(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】左心耳閉鎖装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561018
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 IB2022052584
(87)【国際公開番号】W WO2022208233
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021000008411
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523374552
【氏名又は名称】ラウレンティ,リッカルド
【氏名又は名称原語表記】LAURENTI Riccardo
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ラウレンティ,リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッラーナ、ヴァレリオ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD55
4C160DD65
(57)【要約】
経カテーテル経路を通じて左心房(A)に埋め込まれるように設計された左心耳閉鎖装置であって、左心房(A)の内面に当接するように構成された自己拡張可能な超弾性のケージ(1)を備え、前記ケージ(1)には、該ケージによって及ぼされる弾性スラストによって心耳(B)の縁に対して前方から保持されて心耳を塞ぐのに適した端閉鎖具(3)が設けられている閉鎖装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経カテーテル経路を通じて左心房(A)に埋め込まれるように設計された左心耳閉鎖装置であって、
左心房(A)の内面に当接し、左心房(A)の少なくともかなりの部分を占めるように構成された自己拡張可能な超弾性のケージ(1)を備え、前記ケージ(1)には、該ケージによって及ぼされる弾性スラストによって心耳(B)の縁に対して前方から保持されて心耳を塞ぐのに適した端閉鎖具(3)が設けられていることを特徴とする閉鎖装置。
【請求項2】
前記端閉鎖具(3)は、ほぼ円錐形または楕円形の形状を有し、心耳(B)の縁を余裕をもって覆うようなサイズを有することを特徴とする請求項1に記載の閉鎖装置。
【請求項3】
前記ケージ(1)は、その拡張後に、ほぼ楕円形の形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の閉鎖装置。
【請求項4】
前記ケージ(1)は、波状または正弦波状に配された複数の縦ワイヤ(4)からなる環状網体によって形成されていることを特徴とする請求項1~3のうちの一項以上に記載の閉鎖装置。
【請求項5】
前記複数の波状または正弦波状の縦ワイヤの頂点は並置されており、それらは自由であるか、または相互に結合されていることを特徴とする請求項4に記載の閉鎖装置。
【請求項6】
前記ケージ(1)は、左心房(A)の全容積の一部のみを占める大きさであることを特徴とする請求項1~5のうちの一項以上に記載の閉鎖装置。
【請求項7】
前記ケージ(1)は、左心房(A)の全容積の一部のみを占める大きさであることを特徴とする請求項1~5のうちの一項以上に記載の閉鎖装置。
【請求項8】
前記ケージ(1)は、前記端閉鎖具(3)と反対側の端部が開口していることを特徴とする請求項1~7のうちの一項以上に記載の閉鎖装置。
【請求項9】
前記ケージ(1)には、閉鎖装置(1)が埋め込まれた状態で僧帽弁へのアクセスを可能にする側方通路(5)が設けられていることを特徴とする請求項1~8のうちの一項以上に記載の閉鎖装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には心臓プロテーゼ(cardiac prostheses)に関し、より詳細には、左心耳閉鎖装置に関する。
【0002】
心耳(右心耳と左心耳があるが、この場合においては、はるかに重要である左心耳)は心房の突起である。その形状は個人によって大きく異なるが、形状とサイズが不定の曖昧な円形の開口によって心房に接続されている。
【0003】
心耳が進化の祖先の名残にすぎないことを考えると、心耳には特別な機能はない。それどころか、基本的にそれが血液の停滞しやすい出口のない「袋」であることを考えると、特に患者が血栓(剥がれて循環系に入る凝血塊)の形成を促進する病態である心房細動を患っている場合、心耳は凝血塊(血栓)の形成場所になる可能性がある。実際、心房細動患者では、心房血栓の90%以上が左心耳から発生している。したがって、永続性心房細動があり、脳卒中のリスクが高く、抗凝固薬の禁忌を有する患者には、左心耳の閉鎖が必要である。
【背景技術】
【0004】
治療法は患者の病気に関連しており、治療オプションは2つある。
- 薬理学的治療: 血液凝固を起こりにくくする一方で、出血の可能性をより頻繁にする。
- 機械的治療: 血栓生成部位を濾過または遮断するフィルターまたはプラグの使用を提供する。
【0005】
前述したように、心耳には機能がないことを考えると、最良の機械的解決策は、心房ポーチ(atrium pouch)の完全な隔離を保証する一種の安定した「プラグ」で接続穴を確実に閉じることである。空洞と心房との間の血液交換が完全に排除されると、心耳は凝固した血液で満たされ、何の影響ももたらさない組織へと徐々に変化する。この解決策は、出血の危険性が高い付随疾患のために薬理学的解決策が推奨できない場合に唯一実行可能な解決策である。さらに、場合によっては、有効成分に対する患者の反応が不十分なために、薬物療法自体が効果がないことにも注意する必要がある。
【0006】
一見単純な問題であるが、心耳の特定の解剖学的条件(入口表面の非共面性(non-coplanarity)、オリフィスの形状の不規則性、形状の予測不可能性)において液圧シールを確実にする機械的閉鎖、およびプロテーゼ(prosthesis 人工補綴物)の固定の安定性は、解決が困難な問題であり、未だ完全には解決されていない。
【0007】
現在の解決策は、シール部分と固定部分とを通常含む閉鎖装置の三次元形状に基づいたプロテーゼを提供している。それは、経カテーテル経路を通じて左心房に挿入することによって埋め込まれ(移植され)、心耳に入って心耳を内側から閉じる。これらのプロテーゼは、フックまたは金属製の自己拡張可能な円形要素の基本的な助けを借りて所定の位置に保持される。このタイプの解決策は、例えば、欧州特許第2716237号、欧州特許第3146915号、欧州特許第3329865号、欧州特許第3369388号、及び欧州特許第3398536号に記載されている。
【0008】
これらの解決策は構造的に複雑であり、心耳の気密封止に関連する信頼性の問題を明らかにしている。さらに、その埋め込みのための介入は複雑になる可能性がある。
【0009】
閉鎖装置が弾性ケージ(elastic cage)を含む解決策は、米国特許出願公開第2015/22382号に記載および図示されている。この解決策は、閉鎖装置の取り付け(application)後に必要な閉鎖装置の安定性を確保することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、既知の解決策の欠点を克服し、特に取り付け状態での安定性に関して、機能的で信頼性のある単純な左心耳閉鎖装置(left atrial auricle occluder)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、心房の内側から心耳を水密に封止し、内側からではなく正面から心耳を閉じるということを考えると、従来技術とは全く異なる独特の概念に基づいている。
【0012】
この目的のために、本発明による閉鎖装置は、自己拡張可能な超弾性ケージプロテーゼ(cage prosthesis)を備える。このケージプロテーゼは、心房の内面に当接して心房の少なくとも相当な部分(substantial part)を占めるように構成されると共に、端閉鎖具(end obturator)を備えている。この端閉鎖具は、前記ケージによって及ぼされる弾性スラストによって心耳に対して前方から保持すなわち付勢されて心耳を塞ぐのに適している。
【0013】
上記端閉鎖具は、典型的にはパッチ(patch)からなり、ほぼ円錐形または楕円形の形状を有することができ、心房と心耳との間の接続孔全体を前方から冗長性つまり余裕をもって覆うような寸法を有することが有利である。
【0014】
ケージは、拡張後、好都合なことに、概して楕円形の形状を有し、通常、波状または正弦波状に配された縦方向つまり長手方向のワイヤの環状網状体で構成される。この場合、波状または正弦波状のワイヤの頂点は並置されるが、それらは自由であってもよく、または相互に結合されていてもよい。
【0015】
一実施形態では、ケージは心房の略全容積を占めるように構成されているが、変形例では、ケージは心房の容積(volume)の一部のみを占めるように構成される。
【0016】
さらに、ケージには、移植後必要な場合に僧帽弁にアクセスできる通路が設けられているのが好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
次に、単に非限定的な例として提供される添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。それらの図面において、
【
図1】本発明による左心耳閉鎖装置が埋め込まれた心臓の概略断面図である。
【
図5】本発明による閉鎖装置の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一言で言うと、本発明による心耳閉鎖装置は、平らな形状であるが、非常に柔軟で適応性のある、典型的には組織(tissue)で作られたディスク(disc)を備える。このディスクは、閉鎖される心耳の開口よりも大きく、十分な冗長性つまり余裕(redundancy)を持って心耳全体を覆うようなものである。ディスクは円錐形または楕円形の形状をとり、左心房の内面に置かれた、超弾性金属で作られたケージ要素によって開口に対して止められる。そして、それは、経皮経路を通じて導入される。
【0019】
最適なアクセスは、本発明の対象ではない器具を介して心房中隔を通過する、静脈系を通る通常のアクセスであると考えられており、これにより心耳の開口の真反対側の位置から左心房への直接アクセスが可能となる。
【0020】
重要な追加の要素は、僧帽弁に対応する位置のケージ(心房の形状に従って楕円形の構成を有する)の側面に、この弁の交換または修理を見越して適切なサイズの穴が存在することである。
【0021】
楕円体は、経中隔アクセスに対応する端で開いていてもよく、それによって、その後のその部位へのアクセスを可能にしたり、場合によってはシステムの位置をより適切に変更したりすることができる。
【0022】
また、楕円体が閉鎖装置上の支持部に、ガイド要素として機能し、正しい位置決めを補助する適度な深さの円錐形の突起を有するようにすることも適切である。
【0023】
ここで
図1から
図4を詳細に参照すると、本発明による閉鎖装置が、心臓Hの左心房A内に埋め込まれ展開された構成で示されている。閉鎖装置は、自己拡張可能な超弾性ケージ1から構成されている。このケージ1は、心房Aの内面に当接するように構成されており、その前端2に閉鎖具3が設けられている。閉鎖具3は、ケージ1によって及ぼされる弾性スラストによって、心耳Bの縁に当ててその縁内に前方から保持または押し付けられて、心耳Bを塞ぐのに適しているものである。
【0024】
ここで説明する例の場合、ケージ1の前端2は円錐形状を有し、閉鎖具3は、典型的には前述したように、組織(tissue)で作られた可撓性パッチからなる。この可撓性パッチは、ケージ1の弾性のおかげで、心耳Bの開口をシールできるように適応可能である。この目的のために、閉鎖具3のサイズは、心耳Bの開口の縁を余裕をもって覆うようなサイズ、すなわちその周囲を越えるような大きさである。
【0025】
ケージ1は、ほぼ楕円形の形状を有し、左心房Aの少なくともかなりの(substantial)部分を占める。この例では、ケージ1は、左心房Aの実質的に全ての容積を占めるような大きさであり、左心房Aの内壁に対して安定して当接し、反応し、閉鎖具3を心耳Bに弾性的に押し付けて、心耳Bを実質的に気密に閉鎖する。
【0026】
ケージ1は、波状または正弦波状の配置(配列 arrangement)を有する縦ワイヤ4の環状のネットワークつまり網状体からなる。波状または正弦波状のワイヤの頂部は並置されており、それらは自由であってもよいし、または相互に結合されていてもよい。一般に、ワイヤ4の超弾性材料は、ニッケルとチタンのSMAつまり形状記憶合金(ニチノール)であり得る。
【0027】
ケージ1を形成する網状体(ネットワーク)には、閉鎖装置1が埋め込まれた状態で僧帽弁へのアクセスを可能にする側方通路(lateral passages)5が都合よく設けられている。
【0028】
図5~7に示される変形例は、概して前の実施形態と同様であるが、ケージ1のサイズに関する違いがあり、この場合、心房Aの容積の一部(例えば、半分よりわずかに多い)のみを占めるように構成されている。さらに、パッチ3が付けられる(前述の実施形態のようにケージ1の外側ではなくケージ1の内側に配置される)ケージ1の前端2は、円錐形ではなく、楕円形又は丸い形状を有する。
【0029】
この変形例では、ケージ1の背側端は、その部位へのその後のアクセスを可能にするため、またはおそらくは閉鎖装置のより良い再配置を可能にするために開いている。
【0030】
図示されていないさらなる変形例では、心耳Bの縁に対して閉鎖具3の同じ機能的シール効果を達成するのに適している限り、ケージは楕円体以外の幾何学的形状を有してもよい。例えば、ケージは傘状であってもよい。
【0031】
明らかなことであるが、構造の詳細および実施形態は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の保護範囲から逸脱することなく、ここで説明および図示されたものに関して幅広く変更することができる。
【国際調査報告】