(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】残留強度を示す透明ガラスセラミック製品およびそれが設けられた表示装置
(51)【国際特許分類】
C03C 17/34 20060101AFI20240315BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240315BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240315BHJP
B32B 17/00 20060101ALI20240315BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
C03C21/00 101
B32B7/022
B32B17/00
G09F9/00 302
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560860
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022022493
(87)【国際公開番号】W WO2022212464
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】アミン,ジェイミン
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェイソン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハート,シャンドン ディー
(72)【発明者】
【氏名】キム,チャン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,カール ウィリアム ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】コシク ウィリアムズ,カルロ アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】リン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ドン-ゴン
(72)【発明者】
【氏名】オ,ジョンホン
(72)【発明者】
【氏名】プライス,ジェイムズ ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,シャーリーン マリー
(72)【発明者】
【氏名】ウクラインツィク,リェルカ
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアン,アナンタナラヤナン
(72)【発明者】
【氏名】シュィ,ティンガァ
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
5G435
【Fターム(参考)】
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA05
4F100BA07
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5G435AA01
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5G435GG43
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5G435LL17
(57)【要約】
本明細書では、第1主面および第2主面が互いに対向しているとともに結晶化度が少なくとも40重量%であるガラスセラミック基板と、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでいる、透明な製品を開示している。該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って、80%より高い平均明所視透過率および10GPaより高い最大硬さを示す。該ガラスセラミック基板は、85GPaより高い弾性率と0.8MPa×√mより大きい破壊靱性を備えている。更に、光学薄膜構造体は、700MPa以上の残留圧縮応力と140GPa以上の弾性率を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、
外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを、
構成部材の一部に含んでいる製品であって、
該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い、製品。
【請求項2】
第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、
内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを、
構成部材の一部に含んでいる製品であって、
該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高く、
更に、該光学薄膜構造体は700MPa以上の残留圧縮応力と140GPa以上の弾性率を示す、製品。
【請求項3】
第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、
内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを、
構成部材の一部に含んでいる製品であって、
該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高く、
該光学薄膜構造体は700MPaないし1100MPaの残留圧縮応力と140GPaないし200GPaの弾性率を示し、
更に、該製品は、リング・オン・リング試験において光学薄膜構造体の該外表面に引張力を加えた状態で、700MPa以上の平均破壊応力を示す、製品。
【請求項4】
前記ガラスセラミック基板は、
結晶化度が少なくとも40重量%であり、
表面圧縮応力が200MPaないし400MPaであり、
tを単位ミリメートル(mm)の前記ガラスセラミック基板の厚さとして、圧縮深さ(DOC)が約0.08×tないし約0.25×tであり、
最大内部引張力(CT)が80MPaないし200MPaであり、また、
前記ガラスセラミック基板は厚さが約1.5mm以下である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の製品。
【請求項5】
前記ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも75重量%であり、二珪酸リチウム相と葉長石相とを含んでいる、請求項1から請求項4のいずれかに記載の製品。
【請求項6】
前記光学薄膜構造体は複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層を構成部材の一部に含んでおり、
前記光学薄膜構造体は引掻き傷耐性層と、外側構造体および内側構造体とを構成部材の一部に含んでおり、該引掻き傷耐性層は該外側構造体と該内側構造体の間に配置されており、該引掻き傷耐性層の厚さは約100nmないし約10,000nmである、請求項1から請求項5のいずれかに記載の製品。
【請求項7】
前記製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の前記外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って、10GPaより高い最大硬さを示し、
前記製品は80%より高い平均明所視透過率を示し
前記製品はD65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a
*2+b
*2)を示す、請求項1から請求項6のいずれかに記載の製品。
【請求項8】
前記製品は、リング・オン・リング試験において光学薄膜構造体の前記外表面に引張力を加えた状態で、800MPa以上の平均破壊応力を示し、また更に、前記光学薄膜構造体は140GPaないし180GPaの弾性率を示す、請求項1から請求項7のいずれかに記載の製品。
【請求項9】
前記ガラスセラミック基板は化学強化されており、表面圧縮応力が約200MPaないし約400MPaであり、前記ガラスセラミック基板は更に約80MPaから約200MPaの最大中心引張力(CT)値を示し、また更に、厚さが約0.6mm以下である、請求項1から請求項8のいずれかに記載の製品。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の前記製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置であって、前記製品は該表示装置の保護被覆として作用する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は、合衆国法典第35巻の第119条(米国特許法)に基づき、2021年4月1日出願の米国特許仮出願第63/169,376号および2021年11月24日出願の米国特許仮出願第63/282,720号の優先権の利益を主張するものである。これら出願の各々の全内容は、ここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
【技術分野】
【0002】
本件開示は、光学製品や表示装置を保護するための透明な製品に関するものであり、特に、ガラスセラミック基板とその上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部として有しており、光学性能上と機械性能上の多様な特性、例えば、高度の硬さ、明所視透過率、低い透過色、損傷耐性、高弾性率、高い破壊靱性、残留強度、または、それらの各種組合せなどのような特性を示す透明な製品に関連している。
【背景技術】
【0003】
各種のモバイル装置、スマートフォン、コンピュータ・タブレット、手で把持操作する装置、車両用表示装置、それら以外の各種の電子装置であって、表示装置、カメラ、光源、センサ、または、これらの各種組合せが設けられているものなどのような、各種の電子製品および電子システムの内部の非常に重要な装置やコンポーネントを保護する目的で、ガラス基板が設けられた各種の被覆製品が使用されることは多い。これらの被覆製品はまた、建築用製品、輸送用製品(例えば、自動車充当品、列車、航空機、船舶などで使用される製品)、家電製品、または、何であれ、或る程度の透明性、引掻き傷耐性、耐摩耗性、または、これらの各種組合せの性質を必要とする全製品に採用されていると推測される。
【0004】
被覆ガラス製品を採用している上記の各種用途では、機械耐久性や環境耐久性、破損耐性、損傷耐性、引掻き傷耐性、および、強固な光学性能などの各種特性を組み合わせることを要望することがよくある。例えば、被覆ガラス製品は、可視スペクトルにおいて高い光透過率、低い反射率、低い透過色、または、これらの各種組合せを示すことが要求される場合がある。用途によっては、被覆ガラス製品は表示装置、カメラ、センサ、光源、または、これらの各種組合せを被覆して保護する目的で必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラス基板を光学硬質被膜類と組み合わせて採用している従来の被覆ガラス製品は、上記の各用途においては首尾よく使用されている。それにもかかわらず、上記の各用途で採用されている装置類は、特に不慮の衝撃事象 (装置類の落下など) による損傷耐性が依然として限られていることがよくある。それ以外の、ポリマー基板、低弾性率で靱性の高いポリマー被膜類、または、これらの各種組合せを利用した各種の取組み手法が損傷耐性を向上させる目的にうまく適って採用されているが、これらの取組み手法は、デバイスレベルの引掻き傷耐性を低減してしまう傾向があり、光学性能を低下させる恐れがあり、またそうでなくても、表示出力使用量を増大させることで光学性能の損失を補う必要を生じることがあると思われる。上記以外の被覆ガラス製品は、ガラス基板と比較して硬さレベルと弾性率レベルが高くなることを考慮して、ガラスセラミック基板またはセラミック基板を採用してきた。しかし、これらの取組み手法の課題達成は限定的であり、というのも、ガラスセラミック基板もセラミック基板も、イオン交換法により強化されたガラス基板を採用している被覆ガラス製品と比較して光学特性が劣ると一般に考えられているせいである。
【0006】
ガラス基板やガラスセラミック基板と光学薄膜構造体とを採用している従来の被覆ガラス製品は、製品レベルの機械的性能が低下してしまう可能性がある。特に、これら各種の基板上に光学薄膜構造体を設けていることで、光学性能および或る機械的な各種特性(例えば、引掻き傷耐性)に関して利点が得られているが、但し、これらの基板と光学薄膜構造体との従来の各種組合わせ(例えば、高弾性率、高度の硬さ、または、その両方を兼備して、引掻き傷耐性を向上させるのに最適化されるようにした組合せ)の成果として得られた製品の強度レベルが劣るという結果となってしまった。とりわけ、基板上に光学薄膜構造体が存在すると製品の強度レベルが光学薄膜構造体の無い未被覆形態の基板の強度よりも低いレベルまで低下する点で不利となる恐れがあると思われる。
【0007】
従って、光学製品や光学装置、特に、高度の硬さ、明所視透過率、および、低い透過色に加えて損傷耐性、高弾性率、高い破壊靱性、または、それらの各種組合せなどを併せて示す透明な製品を保護するための改良された被覆ガラス製品が必要である。更に、上述の透明な各製品において、製品に光学薄膜構造体が設けられた後でも、製品の未被覆基板の強度レベルが維持されているもの、または、概ね(具体的には、用途に応じた閾値またはそれ以上に)残留しているものが必要である。このような必要やそれ以外の必要が本件開示により対処されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件開示の一態様によれば、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでいる透明製品がもたらされる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示し、また、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの範囲の圧入深さに亘って10GPaより高い最大硬さを示す。更に、該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。
【0009】
本件開示のもう1つ別の態様によれば、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでいる透明製品がもたらされる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角における透過色 √(a*2+b*2)は4未満であり、ヴィッカース圧子押込み試験を利用して1000g荷重で検査した場合の横方向亀裂は160マイクロメートル未満の平均最大直線寸法を示すか、または、25,000平方マイクロメートル(μm2)未満の横方向亀裂面積を示す。
【0010】
本件開示の更なる態様によれば、屈折率が約1.52以上あり、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでいる透明製品がもたらされる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。これに加えて、該光学薄膜構造体は、外側構造体と内側構造体を含んでおり、該引掻き傷耐性層はこの外側構造体と内側構造体の間に配置されている。更に、光学薄膜構造体の該内側構造体は、該ガラスセラミック基板と該引掻き傷耐性層の間の光学インピーダンスに概ね一致するよう構成されている。該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。
【0011】
本件開示の一態様によれば、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでいる透明製品がもたらされる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合の最大硬さは光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの範囲の圧入深さに亘って10GPaより高い。該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。更に、該光学薄膜構造体は700MPa以上の残留圧縮応力を示し、弾性率も140GPa以上である。
【0012】
本件開示のもう1つ別の態様によれば、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでいる透明製品がもたらされる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合の最大硬さは光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの範囲の圧入深さに亘って10GPaより高い。該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。更に、該光学薄膜構造体は700MPaないし1100MPaの残留圧縮応力を示し、弾性率も140GPaないし200GPaである。これに加えて、該製品は、リング・オン・リング試験において光学薄膜構造体の該外表面に張力を加えた状態で、700MPa以上の平均破壊応力を示す。
【0013】
本件開示の更なる一態様によれば、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでいる透明製品がもたらされる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも75重量%であり、二珪酸リチウム相を含み、平均結晶子寸法が100nm未満である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該光学薄膜構造体は全体の物理的厚みが約200nmないし約5000nmあり、引掻き傷耐性層は物理的厚みが約100nmないし約4000nmある。該光学薄膜構造体は約140GPaないし180GPaの弾性率を示す。更に、該製品は、光学薄膜構造体の該外表面に張力を加えるリング・オン・リング試験において、700MPa以上の平均破壊応力を示している。
【0014】
本件開示の上記以外の各種態様によれば、上記透明製品のうちの1つ以上を含んでいる表示装置をもたらすが、該製品は各々が保護被覆として作用する。
【0015】
本件開示のもう1つ別の態様によれば、透明な製品を製造する方法がもたらされるが、該方法は、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板を供与する工程と、内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体を該基板上に積層する工程とを含んでいる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合の最大硬さは光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの範囲の圧入深さに亘って10GPaより高い。該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。更に、光学薄膜構造体を積層する該工程は、該光学薄膜構造体が700MPa以上の残留圧縮応力と140GPa以上の弾性率を示すように実施される。
【0016】
上記以外の特徴および利点は、後段以降の詳細な説明に明示してゆくが、その説明から一部は当業者には容易に明らかになるだろうし、或いは、後段以降の詳細な説明と特許請求の範囲は元より、添付の図面を含む本件に記載されている各実施形態を実施することによっても認識されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
上記の概説と後段以降の詳細な説明はいずれも単なる例示であり、特許請求の範囲の本質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図しているものと解釈するべきである。添付の図面は更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成している。図面は1つ以上の実施形態を例示しており、明細書記載と併せて、多様な実施形態の原理および作用を説明するのに役立つ。
【
図1A】本件開示の一実施形態による、(例えば、表示装置用の)透明なガラスセラミック製品の縦断面図。
【
図1B】本件開示の一実施形態による、透明なガラスセラミック製品の縦断面図。
【
図1C】本件開示の一実施形態による、透明なガラスセラミック製品の縦断面図。
【
図1D】本件開示の一実施形態による、透明なガラスセラミック製品の縦断面図。
【
図2】ガラス基板および光学薄膜構造体が設けられた比較対象の透明製品と本件開示の各実施形態に従ったガラスセラミック基板および光学薄膜構造体が設けられた透明製品とに施したバーコヴィッチ硬さ試験から得られた測定結果の硬さに対する変位量のグラフ。
【
図3】ガラス基板および光学薄膜構造体が設けられた比較対象の透明製品と本件開示の一実施形態に従ったガラスセラミック基板および光学薄膜構造体が設けられた透明製品それぞれの逓増荷重式引掻き試験の後の外表面の、2種類の光学顕微鏡写真。
【
図4】ガラス基板および光学薄膜構造体が設けられた比較対象の透明製品と本件開示の一実施形態に従ったガラスセラミック基板および光学薄膜構造体が設けられた透明製品それぞれのヴィッカース圧子押込み試験の後の外表面の、2種類の光学顕微鏡写真。
【
図5A】本明細書に開示されている透明製品のいずれかを組み入れた具体例の電子装置の平面図。
【
図6A】本件開示の2種類の透明製品の光学薄膜構造体のバーコヴィッチ硬さ試験で測定した場合の、硬さ対変位量のグラフ。
【
図6B】本件開示の2種類の透明製品の光学薄膜構造体のバーコヴィッチ硬さ試験で測定した場合の、弾性率対変位量のグラフ。
【
図7】本件開示の多様な弾性率値を示している光学薄膜構造体が設けられた各種の透明製品の模範となるような、平均製品破壊応力対光学薄膜虚空蔵隊残留応力のグラフ。
【
図8】多様な光学薄膜構造体が設けられた本件開示の透明製品と比較対象の透明製品についてリング・オン・リング試験で測定した場合の、製品の平均破壊応力の箱ひげ図。
【
図9A】本件開示の3種の透明製品について0°ないし90°の各入射角で測定した場合の、片面の反射色のグラフ。
【
図9B】本件開示の3種の透明製品と比較対象の製品について法線入射角で測定した場合の、表裏両面の透過率対波長のグラフ。
【
図9C】本件開示の3種の透明製品について法線入射角で測定した場合の、表裏両面の反射率対波長のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
後段以降の詳細な説明においては、説明するためであって限定することは目的とせずに、本件開示の具体的な各実施形態を明示することで本件開示の多様な原理の余すところのない理解を提供している。但し、それら以外の、本明細書に開示されている特定の詳細から逸脱することのない各種実施形態でも本件開示を実施することができることを、本件開示の恩恵を既に得ている当業者には明らかとなるだろう。更に、本件開示の多様な原理の説明を曖昧にしないように、周知の各種装置、方法、および、材料の説明は省かれている場合もある。最後に、該当する場合は常に、同じ参照番号は同じ要素を指しているものとする。
【0019】
本明細書では各種の範囲を、或る1つの特定の「おおよその」値以上、それとは別の1つの特定の「おおよその」値以下、または、前者の「おおよその」値から後者の「おおよその」値までと表現している場合もある。このような範囲の表現がある場合、その或る1つの特定の丁度の値以上、それとは別の1つの特定の丁度の値以下、または、前者の丁度の値から後者の丁度の値までを、別の実施形態が含んでいるものとする。同様に、前置語「およそ・約」を使用して各値が概数であるとの表現がある場合、特定の丁度の値が別の実施形態を存在させることになるのが分かるだろう。更に、各範囲の端点は、それ以外の端点に関連していても、また、それ以外の端点とは無関係であっても、いずれの場合でも重要となることが分かるだろう。
【0020】
本明細書で使用されるような方向に関する用語、例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」、「最上」、「最低」は、各図面を指して描画されているとおりに相当するようにしたにすぎず、絶対的な配向を示唆することを意図してはいない。
【0021】
別途の明記がない限り、本明細書に明示したどの方法であれ、その各工程を特定の順序で実施するべきことを要件としていると解釈されることは決して意図していない。従って、或る方法の特許請求範囲がその方法の各工程が辿るべき順序を実際に記載していない場合、または、当該各工程が特定の順序に限定されるべきである旨を特許請求の範囲の各請求項や詳細な説明各部に別途特別に言及していない場合、どの1つの順序であれ推定することはいかなる観点からも全く意図されていない。このように、全ての、考えられ得るが明示的ではない解釈の根拠を留保しており、その具体例として、各工程の構成や操作フローに関する論理の諸問題、文法構成または句読点から生じる明快な意味、本明細書に記載されている実施形態の数や種類などが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される場合、単数形「或る・或る1種の・何らかの(a)」、「或る・或る1種の・何らかの(an)」、および、「その・該(the)」は複数の指示対象を含んでおり、但し、そうではないと文脈が明確に指示している場合はこの限りではない。このように、例えば、或る種の「構成部材」への言及は、そのような構成部材が2つ以上設けられている態様を含んでおり、但し、そうではないと文脈が明確に指示している場合はこの限りではない。
【0023】
本明細書で使用する場合、「配置する」なる用語は、当技術分野のあらゆる周知の方法または開発可能な方法を利用して表面上に材料を被膜し、堆積させ、成形し、または、その各種組合せを実施することを含んでいる。配置された材料は、本明細書で定義されているように、層を構成していてもよい。本明細書で使用する場合、「上に配置されている」という句は、材料を表面上で成形することで該材料が表面と直接接触状態にあるようにすることと、該材料が表面上に成形されて、該材料と該表面の間に1種類以上の介在材料が配備されているような各種の実施形態とを含んでいる。該介在材料は、本明細書で定義されているように、層を構成していてもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「低屈折率(RI)層」および「高屈折率(RI)層」という用語は、本件開示による透明製品の光学薄膜構造体の各層の屈折率(「RI」)の相対値を指している(すなわち、低屈折率層<高屈折率層)。このように、各低屈折率層の屈折率値は、各高屈折率層の屈折率値よりも小さい。更に、本明細書で使用される場合、「低屈折率層」と「低率層」とは同じ意味で置き換え可能である。同様に、「高屈折率層」と「高率層」とは同じ意味で置き換え可能である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「強化基板」という用語は、本件開示の透明製品において採用されている基板であって、例えば、該基板の表面でより大きなイオンをより小さなイオンにイオン交換すること等により既に化学的に強化されているものを指す。しかしながら、熱焼き戻しや、該基板の各部の相互間の熱膨張係数の不一致を利用することで圧縮応力領域と内部引張力領域を生成するなどといったような、当技術分野で周知の上記以外の各種の強化法を利用することで、強化基板を形成するようにしてもよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「バーコヴィッチ圧子硬さ試験」と「バーコヴィッチ硬さ試験」は互換的に、ダイヤモンドのバーコヴィッチ圧子を表面に押し込むことによって或る材料の硬さをその表面で測定する試験を指すのに使われる。バーコヴィッチ圧子硬さ試験は、単一の光学薄膜構造体の最も外側の面(例えば、露出面)または本件開示の透明製品の外側光学薄膜構造体にダイヤモンドのバーコヴィッチ圧子を押し込むことで、約50nmないし約1000nmの範囲の圧入深さ(または、外側光学薄膜構造体の厚さ全体または内側光学薄膜構造体の厚さ全体の、いずれか薄い方)まで窪みを形成し、この圧入深さ範囲全体またはこの圧入深さの一区分(例えば、約100nmないし約600nmの範囲の)に沿ったこの圧痕から最大硬さを測定するが、ウォーリン・シー・オリヴァーおよびジョージ・エム・ファー共著『荷重と変位量を検知する圧子押込み実験を利用して硬さと弾性率を判定する改良された手法』ジャーナル・オヴ・マテリアルズ・リサーチ 第7巻 第6号 1992年刊 1564頁-1583頁(Oliver,W.C.; Pharr,G.M. An Imprоved Technique for Determining Hardness and Elastic Modulus Using Load and Displacement Sensing Indentation Experiments. J.Mater.Res., Vol. 7, No. 6, 1992, 1564-1583)およびウォーリン・シー・オリヴァーおよびジョージ・エム・ファー共著『器具圧入による硬さと弾性率の測定―方法論に対する理解と微調整の進歩』ジャーナル・オヴ・マテリアルズ・リサーチ 第19巻 第1号 2004年刊 3頁-20頁(Oliver,W.C.; Pharr,G.M. Measurement of Hardness and Elastic Modulus by Instrument Indentation: Advances in Understanding and Refinements to Methodology. J.Mater.Res., Vol. 19, No. 1, 2004, 3-20)に記載された各種の方法を利用するのが一般的である。本明細書で使用されている場合、「硬さ」および「最大硬さ」は各々が互換的に、平均硬度ではなく、或る範囲の各圧入深さに沿って測定されるような最大硬さを指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ヴィッカース圧子押込み試験」は、ガラスセラミック基板を採用している本件開示の透明製品の損傷耐性と従来の透明製品の損傷耐性とを測定する目的で行われる。この試験は、ヴィッカース圧子を使用して100gと1000gの準静的荷重で実施される。この試験によれば、ヴィッカース圧子先端部を使って一連の圧子押込み試験が実行されるが、当該圧子は、正方形の底面に向かい合う面同士の角度が136°のピラミッドの形を呈している。圧子の押込みと取出しの後、この試験に従って光学顕微鏡検査を行うことで、圧痕が付いた表面の画像を生成するが、これらの画像には、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡検査(FIB‐SEM)により得られた断面画像が添付される。更に、これらの画像を評価して、観察された破壊域の寸法を測定して定量化することによって破壊を査定する。特に、ヴィッカース試験が原因である破壊区域の寸法は、100g荷重と1000g荷重の一方または両方において、破壊区域の平均最大直線寸法(例えば、単位はマイクロメートルすなわちμm)を測定し、破壊域の横方向亀裂面積 (例えば、単位は平方マイクロメートルすなわちμm2)を測定し、または、その両方を実施することで判定することができる。
【0028】
本明細書で使用している場合、「逓増荷重式引掻き試験」は、ガラスセラミック基板を採用している本件開示の透明製品の引掻き傷耐性と従来の透明製品の引掻き傷耐性を測定する目的で実施される。この試験は、頂角90°の円錐の先端部半径が3.6mmである円錐形ダイヤモンド製圧子先端部を利用して実施されるが、引掻き傷の長さは500μm、引掻き速度は50μm/毎秒、荷重は0ミリニュートン(mN)からピーク荷重である320mN、360mN、または、400mNまで逓増させた。この試験の実施後、引掻き経路の中心を起点に横方向亀裂長さを測定することにより破壊を査定する。この試験とわずかに異なる試験を行うようにしても構わないが、その場合、連続して行われる試験のピーク荷重の上限を定め、横方向の亀裂が最初に観察された荷重を記録する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「柘榴石引掻き試験」は、ガラスセラミック基板を採用している本件開示の透明製品と従来の透明製品の引掻き傷耐性を測定する目的で実施される。この試験は、150グリット粗さの柘榴石(ガーネット)紙やすりに約0.6cm×0.6cmの接触面積に亘って4kg荷重を加えて1回擦って実施される。この引掻き事象の後、6mm直径の開口が設けられたコニカ‐ミノルタ製CM700Dを使った正反射光除去(SCE)方式測定を利用して、引掻き傷のある領域の拡散反射光を測定することにより引掻きのレベルを定量化する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「リング・オン・リング試験」すなわち「ROR試験」という用語は、本件開示の透明製品を比較対象の製品と一緒に、それぞれの破壊強さまたは破壊応力(単位はMPa)を判定する目的で採用される試験のことを指す。どのリング・オン・リング試験も、高張力鋼製の直径がそれぞれに12.7mmと25.4mmある荷重リングと支持リングとを使用した試験構成で行われた。これに加えて、荷重リングの荷重支持面と支持リングの荷重支持面とに機械加工を施して半径約0.0625インチ(0.15875センチメートル)にすることで、両リングと透明製品の間の接触領域における応力集中を最小限に抑えるよう図っている。更に、荷重リングは、透明製品の最も外側の主面上(例えば、その光学薄膜構造体の外表面上)に設置されており、支持リングは、透明製品の最も内側の主面上(例えば、その基板の第2主面上)に設置されている。荷重リングには、荷重リングの連結を行えるようにする機構であって、尚且つ、試験試料の適切な位置合わせと均一な荷重付与を保証する機構が組み込まれている。加えて、どのリング・オン・リング試験も、荷重リングを透明製品に対して1.2mm/毎分の荷重付与速度で当てることにより行われた。リング・オン・リング試験の文脈中の「平均」なる用語は、5つのサンプルについて行われた破壊応力測定の数学的平均に基づいている。更に、本件開示の特定の例で別段の記載がない限り、本明細書に記載される全ての破壊応力値および測定値は、製品の外表面に張力を加えるリング・オン・リング試験から得られた測定値を指しており、これは、2018年7月5日公開の「残留圧縮応力を有する光学被膜が設けられた被膜製品(Coated Articles with Optical Coatings Having Residual Compressive Stress)」との発明名称の国際公開第2018/125676号に記載されているとおりであるが、斯かる文献はここに引例に挙げることによりその全体が本明細書の一部を構成しているものとする。どのリング・オン・リング試験における破壊も、通常、張力がかかっている荷重リングの反対位置の試料側で発生するが、破壊部位における破壊荷重から破壊応力への適切な変換を行う目的で、有限要素モデル化を利用する。また、上記以外の破壊強さ試験を採用することで、当業者なら分かる試験条件差、試験片の形状差、および、これら以外の技術的留意事項の違いに基づいて、本件開示の明細書中で報告されているリング・オン・リング値および結果とも適切に関係付けながら、本件開示の透明製品の破壊強さを判定することができることも分かっている。それにも関わらず、特に断りのない限り、本件開示の透明製品ばかりか比較対象製品比較物品についても報告されている全ての平均破壊強さ値は、リング・オン・リング試験から測定されたものとして供与されている。
【0031】
本明細書で使用される場合、「透過率」なる用語は、材料(例えば、製品、基板、または、光学薄膜、もしくは、それらの一部)を透過した所与の波長範囲内の入射光パワーの百分率と定義される。「反射率」なる語も同様に、材料(例えば、製品、基板、または、光学薄膜、もしくは、その一部)から反射された所与の波長範囲内の入射光パワーの百分率と定義される。透過率と反射率は、特定の線幅を使用して計測される。本明細書で使用する場合、「平均透過率」とは、規定の波長領域に亘って材料を透過した入射光パワーの平均量を指す。本明細書で使用する場合、「平均反射率」とは、材料によって反射された入射光パワーの平均量を指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「明所視反射率」とは、ヒトの目の感度に従って反射率または透過率をそれぞれ波長スペクトルと比較して検証することによるヒトの目の反応を再現したものである。明所視反射率は、国際照明委員会(CIE)色空間規約などのような周知の規約に従って、反射光の輝度または三刺激値Yと定義されてもよい。本明細書で使用するような、380nmないし720nmの波長範囲についての「平均明所視反射率」とは、次の等式において、目のスペクトル応答に関連して、分光反射率R(λ)に光源スペクトルI(λ)とCIEのカラーマッチング関数
【0033】
とを乗算したものと定義される。
【0034】
【0035】
これに加えて、「平均反射率」は、本件開示の技術分野の当業者には分かる各測定原理に従って、可視スペクトルに亘って、または、それ以外の波長範囲に亘って、例えば、840nmないし950nmなどの赤外スペクトルで割り出してもよい。別段の断りのない限り、本件開示で報告または別途参照される全ての反射率値は、本件開示の透明製品の基板の両主表面と光学薄膜構造体(単数または複数)とを通して試験することに関与しており、例えば「表裏両面」の平均明所視反射率である。「片面」または「第1面」の反射率を特定する場合は、光吸収体との光学的接着により製品の裏表面からの反射率が除外されるため、第1面のみの反射率を測定させている。
【0036】
電子装置における透明製品の(例えば、保護被覆としての)有用性は、当該製品の反射率の総量に関連づけるとよい。明所視反射率は、可視光を採用している各種の表示装置にとって特に重要である。表示装置に付随しているレンズ、表示部、または、その両方を覆う被覆用透明製品の反射率を下げることで、「ゴースト像」を生じる可能性のある表示装置の多重に跳ね返る反射を減らすことができる。このように、反射率は、表示装置でも特にその表示部やそれ以外の光学コンポーネント(例えば、カメラのレンズ)の全てに関連している画質と重要な関係がある。また、低反射率表示部により、表示可読性を良好にすることができ、眼精疲労を軽減することができ、更に、ユーザーの応答時間を短縮することができる(例えば、自動車の表示装置においては、表示可読性が運転者の安全と相関づけられる)。低反射率表示部により、表示エネルギー消費を削減するとともに装置の電池寿命を延ばすこともできるようになるが、これは、標準表示部に比べて低反射率表示部では表示の輝度を下げることができるうえに、明るい周囲環境でもなお、目標レベルの表示可読性を維持できるせいである。
【0037】
本明細書で使用する場合、「明所視透過率」とは、次の等式において、目のスペクトル応答に関連して、分光透過率T(λ)に光源スペクトルI(λ)とCIEのカラーマッチング関数
【0038】
とを乗算したものと定義される。
【0039】
【0040】
これに加えて、「平均透過率」または「平均明所視透過率」は、本件開示の技術分野の当業者には分かる各種測定原理に従って、可視スペクトルまたはそれ以外の波長範囲に亘って、例えば、840nmないし950nmなどのような赤外スペクトルで割り出してもよい。別段の断りのない限り、本件開示および特許請求の範囲において報告または別途参照される全ての透過率値は、透明製品の基板の両主面と光学薄膜構造体(例えば、
図1Aから
図1Dに例示されているとともに後段にも記載されているようなガラスセラミック基板110、主面112、主面114、および、光学薄膜構造体120)とにより検査を行うことに関与しており、例えば「表裏両面」の平均明所視反射率である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「透過色」および「反射色」は、D65光源下でのCIE規格のL
*a
* b
*色空間の表色系における色に関して、本件開示の透明製品に透過または反射される色を指す。より具体的には、「透過色」および「反射色」は√(a
*2+b
*2)で得られるが、それは、これらの色座標が、透明製品の基板の両主面(例えば、
図1Aから
図1Dに例示されているとともに後段にも記載されているようなガラスセラミック基板110、主面112、主面114、および、光学薄膜構造体120)によるD65光源の、例えば0°ないし10°などの入射角範囲に亘る透過率または反射率により計測されるせいである。
【0042】
一般に、本件開示は、強化ガラスセラミック基板などのようなガラスセラミック基板を覆う光学薄膜構造体を採用した透明製品を目的としている。更に、これらの透明製品は、透過率と色とを制御した高度の硬さの光学被膜が設けられた、高靭性かつ高弾性率で光学的に透明なガラスセラミック基板を構成部材の一部に含んでいるとよい。基板と光学薄膜構造体のこのように組合わせに照らして、当該透明製品は、高度の硬さ、引掻き傷耐性、および、破壊耐性を示すと同時に、透明性、高透過率、低濁度、および、低色温度を示すと推察される。加えて、本件開示の透明製品はその各々の未被覆ガラスセラミック基板の破壊強さレベルと同じか、または、それに概ね近い破壊強さレベルを示す点で有利であると推察される。
【0043】
これらの透明製品の具体例のなかには、ガラスセラミック基板の靱性(K1C)を1.15MPa×√mの範囲にすることができるものもあり、また、基板の弾性率を約103GPaにすることができるものもある。ガラスセラミックは、二珪酸リチウム、葉長石(ペタライト)、および、残留ガラス相の混合微細構造を有しているナノ構造材料を含んでいてもよい。基板の靱性値と弾性率値が共に高いことにより、光学構造体と基板とを組み合わせたシステムの曲げ強度と損傷耐性とを高くすることができるようになるが、このことは、高弾性率の被膜類や光学薄膜構造体で被覆されたガラス基板は周知のように曲げ強度が低下することに鑑みて重要である。加えて、本件開示の光学薄膜構造体は、約16GPa以上の硬さを有していることで、ガラスセラミック基板の引掻き傷耐性と損傷耐性を向上させることができる。光学薄膜構造体はその一部に、SiO2層、SiOxNy層、Si3N4層、または、それらの各種組合せから構成されている多層光学干渉薄膜を含んでもいてもよい。硬質被膜処理された製品(例えば、ガラスセラミック基板であって、その上に光学薄膜構造体が配置されたものなど)は総合的平均明所視光透過率が80%よりも高く、製品透過色√(a*2+b*2)は2未満または1未満となることもある。これに加えて、本件開示の各実施形態は、これらの透明製品を組み込んだ電子装置も目的としている。
【0044】
本件開示の透明製品は、各種の電子装置に内蔵された、または、別途電子装置の一部を成している各種の表示装置、カメラレンズ、センサ、光源、または、これらコンポーネントの各種組合せを保護し、被覆し、または、その両方の目的と併せて、上記以外の各種コンポーネント(例えば、ボタン、スピーカー、マイクなど)を保護する目的で採用されている。保護機能を備えたこれらの透明製品はガラスセラミック基板上に配置された光学薄膜構造体を採用し、当該製品が高度の硬さ、高い損傷耐性、および、所望の各種光学特性、例えば、高い明所視透過率および低い透過色などを示すよう図っている。この光学薄膜構造体はその内部の多様な部位のどこでも、引掻き傷耐性層を設けることができる。更に、これらの製品の光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率層と低屈折率層を構成部材の一部に含むことができ、高屈折率層と引掻き傷耐性層は各々が窒化物または酸窒化物を素材の一部に含み、低屈折率層は各々が酸化物を素材の一部に含んでいる。
【0045】
各種の機械的特性に関して、本件開示の透明製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合、光学薄膜構造体において約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPa以上の、または、12GPa以上の(もしくは、場合によっては14GPaより高い)最大硬さを示すようにすることができる。これらの製品に採用されているガラスセラミック基板は弾性率を85GPaより高くすることができ、場合によっては95GPaを超えることもある。これらの基板もまた0.8MPa×√mより高い破壊靭性を示すようにすることができ、場合によっては1MPa×√mを超えることもある。
【0046】
本件開示の各透明製品は、リング・オン・リング(ROR)試験でこれら製品の光学薄膜構造体の外表面に張力をかけた状態で測定した場合、700MPa以上、750MPa以上、800MPa以上、または、850MPa以上もの平均破壊応力レベルを示すことができる。本質的に、これらの製品レベルの平均破壊応力レベルは当該各製品のガラスセラミック基板が未被覆であった場合の強度と比較して、予想外にも、破壊強さの損失を全く受けていないか、または、ほとんど受けていない光学薄膜構造体が設けられた製品を思わせるほどである。更に、本件開示の態様によっては、本件開示の各透明製品は基板が未被覆であった場合の破壊強さと比較して、各製品の破壊強さが幾分か低下している場合もあるが、残留破壊強さは特定の最終用途にとって好ましい閾値よりも高い。
【0047】
また本件開示で概説してもいるが、前述の有利な製品レベルの破壊応力レベルは、上記各透明製品に採用されている光学薄膜構造体の組成、配置、加工、または、その各種組合せを制御することにより達成することができる。特に、各光学薄膜構造体の組成、配置、加工、または、これらの各種組合せを調整することで、少なくとも700MPa(例えば、700MPaから1100MPa)の残留圧縮応力レベルと少なくとも140GPa(例えば、140GPaから170GPa、または、140GPaから180GPa)の弾性率を得ることができる。これらの光学薄膜構造体の機械的特性は、予想外にも、製品の光学薄膜構造体の外表面に張力をかけた状態でリング・オン・リング試験で測定した場合のこれらの光学薄膜構造体を採用している透明製品における700MPa以上の平均破壊応力レベルと相関関係がある。
【0048】
光学特性に関しては、本件開示の各透明製品は、0°から10°の入射角で基板の表裏両方の主面により測定した場合、80%より高い、90%より高い、または、95%をも超える平均明所視透過率を示すことができる。これに加えて、各透明製品は、場合によっては、0°から10°の入射角、0°から20°の入射角、0°から60°の入射角、または、0°から90°の全ての入射角で、4未満、3未満、2未満、または、1未満の低い透過色√(a*2+b*2)を示すことができる。
【0049】
図1Aから
図1Dを参照すると、1つ以上の実施形態による透明製品100は、ガラスセラミック基板110と、外表面120aおよび内表面120bを画定しており、基板110上に配置された光学薄膜構造体120とを構成部材の一部に含んでいるとよい。光学薄膜構造体120はその内表面120bが対向し合う両主面のうち第1主面112上に配置されているのが
図1Aから
図1Dに例示されているが、光学薄膜構造体は1つも、対向し合う両主面のうち第2主面114上に配置されているようには示されていない。しかしながら、実施形態によっては、対向し合う両主面のうち第2主面114上、互いに対向し合う二次面116と二次面118のうちの一方面上または両面上、または、それらの各種組合せの各面上に1つ以上の光学薄膜構造体120が配置されていてもよい場合がある。
【0050】
光学薄膜構造体120は、少なくとも1層の材料層を含んでいる。本明細書で使用されている場合、「層」という用語は単一層でもよいし、または、1層以上の副次層をその一部に含んでいてもよい。このような副次層は互いに直接接触していてもよい。副次層は、同一材料から形成されてもよいし、或いは、2種類以上の異なる材料から形成されてもよい。上記に代わる1つ以上の実施形態では、そのような副次層は相互の間に、多様な相互に異なる材料の介在層を有していてもよい。1つ以上の実施形態で、層は、1層以上の連続した途切れのない層、1層以上の不連続で途切れた層(すなわち、多様な互いに異なる材料が隣接し合って形成された層)、または、それらの各種組合せの層を含んでいることがある。層または副次層は、離散堆積法または連続堆積法などのような、当該技術分野で周知のいかなる方法によって形成されても構わない。1つ以上の実施形態で、層は、連続堆積法のみを利用して形成されてもよいし、或いは、離散堆積法のみを利用して形成されてもよい。
【0051】
1つ以上の実施形態で、光学薄膜構造体120の単層または多重層は、例えば、化学気相成長法(プラズマ化学気相成長すなわちPECVD法、低圧化学気相成長法、大気圧化学気相成長法、プラズマ大気圧化学気相成長法など)、物理蒸着法 (反応性スパッタリング法または非反応性スパッタリング法、レーザ溶発法など)、熱蒸着法または電子ビーム蒸着法、原子層成長法、または、これらの各種組合せなどのような真空蒸着技術によりガラスセラミック基板110上に堆積するとよい。(例えば、各種のゾル・ゲル材料を使用した)噴霧、浸漬、スピン・コーティング、スロット・コーティングなどの液体ベースの各種の方法を利用してもよい。一般に、蒸着技術としては、薄膜を製造する目的で使用される多様な真空蒸着法が挙げられる。例えば、物理蒸着は、物理的加工処理 (加熱やスパッタリングなど) を利用することで材料の蒸気を生成し、その蒸気を今度は被膜対象である物体上に蒸着させる。光学薄膜構造体120を製造する好ましい方法としては、反応性スパッタリング法、金属モード反応性スパッタリング法、プラズマ化学気相成長法などが挙げられる。
【0052】
光学薄膜構造体120は、約100nmないし約10μmの厚さを有しているとよい。例えば、光学薄膜構造体120は約200nm以上、約300nm以上、約325nm以上、約350nm以上、約375nm以上、約400nm以上、約500nm以上、約600nm以上、約700nm以上、約800nm以上、約900nm以上、約1μm以上、約2μm以上、約3μm以上、約4μm以上、約5μm以上、約6μm以上、または、約7μm以上の厚さを有しているとよいが、約8μm以上の厚さがあってもよく、尚且つ、約10μm以下の厚さであるとよい。
【0053】
実施形態によっては、例えば
図1A、
図1B、および、
図1Dに描かれているように、光学薄膜構造体120は外側構造体130aと内側構造体130bに分割されているものもあり、その場合、引掻き傷耐性層150は(後段以降で更に詳述するが)構造体130aと構造体130bの間に配置される。これらの実施形態では、外側光学薄膜構造体130aおよび内側光学薄膜構造体130bは、同じ厚さであってもよいし、異なる厚さであってもよいが、構造体は各々が1層以上の層を含んでいる。それ以外の各実施形態では、
図1Cに例示しているように、光学薄膜構造体120は、内側構造体130bは含んでいても、外側構造体130a(
図1Aおよび
図1Bを参照のこと)に相当する外側構造体は含んではいない。
【0054】
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100を再度参照し直してみると、光学薄膜構造体120は、1つ以上の引掻き傷耐性層150を構成部材の一部に含んでいる。例えば、
図1Aから
図1Dに描かれている透明製品100は、引掻き傷耐性層150がガラスセラミック基板110の主面112上に配置された状態で光学薄膜構造体120を含んでいる。一実施形態によれば、引掻き傷耐性層150は、Si
uAl
vO
xN
y、Ta
2O
5、Nb
2O
5、AlN、AlN
x、SiAl
xN
y、AlN
x/SiAl
xN
y、Si
3N
4、AlO
xN
y、SiO
xN
y、SiN
y、SiN
x:H
y、HfO
2、TiO
2、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、MoO
3、ダイヤモンド状炭素、または、これらの各種組合せから選択された1つ以上の材料を含んでいるとよい。引掻き傷耐性層150に使用される具体的な材料例としては、無機炭化物、窒化物、酸化物、ダイヤモンド状材料、または、これらの各種組合せが挙げられる。引掻き傷耐性層150に好適な材料の具体例としては、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属酸炭化物、または、これらの各種組合せが挙げられる。具体的な金属の例としては、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、Wなどが挙げられる。引掻き傷耐性層150に利用することのできる材料の特定の具体例には、Al
2O
3、AlN、AlO
xN
y、Si
3N
4、SiO
xN
y、Si
uAl
vO
xN
y、ダイヤモンド、ダイヤモンド状カーボン、Si
xC
y、Si
xO
yC
z、ZrO
2、TiO
xN
y、または、これらの各種組合せなどが挙げられる。実施形態によっては、引掻き傷耐性層150としては、Si
3N
4、SiN
y、SiO
xN
y、または、これらの各種組合せなどが挙げられる。各実施形態において、透明製品100に採用されている引掻き傷耐性層150は各々が約1MPa×√mよりも高い破壊靱性値を示し、それと同時に、バーコヴィッチ硬さ試験により測定された場合で約10GPaより高い硬さ値を示す。
【0055】
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100の具体的な形態例で分かるように、引掻き傷耐性層150は各々が、それ以外の各層(例えば、低屈折率層130A、高屈折率層130B、キャッピング層131など)と比較して比較的厚くてもよいが、例えば、約50nm以上、約75nm以上、約100nm以上、約150nm、約200nm以上、約250nm以上、約300nm以上、約325nm以上、約350nm以上、約375nm以上、約400nm以上、約425nm以上、約450nm以上、約475nm以上、約500nm以上、約525nm以上、約550nm以上、約575nm以上、約600nm以上、約700nm以上、約800nm以上、約900nm以上、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm以上でもよいし、約8μm以上もの厚さなどでもよい。例えば、引掻き傷耐性層150は厚さが約50nmから約10μmであるとよく、約100nmから約10μmであってもよく、約150nmから約10μm、約500nmから約7500nm、約500nmから約6000nm、約500nmから約5000nmであってもよく、更に、上述の各範囲相互の間のどのような厚さレベルもしくはどのような厚さ範囲であっても構わない。それ以外の各実施形態では、引掻き傷耐性層150は厚さが約100nmないし約10,000nmであるとよいが、約1000nmないし約3000nmでもよく、或いは、約1500nmないし約2500nmであっても構わない。
【0056】
図1Aから
図1Dで分かるように、また、先に概説したように、本件開示の透明製品100は、外側構造体130aと内側構造体130bのうちの1つ以上が設けられた光学薄膜構造体120を含んでいる。外側構造体130aと内側構造体130bは各々が、複数の交互の低屈折率層130Aおよび高屈折率層130Bをそれぞれ含んでいる。各実施形態によれば、外側構造体130aおよび内側の構造130bは各々が、低屈折率層130Aと高屈折率層130Bのような2層から成る循環区分132、または、低屈折率層130Aと高屈折率層130Bと低屈折率層130Aのような3層以上の層から成る循環区分132を含んでいる。更に、光学薄膜構造体120の外側構造体130aと内側構造体130bは各々が複数の循環区分132を含んでいることもあり、例えば、1循環区分から30循環区分、1循環区分から25循環区分、1循環区分から20循環区分、または、上述の各範囲に入るどのような個数の循環区分を含んでいても構わない。これに加えて、循環区分132の個数、外側構造体130aの層数と内側構造体130bの層数、所与の1つの循環区分132内の層数、または、これらのうちいずれか2つ以上が異なっていてもよいし、同じであってもよい。更に、実装例によっては、複数の交互の低屈折率層130Aおよび高屈折率層130Bと引掻き傷耐性層150の総数は6層から50層の範囲であるとよいが、6層から40層の範囲でもよく、6層から30層、6層から28層、6層から26層、6層から24層、6層から22層、6層から20層、6層から18層、6層から16層、6層から14層などの範囲であってもよく、また、上記の各値の相互の間であればどのような層数範囲もしくはどのような層数であっても構わない。
【0057】
一例として、
図1Aから
図1Dにおいて、外側構造体130aまたは内側構造体130bの循環区分132は、低屈折率層130Aおよび高屈折率層130Bを含んでいるとよい。複数の循環区分が外側構造体130aと内側構造体130bのいずれか一方または両方に含まれている場合、低屈折率層130A(「L」と指定する)と高屈折率層130B(「H」と指定する)が交互に次のような層の配列で生じるようにすることができ、すなわち、L‐H‐L‐H…またはH‐L‐H‐L…となることで、低屈折率層130Aと高屈折率層130Bが光学薄膜構造体120の外側構造体130aと内側構造体130bのそれぞれの物理的厚さに沿って交互に並ぶ。
【0058】
透明製品100の一実装例では、
図1Aに示すように、外側構造体130aと内側構造体130bのそれぞれの循環区分132の数は、外側構造体130aが少なくとも4つの層(例えば、交互に並ぶ低屈折率層130Aと高屈折率高屈折率層130B)から構成され、内側構造体130bが少なくとも7つの層(例えば、2循環区分の交互に並ぶ低屈折率層130Aと高屈折率層130B、および、3層から成るもう1つ別の循環区分の交互に並ぶ低屈折率層130A‐高屈折率層130B‐低屈折率層130A)から構成されている。更に、この実装例では、光学薄膜構造体120は、外側構造体130aを覆うキャッピング層131(低屈折率層130Aと構造および厚さが類似)を含んでいるとともに、外側構造体130aと内側構造体130bの間に引掻き傷耐性層150を含んでいる。
【0059】
透明製品100の一実装例では、
図1Bに示すように、外側構造体130aと内側構造体130bのそれぞれの循環区分132の数は、外側構造体130aが少なくとも2つの層(例えば、交互の低屈折率層130Aと高屈折率層130B)を含んでいるとともに内側構造体130bが少なくとも7つの層(例えば、2循環区分の交互に並ぶ低屈折率層130Aと高屈折率層130B、および、3層から成るもう1つ別の循環区分132の交互に並ぶ低屈折率層130A‐高屈折率層130B‐低屈折率層130A)を含んでいるように構成されているとよい。また、この実装例では、光学薄膜構造体120は、外側構造体130aを覆うキャッピング層131(低屈折率層130Aと構造および厚さが類似)を含んでいるとともに、外側構造体130aと内側構造体130bの間に引掻き傷耐性層150を含んでいる。
【0060】
透明製品100のもう1つ別の実装例によれば、
図1Cに示したように、内側構造体130bの循環区分132の数は、少なくとも7つの層(例えば、2循環区分132の交互に並んだ低屈折率層130Aと高屈折率層130B、および、3層から成るもう1つ別の循環区分132の交互に並んだ低屈折率層130A‐高屈折層130B‐低屈折率層130A)から構成されている。更に、この実装例では、光学薄膜構造体120は、引掻き傷耐性層150を覆うキャッピング層131(低屈折率層130Aと構造および厚さが類似)を含んでおり、引掻き傷耐性層150は内側構造体130bを覆っている 。
【0061】
透明製品100の更にもう1つの実装例によれば、
図1Dに示したように、外側構造体130aと内側構造体130bの循環区分132の数は、外側構造体130aが少なくとも6つの層(例えば、交互に並んだ低屈折率層130Aと高屈折率層130B)を含んでいるとともに内側構造体130bが少なくとも7つの層(例えば、2循環区分の交互に並んだ低屈折率層130Aと高屈折率層130B、および、3層から成るもう1つ別の循環区分132の交互に並んだ低屈折率層130A‐高屈折率層130B‐低屈折率層130A)を含んでいるように構成されているとよい。更に、この実装例では、光学薄膜構造体120は、外側構造体130aを覆ってキャッピング層131(低屈折率層130Aと構造および厚さが類似)を含んでいるとともに、外側構造体130aと内側構造体130bの間に引掻き傷耐性層150を含んでいる。
【0062】
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100の実施形態によっては、光学薄膜構造体120の最も外側のキャッピング層131が露出状態になっていないものもあり、代わりにその上に最上位被膜140が配置されている。透明製品100の実装例によっては、外側構造体130aおよび内側構造体130bと相まって、光学薄膜構造体120は高屈折率層130Bの各々が、窒化物、シリコン含有窒化物(例えば、SiN
y、Si
3N
4)、酸窒化物、または、シリコン含有酸窒化物(例えば、SiAl
xO
yN
zまたはSiO
xN
y)を含有しているものもある。更に、実施形態によっては、外側構造体130aおよび内側構造体130bと相まって、光学薄膜構造体120は低屈折率層130Aの各々が、酸化物またはシリコン含有酸化物(例えば、SiO
2、SiO
x、または、Al、N、または、Fが不純物として添加されたSiO
2)を含有しているものもある。
【0063】
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100の1つ以上の実施形態においては、「低屈折率(低RI)」という語は、低屈折率層130A、キャッピング層131、または、その両方に関連して使用された場合、約1.3から約1.7または約1.75までの屈折率範囲を含んでいる。1つ以上の実施形態で、「高屈折率(高RI)」という語は、高屈折率層130B、引掻き傷耐性層150、または、その両方に関連して使用された場合、約1.7から約2.5(例えば、約1.85以上)の屈折率範囲を含んでいる。1つ以上の実施形態において、循環区分132の任意の第三層に関連して使用された場合、「中屈折率(中RI)」という語は、約1.55から約1.8の屈折率範囲を含んでいる。実施形態によっては、低RI、高RI、中RI、または、これらの各種組合せの各範囲が重複している場合もあるが、但し、ほとんどの場合、光学薄膜構造体120の外側構造体130aと内側構造体130bのそれぞれの各層は、RIに関して、低RI<中RI<高RIという一般的な関係を有している(ここでは、「中RI」は3層構成の循環区分の事例に適用できる)。1つ以上の実施形態で、低屈折率層130A(または、キャッピング層131とどちらか一方、もしくは、両方とも)および高屈折率層130B(または、引掻き傷耐性層150とどちらか一方、もしくは、両方とも)のそれぞれの屈折率の差は、約0.01以上であるとよいが、約0.05以上でもよく、約0.1以上、約0.2以上になることすらある。
【0064】
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100の光学薄膜構造体120の外側構造体130aおよび内側構造体130bに使用するのに好適な具体的な材料例としては、SiO
2、SiO
x、Al
2O
3、SiAl
xO
y、GeO
2、SiO、AlO
xN
y、AlN、AlN
x、SiAl
xN
y、SiN
x、SiO
xN
y、SiAl
xO
yN
z、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2、ZrO
2、TiN、MgO、MgF
2、BaF
2、CaF
2、SnO
2、HfO
2、Y
2O
3、MoO
3、DyF
3、YbF
3、YF
3、CeF
3、ダイヤモンド状炭素、または、上記の各種組合わせ挙げられるが、これらに限定されない。低屈折率層130Aに使用するのに好適な具体的な材料例としては、SiO
2、SiO
x、Al
2O
3、SiAl
xO
y、GeO
2、SiO、AlO
xN
y、SiO
xN
y、SiAl
xO
yN
z、MgO、MgAl
xO
y、MgF
2、BaF
2、CaF
2、DyF
3、YbF
3、YF
3、CeF
3などが挙げられるが、これらに限定されない。透明製品100の実施形態によっては、当該製品の低屈折率層130Aの各々がシリコン含有酸化物(例えば、SiO
2またはSiO
x)を含んでいるものもある。低屈折率層130Aにおける使用に適した各材料の窒素含有量は最小限であってもよい(例えば、Al
2O
3やMgAl
xO
yなどの各材料中)。高屈折率層130Bに使用するのに適した材料の具体例によっては、SiAl
xO
yN
z、Ta
2O
5、Nb
2O
5、AlN、AlN
x、SiAl
xN
y、AlN
x/SiAl
xN
y、Si
3N
4、AlO
xN
y、SiO
xN
y、SiN
y、SiN
x:H
y、HfO
2、TiO
2、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、MoO
3、ダイヤモンド状炭素などが挙げられるが、これらに限定されない。実装例によっては、外側構造体130aと内側構造体130bそれぞれの高屈折率層130Bは各々がシリコン含有窒化物またはシリコン含有酸窒化物(例えば、Si
3N
4、SiN
y、または、SiO
xN
y)を含有しているものもある。1つ以上の実施形態で、高屈折率層130Bは各々が高度の硬さ(例えば、8GPaより高い硬さ)を有しているとよく、先に列挙した各高屈折率材料は高度の硬さ、引掻き傷耐性、または、その両方を備えている。
【0065】
高屈折率層130Bの各材料の酸素含有量は、特にSiNx系の各材料において最小限にするとよい。更に、具体例のSiOxNy系の各高屈折率材料は約0atоm%(約0モル%)ないし約20atоm%(約20モル%)の酸素、または、約5atоm%(約5モル%)ないし約15atоm%(約15モル%)の酸素を含有しており、同時に約30atоm%(約30モル%)ないし約50atоm%(約50モル%)の窒素を含有しているとよい。上記の各材料は、約30重量%まで水添されていてもよい。中屈折率を有している材料が中屈折率層として所望される場合は、実施形態によっては、AlN、SiOxNy、または、その両方を利用することができるものもある。引掻き傷耐性層150は、高屈折率層130Bにおける使用に好適であると開示した各材料のいずれかを含んでいるとよいものと理解するべきである。
【0066】
透明製品100の1つ以上の実施形態では、光学薄膜構造体120は、高屈折率層130Bとして一体化させることができる引掻き傷耐性層150を構成部材の一部に含んでおり、この引掻き傷耐性層150を覆って1層以上の低屈折率層130A、高屈折率層130B、キャッピング層131、または、これらの各種組合せが配置されているとよい。また、引掻き傷耐性層150については、
図1Aから
図1Dに示されているように、任意の最上位被膜140がこの引掻き傷耐性層150の上に配置されても構わない。これに代わる例として、引掻き傷耐性層150は、光学薄膜構造体120全体の中で最も厚い高屈折率層130Bと定めてもよいし、外側構造体130aおよび内側構造体130bのうちでも最も厚い高屈折率層130Bと定めてもよいし、または、その両方の中でも最も厚い高屈折率層130Bと定めても構わない。理論にとらわれずに、比較的薄い量の材料しか引掻き傷耐性層150上に堆積されていないほうが、透明製品100は各圧入深さでより高い硬さを示すことができると考えられている。しかし、引掻き傷耐性層150を覆って低屈折率層130Aと高屈折率層130Bを設けることにより、透明製品100の光学的な諸特性を向上させることができる。実施形態によっては、比較的少数の層(例えば、1層のみ、2層のみ、3層のみ、4層のみ、または、5層のみ)を引掻き傷耐性層150上に配置することができるものもあり、これらの層は各々が比較的薄いとよい(例えば、100nm未満、75nm未満、50nm未満、または、25nmにすら満たなくても)。
【0067】
1つ以上の実施形態で、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100は、1層以上の追加の最上位被膜140が光学薄膜構造体120の外側構造体130a上に配置されていてもよい。1つ以上の実施形態で、追加の最上位被膜140は、洗浄が容易な被膜を含んでいるとよい。好適な洗浄が容易な被膜の一例が、2014年4月24日公開の「洗浄が容易な光学被膜が設けられたガラス製品の製造方法(Prоcess fоr Making оf Glass Articles with Optical and Easy‐tо‐Clean Cоatings)」と題する米国特許出願公開第2014/0113083号に記載されているが、その内容全体はここに引例に挙げることにより本件の一部を構成しているものとする。洗浄が容易な被膜は厚さが約5nmから約50nmの範囲であるとよいが、各種のフッ素化珪素などのような周知の材料を含んでいるとよい。これに代わる例として、または、これに加えて、洗浄が容易な被膜は低摩擦被膜または表面処理材を含んでいるとよい。具体的な低摩擦被膜材料の例としては、ダイヤモンド状炭素、各種のシラン化合物(例えば、各種のフロロシラン)、ホスホン酸塩類、各種のアルケン化合物、および、各種のアルキン化合物が挙げられる。実施形態によっては、最上位被膜140の洗浄が容易な被膜は厚さが約1nmから約40nmの範囲であるとよいが、約1nmから約30nmでもよく、約1nmから約25nm、約1nmから約20nm、約1nmから約15nm、約1nmから約10nm、約5nmから約50nm、約10nmから約50nm、約15nmから約50nm、約7nmから約20nm、約7nmから約15nm、約7nmから約12nm、約7nmから約10nm、約1nmから約90nm、約5nmから約90nm、約10nmから約90nm、約5nmから約100nm、または、これらの各範囲相互の間の全範囲もしくは部分範囲であっても構わない。
【0068】
最上位被膜140は1層または複数層の引掻き傷耐性層を構成部材の一部に含んでいるとよいが、これは引掻き傷耐性層150における使用に好適であると既に開示した各種材料のいずれかを含有している。実施形態によっては、追加の最上位被膜140は、洗浄が容易な材料と引掻き傷耐性のある材料の或る種の組合せを含有している。一例では、この組合せは、洗浄が容易な材料とダイヤモンド状炭素を含んでいる。このような追加の最上位被膜140は厚さが約5nmから約20nmの範囲であるとよい。この追加被膜140の各種成分は、複数の別個の層中に供与されていてもよい。例えば、ダイヤモンド状炭素を第1層として配置し、洗浄が容易な材料をダイヤモンド状炭素の第1層上の第2層として配置するようにしてもよい。第1層および第2層それぞれの厚さは、当該追加被膜について先に提示した範囲内にあるとよい。例えば、ダイヤモンド状炭素の第1層は厚さが約1nmから約20nm、または、約4nmから約15nm(より特定すると約10nm)であるとよく、洗浄が容易な材料から成る第2層は厚さが約1nmから約10nm(より特定すると約6nm)であるとよい。ダイヤモンド状炭素の被膜としては、四面体非晶質炭素(Ta‐C、Ta‐C:H、a‐C:H、または、これらの各種組合せ)被膜が挙げられる。
【0069】
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100の各実施形態によれば、光学薄膜構造体120の外側構造体130aと内側構造体130bそれぞれの高屈折率層130Bは各々が、約5nmないし約2000nmの範囲の、約5nmないし約1500nmの範囲の、約5nmないし約1000nmの範囲の、または、これらの各値の相互の間のあらゆる厚さもしくはあらゆる範囲の物理的厚さを有していても構わない。例えば、これらの高屈折率層130Bは物理的厚さが5nmであるとよく、10nmであってもよく、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、250nm、500nm、750nm、1000nm、1250nm、1500nm、1750nm、2000nm、または、これら各レベル相互の間のどのような厚さ値であっても構わない。更に、内側構造体130bの高屈折率層130Bは各々が、約5nmから約500nmの範囲の物理的厚さを有しているとよいが、約5nmから約400nmの範囲でもよく、約5nmから約300nmの範囲の、または、これらの各値の相互の間であればどのような厚さもしくはどのような範囲の物理的厚さを有していても構わない。一例として、これらの高屈折率層130Bの各々は物理的厚さが5nmであるとよいが、10nmであってもよく、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、 200nm、300nm、400nm、500nm、または、これら各レベルの相互の間のどのような厚さ値であっても構わない。これに加えて、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100の実施形態によっては、外側構造体130aと内側構造体130bそれぞれの低屈折率層130Aの各々は物理的厚さが約5nmから約300nmであるとよいが、約5nmから約250nmであってもよく、約5nmから約200nm、または、これらの各値の相互の間のどのような厚さもしくはどのような範囲であっても構わない。例えば、これらの低屈折率層130Aの各々の物理的厚さは5nmであるとよいが、10nmであってもよく、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、または、これら各レベルの相互の間のどのような厚さ値であっても構わない。
【0070】
1つ以上の実施形態で、光学薄膜構造体120の外側構造体130aおよび内側構造体130bの層(低屈折率層130Aや高屈折率層130Bなど)のうち少なくとも1つは、特定の光学厚さ(または、光学厚さの範囲)であるとよい。本明細書で使用する場合、「光学厚さ」という用語は、層の物理的厚さと屈折率の積を指す。1つ以上の実施形態で、外側構造体130aと内側構造体130bそれぞれの各層のうちの少なくとも1つは光学厚さが約2nmから約200nmの範囲であるとよいが、約10nmから約100nmの範囲であってもよく、約15nmから約100nmの範囲、約15nmから約500nmの範囲、または、約15nmから約5000nmの範囲であっても構わない。実施形態によっては、外側構造体130aと内側構造体130bの全ての層は各々の光学厚さが約2nmから約200nmの範囲であればよいものもあるが、約10nmから約100nmの範囲であってもよく、約15nmから約100nmの範囲、約15nmから約500nmの範囲、または、約15nmから約5000nmの範囲であっても構わない。実施形態によっては、外側構造体130aと内側構造体130bのいずれか一方または両方の少なくとも1つの層の光学厚さが約50nm以上あるものもある。実施形態によっては、低屈折率層130Aは各々の光学厚さが約2nmから約200nmの範囲であるものもあるが、約10nmから約100nmの範囲、約15nmから約100nmの範囲、約15nmから約500nmの範囲、または、約15nmから約5000nmの範囲であるものもある。実施形態によっては、高屈折率層130Bは各々の光学厚さが約2nmから約200nmの範囲であるものもあるが、約10nmから約100nmの範囲、約15nmから約100nmの範囲、約15nmから約500nmの範囲、または、約15nmから約5000nmの範囲であるものもある。3層から成る循環区分132を有する各実施形態では、中屈折率層130は各々の光学厚さが約2nmから約200nmの範囲であるか、または、約10nmから約100nm、約15nmから約100nm、約15nmから約500nm、もしくは、約15nmから約5000nmの範囲である。実施形態によっては、引掻き傷耐性層150は光学薄膜構造体120のうちで最も厚い層であるものもあり、屈折率が薄膜構造体中の他のどの層よりも高いものもあり、または、その両方を満たすものもある。
【0071】
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100のガラスセラミック基板110は、非晶質部分と結晶質部分を有する無機材料を含有しているとよい。基板110は人工材料、天然材料(例えば、石英)、または、その両方から形成されていてもよい。特定の実施形態によっては、ガラスセラミック基板110は、ポリマー基板、プラスチック基板、金属基板、または、これらの各種組合せの基板を特に除外するとよいものがある。ガラスセラミック基板110は、アルカリ含有基板(すなわち、基板が1種類以上のアルカリ化合物を構成部材の一部に含んでいる)であると特徴付けることができる。1つ以上の実施形態で、ガラスセラミック基板110は、約1.5から約1.6の範囲の屈折率を示す。特定の実施形態では、ガラスセラミック基板110は、互いに対向する主面のうち1つ以上を覆う一表面において0.5%以上の平均破断歪みを示すとよいが、0.6%以上でもよく、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、または、2%以上もの平均破壊応力を示しても構わないが、この計測は、少なくとも5種の試料、少なくとも10種の試料、少なくとも15種の試料、または、少なくとも20種の試料を使ってリング・オン・リング試験を利用して実施することで平均破断歪み値を判定した場合である。特定の実施形態では、ガラスセラミック基板110は、互いに対向する主面を覆う表面において約1.2%の平均破断歪みを示すとよいが、約1.6%でもよく、約1.8%、約2.2%、約2.4%、約2.6%、約2.8%、または、約3%以上を示しても構わない。
【0072】
「破断歪み」という用語は、追加の荷重を加えていないのに、光学薄膜構造体120の外側構造体130aや内側構造体130b、ガラスセラミック基板110、または、その両方同時に亀裂が伝播して、通例、所与の材料や層や薄膜の壊滅的な破壊に至らせるうえに、本明細書で定義する場合は、別の材料や層や薄膜へ越えて行く可能性の高い歪みを指す。すなわち、ガラスセラミック基板110を破損させずとも光学薄膜構造体120(すなわち、外側構造体130aや内側構造体130bを含む)の破損は機能停止をもたらし、基板110の破損も機能停止をもたらす。「平均」という語は、平均破断歪みまたは何であれそれ以外の特性に関連して使用される場合、5種の試料についてのそのような特性の測定値の数学的平均に基づいている。通例、亀裂発現歪みの測定は、通常の実験室条件下で再現可能であり、複数の試料で測定された亀裂発現歪みの標準偏差は、観察された歪みの0.01%程度にしかならないと推察される。本明細書で使用されるような平均破断歪みは、リング・オン・リング引張試験を利用して計測された。但し、別段の記載がない限り、本明細書に記載の破断歪み測定は、2018年7月5日公開の「光学被膜に残留圧縮応力がある被膜製品(Coated Articles with Optical Coatings Having Residual Compressive Stress)」という発明名称の国際公開第2018/125676号に記載されているようなリング・オン・リング試験による測定を指すが、斯かる国際公開はその内容全体がここに引例に挙げることにより本件の一部を構成しているものとする。
【0073】
好適なガラスセラミック基板110は、約60GPaから約130GPaの範囲の弾性率(すなわちヤング率)を示すとよい。場合によっては、基板110の弾性率は約70GPaから約120GPaの範囲であってもよいが、約80GPaから約110GPaの範囲であってもよく、約80GPaから約100GPa、約80GPaから約90GPa、約85GPaから約110GPa、約85GPaから約105GPa、約85GPaから約100GPa、約85GPaから約95GPa、または、これら相互の間の全範囲もしくは部分範囲(例えば、約103GPaなど)であっても構わない。実装例によっては、基板110の弾性率は85GPaより大きいとよいものもあるが、90GPaより大きくてもよいし、95GPaより大きく、または、100GPaより大きくてさえ構わない。具体例によっては、ヤング率は音波共鳴(米国材料試験協会(ASTM)のE1875規格)、共鳴超音波分光法、または、バーコヴィッチ圧子を使用したナノインデンテーション法(ナノ圧子押込み法)により計測することができるものもある。更に、好適なガラスセラミック基板110は約20GPaないし約60GPaの範囲の剪断弾性率を示すとよいが、約25GPaないし約55GPaの範囲でもよく、約30GPaないし約50GPaの範囲、約35GPaないし約50GPaの範囲、または、これら相互の間の全剪断弾性率範囲もしくは部分範囲(例えば、約43GPa)を示しても構わない。実装例によっては、ガラスセラミック基板110は剪断弾性率が35GPaより高くなるとよいが、40GPaをも超えて構わない。更に、ガラスセラミック基板110は0.8MPa×√mより大きい破壊靭性を示すとよいが、0.9MPa×√mより大きい破壊靭性でもよく、1MPa×√mより大きい、または、場合によっては1.1MPa×√mより大きい破壊靱性(例えば、約1.15MPa×√m)を示しても構わない。
【0074】
1つ以上の実施形態で、ガラスセラミック基板110は1種類以上のガラスセラミック材料を含有しており、強化されていてもよいし強化されていなくてもよい。1つ以上の実施形態で、ガラスセラミック基板110は、構造体中の残留ガラスと潜在的に結合状態になるような、例えば、二珪酸リチウム、メタ珪酸リチウム、葉長石、β‐石英、β‐スポジュメン、または、これらの各種組合せなどのような1種類以上の結晶相を含んでいるとよい。一実施形態では、ガラスセラミック基板110は二珪酸塩相を含んでいる。もう1つ別の実施形態では、ガラスセラミック基板110は、二珪酸塩相と葉長石相を含んでいる。或る実施形態によれば、ガラスセラミック基板110は結晶化度が少なくとも40重量%である。実装例によっては、ガラスセラミック基板110は、残留物をガラス相として含んでいる状態で、結晶化度が少なくとも約40重量%であり、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、または、それ以上である。更に、実施形態によっては、ガラスセラミック基板110の結晶相は各々の結晶子寸法が100nm未満、75nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、または、これらのレベル範囲内または各レベル未満のどのような結晶子寸法でもよい。具体的な一実施形態によれば、ガラスセラミック基板110は二珪酸リチウム相と葉長石相を含んでおり、その割合は40重量%の二珪酸リチウム、45重量%の葉長石、それに、残留ガラスとしての残余(すなわち、約85%の結晶質、約15%の残留非晶質・残留ガラス)であるが、各結晶相はその大半の結晶の平均結晶子寸法が10nmから50nmの範囲である。
【0075】
本件開示の透明製品100に採用されているガラスセラミック基板110の各実施形態(例えば、
図1Aから
図1Dを参照のこと)は、従来の各種のガラス基板や強化ガラス基板の屈折率よりも高い屈折率を示し得る。例えば、ガラスセラミック基板110の屈折率は約1.52ないし約1.65の範囲になり得るが、約1.52ないし約1.64にもなり得るし、約1.52ないし約1.62、約1.52ないし約1.60、または、上述の各範囲に入る全屈折率になり得る(例えば、589nmの可視波長で計測したような場合)。従って、従来の各種光学被膜は、ガラス基板およびその屈折率範囲に対して最適化されるのが通例であるが、本件開示の透明製品100のガラスセラミック基板110と併用するのに必ずしも適しているわけではない。特に、基板110と引掻き傷耐性層150の間の光学薄膜構造体120の各層を修正することで、ガラスセラミック基板110と引掻き傷耐性層150の間の遷移域が原因で生じる低反射率および低色を達成することができる。このような層設計のやり直し要件は、ガラスセラミック基板110と引掻き傷耐性層150の間の光インピーダンス整合として説明することもできる。
【0076】
各実装例によれば、ガラスセラミック基板110は光学的に概ね曇りなく透明であり、光散乱が無い。このような実施形態では、基板110は、光波長領域に亘って約80%以上の平均光透過率を示しているとよいが、約81%以上でもよく、約82%以上、約83%以上、約84%以上、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、または、約94%以上になることすらある。実施形態によっては、これらの光反射率の値と透過率の値はそれぞれ(ガラスセラミック基板110の表裏両主面の反射率と透過率を考慮すれば)全反射率と全透過率であってもよいし、基板110の観察は片面について(すなわち、主面112のみについて、その対向面114を考慮せずに)実施されてもよい。特段の指定が無い限り、基板110単独の平均反射率や平均透過率は、主面112に対して0°の入射光角度で計測される(但し、そのような測定値は、45°や60°の入射光角度でもたらされてもよい)。
【0077】
それに加えて、または、それに代わる例として、ガラスセラミック基板110の物理的厚さは、美的理由、機能的な理由、または、その両方の理由から、基板の各寸法のうちの1つ以上に沿って変動し得る。例えば、基板110はその各端縁のほうがその内部領域に比べて厚くなっていてもよい。基板110の長さ寸法、幅寸法、および、物理的厚さ寸法も、製品100の応用例または用途に応じて変動してもよい。
【0078】
ガラスセラミック基板110は、多様な各種のプロセスを利用してもたらすことができる。例えば、基板110がガラスなどのような非晶質部分または非晶相を含んでいる場合、各種の形成方法としては、ガラスのフロート法や、フュージョン・ドローやスロット・ドローなどのようなダウン・ドロー法が挙げられる。
【0079】
一旦形成してしまってから、ガラスセラミック基板110を強化することで、強化基板を形成することができる。本明細書で使用する場合、「強化基板」という用語は、例えば基板の表面においてより小さなイオンに代えて大きなイオンとイオン交換することにより、化学的に強化された基板を指すことがある。しかしながら、上記以外の、当該技術分野で周知の強化法を利用することで強化基板を形成してもよく、例えば、熱焼き戻し法や、基板の各部位の相互間の熱膨張係数の不一致を利用することで圧縮応力領域と内部引張力領域を設ける方法などがある。
【0080】
ガラスセラミック基板110がイオン交換法により化学強化される場合、基板110の表面層のイオンは、同じ価数または同じ酸化状態のより大きなイオンに置換される、すなわち、より大きなイオンと交換される。イオン交換法は、通例、基板中のより小さなイオンと交換されるべきより大きなイオンを含有している溶融塩浴液に基板を浸漬することにより実施される。イオン交換法の各パラメータは、例えば、浴液の組成および温度、浸漬時間、塩浴液(または数種の塩浴液)へのガラスセラミック基板110の浸漬回数、数種類の塩浴液の効用、アニーリングや洗浄などの追加工程などが挙げられるがこれらに限定されず、概して、当該強化操作の結果として得られる基板110の組成、所望の圧縮応力(CS)、基板110の圧縮応力層の深さ(すなわち層深さ)などにより決まる。一例として、アルカリ金属含有ガラスセラミック基板のイオン交換は、硝酸塩、硫酸塩、塩化物などが例に挙げられるがこれらに限定されずに、アルカリ金属イオンがより大きい塩を含有する少なくとも1種類の溶融浴液に浸漬することによって達成することができる。溶融塩浴液の温度は、通例、約380℃から最大約530℃の範囲であるが、浸漬時間は約15分から最大約40時間の範囲である。しかしながら、上記とは異なる温度および浸漬時間を利用しても構わない。
【0081】
イオン交換によって達成される化学強化の度合いは、内部引張力(CT)、表面圧縮応力(CS)、圧縮深さ(DOC)(すなわち、応力状態が圧縮応力から引張応力に変化してゆく基板内の点)、カリウムイオンの層内浸透深さ(DOL)などのような各種パラメータに基づいて定量化することができる。圧縮応力(表面圧縮応力などのような)の計測は、折原工業株式会社(日本)製のFSM‐6000などのような市販の機器類を使用する表面応力計(FSM)により実施される。表面応力測定は、ガラスセラミック材料の複屈折に関連している応力光学係数(SOC)の正確な測定に依存している。応力光学係数が、今度は、「ガラス応力光学係数の測定のための標準試験法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress‐Optical Coefficient)」と題する米国試験材料協会(ASTM)規格C770‐16に記載されている手順C(ガラスディスク法)に従って測定されるが、その内容はその全体がここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。応力プロファイルを測定する目的で使用することができるのが、屈折近接場(RNF)法または散乱光偏光器(SCALP)技術である。屈折近接場法を利用して応力プロファイルを測定する場合、散乱光偏光器により供与される最大内部引張力値が屈折近接場法で利用される。特に、屈折近接場法により測定された応力プロファイルは力の平衡が保たれており、2014年10月7日交付の「ガラス試料のプロファイル特性を測定するためのシステムおよびその方法(Systems and Methods for Measuring a Profile Characteristic of a Glass Sample)」なる発明名称の米国特許第8,854,623号に記載されており、その全体はここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。特に、屈折近接場法は、ガラスセラミック製品を基準ブロックに隣接する位置に設置する工程、各直交偏光の相互間で1Hzから50Hzの速度で切り替わる偏光切替式光線を生成する工程、偏光切替式光線の出力量を測定する工程、偏光切替式基準信号を生成する工程などを含んでおり、その場合、各直交偏光の測定結果の出力量は互いの50%以内である。この方法は、偏光切替式光線をガラス試料と基準ブロックに透過させて該ガラス試料の内奥の多様な深さを得る工程、その後で透過された偏光切替式光線を中継光学系を利用して信号光検出器に中継しながら、信号光検出器に偏光切替式検出器信号を生成させる工程などを更に含んでいる。この方法はまた、該検出器信号を上記基準信号で除算することで正規化された検出器信号を形成する工程、この正規化された検出器信号からガラスセラミック試料のプロファイル特性を判定する工程なども含んでいる。最大内部引張力(CT)値は、当技術分野で周知の散乱光偏光器(SCALP)技術を利用して測定される。
【0082】
透明製品100の一実施形態(
図1Aから
図1Dを参照のこと)では、強化ガラスセラミック基板110は表面圧縮応力(CS)が200MPa以上あるとよいが、250MPa以上でもよく、300MPa以上、または、350MPa以上でも構わない。もう1つ別の実装例では、強化ガラスセラミック基板は約200MPaから約600MPaの表面圧縮応力を示すとよいが、約200MPaから約500MPaでもよく、約200MPaから約400MPa、約225MPaから約400MPa、250MPaから約400MPa、または、上述の各範囲の圧縮応力の全ての部分範囲もしくは全ての値であっても構わない。この強化基板110は、カリウムイオンの層内浸透深さ(DOL)が1μmないし5μmであるとよいが、1μmないし10μm、または、1μmないし15μmでもよく、或いは、内部引張力(CT)が50MPa以上であるとよいが、75MPa以上、100MPa以上、125MPa以上(例えば、80MPa、90MPa、または、100MPa以上など)であってもよいが250MPa未満(例えば、200MPa以下、175MPa以下、150MPa以下など)であり、もしくは、DOLと中心CTの両方について上記を満たしていてもよい。そのような各実装例の透明製品100において、ガラスセラミック基板110の内部引張力が約50MPaないし約200MPaまたは約80MPaないし約200MPaである場合、ガラスセラミック基板110の厚さを約0.6mm以下に制限することで、基板が壊れやすくならないようにするのを確実にするべきである。より厚い基板、たとえば最大0.8mm、最大0.9mm、または、最大1.0mmもの厚さの基板を採用している各実装例については、基板が壊れやすくならないのを確保する目的で、内部引張力の上限を200MPaより低いレベルに保つ必要がある(例えば、0.8mmの厚さについては150MPaにするなど)。
【0083】
ガラスセラミック基板110の圧縮深さ(DOC)は0.1×t(基板厚さ)ないし約0.25×tであるとよいが、例えば、約0.15×tないし約0.25×tであってもよく、約0.15×tないし約0.25×t、約0.15×tないし約0.20×t、または、上述の各範囲の相互の間のどのようなDOC値であっても構わない。例えば、ガラスセラミック基板110は圧縮深さが基板厚さの20%であるが、その比較対象としてイオン交換ガラス基板の圧縮深さはその15%以下である。各実施形態では、基板材料ごとの圧縮深さは、基板110の厚さの約8%ないし約20%になるとよい。上記のDOC値は、基板110の主面112と主面114のうち一方を起点に測定されたような値であることに留意すべきである。従って、厚さが600μmの基板110については、圧縮深さは基板厚さの20%、すなわち、基板110の主面112と主面114の各々から約120μmであるとよいが、基板全体の総計では240μmであってもよい。1つ以上の特定の実施形態で、強化ガラスセラミック基板110は、次の機械的特性のうちの1つまたは複数を示すことがあり得る。すなわち、約200MPaから約400MPaの表面圧縮応力(CS)、30μmより大きいカリウムイオンの層内浸透深さ(DOL)、約0.08×tないし約0.25×tの圧縮深さ(DOC)、約80MPaから約200MPaの内部引張力(CT)など。
【0084】
本件開示の各実施形態によれば、ガラスセラミック基板110(それを覆う光学膜構造120が配置されておらず、測定に備えた状態にある)は8.5GPa以上の最大硬さを示すとよいが、9GPa以上、または、9.5GPa以上の最大硬さを示してもよい(場合によっては、10GPaより大きくても構わない)が、これはバーコヴィッチ硬さ試験により基板110に約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘って測定したような場合である。例えば、ガラスセラミック基板110は、バーコヴィッチ硬さ試験により基板110において約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘って測定したような場合、8.5GPaの最大硬さを示すとよいが、8.75GPaでもよく、9GPa、9.25GPa、9.5GPa、9.75GPa、10GPa、または、それよりも高い硬度レベルの最大硬さを示しても構わない。更に、本件開示のガラスセラミック基板110は、200gの荷重を用いて測定した場合、700を超えるヴィッカース硬さをしめしてもよいし、800をも超えるヴィッカース硬さを示してもよい。これに加えて、本件開示のガラスセラミック基板110は、6.5より高いモース硬度を示してもよいし、7をも超えるモース硬度を示しても構わない。
【0085】
前述のように、ガラスセラミック基板110は強化されていなくてもよいし、強化されていてもよいが、それなら、強化を支持するのに好適な組成を有しているとよい。ガラスセラミック基板110に適したガラスセラミックの具体例としては、Li2O‐Al2O3‐SiO2系(すなわち、LAS系)ガラスセラミックやMgO‐Al2O3‐SiO2系(すなわち、MAS系)ガラスセラミックがあり、また、β‐石英固溶体、β‐スポジュメンss、菫青石、二珪酸リチウムなどのような主な結晶相を構成部材の一部に含むガラスセラミック類もあり、或いは、上述のガラスセラミック類の各種組合せが挙げられる。ガラスセラミック基板は、本明細書に開示されている化学強化法を利用して強化するとよい。1つ以上の実施形態で、MASシステムのガラスセラミック基板はLi2SO4溶融塩中で強化するとよいが、それにより、Mg2+に代わる2Li+の交換を起こすことができる。
【0086】
本件開示の透明製品100の実施形態によっては、ガラスセラミック基板110は次のような組成を有するLAS系であるものもある。すなわち、70%ないし80%のSiO2、5%ないし10%のAl2O3、10%ないし15%のLi2O、0.01%ないし1%のNa2O、0.01%ないし1%のK2O、0.1%ないし5%のP2O5、および、0.1%ないし7%のZrO2(単位は重量%、酸化物基準)。本件開示の透明製品100の実施形態によっては、ガラスセラミック基板110は次の組成を有するLAS系であるものもある。すなわち、70%ないし80%のSiO2、5%ないし10%のAl2O3、10%ないし15%のLi2O、0.01%ないし1%のNa2O、0.01%ないし1%のK2O、0.1%ないし5%のP2O5、および、0.1%ないし5%のZrO2(単位は重量%、酸化物基準)。もう1つ別の実施形態によれば、ガラスセラミック基板110は、次の組成を有するLAS系であってもよい。すなわち、70%ないし75%のSiO2、5%ないし10%のAl2O3、10%ないし15%のLi2O、0.05%ないし1%のNa2O、0.01%ないし1%のK2O、1%ないし5%のP2O5、2%ないし7%のZrO2、および、0.1%ないし2%のCaO(単位は重量%、酸化物基準)。更なる実施形態によれば、ガラスセラミック基板110は次の組成を有しているとよい。すなわち、71%ないし72%のSiO2、6%ないし8%のAl2O3、10%ないし13%のLi2O、0.05%ないし0.5%のNa2O、0.1%ないし0.5%のK2O、1.5%ないし4%のP2O5、4%ないし7%のZrO2、および、0.5%ないし1.5%のCaO(単位は重量%、酸化物基準)。より大まかに言うと、ガラスセラミック基板110のこれらの組成は本件開示の透明製品100にとっては有利であり、それは、低濁度レベル、高い透明性、高い破壊靱性、高い弾性率などを示すうえにイオン交換可能だからである。
【0087】
透明製品100の各実施形態によれば、ガラスセラミック基板110は本件開示の各組成のいずれかを有している状態で選択されてから、本件開示の各結晶化度レベルになるまで更に加工されることで、高い破壊靱性(例えば、1MPa×√mより高い)と高い弾性率(例えば、100GPaより高い)の或る種の組合せを示す。これらの機械的特性は、比較的高い弾性率を示す結晶相 (例えば、二珪酸リチウム相など) が存在していることから得られるとともに、幾らかの残留ガラス相を含んでいる最終ガラスセラミック基板110の微細構造にも由来している。特に、残留ガラス相(および、そのアルカリ含有組成)により、ガラスセラミック基板110がイオン交換により高レベルの内部引張力(CT)(例えば、80MPaより高い)と高レベルの圧縮応力(CS)(例えば、200MPaより高い)に達するまで強化されることを確実にできる。更に、セラミング工程(すなわち、溶融後の加工の熱処理の諸条件)を選択することでガラスセラミック基板110の粒子寸法を最小化し、粒子寸法が可視光の波長よりも小さくなるようにした結果、ガラスセラミック基板110および製品100が透明または概ね透明となることを確実にすることができる。最終的に、ガラスセラミック基板110の組成および加工を、高い破壊靱性、高い弾性率、および、光透過性の平衡状態を達成するのに有利となるように選択することで、これらの基板110と光学薄膜構造体120を採用しているような透明製品100が上記のような平衡のとれた機械特性と光学特性に驚くべきレベルの損傷耐性を併せて示すことを確実にするよう図っている。
【0088】
1つ以上の実施形態によるガラスセラミック基板110は、物理的厚さが基板110の多様な部位において約100μmから約5mmの範囲の範囲に及ぶことがある。具体例の基板110の物理的厚さは、例えば、約100μmから約500μmの範囲に及び(例えば、100μm、200μm、300μm、400μm、または、500μm)、約100μmから約1000μmの範囲に及び(例えば、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、または、1000μm)、或いはまた、約500μmから約1500μmの範囲に及ぶ(例えば、500μm、750μm、1000μm、1250μm、または、1500μm)。実装例によっては、基板110は物理的厚さが約1mmより大きい(例えば、約2mm、約3mm、約4mm、または、約5mm)。1つ以上の特定の実施形態では、基板110は物理的厚さが2mm以下、または、1mm未満でもよい。基板110は酸研磨にかけ、または、それ以外の処理を施すことで、表面傷の影響を除去または低減するとよい。
【0089】
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100の硬さに関しては、被膜がその下にある基板よりも硬いのが通例であるナノインデンテーション(ナノ圧子押込み)測定法(バーコヴィッチ圧子を使用することにより実施するような)では、測定結果の硬さは、浅い圧入深さ(例えば、25nm未満または50nm未満)での塑性域の発現が原因で、初期は増大するかに見え、その後増大して、より深い圧入深さ(例えば、約50nmから約500nmまたは約1000nm)で最大値または停滞状態に達する。その後、更に深い圧入深さで硬さは減少し始めるが、これは下にある基板の影響が原因である。光学薄膜構造体120と比較してより高度な硬さを有しているガラスセラミック基板110を利用した場合、同じ効果が見られるが、但し、より内奥の圧入深さでは、下にある基板の影響が原因で硬さは増大する。
【0090】
更に、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100に関しては、圧入深さ範囲と、或る圧入深さ範囲における各硬さ値とを選択することで、本明細書に記載されている光学薄膜構造体120とその外側構造体130aおよび内側構造体130bそれぞれの各層の特定の硬さ応答を、下にあるガラスセラミック基板110の影響を受けずに識別することができる。バーコヴィッチ圧子を用いて光学薄膜構造体120(基板110上に配置されたている場合の)の硬さを測定すると、或る材料の恒久変形領域(塑性域)がその材料の硬さと関連している。圧子押込みの最中は、弾性応力場はこの恒久変形領域をはるかに超えて広がる。圧入深さが増加するにつれて、見かけの硬さと弾性率は、応力場と下にある基板110との相互作用による影響を被る。基板110が硬さに及ぼす影響は、より内奥の圧入深さで(すなわち、通例は光学被膜構造体120の全厚の約10%を超える深さで)生じる。更に、もっと複雑なのは、圧子押込み処理の最中に十分な可塑性を発現させるには、硬さ応答に或る程度の最小荷重を必要とする点である。この或る程度の最小荷重を加えるより前は、大抵は、硬さは増大する傾向を示す。
【0091】
光学薄膜構造体120における小さな圧入深さ(小さな荷重と特徴付けてもよい)(例えば、最大約50nmまで)では、材料の見かけの硬さは、圧入深さに対して劇的に増加するように見える。この小さな圧入深さ状況は、硬さの真の測定基準を表すものではなく、代わりに、圧子の有限の曲率半径に関連している前述の塑性域の発現を反映する。中程度の圧入深さで、見かけの硬さは最大レベルに近づく。より内奥の圧入深さでは、圧入深さが増すほど、ガラスセラミック基板110の影響が一層顕著になる。圧入深さが光学被膜厚さの約30%を超過すると、硬さが劇的に低下し始めることがある。
【0092】
1つ以上の実施形態では、
図1Aから
図1Dに描かれているように、透明製品100は、約10GPa以上の最大硬さを示すとよく、約11GPa以上、約12GPa以上、約13GPa以上、または、約14GPa以上の最大硬さを示してもよいが、これは、バーコヴィッチ圧子硬さ試験により光学薄膜構造体120の外表面120aから約100nmないし約500nmの圧入深さ、または、約100nmないし約900nmの圧入深さに亘って測定したような場合である。例えば、透明製品100は、10GPaの最大硬さを示すとよいが、11GPa、12GPa、13GPa、14GPa、15GPa、16GPa、17GPa、18GPa、19GPa、20GPa、または、それ以上の最大硬さを示してもよく、これは、バーコヴィッチ圧子硬さ試験により光学薄膜構造体120の外表面120aから約100nmないし約500nmの圧入深さに亘って測定したような場合である。実装例によっては、透明製品100の最大硬さが、100nmの圧入深さでは、10GPaより高いものもあり、11GPa、12GPa、13GPa、14GPa、15GPa、16GPa、17GPa、18GPa、または、19GPaより高いものもある。実装例によっては、透明製品100の最大硬さが、500nmの圧入深さでは、10GPaより高いものもあり、12GPa、14GPa、16GPa、17GPa、18GPa、または、19GPaより高いものもある。更に、実施形態によっては、透明製品100は、約10GPa以上の最大硬さを示すとよいものもあるが、約12GPa以上を示してもよく、約14GPa以上、約15GPa以上、約16GPa以上、約17GPa以上、または、約18GPa以上もの最大硬さを示すものもあるが、これは、バーコヴィッチ圧子硬さ試験により光学薄膜構造体120の外表面120aから約100nmないし約500nm、約100nmないし約900nm、または、約200nmないし約900nmの圧入深さ範囲に亘り測定したような場合である。
【0093】
本件開示の1つ以上の実施形態において、透明製品100は、
図1Aから
図1Dに描かれているように、700MPa以上、750MPa以上、800MPa以上、または、850MPa以上もの平均破壊応力レベルを示すが、これは、リング・オン・リング試験において上記のような各製品の光学薄膜構造体120の外表面120aに引張力が加わった状態で測定したような場合である。本質的に、これらの製品レベルの平均破壊応力レベルは当該各製品のガラスセラミック基板が未被覆であった場合の強度と比較して、予想外にも、破壊強さの損失を全く受けていないか、または、ほとんど受けていない光学薄膜構造体が設けられた透明製品100を思わせるほどである。実施形態によっては、透明製品100は、700MPaの平均破壊応力レベルを示すものもあり、725MPa、750MPa、775MPa、800MPa、825MPa、850MPa、875MPa、900MPa、925MPa、950MPa、975MPa、1000MPa、1025MPa、1050MPa、1075MPa、1100MPa、または、上述の各値の相互の間のあらゆる平均破壊応力レベルのどれかを示すものもあるが、これは、リング・オン・リング(ROR)試験において当該製品の光学薄膜構造体120の外表面120aに引張力が加わった状態で測定したような場合である。
【0094】
平均リング・オン・リング破壊応力レベルが700MPa以上である透明製品100(
図1Aから
図1Dを参照のこと)を再び参照すると、これらの破壊応力レベルは、透明製品100に採用されている光学薄膜構造体120の組成、構成、加工法、または、それらの各種組合せを制御することにより達成することができるものと理解するべきである。特に、光学薄膜構造体120の組成、構成、加工法、または、その各種組合せを調整することで、少なくとも700MPa(例えば、700MPaないし1100MPa)の残留圧縮応力レベルと少なくとも140GPa(例えば、140GPaないし170GPa、または、140GPaないし180GPa)の弾性率を得ることができる。光学薄膜構造体120のこれらの機械特性は、予想外にも、これらの光学薄膜構造体を採用している透明製品100における700MPa以上の平均破壊応力レベルと相関関係があるが(
図7および
図8、ならびに、後段以降のその後の対応する説明を参照のこと)、これは、リング・オン・リング試験において当該製品の光学薄膜構造体の外面120aに引張力を加えた状態で測定されたような場合である。透明製品100の実施形態によっては、光学薄膜構造体120が700MPaないし850MPaの残留圧縮応力と約140GPaないし約165GPaの弾性率を示すものもある。透明製品100の実施形態によっては、光学薄膜構造体120が750MPaないし950MPaの残留圧縮応力と約140GPaないし約175GPaの弾性率を示すものもある。透明製品100の実装例によっては、光学薄膜構造体120が850MPaないし1100MPaの残留圧縮応力と約140GPaないし約195GPaの弾性率を示すものもある。
【0095】
更に、光学薄膜構造体120の残留圧縮応力レベルおよび弾性率レベル(硬さレベルも併せて)に関して、これら諸特性は、低屈折率層130A、高屈折率層130B、キャッピング層131、および、引掻き傷耐性層150それぞれの化学量論量、厚さ、または、その両方を調整することにより制御することができる。各実施形態において、光学薄膜構造体120が示す残留圧縮応力レベルと弾性率レベルは(硬さレベルも併せて)、光学薄膜構造体の各層、特に、その高屈折率層130Bと引掻き傷耐性層150をスパッタリングするための各種処理条件を調整することにより制御することができる。実装例によっては、例えば、反応性スパッタリング法を採用することで、シリコン含有窒化物またはシリコン含有酸窒化物を含有している高屈折率層130Bを堆積することができる。更に、これらの高屈折率層130Bは、アルゴンガス(例えば、50sccmないし150sccmすなわち0.0845Pa m3/毎秒ないし0.2535Pa m3/毎秒の流量)、窒素ガス(例えば、200sccmないし250sccmすなわち0.338Pa m3/毎秒ないし0.4225Pa m3/毎秒の流量)、および、酸素ガスを含有している反応性ガス環境において、残留圧縮応力レベルと弾性率レベルが選択した酸素ガス流量でほぼ決まる状態でシリコン・スパッタ標的に電力を印加することにより、堆積することができる。例えば、上述のアルゴンと窒素のガス流条件に従って比較的低い酸素ガス流量(例えば45sccmすなわち0.07605Pa m3/毎秒)を採用することで、SiOxNy化学量論量を有する高屈折率層130Bを生成し、その結果の光学薄膜構造体120が約942MPaの残留圧縮応力、17.8GPaの硬さ、および、162.6GPaの弾性率を示すことができるよう図っている。もう1つ別の例として、前述のアルゴンと窒素のガス流条件に従って、比較的高い酸素ガス流量(例えば、65sccmすなわち0.10985Pa m3/毎秒)を採用することで、SiOxNy化学量論量を有する高屈折率層130Bを生成し、その結果の光学薄膜構造体120が約913MPaの残留圧縮応力、16.4GPaの硬さ、および、148.4GPaの弾性率を示すことができるよう図っている。従って、光学薄膜構造体120の化学量論量、特に、その高屈折率層130Bおよび引掻き傷耐性層150の化学量論量を制御することで、目標とする残留圧縮応力レベルと弾性率レベルを達成することができるが、これらは、予想外にも、透明製品100の好都合に高い平均破壊応力レベル(例えば、700MPa以上)と相関関係がある。
【0096】
更に、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100の硬さに関して、高屈折率層130B、引掻き傷耐性層150、または、その両方の材料の硬さを具体的に特徴付けることができる。実施形態によっては、高屈折率層130B、引掻き傷耐性層150、または、その両方の最大硬さは、バーコヴィッチ圧子硬さ試験により測定された場合、約10GPa以上になるものもあるが、約12GPa以上、約15GPa以上、約18GPa以上、または、約20GPa以上にもなるものもある。所与の層(例えば、高屈折率層130B)の硬さは、透明製品100を解析することにより測定されてもよいが、その場合、測定される層は光学薄膜構造体120の最上層である。硬さについて測定されるべき層が埋設層である場合、その硬さは、上に重なる層が設けられていない透明製品を作製した後に、当該製品の硬さを試験することによって測定するようにしても構わない。このような測定結果の硬さ値は、透明製品100、光学薄膜構造体120、外側構造体130aおよび内側構造体130b、高屈折率層130B、引掻き傷耐性層150、または、これらの各種組合せにより、約50nm以上または約100nm以上の圧入深さに沿って示され、また、連続的な圧入深さ範囲に亘って或る特定の硬さ値より高く維持することができる。各実施形態では、連続的な圧入深さ範囲は、約100nmから約300nm、約100nmから約400nm、約100nmから約500nm、約100nmから約600nm、約200nmから約300nm、約200nmから約400nm、約200nmから約500nm、約200nmから約600nm、約200nmから約800nm、約200nmから約1000nm、約300nmから約500nm、約300nmから約800nm、または、約300nmから約1000nmであるとよい。1つ以上の実施形態で、透明製品100は、ガラスセラミック基板110の硬さ(光学薄膜構造体120を除去した状態で主面112または主面114で測定することができる)よりも高い硬さを示す。
【0097】
各実施形態によれば、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100は、400nmないし700nmの光波長範囲に亘って、以下の値の裏表両面または2表面の(すなわち、ガラスセラミック基板110の主面112と主面114の両方による)平均明所視透過率もしくは平均可視透過率を示し、すなわち、0°から50°の法線に対する入射角で、0°から20°、0°から30°、0°から40°、0°から50°、または、0°から60°もの法線に対する入射角でも、約80%以上を示すとよいが、約85%以上を示すこともあり、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、または、約94%以上を示すこともある。実施形態によっては、透明製品100は、赤外スペクトル(例えば、940nmで)において0°から10°の法線に対する入射角で、0°から20°、0°から30°、0°から40°、0°から50°、または、0°から60°もの法線に対する入射角でも、約80%以上の表裏両面の平均透過率を示すものもあり、約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、または、約94%以上もの表裏両面の平均透過率を示すものもある。
【0098】
実装例によっては、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100が、D65光源を用いた場合に√(a
*2+b
*2)により得られる4未満の透過色を示すものもあるが、3.5未満、3未満、2.5未満、2未満、1.5未満、または、1にも満たない透過色を示すものもあり、これは、0°から10°の法線に対する入射角で測定したような場合、または、0°から90°の全入射角に亘って測定したような場合である。例えば、透明製品100は、0°から10°の法線に対する入射角で測定したような場合、または、0°から90°の全入射角に亘って測定したような場合で4未満の透過色を示すとよいが、3.75未満、3.5未満、3.25未満、3未満、2.75未満、2.5未満、2.25未満、2未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満、1.0未満、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、または、それよりわずかな透過色を示すことすらある。
【0099】
各実施形態によれば、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100は、400nmないし700nmの光波長範囲に亘って、基板110の主面の一方または両方による、以下の値の片面または1表面の(すなわち、基板110の主面112と主面114の一方による)平均明所視反射率もしくは平均反射率(すなわち、第1表面反射率または2表面反射率)を示し、すなわち、0°から10°の法線に対する入射角で、約15%未満を示すとよいが、約13%未満を示すこともあり、約12%未満、約10%未満、約8%未満、約6%未満、約4%未満、約2%未満、または、1%未満を示すことすらある。例えば、透明製品100は20%未満の第1表面の平均明所視反射率を示すとよいが、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、または、0.8%未満の第1表面の平均明所視反射率を示すことすらある。
【0100】
実装例によっては、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100が、D65光源を用いた場合に√(a
*2+b
*2)により得られるような、10未満の第1面の(すなわち、基板110の主面112と主面114の一方による)反射色を示すものもあるが、8未満、6未満、4未満、3未満、または、2未満の第1面反射色を示すものすらあり、これは、 0°から10°の法線に対する入射角で、または、0°から90°の全入射角に亘って測定したような場合である。例えば、透明製品100は、0°から10°の法線に対する入射角で、または、0°から90°の全入射角に亘って測定したような場合で、10未満の反射色を示すとよいが、9未満を示してもよく、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3.75未満、3.5未満、3.25未満、3未満、2.75未満、2.5未満、2.25未満、2未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満、1未満、または、それより低い反射色を示すことすらある。
【0101】
実施形態によっては、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100が、法線入射すなわち0°から10°の各入射角では、平均明所視透過率または平均明所視反射率において、もしくは、500nmないし600nmの光波長領域に亘る平均透過率または平均反射率において最大と最小の間で2%未満の変動を示すものもあり、1.8%未満、約1.5%未満、約1.0%未満、約0.9%未満、0.75%未満、または、0.5%にも満たない変動を示す場合もある。例えば、法線入射すなわち0°から10°の各入射角で、各透明製品100はそれぞれの透過スペクトルまたは反射スペクトルにおいて1.9%の変動を示すとよいが、1.8%、1.7%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1.0%、0.9%、0.85%、0.75%、0.6%、0.5%、または、それにも満たない振動を示すこともある。これらの振動透過率値は単位が絶対透過率であり、また、これらの振動反射率値は単位が絶対反射率であり、反射率と透過率の両方について0%から100%の段階評価である点に留意するべきである。このように、平均明所視反射率が1%で反射率振動が0.5%未満ある透明製品100の実施形態は、特定の波長範囲に亘って0.5%から1.5%の範囲の反射率値を有することになる。
【0102】
前述のように、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100は高い損傷耐性と引掻き傷耐性を示す。一実装例によれば、本件開示の透明製品100は、ヴィッカース圧子押込み破壊試験で1000g荷重を用いて検査した場合、平均最大直線寸法が160μm未満の、または、150μmにも満たない横方向亀裂域を示す。イオン交換ガラス基板が設けられた従来の各透明製品は、上記と同じヴィッカース圧子押込み破壊試験に準拠して1000g荷重を用いた場合、平均最大直線寸法が180μmより長い、または、200μmをも超える横方向亀裂域の兆候となる損傷レベルを示す。同様に、本件開示の透明製品100は、ヴィッカース圧子押込み破壊試験で1000g荷重を用いて検査した場合、25,000μm
2(平方マイクロメートル)未満の、または、20,000μm
2(平方マイクロメートル)にも満たない最大横方向亀裂面積を有する横方向亀裂域を示す。イオン交換ガラス基板が設けられた従来の各透明製品は、上記と同じヴィッカース圧子押込み破壊試験に準拠して1000g荷重を用いた場合、最大横方向亀裂面積が30,000μm
2(平方マイクロメートル)より広い最大横方向亀裂面積を有している横方向亀裂域の兆候となる損傷レベルを示す。
【0103】
もう1つ別の実装例によれば、本件開示の透明製品100(
図1Aから
図1Dを参照のこと)は、円錐形ダイヤモンド圧子を用いた逓増荷重式引掻き試験を光学薄膜構造体120の外表面120aに施して試験した場合、横方向亀裂を形成するのに約340mN以上の荷重閾値を示し、360mN以上、380mN以上、または、400mN以上もの荷重閾値を示す。これと対照的に、イオン交換ガラス基板が設けられた従来の各透明製品は、同じ試験条件下で逓増荷重式引掻き試験で検査した場合、横方向亀裂を形成するのに約320mN以下の荷重閾値を示す。更に、もう1つ別の実施形態によれば、本件開示の透明製品100は、逓増荷重式引掻き試験で最大で360mNのピーク荷重で実施した検査により、引掻き経路の中心を起点に20μm未満の横方向亀裂という形で目に見える損傷を示す。これとは対照的に、イオン交換ガラス基板が設けられた従来の各透明製品は、同じ試験条件下で少なくとも50μmの横方向亀裂という形で目に見える損傷を示す。
【0104】
更なる実装例によれば、透明製品100は、柘榴石(ガーネット)引掻き試験を受けた後、光学薄膜構造体120の外表面120aの試験に起因する引掻き傷を被った領域において0.1%未満、0.05%未満、または、0.005%にも満たない拡散反射率(すなわち、SCE値)を示す。例えば、透明製品100は、柘榴石引掻き試験を受けた後、0.001%、0.005%、0.01%、0.05%、0.075%、0.09%の拡散反射率示すとよいが、0.1%未満という上記以外の拡散反射率値を示すこともある。
【0105】
本明細書に開示されている透明製品100(例えば、
図1Aから
図1Dに示されているような)は装置製品に組入れることができ、例えば、表示部(または、表示装置製品)が設けられた装置製品(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーション・システム、(時計などの)ウェアラブル装置 などの家庭用電化製品)、拡張現実表示装置、ヘッドアップ表示装置、メガネをベースにした表示装置、建築用装置製品、輸送用装置製品 (例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電気器具装置製品、または、透明性、ひっかき傷耐性、耐摩耗性、損傷耐性、もしくは、これら諸特性の各種組合せの恩恵に与るあらゆる装置に組入れられる。本明細書に開示されている各種製品のいずれかを組み入れた具体例の装置製品(例えば、
図1Aから
図1Dに描かれた透明製品100と一致するもの)を、
図5Aおよび
図5Bに例示している。具体的には、
図5Aと
図5Bは、前部504、後部506、および、両側部508から成る筐体502と、少なくとも一部が該筐体の内側にある、または、全体が該筐体の内部にあるとともに、少なくとも、制御装置、記憶装置、および、該筐体の前面またはそこに隣接して設けられている表示装置510を構成部材の一部に含んでいる電子コンポーネント(図示せず)と、該筐体の前面にある、または、それを覆っていることで該表示装置を覆うようにした被覆基板512とを含んでいる家庭用電化装置500を例示している。実施形態によっては、被覆基板512が、本明細書に開示されている透明製品100のいずれかを含んでいるものもある。
具体例
以下の各具体例は、本件開示によりもたらされる多様な特徴および利点を説明するものであり、本発明および添付の特許請求の範囲を限定することは決して意図していない。
【0106】
これらの具体例(具体例1から具体例3、および、具体例4Aから具体例7C)ならびに比較対象の各具体例(すなわち、比較対象の具体例1、比較対象の具体例5Aおよび5B、ならびに、比較対象の具体例7)においては、透明製品は本件開示の各種の方法に従って形成され、表1から表3および表7から表10Cの各々に詳述してあるとおりである。より具体的には、これら各具体例の光学薄膜構造体は、別段の注記のない限り、金属蒸着域および誘導結合プラズマ‐ICP(ガス反応)域におけるスパッタリング出力を独立制御しながら、回転ドラム式塗布装置での金属モード反応性スパッタリング法を利用して形成した。各種の反応性ガス(例えば、窒素ガス‐N2、酸素ガス‐O2など)は、誘導結合プラズマ(ガス反応)域で金属ターゲットから隔離されている。更に、金属スパッタリング域は不活性ガス流(すなわち、アルゴンガス‐Ar)のみを使用している。
【0107】
これら各具体例に従って調製した実験試料に関して、アジレント(Agilent)製のCary 5000 UV‐Vis‐NIR分光光度計を使用して光透過率特性および反射率特性を測定した。以下の各具体例で報告される透明製品の硬さ値は、本件開示の前のほうで既に概説したバーコヴィッチ硬さ試験法を利用して得られた。より具体的には、強化ガラスセラミック基板と組み合わせたような本発明の各例(具体例1から具体例3)は、可視スペクトルにおける反射率変動および透過率変動が比較的小さいだけでなく、透過率と反射率において低い色値を示し、それらの概要は前のほうで本件開示の透明製品100について説明済みである(
図1Aから
図1Dとそれぞれに対応する説明を参照のこと)。更に、本発明の具体例(具体例4Aないし具体例7C)は有利な平均破壊強さレベル(例えば、700MPaより高いレベル)を示すか、そうでなければ、示すものと期待されるが、これらの概要もまた、前のほうで本件開示の透明製品100について説明済みである。
【0108】
比較対象の具体例1
強化ガラス基板が設けられた比較対象の透明製品を、以下の表1に詳述した構造を有しているこの具体例のために調製した。ガラス基板はイオン交換アルミノ珪酸ガラス基板であり、厚さが550μmで屈折率は1.509である。基板の組成は次のとおりである。すなわち、61.81%のSiO2、3.9%のB2O3、19.69%のAl2O3、12.91%のNa2O、0.018%のK2O、1.43%のMgO、0.019%のFe2O3、および、0.223%のSnO2(単位は重量%、酸化物基準)。基板は溶融塩浴液を使用して強化することで、40μmのカリウムイオンの層内浸透深さ(DOL)で850MPaの最大圧縮応力(CS)を達成した。更に、光学薄膜構造体の各層を、米国特許出願公開第2020/0158916号に明示されている蒸着条件に従って堆積させたが、その主要な部分はここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
【0109】
【0110】
具体例1
強化ガラスセラミック基板が設けられた透明製品を、以下の表2に詳述する構造を有する構造を有しているこの具体例のために調製した。ガラスセラミック基板はイオン交換LAS系ガラスセラミック基板であり、厚さが600μmで屈折率は1.531である。更に、ガラスセラミック基板の組成は次のとおりである。組成は次のとおりである。すなわち、74.5%のSiO2、7.53%のAl2O3、2.1%のP2O5、11.3%のLi2O、0.06%のNa2O、0.12%のK2O、4.31%のZrO2、0.06%のFe2O3、および、0.02%のSnO2(単位は重量%、酸化物基準)。これに加えて、ガラスセラミック基板は次のスケジュールに従ってセラミック化された。すなわち、(a)室温から580℃まで5℃/毎分の割で逓増させる、(b)2.75時間に亘り580℃に保つ、(c)755℃まで2.5℃/毎分の割で逓増させる、(d)0.75時間に亘り755℃に保つ、そして、(e)室温まで炉速度で冷ます。セラミック化の後は、ガラスセラミック基板を500℃の60%KNO3/40%NaNO3+0.12%LiNO3(単位は重量%)の溶融塩浴液中で6時間に亘ってイオン交換強化処理に付した。更に、光学薄膜構造体の各層を、米国特許出願公開第2020/0158916号に明示されている蒸着条件に従って堆積させたが、その主要な部分はここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
【0111】
この具体例の透明製品を再び参照すると、ガラスセラミック基板と引掻き傷耐性層(例えば、表2の層8)との間の光学薄膜構造体の各層(例えば、表2の層1から層7)は、基板110と引掻き傷耐性層の間の遷移域が原因で生じる低反射率かつ低色を達成するよう構成されている。光学薄膜構造体の内側構造体内のこの層構成は、ガラスセラミック基板と引掻き傷耐性層との間の光インピーダンス整合として説明することもできる。これに加えて、表2から明らかなように、光学薄膜構造体の内側構造体の各低屈折率層の体積は約59%未満であり(すなわち、層1、層3、層5、および、層7の合計が57.1%になるとして)、光学薄膜構造体の内側構造体の各高屈折率層の体積は約41%より大きい(すなわち、層2、層4、および、層6の合計が42.9%になるとして)。
【0112】
【0113】
具体例2および具体例3
強化ガラスセラミック基板が設けられた透明製品を、以下の表3に詳述している構造を有しているこれら具体例のために調製した。ガラスセラミック基板はイオン交換LAS系ガラスセラミック基板であり、厚さが600μmで屈折率は1.531である。更に、ガラスセラミック基板の組成は次のとおりである。すなわち、74.5%のSiO2、7.53%のAl2O3、2.1%のP2O5、11.3%のLi2O、0.06%のNa2O、0.12%のK2O、4.31%のZrO2、0.06%のFe2O3、および、0.02%のSnO2(単位は重量%、酸化物基準)。これに加えて、ガラスセラミック基板を次のスケジュールに従ってセラミック化した。すなわち、(a)室温から580℃まで5℃/毎分の割で逓増させる、(b)2.75時間に亘り580℃に保つ、(c)755℃まで2.5℃/毎分の割で逓増させる、(d)0.75時間に亘り755℃に保つ、そして、(e)室温まで炉速度で冷ます。セラミック化の後は、ガラスセラミック基板を500℃の60%KNO3/40%NaNO3+0.12%LiNO3(単位は重量%)の溶融塩浴液中で6時間に亘ってイオン交換強化処理に付した。更に、光学薄膜構造体の各層を、米国特許出願公開第2020/0158916号に明示されている蒸着条件に従って堆積させたが、その主要な部分はここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
【0114】
【0115】
具体例1から具体例3の機械特性と比較対象の具体例1の機械特性
図2を参照すると、測定結果の硬さ(単位GPa)に対する、バーコヴィッチ硬さ試験から得られた、比較対象の具体例1の透明製品と具体例1から具体例3の透明製品それぞれの外表面の内奥への変位量(単位nm)のグラフが供与されている。光学薄膜構造体が設けられているものとして、製品の各々の硬さ値は、本件開示の前の方で概説済みのバーコヴィッチ硬さ試験に従って、ケー・エル・エー・インストゥルメンツ(KLA Instruments)製のG200 Nanо Indenter(登録商標)圧子上のバーコヴィッチ・ダイヤモンド・チップを使用したナノインデンテーション(ナノ圧子押込み)測定法により測定した。
【0116】
図2に示すように、具体例2と具体例3それぞれの硬さ値が高くなっているが、これは、一番厚いSiO
xN
y層(例えば、引掻き傷耐性層)を覆って配置されている反射防止層とSiO
2材料の量がより少ないのが原因である。比較対象の具体例1と比較した場合に500nmないし1000nmの圧入深さでは具体例1から具体例3のほうが硬さ値が高いことも、その下にあるイオン交換ガラス基板について比較対象の具体例1のものと比較した場合に具体例1から具体例3それぞれの下位イオン交換ガラスセラミック基板のほうが高い硬さを示すことと相関関係がある。更に、以下の表4は、測定結果のバーコヴィッチ・ダイヤモンド・ナノインデンテーション硬さに対する、
図2に由来する、具体例1から具体例3と比較対象の具体例1の深さをまとめたものである。 更に、表4には、これらの試料の弾性率の測定値が含まれている。
【0117】
【0118】
具体例1から具体例3の光学特性と比較対象の具体例1の光学特性
以下の表5および表6は、具体例1から具体例3と比較対象の具体例1についてそれぞれに、光透過率特性および反射率特性をまとめたものである。特に、光透過率特性と反射率特性は、これらの具体例(具体例1から具体例3と比較対象の具体例1)に従って調製された各実験試料について、アジレント(Agilent)製のCary 5000 UV‐Vis‐NIR分光光度計を使用して測定した。表5に列挙した光透過率特性は、これらの具体例の各々の基板および光学薄膜構造体の両主面により測定されたとおりである。更に、表6に列挙した光反射率特性は、既に述べたが、これらの具体例の各々の基板および光学薄膜構造体の主表面の一方および両方により測定したとおりである。
【0119】
【0120】
【0121】
具体例1から具体例3および比較対象の具体例1の引掻き試験結果と破壊試験結果
本発明の具体例1から具体例3は、柘榴石引掻き試験により定量化されたような場合に、酷い引掻き事象に対する優れた耐性を示す。この試験は150グリット粗さの柘榴石(ガーネット)紙やすりに約0.6cm×0.6cmの接触面積に亘って4kg荷重を加えて1回擦って実施される。この引掻き事象の後、6mm直径の開口が設けられたコニカ‐ミノルタ製CM700Dを使った正反射光除去(SCE)方式測定を利用して、引掻き傷のある領域の拡散反射光を測定することにより引掻きのレベルを定量化する。具体例1から具体例3についての柘榴石引掻き試験後、拡散反射率(SCE)値は0.005%を下回ったが、比較対象として、未被覆の化学強化アルミノ珪酸ガラスの平均(すなわち、未被覆のイオン交換ガラス基板または光学薄膜構造体を欠いているイオン交換ガラス基板の平均、および、摩擦を低減してもガラス製品の硬さを修正していない10nm未満のフロロシランの洗浄が容易な被膜が設けられたイオン交換ガラス基板の平均)は約0.25%以上である。
【0122】
本発明の具体例はまた、硬い粗面上にスマートフォンを落とすなど、現実世界の応力シナリオに近い試験を受けた場合にも、優れた損傷耐性を示す。特に、具体例1と比較対象の具体例1に360mNの最大荷重まで逓増荷重式引掻き試験にかけた。
図3を参照すると、同図は2枚の光学顕微鏡写真を含んでおり、それぞれ逓増荷重式引掻き試験後の、ガラス基板および光学薄膜構造体が設けられた比較対象の透明製品(比較対象の具体例1)の外表面のものと、ガラスセラミック基板および光学薄膜構造体が設けられた透明製品(具体例1)の外表面のものである。
図3から明らかなように、比較対象の具体例1の横方向亀裂の程度は、引掻き経路の中心を起点に少なくとも50μmである。これとは対照的に、具体例1において視認できる損傷の範囲は、引掻き経路の中心を起点に約20μm未満である。
【0123】
更に、具体例1および比較対象の具体例1を多様な荷重レベルで逓増荷重式引掻き試験にかけることで、損傷の開始(すなわち、横方向亀裂の形成)に相関関係のある最大荷重を判定した。特に、具体例1に、同試験において損傷開始までに最大で約400mNの連続逓増荷重をかけた。これとは対照的に、比較対象の具体例1に、同試験において損傷開始までに最大で約320mNの連続逓増レベルの荷重をかけた。
【0124】
同様に、具体例1と比較対象の具体例1を、1000gの荷重でヴィッカース圧子押込み破壊試験にかけた。
図4を参照すると、同図は2枚の光学顕微鏡写真を含んでおり、それぞれヴィッカース圧子押込み破壊試験後の、ガラス基板および光学薄膜構造体が設けられた比較対象の透明製品(比較対象の具体例1)の外表面のものと、ガラスセラミック基板および光学薄膜構造体が設けられた透明製品(具体例1)の外表面のものである。
図4から明らかなように、比較対象の具体例1において視認できる横方向亀裂の程度は、圧痕の中心を起点に平均して100μmより長く伸びている(これに対応する最長直線破壊の広がりは平均して約200μmより長く、損傷面積は約30,000平方マイクロメートルよりも広い)。これとは対照的に、具体例1において視認できる損傷の程度は、約70μm未満の長さである(これに対応する直線破壊の広がりは平均して約150μmより短く、損傷面積は約20,000平方マイクロメートル未満である)。
【0125】
具体例4Aおよび具体例4B
強化ガラスセラミック基板が設けられた透明製品を、以下の表7に詳述する構造を有しているこの実施例のために調製した。ガラスセラミック基板はイオン交換LAS式ガラスセラミック基板であり、厚さが600μmで屈折率は1.53である。更に、ガラスセラミック基板の組成は次のとおりである。すなわち、74.5%のSiO2、7.53%のAl2O3、2.1%のP2O5、11.3%のLi2O、0.06%のNa2O、0.12%のK2O、4.31%のZrO2、0.06%のFe2O3、および、0.02%のSnO2(単位は重量%、酸化物基準)。これに加えて、ガラスセラミック基板を次のスケジュールに従ってセラミック化した。すなわち、(a)室温から580℃まで5℃/毎分の割で逓増させる、(b)2.75時間に亘り580℃に保つ、(c)755℃まで2.5℃/毎分の割で逓増させる、(d)0.75時間に亘り755℃に保つ、そして、(e)室温まで炉速度で冷ます。セラミック化の後は、ガラスセラミック基板を500℃の60%KNO3/40%NaNO3+0.12%LiNO3(単位は重量%)の溶融塩浴液中で6時間に亘ってイオン交換強化処理に付した。更に、光学薄膜構造体の各層を、米国特許出願公開第2020/0158916号に明示されている蒸着条件に従って堆積させたが、その主要な部分はここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
【0126】
再度この具体例の透明製品を参照すると、ガラスセラミック基板と引掻き傷耐性層(例えば、表7の層8)との間の光学薄膜構造体の各層(例えば、表7の層1から層7)は、基板110と引掻き傷耐性層の間の遷移域が原因で生じる低反射率かつ低色を達成するよう構成されている。更に、リング・オン・リング試験で測定されたような場合に700MPaを超過する平均破壊強度レベルを透明製品が示すのを保証する残留圧縮応力レベルと、硬さレベルと、弾性率レベルを光学薄膜構造体が獲得するように、光学薄膜構造体の層構成を、構造体中の高屈折率層の化学量論量と併せて構成した。更に、表7にも記載しているように、各高屈折率層の化学量論量を意図的に変化させると、これらの層の屈折率が変化する。
【0127】
【0128】
更にこの具体例に関して、具体例4Aの高屈折率層および具体例4Bの高屈折率層を調製し、SiOxNyを含有した、それぞれに屈折率が1.75および1.88である高屈折率層を作製した。特に、これらの試料(具体例4Aおよび具体例4B)の光学薄膜構造体は、表7で概説されている設計に従って構成された。具体例4Aおよび具体例4Bの各高屈折率層は従来の反応性スパッタリング法に従って堆積されているが、次の条件に準拠した反応性スパッタリング法に従って堆積させた。すなわち、スパッタ電力=6kWないし7kW、誘導結合プラズマ(ICP)電力=2kWないし4kW、アルゴンガス流量(金属スパッタ域)=50sccmないし150sccm(0.0845Pa m3/毎秒ないし0.02535Pa m3/毎秒)、好ましくは、=70sccmないし90sccm(0.1183Pa m3/毎秒ないし0.15209Pa m3/毎秒)、アルゴンガス流量(ICP域)=0sccmないし100sccm(0Pa m3/毎秒ないし0.169Pa m3/毎秒)、例えば、=80sccm(0.13519Pa m3/毎秒)、酸素ガス流量(ICP域)=35sccmないし65sccm(0.05915Pa m3/毎秒ないし0.10985Pa m3/毎秒)、および、窒素ガス流量 (ICP域)=200sccmないし250sccm(0.338Pa m3/毎秒ないし0.4225Pa m3/毎秒)。特に、酸素ガス流量を変動させることで、屈折率と、弾性率と、残留圧縮応力と、硬さとに影響を与える、SiOxNy化学量論量を制御した高屈折率層を生成したが、この際、金属スパッタリング域のアルゴンガス流も膜密度と、弾性率と、硬さと、応力とを制御する役割を果たした。
【0129】
ここで
図6Aおよび
図6Bを参照すると、それぞれに硬さ(単位GPa)および弾性率(単位GPa)に対する変位量(単位nm)のグラフが提示されているが、これらは、当該具体例(具体例4Aおよび具体例4B)の2種類の透明製品の光学薄膜構造体の外表面にバーコヴィッチ硬さ試験を施して測定したような場合である。
図6Aのデータから明らかであるが、これら試料は各々が、約100nmから約500nmの(または、約900nmに達する)圧入深さでそれぞれ約18GPaおよび16GPaの最大硬さレベルを示した。
図6Bのデータから明らかなように、これらの試料は各々が、約100nmの圧入深さで、それぞれ約180GPaおよび160GPaの弾性率レベルを示した。従って、この具体例の光学薄膜構造体中の各高屈折率層の化学量論量を変化させた結果として、弾性率や硬さなどの、変化するが制御可能な機械的諸特性を有している光学薄膜構造体を生じることができたのは明らかである。
【0130】
具体例4C
この具体例では、表8(下記を参照のこと)のガラスセラミック基板および光学薄膜構造体に準拠して構成された光学薄膜構造体を有している4種の透明製品が応力モデル化の対象であった。特に、これらの製品は、光学薄膜構造体の残留圧縮応力レベルと弾性率レベルの観点から、リング・オン・リング試験結果の平均破壊強度を評価する目的でモデル化された。更に、これら4種の製品は表8の光学薄膜構造体を採用したが、各構造体はそれぞれに140GPa(具体例4C1)、150GPa(具体例4C2)、160GPa(具体例4C3)、および、170GPa(具体例4C4)の弾性率レベルを示すようにSiOxNy高屈折率層を設けた別構成になっていた。
【0131】
この具体例でのモデル化を実行する際に、次の仮定がなされた。堅固で硬い光学薄膜構造体とガラスセラミック基板が設けられた本件開示の透明製品については、光学薄膜構造体中の既存の傷を広めるのに要する付加歪みは、基板それ自体の既存の傷を広めるのに要する歪みよりもはるかに小さいが、これは主として、脆い光学薄膜構造体がガラスセラミック基板よりも硬いためである。従って、最初に光学薄膜構造体が破損し、後で基板を貫通する亀裂を伴い、それが最終的には、亀裂を推進する力がガラスセラミック基板の耐破壊性を超えるや、システムの壊滅的な故障につながると想定された。次に、一連の亀裂を試料に加えるような態様で、破壊力学に基づく数値モデル化 (有限要素解析による) を実行し、外部から付加される曲げ荷重下で亀裂先端部の応力拡大係数(KI)がガラスセラミック基板破壊靭性(KIC)に等しくなった時の歪みレベルを判定した。次に、寸法が0.1μmないし2.5μmの範囲に及ぶ亀裂の基板における想定欠陥分布に基づいて、平均残留強度を算定した。
【0132】
【0133】
ここで
図7を参照すると、リング・オン・リング試験で測定されたような場合の、平均製品破壊応力(単位MPa)に対する、多様な弾性率を有するこの具体例の各光学薄膜構造体が設けられた透明製品(具体例4C1から具体例4C4)についてモデル化されたような場合の、光学薄膜構造体残留応力(単位MPa)のグラフが提示されている。このグラフから明らかなように、光学薄膜構造体の残留応力を700MPa以上に維持したうえで、光学薄膜構造体の弾性率を170GPa以下に制御することにより、光学薄膜構造体が少なくとも750MPaの破壊応力を示すようになるのを確保することができる。更に、光学薄膜構造体の弾性率が約140GPaから約170GPaに維持されているという条件では、光学薄膜構造体において残留圧縮応力を高めることで、平均破壊応力が750MPaから850MPaを遥かに超えるレベルに改善される傾向がある。
【0134】
具体例5
実際の透明製品試料を調製して検査することで、
図7に示した前述のモデル化の結果を検証した。ここで
図8を参照すると、多様な光学薄膜構造体が設けられた各透明製品とこの具体例の比較対象の透明製品について、リング・オン・リング試験で測定されるような場合の、製品レベルの平均破壊応力(単位MPa)の箱ひげ図が提示されている。
図8では、リング・オン・リング試験結果の平均破損応力レベルが、以下の5種類の試料群について報告されている。すなわち、(a)光学薄膜構造体が設けられていないガラスセラミック基板の対照群(比較対象の具体例5A)、(b)ガラスセラミック基板および従来の光学薄膜構造体を採用した透明製品の対照群(比較対象の具体例5B)、(c)残留圧縮応力が740MPa、弾性率が170GPa、硬さが17.7GPaである本項具体例による光学薄膜構造体を採用している本発明の透明製品(具体例5D1)、(d)残留圧縮応力が915MPa、弾性率が175GPa、硬さが18.6GPaである本項具体例による光学薄膜構造体を採用している本発明の透明製品(具体例5D2)、および、(e)残留圧縮応力が838MPa、弾性率が157GPa、硬さが16.0GPaである本項具体例による光学薄膜構造体を採用している本発明の透明製品(具体例5D3)。
【0135】
より具体的には、本項具体例の各試料(比較対象の具体例5Aおよび比較対象の具体例5B、ならびに、具体例5D1から5D3)は、前のほうの各具体例で概説したようなガラスセラミック基板とイオン交換条件と採用した。更に、具体例5D1から5D3の各光学薄膜構造体は表7に列挙した11層設計に従って作製したが、各高屈折率層の化学量論量に調整を加えることで残留圧縮応力特性と、弾性率特性と、硬さ特性を得るとともに(
図8および前段以前を参照)、設計中の多様な層の厚さに微調整を加えた。本項具体例の各試料(すなわち、具体例5D1から具体例5D3)の低屈折率層は、従来の反応性スパッタリング法に従って堆積されているが、高屈折率層は、以下の条件に準拠した反応性スパッタリング法に従って堆積させた。すなわち、スパッタ電力=6kWないし7kW、誘導結合プラズマ(ICP)電力=2kWないし4kW、アルゴンガス流量(金属スパッタ域)=50sccmないし150sccm(0.0845Pa m
3/毎秒ないし0.02535Pa m
3/毎秒)、好ましくは、=70sccmないし90sccm(0.1183Pa m
3/毎秒ないし0.15209Pa m
3/毎秒)、アルゴンガス流量(ICP域)=0sccmないし100sccm(0Pa m
3/毎秒ないし0.169Pa m
3/毎秒)、例えば、=80sccm(0.13519Pa m
3/毎秒)、酸素ガス流量(ICP域)=35sccmないし65sccm(0.05915Pa m
3/毎秒ないし0.10985Pa m
3/毎秒)、および、窒素ガス流量 (ICP域)=200sccmないし250sccm(0.338Pa m
3/毎秒ないし0.4225Pa m
3/毎秒)。特に、酸素ガス流量を変動させることで、屈折率と、弾性率と、残留圧縮応力と、硬さとに影響を与える、SiO
xN
y化学量論量を制御した高屈折率層を生成したが、この際、金属スパッタリング域のアルゴンガス流も膜密度と、弾性率と、硬さと、応力とを制御する役割を果たした。
【0136】
これに加えて、比較対象の具体例5Bの従来型の光学薄膜構造体を、表7に列挙されたものに概ね類似している設計に従って調製した。但し、この比較対象の具体例における全ての高屈折率層は、200GPaより高い弾性率と約1.94から約2.04の屈折率を示すようなSiOxNy化学量論で調製した。特に、比較対象の具体例5Bの各高屈折率層の生成は、SiOxNy化学量論で調製し、または、酸素ガス流量(ICP域)を30sccm(0.0507Pa m3/毎秒)より低いレベル、例えば、0sccmないし25sccm(Pa m3/毎秒ないし0.04225Pa m3/毎秒)に減じることによりSi3N4にほぼ等しいSiNx組成で調製したが、その際、スパッタ出力=6kWないし9kW、誘導結合プラズマ(ICP)電力=2kWないし4kW、アルゴンガス流量(金属スパッタ域)=100sccmないし500sccm(0.169Pa m3/毎秒ないし0.845Pa m3/毎秒)、アルゴンガス流量(ICP域)=80sccm(0.13519Pa m3/毎秒)、および、窒素ガス流量(ICP域)=100sccmないし250sccm(0.169Pa m3/毎秒ないし0.4225Pa m3/毎秒)であった。
【0137】
図8から明らかなように、実験結果は
図7のモデル化の結果と相関関係がある。更に、本項具体例の本発明の透明製品(具体例5D1から具体例5D3)が、従来型の光学薄膜構造体設計(約525MPa)、すなわち、本件開示の目標とする残留圧縮応力レベルと弾性率レベルに関して最適化されていない設計の対照群のリング・オン・リング試験結果の平均破壊応力レベルを超過したレベル(具体例それぞれに700MPa、800MPa、および、850MPa)を示すことは明らかである。
【0138】
具体例6Aおよび具体例6B
強化ガラスセラミック基板が設けられた透明製品を、以下の表9Aおよび表9Bに詳述した構造(それぞれ具体例6Aおよび具体例6B)を有する本項具体例のために調製した。ガラスセラミック基板はイオン交換LAS式ガラスセラミック基板であり、厚さが600μmで屈折率は1.53である。更に、ガラスセラミック基板の組成は次のとおりである。すなわち、74.5%のSiO2、7.53%のAl2O3、2.1%のP2O5、11.3%のLi2O、0.06%のNa2O、0.12%のK2O、4.31%のZrO2、0.06%のFe2O3、および、0.02%のSnO2(単位は重量%、酸化物基準)。これに加えて、ガラスセラミック基板を次のスケジュールに従ってセラミック化した。すなわち、(a)室温から580℃まで5℃/毎分の割で逓増させる、(b)2.75時間に亘り580℃に保つ、(c)755℃まで2.5℃/毎分の割で逓増させる、(d)0.75時間に亘り755℃に保つ、そして、(e)室温まで炉速度で冷ます。セラミック化の後は、ガラスセラミック基板を500℃の60%KNO3/40%NaNO3+0.12%LiNO3(単位は重量%)の溶融塩浴液中で6時間に亘ってイオン交換強化処理に付した。更に、光学薄膜構造体の各層を、米国特許出願公開第2020/0158916号に明示されている蒸着条件に従って堆積させたが、その主要な部分はここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
【0139】
本項の具体例の透明製品を再び参照すると、ガラスセラミック基板と引掻き傷耐性層(例えば、表9Aおよび表9Bの層8)との間の光学薄膜構造体の各層(例えば、表9Aおよび表9Bの層1から層7)は、基板110と引掻き傷耐性層との間の遷移域が原因で生じる低反射率と低色を達成するよう構成されている。更に、リング・オン・リング試験で測定されたような場合に700MPaを超過する平均破壊強度レベルを透明製品が示すのを保証する残留圧縮応力レベルと弾性率レベルとを光学薄膜構造体が獲得するように(例えば、具体例6Aについては約160GPa、具体例6Bについては約150GPa)、光学薄膜構造体の層構成を、構造体中の高屈折率層の化学量論量と併せて構成した。本項の具体例の各試料(すなわち、具体例6Aおよび具体例6B)の低屈折率層は従来の反応性スパッタリング法に従って堆積されているが、高屈折率層は以下の条件に準拠した反応性スパッタリング法に従って堆積させた。すなわち、スパッタ電力=6kWないし7kW、誘導結合プラズマ(ICP)電力=2kWないし4kW、アルゴンガス流量(金属スパッタ域)=50sccmないし150sccm(0.0845Pa m3/毎秒ないし0.02535Pa m3/毎秒)、好ましくは、=70sccmないし90sccm(0.1183Pa m3/毎秒ないし0.15209Pa m3/毎秒)、アルゴンガス流量(ICP域)=0sccmないし100sccm(0Pa m3/毎秒ないし0.169Pa m3/毎秒)、例えば、=80sccm(0.13519Pa m3/毎秒)、酸素ガス流量(ICP域)=35sccmないし65sccm(0.05915Pa m3/毎秒ないし0.10985Pa m3/毎秒)、および、窒素ガス流量 (ICP域)=200sccmないし250sccm(0.338Pa m3/毎秒ないし0.4225Pa m3/毎秒)。特に、酸素ガス流量を変動させることで、屈折率と、弾性率と、残留圧縮応力と、硬さとに影響を与える、SiOxNy化学量論量を制御した高屈折率層を生成したが、この際、金属スパッタリング域のアルゴンガス流も膜密度と、弾性率と、硬さと、応力とを制御する役割を果たした。
【0140】
【0141】
【0142】
具体例7Aから具体例7C
強化ガラスセラミック基板が設けられた透明製品を、以下の表10Aから表10Cに詳述した構造(それぞれ、具体例7Aから具体例7C)を有している本項の具体例のために調製した。ガラスセラミック基板はイオン交換LAS系ガラスセラミック基板であり、厚さが600μmで屈折率は1.533である。更に、ガラスセラミック基板の組成は次のとおりである。組成は次のとおりである。すなわち、74.5%のSiO2、7.53%のAl2O3、2.1%のP2O5、11.3%のLi2O、0.06%のNa2O、0.12%のK2O、4.31%のZrO2、0.06%のFe2O3、および、0.02%のSnO2(単位は重量%、酸化物基準)。これに加えて、ガラスセラミック基板は次のスケジュールに従ってセラミック化された。すなわち、(a)室温から580℃まで5℃/毎分の割で逓増させる、(b)2.75時間に亘り580℃に保つ、(c)755℃まで2.5℃/毎分の割で逓増させる、(d)0.75時間に亘り755℃に保つ、そして、(e)室温まで炉速度で冷ます。セラミック化の後は、ガラスセラミック基板を500℃の60%KNO3/40%NaNO3+0.12%LiNO3(単位は重量%)の溶融塩浴液中で6時間に亘ってイオン交換強化処理に付した。更に、光学薄膜構造体の各層を、米国特許出願公開第2020/0158916号に明示されている蒸着条件に従って堆積させたが、その主要な部分はここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。
【0143】
この実施例の透明製品を再び参照すると、ガラスセラミック基板と引掻き傷耐性層(例えば、表10Aから表10Cの層8)との間の光学薄膜構造体の各層(例えば、表10Aから表10Cの層1から層7)は、基板110と引掻き傷耐性層の間の遷移域が原因で生じる低反射率かつ低色を達成するよう構成されている。更に、リング・オン・リング試験で測定されたような場合に700MPaを超過する平均破壊強度レベルを透明製品が示すのを保証する残留圧縮応力レベルと弾性率レベルとを光学薄膜構造体が獲得するように(例えば、具体例7Aについては約160GPa、具体例7Bについては約160GPa、具体例7Cについては約150GPa)、光学薄膜構造体の層構成を、構造体中の高屈折率層の化学量論量と併せて構成した。更に、具体例7Bと具体例7Cそれぞれの光学薄膜構造体に関しては、これらの設計における全ての高屈折率層が約150GPaないし約160GPaの弾性率を有しているわけではない。但し、引掻き傷耐性層は、この状況では最も厚く最も影響力のある層であるが、約150GPaないし約160GPaの弾性率レベルで構成されている。本項の具体例の各試料(すなわち、具体例7Aから具体例7C)の低屈折率層は従来の反応性スパッタリング法に従って堆積されているが、SiOxNyを含有している高屈折率層は、以下の条件に準拠した反応性スパッタリング法に従って堆積させた。すなわち、スパッタ電力=6kW、アルゴンガス流量=80sccmないし100sccm(0.13519Pa m3/毎秒ないし0.169Pa m3/毎秒)、酸素ガス流量=35sccmないし65sccm(0.05915Pa m3/毎秒ないし0.10985Pa m3/毎秒)、および、窒素ガス流量=250sccm(0.4225Pa m3/毎秒)。特に、酸素ガス流量を変動させることで、屈折率と、弾性率と、残留圧縮応力と、硬さとに影響を与える、SiOxNy化学量論量を制御した高屈折率層を生成した。
【0144】
これに加えて、具体例7Bおよび具体例7Cにおける厚い引掻き傷耐性層の上の高屈折率層はその一部に、SiOxNyを含んでいるか、または、Si3N4にほぼ等しいSiNx組成を含んでいる。これらの層は、SiOxNyを含んでいる引掻き傷耐性層よりも概ね薄いせいで、光学薄膜構造体の全体的な機械特性(例えば、弾性率、残留圧縮応力、および、硬さ)に及ぼす影響は少ない。更に、これらのSiNx層を次のように加工処理した。すなわち、スパッタ電力=6kWないし9kW、誘導結合プラズマ(ICP)電力=2kWないし4kW、アルゴンガス流量(金属スパッタ域)=100sccmないし500sccm(0.169Pa m3/毎秒/毎秒ないし0.845Pa m3/毎秒)、アルゴンガス流量(ICP域)=80sccm(0.13519Pa m3/毎秒)、酸素ガス流量(ICP域)=0sccmないし25sccm(0Pa m3/毎秒ないし0.04225Pa m3/毎秒)、および、窒素ガス流量=100sccmないし250sccm(0.169Pa m3/毎秒ないし0.4225Pa m3/毎秒)。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
ここで
図9Aを参照すると、本項の具体例の3種の透明製品(具体例7Aから具体例7C)について、0°ないし90°の入射角で測定したような場合の片面反射色のグラフが提示されている。データが証明しているように、具体例7Aから具体例7Cそれぞれの反射色レベルは、
図9の多様なa
*,b
*座標について9より小さい(すなわち、√(a
*2+b
*2))。
【0149】
ここで
図9Bを参照すると、本項の具体例の3種の透明製品(具体例7Aから具体例7C)および比較対象の製品(比較対象の具体例7)について、垂直な入射角で測定したような場合の、表裏両面の透過率に対する波長のグラフが提示されている。特に、比較対象の製品(比較対象の具体例7)は、何らかのガラスセラミック基板と、具体例7Aから具体例7Cのものと類似した層構成を有している光学薄膜構造体とが設けられた透明製品である。但し、比較対象の具体例7の設計の全ての高屈折率層が200GPaより高い弾性率を示す。データが証明しているように、具体例7Aから具体例7Cが示した平均透過率は、垂直な入射角の可視スペクトル(約420nmないし約700nm)と940nmの赤外線スペクトルにおいては92%より高くなる。これとは対照的に、比較例の透過率は940nmの赤外線スペクトルではもっと低く、約88%である。
【0150】
ここで
図9Cを参照すると、本項の具体例の3種の透明製品(具体例7Aから具体例7C)と比較製品(比較対象の具体例7)について、垂直の入射角で測定したような場合の、両面反射率に対する波長のグラフが提示されている。データが証明しているように、具体例7Aから具体例7Cが示した平均反射率は、可視スペクトル(約450nmないし約700nm)では2%未満であり、940nmの赤外線スペクトルでは4%未満である。これとは対照的に、比較対象の具体例の平均反射率は940nmの赤外スペクトルにおいてはより高くなり、約8%である。
【0151】
本明細書で概説しているように、本件開示の第1の態様は、以下のものを構成部材の一部に含んでいる透明製品である。すなわち、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを含んでいる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角における透過色 √(a*2+b*2)は4未満であり、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合の最大硬さは光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高い。更に、該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。
【0152】
本明細書で概説しているように、本件開示の第2の態様は上記第1の態様による透明製品であって、該基板が95GPaより高い弾性率と1.0MPa・√mよりも高い破壊靭性を有している、透明製品である。
【0153】
本明細書で概説しているように、本件開示の第3の態様は上記第1の態様または上記第2の態様による透明製品であって、該製品が、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に、光学薄膜構造体の上記外表面を起点に約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘って、14GPaより高い最大硬さを示す透明製品である。
【0154】
本明細書で概説しているように、本件開示の第4の態様は上記第1の態様から上記第3の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該製品は90%より高い平均明所視透過率を示し、更に、該製品はD65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において2未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。
【0155】
本明細書で概説しているように、本件開示の第5の態様は上記第1の態様から上記第4の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該ガラスセラミック基板の結晶化度が少なくとも75重量%の透明製品である。
【0156】
本明細書で概説しているように、本件開示の第6の態様は上記第1の態様から上記第5の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該ガラスセラミック基板が二珪酸リチウム相を含んでいる透明製品である。
【0157】
本明細書で概説しているように、本件開示の第7の態様は上記第6の態様による透明製品であって、該ガラスセラミック基板が葉長石相を更に含んでいる透明製品である透明製品である。
【0158】
本明細書で概説しているように、本件開示の第8の態様は上記第1の態様から上記第7の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該高屈折率層の各々と該引掻き傷耐性層がSi3N4、SiNy、および、SiOxNyのうちの1つ以上を含んでおり、該低屈折率層は各々がSiO2とSiOxのうちの1つ以上を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、該引掻き傷耐性層は厚さが約200nmから約10,000nmである、透明製品である。
【0159】
本明細書で概説しているように、本件開示の第9の態様は上記第1の態様から上記第8の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該光学薄膜構造体が外側構造体と内側構造体を構成部材の一部に含んでおり、該引掻き傷耐性層はこの外側構造体と内側構造体の間に配置されている、透明製品である。
【0160】
本明細書で概説しているように、本件開示の第10の態様は上記第1の態様から上記第9の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、1%未満の濁度を示す透明製品である。
【0161】
本明細書で概説しているように、本件開示の第11の態様は上記第1の態様から上記第10の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該ガラスセラミック基板が化学強化されており、約200MPaから約400MPaの表面圧縮応力を有しているとともに約1μmから約15μmの圧縮層深さを有している、透明製品である。
【0162】
本明細書に概説されているように、本件開示の第12の態様は上記第11の態様による透明製品であって、該ガラスセラミック基板が更に約80MPaないし約200MPaの最大内部引張力(CT)値を示し、また更に該基板が約0.6mm以下の厚さを有している、透明製品である。
【0163】
本明細書で概説しているように、本件開示の第13の態様は以下のものを構成部材の一部に含む透明製品である。すなわち、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを含んでいる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角における透過色 √(a*2+b*2)は4未満であり、ヴィッカース圧子押込み試験により1000gの荷重を用いて検査した場合の横方向亀裂域は平均最大直線寸法が160μm未満であるか、または、横方向亀裂面積が25,000μm2未満である。
【0164】
本明細書で概説しているように、本件開示の第14の態様は上記第13の態様による透明製品であって、円錐形ダイヤモンド圧子を用いて光学薄膜構造体の上記外表面を逓増荷重式引掻き試験で検査した場合、横方向亀裂形成するのに約340mN以上の荷重閾値を示す、透明製品である。
【0165】
本明細書で概説しているように、本件開示の第15の態様は上記第13の態様または上記第14の態様による透明製品であって、90%より高い平均明所視透過率を示し、更に、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角における透過色 √(a*2+b*2)は2未満を示す、透明製品である。
【0166】
本明細書に概説しているように、本件開示の第16の態様は上記第13の態様から上記第15の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも75重量%である、透明製品である。
【0167】
本明細書に概説しているように、本件開示の第17の態様は上記第13の態様から上記第16の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該ガラスセラミック基板が二珪酸リチウム相を含んでいる透明製品である。
【0168】
本明細書に概説しているように、本件開示の第18の態様は上記第17の態様による透明製品であって、該ガラスセラミック基板が葉長石相を更に含んでいる透明製品である。
【0169】
本明細書に概説しているように、本件開示の第19の態様は上記第13の態様から上記第18の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該高屈折率層の各々と該引掻き傷耐性層がSi3N4、SiNy、および、SiOxNyのうちの1つ以上を含んでおり、該低屈折率層は各々がSiO2とSiOxのうちの1つ以上を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、該引掻き傷耐性層は厚さが約200nmから約10,000nmである、透明製品である。
【0170】
本明細書で概説しているように、本件開示の第20の態様は上記第13の態様から上記第19の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該光学薄膜構造体が外側構造体と内側構造体を構成部材の一部に含んでおり、該引掻き傷耐性層はこの外側構造体と内側構造体の間に配置されている、透明製品である。
【0171】
本明細書で概説しているように、本件開示の第21の態様は上記第13の態様から上記第20の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、1%未満の濁度を示す透明製品である。
【0172】
本明細書で概説しているように、本件開示の第22の態様は上記第13の態様から上記第21の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該ガラスセラミック基板が化学強化されており、約200MPaから約400MPaの表面圧縮応力を有しているとともに約1μmから約15μmの圧縮層深さを有している、透明製品である。
【0173】
本明細書に概説しているように、本件開示の第23の態様は上記第22の態様による透明製品であって、該ガラスセラミック基板が更に約80MPaないし約200MPaの最大内部引張力(CT)値を示し、また更に該基板が約0.6mm以下の厚さを有している、透明製品である。
【0174】
本明細書に概説しているように、本件開示の第24の態様は以下のものを構成部材の一部に含む透明製品である。すなわち、屈折率が約1.52以上あり、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを含んでいる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角における透過色 √(a*2+b*2)は4未満である。これに加えて、該光学薄膜構造体は、外側構造体と内側構造体を含んでおり、該引掻き傷耐性層はこの外側構造体と内側構造体の間に配置されている。更に、光学薄膜構造体の該内側構造体は、該ガラスセラミック基板と該引掻き傷耐性層の間の光学インピーダンスに概ね一致するよう構成されている。該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。
【0175】
本明細書に概説しているように、本件開示の第25の態様は上記第24の態様による透明製品であって、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合、光学薄膜構造体の該外表面を起点にして約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘って14GPaより高い最大硬さを示す、透明製品である。
【0176】
本明細書に概説しているように、本件開示の第26の態様は上記第24の態様または上記第25の態様による透明製品であって、ヴィッカース圧子押込み試験により1000gの荷重を用いて検査したような場合の横方向亀裂域は平均最大直線寸法が160μm未満であるか、または、横方向亀裂面積が25,000μm2未満である、透明製品。
【0177】
本明細書に概説しているように、本件開示の第27の態様は上記第24の態様から上記第26の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、90%より高い平均明所視透過率を示し、更に、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す、透明製品である。
【0178】
本明細書に概説しているように、本件開示の第28の態様は上記第24の態様から上記第27の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該高屈折率層の各々と該引掻き傷耐性層がSi3N4、SiNy、および、SiOxNyのうちの1つ以上を含んでおり、該低屈折率層は各々がSiO2とSiOxのうちの1つ以上を含んでいる、透明製品である。
【0179】
本明細書に概説しているように、本件開示の第29の態様は上記第24の態様から上記第28の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、該引掻き傷耐性層は厚さが約200nmから約10,000nmである、透明製品である。
【0180】
本明細書に概説しているように、本件開示の第30の態様は上記第24の態様から上記第29の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該光学薄膜構造体の内側構造体の各低屈折率層の体積は約59%未満であり、該光学薄膜構造体の内側構造体の各高屈折率層の体積は約41%より大きい、透明製品である。
【0181】
本明細書に概説しているように、本件開示の第31の態様は上記第24の態様から上記第30の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、1%未満の濁度を示す透明製品である。
【0182】
本明細書に概説しているように、本件開示の第32の態様は上記第1の態様から上記第12の態様のうちいずれか1つによる透明製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置であって、透明製品が表示装置の保護被覆として作用する、表示装置である。
【0183】
本明細書に概説しているように、本件開示の第33の態様は上記第13の態様から上記第23の態様のうちいずれか1つによる透明製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置であって、透明製品が表示装置の保護被覆として作用する、表示装置である。
【0184】
本明細書に概説しているように、本件開示の第34の態様は上記第24の態様から上記第31の態様のうちいずれか1つによる透明製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置であって、透明製品が表示装置の保護被覆として作用する、表示装置である。
【0185】
本明細書で概説するように、本件開示の第35の態様は、以下のものを構成部材の一部に含んでいる透明製品に関連している。すなわち、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを含んでいる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合の最大硬さは、光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高い。該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。更に、該光学薄膜構造体は700MPa以上の残留圧縮応力と140GPa以上の弾性率を示す。
【0186】
本件開示の第36の態様によれば、上記第35の態様は、該製品がD65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示すように実施される。
【0187】
本件開示の第37の態様によれば、上記第35の態様または上記第36の態様は、該ガラスセラミック基板が95GPaより高い弾性率と1.0MPa×√mより高い破壊靱性を有するように実施される。
【0188】
本件開示の第38の態様によれば、上記第35の態様から上記第37の態様のうちいずれか1つの態様は、該製品が、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合、光学薄膜構造体の該外表面において約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘って12GPaより高い最大硬さを示すように実施される。
【0189】
本件開示の第39の態様によれば、上記第35の態様から上記第38の態様のうちいずれか1つの態様は、該製品が90%より高い平均明所視透過率を示し、更に、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において2未満の透過色 √(a*2+b*2)を示すように実施される。
【0190】
本件開示の第40の態様によれば、上記第35の態様から上記第39の態様のうちいずれか1つの態様は、該ガラスセラミック基板が少なくとも75重量%の結晶化度を有するように実施される。
【0191】
本件開示の第41の態様によれば、上記第35の態様から上記第40の態様のうちいずれか1つの態様は、該ガラスセラミック基板が二珪酸リチウム相を含むように実施される。
【0192】
本件開示の第42の態様によれば、上記第41の態様は、該ガラスセラミック基板が更に葉長石相を含んでいるように実施される。
【0193】
本件開示の第43の態様によれば、上記第35の態様から上記第42の態様のうちいずれか1つの態様は、該高屈折率層の各々と該引掻き傷耐性層がシリコン含有窒化物またはシリコン含有酸窒化物を含んでおり、該低屈折率層の各々がシリコン含有酸化物を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、また、該引掻き傷耐性層は厚さが約100nmから約10,000nmであるように実施される。
【0194】
本件開示の第44の態様によれば、上記第43の態様は、第1の低屈折率層が基板の該第1主面と直接接触して配置されており、更に、該引掻き傷耐性層は厚さが約1000nmから約3000nmであるように実施される。
【0195】
本件開示の第45の態様によれば、上記第35の態様から上記第44の態様のうちいずれか1つの態様は、該ガラスセラミック基板が化学強化されており、約200MPaから約400MPaの表面圧縮応力と約1μmから約15μmの圧縮層深さを有しているように実施される。
【0196】
本件開示の第46の態様によれば、上記第45の態様は、該ガラスセラミック基板が更に約80MPaから約200MPaの最大中心引張力(CT)値を示し、また更に、約0.6mm以下の厚さを有しているように実施される。
【0197】
本件開示の第47の態様は、以下のものを構成部材の一部に含む透明製品に関連している。すなわち、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを含んでいる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合の最大硬さは、光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高い。該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。更に、該光学薄膜構造体は700MPaないし1100MPaの残留圧縮応力と140GPaないし200GPaの弾性率を示す。これに加えて、該製品は、リング・オン・リング試験において光学薄膜構造体の該外表面に引張力を加えた状態で、700MPa以上の平均破壊応力を示す。
【0198】
本件開示の第48の態様によれば、上記第47の態様は、該製品が、リング・オン・リング試験において光学薄膜構造体の該外表面に引張力を加えた状態で、800MPa以上の平均破壊応力を示すように実施される。
【0199】
本件開示の第49の態様によれば、上記第47の態様または上記第48の態様は、該光学薄膜構造体が140GPaないし180GPaの弾性率を示すように実施される。
【0200】
本件開示の第50の態様によれば、上記第47の態様から上記第49の態様のうちいずれか1つの態様は、該製品が、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示すように実施される。
【0201】
本件開示の第51の態様によれば、上記第47の態様から上記第50の態様のうちいずれか1つの態様は、該ガラスセラミック基板が95GPaより高い弾性率と1.0MPa×√mより高い破壊靱性を有するように実施される。
【0202】
本件開示の第52の態様によれば、上記第47の態様から上記第51の態様のうちいずれか1つの態様は、該製品が、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って12GPaより高い最大硬さを示すように実施される。
【0203】
本件開示の第53の態様によれば、上記第47の態様から上記第52の態様のうちいずれか1つの態様は、該製品が90%より高い平均明所視透過率を示し、更に、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において1未満の透過色 √(a*2+b*2)を示すように実施される。
【0204】
本件開示の第54の態様によれば、上記第47の態様から上記第53の態様のうちいずれか1つの態様は、該ガラスセラミック基板が少なくとも75重量%の結晶化度を有しているとともに、二珪酸リチウム相および葉長石相を含んでいるように実施される。
【0205】
本件開示の第55の態様によれば、上記第47の態様から上記第54の態様のうちいずれか1つの態様は、該高屈折率層の各々と該引掻き傷耐性層がシリコン含有窒化物またはシリコン含有酸窒化物を含んでおり、該低屈折率層の各々がシリコン含有酸化物を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、また、該引掻き傷耐性層は厚さが約100nmから約10,000nmであるように実施される。
【0206】
本件開示の第56の態様によれば、上記第55の態様は、第1の低屈折率層が基板の該第1主面と直接接触して配置されており、更に、該引掻き傷耐性層は厚さが約1000nmから約3000nmであるように実施される。
【0207】
本件開示の第57の態様によれば、上記第47の態様から上記第56の態様のうちいずれか1つの態様は、該ガラスセラミック基板が化学強化されており、約200MPaから約400MPaの表面圧縮応力と約1μmから約15μmの圧縮層深さを有しているように実施される。
【0208】
本件開示の第58の態様によれば、上記第57の態様は、該ガラスセラミック基板が更に約80MPaから約200MPaの最大中心引張力(CT)値を示し、また更に、約0.6mm以下の厚さを有しているように実施される。
【0209】
本件開示の第59の態様によれば、上記第47の態様から上記第58の態様のうちいずれか1つの態様は、該光学薄膜構造体が700MPaないし850MPaの残留圧縮応力と約140GPaないし約165GPaの弾性率を示すように実施される。
【0210】
本件開示の第60の態様によれば、上記第47の態様から上記第58の態様のうちいずれか1つの態様は、該光学薄膜構造体が750MPaないし950MPaの残留圧縮応力と約140GPaないし約175GPaの弾性率を示すように実施される。
【0211】
本件開示の第61の態様によれば、上記第47の態様から上記第58の態様のうちいずれか1つの態様は、該光学薄膜構造体が850MPaないし1100MPaの残留圧縮応力と約140GPaないし195GPaの弾性率を示すように実施される。
【0212】
本件開示の第62の態様は、以下のものを構成部材の一部に含む透明製品に関連している。すなわち、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを含んでいる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも75重量%であり、二珪酸リチウム相を含んでおり、平均結晶子寸法が100nm未満である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該光学薄膜構造体は物理的厚さ合計が約200nmないし約5000nmであり、該引掻き傷耐性層は物理的厚さが約100nmないし約4000nmである。該光学薄膜構造体は約140GPaないし約180GPaの弾性率を示す。更に、該製品は、リング・オン・リング試験において光学薄膜構造体の該外表面に引張力を加えた状態で、700MPa以上の平均破壊応力を示す。
【0213】
本件開示の第63の態様によれば、上記第62の態様は、該製品が80%より高い平均明所視透過率を示すように実施される。
【0214】
本件開示の第64の態様によれば、上記第62の態様または上記第63の態様は、該製品が、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高い最大硬さを示すように実施される。
【0215】
本件開示の第65の態様によれば、上記第62の態様から上記第64の態様のうちいずれか1つの態様は、該製品が、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示すように実施される。
【0216】
本件開示の第66の態様によれば、上記第62の態様から上記第65の態様のうちいずれか1つの態様は、該高屈折率層の各々と該引掻き傷耐性層がシリコン含有窒化物またはシリコン含有酸窒化物を含んでおり、該低屈折率層の各々がシリコン含有酸化物を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、また、該引掻き傷耐性層は厚さが約100nmから約10,000nmであるように実施される。
【0217】
本件開示の第67の態様によれば、上記第66の態様は、該引掻き傷耐性層は厚さが1500nmから2500nmであり、該複数の交互の高屈折率層と低屈折率層および該引掻き傷耐性層の合計量は6層ないし25層の範囲となるように実施される。
【0218】
本件開示の第68の態様によれば、上記第35の態様から上記第46の態様のうちいずれか1つの態様は、該透明製品が表示装置の保護被覆として作用するように実施される。
【0219】
本件開示の第69の態様によれば、上記第47の態様から上記第61の態様のうちいずれか1つの態様は、該透明製品が表示装置の保護被覆として作用するようい実施される。
【0220】
本件開示の第70の態様によれば、上記第62の態様から上記第67の態様のうちいずれか1つの態様は、前記透明製品が表示装置の保護被覆として作用するように実施される。
【0221】
本件開示の第71の態様は、以下の工程を含んでいる透明製品の製造方法に関連している。すなわち、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板を供与する工程と、内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体を該基板上に積層する工程とを含んでいる。該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%である。更に、該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、また、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高い最大硬さを示す。該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。更に、光学薄膜構造体を積層する該工程を行うことで、該光学薄膜構造体が700MPa以上の残留圧縮応力と140GPa以上の弾性率を示すように実施される。
【0222】
本件開示の第72の態様によれば、上記第71の態様は、光学薄膜構造体を積層する該工程を行うことで更に、該高屈折率層および該引掻き傷耐性層が反応性スパッタ堆積法により堆積されるようにし、その際、酸素ガス流量を制御することで、該光学薄膜構造体が700MPa以上の残留圧縮応力と140GPa以上の弾性率を示すように実施される。
【0223】
本明細書に概説しているように、本件開示の第73の態様は、以下のものを構成部材の一部に含んでいる透明製品である。すなわち、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを含んでいる。該ガラスセラミック基板は屈折率が約1.52以上であり、結晶化度が少なくとも75重量%であり、二珪酸リチウム相と葉長石相を含んでいる。該ガラスセラミック基板はまた、70%ないし80%のSiO2、5%ないし10%のAl2O3、10%ないし15%のLi2O、0.01%ないし1%のNa2O、0.01%ないし1%のK2O、0.1%ないし5%のP2O5、および、0.1%ないし7%のZrO2(単位は重量%、酸化物基準)を含んでいる。該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでいる。該高屈折率層の各々と該引掻き傷耐性層がSi3N4、SiNy、および、SiOxNyのうちの1つ以上を含んでおり、該低屈折率層は各々がSiO2とSiOxのうちの1つ以上を含んでいる。各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、また、該引掻き傷耐性層は厚さが約200nmから約10,000nmである。該製品は80%より高い平均明所視透過率と1%未満の濁度を示す。該製品はまた、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。該製品は更に、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高い最大硬さを示す。該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。
【0224】
本明細書に概説しているように、本件開示の第74の態様は上記第73の態様による透明製品であって、該光学薄膜構造体が外側構造体と内側構造体を含んでおり、該引掻き傷耐性層がこの外側構造体と内側構造体の間に配置されている、透明製品である。
【0225】
本明細書に概説しているように、本件開示の第75の態様は上記第73の態様または上記第74の態様による透明製品であって、該ガラスセラミック基板が化学強化されており、約200MPaから約400MPaの表面圧縮応力と約1μmから約15μmの圧縮層深さを有している、透明装置である。
【0226】
本明細書に概説しているように、本件開示の第76の態様は上記第73の態様から上記第75の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、該ガラスセラミック基板が0.1%ないし1.5%のCaOを更に含んでいる、透明製品である。
【0227】
本明細書で概説しているように、本件開示の第77の態様は上記第73の態様から上記第76の態様のうちいずれか1つによる透明製品であって、表示装置の保護被覆として作用する透明製品である。
【0228】
本件開示の真髄および多様な原理から概ね逸脱することなく、本件開示の上述の各実施形態に対して多くの変更および修正が施されても構わない。このような修正および変更は全て、本件開示の範囲に入るとともに、特許請求の範囲によって保護することを意図している。
【0229】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0230】
実施形態1
透明製品は、
第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、
外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでおり、
該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%であり、
該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを備えており、
該製品は80%より高い平均明所視透過率を示し、
該製品は、D65光源を用いた場合に0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示し、
該製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高い最大硬さを示し、
更に、該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。
【0231】
実施形態2
実施1の透明製品において、上記基板が95GPaより高い弾性率と1.0MPa・√mよりも高い破壊靭性を有している。
【0232】
実施形態3
実施形態1または実施形態2の透明製品において、上記製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に、光学薄膜構造体の上記外表面を起点に約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘って、14GPaより高い最大硬さを示す。
【0233】
実施形態4
実施形態1から実施形態3のいずれか1つの透明製品において、上記製品は90%より高い平均明所視透過率を示し、更に上記製品は、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において2未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。
【0234】
実施形態5
実施形態1から実施形態4のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも75重量%である。
【0235】
実施形態6
実施形態1から実施形態5のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は二珪酸リチウム相を含んでいる。
【0236】
実施形態7
実施形態6の透明製品において、上記ガラスセラミック基板は葉長石相を更に含んでいる。
【0237】
実施形態8
実施形態1から実施形態7いずれか1つの透明製品において、上記高屈折率層の各々と上記引掻き傷耐性層はSi3N4、SiNy、および、SiOxNyのうちの1つ以上を含んでおり、上記低屈折率層は各々がSiO2とSiOxのうちの1つ以上を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、上記引掻き傷耐性層は厚さが約200nmから約10,000nmである。
【0238】
実施形態9
実施形態1から実施形態8のいずれか1つの透明製品において、上記光学薄膜構造体は外側構造体と内側構造体を構成部材の一部に含んでおり、上記引掻き傷耐性層はこの外側構造体と内側構造体の間に配置されている。
【0239】
実施形態10
実施形態1から実施形態8のうちいずれか1つの透明製品において、上記製品は1%未満の濁度を示す。
【0240】
実施形態11
実施形態1から実施形態10のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は化学強化されており、約200MPaから約400MPaの表面圧縮応力と約1μmから約15μmの圧縮層深さを有している。
【0241】
実施形態12
実施形態11の透明製品において、上記ガラスセラミック基板は更に約80MPaないし約200MPaの最大内部引張力(CT)値を示し、また更に、上記基板は厚さが約0.6mm以下である。
【0242】
実施形態13
透明な製品は、
第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、
外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでおり、
上記ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%であり、
上記光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでおり、
上記製品はまた80%より高い平均明所視透過率を示し、
上記製品は、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示し、
更に、上記製品は、ヴィッカース圧子押込み試験により1000gの荷重を用いて検査した場合、横方向亀裂域が160μm未満の平均最大直線寸法を示し、または、25,000μm2未満の横方向亀裂面積を示す。
【0243】
実施形態14
実施形態13の透明製品において、上記製品は、円錐形ダイヤモンド圧子を用いて光学薄膜構造体の上記外表面を逓増荷重式引掻き試験で検査した場合、横方向亀裂形成するのに約340mN以上の荷重閾値を示す。
【0244】
実施形態15
実施形態13または実施形態14の透明製品において、上記製品は90%より高い平均明所視透過率を示し、また更に、上記製品はD65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において2未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。
【0245】
実施形態16
実施形態13から実施形態15のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも75重量%である。
【0246】
実施形態17
実施形態13から実施形態16のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は二珪酸リチウム相を含んでいる。
【0247】
実施形態18
実施形態17の透明製品において、上記ガラスセラミック基板は葉長石相を更に含んでいる。
【0248】
実施形態19
実施形態13から実施形態18のいずれか1つの透明製品において、上記高屈折率層の各々と上記引掻き傷耐性層はSi3N4、SiNy、および、SiOxNyのうちの1つ以上を含んでおり、上記低屈折率層は各々がSiO2とSiOxのうちの1つ以上を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、上記引掻き傷耐性層は厚さが約200nmから約10,000nmである。
【0249】
実施形態20
実施形態13から実施形態19のいずれか1つの透明製品において、上記光学薄膜構造体は外側構造体と内側構造体を構成部材の一部に含んでおり、上記引掻き傷耐性層はこの外側構造体と内側構造体の間に配置されている。
【0250】
実施形態21
実施形態13から実施形態20のいずれか1つの透明製品において、上記製品は1%未満の濁度を示す。
【0251】
実施形態22
実施形態13から実施形態21のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は化学強化されており、約200MPaから約400MPaの表面圧縮応力と約1μmから約15μmの圧縮層深さを有している。
【0252】
実施形態23
実施形態22の透明製品において、上記ガラスセラミック基板は更に約80MPaないし約200MPaの最大内部引張力(CT)値を示し、また更に、上記基板は厚さが約0.6mm以下である。
【0253】
実施形態24
透明製品は、
屈折率が約1.52以上あり、第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、
外表面を画定しており、該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでおり、
該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%であり、
該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでおり、
該製品は80%より高い平均明所視透過率を示し、
該製品はD65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示し、
該光学薄膜構造体は、外側構造体と内側構造体を含んでおり、該引掻き傷耐性層はこの外側構造体と内側構造体の間に配置されており、
光学薄膜構造体の該内側構造体は、該ガラスセラミック基板と該引掻き傷耐性層の間の光学インピーダンスに概ね一致するよう構成されており、
該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高い。
【0254】
実施形態25
実施形態24の透明製品において、上記製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合、光学薄膜構造体の上記外表面を起点にして約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘って14GPaより高い最大硬さを示す。
【0255】
実施形態26
実施形態24または実施形態25の透明製品において、上記製品は、ヴィッカース圧子押込み試験により1000gの荷重を用いて検査した場合、横方向亀裂域が160μm未満の平均最大直線寸法を示し、または、25,000μm2未満の横方向亀裂面積を示す。
【0256】
実施形態27
実施形態24から実施形態26のいずれか1つの透明製品において、上記製品は、90%より高い平均明所視透過率を示し、また更に、上記製品は、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において2未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。
【0257】
実施形態28
実施形態24から実施形態27のいずれか1つの透明製品において、上記高屈折率層の各々と上記引掻き傷耐性層はSi3N4、SiNy、および、SiOxNyのうちの1つ以上を含んでおり、上記低屈折率層は各々がSiO2とSiOxのうちの1つ以上を含んでいる。
【0258】
実施形態29
実施形態24から実施形態28のいずれか1つの透明製品において、上記高屈折率層は各々の厚さが約5nmから約300nmであり、上記低屈折率層は各々の厚さが約5nmから約300nmであり、上記引掻き傷耐性層は厚さが約200nmから約10,000nmである。
【0259】
実施形態30
実施形態24から実施形態29のいずれか1つの透明製品において、光学薄膜構造体の上記内側構造体の各低屈折率層の体積は約59%未満であり、光学薄膜構造体の上記内側構造体の各高屈折率層の体積は約41%より大きい。
【0260】
実施形態31
実施形態24から実施形態30のいずれか1つの透明製品において、上記製品は1%未満の濁度を示す。
【0261】
実施形態32
実施形態1から実施形態12のいずれか1つの透明製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置において、上記透明製品は該表示装置の保護被覆として作用する。
【0262】
実施形態33
実施形態13から実施形態23のいずれか1つの透明製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置において、上記透明製品は該表示装置の保護被覆として作用する。
【0263】
実施形態34
実施形態24から実施形態31のいずれか1つの透明製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置において、上記透明製品は該表示装置の保護被覆として作用する。
【0264】
実施形態35
透明製品は、
第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、
内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでおり、
該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%であり、
該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでおり、
該製品は80%より高い平均明所視透過率を示し、
該製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高いの最大硬さを示し、
該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高く、
更に、該光学薄膜構造体は700MPa以上の残留圧縮応力と140GPa以上の弾性率を示す。
【0265】
実施形態36
実施形態35の透明製品において、上記製品は、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。
【0266】
実施形態37
実施形態35または実施形態36の透明製品において、該ガラスセラミック基板は弾性率が95GPaより高く、破壊靭性が1.0MPa×√mより高い。
【0267】
実施形態38
実施形態35から実施形態37のいずれか1つの透明製品において、上記製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合、光学薄膜構造体の該外表面において約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘って12GPaより高い最大硬さを示す。
【0268】
実施形態39
実施形態35から実施形態38のいずれか1つの透明製品において、上記製品は90%より高い平均明所視透過率を示し、更に、上記製品は、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において2未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。
【0269】
実施形態40
実施形態35から実施形態39のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は結晶度が少なくとも75重量%である。
【0270】
実施形態41
実施形態35から実施形態40のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は二珪酸リチウム相を含んでいる。
【0271】
実施形態42
実施形態41の透明製品において、上記ガラスセラミック基板は更に葉長石相を含んでいる。
【0272】
実施形態43
実施形態35から実施形態42のいずれか1つの透明製品において、上記高屈折率層の各々と上記引掻き傷耐性層はシリコン含有窒化物またはシリコン含有酸窒化物を含んでおり、上記低屈折率層の各々はシリコン含有酸化物を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、また、上記引掻き傷耐性層は厚さが約100nmから約10,000nmである。
【0273】
実施形態44
実施形態43の透明製品において、第1の低屈折率層は基板の上記第1主面と直接接触して配置されており、更に、上記引掻き傷耐性層は厚さが約1000nmから約3000nmである。
【0274】
実施形態45
実施形態35から実施形態44のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は化学強化されているとともに、表面圧縮応力が約200MPaから約400MPaであり、圧縮層深さが約1μmから約15μmである。
【0275】
実施形態46
実施形態45の透明製品において、上記ガラスセラミック基板は約80MPaから約200MPaの最大中心引張力(CT)値を示し、また更に、上記ガラスセラミック基板は厚さが約0.6mm以下である。
【0276】
実施形態47
透明製品は、
第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、
内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでおり、
該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%であり、
該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでおり、
該製品は80%より高い平均明所視透過率を示し、
該製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合、光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高い最大硬さを示し、
該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高く、
該光学薄膜構造体は700MPaないし1100MPaの残留圧縮応力と140GPaないし200GPaの弾性率を示し、
更に、該製品は、リング・オン・リング試験において光学薄膜構造体の該外表面に引張力を加えた状態で、700MPa以上の平均破壊応力を示す。
【0277】
実施形態48
実施形態47の透明製品において、上記製品は、リング・オン・リング試験において光学薄膜構造体の該外表面に引張力を加えた状態で、800MPa以上の平均破壊応力を示す。
【0278】
実施形態49
実施形態47または実施形態48の透明製品において、上記光学薄膜構造体は140GPaないし180GPaの弾性率を示す。
【0279】
実施形態50
実施形態47から実施形態49のいずれか1つの透明製品において、上記製品は、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。
【0280】
実施形態51
実施形態47から実施形態50のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は弾性率が95GPaより高く、破壊靭性が1.0MPa×√mより高い。
【0281】
実施形態52
実施形態47から実施形態51のいずれか1つの透明製品において、上記製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って、12GPaより高い最大硬さを示す。
【0282】
実施形態53
実施形態47から実施形態52のいずれか1つの透明製品において、上記製品は90%より高い平均明所視透過率を示し、更に、上記製品は、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において1未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。
【0283】
実施形態54
実施形態47から実施形態53のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも75重量%であるとともに、二珪酸リチウム相および葉長石相を含んでいる。
【0284】
実施形態55
実施形態47から実施形態53のいずれか1つの透明製品において、上記高屈折率層の各々と上記引掻き傷耐性層はシリコン含有窒化物またはシリコン含有酸窒化物を含んでおり、上記低屈折率層の各々はシリコン含有酸化物を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、また、上記引掻き傷耐性層は厚さが約100nmから約10,000nmである。
【0285】
実施形態56
実施形態55の透明製品において、第1の低屈折率層は基板の上記第1主面と直接接触して配置されており、更に、上記引掻き傷耐性層は厚さが約1000nmから約3000nmである。
【0286】
実施形態57
実施形態47から実施形態56のいずれか1つの透明製品において、上記ガラスセラミック基板は化学強化されているとともに、表面圧縮応力が約200MPaから約400MPaであり、圧縮深さが約1μmから約15μmである。
【0287】
実施形態58
実施形態57の透明製品において、上記ガラスセラミック基板は更に約80MPaから約200MPaの最大中心引張力(CT)値を示し、また更に、厚さが約0.6mm以下である。
【0288】
実施形態59
実施形態47から実施形態58のいずれか1つの透明製品において、上記光学薄膜構造体は700MPaないし850MPaの残留圧縮応力と約140GPaないし約165GPaの弾性率を示す。
【0289】
実施形態60
実施形態47から実施形態58のいずれか1つの透明製品において、上記光学薄膜構造体が750MPaないし950MPaの残留圧縮応力と約140GPaないし約175GPaの弾性率を示す。
【0290】
実施形態61
実施形態47から実施形態58のいずれか1つの透明製品において、上記光学薄膜構造体が850MPaないし1100MPaの残留圧縮応力と約140GPaないし195GPaの弾性率を示す。
【0291】
実施形態62
透明製品は、
第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板と、
内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体とを構成部材の一部に含んでおり、
該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも75重量%であり、二珪酸リチウム相を含んでおり、平均結晶子寸法が100nm未満であり、
該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでおり、
該光学薄膜構造体は物理的厚さ合計が約200nmないし約5000nmであり、
該引掻き傷耐性層は物理的厚さが約100nmないし約4000nmであり、
該光学薄膜構造体は約140GPaないし約180GPaの弾性率を示し、
更に、該製品は、リング・オン・リング試験において光学薄膜構造体の該外表面に引張力を加えた状態で、700MPa以上の平均破壊応力を示す。
【0292】
実施形態63
実施形態62の透明製品において、上記製品は80%より高い平均明所視透過率を示す。
【0293】
実施形態64
実施形態62または実施形態63の透明製品において、上記製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って10GPaより高い最大硬さを示す。
【0294】
実施形態65
実施形態62から実施形態64のいずれか1つの透明製品において、上記製品は、D65光源を用いた0°ないし10°の各入射角において4未満の透過色 √(a*2+b*2)を示す。
【0295】
実施形態66
実施形態62から実施形態65のいずれか1つの透明製品において、上記高屈折率層の各々と上記引掻き傷耐性層はシリコン含有窒化物またはシリコン含有酸窒化物を含んでおり、上記低屈折率層の各々がシリコン含有酸化物を含んでおり、更に、各高屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、各低屈折率層は厚さが約5nmから約300nmであり、また、上記引掻き傷耐性層は厚さが約100nmから約10,000nmである。
【0296】
実施形態67
実施形態66の透明製品において、上記引掻き傷耐性層は厚さが1500nmから2500nmであり、上記複数の交互の高屈折率層と低屈折率層および上記引掻き傷耐性層の合計量は6層ないし25層の範囲となる。
【0297】
実施形態68
実施形態35から実施形態46のいずれか1つの透明製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置において、上記透明製品は該表示装置の保護被覆として作用する。
【0298】
実施形態69
実施形態47から実施形態61のいずれか1つの透明製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置において、上記透明製品は該表示装置の保護被覆として作用する。
【0299】
実施形態70
実施形態62から実施形態67のいずれか1つの透明製品を構成部材の一部に含んでいる表示装置において、上記透明製品は該表示装置の保護被覆として作用する。
【0300】
実施形態71
透明製品の製造方法は、
第1主面および第2主面を備えており、これら両主面が互いに対向して設けられたガラスセラミック基板を供与する工程と、
内表面と外表面を備えており、該内表面が該第1主面上に配置された光学薄膜構造体を該基板上に積層する工程とを含んでおり、
該ガラスセラミック基板は結晶化度が少なくとも40重量%であり、
該光学薄膜構造体は、複数の交互の高屈折率(RI)層および低屈折率層と、引掻き傷耐性層とを構成部材の一部に含んでおり、
該製品は80%より高い平均明所視透過率を示し、
該製品は、バーコヴィッチ硬さ試験により測定した場合に光学薄膜構造体の該外表面を起点に約100nmないし約500nmの圧入深さ範囲に亘って、10GPaより高い最大硬さを示し、
該ガラスセラミック基板は弾性率が85GPaより高く、破壊靭性も0.8MPa×√mより高く、
更に、光学薄膜構造体を積層する該工程を行うことで、該光学薄膜構造体が700MPa以上の残留圧縮応力と140GPa以上の弾性率を示すようにする。
【0301】
実施形態72
実施形態71の方法において、光学薄膜構造体を積層する該工程を行うことで更に、該高屈折率層および該引掻き傷耐性層が反応性スパッタ堆積法により積層されるようにし、その際、酸素ガス流量を制御することで、該光学薄膜構造体が700MPa以上の残留圧縮応力と140GPa以上の弾性率を示すようにする。
【符号の説明】
【0302】
100 透明製品
110 ガラスセラミック基板
112 第1主面
114 第2主面
120 光学薄膜構造体
120a 外表面
120b 内表面
130a 外側光学薄膜構造体(外側構造体)
130b 内側光学薄膜構造体(内側構造体)
130A 低屈折率層
130B 高屈折率層
131 キャッピング層
132 循環区分
140 最上位被膜
150 引掻き傷耐性層
【国際調査報告】