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特表2024-513440毒素除去ループを組み込んだ透析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】毒素除去ループを組み込んだ透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240315BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61M1/16 190
A61M1/36 161
A61M1/36 185
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561311
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2022023305
(87)【国際公開番号】W WO2022216604
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/171,503
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】シャオ グオチェン
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ, ブルース ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077AA06
4C077BB01
4C077BB03
4C077EE01
4C077EE03
4C077GG14
4C077KK23
4C077LL05
4C077NN20
4C077PP24
(57)【要約】
保護された流体回路は、浸透膜又は尿素輸送に対して非常に選択的である他の膜タイプを利用することができる。膜は、正浸透構造において尿素の十分な拡散フラックスを達成することができる。酸化ユニットと組み合わせると、この保護された構造は、使用済み透析液側から尿素除去側への尿素の高い選択的フラックス、蒸気透過性膜を通る水蒸発速度を制御することによる、正浸透流による患者の流体(水)レベルのバランス、酸化副生成物からの患者の透析液/血液ループの保護、及び血液接触とは相容れないであろう酸化系性能(pH、イオン強度、他の電解質など)を最適化する能力を有することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析膜によって患者の血液回路から分離された透析液ループと、毒素除去ループであって、前記透析液ループから前記毒素除去ループに毒素を選択的に通過させるように構成された毒素選択的膜によって分離された、毒素除去ループと、を備える、液体透析回路。
【請求項2】
前記毒素が、尿毒症毒素である、請求項1に記載の液体透析回路。
【請求項3】
前記毒素選択的膜が、浸透膜である、請求項1に記載の液体透析回路。
【請求項4】
前記毒素選択的膜が、正浸透膜として動作するように構成されている、請求項1に記載の液体透析回路。
【請求項5】
前記毒素選択的膜が、逆浸透膜として動作するように構成されている、請求項1に記載の液体透析回路。
【請求項6】
前記毒素選択的膜が、イオン交換、親和性結合、限外濾過、逆浸透又は正浸透の機構に基づいて動作する、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項7】
前記毒素除去ループが、非生体適合性液体を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項8】
前記透析液ループが、前記透析液ループを通って流れる透析液から尿毒症毒素を除去するように構成された液体フィルタを備える、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項9】
前記毒素除去ループが、前記毒素除去ループを通って流れる毒素除去液から尿毒症毒素又は酸化生成物を除去するように構成された液体フィルタを備える、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項10】
前記毒素除去ループが、前記毒素除去ループを通って流れる毒素除去液と液体接触する毒素除去要素を備える、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項11】
前記毒素除去要素が、光酸化要素、電気酸化要素、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の液体透析回路。
【請求項12】
前記毒素除去要素が、酵素(ウレアーゼ)ベース、細菌ベース(バイオリアクタ)、吸着剤ベース、酸化ベース、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項10又は11に記載の液体透析回路。
【請求項13】
前記毒素除去要素が、光酸化要素を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項14】
前記液体透析回路が、前記透析液ループから少なくとも0.625g/時の毒素を濾過することが可能である、請求項13に記載の液体透析回路。
【請求項15】
前記液体透析回路が、24時間で前記透析液ループから0.5L~4.0Lの水を除去することが可能である、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項16】
前記液体透析回路が、前記毒素除去ループ内の光酸化要素を介して前記透析液ループから水を制御可能に除去するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項17】
前記透析液ループが、透析液を収容し、前記透析液が、前記透析膜を横切って前記患者の血液から尿毒症性血液毒素を受け取るように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項18】
前記透析液ループが、使用した腹水を受け取るように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項19】
前記毒素選択的膜が、中空繊維膜を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項20】
前記毒素選択的膜が、少なくとも2.4mの質量移送のための表面積を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路。
【請求項21】
前記毒素除去ループが、前記中空繊維膜の内側に流れ、前記透析液ループが、前記中空繊維膜の外側で流れる、請求項19に記載の液体透析回路。
【請求項22】
前記毒素除去ループの流れが、少なくとも36mL/分である、請求項21に記載の液体透析回路。
【請求項23】
前記透析液ループの流れが、前記毒素除去ループの前記流れの少なくとも3.7倍である、請求項22に記載の液体透析回路。
【請求項24】
先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路を備える、腎臓透析システム。
【請求項25】
前記腎臓透析システムが、血液透析システム、腹膜透析システム、血液濾過システム、又は血液透析濾過システムである、請求項24に記載の腎臓透析システム。
【請求項26】
前記腎臓透析システムが、携帯型、装着型、可動型、及び固定型の群から選択されるフォームファクタを有する、請求項24又は25に記載の腎臓透析システム。
【請求項27】
前記腎臓透析システムが、家庭内又は透析センターでの使用のために構成されている、請求項24~26のいずれか一項に記載の腎臓透析システム。
【請求項28】
毒性血液を有する患者を治療する方法であって、
a.前記患者からの毒性液体を、先行請求項のいずれか一項に記載の液体透析回路に流すことであって、前記毒性液体が、透析膜に沿って流れ、尿毒症毒素が透析液ループに通過して毒性透析液を生成することを可能にする、流すことと、
b.前記透析液ループにおいて、前記毒素選択的膜に沿って前記毒性透析液を流して、前記透析液ループ内に解毒透析液を生成し、前記毒素除去ループ内に電解質を含有する毒性流体を生成することであって、前記解毒透析液が、前記透析膜に向かって戻される、流すことと、
c.前記毒素除去ループにおいて、前記電解質を含有する毒性流体を毒素除去要素に流して、電解質を含有する解毒流体を生成することであって、前記電解質を含有する解毒流体が、前記毒素選択的膜に向かって戻される、流すことと、を含む、方法。
【請求項29】
前記毒性液体が、血液又は腹膜透析液である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記電解質を含有する流体に電解質を添加するステップを更に含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
透析液を再生する方法であって、
a.毒素選択的膜に沿って毒性透析液を流して、透析液ループ内で解毒透析液を生成し、毒素除去ループ内で電解質を含有する毒性流体を生成することと、
b.毒素除去ループにおいて、前記電解質を含有する毒性流体を毒素除去要素に流して、電解質を含有する解毒流体を生成することであって、前記電解質を含有する解毒流体が、前記毒素選択的膜に向かって戻される、流すことと、を含む、方法。
【請求項32】
液体透析回路であって、
透析液ループと、
毒素除去ループであって、前記透析液ループから前記毒素除去ループに毒素を選択的に通過させるように構成された毒素選択的膜によって分離された、毒素除去ループと、を備える、液体透析回路。
【請求項33】
前記毒素選択的膜が、中空繊維膜を含む、請求項32に記載の液体透析回路。
【請求項34】
前記毒素選択的膜が、少なくとも2.4mの質量移送のための表面積を有する、請求項32又は33に記載の液体透析回路。
【請求項35】
前記毒素除去ループが、前記中空繊維膜の内側に流れ、前記透析液ループが、前記中空繊維膜の外側で流れる、請求項34に記載の液体透析回路。
【請求項36】
前記毒素除去ループの流れが、少なくとも36mL/分である、請求項35に記載の液体透析回路。
【請求項37】
前記透析液ループの流れが、前記毒素除去ループの前記流れの少なくとも3.7倍である、請求項36に記載の液体透析回路。
【請求項38】
前記透析液ループが、尿毒症毒素を含む、請求項32に記載の液体透析回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月6日に出願された米国仮特許出願第63/171503号の利益を主張するものであり、その全容が、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
末期腎不全(ESKD)は、世界中で約400万人が生命を維持するために透析を受けることを余儀なくされており、この数は今後も増加すると予測されている。透析治療は、患者、その家族及び社会にとって身体的及び経済的負担である。その上、従来の血液透析は、リハビリテーション、生活の質、死亡率及び罹患率の割合の点で最適ではないと考えられる。
【0003】
長期の、より頻繁な透析は、従来の週3回の施設透析療法と比較して、健康関連の転帰における潜在的な改善を示した。しかしながら、自宅での透析治療に対する重大な課題は、携帯性を可能にする継続的な透析液供給である。現在、約120L(約120Kg)の新鮮な透析液がセッション毎に使用されており、携帯型システムで運ぶことは不可能である。携帯性は、使用済み透析液が連続的に再生されている透析システムを有することによって達成され得る可能性がある。透析液の再生のために試みられている尿素除去のモードには、ウレアーゼベースの酵素、吸着剤ベース及び酸化ベースの要素が含まれるが、これらに限定されない。
【0004】
透析によって除去される尿毒症毒素としては、尿素、Na+、K+、フェニル酢酸、クレアチニン、尿酸、フェニルアセチルグルタミン、リン、馬尿酸、シュウ酸、ジメチルアミン、p-クレシル硫酸、β2-ミクログロブリン、フェニル硫酸、インジカン、p-クレシルグルクロニド、3-ヒドロキシフェニル酢酸、トリメチルアミン-N-オキシド、4-ヒドロキシ馬尿酸、インドキシル硫酸、3-ヒドロキシ馬尿酸、Ca2+、補体因子D、アクロレイン、グアニジノコハク酸、インドール-3-酢酸、シスタチンC、メチルグアニジン、対称ジメチルアルギニン、及びグアニジノ酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、尿素は、シングルパスシステム又は再生透析液のいずれかで、透析中に除去される必要がある単一の最も豊富な小分子代謝廃棄物である。
【0005】
23.0gを超える複合質量で、これらの尿毒症毒素は、選択された尿素除去要素のタイプにかかわらず、透析回路の尿素除去要素に干渉する。
【0006】
また、使用済み透析液中で尿素と共存する大量の栄養素は、膜、吸着剤、又は変換システムにおいて十分な化学的選択性がない場合、尿素除去効率の妨げとなる。従来のシングルパスHD中の栄養素の必然的な損失は、尿毒症毒素除去の副次的影響であり、透析関連の異化の重要な構成要素である。栄養素の損失には、アルブミン、アミノ酸、グロブリン、グルコース、コレステロール、ビリルビン、及びトランスフェリンが含まれるが、これらに限定されない。これらの失われた溶質は、概して、抗酸化、抗炎症、毒素除去、及び血管拡張作用にそれらの濃度が低減された状態で関与し、尿毒症治療への付加的な悪影響に寄与する。アミノ酸グルコース及び機能性タンパク質を選択的に除去しない透析再生システムが開発されれば、HD栄養損失は、効果的に排除されるであろう。
【0007】
別の重要な考慮事項は、透析液水源の純度である。従来の透析液の量の多さ(約120L)は、特に水質の厳格な要件に続いて電解質バランスをとることで、携帯性に著しいハードルを課している。このコストは、透析液再生システムに切り替えることによって大幅に軽減され得る。
【0008】
図1は、透析膜110によって患者の血液回路102から分離された透析液ループ104を含むWAK透析回路を示す。血液回路102は、患者の血液を再循環させる。透析液ループ104は、透析液流体を再循環させる。患者の血液からの毒素は、膜110を通して透析液に移送される。次いで、透析液は、尿素除去カートリッジ114を通って進む。透析液がカートリッジの底部4層を通って流れて尿素/アンモニア/塩を除去した後、活性炭の最上層は、膜110を再び通って再使用する前に、他の尿毒症毒素を除去するために概ね十分である。活性炭は、尿素及びグルコースの両方に対して主に不活性であり、グルコースが透析液ループに留まることを可能にすることに留意することも重要である。
【0009】
デバイス及び動作モードの設計における顕著な革新にもかかわらず、透析液を再生するためのウレアーゼ、吸着剤、及び酸化方法には依然として課題がある。
【発明の概要】
【0010】
本概要は、発明を実施するための形態で以下に更に記載される概念の選択を、簡略化された形態で紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の主要な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を判定する際の補助として使用されることも意図されていない。
【0011】
一実施形態では、液体透析回路は、透析膜210によって患者の血液回路202から分離された透析液ループ204と、毒素除去ループ206であって、透析液ループ204から毒素除去ループ206に毒素を選択的に通過させるように構成された毒素選択的膜212によって分離された、毒素除去ループ206と、を備える。
【0012】
一実施形態では、毒素は、尿毒症毒素である。
【0013】
一実施形態では、毒素選択的膜212は、浸透膜である。
【0014】
一実施形態では、毒素選択的膜212は、正浸透膜として動作するように構成されている。
【0015】
一実施形態では、毒素選択的膜212は、逆浸透膜として動作するように構成されている。
【0016】
一実施形態では、毒素選択的膜212は、(負荷電毒素を追求するための)イオン交換、親和性結合、限外濾過、逆浸透又は正浸透の機構に基づいて動作する。
【0017】
一実施形態では、毒素除去ループ206は、非生体適合性液体を含む。
【0018】
一実施形態では、透析液ループ204は、透析液ループ204を通って流れる透析液から尿毒症毒素を除去するように構成された液体フィルタ214を備える。
【0019】
一実施形態では、毒素除去ループ206は、毒素除去ループ206を通って流れる毒素除去液から尿毒症毒素又は酸化生成物を除去するように構成された液体フィルタ216を備える。
【0020】
一実施形態では、毒素除去ループ206は、毒素除去ループ206を通って流れる毒素除去液と液体接触する毒素除去要素218を備える。
【0021】
一実施形態では、毒素除去要素218は、光酸化要素、電気酸化要素、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0022】
一実施形態では、毒素除去要素218は、酵素(ウレアーゼ)ベース、細菌ベース(バイオリアクタ)、吸着剤ベース、酸化ベース、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0023】
一実施形態では、毒素除去要素218は、光酸化要素を含む。
【0024】
一実施形態では、液体透析回路は、透析液ループから少なくとも0.625g/時の毒素を濾過することが可能である。
【0025】
一実施形態では、液体透析回路は、24時間で透析液ループ204から0.5L~4.0Lの水を除去することが可能である。
【0026】
一実施形態では、液体透析回路は、毒素除去ループ206内の光酸化要素218を介して透析液ループ204から水を制御可能に除去するように構成されている。
【0027】
一実施形態では、透析液ループ204は、透析液を収容し、透析液が、透析膜210を横切って患者の血液から尿毒症性血液毒素を受け取るように構成されている。
【0028】
一実施形態では、透析液ループ204は、使用した腹水を受け取るように構成されている。
【0029】
一実施形態では、毒素選択的膜は、中空繊維膜を含む。
【0030】
一実施形態では、毒素選択的膜は、少なくとも2.4mの質量移送のための表面積を有する。
【0031】
一実施形態では、毒素除去ループは、中空繊維膜の内側に流れ、透析液ループは、中空繊維膜の外側で流れる。
【0032】
一実施形態では、毒素除去ループの流れは、少なくとも36mL/分である。
【0033】
一実施形態では、透析液ループの流れは、毒素除去ループの流れの少なくとも3.7倍である。
【0034】
一実施形態では、腎臓透析システムは、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路を備える。
【0035】
一実施形態では、腎臓透析システムは、血液透析システム、腹膜透析システム、血液濾過システム、又は血液透析濾過システムである。
【0036】
一実施形態では、腎臓透析システムは、携帯型、装着型、可動型、及び固定型の群から選択されるフォームファクタを有する。
【0037】
一実施形態では、腎臓透析システムは、家庭内又は透析センターでの使用のために構成されている。
【0038】
一実施形態では、毒性血液を有する患者を治療する方法は、
a.患者からの毒性液体を、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路に流すことであって、毒性液体は、透析膜に沿って流れ、尿毒症毒素が透析液ループに通過して毒性透析液を生成することを可能にする、流すことと、
b.透析液ループにおいて、毒素選択的膜に沿って毒性透析液を流して、透析液ループ内に解毒透析液を生成し、毒素除去ループ内に電解質を含有する毒性流体を生成することであって、解毒透析液は、透析膜に向かって戻される、流すことと、
c.毒素除去ループにおいて、電解質を含有する毒性流体を毒素除去要素に流して、電解質を含有する解毒流体を生成することであって、電解質を含有する解毒流体は、毒素選択的膜に向かって戻される、流すことと、を含む。
【0039】
一実施形態では、毒性液体は、血液又は腹膜透析液である。
【0040】
一実施形態では、方法は、電解質を含有する流体に電解質を添加するステップを更に含む。
【0041】
一実施形態では、透析液を再生する方法は、
a.毒素選択的膜に沿って毒性透析液を流して、透析液ループ内で解毒透析液を生成し、毒素除去ループ内で電解質を含有する毒性流体を生成することと、
b.毒素除去ループにおいて、電解質を含有する毒性流体を毒素除去要素に流して、電解質を含有する解毒流体を生成することであって、電解質を含有する解毒流体は、毒素選択的膜に向かって戻される、流すことと、を含む。
【0042】
一実施形態では、液体透析回路は、
透析液ループと、
毒素除去ループであって、透析液ループから毒素除去ループに毒素を選択的に通過させるように構成された毒素選択的膜によって分離された、毒素除去ループと、を備える。
【0043】
一実施形態では、毒素選択的膜は、中空繊維膜を含む。
【0044】
一実施形態では、毒素選択的膜は、少なくとも2.4mの質量移送のための表面積を有する。
【0045】
一実施形態では、毒素除去ループは、中空繊維膜の内側に流れ、透析液ループは、中空繊維膜の外側で流れる。
【0046】
一実施形態では、毒素除去ループの流れは、少なくとも36mL/分である。
【0047】
一実施形態では、透析液ループの流れは、毒素除去ループの流れの少なくとも3.7倍である。
【0048】
一実施形態では、透析液ループは、尿毒症毒素を含む。
【0049】
一態様では、透析膜によって患者の血液回路から分離された透析液ループと、毒素除去ループであって、透析液ループから毒素除去ループに毒素を選択的に通過させるように構成された毒素選択的膜によって分離された、毒素除去ループと、を含む、液体透析回路が提供される。
【0050】
別の態様では、本明細書に開示されるような液体透析回路を含む腎臓透析システムが提供される。
【0051】
また別の態様では、毒性血液を有する患者を治療する方法であって、
a.患者からの毒性液体を、本明細書に開示されるような液体透析回路に流すことであって、毒性液体は、透析膜に沿って流れ、尿毒症毒素が透析液ループに通過して毒性透析液を生成することを可能にする、流すことと、
b.透析液ループにおいて、毒素選択的膜に沿って毒性透析液を流して、透析液ループ内に解毒透析液を生成し、毒素除去ループ内に毒性電解質を生成することであって、解毒透析液は、透析膜に向かって戻される、流すことと、
c.毒素除去ループにおいて、毒性電解質を毒素除去要素に流して、解毒電解質を生成することであって、解毒電解質は、毒素選択的膜に向かって戻される、流すことと、を含む、方法が提供される。
【0052】
携帯型透析デバイスは、長期治療の可能性、及び生理学的状態を模倣する経時にわたるはるかにスムーズな血清組成変化を提供する。患者の生活の質もまた、週3回の4時間治療と比較して劇的に改善される。携帯型透析デバイスに対する課題は、それが血液毒素の更なる除去のために継続的に使用され得るように、限られた量の透析液を再生させることである。尿素除去は、尿素をアンモニウム及び重炭酸塩に加水分解するウレアーゼで達成することができ、これらは、付加的なイオン交換材料で除去する必要がある。尿素に対する数十mg/gの結合能力を有する吸着剤を使用して、尿素を除去し、電解質バランスプロセスを簡略化することもできる。酸化ベースの尿素除去は、連続して実行する能力を有する。
【0053】
尿素除去におけるそれらの潜在的な利点の全てにもかかわらず、尿素及び他の血清分子が同じ回路内に共存する限り、ウレアーゼ、吸着剤及び酸化の保証を完全に最適化することはできない。特に、過多の中小MW分子の存在は、競合によって酵素及び吸着剤の効率を低減させる。RO膜などの既存の膜技術を利用して、尿素専用捕捉ループへの尿素の選択的分離を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の前述の態様及び付随する利点の多くは、添付の図面と併せて以下の発明を実施するための形態を参照することによって、よりよく理解されるようになり、より容易に理解されるようになるであろう。
【0055】
図1】従来の装着型人工腎臓透析システムの概略例解図である。
図2】一実施形態による、毒素除去ループを含む透析システムの概略例解図である。
図3】中空繊維膜を含むデバイスの概略例解図である。
図4A】ウレアーゼベースの毒素除去要素の概略例解図である。
図4B】吸着剤ベースの毒素除去要素の概略例解図である。
図4C】光酸化ベースの毒素除去要素の概略例解図である。
図5】各レジームにおいて許容される種の例を有する、異なる膜クラスの分画分子量を示す図である。
図6A】実施例において使用される、0.15MのNaCl又はクリニックから収集された使用済み透析液のいずれかに溶解された10mMの尿素を使用した、POUR(光酸化尿素除去)デバイスによる尿素光酸化の概略例解図である。
図6B】実施例において使用される、組み合わされたFO-POUR(正浸透光酸化尿素除去)設定の概略例解図である。
図7】実施例から、異なる内側繊維流量における、市販のAQUAPORIN(登録商標)FOカートリッジを使用して、24時間における尿素除去速度及び対応する質量移送係数のグラフ表示であり、10mMの尿素透析液給送の外側流量は、内側繊維流量の3.7倍である。
図8A】実施例から、MTTアッセイ(未処理の3T3細胞及び異なる希釈倍率を有するラテックス対照試料)によって測定された細胞毒性の棒グラフ表現である。
図8B】実施例からの、MTTアッセイによって測定された細胞毒性(未処理の3T3細胞、並びにそのまま又は活性炭で処理された使用済み透析液からのt=0時間試料及びPOUR)の棒グラフ表現である。
図8C】実施例から、MTTアッセイ(未処理の3T3細胞、並びにFO-POURデバイスから分離してスタンドアロン使用済み透析液から収集したt=24時間試料、及び使用済み透析液から収集したt=24時間試料、並びにFO-POURデバイス内で収集したPOUR)によって測定された細胞毒性の棒グラフ表現である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
携帯型及び装着型の血液透析は、低コストで腎不全患者の健康転帰及び生活の質を改善する可能性を有する。透析液の再生に必要な尿素の除去は、任意の既存/潜在的な携帯型透析デバイスの中心的機能である。使用済み透析液中の尿素は、非尿素尿毒症毒素、栄養素、及び電解質と共存しており、その全ては、基礎となる尿素除去機構が、ウレアーゼ変換、尿素の直接吸着、又は酸化に基づいているかにかかわらず、尿素除去効率を妨げる。本開示は、毒素選択的膜によって透析液ループから分離された毒素除去ループを記載する。毒素除去ループは、少なくとも1つの毒素除去要素を付加的に含み、その性能は、改善することができ、透析液の再生を有利に可能にすることができる。
【0057】
図2を参照すると、液体透析回路の一実施形態が例解され、液体透析回路は、透析膜210によって患者の血液回路202から分離された透析液ループ204を含む。液体透析回路は、透析液ループ204から毒素除去ループ206に毒素を選択的に通過させるように構成された毒素選択的膜212によって分離された毒素除去ループ206を含む。液体透析回路は、毒素除去要素218を含む。ループ204内の透析液は、現在使用されている任意の市販の又は従来の透析液であり得る。ループ206内の流体は、例えば、生理食塩水、非NaCl電解質と混合された水溶液、酸性又は塩基性のpH値の水溶液を含み得る。毒素除去ループ206は、透析液と接触した毒素選択的膜212を使用することによって、毒素除去要素218を保護することができる。例えば、本明細書に記載の尿素除去要素は、透析液ループ204及び毒素除去ループ206を分離する尿素選択的膜212から利益を得ることができる。一実施形態では、除去される毒素は、尿毒症毒素である。一実施形態では、除去される毒素は、尿素である。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ループ」又は「回路」は、1つ以上のデバイスを通して流体を運ぶ1つ以上の導管を示す。血液回路202内の血流は、シングルパスであり得、新鮮な又は新しい血液が血液回路202に継続的に給送されることを意味する。ループ204及び206内の透析液及び流体の流れは、マルチパスであるように設計されており、流体が再生されており、長期間にわたって使用され得ることを意味する。ループ204、206内の流れは、流体が導管及びループ内の様々なデバイスを通って反復的に循環するように、連続的又は半連続的に流れることができる。流れは、蠕動ポンプなどのポンプによって作り出され得る。化学種及び/又は流体は、透析液ループ204と血液回路202との間、及び透析液ループ204と毒素除去ループ206との間で、それぞれ膜210及び212を通して移送されることが可能である。外部流体及び/又は栄養素も、ループ204、206及び回路202に導入され得、ループ204、206及び回路202内の流体はまた、連続的又は半連続的に除去され得る。一実施形態では、ループは、ループを通る一定の流量を有し得る。一実施形態では、ループの流れは、経時にわたって増加又は減少し得る。
【0059】
尿素を例として使用して、毒素除去ループ206は、透析液ループ206から毒素除去ループ206に尿素を選択的に通過させるように構成された尿素選択的膜212によって分離されている。この場合、図2の透析液ループ204は、カートリッジ214を含み、カートリッジ214は、非尿素毒素を吸着し、必要とされる際又は開発される際に他の選択的吸着剤(上部層)を潜在的に付加するために同様の量の活性炭吸着剤(底部層)を含む。活性炭が典型的なフィルタ材料であるが、任意の他の互換性のあるフィルタ又は方法も使用され得る。
【0060】
図2に示される液体透析回路では、透析液ループ204からの尿素は、他の避けられない化合物とともに尿素選択的膜212を横切って除去される。次いで、尿素は、尿素除去要素のいずれかによって尿素ループ212から除去される。ここで、尿素除去要素219は、光酸化尿素除去要素(POUR)を含むことができる。POURを尿素除去要素218として使用する場合、尿素酸化中の副生成物であり得るオキソ-クロロ種を除去するために、毒素除去ループ206に付加的な活性炭フィルタ216を含むことも有利である。尿素は、代表的な毒素として使用されるが、適切な毒素選択的膜212を選択することによって、他の尿毒症毒素を透析液ループ204から毒素除去ループ206に除去することができることが理解される。更に、異なる毒素選択的膜を各々有する2つ以上の毒素除去ループを含めて、2つ以上の毒素を除去することができる。代替的には、透析液ループ204と毒素除去ループ206との間の界面に、2つ以上の異なる毒素選択的膜が使用され得る。毒素除去要素218は、酵素(ウレアーゼ)ベース、細菌ベース(バイオリアクタ)、吸着剤ベース、及び酸化ベースに基づき得る。図2は、光酸化尿素除去要素の一実施形態を示す。
【0061】
本開示では、図2の透析システムは、図1の従来のWAKシステムと比較され得る。しかしながら、図2に関して記載される毒素除去ループ206及び毒素選択的膜212の使用は、血液透析システム、腹膜透析システム、血液濾過システム、又は血液透析濾過システムなどの他の透析システムに適用することができる。更に、本開示の腎臓透析システムは、携帯型、装着型、可動、及び固定のシステムの群から選択されるフォームファクタを有するように構成され得、腎臓透析システムは、家庭内又は透析センターでの使用のために構成することができる。
【0062】
尿素除去要素
本開示は、毒素選択的膜212によって透析液ループ204から分離された付加的な毒素除去ループ206を含むことによって、現在利用可能な尿素除去要素の動作を改善することを目的とする。毒素選択的膜212は、他の化合物を遮断しながら、尿素を毒素除去ループ206に選択的に通過させることができ、それによって、毒素除去要素218の動作を改善する。
【0063】
一実施形態では、毒素除去要素218は、光酸化要素又は電気酸化要素から選択することができる。一実施形態では、毒素除去要素218は、酵素(ウレアーゼ)ベース、細菌ベース(バイオリアクタ)、吸着剤ベース、酸化ベース、及びそれらの組み合わせから選択することができる。一実施形態では、毒素除去要素218は、光酸化要素である。
【0064】
尿素除去は、酵素、吸着剤、陽極酸化、細菌分解、ポリマー膜カプセル、電気透析、及び逆浸透によって除去されている。透析液を再生する携帯型透析デバイスの文脈で開発されている尿素除去の方法は、3つのカテゴリに分けることができる:ウレアーゼ変換に続くイオン交換体(図4A)、直接吸着(図4B)、及び酸化(図4C)。
【0065】
ウレアーゼベースの尿素除去
透析治療は、従来のREDY(登録商標)(再生型透析)システムなどの、尿素除去方法としてウレアーゼ酵素を使用する透析機で実施することができる。このプロセスは、尿素の加水分解を触媒するとともに、いくつかのカートリッジ要素によって容易に吸着されるアンモニウム及び重炭酸塩に変換する、ウレアーゼから始まる。アンモニウムの捕捉は、アンモニウムが、血流において約100μMの低濃度で毒性であるため、有益である。ウレアーゼは、支持体上に固定化され、堅牢な酵素としてその活性を保つことが可能である。固定化された尿素は、pH変化に対する感受性が低く、その活性をより長い期間にわたって維持することが見出されている。ウレアーゼの固定化は、多くの異なるタイプの足場で実施されている。固定の安定性が高いため、物理吸着よりも化学的固定化が一般的に好ましい。しかしながら、ウレアーゼ固定の穏やかな反応条件の結果として、アミンエポキシ硬化、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、N-シクロヘキシル-N′-(b-[N-メチルモルホリノ]エチル)カルボジイミドp-トルエンスルホン酸(CMC)、グルタルアルデヒド(GA)などの化学結合でさえも可逆的であり、アミン基からの攻撃を受ける。
【0066】
図4Aを参照すると、図2の毒素除去要素218として使用されるウレアーゼ除去要素は、カートリッジ400として提供することができる。カートリッジ400は、非尿素尿毒症毒素をある程度除去する「スカベンジャー層」として機能する第1の層402を含み得るが、それを不活性化又は脱着させることができる種からウレアーゼを保護するという主な目的を有する。スカベンジャー又は第1の層402に続いて、カートリッジ400は、ウレアーゼ層404を含む。ウレアーゼ層404の直後に、カートリッジ400は、その予め装填されたNa及びHを使用して、ウレアーゼ層404によって生成されたNH 、並びにK、Ca2+、及びMgを含む他のカチオンと交換するリン酸ジルコニウム層406を含むことができる。リン酸ジルコニウムは、アンモニウムに対して高い結合選択性を有する。アンモニウム濃度を、1mg/L未満に低下させることができる。リン酸ジルコニウム層406の後、カートリッジ400は、過剰なリン酸塩及び以前の層から交換又は浸出された他のアニオンを除去することができる酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウム層408を含み得る。非尿素尿毒症毒素及びいかなる脱着ウレアーゼも更に捕捉するために、活性炭の層410を出口の前に配置することができる。特に、脱着ウレアーゼは、リン酸ジルコニウムの下流で戻された透析液中にアンモニアを生成し、血流に入る可能性があるため、危険である。
【0067】
吸着剤ベースの尿素除去
図4Bを参照すると、毒素除去要素218の別の実施形態は、高容量尿素吸着剤カートリッジ420である。カートリッジ420は、活性炭422の第1の層及び1つ以上の吸着剤424の第2の層を含むことができる。吸着剤は、アルデヒドなどの求電子性カルボニル基との反応、又は活性炭、ゼオライト及びMXeneなどの材料を使用した分子サイズ選択に基づいて、尿素を除去する。最大0.35g/gを含む幅広い尿素結合能力が可能である。しかしながら、血清又は使用済み透析液に近い培地に適用されると、尿素結合能力は、1mg/g未満に低下する可能性がある。例えば、活性炭は、クレアチニン、尿酸、インディカント、フェノール、グアニジン、及び有機酸などの尿毒症毒素を除去するのに効果的である。炭化物由来のメソポラスカーボンの細孔は、炎症性化合物に正確に適合する細孔に合わせることができる。尿素に関しては、生理学的血清条件以外で著しい吸着(>5mg/g)がある。生理学的尿素(10mM尿素)濃度の周りの活性炭の吸着能力は、約1mg/gである。
【0068】
尿素結合能力の低下は、使用済み透析液において適用した場合に他の吸着剤で起こり得る。Ti×MXeneは、25mMの平衡濃度で、37℃で約16mg/gの容量で尿素を吸着することができる。対照的に、患者からの透析液に曝露された場合、MXeneは、同様の条件下で約0.5mg/gの容量のみを示し、その結合能力の96%超を失った。同様に、酸化デンプンは、他のアミン基含有分子も吸着するアルデヒド基を介して、37℃においてpH7.4下で最大8mg/gの容量で尿素を吸着することが見出された。表面ポリスチレンビーズ上のフェニルグリオキシアルデヒド(PGA)修飾に基づく高分子吸着剤は、リン酸緩衝生理食塩水中の30mMの尿素で、37℃において36mg/g超の尿素結合能力を実証した。尿素に対するPGAの結合機構は、アミノ基とのその相互作用に基づく。別の吸着剤は、8.6mMの開始尿素を有する溶液中で37℃においてpHが5.4の約30mg/gの印象的な尿素結合能力を有するゼオライトを含むことができる。
【0069】
吸着剤ベースの尿素除去カートリッジ420は、酵素系と比較して構造がより単純である。単純な生理学的条件下、すなわち、37℃、約0.15Mのイオン強度、及び約pH7.4で作用する様々な高容量の尿素吸着剤が開発されている。しかしながら、透析液中の他の成分、例えば、アミン基及びカルボン酸基を有する分子の共存は、結合事象において尿素を上回り得る。
【0070】
酸化ベースの尿素除去
図4Cを参照すると、毒素除去要素218の別の実施形態は、酸化ベースの要素である。酸化ベースの尿素除去要素は、酸化セル430及び活性炭カートリッジ432を含み得る。尿素酸化の利点は、電極が実質的に無限の蓄積容量を有し、使用される電極のタイプに応じて潜在的に数千時間の動作寿命を有することである。電気化学的アプローチの欠点は、非常に一般的な(約150mMのNaCl)塩化物の高毒性塩素への酸化であり得る。尿素選択的電極が開発され、動作パラメータが最適化されている場合、透析に使用される水質に関するFDA規則に準拠した安全レベルまで遊離Cl及び総塩素濃度を低減するために、少量のスカベンジャーのみが必要になる。
【0071】
特定の条件下で、白金及び他の寸法的に安定したアノードを使用する場合、尿素は、酸化されてCO及びNになり得、部分酸化生成物NHを除去するための吸着剤及びイオン交換材料の必要性を大幅に排除する。しかしながら、Cl及びオキソ-クロロ種は、多くの場合に活性炭によって効果的に除去することができる、尿素酸化中の副生成物であり得る。適用されるバイアス、電流密度、及びpHは全て、尿素酸化に対する効率及び選択性に影響を与える。カソード上のCa2+及びMg2+誘導析出物の問題は、アノード及びカソードの極性を定期的に切り替えることによって排除することができる。
【0072】
オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)は、最も尿素選択的な電極のうちの1つである。オキシ水酸化ニッケルは、ウレアーゼのNi(II)部位と同様の尿素活性表面部位を有し、Clよりも尿素に対して高い化学選択性を与える。しかしながら、最適な効率は10を上回るpHにおいてであり、これは、透析液と血液との接触とは適合しない。また、生理学的pHでの速いNi腐食があり、性能が低下し、潜在的に毒性がある可能性がある。Niは、他の金属でドープされ、尿素酸化におけるより高い性能のためのナノ構造合成を有することができる。
【0073】
TiOは、尿毒症毒素を含む広範な有機物を酸化することができる光酸化触媒である。TiOアノード及びPt/Cカソードを有する光電気化学セルは、CO、HO及びNへの完全な酸化、並びに塩化物を上回る尿素への高い選択性(>90%)を示し、活性炭でスクラブする必要のある酸化種を少なくする。尿素を除去するための光酸化尿素除去(POUR)要素は、フッ素化酸化スズ(FTO)導電性基板上にコーティングされた、水熱的に調製され、ランダムに配向された、単結晶TiOナノワイヤメッシュを使用することができる。
【0074】
アノード上で直接的に、又は生成されたClによって酸化され得るいかなる有機溶質も、多種多様な副生成物を生成し得る。アミノ酸及びタンパク質は、それらの存在量及び反応のためのより高い速度定数のために、酸化の主要な標的である。アミノ酸の塩素化は、塩素対アミノ酸の比率に応じて、様々な有機モノクロラミン又は有機ジクロラミンを生成することができる。有機クロラミンは、アルデヒド、ニトリル、及びN-クロラルジミン(アミノ酸の塩素化)に更に分解することができる。例えば、トリプトファンは、反応性官能基としてフェノール及びアミノ酸を有する。Cl:AA=0.8で、N-モノクロロチロシンが形成された。Cl:AA=2.8で、芳香族環上の塩素置換がNMRで観察され、N-モノクロロ-3-クロロチロシンとN,N-ジクロロチロシンとの混合物が、1:1よりわずかに低い比率で形成された。したがって、酸化戦略については、酸化副生成物の量を低減するために、処理する化学種の量を低減することが有益である。
【0075】
図2の毒素除去要素218を選択する際には、各々の特定の用途及び利点の考慮を考慮する必要がある。酵素システムは、高い選択性を有するが、NH 捕捉の複雑性及び安定性の問題を有する。吸着システムは、生成及び操作が単純であるが、生理学的条件での結合能力が不十分である可能性があり、サイズ及び重量要件に基づいて実用的ではない可能性がある。酸化システムは、耐久性があり、繰り返し交換する必要はないが、尿素選択性が低いと、栄養素の酸化及び酸化副生成物の生成がもたらされる可能性がある。
【0076】
ウレアーゼベースの透析デバイスの利点は、尿素の特異的標的化である。一方、ジルコニウムベースの吸着剤を使用したアンモニア除去の要件は、システム全体に制約を課す。100~500gの吸着剤カートリッジは、12~24時間持続すると推定されている。非ナトリウムカチオンの除去に起因して、電解質バランスを維持するために、余分な電解質注入液が必要である。更に、リサイクルされた透析液中の適切なアンモニウム除去を確実にするために、余分なリン酸ジルコニウムを使用して安全マージンを保証する必要があり、血中アンモニウム濃度を注意深く監視する必要がある。
【0077】
毒素選択的膜
本開示は、尿素に対して非常に透過性であるが、毒素除去要素218に干渉する可能性がある他の化合物が透析液ループ204から毒素除去ループ206に通過するのを阻止することができる毒素選択的膜212を提供することを目的とする。
【0078】
一般に、透析膜は、低分子量タンパク質の除去を最大化するために、高フラックス膜の分画分子量をシャープにしながら、細孔径に焦点を当てる。各膜は、厚さ、ζ電位、保持開始分子量(MWRO:molecular weight retention onset)、分画分子量(MWCO)などのような他の変数に依存する特定の領域及びプロファイルを有する。
【0079】
図5は、透析膜210の4つのクラスのMWCOを示す。図5は、一般的な毒素及び栄養素を列挙している。低フラックス透析器は、約5kDaのMWCOを有するが、高フラックス透析器は、β-マクログロブリンを標的とする約20kDaに近い。ナノ濾過膜は、名目上100Daに近いMWCOを有することができるが、実際には200Daがより一般的である。逆浸透(RO)膜とは、23DaのNaなどの、低MWであっても荷電種を除外するのに非常に効果的であるサブナノメートルチャネルを有する膜のうちの1つの分類であるため、正式なMWCOは一般に適用されない。尿素などの中性の小さい有機物は、RO膜を通過する透過性が高い。このリストは、尿毒症毒素のみが通過することを可能にし、グルコース(180D)及びアミノ酸(75~204D)などの栄養素が通過することは可能にしないMWCOはないことを示している。
以下の表1は、毎週3回の血液透析セッションで除去される20の一般的な小分子(MW<200Da)を列挙する。
【表1】
【0080】
200Da未満の分子量の予想される種の総質量除去(市販のナノ濾過膜を通じて達成可能)は、64.3gを超える(又は最も除去された上位50の小分子については67.6g)。この合計のうち、約23.6gが標的尿素であり、残りの44.0gが非尿素小分子(質量が186%増加)である。非選択的な、酸化ベースの尿素除去/分解システムの場合、比例してより大きいシステムが必要とされる。MWが60Daの尿素の完全な酸化は、6eプロセスである。平均体組成(C:H:N:O比)を考慮すると、8.1e-/60Daとなり、これは、尿素単独と比較して、電流要件を35%更に増加させる。過剰な質量及び電流要件により、酸化ユニットは、競合する化学物質でシステムを飽和させることに起因して、容量が約251%増加するか、又はサイズがほぼ3倍になる必要がある。
【0081】
例えば、NF90(公称90DaMWCO)などの100DaMWCO膜を代わりに使用することによって、(表1からの)非尿素小分子の質量は、44.0g~9.3g(MW<120)に低減され、競合による飽和を劇的に低減させる。MW<120の非尿素小分子の質量は、<1gであるべきである。非尿素酸化に必要な電流の増加(約8.1e)を考慮すると、100DaMWCO膜を使用する場合、ユニットは53%だけ大きくなければならない(又は<6%増加)。
【0082】
したがって、酸化ベースの尿素除去要素218の前に毒素選択的膜212及び毒素除去ループ206が使用されない限り、酸化副生成物は多数であり得る。
【0083】
毒素除去ループ206及び毒素選択的膜212はまた、アミノ酸などの干渉種を遮断することによって、ウレアーゼベースの尿素除去/分解システムを助けることができる。ウレアーゼは、物理的吸着又はクリックケミストリのいずれかによってカートリッジ上に固定されるが、アミノ酸からの足場材料との結合の競合に起因するウレアーゼの浸出があり得る。このウレアーゼ放出は、アンモニア吸着システムから下流で有毒なアンモニア濃度を生成し、血液透析器に接触する可能性がある。毒素除去ループ206は、いかなる残留アンモニアも、アンモニア除去吸着剤を通って循環することを可能にするアンモニア除去吸着剤を含むことができる。毒素除去ループ206によるアミノ酸の低減はまた、酵素活性部位との干渉を防止することによって、酵素活性を増加させる。
【0084】
同様に、吸着剤ベースの尿素除去も、競合する溶質の量を制限することによって、毒素除去ループ206及び毒素選択的膜212の恩恵を受けるであろう。吸着剤結合機構は、典型的には、尿素分子のアミン基との相互作用に依存する。しかしながら、健康な個体におけるアミノ酸の複合濃度は、ポリペプチド及びタンパク質分子を除いて、すでに3mMを超えている。これは、潜在的な吸着剤がPBS緩衝液から実際の使用済み透析液溶液に切り替えられたときの尿素結合能力の急激な低下の可能性が高い機構である。
【0085】
毒素除去ループ206及び毒素選択的膜212、例えば、尿素選択的膜は、尿素除去の上述したモードに利益をもたらし、コストを削減しながら安全性及び効率を高めることができる。尿素選択的膜212はまた、同じ尿素除去戦略が依然として適用され、非尿素尿毒症毒素除去が血液透析と比較して強化され得る、血液透析濾過デバイスの携帯型化にも利益をもたらすであろう。酸化尿素除去アプローチの場合、特殊なリン酸ジルコニウム又は酸化ジルコニウムイオン交換材料は必要なく、非常に安価な消耗品である活性炭のみが必要であり得る。
【0086】
装着型及び携帯型の腎臓透析デバイスに毒素除去ループを実装することは、血液界面で膜に新たな要件を課す可能性があり、ここで、ふるい係数が、特に患者の体液レベル管理を伴う対流の条件下で、溶質(最も重要であるのは中間分子)が透析器膜210を横切って通過する可能性を特徴付ける有用なパラメータであり得る。透析液ループ204と毒素除去ループ206との間の界面において、膜212は、尿素除去要素218の機能を更に強化するために、他の小分子に比して、尿素に対して高い選択性を有するべきである。
【0087】
一実施形態では、尿素選択的膜212は、より大きい細孔から制御可能に縮小されている膜を使用したサイズ排除に基づき得る。一実施形態では、酢酸セルロース膜が、尿素を分離するための毒素除去膜212として使用され得る。一実施形態では、毒素除去膜212は、逆浸透(RO)、低圧RO、正浸透(FO)、及びナノ濾過(NF)において使用される、市販のポリマーベース、ポリアミドベース、又は他の高分子ベースの膜であり得る。正浸透(FO)膜は、ループが機械的圧力なしで動作し、液体レベルのバランスをとることを可能にする。輸送は、FO膜を横切る拡散によって動作する。逆浸透(RO)膜は、機械的圧力を必要とし、塩(Cl-)を拒絶し、毒素輸送は、拡散及び流体流の組み合わせであり、液体バランスを提供しない。
【0088】
RO及びNF膜を通る圧力駆動流の場合、尿素は、それぞれ18%及び22%の低い拒絶率を有する。対照的に、クレアチニンは、ROからNF膜に切り替えたときにわずかに96%~89%のみ低下する高い拒絶率を有する。ROの場合、尿素/クレアチニン選択性は、20:1であり、NFは、7:1である。一般的な血清分子のほとんどには、より高い選択性が予想され得、この20:1の選択性係数は、酸化ユニットを飽和から保護するために必要とされるものよりも高い。市販のRO膜を通る尿素の容易な流れは、廃水処理において長年の問題であるが、本出願では、尿素輸送に対する選択性を有することが有益であり得る。
【0089】
一実施形態では、市販の中空繊維FO膜が、毒素除去ループ206内の毒素選択的膜212に使用される。図3は、複数の中空繊維膜312を含むデバイス300の概略例解図である。デバイス300は、透析液ループ204を毒素除去ループ206から分離するための毒素選択的膜212として使用するために、図2の回路200に組み込むことができる。
【0090】
概して、中空繊維膜デバイス300は、中空繊維の外部から内部を分離する透過性膜を有して形成された複数の中空繊維312を含む。したがって、デバイス300は、中空繊維312内を流れる第1の流体を、中空繊維312の外部にわたって流れる第2の流体から分離するように構成されている。例えば、中空繊維312は、中空繊維312の各々の各端部が隔壁を通過し、隔壁で終端するように配置され得、それによって、中空繊維312の内部チャネルを中空繊維の外部から密封する。これにより、中空繊維312内の第1の流体が軸方向に流れ、第2の流体が中空繊維312の外部にわたって流れて、中空繊維312を横切る化学種の移動を引き起こすことが可能である。例えば、毒素除去ループ206の流れは、ノズル304に入り、ノズル306を通って出て、それによって中空繊維312の内側を通過する。透析液ループ204の流れは、ノズル308又は310のいずれかを通って入り、他方を通って出ることができる。尿素などの毒素は、透析液ループ204から、中空繊維312の壁を形成する膜を通して毒素除去ループ206に移動することができる。
【0091】
一実施形態では、毒素除去ループ206は、尿素除去要素218として光電気化学尿素酸化システムを含む。一実施形態では、中空繊維膜212は、正浸透モードで動作される。一実施形態では、正浸透モードで動作する中空繊維膜は、約15g/日~30g/日の尿素を、約10mMの濃度勾配及び50mL/分の内側繊維流量で輸送することができる。約30g/日は、患者の1日の尿素生成速度の2倍超であり、1.2μm/秒の質量移送係数に対応する。一実施形態では、中空繊維膜を横切る流体移送速度は、酸化システムにおいて蒸発によって最大4.5Lの水を除去するのに十分であった。光電気化学酸化性能は、毒素除去ループ206において毒素選択的膜212として中空繊維膜を使用して3倍に高められ、細胞毒性研究によって安全であることが示された。
【0092】
一実施形態では、非尿素尿毒症毒素を除去するために、図2の透析液ループ204において活性炭カートリッジ214が使用される。一実施形態では、液体透析回路は、透析液ループ204と、毒素除去ループ206であって、透析液ループから毒素除去ループに毒素を選択的に通過させるように構成された毒素選択的膜212によって分離された、毒素除去ループ206と、を含むことができる。一実施形態では、毒素選択的膜212は、中空繊維膜を含む。一実施形態では、毒素選択的膜は、少なくとも2.4mの質量移送のための表面積を有する。一実施形態では、毒素選択的膜は、1~5mの質量移送のための表面積を有する。一実施形態では、毒素選択的膜は、2~4mの質量移送のための表面積を有する。一実施形態では、毒素除去ループは、中空繊維膜の内側に流れ、透析液ループは、中空繊維膜の外側で流れる。一実施形態では、毒素除去ループの流れは、少なくとも36mL/分である。一実施形態では、毒素除去ループの流れは、10~100mL/分である。一実施形態では、毒素除去ループの流れは、10~80mL/分である。一実施形態では、毒素除去ループの流れは、20~50mL/分である。一実施形態では、透析液ループの流れは、毒素除去ループの流れの少なくとも3.7倍である。一実施形態では、透析液ループの流れは、毒素除去ループの流れの1~5倍である。一実施形態では、透析液ループの流れは、毒素除去ループの流れの2~4倍である。一実施形態では、透析液ループは、尿毒症毒素を含む。
【0093】
上記を考慮すると、代表的な実施形態には、以下が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0094】
1.透析膜210によって患者の血液回路202から分離された透析液ループ204と、毒素除去ループ206であって、透析液ループ204から毒素除去ループ206に毒素を選択的に通過させるように構成された毒素選択的膜212によって分離された毒素除去ループ206と、を備える、液体透析回路。
【0095】
2.毒素が、尿毒症毒素である、実施形態1に記載の液体透析回路。
【0096】
代表的な尿毒症毒素としては、尿素、クレアチニン、インドキシル硫酸、尿酸、及びフェニル酢酸が挙げられる。
【0097】
3.毒素選択的膜212が、浸透膜である、実施形態1に記載の液体透析回路。
【0098】
4.毒素選択的膜212が、正浸透膜として動作するように構成されている、実施形態1に記載の液体透析回路。
【0099】
正浸透(FO)膜は、回路が機械的圧力なしで動作し、液体レベルのバランスをとることを可能にする。輸送は、FO膜を横切る拡散によって動作する。
【0100】
5.毒素選択的膜212が、逆浸透膜として動作するように構成されている、実施形態1に記載の液体透析回路。
【0101】
逆浸透(RO)膜は、機械的圧力を必要とし、塩(Cl-)を拒絶し、毒素輸送は、拡散及び流体流の組み合わせであり、液体バランスを提供しない。
【0102】
6.毒素選択的膜212が、(負荷電毒素を追求するための)イオン交換、親和性結合、限外濾過、逆浸透又は正浸透の機構に基づいて動作する、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0103】
7.毒素除去ループ206が、非生体適合性液体を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0104】
そのような実施形態は、NaCl溶液なしでの動作を可能にする。例としては、NaHCO及びNaOHが挙げられる。ループは、非生理学的pHでも動作することができる。「非生体適合性」には、化学及びpH、CO2レベル、アンモニア、総塩素(Clガス、イオン、及びCl含有種-酸化的)、並びに毒性金属イオンが含まれる。
【0105】
8.透析液ループ204が、透析液ループ204を通って流れる透析液から尿毒症毒素を除去するように構成された液体フィルタ214を備える、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0106】
活性炭が典型的なフィルタ材料であるが、任意の他の互換性のあるフィルタ又は方法も使用され得る。
【0107】
9.毒素除去ループ206が、毒素除去ループ206を通って流れる毒素除去液から尿毒症毒素又は酸化生成物を除去するように構成された液体フィルタ216を備える、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0108】
10.毒素除去ループ206が、毒素除去ループ206を通って流れる毒素除去液と液体接触する毒素除去要素218を備える、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0109】
毒素除去要素218は、光酸化、電気酸化、酵素、吸着剤、及び(細菌)バイオリアクタを含む。
【0110】
11.毒素除去要素218が、光酸化要素、電気酸化要素、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態10に記載の液体透析回路。
【0111】
12.毒素除去要素218が、酵素(ウレアーゼ)ベース、細菌ベース(バイオリアクタ)、吸着剤ベース、酸化ベース、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態10又は11に記載の液体透析回路。
【0112】
13.毒素除去要素218が、光酸化要素を含む、実施形態10~12のいずれかに記載の液体透析回路。
【0113】
14.液体透析回路が、透析液ループから少なくとも0.625g/時の毒素を濾過することが可能である、実施形態13に記載の液体透析回路。
【0114】
15.液体透析回路が、24時間で透析液ループ204から0.5L~4.0Lの水を除去することが可能である、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0115】
16.液体透析回路が、毒素除去ループ206内の光酸化要素218を介して透析液ループ204から水を制御可能に除去するように構成されている、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0116】
特定の実施形態では、光酸化は、水を加熱し、水は、システム内の非水密構成要素(例えば、カーボンクロス電極)を通って逃げる。この蒸発は、システム内の流体損失を決定するために制御及び測定され得る。
【0117】
17.透析液ループ204が、透析液を収容し、透析液が、透析膜210を横切って患者の血液から尿毒症性血液毒素を受け取るように構成されている、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0118】
18.透析液ループ204が、使用した腹水を受け取るように構成されている、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0119】
19.毒素選択的膜が、中空繊維膜を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0120】
20.毒素選択的膜が、少なくとも2.4mの質量移送のための表面積を有する、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路。
【0121】
21.毒素除去ループが、中空繊維膜の内側に流れ、透析液ループが、中空繊維膜の外側で流れる、実施形態19に記載の液体透析回路。
【0122】
22.毒素除去ループの流れが、少なくとも36mL/分である、実施形態21に記載の液体透析回路。
【0123】
23.透析液ループの流れが、毒素除去ループの流れの少なくとも3.7倍である、実施形態22に記載の液体透析回路。
【0124】
24.先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路を備える、腎臓透析システム。
【0125】
25.腎臓透析システムが、血液透析システム、腹膜透析システム、血液濾過システム、又は血液透析濾過システムである、実施形態24に記載の腎臓透析システム。
【0126】
26.腎臓透析システムが、携帯型、装着型、可動型、及び固定型の群から選択されるフォームファクタを有する、実施形態24又は25に記載の腎臓透析システム。
【0127】
27.腎臓透析システムが、家庭内又は透析センターでの使用のために構成されている、実施形態24~26のいずれかに記載の腎臓透析システム。
【0128】
28.毒性血液を有する患者を治療する方法であって、
a.患者からの毒性液体を、先行する実施形態のいずれかに記載の液体透析回路に流すことであって、毒性液体が、透析膜に沿って流れ、尿毒症毒素が透析液ループに通過して毒性透析液を生成することを可能にする、流すことと、
b.透析液ループにおいて、毒素選択的膜に沿って毒性透析液を流して、透析液ループ内に解毒透析液を生成し、毒素除去ループ内に電解質を含有する毒性流体を生成することであって、解毒透析液が、透析膜に向かって戻される、流すことと、
c.毒素除去ループにおいて、電解質を含有する毒性流体を毒素除去要素に流して、電解質を含有する解毒流体を生成することであって、電解質を含有する解毒流体が、毒素選択的膜に向かって戻される、流すことと、を含む、方法。
【0129】
29.毒性液体が、血液又は腹膜透析液である、実施形態28に記載の方法。
【0130】
30.電解質を含有する流体に電解質を添加するステップを更に含む、実施形態28又は29に記載の方法。
【0131】
31.透析液を再生する方法であって、
a.毒素選択的膜212に沿って毒性透析液を流して、透析液ループ204内で解毒透析液を生成し、毒素除去ループ206内で電解質を含有する毒性流体を生成することと、
b.毒素除去ループ206において、電解質を含有する毒性流体を毒素除去要素218に流して、電解質を含有する解毒流体を生成することであって、電解質を含有する解毒流体が、毒素選択的膜212に向かって戻される、流すことと、を含む、方法。
【0132】
32.液体透析回路であって、
透析液ループ204と、
毒素除去ループ206であって、透析液ループから毒素除去ループに毒素を選択的に通過させるように構成された毒素選択的膜212によって分離された毒素除去ループ206と、を備える、液体透析回路。
【0133】
33.毒素選択的膜212が、中空繊維膜312を含む、実施形態32に記載の液体透析回路。
【0134】
34.毒素選択的膜212が、少なくとも2.4mの質量移送のための表面積を有する、実施形態32又は33に記載の液体透析回路。
【0135】
35.毒素除去ループ206が、中空繊維膜312の内側に流れ、透析ループ204が、中空繊維膜312の外側で流れる、実施形態34に記載の液体透析回路。
【0136】
36.毒素除去ループ206の流れが、少なくとも36mL/分である、実施形態35に記載の液体透析回路。
【0137】
37.透析液ループ204の流れが、毒素除去ループ206の流れの少なくとも3.7倍である、実施形態36に記載の液体透析回路。
【0138】
38.透析液ループが、尿毒症毒素を含む、実施形態32に記載の液体透析回路。
【実施例
【0139】
尿素に対する他の分子種からの影響を実証するために、ヒトの使用済み透析液及び生理食塩水中の尿素除去の対照研究を行った。図6Aに示されるように、以前に開発された光酸化尿素除去(POUR)デバイスを使用して尿素を除去した。尿素注入では、使用済み透析液及び生理食塩水の両方が、実験開始時に同じ初期尿素濃度(約10mM)を有し、次いで、腎臓透析システムに許容可能なサイズである約2000cmまでスケールアップした場合に15g尿素/日に対応する量の尿素を連続的に注入した。尿素の酸化速度が目標を満たす場合、尿素濃度は、腎臓の正常な機能に類似して、連続動作をエミュレートして一定のままである。これらの結果を、以下の表2に示す。
表2.初期尿素充填及び15g/日相当の尿素注入を伴う、0.15MのNaClの培地対ヒトの使用済み透析液におけるPOUR尿素除去速度。
【表2】
【0140】
尿素を添加し注入した単純な生理食塩水を使用して、0.29mg/(cm・時)の尿素除去速度を達成し、これは、0.31mg/(cm・時)の目標速度に近い。この目標フラックスは、2000cmの触媒表面積を有する本発明のベンチトップ型実証デバイスの15g/日に相当する。しかしながら、ヒトの使用済み透析液を使用すると、尿素除去速度は、0.09mg/(cm・時)に低下し、競合する酸化について予想されるものに近い3倍の性能低下を超えた(34%)。グルコース除去速度は、0.087mg/(cm・時)で尿素と同様であった。予想されるように、そうでなければ尿素除去において利用される光電流は、現在、ヒトの使用済み透析液中に存在したグルコース及び他の有機種の酸化に流用される。この光酸化ベースの尿素除去デバイスの溶質干渉が実証されたが、この干渉は、他の酸化ベースの尿素除去アプローチに共通すると予想される。
【0141】
他の溶質からの競合に起因して、15g尿素/日の目標のために十分な透過性を有する尿素選択的膜を使用した。廃水処理及び脱塩のために、逆浸透(RO)膜が、サイズ及び電荷除外の原理に基づいて、ほとんどの溶質を除去するのに非常に効果的であった。しかしながら、尿素は、重要な例外であり、他の種が典型的には95~99%の拒絶に近い濾過生成物において、約20%のみの拒絶を示す。廃水処理には問題があるが、これは、RO膜が尿素輸送に対して非常に選択的であり、尿素除去による透析液再生に使用され得ることを示している。使用済み透析液中の分子種に対するRO膜の選択性を調べるために、以下の表3に示されるように、尿素、グルコース、アミノ酸、及び尿毒症毒素を含む11の代表的な分子のリストをまとめた。
表3.RO及びFO分離のための給送溶液として使用される、ヒトの使用済み透析液及び尿毒症血漿濃度における一般的な分子種。観察されたRO及びFO残留物濃度、並びに計算された拒絶率、除去率、及び質量移送係数。使用される流量は、それぞれ、内側繊維及び外側容積部について100及び400mL/分である。
【表3】
【0142】
尿素は、最も豊富な尿毒症廃棄物(23.6g)であり、一方で、グルコースは、最も一般的な栄養素(19.4g)である。グリシン及びトリプトファンは、それらの小分子量及び特徴的な官能基のために選択され、一方で、アンモニウムは、尿素光酸化からの潜在的な副生成物である。それらのそれぞれの濃度は、以前に報告されている。このリストは、尿素選択的膜が実際の使用済み透析液で直面しなければならない分子種を大きく代表するものである。
【0143】
RO選択性の結果を、表3に示す。尿素の拒絶率は20%であり、廃水処理で観察されたものと同様である。最も一般的な競合溶質であるグルコースの拒絶率は、99%である。アミノ酸栄養素は、96~100%の拒絶の範囲である。給送溶液は、1:2.4の尿素:非尿素質量比を有し、これは、RO濾過生成物中では1:0.1に減少した。これにより、尿素除去効率の約10%の予想される低下のみを伴って、競合溶質を効果的に除去する。
【0144】
しかしながら、ROモードの動作は、NaClを含む全ての溶質を除去するように設計されており、これは、尿素が豊富な濾過生成物を生成するために約7.5バールの水圧を必要とする。これは、尿素除去ステップの後に残留物及び透過生成物流が再混合されることを特に考慮して、かなりの電力使用及び複雑性を追加する。
【0145】
図6Bに示されるように、尿素選択的膜は、無視できる水圧を伴ってFOモードで動作することができる。透析液ループ及び尿素除去ループにおける浸透圧差により、水は依然として膜を横切って流れる。これは、POURユニットの空気透過性カソードでの水の蒸発に起因して生じる可能性があり、したがって尿素除去ループ内で塩を濃縮し、浸透圧を生成する。尿素フラックスは、膜を横切る拡散濃度勾配によって生じる。拡散フラックスは、携帯型透析のための実用的なサイズの膜で1日当たり約15gの尿素を除去するのに十分でなければならない。
【0146】
表3は、2.3mの中空繊維正浸透(HFFO)カートリッジ及び20mMの濃度勾配で、1日当たりの要件をはるかに上回る、86.4g/日の尿素除去が可能であることを示す。内側の繊維流路は、尿素除去ループの「ドロー」溶液として使用され(出力はFO濾過生成物である)、一方で、外側の繊維容積部は、透析液ループの尿素源に使用された(出力はFO残留物である)。質量輸送係数は、0.91μm/秒の尿素を示し、アンモニウムが90%少なく、グルコースが99.9%少なく、FO膜を尿素に対して非常に選択的にし、保護バリアにした。
【0147】
図7は、異なる内側繊維流量における、AQUAPORIN(登録商標)FOカートリッジを使用して、24時間における尿素除去速度及び対応する質量移送係数を示す。10mMの尿素透析液給送の外側流量は、内側繊維流量の3.7倍である。図7は、10mMの尿素給送溶液による尿素除去及び質量輸送係数に対する内側流量依存性を示す。予想されるように、流量が高いほど、同様の出口濃度での濾過生成物の量が多いことに起因して、より多くの尿素が除去される。拡散が制限されたプロセスでは、流速が飽和状態にならないほど十分に速いとき、尿素の総フラックスは、流速ではなく、濃度低下によって設定される。これは、1.2μm/秒の値で100ml/分よりも速い内側繊維流量で生じる、流量に依存しない質量移送係数によって分かる(図7)。FO膜に典型的な100nmの「皮膚」層の場合、これは、1.2×10-9cm/秒の拡散係数に対応し、水性バルク拡散よりも約4桁小さい。しかしながら、これは、2.3mの面積を使用した目標15g日には十分である。使用済み透析液側で600mg/L(10mM)の尿素、及びドロー側で0の尿素の一定の供給を想定すると、約30gの尿素を、50mL/分の中空繊維流量で、FOカートリッジを通して24時間で除去することができる(POURユニットによる尿素の完全除去)。FO実験は、繊維の外側の尿素供給と、繊維の内側のドロー溶液を用いて行われ、これは、従来の外側の「ドロー」とは反対である。これは、外側の容積部が内側の繊維容積部の5倍であるため、あらゆる尿素フラックスが5倍希釈され、POURユニットの効率を低下させる。尿素質量移送速度は、供給溶液及びドロー溶液の側を反転させることによって測定され、質量移送係数の同様の結果が得られ、これは、非対称FO膜構造が、尿素拡散係数を著しく変化させないことを示している。透析液からの水の除去が、臨床用途(約2.5L/日)に必要であり、尿素除去ループ上のより高い浸透圧/塩濃度によって達成することができる。DI水に対する1mMのNaClドロー溶液を使用して、本発明者らは、24時間当たり約1.25Lの水除去速度を観察した。
【0148】
図6Bに示す設定を使用してFO-POURデバイスの尿素及び水除去能力を実証し、定量化する。透析液ループは、外来における血液透析セッション中に収集された1Lのヒトの使用済み透析液を循環させる。グルコース濃度は、3mMであると測定された。尿素を添加して、開始尿素濃度を10mMにし、POURユニットを36チャネル(約2040cm)にスケールアップした場合、ESRD患者における尿素の連続生成の15g/日の等量を与える0.5Mの尿素溶液を連続的に注入した(0.61ml/時)。POURループでは、0.7L体積の0.15MのNaClを出発溶液として使用した。(10mL/分で循環)これは、他の化学種からの干渉なしに生理食塩水中とほぼ同じである0.32mg/(cm・時)の尿素除去速度に対応する。これは、FO膜が、臨床的に関連する尿素除去速度に十分な速さであるように、FOモードにおける尿素輸送及び膜を通る拡散の両方に選択的であることをサポートする。
【0149】
FO-POURデバイスの24時間連続動作の3つの別々の試験を行い、結果を以下の表4に要約する。
表4.FO-POURデバイスの24時間の性能。
【表4】
【0150】
2000cmの活性領域に外挿して、FO-POURユニットは、両方の臨床要件を満たす、24時間で15.4gの尿素及び3.9Lの水を除去することができる。図6Bの外挿された水除去は、FO膜との浸透圧平衡について予想されるように、使用済み透析液ループ(1.92L)及びPOURループ(1.98L)からほぼ等しく分散された。水除去速度は、POURデバイスのカーボン紙空気透過性カソードを通る蒸発によって決定され得る。この蒸発は、POUR回路溶液中の浸透圧を増加させ、これが、FO膜を横切ってより多くの水を引き込む。最終的な結果は、使用済み透析液からの過剰な水分の除去である。
【0151】
使用済み透析液及びFO-POUR研究(図6B)におけるPOURループの両方から試料を収集し、両方とも24時間後の研究の前に収集した。得られたMTT細胞毒性研究を、図8A、8B、及び8Cに要約する。図8Aは、異なる比率に希釈したラテックス対照を使用した対照群を示す。図8B及び8Cは、それぞれ、24時間のFO-POURの前及び後の試料の細胞毒性を示す。t=24時間において、活性炭(AC)で処理したPOUR出力溶液の79.8%(±9.3%)、及びFO-POURデバイスから分離したが周囲条件で24時間放置した使用済み透析液からの82.9%(±15.8%)の生存率で、それらの細胞毒性の間に有意差は見られなかった。これらの生存率数はまた、24時間の研究の終了時に使用済み透析液回路から収集された使用済み透析液の85.1%(±6.4%)の生存率に統計的に近い。POUR出口での活性炭は、非細胞毒性の結果をもたらすために酸化又はラジカル種を除去するのに十分である。FO膜は、患者透析液ループに対する更なる保護バリアとして作用し、システムにいずれの細胞毒性も追加しない。
【0152】
透析液の再生は、ESRD患者のより良い健康関連の転帰のために、より頻繁な又はほぼ連続的な治療を可能にする携帯型透析デバイスを可能にする。しかしながら、ヒトの使用済み透析液は、複合溶液であり、尿素は標的溶質除去質量のわずか40%である。これは、競合反応に起因する酸化尿素除去システムの性能の約2/3の低下に相当するであろう。これは、POURシステムを通して尿素注入されたヒトの使用済み透析液を使用することによって実験的に確認され、尿素注入された生理食塩水と比較して性能が69%低下した。尿素選択的膜は、酸化系の競合する溶質への曝露を制限し、同時に酸化副生成物が再生透析液及び最終的に患者の体に入ることを最小限に抑えるために必要である。浄水用途では、RO膜は、高い尿素輸送(20%拒絶)の特性を有する。この特性は、これらの膜を尿素選択的膜として使用して、尿素酸化系を他の小分子から保護することを可能にする。一般的な尿毒症種の拒絶率は、典型的には、80%近くの拒絶のクレアチニン及びアンモニウムを除いて、95%を超えると測定された。有用な動作モードは、水圧が加えられることなく尿素が浸透膜を横切って拡散するFO構成である。市販の中空繊維、正浸透カートリッジを使用して、尿素を、使用済み透析液から、1日当たり30g超の速度で、50mL/分の内側繊維流量及びヒトの使用済み透析液給送流中の600mg/L(10mM)の尿素濃度において高い選択性で除去することができる。尿素の拡散速度は、透析セッション中に除去された他の代表的な分子種よりも1~5桁高い。尿素の質量輸送係数は、1.2×10-9cm/秒の拡散係数に対応して1.2μm/秒と高かった。組み合わされたFO-POUR設定では、尿素は、0.32mg/(cm・時)の治療上有用な速度及び0.081g/(cm・時)の水除去速度で除去され得る。加えて、未処理の使用済み透析液と処理された使用済み透析液との間で細胞毒性に有意差はないように見える。したがって、使用済み透析液からの十分な尿素除去は、ウレアーゼ酵素及び付随するイオン交換材料なしで、FO-POURデバイスを使用して達成可能であり、これは、有用な携帯型透析デバイスを提供し得る。
【0153】
実験セクション
逆浸透:MEMBRANE SOLUTIONS(登録商標)75GPD ROコイル状フラットシート膜を、AQUATEC(登録商標)6800ブースターポンプとともに使用した。流量は、NXSTOP LZT(商標)M-15 0.05~0.5GPM流量計で制御し、目盛り付きシリンダを使用して較正した。残留物流速は、190mL/分であり、それに対して濾過生成物側流速は90mL/分であり、圧力差は150psiであった。
【0154】
正浸透:AQUAPORIN INSIDE(登録商標)中空繊維正浸透(HFFO)膜HFFO2-220を使用した。77800-60ポンプヘッドを有するMASTERFLEX(登録商標)L/S可変速度蠕動ポンプを使用した。内側繊維及び外側スペースを通る流量は、それぞれ、20~160及び80~640mL/分の間に設定した。各試料収集の前に、カートリッジを完全に排水し、次いで、FOカートリッジの体積の10倍の新鮮な溶液で徹底的にすすいだ。内側繊維容積部は、28mLであり、外側容積部は、156mLであった。質量移送係数(k)は、
【数1】
によって計算される。
【数2】
は、内側繊維出口の尿素濃度に、内側繊維出口の体積流量を乗じて得られた尿素モル移送速度(mol/秒)である。Aは、膜表面積(2.3m)である。Δcは、膜を横切る平均濃度勾配であり、繊維入口濃度及び出口濃度の平均から外側容積部入口濃度及び出口濃度の平均を差し引いたものである。
【0155】
化学的定量化:
尿素、クレアチニン、グルコース、ラクトース、及びアンモニウムイオンを、標準的な操作プロトコルを有する対応するキットを使用して、Beckman CoulterのAUシステムに従って定量化する。尿素濃度測定のための較正曲線を、2次適合曲線を有する2、4、6、8、10mM尿素の尿素濃度を有する標準溶液を使用して調製した。
【0156】
インドキシル硫酸を、文献に記載されている手順に従って、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法を使用して定量化した。インドキシル硫酸を、最初に固相抽出によって抽出し、次いで、水中の5%アセトニトリル/0.2%ギ酸の80μL中で再構成した。試料溶液を更に濾過し、5μLの量をRESTEK(登録商標)PFPPクロマトグラフィーカラム(Restek PN:9419252)上に注入し、勾配(SHIMADZU(登録商標)NEXERA(登録商標)XR20A)を使用して展開した。カラムからの溶出液を、トリプル四重極タンデム質量分析計(SCIEX(登録商標)6500)に導入した。5回の反復を使用して、平均ピーク面積まで得た。
【0157】
アミノ酸を、標準的な臨床プロトコルを使用して定量化した。試料を、SERAPREP(商標)(Pickering Laboratories、カタログ番号SP100)に溶解させた内部標準(S-(2-アミノエチル)-L-システイン、SIGMA-ALDRICH(登録商標)カタログ番号A2636)と組み合わせ、ボルテックスし、遠心分離して、あらゆる沈殿物を除去した。上清を、一連のクエン酸リチウム緩衝液を使用してベースライン分解能で遊離アミノ酸を分離するHPLCシステムであるBIOCHROM(登録商標)30+アミノ酸分析器(Biochrom Ltd,Cambridge,England)上に注入した。各アミノ酸は、570及び440nmでのUV吸光度による検出のために、ポストカラム反応においてニンヒドリンと反応する。各アミノ酸の量は、それぞれ250及び500μMのストック標準を用いて作製された2点標準曲線に基づいて計算する。OPENLAB(登録商標)(EZ CHROM(商標)、Biochrom Ltd、Cambridge、England)を使用して、データを分析及び定量化した。
【0158】
フェニル酢酸を、280nmにおける吸収ピーク強度に基づいて、水溶液中の0.5mg/Lのフェニル酢酸で開始する各ステップにおける2倍希釈を伴う4点較正を使用して、MOLECULAR DEVICES(登録商標)SPECTRAMAX(登録商標)i3x分光計を使用して定量化した。
【0159】
細胞毒性:全ての試薬較正、溶出、並びに細胞及びアッセイインキュベーションを、37'C、5%COで行った。成長培地は、フェノールレッドを含まない高グルコースDMEMであり、最終濃度は、10%の子ウシ血清及び2mMのL-グルタミンであった。対数期3T3マウス線維芽細胞を、24時間でサブコンフルエントであるように、マルチウェルプレートにプレーティングした。同時に、ラテックスストリップを、成長培地(0.2g/ml)中で24時間溶出させ、細胞毒性の陽性対照として使用した。液体試料を、2倍及び1倍の成長培地の混合物中で1倍の成長培地の最終濃度に希釈した。24時間で、溶出したラテックス培地又は希釈した液体試料を、4連の細胞ウェルに移送し、48時間インキュベートした。未処理の成長培地を受けた4連ウェルを、計算のための陰性対照及びベースラインとして使用した。成長培地を受けた播種されていないウェルを使用して、バックグラウンドを計算した。
【0160】
48時間で、全てのウェルを視覚的に評価し、ISO10993-5数値スコアを割り当て、続いてMTT細胞増殖アッセイ(ABCAM(商標)211091)を行った。生細胞は、水溶性3-(4,5ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド化合物を、生存率の比色マーカーとして機能する不溶性ホルマザン生成物に変換する。細胞ウェルから培地を吸引し、無血清成長培地中に希釈したMTT試薬で置き換えた。3時間のインキュベーションの後に、ウェル内容物を吸引し、MTT溶媒を添加した。プレートをホイルに包み、オービタルシェーカで15分間振盪し、吸光度590nmで読み取った(BIOTEK(登録商標)Synergy LXプレートリーダ)。生存率のパーセントは、試料当たりであり、以下の平均であった:[試料-バックグラウンド)/(陰性対照-バックグラウンド)×100]。
【0161】
POURデバイスの組み立て及び試験:TiOコーティングされたFTO/ホウケイ酸基板を、以前の手順に従って水熱的に調製した。4mg/cmPt黒色コーティングカーボン紙は、FUEL CELL STORE(商標)から購入した(#1610009-1)。ホウケイ酸ガラススライド(2.54cm×7.62cm)上のフッ素化酸化スズ(FTO)は、MTI株式会社から購入した(FTO257630TEC7gp25)。TiOコーティングされたFTO、Pt黒色コーティングカーボン紙、及びレーザカットアクリルフレーム(MCMASTER-CARR(登録商標)から購入した厚さ1/8インチの透明アクリルフレーム85635K451)を、LOCTITE(登録商標)EA M-21HPエポキシを使用して組み立てた。フローチャネルの厚さは3mmであり、幅は23mmである。3つのスライドが直列に使用され、チャネル長さを24.6cmとする。使用されるアダプタは、COLE PARMER(登録商標)MASTERFLEX(登録商標)フィッティング、1/4インチIDのホースバーブへの雌型ルアー(EW-45502-20)、及び雄型ルアーx1/4-28UNF(EW-45505-82)である。SAINT GOBAIN(登録商標)TYGON(登録商標)3350 1/4*3/8シリコーンチューブを使用して、アダプタ間を接続した。LEDライトパネルを、アルミニウムシート上のWAVEFORM LIGHTING(商標)からのrealUV(商標)LEDストリップライトから組み立てた(McMaster 89015K38、5インチ×10インチにカット、パネル当たり360個のLED)。各パネル上のLEDストリップを、2つの並列回路にはんだ付けした。アルミニウムシートの露出した縁部を、KAPTON(登録商標)ポリイミドフィルム(3M(登録商標)Tape5413)を使用して保護した。FILMGRADE(商標)DC電源を使用して、LEDパネルに電力供給した。METROHM(登録商標)Autolab PGSTAT204を使用して、バイアスを適用し、光電流を記録した。
【0162】
ポンプ:ISMATEC(登録商標)蠕動ポンプ78017-10を、図6Aに示される干渉実験のために1.5mL/分の流量で使用した。COLE PARMER(登録商標)MASTERFLEX(登録商標)L/Sモデル77200-62ポンプを、RO/FO実験に使用して、それぞれ、中空繊維の内側及び外側を通る100mL/分及び400mL/分の流量で表3のデータを取得した。24時間の実験のために、使用済み透析液中の尿素除去効率を確認するために、ISMATEC(登録商標)ポンプを、POUR側循環のために1.5mL/分で使用し、COLE PARMER(登録商標)MASTERFLEX(登録商標)ポンプを、使用済み透析液の循環のために10mL/分の流量で使用した。
【0163】
例解的な実施形態を例解及び記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がその中で行われ得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
【国際調査報告】