(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】In-situ共振器を用いた超電導集積回路内の領域の温度検知
(51)【国際特許分類】
H10N 60/12 20230101AFI20240315BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H10N60/12 C ZAA
H01L27/04 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559014
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 US2022017714
(87)【国際公開番号】W WO2022211935
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】グリッジオ,フラビオ
(72)【発明者】
【氏名】ラウズ,リチャード ピー.
(72)【発明者】
【氏名】タラノフ,ウラジミール ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,クーガー アレッサンドロ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ストロング,ジョシュア エー.
【テーマコード(参考)】
4M113
5F038
【Fターム(参考)】
4M113AA04
4M113AA14
4M113AA23
4M113AA25
4M113AA42
4M113AC45
4M113AC48
4M113AC50
4M113CA13
4M113CA17
5F038AZ04
5F038EZ20
(57)【要約】
In-situ共振器を用いた超電導集積回路(IC)内の領域の動作温度に関する回路及び方法が記載される。例は、超電導ICのフロアプランに関して第1空間位置を有する第1共振器を含む超電導ICに関する。超電導ICは、超電導ICのフロアプランに関して第2空間位置を有する第2共振器を更に含む。超電導ICは、第1共振器又は第2共振器からの周波数応答を引き出すために第1共振器及び第2共振器の夫々へテスト信号を供給するよう構成されるフィードラインを更に含み、周波数応答は、第1空間位置に対応する超電導IC内の第1領域と、又は第2空間位置に対応する超電導IC内の第2領域と相関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導集積回路であって、
第1共振周波数を有する第1共振器であり、前記超電導集積回路のフロアプランに関して第1空間位置を有する前記第1共振器と、
前記第1共振周波数とは異なった第2共振周波数を有する第2共振器であり、前記超電導集積回路の前記フロアプランに関して、前記第1空間位置とは異なった第2空間位置を有する前記第2共振器と、
前記第1共振器又は前記第2共振器からの周波数応答を引き出すために前記第1共振器及び前記第2共振器の夫々へテスト信号を供給するよう構成されるフィードラインであり、前記周波数応答は、前記第1空間位置に対応する前記超電導集積回路内の第1領域と、又は前記第2空間位置に対応する前記超電導集積回路内の第2領域と相関する、前記フィードラインと
を有する超電導集積回路。
【請求項2】
前記第1共振器は、第1誘導素子を有し、第1容量素子によってシャントされ、
前記第2共振器は、第2誘導素子を有し、第2容量素子によってシャントされる、
請求項1に記載の超電導集積回路。
【請求項3】
前記第1誘導素子は、第1長さを有する第1ミアンダ型インダクタを有し、
前記第2誘導素子は、第2長さを有する第2ミアンダ型インダクタを有し、
前記第2長さは、前記第1長さとは異なるよう選択される、
請求項2に記載の超電導集積回路。
【請求項4】
前記第1長さは、前記第1共振周波数を目標とするよう選択され、
前記第2長さは、前記第2共振周波数を目標とするよう選択される、
請求項3に記載の超電導集積回路。
【請求項5】
前記周波数応答は、
(1)前記第1共振周波数で共振するときの前記第1共振器に関連した第1挿入損失、又は
(2)前記第2共振周波数で共振するときの前記第2共振器に関連した第2挿入損失
のうちの1つを含む、
請求項1に記載の超電導集積回路。
【請求項6】
前記超電導集積回路は、臨界温度を有する超電導材を用いて形成され、前記臨界温度は、それ以下で前記超電導材が超電導状態になる温度に対応し、
前記超電導集積回路内の領域の動作温度は、1ケルビンから前記臨界温度までの範囲内で変化し、
前記第1挿入損失及び前記第2挿入損失の夫々は、前記超電導集積回路内のある領域の動作温度が少なくとも1ケルビンから前記臨界温度までの前記範囲内で少なくとも100ミリケルビンだけ変化することを検出可能にするのに十分な量で変化する、
請求項5に記載の超電導集積回路。
【請求項7】
前記第1誘導素子及び前記第2誘導素子の夫々は、ニオブの運動インダクタンスよりも高い運動インダクタンスを有する材料を有する、
請求項2に記載の超電導集積回路。
【請求項8】
超電導集積回路内の領域の動作温度を検知する方法であって、前記超電導集積回路は、
第1共振周波数を有する第1共振器であり、前記超電導集積回路のフロアプランに関して第1空間位置を有する前記第1共振器と、
前記第1共振周波数とは異なった第2共振周波数を有する第2共振器であり、前記超電導集積回路の前記フロアプランに関して、前記第1空間位置とは異なった第2空間位置を有する前記第2共振器を有する、前記方法において、
フィードラインを用いて、前記第1共振器又は前記第2共振器からの周波数応答を引き出すために前記第1共振器及び前記第2共振器の夫々へテスト信号を供給することと、
前記周波数応答を、前記第1共振器に関連した前記第1空間位置に対応する前記超電導集積回路内の第1領域と、又は前記第2共振器に関連した前記第2空間位置に対応する前記超電導集積回路内の第2領域と相互に関連付けることと
を有する方法。
【請求項9】
前記第1共振器は、第1誘導素子を有し、第1容量素子によってシャントされ、
前記第2共振器は、第2誘導素子を有し、第2容量素子によってシャントされる、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1誘導素子は、第1長さを有する第1ミアンダ型インダクタを有し、
前記第2誘導素子は、第2長さを有する第2ミアンダ型インダクタを有し、
前記第2長さは、前記第1長さとは異なるよう選択される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1長さは、前記第1共振周波数を目標とするよう選択され、
前記第2長さは、前記第2共振周波数を目標とするよう選択される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記周波数応答は、
(1)前記第1共振周波数で共振するときの前記第1共振器に関連した第1挿入損失、又は
(2)前記第2共振周波数で共振するときの前記第2共振器に関連した第2挿入損失
のうちの1つを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記超電導集積回路は、臨界温度を有する超電導材を用いて形成され、前記臨界温度は、それ以下で前記超電導材が超電導状態になる温度に対応し、
前記超電導集積回路内の領域の動作温度は、1ケルビンから前記臨界温度までの範囲内で変化し、
前記第1挿入損失及び前記第2挿入損失の夫々は、前記超電導集積回路内のある領域の動作温度が少なくとも1ケルビンから前記臨界温度までの前記範囲内で少なくとも100ミリケルビンだけ変化することを検出可能にするのに十分な量で変化する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1誘導素子及び前記第2誘導素子の夫々は、ニオブの運動インダクタンスよりも高い運動インダクタンスを有する材料を有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
超電導集積回路であって、
第1共振周波数を有する第1共振器であり、第1誘導素子を有し、第1容量素子によってシャントされ、前記第1誘導素子が第1長さを有する第1ミアンダ型インダクタを有し、前記第1共振器が前記超電導集積回路のフロアプランに関して第1空間位置を有する、前記第1共振器と、
前記第1共振周波数とは異なった第2共振周波数を有する第2共振器であり、第2誘導素子を有し、第2容量素子によってシャントされ、前記第2誘導素子が第2長さを有する第2ミアンダ型インダクタを有し、前記第2長さが、前記第1共振器と前記第2共振器との間の検出可能な差を確保するほど十分な量だけ前記第1長さと異なるよう選択され、前記第2共振器が、前記超電導集積回路の前記フロアプランに関して、前記第1空間位置とは異なった第2空間位置を有する、前記第2共振器と、
前記第1共振器又は前記第2共振器からの周波数応答を引き出すために前記第1共振器及び前記第2共振器の夫々へテスト信号を供給するよう構成されるフィードラインであり、前記周波数応答は、前記第1空間位置に対応する前記超電導集積回路内の第1領域と、又は前記第2空間位置に対応する前記超電導集積回路内の第2領域と相関する、前記フィードラインと
を有する超電導集積回路。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
デジタルプロセッサなどの電子デバイスで使用される超電導に基づいた集積回路は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術又は類似の技術に基づいたデジタル回路を含む。CMOS技術は、しかしながら、デバイスサイズに関してその限界に達している。その上、CMOS技術に基づいたデジタル回路による高クロック速度での電力消費は、高性能デジタル回路及びシステムにおいてますます制限因子となっている。
【0002】
一例として、データセンター内のサーバは、大量の電力をますます消費している。電力の消費は、CMOS回路が非アクティブであるときでさえ、部分的には、エネルギの散逸による電力損失の結果である。これは、そのような回路が非アクティブであって、如何なる動的電力も消費していないときでさえ、それらが、CMOSトランジスタの状態を維持する必要があるために、依然として電力を消費するかである。その上、CMOS回路では、CMOS回路が非アクティブであるときでさえ、一定量の電流漏れが存在する。よって、そのような回路が情報を処理していないときでさえ、一定量の電力が、CMOSトランジスタの状態を維持する必要の結果としてのみならず、電流漏れの結果としても浪費される。
【0003】
CMOS技術に基づいたプロセッサ及び関連するコンポーネントの使用に対する代替のアプローチは、超電導ロジックに基づいた回路の使用である。チップ上に実装された集積回路は、チップの異なる領域で異なる局所動作温度を有する場合がある。
【発明の概要】
【0004】
一例で、本開示は、第1共振周波数を有する第1共振器を含む超電導集積回路に関係があり、第1共振器は、超電導集積回路のフロアプランに関して第1空間位置を有する。超電導集積回路は、第1共振周波数とは異なった第2共振周波数を有する第2共振器を更に含んでもよく、第2共振器は、超電導集積回路のフロアプランに関して第2空間位置を有し、第2空間位置は、第1空間位置とは異なる。超電導集積回路は、第1共振器又は第2共振器からの周波数応答を引き出すために第1共振器及び第2共振器の夫々へテスト信号を供給するよう構成されるフィードラインを更に含んでもよく、周波数応答は、第1空間位置に対応する超電導集積回路内の第1領域と、又は第2空間位置に対応する超電導集積回路内の第2領域と相関する。
【0005】
他の態様では、本開示は、超電導集積回路内の領域の動作温度を検知する方法に関係があり、超電導集積回路は、第1共振周波数を有する第1共振器であり、超電導集積回路のフロアプランに関して第1空間位置を有する第1共振器と、第1共振周波数とは異なった第2共振周波数を有する第2共振器であり、超電導集積回路のフロアプランに関して、第1空間位置とは異なった第2空間位置を有する第2共振器を有する。方法は、フィードラインを用いて、第1共振器又は第2共振器からの周波数応答を引き出すために第1共振器及び第2共振器の夫々へテスト信号を供給することを含んでよい。方法は、周波数応答を、第1共振器に関連した第1空間位置に対応する超電導集積回路内の第1領域と、又は第2共振器に関連した第2空間位置に対応する超電導集積回路内の第2領域と相互に関連付けることを更に含んでもよい。
【0006】
更なる他の態様では、本開示は、第1共振周波数を有する第1共振器を含む超電導集積回路に関係があり、第1共振器は、第1容量素子によってシャントされた第1誘導素子を有し、第1誘導素子は、第1長さを有する第1ミアンダ型インダクタを有し、第1共振器は、超電導集積回路のフロアプランに関して第1空間位置を有する。超電導集積回路は、第1共振周波数とは異なった第2共振周波数を有する第2共振器を更に含んでもよく、第2共振器は、第2容量素子によってシャントされた第2誘導素子を有し、第2誘導素子は、第2長さを有する第2ミアンダ型インダクタを有し、第2長さは、第1共振器と第2共振器との間の検出可能な差を確保するほど十分な量だけ第1長さと異なるよう選択され、第2共振器は、超電導集積回路のフロアプランに関して第2空間位置を有し、第2空間位置は、第1空間位置とは異なる。超電導集積回路は、第1共振器又は第2共振器からの周波数応答を引き出すために第1共振器及び第2共振器の夫々へテスト信号を供給するよう構成されるフィードラインを更に含んでもよく、周波数応答は、第1空間位置に対応する超電導集積回路内の第1領域と、又は第2空間位置に対応する超電導集積回路内の第2領域と相関する。
【0007】
この概要は、以下の詳細な説明で更に説明される概念の選択を簡略化した形式で紹介するために提供されている。この概要は、請求されている主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、また、請求されている主題の範囲を制限するために使用されることを意図したものでもない。
【0008】
本開示は、例として示されるものであり、添付の図面によって限定されない。図面において、同じ参照符号は同様の要素を示す。図中の要素は、簡潔さ及び明確性のために図示されており、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一例に従う超電導集積回路内の領域の温度検知のためのIn-situ共振器を含む超電導集積回路の図である。
【
図2】A、Bは、一例に従って異なるライン幅を有する共振器の共振の周波数の温度依存性を示すグラフである。
【
図3】A、Bは、一例に従って特定の幅を持った共振器の内部品質係数の温度依存性を示すグラフである。
【
図4A】一例に従って周波数範囲にわたる
図1に示された共振器の挿入損失のプロットを示す図である。
【
図4B】一例に従って
図4Aの場合と同じ周波数範囲にわたるが異なる動作温度での
図1に示された共振器の挿入損失のプロットを示す図である。
【
図5】一例に従ってチップの2つの金属層の異なる空間位置に配置された共振器へ結合されている単一のフィードラインを示す超電導集積回路(IC)チップのフロアプランの図である。
【
図6】一例に従って、超電導集積回路(IC)チップの最上位層の異なる位置に配置された共振器へ結合されているフィードラインを含む超電導ICチップの最上位層のフロアプラン、及び超電導ICチップの最下位層の異なる空間位置に配置された共振器へ結合されているボトムフィードラインを含む超電導ICチップの最下位層のフロアプランの図である。
【
図7】一例に従う超電導集積回路でミアンダとして形成された共振器の上面図を示す。
【
図8】超電導集積回路内の領域の動作温度を検知する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示で記載されている例は、In-situ共振器を使用する超電導集積回路内の領域の温度検知に関係がある。ある例は更に、オンチップ温度プロファイルのIn-situモニタリングに関係がある。ある例は、結合キャパシタによりシャントされているいくつかのノッチ型半波長共振器とフィードラインを統合する。各共振器は、特定の共振周波数に関連する特定の長さで設計できる。このような共振器は、チップ内で空間的に分散させることができる。このようにして、特定の共振周波数を署名として使用して、応答をチップ上の特定の空間位置と相互に関連付けることができる。超伝導集積回路チップは、ウェーブパイプライン論理を使用して実装され得るレスプロカル量子論理(Reciprocal Quantum Logic,RQL)回路を含み得る。このようなRQL回路は、低電力超電導論理回路として機能することができる。超電導回路の他の例は、高速単一磁束量子(Rapid Single Flux Quantum,RSFQ)回路に関係がある。このような回路は、量子コンピュータの一部として組み込まれることがある。
【0011】
CMOSトランジスタとは異なり、超電導回路は、ジョセフソン接合に基づいたデバイスを使用する。例となるジョセフソン接合は、電流を妨げる領域を介して結合された2つの半導体を含み得る。電流を妨げる領域は、超電導体それ自体の物理的な狭小化、金属領域、又は薄い絶縁障壁であってよい。一例として、超電導体-絶縁体-超電導体(Superconductor-Insulator-Superconductor,SIS)タイプのジョセフソン接合は、RQL回路の部分として実装されることがある。一例として、超電導体は、電界なしで直流電流(DC)を運ぶことができる材料である。そのような材料は、それらの臨界温度以下で抵抗がほぼゼロである。超電導体の一例であるニオブは、9.3ケルビンの臨界温度(TC)を有する。TCを下回る温度で、ニオブは超電導状態になるが、TCを上回る温度では、電気抵抗を持った通常の金属として振る舞う。よって、SISタイプのジョセフソン接合では、超電導体はニオブ超電導体であってよく、絶縁体はAl2O3障壁であってよい。SISタイプのジョセフソン接合において、波動関数が障壁をトンネルする場合に、2つの超電導体での時間において変化する位相差は、2つの超電導体の間で電位差を生じさせる。RQL回路では、一例において、SISタイプの接合は超電導ループの部分であることができる。2つの超電導体の間の電位差が、1つの位相変化周期にわたって時間に関して積分される場合に、ループを通る磁束は、磁束の単一量子の整数倍で変化する。磁束の単一量子に関連した電圧パルスは、単一磁束量子(Signle-Flux-Quantum,SFQ)パルスと呼ばれる。一例として、オーバーダンプ型ジョセフソン接合は、個別的な単一磁束量子(SFQ)パルスを生成することができる。RQL回路において、各ジョセフソン接合は、1つ以上の超電導ループの部分であることができる。接合にわたる位相差は、ループに印加される磁束によって変調され得る。
【0012】
伝送線路を含む様々なRQL回路は、必要に応じて、インダクタ又は他のコンポーネントによって複数のジョセフソン接合を結合することによって形成され得る。SFQパルスは、少なくとも1つのクロックの制御下でこれらの伝送路を介して移動することができる。SFQパルスは正又は負であることができる。一例として、正弦波バイアス電流が接合に供給される場合には、正負両方のパルスが、伝送線路上で正反対のクロック位相の間に右方向に移動することができる。RQL回路は、有利なことに、バイアス抵抗がないために静的電力損失がゼロになる。その上、RQL回路は、交流(AC)電力により給電され得るので、接地帰還電流がない。AC電源は、RQL回路のための安定したクロック基準信号としても機能することができる。一例において、デジタルデータは、正及び負の(相互)SFQパルスの対を用いて符号化されてもよい。一例として、論理1ビットは、正弦波クロックの正及び負のパルスで生成されたSFQパルスの相互対として符号化され得る。論理0ビットは、クロック周期中に正/負パルス対がないことで符号化され得る。正のSFQパルスは、クロックの正の部分の間に到着することができ、一方、負パルスは、クロックの負の部分の間に到着することができる。
【0013】
例となるRQL回路の構成ブロックは、様々なタイプの論理ゲートを含むことができる。例となる論理ゲートには、ANDゲート、ORゲート、論理A-and-not-Bゲート、及び論理AND/ORゲートが含まれる。A-and-not-Bゲートには2つの入力と1つの出力とがある。入力パルスA又は出力ジョセフソン伝送線路(Josephson Transmission Line,JTL)での良好なクロック条件のいずれかに関して入力パルスが最初に来ない限りは、入力パルスAPIは、出力JTLに良好なクロック条件が存在する場合に出力に伝播することができる。ゲートの論理動作は、前述の相互データ符号化に基づいている。一例として、正のパルスは誘導ループの内部磁束状態を変化させるが、後続の負のパルスはクロック周期ごとに内部状態を消去し、その結果、組み合わせ論理動作が得られる。
【0014】
超電導回路を含む集積回路チップは、超電導回路の動作マージンに直接的又は間接的に影響を与える可能性のある局所的な温度変動を有する可能性がある。オンチップ温度プロファイルのIn-situモニタリングがないと、チップ設計者は、動作マージンを順守するように回路レイアウト及び回路設計を最適化することができない可能性がある。本開示で説明される特定の例は、オンチップ温度プロファイルのIn-situモニタリングに関係がある。特定の例は、結合キャパシタでシャントされているいくつかのノッチ型半波長共振器とフィードラインを統合する。各共振器は、特定の共振周波数に関連する特定の長さを有することができる。このような共振器は、チップ内で空間的に分散させることができる。このようにして、特定の共振周波数を署名として使用して、応答をチップ上の特定の空間位置と相互に関連付けることができる。オンチップモニタリングの結果は、チップ上のホットスポットを識別する集積回路チップのヒートマップであってよい。
【0015】
図1は、一例に従う超電導集積回路内の領域の温度検知のためのIn-situ共振器を含む超電導集積回路100の図である。各共振器は、所与のインピーダンスの誘導素子(例えば、ミアンダ)を有してよく、対応するキャパシタによってシャントされてよい。一例において、各共振器は、シャントノッチ型半波長共振器として実装されてよい。この例で、共振器のシャントノッチ型態様は、共振器の夫々の一端でのキャパシタへの結合に関係がある。各共振器は、それらがシャントされていない端部で開放端とされて接地端子へ接続されていない点で、この例では半波長共振器である。各共振器は、フィードライン(例えば、フィードライン110)へ更に結合されている。フィードライン110は、1GHzから15GHzまでの範囲内の周波数を有するマイクロ波信号を運ぶことができるマイクロ波伝送線路として実装されてよい。この例で、共振器120は、キャパシタ122へシャントされている特定の長さ(L1)を有するミアンダを含んでよい。共振器130は、キャパシタ132へシャントされている特定の長さ(L2)を有するミアンダを含んでよい。共振器140は、キャパシタ142へシャントされている特定の長さ(L3)を有するミアンダを含んでよい。共振器150は、キャパシタ152へシャントされている特定の長さ(L4)を有するミアンダを含んでよい。共振器160は、キャパシタ162へシャントされている特定の長さ(L5)を有するミアンダを含んでよい。共振器に関連した各ミアンダの長さは、特定の共振周波数を目標とするよう選択されてよい。ミアンダは、共振器に関連したインダクタンスを供給し得る。特定の共振周波数は、超電導集積回路100内のチップ(又は他のパッケージ化された実装)上の特定の空間位置と応答を相互に関連付けるよう署名として使用され得る。
【0016】
引き続き
図1を参照して、一例において、各共振器は、純粋なニオブの運動インダクタンスよりも高い運動インダクタンス(以降、「高運動インダクタンス」と呼ばれる。)を持つ材料から作られ得る。高運動インダクタンス材料の例には、窒化ニオブ(NbN)及び窒化ニオブチタン(NbTiN)があるが、これらに限られない。そのような材料は、動作温度の変化によって引き起こされる損失に関して、より高い分解能を可能にし得る。これは、超電導体内の磁場の侵入の程度を表すために使用され得るラムダ(λ)が、材料の運動インダクタンスの増加とともに増加するからである。これにより、高運動インダクタンス材料に基づいた共振器での内部損失は増加する。これは、共振器の共振周波数の変化が超電導体のいくつかの側面に依存するからである。一例として、共振周波数の変化(δf)は、式
【数1】
によって表現できる。ここで、dは誘電体の厚さであり、λ
eff=λ
Lcoth(b/λ
L)は、有限な厚さ領域での有効侵入深さであり、λ
Lはロンドン侵入深さ(材料パラメータ)であり、bは超電導体の厚さである。従って、λ
Lを増やす(その結果、高運動インダクタンスとなる)か、又は(λ
effを増やすために)超電導体を非常に薄くする場合に、温度変化に応じて共振周波数の変化は大きくなり、これにより低温では分解能が増大する。同様の理由により、内部品質係数(Q
i)も温度変化とともに変化し得る。言い換えれば、高運動インダクタンス材料に基づいた共振器で達成可能な高い内部品質係数(Q
i)を考えると、異なる長さのいくつかのシャント型共振器が超電導集積回路チップ上の異なる位置でフィードラインに加えられ得る。共振器の高い内部品質係数(Q
i)は、異なる長さの共振器の間で重なり合ったピークを持たないことによって、十分な温度分解能を可能にする。共振器の温度が0.5ケルビン変化しただけで、共振器の共振は1パーセントもずれる可能性がある。超電導集積回路100が臨界温度(T
C)を持った超伝導材料(例えば、ニオブ)を用いて形成されると仮定して、このとき、臨界温度(T
C)は、それ以下で超伝導材料が超電導状態になる温度に対応し、超電導集積回路内の領域の動作温度は、1ケルビンから臨界温度(T
C)の範囲内で変化し得る。超電導集積回路内のある領域の動作温度が少なくとも1ケルビンから臨界温度(T
C)までの範囲内で少なくとも100ミリケルビンだけ変化することを検出可能にするのに十分な量で挿入損失が変化可能であるように、共振器の長さは選択される。
図1は、特定の方法で配置される超電導集積回路100の部分として特定の数の共振器を示しているが、異なるように配置された、より多い又はより少ない数の共振器が存在してもよい。他の例として、
図1は1つのフィードラインしか示していないが、超電導集積回路は更なるフィードラインを含んでもよい。更には、
図1は共振器を直線として示しているが、それらはミアンダ線として又は他の形状を用いて実装されてもよい。更には、In-situ共振器は、3Dパッケージ又は他のタイプのパッケージを含む異なるパッケージング技術を用いてパッケージ化され得る量子計算回路での温度監視のためにも使用されてよい。
【0017】
図2A及び
図2Bは、一例に従って異なるライン長さを持った共振器について共振の周波数の温度依存性を示すグラフ210及び250である。超電導回路を含む集積回路チップは、異なる温度を持った異なる領域を有する場合がある。一例として、周波数掃引量が多い領域は、他の領域よりも温度が高い可能性がある。レイアウト内の回路の密度の他の違いも、集積回路チップの異なる領域で温度を異ならせるのに関与する可能性がある。よって、超電導集積回路は、2ケルビンから9ケルビンの間でどこからでもその異なる領域で温度を有する可能性がある。チップの開発中、そのような領域は、チップの様々な領域に位置している共振器の周波数応答を評価することによって識別され得る。ベクトルネットワークアナライザ(VNA)などの機器が、温度に基づいて周波数共振の変化を解析するために使用されてもよい。測定は、チップが最初に電力を供給されると行われ、その後は、それがオンされると周期的なインターバルで行われ得る。これは、チップ内のホットスポットの空間位置を決定するのに役立ち得る。一例において、ホットスポット領域は、動作温度よりも少なくとも1ケルビン高い温度を有する領域に対応してよい。よって、動作温度が4.2Kである場合に、4.2Kよりも少なくとも1ケルビン温度が高い如何なる領域もホットスポットとして識別され得る。チップにわたってより一様な温度を確かにために、設計変更が行われることがある。
【0018】
グラフ210(
図2A)は、異なるライン幅を有する共振器について温度の変化に基づいた共振の周波数のパーセンテージ変化を示す。よって、曲線212は、0.25ミクロン(μm)のライン幅を有する共振器についての共振の周波数のパーセンテージ変化を示し、曲線214は、0.5ミクロン(μm)のライン幅を有する共振器についての共振の周波数のパーセンテージ変化を示し、曲線216は、2ミクロン(μm)のライン幅を有する共振器についての共振の周波数のパーセンテージ変化を示し、曲線218は、4ミクロン(μm)のライン幅を有する共振器についての共振の周波数のパーセンテージ変化を示す。それらの曲線により示されるように、より低い温度(例えば、2K又は3K)では、共振周波数の変動は、より高い温度(例えば、5K~7K)ほど顕著ではない。これらの曲線により更に示されるように、ラインの幅が狭いほど、共振の周波数のパーセンテージ変化を検出することに関して、分解能はより大きくなる。
【0019】
グラフ250(
図2B)も、異なるライン幅を有する共振器について温度の変化に基づいた共振の周波数のパーセンテージ変化を示す。ただし、グラフ250は、4Kから5Kの範囲にわたるパーセンテージ変化を示している。よって、曲線252は、0.25ミクロン(μm)のライン幅を有する共振器についての共振の周波数のパーセンテージ変化を示し、曲線254は、0.5ミクロン(μm)のライン幅を有する共振器についての共振の周波数のパーセンテージ変化を示し、曲線256は、2ミクロン(μm)のライン幅を有する共振器についての共振の周波数のパーセンテージ変化を示し、曲線258は、4ミクロン(μm)のライン幅を有する共振器についての共振の周波数のパーセンテージ変化を示す。グラフ210及び250は両方とも、共振器の共振の周波数の温度依存性を示しており、縮尺通りに描かれてはいない。
【0020】
図3A及び
図3Bは、一例に従って特定の幅を持った共振器の内部品質係数(Q
i)の温度依存性を示すグラフ310及び350である。曲線312は、1Kから8Kの温度範囲にわたる、0.25ミクロン(μm)の幅を持った共振器の内部品質係数(Q
i)の変化を示す。曲線352は、4Kから5Kの温度範囲にわたる同じ共振器の内部品質係数(Q
i)の変化を示す。要約して言えば、内部品質係数(Q
i)及び共振周波数は両方とも、温度変化を追跡するために使用することができる。共振周波数の変化は、超電導共振器の転移温度(T
C)により近い温度でより高い分解能をもたらし、一方、内部品質係数(Q
i)の変化は、超電導共振器の転移温度(T
C)からより離れた温度でより高い分解能をもたらす。
【0021】
図4Aは、一例に従って、周波数の範囲にわたる
図1に示された共振器の挿入損失のプロットを示す図である。この図は、
図1に示された共振器について、共振器の共振周波数に対する挿入損失(Y軸)をプロットしている。挿入損失は、
図1に関して説明された共振器の夫々についてSパラメータプロットを用いて表されている。プロット420は、
図1の共振器120の挿入損失を示す。プロット430は、
図1の共振器130の挿入損失を示す。プロット440は、
図1の共振器140の挿入損失を示す。プロット450は、
図1の共振器150の挿入損失を示す。プロット460は、
図1の共振器160の挿入損失を示す。これらのプロットにより示されるように、共振器の共振周波数は、共振器の長さに基づいて異なる。更に、共振器ごとの挿入損失は異なっている。
【0022】
図4Bは、一例に従って、
図4Aの場合の同じ周波数の範囲にわたるが異なる動作温度での
図1に示された共振器の挿入損失のプロットを示す図である。プロット420は、約2Kの動作温度での
図1の共振器120の挿入損失を示す。プロット422は、約3Kの動作温度での
図1の共振器120の挿入損失を示す。プロット424は、約4Kの動作温度での
図1の共振器120の挿入損失を示す。プロット426は、約5Kの動作温度での
図1の共振器120の挿入損失を示す。プロット428は、約6Kの動作温度での
図1の共振器120の挿入損失を示す。プロット432は、約3Kの動作温度での
図1の共振器130の挿入損失を示す。プロット434は、約4Kの動作温度での
図1の共振器130の挿入損失を示す。プロット436は、約5Kの動作温度での
図1の共振器130の挿入損失を示す。プロット438は、約6Kの動作温度での
図1の共振器130の挿入損失を示す。
【0023】
引き続き
図4Bを参照して、プロット442は、約3Kの動作温度での
図1の共振器140の挿入損失を示す。プロット444は、約4Kの動作温度での
図1の共振器140の挿入損失を示す。プロット446は、約5Kの動作温度での
図1の共振器140の挿入損失を示す。プロット448は、約6Kの動作温度での
図1の共振器140の挿入損失を示す。プロット452は、約3Kの動作温度での
図1の共振器150の挿入損失を示す。プロット454は、約4Kの動作温度での
図1の共振器150の挿入損失を示す。プロット456は、約5Kの動作温度での
図1の共振器150の挿入損失を示す。プロット458は、約6Kの動作温度での
図1の共振器150の挿入損失を示す。プロット462は、約3Kの動作温度での
図1の共振器160の挿入損失を示す。プロット464は、約4Kの動作温度での
図1の共振器160の挿入損失を示す。プロット466は、約5Kの動作温度での
図1の共振器160の挿入損失を示す。プロット468は、約6Kの動作温度での
図1の共振器160の挿入損失を示す。
図4Bのプロットは、縮尺通りに描かれてはおらず、異なる動作温度での異なる長さの共振器の挿入損失のおおよその違いを単に表すよう描かれている。シミュレーションから明らかなように、しかしながら、単一のフィードラインに取り付けられた異なる長さの共振器を使用すると、数十ミリケルビンという低い温度変化でも検出する熱分解能を達成できる。
【0024】
図5は、チップの3つの金属層の異なる空間位置に置かれた共振器へ結合されている単一のフィードラインを示す超電導集積回路(IC)チップのフロアプラン500の図である。この例において、フィードライン510は、入口パッド502及び戻りパッド504へ結合されている。フィードライン510は、共振器520、522、524、530、532、534、540、542、544、550、552、及び554を含む共振器へ更に結合されている。この例において、共振器522、524、530、542、544、及び550は、超電導ICチップに関連した金属層の1つで形成されている。他の共振器520、532、534、540、552、及び554は別の金属層で形成されている。一例において、これらの層の一方は、超電導ICチップの上面により近い金属層であってよく、他方の層は、超電導ICチップの底面により近い金属層であってよい。共振器の周波数応答に関連した信号は、パッド562及び564を介して外部のベクトルネットワークアナライザ(VNA)へ結合されてよい。代替的に、VNAに関連した機能の少なくともサブセットが、超電導ICチップ自体の部分として実装されてもよい。各共振器は、特定の共振周波数に関連する特定の長さで設計され得る。共振器はチップのフロアプラン500の異なる領域に空間的に位置付けられるので、特定の共振周波数は、チップ上の特定の空間位置に応答を相互に関連付けるよう署名として使用できる。
【0025】
引き続き
図5を参照して、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)などの機器が、温度に基づいた周波数共振の変化を解析するため使用されてもよい。測定は、チップが最初に電力を供給されると行われ、その後は、それがオンされると周期的なインターバルで行われ得る。これは、チップ内のホットスポットの空間位置を決定するのに役立ち得る。一例において、ホットスポット領域は、動作温度よりも少なくとも1ケルビン高い温度を有する領域に対応してよい。よって、動作温度が4.2Kである場合に、4.2Kよりも少なくとも1ケルビン温度が高い如何なる領域もホットスポットとして識別され得る。チップにわたってより一様な温度を確かにために、設計変更が行われることがある。
図5は、共振器の特定の位置を含む特定のフロアプラン500を示しているが、超電導ICチップは、異なるフロアプランを有してもよく、共振器は、
図5に示される領域以外の領域に位置してもよい。
【0026】
図6は、超電導ICチップの最上位層の異なる空間位置に置かれた共振器へ結合されているフィードラインを含む超電導集積回路(IC)チップの最上位層のフロアプラン610、及び超電導ICチップの最下位層の異なる空間位置に置かれた共振器へ結合されているボトムフィードラインを含む超電導ICチップの最下位層のフロアプラン650の図である。この例において、フロアプラン610に示されるように、1つのフィードライン606は、入口パッド602及び戻りパッド604へ結合されている。フィードライン606は、共振器620、622、624、626、630、632、634、及び636を含む共振器へ更に結合されている。この例において、共振器620、622、624、626、632、634、及び636は、超電導ICチップに関連した金属層の1つで形成されている。フロアプラン650に示されるように、他のフィードライン656は、入口パッド652及び戻りパッド654へ結合されている。フィードライン656は、共振器660、662、664、666、670、672、674、及び676を含む共振器へ更に結合されている。この例において、共振器660、662、664、666、670、672、674、及び676は、超電導ICチップに関連した金属層の1つで形成されている。一例において、これらの層の一方は、超電導ICチップの上面により近い金属層であってよく、他方の層は、超電導ICチップの底面により近い金属層であってよい。共振器の周波数応答に関連した信号は、パッド(図示せず。)を介して外部のベクトルネットワークアナライザ(VNA)へ結合されてよい。代替的に、VNAに関連した機能の少なくともサブセットが、超電導ICチップ自体の部分として実装されてもよい。各共振器は、特定の共振周波数に関連する特定の長さで設計され得る。共振器はチップのフロアプラン610及び650の異なる領域に空間的に位置付けられるので、特定の共振周波数は、チップ上の特定の空間位置に応答を相互に関連付けるよう署名として使用できる。
【0027】
引き続き
図6を参照して、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)などの機器が、温度に基づいた周波数共振の変化を解析するため使用されてもよい。測定は、チップが最初に電力を供給されると行われ、その後は、それがオンされると周期的なインターバルで行われ得る。これは、チップ内のホットスポットの空間位置を決定するのに役立ち得る。一例において、ホットスポット領域は、動作温度よりも少なくとも1ケルビン高い温度を有する領域に対応してよい。よって、動作温度が4.2Kである場合に、4.2Kよりも少なくとも1ケルビン温度が高い如何なる領域もホットスポットとして識別され得る。チップにわたってより一様な温度を確かにために、設計変更が行われることがある。
図6は、共振器の特定の位置を含むフロアプラン610及び650を示しているが、超電導ICチップは、異なるフロアプランを有してもよく、共振器は、
図6に示される領域以外の領域に位置してもよい。
【0028】
図7は、一例に従って超電導集積回路においてミアンダとして形成される共振器710の上面
図700を示す。先に説明されたように、共振器710は、窒化ニオブ(NbN)及び窒化ニオブチタン(NbTiN)などの高運動インダクタンス材料を用いて形成されてよい。これまでの図に示されてきた共振器の夫々は、ミアンダとして形成されてもよい。共振器の長さは、特定のインピーダンスを提供するよう選択されてよい。先に説明されたように、キャパシタでシャントされた共振器710は、特定の共振周波数を有し得る。超電導集積回路において、
図7に示されているもののような多くの共振器が異なる空間位置に形成されてよい。
図7は、特定の形状及び構造の共振器710を示しているが、他の形状及び構造も使用されてよい。
【0029】
図8は、超電導集積回路内の領域の動作温度を検知する方法のフローチャート800である。一例において、この方法は、超電導集積回路でホットスポットを検出するために実行されてよい。超電導集積回路は、異なる長さを持った共振器を含む前述の斯様な回路のいずれかであってよい。ステップ810は、フィードラインを用いて第1共振器及び第2共振器の夫々へテスト信号を供給して、第1共振器又は第2共振器からの周波数応答を引き出すことを含んでよい。如何なるマイクロ波信号源も、集積回路に関連したパッドを介してこの信号源をフィードラインへ結合することによって、テスト信号を供給するために使用されてよい。一例として、
図5に関して上述されたように、テスト信号は、パッド502及び504を介してフィードライン510へ結合されてよい。
【0030】
ステップ820は、第1共振器に関連した第1空間位置に対応する超電導集積回路内の第1領域、又は第2共振器に関連した第2空間位置に対応する超電導集積回路内の第2領域と周波数応答を相互に関連付けることを含んでよい。一例として、
図1に関して上述されたように、共振器120は、キャパシタ122へシャントされている特定の長さ(L1)を有するミアンダを含んでもよい。共振器130は、キャパシタ132へシャントされている特定の長さ(L2)を有するミアンダを含んでもよい。共振器140は、キャパシタ142へシャントされている特定の長さ(L3)を有するミアンダを含んでもよい。共振器150は、キャパシタ152へシャントされている特定の長さ(L4)を有するミアンダを含んでもよい。共振器160は、キャパシタ162へシャントされている特定の長さ(L5)を有するミアンダを含んでもよい。共振器に関連した各ミアンダの長さは、特定の共振周波数を目標とするよう選択されてよい。特定の共振周波数は、超電導集積回路100内のチップ(又は他のパッケージ化された実装)上の特定の空間位置に応答を相関させるよう署名として使用されてよい。フローチャート800は特定の数のステップを示しているが、
図8に関して記載されている方法は、追加のステップを含んでもよい。
【0031】
まとめると、一例において、本開示は、第1共振周波数を有する第1共振器を含む超電導集積回路に関係があり、第1共振器は、超電導集積回路のフロアプランに関して第1空間位置を有する。超電導集積回路は、第1共振周波数とは異なった第2共振周波数を有する第2共振器を更に含んでもよく、第2共振器は、超電導集積回路のフロアプランに関して第2空間位置を有し、第2空間位置は、第1空間位置とは異なる。超電導集積回路は、第1共振器又は第2共振器からの周波数応答を引き出すために第1共振器及び第2共振器の夫々へテスト信号を供給するよう構成されるフィードラインを更に含んでもよく、周波数応答は、第1空間位置に対応する超電導集積回路内の第1領域と、又は第2空間位置に対応する超電導集積回路内の第2領域と相関する。
【0032】
第1共振器は、第1誘導素子を有してよく、それは、第1容量素子によってシャントされてよく、第2共振器は、第2誘導素子を有してよく、それは、第2容量素子によってシャントされてよい。第1誘導素子は、第1長さを有する第1ミアンダ型インダクタを有してよく、第2誘導素子は、第2長さを有する第2ミアンダ型インダクタを有してよく、第2長さは、第1長さとは異なるよう選択される。一例において、第1長さは、第1共振周波数を目標とするよう選択されてよく、第2長さは、第2共振周波数を目標とするよう選択されてよい。
【0033】
周波数応答は、(1)第1共振周波数で共振するときの第1共振器に関連した第1挿入損失、又は(2)第2共振周波数で共振するときの第2共振器に関連した第2挿入損失、のうちの1つを含んでよい。第1誘導素子及び第2誘導素子の夫々は、ニオブの運動インダクタンス(kinetic inductance)よりも高い運動インダクタンスを有する材料を有してよい。
【0034】
超電導集積回路は、臨界温度(TC)を有する超電導材を用いて形成されてよく、臨界温度(TC)は、それ以下で超電導材が超電導状態になる温度に対応する。超電導集積回路内の領域の動作温度は、1ケルビンから臨界温度(TC)までの範囲内で変化可能であってよい。第1挿入損失及び第2挿入損失の夫々は、超電導集積回路内のある領域の動作温度が少なくとも1ケルビンから臨界温度(TC)までの範囲内で少なくとも100ミリケルビンだけ変化することを検出可能にするのに十分な量で変化可能であってよい。
【0035】
他の態様では、本開示は、超電導集積回路内の領域の動作温度を検知する方法に関係があり、超電導集積回路は、第1共振周波数を有する第1共振器であり、超電導集積回路のフロアプランに関して第1空間位置を有する第1共振器と、第1共振周波数とは異なった第2共振周波数を有する第2共振器であり、超電導集積回路のフロアプランに関して、第1空間位置とは異なった第2空間位置を有する第2共振器を有する。方法は、フィードラインを用いて、第1共振器又は第2共振器からの周波数応答を引き出すために第1共振器及び第2共振器の夫々へテスト信号を供給することを含んでよい。方法は、周波数応答を、第1共振器に関連した第1空間位置に対応する超電導集積回路内の第1領域と、又は第2共振器に関連した第2空間位置に対応する超電導集積回路内の第2領域と相互に関連付けることを更に含んでもよい。
【0036】
第1共振器は、第1誘導素子を有してよく、それは、第1容量素子によってシャントされてよく、第2共振器は、第2誘導素子を有してよく、それは、第2容量素子によってシャントされてよい。第1誘導素子は、第1長さを有する第1ミアンダ型インダクタを有してよく、第2誘導素子は、第2長さを有する第2ミアンダ型インダクタを有してよく、第2長さは、第1長さとは異なるよう選択される。一例において、第1長さは、第1共振周波数を目標とするよう選択されてよく、第2長さは、第2共振周波数を目標とするよう選択されてよい。
【0037】
周波数応答は、(1)第1共振周波数で共振するときの第1共振器に関連した第1挿入損失、又は(2)第2共振周波数で共振するときの第2共振器に関連した第2挿入損失、のうちの1つを含んでよい。第1誘導素子及び第2誘導素子の夫々は、ニオブの運動インダクタンスよりも高い運動インダクタンスを有する材料を有してよい。
【0038】
超電導集積回路は、臨界温度(TC)を有する超電導材を用いて形成されてよく、臨界温度(TC)は、それ以下で超電導材が超電導状態になる温度に対応する。超電導集積回路内の領域の動作温度は、1ケルビンから臨界温度(TC)までの範囲内で変化可能であってよい。第1挿入損失及び第2挿入損失の夫々は、超電導集積回路内のある領域の動作温度が少なくとも1ケルビンから臨界温度(TC)までの範囲内で少なくとも100ミリケルビンだけ変化することを検出可能にするのに十分な量で変化可能であってよい。
【0039】
更なる他の態様では、本開示は、第1共振周波数を有する第1共振器を含む超電導集積回路に関係があり、第1共振器は、第1容量素子によってシャントされた第1誘導素子を有し、第1誘導素子は、第1長さを有する第1ミアンダ型インダクタを有し、第1共振器は、超電導集積回路のフロアプランに関して第1空間位置を有する。超電導集積回路は、第1共振周波数とは異なった第2共振周波数を有する第2共振器を更に含んでもよく、第2共振器は、第2容量素子によってシャントされた第2誘導素子を有し、第2誘導素子は、第2長さを有する第2ミアンダ型インダクタを有し、第2長さは、第1共振器と第2共振器との間の検出可能な差を確保するほど十分な量だけ第1長さと異なるよう選択され、第2共振器は、超電導集積回路のフロアプランに関して第2空間位置を有し、第2空間位置は、第1空間位置とは異なる。超電導集積回路は、第1共振器又は第2共振器からの周波数応答を引き出すために第1共振器及び第2共振器の夫々へテスト信号を供給するよう構成されるフィードラインを更に含んでもよく、周波数応答は、第1空間位置に対応する超電導集積回路内の第1領域と、又は第2空間位置に対応する超電導集積回路内の第2領域と相関する。
【0040】
第1長さは、第1共振周波数を目標とするよう選択されてよく、第2長さは、第2強新周波数を目標とするよう選択されてよい。周波数応答は、(1)第1共振周波数で共振するときの第1共振器に関連した第1挿入損失、又は(2)第2共振周波数で共振するときの第2共振器に関連した第2挿入損失、のうちの1つを含んでよい。
【0041】
超電導集積回路は、臨界温度(TC)を有する超電導材を用いて形成されてよく、臨界温度(TC)は、それ以下で超電導材が超電導状態になる温度に対応する。超電導集積回路内の領域の動作温度は、1ケルビンから臨界温度(TC)までの範囲内で変化可能であってよい。第1挿入損失及び第2挿入損失の夫々は、超電導集積回路内のある領域の動作温度が少なくとも1ケルビンから臨界温度(TC)までの範囲内で少なくとも100ミリケルビンだけ変化することを検出可能にするのに十分な量で変化可能であってよい。
【0042】
一例において、第1誘導素子及び第2誘導素子の夫々は、ニオブの運動インダクタンスよりも高い運動インダクタンスを有する材料を有してよい。他の例において、第1誘導素子及び第2誘導素子の夫々は、窒化ニオブ(NbN)又は窒化ニオブチタン(NbTiN)のうちの1つを有してもよい。
【0043】
理解されるべきは、本明細書で表されている方法、モジュール、デバイス、システム、及びコンポーネントは、単に例示である点である。代替的に、又は追加的に、本明細書で記載される機能は、少なくとも部分的に、1つ以上のハードウェアロジック部品によって実行することができる。例えば、制限なしに、使用できるハードウェアロジック部品の例示的なタイプには、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、特定用途向け標準製品(ASSP)、システムオンチップシステム(SOC)、複合プログラム可能ロジックデバイス(CPLD)などが含まれる。抽象的だが明確な意味では、同じ機能を達成するためのコンポーネントの如何なる配置も、所望の機能が達成されるように効果的に「関連付けられる」。従って、特定の機能を達成するために組み合わされる本明細書中の任意の2つのコンポーネントは、アーキテクチャ又は中間コンポーネントに関係なく、所望の機能が達成されるように互いに「関連付けられている」とみなすことができる。同様に、そのように関連付けられた任意の2つのコンポーネントは、所望の機能を達成するために互いに「動作可能に接続」又は「結合」されているとみなすこともできる。
【0044】
本開示で記載される例に関連した機能はまた、非一時的な媒体に格納されている命令を含むこともできる。本明細書で使用される「非一時的な媒体」という用語は、マシンを特定の方法で作動させるデータ及び/又は命令を記憶している任意の媒体を指す。例示的な非一時的媒体には、不揮発性媒体及び/又は揮発性媒体が含まれる。不揮発性媒体には、例えば、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気ディスク若しくはテープ、光ディスク若しくはテープ、フラッシュメモリ、EPROM、NVRAM、PRAM、又は他のそのような媒体、あるいは、そのような媒体のネットワーク化されたバージョンが含まれる。揮発性媒体には、例えば、DRAMやSRAMなどの動的メモリ、キャッシュ、又は他のそのような媒体が含まれる。非一時的媒体は、伝送媒体とは相異なるものであるが、伝送媒体とともに使用できる。伝送媒体は、マシンとの間でデータ及び/又は命令を伝送するために使用される。例示的な伝送媒体には、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、銅線、及び無線媒体、例えば電波などが含まれる。
【0045】
更に、当業者であれば、前述の動作の機能の間の境界が単に例示であることを認識するだろう。複数の動作の機能は、単一の動作に結合されてよく、及び/又は単一の動作の機能は、追加の動作に分散されてもよい。更に、代替の実施形態は、特定の動作の複数のインスタンスを含んでもよく、動作の順序は、他の様々な実施形態で変更されてもよい。
【0046】
本開示は具体例を提供しているが、様々な修正及び変更が、以下で特許請求の範囲において示されている本開示の範囲から外れずに、行われ得る。従って、明細書及び図面は、限定の意味ではなく例示の意味で見なされるべきであり、全てのそのような修正は、本開示の範囲内に含まれるよう意図される。具体例に関して本明細書で記載される課題に対する如何なる利点、有益な点、又は解決法も、特許請求の範囲のいずれか又は全ての重要な、必要な、又は本質的な特徴として解釈されるよう意図されない。
【0047】
更に、本明細書で使用される「a」又は「an」という用語は、1つ又は1よりも多いとして定義される。また、特許請求の範囲における「少なくとも1つ」及び「1つ以上」などの導入句の使用は、同じ請求項が「a」又は「an」などの不定冠詞と「1つ以上」又は「少なくとも1つ」という導入句とを含む場合でさえ、不定冠詞「a」又は「an」によって他の請求項要素の導入が、そのような導入された請求項要素を含む如何なる特定の請求項も、1つのそのような要素しか含まない発明に制限することを暗示するものとして解釈されるべきではない。同じことは、定冠詞の使用についても当てはまる。
【0048】
別なふうに述べられない限り、「第1」及び「第2」などの用語は、そのような用語が記載する要素同士を任意に区別するために使用される。よって、これらの用語は必ずしも、そのような要素の時間的な又は他の優先度を示すよう意図されているわけではない。
【国際調査報告】