(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】タウオパチーのバイオマーカーとしてのCSFリン酸化タウおよびアミロイドベータのプロファイル
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240315BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240315BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G01N33/68
A61K45/00
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560561
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022022906
(87)【国際公開番号】W WO2022212756
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】サトウ,チヒロ
(72)【発明者】
【氏名】バルテルミー,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ベイトマン,ランドール
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA36
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZA161
(57)【要約】
本開示は、対象を診断し、処置決定を導き、臨床試験の対象を選択するために、特定のアミノ酸残基におけるタウリン酸化、および適宜Ab種を定量する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病の症状を有する対象を診断する方法であって、
(a)前記対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに前記処理された試料中のpT217/T217値およびaβ42/40値を定量すること;ならびに
(b)健康な対照集団におけるpT217/T217値およびAβ42/40値と比較して、前記pT217/T217値の増加および正常なAβ42/40値が検出される場合、前記対象を前頭側頭型認知症(FTD)を有するか、またはFTDのリスクが増加していると診断すること
を含む方法。
【請求項2】
複合pT217/T217×Aβ42/40値を決定することをさらに含み、健康な対照と比較した複合値の増加は、前記対象がFTDを有するか、またはFTDのリスクが増加していることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、MAPT R406W突然変異保持者であると診断される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルツハイマー病の症状を有する対象を診断する方法であって、
(a)前記対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに前記処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに
(b)アルツハイマー病集団におけるpT217/T217値およびAβ42/40値と比較して、前記pT217/T217値の減少およびAβ42/40値の増加が検出される場合、前記対象を前頭側頭型認知症(FTD)を有するか、またはFTDのリスクが増加していると診断すること
を含む方法。
【請求項5】
複合pT217/T217×Aβ42/40値を決定することをさらに含み、アルツハイマー病集団と比較した複合値の増加は、前記対象がFTDを有するか、またはFTDのリスクが増加していることを示す、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、MAPT R406W突然変異保持者であると診断される、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アルツハイマー病の症状を有する対象を診断する方法であって、
(a)前記対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること、および前記処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに
(b)健康な対照集団におけるpT181/T181値と比較して、前記pT181/T181値の減少が検出される場合、前記対象を孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を有するか、または孤発性FTDのリスクが増加していると診断すること
を含む方法。
【請求項8】
アルツハイマー病の症状を有する対象を診断する方法であって、
(a)前記対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること、および前記処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに
(b)アルツハイマー病集団におけるpT181/T181値と比較して、前記pT181/T181値の減少が検出される場合、前記対象を孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を有するか、または孤発性FTDのリスクが増加していると診断すること
を含む方法。
【請求項9】
MAPT R406Wタウオパチーを区別する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに
(b)前記処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量することであって、前記pT217/T217値の増加および正常なAβ42/40値により、MAPT R406Wタウオパチーと健康な状態とを区別する、定量すること
を含む方法。
【請求項10】
MAPT R406Wタウオパチーを区別する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに
(b)前記処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量することであって、前記pT217/T217値の減少およびAβ42/40値の増加により、MAPT R406Wタウオパチーとアルツハイマー病とを区別する、定量すること
を含む方法。
【請求項11】
MAPT R406Wタウオパチーを区別する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに
(b)前記処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量することであって、前記pT217/T217×Aβ42/40値によって、MAPT R406Wタウオパチーをアルツハイマー病、4R-タウオパチー、および健康な状態から区別する、定量すること
を含む方法。
【請求項12】
健康な対照集団におけるpT217/T217×Aβ42/40値と比較した、工程(b)で定量されたpT217/T217×Aβ42/40値の増加により、MAPT R406Wタウオパチーと健康な状態とを区別する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アルツハイマー病集団におけるpT217/T217×Aβ42/40値と比較した、工程(b)で定量されたpT217/T217×Aβ42/40値の増加により、MAPT R406WタウオパチーとADとを区別する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
4R-タウオパチー集団におけるpT217/T217×Aβ42/40値と比較した、工程(b)で定量されたpT217/T217×Aβ42/40値の増加により、MAPT R406Wタウオパチーと4R-タウオパチーとを区別する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を区別する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに
(b)前記処理された試料中のpT181/T181値を定量することであって、前記pT181/T181値によって、孤発性FTDをアルツハイマー病、非孤発性FTDタウオパチー、および健康な状態から区別する、定量すること
を含む方法。
【請求項16】
アルツハイマー病集団におけるpT181/T181値と比較した、工程(b)で定量されたpT181/T181値の減少により、孤発性FTDとアルツハイマー病とを区別する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
健康な対照集団におけるpT181/T181値と比較した、工程(b)で定量されたpT181/T181値の減少により、孤発性FTDと健康な状態とを区別する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
非孤発性FTDにおけるpT181/T181値と比較した、工程(b)で定量されたpT181/T181値の減少により、孤発性FTDと非孤発性FTDタウオパチーを区別する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
対象におけるMAPT R406Wタウオパチー疾患の進行を測定するための方法であって、
(a)対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに前記第1の処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;
(b)前記第1の試料の後に前記対象から得られた第2の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記第2のCSFまたは血液試料は、工程(a)と同じpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに前記第2の処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに
(c)前記第2の試料および前記第1の試料の前記定量されたpT217/T217値およびAβ42/40値の間の差を計算することであって、前記第2の試料における前記定量されたpT217/T217値およびAβ42/40値の統計的有意差は、前記対象の疾患の進行を示す、計算すること
を含む方法。
【請求項20】
対象におけるMAPT R406Wタウオパチー疾患の進行を測定するための方法であって、
(a)対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、および前記第1の処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;
(b)前記第1の試料の後に前記対象から得られた第2の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記第2のCSFまたは血液試料は、工程(a)と同じpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、および前記第2の処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに
(c)前記第2の試料と前記第1の試料の前記定量された複合pT217/T217×Aβ42/40値間の差を計算することであって、前記第2の試料における前記定量された複合pT217/T217×Aβ42/40値における統計的有意差は、前記対象の疾患の進行を示す、計算すること
を含む方法。
【請求項21】
対象における孤発性前頭側頭型認知症(FTD)疾患の進行を測定するための方法であって、
(a)対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、および前記第1の処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;
(b)前記第1の試料の後に前記対象から得られた第2の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記第2のCSFまたは血液試料は、工程(a)と同じpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、および前記第2の処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに
(c)前記第2の試料と前記第1の試料における前記定量されたpT181/T181値間の差を計算することであって、前記第2の試料における前記定量されたpT181/T181値の統計的有意差は、前記対象の疾患の進行を示す、計算すること
を含む方法。
【請求項22】
それを必要とする対象を処置する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに前記処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに
(b)健康な対照集団におけるpT217/T217値およびAβ42/40値と比較して、前記pT217/T217値の増加および正常なAβ42/40値が検出される場合、医薬組成物を前記対象に投与すること
を含む方法。
【請求項23】
前記医薬組成物がFTD療法を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする対象を処置する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに前記処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに
(b)アルツハイマー病集団におけるpT217/T217値およびAβ42/40値と比較して、前記pT217/T217値における減少およびAβ42/40値の増加が検出される場合、医薬組成物を前記対象に投与すること
を含む方法。
【請求項25】
前記医薬組成物がFTD療法を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
それを必要とする対象を処置する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、および前記処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに
(b)健康な対照集団、アルツハイマー病集団、または4R-タウオパチー集団における複合pT217/T217×Aβ42/40値と比較して、前記複合pT217/T217×Aβ42/40値の増加が検出される場合、医薬組成物を前記対象に投与すること
を含む方法。
【請求項27】
前記医薬組成物がFTD療法を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
それを必要とする対象を処置する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに前記処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに
(b)健康な対照集団、アルツハイマー病集団、または非孤発性FTDタウオパチー集団におけるpT181/T181値と比較して、前記pT181/T181値の減少が検出される場合、医薬組成物を対象に投与すること
を含む方法。
【請求項29】
前記医薬組成物が孤発性FTD療法を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記処置が、Aβ沈着を低減または防止するための治療剤を含まない、請求項22から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記処置が、前記定量されたpタウ種の量を変化または安定化させる、請求項22から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
臨床試験において対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに
(c)pT217/T217値が増加し、Aβ42/40値が健康な対照集団とほぼ同じである場合に、前記対象をFTDの臨床試験に選択すること
を含む方法。
【請求項33】
臨床試験において対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに
(c)pT217/T217値が増加し、Aβ42/40値が健康な対照集団とほぼ同じである場合に、前記対象をADまたはAb療法の臨床試験から除外すること
を含む方法。
【請求項34】
臨床試験において対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに
(c)前記複合pT217/T217×Aβ42/40値が健康な対照集団と比較して増加している場合に、FTDの臨床試験に前記対象を選択すること
を含む方法。
【請求項35】
臨床試験に対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに
(c)前記複合pT217/T217×Aβ42/40値がAD集団と比較して増加している場合に、ADの臨床試験から対象を除外すること
を含む方法。
【請求項36】
臨床試験において対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに
(c)前記pT181/T181値が健康な対照集団と比較して減少している場合、孤発性FTD療法のための臨床試験に前記対象を選択すること
を含む方法。
【請求項37】
臨床試験に対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに
(c)前記pT181/T181値がAD集団と比較して減少している場合に、ADの臨床試験から対象を除外すること
を含む方法。
【請求項38】
アルツハイマー病を区別する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに
(b)前記処理された試料中のpT153/T153値を定量することであって、前記pT153/T153値によって、アルツハイマー病を、非ADタウオパチーおよび健康な状態から区別する、定量すること
を含む方法。
【請求項39】
健康な対照集団および非アルツハイマー病タウオパチー集団と比較して増加したpT153/T153値によって、アルツハイマー病を、非ADタウオパチーおよび健康な状態から区別する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
臨床試験において対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中のpT153/T153値を定量すること;ならびに
(c)前記pT153/T153値が健康な対照集団または非ADタウオパチー集団と比較して増加している場合に、AD療法のための臨床試験に対象を選択すること
を含む方法。
【請求項41】
臨床試験において対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中のpT151/T151値を定量すること;ならびに
(c)前記pT153/T153値が非ADタウオパチー集団と比較して増加している場合、非ADタウオパチー療法の臨床試験から前記対象を除外すること
を含む方法。
【請求項42】
アルツハイマー病を区別する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに
(b)前記処理された試料中のpT111/T111値を定量することであって、前記pT111/T111値によって、アルツハイマー病を、非ADタウオパチーおよび健康な状態から区別すること
を含む方法。
【請求項43】
健康な対照集団および非アルツハイマー病タウオパチー集団と比較して増加したpT111/T111値によって、アルツハイマー病を、非ADタウオパチーおよび健康な状態から区別する、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
臨床試験において対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中のpT111/T111値を定量すること;ならびに
(c)前記pT111/T111値が健康な対照集団または非ADタウオパチー集団と比較して増加している場合に、AD療法のための臨床試験に前記対象を選択すること
を含む方法。
【請求項45】
臨床試験において対象を選択するための方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;
(b)前記処理された試料中のpT111/T111値を定量すること;ならびに
(c)前記pT111/T111値が非ADタウオパチー集団と比較して増加している場合、非ADタウオパチー療法の臨床試験から前記対象を除外すること
を含む方法。
【請求項46】
タウオパチーを区別する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに
(b)前記処理された試料中のpT205/T205値を定量することであって、前記pT205/T205値によって、タウオパチーと健康な状態とを区別する、定量すること
を含む方法。
【請求項47】
pT205/T205値の増加により、タウオパチーと健康な状態とを区別する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
タウオパチーを区別する方法であって、
(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、前記CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに
(b)前記処理された試料中のpT208/T208値を定量することであって、前記pT208/T208値によって、タウオパチーと健康な状態とを区別する、定量すること
を含む方法。
【請求項49】
pT208/T208値の増加により、タウオパチーと健康な状態とを区別する、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、2021年3月31日に出願された米国特許仮出願第63/169,193号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、所与の疾患を診断および/またはそれに適切な処置法を選択するために、3R-および4R-タウオパチーの病理学的特徴および/または臨床症状を測定するためのCSF中のタウ種およびアミロイド-ベータ種の使用を包含する。
【背景技術】
【0003】
微小管関連タンパク質タウ(MAPTまたはタウ)は、ニューロンの形態学および生理学に必須の役割を果たす。タウは、6つの異なる全長タンパク質のアイソフォームを有し、アセチル化、グリコシル化およびリン酸化を含む多数の潜在的翻訳後修飾を受ける。リン酸化は、軸索の安定化におけるタウの正常な機能を調節するために重要であり、80超の異なる残基で発生する場合がある。しかし、タウの過剰なリン酸化は、タウが主に過剰リン酸化タウで構成される細胞内不溶性対らせんフィラメント(paired helical filaments)(PHF)および神経原線維変化(NFT)に凝集する確率を高めるようである。
【0004】
大脳皮質における細胞内神経原線維変化は、アルツハイマー病(AD)の決定的な病理学的特徴であり、細胞外アミロイドβ(Aβ)プラークの出現から長期間たった後に臨床症状が発症することと相関しており、細胞外アミロイドβ(Aβ)プラークは、症状発症の最長20年前から発現し始める。ADにおいて、可溶性p-タウおよび非リン酸化タウが、脳脊髄液(CSF)中で2倍増加する。これらの変化は、タウおよびNFTをCSFに受動的に放出するニューロン死(神経変性)の影響を反映していると提唱されている。しかし、重大なNFT病変および神経変性を伴う他のタウオパチー(例えば、進行性核上性麻痺、前頭側頭葉変性タウ)では、CSFの可溶性p-タウおよび総タウのレベルは増加しない。
【0005】
進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底核症候群(CBS)、および前頭側頭型認知症(FTD)等の他のタウオパチーまたは神経変性疾患には、現在、CSFまたは画像化バイオマーカーがなく、診断は主に、脳解剖後に最終的に確認される臨床評価に依存する。他のタウオパチーがアミロイド病変の非存在下でp-タウ修飾を誘導するかどうかは依然として不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当技術分野では、臨床試験の設計および実施に影響を与える、信頼性が高く精度が高いタウオパチーの臨床診断のための改善された方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の様々な態様の中で、対象を診断し、処置決定を導き、臨床試験の対象を選択するために、特定のアミノ酸残基におけるタウリン酸化、および適宜Aβ種を定量する方法が提供される。
【0008】
本開示の一態様は、MAPT R406Wタウオパチーを区別する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに(b)処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量することであって、pT217/T217値の増加および正常なAβ42/40値により、MAPT R406Wタウオパチーと健康な状態とを区別する、定量することを含む方法を包含する。
【0009】
本開示の別の態様は、MAPT R406Wタウオパチーを区別する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに(b)処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量することであって、pT217/T217値の減少およびAβ42/40値の増加により、MAPT R406Wタウオパチーとアルツハイマー病とを区別する、定量することを含む方法を包含する。
【0010】
本開示の別の態様は、MAPT R406Wタウオパチーを区別する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに(b)処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量することであって、pT217/T217×Aβ42/40値によって、MAPT R406Wタウオパチーをアルツハイマー病、4R-タウオパチー、および健康な状態から区別する、定量することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、健康な対照集団におけるpT217/T217×Aβ42/40値と比較した、工程(b)で定量されたpT217/T217×Aβ42/40値の増加により、MAPT R406Wタウオパチーと健康な状態とを区別する。一部の実施形態では、アルツハイマー病集団におけるpT217/T217×Aβ42/40値と比較した、工程(b)で定量されたpT217/T217×Ab42/40値の増加により、MAPT R406WタウオパチーとADとを区別する。一部の実施形態では、4R-タウオパチー集団におけるpT217/T217×Aβ42/40値と比較した、工程(b)で定量されたpT217/T217×Aβ42/40値の増加により、MAPT R406Wタウオパチーと4R-タウオパチーとを区別する。
【0011】
本開示の別の態様は、孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を区別する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに(b)処理された試料中のpT181/T181値を定量することであって、pT181/T181値によって、孤発性FTDをアルツハイマー病、非孤発性FTDタウオパチー、および健康な状態から区別する、定量することを含む方法を包含する。一部では、アルツハイマー病集団におけるpT181/T181値と比較した、工程(b)で定量されたpT181/T181値の減少により、孤発性FTDとアルツハイマー病とを区別する。一部の実施形態では、健康な対照集団におけるpT181/T181値と比較した、工程(b)で定量されたpT181/T181値の減少により、孤発性FTDと健康な状態とを区別する。一部の実施形態では、非孤発性FTDタウオパチー集団におけるpT181/T181値と比較した、工程(b)で定量されたpT181/T181値の減少により、孤発性FTDと非孤発性FTDタウオパチー集団を区別する。
【0012】
本開示の別の態様は、アルツハイマー病の症状を有する対象を診断する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(b)健康な対照集団におけるpT217/T217値およびAβ42/40値と比較して、pT217/T217値の増加および正常なAβ42/40値が検出される場合、対象を前頭側頭型認知症(FTD)を有するか、またはFTDのリスクが増加していると診断することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、方法は、複合pT217/T217×Aβ42/40値を決定することをさらに含み、健康な対照と比較した複合値の増加は、対象がFTDを有するか、またはFTDのリスクが増加していることを示す。一部の実施形態では、対象は、MAPT R406W突然変異保持者として診断される。
【0013】
本開示の別の態様は、アルツハイマー病の症状を有する対象を診断する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、および処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(b)アルツハイマー病集団におけるpT217/T217値およびAβ42/40値と比較して、pT217/T217値の減少およびAβ42/40値の増加が検出される場合、対象を前頭側頭型認知症(FTD)を有するか、またはFTDのリスクが増加していると診断することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、方法は、複合pT217/T217×Aβ42/40値を決定することをさらに含み、アルツハイマー病集団と比較した複合値の増加は、対象がFTDを有するか、またはFTDのリスクが増加していることを示す。一部の実施形態では、対象は、MAPT R406W突然変異保持者として診断される。
【0014】
本開示の別の態様は、アルツハイマー病の症状を有する対象を診断する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること、および処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに(b)健康な対照集団におけるpT181/T181値と比較して、pT181/T181値の減少が検出される場合、対象を孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を有するか、または孤発性FTDのリスクが増加していると診断することを含む方法を包含する。
【0015】
本開示の別の態様は、アルツハイマー病の症状を有する対象を診断する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること、および処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに(b)アルツハイマー病集団におけるpT181/T181値と比較して、pT181/T181値の減少が検出される場合、対象を孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を有するか、または孤発性FTDのリスクが増加していると診断することを含む方法を包含する。
【0016】
本開示の別の態様は、対象におけるMAPT R406Wタウオパチー疾患の進行を測定するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに第1の処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;(b)第1の試料の後に対象から得られた第2の処理されたCSF試料または血液試料を提供することであって、第2のCSFまたは血液試料は、工程(a)と同じpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに第2の処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(c)第2の試料および第1の試料の定量されたpT217/T217値およびAβ42/40値の間の差を計算することであって、第2の試料における定量されたpT217/T217値およびAβ42/40値の統計的有意差は、対象の疾患の進行を示す、計算することを含む方法を包含する。
【0017】
本開示の別の態様は、対象におけるMAPT R406Wタウオパチー疾患の進行を測定するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、および第1の処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;(b)第1の試料の後に対象から得られた第2の処理されたCSF試料または血液試料を提供することであって、第2のCSFまたは血液試料は、工程(a)と同じpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、および第2の処理された試料中の複合pT217/T217×Ab42/40値を定量すること;ならびに(c)第2の試料と第1の試料の定量された複合pT217/T217×Aβ42/40値間の差を計算することであって、第2の試料における定量された複合pT217/T217×Aβ42/40値における統計的有意差は、対象の疾患の進行を示す、計算することを含む方法を包含する。
【0018】
本開示の別の態様は、対象における孤発性前頭側頭型認知症(FTD)疾患の進行を測定するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること、および第1の処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;(b)第1の試料の後に対象から得られた第2の処理されたCSF試料または血液試料を提供することであって、第2のCSF試料または血液試料は、工程(a)と同じpタウ種が濃縮されている、提供すること、および第2の処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに(c)第2の試料と第1の試料における定量されたpT181/T181値間の差を計算することであって、第2の試料における定量されたpT181/T181値の統計的有意差は、対象の疾患の進行を示す、計算することを含む方法を包含する。
【0019】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象を処置するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、および処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(b)健康な対照集団におけるpT217/T217値およびAβ42/40値と比較して、pT217/T217値の増加および正常なAβ42/40値が検出される場合、医薬組成物を対象に投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、医薬組成物は、FTD療法を含む。
【0020】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象を処置するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(b)アルツハイマー病集団におけるpT217/T217値およびAβ42/40値と比較して、pT217/T217値の減少およびAβ42/40値の増加が検出される場合、医薬組成物を対象に投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、医薬組成物は、FTD療法を含む。
【0021】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象を処置するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに(b)健康な対照集団、アルツハイマー病集団、または4R-タウオパチー集団における複合pT217/T217×Aβ42/40値と比較して、複合pT217/T217×Aβ42/40値の増加が検出される場合、医薬組成物を対象に投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、医薬組成物は、FTD療法を含む。
【0022】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象を処置するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること、および処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに(b)健康な対照集団、アルツハイマー病集団、または非孤発性FTDタウオパチー集団におけるpT181/T181値と比較して、pT181/T181値の減少が検出される場合、医薬組成物を対象に投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、医薬組成物は、孤発性FTD療法を含む。
【0023】
上記の態様のそれぞれにおいて、ある特定の実施形態では、処置は、Aβ沈着を低減または防止するための治療剤を含まず、および/または処置は、定量されたpタウ種の量を変化または安定化させる。
【0024】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(c)pT217/T217値が増加し、Aβ42/40値が健康な対照集団とほぼ同じである場合に、対象をFTDの臨床試験に選択することを含む方法を包含する。
【0025】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(c)pT217/T217値が増加し、Aβ42/40値が健康な対照集団とほぼ同じである場合に、対象をADまたはAb療法の臨床試験から除外することを含む方法を包含する。
【0026】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに(c)複合pT217/T217×Aβ42/40値が健康な対照集団と比較して増加している場合に、FTDの臨床試験に対象を選択することを含む方法を包含する。
【0027】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに(c)複合pT217/T217×Aβ42/40値がAD集団と比較して増加している場合に、ADの臨床試験から対象を除外することを含む方法を包含する。
【0028】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに(c)pT181/T181値が健康な対照集団と比較して減少している場合、孤発性FTD療法のための臨床試験に対象を選択することを含む方法を包含する。
【0029】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに(c)複合pT181/T181値がAD集団と比較して減少している場合に、ADの臨床試験から対象を除外することを含む方法を包含する。
【0030】
本開示の別の態様は、アルツハイマー病を区別する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに(b)処理された試料中のpT153/T153値を定量することであって、pT153/T153値によって、アルツハイマー病を、非ADタウオパチーおよび健康な状態から区別する、定量することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、健康な対照集団および非アルツハイマー病タウオパチー集団と比較して増加したpT153/T153値によって、アルツハイマー病を、非ADタウオパチーおよび健康な状態から区別する。
【0031】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT153/T153値を定量すること;ならびに(c)pT153/T153値が健康な対照集団または非ADタウオパチー集団と比較して増加している場合に、AD療法のための臨床試験に対象を選択することを含む方法を包含する。
【0032】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT151/T151値を定量すること;ならびに(c)pT153/T153値が非ADタウオパチー集団と比較して増加している場合、非ADタウオパチー療法の臨床試験から対象を除外することを含む方法を包含する。
【0033】
本開示の別の態様は、アルツハイマー病を区別する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに(b)処理された試料中のpT111/T111値を定量することであって、pT111/T111値によって、アルツハイマー病を、非ADタウオパチーおよび健康な状態から区別する、定量することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、健康な対照集団および非アルツハイマー病タウオパチー集団と比較して増加したpT111/T111値によって、アルツハイマー病を、非ADタウオパチーおよび健康な状態から区別する。
【0034】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT111/T111値を定量すること;ならびに(c)pT111/T111値が健康な対照集団または非ADタウオパチー集団と比較して増加している場合に、AD療法のための臨床試験に対象を選択することを含む方法を包含する。
【0035】
本開示の別の態様は、臨床試験において対象を選択するための方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT111/T111値を定量すること;ならびに(c)pT111/T111値が非ADタウオパチー集団と比較して増加している場合、非ADタウオパチー療法の臨床試験から対象を除外することを含む方法を包含する。
【0036】
本開示の別の態様は、タウオパチーを区別する方法であって、一般に、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに(b)処理された試料中のpT205/T205値を定量することであって、pT205/T205値によって、タウオパチーと健康な状態とを区別する、定量することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、pT205/T205値の増加により、タウオパチーと健康な状態とを区別する。
【0037】
本開示の別の態様は、タウオパチーを区別する方法であって、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに(b)処理された試料中のpT208/T208値を定量することであって、pT208/T208値によって、タウオパチーと健康な状態とを区別する、定量することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、pT208/T208値の増加により、タウオパチーと健康な状態とを区別する。
【0038】
本発明のこれらおよび他の態様ならびに反復を、以下により十分に説明する。
【0039】
出願ファイルは、少なくとも1つのカラーで作成された写真を含有する。カラー写真を有するこの特許出願公開のコピーは、要求および必要な料金の支払いに応じて事務局が提供することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1A、
図1B、
図1C、
図1D、
図1Eおよび
図1Fは、MAPT R406W保持者が、アミロイド病変を伴わずにCSF pT217/T217を増加させたことを示す。
図1Aは、すべての試料(n=252)が、WashU-Aコホートで計算されたカットオフ(CSF Aβ42/40カットオフ=0.086、CSF pT217/T217カットオフ=4.76)を使用して象限分析にプロットされたことを示す。
図1B~
図1Eは、各象限に対し臨床的に分類された各群の参加者数を示す円グラフを示す:II(
図1B)、I(
図1C)、III(
図1D)、およびIV(
図1E)。CSF、脳脊髄液。
図1Fは、この研究で分析されたコホートのフローチャートを示す。WashU-Aコホートは、PiB PET画像化データを有するサブセット(n=48)を含むADおよび年齢が一致した対照を含む。このサブセットおよびPiB PETカットオフ0.18を使用して、CSF Ab42/40(カットオフ0.086)の免疫沈降および質量分析(IP/MS)測定のアミロイド陽性を決定した。次に、WashU-AからのすべてのCSFを使用して、IP/MS CSF pT217/T217カットオフ4.76を決定した。pT181、pT217、総タウのCSF濃度、およびpT181/T181の比のカットオフは、それぞれ44.79、222.4、754.7、および15.75であった。WashU-A(n=85)、WashU-B(n=88)、およびMontpellierコホート(n=79)を、象限分析でIP/MS CSF Ab42/40およびpT217/T217について分析した(合計n=252)。試料を、決定されたアミロイドおよびpタウ陽性のカットオフを使用して象限I~IVに分類した。AMC:年齢一致対照、YNC:若年正常対照、CBS:皮質基底核症候群、PSP:進行性核上性麻痺、bvFTD:行動障害型前頭側頭型認知症。
【
図2】
図2A、
図2B、
図2Cおよび
図2Dは、AD、およびMAPT R406W突然変異保持者診断用のCSF Aβ42/40、CSF pT217/T217、ならびに複合バイオマーカーを示す。
図2Aは、CSF Aβ42/40がADにおいて有意に減少していることを示す(ANOVA、p<0.0001)。
図2Bは、CSF pT217/T217がADにおいて有意に増加していることを示す(ANOVA、p<0.0001)。
図2Cは、CSF pT217/T217×CSF Aβ42/40が、対照群および大部分が4Rタウオパチー(PSP、CBS、FTD-MAPTP301L)および孤発性bvFTDのサブセットからなる4Rタウオパチー群(FTD-TDP、FTD-FUS、および3Rタウオパチーを含む可能性がある、ANOVA、p<0.0001)と比較して、ADにおいて有意に増加していることを示す。これは、対照(ANOVA、p<0.0001)および4Rタウオパチー群(ANOVA、p=0.0001)と比較して、MAPT R406W保持者でも有意に増加している。
図2Dは、CSF pT217/T217をCSF Aβ42/40で割った値が、ADにおいて有意に増加することを示す(ANOVA、p<0.0001)。CSF、脳脊髄液;AD、アルツハイマー病;PSP、進行性核上性麻痺;CBS、皮質基底核症候群;bvFTD、行動障害型前頭側頭型認知症。
【
図3】
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、
図3E、
図3F、
図3G、
図3H、
図3I、
図3J、
図3K、および
図3Lは、IP/MS CSF Aβ42/40、CSFタウおよびpタウのROC分析を示す。
図3Aは、CSF Aβ42/40比が、Wash-Aコホート(n=48)のアミロイドPET-PiB+参加者において有意に増加していることを示す。
図3Bは、CSF Aβ42/40がアミロイドPET-PiB+をPiB-個体から区別できることを示す(AUC=0.9207、p<0.0001)。(
図3C、
図3E、
図3G、
図3I、
図3K)CSF pT217/T217比、CSF pT217、CSF T181、CSF総タウ濃度、CSF pT181/T181比は、Wash-Aコホート(n=85)におけるCSF Aβ42/40比によって定義されたアミロイド+参加者において有意に増加する。(
図3D、
図3F、
図3H、
図3J、
図3L)CSF pT217/T217比、CSF pT217、CSF T181、CSF総タウ濃度、CSF pT181/T181比は、それぞれAUC=0.983、0.949、0.816、0.693、0.934を伴い、CSF Aβ42/40陽性(アミロイド+)個体をCSF Aβ42/40陰性(アミロイド-)個体から区別することができる。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図4】
図4Aは、診断による象限分析を示す。各疾患群の参加者が位置する象限(I、II、III、IV)を示す円グラフ。
図4Bは、診断による象限分析を示す。各疾患群の参加者が位置する象限(I、II、III、IV)を示す円グラフ。
図4Cは、診断による象限分析を示す。各疾患群の参加者が位置する象限(I、II、III、IV)を示す円グラフ。
図4Dは、診断による象限分析を示す。各疾患群の参加者が位置する象限(I、II、III、IV)を示す円グラフ。
図4Eは、診断による象限分析を示す。各疾患群の参加者が位置する象限(I、II、III、IV)を示す円グラフ。
図4Fは、診断による象限分析を示す。各疾患群の参加者が位置する象限(I、II、III、IV)を示す円グラフ。
【
図5】
図5A、
図5B、および
図5Cは、象限ごとのアミロイドおよびタウのPET画像化を示す。
図5Aは、PiB SUVRによって測定されたアミロイドPET画像化が、象限II>III>IVにおいて有意かつ徐々に増加することを示す(ANOVA、p<0.0001)。
図5Bは、AV45 SUVRによって測定されたアミロイドPET画像化が、象限II>III>IVにおいて有意かつ徐々に増加することを示す(ANOVA、p<0.0001)。
図5Cは、AV1451 SUVRによって測定されたタウPET画像化が、第II象限でのみ増加していることを示す(ANOVA、p<0.0001)。象限Iに画像化データを有する参加者はいなかった。ANOVA *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図6】
図6は、象限IIIおよび象限IVにおけるCSF Aβ42/40およびCSF pT217/T217の相関をグラフで示す。CSF pT217/T217は、pタウ陽性のカットオフ未満の第III象限および第IV象限におけるCSF Ab42/40と負の相関がある(ピアソン相関 r=0.556、p<0.0001)。
【
図7】
図7A、
図7B、
図7C、および
図7Dは、
図2に示される診断のサブカテゴリをグラフで示す。
図7Aは、CSF Aβ42/40がADおよび限局性ADにおいて有意に減少していることを示す。
図7Bは、CSF pT217/T217がADおよび限局性ADにおいて有意に増加していることを示す。
図7Cは、CSF pT217/T217×CSF Aβ42/40が、ADおよびMAPT R406W突然変異保持者において有意に増加していることを示す。
図7Dは、CSF pT217/T217をCSF Aβ42/40で割った値が、ADおよび限局性ADにおいて有意に増加していることを示す。ANOVA *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図8】
図8A、
図8B、
図8C、および
図8Dは、CSF Ab42/40およびCSFの総タウおよびpタウを使用した象限分析をグラフで示す。pT217(
図8A)、pT181(
図8B)、総タウ(
図8C)のCSF濃度によって、MAPT R406W突然変異保持者または他の群を分離しない。
図8Aは、CSF pT181/T181比によって、MAPT R406W突然変異保持者が分離されないことを示す。しかし、孤発性bvFTDでは、象限IVのCSF pT181/T181が低下する場合がある。
【
図9】
図9A、
図9B、
図9C、および
図9Dは、タウオパチーのサブ群におけるIP/MS CSFの総タウおよびpタウをグラフで示す。
図9Aおよび
図9Bは、ADではCSF pT217およびpT181濃度が有意に増加したことを示す。
図9Cは、総CSFタウが、YNCよりもAMC、AD、限局性AD、CBS PSP連続体において有意に増加していることを示す。
図9Dは、FTLD-タウ、FTLD-TDP、FTLD-FUSを含む孤発性bvFTDが、R406W(*p<0.05)、AMC(***p<0.001)、およびAD/限局性AD(****p<0.0001)よりも有意に低いCSF pT181/T181を有することを示している。
【
図10】
図10Aおよび
図10Bは、FTLD-タウ、FTLD-TDP、FTLD-FUSを含む孤発性bvFTDが、CSF pT181/T181に関し、対照、ADおよび他のタウオパチーから分離され得ることを示す。
図10Aは、FTLD-タウ、FTLD-TDP、FTLD-FUSを含む孤発性bvFTD(bvFTD)が、対照、AD、ならびにCBS、PSP、およびMAPT-FTD(P301LおよびR406W突然変異保持者)を含むタウオパチーよりも高いCSF Aβ42/40比および低いCSF pT181/T181を有することを示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図10Bは、bvFTDを他のコホートから分離する際のCSF pT181/T181の診断値を示す。孤発性bvFTDは、対照(AUC=0.752)ならびにPSP、CBS、およびMAPT-FTD(AUC=0.707)から分離することができる。
【
図11】
図11は、CBDまたはPSPとして同定された参加者の大部分全員が、AD試料で観察されたよりも高いpT217/T217を有することを示す。
【
図12】
図12は、ADおよび非ADタウオパチーにおけるpT181/T181値を示す。
【
図13】
図13は、ADおよび非ADタウオパチーにおけるpT205/T205値を示す。
【
図14】
図14は、ADおよび非ADタウオパチーにおけるpS208/S208値を示す。
【
図15】
図15は、ADおよび非ADタウオパチーにおけるpT111/T111値を示す。
【
図16】
図16は、ADおよび非ADタウオパチーにおけるpT153/T153値を示す。
【
図17】
図17Aは、FTD-タウ、FTD-ALS、FTD-FUSを含む孤発性FTDが、CSF pT181/T181に関し、対照、ADおよび他のタウオパチーから分離され得ることを示す。
図17Bでは、孤発性FTD(sFTD)は、象限分析における他のコホートよりも高いCSF Ab42/40比および低いCSF pT181/T181を示す。
図17Cでは、sFTDは、R406W(*p<0.05)、AMC(***p<0.001)、およびAD/限局性AD(****p<0.0001)よりも有意に低いCSF pT181/T181を有することを示している。
図17Dでは、sFTDは、対照、ADおよびCBS、PSP、および家族性FTD-MAPT(fFTD)に対し有意に低いCSF pT181/T181を有する。sFTDは、対照(AUC=0.75)ならびにPSP、CBS、およびfFTD(AUC=0.72)から分離することができる。
【
図18】
図18Aは、MAPT R406W保持者ではアミロイド病変を伴わずにCSF pT217/T217が増加し、孤発性FTDではpT181/T181が減少したことを示す。
図18Bでは、すべての試料(n=265)を、x軸にCSF Ab42/40比、y軸にCSFタウ測定値を用いた象限分析に供した。
図18Cでは、CSF pT217/T217は、MAPT R406W突然変異保持者で増加している。
図18Dでは、(CSF Aβ42/40カットオフ=0.086、CSF pT217/T217カットオフ=4.755。CSF pT217絶対濃度によって、MAPT R406W突然変異保持者は分離されない。
図18Eでは、孤発性FTDでは、CSF pT181/T181が減少する。CSF pT181の絶対濃度によって、孤発性FTDは分離されない。総タウによって、どの群も分離されない。
【
図19】
図19Aは、MAPT R406W保持者では、アミロイド病変を伴わずにpT217/T217が増加し、
図19Bでは、孤発性FTDではpT181/T181が減少したことを示す。
図19Cでは、pT217/T217は、MAPT R406W保持者を分離するのに、pT217濃度単独よりも良好である。
図19Dでは、pT181/T181は、MAPT R406WおよびP301L保持者を含まない孤発性FTDを分離するのに、pT181濃度単独よりも良好である。
図19Eでは、様々な疾患コホートの年齢-
図19Fでは、CSF総タウは、部分的に年齢に依存する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
中枢神経系中の神経原線維変化中へのタウタンパク質凝集は、アルツハイマー病(AD)を含むある特定の神経変性障害の病因となる。タウ不安定化の機構はなお完全に理解されていないが、タウタンパク質はタウ凝集体中で高リン酸化されることが判明した。本開示は、タウオパチーを診断するために、特定のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を定量するための、処置決定を導くための、臨床試験の対象を選択するための、およびある特定の治療介入の臨床効果を評価するための、方法の使用を包含する。本発明のこれらおよび他の態様ならびに反復を、以下により十分に説明する。
【0042】
I.定義
本発明がより容易に理解されるように、ある特定の用語を最初に定義する。別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の実施形態が関係する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において記載されているものと類似するか、それを修正するか、またはそれと等価な多数の方法および材料を、本発明の実施形態の実践において不必要な実験を伴うことなく使用することができ、好ましい材料および方法は本明細書において記載されている。本発明の実施形態を説明し特許請求するにあたって、下記に記載する定義に従って以下の用語を使用する。
【0043】
「約」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば典型的な測定技術および器具を通して発生することのある、限定されるものではないが質量、容量、時間、距離および量を含む任意の定量可能な変数に関する数量の変動を指す。さらに、実際に使用される固体および液体の操作手順を考慮すると、組成物を作製するかまたは方法を実行するため等に使用される成分の製造、供給源または純度の差異を通して起こる可能性のある、一定数の不慮の誤差および変動が存在する。「約」という用語は、最大±5%であり得るが、±4%、3%、2%、1%等でもあり得る、これらの変動も包含する。「約」という用語による修飾の有無を問わず、特許請求の範囲は量についての等価物を含む。
【0044】
本明細書において使用される場合、抗体は、当該技術分野において理解されるような完全な抗体、すなわち2つの重鎖および2つの軽鎖からなるものを指すか、または抗原結合領域を有し、限定されるものではないが、フラグメント、例えばFab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、Fvおよび一本鎖抗体Fvを含む、任意の抗体様の分子を指す。抗体という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体も指す。様々な抗体ベースのコンストラクトおよびフラグメントを調製および使用するための技術は、当該技術分野において公知である。抗体を調製および特徴付けるための手段も、当該技術分野において公知である(例えばAntibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0045】
本明細書において使用される場合、「アプタマー」という用語は、生化学的活性、分子の認識または結合特性に関して有用な生物学的活性を有するポリヌクレオチド、一般的にはRNAまたはDNAを指す。通常、アプタマーは分子活性を有し、例えば特定のエピトープ(領域)における標的分子へ結合する。アプタマーはポリペプチドと結合する点で特異的であり、インビトロ進化法(in vitro evolution method)により、合成および/または同定できることが一般的に認められている。アプタマーを調製および特徴付ける手段は、インビトロ進化法を含め、当該技術分野において公知である。例えば、その全体を参照により本明細書に組み込まれる、US7,939,313を参照されたい。
【0046】
「Aβ」という用語は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と呼ばれるより大きなタンパク質のカルボキシ末端中の領域に由来するペプチドを指す。APPをコードする遺伝子は、第21染色体に位置する。毒性を有し得る異なる多数の形態のAβが存在し、Aβペプチドは典型的に37~43アミノ酸配列長であるが、これらは全体のサイズを変化させる短縮化および修飾を有し得る。これらは、可溶性および不溶性の区画中、モノマー、オリゴマーおよび凝集体形態で、細胞内または細胞外で見出すことができ、他のタンパク質または分子と複合体形成し得る。Aβの有害効果または毒性効果は、上記の形態のいずれかまたはすべて、ならびに具体的に記載されていないその他の点に起因し得る。例えば、2つのそのようなAβアイソフォームにはAβ40およびAβ42が挙げられ、Aβ42アイソフォームは特に原線維形成的または不溶性であり、疾患状態に関連する。「Aβ」という用語は、典型的に、個別のAβ種間の区別なしに、複数のAβ種を指す。特定のAβ種は、ペプチドのサイズにより、例えばAβ42、Aβ40、Aβ38等と同定される。
【0047】
本明細書において使用される場合、「Aβ42/Aβ40値」という用語は、対象から得られた試料中のAβ42の量の、同じ試料中のAβ40の量と比較した比を意味する。
【0048】
「Aβアミロイドーシス」は、脳内の臨床的に異常なAβ沈着として定義される。Aβアミロイドーシスを有すると決定される対象は、本明細書において「アミロイド陽性」と称され、一方でAβアミロイドーシスを有しないと決定される対象は、本明細書において「アミロイド陰性」と称される。Aβアミロイドーシスの承認済みの指標が当該技術分野において存在する。本開示の時点では、Aβアミロイドーシスは、典型的に、アミロイド画像化(例えばPiB PET、fluorbetapirもしくは当該技術分野において公知の他の画像化方法)により直接測定されるか、または脳脊髄液(CSF)Aβ42の低減もしくはCSF Aβ42/40比の低減により、間接的に測定される。平均皮質結合能(mean cortical binding potential)スコア>0.18を有する[11C]PIB-PET画像は、Aβアミロイドーシスの指標であり、免疫沈降および質量分析(IP/MS)による約1ng/mlの脳脊髄液(CSF)Aβ42濃度も同様である。あるいは、PIB-PETによって決定されるアミロイド陽性の予測精度を最大化するCSF Aβ42/40のカットオフ比を使用することもできる。これらのような、または当該技術分野において公知のおよび/または実施例で使用される他の値は、Aβアミロイドーシスを臨床的に確認するために、単独でまたは組合せで使用することができる。例えば、各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、Klunk W E et al. Ann Neurol 55(3) 2004, Fagan A M et al. Ann Neurol, 2006, 59(3), Patterson et. al, Annals of Neurology, 2015, 78(3): 439-453、またはJohnson et al., J. Nuc. Med., 2013, 54(7): 1011-1013を参照されたい。Aβアミロイドーシスを有する対象は、症候性であることもあればそうでないこともあり、症候性の対象は、Aβアミロイドーシスに関連する疾患についての臨床基準を満たすこともあれば満たさないこともある。Aβアミロイドーシスに関連する症状の非限定的な例には、認知機能障害、挙動変化、言語機能異常、情動調節不全、発作、認知症および神経系構造または機能の障害を挙げることができる。Aβアミロイドーシスに関連する疾患には、限定されるものではないが、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)、レビー小体型認知症および封入体筋炎が挙げられる。Aβアミロイドーシスを有する対象は、Aβアミロイドーシスに関連する疾患を発症する増大したリスクを有する。
【0049】
「Aβアミロイドーシスの臨床徴候」は、当該技術分野において公知のAβ沈着の尺度を指す。Aβアミロイドーシスの臨床徴候には、限定されるものではないが、アミロイド画像化(例えばPiB PET、fluorbetapirまたは当該技術分野において公知の他の画像化方法)により、または脳脊髄液(CSF)Aβ42もしくはAβ42/40比の低減により同定される、Aβ沈着を挙げることができる。例えば、各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、Klunk WE et al. Ann Neurol 55(3) 2004、およびFagan AM et al. Ann Neurol 59(3) 2006を参照されたい。各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第14/366,831号、第14/523,148号および第14/747,453号に記載されているように、Aβアミロイドーシスの臨床徴候には、Aβの代謝の測定、特に、単独での、または他のAβ突然変異体(例えばAβ37、Aβ38、Aβ39、Aβ40および/または総Aβ)の代謝の測定と比較した、Aβ42代謝の測定も挙げることができる。さらなる方法は、各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、Albert et al. Alzheimer's & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 170-179; McKhann et al., Alzheimer's & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 263-269;およびSperling et al. Alzheimer's & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 280-292に記載されている。重要なことに、Aβアミロイドーシスの臨床徴候を有する対象は、Aβ沈着に関連する症状を有することもあれば有しないこともある。また、Aβアミロイドーシスの臨床徴候を有する対象には、Aβアミロイドーシスに関連する疾患を発症する増大したリスクがある。
【0050】
「アミロイド画像化の候補」は、臨床医によりアミロイド画像化が臨床的に保証される個体として特定された対象を指す。非限定的な例として、アミロイド画像化の候補は、1つもしくは複数のAβアミロイドーシスの臨床徴候、1つもしくは複数のAβプラークに関連する症状、1つもしくは複数のCAAに関連する症状、またはそれらの組合せを有する対象であり得る。臨床医は、彼らの臨床的ケアを指示するために、そのような対象についてのアミロイド画像化を推奨してもよい。別の非限定的な例として、アミロイド画像化の候補は、Aβアミロイドーシスに関連する疾患についての臨床試験における潜在的な参加者(対照対象または試験対象のいずれか)であり得る。
【0051】
「Aβプラークに関連する症状」または「CAAに関連する症状」は、それぞれ、アミロイド線維と呼ばれる規則的に配列された線維の凝集体から構成されるアミロイドプラークまたはCAAの形成により引き起こされるかまたはそれに関連する、任意の症状を指す。代表的なAβプラークに関連する症状には、限定されるものではないが、ニューロン変性、認知機能障害、記憶障害、挙動変化、情動調節不全、発作、神経系構造または機能の障害、およびアルツハイマー病またはCAAの発症または悪化の増大したリスクを挙げることができる。ニューロン変性には、ニューロンの構造の変化(分子の変化、例えば毒性タンパク質の細胞内蓄積、タンパク質凝集等、およびマクロレベルの変化、例えば軸索または樹状突起の形状または長さの変化、ミエリン鞘組成の変化、ミエリン鞘の喪失等を含む)、ニューロンの機能の変化、ニューロンの機能の喪失、ニューロン死、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。認知機能障害には、限定されるものではないが、記憶、注意、集中、言語、論理的思考、創造性、実行機能、計画および系統化の困難さを挙げることができる。挙動変化には、限定されるものではないが、身体的または言語的な攻撃、衝動性、抑制の低下、無感動、自発性の低下、人格の変化、アルコール、タバコまたは薬物の乱用、および他の依存症関連の行動を挙げることができる。情動調節不全には、限定されるものではないが、うつ病、不安、躁病、興奮性および情動失禁を挙げることができる。発作には、限定されるものではないが、全身性強直性間代性発作、複雑部分発作、および非てんかん性の心因性発作を挙げることができる。神経系構造または機能の障害には、限定されるものではないが、水頭症、パーキンソニズム、睡眠障害、精神病、姿勢および共調運動の障害を挙げることができる。これには、運動障害、例えば単不全麻痺、片側不全麻痺、四肢不全麻痺、運動失調、バリスムスおよび振戦を挙げることができる。これには、嗅覚、触覚、味覚、視覚、聴覚を含む感覚喪失または機能障害も挙げることができる。さらに、これには、自律神経系障害、例えば腸および膀胱の機能障害、性機能障害、血圧および体温の調節不全を挙げることができる。最後に、これには、視床下部および下垂体の機能障害に起因するホルモン障害、例えば成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、プロラクチンおよび無数の他のホルモンおよび調節因子の欠乏および調節不全を挙げることができる。
【0052】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。哺乳動物には、限定されるものではないが、ヒト、霊長類、家畜、げっ歯類および愛玩動物が挙げられる。対象は、医学的ケアもしくは処置の待機中であってもよく、医学的ケアもしくは処置を受けていてもよく、または医学的ケアもしくは処置を受けたことがあってもよい。
【0053】
本明細書において使用される場合、「対照集団」、「正常集団」、もしくは「健康な」対象からの試料という用語は、タウオパチーもしくはAβアミロイドーシスを有さないと臨床的に決定された対象もしくは対象の群、または定性的もしくは定量的試験結果に基づく、Aβアミロイドーシス(アルツハイマー病を含むがこれに限定されない)に関連する臨床疾患を指す。
【0054】
本明細書において使用される場合、「血液試料」という用語は、血液、好ましくは末梢(または循環)血に由来する生物学的試料を指す。血液試料は全血、血漿または血清であることができるが、血漿が典型的に好ましい。
【0055】
「アイソフォーム」という用語は、本明細書において使用される場合、タンパク質をコードするmRNAの選択的スプライシング、タンパク質の翻訳後修飾、タンパク質のタンパク分解処理、遺伝的変異および体細胞組換えに起因して生じる、同じタンパク質変異体のいくつかの異なる形態のいずれかを指す。「アイソフォーム」および「変異体」という用語は、互換的に使用される。
【0056】
「タウ」という用語は、遺伝子MAPT(またはそのホモログ)によってコードされる複数のアイソフォーム、ならびにインビボでC末端が切断される種、インビボでN末端が切断される種、インビボで翻訳後修飾される種、またはそれらの任意の組合せを指す。本明細書において使用される場合、「タウ」、「タウタンパク質」、および「タウ種」という用語は、互換的に使用され得る。限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、魚類、ウシ、カエル、ヤギおよびニワトリを含む多数の動物では、タウは遺伝子MAPTによりコードされる。遺伝子がMAPTとして同定されていない動物では、ホモログが当該技術分野において周知の方法で同定され得る。
【0057】
ヒトでは、MAPTのエクソン2、3および10の選択的スプライシングにより生成される、タウの6つのアイソフォームが存在する。これらのアイソフォームは、352~441アミノ酸長の範囲にわたる。エクソン2および3は、N末端に各々29個のアミノ酸インサートをコードし(Nと呼ばれる)、全長ヒトタウアイソフォームは、両方のインサート(2N)、1つのインサート(1N)を有するか、またはインサートを有しない(0N)ことがある。すべての全長ヒトタウアイソフォームは、微小管結合ドメイン(Rと呼ばれる)の3つの繰り返しも有する。C末端のエクソン10を含むことで、エクソン10によりコードされる第4の微小管結合ドメインを含むこととなる。したがって、全長ヒトタウアイソフォームは、微小管結合ドメインの4つの繰り返し(エクソン10を含む:R1、R2、R3およびR4)、または微小管結合ドメインの3つの繰り返し(エクソン10を除く:R1、R3およびR4)から構成され得る。ヒトタウは、翻訳後修飾されることもあればされないこともある。例えば、タウがリン酸化、ユビキチン化、グリコシル化および糖化されることがあることは、当該技術分野において公知である。ヒトタウはまた、インビボでC末端、N末端、またはC末端およびN末端でタンパク質分解的に処理しても、しなくてもよい。したがって、「ヒトタウ」という用語は、2N3R、2N4R、1N3R、1N4R、0N3R、および0N4Rアイソフォーム、ならびにインビボでC末端が切断される種、インビボでN末端が切断される種、インビボで翻訳後修飾される種、またはそれらの任意の組合せを包含する。タウをコードする遺伝子の選択的スプライシングは他の動物において同様に発生する。
【0058】
本明細書において使用される場合、「MTBRタウ」という用語は、タウの微小管結合領域(MTBR)の2つ以上のアミノ酸(例えば、タウ-441のアミノ酸244~368など)を含むタウタンパク質、または複数のタウタンパク質を指す。
【0059】
脳内のタウ沈着に関連する疾患は、本明細書では「タウオパチー」と称される。「タウ沈着」という用語は、限定されるものではないが、神経原線維変化、神経網糸状体、およびジストロフィー性神経突起におけるタウ凝集体を含む、あらゆる形態の病変タウ沈着を含む。当該技術分野において公知のタウオパチーには、限定されるものではないが、進行性核上性麻痺、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、第17番染色体に関連する前頭側頭型認知症およびパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病、グアムのパーキンソン病認知症、神経原線維変化型老年期認知症、神経節腫および神経細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラフォルデン-シュパッツ病、リポフスチン症、ピック病、皮質基底核変性症(CBD)、嗜銀顆粒症(argyrophilic grain disease)(AGD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭型認知症(FTD)が挙げられる。
【0060】
タウオパチーは、病理学的タウ沈着物中に見出されるタウアイソフォームの優勢によって分類される。3つのMTBRを有するタウで優勢に構成されるタウ沈着を伴うタウオパチーは、「3Rタウオパチー」と称される。ピック病は、3Rタウオパチーの非限定的な例である。明確にするために、一部の3Rタウオパチーの病理学的タウ沈着は、3Rおよび4Rタウアイソフォームの混合であり得、3Rアイソフォームが優勢である場合がある。アルツハイマー病患者の脳内の細胞内神経原線維変化(すなわち、タウ沈着)には、一般にほぼ同量の3Rおよび4Rアイソフォームが含まれていると考えられている。4つのMTBRを有するタウで優勢に構成されるタウ沈着を伴うタウオパチーは、「4Rタウオパチー」と称される。PSP、CBD、およびAGDは、FTLDの一部の形態と同様に、4Rタウオパチーの非限定的な例である。特に、一部のV334MおよびR406W突然変異保持者など、遺伝的に確認されたFTLD症例を有する一部の対象の脳内の病理学的タウ沈着は、3Rおよび4Rアイソフォームの混合を示す。
【0061】
タウオパチーの臨床徴候は、限定されるものではないが神経原線維変化を含む、脳内のタウの凝集体であり得る。脳内のタウ凝集体を検出および定量するための方法は、当該技術分野において公知である(例えばタウ特異的リガンド、例えば[18F]THK5317、[18F]THK5351、[18F]AV1451、[11C]PBB3、[18F]MK-6240、[18F]RO-948、[18F]PI-2620、[18F]GTP1、[18F]PM-PBB3および[18F]JNJ64349311、[18F]JNJ-067)等を使用するタウPET)。
【0062】
「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語は、本明細書において使用される場合、訓練を受け免許を受けた専門家による、それを必要とする対象への医学的ケアの提供を指す。医学的ケアは、診断試験、治療処置、および/または予防もしくは防止手段であってもよい。治療および予防的処置の目的は、所望されない生理学的変化または疾患/障害を防止するかまたは緩慢化する(和らげる)ことである。治療または予防的処置の有益なまたは所望の臨床結果には、限定されるものではないが、検出可能かまたは検出不可能かにかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化しない)病態、疾患進行の遅延または緩慢化、病態の改善または軽減、および寛解(部分または完全のいずれか)が挙げられる。「処置」は、処置を受けない場合に予測される生存期間と比較して生存期間を延長することも意味することができる。処置を必要とする者には、疾患、状態もしくは障害を既に有する者、ならびに疾患、状態もしくは障害を有する傾向にある者、または疾患、状態もしくは障害を防止する予定の者が挙げられる。したがって、処置を必要とする対象は、疾患の症状または臨床徴候を有している場合もあれば、有していない場合もある。
【0063】
「タウ治療」という句は、集合的に、タウオパチーを発症するリスクのある対象、またはタウオパチーを有すると臨床的に診断された対象のために企図される、または彼らと共に使用する、任意の造影剤、治療処置、および/または予防的(prophylactic)または予防(preventative)措置を指す。造影剤の非限定的な例には、機能的造影剤(functional imaging agent)(例えば、フルオロデオキシグルコース等)および分子造影剤(例えばPittsburgh化合物B、フロルベタベン、フロルベタピル、フルテメタモル、放射性標識タウ特異的リガンド、放射性核種標識抗体等)が挙げられる。治療剤の非限定的な例には、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ剤等)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗タウ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物等)、セロトニン受容体6のアンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513等)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニミウム等)、血糖管理を改善するための治療(例えばインスリン、エキセナチド、リラグルチドピオグリタゾン等)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ホスファターゼ阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、β-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP産生の選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経成長因子興奮剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤(neurotrophic agent)、ムスカリン性M1受容体アゴニスト、GABA受容体調節因子、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質調節因子、カルシウムチャネル遮断薬、抗高血圧薬、スタチン、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0064】
「Aβ治療」という句は、集合的に、AβアミロイドーシスもしくはADを発症するリスクのある対象、Aβアミロイドーシスを有すると診断された対象、またはADとを有する診断された対象に対して企図される、または彼らと共に使用する、任意の造影剤または治療剤を指す。
【0065】
「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値を指す。
【0066】
II.生物学的試料中のタウリン酸化およびAβの測定
本開示の方法は、対象から得られた生物学的試料を提供すること、タウおよび/またはAβを単離すること、および1つまたは複数のアミノ酸残基、Aβ40、Aβ42、および適宜1つまたは複数のタンパク質におけるタウのリン酸化を測定することを含む。
【0067】
好適な生物学的試料には、対象から得られた血液試料または脳脊髄液(CSF)試料が含まれる。一部の実施形態では、対象はヒトである。ヒト対象は、医療もしくは処置を待っている場合があるか、または医療もしくは処置を受けている場合があるか、または医療もしくは処置を受けたことがある場合がある。様々な実施形態では、ヒト対象は、健康な対象、神経変性疾患を発症するリスクのある対象、神経変性疾患の徴候および/または症状を有する対象、または神経変性疾患と診断された対象であり得る。さらなる実施形態では、神経変性疾患はタウオパチーであり得る。特定の例では、タウオパチーは、アルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底核変性症(CBD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)であり得る。他の実施形態では、対象は実験動物である。さらなる実施形態では、対象は、ヒトタウおよび適宜1つまたは複数の追加のヒトタンパク質(例えば、ヒトAβ、ヒトApoEなど)を発現するように遺伝子操作された実験動物である。
【0068】
CSFは、留置CSFカテーテルの有無を問わない、腰椎穿刺によって得てもよい。対象から同時に収集された複数の血液またはCSF試料は、プールされてもよい。血液は、静脈内カテーテルの有無を問わない静脈穿刺によるか、またはフィンガースティック(またはその等価物)により収集してもよい。収集したら、血液試料またはCSF試料を、当該技術分野において公知の方法(例えば、全細胞および細胞残屑を除去するための遠心分離;分析試験の前に標本を安定化および保存するように設計された添加剤の使用等)に従って処理してもよい。血液試料またはCSF試料は、即時に使用されてもよく、または冷凍し無期限に保管されてもよい。本明細書に開示される方法で使用する前に、生物学的試料は、必要または所望であれば、プロテアーゼ阻害剤、同位体標識内部標準、界面活性剤およびカオトロピック剤を含むように、および/または他の分析物(例えば、タンパク質、ペプチド、代謝物など)を枯渇させるために修飾されていてもよい。
【0069】
使用される試料のサイズは、試料の種類、試料が得られた対象の健康状態、および分析されるべき分析物(タウに加えて)に応じて変動することができ、または変動することになる。CSF試料の体積は、約0.01mL~約5mL、または約0.05mL~約5mLであってもよい。特定の例において、試料のサイズは、約0.05mL~約1mLのCSFであってもよい。血漿試料の量は、約0.01mL~約20mLであってもよい。
【0070】
同位体標識は、試料処理全体の変動を考慮し、適宜絶対濃度を計算するための内部標準として使用することができる。一般に、同位体標識内部標準を、重要な試料処理の前に添加するが、必要であれば複数回添加することができる。
【0071】
複数の同位体標識内部標準が本明細書に記載されている。すべて、少なくとも1つのアミノ酸残基に重同位体標識が組み込まれている。1つまたは複数の完全長タウおよび/またはAβアイソフォームを使用してもよい。あるいは、または加えて、当該技術分野で公知のように、翻訳後修飾を有するアイソフォームおよび/またはペプチドフラグメントも使用することができる。一般的に言えば、組み込まれる標識アミノ酸残基は、その化学的特性に影響を与えることなくペプチドの質量を増加させる必要があり、同位体標識の存在によって生じる質量シフトは、質量分析法で内部標準(IS)と内因性分析物のシグナルを区別できるようにする程度に十分でなければならない。本明細書に示すように、好適な重同位体標識としには、限定されるものではないが、2H、13C、および15Nが挙げられる。典型的には、約1~10ngの内部標準で通常十分である。
【0072】
本明細書で使用される単離タウ試料とは、対象から得られた血液または脳脊髄液(CSF)から精製されたタウを含む組成物を指す。本開示の単離タウ試料では、タウは血液またはCSFから部分的または完全に、のいずれかで精製されている。血液またはCSFからタウを精製する方法は当技術分野で公知であり、これらの方法としては、選択的沈殿、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティ精製が挙げられるが、これらに限定されない。好適な方法では、血液またはCSFからリン酸化タウと非リン酸化タウの両方を濃縮する。
【0073】
本開示の方法は、1つまたは複数のタンパク質を試料から枯渇させる工程を含んでもよい。「枯渇する」という用語は、量または数が減少することを意味する。したがって、タンパク質の枯渇試料は、元の試料中の量よりも測定可能なほど少ない任意の量のタンパク質を有する場合があり、これにはタンパク質の量が存在しない場合も含まれる。
【0074】
タンパク質は、1つまたは複数のタンパク質を特異的に標的とする方法、例えば、親和性枯渇、固相抽出、または当該技術分野で公知の他の方法によって、試料から枯渇させることができる。タンパク質または複数のタンパク質の標的枯渇は、そのタンパク質の下流分析が所望される状況(例えば、同定、定量、翻訳後修飾の分析など)で使用してもよい。例えば、Aβペプチドは、好適なエピトープ結合剤によるAβの親和性枯渇後に、当該技術分野で公知の方法によって同定および定量することができる。別の非限定的な例として、アポリポタンパク質E(ApoE)の状態は、ApoEの親和性枯渇およびApoEアイソフォームの同定に続いて、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。標的枯渇を使用して、その後の分析のために他のタンパク質、例えば、限定されるものではないが、アポリポプロテインJ、シヌクレイン、可溶性アミロイド前駆体タンパク質、α-2マクログロブリン、S100B、ミエリン塩基性タンパク質、インターロイキン、TNF、TREM-2、TDP-43、YKL-40、VILIP-1、NFL、プリオンタンパク質、pNFH、およびDJ-1を単離することもできる。
【0075】
一部の実施形態では、標的枯渇は、親和性枯渇によって発生し得る。親和性枯渇とは、分子に対するその特異的結合特性を利用して、試料から目的のタンパク質を枯渇させる方法を指す。典型的には、分子は、固体支持体、例えばビーズ、樹脂、組織培養プレートなどに接着したリガンドである(固定化リガンドと称される)。リガンドの固体支持体への固定化は、リガンドとタンパク質の相互作用が発生した後に行ってもよい。好適なリガンドには、抗体、アプタマー、および他のエピトープ結合剤が挙げられる。この分子は、目的のタンパク質を選択的に吸収するポリマーまたは他の材料であってもよい。非限定的な例として、脂肪オキソエチル化アルコールで置換されたポリヒドロキシメチレン(例えば、PHM-L LIPOSORB、Sigma Aldrich)を使用して、血清からリポタンパク質(ApoEを含む)を選択的に吸収することができる。2つ以上の親和性枯渇剤を組み合わせて、複数のタンパク質を順次にまたは同時に枯渇させることができる。
【0076】
あるいは、より一般的な方法、例えば限外濾過、または酸、有機溶媒もしくは塩を用いたタンパク質沈殿によって、試料からタンパク質を枯渇させることができる。一般に、これらの方法は、高存在量および高分子量のタンパク質を確実に減少させるために使用され、その結果、低分子量および/または低存在量のタンパク質およびペプチド(例えば、タウ、Aβなど)が濃縮される。
【0077】
一部の実施形態では、タンパク質は、沈殿によって試料から枯渇させることができる。簡潔には、沈殿は、試料に沈殿剤を添加して完全に混合すること、試料を沈殿剤と共にインキュベートしてタンパク質を沈殿させること、および沈殿したタンパク質を遠心分離または濾過により分離することを含む。得られた上清はその後、下流用途で使用することができる。必要な試薬の量は、当該技術分野で公知の方法によって実験的に決定することができる。好適な沈殿剤には、過塩素酸、トリクロロ酢酸、アセトニトリル、メタノールなどが挙げられる。例示的な実施形態では、タンパク質は酸沈殿によって試料から枯渇させる。さらなる実施形態では、タンパク質は、過塩素酸を使用する酸沈殿によって試料から枯渇させる。
【0078】
上記アプローチの一方または両方からの2つ以上の方法を組み合わせて、複数のタンパク質を順次にまたは同時に枯渇させることができる。例えば、1つまたは複数のタンパク質を選択的に枯渇させ(標的枯渇)、続いて高存在量/分子量のタンパク質を枯渇させることができる。あるいは、高存在量/分子量のタンパク質を最初に枯渇させ、続いて1つまたは複数のタンパク質の標的枯渇を行うことができる。さらに別の代替法では、高存在量/分子量のタンパク質を最初に枯渇させ、続いて1つまたは複数のタンパク質の第1のラウンドの標的枯渇を行い、その後、第1のラウンド標的とは異なる1つまたは複数の異なるタンパク質の第2ラウンドの標的枯渇を行ってもよい。他の反復は、当業者には容易に明らかであろう。
【0079】
例示的な実施形態では、本開示の単離タウ試料は、アフィニティ精製によって血液またはCSFから精製されたタウを含む。アフィニティ精製とは、固定化リガンドへの特異的結合特性を利用して、目的のタンパク質を精製する方法を指す。典型的には、固定化リガンドは、固体支持体、例えばビーズ、樹脂、組織培養プレート等に接着したリガンドである。好適なリガンドは、リン酸化タウと非リン酸化タウの両方に特異的に結合する。一例では、好適なリガンドは、タウの中間ドメイン内のエピトープに結合し得る。別の例では、好適なリガンドは、タウのN末端内、好ましくはタウのアミノ酸1~35内のエピトープに結合し得る。別の例では、好適なリガンドは、タウのMTBR内のエピトープに結合し得る。別の例では、好適なリガンドは、タウのC末端内のエピトープに結合し得る。なおさらなる実施形態では、タウは、2つ以上の固定化リガンドを使用して血液またはCSFからアフィニティ精製し得る。一例では、固定化リガンドは、タウのN末端内のエピトープに結合し、別の固定化リガンドはタウの中間ドメイン内のエピトープに結合する。別の例では、固定化リガンドは、タウのMTBR内のエピトープに結合し、別の固定化リガンドはタウの中間ドメイン内のエピトープに結合する。別の例では、固定化リガンドは、タウのC末端内のエピトープに結合し、別の固定化リガンドはタウの中間ドメイン内のエピトープに結合する。別の例では、固定化リガンドは、タウのC末端内のエピトープに結合し、別の固定化リガンドはタウのN末端内のエピトープに結合する。別の例では、固定化リガンドは、タウのMTBR内のエピトープに結合し、別の固定化リガンドはタウのN末端内のエピトープに結合する。別の例では、固定化リガンドは、タウのMTBR内のエピトープに結合し、別の固定化リガンドはタウのC末端内のエピトープに結合する。上記の実施形態のそれぞれにおいて、リガンドは抗体またはアプタマーであってもよい。
【0080】
上記の実施形態のそれぞれにおいて、エピトープ結合剤は、抗体またはアプタマーを含み得る。一部の実施形態では、アミロイドベータに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ5.1であるか、またはHJ5.1と同じエピトープに結合する、および/またはHJ5.1を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。一部の実施形態では、両端を含む、タウ-441のアミノ酸1~103内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ8.5であるか、または、HJ8.5と同じエピトープに結合する、および/またはHJ8.5を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。一部の実施形態では、両端を含む、タウ-441のアミノ酸104~221内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、タウ1であるか、または、タウ1と同じエピトープに結合する、および/またはタウ1を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。抗体が特異的に結合するエピトープを同定する方法、および2つの抗体間の競合阻害を評価するアッセイは、当技術分野で公知である。
【0081】
タウにおける特定のアミノ酸(すなわち、「部位」)のリン酸化により、リン酸化タウ(p-タウ)アイソフォームが生じる。本開示の方法は、タウの1つまたは複数の特定のアミノ酸におけるリン酸化の化学量論を測定する手段を提供する。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217、およびT231から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T111、T181、T153、およびT217から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。他の実施形態では、本明細書の方法は、T181、およびT217から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。他の実施形態では、本明細書の方法は、T217を含む1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。他の実施形態では、本明細書の方法は、T181を含む1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。他の実施形態では、本明細書の方法は、T181およびT217を含む2つ以上の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。他の実施形態では、本明細書の方法は、T181およびT217を含む3つ以上の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。
【0082】
出願人らは、タウリン酸化部位を発見し、単離されたタウタンパク質中のリン酸化部位の存在量を最初に定量するために、並列反応モニタリング(PRM)を使用する高感度かつ高特異度の質量分析(MS)方法を開発した。しかし、本開示は、タウの部位特異的リン酸化を定量的に評価するための任意の1つの特定の方法に限定されない。好適な方法は、単一のアミノ酸のリン酸化状態のみが異なるタウアイソフォームを区別し、異なるアミノ酸でリン酸化されたp-タウアイソフォームを区別し、総タウの全体的変化から独立して特定の部位で起こるリン酸化の変化を定量するべきである。総タウの全体的な変化とは独立して、特定の部位で発生するリン酸化化学量論の変化を定量するための3つのアプローチを、実施例で詳しく説明する。1)同じ配列を共有する各リン酸化ペプチドの相対的存在量を推定するために使用することのできる、リン酸化ペプチド異性体間の相対的比較;2)参照としてのタウタンパク質からの任意のペプチドを用いた、リン酸化ペプチドの標準化、および3)標識した合成内部標準(internal synthetic labeled standards)を使用した、各リン酸化および非リン酸化ペプチドについての絶対量定量、ここで各リン酸化ペプチドについての絶対量定量値は、タウタンパク質からの任意のペプチドについて得られた任意の絶対量定量値を用いて標準化される。すべての3つの手法は、各部位についての相対的なリン酸化の変化の比較のために、内部標準化を使用する。当該技術分野において公知の他の方法も使用してもよい。
【0083】
例示的な実施形態では、タウの部位特異的リン酸化は、高分解能質量分析により測定される。好適な種類の質量分析が当該技術分野において公知である。これらには、限定されるものではないが、四重極型、飛行時間型、イオントラップおよびOrbitrap、ならびに異なる種類の質量分析計を1つの構成に組み合わせたハイブリッド型質量分析計(例えばThermoFisher ScientificからのOrbitrap Fusion(商標)Tribrid(商標)質量分析計)が挙げられる。単離タウ試料の追加の処理は、MS分析の前に行ってもよい。例えば、タウは、タンパク質分解により消化される場合がある。好適なプロテアーゼには、限定されるものではないが、トリプシン、Lys-N、Lys-CおよびArg-Nが挙げられる。アフィニティ精製を使用して単離タウ試料を生成する場合、固定化リガンドからタウを溶出した後、またはタウが結合している間に消化が発生する場合がある。1つまたは複数の浄化ステップに続き、消化されたタウペプチドは、高分解能質量分析計と適合する液体クロマトグラフィーシステムによって分離されてもよい。クロマトグラフィーシステムは、所望のLC-MSパターンを生成するために、慣習的な実験により最適化されてもよい。多様なLC-MS技術を、部位特異的タウリン酸化を定量的に分析するために使用してもよい。非限定的な例には、選択反応モニタリング、並列反応モニタリング、選択イオンモニタリングおよびデータ非依存型解析法(data-independent acquisition)が挙げられる。上記で述べたように、部位特異的タウリン酸化のすべての定量分析は、総タウの全体的変化を考慮するべきである。例示的な実施形態では、実施例において概説される質量分析プロトコールが使用される。
【0084】
本明細書で使用される「総タウ」とは、所与の試料中のすべてのタウアイソフォームを指す。タウは、可溶性および不溶性の区画中、モノマーおよび凝集体形態で、規則的なまたは不規則な構造で、細胞内または細胞外で見出され、他のタンパク質または分子と複合体形成し得る。したがって、生物学的試料の供給源(例えば脳組織、CSF、血液等)および生物学的試料の任意の下流処理は、所与の試料中のタウアイソフォームの全体量に影響を与えることとなる。
【0085】
総タウは、未修飾タウペプチドの存在量をモニタリングすることによって測定することができる。各リン酸化タウ部位について、対象のリン酸化ペプチドと共通のアミノ酸配列を共有するタウペプチドを優先的に使用して総タウレベルを測定することができるが、タウ配列からの任意のペプチドを使用することができる。タウペプチドの測定は質量分析により行うことができ、標識内部標準を参照として使用することで測定の精度を向上させることができる。あるいは、総タウは、イムノアッセイまたはタウ濃度を定量する他の方法により測定することができる。
【0086】
III.pタウおよびAβ測定値の使用
本開示はまた、診断する、ステージ分類する、所与の疾患ステージに適した処置法を選択する、および所与の処置レジメンを改変する(例えば、用量を変更する、別の薬物または処置モダリティに切り替える等)ために、タウオパチーの病理学的特徴および/または臨床症状のバイオマーカーとしての、血液またはCSF中のpタウ種およびAβ種(例えば、pT217/T217、pT181/T181、およびAβ42/40)の測定値の使用を包含する。病理学的特徴は、タウ病変の態様(例えば、タウ沈着の量、翻訳後修飾の存在/不存在、翻訳後修飾の量等)であり得る。タウ沈着に代えてまたはそれに加えて、病理学的特徴は、タウ非依存性であり得る。例えば、タウオパチーがアルツハイマー病である場合、脳または脳の動脈にアミロイドベータ(Aβ)が沈着する。臨床症状は、臨床的に検証された機器(例えば、MMSE、CDR-SB等)によって測定される認知症、またはタウオパチーに関連する他の臨床症状であり得る。また、3R-タウオパチーおよび4R-タウオパチーについて当技術分野で公知の他の病理学的特徴および臨床症状のバイオマーカーとして、血液またはCSF中のpタウおよびAβ種の測定値を使用することも企図される。有利には、pT217/T217、pT181/T181、およびAβ42/40を含むがこれらに限定されないpタウ種およびAβ種は、病態と健康状態を区別するだけでなく、様々なタウオパチーの間も区別する。
【0087】
したがって、一態様では、本開示は、対象におけるタウオパチー関連病変を測定するための方法であって、血液試料またはCSF試料等の、対象から得られた生物学的試料中の1つまたは複数のpタウ種およびAβ種を定量することであって、定量されたpタウ種およびAβ種の量は、対象の脳におけるタウオパチー関連の病変を表す、定量することを含む方法を提供する。タウオパチーは、3R-タウオパチー、混合型3R/4R-タウオパチー、または4R-タウオパチーであり得る。疾患関連病変は、タウ沈着、タウ翻訳後修飾、脳および/または脳動脈におけるアミロイドプラーク、または当技術分野で公知の他の病理学的特徴であり得る。対象は、タウオパチーの臨床症状を有してもよく、または有していなくてもよい。好ましい実施形態では、定量される少なくとも1つのpタウ種は、pT217である。さらなる実施形態では、定量される2つ以上のpタウ種は、pT217およびpT181である。なおさらなる実施形態では、定量されるAβ種はAβ40およびAβ42種である。なおまたさらなる実施形態では、pT217/T217およびAβ42/40、および適宜pT181/T181を定量する。またさらなる実施形態では、複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量する。
【0088】
別の態様では、本開示は、タウオパチーの症状を有する対象を診断するための方法であって、血液試料またはCSF試料等の、対象から得られた生物学的試料中の1つまたは複数のpタウ種およびAβ種を定量すること、および定量されたpタウ種およびAβ種が、タウオパチーの臨床徴候または症状を有さず、PET画像化および/またはCSFのAβ42/40測定によって測定されたようにアミロイド陰性である対照集団から逸脱する場合、あるいは3Rタウオパチー、混合型3R/4Rタウオパチー、または4Rタウオパチーと診断された集団からの、同じ定量されたpタウおよびAb種から逸脱しているかまたは類似している場合、タウオパチーと診断することを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、定量される少なくとも1つのpタウ種は、pT217である。さらなる実施形態では、定量される2つ以上のpタウ種は、pT217およびpT181である。なおさらなる実施形態では、定量されるAβ種はAβ40およびAβ42種である。なおまたさらなる実施形態では、pT217/T217およびAβ42/40、および適宜pT181/T181を定量する。またさらなる実施形態では、複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量する。
【0089】
別の態様では、本開示は、対象におけるタウオパチー疾患の安定性を測定するための方法であって、対象から得られた第1の生物学的試料中の1つまたは複数のpタウ種およびAβ種を定量し、その後しばらく経ってから(例えば、数週間、数か月または数年後)、同じ対象から得られた第2の生物学的試料中の1つまたは複数のpタウ種およびAβ種を定量すること、ならびに試料間の定量されたpタウ種とAβ種の間の差異を計算することを含み、ここで、第2の試料における定量されたpタウ種の統計的に有意な増加は、疾患の進行を示し、第2の試料における定量されたpタウ種の統計的に有意な減少は、疾患の改善を示し、変化がないことは疾患の安定を示す、方法を提供する。タウオパチーは、3R-タウオパチー、混合型3R/4R-タウオパチー、または4R-タウオパチーであり得る。対象は疾患の臨床症状を有してもよく、または有していなくてもよく、タウ療法を受けていてもよく、または受けていなくてもよい。一部の例では、タウ療法は、第1の生物学的試料の収集と第2の生物学的試料の収集との間の期間に、対象に1または複数回施し、疾患の安定性の尺度は、タウ療法の有効性またはその欠如の指標である。好ましい実施形態では、定量される少なくとも1つのpタウ種は、pT217である。さらなる実施形態では、定量される2つ以上のpタウ種は、pT217およびpT181である。なおさらなる実施形態では、定量されるAβ種はAβ40およびAβ42種である。なおまたさらなる実施形態では、pT217/T217およびAβ42/40、および適宜pT181/T181を定量する。またさらなる実施形態では、複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量する。
【0090】
別の態様では、本開示は、タウオパチーを有する対象を処置するための方法であって、血液試料またはCSF試料等の、対象から得られた生物学的試料中の1つまたは複数のpタウ種およびAβ種を定量すること;および疾患関連の病変または臨床症状の測定を改善するために対象にタウ療法を提供することを含み、ここで、対象は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るもしくは下回る定量されたpタウ種を有し(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σ、または1.5σ異なっており、ここで、σは、タウオパチーの臨床徴候または症状を有さない対照集団で測定された正規分布によって定義される標準偏差であり、それは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定によって測定される場合、アミロイド陰性である)、方法を提供する。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るもしくは下回る変化の程度を、対象を処置するための基準として使用することができる。タウオパチーは、3R-タウオパチー、混合型3R/4R-タウオパチー、または4R-タウオパチーであり得る。疾患関連病変の尺度は、PET画像化によって測定されるタウ沈着、質量分析法または他の好適な方法によって測定されるタウ翻訳後修飾、PET画像化によって測定される脳または脳の動脈におけるアミロイドプラーク、CSF中のAβ42/40よって測定されるアミロイドプラーク、または当技術分野で公知の他の病理学的特徴であり得る。臨床症状は、臨床的に検証された機器(例えば、MMSE、CDR-SB等)によって測定される認知症、または3R-および4R-タウオパチーに関して当技術分野で公知の他の臨床症状であり得る。好ましい実施形態では、定量される少なくとも1つのpタウ種は、pT217である。さらなる実施形態では、定量される2つ以上のpタウ種は、pT217およびpT181である。なおさらなる実施形態では、定量されるAβ種はAβ40およびAβ42種である。なおまたさらなる実施形態では、pT217/T217およびAβ42/40、および適宜pT181/T181を定量する。またさらなる実施形態では、複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量する。タウ療法の多くは、特定の病態生理学的変化を標的としている。例えば、Aβ標的療法は一般に、Aβ産生を減少させ、Aβ凝集に拮抗し、脳内Aβクリアランスを増加させるように設計されており;タウ標的療法は一般に、タウのリン酸化パターンを変化させ、タウ凝集に拮抗する(タウの一般的な拮抗作用もしくは特定のタウアイソフォームの拮抗作用)、またはNFTクリアランスを増加させるように設計されており;CNSの炎症または脳のインスリン抵抗性を軽減するため等に、様々な療法が設計されている。しかし、すべてのタウオパチーが同じ病態生理学的変化を共有するわけではない。したがって、これらの様々なタウ療法の有効性は、3R-タウオパチー、混合型3R/4R-タウオパチー、または4R-タウオパチーを有すると正しく同定された対象に、それらを投与することによって改善することができる。
【0091】
好適な生物学的試料およびタウリン酸化およびAβ種の測定方法は第II節に記載されており、その開示内容は参照によりこの節に組み込まれる。
【0092】
特定の実施形態では、本開示は、MAPT R406Wタウオパチーを区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量することであって;pT217/T217値、およびAβ42/40値によって、MAPT R406Wタウオパチーをアルツハイマー病、および健康な状態から区別する、定量することを含む方法を提供する。
【0093】
別の特定の実施形態では、本開示は、MAPT R406Wタウオパチーを区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量することであって、pT217/T217値の増加および正常なAβ42/40値により、MAPT R406Wタウオパチーと健康な状態とを区別する、定量することを含む方法を提供する。一態様では、計算された変化は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均値から有意に逸脱している。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、またはより好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を含む。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。試料は、臨床診断を受けている場合も受けていない場合もある対象から得ることができる。さらなる実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異の1つを保持していてもよい。代替実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異を有していなくてもよい。
【0094】
別の特定の実施形態では、本開示は、MAPT R406Wタウオパチーを区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量することであって、pT217/T217値の減少およびAβ42/40値の増加により、MAPT R406WタウオパチーとADとを区別する、定量することを含む方法を提供する。一態様では、計算された変化は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均値から有意に逸脱している。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、またはより好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有するAD集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を含む。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るもしくは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用することができる。試料は、臨床診断を受けている場合も受けていない場合もある対象から得ることができる。さらなる実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異の1つを保持していてもよい。代替実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異を有していなくてもよい。
【0095】
別の特定の実施形態では、本開示は、MAPT R406Wタウオパチーを区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量することであって、pT217/T217×Aβ42/40値によって、MAPT R406Wタウオパチーをアルツハイマー病、4R-タウオパチー、および健康な状態から区別する、定量することを含む方法を提供する。
【0096】
別の特定の実施形態では、本開示は、MAPT R406Wタウオパチーを区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量することであって、pT217/T217×Aβ42/40値の増加によって、MAPT R406Wタウオパチーを健康な状態から区別する、定量することを含む方法を提供する。一態様では、計算された変化は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均値から有意に逸脱している。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、またはより好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を含む。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。試料は、臨床診断を受けている場合も受けていない場合もある対象から得ることができる。さらなる実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異の1つを保持していてもよい。
【0097】
別の特定の実施形態では、本開示は、MAPT R406Wタウオパチーを区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量することであって、pT217/T217×Aβ42/40値の増加によって、MAPT R406WタウオパチーをADから区別する、定量することを含む方法を提供する。一態様では、計算された変化は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有するAD集団における平均値から有意に逸脱している。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、またはより好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有するAD集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を含む。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るもしくは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。試料は、臨床診断を受けている場合も受けていない場合もある対象から得ることができる。さらなる実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異の1つを保持していてもよい。
【0098】
別の特定の実施形態では、本開示は、MAPT R406Wタウオパチーを区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量することであって、pT217/T217×Aβ42/40値の増加によって、MAPT R406Wタウオパチーを4R-タウオパチーから区別する、定量することを含む方法を提供する。一態様では、計算された変化は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有しない4R-タウオパチー集団における平均値から有意に逸脱している。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、またはより好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない4R-タウオパチー集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を含む。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るもしくは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。試料は、臨床診断を受けている場合も受けていない場合もある対象から得ることができる。さらなる実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異の1つを保持していてもよい。
【0099】
別の特定の実施形態では、本開示は、孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT181/T181値を定量することであって、pT181/T181値によって、孤発性FTDを、アルツハイマー病、他のタウオパチー、および健康な状態から区別する、定量することを含む方法を提供する。
【0100】
別の特定の実施形態では、本開示は、孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT181/T181値を定量することであって、pT181/T181値の減少によって、孤発性FTDをアルツハイマー病から区別する、定量することを含む方法を提供する。一態様では、計算された変化は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均値から有意に逸脱している。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、またはより好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有するAD集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を含む。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るもしくは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。試料は、臨床診断を受けている場合も受けていない場合もある対象から得ることができる。さらなる実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異の1つを保持していてもよい。代替実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異を有していなくてもよい。
【0101】
別の特定の実施形態では、本開示は、孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT181/T181値を定量することであって、pT181/T181値の減少によって、孤発性FTDを健康な状態から区別する、定量することを含む方法を提供する。一態様では、計算された変化は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均値から有意に逸脱している。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、またはより好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を含む。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るもしくは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。試料は、臨床診断を受けている場合も受けていない場合もある対象から得ることができる。さらなる実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異の1つを保持していてもよい。代替実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異を有していなくてもよい。
【0102】
別の特定の実施形態では、本開示は、孤発性前頭側頭型認知症(FTD)を区別するための方法であって、対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT181/T181値を定量することであって、pT181/T181値の減少によって、孤発性FTDを健康な状態から区別する、定量することを含む方法を提供する。一態様では、計算された変化は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有しない非孤発性FTDタウオパチー集団における平均値から有意に逸脱している。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、またはより好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない非孤発性FTDタウオパチー集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を含む。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るもしくは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用することができる。試料は、臨床診断を受けている場合も受けていない場合もある対象から得ることができる。さらなる実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異の1つを保持していてもよい。代替実施形態では、対象は、タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異を有しても有していなくてもよい。
【0103】
別の特定の実施形態では、本開示は、対象におけるMAPT R406Wタウオパチー疾患の進行を測定するための方法であって、対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;第1の試料の後に(例えば、数日、数週間、数か月)、対象から得られた第2の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第2のCSFまたは血液試料は、同じpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに第2の試料および第1の試料の定量されたpT217/T217値およびAβ42/40値の間の差を計算することであって、第2の試料における定量されたpT217/T217値およびAβ42/40値の統計的有意差は、対象の疾患の進行を示す、計算することを含む方法を提供する。
【0104】
別の特定の実施形態では、本開示は、対象におけるMAPT R406Wタウオパチー疾患の進行を測定するための方法であって、対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;第1の試料の後に(例えば、数日、数週間、数か月)、対象から得られた第2の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第2のCSFまたは血液試料は、同じpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに第2の試料および第1の試料の定量されたpT217/T217値およびAβ42/40値の間の差を計算することであって、第2の試料における定量されたpT217/T217値およびAβ42/40値に統計的有意差はなく、これは対象の疾患の安定性を示す、計算することを含む方法を提供する。
【0105】
別の特定の実施形態では、本開示は、対象におけるMAPT R406Wタウオパチー疾患の進行を測定するための方法であって、対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量することであって、第1の試料の後に(例えば、数日、数週間、数か月)、対象から得られた第2の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第2のCSFまたは血液試料は、同じpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること、ならびに処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに第2の試料と第1の試料の定量された複合pT217/T217×Aβ42/40値間の差を計算することであって、第2の試料における定量された複合pT217/T217×Aβ42/40値における統計的有意差は、対象の疾患の進行を示す、計算することを含む方法を提供する。
【0106】
別の特定の実施形態では、本開示は、対象におけるMAPT R406Wタウオパチー疾患の進行を測定するための方法であって、対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;第1の試料の後に(例えば、数日、数週間、数か月)、対象から得られた第2の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第2のCSFまたは血液試料は、同じpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに第2の試料と第1の試料の定量された複合pT217/T217×Aβ42/40値間の差を計算することであって、第2の試料における定量された複合pT217/T217×Aβ42/40値における統計的有意差はなく、これは対象の疾患の安定性を示す、計算することを含む方法を提供する。
【0107】
別の特定の実施形態では、本開示は、対象における孤発性前頭側頭型認知症(FTD)疾患の進行を測定するための方法であって、対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;第1の試料の後に(例えば、数日、数週間、数か月)、対象から得られた第2の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第2のCSFまたは血液試料は、同じpタウ種が濃縮されている、提供すること、ならびに処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに第2の試料と第1の試料における定量されたpT181/T181値間の差を計算することであって、第2の試料における定量された複合pT181/T181値の統計的有意差は、対象の疾患の進行を示す、計算することを含む方法を提供する。
【0108】
別の特定の実施形態では、本開示は、対象における孤発性前頭側頭型認知症(FTD)疾患の進行を測定するための方法であって、対象から得られた、第1の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第1のCSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;ならびに処理された試料中の複合pT181/T181値を定量すること;第1の試料の後に(例えば、数日、数週間、数か月)、対象から得られた第2の処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、第2のCSFまたは血液試料は、同じpタウ種が濃縮されている、提供すること、ならびに処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに第2の試料と第1の試料における定量されたpT181/T181値間の差を計算することであって、第2の試料における定量されたpT181/T181値に統計的有意差はなく、これは対象の疾患の安定性を示す、計算することを含む方法を提供する。
【0109】
部位特異的タウリン酸化、およびAβ種の測定、適宜総タウの測定を伴い使用する代わりに、またはそれに加えて、上記の実施形態のいずれかにおいて、測定されたリン酸化レベルから計算された比、あるいは測定されたリン酸化レベルおよび総タウから計算された比を使用することができる。両方の手法を、実施例において詳述する。比以外の数学演算も使用してもよい。例えば、実施例では、様々な統計学的モデル(例えば線形回帰、LME曲線、LOESS曲線等)における部位特異的タウリン酸化値を、他の公知のバイオマーカー(例えばMAPT状態、APOEε4状態、年齢、性別、認知試験スコア、機能試験スコア等)と併せて使用する。測定の選択および数学演算の選択は、方法の特異性を最大化するために最適化されてもよい。例えば、診断の精度は、ROC曲線下面積により評価されてもよく、一部の実施形態では、0.7以上のROC AUC値(例えば0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95等)が閾値として設定される。
【0110】
ヒトにおける脳のアミロイドプラークは、慣習的に、アミロイド陽電子放射断層撮影(PET)により測定される。例えば、皮質Aβプラークの11C-Pittsburgh化合物B(PiB)PET画像化は、Aβプラーク病態を検出するために一般的に使用される。皮質PiB-PETの標準取込値比(standard uptake value ratio)(SUVR)は、有意な皮質Aβプラークを確実に同定し、対象を PIB陽性(SUVR≧1.25)または陰性(SUVR<1.25)と分類するために使用される。したがって、上記の実施形態では、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団は、皮質PiB-PET SUVR<1.25を有する対象の集団を指すことがある。PiB結合の他の値(例えば平均皮質結合能)または皮質領域以外の目的の領域の分析も、対象をPIB陽性または陰性と分類するために使用されてもよい。他のPET造影剤も使用されてもよい。
【0111】
別の特定の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(c)タウの病変を変化させるために対象に処置を施すことを含み、対象の処理されたCSFまたは血液試料は、約1.5σ以上異なる定量されたpT217/T217値およびAβ42/40値を有し、ここで、σは、タウオパチーの臨床徴候または症状を有さない対照集団で測定された正規分布によって定義される標準偏差であり、また、PET画像化によって測定される場合、アミロイド陰性であり、定量されたpT217/T217値の量は、対象の脳におけるタウの病変を表す、方法を提供する。一部の実施形態では、タウの病変を変化させるために対象に処置を施すことにより、定量されたpタウ種の量を、変化または安定化させる。一部の実施形態では、処置薬は、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ剤等)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗タウ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗TREM2抗体(その抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を含む)、TREM2アゴニスト、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物等)、セロトニン受容体6のアンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513等)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニミウム等)、血糖管理を改善するための治療(例えばインスリン、エキセナチド、リラグルチドピオグリタゾン等)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ホスファターゼ阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、β-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP産生の選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経成長因子興奮剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤(neurotrophic agent)、ムスカリン性M1受容体アゴニスト、GABA受容体調節因子、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質調節因子、カルシウムチャネル遮断薬、抗高血圧薬、スタチン、ならびにそれらの任意の組合せを含む医薬組成物である。例示的な実施形態では、医薬組成物はキナーゼ阻害剤を含んでもよい。好適なキナーゼ阻害剤は、1000-1(thousand-and-one)アミノ酸キナーゼ(TAOK)、CDK、GSK-3β、MARK、CDK5、またはFynを阻害する場合がある。別の例示的な実施形態では、医薬組成物はホスファターゼ活性化剤を含んでもよい。非限定的な例として、ホスファターゼ活性化剤は、プロテインホスファターゼ2Aの活性を増加させることができる。一部の実施形態では、処置は、限定されるものではないが、タウリン酸化パターンを変化させるか、タウ凝集に拮抗するか、または病理学的タウアイソフォームおよび/または凝集体のクリアランスを増大させる活性医薬成分を含む、タウ標的療法を含む医薬組成物である。一部の実施形態では、処置は、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、抗TREM2抗体、TREM2アゴニスト、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ワクチン、またはタウタンパク質凝集阻害剤である。一実施形態では、健康な対照と比較したpT217/T217値の増加および正常なAβ42/40値は、対象がMAPT R406W療法で処置されていることを示す。別の実施形態では、AD集団と比較したpT217/T217値の減少およびAβ42/40値の増加は、対象がMAPT R406W療法またはタウ療法で処置されていることを示す。さらに別の実施形態では、MAPT R406W集団と比較したpT217/T217値の増加およびAβ42/40値の減少は、対象がAD療法で処置されていることを示す。さらに別の実施形態では、対照集団またはAD集団と比較した複合pT217/T217×Aβ42/40値の増加は、対象がタウ療法で処置されていることを示す。
【0112】
別の特定の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに(c)タウの病変を変化させるために対象に処置を施すことを含み、対象の処理されたCSFまたは血液試料は、約1.5σ以上異なる定量されたMTBRタウ種、または定量されたMTBRタウ種の比を有し、ここで、σは、タウオパチーの臨床徴候または症状を有さない対照集団で測定された正規分布によって定義される標準偏差であり、また、PET画像化によって測定される場合、アミロイド陰性であり、定量されたpタウ種の量は、対象の脳におけるタウの病変を表す、方法を提供する。一部の実施形態では、タウの病変を変化させるために対象に処置を施すことにより、pタウ種の量を、変化または安定化させる。一部の実施形態では、処置は、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ剤等)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗タウ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗TREM2抗体(その抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を含む)、TREM2アゴニスト、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物等)、セロトニン受容体6のアンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513等)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニミウム等)、血糖管理を改善するための治療(例えばインスリン、エキセナチド、リラグルチドピオグリタゾン等)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ホスファターゼ阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、β-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP産生の選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経成長因子興奮剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤(neurotrophic agent)、ムスカリン性M1受容体アゴニスト、GABA受容体調節因子、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質調節因子、カルシウムチャネル遮断薬、抗高血圧薬、スタチン、ならびにそれらの任意の組合せを含む医薬組成物である。例示的な実施形態では、医薬組成物は、キナーゼ阻害剤を含んでもよい。好適なキナーゼ阻害剤は、thousand-and-oneアミノ酸キナーゼ(TAOK)、CDK、GSK-3β、MARK、CDK5またはFynを阻害し得る。別の例示的な実施形態では、医薬組成物は、ホスファターゼ活性化剤を含んでもよい。非限定的な例として、ホスファターゼ活性化剤は、プロテインホスファターゼ2Aの活性を増大させ得る。一部の実施形態では、処置は、限定されるものではないが、タウリン酸化パターンを変化させるか、タウ凝集に拮抗するか、または病理学的タウアイソフォームおよび/または凝集体のクリアランスを増大させる活性医薬成分を含む、タウ標的療法を含む医薬組成物である。一部の実施形態では、処置は、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、抗TREM2抗体、TREM2アゴニスト、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ワクチン、またはタウタンパク質凝集阻害剤である。一実施形態では、健康な対照と比較したpT181/T181値の減少は、対象が孤発性FTD療法またはタウ療法で処置されていることを示す。
【0113】
上記の実施形態のそれぞれにおいて、医薬組成物は造影剤を含むことができる。造影剤の非限定的な例には、機能的造影剤(functional imaging agent)(例えば、フルオロデオキシグルコース等)および分子造影剤(例えばピッツバーグ化合物B(Pittsburgh compound B)、フロルベタベン、フロルベタピル、フルテメタモル、放射性核種標識抗体等)が挙げられる。
【0114】
上記の実施形態のそれぞれにおいて、方法は、pT205/T205、pT208/T208、pT111/T111、pT153/T153、またはそれらの任意の組合せのうちの1つもしくは複数を定量することをさらに含み得る。
【0115】
IV.臨床試験
本開示の別の態様は、臨床試験の他のすべての基準が満たされている場合に、臨床試験、特にAβまたはタウ療法の臨床試験に対象を選択するための方法である。一実施形態では、臨床試験において対象を選択するための方法は、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(c)pT217/T217値が増加し、Aβ42/40値が健康な対照集団とほぼ同じであり、対象は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有しない場合に、対象をMAPT R406Wタウオパチーの臨床試験に選択することを含んでもよい。別の実施形態では、臨床試験において対象を選択するための方法は、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT217/T217値およびAβ42/40値を定量すること;ならびに(c)pT217/T217値が増加し、Aβ42/40値が健康な対照集団とほぼ同じであり、対象は、PET画像化によって測定される脳のアミロイドプラークを有しない場合に、対象をAD(またはAβ療法)の臨床試験から除外することを含んでもよい。
【0116】
別の実施形態では、臨床試験の他のすべての基準が満たされている場合に、臨床試験、特にAβまたはタウ療法の臨床試験に対象を選択するための方法である。一実施形態では、臨床試験において対象を選択するための方法は、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに(c)複合pT217/T217×Aβ42/40値が健康な対照集団と比較して増加している場合に、MAPT R406Wタウオパチーの臨床試験に対象を選択することを含んでもよい。別の実施形態では、臨床試験において対象を選択するための方法は、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種およびAβ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中の複合pT217/T217×Aβ42/40値を定量すること;ならびに(c)複合pT217/T217×Aβ42/40値がAD集団と比較して増加している場合に、ADの臨床試験から対象を除外することを含んでもよい。
【0117】
別の実施形態では、臨床試験の他のすべての基準が満たされている場合に、臨床試験、特にAβまたはタウ療法の臨床試験に対象を選択するための方法である。一実施形態では、臨床試験において対象を選択するための方法は、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに(c)pT181/T181値が健康な対照集団と比較して減少している場合、孤発性FTD療法のための臨床試験に対象を選択することを含んでもよい。別の実施形態では、臨床試験において対象を選択するための方法は、(a)対象から得られた、処理されたCSFまたは血液試料を提供することであって、CSFまたは血液試料は、1つまたは複数のpタウ種が濃縮されている、提供すること;(b)処理された試料中のpT181/T181値を定量すること;ならびに(c)複合pT181/T181値がAD集団と比較して減少している場合に、ADの臨床試験から対象を除外することを含んでもよい。「PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団」という語句は、第III節で定義されている。
【0118】
部位特異的タウリン酸化、適宜総タウの測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、上記の実施形態のいずれかにおいて、測定されたリン酸化レベルから計算された比、あるいは測定されたリン酸化レベルと総タウから計算された比を使用することができる。測定されたリン酸化レベルから計算される比は、pT181とpT205、pT217とpT205、またはpT181とpT217の間の比であり得る。測定されたリン酸化レベルと総タウから計算される比は、pT181と総タウ、p-T205と総タウ、またはpT217と総タウの間の比であり得る。比以外の数学演算も使用してもよい。例えば、実施例では、様々な統計学的モデル(例えば線形回帰、LME曲線、LOESS曲線等)における部位特異的タウリン酸化値を、他の公知のバイオマーカー(例えばAPOEε4状態、年齢、性別、認知試験スコア、機能試験スコア等)と併せて使用する。
【0119】
ADおよびFTD療法のための臨床試験の設計を、本明細書に開示される方法によって大いに助けることができる。多くの臨床試験は、AD症状の発症前に発生する特定の病態生理学的変化を標的とする造影剤または治療剤の有効性を試験するように設計されている。第III節で上述したように、これらの様々な薬剤の有効性は、本明細書に開示され例示される方法によって測定されるある特定の部位特異的タウリン酸化レベルを有する対象に薬剤を投与することによって改善することができる。同様に、Aβ病変またはタウのみの病変の症状を有する対象を選択する臨床試験もまた、有効性が特定の病態に関連しているかどうかを決定するために、登録者の病変を正確に区別できることから利点が得られる。したがって、臨床試験において、特に臨床試験の処置群に対象を選択する前に、本明細書に記載されるタウリン酸化レベルを測定することにより、試験が縮小され、および/または転帰が改善される場合がある。場合によっては、本明細書に記載の方法を開発し、治療剤のコンパニオン診断として使用することができる。
【0120】
上記の実施形態のそれぞれにおいて、対象を、臨床試験の処置群に登録することができる。「処置」は、上記で定義されている。臨床試験の処置群に登録された対象には、医薬組成物を投与することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は造影剤を含むことができる。造影剤の非限定的な例には、機能的造影剤(functional imaging agent)(例えば、フルオロデオキシグルコース等)および分子造影剤(例えばピッツバーグ化合物B、フロルベタベン、フロルベタピル、フルテメタモル、放射性核種標識抗体等)が挙げられる。あるいは、医薬組成物は活性医薬成分を含んでもよい。活性医薬成分の非限定的な例には、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ剤等)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗タウ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物等)、セロトニン受容体6のアンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513等)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニミウム等)、血糖管理を改善するための治療(例えばインスリン、エキセナチド、リラグルチドピオグリタゾン等)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ホスファターゼ阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、β-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP産生の選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経成長因子興奮剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤(neurotrophic agent)、ムスカリン性M1受容体アゴニスト、GABA受容体調節因子、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質調節因子、カルシウムチャネル遮断薬、抗高血圧薬、スタチン、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。例示的な実施形態では、医薬組成物はキナーゼ阻害剤を含んでもよい。好適なキナーゼ阻害剤は、1000-1(thousand-and-one)アミノ酸キナーゼ(TAOK)、CDK、GSK-3β、MARK、CDK5、またはFynを阻害する場合がある。別の例示的な実施形態では、医薬組成物はホスファターゼ活性化剤を含んでもよい。非限定的な例として、ホスファターゼ活性化剤は、プロテインホスファターゼ2Aの活性を増加させることができる。
【0121】
上記の実施形態のそれぞれにおいて、対象は、無症状であってもまたは無症状でなくてもよい本明細書で使用される「無症候性の対象」は、タウオパチーのいかなる徴候も症状も示さない対象を指す。あるいは、対象は、徴候または症状(例えば記憶喪失、物を置き忘れること、気分または挙動の変化等)を呈し得るが、臨床診断についての十分な認知障害も機能障害も示さない場合がある。症候性または無症候性の対象はAβアミロイドーシスを有し得るが、Aβアミロイドーシスの事前知識は、処置のための必要条件ではない。なおさらなる実施形態では、対象はADを有し得る。前述の実施形態のいずれかにおいて、対象は、遺伝性タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異の1つを保持していてもよい。代替実施形態では、対象は、遺伝性タウオパチーを引き起こすことが知られている遺伝子突然変異を有していなくてもよい。
【0122】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するように本発明者らによって発見された技術を表すことが、当業者には理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態における変更を行うことができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似した結果をなお得られることを理解するべきである。したがって、添付の図面に記載または示されているすべての事柄は、例示的なものとして解釈されることとなり、意味を限定するものではない。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は、本発明の様々な反復を例証する。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するように本発明者らによって発見された技術を表すことが、当業者には理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態における変更を行うことができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似した結果をなお得られることを理解するべきである。したがって、添付の図面において記載されるかまたは示されるすべての事柄は、例示的なものとして解釈されることとなり、意味を限定するものではない。
[実施例1]
【0124】
MAPT R406Wは、アミロイド病変の非存在下でタウT217リン酸化を増加させる 脳脊髄液(CSF)中のスレオニン217(pT217)におけるタウの過剰リン酸化は、最近、初期アミロイドーシスと関連付けられており、アルツハイマー病(AD)の高感度バイオマーカーとして機能する可能性がある。しかし、他のタウオパチーがpT217修飾を誘導するかどうかは依然として不明である。pT217修飾がADに特異的であるかどうかを決定するために、ADおよび他のタウオパチーにおけるCSF pT217を測定した。
【0125】
免疫沈降法および質量分析法を使用して、CSF T217リン酸化占有率(pT217/T217)およびアミロイドベータ(Aβ)42/40比を、認知に関して正常な個体と、症候性AD、進行性核上性麻痺、皮質基底核症候群、および孤発性および家族性前頭側頭型認知症を有する個体とを比較した。
【0126】
ADを有する個体は、CSF pT217/T217が高く、Aβ42/40が低かった。対照的に、認知に関して正常な個体および4Rタウオパチーを有する大多数の個体は、CSF pT217/T217が低く、Aβ42/40が正常であった。CSF pT217/T217が増加し、Aβ42/40比が正常である個体のサブグループが同定されたが、そのほとんどがMAPT R406W突然変異保持者であった。CSF Aβ42/40およびCSF pT217/T217の単独および組合せの診断精度を比較した。CSF pT217/T217×CSF Aβ42/40が、MAPT R406W保持者を、認知に関して正常な個体および他のタウオパチーを有する個体から分離することができる高感度複合バイオマーカーであることが示される。
【0127】
MAPT R406Wは、ADに類似するが、アミロイド神経病変を伴わない3R+4Rタウオパチーを引き起こすタウ突然変異である。したがって、本実施例は、CSF pT217/T217比の変化がADに特異的ではなく、3R+4Rタウオパチーに共通する共通の下流タウ病態生理を反映し得ることを示す。
【0128】
アルツハイマー病(AD)は、脳内の神経原線維変化、神経炎プラーク(Neuritic plaques)、および神経絨毛糸におけるアミロイドベータ42ペプチド(Aβ42)のプラーク沈着および過剰リン酸化タウの凝集を特徴とする。脳脊髄液(CSF)中のAβ42/40比の同時減少とリン酸化タウ(pタウ)種の増加は、それぞれADアミロイドーシスのバイオマーカーとして、およびADタウ神経病変の代理として使用されている。絶対濃度(pT217)またはリン酸化占有率(pT217/T217)として測定されるCSFのスレオニン217でのタウリン酸化が、ADの特異的でより感度の高いバイオマーカーであり、スレオニン181でのCSF pタウレベル(pT181)の十分に確立された測定値を上回ることを示唆する証拠が増加している。CSF pT181レベルの増加は、CSFの総タウ濃度の増加と強く関連しており、タウ神経病変を反映すると想定されている。しかし、CSF pT217およびpT217/T217は、総CSFタウよりもアミロイドピッツバーグ化合物B(PiB)陽電子放出断層撮影法(PET)画像化によって測定されるアミロイド神経病変とより強く相関する。さらに、pT217は、AD突然変異を有する家系におけるAD臨床症状の開始をpT181よりも良好に予測することができる。したがって、T217の過剰リン酸化が、アミロイドーシスの初期かつ直接的な結果であるのか、それともタウ病変の下流マーカーであるのかは依然として不明である。これに関連して、アミロイド病変の不存在下における原発性タウオパチーにおいて、CSF pT217/T217が変化するかどうかも不明である。
【0129】
進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底核症候群(CBS)、および行動異常型前頭側頭型認知症(bvFTD)等、タウ神経病変に関連する他の神経変性認知症疾患には、現在CSFまたは画像化バイオマーカーがない。診断は、主に臨床評価に依存し、脳解剖後に確認することができる。信頼性が高いインビボバイオマーカーの欠如は、臨床診断の精度に課題をもたらし、臨床試験の設計および実施に影響を及ぼす。これまでの研究では、主にイムノアッセイを用いてCSF pT181の絶対濃度を測定しており、pT181の増加はADに特異的であることが示唆されていた。しかし、CSFタウアイソフォーム濃度の全体的な変化は、pT181リン酸化の相対的な変化を伴わないで、pT181絶対濃度に寄与する場合がある。CSF pT181の変化を完全に解釈するには、pT181/T181比として測定されるpT181リン酸化占有率が不可欠である。さらに、イムノアッセイおよび質量分析(MS)を使用したいくつかの最近の研究では、CSF pT217濃度の増加はADに特異的であり、他の神経変性疾患では観察されないことが示された。しかし、これまでの研究では、加齢および多くの神経変性疾患で頻繁に増加するアミロイド併発神経病変(co-neuropathology)が、多くの場合考慮されていない。
【0130】
PSP、CBS、およびbvFTDを含む非ADタウオパチーにおけるタウリン酸化の効果を評価するために、連続免疫沈降(IP)およびMSを使用してCSF pタウおよびCSF Aβを測定した。CSF pT217/T217およびpT181/T181比を計算して、タウリン酸化の変化をCSF総タウ変動から区別した。CSF Aβ42/40比は、同じ参加者内で計算し、アミロイド神経病変の代理として使用した。認知に関し正常な年齢を一致させた対照(AMC)と、症候性AD、PSP、CBS、ならびに孤発性および家族性FTDを有する個体のコホートを分析した。CSF pタウとCSF Aβ42/40比との間の相関関係を各疾患群で評価し、症候性ADを有する個体と他の神経変性認知症性疾患を有する個体とを区別する能力を評価するために、CSF pタウ単独およびCSF Aβ42/40との組合せの診断的関連性を評価した。
【0131】
結果
参加者および研究ワークフロー:参加者の個体群統計および臨床的特徴を、表1に要約する。分析の目的で、研究コホートを、いくつかの群に分割した。「AD」群(n=80)には、健忘症が優勢な臨床的に「典型的な」ADを有する患者(n=66)、および限局的変異を有する患者(n=14)が含まれていた。bvFTD MAPT R406W突然変異保持者(n=5)は、「R406W」としてとしてグループ化した。AD以外のすべての神経変性疾患およびMAPT R406W突然変異保持者は、「4Rタウオパチー」としてグループ化した(n=74)。この群には、PSP(n=16)、CBS(n=15)、CBS-PSP連続体(n=7)、孤発性bvFTD(n=28)を有する個体、およびbvFTD MAPT P301L突然変異保持者(n=3)が含まれており、これらは主に、脳凝集体の主要なアイソフォームとして4Rタウを伴う4Rタウオパチーであった。孤発性bvFTDは、「4Rタウオパチー」群に列挙されているが、それらは病理学的には確認されておらず、FTLD-タウ、FTLD-TDP43、FTLD-FUS、およびピック病等の少数の3Rタウオパチーを含んでいる可能性があることに注意すべきである。これらの参加者の1人は、後にC9orf72突然変異を有することが見出された。認知に関し正常な対照は、「対照」(n=98)と名付けられ、これには、認知に関し正常なAMC(n=64)、YNC(n=26)、および脳腫瘍患者(n=8)が含まれていた。
【0132】
【0133】
YNC(42.3±2.4)、脳腫瘍(50.2±2.6)、およびMAPT P301L(37.2±3.6)群の個体は、AMC(73.0±0.8)、およびAD(73.3±0.9)、CBS(68.6±2.6)、CBS PSP連続体(70.7±1.4)、PSP(71.0±2.6)、および孤発性bvFTD(62.1±1.3)を含む神経変性疾患を有する参加者より若かった(表1)。
【0134】
252個のCSFベースライン試料および8個のCSFフォローアップ試料すべてについて、CSF Aβ42、Aβ40、pT217、T217、pT181、およびT181濃度を連続IP/MS法で測定した。CSF Aβ42/40、pT217/T217、pT181/T181比を計算した。異なる臨床群を分類するために使用されるワークフローを
図1Fに示す。
【0135】
IP/MS CSF Aβ42/40およびCSF pT217/T217のカットオフの決定:IP/MSによって測定されるCSF Aβ42/40のアミロイド陽性カットオフを定義するために、WashU-Aコホートの参加者48人からのアミロイドPiB-PETの結果を使用した(カットオフ0.18;
図1F、表1)。CSF Aβ42/40は、アミロイド-PiB+コホートにおいて有意に減少した(
図3A)。ROC曲線分析を実行し、コホート間の区別を最大化するためにCSF Aβ42/40のカットオフとして0.086のヨーデンの指標(Youden’s index)値を選択した(曲線下面積[AUC]=0.921、p<0.0001;
図3B)。
【0136】
CSF pT217/T217のpタウ異常カットオフを決定するために、アミロイド-PiB+患者におけるCSF Aβ42/40値をWashU-Aコホートから使用した(
図1F)。MSのみを有する37人の参加者の別のサブセットには、CSF Aβ42/40の測定値を追加した。CSF pT217/T217は、PiB-PETおよびCSF Aβ42/40測定に基づいて、アミロイド+個体において有意に増加した(
図3C)。ROC曲線分析を実行し、CSF pT217/T217のカットオフとして4.76のヨーデンの指標値を計算した(AUC=0.983、p<0.0001;
図3D)。
【0137】
同じROC分析を、CSF pT217、pT181、総タウの濃度、およびT181でのリン酸化占有率について実行した(pT181/T181、
図3E~3L)。これらのバイオマーカーのそれぞれのAUCは、それぞれ0.949(pT217)、0.816(pT181)、0.698(総タウ)、および0.934(pT181/T181)であり、CSF pT217/T217が優れた区別となるADバイオマーカーであるという以前の知見を裏付けている。
【0138】
IP/MS CSF Aβ42/40とCSF pT217/T217との間の関連性:IP/MS CSF Aβ42/40とpT217/T217との間の関係を評価するために、255人の参加者のそれぞれについて両方の比をプロットした。CSF Aβ42/40およびCSF pT217/T217それぞれの計算された0.086および4.8カットオフに基づいて、象限を以下のように定義した:I(アミロイド-、pタウ+)、II(アミロイド+、pタウ+)、III(アミロイド+、pタウ-)、およびIV(アミロイド-、pタウ-)(
図1A~1E、
図3B)。
【0139】
第II象限(アミロイド+、pタウ+)では、個体の88%(73/83)を、ADとして臨床的に同定した(
図1B)。全体として、AD患者の91%(73/80)を、IIにプロットした(
図4A)。臨床的にADと同定された7人の参加者を、象限I(n=3)、III(n=1)、およびIV(n=3、
図1B~1D)に分割した。対照のサブセット(AMC[n=5]、CBS[n=2]、PSP[n=2]、およびbvFTD[n=1])も、象限IIに割り当てた(
図1Aおよび1B)。
【0140】
対照の84パーセント(82/98)をIVにおいてプロットし、IVの個体の55%(82/150)が対照であった(
図1E、
図4B)。CBSの80パーセント(12/15)およびPSPの81%(13/16)もIVにあり(
図4Cおよび4D)、CBS PSP連続体の71%(5/7)も同様であった。
【0141】
CSF Aβ42/40およびCSF pT217/T217は負に関連しており、L字型曲線を示した(
図1)。AD連続体との関係においてCSF Aβ42/40とCSF pT217/T217プロファイルの間の動的な関連をより良く理解するために、PiB-PETおよびAV45-PET画像化でアミロイド負荷を評価および測定し、参加者のサブセットにおけるAV1451-PET画像化でタウ凝集を評価および測定した。(
図5)。両方のPETトレーサーによって測定されたAβ凝集は、象限IV、IIIからIIにかけて徐々にかつ有意に増加した(
図5Aおよび5B)。第III象限のすべての対照はAMCであり(
図1A)、YNC(<64歳)に属するものはなかった。しかし、AMC内では、第III象限(74.8±2.4)および第IV象限(72.4±0.6)では年齢に有意差はなかった。これらは、アミロイド陽性を伴う象限IIIの個体が、異常なタウリン酸化を伴わない前症性ADとして定義される場合があることを示唆している。対照的に、AV1451-PETによって測定されたタウ凝集は第II象限においてのみ増加し(
図5C)、このことは、CSF pT217/T217およびタウPETの前にCSF Aβ42/40およびアミロイドPETが変化することを裏付けた。重要なことに、CSF Aβ42/40とCSF pT217/T217との間の有意な負の相関が、ほとんどの対照、PSP、CBS、およびbvFTDを含む象限IIIおよびIV(pタウ-)で観察された(
図6)。
【0142】
MAPT R406W保持者は、アミロイド病変を伴わずにpT217/T217比を増加させた:象限I(アミロイド-、pタウ+)には、bvFTD、PSP、AD、またはCBSを有する個体が集合していた(
図1C)。興味深いことに、45%(5/11)がbvFTDであり、1人を除くすべて(80%、4/5)がMAPT R406W突然変異保持者であった(
図4F、表2)。この研究で分析されたすべて(5/5)のMAPT R406W突然変異保持者は、アミロイド陰性(象限IおよびIV)であり、MAPT R406W保持者にはアミロイド神経病変が存在しないことが裏付けられた(表2)。40代で研究全体を通じて無症状であったMAPT R406W突然変異保持者5人のうち1人だけが、ベースラインとフォローアップ訪問の両方でCSF pT217/T217陰性(象限IV)であった;他のすべてのMAPT R406W突然変異保持者は、発症前/発症状態にかかわらず、CSF pT217/T217陽性(象限I)であった。ベースラインでは無症状で、4年後のフォローアップ訪問で認知症を発症した参加者1人(#5)は、ベースライン(象限IV)でCSF pT217/T217が閾値をわずかに下回っていたが、CSF pT217/T217はフォローアップ(象限I)で増加し、このバイオマーカーの長期的な変化が疾患の進行を反映している可能性があることを示唆している。比較すると、1年以内にフォローアップ訪問を行った他の5人の参加者(象限IでPSPが1人、象限IVでCBSが2人、AMCが2人)は、ベースラインとフォローアップの間で同じ象限に留まった。これらの結果は、年齢の増加および症状の発現が、MAPT R406W突然変異保持者におけるCSF pT217/T217の増加と関連していることを示唆している。
【0143】
【0144】
ADおよびMAPTR406W突然変異保持者におけるIP/MS CSF Aβ42/40、pT217/T217、および複合バイオマーカーの診断値:次に、IP/MS CSF Aβ42/40とCSF pT217/T217の診断性能を、pT217/T217にCSF Aβ42/40を掛けたもの、およびCSF pT217/T217をAβ42/40で割ったものからなる複合バイオマーカーを使用して、比較した(
図2、表3、
図7)。この分析では、以前に定義された4つの臨床群(「AD」、「R406W」、「4Rタウオパチー」、および「対照」)を比較した。CSF Aβ42/40比およびCSF pT217/T217を単独で使用した場合、ADを他の3つの群から分離するだけである(
図2Aおよび2B)。しかし、R406W群では、対照群および4Rタウオパチー群で観察されたものと比較して、CSF Aβ42/40×pT217/T217複合バイオマーカーが有意に増加していた(
図2C)。この複合バイオマーカーは、R406W群を4Rタウオパチー(AUC=0.948)および対照群(AUC=0.961)から分離する優れた能力を示した。この複合バイオマーカーを使用した場合、MAPT R406W突然変異保持者の100%が、R406W対対照のカットオフ0.50を上回った(表3)。CSF Aβ42/40で割ったCSF pT217/T217は、CSF Aβ42/40およびCSF pT2117/T217単独と同様に機能し、R406Wを他の群から識別することができなかった(
図2D、表3)。
【0145】
【0146】
IP/MS CSFの総タウ濃度およびpタウ濃度は、MAPT R406W保持者にとって有効なバイオマーカーではない:MAPT R406W突然変異保持者を他の神経変性認知症疾患を有する個体から分離する際に、CSF pT217、pT181、総タウ、またはT181でのリン酸化占有率(pT181/T181)のいずれも、複合バイオマーカーCSF pT217/T217×CSFAβ42/40ほど効率的ではなかった(
図8、
図9)。CSF pT181/T181は、AD、AMC、およびMAPT R406W突然変異保持者と比較して、孤発性bvFTD(FTLD-タウ、FTLD-TDP43、およびFTLD-FUSを含む)において有意に減少した(
図8D、
図9D)。再グループ化すると、CSF pT181/T181は、孤発性bvFTD群を、AD(AUC=0.959)、対照(AUC=0.752)、およびその他のタウオパチー、例えば、CBS、PSP、ならびにR406WおよびP301Lを含むFTD-MAPT(AUC=0.707。
図10)から分離することができた。しかし、孤発性bvFTDを他のタウオパチーおよび対照から分離するCSF pT181/T181の特異度および感度は、MAPT R406W突然変異保持者の同定においてCSF pT217/T217の特異度および感度ほど高くはなかった。
【0147】
考察
MAPT R406W突然変異保持者は、アミロイド病変を伴わずにpT217/T217比を増加させた:CSF pT217/T217は、ADにおけるアミロイドPETによって測定されるアミロイド病変と強く相関するが、pT217/T217がCSFアミロイド病変の読み取り値であるかそれともタウ病変の読み取り値であるかは証明されていなかった。本実施例は、症候性ADを有する個体におけるCSF Aβ42/40とCSF pT217/T217との間の特異的相関関係を示した。発症前のADでも、リン酸化のわずかな変化が観察される場合、CSF Aβ42/40とCSF pT217/T217は相関しており、PiB-PETとCS FpT217/T217との間の相関を示す以前の報告と一致している。CSF Aβ42/40もCSF pT217/T217も、PSP、CBS、およびほとんどの孤発性および家族性のFTDを含む他のタウオパチーでは変化しなかった。しかし、MAPT R406W突然変異保持者はアミロイド病変とは無関係にCSF pT217/T217を増加させていることが見出され、CSF pT217/T217の増加が、実際にADおよびMAPT R406W関連認知症に共通する病理学的タウ修飾のバイオマーカーであり、アミロイド病変はこの修飾の前提条件ではないことが実証された。このことは、ADおよびMAPT R406W突然変異保持者に共通の下流タウ病変が存在し、その結果、脳内で特異なタウリン酸化変化が生じ、CSF pT217/T217の増加につながることを示唆している。あるいは、2つの異なる上流機構、すなわち1つはアミロイド沈着に関与し、2つ目はMAPT R406W突然変異に関与するもの、が同様の経路の活性化をもたらし、最終的にタウの過剰リン酸化および凝集を引き起こす可能性がある。
【0148】
MAPT R406W突然変異のADとの類似性:MAPT R406W突然変異関連病変は、ADと複数の臨床的および神経病理学的類似性を共有する。他のMAPT突然変異保持者とは異なり、MAPT R406W突然変異保持者は、発症年齢が遅く、平均して50代半ばで記憶喪失等の臨床症状が現れ、ゆっくりと進行する。P301L等のほとんどの病理学的MAPT突然変異は、エクソン10内またはその周囲に位置しており、通常は4Rタウアイソフォームの凝集を引き起こし、4Rタウオパチーをもたらす。対照的に、R406WおよびV337M等のMAPT突然変異は、3Rおよび4Rタウアイソフォームの両方に共通するドメイン内のタウタンパク質のC末端に位置し、3R+4R混合型脳病変をもたらす。したがって、MAPT R406W突然変異は、ADと同様、3R+4Rタウオパチーとして分類することができ、他の4R(エクソン10に位置するMAPT突然変異に関連するCBS、PSP、bvFTD)または3R(ピック病)タウオパチーとは区別される。
【0149】
タウ凝集体中のフィラメント構造は、ADおよび慢性外傷性脳症(CTE)(3R+4R)、CBS(4R)、およびピック病(3R)等の様々なタウオパチーについて、極低温電子顕微鏡によって最近解明された。神経病理学的所見と一致して、3Rおよび4Rアイソフォームが共有するタウドメインは、ADおよびCTEタウ凝集に関与し、4Rおよび3R特異的ドメインはそれぞれ皮質基底核変性およびピック病凝集に関与する。MAPT R406W、AD、MAPT R406W、およびV337Mについてはそのような構造データは入手できないが、AD、MAPT R406W、およびV337Mは対らせんフィラメント構造を有し、AV1451等のADタウPETトレーサーは、発症前のMAPT R406WおよびV337M突然変異保持者ではある程度結合するが、他のタウオパチーでは結合せず、このことは、これらの3R+4Rタウオパチーにおけるタウ凝集体が同様の特徴を有することを示唆している。しかし、T217での過剰リン酸化がどのように対らせんフィラメントの形成に寄与するか、またはどのように関連するかはまだ対処すべきことである。これまでの研究では、CSF T217はADの発症前の初期ステージで過剰リン酸化されており、臨床症状が出現する20年よりも前に検出可能である一方、PET画像化で検出されるタウ凝集体は、症状の発症近くで増加することが示唆されている。本実施例は、MAPT R406W突然変異保持者を含む3R+4Rタウオパチーにおいて、(1)CSF pT217/T217は、タウ対らせんフィラメントの形成が始まると症状の発症前に異常になるが、タウPET画像化による検出限界を下回っており、その後タウPET画像化に明らかな変化が見られ;または、(2)CSF T217の過剰リン酸化は、神経原線維変化の形成とは直接関係しないが、タウに影響を及ぼし、最終的にタウ凝集につながる異常な細胞代謝を反映している。
【0150】
CSF pT217/T217×CSF Aβ42/40の複合バイオマーカーは、MAPT R406W突然変異保持者に対する高感度バイオマーカーとして機能する:CSF pT217/T217およびCSF Aβ42/40の単独および組合せの診断値を評価した。CSF pT217/T217レベルは、MAPT R406W突然変異保持者で増加していた。しかし、増加の程度はADおよびMAPTと比較してはるかに小さく、CSF pT217/T217単独ではR406W突然変異保持者を対照群またはPSP、CBS、孤発性bvFTD、およびFTD-MAPT P301Lを含む4Rタウオパチー群から分離することはできなかった(
図2A、2B、
図6)。これまでの研究では、MAPT R406W突然変異保持者の一部の症例でCSFおよび血漿pT181濃度が上昇することが示されているが、その上昇は穏やかであった。これらは、R406WバイオマーカーとしてpT181、pT217のCSF濃度、またはT181およびT217のリン酸化占有率(pT181/T181およびpT217/T217)のみを使用したこの研究から得られた感度が不十分であることと一致している。象限分析を通じて、MAPT R406W突然変異保持者を高精度で識別するには、CSF pT217/T217とCSF Aβ42/40の両方が必要であることが実証された。また、複合バイオマーカー、すなわちCSF pT217/T217×CSF Aβ42/40が、MAPT R406W突然変異保持者を対照および4Rタウオパチーから識別するのに十分な感度および特異度を含むことも実証された(
図2C、
図7C、それぞれAUC=0.934、0.960)。これは、ADを対照から区別するためのCSF Aβ42/40およびCSF pT217/T217の高い特異度および感度に匹敵する(それぞれAUC=0.926、0.952)。CSF Aβ42/40とpT217/T217比の組合せは、今後の試験で、発症前のMAPT R406W突然変異保持者と、おそらくV337M等の他の3R+4Rタウオパチーを選択するために使用される可能性がある。さらに、CSF pT217/T217の長期的な測定は疾患の進行を反映している可能性があり、このことは、CSF Aβ42/40、CSF pT217/T217、および複合バイオマーカーが、MAPT R406W突然変異保持者における標的関与を評価することができる、タウオパチーに対する薬物臨床試験における新たな高感度読み取り値として機能する場合があることを示唆している。
【0151】
孤発性bvFTDにおけるCSF pT181/T181の減少:イムノアッセイを用いた以前の研究では、bvFTD、PSP、およびCBS患者において、CSF総タウまたはpT181の変化がないか、または軽度の変化を示すまちまちの結果が示された。複数の報告と一致して、本実施例は、bvFTD、PSP、CBS、および対照群の間でCSF総タウ濃度またはCSF pT181濃度単独の有意差を示さなかった。しかし、同じ参加者内のリン酸化占有率を計算すると、CSF pT181/T181が孤発性bvFTDにおいて有意に減少することが示された。これは、総タウの増加に伴うpT181の生理学的増加、ならびに年齢、性別、および遺伝子型等の個体差を考慮して、pT181の変化をT181ごとに正規化することによって達成することができる。対照または他のタウオパチーからの孤発性bvFTDの同定におけるCSF pT181/T181バイオマーカーの特異度と感度(AUC<0.8)は、MAPT突然変異保持者の同定における複合バイオマーカーであるCSF pT217/T217×CSF Aβ42/40(AUC>0.9)ほど高くなかった。これは、FTLD-タウ、FTLD-TDP、およびFTLD-FUSを含む孤発性bvFTDコホートの不均一性によるものであり得る。
【0152】
方法
ヒト研究:すべての研究は、St. Louis、MO、USAのWashington Universityの治験審査委員会およびMontpellier大学病院の倫理委員会によって承認された(認定NFS96-900CHUリソースセンターBB-0033-00031のCSF-NeuroBANK#DC-2008-417[http://www.biobanques.eu])。すべての参加者またはその代表者は、生体液試料の収集および共有に同意した。除外基準には、出血性疾患、活動性抗凝血、および活動性感染を含む、腰椎穿刺(LP)または腰椎カテーテルとの矛盾(contradiction)が含まれていた。個人データを取り扱う許可は、番号1709743v0でFrench Data Protection Authority(CNIL)によって付与された。
【0153】
AMCおよび軽度のADを有する個体は、安定同位体標識動態(SILK)研究の一部として、Washington University School of MedicineのKnight Alzheimer Disease Research Center(ADRC)に召集された。AMCは研究目的で登録されたボランティアであり、認知に関して正常である。これには、有症状参加者の2つの異なるコホート(WashU-AおよびWashU-B)が含まれていた。WashU-Aコホートからの個体は、36時間の腰椎カテーテル研究に参加した。WashU-Bコホートからの個体は、4か月間にわたって5つのLPを伴うSILK研究に参加した。個体を、臨床評価によって診断し、臨床認知症評価尺度(Clinical Dementia Rating)(CDR)に従って分類した。患者および付随情報源へのインタビューに加えて、可能であれば脳PET画像化データおよび診断用CSF結果を検討した。このコホートには、ADと一致するバイオマーカーを有さず、非AD認知症として分類された臨床AD患者が含まれる。WashU-Aコホートを、PiB画像化に基づいてアミロイドPET陽性によりさらに分類した。現在神経疾患と診断されていない18~64歳の若年正常対照(YNC)は、Washington Universityの保健ボランティアから紹介された。脳腫瘍患者は、Barnes Jewish Hospitalから紹介された。PSP、CBS、および孤発性bvFTDを有する患者は、提携する記憶診断センターおよび運動障害クリニックから紹介された。MAPT P301LおよびR406W突然変異保持者は、Washington Universityにて現地で臨床評価され、Longitudinal Evaluation of Familial Frontotemporal Dementia Study(家族性前頭側頭型認知症研究の評価)(LEFFTDS; allftd.org/artfl-lefftds; Site PI NG)から紹介された。8人の参加者(PSP 1人、MAPT R406W 3人、CBS 2人、AMC 2人)は、LPおよびCSFの収集を繰り返した。
【0154】
Montpellierの参加者は、MontpellierのMemory Resources and Research Center(記憶資源および研究センター)から紹介された。彼らを、臨床的、神経心理学的、脳画像化、およびフォローアップ評価に基づいて、AD、CBS、PSP、bvFTD、およびCBS-PSP連続体に分類した。Aβ42、タウ、pT181濃度のCSFバイオマーカーも酵素結合免疫吸着法(ELISA)で測定し、Aβ42/40比を計算した。ADは、許容される基準に従って、ATN分類に基づいて診断した;すべてのAD参加者は少なくとも2つの異常なCSFバイオマーカーを有していた。これには、ADのCSFバイオマーカーを伴う主な言語、行動、視空間、失行表現型を指すAD限局性表現型が含まれる。一部のPPAエンドフェノタイプAD症例は、AD限局性表現型に含まれていた(n=5)。CBSとPSPは国際基準に従って診断された。bvFTDは、前頭側頭葉変性症(FTLD)-タウ、FTLD-TDP、およびFTLD-FUSに起因する場合がある。いくつかの言語エンドフェノタイプFTLDがbvFTDに含まれていた(n=3)。CBS PSP連続体には、フォローアップ中にPSPに進化したCBS臨床表現型を有する患者が含まれていた。
【0155】
CSF収集:WashU-AコホートにおけるADおよびAMCを有する個体からのCSFを、前述のようにカテーテルを介して収集した。AMCおよびWashU-Bコホートにおける症候性AD、PSP、CBS、およびbvFTDを有する個体からのCSFを、前述のように重力収集および遠心分離を使用したLPによって取得した。MAPT突然変異家族からのCSFは、Washington University School of Medicineのバイオマーカーコアで標準化されたプロトコールに従って収集された。脳腫瘍を有する個体からのCSFは、手術前または手術後にカテーテルを使用して腰椎ドレーンを介して取得された。
【0156】
MontpellierコホートからのCSFは、MontpellierのMemory Resources and Research Centerでの収集、遠心分離、および保存のための標準化プロトコールを使用して収集した。簡潔には、非外傷性針をLPに使用し、CSFを10mLポリプロピレン管およびタンパク質低結合エッペンドルフ管に収集した。CSFは、分注して-80℃で保存する前に遠心分離しなかった。CSFタウおよびpT181濃度は、Fujirebioの指示に従い、標準化された市販のINNOTESTサンドイッチELISAX-MAPを使用して測定した。CSF Aβ42およびAβ40は、FujirebioのINNOTESTサンドイッチELISAを使用して測定した。
【0157】
CSFAβおよびタウに関する連続IP法およびMS法:CSF Aβを、以下の修飾を加えて先に記載したように分析した。界面活性剤およびカオトロピック試薬(最終1%NP-40、5mmol/Lグアニジン、プロテアーゼ阻害剤カクテル)およびタウ(15N標識2N4R組換えタウ)およびAβ(15N標識合成Aβ40、および42)の内部標準を含有するマスターミックスを、低結合Axygen管(Fisher Scientific、Pittsburgh、PA、USA、MCT-175)内で調製した。500~1000μLのCSFを加え、HJ5.1ミッドドメインAβ抗体で免疫沈降させた。洗浄後、試料をLysNプロテアーゼで消化し、脱塩し、XevoTQ-S質量分析計(Waters Corporation、Milford、MA、USA)で分析した。
【0158】
CSFタウおよびpタウを、以下の修飾を加えて先に記載したように分析した。タウ内部標準を含有するHJ5.1免疫沈降後のCSF試料を、タウ1中間ドメインおよびHJ8.5N末端タウ抗体で連続的に免疫沈降させた。洗浄後、試料をトリプシンで消化し、脱塩し、Orbitrap Fusion質量分析計(Thermo Fisher Scientific、San Jose、CA、USA)で分析した。pT217およびpT181を測定するMS法については前述した。
【0159】
アミロイドおよびタウPET画像化:アミロイドPiB-PET、AV45-PET、およびタウAV1451-PET画像化測定を、Washington University School of MedicineのKnight ADRCからのADおよびAMC参加者のサブセットにおいて実行した。データは前述のように収集および処理した。
[実施例2]
【0160】
非ADタウオパチーにおけるpタウの比較:LOAD対UCSF対NCRAD対CTRL対タングル
以前に報告されているように、T217のリン酸化はアミロイドベータとともに増加する。異常なタウリン酸化は、群の参加者からの試料によって定義されたカットオフを超える値として定義された:アミロイドベータ陰性(AB-)、認知に関して正常(CN)、若年正常対照(YNC)、脳転移(BM)または対照(CTRL))。
【0161】
この基準を考慮すると、異常なタウリン酸化は、皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病(PiD)を有する参加者の大部分で観察された。この傾向は、3つの独立したコホート(UCSF、NCRAD、タングル)のCBDおよびPSPに関して観察される。観察された値は、臨床症状のないアミロイド陽性参加者(AB+CDR0)と同じ範囲内にある。また、MAPT突然変異N279K、S305S、V337M、10+16は、CSF pタウ217の異常を誘発すると思われる。上に示したR406Wにも異常なpタウ217がある。したがって、正常CSF Aベータ42/40とともにpタウ217の増加は、非ADタウオパチーのリスクのある参加者を同定するのに有用であると思われる(
図11)。
【0162】
図12は、pタウ181が非ADタウオパチーにおけるタウリン酸化の変化を検出するのに十分な感度がないことを示している。しかし、TDP試料ではpタウ181が低いことが観察された。また、
図17~19に示すように、孤発性FTD(FTD-タウ、FTD-FUS、FTD-TDP43を含む)は、CSF pT181/T181比を低下させた。したがって、pT181/T181は、比率を測定すると、孤発性FTDを他のタウオパチーから分離することができる。
【0163】
図13に示すように、pタウ205は、主にアミロイド陽性症候性(AB+CDR>0)およびADにおいて増加する。N279K、S305S、V337M、およびR406Wは、pタウ217について見られるように異常にリン酸化されるが、10+16は異常にリン酸化されない。一部の非ADタウオパチー(CBD、PSP、およびピック病)は対照群よりわずかに高い可能性があるが、この部位の感受性はpタウ217より低い可能性がある。
【0164】
pタウ208は、LOADコホートにおいてpタウ217と関連するが、pタウ217について観察されたものと比較して、ADにおいては比較的低いようである。N279K、S305S、V337M、およびR406Wは、異常にリン酸化されるが、10+16は異常にリン酸化されない。一部の非ADタウオパチー(CBD、PSP、およびピック病)は対照群よりわずかに高い可能性があるが、この部位の感受性はpタウ217より低い可能性がある(
図14)。
【0165】
図15は、pタウ111が、LOADコホートにおいてpタウ217と関連するが、pタウ217について観察されたものと比較して、ADにおいては比較的低いようであることを示す。CBD、PSP、またはMAPT突然変異ではpタウ217の過剰リン酸化が見られるため、非ADタウオパチーでは異常なリン酸化は観察されない。これは、pタウ111が真にAD特異的であり、pタウ217について異常にリン酸化されている非ADタウオパチーとADを区別するために使用することができることを示唆している可能性がある。
【0166】
図16に示されるように、pタウ111と同様に、pタウ153は、LOADコホートにおいてpタウ217と関連するが、pタウ217について観察されたものと比較して、ADにおいては比較的低いようである。CBD、PSP、またはMAPT突然変異ではpタウ217の過剰リン酸化が見られるため、非ADタウオパチーでは異常なリン酸化は観察されない。これは、pタウ153が真にAD特異的であり、pタウ217について異常にリン酸化されている非ADタウオパチーとADを区別するために使用することができることを示唆している。
【国際調査報告】