(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】低誘電率樹脂組成物及びそれから調製される製品
(51)【国際特許分類】
C08L 25/00 20060101AFI20240315BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20240315BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240315BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20240315BHJP
C08L 57/00 20060101ALI20240315BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20240315BHJP
C08L 61/06 20060101ALI20240315BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20240315BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240315BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20240315BHJP
C08F 212/34 20060101ALI20240315BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240315BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20240315BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C08L25/00
C08L71/12
C08L53/00
C08L93/04
C08L57/00
C08L45/00
C08L61/06
C08L35/00
C08K3/013
C08F222/40
C08F212/34
C08J5/24 CER
B32B5/28 Z
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558748
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2022058474
(87)【国際公開番号】W WO2022207741
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストルツ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】スコビー,ケネス・ブラック
(72)【発明者】
【氏名】エルマー,スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,マイケル・イン
(72)【発明者】
【氏名】ナポリ,アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AB09
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4F100JG01B
4J002AF02Y
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4J100AB13P
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4J100DA57
4J100FA03
4J100FA18
4J100JA43
4J100JA44
(57)【要約】
【課題】高周波数の信号伝送に対応するため、十分な熱機械的特性、耐湿性、低誘電特性を有し、加工の容易な改良されたポリマー絶縁材料を提供する。
【解決手段】本開示は、概して、低い誘電率(Dk)と低い誘電散逸率(Df)とを有する樹脂組成物であって、ビニルベンジルインデン化合物、ビニルベンジルフルオレン化合物、及びそれらの混合物から選択される架橋剤と、ポリフェニレンエーテル誘導体、炭化水素熱可塑性物質、及び1種以上のマレイミド基を含有する化合物から選択される樹脂とを含む樹脂組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物であって:
(a)以下の(i)~(iii):
(i)以下の式(1):
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、ビニルベンジル基、水素原子、低級アルキル基、1~5個の炭素原子を有するチオアルコキシ基、及びアリール基から選択され、ただし、R
1、R
2、及びR
3の少なくとも1つが、ビニルベンジル基であり、かつR
4が、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~5個の炭素原子を有するチオアルコキシ基、チオアリールオキシ基、及びアリール基から選択される)を有するビニルベンジルインデン、
(ii)以下の式(2):
【化2】
(式中、各R
5は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~5個の炭素原子を有するチオアルコキシ基、及びアリール基から選択され、xは、0~4の整数、かつR
6及びR
7は、ビニルベンジル基、水素原子、低級アルキル基、1~5個の炭素原子を有するチオアルコキシ基、及びアリール基から独立して選択され、ただしR
6及びR
7のうちの少なくとも1つは、ビニルベンジル基である)を有するビニルベンジルフルオレン、及び
(iii)それらの混合物、
から選択される架橋剤と
(b)以下の(i)~(iv):
(i)ポリフェニレンエーテル誘導体;
(ii)炭化水素熱可塑性物質;
(iii)以下の式(3):
【化3】
(式中、Xは、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ポリアリール基、置換ポリアリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、ポリヘテロアリール基、及び置換ポリヘテロアリール基であり、R
8は、水素、低級アルキル基、又は置換低級アルキル基であり、mは、1~10の整数である)を有する化合物;及び
(iv)それらの混合物
から選択される樹脂とを含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテル誘導体は、以下の式(4)又は式(5):
【化4】
(式中、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、及びR
24は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基であり、
A及びBは、式(6)及び式(7):
【化5】
(ただし、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、R
31、及びR
32は、各々独立して、水素原子又はアルキル基であり、かつc及びdは、各々、1~50又は1~20の整数である)によって表される構造であり、
Yは、水素原子又はアルキル基であり、かつ
X
1及びX
2は、各々独立して、ビニルベンジル基又は以下の式(8):
【化6】
(ただし、R
33は、水素原子又はアルキル基である)によって表される構造である)を有する化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭化水素熱可塑性物質は、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)ブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭化水素熱可塑性物質は、ポリ(スチレン-コ-α-メチルスチレン)樹脂、ロジン、ロジンエステル、不均化ロジンエステル、水素化ロジンエステル、重合ロジンエステル、テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、芳香族修飾テルペン樹脂、C5/C9石油樹脂、水素化石油樹脂、フェノール樹脂、クマロン-インデン樹脂、ポリジシクロペンタジエン樹脂、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(3)の化合物は、mは2であり、R
8は水素であり、Xは、-R
36CH(アルキル)-、-R
36NH
2R
36-、-COCH
2-、-CH
2OCH
2-、-CO-、-O-、-O-O-、-S-、-S-S-、-SO-、-CH
2SOCH
2-、-OSO-、-C
6H
5-、-CH
2(C
6H
5)CH
2-、-CH
2(C
6H
5)(O)-、-フェニレン-、-ジフェニレン-、又は構造
【化7】
(式中、R
37は、-R
36CH
2-、-CO-、-C(CH
3)
2-、-O-、-O-O-、-S-、-S-S-、-(O)S(O)-、又は-S(O)-であり、かつR
36は、独立して、水素原子、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である)である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビニルベンジルフルオレンは、9,9-ビス-(o-ビニルベンジル)-9H-フルオレン、9,9-ビス-(m-ビニルベンジル)-9H-フルオレン、9,9-ビス-(p-ビニルベンジル)-9H-フルオレン、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ビニルベンジルインデンは、1,1,3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1,2-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1,2-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記(a)架橋剤は、(i)少なくとも約50重量%の、1,1,3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1,2-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1,2-(4-ビニルベンジル)-1H-インデンのうちの1種以上と、約50重量%未満の、1,1-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(4-ビニルベンジル)-1H-インデンのうちの1種以上と、任意選択的に、約5重量%未満の、1-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン; 3-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(4-ビニルベンジル)-1H-インデンのうちの1種以上とを含む(ただし、前記重量%は、前記(i)成分の全重量に基く)、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
硬化触媒を更に含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
充填剤を更に含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
基板上に、請求項1に記載の樹脂組成物の部分的又は完全硬化層を含む、物品。
【請求項12】
前記基板は、織布又は不織布の有機又は無機基板である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記無機基板は、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、アラミド繊維織布、アラミド繊
維不織布、液晶ポリマー繊維織布、液晶ポリマー繊維不織布、合成ポリマー繊維織布、合成ポリマー繊維腐食布、ランダムに分散された繊維による強化材、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)構造、導電性材料、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせである、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記導電性材料は、銀、ニッケル、金、コバルト、銅、アルミニウム、又は銀、ニッケル、金、コバルト、銅、若しくはアルミニウムの合金である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
請求項1に記載の樹脂組成物に含浸させた多孔質基板を含む、プリプレグ。
【請求項16】
請求項15に記載のプリプレグと、前記プリプレグの少なくとも1つの表面上に配設された導電性材料の層とを含む、積層体。
【請求項17】
請求項16に記載の積層体シートの前記表面上に導電性パターンを形成することによって製造される、プリント配線板。
【請求項18】
プリプレグ、メタルクラッド積層体、プリント回路基板、発光ダイオード、電子コーティング、織物、ポリマー型成形化合物、医療用型成形化合物、及び接着剤における、請求項1に記載の樹脂組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はビニルベンジル系樹脂組成物及び例えばプリプレグの製造、プリント配線板用積層ボード、モールディング材料、及び接着剤のような、様々な用途でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
無線ネットワーク及び衛星通信の発展に伴い、電子機器製品のトレンドは、より高速でより高周波数かつより大容量の音声、映像、及びデータの伝送へと向かっている。また、これらの電子機器製品がより薄くかつより小型になるにつれて、電気回路基板は、その複雑さ、密度、及び多階層化を増す傾向にある。高い伝送率とシグナルインテグリティとを維持するため、プリント回路基板(printed circuit board、PCB)は、低い誘電率(Dk)と低い誘電損失(損失係数又は散逸率Dfと呼ばれることも多い)を有し、その結果として低い信号損失を有する材料を必要としている。
【0003】
PCB用の基板材料としては、ポリマー絶縁材料が通常使用される。PCB用の積層体は、ポリマー絶縁材料単独から作製されるか、あるいはポリマー絶縁材料をガラス、繊維、不織布、無機充填剤などとブレンドすることで作製される。低コストであり、硬化すると高い耐熱性及び耐薬品性を有するため、エポキシ樹脂が従来採用されてきた。しかしながら、エポキシ樹脂は、比較的高い誘電率及び高い誘電正接を有するので、高周波数の信号で、好適な低い散逸率を実現することは困難である。ポリフェニレンエーテル(PPO)樹脂は、比較的低い誘電率と比較的低い散逸特性を有するため、同様に積層体に使用されてきたが、新たな電子分野における高周波数信号の使用は、更に低い誘電損失定数と散逸率とを必要としている。フッ素樹脂(典型的には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)によって代表される)は、低い誘電率と散逸率とを有するが、しかしフッ素樹脂は熱可塑性樹脂であるため、型成形及び加工中に大いに膨張収縮をし、取り扱いが容易ではない材料である。
【0004】
特許文献1は、フェニルマレイミドの、ビニル及びアリルフルオレンの混合物との組み合わせを含む組成物を記載し、そのような組成物は、誘電特性、特に低い誘電正接と、高周波数領域での耐熱性とを有するプリプレグを製造するのに使用されるものである。しかしながら、ビニル及びアリルフルオレンを含む混合物の使用は、アリルフルオレンの存在のゆえに、その組成物のガラス転移温度を低いものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特許出願公開第2003/283076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、益々増加する高周波数の信号伝送に対応するため、十分な熱機械的特性、耐湿性、低誘電特性を有し、加工の容易な改良されたポリマー絶縁材料の開発に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、概して、(a)ビニルベンジルフルオレン、ビニルベンジルインデン、及びそれらの混合物から選択される架橋剤と、(b)ポリフェニレンエーテル誘導体、炭化水素熱可塑性物質、1種以上のマレイミド基を含有する化合物、及びそれらの混合物から選
択される樹脂と、を含む樹脂組成物を対象とする。
【0008】
本開示の他の実施形態は、本開示の新規樹脂組成物を含む、硬化樹脂、シート状の硬化樹脂、積層体、プリプレグ、電子部品、並びに単層回路基板及び多層回路基板を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、概して、低い誘電率(Dk)と、低い誘電散逸率(Df)と、優れた熱機械的特性(例えば高い熱安定性、良好な加工性、高い剥離強さ、良好な耐湿性、及び/又は高いガラス転移温度(Tg))とを有する樹脂組成物を対象とする。本開示の目的を達成するための試みにおいて、驚くべきことには、樹脂組成物を、上述の架橋剤(複数可)を、上述の樹脂と組み合わせて用いて作製すると、目下最新の樹脂を含有する樹脂組成物と比較して、有意なDfの減少を達成することが可能であるということが判明した。その新規樹脂組成物は全体として、低いDkと低いDfとをギガヘルツ帯域(例えば1~10GHz)で示し、それによりその樹脂組成物が、様々な用途(例えば、プリプレグ、メタルクラッド積層板、プリント回路基板、発光ダイオード、電子コーティング)において厳格に必要とされる工業規格を満たすことが可能になる。新規樹脂組成物はまた、織物、ポリマー成形化合物、及び医療用成形化合物における使用も見出され得る。
【0010】
以下の用語は、以下に説明する意味で用いられる。
【0011】
「備える、含む(comprising)」という用語とその派生形は、追加的構成要素、工程、又は手順が、本明細書において開示されているか否かに関わらず、それらの存在のいかなるものも排除する意図はない。何らの疑念の余地を解消するため、本出願において、含む(comprising)という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、特にそうではないとことわらない限り、任意の追加的添加物、補助剤、又は化合物を含み得る。対照的に、「本質的に(・・・)からなる(consisting essentially of)」という用語は、本明細書に用いられた場合には、後続の引用部のいかなる範囲からも、いかなる他の構成要素も、他の工程も、又は他の手順も排除する(ただし、動作可能性にとって本質的ではないものを除く)ものであり、「(・・・)からなる(consisting of)」という用語は、本明細書に用いられた場合には、具体的に叙述又は列挙されていない、いかなる構成要素、工程、又は手順も排除するものである。「又は/若しくは」という用語は、特に他にことわらない限り、列挙されたメンバーに個別に言及するだけでなく、それらを任意で組み合わせたものにも言及するものである。
【0012】
冠詞「a」及び「an」が本明細書に用いられる場合には、その冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)に言及するものである。一例として、「冠詞『a』のついた架橋剤」が意味するのは、1種の架橋剤又は2種以上の架橋剤である。「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態によれば(according to one embodiment)」などのフレーズは、このフレーズに続く特定の機能、構造、又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれること、そして、本開示の2つ以上の実施形態に含まれ得ることを一般的に意味する。重要なことは、そのようなフレーズは、必ずしも同じ態様に言及するものではないということである。もし、明細書に、ある構成要素又は機能が、含まれ「得る」、「ることができる」、「ることができるであろう」、若しくは「得るであろう」、又はある特徴を有「し得る」、「することができる」、「することができるであろう」、又は「し得るであろう」と述べられている場合には、その特定の構成要素又は機能が含まれている必要はなく、またそのような特徴を有している必要もない。
【0013】
本明細書において用いられる場合、「約」という用語は、値又は範囲においてある程度
の変動を容認することができ、例えば、その程度とは、言及された値又は現有された範囲の限界点の、10%以内、5%以内、又は1%以内であり得る。
【0014】
範囲の形式で表現される値は、当該範囲の限界点として明示的に引用されている数値のみならず、当該範囲内に包摂される、すべての、個別の数値またはより狭い範囲を含むものとして、あたかも、個々の数値及びより狭い範囲が明示的に引用されているかのように、柔軟に解釈されるべきである。例えば、1~6という範囲は、具体的に開示されるより狭い範囲、例えば、1~3、2~4、3~6に加えて、当該範囲内の個別の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6も有するというように考えるべきである。このことは、当該範囲の広さに関わらず適用される。
【0015】
「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、ある条件下で、ある利益をもたらし得る実施形態に言及するものである。しかしながら、同じ条件下又は他の条件下で、他の実施形態もまた好ましい場合があり得る。更に、1つ以上の好ましい実施形態が記述されている場合、それは、他の実施形態が無用であるということを暗に意味するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲から排除することを意図するものでもない。
【0016】
「範囲内」又は「範囲以内」(及び類似の文言)という用語は、その言及された範囲の端点を含む。
【0017】
置換基が、従来の慣習に従った(左から右へと記述される)化学式で指定されている場合、その置換基は、同様に、その構造を右から左に記述したものから得られる、化学的に同一の置換基含む。例えば、-CH2O-は、-OCH2-と等価である。
【0018】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、その後に記載されている事象又は条件が発生しても発生していなくてもよいということ、及びその記述は、上記の事象又は条件が発生している事例とそれが発生していない事例とを含むということを意味する。
【0019】
「アルキル」という用語は、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビルラジカルを指し、「置換アルキル」という用語は、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、アミド、C(O)H、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバメート、スルホニル、スルホンアミド、及びスルフリルから選択される1種以上の置換基を更に担持しているアルキルを指す。
【0020】
「低級アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビルラジカルを指し、「置換低級アルキル」という用語は、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、アミド、C(O)H、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバメート、スルホニル、スルホンアミド、及びスルフリルから選択される1種以上の置換基を更に担持している低級アルキルを指す。
【0021】
「アルケニル」という用語は、2~20個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合とを有する、直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビルラジカルを指す。
【0022】
「アルキニル」という用語は、2~20個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合とを有する、直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビルラジカルを指す。
【0023】
「アルキルカルボニル」、「アルケニルカルボニル」、及び「アルキニルカルボニル」
という用語は、カルボニル基(C=O)の炭素原子を介して分子の残りの部分に結合している、上に定義したアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を指す。
【0024】
「シクロアルキル」という用語は、3~8個の範囲内の炭素原子を含有する2価の環状の環含有基を指し、「置換シクロアルキル」という用語は、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、アミド、C(O)H、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバメート、スルホニル、スルホンアミド、及びスルフリルから選択される1種以上の置換基を更に担持しているシクロアルキルを指す。
【0025】
「アリール」という用語は、6~14個の炭素原子を有する2価の芳香族基を指し、「置換アリール」という用語は、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、アミド、C(O)H、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバメート、スルホニル、スルホンアミド、及びスルフリルから選択される1種以上の置換基を更に担持しているアリールを指す。
【0026】
「ポリアリール」という用語は、互いに直接又は1~3個の原子リンカーを介してリンクしている、複数(すなわち、少なくとも2個であって、最大で約10個)の2価の芳香族基(各々は6~14個の炭素原子を有する)を含む2価の部分を指し、「置換ポリアリール」という用語は、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、アミド、C(O)H、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバメート、スルホニル、スルホンアミド、及びスルフリルから選択される1種以上の置換基を更に担持しているポリアリールを指す。
【0027】
「ヘテロアリール」という用語は、環構造の一部として1種以上のヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含有し、3~14個の範囲内の炭素原子を有する2価の芳香族基を指し、「置換アリール」という用語は、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、アミド、C(O)H、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバメート、スルホニル、スルホンアミド、及びスルフリルから選択される1種以上の置換基を更に担持しているアリーレン基を指す。
【0028】
「ポリヘテロアリール」という用語は、ヘテロアリーレン基は、互いに直接リンクしているか又は1~3個の原子リンカーを介してリンクしている、複数(すなわち、少なくとも2個であって、最大で約10個)のヘテロアリール基(各々は少なくとも1個のヘテロ原子と、3~14個の範囲内の炭素原子とを含有する)を含む、2価の部分を指し、「置換ポリヘテロアリーレン」は、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、アミド、C(O)H、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバメート、スルホニル、スルホンアミド、及びスルフリルから選択される1種以上の置換基を更に担持しているポリヘテロアリールを指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「誘電散逸率(Df)」及び「誘電正接」という用語は同義であり、電圧が回路に印加された際に絶縁材料内に散逸されるエネルギーの量(すなわち、電気損失)を指す。Dfは、回路内の信号の損失を表す。
【0030】
本明細書で使用する場合、「誘電定数(Dk)」及び「誘電率」という用語は同義であ
り、空気又は真空の静電容量に対する絶縁材料の相対的静電容量の尺度を指す。誘電定数は、電子信号のスピードを決定する。
【0031】
「剥離強さ」という用語は、極薄金属(例えば銅)箔を、それが積層されていた基板から分離するために必要とされる力を指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「ガラス転移温度」又は「Tg」という用語は、ポリマーの非晶質ドメインが、ガラス状態の脆性、剛性、及び硬直性の特性を帯びる温度を意味する。上記の用語は、硬化樹脂が、ガラス状態からより柔らかくよりゴム状の状態に変化する温度を更に意味する。
【0033】
一実施形態によれば、本開示は、以下の(a)及び(b)を含む樹脂組成物を対象とする:(a)架橋剤であって、以下の(i)~(iii):(i)ビニルベンジルインデンであって、以下の式(1):
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、ビニルベンジル基、水素原子、低級アルキル基、1~5個の炭素原子を有するチオアルコキシ基、及びアリール基から選択され、ただし、R
1、R
2、及びR
3の少なくとも1つが、ビニルベンジル基であり、かつR
4が、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~5個の炭素原子を有するチオアルコキシ基、チオアリールオキシ基、及びアリール基から選択される)を有するビニルベンジルインデン、(ii)ビニルベンジルフルオレンであって、以下の式(2):
【化2】
(式中、各R
5は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~5個の炭素原子を有するチオアルコキシ基、及びアリール基から選択され、xは、0~4の整数、かつR
6及びR
7は、ビニルベンジル基、水素原子、低級アルキル基、1~5個の炭素原子を有するチオアルコキシ基、及びアリール基から独立して選択され、ただしR
6及びR
7のうちの少なくとも1つは、ビニルベンジル基である)を有するビニルベンジルフルオレン、及び(iii)それらの混合物、から選択される架橋剤、及び(b)樹脂であって、以下の(i)~(iv):(i)ポリフェニレンエーテル誘導体、(ii)炭化水素熱可塑性物質、(iii)化合物であって、以
下の式(3):
【化3】
(式中、Xは、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ポリアリール基、置換ポリアリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、ポリヘテロアリール基、及び置換ポリヘテロアリール基であり、R
8は水素、低級アルキル基、又は置換低級アルキル基であり、かつmは、1~10の整数である)を有する化合物、及び(iv)それらの混合物、から選択される樹脂。
【0034】
一実施形態によれば、式(1)を有するビニルベンジルインデンは、式中R1、R2、及びR3は、独立して、水素及びビニルベンジル基から選択され、ただし、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つは、ビニルベンジル基であり、かつR4は、水素原子、ハロゲン原子、及び低級アルキル基から選択される化合物を含む。また別の一実施形態では、式(1)を有するビニルベンジルインデンは、式中、R1、R2、及びR3は、独立して、水素及びビニルベンジル基から選択され、ただし、R1、R2、及びR3のうち少なくとも1つは、ビニルベンジル基であり、かつR4は水素である化合物を含む。また更に別の一実施形態では、式(1)を有するビニルベンジルインデンは、式中、R1及びR2は、ビニルベンジル基であり、R3は、水素又はビニルベンジル基であり、かつR4は水素である化合物を含む。また更に別の一実施形態では、ビニルベンジルインデンは、1,1,3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1,2-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1,2-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、及びそれらの混合物から選択される。
【0035】
また別の一実施形態では、式(1)を有するビニルベンジルインデンは、式中、R1、R2、及びR3は、ビニルベンジル基であり、かつR4は、水素である化合物を含む。そのような実施形態は、ビニルベンジルインデンを、単独で、又はその混合物として含む。一実施形態では、混合物は、約50重量%~約85重量%の1,1,2-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、約10重量%~約50重量%の1,1,2-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、及び0重量%~約10重量%の1,1,3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデンを含む(ただし、重量%は混合物の総重量に基づく)。
【0036】
別の一実施形態では、式(2)を有するビニルベンジルフルオレンは、式中、各R5は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、及び低級アルキル基から選択され、かつR6及び
R7は、独立して、ビニルベンジル基、水素原子、及び低級アルキル基から選択されるが、ただし、R6及びR7のうち少なくとも1つは、ビニルベンジル基である化合物を含む。また別の一実施形態では、式(2)を有するビニルベンジルフルオレンは、式中、各R5は水素原子であり、かつR6及びR7は、独立して、ビニルベンジル基及び水素原子から選択される化合物を含む。また別の一実施形態では、式(2)を有するビニルベンジルフルオレン式中、各R5は水素原子であり、かつR6及びR7は、ビニルベンジル基である化合物を含む。また更に別の一実施形態では、式(2)を有するビニルベンジルフルオレンは、9,9-ビス-(2-ビニルベンジル)-9H-フルオレン、9,9-ビス-(3-ビニルベンジル)-9H-フルオレン、9,9-ビス-(4-ビニルベンジル)-9H-フルオレン、及びそれらの混合物から選択される。
【0037】
別の一実施形態によれば、(a)架橋剤は、(i)0%~100重量%の式(1)を有するビニルベンジルインデンと、(ii)100%~0重量%の式(2)を有するビニルベンジルフルオレンと、を含む(ただし、重量%は、架橋剤の総重量に基づく)。また別の一実施形態では、(a)架橋剤は、(i)10%~90重量%の式(1)を有するビニルベンジルインデンと、(ii)90%~10重量%の式(2)を有するビニルベンジルフルオレンと、を含む(ただし、重量%は、架橋剤の総重量に基づく)。更なる一実施形態では、(a)架橋剤は、(i)20%~80重量%、30%~70重量%、又は40%~60重量%の式(1)を有するビニルベンジルインデンと、(ii)80%~20重量%、70%~30重量%、又は60%~40重量%の式(2)を有するビニルベンジルフルオレンと、を含む(ただし、重量%は、架橋剤の総重量に基づく)。
【0038】
特定の一実施形態では、(a)架橋剤は、(i)少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、又は少なくとも約80重量%の、1,1,3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1,2-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1,2-(4-ビニルベンジル)-1H-インデンの1種以上と、約50重量%未満、約40重量%未満、約30重量%未満、約20重量%未満の、1,1-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,1-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1,3-(4-ビニルベンジル)-1H-インデンの1種以上と、約5重量%未満、約3重量%未満、約1重量%未満、又は0重量%の、1-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、1-(4-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(2-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(3-ビニルベンジル)-1H-インデン、3-(4-ビニルベンジル)-1H-インデンの1種以上(ただし、重量%は、成分(i)の総重量に基づく)と、(ii)9,9-ビス-(2-ビニルベンジル)-9H-フルオレン、9,9-ビス-(3-ビニルベンジル)-9H-フルオレン、9,9-ビス-(4-ビニルベンジル)-9H-フルオレン、及びそれらの混合物から選択される式(2)を有するビニルベンジルフルオレンと、を含む。
【0039】
一実施形態では、樹脂組成物は、(a)架橋剤を、約90重量%未満、約80重量%未満、約70重量%未満、又は約60重量%未満の量で含み得る(ただし、重量%は、樹脂組成物の総重量に基づく)。別の一実施形態では、樹脂組成物は、(a)架橋剤を、少なくとも約25重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、又は少なくとも約45重量%の量で含み得る(ただし、重量%は、樹脂組成物の総重量に基づく)。また更に別の一実施形態では、樹脂組成物は、(a)架橋剤を、樹脂組成物の総重量に基づいて、約30%~90重量%の範囲以内、約40%~85重量%の範囲以内、約45%~80重量%の範囲以内の量で含み得る。
【0040】
別の一実施形態によれば、(b)樹脂は、ポリフェニレンエーテル誘導体を含む。ポリ
フェニレンエーテル誘導体は、式(4)又は式(5):
【化4】
(式中、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、及びR
24は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基であり、
A及びBは、式(6)及び式(7):
【化5】
(ただし、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、R
31、及びR
32は、各々独立して、水素原子又はアルキル基であり、かつc及びdは、各々、1~50又は1~20の整数である)によって表される構造であり、
Yは、水素原子又はアルキル基であり、かつ
X1及びX2は、各々独立して、ビニルベンジル基又は以下の式(8):
【化6】
(ただし、R
33は、水素原子又はアルキル基である)によって表される構造である)を有する化合物であり得る。
【0041】
一実施形態では、R9~R24基の1種以上は、水素原子又は1~18個の炭素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり得る。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、へキシル基、及びデシル基が挙げられるが、それらに限定されない。別の一実施形態では、R9~R24基の1種以上は、2~18個の炭素原子又は2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり得る。具体例としては、ビニル基、アリル基、又は3-ブテニル基が挙げられるが、それらに限定されない。また更に別の一実施形態では、R9~R24基の1種以上は、2~18個の炭素原子又は2~10個の炭素原子を有するアルキニル基であり得る。具体例としては、エチニル基又はプロパルギル基が挙げられるが、それらに限定されない。
【0042】
別の一実施形態では、R9~R24基の1種以上は、2~18個の炭素原子又は2~10個の炭素原子を有するアルキルカルボニル基であり得る。具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、及びオクタノイル基が挙げられるが、それらに限定されない。別の一実施形態では、R9~R24基の1種以上は、3~18個の炭素原子又は3~10個の炭素原子を有するアルケニルカルボニル基であり得る。具体例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びクロトノイル基が挙げられるが、それらに限定されない。また更に別の一実施形態では、R9~R24基の1種以上は、3~18個の炭素原子又は3~10個の炭素原子を有するアルキニルカルボニル基であり得る。具体例としては、プロピオロイル基が挙げられるが、それに限られない。
【0043】
一実施形態では、R25~R32基の1種以上は、水素原子、又は1~18個の炭素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり得る。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、へキシル基、及びデシル基が挙げられるが、それらに限定されない。
【0044】
別の一実施形態では、Yは、水素原子、又はメチル基、メチメチレン基、若しくはジメチルメチレン基である。
【0045】
また別の一実施形態では、X1及びX2基は、ビニルベンジル基(o-ビニルベンジル、m-ビニルベンジル、又はp-ビニルベンジル)又は式(8)(式中、R33は、水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、へキシル基、若しくはデシル基である)による構造であり得る。
【0046】
一実施形態では、(b)樹脂は、ポリフェニレンエーテル誘導体を、(b)樹脂の総重量に基づいて、0%~約100重量%の範囲以内の量で含み得る。別の一実施形態では、(b)樹脂は、ポリフェニレンエーテル誘導体を、(b)樹脂の総重量に基づいて、約10%~約90重量%又は約30%~約70重量%の範囲以内の量で含み得る。
【0047】
別の一実施形態によれば、(b)樹脂は、炭化水素熱可塑性物質を含む。一実施形態では、炭化水素熱可塑性物質は、スチレン系ブロックコポリマーである。スチレン系ブロックコポリマーは、スチレンとオレフィンとのコポリマー(例えばブタジエン又はイソプレンのような共役ジエン)であり得る。具体例としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンコポリマー(SBBS)、及びこれらの水素化材料、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEPS)、並びにスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)が挙げられるが、それらに限定されない。スチレン系ブロックコポリマー内のスチレン由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位の約10質量%~約90質量%の範囲内であり得る。別の一実施形態では、スチレン由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位の40質量%以上、45質量%以上、またより好ましくは46質量%以上であってよく、上限は、例えば、全繰り返し単位の90質量%以下又は85質量%以下であってよい。また別の一実施形態では、スチレン系ブロックコポリマーは、その1つの末端又はその両方の末端にスチレンブロックを有するブロックコポリマー特に好ましくは、その両方の末端にスチレンブロックを有するブロックコポリマーである。本出願では、スチレン由来の繰り返し単位は、スチレン又はスチレン誘導体の重合時にポリマー内に含有され、置換基を有し得るスチレン由来の構成単位である。スチレン誘導体の例としては、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、及び4-シクロへキシルスチレンが挙げられる。置換基の例としては、1~5個の炭素原子を有するアルキル基、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~5個の炭素原子を有するアルコキシアルキル基、アセトキシ基、及びカルボキシル基が挙げられる。
【0048】
スチレン系ブロックコポリマーは市販されているので、これらの市販の製品を使用することができる。非水素化製品の例としては、Kraton Corporationによって製造されているDシリーズコポリマー、JSR Corp.によって製造されているTRシリーズコポリマー、Asahi Kasei Corp.によって製造されているTUFPRENE(商標)コポリマー及びASAPRENE(商標)コポリマーが挙げられる。水素化製品の例としては、Kuraray Co.,Ltd.によって製造されているSEPTON(商標)、HYBRAR(商標)コポリマー、Asahi Kasei
Corp.によって製造されているTUFTEC(商標)コポリマー、JSR Corp.によって製造されているDYNARON(R)コポリマー、及びKraton Polymers LLCによって製造されているGシリーズコポリマーが挙げられる。スチレン系ブロックコポリマーの具体例としては、TUFTEC(商標)H1221、TUFTEC(商標)H1041、TUFTEC(商標)H1043、HYBRAR(商標)7125F、HYBRAR(商標)5125、及びSEPTON(商標)2104コポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0049】
別の特定の一実施形態によれば、炭化水素熱可塑性物質は、芳香族炭化水素樹脂であるが、それはすなわち還元すれば、芳香族モノマーのみから作られている。特定の一実施形態では、芳香族モノマーは、α-メチルスチレンである。したがって、特に好ましい一実施形態によれば、芳香族炭化水素樹脂は、約80℃と約170℃との間の範囲内、好ましくは約90℃と約140℃との間の範囲内の軟化点を有するα-メチルスチレンのホモポリマー樹脂又はコポリマー樹脂から選択される。なお、軟化点は、ISO規格4625(「リング及びボール」方法)にしたがって測定され得る。好ましくは、炭化水素熱可塑性物質は、約95℃と約105℃との間又は約115℃と約125℃との間の範囲内の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂である。又は約95℃と約115℃との間の軟化点を有するポリ(スチレン-コ-α-メチルスチレン)樹脂である。上記のような樹脂は、当
業者には周知であり、市販されているが、例えば以下のような商標名で販売されている:Arizona Chemical社製のSylvares(商標)SA100及びSylvares(商標)SA120で、これらは、約95℃と約105℃との間又は約115℃と約125℃との間の範囲内の軟化点をそれぞれ有するα-メチルスチレン樹脂であり、Cray Valley社製のCleartack(登録商標)W90又はNorsolene(登録商標)W90樹脂で、これらは、約85℃と約95℃との間の軟化点を有するポリ(スチレン-コ-α-メチルスチレン)樹脂であり、Eastman社製のKristalex3100LV、KristalexF100、Kristalex3105SD、及びKristalexF115であり、約100℃の、約96℃と約104℃との間の、若しくは約105℃の、又は約114℃と約120℃との間の軟化点をそれぞれ有するポリ(スチレン-コ-α-メチルスチレン)樹脂である。
【0050】
炭化水素熱可塑性物質の更なる例としては、ロジン、ロジンエステル、不均化ロジンエステル、水素化ロジンエステル、重合ロジンエステル、テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、芳香族修飾テルペン樹脂、C5/C9石油樹脂、水素化石油樹脂、フェノール樹脂、クマロン-インデン樹脂、及びポリジシクロペンタジエン樹脂が挙げられるが、それらに限定されない。
【0051】
一実施形態では、(b)樹脂は、炭化水素熱可塑性物質を、(b)樹脂の総重量に基づいて0%~約100重量%の範囲以内の量で含み得る。別の一実施形態では、(b)樹脂は、炭化水素熱可塑性物質を、(b)樹脂の総重量に基づいて、約10%~約90重量%の範囲以内、又は約30%~約70重量%の範囲以内の量で含み得る。
【0052】
別の一実施形態によれば、(b)樹脂は、式(3):
【化7】
(式中、Xは、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ポリアリール基、置換ポリアリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、ポリヘテロアリール基、及び置換ポリヘテロアリール基であり、R8は、水素原子、低級アルキル基、又は置換低級アルキル基であり、mは、1~10の整数である)を有する化合物及びそれらの混合物を含む。
【0053】
一実施形態では、mは1であり、R
8は水素原子であり、Xは、-R
34CH
2(アルキル)、-R
34NH
2R
34、-COCH
3、-CH
2OCH
3、-CH
2SOCH
3、-C
6H
5、-CH
2(C
6H
5)CH
3、フェニレン、ジフェニレン、シクロアルキル基、シラン置換アリール基、又は構造
【化8】
であり、上の式中、R
35は、水素原子、-F、-Cl、-Br、-HSO
3、-SO
2、又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Y
1は、水素原子、-R
34、-R
34CH
3、-C(CH
3)
3、-SOR
34、-CONH
2、又は-C(CF
3)
3であり、かつR
34は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。具体例としては、マレイミド-フェニル-メタン、フェニル-マレイミド、メチルフェニル-マレイミド、ジメチルフェニル-マレイミド、エチレンマレイミド、チオ-マレイミド、ケトン-マレイミド、メチレン-マレインイミド、マレインイミドメチルエーテル、マレイミド-エタンジオール、4-フェニルエーテル-マレイミド、及び4-マレイミド-フェニルスルホンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0054】
別の一実施形態では、mは2であり、R
8は水素であり、Xは、-R
36CH(アルキル)-、-R
36NH
2R
36-、-COCH
2-、-CH
2OCH
2-、-CO-、-O-、-O-O-、-S-、-S-S-、-SO-、-CH
2SOCH
2-、-OSO-、-C
6H
5-、-CH
2(C
6H
5)CH
2-、-CH
2(C
6H
5)(O)-、-フェニレン-、-ジフェニレン-、又は構造
【化9】
であり、上の式中、R
37は、-R
36CH
2-、-CO-、-C(CH
3)
2-、-O-、-O-O-、-S-、-S-S-、-(O)S(O)-、又は-S(O)-であり、かつR
36は、独立して、水素原子、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。例えば、ビスマレイミドは、N,N´-ビスマレイミド-4,4´-ジフェニルメタン、1,1´-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド、N,N´-(1,1´-ビフェニル-4,4´-ジイル)ビスマレイミド、N,N´-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビスマレイミド、1,1´-(3,3´ジメチル-1,1´-ビフェニル-4,4´-ジイル)ビスマレイミド、N,N´-エチレンジマレイミド、N,N´-(1,2-フェニレン)ジマレイミド、N,N´-(1,3-フェニレン)ジマレイミド、N,N´-チオジマレイミド、N,N´-ジチオジマレイミド、N,N´-ケトンジマレイミド、N,N´-メチレン-ビス-マレインイミド、ビス-マレインイミドメチル-エーテル、1,2-ビス-(マレイミド)-1,2-エタンジオール.N,N´-4,4´-ジフェニルエーテル-ビス-マレイミド、又は4,4´-ビス(マレイミド)-ジフェニルスルホンであり得る。
【0055】
別の一実施形態では、mは、2より大きく、式(3)の化合物は、バルビツール酸と上に開示されているビスマレイミドとの反応によって調製され得る。バルビツール酸は、以下の構造:
【化10】
(式中、R
38及びR
39は、独立して、水素原子、CH
3、C
2H
5、C
6H
5、CH(CH
3)
2、CH
2CH(CH
3)
2、CH
2CH
2CH(CH
3)
2又は
【化11】
である)を有し得る
【0056】
ビスマレイミドオリゴマーは、超分岐アーキテクチャ又は多二重結合反応性官能基を有する、多官能性ビスマレイミドオリゴマーである。超分岐アーキテクチャのビスマレイミドは、アーキテクチャマトリックスとして機能する。ラジカルバルビツール酸は、ビスマレイミドの二重結合にグラフト化され、分岐と配列とを開始させて超分岐アーキテクチャを形成させる。多官能性ビスマレイミドオリゴマーは、例えば、濃度比、化学的配列秩序添加手順、反応温度、反応時間、環境条件、分岐度、重合度、構造構成、及び分子量を調整することによって調製される。分岐アーキテクチャは、[(ビスマレイミド)-(バルビツール酸)z]a(式中、zは、0~4又は0.5~2.5であり、かつm(繰り返し単位)は、10未満である)である。
【0057】
一実施形態では、(b)樹脂は、式(3)を有する化合物を、(b)樹脂の総重量に基づいて、0%~約100重量%の範囲以内の量で含み得る。別の一実施形態では、(b)樹脂は、式(3)を有する化合物を、(b)樹脂の総重量に基いて、約10%~約90重量%の範囲以内又は約30%~約70重量%の範囲以内の量で含み得る。
【0058】
別の一実施形態によれば、樹脂組成物は、(b)樹脂を、約70重量%未満、約60重量%未満、又は約50重量%未満の量で含み得る(ただし、重量%は、樹脂組成物の総重量に基づく)。別の一実施形態では、樹脂組成物は、(b)樹脂を、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、又は少なくとも約20重量%の量で含み得る(ただし、重量%は、樹脂組成物の総重量に基づく)。別の一実施形態では、樹脂組成物は、(b)樹脂を、5%~40重量%の範囲以内、約7.5%~35重量%の範囲以内、又は約10%~30重量%の範囲以内の量で含み得る(ただし、重量%は、樹脂組成物の総重量に基づく)。
【0059】
本開示の樹脂組成物は、単に加熱するだけで硬化し得るが、硬化の効率を改善するために、カチオン又はフリーラジカル種を生成する硬化触媒を添加してもよい。そのような硬化触媒の例としては、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、脂肪族スルホニウム塩(BF4、PF6を含有する)が挙げられるが、それらに限定されない。F6として又は対アニオンとしてのSbF6として、例えば安息香及び安息香メチルのような安息香タイプ化合物、例えばアセトフェノン及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセ
トフェノンなどのようなアセトフェノンタイプ化合物、例えばチオキサントン及び2,4-ジエチルチオキサントンのようなチオキサントンタイプ化合物、例えば4,4´-ジアジドカルコン、2,6-ビス(4-アジドベンザル)シクロヘキサノン、及び4,4´-ジアジドベンゾフェノンのようなビスアジド化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビスプロパン、m,m´-アゾキシ-スチレン、及びヒドラゾンのようなアゾ化合物、例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及びジクミルペルオキシドのような有機過酸化物が挙げられる。
【0060】
樹脂組成物は、硬化触媒を、約0.1%~10重量%、約0.3%~7重量%、約0.5%~5重量%、又は約1%~3重量%の量で含有し得る(ただし、重量%は、樹脂組成物の総重量に基づく)。
【0061】
別の一実施形態では、貯蔵安定性を高めるため、任意選択的に、重合防止剤を樹脂組成物に添加してもよい。実施例は、例えばヒドロキノン、p-ベンゾキノン、クロラニル、トリメチルキノン、及び4-t-ブチルピロカテコールのような、キノン及び芳香族ジオールを含む。樹脂組成物は、重合防止剤が存在する場合には、約0.0005%~5重量%の重合防止剤を含み得る(ただし、重量%は、樹脂組成物の総重量に基づく)。
【0062】
別の一実施形態では、樹脂組成物は、任意選択的に、無機充填剤、有機充填剤、又はそれらの混合物を含み得る。本開示の実践において使用することが考えられる充填剤は、例えば、角ばった形、血小板状、球状、無定形、焼結体、焼成体、文末、フレーク状、結晶状、破砕状、押しつぶし形状、粉砕状など、又はそれらのうちの任意の2つ以上の混合物など、様々な種類の形態のものであり得る。本明細書において使用することが考えられる、本開示において好ましい粒子状充填剤は、実質的に球状のものである。
【0063】
そのような充填剤は、任意選択的に、熱伝導性を有するものであり得る。粉末状及びフレーク状、両方の形態の充填剤を、本開示の樹脂組成物に使用してもよい。広い範囲の粒径の充填剤を、本開示の実践において用いることもできる。約500nmから約300μmまでの範囲の粒径を採用し得るが、約100μm未満の粒径が好ましく、約5から約75μmの範囲内の粒径が、特に好ましい。
【0064】
本開示の実践においては、例えば、ソフト充填剤(例えば、未か焼タルク)、天然由来の鉱物(例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイト、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ、ケイ酸アルミニウムなど)、か焼した天然由来の鉱物(例えば、がん火輝石)、合成融合鉱物(例えば、コーディエライト)、処理した充填剤(例えば、シラン処理した鉱物)、有機ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、中空球、小球体、粉末状のポリマー材料など、様々な種類の充填剤を用いることができる。
【0065】
例示的な充填剤としては、タルク、雲母、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイト、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナTiO2、ケイ酸アルミニウム、アルミニウム-ジルコニウム-シリケート、コーディエライト、シラン処理した鉱物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。
【0066】
本開示の実践において任意選択的に用いられると考えられる熱伝導性のある充填剤としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイト、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ、ケイ酸ジルコニウムなどが挙げられる。好ましくは、これらの充填剤の粒径は、約20μmである。窒化アルミニウ
ムを充填剤として用いる場合には、粘着性のある、形状に適合するコーティング(例えば、シリカなど)を介して、不動態化されるのが好ましい。
【0067】
充填剤が存在する場合には、樹脂組成物は、最大約75重量%、最大約50重量%、最大約25重量%、又は最大約10重量%の充填剤を含有し得る(ただし、重量%は、樹脂組成物の総重量に基づく)。
【0068】
別の一実施形態では、樹脂組成物は、有機溶媒に溶解又は分散されて、樹脂組成物ワニスを形成してもよい。溶媒の量に制限はないが、典型的には、少なくとも30重量%~90重量%以下の固形分、約50重量%と85重量%との間の固形分、又は約55重量%と75重量%との間の固形分という溶媒中の固形分濃度を提供するのに十分な量である。
【0069】
有機溶媒は、具体的に限定されないが、ケトン、芳香族炭化水素、エステル、アミド、又はアルコールであり得る。より具体的には、使用し得る有機溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、エチルアセテート、N-メチルピロリドンホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0070】
本開示の樹脂組成物は、任意選択的に、1種以上の添加剤を含み得るが、その例としては、柔軟剤、抗酸化剤、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、分散剤、チキソトロープ剤、加工助剤、流れ調整剤、硬化促進剤、強度増進剤、強化剤、UVプロテクター(特に、回路機構の光学式自動欠陥検査(AOI)を可能にするのに適切なUVカット染料)、難燃剤など、及びそれらのうちの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。
【0071】
本発明のある実施形態において使用することが考えられる柔軟剤(可塑剤とも呼ぶ)としては、製剤の脆性を低減させる化合物が挙げられ、例えば、組成物のガラス転移温度を下げる分岐鎖プリアルカン又はポリシロキサンである。そのような可塑剤としては、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリチオール、ポリスルフィド、Poly BD(登録商標)及びRICON(登録商標)のブランド名で販売されているもののようなポリブタジエンが挙げられる。可塑剤を用いる場合、その可塑剤は、典型的には、樹脂組成物の重量の、約0.5重量%から最大約30重量%の範囲内の量で存在する。
【0072】
本発明の実践において使用することが考えられる抗酸化剤としては、ヒンダードフェノール(例えば、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、TBHQ(三級ブチルヒドロキノン)、2,2′-メチレンビス(6-三級ブチル-p-クレゾール)など)、ヒンダードアミン(例えば、ジフェニルアミン、N,N′-ビス(1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド、4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなど)、亜りん酸塩などが挙げられる。抗酸化剤が使われる場合、その量は、典型的には、樹脂組成物の重量に対して、約100から最大で2000ppmの範囲内である。
【0073】
本開示のある実施形態において使用することが考えられる染料としては、ニグロシン、
OrasolブルーGN、フタロシアニン、蛍光色素(例えば、蛍光グリーンゴールド染料など)などが挙げられる。有機染料が使用される場合、比較的少量(すなわち、約0.2重量%未満の量)ではっきりとした差を示す。
【0074】
本開示のある実施形態において使用することが考えられる顔料としては、製剤に色を与えることを唯一の目的として添加される、任意の粒状材料が挙げられ、例えば、カーボンブラック、金属酸化物(例えば、Fe2O3、酸化チタン)などが挙げられる。顔料が存在する場合、典型的には、樹脂組成物の重量に対して約0.5重量%から最大約5重量%の範囲内で存在する。
【0075】
本開示の実践において使用することが考えられる強化剤は、様々な物品の耐衝撃性を高める材料である。例示的な強化剤としては、例えばHypro、Hypoxなどの合成ゴムを含有する化合物が挙げられる。
【0076】
本発明のある実施形態において使用することが考えられるUVプロテクターとしては、入射してくる紫外線(UV)照射を吸収して、プロテクターが添加された樹脂又はポリマー系が曝露されたことの悪影響を低減する化合物が挙げられる。例示的なUVプロテクターとしては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバシン酸塩、シリコン、粉末金属化合物、ヒンダードアミン(当該技術分野では、「HALS」として知られているもの)などが挙げられる。
【0077】
本発明のある実施形態において使用することが考えられる消泡剤としては、加工中に液体の溶液が撹拌又はせん断された際に、泡沫又は泡の形成を妨げる材料が挙げられる。本明細書において使用することが考えられる例示的な消泡剤としては、n-ブチルアルコール、シリコン含有消泡剤などが挙げられる。
【0078】
本発明の実践において使用することが考えられる例示的なシランカップリング剤としては、無機表面と反応性ポリマー成分との間を架橋する材料が挙げられ、例えば、エポキシシラン、アミノシランなどの材料が挙げられる。
【0079】
本発明の実践において使用することが考えられる例示的なチキソトロープ剤としては、せん断力を加えられると、液体により高い流動特性を与えることができる材料が挙げられ、例えば、約2~3μmの範囲内の粒径を有するか、又は更にサブミクロンサイズの粒径を有する、表面積の大きい充填剤(例えば、ヒュームドシリカ)のような材料が挙げられる。
【0080】
本開示の樹脂組成物は、上記の成分を適切に混合し、かつまた必要に応じて、混練手段(例えば、3ロールミル、ボールミル、ビーズミル、又はサンドミルなど)又は撹拌手段(高速回転ミキサー、スーパーミキサー、又はプラネタリーミキサーなど)を用いて混練するか又は混合することによって調整され得る。更に、上記の有機溶媒を添加することによって、樹脂組成物ワニスもまた、上述のようにして調整され得る。
【0081】
本開示のまた更に別の一実施形態によれば、基板上の、部分的に又は完全に硬化された上述の樹脂組成物の層を含む物品が提供される。
【0082】
当業者には容易に認識できるように、様々な基板が、本開示の実践において使用するのに好適であり、例えば、ポリエステル、液晶ポリマー、ポリアミド(例えば、アラミド)、ポリイミド、ポリアミド-イミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾキサジン、導電性材料(例えば、導電性金属)など、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。導電性金属基板が用いられ
る場合、例えば銀、ニッケル、金、コバルト、銅、アルミニウム、そのような金属の合金などのような材料が、本明細書において使用されると考えられる。
【0083】
本開示のまた別の一実施形態によれば、上述の物品(すなわち、基板上の本開示による樹脂組成物を含む物品)を製造する方法が提供され、その方法は、樹脂組成物を基板上に適用することと、もし有機溶媒が、上記のような適用を容易にするために任意選択的に使用される場合には、実質的に全ての有機溶媒を、そこから取り除くことと、を含むものである。樹脂組成物は、浸漬、含浸、噴霧などによって基板に適用され得る。
【0084】
本開示のまた更に別の一実施形態によれば、多孔質の基板を、本開示による樹脂組成物に含浸させることと、もし有機溶媒がそのような含浸を容易にするために任意選択的に用いられる場合には、得られた含浸済みの基板を、実質的に全ての有機溶媒をそこから取り除くのに好適な条件下にさらすことと、によって製造されるプリプレグが提供される。
【0085】
当業者には容易に認識できるように、様々な多孔質基板を、本発明のプリプレグを調製するためにもちいることが可能である。多孔質基板は、織布基板であっても、不織布基板であってもよい。そのような基板の厚さは特に限定されないが、例えば、約0.01mm~0.3mmの範囲であってよい。
【0086】
多孔質基板の例としては、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、アラミド繊維織布、アラミド繊維不織布、液晶ポリマー繊維織布、液晶ポリマー繊維不織布、合成ポリマー繊維織布、合成ポリマー繊維腐食布、ランダムに分散された繊維による強化材、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)構造、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。具体的には、多孔質基板として使用することが考えられる材料としては、ガラス繊維、水晶、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエーテルイミド繊維、環状オレフィンコポリマー繊維、ポリアルキレン繊維、液晶ポリマー、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)、ポリテトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマー(MFA)、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられ得るが、それらに限定されない。
【0087】
本開示のまた別の一実施形態によれば、所定の数の上述のプリプレグのシートを積層し、成形することによって製造される、積層シートが提供される。
【0088】
本開示による積層シートは、例えば、低い誘電率、低い散逸率、高い熱分解温度など、多くの特に有益な特性を有する。好ましい一実施形態では、本開示による積層シートは、3.0以下の公称誘電率と、10GHzで0.002以下の散逸率と、少なくとも100℃又は少なくとも150℃のガラス転移温度とを有する。
【0089】
本開示の一態様では、本明細書に記載の積層シートは、任意選択的に、1種以上の導電層を更に含み得る。そのような任意選択の導電層は、金属箔、金属板、導電性ポリマー層などからなる群から選択される。一実施形態では、金属は、銅、銀、ニッケル、金、コバルト、アルミニウム、及びそのような金属の合金であり得る。
【0090】
別の一実施形態では、積層シートを形成する方法が提供される。その方法は、1種類の溶媒又は複数種類の溶媒の混合物に、本開示の樹脂組成物を溶解させたか又はしっかりと混ぜたワニス浴に多孔質基板を接触させることを含む。上記の接触させることは、多孔質基板が樹脂組成物でコーティングされるような条件下で行われる。その後、コーティングされた多孔質基板を、溶媒を蒸発させるのに十分な温度に加熱されたゾーンに通す、なお、加熱ゾーンの温度は、樹脂組成物が加熱ゾーンに滞留している時間の間に相当程度硬化
してプリプレグを形成する温度よりも低い温度である。
【0091】
多孔質基板は、浴内で、好ましくは1秒~300秒の、より好ましくは1秒~120秒の、最も好ましくは1秒~30秒の滞留時間を有する。そのような浴の温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは10℃~40℃、最も好ましくは15℃~30℃である。コーティングされた多孔質基板の、加熱ゾーンにおける滞留時間は、0.1分~15分間、より好ましくは0.5分間~10分間、最も好ましくは1分間~5分間である。
【0092】
そのようなゾーンの温度は、残っているいかなる溶媒も揮発させるのに十分ではあるが、その滞留時間中に成分が完全に硬化する結果を招くほどは高くないような温度である。そのようなゾーンの好ましい温度は、80℃~250℃、より好ましくは100℃~225℃、最も好ましくは150℃~210℃である。好ましくは、加熱ゾーンに、不燃性ガスをオーブンに通すか、オーブンにわずかに真空引きをするかによって溶媒を除去するための手段が存在する。多くの実施形態では、コーティングされた基板は、高い温度の複数のゾーンに曝露される。最初のゾーンは、溶媒が揮発して取り除かれ得るように設計される。後のゾーンは、樹脂組成物が部分的に硬化する結果となるように設計されている(B-段階)。
【0093】
1枚以上のプリプレグのシートは、好ましくは、任意選択的に、1枚以上の例えば銅などの導電性材料のシートとともに、積層体に加工される。そのような更なる加工において、コーティングされた多孔質基板の1箇所以上のセグメント又は部分が、互いに及び/又は導電性材料に接触させられる。その後、接触させた部分は、構成要素を硬化させるのに十分な高圧及び高温に曝露され、隣接する部分の樹脂が反応して連続的な樹脂マトリックスを、多孔質基板どうしの間に形成する。上記の部分が硬化する前に、それらの部分はカットされかつ積み重ねられるか、又は折り畳まれかつ積み重ねられて、所望の形状及び厚みの部分が形成され得る。用いられる圧力は、1psi~1000psiの間のいずれかの圧力であり得るが、10psi~800psiの間の圧力が好ましい。上記の部分又は積層体内の樹脂組成物を硬化するために用いられる温度は、特定の滞留時間、用いられた圧力、及び用いられた成分に依存して変化する。用いられ得る好ましい温度は、100℃と250℃との間、より好ましくは120℃と220℃との間、最も好ましくは、170℃と200℃との間である。滞留時間は、好ましくは10分間~120分間、より好ましくは20分間~90分間である。
【0094】
一実施形態では、加工処理は連続したプロセスであって、多孔質基板がオーブンから取り出され、所望の形状及び厚さに整えられ、非常に高い温度で短時間にわたってプレスされる。特に、そのような高温は、180℃~250℃、より好ましくは190℃~210℃であり、時間は、1分間~10分間、より好ましくは2分間~5分間である。そのような高速プレス加工は、加工設備のより効率的な使用を可能にする。そのような実施形態では、好ましい補強材料は、ガラスウェブ又は織布である。
【0095】
いくつかの実施形態では、積層体又は最終製品を、プレス外のポスト硬化工程にかけるのが望ましい。この工程は、硬化反応を完了させるように設計されている。ポスト硬化工程は、通常、130℃~220℃の温度で、20分間~200分間の時間にわたって実行される。このポスト硬化工程は、真空下で実行されて、揮発し得るあらゆる成分を除去してもよい。
【0096】
このように、本開示のまた更に別の一実施形態によれば、積層シートを製造する方法が提供され、その方法は、所定の数の、本開示によるプリプレグのシートを積層し成形することを含む。
【0097】
本開示の更なる一実施形態によれば、上述の積層シート(複数可)の表面上に導電性のパターンを形成することによって製造されるプリント配線板が提供される。導電性パターンを形成することは、例えば、レジストパターンを、積層シート(複数可)の表面上に形成することと、エッチングによりシートの不要な部分を取り除くことと、レジストパターンを取り除くことと、必要なスルーホールをドリル穿孔して形成することと、再びレジストパターンを形成することと、スルーホールどうしを接続するためにメッキを施すことと、最後にレジストパターンを取り除くことと、によって実行し得る。
【0098】
本開示のまた更なる一実施形態によれば、プリント配線板がそこから調製された、プリプレグの1つ以上の層を用いて接合される上述のパターン形成された積層レイヤーの、所定の数のシートを積層し成形することによって製造される多層プリント配線板が提供される。
【0099】
本発明のまた更なる実施形態によれば、プリント配線板を製造する方法が提供され、その方法は、本開示による積層シートの表面に導電性パターンを形成することを含む。
【0100】
本開示のまた更に別の一実施形態によれば、所定の数の上述のプリプレグのシートを積層し成形して内側層用のプリント配線板を得て、導電性パターンを表面上に形成している内側層用のプリント配線板上にプリプレグを積層することによって製造される多層プリント配線板が提供される。
【0101】
したがって、本開示のプリプレグ及びプリント配線板は、通常、様々な電気及び電気デバイス(例えば、ギガヘルツ帯域以上の高周波数を扱う移動通信機器、又はその基地局デバイス、及び例えばサーバ及びルーターのようなネットワーク関連の電子デバイス、及び大型コンピュータ)に用いられるネットワーク用のプリント回路基板の構成部品として使用され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の樹脂組成物は、広い周波数領域でフラットな誘電散逸率(Df)を有し得るので、それから作製される構成部品は、いくつかの異なる処理速度で効率的に動作することができる。このことは重要であるが、それは、多くの目下最新の電子デバイスは、ある範囲の周波数にわたって動作することができ、そのため電子部品は、この周波数範囲にわたって、適正な機能を維持することが望ましいからである。別の一実施形態では、本開示の樹脂組成物は、10GHzで、約3未満、約2.9未満、又は約2.8未満の誘電率(Dk)と、10GHzで、約0.0025未満又は約0.002未満の散逸率(Df)とを有し得る。
【0103】
以下に本開示を、以下の非限定的な実施例を参照しつつ更に説明する。
【実施例】
【0104】
実施例1.
a)本発明の樹脂組成物と比較の樹脂組成物との調製
表1に指定の成分を、室温でトルエンに、50重量%の濃度で溶解させた。
【表1】
【0105】
次に均質な樹脂組成物を金属板上に注ぎ、周囲条件でトルエンを一晩蒸発させた。予め乾燥させた樹脂フィルムをオーブンに入れ、窒素下で、以下の硬化サイクルを用いて段階的に硬化させた:70℃で1時間、90℃で1時間、140℃で1時間、及び200℃で2時間。おおよその厚さが0.5mmの得られたプレートを、その誘電率(Dk)及びその散逸率(Df)について、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)を用いて10GHzの周波数で評価した。結果を表2に示す。
【表2】
【0106】
b)本開示によるプリプレグの調製
表1に指定の全ての成分を、室温でトルエンに溶解させた後、シリカ充填剤を添加し、50~60重量%の固形物濃度の、均質な樹脂組成物ワニスを製造した。ガラス繊維(E2116NEガラス)をワニスに浸漬して、次に、オーブン内に垂直にして入れ、3分間にわたって150℃で乾燥させ、プリプレグのシートを製造した。
【0107】
c)本開示による積層体の調製
上記のプリプレグのシートを、2時間にわたり220℃でプレス硬化させ、樹脂成分が最終積層体の約45重量%~約50重量%になるようにした。
【0108】
本発明の様々な実施形態を製造すること及び使用することを、既に詳細に説明してきたが、本発明は、非常に様々な具体的コンテキストにおいて具現化され得る、多くの適用可能な発明概念を提供しているということを理解されたい。本明細書において論じた具体的な実施形態は、本発明を製造及び使用する具体的な方法を単に例示的するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0109】
実施例2:本発明による2つの組成物から得られたプリプレグと比較の組成物から得られたプリプレグのガラス転移温度の測定
a)比較例:
日本国特許出願公開第2003/283076号の合成実施例1に例示されている比較化合物2を、日本国特許出願公開第2003/283076号の合成実施例1に説明されている手順にしたがって以下のようにして合成した:
249g(1.5mol)のフルオレンと、250gのトルエンと、22g(0.069mol)の臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムとを、温度コントローラー、撹拌機、冷却凝縮器、滴下漏斗、酸素導入口を装備したフラスコに入れた。このフラスコに、76g(1.0mol)の塩化アリルと、335g(純度91%、2.0mol)の塩化ビニルベンジルCMS-AM(m/p異性体:50/50重量%混合物)とを加え、撹拌しながら混合物の温度を40℃に昇温させた。
この撹拌混合物に、240g(NaOH、6mol)の50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してから、混合物を60℃で8時間にわたって反応させた。次に、フラスコ中の混合物を、2Nの塩酸で中和させ、蒸留水を用いて2回洗浄し、トルエンを減圧下で留去した。得られたオレンジ色の粘り気のある液体を真空乾燥させて、比較化合物2を、ビニルベンジル基とアリル基との両方で置換されたフルオレン化合物として得た。
【0110】
b)比較化合物2を用いたプリプレグ(IP1)の製造:
次に、90部の比較化合物2を、10部のクロロフォルム中フェニルマレイミドと混合し、プリプレグ(IP1)を、日東紡(日本)製の2116NEガラスを用いて製造した。その際、5分間にわたり150℃で乾燥させ、次に30℃から220℃への毎分3℃の温度勾配下で圧力をかけて硬化させ、次に等温で2時間かけて硬化させた。
【0111】
c)9,9-ビス-(o,m,p-ビニルベンジル)-9H-フルオレンである本発明による化合物を用いた、プリプレグ(IP2)の製造
次に、90部の9,9-ビス-(o,m,p-ビニルベンジル)-9H-フルオレンを、10部のクロロフォルム中フェニルマレイミドと混合し、プリプレグ(IP2)を、日東紡(日本)製の2116NEガラスを用いて製造した。その際、5分間にわたり150℃で乾燥させ、次に30℃から220℃への毎分3℃の温度勾配下で圧力をかけて硬化させ、次に等温で2時間かけて硬化させた。
【0112】
d)9,9-ビス-(o,m,p-ビニルベンジル)-9H-フルオレンである本発明による化合物を用いた、プリプレグ(IP3)の製造
次に、103部の9,9-ビス-(o,m,p-ビニルベンジル)-9H-フルオレンを、10部のクロロフォルム中フェニルマレイミドと混合し、プリプレグ(IP3)を、日東紡(日本)製の2116NEガラスを用いて製造した。その際、5分間にわたり150℃で乾燥させ、次に30℃から220℃への毎分3℃の温度勾配下で圧力をかけて硬化させ、次に等温で2時間かけて硬化させた。
【0113】
ガラス転移温度を、TAインスツルメンツ社製のDHR-3レオメータで、ねじりモードにて、G´オンセットにより測定した。温度を、23℃から300℃に毎分5℃の速度で昇温させ、1Hzの頻度で0.08%の張力をかけた。
【0114】
プリプレグIP1、IP2、及びIP3のG´オンセット値を測定し、結果を表3に示す:
【表3】
【0115】
表3に示した結果は、日本国特許出願公開第2003/283076号による比較組成物2を用いて得られ、ビニルベンジル基とアリル基との両方によって置換されたフルオレン化合物を含むIP1は、本発明による組成物を用いて得られたプリプレグ(IP2及びIP3)よりも、有意に低いガラス転移温度を有しているということを示している。
【国際調査報告】