(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】電気伝導コーティングされた層厚が均一な多孔質焼結体
(51)【国際特許分類】
C03C 17/36 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
C03C17/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560724
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2022058567
(87)【国際公開番号】W WO2022207789
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021108387.7
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ロイグナー
(72)【発明者】
【氏名】トアステン ダム
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー マンゴルト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヘン
(72)【発明者】
【氏名】エヴェリン ルディギア-フォイクト
(72)【発明者】
【氏名】ハートムート バオホ
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ ピヒラー-ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ダン クォン ファン
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA15
4G059AB11
4G059AC13
4G059DA01
4G059DA02
4G059DA03
4G059DA04
4G059DA05
4G059DA08
4G059EA03
4G059EA12
4G059EB03
4G059GA01
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA14
(57)【要約】
本発明は、焼結体(11)と導電性コーティング(9)とを有するコーティングされた焼結体に関する。焼結体(11)は、ガラスまたはガラスセラミックを含み、10~90%の範囲の開気孔率を有する。導電性コーティングは、焼結体(11)の内面と接続されており、導電性コーティングは、コーティングされた焼結体の加熱装置の構成要素である。導電性コーティングは、均一であり、最大で50%の層厚のばらつきを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体(11)と導電性コーティング(9)とを有する、コーティングされた焼結体であって、
前記焼結体(11)は、ガラスまたはガラスセラミックを含み、10~90%の範囲の開気孔率を有し、
前記導電性コーティング(9)は、開気孔(12)によって形成された前記焼結体(11)の表面と接続されており、
前記導電性コーティング(9)は、前記コーティングされた焼結体の加熱装置の構成要素であり、
前記導電性コーティング(9)は、少なくとも前記焼結体(11)の気孔の内面全体に堆積されており、
前記導電性コーティング(9)は、最大で50%の層厚のばらつきを示す層厚d
コーティングを有する、焼結体。
【請求項2】
前記導電性コーティング(9)の前記層厚の前記ばらつきが、最大で40%、好ましくは最大で30%、特に好ましくは最大で5%を有する、請求項1記載のコーティングされた焼結体。
【請求項3】
前記導電性コーティング(9)の前記層厚d
コーティングが、10nm~1500nm、好ましくは15nm~1000nm、特に好ましくは20nm~500nmであり、前記電気伝導性コーティングが、好ましくは窒化チタンを含む、請求項1または2記載のコーティングされた焼結体。
【請求項4】
前記焼結体(11)が、ガラスと少なくとも1つの金属、ガラスとセラミック、ガラスセラミックとセラミックおよび/またはガラスセラミックと少なくとも1つの金属との複合体として形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項5】
前記導電性コーティング(9)が、金属、金属酸化物または金属窒化物、金属炭化物を含み、好ましくは、0.016~60μΩ・mの範囲、有利には0.2μΩ・m~10μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、金属酸化物、金属炭化物および/または金属窒化物を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項6】
前記電気伝導性コーティング(9)が、0.016~0.06μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、好ましくは銀、銅、アルミニウム、イリジウム、金、モリブデンおよび/またはタングステンを含み、前記導電性コーティング(9)が、1~20nmの範囲の層厚を有する、請求項5記載のコーティングされた焼結体。
【請求項7】
前記電気伝導性コーティング(9)が、>0.06~10μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、金属酸化物および/または金属窒化物、好ましくは、亜鉛、白金、パラジウム、チタン、ビスマス、酸化インジウムスズ、ルテニウム、酸化ルテニウムおよび/または窒化チタンを含み、前記導電性コーティングが、10~1000nmの範囲の層厚を有する、請求項5記載のコーティングされた焼結体。
【請求項8】
前記電気伝導性コーティング(9)が、>10~60μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、金属酸化物、金属炭化物および/または金属窒化物、好ましくはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ドープケイ素および/または炭化チタンを含み、前記導電性コーティングが、200~1500nmの範囲の層厚を有する、請求項5記載のコーティングされた焼結体。
【請求項9】
前記導電性コーティング(9)が、銀、金、アルミニウム、イリジウム、タングステン、亜鉛、白金、パラジウム、チタン、窒化チタン、炭化チタン、ケイ素、ビスマス、炭化チタン、酸化インジウムスズ、AZO、モリブデン、ルテニウム、酸化ルテニウム、ニッケルおよび/またはそれらの混合物もしくは合金を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項10】
前記導電性コーティング(9)が、少なくとも2つの部分層(90,91,92)から構成されている、請求項9記載のコーティングされた焼結体。
【請求項11】
前記個々の部分層(90,91,92)が、その組成に関して異なる、請求項10記載のコーティングされた焼結体。
【請求項12】
前記焼結体(11)が、前記導電性コーティング(9)に加えて、前記電気伝導性コーティング(9)上および/または前記焼結体(11)と前記導電性コーティング(9)との間に配置されている少なくとも1つのさらなる層を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項13】
前記焼結体(11)が、さらなる層として接着促進層(14)および/またはバリア層(13)を含み、好ましくは、前記電気伝導性コーティング(9)が、前記接着促進層(14)上に配置されており、かつ/または前記導電性コーティング(9)が、焼結体(11)と前記バリア層(13)との間に配置されている、請求項12記載のコーティングされた焼結体。
【請求項14】
前記導電性コーティング(9)が、原子層堆積法(ALD)によって堆積されたものである、請求項1から13までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項15】
前記コーティングされた焼結体が、1~10
9μΩ・mの範囲、好ましくは100~10
5μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項16】
気化体における、好ましくは電子タバコの気化体ユニットにおける加熱要素としての、請求項1から15までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体の使用。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項記載の焼結体を備えた、気化体ユニット。
【請求項18】
気化体用のコーティングされた焼結体を製造するための、ALD法の使用。
【請求項19】
請求項1から15までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体を製造するための、ALD法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、導電性多孔質焼結体に関する。より具体的には、本発明は、気化可能な物質の貯蔵および制御放出用の、液体リザーバあるいは液体バッファと加熱ユニットとを備えた気化体ユニットに関する。気化体ユニットは、ここで特に、電子タバコ、薬剤投与装置、室内加湿器および/または例えばフレグランス物質や昆虫忌避剤などの物質を室内空気に放出するための加熱式蒸発器において使用することができる。電子タバコ(以下、Eシガレットともいう)は、タバコの代替品としてますます使用されている。
【0002】
典型的には、電子タバコは、マウスピースと、気化体ユニットと、気化体ユニットに作動可能に接続された電源とを備える。気化体ユニットは、加熱要素に接続された液体リザーバを備える。ある種の薬剤、特に呼吸器系および/または口腔粘膜および/または鼻粘膜の治療用の薬剤は、有利には、ガス状または気化した形態で、例えばエアロゾルとして投与される。本発明による気化体は、このような薬剤の貯蔵および放出に、特にこのような薬剤の投与装置において使用することができる。熱加熱式蒸発器は、雰囲気にフレグランス物質を付与するためにますます使用されている。これは、特にバー、ホテルのロビーおよび/または車両の内装、例えば自動車の内装、特に乗用車の内装であってよい。この場合に使用される気化体ユニットでも、液体リザーバが加熱要素に接続されている。液体リザーバには液体が入っており、この液体は、通常は例えばプロピレングリコールやグリセリンなどのキャリア液体であり、この中に、フレグランス物質およびアロマ物質などの添加物および/またはニコチンおよび/または薬剤が溶解され、かつ/または全般的に含まれている。キャリア液体は、液体リザーバの内面に吸着プロセスによって結合される。必要に応じて、液体リザーバに液体を供給するために別個の液体受器が設けられている。総じて、液体リザーバに貯蔵された液体が加熱要素の加熱により気化し、液体リザーバの接液面から脱離し、これを使用者が吸入することができる。この場合、200℃を超える温度に達することがある。そのため、液体リザーバあるいは液体バッファは、高い吸収性および高い吸着効果が求められると同時に、高温で迅速に液体を放出あるいは輸送する必要がある。先行技術から、有機ポリマーから構成される多孔質液体リザーバを備えた電子タバコが知られている。したがって、ポリマー材料の温度安定性が低いため、加熱要素と液体リザーバとの間の最小距離を維持する必要性がある。これは、気化体ユニット、ひいては電子タバコのコンパクトな設計を妨げるものである。最小距離を維持する代わりに、気化させる液体を毛管現象によって加熱コイルに導く芯を使用することができる。この芯は、通常、ガラス繊維で構成されている。これは確かに温度安定性が高いが、個々のガラス繊維が破損し易い。また、液体リザーバ自体もガラス繊維から製造されている場合にも同様のことがいえる。したがって、使用者が緩んだまたは溶けた繊維の破片を吸い込むリスクがある。また、セルロース繊維、木綿または竹繊維で構成された芯を使用することもできる。これらは、確かにガラス繊維から構成される芯に比べて破損の危険性は低いが、温度安定性に劣る。そのため、液体リザーバが多孔質ガラスまたはセラミックからなる気化体ユニットも使用されている。これらの液体リザーバは温度安定性が高いため、気化体、ひいては電子タバコ全体をも、よりコンパクトな構造とすることができる。実際には、局所的な気化は、低圧と高温との組み合わせによって達成することができる。電子タバコの場合、低圧は、例えば消費時にタバコを吸う際の吸引力によって実現され、したがって、圧力は消費者によって調節される。液体リザーバにおける気化に必要な温度は、加熱ユニットによって生成される。この場合、迅速な気化を保証するために、通常は200℃超の温度が達成される。加熱電力は、通常、電池またはアキュムレータで作動する電熱コイルによって提供される。必要な加熱電力は、この場合、気化させる体積および加熱の効率に依存する。過度に高い温度による液体の分解を避けるため、加熱コイルから液体への熱輸送を、非接触の輻射によって行うことが望ましい。このため、加熱コイルを気化面にできるだけ近づけるが、触れないようにすることが好ましい。一方で、コイルが表面に触れると、液体はしばしば過熱され、分解される。
【0003】
しかし、非接触の輻射による熱輸送の場合にも、表面の過熱は起こり得る。過熱は通常、加熱コイルに対向する気化体の表面で局所的に発生する。このことは、運転中に大量の蒸気が必要とされ、気化体表面への液体輸送が十分に迅速でない場合に生じる。したがって、加熱要素からのエネルギー供給が気化に消費されず、表面が乾燥し、気化温度をはるかに超える温度にまで局所的に加熱されることがあり、かつ/または液体リザーバの温度安定性を超えてしまう。したがって、正確な温度調整および/または温度制御が不可欠である。しかし、この場合の欠点は、これにより得られる電子タバコの構造が複雑となる点にあり、これは、特に高い製造コストの形で現れる。さらに、場合によっては、温度制御によって、蒸気発生量、ひいては最大限可能な気化強度が低下する。欧州特許出願公開第2764783号明細書には、焼結材料から構成される多孔質液体リザーバを備えた気化体を備えた電子タバコが記載されている。加熱要素は、加熱コイルまたは電気伝導性コーティングとして形成されていてよく、その際、コーティングは、液体リザーバの外被面の一部にのみ堆積されている。したがって、この場合も気化が局所的に制限される。
【0004】
米国特許出願公開第2011/0226236号明細書には、液体リザーバと加熱要素とが材料結合によって互いに接続された吸入器が記載されている。液体リザーバおよび加熱要素は、この場合、平坦な複合材料を形成している。液体リザーバは、例えば開気孔焼結体から構成され、芯として機能し、気化させる液体を加熱要素に導く。加熱要素は、この場合、液体リザーバの表面のうちの1つに、例えばコーティングの形で施与されている。したがって、この場合にも気化は表面で局所的に行われるため、同様に過熱の危険性がある。
【0005】
この問題を回避するために、気化体の外被面とも呼ばれる外面だけでなく内面でも気化が行われる気化体ユニットが先行技術から知られている。蒸気は、表面で局所的に発生するだけでなく、気化体の体積全体で発生する。したがって、気化体内の蒸気圧はほぼ一定であり、気化体の表面への液体の毛管輸送は依然として保証されている。したがって、毛管輸送によって気化速度が最小化されることはもはやない。対応する気化体には、電気伝導性でかつ多孔質の材料が必要となる。電圧が印加されると、気化体の体積全体が加熱され、体積のいたるところで気化が起こる。対応する気化体は、米国特許出願公開第2014/0238424号明細書および米国特許出願公開第2014/0238423号明細書に記載されている。ここでは、液体リザーバと加熱要素とが、例えば金属または金属メッシュから構成される多孔質体の形態で1つの部材において組み合わされている。しかし、この場合には、記載された多孔質体において、電気抵抗に対する孔径の比を容易に調整できないことが欠点である。また、導電性コーティングを施与した後、その後の焼結によりコーティングの劣化が生じることがある。
【0006】
しかし、前述の先行技術に記載された材料は、調整可能な高い気孔率と良好な導電率との双方を有する複合体を焼結プロセスにより製造するのには適さないか、または限られた範囲でしか適さない。総じて、セラミックは、その気孔率が低くかつ表面が粗いために、連続的にコーティングすることも困難である。
【0007】
したがって、独国特許出願公開第102017123000号明細書には、その表面全体に導電性コーティングを有するガラスまたはガラスセラミックから構成される焼結体を備えた気化体が記載されている。したがって、外面にのみ対応するコーティングを有する焼結体の場合とは対照的に、気化は外面だけでなく焼結体の内部でも行われる。対応する気化体を製造するために、まずガラスまたはガラスセラミックから構成される多孔質焼結体が製造され、その後のステップで、これに例えばITOコーティングの形態の比較的厚い導電性コーティングが施される。ここで、コーティングは、溶液または分散液からの吸着プロセス、例えばディッピング法によって施される。しかし、例えばITOのような導電性材料は材料の需要が高いため、製造プロセスが高コストになるという欠点がある。さらに、その後に厚いコーティングが施与されることにより、焼結体の特性が不利に変化する場合がある。特に、焼結体の小さな気孔がコーティングによって閉じられ、その結果、焼結体の活性表面積が減少するおそれがある。
【0008】
発明の課題
したがって、本発明の課題は、電子タバコおよび/または薬剤投与装置および/またはフレグランス物質の熱加熱式蒸発器における気化体としての使用に特に適しており、上述のような欠点を有しない焼結体を提供することである。したがって、本発明は特に、気化体の良好な加熱性、ならびに電気抵抗および気孔率の正確な調整可能性を提供しようとするものである。本発明のさらなる課題は、対応する導電性焼結体の製造方法を提供することである。
【0009】
発明の簡単な説明
本発明の課題は、すでに独立請求項の主題により解決される。本発明の有利な構成および発展形態は、従属請求項の主題である。
【0010】
本発明は、導電性コーティングを有するコーティングされた焼結体に関する。焼結体は、多孔質であり、焼結体の体積に対して10~90%の範囲、特に50~80%の範囲の開気孔率を有する。焼結体の材料として、ガラス、ガラスセラミック、プラスチックおよび/またはセラミックが使用される。このような焼結体およびその製造は、独国特許出願公開第102017123000号明細書に記載されており、その内容全体が本明細書に援用される。一実施形態によれば、焼結体は、金属をさらに含む。焼結体の表面は、開気孔あるいは空隙によって形成された表面を含む。
【0011】
導電性コーティングは、焼結体上に堆積されており、加熱装置の構成要素である。ここで、開気孔あるいは開空隙の表面も、導電性コーティングに接続されている。焼結体の体積内の開気孔の表面をも含む焼結体の表面は、内面と呼ばれる。焼結体の外被面とは、外側から少なくとも視線が届き、したがって視認可能である外面を表す。ここで、例えば穴や溝などの構造物の表面も外被面と呼ばれる。したがって、例えば円筒形の焼結体の場合、「内面」という用語には、焼結体の内部の気孔によって形成される焼結体の表面も包含される。したがって、内面は、総じて焼結体の外面よりも大きい。
【0012】
一実施形態によれば、導電性コーティングは、焼結体の表面に摩擦接続および材料接続されている。一発展形態によれば、焼結体は、導電性コーティングに加えて少なくとも1つのさらなるコーティングを有する。この場合、この追加の層は、導電性コーティング上に配置されていてもよいし、焼結体と導電性コーティングとの間に配置されていてもよい。
【0013】
一実施形態によれば、コーティングされた焼結体は、導電性コーティングに加えて少なくとも2つの層を有する。これらは、導電性コーティング上および/または焼結体と導電性コーティングとの間に配置されていてよい。一実施形態によれば、この追加の層は、接着促進層である。一実施形態によれば、焼結体は接着促進層を有し、この接着促進層は、好ましくは焼結体と導電性コーティングとの間に配置され、有利には酸化チタン、SiO2および/または酸化スズを含む。ここで、この追加の層は、接着促進層であってもよい。接着促進層は特に、焼結体の熱膨張係数と導電性コーティングの熱膨張係数との間の熱膨張係数を有することができる。したがって、例えばコーティングされた焼結体が加熱されるような温度変動時においても、コーティングされた焼結体における機械的応力を最小限に抑えることができ、その結果、コーティングの密着性を向上させることができる。代替的または追加的に、接着促進層は導電性であってもよい。
【0014】
代替的または追加的に、焼結体にバリア層が設けられていてもよい。バリア層は、焼結体と導電性コーティングとの間だけでなく、導電性コーティングの上にも配置されていてよい(すなわち、導電性コーティングが、焼結体とバリア層との間にある)。バリア層も導電性であってもよい。一実施形態によれば、バリア層は、焼結体の表面と導電性コーティングとの間に配置されている。この場合、バリア層は接着促進特性を有することができ、したがって同時に接着促進層としても作用し得る。同様に、接着促進層は、バリア層の特性を有することができる。
【0015】
バリア層については、酸化チタンまたは酸化アルミニウムを含む層が特に有利であることが判明した。バリア層は、カバー層または不動態化層として形成されていてもよく、コーティングされた焼結体を、例えば酸化から保護することができる。さらに、バリア層は、導電性コーティングの粒子が剥離して蒸気に達するのを防止することができる。好ましくは、接着促進層および/またはバリア層は、ALD(原子層堆積)法によって施与される。
【0016】
多孔質焼結体の外被面の気孔または空隙だけでなく、焼結体の内部の気孔または空隙にも導電性コーティングが施されている。特に、孔径が3μmを超える焼結体の少なくともすべての気孔に導電性コーティングが施されている。一方で、直径または狭窄部が3μm未満の気孔または空隙は、部分的にしかコーティングされていない場合もある。これは、このような空隙への到達のしにくさによるものである。例えば、ALD(原子層堆積)法によるコーティングの場合、コーティング過程でコーティング前駆体の浸透が異なったり不均一になったりするのは、対応する非常に小さな空隙への到達のしにくさが原因となり得る。
【0017】
焼結体の気孔の内面にも導電性コーティングが施されているため、流れる。その結果、本発明によりコーティングされた焼結体に電圧が印加されると、電流が焼結体の体積全体に流れ、したがって焼結体はその体積全体で加熱される。このようにして、導電性コーティングは、焼結体の表面に堆積されており、焼結体の表面に接続されており、その際、導電性コーティングは、焼結体の内部に位置する気孔を覆っているため、焼結体と少なくとも部分的または一部の領域に電気的接触がなされ、電流が印加されると、この電流が、少なくとも部分的に焼結体の内部を流れ、焼結体の内部を加熱する。
【0018】
したがって、焼結体の通電体積全体が加熱され、それに応じて、気化させる液体が、焼結体の導電コーティングされた内面全体で気化される。蒸気圧は、焼結体内のどこでも等しい高さであり、蒸気は、焼結体の外被面を形成する焼結体の外面で局所的に発生するだけでなく、焼結体の内部でも発生する。導電性コーティングは、焼結体の表面に施与されており、その孔表面の少なくとも一部を形成する。
【0019】
局所加熱用の装備、例えば加熱コイルまたは電気伝導性コーティングを焼結体の外被面にのみ備えた気化体とは異なり、焼結体の表面への毛管輸送は不要である。これにより、毛管作用が少なすぎる場合の気化体の空焚きが阻止され、ひいては局所的な過熱も阻止される。これは、気化体ユニットの耐用年数に有利な影響を及ぼす。
【0020】
一実施形態によれば、焼結体は、0.1m2/gを超える内部表面積を有する。これにより、気化体内で使用される際に、加熱された液体の蒸発に大きな表面積が提供される。好ましくは、内部表面積は、1m2/g未満、またはさらには0.7m2/g未満である。内部表面積の制限は、気化プロセス中にクロマトグラフィーの影響を避けることができるため有利である。一実施形態によれば、焼結体は、0.1~0.5m2/gの範囲、好ましくは0.2~0.4m2/gの範囲の内部表面積を有する。
【0021】
導電性コーティングは、均一な層厚を有する。したがって、導電性コーティングの層厚の局所的な偏差は、最大で平均層厚の50%である。ここで、非常に小さな孔径または直径3μmの狭窄部を有する領域では、本発明から逸脱することなく、コーティングの層厚の上述の均一性からの局所的な偏差が生じ得る。よって、最大で平均層厚の50%という上述の導電性コーティングの層厚の偏差は、3μm未満の気孔もしくは空隙または局所的なアーチファクトもしくは欠陥を有する領域をコーティング表面から除いた領域にわたって満たされる。
【0022】
均一な層厚により、体積全体で一定またはほぼ一定の電気抵抗が得られる。気化体の加熱電力は、コーティングされた焼結体の電気抵抗に依存するため、焼結体は、焼結体の体積全体にわたって均一な加熱電力を有する。それによって、不均一な気化や、気化させる液体の分解を招くおそれのある局所的な温度極大を回避することができる。好ましい一実施形態によれば、層厚の偏差は、最大で30%、最大で20%、またはさらには最大で5%である。
【0023】
層厚偏差を求めるために、コーティングされた焼結体の試料について、イオンミリング(集束イオンビーム、FIB)と走査型電子顕微鏡法(SEM)との組み合わせによって、内面の複数箇所、少なくとも3箇所で層厚が求められる。層厚が求められる焼結体の個々の箇所は、互いに少なくとも10μm、有利には少なくとも20μm離れている。特に、層厚を求めるための測定点は、このように試験体上に分布している。個々の測定点で層厚を求めるために、まずFIBによって局所的に1箇所に穴が開けられ、この穴は、施与された層を通って試験体(基材)内に延びる。
【0024】
FIBの作動原理はSEMと同様であるが、電子の代わりにイオン(例えばGaイオン)が使用される。したがって、イオンはイオン光学系によって一点に集束され、測定領域内の表面上に線状に導かれる。ここで、2~50kVの範囲の加速電圧が印加され、1pA~1μAの範囲のビーム電流が実現される。強度およびエネルギーが高いほど顕著になる材料除去により、試料の表面近傍(数マイクロメートル)に存在するコーティングがベース材料まで狙いどおりに除去され、それにより、その後のSEMによる層厚測定に用いられる断面が得られる。ここで、測定領域は、コーティングの、場合により発生する明らかな欠陥やアーチファクトが測定領域外にあるように選択される。
【0025】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、導電性コーティングは、原子層堆積(ALD)法により施与された層である。この場合、原子層堆積法により、特に層厚に関して均一な層を得ることができる。さらに、原子層堆積法では、堆積プロセスを良好に制御することができる。例えば特に、所望の層厚を正確に調整することができる。したがって、導電性コーティングの層厚とコーティングされた焼結体の電気抵抗との間の相関関係により、焼結体の電気抵抗および加熱電力を狙いどおりに調整することもできる。さらに、原子層堆積法では、非常に薄い層の堆積も可能である。したがって、本発明のさらなる態様は、電気伝導コーティングされた焼結体を製造するための原子層堆積法またはALD法の使用である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、導電性コーティングは、1~1500nmの範囲の層厚を有する。特に、導電性コーティングは、1300nm未満、好ましくは1000nm未満、またはさらには700nm未満の層厚を有する。このように、本実施形態による導電性コーティングの層厚は、例えばディッピング法により堆積される導電性コーティングよりも著しく小さい。比較的薄い導電性コーティングを使用することにより、導電性コーティングによる焼結体の気孔の閉鎖や閉塞を避けることができる。このことは、すべてのまたはほぼすべての開気孔が気化体積として利用可能であるため、有利である。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、導電性コーティングは、金属M、金属酸化物、金属炭化物および/または金属窒化物を含む。好ましくは、0.016~100μΩ・mの範囲、特に好ましくは0.05μΩ・m~10μΩ・mの範囲、非常に特に好ましくは0.1μΩ・m~10μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、金属酸化物、金属炭化物または金属窒化物が使用される。一実施形態では、使用される金属、金属酸化物、金属炭化物または金属窒化物が、0.1μΩ・m~5μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有することが提供される。この場合、このようにしてコーティングされた焼結体の特に有利な電気抵抗は、実用可能な層厚で達成することができるため、対応する比電気抵抗や導電率を有する材料は、導電性コーティングの成分として特に適している。使用されるコーティング材料の導電率は十分に高いため、導電性材料のすでに比較的小さな層厚で焼結体の導電率を調整するのに十分である。したがって、コーティング材料を節約することができ、これはプロセスコストに関して有利である。
【0028】
ここで、ALD法によって堆積された金属、金属酸化物、金属炭化物または金属窒化物コーティングは、プロセスに起因して、文献に記載された上記の電気抵抗よりも大きい電気抵抗を有することができる。この場合、ALD法によって堆積されたコーティングの電気抵抗は、本発明から逸脱することなく、文献から知られている対応する化合物の電気抵抗の100倍であることができる。
【0029】
さらに、比較的薄いコーティングによって、個々の小さな気孔の閉塞や閉鎖を避けることができる。同時に、特定の導電率に基づき、電気伝導性あるいは導電性材料の必要な層厚は十分に大きく、焼結体の導電率を狙いどおりに調整することができる。
【0030】
一実施形態によれば、導電性焼結体は、1~109μΩ・m、好ましくは100~100000μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する。
【0031】
銀、金、アルミニウム、イリジウム、タングステン、亜鉛、白金、パラジウム、チタン、窒化チタン、炭化チタン、ビスマス、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ケイ素、モリブデン、ルテニウム、酸化ルテニウム、炭素および/またはそれらの混合物(これらは層系列としても考えられる)もしくは合金(同様に層系列としても考えられる)が、導電性コーティングの有利な成分であることが判明した。代替的または追加的に、導電性コーティングは、ニッケルを含むことができる。別の一実施形態では、金属炭化物および/または金属窒化物、特に金属である銀、金、アルミニウム、イリジウム、タングステン、亜鉛、白金、パラジウム、チタン、ビスマス、モリブデンおよび/またはルテニウムの窒化物および/または炭化物の使用が提供される。
【0032】
有利には、導電性コーティングの層厚は、1~1500nmの範囲である。1000nm未満、特に600nm未満の層厚が特に有利であることが判明した。導電性コーティングのそれぞれの層厚は、焼結体の達成すべき導電率および使用される導電性コーティングの成分の比電気抵抗に依存する。表1に、一実施形態にしたがって、導電性コーティングの層厚を、使用される材料の比電気抵抗に対して示す。
【0033】
【0034】
群Aには、比電気抵抗が0.016~0.06μΩ・mの範囲にある材料が分類される。ここで、層厚は、有利には1~20nmの範囲、またはさらには1~10nmの範囲である。特に、群Aには、銀、金、銅、アルミニウム、イリジウムおよびタングステンといった材料、すなわち特にこのクラスの金属の材料が包含される。一実施形態例によれば、焼結体は、1~10nmの範囲の層厚の銀コーティングを有する。群Bに分類される材料は、0.06~10μΩ・mの比電気抵抗を有する。群Bには、例えば、亜鉛、白金、酸化インジウムスズ、パラジウム、チタンおよび窒化チタンが包含される。有利には、群Bの材料で構成されるコーティングは、10~1000nmの範囲の層厚を有する。群Cには、比電気抵抗が10~60μΩ・mの範囲の材料が分類される。群Cには、例えば、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ドープケイ素、炭素および炭化チタンが包含される。有利にはここで、層厚は、200~1500nmの範囲である。
【0035】
群A~Cが、典型的な値を有する典型的な材料を含み、これが特に、例えばITOやTiNといった化合物である材料の場合には、別の群にも割り当てられるまたは割り当てることができる変形形態が存在し得ることに留意すべきである。
【0036】
表1に挙げられた層厚は、誘電焼結体、例えばガラスまたはガラスセラミック製の焼結体を使用する場合に特に有利であることが判明した。焼結体の構造およびその材料に応じて、コーティングされた焼結体の所望の導電率を調整するために必要な層厚が、表1に挙げられた層厚と異なる場合がある。例えば、焼結体が、ガラスまたはガラスセラミックと、例えば粒子または粉末として添加される少なくとも1つのさらなる金属との組み合わせの複合材料から構成されている場合、コーティングされた焼結体の特定の所望の導電性を達成するには、導電性コーティングの(表1から逸脱した)より小さい層厚で十分である場合がある。
【0037】
一実施形態によれば、導電層は、群A~Cの材料の組み合わせを含むことも、それからなることもできる。この場合、要求される導電率を得るために、材料の合金化、1つ以上の材料のドーピングまたは層系列、およびそれらの組み合わせを意図的に使用することができる。これは、例えば導電層の厚さの調整や薄い層の機械的安定性の向上に有利となり得る。さらに、導電性コーティングの組成により、その熱機械特性を調整することができ、これは、コーティングされた焼結体の高温用途において特に有利である。例えば、導電性コーティングの熱膨張係数を焼結体に合わせることができる。したがって、機械的応力が回避され、これにより、特に厚いコーティングの場合には機械的安定性が向上する。それにより、コーティングされた焼結体の剥離傾向も低減できる。さらに、群A~Cの材料の組み合わせは、コーティングされた焼結体の製造に関して、例えばプロセス時間およびそれに伴うコストに関して有利となり得る。
【0038】
一実施形態によれば、導電性コーティングは、さらなる材料を含むことができる。有利には、これらの層における上記材料の含有量は、合計で少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも85重量%、またはさらには少なくとも90重量%である。別の一実施形態では、導電性コーティングが上述の材料からなり、コーティングが、最大で5重量%、有利には最大で1重量%の含有量の異物を含み得ることが提供される。
【0039】
特に、窒化チタン、酸化インジウムスズ(ITO)およびアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)は、それらの比導電性に加えてさらに、原子層堆積法によって焼結体の表面に堆積させることができるという利点を提供する。さらに、特に白金、チタン、窒化チタン、銀および金は、毒物学的な観点から懸念がなく、このことは、コーティングされた焼結体を電子タバコに使用する場合に特に有利である。
【0040】
特に有利な一実施形態によれば、電気伝導性コーティングは、窒化チタンを含む。したがって、コーティングされた焼結体の特に有利な比電気抵抗、特に1~109μΩ・m、好ましくは100~105μΩ・mの範囲の比電気抵抗は特に、10nm~1000nmの範囲の層厚を有する窒化チタン層または窒化チタン含有層で焼結体をコーティングすることによって達成することができる。有利には、層厚は、15nm~700nm、特に好ましくは20nm~500nmである。さらに、窒化チタンは原子層堆積法によって良好に堆積させることができるため、コーティング材料として窒化チタンを使用することは有利である。さらに、窒化チタンは健康上の懸念がなく、例えば医療分野で使用されている。有利な一実施形態によれば、導電性コーティングは、窒化チタンからなる。有利には、窒化チタン層は、多結晶質または非晶質である。
【0041】
本発明の一発展形態では、導電性コーティングが少なくとも2つの部分層から構成されていることが提供される。これらの部分層は、その組成に関して異なっていてもよい。本発展形態の一実施形態では、導電性コーティングが少なくとも2つの導電性部分層を有し、2つの部分層がその組成に関して異なることが提供される。したがって、2つの部分層は、その導電率が異なり得る。異なる導電率を有する材料の使用により、焼結体の導電率を特に正確に調整する可能性が提供される。有利には、2つまたはすべての部分層がALD法により施与される。本発明を逸脱することなく、部分層のうち一方をALD法で堆積させ、別の堆積プロセス、例えば電着法および/またはディッピング法を使用して他方の部分層を堆積させることも可能である。
【0042】
また、導電性コーティングは、混合層として形成されていてもよい。例えば、導電性コーティングは、ドープ層であってもよい。別の一実施形態では、少なくとも1つの部分層が接着促進層またはバリア層として形成されていることが提供される。この場合、対応する部分層は、誘電層であってもよい。この場合、対応する部分層は、コーティングされた焼結体の導電性には寄与しない。適切なバリア層および不動態化層は、例えばAl2O3、TiO2、SiO2、または少なくとも2つの部分層の層系列を、例えばAl2O3およびTiO2の系列で、または少なくとも3つの部分層の層系列を、例えばTiO2、Al2O3、TiO2の系列で含む。
【0043】
焼結体は、ガラス、ガラスセラミック、プラスチックおよび/またはセラミックからなることができ、焼結体の体積に対して10~90%の範囲の開気孔率を有する。好ましくは、全気孔容積の少なくとも90%、特に少なくとも95%が開気孔として存在する。ここで、開気孔率および孔径分布は、DIN EN ISO 1183およびDIN 66133に準拠した測定方法によって求めることができる。
【0044】
本発明の一発展形態では、焼結体が、ガラスまたはガラスセラミック成分に加えて導電性材料を含むことが提供される。これにより、所定の抵抗の調整に必要なコーティングされた焼結体の導電率、導電層の層厚を低減することができる。本発展形態の一実施形態によれば、焼結体は、少なくとも1つの導電性材料と少なくとも1つの誘電材料との複合体として形成されている。本発展形態の一実施形態によれば、焼結体は、導電性コーティングなしですでに基本的な導電性を示し、この導電性は、導電性コーティングの施与によって所望の導電性まで高められる。有利には、本実施形態の焼結体は、導電性材料の割合が比較的高い。本発明の別の一実施形態によれば、導電性コーティングを有しない焼結体は、基本的な導電性を示さないか、または非常に弱い導電性しか示さない。
【0045】
本発展形態のさらなる一実施形態では、ガラスまたはガラスセラミックと少なくとも2つの異なる導電性材料との複合体である焼結体の使用が提供される。この場合、焼結体は、少なくとも1つの第1の導電性材料と少なくとも1つの第2の導電性材料とを有し、第1の導電性材料は、第2の導電性材料よりも低い比導電率を有する。好ましくは、第1の導電性材料の比電気抵抗は、0.03μΩ・mより大きく、特に0.1μΩ・mまでである。さらに、第2の導電性材料は有利には、0.1μΩ・m未満、特に好ましくは0.03μΩ・m超未満の比電気抵抗を有する。
【0046】
特に、少なくとも1つの第1の導電性材料は、焼結体の骨格を形成する。この骨格は、焼結温度でも機械的安定性を保つ安定した要素を形成するのに役立つ。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、焼結体は、少なくとも10%、有利には10%~90%、特に好ましくは30~80%、特に40~80%の範囲の開気孔率を有する。本発明による気孔率により、焼結体の高い吸着容量が保証される。したがって、一実施形態によれば、焼結体は、20℃の温度および数秒、例えば3~5秒の吸着時間で、その開気孔容積の少なくとも50%のプロピレングリコールを吸収することができる。同時に、焼結体は良好な機械的安定性を示す。特に、比較的低い気孔率を有する焼結体は、高い機械的安定性を示し、これは、用途によっては特に有利となり得る。別の一実施形態によれば、開気孔率は、20~50%である。
【0048】
本発明のさらなる一実施形態によれば、気孔は、1μm~1000μmの範囲の平均孔径を有する。好ましくは、焼結体の開気孔の平均孔径は、50~800μmの範囲、特に好ましくは100~600μmの範囲である。この場合、対応するサイズの気孔が有利であり、それというのも、こうした気孔は、特に気化体の液体リザーバとして使用される場合に、十分に大きな毛管力を発生させることで、気化させる液体の補給を保証するのに十分な小ささであると同時に、蒸気の迅速な放出を可能にするのに十分な大きさであるためである。一発展形態では、焼結体が、大小の気孔または空隙を有する多峰性、有利には二峰性の孔径分布を有することが提供される。
【0049】
焼結体は、有利には閉気孔をわずかな割合でしか含まない。その結果、焼結体は、デッドボリューム、すなわち、気化させる液体の吸収に寄与しない体積をわずかにしか有しない。好ましくは、焼結体が有する閉気孔の割合は、焼結体の体積全体の15%未満、またはさらには10%未満である。閉気孔の割合を求めるために、開気孔率を上述のように求めることができる。全気孔率は、物体の密度から算出される。そして、閉気孔の割合は、全気孔率と開気孔率との差により得られる。本発明の一実施形態によれば、焼結体が有する閉気孔の割合はさらには、体積全体の5%未満である。
【0050】
電子タバコの気化体として使用される場合、導電コーティングされた焼結体は好ましくは、1~109μΩ・m、好ましくは100~105μΩ・mの範囲の比抵抗を有する。ここで、上述した範囲の比抵抗は、例えば電子タバコに使用されるような比較的小型の気化体に特に有利である。示された導電率は、気化に十分な発熱を保証するのに十分な高さである。同時に、過熱、ひいては液体成分の分解を招き得る高すぎる加熱電力は回避される。
【0051】
本発明による焼結体は、電子タバコの気化体としても、医療用吸入器の気化体としても使用可能である。ここで、これら2つの用途では、気化体に対する要求が異なる。このことは特に、気化体に必要な加熱電力に関して当てはまる。導電性コーティングの層厚と、それによって得られたコーティングされた焼結体の導電性とによって、気化体の電気抵抗および加熱電力を調整することができる。このことは有利であり、なぜならば、最適な加熱電力は、焼結体の寸法やそれぞれ使用される電圧源によって異なるためである。例えば、電子タバコに使用される気化体は、数cmの小さなサイズであり、通常、1つ以上の電圧源により1V~12V、好ましくは1~5Vの電圧で作動される。これらの電圧源は、標準的な電池または標準的なアキュムレータであってよい。一実施形態によれば、気化体は、3~5Vの範囲の作動電圧で作動される。ここで、0.2~5Ωの範囲の電気抵抗および最大80Wの加熱電力が特に有利であることが判明した。これとは対照的に、例えば医療用吸入器は、110V、220V/230V、またはさらには380Vの電圧でも作動可能である。ここでは、3000Ωまでの電気抵抗および1000Wまでの電力が有利である。気化体ユニットの実施形態、またはその用途によっては、他の作動電圧、例えば12V超~110V未満、他の抵抗、例えば5Ω超、および他の電力範囲、例えば80W超が適する場合もある。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、気化体は、機械電気的接触、電気伝導性あるいは導電性コネクタによる電気的接触、または材料接続による電気伝導性接続を有する。有利には、電気的接触は、はんだ接続によって行われる。特に、接触は、焼結体の外被面で行われる。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、焼結体は、ガラスを含む。この場合、アルカリ含有量が比較的低いガラスが特に有利であることが判明した。ここで、低アルカリ含有量、特に低ナトリウム含有量は、いくつかの観点から有利である。一方では、対応するガラスが比較的高い変態温度Tgを有するため、導電性コーティングの施与後、このガラスを比較的高温で焼成することができる。特に酸化物をベースとする導電性コーティングの場合、高い焼成温度は、導電性コーティングの密度および焼結体の導電率に有利な影響を及ぼす。好ましくは、ガラスは、300℃~900℃、好ましくは500℃~800℃の範囲の変態温度Tgを有する。
【0054】
以下に、
図1~
図17および各実施形態例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図2】焼結体の外被面に電気的接触部を有する焼結体の概略図である。
【
図3】加熱要素としての本発明によりコーティングされた焼結体を備えた気化体の概略図である。
【
図4】本発明によりコーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図5】
図4に示す概略的実施形態の拡大断面図である。
【
図6】単層コーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図7】3つの部分層から構成されるコーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図8】部分層と追加のバリア層とから構成される導電性コーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図9】部分層と追加の接着促進層とから構成される導電性コーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図10】2つの部分層から構成される導電性コーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図11】ディッピング法によりコーティングされた焼結体のSEM像である。
【
図16】さらなる実施形態例の上面のSEM像である。
【0056】
図1に、多孔質焼結体2を液体リザーバとして備えた従来の気化体の一例を示す。多孔質焼結体2の毛管力により、気化させる液体1が多孔質焼結体2に吸収され、さらに焼結体2の全方向に輸送される。ここで、毛管力は、矢印4で表される。焼結体2の上部には、焼結体2の対応する部分2aが熱輻射によって加熱されるように、加熱コイル3が配置される。したがって、加熱コイル3は、焼結体2の外被面に非常に接近させ、可能な限り外被面に接触させないことが望ましい。しかし実際には、加熱線と外被面との直接の接触は、しばしば避けられない。
【0057】
加熱領域2aでは、液体1の気化が行われる。これは矢印5で示されている。ここで、気化速度は、温度および周囲圧力に依存する。温度が高く、圧力が低いほど、加熱領域2aでは液体の気化が迅速に行われる。
【0058】
液体1の気化は、焼結体の加熱領域2aの外被面で局所的にしか起こらないため、1~2秒以内の迅速な気化を達成するには、この局所領域の加熱を比較的高い加熱電力で行う必要がある。そのため、200℃を上回る高温を印加しなければならない。しかし、特に局所的に狭く限定された領域における高い加熱電力は、局所的な過熱を招き、したがって気化させる液体1および液体リザーバあるいは芯の材料の分解を招くおそれがある。
【0059】
さらに、加熱電力が高いと、気化が速すぎるということも生じ、その結果、毛管力によって気化のための液体1を十分に迅速に提供することができなくなる。これも同様に、加熱領域2aにおける焼結体の外被面の過熱を招く。したがって、ユニット、例えば電圧、電力および/または温度の設定、制御または調節ユニット(ここでは図示せず)を設置することができるが、これは電池の耐用年数を犠牲にしており、また気化の最大量に制限を与える。
【0060】
図1に示され、先行技術から知られている気化体の欠点は、このように、局所加熱方式とそれに伴う効果的でない熱輸送、複雑で高価な制御ユニット、ならびに気化させる液体の過熱および分解のリスクである。
【0061】
図2は、先行技術から知られている気化体ユニットを示し、このユニットでは、加熱要素30が焼結体20に直接配置されている。特に、加熱要素30は、焼結体20に固定的に接続されている。このような接続は、特に、加熱要素30をシート抵抗器として形成することによって達成することができる。この目的のために、導体の形態で構造化された導電性コーティングが、シート抵抗器の様式で焼結体20に施与される。加熱要素30として焼結体20に直接施与されたコーティングは、特に、良好な熱接触を実現するために有利であり、これにより迅速な加熱が可能となる。しかし、
図2に示した気化体ユニットも局所的に限られた気化面しか有しないため、この場合にも表面の過熱のリスクがある。
【0062】
図3は、本発明による焼結体6を備えた気化体の構造を概略的に示している。
図1および
図2の多孔質焼結体2と同様に、この焼結体も、気化させる液体1に浸っている。毛管力(矢印4で表す)によって、気化させる液体が焼結体6の体積全体に輸送される。焼結体6は、電気伝導性コーティングを有しており、その際、開気孔により形成される表面に導電性コーティングが施されている。したがって、電圧を印加すると、焼結体6は、体積全体で大きな表面積で加熱される。したがって、
図2に示す気化体とは異なり、液体1は、焼結体の外被面のみならず、すなわち焼結体6の局所的に限定された部分のみならず、焼結体6の体積全体で形成される。したがって、焼結体6の外被面あるいは加熱面または要素への別個の毛管輸送は必要ではない。さらに、局所的な過熱のリスクがない。気化は、局所的に限定された加熱領域における加熱コイルによる場合に比べて、体積内ではるかに効率的に進行するため、気化は、はるかに低い温度および低い加熱電力で生じ得る。必要な電力が少なくなると、アキュムレータの1回の充電あたりの使用時間が長くなるか、あるいはより小型のアキュムレータまたは電池を使用できる点で有利である。
【0063】
図4は、一実施形態例による開気孔を有するコーティングされた焼結体6の構造を、概略的な断面によって示す。コーティングされた焼結体6は、開気孔12a,12bを有する焼結された多孔質ガラスマトリックス11を有する。開気孔12bの一部は、その孔表面で焼結体の外被面を形成しており、一方で、気孔12aの別の部分は、焼結体の内部を形成している。焼結体の気孔はすべて、導電性コーティング9を有する。ここで、導電性コーティング9は好ましくは、表2に示す金属または化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0064】
【0065】
表2に挙げられた材料は、その比電気抵抗が0.016~60μΩ・mの範囲であるため、導電性コーティング9の材料として使用するのに特に適している。ここで、一実施形態によれば、導電性コーティングは、表2に挙げられた材料のうちの1つのみを含む。代替的な一実施形態では、導電性コーティング9が、表2による少なくとも2つの材料の混合物または合金を有し、層系列としても構成されることが提供される。好ましくは、導電性コーティング9は、比電気抵抗が0.016~60μΩ・mの範囲である導電性材料の含有量が少なくとも80重量%、またはさらには少なくとも95重量%である。一実施形態では、導電性コーティング9は、比抵抗が0.016~60μΩ・mの範囲である材料からなる。窒化チタンまたはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)から構成される導電性コーティング9が、比抵抗の調整に関して特に有利であることが判明した。
【0066】
ここで、導電性コーティング9の層厚に応じて、試験体の比電気抵抗を1~109μΩ・m、好ましくは100~105μΩ・mに調整することができる。
【0067】
電気伝導性コーティング9は、特にALD法によって堆積させることができる。以下では、4つの実施形態例を参照して、コーティング9の製造プロセスについてより詳細に説明する。
【0068】
実施形態例1:
原子層堆積(ALD)法によって、アルミニウム酸化亜鉛(AZO)の内面の均一なコーティングを有する本発明による生成物を製造するために、以下の手順に従う:
気孔率65体積%、平均孔径75μm、D=3mm、L=4mmの寸法の円筒状のガラス製の多孔質基材を、ALD装置のプロセスチャンバに装入する。真空下(<1mbar)に温度250℃で、まずそれぞれのプロセスガスを典型的なプロセスパラメータで導入し、60秒の反応時間の後に排出して未反応のプロセスガスを除去する。まず、ZnOの複数の層を堆積させるが、そのために交互に、まず前駆体であるジエチル亜鉛(DEZ)を導入し、排出後に、次いで後続の反応のプロセスガスとしてH2Oを導入し、パージステップ(60秒)によって1サイクルを終える。この後、トリメチルアルミニウム(TMA)を用いてもう1サイクル行い、次いでH2Oを導入してパージステップを行う。このシーケンスを、所望の層厚が得られるまで繰り返す。この場合、このサイクルを800回繰り返した。コーティング終了後、加熱を止め、プロセスチャンバを換気して試料を取り出す。
【0069】
その後、試験体の前面全体に銀の接触層を設けた(半径=1.5mm)。試験体の長さ(4mm)に沿ってオーム計で抵抗を測定すると、抵抗は7Ωであり、これは約1770μΩ・mの比抵抗に相当する。試験体の各箇所での集束イオンビーム(FIB)および走査型電子顕微鏡(SEM)による堆積層厚の分析では、平均層厚は100nmである。
【0070】
実施形態例2:
原子層堆積(ALD)法によって、窒化チタン(TiN)製の導電層と酸化アルミニウム(Al2O3)製の保護層とからなる内面の均一なコーティングを有する本発明による生成物を製造するために、以下の手順に従う:
気孔率65体積%、平均孔径75μm、寸法2mm×2.5mm×3mmの角状のガラス製の多孔質基材を、ALD装置のプロセスチャンバに装入する。真空下(<1mbar)に温度430℃で、まずそれぞれのプロセスガスを典型的なプロセスパラメータで導入し、60秒の反応時間の後に排出して未反応のプロセスガスを除去する。
【0071】
ここで、窒化チタン層の堆積させる各サイクルにおいて、まず前駆体TiCl4を導入し、パージし、次にアンモニアを第2のプロセスガスとして導入した。このサイクルを1000回繰り返す。
【0072】
その後、Al2O3カバー層を堆積させる。このために、プロセス温度を350℃に下げ、前駆体であるトリメチルアルミニウム(TMA)および水を用いて100回のALDサイクルを行う。
【0073】
コーティングの総層厚を、集束イオンビーム(FIB)および走査型電子顕微鏡法(SEM)によって測定すると、160nmである。試験体の長さ(3mm)に沿ってオーム計で抵抗を測定すると、抵抗は3Ωであり、これは約5000μΩ・mの比抵抗に相当する。
【0074】
実施形態例3:
原子層堆積法(ALD)法によって、Al2O3製のバリア層と、窒化チタン(TiN)製の導電層と、二酸化チタン(TiO2)/酸化アルミニウム(Al2O3)および二酸化チタン(TiO2)の層列からなる保護層とからなる内面の均一なコーティングを有する多孔質焼結体を製造するために、以下の手順に従う:
気孔率65体積%、平均孔径75μm、寸法2mm×2.5mm×3mmの角状のガラス製の多孔質基材を、ALD装置のプロセスチャンバに装入する。この基材を、窒素雰囲気中で350℃に加熱する。
【0075】
その後、前駆体TMAの導入、パージステップ、水の導入およびパージステップという4つのプロセスステップを100回繰り返すことにより、接着促進層、接着層としてAl2O3層を堆積させる。
【0076】
TiN層を製造するために、プロセス温度を480℃まで上昇させる。まず、前駆体である四塩化チタン(TiCl4)。その後、30秒間のパージステップを行い、その際に窒素をプロセスチャンバに導入し、再び排出する。次いで、NH3をプロセスガスとして、後続の反応を生じさせる。30秒間の窒素パージ時間後に、TiNの単層を製造するALDサイクルの最後のステップが完了する。このサイクルを1300回繰り返す。
【0077】
次に、保護層として機能するTiO2、Al2O3およびTiO2の層列を製造する。このために、プロセス温度を350℃に下げる。次に、TiCl4および水を用いて50回のALDサイクルを行う。次に、トリメチルアルミニウム(TMA)および水を用いて50回のALDサイクルを行い、最後にTiCl4および水を用いて再び50回のALDサイクルを行う。
【0078】
コーティングされた焼結体を試験体の長さ(3mm)に沿ってオーム計で抵抗測定すると、抵抗は2Ωであり、これは約3330μΩ・mの比抵抗に相当する。試験体の各箇所での集束イオンビーム(FIB)および走査型電子顕微鏡(SEM)による堆積層厚の分析では、層厚は200nmである。
【0079】
実施形態例4:
本発明による抵抗1Ωの焼結体のさらなる例のために、窒化チタン(TiN)の導電層の均一なコーティングを、ガラス30%、鋼70%からなる気孔率60%の多孔質複合材料の内面に施与する。コーティングプロセスおよび層特性は、実施形態例2で説明したものと同じである。試験体の長さ(高さ)3mmに沿ってオーム計で測定すると、抵抗は1Ωであり、これは約1670μΩ・mの試験体の比抵抗に相当する。
【0080】
図5に、
図4に示す実施形態例の拡大断面図を示す。ここで、焼結されたガラスマトリックス11の気孔あるいは空隙12は、平均直径D
気孔を有し、導電性コーティング9が施されている。ここで、導電性コーティング9は、1nm~1500nmの範囲の層厚d
コーティングを有し、一方で平均孔径は、1~1000μmの範囲である。したがって、コーティング厚d
コーティングは、孔径D
気孔に対して非常に小さい。これにより、一方では、必要なコーティング材料がごくわずかであるため、それに応じてコーティングプロセスを安価にかつ/または比較的迅速に実施することができる。さらに、導電性コーティングの層厚d
コーティングが比較的小さいことにより、個々の気孔が導電性コーティングによって閉鎖されて気化体積に利用できなくなるおそれがなくなる。
【0081】
図6~
図9に、各実施形態例の概略断面図を示す。ここで、
図6は、単層の導電性コーティング9を有する実施形態例を示す。一実施形態例によれば、導電性コーティングは、導電性材料の均一な層からなる。
図6に示す実施形態例では、導電性コーティング9は、原子層堆積法によって堆積させた窒化チタン層である。ここで、窒化チタン層は、10~1500nmの範囲の層厚を有する。
【0082】
図7は、導電性コーティングが3つの部分層90,91,92からなり、焼結体11の表面に堆積されている、さらなる実施形態例を示す。
図7に示す実施形態例では、部分層90および92は同一の組成を有し、一方で、部分層90と92との間に堆積されたコーティング91は、異なる組成を有する。異なる導電性材料からなる異なる部分層を使用することにより、一方ではコーティングの導電性を精密に調整することができる。さらに、例えば、確かに導電性の点では有利であるが、それ以外の点ではそれぞれの用途にはあまり適さないと考えられる材料、例えば、使用条件に対して十分な耐酸化性を持たない材料を、内側の部分層91に使用することもできる。代替的または追加的に、コーティングされた焼結体は、導電性コーティング9に対して追加のコーティングを有することができる。
【0083】
図8は、導電性焼結体が導電性コーティング9に加えてバリア層13を有する、本発明の発展形態を示す。この場合、バリア層13は、誘電層であってよく、導電性コーティング9上に施与されている。このようにして、導電性コーティング9は、焼結体11と不動態化層13との間に配置されている。したがって、導電性コーティング9は、不動態化層13によって環境から遮断されている。したがって、導電性コーティング9が安定しない条件下でも、相応してコーティングされた焼結体を使用することができる。有利には、不動態化層は、Al
2O
3層またはTiO
2層である。混合層も可能である。
【0084】
図9に、焼結体11と導電性コーティング9との間に接着促進層14が配置されている実施形態が概略的に示されている。接着促進層は、例えばSnO
2層またはTiO
2層であってよい。
【0085】
図10は、導電性コーティングが2つの部分層93,94から構成されている、さらなる実施形態例を示す。部分層93は、電着銀層であり、部分層94は、窒化チタン層であり、ALD法によって銀層上に堆積されたものである。
【0086】
図11は、比較例としてディップコートによりコーティングされた焼結体のSEM像を示す。ここで、焼結体11は、導電層15でコーティングされた気孔12を有する。
図11から明らかなように、導電性コーティングは、焼結体の表面全体にわたって均一には堆積されていない。さらに、コーティング15は比較的大きな層厚を有しているため、一部の気孔は、導電性コーティングによって閉鎖されている。
【0087】
図12は、本発明によりコーティングされた焼結体の実施形態例のSEM像を示す。ここでは、導電性コーティング9が、焼結体11の表面に均一に分布している。
図12に示す実施形態例は、窒化チタン層でコーティングされたガラス製の多孔質焼結体である。窒化チタン層は、200nmの層厚を有し、ALD法によって焼結体上に施与されたものである。
図13~
図15は、
図12に示す実施形態例の拡大断面図である。導電性コーティングが、非常に高倍率でも均一な構造を有し、焼結体表面を完全に覆っていることが明らかである。
【0088】
図16は、導電性コーティング9が部分領域で除去されているため、対応する部分領域で焼結体11の表面が視認可能である、さらなる実施形態例のSEM像を示す。本実施形態例も、導電性コーティング9の均一な表面を示している。ここで、散発的なアーチファクト16は、基材表面の凹凸に起因するものである。
【0089】
図17に、さらなる実施形態例の断面のSEM像を示す。この断面では、導電性コーティング9の層厚の高い均一性が示されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、導電性多孔質焼結体に関する。より具体的には、本発明は、気化可能な物質の貯蔵および制御放出用の、液体リザーバあるいは液体バッファと加熱ユニットとを備えた気化体ユニットに関する。気化体ユニットは、ここで特に、電子タバコ、薬剤投与装置、室内加湿器および/または例えばフレグランス物質や昆虫忌避剤などの物質を室内空気に放出するための加熱式蒸発器において使用することができる。電子タバコ(以下、Eシガレットともいう)は、タバコの代替品としてますます使用されている。
【0002】
典型的には、電子タバコは、マウスピースと、気化体ユニットと、気化体ユニットに作動可能に接続された電源とを備える。気化体ユニットは、加熱要素に接続された液体リザーバを備える。ある種の薬剤、特に呼吸器系および/または口腔粘膜および/または鼻粘膜の治療用の薬剤は、有利には、ガス状または気化した形態で、例えばエアロゾルとして投与される。本発明による気化体は、このような薬剤の貯蔵および放出に、特にこのような薬剤の投与装置において使用することができる。熱加熱式蒸発器は、雰囲気にフレグランス物質を付与するためにますます使用されている。これは、特にバー、ホテルのロビーおよび/または車両の内装、例えば自動車の内装、特に乗用車の内装であってよい。この場合に使用される気化体ユニットでも、液体リザーバが加熱要素に接続されている。液体リザーバには液体が入っており、この液体は、通常は例えばプロピレングリコールやグリセリンなどのキャリア液体であり、この中に、フレグランス物質およびアロマ物質などの添加物および/またはニコチンおよび/または薬剤が溶解され、かつ/または全般的に含まれている。キャリア液体は、液体リザーバの内面に吸着プロセスによって結合される。必要に応じて、液体リザーバに液体を供給するために別個の液体受器が設けられている。総じて、液体リザーバに貯蔵された液体が加熱要素の加熱により気化し、液体リザーバの接液面から脱離し、これを使用者が吸入することができる。この場合、200℃を超える温度に達することがある。そのため、液体リザーバあるいは液体バッファは、高い吸収性および高い吸着効果が求められると同時に、高温で迅速に液体を放出あるいは輸送する必要がある。先行技術から、有機ポリマーから構成される多孔質液体リザーバを備えた電子タバコが知られている。したがって、ポリマー材料の温度安定性が低いため、加熱要素と液体リザーバとの間の最小距離を維持する必要性がある。これは、気化体ユニット、ひいては電子タバコのコンパクトな設計を妨げるものである。最小距離を維持する代わりに、気化させる液体を毛管現象によって加熱コイルに導く芯を使用することができる。この芯は、通常、ガラス繊維で構成されている。これは確かに温度安定性が高いが、個々のガラス繊維が破損し易い。また、液体リザーバ自体もガラス繊維から製造されている場合にも同様のことがいえる。したがって、使用者が緩んだまたは溶けた繊維の破片を吸い込むリスクがある。また、セルロース繊維、木綿または竹繊維で構成された芯を使用することもできる。これらは、確かにガラス繊維から構成される芯に比べて破損の危険性は低いが、温度安定性に劣る。そのため、液体リザーバが多孔質ガラスまたはセラミックからなる気化体ユニットも使用されている。これらの液体リザーバは温度安定性が高いため、気化体、ひいては電子タバコ全体をも、よりコンパクトな構造とすることができる。実際には、局所的な気化は、低圧と高温との組み合わせによって達成することができる。電子タバコの場合、低圧は、例えば消費時にタバコを吸う際の吸引力によって実現され、したがって、圧力は消費者によって調節される。液体リザーバにおける気化に必要な温度は、加熱ユニットによって生成される。この場合、迅速な気化を保証するために、通常は200℃超の温度が達成される。加熱電力は、通常、電池またはアキュムレータで作動する電熱コイルによって提供される。必要な加熱電力は、この場合、気化させる体積および加熱の効率に依存する。過度に高い温度による液体の分解を避けるため、加熱コイルから液体への熱輸送を、非接触の輻射によって行うことが望ましい。このため、加熱コイルを気化面にできるだけ近づけるが、触れないようにすることが好ましい。一方で、コイルが表面に触れると、液体はしばしば過熱され、分解される。
【0003】
しかし、非接触の輻射による熱輸送の場合にも、表面の過熱は起こり得る。過熱は通常、加熱コイルに対向する気化体の表面で局所的に発生する。このことは、運転中に大量の蒸気が必要とされ、気化体表面への液体輸送が十分に迅速でない場合に生じる。したがって、加熱要素からのエネルギー供給が気化に消費されず、表面が乾燥し、気化温度をはるかに超える温度にまで局所的に加熱されることがあり、かつ/または液体リザーバの温度安定性を超えてしまう。したがって、正確な温度調整および/または温度制御が不可欠である。しかし、この場合の欠点は、これにより得られる電子タバコの構造が複雑となる点にあり、これは、特に高い製造コストの形で現れる。さらに、場合によっては、温度制御によって、蒸気発生量、ひいては最大限可能な気化強度が低下する。欧州特許出願公開第2764783号明細書には、焼結材料から構成される多孔質液体リザーバを備えた気化体を備えた電子タバコが記載されている。加熱要素は、加熱コイルまたは電気伝導性コーティングとして形成されていてよく、その際、コーティングは、液体リザーバの外被面の一部にのみ堆積されている。したがって、この場合も気化が局所的に制限される。
【0004】
米国特許出願公開第2011/0226236号明細書には、液体リザーバと加熱要素とが材料結合によって互いに接続された吸入器が記載されている。液体リザーバおよび加熱要素は、この場合、平坦な複合材料を形成している。液体リザーバは、例えば開気孔焼結体から構成され、芯として機能し、気化させる液体を加熱要素に導く。加熱要素は、この場合、液体リザーバの表面のうちの1つに、例えばコーティングの形で施与されている。したがって、この場合にも気化は表面で局所的に行われるため、同様に過熱の危険性がある。
【0005】
この問題を回避するために、気化体の外被面とも呼ばれる外面だけでなく内面でも気化が行われる気化体ユニットが先行技術から知られている。蒸気は、表面で局所的に発生するだけでなく、気化体の体積全体で発生する。したがって、気化体内の蒸気圧はほぼ一定であり、気化体の表面への液体の毛管輸送は依然として保証されている。したがって、毛管輸送によって気化速度が最小化されることはもはやない。対応する気化体には、電気伝導性でかつ多孔質の材料が必要となる。電圧が印加されると、気化体の体積全体が加熱され、体積のいたるところで気化が起こる。対応する気化体は、米国特許出願公開第2014/0238424号明細書および米国特許出願公開第2014/0238423号明細書に記載されている。ここでは、液体リザーバと加熱要素とが、例えば金属または金属メッシュから構成される多孔質体の形態で1つの部材において組み合わされている。しかし、この場合には、記載された多孔質体において、電気抵抗に対する孔径の比を容易に調整できないことが欠点である。また、導電性コーティングを施与した後、その後の焼結によりコーティングの劣化が生じることがある。
【0006】
しかし、前述の先行技術に記載された材料は、調整可能な高い気孔率と良好な導電率との双方を有する複合体を焼結プロセスにより製造するのには適さないか、または限られた範囲でしか適さない。総じて、セラミックは、その気孔率が低くかつ表面が粗いために、連続的にコーティングすることも困難である。
【0007】
したがって、独国特許出願公開第102017123000号明細書には、その表面全体に導電性コーティングを有するガラスまたはガラスセラミックから構成される焼結体を備えた気化体が記載されている。したがって、外面にのみ対応するコーティングを有する焼結体の場合とは対照的に、気化は外面だけでなく焼結体の内部でも行われる。対応する気化体を製造するために、まずガラスまたはガラスセラミックから構成される多孔質焼結体が製造され、その後のステップで、これに例えばITOコーティングの形態の比較的厚い導電性コーティングが施される。ここで、コーティングは、溶液または分散液からの吸着プロセス、例えばディッピング法によって施される。しかし、例えばITOのような導電性材料は材料の需要が高いため、製造プロセスが高コストになるという欠点がある。さらに、その後に厚いコーティングが施与されることにより、焼結体の特性が不利に変化する場合がある。特に、焼結体の小さな気孔がコーティングによって閉じられ、その結果、焼結体の活性表面積が減少するおそれがある。
【0008】
発明の課題
したがって、本発明の課題は、電子タバコおよび/または薬剤投与装置および/またはフレグランス物質の熱加熱式蒸発器における気化体としての使用に特に適しており、上述のような欠点を有しない焼結体を提供することである。したがって、本発明は特に、気化体の良好な加熱性、ならびに電気抵抗および気孔率の正確な調整可能性を提供しようとするものである。本発明のさらなる課題は、対応する導電性焼結体の製造方法を提供することである。
【0009】
発明の簡単な説明
本発明の課題は、すでに独立請求項の主題により解決される。本発明の有利な構成および発展形態は、従属請求項の主題である。
【0010】
本発明は、導電性コーティングを有するコーティングされた焼結体に関する。焼結体は、多孔質であり、焼結体の体積に対して10~90%の範囲、特に50~80%の範囲の開気孔率を有する。焼結体の材料として、ガラス、ガラスセラミック、プラスチックおよび/またはセラミックが使用される。このような焼結体およびその製造は、独国特許出願公開第102017123000号明細書に記載されており、その内容全体が本明細書に援用される。一実施形態によれば、焼結体は、金属をさらに含む。焼結体の表面は、開気孔あるいは空隙によって形成された表面を含む。
【0011】
導電性コーティングは、焼結体上に堆積されており、加熱装置の構成要素である。ここで、開気孔あるいは開空隙の表面も、導電性コーティングに接続されている。焼結体の体積内の開気孔の表面をも含む焼結体の表面は、内面と呼ばれる。焼結体の外被面とは、外側から少なくとも視線が届き、したがって視認可能である外面を表す。ここで、例えば穴や溝などの構造物の表面も外被面と呼ばれる。したがって、例えば円筒形の焼結体の場合、「内面」という用語には、焼結体の内部の気孔によって形成される焼結体の表面も包含される。したがって、内面は、総じて焼結体の外面よりも大きい。
【0012】
一実施形態によれば、導電性コーティングは、焼結体の表面に摩擦接続および材料接続されている。一発展形態によれば、焼結体は、導電性コーティングに加えて少なくとも1つのさらなるコーティングを有する。この場合、この追加の層は、導電性コーティング上に配置されていてもよいし、焼結体と導電性コーティングとの間に配置されていてもよい。
【0013】
一実施形態によれば、コーティングされた焼結体は、導電性コーティングに加えて少なくとも2つの層を有する。これらは、導電性コーティング上および/または焼結体と導電性コーティングとの間に配置されていてよい。一実施形態によれば、この追加の層は、接着促進層である。一実施形態によれば、焼結体は接着促進層を有し、この接着促進層は、好ましくは焼結体と導電性コーティングとの間に配置され、有利には酸化チタン、SiO2および/または酸化スズを含む。ここで、この追加の層は、接着促進層であってもよい。接着促進層は特に、焼結体の熱膨張係数と導電性コーティングの熱膨張係数との間の熱膨張係数を有することができる。したがって、例えばコーティングされた焼結体が加熱されるような温度変動時においても、コーティングされた焼結体における機械的応力を最小限に抑えることができ、その結果、コーティングの密着性を向上させることができる。代替的または追加的に、接着促進層は導電性であってもよい。
【0014】
代替的または追加的に、焼結体にバリア層が設けられていてもよい。バリア層は、焼結体と導電性コーティングとの間だけでなく、導電性コーティングの上にも配置されていてよい(すなわち、導電性コーティングが、焼結体とバリア層との間にある)。バリア層も導電性であってもよい。一実施形態によれば、バリア層は、焼結体の表面と導電性コーティングとの間に配置されている。この場合、バリア層は接着促進特性を有することができ、したがって同時に接着促進層としても作用し得る。同様に、接着促進層は、バリア層の特性を有することができる。
【0015】
バリア層については、酸化チタンまたは酸化アルミニウムを含む層が特に有利であることが判明した。バリア層は、カバー層または不動態化層として形成されていてもよく、コーティングされた焼結体を、例えば酸化から保護することができる。さらに、バリア層は、導電性コーティングの粒子が剥離して蒸気に達するのを防止することができる。好ましくは、接着促進層および/またはバリア層は、ALD(原子層堆積)法によって施与される。
【0016】
多孔質焼結体の外被面の気孔または空隙だけでなく、焼結体の内部の気孔または空隙にも導電性コーティングが施されている。特に、孔径が3μmを超える焼結体の少なくともすべての気孔に導電性コーティングが施されている。一方で、直径または狭窄部が3μm未満の気孔または空隙は、部分的にしかコーティングされていない場合もある。これは、このような空隙への到達のしにくさによるものである。例えば、ALD(原子層堆積)法によるコーティングの場合、コーティング過程でコーティング前駆体の浸透が異なったり不均一になったりするのは、対応する非常に小さな空隙への到達のしにくさが原因となり得る。
【0017】
焼結体の気孔の内面にも、導電性コーティングが施されている。その結果、本発明によりコーティングされた焼結体に電圧が印加されると、電流が焼結体の体積全体に流れ、したがって焼結体はその体積全体で加熱される。このようにして、導電性コーティングは、焼結体の表面に堆積されており、焼結体の表面に接続されており、その際、導電性コーティングは、焼結体の内部に位置する気孔を覆っているため、焼結体と少なくとも部分的または一部の領域に電気的接触がなされ、電流が印加されると、この電流が、少なくとも部分的に焼結体の内部を流れ、焼結体の内部を加熱する。
【0018】
したがって、焼結体の通電体積全体が加熱され、それに応じて、気化させる液体が、焼結体の導電コーティングされた内面全体で気化される。蒸気圧は、焼結体内のどこでも等しい高さであり、蒸気は、焼結体の外被面を形成する焼結体の外面で局所的に発生するだけでなく、焼結体の内部でも発生する。導電性コーティングは、焼結体の表面に施与されており、その孔表面の少なくとも一部を形成する。
【0019】
局所加熱用の装備、例えば加熱コイルまたは電気伝導性コーティングを焼結体の外被面にのみ備えた気化体とは異なり、焼結体の表面への毛管輸送は不要である。これにより、毛管作用が少なすぎる場合の気化体の空焚きが阻止され、ひいては局所的な過熱も阻止される。これは、気化体ユニットの耐用年数に有利な影響を及ぼす。
【0020】
一実施形態によれば、焼結体は、0.1m2/gを超える内部表面積を有する。これにより、気化体内で使用される際に、加熱された液体の蒸発に大きな表面積が提供される。好ましくは、内部表面積は、1m2/g未満、またはさらには0.7m2/g未満である。内部表面積の制限は、気化プロセス中にクロマトグラフィーの影響を避けることができるため有利である。一実施形態によれば、焼結体は、0.1~0.5m2/gの範囲、好ましくは0.2~0.4m2/gの範囲の内部表面積を有する。
【0021】
導電性コーティングは、均一な層厚を有する。したがって、導電性コーティングの層厚の局所的なばらつきは、最大で平均層厚の50%である。ここで、非常に小さな孔径または直径3μmの狭窄部を有する領域では、本発明から逸脱することなく、コーティングの層厚の上述の均一性からの局所的なばらつきが生じ得る。よって、最大で平均層厚の50%という上述の導電性コーティングの層厚のばらつきは、3μm未満の気孔もしくは空隙または局所的なアーチファクトもしくは欠陥を有する領域をコーティング表面から除いた領域にわたって満たされる。
【0022】
均一な層厚により、体積全体で一定またはほぼ一定の電気抵抗が得られる。気化体の加熱電力は、コーティングされた焼結体の電気抵抗に依存するため、焼結体は、焼結体の体積全体にわたって均一な加熱電力を有する。それによって、不均一な気化や、気化させる液体の分解を招くおそれのある局所的な温度極大を回避することができる。好ましい一実施形態によれば、層厚のばらつきは、最大で40%、最大で30%、最大で20%、またはさらには最大で5%である。
【0023】
層厚のばらつきを求めるために、コーティングされた焼結体の試料について、イオンミリング(集束イオンビーム、FIB)と走査型電子顕微鏡法(SEM)との組み合わせによって、内面の複数箇所、少なくとも3箇所で層厚が求められる。層厚が求められる焼結体の個々の箇所は、互いに少なくとも10μm、有利には少なくとも20μm離れている。特に、層厚を求めるための測定点は、このように試験体上に分布している。個々の測定点で層厚を求めるために、まずFIBによって局所的に1箇所に穴が開けられ、この穴は、施与された層を通って試験体(基材)内に延びる。
【0024】
FIBの作動原理はSEMと同様であるが、電子の代わりにイオン(例えばGaイオン)が使用される。したがって、イオンはイオン光学系によって一点に集束され、測定領域内の表面上に線状に導かれる。ここで、2~50kVの範囲の加速電圧が印加され、1pA~1μAの範囲のビーム電流が実現される。強度およびエネルギーが高いほど顕著になる材料除去により、試料の表面近傍(数マイクロメートル)に存在するコーティングがベース材料まで狙いどおりに除去され、それにより、その後のSEMによる層厚測定に用いられる断面が得られる。ここで、測定領域は、コーティングの、場合により発生する明らかな欠陥やアーチファクトが測定領域外にあるように選択される。
【0025】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、導電性コーティングは、原子層堆積(ALD)法により施与された層である。この場合、原子層堆積法により、特に層厚に関して均一な層を得ることができる。さらに、原子層堆積法では、堆積プロセスを良好に制御することができる。例えば特に、所望の層厚を正確に調整することができる。したがって、導電性コーティングの層厚とコーティングされた焼結体の電気抵抗との間の相関関係により、焼結体の電気抵抗および加熱電力を狙いどおりに調整することもできる。さらに、原子層堆積法では、非常に薄い層の堆積も可能である。したがって、本発明のさらなる態様は、電気伝導コーティングされた焼結体を製造するための原子層堆積法またはALD法の使用である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、導電性コーティングは、1~1500nmの範囲の層厚を有する。特に、導電性コーティングは、1300nm未満、好ましくは1000nm未満、またはさらには700nm未満の層厚を有する。このように、本実施形態による導電性コーティングの層厚は、例えばディッピング法により堆積される導電性コーティングよりも著しく小さい。比較的薄い導電性コーティングを使用することにより、導電性コーティングによる焼結体の気孔の閉鎖や閉塞を避けることができる。このことは、すべてのまたはほぼすべての開気孔が気化体積として利用可能であるため、有利である。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、導電性コーティングは、金属M、金属酸化物、金属炭化物および/または金属窒化物を含む。好ましくは、0.016~100μΩ・mの範囲、特に好ましくは0.05μΩ・m~10μΩ・mの範囲、非常に特に好ましくは0.1μΩ・m~10μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、金属酸化物、金属炭化物または金属窒化物が使用される。一実施形態では、使用される金属、金属酸化物、金属炭化物または金属窒化物が、0.1μΩ・m~5μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有することが提供される。この場合、このようにしてコーティングされた焼結体の特に有利な電気抵抗は、実用可能な層厚で達成することができるため、対応する比電気抵抗や導電率を有する材料は、導電性コーティングの成分として特に適している。使用されるコーティング材料の導電率は十分に高いため、導電性材料のすでに比較的小さな層厚で焼結体の導電率を調整するのに十分である。したがって、コーティング材料を節約することができ、これはプロセスコストに関して有利である。
【0028】
ここで、ALD法によって堆積された金属、金属酸化物、金属炭化物または金属窒化物コーティングは、プロセスに起因して、文献に記載された上記の電気抵抗よりも大きい電気抵抗を有することができる。この場合、ALD法によって堆積されたコーティングの電気抵抗は、本発明から逸脱することなく、文献から知られている対応する化合物の電気抵抗の100倍であることができる。
【0029】
さらに、比較的薄いコーティングによって、個々の小さな気孔の閉塞や閉鎖を避けることができる。同時に、特定の導電率に基づき、電気伝導性あるいは導電性材料の必要な層厚は十分に大きく、焼結体の導電率を狙いどおりに調整することができる。
【0030】
一実施形態によれば、導電性焼結体は、1~109μΩ・m、好ましくは100~100000μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する。
【0031】
銀、金、アルミニウム、イリジウム、タングステン、亜鉛、白金、パラジウム、チタン、窒化チタン、炭化チタン、ビスマス、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ケイ素、モリブデン、ルテニウム、酸化ルテニウム、炭素および/またはそれらの混合物(これらは層系列としても考えられる)もしくは合金(同様に層系列としても考えられる)が、導電性コーティングの有利な成分であることが判明した。代替的または追加的に、導電性コーティングは、ニッケルを含むことができる。別の一実施形態では、金属炭化物および/または金属窒化物、特に金属である銀、金、アルミニウム、イリジウム、タングステン、亜鉛、白金、パラジウム、チタン、ビスマス、モリブデンおよび/またはルテニウムの窒化物および/または炭化物の使用が提供される。
【0032】
有利には、導電性コーティングの層厚は、1~1500nmの範囲である。1000nm未満、特に600nm未満の層厚が特に有利であることが判明した。導電性コーティングのそれぞれの層厚は、焼結体の達成すべき導電率および使用される導電性コーティングの成分の比電気抵抗に依存する。表1に、一実施形態にしたがって、導電性コーティングの層厚を、使用される材料の比電気抵抗に対して示す。
【0033】
【0034】
群Aには、比電気抵抗が0.016~0.06μΩ・mの範囲にある材料が分類される。ここで、層厚は、有利には1~20nmの範囲、またはさらには1~10nmの範囲である。特に、群Aには、銀、金、銅、アルミニウム、イリジウムおよびタングステンといった材料、すなわち特にこのクラスの金属の材料が包含される。一実施形態例によれば、焼結体は、1~10nmの範囲の層厚の銀コーティングを有する。群Bに分類される材料は、0.06~10μΩ・mの比電気抵抗を有する。群Bには、例えば、亜鉛、白金、酸化インジウムスズ、パラジウム、チタンおよび窒化チタンが包含される。有利には、群Bの材料で構成されるコーティングは、10~1000nmの範囲の層厚を有する。群Cには、比電気抵抗が10~60μΩ・mの範囲の材料が分類される。群Cには、例えば、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ドープケイ素、炭素および炭化チタンが包含される。有利にはここで、層厚は、200~1500nmの範囲である。
【0035】
群A~Cが、典型的な値を有する典型的な材料を含み、これが特に、例えばITOやTiNといった化合物である材料の場合には、別の群にも割り当てられるまたは割り当てることができる変形形態が存在し得ることに留意すべきである。
【0036】
表1に挙げられた層厚は、誘電焼結体、例えばガラスまたはガラスセラミック製の焼結体を使用する場合に特に有利であることが判明した。焼結体の構造およびその材料に応じて、コーティングされた焼結体の所望の導電率を調整するために必要な層厚が、表1に挙げられた層厚と異なる場合がある。例えば、焼結体が、ガラスまたはガラスセラミックと、例えば粒子または粉末として添加される少なくとも1つのさらなる金属との組み合わせの複合材料から構成されている場合、コーティングされた焼結体の特定の所望の導電性を達成するには、導電性コーティングの(表1から逸脱した)より小さい層厚で十分である場合がある。
【0037】
一実施形態によれば、導電層は、群A~Cの材料の組み合わせを含むことも、それからなることもできる。この場合、要求される導電率を得るために、材料の合金化、1つ以上の材料のドーピングまたは層系列、およびそれらの組み合わせを意図的に使用することができる。これは、例えば導電層の厚さの調整や薄い層の機械的安定性の向上に有利となり得る。さらに、導電性コーティングの組成により、その熱機械特性を調整することができ、これは、コーティングされた焼結体の高温用途において特に有利である。例えば、導電性コーティングの熱膨張係数を焼結体に合わせることができる。したがって、機械的応力が回避され、これにより、特に厚いコーティングの場合には機械的安定性が向上する。それにより、コーティングされた焼結体の剥離傾向も低減できる。さらに、群A~Cの材料の組み合わせは、コーティングされた焼結体の製造に関して、例えばプロセス時間およびそれに伴うコストに関して有利となり得る。
【0038】
一実施形態によれば、導電性コーティングは、さらなる材料を含むことができる。有利には、これらの層における上記材料の含有量は、合計で少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも85重量%、またはさらには少なくとも90重量%である。別の一実施形態では、導電性コーティングが上述の材料からなり、コーティングが、最大で5重量%、有利には最大で1重量%の含有量の異物を含み得ることが提供される。
【0039】
特に、窒化チタン、酸化インジウムスズ(ITO)およびアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)は、それらの比導電性に加えてさらに、原子層堆積法によって焼結体の表面に堆積させることができるという利点を提供する。さらに、特に白金、チタン、窒化チタン、銀および金は、毒物学的な観点から懸念がなく、このことは、コーティングされた焼結体を電子タバコに使用する場合に特に有利である。
【0040】
特に有利な一実施形態によれば、電気伝導性コーティングは、窒化チタンを含む。したがって、コーティングされた焼結体の特に有利な比電気抵抗、特に1~109μΩ・m、好ましくは100~105μΩ・mの範囲の比電気抵抗は特に、10nm~1000nmの範囲の層厚を有する窒化チタン層または窒化チタン含有層で焼結体をコーティングすることによって達成することができる。有利には、層厚は、15nm~700nm、特に好ましくは20nm~500nmである。さらに、窒化チタンは原子層堆積法によって良好に堆積させることができるため、コーティング材料として窒化チタンを使用することは有利である。さらに、窒化チタンは健康上の懸念がなく、例えば医療分野で使用されている。有利な一実施形態によれば、導電性コーティングは、窒化チタンからなる。有利には、窒化チタン層は、多結晶質または非晶質である。
【0041】
本発明の一発展形態では、導電性コーティングが少なくとも2つの部分層から構成されていることが提供される。これらの部分層は、その組成に関して異なっていてもよい。本発展形態の一実施形態では、導電性コーティングが少なくとも2つの導電性部分層を有し、2つの部分層がその組成に関して異なることが提供される。したがって、2つの部分層は、その導電率が異なり得る。異なる導電率を有する材料の使用により、焼結体の導電率を特に正確に調整する可能性が提供される。有利には、2つまたはすべての部分層がALD法により施与される。本発明を逸脱することなく、部分層のうち一方をALD法で堆積させ、別の堆積プロセス、例えば電着法および/またはディッピング法を使用して他方の部分層を堆積させることも可能である。
【0042】
また、導電性コーティングは、混合層として形成されていてもよい。例えば、導電性コーティングは、ドープ層であってもよい。別の一実施形態では、少なくとも1つの部分層が接着促進層またはバリア層として形成されていることが提供される。この場合、対応する部分層は、誘電層であってもよい。この場合、対応する部分層は、コーティングされた焼結体の導電性には寄与しない。適切なバリア層および不動態化層は、例えばAl2O3、TiO2、SiO2、または少なくとも2つの部分層の層系列を、例えばAl2O3およびTiO2の系列で、または少なくとも3つの部分層の層系列を、例えばTiO2、Al2O3、TiO2の系列で含む。
【0043】
焼結体は、ガラス、ガラスセラミック、プラスチックおよび/またはセラミックからなることができ、焼結体の体積に対して10~90%の範囲の開気孔率を有する。好ましくは、全気孔容積の少なくとも90%、特に少なくとも95%が開気孔として存在する。ここで、開気孔率および孔径分布は、DIN EN ISO 1183およびDIN 66133に準拠した測定方法によって求めることができる。
【0044】
本発明の一発展形態では、焼結体が、ガラスまたはガラスセラミック成分に加えて導電性材料を含むことが提供される。これにより、所定の抵抗の調整に必要なコーティングされた焼結体の導電率または導電層の層厚を低減することができる。本発展形態の一実施形態によれば、焼結体は、少なくとも1つの導電性材料と少なくとも1つの誘電材料との複合体として形成されている。本発展形態の一実施形態によれば、焼結体は、導電性コーティングなしですでに基本的な導電性を示し、この導電性は、導電性コーティングの施与によって所望の導電性まで高められる。有利には、本実施形態の焼結体は、導電性材料の割合が比較的高い。本発明の別の一実施形態によれば、導電性コーティングを有しない焼結体は、基本的な導電性を示さないか、または非常に弱い導電性しか示さない。
【0045】
本発展形態のさらなる一実施形態では、ガラスまたはガラスセラミックと少なくとも2つの異なる導電性材料との複合体である焼結体の使用が提供される。この場合、焼結体は、少なくとも1つの第1の導電性材料と少なくとも1つの第2の導電性材料とを有し、第1の導電性材料は、第2の導電性材料よりも低い比導電率を有する。好ましくは、第1の導電性材料の比電気抵抗は、0.03μΩ・mより大きく、特に0.1μΩ・mまでである。さらに、第2の導電性材料は有利には、0.1μΩ・m未満、特に好ましくは0.03μΩ・m未満の比電気抵抗を有する。
【0046】
特に、少なくとも1つの第1の導電性材料は、焼結体の骨格を形成する。この骨格は、焼結温度でも機械的安定性を保つ安定した要素を形成するのに役立つ。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、焼結体は、少なくとも10%、有利には10%~90%、特に好ましくは30~80%、特に40~80%の範囲の開気孔率を有する。本発明による気孔率により、焼結体の高い吸着容量が保証される。したがって、一実施形態によれば、焼結体は、20℃の温度および数秒、例えば3~5秒の吸着時間で、その開気孔容積の少なくとも50%のプロピレングリコールを吸収することができる。同時に、焼結体は良好な機械的安定性を示す。特に、比較的低い気孔率を有する焼結体は、高い機械的安定性を示し、これは、用途によっては特に有利となり得る。別の一実施形態によれば、開気孔率は、20~50%である。
【0048】
本発明のさらなる一実施形態によれば、気孔は、1μm~1000μmの範囲の平均孔径を有する。好ましくは、焼結体の開気孔の平均孔径は、50~800μmの範囲、特に好ましくは100~600μmの範囲である。この場合、対応するサイズの気孔が有利であり、それというのも、こうした気孔は、特に気化体の液体リザーバとして使用される場合に、十分に大きな毛管力を発生させることで、気化させる液体の補給を保証するのに十分な小ささであると同時に、蒸気の迅速な放出を可能にするのに十分な大きさであるためである。一発展形態では、焼結体が、大小の気孔または空隙を有する多峰性、有利には二峰性の孔径分布を有することが提供される。
【0049】
焼結体は、有利には閉気孔をわずかな割合でしか含まない。その結果、焼結体は、デッドボリューム、すなわち、気化させる液体の吸収に寄与しない体積をわずかにしか有しない。好ましくは、焼結体が有する閉気孔の割合は、焼結体の体積全体の15%未満、またはさらには10%未満である。閉気孔の割合を求めるために、開気孔率を上述のように求めることができる。全気孔率は、物体の密度から算出される。そして、閉気孔の割合は、全気孔率と開気孔率との差により得られる。本発明の一実施形態によれば、焼結体が有する閉気孔の割合はさらには、体積全体の5%未満である。
【0050】
電子タバコの気化体として使用される場合、導電コーティングされた焼結体は好ましくは、1~109μΩ・m、好ましくは100~105μΩ・mの範囲の比抵抗を有する。ここで、上述した範囲の比抵抗は、例えば電子タバコに使用されるような比較的小型の気化体に特に有利である。示された導電率は、気化に十分な発熱を保証するのに十分な高さである。同時に、過熱、ひいては液体成分の分解を招き得る高すぎる加熱電力は回避される。
【0051】
本発明による焼結体は、電子タバコの気化体としても、医療用吸入器の気化体としても使用可能である。ここで、これら2つの用途では、気化体に対する要求が異なる。このことは特に、気化体に必要な加熱電力に関して当てはまる。導電性コーティングの層厚と、それによって得られたコーティングされた焼結体の導電性とによって、気化体の電気抵抗および加熱電力を調整することができる。このことは有利であり、なぜならば、最適な加熱電力は、焼結体の寸法やそれぞれ使用される電圧源によって異なるためである。例えば、電子タバコに使用される気化体は、数cmの小さなサイズであり、通常、1つ以上の電圧源により1V~12V、好ましくは1~5Vの電圧で作動される。これらの電圧源は、標準的な電池または標準的なアキュムレータであってよい。一実施形態によれば、気化体は、3~5Vの範囲の作動電圧で作動される。ここで、0.2~5Ωの範囲の電気抵抗および最大80Wの加熱電力が特に有利であることが判明した。これとは対照的に、例えば医療用吸入器は、110V、220V/230V、またはさらには380Vの電圧でも作動可能である。ここでは、3000Ωまでの電気抵抗および1000Wまでの電力が有利である。気化体ユニットの実施形態、またはその用途によっては、他の作動電圧、例えば12V超~110V未満、他の抵抗、例えば5Ω超、および他の電力範囲、例えば80W超が適する場合もある。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、気化体は、機械電気的接触、電気伝導性あるいは導電性コネクタによる電気的接触、または材料接続による電気伝導性接続を有する。有利には、電気的接触は、はんだ接続によって行われる。特に、接触は、焼結体の外被面で行われる。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、焼結体は、ガラスを含む。この場合、アルカリ含有量が比較的低いガラスが特に有利であることが判明した。ここで、低アルカリ含有量、特に低ナトリウム含有量は、いくつかの観点から有利である。一方では、対応するガラスが比較的高い変態温度Tgを有するため、導電性コーティングの施与後、このガラスを比較的高温で焼成することができる。特に酸化物をベースとする導電性コーティングの場合、高い焼成温度は、導電性コーティングの密度および焼結体の導電率に有利な影響を及ぼす。好ましくは、ガラスは、300℃~900℃、好ましくは500℃~800℃の範囲の変態温度Tgを有する。
【0054】
以下に、
図1~
図17および各実施形態例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図2】焼結体の外被面に電気的接触部を有する焼結体の概略図である。
【
図3】加熱要素としての本発明によりコーティングされた焼結体を備えた気化体の概略図である。
【
図4】本発明によりコーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図5】
図4に示す概略的実施形態の拡大断面図である。
【
図6】単層コーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図7】3つの部分層から構成されるコーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図8】部分層と追加のバリア層とから構成される導電性コーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図9】部分層と追加の接着促進層とから構成される導電性コーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図10】2つの部分層から構成される導電性コーティングを有する実施形態の導電コーティングされた焼結体の断面の概略図である。
【
図11】ディッピング法によりコーティングされた焼結体のSEM像である。
【
図16】さらなる実施形態例の上面のSEM像である。
【0056】
図1に、多孔質焼結体2を液体リザーバとして備えた従来の気化体の一例を示す。多孔質焼結体2の毛管力により、気化させる液体1が多孔質焼結体2に吸収され、さらに焼結体2の全方向に輸送される。ここで、毛管力は、矢印4で表される。焼結体2の上部には、焼結体2の対応する部分2aが熱輻射によって加熱されるように、加熱コイル3が配置される。したがって、加熱コイル3は、焼結体2の外被面に非常に接近させ、可能な限り外被面に接触させないことが望ましい。しかし実際には、加熱線と外被面との直接の接触は、しばしば避けられない。
【0057】
加熱領域2aでは、液体1の気化が行われる。これは矢印5で示されている。ここで、気化速度は、温度および周囲圧力に依存する。温度が高く、圧力が低いほど、加熱領域2aでは液体の気化が迅速に行われる。
【0058】
液体1の気化は、焼結体の加熱領域2aの外被面で局所的にしか起こらないため、1~2秒以内の迅速な気化を達成するには、この局所領域の加熱を比較的高い加熱電力で行う必要がある。そのため、200℃を上回る高温を印加しなければならない。しかし、特に局所的に狭く限定された領域における高い加熱電力は、局所的な過熱を招き、したがって気化させる液体1および液体リザーバあるいは芯の材料の分解を招くおそれがある。
【0059】
さらに、加熱電力が高いと、気化が速すぎるということも生じ、その結果、毛管力によって気化のための液体1を十分に迅速に提供することができなくなる。これも同様に、加熱領域2aにおける焼結体の外被面の過熱を招く。したがって、ユニット、例えば電圧、電力および/または温度の設定、制御または調節ユニット(ここでは図示せず)を設置することができるが、これは電池の耐用年数を犠牲にしており、また気化の最大量に制限を与える。
【0060】
図1に示され、先行技術から知られている気化体の欠点は、このように、局所加熱方式とそれに伴う効果的でない熱輸送、複雑で高価な制御ユニット、ならびに気化させる液体の過熱および分解のリスクである。
【0061】
図2は、先行技術から知られている気化体ユニットを示し、このユニットでは、加熱要素30が焼結体20に直接配置されている。特に、加熱要素30は、焼結体20に固定的に接続されている。このような接続は、特に、加熱要素30をシート抵抗器として形成することによって達成することができる。この目的のために、導体の形態で構造化された導電性コーティングが、シート抵抗器の様式で焼結体20に施与される。加熱要素30として焼結体20に直接施与されたコーティングは、特に、良好な熱接触を実現するために有利であり、これにより迅速な加熱が可能となる。しかし、
図2に示した気化体ユニットも局所的に限られた気化面しか有しないため、この場合にも表面の過熱のリスクがある。
【0062】
図3は、本発明による焼結体6を備えた気化体の構造を概略的に示している。
図1および
図2の多孔質焼結体2と同様に、この焼結体も、気化させる液体1に浸っている。毛管力(矢印4で表す)によって、気化させる液体が焼結体6の体積全体に輸送される。焼結体6は、電気伝導性コーティングを有しており、その際、開気孔により形成される表面に導電性コーティングが施されている。したがって、電圧を印加すると、焼結体6は、体積全体で大きな表面積で加熱される。したがって、
図2に示す気化体とは異なり、液体1は、焼結体の外被面のみならず、すなわち焼結体6の局所的に限定された部分のみならず、焼結体6の体積全体で
気化される。したがって、焼結体6の外被面あるいは加熱面または要素への別個の毛管輸送は必要ではない。さらに、局所的な過熱のリスクがない。気化は、局所的に限定された加熱領域における加熱コイルによる場合に比べて、体積内ではるかに効率的に進行するため、気化は、はるかに低い温度および低い加熱電力で生じ得る。必要な電力が少なくなると、アキュムレータの1回の充電あたりの使用時間が長くなるか、あるいはより小型のアキュムレータまたは電池を使用できる点で有利である。
【0063】
図4は、一実施形態例による開気孔を有するコーティングされた焼結体6の構造を、概略的な断面によって示す。コーティングされた焼結体6は、開気孔12a,12bを有する焼結された多孔質ガラスマトリックス11を有する。開気孔12bの一部は、その孔表面で焼結体の外被面を形成しており、一方で、気孔12aの別の部分は、焼結体の内部を形成している。焼結体の気孔はすべて、導電性コーティング9を有する。ここで、導電性コーティング9は好ましくは、表2に示す金属または化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0064】
【0065】
表2に挙げられた材料は、その比電気抵抗が0.016~60μΩ・mの範囲であるため、導電性コーティング9の材料として使用するのに特に適している。ここで、一実施形態によれば、導電性コーティングは、表2に挙げられた材料のうちの1つのみを含む。代替的な一実施形態では、導電性コーティング9が、表2による少なくとも2つの材料の混合物または合金を有し、層系列としても構成されることが提供される。好ましくは、導電性コーティング9は、比電気抵抗が0.016~60μΩ・mの範囲である導電性材料の含有量が少なくとも80重量%、またはさらには少なくとも95重量%である。一実施形態では、導電性コーティング9は、比抵抗が0.016~60μΩ・mの範囲である材料からなる。窒化チタンまたはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)から構成される導電性コーティング9が、比抵抗の調整に関して特に有利であることが判明した。
【0066】
ここで、導電性コーティング9の層厚に応じて、試験体の比電気抵抗を1~109μΩ・m、好ましくは100~105μΩ・mに調整することができる。
【0067】
電気伝導性コーティング9は、特にALD法によって堆積させることができる。以下では、4つの実施形態例を参照して、コーティング9の製造プロセスについてより詳細に説明する。
【0068】
実施形態例1:
原子層堆積(ALD)法によって、アルミニウム酸化亜鉛(AZO)の内面の均一なコーティングを有する本発明による生成物を製造するために、以下の手順に従う:
気孔率65体積%、平均孔径75μm、D=3mm、L=4mmの寸法の円筒状のガラス製の多孔質基材を、ALD装置のプロセスチャンバに装入する。真空下(<1mbar)に温度250℃で、まずそれぞれのプロセスガスを典型的なプロセスパラメータで導入し、60秒の反応時間の後に排出して未反応のプロセスガスを除去する。まず、ZnOの複数の層を堆積させるが、そのために交互に、まず前駆体であるジエチル亜鉛(DEZ)を導入し、排出後に、次いで後続の反応のプロセスガスとしてH2Oを導入し、パージステップ(60秒)によって1サイクルを終える。この後、トリメチルアルミニウム(TMA)を用いてもう1サイクル行い、次いでH2Oを導入してパージステップを行う。このシーケンスを、所望の層厚が得られるまで繰り返す。この場合、このサイクルを800回繰り返した。コーティング終了後、加熱を止め、プロセスチャンバを換気して試料を取り出す。
【0069】
その後、試験体の前面全体に銀の接触層を設けた(半径=1.5mm)。試験体の長さ(4mm)に沿ってオーム計で抵抗を測定すると、抵抗は7Ωであり、これは約1770μΩ・mの比抵抗に相当する。試験体の各箇所での集束イオンビーム(FIB)および走査型電子顕微鏡(SEM)による堆積層厚の分析では、平均層厚は100nmである。
【0070】
実施形態例2:
原子層堆積(ALD)法によって、窒化チタン(TiN)製の導電層と酸化アルミニウム(Al2O3)製の保護層とからなる内面の均一なコーティングを有する本発明による生成物を製造するために、以下の手順に従う:
気孔率65体積%、平均孔径75μm、寸法2mm×2.5mm×3mmの角状のガラス製の多孔質基材を、ALD装置のプロセスチャンバに装入する。真空下(<1mbar)に温度430℃で、まずそれぞれのプロセスガスを典型的なプロセスパラメータで導入し、60秒の反応時間の後に排出して未反応のプロセスガスを除去する。
【0071】
ここで、窒化チタン層の堆積させる各サイクルにおいて、まず前駆体TiCl4を導入し、パージし、次にアンモニアを第2のプロセスガスとして導入した。このサイクルを1000回繰り返す。
【0072】
その後、Al2O3カバー層を堆積させる。このために、プロセス温度を350℃に下げ、前駆体であるトリメチルアルミニウム(TMA)および水を用いて100回のALDサイクルを行う。
【0073】
コーティングの総層厚を、集束イオンビーム(FIB)および走査型電子顕微鏡法(SEM)によって測定すると、160nmである。試験体の長さ(3mm)に沿ってオーム計で抵抗を測定すると、抵抗は3Ωであり、これは約5000μΩ・mの比抵抗に相当する。
【0074】
実施形態例3:
原子層堆積法(ALD)法によって、Al2O3製のバリア層と、窒化チタン(TiN)製の導電層と、二酸化チタン(TiO2)/酸化アルミニウム(Al2O3)および二酸化チタン(TiO2)の層列からなる保護層とからなる内面の均一なコーティングを有する多孔質焼結体を製造するために、以下の手順に従う:
気孔率65体積%、平均孔径75μm、寸法2mm×2.5mm×3mmの角状のガラス製の多孔質基材を、ALD装置のプロセスチャンバに装入する。この基材を、窒素雰囲気中で350℃に加熱する。
【0075】
その後、前駆体TMAの導入、パージステップ、水の導入およびパージステップという4つのプロセスステップを100回繰り返すことにより、接着促進層または接着層としてAl2O3層を堆積させる。
【0076】
TiN層を製造するために、プロセス温度を480℃まで上昇させる。まず、前駆体である四塩化チタン(TiCl4)を導入する。その後、30秒間のパージステップを行い、その際に窒素をプロセスチャンバに導入し、再び排出する。次いで、NH3をプロセスガスとして導入して、後続の反応を生じさせる。30秒間の窒素パージ時間後に、TiNの単層を製造するALDサイクルの最後のステップが完了する。このサイクルを1300回繰り返す。
【0077】
次に、保護層として機能するTiO2、Al2O3およびTiO2の層列を製造する。このために、プロセス温度を350℃に下げる。次に、TiCl4および水を用いて50回のALDサイクルを行う。次に、トリメチルアルミニウム(TMA)および水を用いて50回のALDサイクルを行い、最後にTiCl4および水を用いて再び50回のALDサイクルを行う。
【0078】
コーティングされた焼結体を試験体の長さ(3mm)に沿ってオーム計で抵抗測定すると、抵抗は2Ωであり、これは約3330μΩ・mの比抵抗に相当する。試験体の各箇所での集束イオンビーム(FIB)および走査型電子顕微鏡(SEM)による堆積層厚の分析では、層厚は200nmである。
【0079】
実施形態例4:
本発明による抵抗1Ωの焼結体のさらなる例のために、窒化チタン(TiN)の導電層の均一なコーティングを、ガラス30%、鋼70%からなる気孔率60%の多孔質複合材料の内面に施与する。コーティングプロセスおよび層特性は、実施形態例2で説明したものと同じである。試験体の長さ(高さ)3mmに沿ってオーム計で測定すると、抵抗は1Ωであり、これは約1670μΩ・mの試験体の比抵抗に相当する。
【0080】
図5に、
図4に示す実施形態例の拡大断面図を示す。ここで、焼結されたガラスマトリックス11の気孔あるいは空隙12は、平均直径D
気孔を有し、導電性コーティング9が施されている。ここで、導電性コーティング9は、1nm~1500nmの範囲の層厚d
コーティングを有し、一方で平均孔径は、1~1000μmの範囲である。したがって、コーティング厚d
コーティングは、孔径D
気孔に対して非常に小さい。これにより、一方では、必要なコーティング材料がごくわずかであるため、それに応じてコーティングプロセスを安価にかつ/または比較的迅速に実施することができる。さらに、導電性コーティングの層厚d
コーティングが比較的小さいことにより、個々の気孔が導電性コーティングによって閉鎖されて気化体積に利用できなくなるおそれがなくなる。
【0081】
図6~
図9に、各実施形態例の概略断面図を示す。ここで、
図6は、単層の導電性コーティング9を有する実施形態例を示す。一実施形態例によれば、導電性コーティングは、導電性材料の均一な層からなる。
図6に示す実施形態例では、導電性コーティング9は、原子層堆積法によって堆積させた窒化チタン層である。ここで、窒化チタン層は、10~1500nmの範囲の層厚を有する。
【0082】
図7は、導電性コーティングが3つの部分層90,91,92からなり、焼結体11の表面に堆積されている、さらなる実施形態例を示す。
図7に示す実施形態例では、部分層90および92は同一の組成を有し、一方で、部分層90と92との間に堆積されたコーティング91は、異なる組成を有する。異なる導電性材料からなる異なる部分層を使用することにより、一方ではコーティングの導電性を精密に調整することができる。さらに、例えば、確かに導電性の点では有利であるが、それ以外の点ではそれぞれの用途にはあまり適さないと考えられる材料、例えば、使用条件に対して十分な耐酸化性を持たない材料を、内側の部分層91に使用することもできる。代替的または追加的に、コーティングされた焼結体は、導電性コーティング9に対して追加のコーティングを有することができる。
【0083】
図8は、導電性焼結体が導電性コーティング9に加えてバリア層13を有する、本発明の発展形態を示す。この場合、バリア層13は、誘電層であってよく、導電性コーティング9上に施与されている。このようにして、導電性コーティング9は、焼結体11と不動態化層13との間に配置されている。したがって、導電性コーティング9は、不動態化層13によって環境から遮断されている。したがって、導電性コーティング9が安定しない条件下でも、相応してコーティングされた焼結体を使用することができる。有利には、不動態化層は、Al
2O
3層またはTiO
2層である。混合層も可能である。
【0084】
図9に、焼結体11と導電性コーティング9との間に接着促進層14が配置されている実施形態が概略的に示されている。接着促進層は、例えばSnO
2層またはTiO
2層であってよい。
【0085】
図10は、導電性コーティングが2つの部分層93,94から構成されている、さらなる実施形態例を示す。部分層93は、電着銀層であり、部分層94は、窒化チタン層であり、ALD法によって銀層上に堆積されたものである。
【0086】
図11は、比較例としてディップコートによりコーティングされた焼結体のSEM像を示す。ここで、焼結体11は、導電層15でコーティングされた気孔12を有する。
図11から明らかなように、導電性コーティングは、焼結体の表面全体にわたって均一には堆積されていない。さらに、コーティング15は比較的大きな層厚を有しているため、一部の気孔は、導電性コーティングによって閉鎖されている。
【0087】
図12は、本発明によりコーティングされた焼結体の実施形態例のSEM像を示す。ここでは、導電性コーティング9が、焼結体11の表面に均一に分布している。
図12に示す実施形態例は、窒化チタン層でコーティングされたガラス製の多孔質焼結体である。窒化チタン層は、200nmの層厚を有し、ALD法によって焼結体上に施与されたものである。
図13~
図15は、
図12に示す実施形態例の拡大断面図である。導電性コーティングが、非常に高倍率でも均一な構造を有し、焼結体表面を完全に覆っていることが明らかである。
【0088】
図16は、導電性コーティング9が部分領域で除去されているため、対応する部分領域で焼結体11の表面が視認可能である、さらなる実施形態例のSEM像を示す。本実施形態例も、導電性コーティング9の均一な表面を示している。ここで、散発的なアーチファクト16は、基材表面の凹凸に起因するものである。
【0089】
図17に、さらなる実施形態例の断面のSEM像を示す。この断面では、導電性コーティング9の層厚の高い均一性が示されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体(11)と導電性コーティング(9)とを有する、コーティングされた焼結体であって、
前記焼結体(11)は、ガラスまたはガラスセラミックを含み、10~90%の範囲の開気孔率を有し、
前記導電性コーティング(9)は、開気孔(12)によって形成された前記焼結体(11)の表面と接続されており、
前記導電性コーティング(9)は、前記コーティングされた焼結体の加熱装置の構成要素であり、
前記導電性コーティング(9)は、少なくとも前記焼結体(11)の気孔の内面全体に堆積されており、
前記導電性コーティング(9)は、最大で50%の層厚のばらつきを示す層厚d
コーティングを有する、焼結体。
【請求項2】
前記導電性コーティング(9)の前記層厚の前記ばらつきが、最大で40%、好ましくは最大で30%、特に好ましくは最大で5%
である、請求項1記載のコーティングされた焼結体。
【請求項3】
前記導電性コーティング(9)の前記層厚d
コーティングが、10nm~1500nm、好ましくは15nm~1000nm、特に好ましくは20nm~500nmであり、前記電気伝導性コーティングが、好ましくは窒化チタンを含む、請求項1または2記載のコーティングされた焼結体。
【請求項4】
前記焼結体(11)が、ガラスと少なくとも1つの金属、ガラスとセラミック、ガラスセラミックとセラミックおよび/またはガラスセラミックと少なくとも1つの金属との複合体として形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項5】
前記導電性コーティング(9)が、金属、金属酸化物または金属窒化物、金属炭化物を含み、好ましくは、0.016~60μΩ・mの範囲、有利には0.2μΩ・m~10μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、金属酸化物、金属炭化物および/または金属窒化物を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項6】
前記電気伝導性コーティング(9)が、0.016~0.06μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、好ましくは銀、銅、アルミニウム、イリジウム、金、モリブデンおよび/またはタングステンを含み、前記導電性コーティング(9)が、1~20nmの範囲の層厚を有する、請求項5記載のコーティングされた焼結体。
【請求項7】
前記電気伝導性コーティング(9)が、>0.06~10μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、金属酸化物および/または金属窒化物、好ましくは、亜鉛、白金、パラジウム、チタン、ビスマス、酸化インジウムスズ、ルテニウム、酸化ルテニウムおよび/または窒化チタンを含み、前記導電性コーティングが、10~1000nmの範囲の層厚を有する、請求項5記載のコーティングされた焼結体。
【請求項8】
前記電気伝導性コーティング(9)が、>10~60μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する金属、金属酸化物、金属炭化物および/または金属窒化物、好ましくはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ドープケイ素および/または炭化チタンを含み、前記導電性コーティングが、200~1500nmの範囲の層厚を有する、請求項5記載のコーティングされた焼結体。
【請求項9】
前記導電性コーティング(9)が、銀、金、アルミニウム、イリジウム、タングステン、亜鉛、白金、パラジウム、チタン、窒化チタン、炭化チタン、ケイ素、ビスマス、炭化チタン、酸化インジウムスズ、AZO、モリブデン、ルテニウム、酸化ルテニウム、ニッケルおよび/またはそれらの混合物もしくは合金を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項10】
前記導電性コーティング(9)が、少なくとも2つの部分層(90,91,92)から構成されている、請求項9記載のコーティングされた焼結体。
【請求項11】
前記個々の部分層(90,91,92)が、その組成に関して異なる、請求項10記載のコーティングされた焼結体。
【請求項12】
前記焼結体(11)が、前記導電性コーティング(9)に加えて、前記電気伝導性コーティング(9)上および/または前記焼結体(11)と前記導電性コーティング(9)との間に配置されている少なくとも1つのさらなる層を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項13】
前記焼結体(11)が、さらなる層として接着促進層(14)および/またはバリア層(13)を含み、好ましくは、前記電気伝導性コーティング(9)が、前記接着促進層(14)上に配置されており、かつ/または前記導電性コーティング(9)が、焼結体(11)と前記バリア層(13)との間に配置されている、請求項12記載のコーティングされた焼結体。
【請求項14】
前記導電性コーティング(9)が、原子層堆積法(ALD)によって堆積されたものである、請求項1から13までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項15】
前記コーティングされた焼結体が、1~10
9μΩ・mの範囲、好ましくは100~10
5μΩ・mの範囲の比電気抵抗を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体。
【請求項16】
気化体における、好ましくは電子タバコの気化体ユニットにおける加熱要素としての、請求項1から15までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体の使用。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項記載の焼結体を備えた、気化体ユニット。
【請求項18】
気化体用のコーティングされた焼結体を製造するための、ALD法の使用。
【請求項19】
請求項1から15までのいずれか1項記載のコーティングされた焼結体を製造するための、ALD法の使用。
【国際調査報告】