましくは約5%の範囲内である。例えば、ガター層が特定の成分(例えばポリウレタン)を90wt%含む場合、保護層は、同じ成分を、81wt%~99wt%(すなわち、+/-10%)、85.0wt%~95.0wt%(すなわち、+/-5%)含んでいてもよい。
【0029】
別の実施形態では、保護層がポリアミンを含み、ガス分離層がカルボン酸基を含んでいてもよい。保護層のポリアミンにおけるアミノ基と、ガス分離層のカルボン酸基との間の引力は、ガス分離層に対する保護層の接着力を向上させうると考えられる。
【0030】
[実施形態]
詳細には、以下の実施形態が考えられる。
【0031】
(実施形態1)
a.多孔性基材と、
b.親水性ポリマーを含むガター層と、
c.少なくとも1つのイオン液体と、ポリマーとを含む選択層と、
を備えた、ガス分離膜。
【0032】
(実施形態2)
ガター層は、実質的にシリコンフリーである、実施形態1のガス分離膜。
【0033】
(実施形態3)
親水性ポリマーは、ポリウレタン(PU)及び架橋剤を含む、実施形態1のガス分離膜。
【0034】
(実施形態4)
少なくとも1つのイオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム-テトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-テトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([C2mim][NTf2])、及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート([C2mim][OAc])を含む、実施形態1のガス分離膜。
【0035】
(実施形態5)
第2ポリマーは、ポリエーテルブロックアミド、又はポリエチレングリコールを含む、実施形態1のガス分離膜。
【0036】
(実施形態6)
保護層をさらに備える、実施形態1のガス分離膜。
【実施例
【0037】
本明細書に記載された選択透過性膜の実施形態では、他の選択透過性膜と比べて、性能が向上することがわかった。これらの利点は、以下の例によってさらに実証されるが、これらの例は、本開示の例示のみを目的としており、決して、範囲又は基礎となる原理を限定することを意図したものではない。
【0038】
(例1:膜エレメントの作製)
4×4インチのポリスルホン(PSF)基材について、細孔を水で満たし、コート材料のコート時に、細孔の内部にコート材料が浸透することを低減させるために、使用前に、蒸留した脱イオン水に1時間浸漬させた。
【0039】
PEBAXの作製:Pebaxのパレット(Arkema Americas、King of Prussia、PA、USA)6gと、重量比7/3の水/エタノール混合物194gとを混合して、3wt%の溶液を作製した。混合物は、水浴中、80℃で3.5時間撹拌し、室温まで冷却した。Pebax、及び、イオン液体、例えば1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMIM][BF4])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([EMIM][BF4])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([C2mim][NTf2]、又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート([C2mim][OAc])のようなイミダゾリウム系イオン液体から選択される1つを、Pebaxとイオン液体の比が7.8:92.2となるように混合した。混合物について、室温の水浴中で1時間超音波処理し、さらに30分間撹拌した。この超音波処理と撹拌の工程を3回繰り返した。Pebax/イオン液体の溶液については、スピンコーターのキャスティング法(1000rpmで10秒、2000rpmで40秒、さらに800rpmで3秒)によって、(以下の例2の)親水性ガター層がコートされたPSF基材の上に、1.5mlの溶液を滴下することによりスピンコートを行った(スピンコーターとしては、Laurell Technologies社のモデル:WS-400B-6NPP/LITE/AS/C2を用いた)。
【0040】
(例2:親水性ガター層を備えた膜の作製)
100(PU):3(CX-100)の重量比となるポリウレタン(PU)(NeoRez(登録商標)R-967、DSM Coating Resins、Augusta、GA、USA)3.88gと、CX-100(多官能アジリジン液体架橋剤、DSM Coating Resins、Augusta、GA、USA)0.12gを水(196.0g)に溶解させて、2wt%の溶液(約200ml)を作製した。
【0041】
4×4インチのポリスルホン(PSF)基材について、基材の細孔を水で満たし、コート材料のコート時に、細孔の内部にコート材料が浸透することを防止するために、使用前に、蒸留した脱イオン水に1時間浸漬させた。
【0042】
上記の例1で調製した、脱イオン水中の2wt%ポリウレタン(PU)-Cx-100溶液50mlを、キャスティング法によって、計算厚さ約2μmでPSF基材の上に配置し、室温下、4torrの真空系で10分間乾燥させ、さらに一晩乾燥させた。真空オーブン(TVO-5 Vacuum oven、Cascade TEK、Irving、TX、USA)において、コートされた基材を80℃で1時間乾燥させた。
【0043】
(例3:接触角の測定)
膜の静的水接触角を測定するために、接触角測定システム(Attension(登録商標) Theta Lite optical tensiometer、Biolin Scientific UK、Manchester、United Kingdom)を用いた。乾燥した平膜の表面に脱イオン水の液滴を置き、接触角を得た。接触角の報告値は、異なる位置での3~4より多い接触角の値を平均して算出されたものである。接触角を決定するための他の適切な方法としては、ASTM D5725-99(2008)及びTAPPI Standard T552が挙げられる。PSF基材に2wt%PU-CX-100を追加することにより接触角が70°となった一方、ガター層がないPSF単体では92°であった。この結果は、ガス分離膜のPU-CX-100表面が、ガター層のない膜よりも親水性であり、親水性であるイオン液体/ポリマーのガス分離層を当該表面に均一にコートできることを示唆している。2wt%PU-CX-100、PSF基材の膜は、CO2のガス透過速度が約2600GPUであり、CO2/N2のガス透過選択率が5.5であった。
【0044】
(例4:膜エレメントの性能)
例1で作製した膜エレメントについて、ガス透過性能及びガス選択性能の試験を行った。以下の表1に示すように、PU-CX-100のガター層を備える4つの膜は、いずれも良好な性能を示した。シリコンのガター層を備えた膜では、その疎水性の性質により、シリコンのガター層を備えたフィルムの品質が低いため、4つの膜のうち、3つが性能に劣っていた。
【0045】
【表1】
【0046】
別段の指示がない限り、本明細書で使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数字は、いかなる場合も、「約」の表現で修飾されると理解されるべきである。各数値パラメーターは、少なくとも、報告された有効数字の桁数を考慮して、通常の丸め法(rounding techniques)を適用して解釈されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、数値パラメーターは、達成しようとする所望の特性に応じて変更されることがあり、そのため、本開示の一部として理解されるべきである。少なくとも、本明細書に示される例は、説明のみを目的としており、本開示の範囲を限定しようとするものではない。
【0047】
本明細書に別段の指示がない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示の実施形態を説明する文脈(特に以下の実施形態の文脈)で用いられる「a」、「an」、「the」、及び同様の指示対象の表現は、単数と複数の両方を含むと解釈されるべきである。本明細書に別段の指示がない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、本明細書に記載された全ての方法は、任意の適切な順序で実施されてもよい。本明細書に記載された全ての例や言語表現(例えば、「など(such as)」)の使用は、あくまで本開示の実施形態をよりよく説明することを意図したものに過ぎず、任意の実施形態の範囲に限定を課すものではない。本明細書の文言は、本開示の実施形態の実施に必要な非具体化要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0048】
本明細書に開示された代替要素又は実施形態のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、又は、グループの他のメンバー若しくは本明細書から見出される他の要素との任意の組み合わせで、参照され、具体化されてもよい。グループの1つ以上のメンバーは、便宜上及び/又は特許性の理由から、グループに包含されてもよく、グループから削除されてもよいことが予想される。
【0049】
本明細書では、特定の実施形態について、その実施形態を実施するための、本発明者らに知られている最良の態様を含めて説明する。当然ながら、これらの記載された実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者に明らかになる。発明者らは、当業者がこのような変形を適切に採用することを予想し、本開示の実施形態が、本明細書に具体的に記載されたものとは別様に実施されることを意図する。したがって、実施形態は、適用法によって許容されるように、実施形態に列挙された主題の全ての変形例及び均等物を含む。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、考えうる全ての変形における上述の要素について、任意の組み合わせが考慮される。
【0050】
最後に、本明細書に開示された実施形態は、実施形態の原理を例示するものであることが理解されるべきである。採用されうる他の変形例は、実施形態の範囲内である。そのため、代替の実施形態は、限定ではなく例として、本明細書の教示に従って利用されてもよい。したがって、実施形態は、正確に図示及び説明された実施形態に限定されない。
図1
【国際調査報告】