(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】コーティングされたポリオレフィン
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20240315BHJP
C08F 255/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B01J20/26 G
C08F255/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561233
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2021065193
(87)【国際公開番号】W WO2022216330
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591025358
【氏名又は名称】ダイオネックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】リヴィエロ,ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ポール,クリストファー エー.
【テーマコード(参考)】
4G066
4J026
【Fターム(参考)】
4G066AA47D
4G066AB07D
4G066AB13D
4G066AB21D
4G066AC12C
4G066AC13C
4G066AC14B
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4J026GA01
(57)【要約】
官能性ポリマー層を上に配設されたポリオレフィン基板を含む、コーティングされた基板。ポリオレフィン基板は、約5ミクロン~約250ミクロンの範囲の細孔サイズを有するフロースルー細孔構造を有する。官能性ポリマー層は、約1ミクロン~約20ミクロンの範囲の厚さを有し、層の細孔構造は、約1nm~約100nmの範囲の細孔サイズを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた基板であって、
官能性ポリマー層を上に配設されたポリオレフィン基板を含み、
前記ポリオレフィン基板が、約5ミクロン~約250ミクロンの範囲の細孔サイズを有するフロースルー細孔構造を有し、かつ
前記官能性ポリマー層が、約1ミクロン~約20ミクロンの範囲の厚さを有し、層の細孔構造が、約1nm~約100nmの範囲の細孔サイズを有する、コーティングされた基板。
【請求項2】
前記官能性ポリマー層と前記ポリオレフィン基板との質量比が、約1/100~約50/100の範囲である、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項3】
前記コーティングされた基板が、5%~70%の細孔容積を有する、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項4】
前記官能性ポリマー層が、前記ポリオレフィンに共有結合されておらず、前記官能性ポリマー層が、約25m
2/g~約800m
2/gの表面積を有する、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項5】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンを含む、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項6】
前記官能性ポリマー層が、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルベンジルクロリド、アクリレート、メタクリレート、エチルビニルベンゼン、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせから形成されたポリマーを含む、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項7】
前記官能性ポリマーが、架橋されている、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項8】
前記官能性ポリマー層が、均質である、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項9】
前記ポリオレフィン基板が、繊維、シート、スクリーン、織メッシュ、及び焼結物品から選択される形態を含む、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項10】
前記ポリオレフィン基板が、焼結粒子を含む、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項11】
前記官能性ポリマー層の上に1つ以上の追加の官能性ポリマー層を更に含む、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項12】
前記1つ以上の追加の官能性ポリマー層が、疎水性であるか、親水性であるか、又はイオン交換官能性を有する、請求項11に記載のコーティングされた基板。
【請求項13】
前記官能性ポリマー層が、負に帯電したスルホネート基を含み、正に帯電したアニオン交換粒子が、前記負に帯電したスルホネート基にイオン結合している、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項14】
前記官能性ポリマー層が、正に荷電したアミノ基を含み、負に帯電したカチオン交換粒子が、前記正に帯電したアミノ基にイオン結合している、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項15】
前記ポリオレフィン基板を提供するプロセス、
1つ以上のポロゲン、1つ以上のモノマー、及び重合開始剤を前記ポリオレフィン基板と組み合わせて、混合物を形成するプロセス、
前記モノマーの重合を開始して、前記官能性ポリマー層を形成するプロセス、並びに
前記重合の少なくとも一部の間に前記混合物を攪拌するプロセスによって形成される、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項16】
前記ポロゲンが、脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族、及びハロゲン化芳香族から選択される溶剤を含む、請求項15に記載のコーティングされた基板。
【請求項17】
前記1種以上のポロゲンが、n-ヘプタンを含み、前記1種以上のモノマーが、ジビニルベンゼンを含み、前記ポロゲンとモノマーとの比率が、1/1~20/1の範囲である、請求項15に記載のコーティングされた基板。
【請求項18】
前記官能性ポリマー層は、前記混合物が攪拌されている間に密封容器内で形成される、請求項15に記載のコーティングされた基板。
【請求項19】
前記ポロゲンとモノマーとの比率が、質量で1/10~400/10である、請求項15に記載のコーティングされた基板。
【請求項20】
モノマーと基板との比率が、質量で1/100~50/100である、請求項15に記載のコーティングされた基板。
【請求項21】
前記ポロゲン及び前記モノマーのヒルデブランド溶解度パラメータが、4以下だけ異なる、請求項15に記載のコーティングされた基板。
【請求項22】
ポリオレフィン基板が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリノルボルネン、環状オレフィンコポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項23】
ポリオレフィン基板が、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権情報)
本出願は、2021年4月5日に出願された「COATED POLYOLEFINS」と題する米国特許出願第63/170,950号の優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多孔質ポリマーは、分析的分離及び分析のための試料を調製する際に吸着剤として使用することができる。多孔質ポリマーは、分析物保持、濃縮、又はマトリックス排除のために使用することができる。場合によっては、多孔質ポリマーを液体試料中に浸漬して分析物を吸着させ、次いで溶出溶剤中に浸漬する。ポリマーは、吸着容量に対応し得る高い表面積を有し得るが、歴史的に、高い液体透過性とともに比較的高い吸着容量を有するポリマーを配合することは困難であった。したがって、当技術分野では、このようなポリマーに関して長年にわたる切実な必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
記載された長年にわたる切実な必要性を満たすために、本開示は、官能性ポリマー層を上に配設されたポリオレフィン基板を含む、コーティングされた基板を提供する。ポリオレフィン基板が、約5ミクロン~約250ミクロンの範囲の細孔サイズを有するフロースルー細孔構造を有する。官能性ポリマー層は、約1ミクロン~約20ミクロンの範囲の厚さを有し、層の細孔構造は、約1nm~約100nmの範囲の細孔サイズを有する。
【0004】
コーティングされた基板は、ポリオレフィン基板を提供するプロセスによって形成され得る。1種以上のポロゲン、1種以上のモノマー、及び重合開始剤は、ポリオレフィン基板と組み合わせられる。モノマーは、重合されて、ポリオレフィン基板上に官能性ポリマー層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない図面では、同じ数字が、異なる概観で同様の構成要素を表す場合がある。異なる文字の接尾辞を持つ同様の数字は、同様の構成要素の異なるインスタンスを表すことができる。図面は、例示として、しかし限定としてではなく、本文書で考察されている様々な態様を一般的に示している。図面において、
【
図1】ナイルブルーAに曝露されたコーティングされていない及びコーティングされたポリプロピレンメッシュの写真である。
【
図2】コーティングされていない及びコーティングされたポリエチレン粒子の走査型電子顕微鏡写真を提供する。
【
図3】異なる倍率でのコーティングされていない焼結ポリエチレン(polyethylene、PE)ディスクとコーティングされた焼結PEディスクとを比較する走査型電子顕微鏡写真を提供する。
【
図4】2つの異なる染料に浸漬した後に半分に切断された多孔質DVBでコーティングされたPorex 4902焼結ポリエチレンの写真である。
【
図5】溶液からコーティングされたディスクに吸着された分析物のパーセンテージのグラフである。
【
図6】焼結PE基板上のポリマー層の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図7】コーティングされたディスクのスルホン化ポリマー層に静電的に付着したラテックス粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図8】グラフト化及び非グラフト化DVBコーティングされたディスクの染料吸着実験の写真を提供する。
【
図9】コーティングされた基板の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図10】無試薬イオンクロマトグラフィー(Reagent FreeIon Chromatography、RFIC)を使用するイオンクロマトグラフィーによって分析されたアニオンの試料のクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、所望の実施形態及びそこに含まれる実施例の以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解され得る。
【0007】
別途規定されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾が生じる場合には、定義を含む、本文書が優先されるものとする。好ましい方法及び材料は以下に記載されるが、本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料は、実践又は試験で使用することができる。本明細書中で言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書で開示される材料、方法、及び例は、例示のみであり、限定することを意図していない。
【0008】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確に別様に指示されない限り、複数形照応を含む。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、用語「含む(comprising)」は、実施形態「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting
essentially of)」を含み得る。本明細書で使用される用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる」、「包含する」、及びこれらの変形は、指定された成分/ステップの存在を必要とし、他の成分/ステップの存在を許容する、制約のない暫定的な語句、用語、又は語を意図する。しかしながら、そのような説明は、列挙された成分/ステップ「からなる」及び「本質的にからなる」として、組成物又はプロセスを説明するものと解釈されるべきであり、これは、結果として生じる可能性のある混入物を伴う、指定された成分/ステップのみの存在を可能にし、かつ他の成分/ステップを排除するものである。
【0010】
本明細書で使用される場合、「約(about)」及び「およそ(at or about)」という用語は、問題の量又は値が、ほぼ又はほぼ同じ他の値と指定された値であり得ることを意味する。本明細書で使用される場合、それは、別途示されないか又は推測されない限り、±10%の変動を示す公称値であると一般に理解されている。この用語は、類似の値が特許請求の範囲に記載された同等の結果又は効果を促進することを伝えることを意図している。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の量及び特性は正確である必要はなく、正確である必要はないが、公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に知られている他の要因を反映して、必要に応じて概算及び/又はより大きく又はより小さくすることができることが理解される。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、又は他の量又は特性は、そのように明示的に述べられているかどうかにかかわらず、「約」又は「概算」である。量的値の前に「約」が使用される場合、別途明記しない限り、パラメータは特定の量的値自体も含むことが理解される。
【0011】
反対の指示がない限り、数値は、同じ有効数字桁数に減らしたときに同じである数値と、値を決定するための、本出願に記載されているタイプの通常の測定技術の実験誤差よりも少ない値だけ、記述された値とは異なる数値とを含むと理解されるべきである。
【0012】
本明細書に開示されるすべての範囲は、記載されたエンドポイントを含み、エンドポイントとは無関係である、2グラム及び10グラム、並びにすべての中間値)。本明細書に開示される範囲及び任意の値のエンドポイントは、正確な範囲又は値に限定されず、これらは、これらの範囲及び/又は値に近似する値を含むほど十分に不正確である。
【0013】
本明細書で使用される場合、近似用語は、関係する基本機能に変化をもたらすことなく変わり得る任意の定量的表現を修飾するために適用され得る。したがって、「約」及び「実質的に」などの用語によって修飾された値は、特定された明確な値に限定されない場合がある。少なくともいくつかの例では、近似用語は、値を測定するための機器の精度に対応し得る。修飾語「約」も、2つの端点の絶対値によって規定される範囲を開示しているとみなされるべきである。例えば、表現「約2~約4」はまた、範囲「2~4」を開示する。「約(about)」という用語は、示された数のプラスマイナス10%を指し得る。例えば、「約10%」は9%~11%の範囲を示し得、「約1」は0.9~1.1を意味し得る。「約」の他の意味は、四捨五入など、文脈から明らかであり得、例えば「約1」は0.5~1.4も意味し得る。更に、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」というオープンエンドの意味を有するものとして理解されるべきであるが、この用語は、「からなる(consisting)」という用語のクローズドな意味も含む。例えば、成分A及びBを含む組成物は、A、B、及び他の成分を含む組成物であり得るが、A及びBのみからなる組成物でもあり得る。本明細書で引用されるすべての文書は、それらの全体があらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれている。
【0014】
コーティングされた基板は、官能性ポリマー層を上に配設されたポリオレフィン基板を含む。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリノルボルネン、環状オレフィンコポリマー、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はそれらの両方を含む。ポリオレフィン基板は、5ミクロン~250ミクロンの範囲の細孔サイズを有するフロースルー細孔構造を有する。官能性ポリマー層は、1ミクロン~20ミクロンの範囲の厚さ及び約1nm~100nmの範囲の細孔サイズを有する、層の細孔構造を有する。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、官能性ポリマー層とは異なる。
【0015】
細孔は、それらの接続性によって分類することができる。外部に開口した細孔は、開口細孔と呼ばれ、分子の相対的サイズが合っていれば、分子が開口細孔の内側に嵌合するようにアクセス可能である。開口細孔は、閉塞を有し得るか、又は開口端であり得る。閉塞細孔は、盲細孔と称され得る。開口端細孔は、他の開口部に接続し、したがって、材料を通って他の開口部への連通を有し、いずれもフロースルー細孔と称され得る。層細孔は、官能性ポリマー層内に存在するものであり、開口細孔及びフロースルー細孔で構成され得る。
【0016】
官能性ポリマー層は、ポリオレフィン基板上に配設された層である。この層は、コーティングとみなされ得る。いくつかの実施形態では、この層は、ポリオレフィン基板を完全に覆う。いくつかの実施形態では、この層は、ポリオレフィン基板を部分的に覆う。
【0017】
いくつかの実施形態では、コーティングされた基板は、約5%~約70%の範囲である全細孔容積を有する。全細孔容積範囲の例としては、0%~5%、5%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、又は前述の範囲のうちの2つ以上の組み合わせによって定義される範囲が挙げられる。全細孔容積は、ポリオレフィン基板のフロースルー細孔の容積と層細孔の容積との合計である。全細孔容積は、コーティングされた基板の全容積と比較した、細孔である容積のパーセンテージである。
【0018】
コーティングされた基板は、固相抽出を行うための装置として、又は分析物のローディング及び/若しくは溶剤による溶出を容易にするために使用することができる。例えば、それは支持体と結合することができる。例としては、シリンジバレルカートリッジ、クロマトグラフィーカラム、統合試料調製、注入及び検出装置、膜、マイクロ流体装置、ピペットチップ、マルチウェルプレート、ストリップ、プレート、ディスク、中空管、ロッドなどが挙げられるが、これらに限定されず、他の支持体を使用することができる。支持体は、疎水性、親水性、又は親水性若しくは親水性にすることができるものであってよい。コーティングされた基板は、支持装置の表面上に配設され得るか、又は装置内のチャネル若しくはチューブ内に埋め込まれ得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリノルボルネン、環状オレフィンコポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、多孔質材料である。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、ポリエチレン(PE)を含む。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、ポリプロピレン(polypropylene、PP)を含む。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、PE及びPPの両方を含む。それは、5ミクロン~250ミクロンの範囲の細孔サイズを有するフロースルー細孔構造を有する。5ミクロン~25ミクロン、25ミクロン~50ミクロン、50ミクロン~75ミクロン、75ミクロン~100ミクロン、100ミクロン~125ミクロン、125ミクロン~150ミクロン、150ミクロン~175ミクロン、175ミクロン~200ミクロン、200ミクロン~225ミクロン、225ミクロン~250ミクロン、又は前述の範囲のうちの2つ以上の組み合わせによって定義される範囲などである。細孔サイズは、不規則形状を有し得るが、本明細書では、細孔サイズは、細孔が球状である場合、同等の細孔直径の近似値として表されることに留意されたい。
【0020】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、十分な溶剤及び分析物のアクセス及び気孔率を提供する、任意の多孔質中実構造とすることができる。ポリオレフィン基板の例示的な構造としては、繊維、シート、スクリーン、ディスク、ロッド、チューブ、織メッシュ、プレス又は成型された形状、及び焼結物品が挙げられるが、これらに限定されない。繊維は、織物に織られた繊維製品であるか、又は不織マット若しくは薄い紙状シートに作製することができる。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、焼結粒子を含む。焼結粒子は、粒子を液化することなく、加熱又は加圧を通して粒子をともに融合させることによって形成された多孔質の塊とすることができる。ポリオレフィン粒子は、非多孔質で、不規則に成形すること、又は球状に成形することができる。しかしながら、非多孔質粒子をともに融合させることは、得られる焼結粒子に多孔性を提供する空隙容積を形成する。この空隙容積は、多孔質の塊を通る液体通路を形成し、フロースルー細孔と呼ばれ得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、多孔質ではない。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィン基板は、コーティング前に、約0.1m2/g~約1m2/gの表面積を有した。表面積の例としては、0.1m2/g~約0.2m2/g、0.2m2/g~約0.3m2/g、0.3m2/g~約0.4m2/g、0.4m2/g~約0.5m2/g、0.5m2/g~約0.6m2/g、0.6m2/g~約0.7m2/g、0.7m2/g~約0.8m2/g、0.8m2/g~約0.9m2/g、0.9m2/g~約1m2/g、又は前述の範囲のうちの2つ以上の組み合わせによって定義される範囲が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
官能性ポリマーは、薄層として基板にコーティングされる。官能性ポリマー層とポリオレフィン基板との質量比は、1/100~約50/100の範囲である。例えば、質量比は、ポリオレフィン基板に組み込まれる官能性ポリマーのモノマーの質量を、ポリオレフィン基板の質量で除算したものとして表すことができる(例えば、比率=官能性ポリマーのためのモノマー質量/ポリオレフィン基板の質量)。官能性ポリマーは、モノマーの重合によって形成されて、ポリオレフィン基板上に層を形成する。いくつかの実施形態では、モノマーと基板との比率は、重合前に質量で1/100~50/100である。比率の例は、1/100~50/100、10/100~50/100、20/100~50/100、30/100~50/100、40/100~50/100、1/100~40/100、1/100~30/100、1/100~20/100、1/100~10/100の範囲、又は前述のうちの2つ以上の組み合わせによって定義される範囲である。
【0024】
いくつかの実施形態では、官能性ポリマー層は、ポリオレフィンに共有結合されていない。ポロゲン性溶剤の使用は、ポリオレフィン基板を部分的に溶解させて、ポリオレフィン基板が形成されるときにポリオレフィン構造と官能性ポリマーとの物理的混合を可能にすると考えられる。
【0025】
官能性ポリマー層の厚さは、1ミクロン~5ミクロン、5ミクロン~10ミクロン、10ミクロン~15ミクロン、15ミクロン~20ミクロンなど、1ミクロン~20ミクロンの範囲、又は前述の範囲のうちの2つ以上の組み合わせによって定義される範囲である。いくつかの実施形態では、層は、均質である。官能性ポリマー層は、染料が実施例3のようにコーティングされた基板全体に分布している場合に均質である。官能性ポリマー層の厚さは、
図9に示すような断面SEMで見ることができる。
【0026】
官能性ポリマーは、1nm~10nm、10nm~20nm、20nm~30nm、30nm~40nm、40nm~50nm、50nm~60nm、60nm~70nm、70nm~80nm、80nm~90nm、90nm~100nmなど、約1nm~100nmの範囲、又は前述の範囲のうちの2つ以上の組み合わせによって定義される範囲の細孔サイズを有する層の細孔構造を有する。層の細孔構造は、官能性ポリマー内の細孔を指す。官能性ポリマーは、液体溶液からの化学物質及び/又はイオンを結合するように構成されている。層の細孔構造は、部分的には、官能性ポリマー層の形成中にポロゲン性溶剤を使用することによって形成されると考えられる。
【0027】
官能性ポリマーは、多数の孔を含むので、広い表面積を有する。いくつかの実施形態では、表面積は、約25m2/g~約800m2/g、例えば、300m2/g~約800m2/g、例えば、300m2/g~約400m2/g、約400m2/g~約500m2/g、約500m2/g~約600m2/g、約600m2/g~約700m2/g、約700m2/g~約800m2/gの範囲、又は前述の範囲のうちの2つ以上の組み合わせによって定義される範囲である。
【0028】
官能性ポリマーは、疎水性、親水性、中程度の疎水性/親水性、イオン交換及び親和性部分を有し得る。これらの部分は、官能性ポリマー層の異なる機能を提供する。いくつかの実施形態では、層は、ポリオレフィン基板の表面に存在し、かつ、ポリオレフィンの均質な層である。
【0029】
いくつかの実施形態では、コーティングされた基板は、官能性ポリマー層の上に1つ以上の追加の(又は第2の、第3の、...)官能性ポリマー層を更に含む。第2の官能性ポリマー層は、疎水性であっても、親水性であってもよく、又はイオン交換官能性を有してもよい。これは、その下の官能性ポリマー層を部分的に覆うことができるか、又はその下の官能性ポリマー層を完全に覆うことができる。追加の官能性ポリマー層に応じて、その後の化学的性質を適用することができる。例えば、スチレン/DVB及びn-ヘプタンの第2の官能性ポリマー層は、非極性(疎水性)であろう。この官能性ポリマー層をスルホン化して、極性(親水性/水湿潤性)のカチオン交換相を作製することができる。ビニルベンジルクロリド(vinylbenzylchloride、VBC)/ジビニルベンゼン(divinylbenzene、DVB)及びn-ヘプタンの官能性ポリマー層は、アミノ化して、アニオン交換相を生成することができる。DVB官能性ポリマー層は、様々なビニルモノマーでグラフトして、極性及び/又はイオン交換相を生成することができる。別の実施形態では、官能性ポリマー層が負に帯電したスルホン酸基を含む場合、正に帯電したアニオン交換粒子(例えば、ラテックス粒子)は、負に帯電したスルホネート基にイオン結合することができる。
【0030】
官能性ポリマーは、ポリオレフィン基板上のモノマーの溶液から形成される。モノマーは、疎水性及び/又は親水性モノマーとすることができ、また、少なくとも1つの架橋部分を含む。芳香族の(スチレン)モノマーの例としては、スチレン、DVB、VBC、エチルビニルベンゼン(ethylvinylbenzene、EVB)、及びそれらの誘導体が挙げられる。親水性モノマーとしては、アクリレート、メタクリレート、及びそれらの誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、官能性ポリマーは、スチレン、DVB、VBC、EVB、アクリレート、メタクリレート、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせから選択されるモノマーから形成されたポリマーを含む。いくつかの実施形態では、官能性ポリマーは、モノマーDVB及びEVBから形成されたコポリマーを含む。一実施形態では、技術的な等級のDVBは、不純物として約20%のEVBとともに、80%のDVB(メタ異性体及びパラ異性体の両方)を含み得ることに留意されたい。いくつかの実施形態では、官能性ポリマーは、架橋されている。架橋性モノマーとしては、モノマー、オリゴマー、又はポリマー鎖との共有結合を形成することができる2つ以上の基を有する任意のモノマーが挙げられる。VBCコポリマーの場合、コポリマーのVBC基は、アミンと反応させて、アニオン交換相を提供するための、結合させたアミン基を形成することができる。
【0031】
ポロゲン性溶剤
ポリオレフィン基板上に形成されたポリマーは、多孔質であり、ポロゲン性溶剤を用いて生成される。ポロゲン性溶剤は、モノマー混合物中に溶解して、ポリオレフィン基板を部分的に可溶化するか、又は膨潤させる。これは、得られるポリマーの溶剤でない。ヒルデブラント溶解度パラメータ(デルタ、δ)を、ポロゲンと基板との相互作用を予測するためのおおよその目安として使用することができる。概して、ポロゲン及び基板のδ値がより近くなるほど、ポロゲンが、ポリオレフィン基板を溶媒和又は膨潤させる可能性が高くなる。PE及びPPの例示的なヒルデブラント溶解度パラメータは、16~17MPa0.5の範囲である。いくつかの実施形態では、部分的可溶性は、ポロゲンのδとポリオレフィン基板のδとの間の差が、3以下、2以下、又は1以下などの、4以下であることを意味する。好適なポロゲン性溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びデカンなどの脂肪族;シクロプロパン、メチルシクロヘキサン及びヘプタレンなどの脂環式;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ハロゲン化芳香族;並びにジクロロメタン、ジクロロエタン及びトリクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポロゲンは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、及びそれらの組み合わせなどの脂肪族である。ポロゲン性溶剤は、それらのうちの2種以上を個々に、又は組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、ポロゲンとモノマーとの比率は、1/10~10/10、10/10~50/10、50/10~100/10、100/10~150/10、150/10~200/10、200/10~250/10、250/10~300/10、300/10~350/10、350/10~400/10など、質量で1/10~400/10であり、又は前述の範囲の2つ以上の組み合わせによって定義された範囲である。一例として、ポロゲンとモノマーとの比率は、比率=ポロゲンの質量/モノマーの質量、という数式で表すことができる。いくつかの実施形態では、1種以上のポロゲンはn-ヘプタンを含み、1種以上のモノマーは、ジビニルベンゼンを含み、ポロゲンとモノマーとの比率は、1/1~20/1の範囲である。
【0032】
いくつかの実施形態では、無極性モノマー(スチレン、ビニル塩化ベンジル、ジビニルベンゼンのようなアリールモノマーなど)に関して、ポロゲンの例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、及びクロロベンゼン、トリクロロエチレン、トリクロロメタンのようなハロゲン化ポロゲンが挙げられる。いくつかの実施形態では、極性モノマー(アクリレートなど)に関して、ポロゲンの例としては、メタノール、ブタノール、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホンが挙げられる。場合によっては、ポロゲンの混合物を使用して、官能性多孔質ポリマー層の表面積及び細孔サイズに影響を及ぼすことができる。
【0033】
基板をコーティングする方法
コーティングされた基板は、ポリオレフィン基板を提供するプロセスによって形成される。ポロゲン、1種以上のモノマー、及び重合開始剤は、ポリオレフィン基板と組み合わせられる。モノマーは、重合されて、ポリオレフィン基板上に官能性ポリマー層を形成する。モノマー及びポリオレフィン基板の混合物は、重合の少なくとも一部の間、攪拌される。
【0034】
重合開始剤の例はとしては、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、ジイソプロピルオキシカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルペルオキシジイソブチレート、ラウロイルパーオキサイド、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート(MAIB)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、及びアゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(CAN)などの、ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0035】
一実施形態では、ポリオレフィン基板は、1種以上のモノマー、1種以上のポロゲン、及び重合開始剤を含有するモノマー溶液と組み合わせられる。いくつかの実施形態では、ポロゲンはまた、ポリオレフィン基板の膨潤剤としても作用する。ポリエチレン粒子及びモノマー溶液を含有する密封容器は、重合が完了するまで、攪拌装置に配置されて、加熱される。攪拌の例としては、回転、振盪、及びタンブリングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
重合後、コーティングされた基板は、化学的に洗浄して、あらゆる未反応モノマー、ポロゲン、及び反応副生成物を除去することができる。洗浄は、かき混ぜ、攪拌、超音波処理、及び/又は加熱とともに、有機溶剤、酸、塩基、及び/又は塩類の溶液の使用含むことができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、二次化学ステップは、ポリマーコーティングされたポリオレフィンに行われる。これらは、追加の官能基を加えて、限定されないが、特定の疎水性、親水性、及びイオン交換官能性を付与することを含む。複数の化学ステップを行って、所望の官能性を付与することができる。
【0038】
ポリオレフィンの「不活性」に基づくと、浸透性及び不浸透性の多孔質ポリオレフィン基板を疎水性及び親水性多孔質ポリマーでコーティングする能力は、予想外であった。不浸透性基板の貫通孔を満たす又は詰まらせることなく、ポリマーが浸透性基板を一様にコーティングするという事実は、コーティングされた基板が、薄いディスク形態であり、かつ化学物質を吸着することができるという状態で、コーティングされた基板は、2気圧などの低圧又は真空下で、最大20mL/分の流量で液体が流れることを可能にする、という驚くべき結果でもあった。イオン交換コーティングされた基板は、コーティングされた基板の0.1~3ミリグラム当量/グラムの範囲の容量を有する。無極性(逆相)のコーティングされた基板は、コーティングされた基板の0.05~1ミリグラム当量/グラムの範囲の装填容量を有し得る。一例として、無極性コーティングされた基板に装填することができる疎水性材料は、キシレンとすることができる。したがって、コーティングされた基板は、比較的低い圧力で出力された溶液の化学組成を変化させる、又は変更するための研究室用ピペットチップに載置されるように構成することができる。化学組成のこの変化は、入力された液体試料からのイオン、検体、及び/又はマトリックス化学物質を結合することによって生じさせることができる。場合によっては、入力された液体試料は、酸性又は塩基であり得、よって、ヒドロニウム又は水酸化物イオンによるイオン交換を通して部分的に、又は完全に中和させることができ、それにより、コーティングされた基板から出力された液体は、変化した又は中性のpHを有する。一実施形態では、コーティングは、空隙容積の約5%~75%を閉塞する。これらの不活性ポリオレフィン基板を、後続の化学反応を可能にするポリマーでコーティングする能力は、非常に広い範囲の官能性ポリマーが特定の用途に適用される可能性を開く。
【0039】
実施例
実施例1.官能性ポリマー層を有する押出ポリプロピレンメッシュ
直径7.9mmのディスクを、0.033インチ×0.045インチの孔を有する厚さ0.031インチの押出ポリプロピレンメッシュであるIndustrial Netting Discs XN5340から打ち抜いた。公称開口面積は、約30%である。
【0040】
スクリーン(1.0g)を20mlシンチレーションバイアルに添加した。次に、3.0部のn-ヘプタンと、0.25%のAIBNを有する1.0部の80質量%ジビニルベンゼン(DVB)溶液とを含有する1.0gのモノマー溶液を添加した(モノマー溶液とスクリーンの質量が等しい)。バイアルを65℃に加熱し、72時間攪拌した。バイアルを除去し、ディスクを清浄なアセトン10mL(2回)ですすぎ、乾燥させた。スクリーンの質量増加は約6%であり、コーティングプロセスが成功したことを示した。
【0041】
未処理及び処理スクリーンのディスクを、1%IPA(湿潤用)を含む4mLの30ppmナイルブルーA中に入れた。
図1は、48時間後のスクリーンの写真である。左側のディスクは未処理(生)スクリーンであり、右側のディスクはコーティングされた/処理されたスクリーンであり、ナイルブルーがコーティングされたポリプロピレン上に吸着されたことを示す。
【0042】
実施例2.官能性ポリマー層を有するポリエチレン粒子
三井化学株式会社のMipelon PM-200は、10ミクロンの高分子量ポリエチレン粒子からなる。20mlのバイアルに、1.00gのMipelonと、5.00gの20部のn-ヘプタンと、熱フリーラジカル開始剤として1%のAIBN(ジビニルベンゼン質量の)を有する1部のジビニルベンゼン(純度80%)とを添加した。バイアルを65℃に加熱し、52時間攪拌した。重合後、粒子を沈降させ、過剰の液体(n-ヘプタン)をデカントした。次いで、粒子をアセトンの3つのアリコート(アリコート当たり15mL)ですすぎ、過剰なモノマー又はポロゲンを除去した。上清は最初の2回のすすぎで濁っており、いくらかの粒子及びコロイド状DVBを示した。最後のすすぎの後、バイアルを、キャップを外してオーブンに1時間置いて乾燥させた。
【0043】
図2の走査電子顕微鏡写真は、コーティングされていない及びコーティングされたポリエチレン粒子を示す。DVBポリマーの薄層、並びにポリマーのコロイドサイズ粒子が、PE粒子の表面全体にわたって見られ得る。DVBポリマー層を、親水性及び/又はイオン交換基を含む追加の化学的官能性を付加するように誘導体化することができる。
【0044】
実施例3.官能性ポリマー層を有する焼結ポリエチレン基板
25mlのボトル中で、直径0.31インチのPorex 4902焼結ポリエチレンのディスク(厚さ0.25インチ、細孔サイズ15~45ミクロン)を、2.0部のn-ヘプタン及び1.0部のDVB(純度80%)を(ジビニルベンゼン質量の)1%AIBNとともに含有する等質量のモノマー溶液と組み合わせた。バイアルを65℃に加熱し、44時間攪拌した。バイアルを除去し、ディスクを15mLのアセトン(2回)ですすぎ、乾燥させた。コーティングされたディスクの質量増加は約33%であり、焼結ポリエチレンディスク上へのポリマーのほぼ完全な取り込みを示した。33%の質量増加は、モノマー溶液が33%DVB(1部のDVB/2部のn-ヘプタン+1部のDVB)であり、焼結ポリエチレンがモノマー溶液と等しい質量であったという事実から生じた。コーティングされていない焼結ポリエチレンディスクとコーティングされた焼結ポリエチレンディスクとを比較する走査型電子顕微鏡写真を
図3に示す。
【0045】
コーティングされた4902ディスクが染料を吸収する能力を試験するために、ディスクをイソプロピルアルコールで湿らせ、次いで2つの染料溶液(100ppmキナルジンレッド及び100ppmナイルブルーA染料)に置いた。ディスクを30分間浸漬し、取り出し、脱イオン水ですすいで、焼結ポリエチレンの開口細孔中の染料を除去した。ディスクを縦方向に切断し、
図4は結果の写真を示す。ポリマー層は、焼結PEの表面積を大幅に増加させ、効率的な染料吸着を可能にした。
【0046】
実施例4.官能性ポリマー層を有する焼結ロッドへの染料吸着
直径約5mm及び長さ21mmの成形焼結ポリエチレンロッドを、2.0部のn-ヘプタン及び1.0部のDVB(純度80%)を1%のAIBN(ジビニルベンゼン質量の)とともに含有するモノマー溶液で、コーティングした。3つの異なる多孔性A、B及びCのロッドをモノマー溶液でコーティングし、3mLの10ppmナイルブルーAを用いて吸着効率について試験した。元の染料溶液と、コーティングされたロッド(プローブ)を接触させて60分間攪拌した後の染料溶液との可視吸光度の差を決定することによって、吸着効率を測定した。結果を以下の表に示す。
【0047】
【0048】
実施例5.DVB官能性ポリマー層を有する焼結ポリエチレンへのアルキルフェノンの吸着
Porex 4901焼結ポリエチレンシートからディスク(直径0.21インチ×厚さ0.12インチ)を打ち抜いた。次いで、ディスクを、2.0部のn-ヘプタン及び1.0部のDVB(純度80%)を0.1%のAIBN(ジビニルベンゼン質量の)とともに含有するモノマー溶液で、コーティングした。重合後、ディスクをアセトンで洗浄し、乾燥させた。各コーティングされたディスクは、約10mgのDVB層を含んでいた。コーティングされたディスクの各々5つを、直径0.026インチ、長さ3.5インチのステンレス鋼ロッド上に挿入した。10ppmの4種のアルキルフェノン(アセトフェノン、ユージノール、プロピオフェノン及びブチロフェノン)を含有する溶液を、高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、HPLC)により230nmでUV検出して分析した。ロッド上のコーティングされたディスクを、1mLのアルキルフェノン溶液中に挿入し、次いで超音波浴中に5分間置いた。次にディスクを取り出し、溶液をHPLCで分析した。このプロセスを10、20、30及び40分で繰り返した。溶液からディスク上に吸着された各分析物のパーセンテージを
図5に示す。
図5のバーのクラスタの各バーは、左から右に移動する順に、それぞれアセトフェノン、ユージノール、プロピオフェノン、及びブチロフェノンとして配列され、表される。
【0049】
実施例6.スチレン/ジビニルベンゼン及びラテックス官能性ポリマー層を有する焼結PE
96%のスチレン、4%のDVB(純度80%)、及び1%のAIBN(スチレン及びDVBを組み合わせた質量)からなる溶液を、2質量部のn-ヘプタン(w/w)で希釈した。次いで、モノマー/n-ヘプタン溶液は、等質量で直径0.2インチのPorex 4901焼結ポリエチレンディスクに添加され、ガラスボトル内に封止され、65℃のオーブン内に46時間置いた。得られたスチレン/DVBポリマーでディスクがコーティングされた後、ディスクをアセトン内ですすぎ、次いで、乾燥した。
図6は、焼結PE基板上のポリマー層を示す。
【0050】
次に、コーティングされた基板は、濃硫酸(10質量部の硫酸対1質量部のポリマーで基板をコーティングした、w/w)と組み合わせられて、95℃のオーブン内に1時間置いた。オーブンから取り出した時点で、ディスクは、薄茶色であり、これは、スチレン/DVBポリマーがスルホン化されたことを示している。スルホン化ディスクは今や負に帯電しており、水湿潤性である。ヒドロニウム形態のスルホン化ディスクの一部を、実施例9に記載のように後で使用した。次いで、スルホン化されたディスクは、水酸化ナトリウム中で中和させて、脱イオン水ですすいだ。次に、直径約400nmのコロイド状アニオン交換ラテックス粒子ポリマーの溶液を、スルホン化ディスクに添加した。ラテックス粒子の例は、米国特許第5,532,279号、同第10,118,171号及び同第4,101,460号に見出すことができ、参照により完全に組み込まれる。これらのアニオン交換ラテックス粒子は正に帯電しているので、
図7に示すように、ラテックス粒子はディスクの負に帯電したスルホン化ポリマー層に静電的に付着した。
【0051】
このアニオン交換ラテックス凝集コーティング焼結ポリエチレンは、溶液からアニオン及びカチオンを抽出するために使用することができる。
【0052】
実施例7.DVB官能性ポリマー層を有する焼結ポリエチレンへのアミノアクリレートグラフト化
Porex 4901(直径0.21インチ×厚さ0.125インチ)ディスクを、実施例3に記載したように、1%AIBN(ジビニルベンゼンの)を含む2.0 n-ヘプタン:1.0 DVB(純度80%)でコーティングした。等質量のモノマー溶液を、Porexディスクに添加し、65℃で48時間反応させた。アセトンで洗浄及び乾燥した後、コーティング効率は99%であると決定され、各ディスクは約9.2mgの多孔質DVBを含有していた。
【0053】
グラフト化のために、1.3gの75%MAOを98.7gの脱イオン水に添加することによって、2-[(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(MAO)の溶液を調製した。希釈したMAOモノマー溶液に、0.13gのフリーラジカル熱開始剤、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ABCPA)を添加した。グラフト化手順は、各々10個の4901 DVBコーティングされたディスク(DVB合計92mg)を3つの別々のバイアルに添加し、次いでDVB層の質量のそれぞれ10、20及び30%の質量でMAOモノマーを添加することからなっていた。
【0054】
各バイアル中に10個のDVBコーティングされたディスクを有する3つのバイアルを調製し、2A(10%)、2B(20%)及び2C(30%)と標識した。ディスクをアセトン(10枚のディスクに対して約0.25mL)で湿らせ、過剰のアセトンを蒸発させたので、少量の液体アセトンのみが存在した。次いで、モノマー及び開始剤溶液を添加した。3つのバイアルを60℃のオーブンに置いて、7日間重合させた。
【0055】
重合後、ディスクに水を添加した。ディスクは水で濡れており、グラフト反応がディスクを親水性にしたことを示していた。ディスクをすすぎ、超音波処理して残留モノマー又は開始剤を除去した。
【0056】
染料吸着実験を攪拌せずに行った。10、20、及び30%グラフト化MAOディスクの各々1つを4mLバイアルに入れ、5mM HCl中の100ppm酸フクシン2.0mLを添加した。参照のために、非グラフト化DVBコーティングされたディスクをアセトンで湿らせ、1.5mlの酸フクシンに添加した(バイアル5)。24時間後、ディスクを取り出し、水ですすいだ。
図8は、グラフト化ディスクが非グラフト化ディスク(バイアル5)よりも有意に多くの染料を吸着したことを示す。グラフト化はアニオン交換官能性を生成し、染料はアニオン性であるため、グラフト化ディスクは非グラフト化ディスクよりも多くの染料を保持すると予想される。
【0057】
実施例8.コーティングされた基板のSEM。
1.00gの総質量及び0.21インチ直径及び0.22インチの高さの寸法を有する29個の焼結ポリエチレンディスク(Porex 4901)を、0.666gのn-ヘプタン、0.330gの工業グレードジビニルベンゼン(純度80%)及び0.0033gの熱ラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のモノマー溶液1.00gと組み合わせた。ディスク及びモノマー溶液を65℃のオーブンに入れ、攪拌し、24時間重合させた。多孔質DVBポリマーコーティングされたディスクを、オーブンから取り出し、20mLのアセトンの3つのアリコートですすいだ後、65℃のオーブンで1時間乾燥させた。単一のディスクをシングルエッジカミソリで半分に切断し、次いで、Thermo Fisher Scientific Phenom World ProX走査電子顕微鏡を使用して、金でスパッタリングすることによって画像化のために調製した。
図9に代表的な画像を示す。この画像から、焼結ポリエチレン基板を取り囲む粗い表面を有する多孔質ポリマーコーティングの断面図。多孔質ポリマー層の厚さは、約2ミクロン~10ミクロンの範囲である。
【0058】
実施例9.フロースルー抽出。
1.00mLのピペットチップに、実施例6に記載されるようにスルホン化されたカチオン交換(ヒドロニウム形態)コーティングされた基板を取り付けたが、コロイドラテックスアニオン交換粒子は用いなかった。コーティングされた基板をフロースルーモードで使用して、イオンクロマトグラフィーによるアニオン分析の前に塩基性試料を中和した。
図10は、0.1M水酸化ナトリウム中にアニオンを含有する1.00mLの試料1を、カチオン交換コーティングされた基板を含有するピペットチップに通して水酸化ナトリウムを中和し、次いでイオン交換システムに注入した後に得られたイオンクロマトグラムを示す。水酸化ナトリウムを中和することによって、高いクロマトグラフィー効率を有する十分に分離されたピークが得られる。試料2は、試料1と同じ組成を有するが、試料2は、カチオン交換コーティングされた基板を含有するフロースルーピペットチップを使用して、中和せずに分析した。未処理試料2を分析した
図10の下のクロマトグラムは、ピーク1~5についてより劣ったピーク分解能を示した。
【国際調査報告】