(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】動的シェード用の高ばね力シャッタ及び/又は関連する方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20240315BHJP
E06B 3/66 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C03C27/06 101J
E06B3/66 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560871
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2022052329
(87)【国際公開番号】W WO2022219428
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517413513
【氏名又は名称】ガーディアン・グラス・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GUARDIAN GLASS, LLC
【住所又は居所原語表記】2300 Harmon Road, Auburn Hills, MI 48326-1714 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】ブラッシュ ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ホーン リンゼイ
(72)【発明者】
【氏名】ペトルミヒル ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】フィンチ ジョシュア
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA01
2E016BA01
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016EA05
4G061AA21
4G061AA25
4G061AA29
4G061BA01
4G061CB03
4G061CB06
4G061CD21
4G061CD24
(57)【要約】
特定の例示的実施形態は、絶縁ガラス(IG)ユニットで使用可能な電位駆動シェード、かかるシェードを含むIGユニット、及び/又は関連する方法に関する。このようなユニットでは、動的シェードは、IGユニットを画定する基材間に配置され、後退位置と伸長位置との間で移動可能である。動的シェードは、透明導体、及び絶縁体膜又は誘電体膜、並びにシャッタを含む、ガラス上の層を含む。シャッタは、弾性ポリマーベースの層と、その対向する表面上の層とを含む。第1の電圧は、シャッタを閉位置に伸長させるように透明導体に適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガラス(IG)ユニットであって、
第1の基材及び第2の基材であって、前記第1の基材及び前記第2の基材の各々が内部主表面及び外部主表面を有し、前記第1の基材の前記内部主表面が、前記第2の基材の前記内部主表面に面している、第1の基材及び第2の基材と、
スペーサシステムであって、前記第1の基材及び前記第2の基材を互いに実質的に平行に離隔した関係に維持し、前記第1の基材と前記第2の基材との間に間隙を画定することに役立つ、スペーサシステムと、
前記第1の基材と前記第2の基材との間に介在する動的に制御可能なシェードと、を備え、前記シェードが、
前記第1の基材の前記内部主表面上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層、
前記第1の導電性層の、前記第1の基材とは反対の側において、前記第1の導電性層上に直接又は間接的に提供された第1の誘電体層、及び
第1の弾性率を有する可撓性基材を含むシャッタであって、前記可撓性基材が、第1の側及び第2の側を含み、第1の厚さを有し、前記可撓性基材の前記第1の側が、1つ以上の層を含む第1の層積層体を支持し、少なくとも第2の導電性層を含み、前記第1の層積層体が、第2の厚さ及び第2の弾性率を有し、前記可撓性基材の前記第2の側が、1つ以上の層を含む第2の層積層体を支持し、前記第2の層積層体が、集合的に第3の厚さ及び第3の弾性率を有し、前記第2の弾性係数及び前記第3の弾性係数がそれぞれ前記第1の弾性係数よりも大きく、前記シャッタが、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、前記シャッタ閉位置から前記シャッタ開位置に後退可能である、シャッタを含む、シェードと、
前記可撓性基材を前記シャッタ閉位置に駆動する静電力を作り出すための電圧を供給するように構成された制御回路とを備え、
前記第2の弾性係数及び第3の弾性係数のうちの低い方と前記第1の弾性係数との比が少なくとも10であり、
(a)前記第2の弾性係数と前記第2の厚さとの積と、前記第3の弾性係数と前記第3の厚さとの積とのうちの低い方を、(b)前記第1の弾性係数と前記第1の厚さとの積で割ったものが、少なくとも0.2である、IGユニット。
【請求項2】
前記第2の導電性層がMo及び/又はAlを含む、請求項1に記載のIGユニット。
【請求項3】
前記第1の層積層体及び前記第2の層積層体がそれぞれ金属層を含み、前記第1の層積層体内の前記金属層が前記第2の導電性層である、請求項1に記載のIGユニット。
【請求項4】
前記第1の層積層体及び第2の層積層体における前記金属層が、その中の唯一の層である、請求項3に記載のIGユニット。
【請求項5】
前記シャッタが、前記第1の厚さが2倍であり、前記第2の層積層体内に前記金属層がない構成よりも少なくとも25%高いばね力を有する、請求項3に記載のIGユニット。
【請求項6】
前記可撓性基材が、PENを含む、請求項1に記載のIGユニット。
【請求項7】
長手方向の応力又は歪みが存在しない中立軸が、前記可撓性基材の断面の中央領域に設けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載のIGユニット。
【請求項8】
前記中立軸が、前記シャッタの断面の中心から20%以下だけ離間している、請求項7に記載のIGユニット。
【請求項9】
絶縁ガラス(IG)ユニットであって、
第1の基材及び第2の基材であって、前記第1の基材及び前記第2の基材の各々が内部主表面及び外部主表面を有し、前記第1の基材の前記内部主表面が、前記第2の基材の前記内部主表面に面している、第1の基材及び第2の基材と、
スペーサシステムであって、前記第1の基材及び前記第2の基材を互いに実質的に平行に離隔した関係に維持し、前記第1の基材と前記第2の基材との間に間隙を画定することに役立つ、スペーサシステムと、
前記第1の基材と前記第2の基材との間に介在する動的に制御可能なシェードと、を備え、前記シェードが、
前記第1の基材の前記内部主表面上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層、
前記第1の導電性層の、前記第1の基材とは反対の側において、前記第1の導電性層上に直接又は間接的に提供された第1の誘電体層、及び
可撓性基材を含むシャッタであって、前記可撓性基材は、第1の側及び第2の側を含み、前記可撓性基材の前記第1の側が、第1のポリイミド層と、前記可撓性基材と前記第1のポリイミド層との間に挟まれた第2の導電性層とを支持し、前記可撓性基材の前記第2の側が、第2のポリイミド層を支持し、前記シャッタが、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、前記シャッタ閉位置から前記シャッタ開位置に後退可能である、シャッタを含む、シェードと、
前記可撓性基材を前記シャッタ閉位置に駆動する静電力を作り出すための電圧を供給するように構成された制御回路とを備える、IGユニット。
【請求項10】
前記第2の導電性層がMo及び/又はAlを含む、請求項9に記載のIGユニット。
【請求項11】
前記可撓性基材がPENを含む、請求項9又は10に記載のIGユニット。
【請求項12】
前記第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層のそれぞれが、所望の着色のためにドープされている、請求項9~11のいずれか一項に記載のIGユニット。
【請求項13】
前記第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層のそれぞれが、前記可撓性基材上に湿式塗布される、請求項9~12のいずれか一項に記載のIGユニット。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のIGユニットを製造する方法。
【請求項15】
絶縁ガラス(IG)ユニット内で動的シェードを操作する方法であって、前記方法が、
請求項1~13のいずれか一項に記載のIGユニットを有することと、
前記可撓性基材を前記シャッタ閉位置に駆動するために前記制御回路に前記電圧を供給することとを含む、方法。
前記可撓性基材を前記シャッタ開位置に戻すことと、を含む、方法。
【請求項16】
基材であって、
前記基材上に設けられた動的に制御可能なシェードであって、前記シェードが、
前記基材上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層、
前記第1の導電性層の、前記基材とは反対の側において、前記第1の導電性層上に直接又は間接的に提供された第1の誘電体層、及び
第1の弾性率を有する可撓性基材を含むシャッタであって、前記可撓性基材が、第1の側及び第2の側を含み、第1の厚さを有し、前記可撓性基材の前記第1の側が、1つ以上の層を含む第1の層積層体を支持し、少なくとも第2の導電性層を含み、前記第1の層積層体が、第2の厚さ及び第2の弾性率を有し、前記可撓性基材の前記第2の側が、1つ以上の層を含む第2の層積層体を支持し、前記第2の層積層体が、集合的に第3の厚さ及び第3の弾性率を有し、前記第2の弾性係数及び前記第3の弾性係数がそれぞれ前記第1の弾性係数よりも大きく、前記シャッタが、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、前記シャッタ閉位置から前記シャッタ開位置に後退可能である、シャッタを含む、シェードと、
前記第2の弾性係数及び第3の弾性係数のうちの低い方と前記第1の弾性係数との比が少なくとも10であり、
(a)前記第2の弾性係数と前記第2の厚さとの積と、前記第3の弾性係数と前記第3の厚さとの積とのうちの低い方を、(b)前記第1の弾性係数と前記第1の厚さとの積で割ったものが、少なくとも0.2である、基材。
【請求項17】
絶縁ガラス(IG)ユニットの製造方法であって、前記方法が、
第1の基材及び第2の基材を有することであって、前記第1の基材及び前記第2の基材の各々が内部主表面及び外部主表面を有し、前記第1の基材の前記内部主表面が、前記第2の基材の前記内部主表面に面している、有することと、
前記第1の基材及び/又は前記第2の基材上に動的に制御可能なシェードを提供することであって、前記シェードが、
前記第1の基材の前記内部主表面上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層、
前記第1の導電性層の、前記第1の基材とは反対の側において、前記第1の導電性層上に直接又は間接的に提供された第1の誘電体層、及び
第1の弾性率を有する可撓性基材を含むシャッタであって、前記可撓性基材が、第1の側及び第2の側を含み、第1の厚さを有し、前記可撓性基材の前記第1の側が、1つ以上の層を含む第1の層積層体を支持し、少なくとも第2の導電性層を含み、前記第1の層積層体が、第2の厚さ及び第2の弾性率を有し、前記可撓性基材の前記第2の側が、1つ以上の層を含む第2の層積層体を支持し、前記第2の層積層体が、集合的に第3の厚さ及び第3の弾性率を有し、前記第2の弾性係数及び前記第3の弾性係数がそれぞれ前記第1の弾性係数よりも大きく、前記シャッタが、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、前記シャッタ閉位置から前記シャッタ開位置に後退可能である、シャッタを含むことと、
前記第1の導電性層及び第2の導電性層を接続して電圧を供給し、前記可撓性基材を前記シャッタ閉位置に駆動する静電力を作り出すことと、前記第1の基材及び第2の基材を実質的に平行で離間した関係で互いに接続して、間隙がそれらの間に画定され、前記動的に制御可能なシェードが前記間隙内に配置されるようにすることとを含み、
前記第2の弾性係数及び第3の弾性係数のうちの低い方と前記第1の弾性係数との比が少なくとも10であり、
(a)前記第2の弾性係数と前記第2の厚さとの積と、前記第3の弾性係数と前記第3の厚さとの積とのうちの低い方を、(b)前記第1の弾性係数と前記第1の厚さとの積で割ったものが、少なくとも0.2である、方法。
【請求項18】
前記第2の導電性層が、Mo及び/又はAlを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の層積層体及び前記第2の層積層体がそれぞれ金属層を含み、前記第1の層積層体内の前記金属層が前記第2の導電性層である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
長手方向の応力又は歪みが存在しない中立軸が、前記可撓性基材の断面の中央領域に設けられている、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記可撓性基材が、PENを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
基材であって、
前記基材上に設けられた動的に制御可能なシェードであって、前記シェードが、
前記基材の前記内部主表面上に直接又は間接的に設けられた第1の導電性層、
前記第1の導電性層の、前記基材とは反対の側において、前記第1の導電性層上に直接又は間接的に提供された第1の誘電体層、及び
可撓性基材を含むシャッタであって、前記可撓性基材が、第1の側及び第2の側を含み、前記可撓性基材の前記第1の側が、第1のポリイミド層と、前記可撓性基材と前記第1のポリイミド層との間に挟まれた第2の導電性層とを支持し、前記可撓性基材の前記第2の側が、第2のポリイミド層を支持し、前記シャッタが、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、前記シャッタ閉位置から前記シャッタ開位置に後退可能である、シャッタを含む、シェードを備える、基材。
【請求項23】
前記第2の導電性層が、Mo及び/又はAlを含む、請求項22に記載の基材。
【請求項24】
前記可撓性基材がPENを含む、請求項22又は23に記載の基材。
【請求項25】
前記第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層のそれぞれが、所望の着色のためにドープされている、請求項22~24のいずれか一項に記載の基材。
【請求項26】
前記第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層のそれぞれが、前記可撓性基材上に湿式塗布される、請求項22~25のいずれか一項に記載の基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月16日に出願された米国特許出願第17/232,406号の利益を主張し、この全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の特定の例示的実施形態は、絶縁ガラスユニット(insulating glass unit、IGユニット又はIGU)と共に使用され得るシェード、かかるシェードを含むIGユニット、及び/又はその製造方法に関する。より具体的には、本発明の特定の例示的実施形態は、IGユニットと共に使用され得る、電位駆動シェード、かかるシェードを含むIGユニット、及び/又はその製造方法に関する。
〔背景技術及び発明の概要〕
【0003】
建築部門は、世界の一次エネルギー消費の30~40%に相当することが示されている、そのエネルギー消費が高いことで知られている。特に、エネルギー効率の厳格性の低い建築基準で構築された古い構造体では、加熱、冷却、換気、及び照明などの運用コストが、この消費の大部分を占める。
【0004】
窓は、例えば、自然光、新鮮な空気、アクセス、及び外部世界への接続を提供する。しかしながら、それらはしばしば、無駄なエネルギーの重大な原因の典型でもある。建築用窓の使用を増加させる傾向が高まり、エネルギー効率及び人間の快適性の相反する利益をバランスさせることは、ますます重要になってきている。更に、地球温暖化及び二酸化炭素排出量に関する懸念が、新規なエネルギー効率の高いグレージングシステムの推進力になっている。
【0005】
この点に関して、窓は通常、建物の隔離において「弱いリンク」であり、ガラスのファサード全体を含むことが多い現代の建築設計を考慮すると、エネルギー浪費を制御及び低減する点で、より優れた絶縁窓を持つことが有利であろうことが明らかになる。したがって、絶縁性の高い窓の開発には、環境的にも経済的にも大きな利点がある。
【0006】
絶縁ガラスユニット(IGユニット又はIGU)が開発されており、建物及び他の構造物の絶縁性が向上している。
図1は、例示的なIGユニットの断面概略図である。
図1の例示的なIGユニットでは、第1の基材102及び第2の基材104は、実質的に平行であり、互いに離間している。スペーサシステム106は、第1の基材102及び第2の基材104の周辺部に提供され、基材を互いに実質的に平行に離間した関係に維持し、基材の間に間隙又は空間108を画定するのに役立つ。間隙108は、例えば、全体的なIGユニットの絶縁特性を改善するために、場合によっては不活性ガス(例えば、Ar、Kr、Xeなど)で少なくとも部分的に充填されてもよい。場合によっては、スペーサシステム106に加えて、任意選択の外側シールが提供されてもよい。
【0007】
窓は、冬の太陽光取得及び一年中の昼光の形態で建物に「エネルギーを供給する」能力を有するという点で、ほとんどの建物において固有の要素である。しかしながら、現在の窓技術は、多くの場合、冬の過剰な暖房コスト、夏の過剰な冷房コストにつながることが多く、多くの場合、光源の市販品の多くにおいて光が暗色化されるか又はオフにされることを可能にするという昼光の利益を捕捉し損ねている。
【0008】
薄膜技術は、窓性能を改善する1つの有望な方法である。薄膜は、例えば、製造中にガラス上に直接適用することができ、それに対応してより低コストで既に既存の窓に後付けすることができるポリマーウェブ上に適用することができる。過去20年間にわたって進歩が行われており、主に、静的又は「受動的」低放射率(低E)コーティングを使用することにより窓のU値を下げ、並びにスペクトル選択的低Eコーティングを使用することにより、太陽熱利得係数(solar heat gain coefficient、SHGC)を低減することによって、進歩が行われてきた。低Eコーティングは、例えば、
図1に示され、
図1に関連して記載されているものなどのIGユニットと関連して使用され得る。しかしながら、更なる強化が可能である。
【0009】
例えば、建物等への改善された絶縁を提供するという要望を考慮に入れ、太陽が建物の内部に「エネルギーを供給」する能力を利用し、また、より「オンデマンド」方式でプライバシを提供する、より動的なIGユニットオプションを提供することが望ましいことが理解されるであろう。
【0010】
このような製品は、美的外観も満足することが望ましいことが理解されるであろう。
特定の例示的実施形態は、これら及び/又は他の懸念事項に対処する。
例えば、本発明の特定の例示的実施形態は、IGユニットと共に使用され得る電位駆動シェード、かかるシェードを含むIGユニット、及び/又はその製造方法に関する。
【0011】
特定の例示的実施形態では、絶縁ガラス(IG)ユニットが提供される。第1の基材及び第2の基材は、それぞれが内部主表面及び外部主表面を有し、第1の基材の内部主表面は、第2の基材の内部主表面に面している。スペーサシステムは、第1の基材及び第2の基材を互いに対して実質的に平行に離間した関係に維持し、それらの間に間隙を画定するのに役立つ。動的に制御可能なシェードは、第1の基材と第2の基材との間に挿入される。シェードは、第1の基材の内部主表面上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層と、第1の導電性層の、第1の基材とは反対の側において、第1の導電性層上に直接又は間接的に設けられた第1の誘電体層と、第1の弾性率を有する可撓性基材を含むシャッタとを含む。可撓性基材は、第1の側及び第2の側を含み、第1の厚さを有する。可撓性基材の第1の側は、1つ以上の層を含む第1の層積層体を支持し、少なくとも第2の導電性層を含む。第1の層積層体は、第2の厚さ及び第2の弾性率を有する。可撓性基材の第2の側は、1つ以上の層を含む第2の層積層体を支持する。第2の層積層体は、第3の厚さ及び第3の弾性率を集合的に有する。第2の弾性係数及び第3の弾性係数はそれぞれ、第1の弾性係数よりも大きい。シャッタは、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、かつシャッタ閉位置からシャッタ開位置に後退可能である。制御回路は、可撓性基材をシャッタ閉位置に駆動する静電力を生成するための電圧を供給するように構成されている。第2の弾性係数及び第3の弾性係数のうちの低い方と第1の弾性係数との比は少なくとも10であり、(a)第2の弾性係数と第2の厚さとの積及び第3の弾性係数と第3の厚さとの積のうちの低い方を、(b)第1の弾性係数と第1の厚さとの積で割ったものは少なくとも0.2である。
【0012】
特定の例示的な実施形態では、基材が提供される。基材は、基材上に設けられた動的に制御可能なシェードを含む。シェードは、基材上に直接又は間接的に設けられた第1の導電性層と、第1の導電性層の、基材とは反対の側において、第1の導電性層上に直接又は間接的に設けられた第1の誘電体層と、第1の弾性率を有する可撓性基材を含むシャッタとを含む。可撓性基材は、第1の側及び第2の側を含み、第1の厚さを有し、可撓性基材の第1の側は、1つ以上の層を含む第1の層積層体を支持し、少なくとも第2の導電性層を含み、第1の層積層体は、第2の厚さ及び第2の弾性率を有し、可撓性基材の第2の側は、1つ以上の層を含む第2の層積層体を支持し、第2の層積層体は、集合的に第3の厚さ及び第3の弾性率を有し、第2の弾性係数及び第3の弾性係数はそれぞれ、第1の弾性係数より大きい。シャッタは、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、かつシャッタ閉位置からシャッタ開位置に後退可能である。第2の弾性係数及び第3の弾性係数のうちの低い方と第1の弾性係数との比は少なくとも10であり、(a)第2の弾性係数と第2の厚さとの積及び第3の弾性係数と第3の厚さとの積のうちの低い方を、(b)第1の弾性係数と第1の厚さとの積で割ったものは少なくとも0.2である。基材は、例えば、前の8つの段落のいずれかの特徴を含んでもよい。
【0013】
特定の例示的実施形態では、絶縁ガラス(IG)ユニットの製造方法が提供される。方法は、第1の基材及び第2の基材を有することであって、第1の基材及び第2の基材の各々が内部主表面及び外部主表面を有し、第1の基材の内部主表面が、第2の基材の内部主表面に面している、有することを含む。動的に制御可能なシェードは、第1の基材及び/又は第2の基材に設けられる。シェードは、第1の基材の内部主表面上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層と、第1の導電性層の、第1の基材とは反対の側において、第1の導電性層上に直接又は間接的に設けられた第1の誘電体層と、第1の弾性率を有する可撓性基材を含むシャッタとを含む。可撓性基材は、第1の側及び第2の側を含み、第1の厚さを有し、可撓性基材の第1の側は、1つ以上の層を含む第1の層積層体を支持し、少なくとも第2の導電性層を含み、第1の層積層体は、第2の厚さ及び第2の弾性率を有し、可撓性基材の第2の側は、1つ以上の層を含む第2の層積層体を支持し、第2の層積層体は、集合的に第3の厚さ及び第3の弾性率を有し、第2の弾性係数及び第3の弾性係数はそれぞれ、第1の弾性係数より大きい。シャッタは、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、かつシャッタ閉位置からシャッタ開位置に後退可能である。第1の導電性層及び第2の導電性層は、可撓性基材をシャッタ閉位置に駆動する静電力を作り出すための電圧を供給するように接続される。第1の基材及び第2の基材は、間隙がそれらの間に画定され、動的に制御可能なシェードが間隙に位置するように、実質的に平行に離間した関係で互いに接続される。第2の弾性係数及び第3の弾性係数のうちの低い方と第1の弾性係数との比は少なくとも10であり、(a)第2の弾性係数と第2の厚さとの積及び第3の弾性係数と第3の厚さとの積のうちの低い方を、(b)第1の弾性係数と第1の厚さとの積で割ったものは少なくとも0.2である。
【0014】
特定の例示的実施形態では、絶縁ガラス(IG)ユニットが提供される。第1の基材及び第2の基材は、それぞれが内部主表面及び外部主表面を有し、第1の基材の内部主表面は、第2の基材の内部主表面に面している。スペーサシステムは、第1の基材及び第2の基材を互いに対して実質的に平行に離間した関係に維持し、それらの間に間隙を画定するのに役立つ。動的に制御可能なシェードは、第1の基材と第2の基材との間に挿入される。シェードは、第1の基材の内部主表面上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層と、第1の導電性層の、第1の基材とは反対の側において、第1の導電性層上に直接又は間接的に設けられた第1の誘電体層と、可撓性基材を含むシャッタとを含む。可撓性基材は、第1の側及び第2の側を含み、可撓性基材の第1の側は、第1のポリイミド層と、可撓性基材と第1のポリイミド層との間に挟まれた第2の導電性層とを支持し、可撓性基材の第2の側は、第2のポリイミド層を支持する。シャッタは、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、かつシャッタ閉位置からシャッタ開位置に後退可能である。制御回路は、可撓性基材をシャッタ閉位置に駆動する静電力を生成するための電圧を供給するように構成されている。
【0015】
本明細書に記載の技術に従ってIGユニット及び/又はシェード(基材を伴う又は伴わない)を作製する方法、及び/又はそのようなシェードを操作する方法が、本明細書において企図される。
【0016】
特定の例示的実施形態では、絶縁ガラス(IG)ユニット内で動的シェードを操作する方法が提供される。本方法は、本明細書に開示される技術に従って製造されたIGユニットを有することと、電源を選択的に作動させて、シャッタ開位置とシャッタ閉位置との間でポリマー基材を移動させることとを含む。
【0017】
本明細書に記載の特徴、態様、利点、及び例示的実施形態は、更なる実施形態を実現するために組み合わされてもよい。
【0018】
これら及び他の特徴及び利点は、図面と併せて、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、より良好かつより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】例示的な絶縁ガラスユニット(IGユニット又はIGU)の断面概略図である。
【0020】
【
図2】特定の例示的実施形態に関連して使用され得る、電位駆動シェードを組み込んだ例示的なIGUの断面概略図である。
【0021】
【
図3】特定の例示的実施形態による、シャッタ動作を可能にする、
図2の実施例IGUの、例示的なガラス上の構成要素を示す断面図である。
【0022】
【
図4】特定の例示的な実施形態による、
図2の例示的なIGUからの、例示的なシャッタの断面図である。
【0023】
【
図5】特定の例示的実施形態による、
図3の実施例からのガラス上の構成要素と
図4の実施例からのシャッタ構成要素とを組み込んだ基材の平面図である。
【0024】
【0025】
【
図6B】伸長状態にある
図6Aのシャッタの部分概略図である。
【0026】
【
図7A】特定の例示的な実施形態による、両面高弾性係数層構成を有する後退したシャッタの部分概略図である。
【0027】
【
図7B】特定の例示的な実施形態による、伸長状態にある
図7Aのシャッタの部分概略図である。
【0028】
【
図8】シャッタが伸長されたときの、ポリマー材料の片面のみに設けられた高弾性係率層を有する構成の応力プロファイルをプロットしたグラフである。
【0029】
【
図9】単一の高弾性係数層を有するシャッタを含む構成の厚さに対する歪みをプロットしている点で
図8と同様の図である。
【0030】
【
図10】ポリマー材料の片面のみに設けられた高弾性係数層を有する構成について、金属層の厚さの増加に対するモデル化された応答をプロットしたグラフである。
【0031】
【
図11】特定の例示的な実施形態による、シャッタが伸長されたときの、ポリマー材料の両側上に設けられた高弾性係数層を有する構成の応力プロファイルをプロットしたグラフである。
【0032】
【
図12】特定の例示的な実施形態による、低弾性係数層の反対側に高弾性係数層を有するシャッタを含む構成の厚さに対する歪みをプロットしている点で
図11と同様の図である。
【0033】
【
図13】単一の高弾性係数層を含むシャッタ及びシャッタの反対面上に高弾性係数層を含むシャッタについて、異なる高弾性係数の材料厚さに関連付けられたばね力を比較するグラフである。
【0034】
【
図14】異なる高弾性係数の材料厚さに関連する、測定されモデル化されたばね力をプロットしたグラフである。
【0035】
【
図15A】対称の高弾性係数層及び片面高弾性係数構成がどのようにモデル化されたかを示す図である。
【
図15B】対称の高弾性係数層及び片面高弾性係数構成がどのようにモデル化されたかを示す図である。
【0036】
【
図16】正規化された高弾性係数層の厚さの関数としてのばね力の利得を示すグラフである。
【0037】
【
図17】層1~2の厚さ対弾性係数積の比の関数としてのばね力の利得を示すグラフである。
【0038】
【0039】
【
図19】特定の例示的な実施形態による、改良されたばね力を有する例示的なシャッタの断面図である。
【0040】
【
図20】特定の例示的な実施形態による、改良されたばね力を有する別の例示的なシャッタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の特定の例示的実施形態は、IGユニットと共に使用され得る電位駆動シェード、かかるシェードを含むIGユニット、及び/又はその製造方法に関する。ここでより詳細に図面を参照すると、
図2は、特定の例示的実施形態に関連して使用され得る電位駆動シェードを組み込んだ例示的な絶縁ガラスユニット(IGユニット又はIGU)の断面概略図である。より具体的には、
図2は、実質的に平行に離間した第1のガラス基材102及び第2のガラス基材104が、スペーサシステム106を使用して互いに分離され、間隙108がそれらの間に画定される点で、
図1と同様である。第1の電位駆動シェード202a及び第2の電位駆動シェード202bは、それぞれ、第1の基材102及び第2の基材104の内側主表面に近接する間隙108内に提供される。以下に提供される説明から明確になるように、シェード202a及び202bは、シェード202aと202bと、基材102及び104の内面にそれぞれ形成された導電性コーティングとの間の電位差の生成によって制御される。また、以下に提供される説明から明確になるように、それぞれのシェード202a及び202bは、導電性コーティング(例えば、Al、Cr、ITOなどを含む層を含むコーティング)でコーティングされたポリマー膜を使用して作成され得る。アルミニウムコーティングされたシェードは、可視光の部分-完全反射、及び最大でかなりの量の総太陽エネルギーを提供し得る。
【0042】
シェード202a及び202bは通常、(例えば、巻き上げられて)後退されるが、例えば、「従来の」ブラインドのように、基材102及び104の少なくとも一部分を覆うために、適切な電圧が印加されたときに急速に伸長する(例えば、展開する)。巻き上げシェードは、非常に小さい直径を有してもよく、典型的には、第1の基材102と第2の基材104との間の間隙108の幅よりもはるかに小さくなり、これにより、それらの間で機能することができ、巻き上げられるときに本質的に視界から隠され得る。巻き取られたシェード202a、202bは、それぞれ隣接する基材102、104に静電的に強く吸着する。
【0043】
シェード202a及び202bは、基材102及び104の可視又は「フレーム」領域の垂直長さの全て又は一部分に沿って、後退構成から伸長構成まで延びる。後退構成では、シェード202a及び202bは、フレーム領域を通る放射透過を実質的に可能にする第1の表面積を有する。伸長構成では、シェード202a及び202bは、フレーム領域を通る放射透過を実質的に制御する第2の表面積を有する。シェード202a及び202bは、それらが取り付けられる基材102及び104のフレーム領域の水平幅の全て又は一部分にわたって延在する幅を有してもよい。
【0044】
それぞれのシェード202a及び202bは、第1の基材102と第2の基材104との間に配設され、好ましくは、それぞれが、基材の頂部付近で、1つの端部で基材の内面(又は基材の上に配置された誘電体若しくは他の層)に取り付けられる。この点で、接着剤層を使用してもよい。
図2では、シェード202a及び202bは、部分的に展開されて(部分的に伸長されて)示されている。シェード202a及び202b、並びに任意の接着剤層又は他の取り付け構造は、好ましくは、シェード202a及び202bが少なくとも部分的に展開されたときにのみ見られるように、視界から隠される。
【0045】
完全に巻き上げられたシェードの直径は、好ましくは約1~5mmであるが、特定の例示的実施形態では5mm超であってもよい。好ましくは、巻き上げられたシェードの直径は、迅速かつ繰り返される展開及び巻き上げ操作を容易にするために、典型的には約10~25mm(場合によっては10~15mm)である間隙108の幅以下である。
図2の実施例では2つのシェード202a及び202bが示されているが、特定の例示的実施形態では1つのシェードのみが提供されてもよく、また、1つのシェードが内側又は外側基材102又は104のいずれかの内側表面上に提供されてもよいことも理解されよう。2つのシェードがある例示的な実施形態では、その組み合わせ直径は、例えば、両方のシェードの展開及び巻き上げ操作を容易にするために、好ましくは、間隙108の幅以下であることが好ましい。
【0046】
シェード202a及び202bを駆動するのに役立つ電子コントローラが提供されてもよい。電子コントローラは、例えば、好適なリード線などを介して、シェード202a及び202b並びに基材102及び104に電気的に接続されてもよい。
リード線は、組み立てられたIGユニットを介して見えないようにすることができる。電子コントローラは、それぞれ、基材102及び104内の導電性層に対して、出力電圧をシェード202a及び202bに提供するように構成される。特定の例示的実施形態では、シェード202a及び202bを駆動するためにDC約100~650Vの範囲の出力電圧を使用することができる。この点に関して、外部AC又はDC電源、DC電池などが使用されてもよい。例えば、シェード202a及び202b、基材102及び104上の層などを含む製造パラメータ及び材料に応じて、より高い又はより低い出力電圧が提供され得ることが理解されるであろう。
【0047】
コントローラは、例えば、シェード202a及び202bが後退又は延長されるべきかどうかを示すために、手動スイッチ、遠隔(例えば、無線)制御、又は他の入力装置に連結されてもよい。特定の例示的実施形態では、電子コントローラは、制御信号を受信して復号するための命令を記憶するメモリに動作可能に結合されたプロセッサを含んでもよく、制御信号は、電圧を選択的に印加して、シェード202a及び202bの伸長及び/又は後退を制御する。
他の機能が実現され得る更なる命令が提供されてもよい。例えば、ユーザ指定の又は他の時間にシェード202a及び202bが、伸長かつ後退するようにプログラムされ得るように、タイマーを設けることができ、ユーザ指定の屋内温度及び/又は屋外温度に達した場合に、シェード202a及び202bが伸長かつ後退するようにプログラムされ得るように、温度センサが提供されてもよい。構造体の外側の光の量に基づいて、シェード202a及び202bが伸長し、後退するようにプログラムされ得るように、光センサを設けることができる。
【0048】
上述したように、2つのシェード202a及び202bが
図2に示されているが、特定の例示的な実施形態は、単一のシェードのみを組み込んでもよい。
更に、上述のように、かかるシェードは、IGユニット全体に沿って、かつ実質的に全体にわたって垂直方向及び水平方向に延在するように設計されてもよく、異なる例示的実施形態は、それらが配置されるIGユニットの部分のみを被覆するシェードを含んでもよい。このような場合、より選択可能な範囲を提供するため、マンティンバーなどの内部又は外部構造を考慮するため、プランテーションシャッタなどを模擬するためなど、複数のシェードが提供されてもよい。別の例として、第1のシェードは、窓の第1の部分(例えば、上部又は左/右部分)を覆うことができ、第2のシェードは、その窓の第2の部分(例えば、底部又は右/左)を覆うことができる。別の例として、所与の窓の異なる約3分の1の部分を覆うために、第1、第2、及び第3のシェードが提供されてもよい。
【0049】
特定の例示的実施形態では、シェードがその全長を展開することを防ぐのを助けるために、ロック抑制部がIGUの底部に、例えば、その幅の一部又は全部に沿って配設されてもよい。ロック抑制部は、金属などの導電性材料から製造されてもよい。ロック抑制部はまた、例えば、ポリプロピレン、フッ素化エチレンプロピレン(fluorinated ethylene propylene、FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)などの低消散率ポリマーでコーティングされてもよい。
【0050】
シェード202a及び202bの動作の例示的な詳細が、
図3~
図4に関連して提供される。より具体的には、
図3は、特定の例示的な実施形態による、シャッタ動作を可能にする、
図2の例示的なIGUからの例示的な「ガラス上の」構成要素を示す断面図であり、
図4は、特定の例示的な実施形態による、
図2の例示的なIGUからの例示的なシャッタの断面図である。
図3は、
図2の基材102及び104のいずれか又は両方に使用され得るガラス基材302を示す。ガラス基材302は、ガラス上の構成要素304及びシャッタ312を支持する。特定の例示的実施形態では、巻かれていない場合、導電体404は、インク層406よりも基材302に近くてもよい。他の例示的実施形態では、この構成は、例えば、巻かれていないときに、導電体404がインク層406よりも基材302から遠くになり得るように、反転されてもよい。
【0051】
ガラス上の構成要素304は、透明な低ヘイズ接着剤310などを介して基材302に接着され得る誘電材料308と共に透明導電体306を含む。これらの材料は、好ましくは実質的に透明である。特定の例示的実施形態では、透明導電体306は、端子を介してコントローラへのリード線に電気的に接続される。特定の例示的実施形態では、透明導電体306は、コンデンサの固定電極として機能し、誘電材料308は、このコンデンサの誘電体として機能する。そのような場合、誘電体又は絶縁体膜が、第1の導電性層上に直接又は間接的に提供され、誘電体又は絶縁体膜がシャッタとは別個である。
【0052】
特定の例示的な実施形態では、シェード上に誘電体層の全てを置き、それによって、裸の導電性(平坦な)基材、例えば、導電性コーティングを支持するガラス基材を露出させることが可能であることが理解されるであろう。例えば、特定の例示的な実施形態では、ポリマー膜絶縁体308は、基材302の一部として提供され/統合されるのではなく、シャッタ312の一部として提供され/統合され得る。すなわち、シャッタ312は、誘電体又は絶縁体膜308をその上に更に支持し、その結果、少なくとも1つのポリマー基材がシャッタ閉位置にあり、シャッタが伸長されたときに、誘電体又は絶縁膜が、第1の導電性層に、それらの間に他の層がないように直接物理的に接触する。
【0053】
透明導電体306は、例えば、ITO、酸化スズ(例えば、SnO2又は他の好適な化学量論)などの任意の好適な材料から形成されてもよい。透明導電体306は、特定の例示的実施形態において、厚さ10~500nmであってもよい。誘電材料308は、特定の例示的実施形態では、低消散率ポリマーであってもよい。好適な材料としては、例えば、ポリプロピレン、FEP、PTFE、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(polyimide、PI)、及びポリエチレンナフタレート(polyethylene napthalate、PEN)などが挙げられる。誘電材料308は、特定の例示的実施形態では、1~30マイクロメートル(4~25マイクロメートル)の厚さを有してもよい。誘電材料308の厚さは、(例えば、より薄い誘電体層が典型的に信頼性を低下させるのに対して、より厚い誘電体層は、典型的には、動作目的のためにより高い印加電圧を必要とするため)、シェードの信頼性を、バランスをとるように選択することができる。
【0054】
既知のように、多くの低放射率(低E)コーティングは、導電性である。
したがって、特定の例示的実施形態では、透明導電体306の代わりに低Eコーティングが使用されてもよい。低Eコーティングは、銀ベースの低Eコーティングであってもよく、例えば、Agを含む1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の層が誘電体層の間に挟まれてもよい。このような場合、接着剤310の必要性は、低減されるか、又は完全に除去されてもよい。
【0055】
シャッタ312は、弾性層402を含んでもよい。特定の例示的実施形態では、弾性層402の一方の面に導電体404が使用されてもよく、任意選択的に、他方の面に装飾インク406が適用されてもよい。特定の例示的実施形態では、導電体404は、透明であってもよく、示されるように、装飾インク406は、任意選択である。特定の例示的実施形態では、導電体404及び/若しくは装飾インク406は、半透明であってもよく、又は別の方法で、シャッタ312に着色若しくは審美的特徴を付与することができる。特定の例示的実施形態では、弾性層402は、例えば、PEN、PET、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide、PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone、PEEK)などの収縮性ポリマーから形成されてもよい。弾性層402は、特定の例示的実施形態では、1~25マイクロメートル厚であってもよい。導電体404は、異なる例示的実施形態において導電体306に使用されるものと同じ又は異なる材料から形成されてもよい。例えば、金属又は金属酸化物材料が使用されてもよい。特定の例示的実施形態では、例えば、ITO、Al、Ni、NiCr、酸化スズなどを含む層を含む厚さ10~50nmの材料を使用することができる。特定の例示的実施形態では、導電体404のシート抵抗は、40~200オーム/平方の範囲であってもよい。異なる伝導率値及び/又は厚さ(例えば、以下の表に記載される例示的な厚さなど)が、異なる例示的実施形態において使用され得ることが理解されるであろう。
【0056】
装飾インク406は、所望の可視色及び/又は赤外線を選択的に反射する、かつ/又は吸収する顔料、粒子、及び/又は他の材料を含んでもよい。特定の例示的実施形態では、追加の装飾インクが、弾性層402の反対側の導電体404の側において、シャッタ312に適用されてもよい。
【0057】
図2に示すように、シェード202a及び202bは、通常、らせん状ロールとして巻かれ、らせんの外側端部は、接着剤によって基材102及び104(例えば、基材の上の誘電体)に固着されている。導電体404は、端子を介してリード線などに電気的に接続されてもよく、導電体306をコンデンサの固定電極として、かつ誘電体308をコンデンサの誘電体として有する、コンデンサの可変電極として機能してもよい。
【0058】
電気駆動部が可変電極と固定電極との間に提供されるとき、例えば、電圧又は電荷又は電流の電気駆動が、シャッタ312の導電体404と基材302上の導電体306との間に印加されるとき、シャッタ312は、2つの電極間の電位差によって生成される静電力によって基材302に向かって引かれる。可変電極を引っ張ると、コイル状のシェードが展開する。可変電極上の静電力により、シャッタ312は、基材302の固定電極に対して確実に保持される。その結果、シェードのインクコーティング層406は、IGユニットを通る光路に挿入されることによって、特定の可視色及び/又は赤外線を選択的に反射又は吸収することを助ける。このようにして、展開したシェードは、特定の光又は他の放射を選択的に遮断する、かつ/又は反射することによって放射透過を制御し、それによって、IGユニットの全体的な機能を透過して、部分的若しくは選択的に透過性であるか、又は更には不透明であるように、IGユニットの全体的な機能を変化させる。
【0059】
可変電極と固定電極との間の電気駆動が除去されると、可変電極上の静電力も同様に除去される。弾性層402及び導電体404内に存在するばね定数により、シェードがその元の緊密な巻き位置に戻るようになる。シェードの動きは主に容量性回路によって制御されるため、電流は本質的に、シェードが展開中又は巻き上げ中のいずれかである間にのみ流れる。その結果、シェードの平均電力消費量は、非常に低い。このようにして、少なくともいくつかの例では、数年のシェードを操作するために、いくつかの標準的な単3電池を使用することができる。
【0060】
一実施例では、基材302は、譲受人から市販されている厚さ3mmの透明ガラスであってもよい。接着剤層310には、低ヘイズを有するアクリル系接着剤が使用されてもよい。導電体306には、100~300オーム/平方の抵抗を有するスパッタITOが使用されてもよい。ポリマー膜は、12マイクロメートル厚の低ヘイズ(例えば、<1%ヘイズ)PET材料であってもよい。装飾インク406として、Sun Chemical Inc.から入手可能なPVC系インクを、3~8マイクロメートルの厚さで適用してもよい。当然ながら、異なる例示的実施形態において他のインクが使用されてもよい。弾性層402として、厚さ6、12、又は25マイクロメートルであるDuPontから市販されているPEN材料を使用することができる。当然ながら、他の材料が、異なる例示的実施形態において使用されてもよい。375nmの公称厚さを有する、Alを蒸着させた不透明導体が使用されてもよい。透明なオプションのために、スパッタリングされたITOが使用されてもよい。両方の場合において、シート抵抗は、100~400オーム/平方であってもよい。(アルミニウムが使用される場合、シート抵抗は100オーム/平方未満であってもよい。特定の例示的実施形態では、シート抵抗は、更に1オーム/平方未満であってもよい。特定の例示的実施形態では、ITO又は他の導電性材料は、それらのそれぞれのポリマーキャリア層上にスパッタリングされるか、又は他の方法で形成されてもよい。当然ながら、これらの例示的な材料、厚さ、電気特性、並びにそれらの様々な組み合わせ及び部分的組み合わせなどは、特に特許請求されない限り限定するものとみなされるべきではない。
【0061】
上述の説明から理解されるように、動的シェード機構は、導電層を有するコイル状ポリマーを使用する。特定の例示的実施形態では、導電体は、ポリマー402と一体であるように形成されてもよく、又はポリマー402上に適用、堆積、又は他の方法で形成される外的コーティングであってもよい。同様に上述したように、装飾インク406は、透明な導電体材料(例えば、ITOに基づく)及び/又は部分的に透明若しくは不透明な導電層と共に使用されてもよい。不透明又は部分的に透明な導電層は、特定の例示的実施形態におけるインクの必要性をなくすことができる。この点に関して、特定の例示的実施形態では、金属又は実質的に金属材料が使用されてもよい。アルミニウムは、装飾インクと共に、又は装飾インクなしで使用され得る材料の一例である。
【0062】
1つ以上のオーバーコート層は、導電体上に提供されて、可視光反射を低減し、かつ/若しくはシェードの色を変化させて、より審美的に満足のいく製品を提供することに役立ってもよく、並びに/又は、位相シフタ層がそれらの間に出現するように、導電体を「分割」することによって役立ち得る。したがって、オーバーコートは、全体的なシェードの美的外観を改善するために含まれ得る。したがって、シャッタ312は、反射低減オーバーコート、誘電体鏡面オーバーコートなどを含み得る。そのような反射低減オーバーコート及び誘電体鏡面オーバーコートは、導電体404の上に、かつ、装飾インク406の反対側に(例えば)PENを含むシェードポリマー402の主表面上に提供され得る。しかしながら、例えば、導電体404が透明でない場合、インク406は、提供される必要はないことが理解されるであろう。例えば、Alなどの鏡面コーティングは、装飾インク406の必要性をなくすことができる。また、反射低減オーバーコート及び誘電体鏡面オーバーコートは、特定の例示的実施形態では、導電体404の反対側に(例えば)PENを含むシェードポリマー402の主表面上に提供されてもよいことも理解されよう。
【0063】
光学干渉技術を使用して反射を低減することに加えて、又はその代わりに、テクスチャ加工された表面をベースポリマーに追加すること、導電層を化学的若しくは物理的に改質し、かつ/又はインク層を追加して、例えば、同じ又は類似の端部を達成するために、望ましくない反射の更なる低減などを達成することも可能である。
【0064】
薄膜及び/又はシャッタを含む他の材料は、全体的なシェードの機能に従って多数の巻き上げ及び展開動作に耐えなければならないことを考慮すると、材料は選択されてもよく、形成された全体層積層体は、それを容易にする機械的及び/又は他の特性を有することが理解されるであろう。例えば、薄膜層積層体における過剰な応力は、典型的には不利であると見られる。しかしながら、いくつかの場合では、過剰な応力は、ひび割れ、「層間剥離」/除去、並びに/又は導電体404及び/若しくは導電体404の上に形成された1つのオーバーコート層若しくは複数のオーバーコート層への他の損傷につながり得る。したがって、特定の実施形態例では、シャッタのポリマー基材上に形成された層と関連して、低応力(特に低引張応力)が特に望ましい場合がある。
【0065】
この点に関して、スパッタリングされた薄膜の接着は、とりわけ、堆積膜中の応力に依存する。応力を調整する1つの方法は、堆積圧力を使用することである。応力対スパッタ圧力は、単調曲線には追従せず、代わりに、本質的に各材料に固有であり、材料の蒸発温度(又は溶融温度)と基材温度との比の関数である遷移圧力で注入される。応力工学は、これらのガイドポストを念頭に置いて、ガス圧最適化によって達成することができる。
【0066】
考慮に入れることができるシェードの他の物理的及び機械的特性としては、ポリマーの弾性率及びポリマーの上に形成された層、層の密度比(応力/歪みに影響を及ぼし得る)などが挙げられる。これらの特性は、内部反射、導電性などに対するそれらの効果とバランスをとることができる。
【0067】
既知のように、IGユニットの内部の温度は、非常に高くなり得る。例えば、
図2の実施例による、黒色顔料を含むIGユニットは、例えば、シェードの黒色部分が高温の高日射気候(例えば、アリゾナ州などの米国南西の領域など)で太陽に面している場合には、87℃の温度に達し得ることが観察されている。PENは、PET(Tg=67~81℃)、ポリプロピレン又はPP(Tg=~32℃)などの他の一般的なポリマーと比較して、PENがより高いガラス転移温度(~120℃)を有するので、ロール可能/アンロール可能ポリマーにPEN材料を使用すると有利であり得る。更に、PENがガラス転移温度に近づく温度に曝露される場合、そうではない場合には有利な材料の機械的特性(材料の弾性率、降伏強度、引張強度、応力緩和弾性率などを含む)の性能は、特に高温曝露では経時的に劣化する場合がある。これらの機械的特性が著しく劣化すると、シェードはもはや機能しなくなる(例えば、シェードは後退しない)。
【0068】
シェードが高温環境によりよく耐えることを助けるために、PENからより高い温度耐性を有するポリマーへの置換が有利であり得る。2つの潜在的ポリマーとしては、PEEK及びポリイミド(PI又はカプトン)が挙げられる。PEEKは、約-142℃のTgを有し、カプトンHNは、約-380℃のTgを有する。これらの材料の両方は、PENと比較して、高温環境においてより良好な機械的特性を有する。これは、100℃を超える温度で特に当てはまる。以下のチャートは、PEN(Teonex)、PEEK、及びPI(カプトンHN)の機械的特性を参照する。UTSは、チャートにおける最終的な引張強度を表す。
【表1】
【0069】
シェード基材をその現在の材料(PEN)から、高温の機械的特性が増加した代替のポリマー(例えば、PEEK又はPI/カプトン)に変更することは、以下の意味で有利であり得ることが理解される。特にシェードが高温の気候に設置されている場合は、シェードが内部IG温度により良好に耐えられるようになる可能性がある。特定の実施形態例では、代替ポリマーの使用は、シャッタ及び/又はガラス上の層と関連して使用され得ることが理解されるであろう。
【0070】
加えて、又は代替として、特定の例示的実施形態は、染色されたポリマー材料を使用してもよい。例えば、染色PEN、PEEK、PI/カプトン、又は他のポリマーを使用して、各種の色及び/又は審美性を有するシェードを作り出すことができる。例えば、染色されたポリマーは、例えば、透明導電層が透明導電性コーティングなどである場合、透明/半透明の用途の実施形態に有利であり得る。
【0071】
代替のコイル状シェードのばね力を有益に修正して、様々な長さのために使用できるようにするために使用し得る。この点に関し、コイルの強度を増大させる導電層の特性には、弾性率の増加、ポリマー基材と導電層との間の熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)の差の増加、及び弾性率対密度比の増加を含む。Al又はCrと比較してコイル強度を高めるために使用することができる純金属の一部としては、Ni、W、Mo、Ti、及びTaが挙げられる。研究された金属層の弾性率は、Alについての70GPaからMoについての330GPaの範囲であった。研究された金属層のCTEは、Alについての23.5×106/kからMoについての4.8×106/kまでの範囲であった。一般に、弾性率が高いほど、PEN又は他のポリマーと金属との間のCTEミスマッチがより大きいほど、密度がより低いほどなどで、コイル形成に関して材料選択がより良好になる。Mo及びTi系導電層をシェードに組み込むことは、Alで達成可能なものよりも著しく高いコイルのばね力をもたらしたことが見出されている。例えば、有利には、PEN、PEEK、PIなどに基づくポリマー基材を含み、(基材から離れる順番で)Alを含む層、続いてMoを含む層を支持し得る。Alよりも大きい弾性率及び低いCTEを有する、導電性コーティング内の薄膜層及び/又は導電性コーティング自体を提供され得る。
【0072】
シャッタとして使用されるPEN、PI、又は他のポリマー基材は、応力工学目的のAlを含む薄層を支持してもよく、薄層の上にMo、Tiなどを直接又は間接的に含む導電層を支持してもよい。導電層は、Al、Ti、ステンレス鋼などを含む耐食層を支持してもよい。これらの層の反対側の基材の側は、任意選択的に、装飾インクなどを支持することができる。
【0073】
図5は、特定の例示的実施形態による、
図3の実施例からのガラス上の構成要素304と
図4の実施例からのシャッタ構成要素312とを組み込んだ基材102の平面図である。シャッタ312は、シャッタ閉位置に移動するとき、アンカーバー502から停止部504に向かって伸長する。シャッタは、シャッタ開位置に移動するとき、停止部504からアンカーバー502に向かって後退する。
【0074】
特定の例示的実施形態は、光がシェードを通過することを可能にし、太陽の角度に基づいて漸進的な量の太陽透過率を提供する微小穿穴又は貫通穴を含んでもよい。
【0075】
更なる製造、動作、及び/又は他の詳細及び代替が実施されてもよい。例えば、米国特許第8,982,441号、同第8,736,938号、同第8,134,112号、同第8,035,075号、同第7,705,826号、及び同第7,645,977号、並びに2018年7月6日に出願された米国特許出願第16/028,546号を参照されたく、上記の文献のそれぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。とりわけ、穿孔構成、ポリマー材料、導電性コーティング設計、応力工学概念、建材一体型太陽光発電設備(building-integrated photovoltaic、BIPV)、及び他の詳細が、その中に開示され、少なくともそれらの教示は、特定の例示的な実施形態に組み込まれ得る。
【0076】
上記の説明から理解されるように、動的シェード設計に関連付けられた1つの問題は、後退可能なシャッタの形成に関連する。特に、経時的に自動後退を可能にするのに適切な機械的特性を有する材料を選択し、かつ実装するために注意が払われ得る。多くの場合、後退に十分なばね力を有するようにシャッタが適切に作成されることを確実にするために、かつばね力が、窓又はシャッタが統合されている他の製品の寿命にわたって後退を引き起こすのに十分なままであることを確実にするために、製造パラメータを厳密に制御することが重要であろう。ばね力が十分ではないか、又は経時的に劣化する場合、シャッタは、伸長された又は部分的に伸長された位置で「引っかかり」得る。これは、電圧が印加されない場合であっても、単純にばね力が再圧延を引き起こすには不十分であるためであり得る。また、閉鎖システムのために、経時的に「摩耗」した欠陥のあるシャッタ及び/又はシャッタ(複数の場合もある)を修理し及び/又は交換することが困難であり、時には不可能でさえあり得る。
【0077】
図3~
図4に関連して示され説明された設計は、市販の動的シェードシステムを製造するために成功裏に使用されている。動的シェードでは、シャッタ上の導電性層(複数の場合もある)をコイル状に巻いた状態で弛緩させて、平坦化されたときに応力が発生するようにすることが望ましい。この設計は、伸ばされたシェードが再び巻き上げられることを確実にするのに役立つ。本発明者らは、シャッタに対して行われる応力エンジニアリングを使用して、そのような既存の動的シェードシステムの機能及び/又は寿命を改善することができることを認識した。
図6A~
図6Bは、
図3~
図4に示されるような構成における応力体系を実証するのに役立ち、したがって、応力体系が変化する構成は、更なる機能性及び/又は寿命に関連する改善を提供するようになされ得る。
図6Aは、後退したシャッタの部分概略図である。
図6Aのシャッタは、そこに誘起される応力及び歪みに関して、弛緩状態にある。理解を容易にするために、
図6Aは、高弾性率層602及び低弾性率層604のみを示す。高弾性係数層602は、導電性コーティングであり、Al、Mo、ITO等を含む層であってもよい。低弾性率層604は、弾性層であり、例えば、PEN、PI、PEEK等のポリマー材料を含んでもよい。上記から理解されるように、導電性層はこの状態で弛緩される。
図6Bは、伸長状態にある
図6Aのシャッタの部分概略図である。シャッタが伸長されるので、特に導電性層に関して、応力が誘起される。互いに向き合う矢印は、圧縮応力の領域を示す。破線は、参照番号606で示される中立軸を表す。中立軸606は、高弾性係数層602及び低弾性係数層604を含むシャッタの断面内の軸であり、それに沿う長手方向の応力又は歪みがない。中立軸606は、低弾性係数層604の大部分に存在し、高弾性係数層604の中心よりも低弾性係数層602に近い。したがって、高弾性係数層602に隣接する低弾性係数層604の部分は圧縮応力下にあり、一方、高弾性係数層602と反対の中立軸606の側の低弾性係数層604の部分は引張応力下にある。
【0078】
特定の例示的な実施形態は、
図6A~
図6Bに概略的に示されるシステムの強度を高め、高ばね力シェードを提供する。より具体的には、特定の例示的な実施形態は、中立軸までの距離を最大化することによって、同じ総厚さを有する片面構成に対して強度が増加した、両面高弾性係数層構成を提供する。中立軸までの距離の増加は、高弾性係数層におけるより高い歪み/応力/貯蔵エネルギーをもたらす。
【0079】
図7A~
図7Bは、特定の例示的な実施形態のこの両面構成を概略的に示す。すなわち、
図7Aは、特定の例示的な実施形態による、両面高弾性係数層構成を有する後退したシャッタの部分概略図である。
図7Bは、特定の例示的な実施形態による、伸長状態にある
図7Aのシャッタの部分概略図である。
図7A~
図7Bに示すように、低弾性係数層704は、第1の高弾性係数層702aと第2の高弾性係数層702bとの間に挟まれている。
図7Bの中立軸706は、低弾性係数層704の中心にあり、神経軸までの距離を最大化し、高弾性係数層702a~702b内の歪み、応力、及び貯蔵エネルギーを改善する。特定の例示的な実施形態では、中立軸706は、シャッタ全体の正確な中心になくてもよく、代わりに、その断面を通して実質的に中心に置かれてもよい。例えば、特定の例示的な実施形態では、シャッタの全厚(低弾性係数層704及びその上に形成された全ての層を含む)を考慮すると、中立軸のシャッタの正確な中心からの距離は、好ましくはシャッタの厚さの25%以下、より好ましくは20%以下、更により好ましくは15%以下、場合によっては5~10%以下である。
【0080】
高弾性係数及び低弾性係数と考えられるものの間のカットオフは、当業者によって決定され得る。例えば、当業者が認識するように、この種の用途では、高弾性係数は典型的には少なくとも60GPaであり、低弾性係数は典型的には6GPa以下である。典型的には、高弾性係数値と低弾性係数値との間に少なくとも10倍の差がある。
【0081】
図8は、シャッタが伸長されたときの、ポリマー材料の片面のみに設けられた高弾性係数層を有する構成の応力プロファイルをプロットしたグラフである。
図8の例における高弾性係数層は、Moを含む層であり、
図8の例における低弾性係数層は、PENである。高弾性係数層の厚さはミクロン単位であり、厚さ0ミクロンは、低弾性係数層自体の特性を示すための参照のために提供される。
図8のグラフは、y軸に沿った高弾性係数層の異なる厚さについてのピーク応力を示す。負の値は圧縮応力と考えられ、正の値は引張応力と考えられる。
図8のx軸は、中立軸からの距離を示す。
図9は、単一の高弾性係数層を有するシャッタを含む構成の歪みプロファイルをプロットしている点で
図8と同様である。
【0082】
図8から理解されるように、高弾性係数層が設けられていない場合(厚さ0ミクロン)、プロファイルは対称である。すなわち、最大圧縮応力及び最大引張応力は実質的に等しく、引張応力及び圧縮応力は、PENの断面中心を表すx軸上の0から実質的に等距離にある。
【0083】
金属の厚さが増すにつれて、プロファイルは中立軸を金属層に向かって更にシフトさせる。同時に、積分された応力の量はより大きくなるが、ピーク応力は移動により減少する。
【0084】
これらのシフトの結果は、
図10により詳細に示される。
すなわち、
図10は、ポリマー材料の片面のみに設けられた高弾性係数層を有する構成について、金属層の厚さの増加に対するモデル化された応答をプロットしたグラフである。上述したように、金属層の厚さが増すにつれて、中立軸は金属層に向かってシフトし、その結果、圧縮力と引張力とが均衡する。しかしながら、金属層におけるピーク応力は、歪みの減少のために減少する。その結果、蓄積されたエネルギーの増加、したがって金属層の厚さによるばね力の増加は非線形であり、金属層の厚さが増加するにつれて低下する。
【0085】
図11~
図12は、
図11~
図12が低弾性係数層の反対側に高弾性係数層を有するシャッタに関することを除いて、
図8~
図9と同様である。したがって、
図11は、特定の例示的な実施形態による、シャッタが伸長されたときの、ポリマー材料の両側に設けられた高弾性係数層を有する構成の応力プロファイルをプロットしたグラフであり、
図12は、特定の例示的な実施形態による、低弾性係数層の反対側に高弾性係数層を有するシャッタを含む構成の歪みプロファイルをプロットしているという点で
図11と同様である。
図11~
図12の金属の厚さは、
図11~
図12では金属が2つの高弾性係数層の間で均等に分割されている一方、
図8~
図9では厚さ全体が単一の金属層で提供されていることを除いて、
図8~
図9と同じである。
【0086】
図11(及び
図8)から理解されるように、高弾性係数層が設けられていない場合(厚さ0ミクロン)、プロファイルは対称である。すなわち、最大圧縮及び引張応力は実質的に等しく、引張応力及び圧縮応力は、PENの断面中心にある中立軸から実質的に等距離である。しかしながら、
図11のデータを作成するために使用される対称金属層構成において金属の厚さが加えられるので、中立軸は、
図8の片面構成の場合のように、金属層又は他の場所のいずれかに向かってかなりの量でシフトすることはない。換言すれば、金属層の厚さが増加する場合、プロファイルは実質的に対称のままであり、中立軸は所定の位置のままであり、ピーク応力は実質的に等しいままである。
【0087】
別の言い方をすれば、金属が両側に設けられている場合、応力のスパイクが低弾性係数層の両側にもたらされる。これらのスパイクは、全金属厚さが増加するにつれて発生する。しかし、スパイクは、大きさ及び位置で均衡し、したがって、中立軸は移動しない。更に、
図8のグラフと比較して、ピーク応力は低下せず、代わりに金属層の厚さと共に徐々に増加する。
【0088】
対称金属層構成のこれらの挙動の結果が
図13に示されており、単一金属層構成との比較が明らかである。すなわち、
図13は、単一の高弾性係数層を含むシャッタ及びシャッタの反対面上に高弾性係数層を含むシャッタについて、異なる高弾性係数材料の厚さに関連するばね力を比較するグラフである。見て分かるように、全金属厚さが増加するにつれて、対称両面構成のばね力は、片面構成と比較して劇的に増加する。
図11のグラフにおける両方のスパイクは、蓄積されたエネルギー及びばね力に寄与し、
図8の例と比較して低下しないので、生成されるばね力ははるかに高い。
【0089】
同じ総金属厚さであっても、片面構成と比較して、両面構成で加えられる予想外の相乗的な量のばね力が存在する。この相乗効果は、中立軸が片面手法で遭遇する大幅な移動と比較した場合に、中立軸が移動しない、又はあまり移動しないという事実に関連すると考えられる。
【0090】
シャッタが片面構成及び対称構成でどのように挙動するかを理解するために、動的シェードシステムを「定荷重ばね」(CFS)としてモデル化した。典型的には、プーリにきつく巻かれた幅の狭い薄い金属ストリップであるCFSは、比較的一定の負荷を提供する。CFSは、窓内のカウンターウェイトから衛星上のアンテナ展開に及ぶ様々な用途をモデル化するために使用されてきた良好な汎用ばねである。CFSの一般的な力の方程式は次の通りである。
【数1】
ここで、Fはばね力、Eは弾性係数、bはばね幅、tはばね厚、Rはコイル半径である。
【0091】
多層コイルを考慮すると、一般化されたCFS方程式は次のようになる。
【数2】
ここで、Fはばね力であり、kはポアソン補正に関連する定数であり、E’は一般化された弾性係数であり、Iは全慣性モーメントであり、R
nは自然半径(応力なし)であり、Rcはコイルの残りの部分によって課される拘束半径である。
【0092】
全慣性モーメントIは、以下の方程式によって表される。
【数3】
ここで、Iiは、i番目の層の慣性モーメントであり、Z
icは、中立軸に対するi番目の界面の座標であり、biは、i番目の層の一般化された幅である。
【0093】
中立軸上の位置は以下によって与えられる。
【数4】
ここで、y
cは、第1の界面(層1の外面)に対するi番目の層の中心面の座標であり、Aは、i番目の層の一般化された面積である。一般化されたパラメータ(E’、bi、及びAi)の計算に関する詳細は、Wyser Yら、PackagTechnol.Sci.2001:14,97-108に見出すことができる。
【0094】
図14は、片面構成についてモデル化され、実験的に得られたばね力データをプロットしたグラフである。
図14において、点は実験的に得られたデータを表し、線はモデル化されたデータを表す。金属としてMoを使用し、モデルを較正するために厚さ300nmのMoを使用した。モデル較正には、上で提供された多層コイル式の設定値、特に、Mo層の弾性係数が含まれ、これは堆積パラメータによって変化し、実験的に決定することが困難である。較正されたCFSモデルは、他のパラメータ調整なしで、他のMo厚さで測定されたばね力によく適合する。
【0095】
図15A~
図15Bは、対称高弾性係数層及び片面高弾性係数構成がどのようにモデル化されたかを示す。
図15Aにおいて、層L
1及びL
3は、厚さt
1及びt
3を有する高弾性係数層である。層L
2は低弾性係数層である。破線y
cは、この構成における中立軸の位置を示す。層L
2は、E
2の弾性係数を有し、これは層L
1及びL
3にそれぞれ提供されるE
1及びE
3弾性係数値よりも低い。特定の例示的な実施形態では、E
1及びE
3弾性係数値は、同じ又は実質的に同じであり得る。他の場合には、それらは単にE
2の層L
2弾性係数よりも高くてもよい。
【0096】
図15Bでは、低弾性係数層L2’の弾性係数E
2’よりも高い弾性係数E
1’を有する単一の高弾性係数層L
1’が存在する。層L
1’はt
1’の厚さを有し、層L
2’はt
1の厚さを有する。破線yc’は、
図15Bの構成における中立軸の位置を示す。
【0097】
図16は、正規化された高弾性係数層の厚さの関数としてのばね力の利得を示すグラフである。y軸は、片面ばね力に対する両面ばね力の比であり、x軸は、低弾性係数厚さに対する高弾性係数厚さの比である。ばね力の利得は、片面の場合と等しくなるように拘束された(t1+t3=t1’及びt2=t2’)高弾性係数層及び低弾性係数層の合計厚さを有する対称及び非対称両面の場合についてモデル化された。
図16のデータは、t1=t3及びE1=E3である対称の場合から生成された。しかしながら、E1及びE3の両方がE2よりも大きい限り、非対称の場合にもばね力の相乗的利得が生じる。一般に、
図16は、相乗的利得率が高弾性係数対低弾性係数比(E1/E2)に依存することを明確に示している。
【0098】
図17は、層1~2の厚さ対弾性係数積の比の関数としてのばね力の利得を示すグラフである。比率に加えて、
図17は、ばね力利得の実現可能な大きさが、高弾性係数対低弾性係数比(E1/E2)にも依存することを示す。例えば、E1/E3が10以上であれば、2倍以上のばね力の利得が可能である。
【0099】
図18は、
図16及び
図17のグラフから抽出したデータを示す表である。
図18及び
図16~
図17のグラフから理解されるように、約0.2のt1E1/t2E2閾値で25%のばね力利得が可能であり、約0.4のt1E1/t2E2閾値で50%のばね力利得が可能であり、約0.8のt1E1/t2E2閾値で100%のばね力利得が可能である。このデータから、一般に、E1/E2は、特定の例示的な実施形態において対称の場合に少なくとも10であるべきである。非対称の場合、E1及びE3の低い方をE2で割ったものは、特定の例示的な実施形態において少なくとも10であるべきである。同様に、このデータから、第2の弾性係数と第2の厚さとの積及び第3の弾性係数と第3の厚さとの積のうちの低い方を、(b)第1の弾性係数と第1の厚さとの積によって割ったものは、特定の例示的な実施形態において少なくとも0.2であるべきである。
【0100】
特定の例示的な実施形態は、PENの反対側にMoの導電性層を含むものとして説明されているが、異なる例示的な実施形態では他の構成を使用してもよい。他の構成は、他の導電性コーティング及び/又は他のポリマーベースの層を含むことができる。例えば、Al、ITO等は、異なる例示的実施形態において、PEN、PET、PI、PEEK、又は他の層上の導電性層として使用されてもよい。
【0101】
更に、特定の例示的な実施形態は、弾性層の両側の高弾性係数層に使用される同じ材料を説明しているが、異なる例示的な実施形態は、高弾性係数層に関して異なる材料を使用してもよい。例えば、Mo及びAl、Mo及びITO、Al及びITO、及び/又は他の材料が、ポリマーベースの層の反対側に使用されてもよい。低弾性係数層の反対側の高弾性係数層に同じ材料タイプが使用される場合、それらは厚さに関して少なくとも実質的に対称であってもよい。例えば、低弾性係数層の反対側の高弾性係数層に同じ材料タイプが使用される場合、高弾性係数層の厚さは、25%以下、より好ましくは15%以下、更により好ましくは10%以下だけ変化してもよい。いくつかの例では、同じ材料タイプが低弾性係数層の反対側の高弾性係数層に使用される場合、厚さは5%以下だけ変化し得る。異なる材料が使用される状況では、それらは、それらの弾性係数と厚さの値とを乗算したものに関して少なくとも実質的に対称であり得る。例えば、低弾性係数層の反対側の高弾性係数層に異なる材料タイプが使用される場合、それらの弾性係数と厚さとの積は、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下、更により好ましくは10%以下だけ変化する。いくつかの例では、低弾性係数層の反対側の高弾性係数層に異なる材料タイプが使用される場合、それぞれの弾性係数と厚さの値との積は、5%以下だけ変化してもよい。
【0102】
特定の例示的な実施形態は、例えば、高弾性係数層が低弾性係数層を挟む3層シャッタシステムを含むものとして説明されている。しかしながら、異なる例示的な実施形態は、より多くの層又はより少ない層が提供される異なる構成を使用してもよい。層積層体は、異なる例において、低弾性係数基材に対して対称であってもよいし、対称でなくてもよい。例えば、インクが含まれる場合、例えば、基材の両側上の全ての層のそれぞれの体積弾性係数と厚さの値との積が実質的に同じになるように、応力体系のシフトを考慮に入れることができる。
【0103】
図19~
図20は、特定の例示的な実施形態による、改善されたばね力を有する例示的なシャッタの断面図である。
図19は、その弾性層の両側に同じ材料を使用し、その上に単一の材料のみを含む。
図19に示すように、PEN弾性層1902が低弾性係数層として設けられている。第1の導電性コーティング1904a~第2の導電性コーティング1904b(例えば、Al又はMoを含む1つ以上の層を含んでもよい)は、PEN弾性層1902を挟む。上述の利点を得るために、特定の例示的な実施形態では、23.4ミクロン厚のPEN層を用いて、0.4ミクロン厚(又はそれより厚い)のAl又は0.1ミクロン厚(又はそれより厚い)のMoが使用されてもよい。特定の例示的な実施形態において、これらの例示的な厚さは、25%以下、又は15%以下、又は10%以下だけ変化する。
【0104】
図19とは対照的に、
図20は、その弾性層の両側に異なる層積層体を使用する。すなわち、
図20では、PEN弾性層2002が基材として設けられている。導電性コーティング2004(例えば、Al又はMoを含む1つ以上の層を含むことができる)は、PEN弾性層2002の片面だけに設けられる。第1のポリイミド層2006a~第2のポリイミド層2006bは、
図20の例示的なシャッタにおいて最外層として設けられる。
【0105】
図20の例では、第1のポリイミド層2006a~第2のポリイミド層2006bはそれぞれ、厚さ2~4ミクロンの湿式印刷ポリイミドコーティングであってもよい。PEN弾性層2002は、16~24ミクロンの厚さであってもよい。第1のポリイミド層2006a~第2のポリイミド層2006bの一方又は両方は、色のためにドープされてもよい。したがって、それらは、美的インク層として機能し得る(例えば、美的インク層の代わりをし得る)。加えて、このような層は良好な誘電特性を有し、これは全体としてシェードの動作に有利である。
【0106】
ばね力は、典型的には、上記の説明から理解されるように、金属層の弾性係数に大きく依存する。PENの加熱によって引き起こされるPENの収縮もまた、ばね力の推進力であり得る。これは、例えば
図20の例の場合である。しかしながら、ばね力は、例えば長期間の伸長の結果として、経時的に失われ得ることに留意されたい。
【0107】
図20の例示的な設計の場合、ポリイミドは、全体的なばね力を駆動するという点ではるかに支配的になる。ポリイミドの使用はまた、ポリイミドが高いTgを有するので、高温プロセスによって引き起こされるPEN緩和に関する問題を克服するのに役立つようである。すなわち、系のTgを増加させると、弾性係数緩和速度が減少し、これにより、長期伸長中のばね力損失が減少する。したがって、特定の例示的な実施形態は一般に、系のTgを改善しようとする場合がある。特に
図20において、ポリイミドは、ばね安定性に関してシェードばね強度及び高温耐性に寄与する。ポリイミド層は本質的にビームの外側フランジとなり、剛性を提供する。この構成は、上述した2つの閾値基準(すなわち、E1及びE3のうちの低い方をE2で割ったものが少なくとも10であり、第2の弾性係数と第2の厚さとの積及び第3の弾性係数と第3の厚さとの積のうちの低い方を第1の弾性係数と第1の厚さとの積で割ったものが少なくとも0.2である)を満たさなくても使用することができる。
【0108】
本明細書に記載されるIGユニットは、表面1、2、3、及び4のうちのいずれか1つ以上に低Eコーティングを組み込んでもよい。上述のように、例えば、このような低Eコーティングは、シェードのための導電層として機能し得る。他の例示的な実施形態では、シェードに役立つこと及びシェードのための導電層に加えて、又はそれとは別に、低Eコーティングが別の内面に提供されてもよい。例えば、表面2に低Eコーティングを設けてもよく、表面3に対してシェードを設けてもよい。別の例では、シェード及び低Eコーティングの位置を反転させてもよい。いずれの場合も、別個の低Eコーティングは、表面3に対して提供されるシェードを操作するのを助けるために使用されても、使用されなくてもよい。特定の例示的実施形態では、表面2及び3上に提供される低Eコーティングは、銀ベースの低Eコーティングであってもよい。低Eコーティングの例は、米国特許第9,802,860号、同第8,557,391号、同第7,998,320号、同第7,771,830号、同第7,198,851号、同第7,189,458号、同第7,056,588号及び同第6,887,575号に明記されており、上記の文献のそれぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。ITOなどに基づく低Eコーティングを内面及び/又は外面に使用してもよい。例えば、米国特許第9,695,085号及び同第9,670,092号を参照されたく、上記の文献のそれぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。これらの低Eコーティングは、特定の例示的実施形態に関連して使用され得る。
【0109】
反射防止コーティングは、IGユニットの主表面上に提供されてもよい。特定の例示的実施形態では、ARコーティングは、低Eコーティング及びシェードが提供されない各主表面上に提供されてもよい。例示的なARコーティングは、例えば、米国特許第9,796,619号及び同第8,668,990号、並びに米国特許出願公開第2014/0272314号に記載されており、上記の文献のそれぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,556,066号も参照されたい。これらのARコーティングは、特定の例示的実施形態に関連して使用されてもよい。
【0110】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、例えば、商業用途及び/又は住宅用途の内窓及び外窓、天窓、ドア、冷蔵庫/冷凍庫などの陳列棚(例えば、それらのドア及び/又は「壁」用)、車両用途などを含む、多種多様な用途に組み込むことができる。
【0111】
特定の例示的実施形態は、2つの基材を含むIGユニットに関連して記載されているが、本明細書に記載される技術は、いわゆる三重IGユニットに関して適用され得ることが理解されるであろう。
このようなユニットでは、実質的に平行に離間した第1の基材、第2の基材、及び第3の基材は、第1のスペーサシステム及び第2のスペーサシステムによって分離され、シェードは、最も内側の基材及び最も外側の基材の内面のうちの任意の1つ以上に隣接して、かつ/又は中間基材の表面の一方若しくは両方に隣接して提供されてもよい。
【0112】
特定の例示的実施形態は、ガラス基材を組み込むものとして記載されているが(例えば、本明細書に記載されるIGユニットの内側及び外側のペインの使用のために)記載されているが、他の例示的な実施形態は、そのようなペインの一方又は両方のための非ガラス基材を組み込んでもよいことが理解されるであろう。例えば、プラスチック、複合材料などを使用してもよい。ガラス基材が使用される場合、そのような基材は、熱処理され(例えば、熱強化されかつ/又は熱焼戻しされ)、化学熱焼戻しされ、アニールされた状態のままなどであってもよい。特定の例示的実施形態では、内側基材又は外側基材は、同じ又は異なる材料の別の基材に積層されてもよい。
【0113】
本明細書で使用するとき、「~上」及び「~によって支持されている」などの用語は、明示的に記載されない限り、2つの要素が互いに直接隣接していることを意味するものと解釈されるべきではない。換言すれば、第1の層は、第2の層との間に1つ以上の層が存在する場合であっても、第2の層「上」又は「によって支持されている」とされ得る。
【0114】
特定の例示的実施形態では、絶縁ガラス(IG)ユニットが提供される。第1の基材及び第2の基材は、それぞれが内部主表面及び外部主表面を有し、第1の基材の内部主表面は、第2の基材の内部主表面に面している。スペーサシステムは、第1の基材及び第2の基材を互いに対して実質的に平行に離間した関係に維持し、それらの間に間隙を画定するのに役立つ。動的に制御可能なシェードは、第1の基材と第2の基材との間に挿入される。シェードは、第1の基材の内部主表面上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層と、第1の導電性層の、第1の基材とは反対の側において、第1の導電性層上に直接又は間接的に設けられた第1の誘電体層と、第1の弾性率を有する可撓性基材を含むシャッタとを含む。可撓性基材は、第1の側及び第2の側を含み、第1の厚さを有する。可撓性基材の第1の側は、1つ以上の層を含む第1の層積層体を支持し、少なくとも第2の導電性層を含む。第1の層積層体は、第2の厚さ及び第2の弾性率を有する。可撓性基材の第2の側は、1つ以上の層を含む第2の層積層体を支持する。第2の層積層体は、第3の厚さ及び第3の弾性率を集合的に有する。第2の弾性係数及び第3の弾性係数はそれぞれ、第1の弾性係数よりも大きい。シャッタは、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、かつシャッタ閉位置からシャッタ開位置に後退可能である。制御回路は、可撓性基材をシャッタ閉位置に駆動する静電力を生成するための電圧を供給するように構成されている。第2の弾性係数及び第3の弾性係数のうちの低い方と第1の弾性係数との比は少なくとも10であり、(a)第2の弾性係数と第2の厚さとの積及び第3の弾性係数と第3の厚さとの積のうちの低い方を、(b)第1の弾性係数と第1の厚さとの積で割ったものは少なくとも0.2である。
【0115】
前の段落の特徴に加えて、特定の例示的実施形態では、第2の導電性層は、Mo及び/又はAlを含んでもよい。
【0116】
前の2つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的な実施形態では、第1の層積層体及び第2の層積層体はそれぞれ金属層を含むことができ、例えば、第1の層積層体内の金属層は第2の導電性層である。
【0117】
前の段落の特徴に加えて、特定の例示的な実施形態では、第1の層積層体及び第2の層積層体内の金属層は、その中の唯一の層であってもよい。
【0118】
前の2つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的な実施形態では、シャッタは、第1の厚さが2倍であり、第2の層積層体内に金属層がない構成よりも少なくとも25%高いばね力を有し得る。
【0119】
前の5つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的な実施形態では、可撓性基材は、PENを含んでもよい。
【0120】
前の6つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的な実施形態では、長手方向の応力又は歪みが存在しない中立軸が、可撓性基材の断面の中央領域に設けられる。
【0121】
前の段落の特徴に加えて、特定の例示的な実施形態では、中立軸は、シャッタの断面の中心から20%以下だけ離間されてもよい。
【0122】
特定の例示的な実施形態では、前の8つの段落のいずれかによるIGユニット及び/又はシェード(基材を有する又は有さない)を作製する方法が提供される。同様に、特定の例示的な実施形態では、上記8つの段落のいずれかよるシェードを動作させる方法が提供される。特定の例示的な実施形態では、基材が提供される。基材は、基材上に設けられた動的に制御可能なシェードを含む。シェードは、基材上に直接又は間接的に設けられた第1の導電性層と、第1の導電性層の、基材とは反対の側において、第1の導電性層上に直接又は間接的に設けられた第1の誘電体層と、第1の弾性率を有する可撓性基材を含むシャッタとを含む。可撓性基材は、第1の側及び第2の側を含み、第1の厚さを有し、可撓性基材の第1の側は、1つ以上の層を含む第1の層積層体を支持し、少なくとも第2の導電性層を含み、第1の層積層体は、第2の厚さ及び第2の弾性率を有し、可撓性基材の第2の側は、1つ以上の層を含む第2の層積層体を支持し、第2の層積層体は、集合的に第3の厚さ及び第3の弾性率を有し、第2の弾性係数及び第3の弾性係数はそれぞれ、第1の弾性係数より大きい。シャッタは、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、かつシャッタ閉位置からシャッタ開位置に後退可能である。第2の弾性係数及び第3の弾性係数のうちの低い方と第1の弾性係数との比は少なくとも10であり、(a)第2の弾性係数と第2の厚さとの積及び第3の弾性係数と第3の厚さとの積のうちの低い方を、(b)第1の弾性係数と第1の厚さとの積で割ったものは少なくとも0.2である。基材は、例えば、前の8つの段落のいずれかの特徴を含んでもよい。
【0123】
特定の例示的実施形態では、絶縁ガラス(IG)ユニットの製造方法が提供される。方法は、第1の基材及び第2の基材を有することであって、第1の基材及び第2の基材の各々が内部主表面及び外部主表面を有し、第1の基材の内部主表面が、第2の基材の内部主表面に面している、有することを含む。動的に制御可能なシェードは、第1の基材及び/又は第2の基材に設けられる。シェードは、第1の基材の内部主表面上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層と、第1の導電性層の、第1の基材とは反対の側において、第1の導電性層上に直接又は間接的に設けられた第1の誘電体層と、第1の弾性率を有する可撓性基材を含むシャッタとを含む。可撓性基材は、第1の側及び第2の側を含み、第1の厚さを有し、可撓性基材の第1の側は、1つ以上の層を含む第1の層積層体を支持し、少なくとも第2の導電性層を含み、第1の層積層体は、第2の厚さ及び第2の弾性率を有し、可撓性基材の第2の側は、1つ以上の層を含む第2の層積層体を支持し、第2の層積層体は、集合的に第3の厚さ及び第3の弾性率を有し、第2の弾性係数及び第3の弾性係数はそれぞれ、第1の弾性係数より大きい。シャッタは、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、かつシャッタ閉位置からシャッタ開位置に後退可能である。第1の導電性層及び第2の導電性層は、可撓性基材をシャッタ閉位置に駆動する静電力を作り出すための電圧を供給するように接続される。第1の基材及び第2の基材は、間隙がそれらの間に画定され、動的に制御可能なシェードが間隙に位置するように、実質的に平行に離間した関係で互いに接続される。第2の弾性係数及び第3の弾性係数のうちの低い方と第1の弾性係数との比は少なくとも10であり、(a)第2の弾性係数と第2の厚さとの積及び第3の弾性係数と第3の厚さとの積のうちの低い方を、(b)第1の弾性係数と第1の厚さとの積で割ったものは少なくとも0.2である。
【0124】
前の段落の特徴に加えて、特定の例示的実施形態では、第2の導電性層は、Mo及び/又はAlを含んでもよい。
【0125】
前の2つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的な実施形態では、第1の層積層体及び第2の層積層体はそれぞれ金属層を含むことができ、例えば、第1の層積層体内の金属層は第2の導電性層である。
【0126】
前の3つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的な実施形態では、長手方向の応力又は歪みが存在しない中立軸が、可撓性基材の断面の中央領域に設けられてもよい。
【0127】
前の4つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的な実施形態では、可撓性基材は、PENを含んでもよい。
【0128】
特定の例示的実施形態では、絶縁ガラス(IG)ユニット内で動的シェードを操作する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載のIGユニットを有することと、可撓性基材をシャッタ閉位置に駆動するために制御回路に電圧を供給することと、可撓性基材をシャッタ開位置に戻すようにすることとを含む。
【0129】
特定の例示的実施形態では、絶縁ガラス(IG)ユニットが提供される。第1の基材及び第2の基材は、それぞれが内部主表面及び外部主表面を有し、第1の基材の内部主表面は、第2の基材の内部主表面に面している。スペーサシステムは、第1の基材及び第2の基材を互いに対して実質的に平行に離間した関係に維持し、それらの間に間隙を画定するのに役立つ。動的に制御可能なシェードは、第1の基材と第2の基材との間に挿入される。シェードは、第1の基材の内部主表面上に直接又は間接的に提供された第1の導電性層と、第1の導電性層の、第1の基材とは反対の側において、第1の導電性層上に直接又は間接的に設けられた第1の誘電体層と、可撓性基材を含むシャッタとを含む。可撓性基材は、第1の側及び第2の側を含み、可撓性基材の第1の側は、第1のポリイミド層と、可撓性基材と第1のポリイミド層との間に挟まれた第2の導電性層とを支持し、可撓性基材の第2の側は、第2のポリイミド層を支持する。シャッタは、シャッタ開位置からシャッタ閉位置に伸長可能であり、かつシャッタ閉位置からシャッタ開位置に後退可能である。制御回路は、可撓性基材をシャッタ閉位置に駆動する静電力を生成するための電圧を供給するように構成されている。
【0130】
前の段落の特徴に加えて、特定の例示的実施形態では、第2の導電性層は、Mo及び/又はAlを含んでもよい。
【0131】
前の2つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的実施形態では、可撓性基材は、PENを含み得る。
【0132】
前の3つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的な実施形態では、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層のそれぞれは、所望の着色のためにドープされてもよい。
【0133】
前の4つの段落のいずれかに加えて、特定の例示的な実施形態では、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層のそれぞれは、可撓性基材上に湿式塗布されてもよい。
【0134】
特定の例示的な実施形態では、先の5つの段落のいずれかによるIGユニット及び/又はシェード(基材を有する又は有さない)を作製する方法が提供される。同様に、特定の例示的な実施形態では、先の5つの段落のいずれかによるシェードを動作させる方法が提供される。
【0135】
本発明は、現在実用的で好ましい実施形態と考えられるものと関連して説明されたが、本発明は、開示される実施形態及び/又は蒸着技術に限定されるものではなく、寧ろ、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図するものであることを理解されたい。
【国際調査報告】