(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】DPEP-1結合物質および使用の方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/40 20060101AFI20240315BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240315BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240315BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240315BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240315BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240315BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240315BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240315BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240315BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240315BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240315BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240315BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240315BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240315BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240315BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240315BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240315BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240315BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240315BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20240315BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240315BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240315BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240315BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240315BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240315BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240315BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240315BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
C07K16/40 ZNA
C07K16/46
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P13/12
A61P31/00
A61P35/04
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/14
A61P35/00
A61P29/00
A61P1/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/00
A61P17/06
A61P11/06
A61P7/06
A61P9/04
A61P9/10 101
A61P19/10
A61P25/28
A61P25/16
A61P1/04
A61P37/08
A61P11/00
A61P9/00
A61P17/04
A61P9/10
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561672
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 CA2022050546
(87)【国際公開番号】W WO2022213212
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510170693
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】タンハ ジャムシド
(72)【発明者】
【氏名】ロッソッティ マーティン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラウ アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ムルべ ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
抗体を含むDPEP-1結合物質、およびそれを含有する薬学的組成物が記載される。また、そのような結合物質、抗体、および薬学的組成物を使用および製造するための方法、ならびにその必要があるヒト対象において障害を処置または予防するためのそれらの使用の方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)SEQ ID NO: 21、22、および23;
(ii)SEQ ID NO: 24、25、および26;
(iii)SEQ ID NO: 27、28、および29;
(iv)SEQ ID NO: 30、31、および32;
(v)SEQ ID NO: 33、34、および35;
(vi)SEQ ID NO: 36、37、および38;
(vii)SEQ ID NO: 39、40、および41;
(viii)SEQ ID NO: 42、43、および44;または
(ix)SEQ ID NO: 45、46、および47
を含む、DPEP-1に結合する結合物質。
【請求項2】
SEQ ID NO: 12~20および48~56のいずれか1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の結合物質。
【請求項3】
SEQ ID NO: 12~20および48~56のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項2記載の結合物質。
【請求項4】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはその抗原結合断片である、請求項1~3のいずれか一項記載の結合物質。
【請求項5】
Fcドメインに融合した抗原結合断片である、請求項1~3のいずれか一項記載の結合物質。
【請求項6】
前記結合物質が抗原結合断片であり、かつ該抗原結合断片が、Fv、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2、dsFv、ds-scFv、sdAB、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、または多量体抗原結合断片である、請求項1~4のいずれか一項記載の結合物質。
【請求項7】
前記抗原結合断片が、sdABである、請求項6記載の結合物質。
【請求項8】
前記抗体または抗原結合断片が、D-アミノ酸、修飾アミノ酸、アミノ酸類似体、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の結合物質。
【請求項9】
前記修飾アミノ酸が、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または他の化学基での置換からなる群より選択される修飾を含む、請求項8記載の結合物質。
【請求項10】
前記抗体または抗原結合断片が、ペグ化、アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、またはプレニル化によって修飾される、請求項1~9のいずれか一項記載の結合物質。
【請求項11】
前記抗体または抗原結合断片が、ヒト、マウス、ラマ、ウサギ、ヒツジ、またはヤギの抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~10のいずれか一項記載の結合物質。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項記載の結合物質と、少なくとも1つの薬学的担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
その必要があるヒト対象において障害を処置または予防するための、請求項1~11のいずれか一項記載の結合物質または請求項12記載の薬学的組成物の使用。
【請求項14】
前記障害が、急性腎障害、敗血症誘導性状態、および腫瘍転移からなる群より選択される、請求項13記載の使用。
【請求項15】
前記急性腎障害が、虚血再灌流誘導性状態、色素誘導性状態、毒素誘導性状態、または薬物誘導性状態を含む、請求項14記載の使用。
【請求項16】
前記敗血症誘導性状態が、細菌性またはウイルス性の敗血症誘導性状態を含む、請求項14記載の使用。
【請求項17】
前記ウイルス性の敗血症誘導性状態が、COVID-19敗血症誘導性状態を含む、請求項16記載の使用。
【請求項18】
前記敗血症誘導性状態が、急性呼吸窮迫症候群、脳症、肝不全、腎不全、または心不全に関連する、請求項14記載の使用。
【請求項19】
前記腫瘍転移が、膵臓がん、腎臓がん、泌尿生殖器がん、黒色腫、前立腺癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌、脳がん、卵巣癌、子宮頸がん、子宮内膜癌、原発性腹膜癌、中皮腫、眼がん、筋肉、リンパ腫、食道がん、胃がん、肝臓がん、小腸腫瘍、結腸がん、精巣がん、皮膚がん、または副腎癌に関連する、請求項14記載の使用。
【請求項20】
前記腎臓がんが、腎細胞癌(RCC)である、請求項19記載の使用。
【請求項21】
前記泌尿生殖器がんが、膀胱、腎臓、骨盤、または尿管における尿路上皮癌である、請求項9記載の使用。
【請求項22】
前記肺癌が、非小細胞癌、小細胞癌、または神経内分泌癌である、請求項19記載の使用。
【請求項23】
前記神経内分泌癌が、カルチノイド腫瘍である、請求項22記載の使用。
【請求項24】
前記乳癌が、乳管癌、小葉癌、または乳管癌と小葉癌との混合型である、請求項19記載の使用。
【請求項25】
前記甲状腺癌が、甲状腺乳頭癌、濾胞癌、または髄様癌である、請求項19記載の使用。
【請求項26】
前記脳がんが、髄膜腫、星細胞腫、膠芽腫、小脳腫瘍、または髄芽腫である、請求項19記載の使用。
【請求項27】
前記卵巣癌が、漿液型、粘液型、または子宮内膜型である、請求項19記載の使用。
【請求項28】
前記子宮頸がんが、上皮内扁平上皮癌、浸潤性扁平上皮癌、または子宮頸管内腺癌である、請求項19記載の使用。
【請求項29】
前記子宮内膜癌が、子宮内膜型、漿液型、または粘液型である、請求項19記載の使用。
【請求項30】
前記中皮腫が、胸膜または腹膜である、請求項19記載の使用。
【請求項31】
前記眼がんが、網膜芽細胞腫である、請求項19記載の使用。
【請求項32】
前記筋肉がんが、横紋肉腫または平滑筋肉腫である、請求項19記載の使用。
【請求項33】
前記食道がんが、腺癌または扁平上皮癌である、請求項19記載の使用。
【請求項34】
前記胃がんが、胃腺癌または消化管間質腫瘍である、請求項19記載の使用。
【請求項35】
前記肝臓がんが、肝細胞癌または胆管がんである、請求項19記載の使用。
【請求項36】
前記小腸腫瘍が、小腸間質腫瘍またはカルチノイド腫瘍である、請求項19記載の使用。
【請求項37】
前記結腸がんが、結腸の腺癌、結腸高度異形成、または結腸カルチノイド腫瘍である、請求項19記載の使用。
【請求項38】
前記皮膚がんが、黒色腫または扁平上皮癌である、請求項19記載の使用。
【請求項39】
前記障害が、炎症、虚血再灌流傷害、および虚血再灌流傷害関連障害からなる群より選択される、請求項13記載の使用。
【請求項40】
前記障害が、炎症である、請求項39記載の使用。
【請求項41】
前記炎症が、胃炎、痛風、痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、腎不全、狼瘡、喘息、乾癬、膵炎、アレルギー、線維症、手術合併症、貧血、線維筋痛症、がん、心臓発作、うっ血性心不全、脳卒中、大動脈弁狭窄症、動脈硬化症、骨粗鬆症、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍、慢性気管支炎、喘息、アレルギー、急性肺傷害、肺炎症、気道過敏症、血管炎、敗血症性ショック、炎症性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、および炎症性腸疾患からなる群より選択される炎症性障害に関連する、請求項40記載の使用。
【請求項42】
前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
前記虚血再灌流傷害関連障害が、臓器および組織における虚血性事象および虚血後事象に関連し、該障害が、血栓性脳卒中、心筋梗塞;狭心症、塞栓性血管閉塞、末梢血管不全、内臓動脈閉塞、血栓による動脈閉塞、塞栓症による動脈閉塞、非閉塞性プロセスによる動脈閉塞、腸間膜動脈閉塞、腸間膜静脈閉塞、腸間膜微小循環に対する虚血再灌流傷害、虚血性急性腎不全、脳組織に対する虚血再灌流傷害、腸重積、血行動態性ショック、組織機能障害、臓器不全、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、血栓症、血小板凝集、ショック肝、脊髄損傷、または脳損傷からなる群より選択される、請求項39記載の使用。
【請求項44】
前記非閉塞性プロセスによる動脈閉塞が、低い腸間膜流量後または敗血症後の動脈閉塞である、請求項43記載の使用。
【請求項45】
前記臓器不全が、心不全、肝不全、腎不全などである、請求項43記載の使用。
【請求項46】
前記虚血再灌流傷害が、外科手術手順に起因する、請求項39記載の使用。
【請求項47】
前記外科手術手順が、周術期の手順、心臓手術、臓器手術、臓器移植、血管造影、心肺蘇生法、または脳蘇生法である、請求項46記載の使用。
【請求項48】
前記虚血再灌流傷害が、移植のためのドナー臓器の採取に関連する、請求項39記載の使用。
【請求項49】
前記虚血再灌流傷害が、ドナーの調達、エクスビボでの取り扱い、または移植レシピエントへの移植の最中に同種移植臓器に生じる、請求項39記載の使用。
【請求項50】
請求項1~11のいずれか一項記載の結合物質または請求項12記載の薬学的組成物と、使用説明書とを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2021年4月8日に出願された米国特許仮出願第63/172,530号の恩典を主張する。
【0002】
配列表の組み入れ
55,531バイトであり、2022年4月7日に作成された、「27929-P63463PC00_SequenceListing_2022-04-07」という名称のファイルに含有される配列表は、電子提出によって本明細書と共に提出され、参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
分野
抗体を含むDPEP-1結合物質、およびそれを含有する薬学的組成物が、本明細書に開示される。また、そのような作用物質、抗体、および薬学的組成物を使用および製造するための方法、ならびにその必要があるヒト対象において障害を処置または予防するための方法および使用も開示される。
【背景技術】
【0004】
背景
炎症は、急性または慢性であり得る、有害な刺激に対する宿主防御反応である。急性炎症は、発赤、熱、腫脹、および疼痛を特徴とする。炎症の主要な目的は、刺激物を局在化させて根絶し、周辺組織の修復を促進することである。ほとんどの場合に、炎症は、必要かつ有益なプロセスである。炎症応答は、3つの主な段階:第1に、血流を増加させるための細動脈の拡張;第2に、微小血管の構造変化および血漿タンパク質の血流からの漏出;ならびに第3に、内皮を通した白血球の遊出および傷害の部位での蓄積を含む。白血球の経内皮遊走(TEM)は、炎症、傷害、および免疫反応の部位へのその動員における鍵となるステップである。炎症の部位への好中球の移出は、細胞間接着を必要とすると考えられている。
【0005】
急性炎症を促す有害な刺激を消散できないと、慢性炎症につながる場合があり、いくつかの刺激は、即時型慢性炎症を促す可能性がある。場合によっては、炎症は、二次的なまたは慢性の損傷を結果としてもたらす。腫瘍微小環境における炎症はまた、がんの加速および腫瘍転移に関係している。炎症誘発性分子の存在により、悪性がん細胞が内皮壁に接着することが可能になり、転移につながる。炎症誘発性サイトカインは、がん細胞の増殖および凝集を誘導し、他のがん細胞がより多くのサイトカインを分泌するように誘発して、正のフィードバックループを結果としてもたらす。急性炎症および慢性炎症における接着分子の役割は、内皮への白血球の接着を調節または遮断することによって炎症を制御する方法の開発のために必要な、研究の分野である。
【0006】
抗炎症剤は、炎症応答の遮断物質、抑制物質、または調節物質として機能する。炎症の組織特異的な制御は、他の組織における応答を維持しながら、ある組織における炎症を調節するために望ましい時がある。抗炎症剤は、様々な急性状態および慢性状態を処置するために用いられる。ほとんどの人々は、これらの剤を服用することに問題はないが、いくらかの人々は、重篤である場合がある副作用を起こす。いくつかの群において、これらの薬は、用心して、かつ代替物がない場合にのみ、かつ必要な最低の用量および持続時間で処方される。
【0007】
したがって、特に、現在のアプローチの多くが、炎症のより極端な症例のいくつかを十分に処置することができないため、現在の治療薬として、炎症を低減させるかまたは遮断するための追加の治療化合物について必要性が残っている。したがって、必要とされているものは、炎症応答の遮断物質、抑制物質、または調節物質として機能する新しい組成物である。
【発明の概要】
【0008】
概要
ファージディスプレイライブラリおよびパンニング戦略を用いて、ヒトDPEP-1(hDPEP-1)に結合する単一ドメイン抗体(sdAB)を特定した。これらのsdAB(sdABP01~09;SEQ ID NO: 1~9)は、インビトロでhDPEP-1に結合し、かつ/またはその表面上にhDPEP-1を提示するHEK293T細胞を認識することができた。これらのヒトDPEP-1特異的VHHは、良好な熱安定性、良好なSPR結合親和性、細胞に提示されるhDPEP-1に対する良好な用量反応結合を有することが示され、エピトープ結合によって特徴決定された。sdABP01~09の各々は、ビオチン化アクセプターペプチド(BAP)およびポリヒスチジン(His6)タグを含有する。BAPおよびHis6タグを有しないこれらのsdABP01~09のコア配列を、SEQ ID NO: 12~20に示す。
【0009】
抗体を含むDPEP-1結合物質、およびそれを含む薬学的組成物が、本明細書に開示される。また、そのようなDPEP-1結合物質および組成物を使用および作製する方法、ならびにDPEP-1結合物質をスクリーニングするための方法も開示される。
【0010】
一局面において、
(i)SEQ ID NO: 21、22、および23;
(ii)SEQ ID NO: 24、25、および26;
(iii)SEQ ID NO: 27、28、および29;
(iv)SEQ ID NO: 30、31、および32;
(v)SEQ ID NO: 33、34、および35;
(vi)SEQ ID NO: 36、37、および38;
(vii)SEQ ID NO: 39、40、および41;
(viii)SEQ ID NO: 42、43、および44;または
(ix)SEQ ID NO: 45、46、および47
を含む、DPEP-1に結合する結合物質が、本明細書に開示される。
【0011】
一態様において、結合物質は、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 12~20および48~56のいずれか1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 12~20および48~56のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0012】
一態様において、結合物質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはその抗原結合断片である。
【0013】
一態様において、結合物質は、Fcドメインに融合した抗原結合断片である。
【0014】
一態様において、抗原結合断片は、Fv、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2、dsFv、ds-scFv、sdAB、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、または多量体抗原結合断片である。一態様において、抗体断片は、sdABである。
【0015】
一態様において、抗体または抗原結合断片は、D-アミノ酸、修飾アミノ酸、アミノ酸類似体、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む。
【0016】
一態様において、修飾アミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または他の化学基での置換からなる群より選択される修飾を含む。
【0017】
一態様において、抗体または抗原結合断片は、ペグ化、アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、またはプレニル化によって修飾される。
【0018】
一態様において、抗体または抗原結合断片は、ヒト、マウス、ラマ、ウサギ、ヒツジ、またはヤギの抗体またはその抗原結合断片である。
【0019】
特定の態様において、結合物質、抗体、または抗原結合断片は、薬学的に許容される担体をさらに含む薬学的組成物中にある。
【0020】
別の局面において、その必要があるヒト対象において障害を処置または予防するための方法であって、本開示に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物の有効量を該対象に投与する工程を含む方法が開示される。また、その必要があるヒト対象において障害を処置または予防するための、本開示に記載される結合物質、抗体もしくはそれによる抗原結合断片、または薬学的組成物の使用も提供される。
【0021】
一態様において、障害は、急性腎障害、敗血症誘導性状態、および腫瘍転移からなる群より選択される。一態様において、急性腎障害は、虚血再灌流誘導性状態、色素誘導性状態、毒素誘導性状態、または薬物誘導性状態を含む。一態様において、敗血症誘導性状態は、細菌性またはウイルス性の敗血症誘導性状態を含む。一態様において、ウイルス性の敗血症誘導性状態は、COVID-19敗血症誘導性状態を含む。一態様において、敗血症誘導性状態は、急性呼吸窮迫症候群、脳症、肝不全、腎不全、または心不全に関連する。
【0022】
一態様において、腫瘍転移は、膵臓がん、腎臓がん、泌尿生殖器がん、黒色腫、前立腺癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌、脳がん、卵巣癌、子宮頸がん、子宮内膜癌、原発性腹膜癌、中皮腫、眼がん、筋肉、リンパ腫、食道がん、胃がん、肝臓がん、小腸腫瘍、結腸がん、精巣がん、皮膚がん、または副腎癌に関連する。一態様において、腎臓がんは、腎細胞癌(RCC)である。一態様において、泌尿生殖器がんは、膀胱、腎臓、骨盤、または尿管における尿路上皮癌である。一態様において、肺癌は、非小細胞癌、小細胞癌、または神経内分泌癌である。一態様において、神経内分泌癌は、カルチノイド腫瘍である。一態様において、乳癌は、乳管癌、小葉癌、または乳管癌と小葉癌との混合型である。一態様において、甲状腺癌は、甲状腺乳頭癌、濾胞癌、または髄様癌である。一態様において、脳がんは、髄膜腫、星細胞腫、膠芽腫、小脳腫瘍、または髄芽腫である。一態様において、卵巣癌は、漿液型、粘液型、または子宮内膜型である。一態様において、子宮頸がんは、上皮内扁平上皮癌、浸潤性扁平上皮癌、または子宮頸管内腺癌である。一態様において、子宮内膜癌は、子宮内膜型、漿液型、または粘液型である。一態様において、中皮腫は、胸膜または腹膜である。一態様において、眼がんは、網膜芽細胞腫である。一態様において、筋肉がんは、横紋肉腫または平滑筋肉腫である。一態様において、食道がんは、腺癌または扁平上皮癌である。一態様において、胃がんは、胃腺癌または消化管間質腫瘍である。一態様において、肝臓がんは、肝細胞癌または胆管がんである。一態様において、小腸腫瘍は、小腸間質腫瘍またはカルチノイド腫瘍である。一態様において、結腸がんは、結腸の腺癌、結腸高度異形成、または結腸カルチノイド腫瘍である。一態様において、皮膚がんは、黒色腫または扁平上皮癌である。
【0023】
一態様において、障害は、炎症、虚血再灌流傷害、および虚血再灌流傷害関連障害からなる群より選択される。一態様において、障害は、炎症である。一態様において、炎症は、臓器炎症を含む。一態様において、炎症は、胃炎、痛風、痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、腎不全、狼瘡、喘息、乾癬、膵炎、アレルギー、線維症、手術合併症、貧血、線維筋痛症、がん、心臓発作、うっ血性心不全、脳卒中、大動脈弁狭窄症、動脈硬化症、骨粗鬆症、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍、慢性気管支炎、喘息、アレルギー、急性肺傷害、肺炎症、気道過敏症、血管炎、敗血症性ショック、炎症性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、および炎症性腸疾患からなる群より選択される炎症性障害に関連する。一態様において、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。
【0024】
一態様において、虚血再灌流傷害関連障害は、臓器および組織における虚血性事象および虚血後事象に関連し、障害は、血栓性脳卒中、心筋梗塞、狭心症、塞栓性血管閉塞、末梢血管不全、内臓動脈閉塞、血栓による動脈閉塞、塞栓症による動脈性、非閉塞性プロセスによる動脈閉塞、腸間膜動脈閉塞、腸間膜静脈閉塞、腸間膜微小循環に対する虚血再灌流傷害、虚血性急性腎不全、脳組織に対する虚血再灌流傷害、腸重積、血行動態性ショック、組織機能障害、臓器不全、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、血栓症、血小板凝集、ショック肝、脊髄損傷、または脳損傷からなる群より選択される。一態様において、非閉塞性プロセスによる動脈閉塞は、低い腸間膜流量後または敗血症後の動脈閉塞である。一態様において、臓器不全は、心不全、肝不全、腎不全などである。一態様において、虚血再灌流傷害は、外科手術手順に起因する。一態様において、外科手術手順は、周術期の手順、心臓手術、臓器手術、臓器移植、血管造影、心肺蘇生法、または脳蘇生法である。
【0025】
一態様において、虚血再灌流傷害は、移植のためのドナー臓器の採取に関連する。一態様において、虚血再灌流傷害は、ドナーの調達、エクスビボでの取り扱い、または移植レシピエントへの移植の最中に同種移植臓器に生じる。一態様において、その必要がある対象は、移植のための臓器ドナーまたは臓器レシピエントである。
【0026】
一態様において、本明細書に開示される組成物を含むキットが、本明細書に開示される。1つの態様において、キットは、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0027】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本開示の精神および範囲内の様々な変化および改変が、詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明は、本開示の好ましい実行を示すが、例示として与えられるだけであることが、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1-1】V
HHの熱アンフォールディング曲線を示す。V
HHの熱アンフォールディング中間点温度(T
m)を、100 mMリン酸緩衝液pH 7.4中、200μg/mLの濃度および205 nmの波長でV
HHのアンフォールディングを追跡することによって、円偏光二色性分光法を用いて決定した。生データを、実施例2に記載されるように、フォールディングされた割合(%)に変換し、T
m(変性中間点の温度)を、フォールディングされた%対温度のプロットに対するボルツマン曲線フィッティングによって決定した。
【
図2A-1】ヒトDPEP-1に結合するV
HHの単一サイクル速度論的解析を示す、表面プラズマ共鳴(SPR)センサーグラムを示す。組換えヒトDPEP-1を、実施例3に記載されるようにビオチン化し、Biotin CAPture試薬を用いてCM5センサーチップ表面上に捕捉し、続いて、0.625~10 nM(sdABP02)、2.5~40 nM(sdABP03/05/07)、6.25~100 nM(sdABP06)、および12.5~200 nM(sdABP01/04)の範囲の濃度のV
HHを表面にわたって流した。濃い線は、データポイントを表し、薄い線は、データにフィットしている。データは、三連で生成させ、1つの反復セットのデータを示す。
【
図2B】
図2Aにおいて得られたV
HHの速度論的速度定数k
a、k
dをまとめたオン/オフレートマップを示す。対角線は、平衡解離定数K
Dを表す。データポイントを、三連で示す。
【
図3A-1】細胞に提示されたヒトDPEP-1に対するDPEP-1特異的V
HHの結合を示す。ヒトDPEP-1を過剰発現するHEK-293Tに対する100 nM濃度のビオチン化V
HHのフローサイトメトリー結合解析(HEK-293T-hDPEP1+;各グラフの右側のプロファイル)。クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)毒素A特異的A20.1 V
HH(Hussack et al., J Biol Chem. 286: 8961-8976, (2011))を、陰性V
HH対照として含めた(各グラフの左側のプロファイル)。DPEP-1特異的V
HHの場合に見られるような右へのスペクトルシフトは、ヒトDPEP-1に対する結合を示す。示されたV
HHを、hDPEP-1発現について陰性であるHEK293T-PARENTALに対して試験した場合、結合は見られなかった(すなわち、右へのスペクトルシフトなし)。
【
図3B】ビオチン化V
HHのフローサイトメトリー解析を示す。細胞に提示されたヒトDPEP-1に対する、ヒトDPEP-1特異的V
HHの用量反応結合を決定した。ビオチン化V
HHのフローサイトメトリー解析を、ヒトDPEP-1(hDPEP-1)を過剰発現するHEK-293-6E細胞に対して、V
HH濃度を増大させて行った。クロストリジウム・ディフィシル毒素A特異的A20.1 V
HH(Hussack et al., J Biol Chem., 286: 8961-8976 [2011])を、陰性V
HH対照として含めた。
【
図3C-1】陰性対照A20.1 V
HHと比較して同様の最大蛍光プラトーを有する、
図3Bにおけるグラフのグループ分けを示す。50%結合時のV
HH濃度であるEC
50値を、グラフから計算し、表5に記録した。
【
図3D】hDPEP-1を過剰発現するHEK293-6E細胞からのhDPEP-1の免疫沈降を示す。クロストリジウム・ディフィシル毒素Aに特異的なA20.1 V
HHを、陰性対照として含めた。MW、タンパク質分子量マーカー。hDPEP-1 ECD、hDPEP-1細胞外ドメイン。
【
図4A】SPRによって特定されたエピトープビンをまとめた描写を示す。sdABP01、sdABP06、sdABP02、およびsdABP07は、それぞれ、ビン(i)、(ii)、(iii)、および(iv)を規定した。sdABP03および05は、ビン(iv)と部分的に重複し、一方、sdABP04は、ビン(iii)と部分的に重複する。
【
図4B】ELISAによるエピトープビニングのヒートマップを示す。競合サンドイッチELISAを行って、エピトープによってV
HHをクラスター化し、V
HHのすべての可能なペアワイズの組み合わせを表示するヒートマップとして表した(7×7=49)。高い結合シグナルを示す結合ペア(濃い)は、重複しないエピトープを認識し、したがって異なるエピトープビンまたはV
HHクラスターに属すると考えられ、一方、結合シグナルを示さないかまたは弱い結合シグナルを示す結合ペア(薄い)は、重複するエピトープを認識し、したがって同じエピトープビンに属すると考えられた。陰性対照として含めたクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに特異的なA20.1 V
HHは、予想されるようにシグナルを示さない。
【
図5A】LPSで処置したLysM
gfp/gfpマウスの腎臓における、単球浸潤(すなわち、腎炎症)を低減させるsdABP07の代表的な免疫蛍光画像を示す。左パネル:ナイーブ;中央パネル:LPS;右パネル:LPS+sdABP07。
【
図5B】LPSで処置したLysM
gfp/gfpマウスの腎臓における、1視野当たりに見出される接着したLysM
+単球の数によって定量化した腎炎症を表すグラフを示す。sdABP07は、LPS誘導性腎炎症を低減させた。
【
図6-1】ヒトDPEP-1 V
HH-FcのSECプロファイルを示す。SECプロファイルは、V
HH-Fcに凝集がなく、その単量体状態と一致した溶出体積(V
e)を有することを実証する。SECは、Superdex(登録商標) 200 Increaseカラムを用いて行った。mAU、ミリ吸光度単位。
【
図7】ELISAによって得られたヒトDPEP-1に対するV
HH-Fcの結合プロファイルを示す。9つのV
HH-Fc(sdABP01~09)はすべて、用量依存様式でヒトDPEP-1に結合した。クロストリジウム・ディフィシル毒素A特異的A20.1 V
HH-Fc(Hussack et al., J Biol Chem. 286: 8961-8976, [2011])を、陰性V
HH対照として含めた。データは、3回の独立した実験の平均を表す。
【
図8A】フローサイトメトリーによるDPEP-1 V
HH-Fcの結合特異性および交差反応性に関するアッセイからの結果を示す。フローサイトメトリー結合解析を、ヒトDPEP-1を過剰発現するHEK-293-6E細胞に対して125 nMのV
HH-Fc濃度で行った。クロストリジウム・ディフィシル毒素A特異的A20.1 V
HH-Fc(Hussack et al., J Biol Chem. 286: 8961-8976, [2011])を、陰性V
HH対照として含めた。pAbは、ウサギ抗ヒトDPEP-1ポリクローナル抗体陽性対照である。細胞に対するV
HH-Fcの結合は、抗ヒト:PEを用いて検出し、pAbの結合は、抗ウサギ:PEを用いることによって検出した。抗ヒト:PEおよび抗ウサギ:PEは、V
HH-FcおよびpAbをそれぞれ除いた場合には、陰性結合アッセイを示す。点線は、バックグラウンドシグナルの境界を画定する。測定は、四連で行った。
【
図8B】フローサイトメトリーによるDPEP-1 V
HH-Fcの結合特異性および交差反応性に関するアッセイからの結果を示す。フローサイトメトリー結合解析を、マウスDPEP-1を過剰発現するHEK-293-6E細胞に対して125 nMのV
HH-Fc濃度で行った。用いた陽性および陰性対照、ならびに二次抗体は、
図8Aにおけるものと同じであった。点線は、バックグラウンドシグナルの境界を画定する。測定は、四連で行った。
【
図8C】フローサイトメトリーによるDPEP-1 V
HH-Fcの結合特異性および交差反応性に関するアッセイからの結果を示す。フローサイトメトリー結合解析を、ラットDPEP-1を過剰発現するHEK-293-6E細胞に対して125 nMのV
HH-Fc濃度で行った。用いた陽性および陰性対照、ならびに二次抗体は、
図8Aにおけるものと同じであった。点線は、バックグラウンドシグナルの境界を画定する。測定は、四連で行った。
【
図8D】フローサイトメトリーによるDPEP-1 V
HH-Fcの結合特異性および交差反応性に関するアッセイからの結果を示す。フローサイトメトリー結合解析を、ヒトDPEP-2を過剰発現するHEK-293-6E細胞に対して125 nMのV
HH-Fc濃度で行った。用いた陽性および陰性対照、ならびに二次抗体は、
図8Aにおけるものと同じであった。点線は、バックグラウンドシグナルの境界を画定する。測定は、四連で行った。
【
図8E】フローサイトメトリーによるDPEP-1 V
HH-Fcの結合特異性および交差反応性に関するアッセイからの結果を示す。フローサイトメトリー結合解析を、親HEK-293-6E細胞に対して125 nMのV
HH-Fc濃度で行った。用いた陽性および陰性対照、ならびに二次抗体は、
図8Aにおけるものと同じであった。点線は、バックグラウンドシグナルの境界を画定する。測定は、四連で行った。
【
図9】フローサイトメトリーによって得られたヒトDPEP-1発現HEK293-6E細胞に対するV
HH-Fcの用量反応結合を示す。グラフから得られた計算上の見かけのEC
50(EC
50app)を、表7に報告する。V
HH-Fcのいずれも、125 nMで親の非DPEP-1発現HEK293-6E細胞に結合しなかった(
図8Eを参照されたい)。クロストリジウム・ディフィシル毒素A特異的A20.1 V
HH(Hussack et al., J Biol Chem., 286: 8961-8976 [2011])を、陰性V
HH対照として含めた。測定は、三連であった。
【
図10】フローサイトメトリーによるマウスDPEP-1に対するsdABP05およびsdABP06のV
HH-Fcの交差反応性評価を示す。用量反応曲線を、ヒトDPEP-1発現HEK293-6E細胞(左)およびマウスDPEP-1発現HEK293-6E細胞(右)に対してsdABP05およびsdABP06を滴定することによって得た。sdABP05およびsdABP06は、マウスDPEP-1と交差反応し、sdABP07は、交差反応しなかった(
図8Bを参照されたい)。グラフから得られた計算上の見かけのEC
50(EC
50app)を、表9に報告する。測定は、二連であった。
【
図11】2つの異なる商業的供給源からの変性組換えDPEP1に対するSDS-PAGE/ウエスタンブロットによる、ヒトDPEP-1 V
HH-Fcのエピトープタイピングを示す。ブロット(結合シグナル)の存在は、sdABP05、sdABP06、sdABP03、およびsdABP08のV
HH-Fcが、直鎖状エピトープを認識することを示す。sdABP01、sdABP02、sdABP04、sdABP07、およびsdABP09のV
HH-Fcに対して結合シグナルが存在しないことは、これらのV
HH-Fcが立体構造エピトープを認識することを間接的に示す(データは示さない)。抗ヒトDPEP-1ポリクローナル抗体(pAb;Proteintech、カタログ番号12222-1-AP)を、参照として含めた。C、ヒトDPEP1(Creative biomart、カタログ番号DPEP1-77H);S、ヒトDPEP1(SinoBiologicals、カタログ番号13543-H08H)。画像は、5秒(左パネル)または30秒(右パネル)の露光時間で取得した。分子量(MW)は、kDaである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
I. 定義
本開示の範囲を理解する際に、本明細書で用いられる用語「含む(comprising)」およびその派生語は、述べられる特徴、要素、構成要素、群、整数、および/または工程の存在を特定するが、他の述べられていない特徴、要素、構成要素、群、整数、および/または工程の存在を除外しない、開放型の用語であるように意図される。前述はまた、用語「含む(including)」、「有する」、およびそれらの派生語などの、類似した意味を有する単語にも当てはまる。最後に、本明細書で用いられる「実質的に」、「約」、および「およそ」などの程度の用語は、最終結果が有意に変化しないような、修飾される用語の妥当な偏差の量を意味する。これらの程度の用語は、この偏差が修飾する単語の意味を否定しない場合には、修飾される用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0030】
用語が単数形で提供される場合に、本発明者らはまた、その用語の複数形によって説明される本開示の局面も企図する。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないと指図しない限り、複数の言及を含み、例えば、「抗体」は、複数の抗体を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載される、および/または本開示を読むと当業者に明らかになるであろうタイプの、1つまたは複数の方法および/または工程を含む。
【0031】
用語「投与する」、「投与すること」、または「投与される」は、生理学的システム(例えば、対象、またはインビボ、インビトロ、もしくはエクスビボの細胞、組織、および臓器)に作用物質または治療的処置を与える行為を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる用語「親和性」は、分子の単一の結合部位とその結合パートナーとの間の非共有結合性相互作用の総和の強さを指す。別段の指示がない限り、本明細書で用いられる場合、「結合親和性」とは、結合ペアのメンバーの間の1:1相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に平衡解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、当技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。
【0033】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸、ならびにアミノ酸類似体、合成アミノ酸、およびアミノ酸模倣物などの、天然に存在しないアミノ酸または非標準アミノ酸を指す。これらのアミノ酸は、L-またはD-(異性体)配置であってもよく、または両方の右旋性形態を含んでもよい。抗体中に組み込まれたアミノ酸は、「残基」と呼ばれる。アミノ酸は、本明細書において、一般的に知られている3文字記号、またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会によって推奨される1文字記号のいずれかによって言及され得る。以下のアミノ酸定義が、本明細書を通して用いられる:アラニン:Ala(A)、アルギニン:Arg(R)、アスパラギン:Asn(N)、アスパラギン酸:Asp(D)、システイン:Cys(C)、グルタミン:Gln(Q)、グルタミン酸:Glu(E)、グリシン:Gly(G)、ヒスチジン:His(H)、イソロイシン:Ile(I)、ロイシン:Leu(L)、リジン:Lys(K)、メチオニン:Met(M)、フェニルアラニン:Phe(F)、プロリン:Pro(P)、セリン:Ser(S)、スレオニン:Thr(T)、トリプトファン:Trp(W)、チロシン:Tyr(Y)、バリン:Val(V)。
【0034】
本明細書で用いられる用語「結合物質」は、受容体と複合体を形成する、抗体またはその抗原結合断片を含むリガンドを指す。リガンドは、選択的であってもよく、または非選択的であってもよい。リガンドは、アゴニスト(部分的または完全)、アンタゴニスト(すなわち、アゴニストの作用を遮断する)、インバースアゴニスト(すなわち、アゴニストの反対の作用を発揮する)、またはアロステリック調節物質であってもよい。アンタゴニストは、競合的アンタゴニスト(すなわち、アゴニストと同じ部位で結合する)、または非競合的アンタゴニスト(すなわち、アゴニストと同じ部位で永久的に結合するか、もしくは活性部位以外の部位であるアロステリック部位で結合する)であってもよい。いくつかの態様において、本開示における結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、DPEP-1に結合し、かつ/またはDPEP-1を阻害する。いくつかの態様において、本開示における結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、DPEP-1調節機能を低減させる。いくつかの態様において、DPEP-1調節機能は、白血球動員、炎症、および腫瘍細胞接着を含む。いくつかの態様において、本開示における結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、DPEP-1ジペプチダーゼ活性および/または尿細管輸送の調節におけるその役割に影響を及ぼさない。
【0035】
用語「診断される」、「診断の」、または「診断」は、病理学的状態の存在または性質を特定することを意味する。診断法には、観察およびアッセイが含まれ、それらの感度および特異度は異なる。診断用観察またはアッセイの「感度」とは、陽性と判定される罹患した個体のパーセンテージ(「真陽性」のパーセント)である。観察またはアッセイによって検出されない罹患した個体は、「偽陰性」である。罹患しておらず、かつ観察またはアッセイにおいて陰性と判定される対象は、「真陰性」と呼ばれる。診断用観察またはアッセイの「特異度」は、1マイナス偽陽性率であり、ここで、「偽陽性」率は、陽性と判定される疾患を有しない人の割合として定義される。特定の診断法は、状態の確定診断を提供しない可能性があるが、方法が診断を手助けする陽性徴候を提供するのであれば、十分である。
【0036】
本明細書で用いられる場合、用語「有効量」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分である、治療法(例えば、予防剤または治療剤)の量を指す。有効量は、1回または複数回の投与において投与することができる。
【0037】
本明細書で用いられる場合、用語「炎症性疾患」は、a)白血球の動員、接着、もしくは活性化、および好中球、単球、リンパ球、もしくはマクロファージを伴う他の障害、b)炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、インターロイキン(IL)-lβ、IL-2、IL-6)の病理学的産生を伴う疾患、ならびに/またはc)炎症性サイトカインをコードする遺伝子の転写を促進する核因子の活性化、を含むがそれらに限定されない疾患(本明細書に記載される化合物で処置可能または予防可能)を指す。これらの核転写因子の例には、核因子-κB(NFκB)、活性化タンパク質-1(AP-1)、活性化T細胞核因子(NFAT)が含まれるが、それらに制限されない。
【0038】
本明細書で用いられる用語「虚血再灌流傷害」は、組織への血液供給の制限(虚血)、続く血液の再供給(再灌流)によって最初に引き起こされる損傷、ならびに臓器傷害および機能不全を結果としてもたらす、付随的なフリーラジカルの生成、炎症、および細胞死を指す。移植シナリオにおいて、虚血再灌流傷害は、同種移植片の機能に負の影響を及ぼす。
【0039】
本明細書で用いられる用語「単離された」は、物質がその元の環境(例えば、それが天然に存在する場合には、自然環境)から取り出されることを指す。例えば、生きている動物に存在する天然に存在する抗体は、単離されていないが、自然のシステムにおける共存する物質のいくつかまたはすべてから分離された同じ抗体は、単離されている。いくつかの態様において、本開示の抗体は、単離された抗体である。
【0040】
用語「薬学的に許容される担体」は、特定の投与の様式に適していることが当業者に知られている、任意のそのような担体を指す。例えば、用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的に許容される物質のための媒体として用いられ得る、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。加えて、活性物質はまた、所望の作用を損なわない他の活性物質、または所望の作用を補足するか、もしくは別の作用を有する物質と混合することもできる。
【0041】
本明細書で用いられる用語「薬学的に許容される塩」は、非毒性であることが知られており、薬学文献において一般的に用いられている塩を指す。そのような塩を形成するために用いられる典型的な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次亜リン酸などが含まれる。脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸およびヒドロキシアルカン二酸(hydroxyalkandioic acid)、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの有機酸に由来する塩もまた、用いられ得る。そのような薬学的に許容される塩には、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン-2-安息香酸塩、臭化物、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、塩化物、桂皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、 p-ブロモフェニルスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩などが含まれる。
【0042】
用語「予防する」または等価物、例えば、「予防」または「予防すること」は、処置されていない対照試料と比べて、処置された試料において障害もしくは状態の発生を低減させること、または処置されていない対照試料と比べて、障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状の発症を遅延させること、もしくはその重症度を低減させることを指す。本明細書で用いられる場合、虚血再灌流傷害を予防することは、酸化的損傷を予防すること、またはミトコンドリア透過性遷移を予防することを含み、それによって、影響を受けた臓器への血流の喪失およびその後の回復の有害な効果を予防するか、または改善する。予防することは、対象が人生において後にその状態を決して発症しないことではなく、発生の確率が低減することを意味する。
【0043】
本明細書における疾患または状態の文脈における用語「低減させること」、「低減させる」、または「低減」は、疾患または状態の原因、症状、または効果の減少を指す。したがって、開示される方法および使用において、「低減させること」は、再灌流による傷害の量における、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%の減少、またはそれらの間の任意の値もしくは範囲を指すことができる。
【0044】
本明細書で用いられる用語「対象」もしくは「患者」またはその同義語は、動物界のすべてのメンバー、特に、ヒトを含む哺乳動物を含む。対象または患者は、好適にはヒトである。
【0045】
用語「移植」は、細胞、組織、または臓器が、ドナー対象からレシピエント対象に、または同じ対象における身体のある部分から別の部分に移される、外科手術手順を意味する。「ドナー対象」または「ドナー」とは、輸血または臓器移植によって、血液、細胞、組織、または臓器を別の対象に与える対象である。ドナー対象は、ヒトまたは別の哺乳動物である。「レシピエント対象」または「レシピエント」とは、輸血または臓器移植によって、血液、細胞、組織、または臓器を別の対象から受け取る対象である。
【0046】
本明細書で用いられる場合、用語「処置する」、「処置」、および「処置すること」は、任意の状態または疾患の少なくとも1つの病状および/または症状の進行、重症度、および/または持続時間の予防、低減、または改善を指す。用語「処置」または「処置すること」は、本明細書に開示される化合物の任意の投与または使用を指し、(i)疾患もしくは疾患状態の病状もしくは総体的症状を経験もしくは提示している個体において、疾患もしくは疾患状態を阻害すること(すなわち、病状および/もしくは総体的症状のさらなる進展を阻止すること)、または(ii)疾患もしくは疾患状態の病状もしくは総体的症状を経験もしくは提示している個体において、疾患を改善すること(すなわち、病状および/もしくは総体的症状を逆転させること)を含む。用語「制御すること」は、疾患または疾患状態の症状を予防すること、処置すること、根絶すること、改善すること、または他の方法でその重症度を低減させることを含む。
【0047】
炎症に関する場合、用語「処置する」、「処置」、および「処置すること」は、1つまたは複数の治療法(例えば、本明細書に記載される1つまたは複数の予防剤および/または治療剤)の投与または使用に起因する、炎症、またはその1つもしくは複数の症状の進行、重症度、および/または持続時間の低減または改善を指す。「処置」はまた、処置を受けなかった場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味することができる。標準的な方法、例えば、精製酵素を用いたインビトロアッセイ、細胞ベースのアッセイ、動物モデル、またはヒト試験を用いて、この効果の大きさを測定することができる。例示的な態様において、炎症の処置は、胃炎、痛風、痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、腎不全、狼瘡、喘息、乾癬、膵炎、アレルギー、線維症、手術合併症、貧血、線維筋痛症、がん、心臓発作、うっ血性心不全、脳卒中、大動脈弁狭窄症、動脈硬化症、骨粗鬆症、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍、慢性気管支炎、喘息、アレルギー、急性肺傷害、肺炎症、気道過敏症、血管炎、敗血症性ショック、炎症性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、ならびに炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される炎症性障害に関連する炎症の進行、重症度、および/または持続時間を低減させることまたは改善することの1つまたは複数を含む。敗血症は、感染、例えば、細菌感染またはウイルス感染によって誘発される炎症性免疫応答である。いくつかの態様において、炎症の処置は、対象において敗血症中の炎症の進行、重症度、および/または持続時間を低減させることまたは改善することを含む。いくつかの態様において、敗血症は、細菌性敗血症またはウイルス性敗血症を含む。いくつかの態様において、ウイルス性敗血症は、COVID-19誘導性敗血症を含む。炎症はまた、虚血再灌流または急性腎障害に関連する場合がある。いくつかの態様において、炎症の処置は、虚血再灌流傷害または急性腎障害に関連する炎症を含む。炎症の処置はまた、例えば、肺組織、肝臓組織、または腎臓組織中の、組織の炎症を低減させることまたは炎症プロファイルを改変することを含むことができる。いくつかの態様において、炎症の処置は、肺組織、肝臓組織、または腎臓組織における炎症を含む。
【0048】
がんに関する場合、用語「処置する」、「処置」、および「処置すること」は、1つまたは複数の治療法(例えば、1つまたは複数の予防剤および/または治療剤)の投与または使用に起因する、がん、特に固形腫瘍、またはその1つもしくは複数の症状の進行、重症度、および/または持続時間の低減または改善を指す。例示的な態様において、固形腫瘍の処置とは、(i)がん細胞の数を低減させること;(ii)腫瘍細胞アポトーシスを増加させること;(iii)腫瘍サイズを低減させること;(iv)腫瘍体積を低減させること;(v)末梢臓器中へのがん細胞浸潤を阻害すること、遅らせること、ある程度遅くすること、および/もしくは停止させること;(vi)腫瘍転移を阻害すること(例えば、ある程度遅くすこと、もしくは停止させること);(vii)腫瘍成長を阻害すること;(viii)腫瘍の発生および/もしくは再発を予防することもしくは遅延させること;(ix)がんの存在に関連するがんマーカーの低減;ならびに/または(ix)がんに関連する症状の1つもしくは複数をある程度緩和すること、の1つまたは複数を指す。「処置」はまた、処置を受けなかった場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味することができる。標準的な方法、例えば、精製酵素を用いたインビトロアッセイ、細胞ベースのアッセイ、動物モデル、またはヒト試験を用いて、この効果の大きさを測定することができる。例えば、患者のがん腫瘍の免疫組織化学解析により、本明細書に開示される組成物が患者に投与されるか、または対象において使用される場合に、腫瘍細胞アポトーシスの有意な増加が示され得る。通常、固形腫瘍として現れるがんのタイプに言及する場合、「臨床的に検出可能な」腫瘍とは、例えば、CATスキャン、MR画像法、X線、超音波、もしくは触診などの手順によって、腫瘍量に基づいて検出可能である、および/または患者から取得可能な試料中の1つもしくは複数のがん特異的抗原の発現のために検出可能である、腫瘍である。
【0049】
本明細書における端点による数値範囲の記述は、その範囲内に包含されるすべての数および分数を含む(例えば、1~5は、例えば、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を含む)。また、すべての数およびその分数は、用語「約」によって修飾されると推定されることも理解されるべきである。
【0050】
II. DPEP-1
DPEP-1は、腎ジペプチダーゼ、ミクロソームジペプチダーゼ、またはデヒドロペプチダーゼ-1としても知られ、現在EC 3.4.13.19(以前はEC 3.4.13.11)として分類されている、細胞膜グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー糖タンパク質である(参照により本明細書に組み入れられる、Keynan et al., in Hooper (Ed.) Zinc Metalloproteases in Health and Disease Taylor and Francis, London pages 285-309 (1996))。この亜鉛メタロプロテアーゼは、主に肺、肝臓、ならびに腎臓内皮および腎臓近位尿細管刷子縁を含む腎臓において発現しており(参照により本明細書に組み入れられる、Chaudhury et al, Cell 178(5), 1205-1221 (2019))、インビボでグルタチオンの腎代謝およびペプチジルロイコトリエンの肺代謝に関与している。加えて、DPEP-1は、哺乳動物β-ラクタマーゼの唯一の公知の例であり、グルタチオンおよびそのコンジュゲート、ならびにロイコトリエンD4の代謝にも関与している。DPEP-1は、ジスルフィド結合したホモ二量体を形成し、単量体の分子量は、起源の種に応じて約48~59 kDaの範囲である(参照により本明細書に組み入れられる、Keynan et al., Biochem. 35:12511-12517 (1996);また、実施例IVBも参照されたい)。
【0051】
ジペプチダーゼの発現は、いくつかの組織において検出されているが、主に肺、肝臓、および腎臓で発現している。脾臓、小腸、および脳由来の全抽出物において低レベルのDPEP-1活性の報告があるが、他の報告では、これらの臓器において検出可能な活性が見出されていない。マウスには、4つの別個のDPEP-1 mRNAが存在し、それらは、いくつかの臓器において差次的に発現している(Habib et al., J. Biol. Chem. 271:16273-16280 (1996))。ブタDPEP-1のN-結合型グリコシル化の性質および程度における臓器特異的な相違もまた、報告されている(Hooper et al., Biochem. J. 324:151-157 (1997))。
【0052】
DPEP-1活性のレベルは、腎臓および肺において最も高い(Hirota et al., Eur. J. Biochem. 160:521-525 (1986);Habib et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:4859-4863 (1998))。腎臓において、DPEP-1の発現は、近位尿細管の刷子縁領域における上皮細胞および毛細血管周囲の内皮細胞に限られている。肺において、DPEP-1の発現は、誘導気道、肺胞管、毛細血管、ならびに肺胞および末端気管支の基底膜の内皮細胞および上皮細胞を含む、多くの細胞タイプにおいて検出されている(Habib et al.、上記、1996;Inamura et al., Prostaglandins Leukotrienes and Essential Fatty Acids 50:85-92 (1994))。DPEP-1の発現はまた、ヒト気管における粘膜下微小血管の内皮細胞でも観察されている(Yamaya et al., Resp. Physiol. 111:101-109 (1998))。肺におけるDPEP-1の発現パターンは、GFE-1などの別のDPEP-1結合ペプチドの強い肺ホーミングと相関している(Rajotte & Ruoslahti, Journal of Biological Chemistry, 274(17), 11593-11598 (1999))。
【0053】
DPEP-1受容体は、血管内皮、または腎臓尿細管上皮などの他の実質細胞上に発現している、白血球接着分子または腫瘍細胞接着分子として機能する(Choudhury et al. 2019, "Dipeptidase-1 is an adhesion receptor for neutrophil recruitment in lungs and liver" Cell 178, 1205-1221;Lau, A, et al. "Dipeptidase-1 governs renal inflammation during ischemia reperfusion injury." Science advances 8.5 (2022): eabm0142を参照されたい)。接着分子は、動員プロセスに関与し、白血球および/または内皮細胞上に発現している表面結合糖タンパク質分子である。白血球動員における鍵となるステップは、内皮の表面上の白血球の堅固な接着であり、これにより、白血球は、一連の接着および活性化事象を通して血管壁中に遊走するように位置付けられて、炎症部位に対してその効果を発揮する。DPEP-1はまた、臓器傷害または感染中に自然免疫受容体として機能することができる。1つのそのような検出システムは、侵入する病原体の鍵となる分子シグネチャー、すなわち、病原体関連分子パターン(PAMP)、または内因性の損傷関連分子パターン(DAMP)を検出し、それによって、自然免疫系を誘発する、いわゆるパターン認識受容体(PRR)である(Janeway, C, et al., Annu. Rev. Immunol, 20 (2002), pp. 197-216)。PRRの例は、toll様受容体(TLR)であり、これは、LPS(TLR4)またはペプチドグリカン(TLR2)などの細菌産物またはウイルス産物を検出する(Bell, J.K. et al., Trends Immunol, 24 (2003), pp. 528-533)。
【0054】
TLRは、リガンド結合および自己調節に関係しているその細胞外ドメイン中のロイシンリッチリピート(LRR)を通して病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する、膜貫通受容体である(Kawai et al, Cell Death Differ. 13, 816-825, 2006)。TLRは、宿主防御応答の初期段階で微生物の構造を認識し、多くの免疫遺伝子および炎症遺伝子の発現を誘導し、その産物は、侵入する病原体を排除するために必要な免疫機構を駆動するようにあつらえられる。TLRはまた、損傷関連分子パターン(DAMP)の認識にも関係しており、腫瘍を促進する炎症の制御因子および腫瘍生存シグナルの促進因子としてますます認識されるようになっている。そのような細胞経路の他の活性化因子は、病原体および損傷関連細胞炎症を処置するための有効な治療標的を提供し得る。
【0055】
本明細書で用いられる場合、用語「ジペプチダーゼ」および「膜ジペプチダーゼ」は、「DPEP-1」と同義であり、現在EC 3.4.13.19(以前はEC 3.4.13.11)として分類され、腎ジペプチダーゼもしくはミクロソームジペプチダーゼ、またはデヒドロペプチダーゼ-1としても知られている、酵素を指す。
【0056】
DPEP-1酵素活性に関して本明細書で用いられる用語「選択的に阻害する」は、結合物質が、他のプロテアーゼなどの、関連するが異なる酵素と比較して、DPEP-1酵素に選択的である様式で、DPEP-1活性を減少させることを意味する。したがって、DPEP-1結合物質は、例えば、亜鉛メタロプロテアーゼの非特異的阻害剤とは別個である。したがって、DPEP-1結合物質は、DPEP-1活性を選択的に減少させさせることができるが、例えば、ジペプチジルペプチダーゼIVの活性に対しては、ほとんどまたは全く効果を有しない。1つの態様において、結合物質は、DPEP-1に対する結合を防ぐ競合阻害剤である。
【0057】
抗体または抗原結合断片を含む、DPEP-1結合物質に関して本明細書で用いられる用語「選択的に結合する」は、結合物質が、関連するが異なる受容体と比較して、DPEP-1受容体に選択的である様式で、DPEP-1媒介性白血球動員を減少させることを意味する。DPEP-1結合物質はまた、DPEP-1媒介性白血球動員を減少させることを指し、ここで、DPEP-1は、その酵素活性とは独立して、白血球または腫瘍細胞に対する接着分子として作用する。したがって、DPEP-1結合物質は、DPEP-1媒介性白血球動員を選択的に減少させることができるが、例えば、ジペプチジルペプチダーゼIVの活性に対しては、ほとんどまたは全く効果を有しない。1つの態様において、結合物質は、DPEP-1に対する結合を防ぐ競合阻害剤または非競合阻害剤である。
【0058】
1つの態様において、本明細書に開示されるDPEP-1結合物質は、DPEP受容体のアンタゴニストであり、すなわち、アゴニストまたはインバースアゴニストの相互作用を破壊し、その機能を阻害するように、受容体に結合することおよび受容体を遮断することによって、生物学的応答を遮断するかまたは減衰させる。特定の態様において、DPEP-1結合物質は、競合アンタゴニストであり、すなわち、活性部位に対してアゴニストと競合する。別の特定の態様において、DPEP-1結合物質は、非競合アンタゴニストであり、すなわち、活性部位以外の部位で結合する。
【0059】
本明細書で用いられる特異的結合という用語は、低親和性特異的結合および高親和性特異的結合の両方を含む。特異的結合は、例えば、約10-4 M~約10-7 Mの膜ジペプチダーゼに対するKDを有する、低親和性DPEP-1結合分子によって示されることができる。特異的結合はまた、高親和性DPEP-1結合分子、例えば、少なくとも約10-7 M、少なくとも約10-8 M、少なくとも約10-9 M、少なくとも約10-10 M、または少なくとも約10-11 Mもしくは10-12 M、またはそれ以上の膜ジペプチダーゼに対するKDを有するDPEP-1結合分子によって示されることができる。DPEP-1結合抗体は、例えば、約2×10-5 M~10-7 Mの膜ジペプチダーゼに対するKD、例えば、SPRによって測定される約10-6~10-7 M、もしくは約10-8 M~10-10 M、またはフローサイトメトリーによって測定される約10-9 M~5×10-7 MのKDを有することができる。肺または腎臓の内皮に選択的に結合する低親和性DPEP-1結合分子および高親和性DPEP-1結合分子は両方とも、本明細書に記載される方法において有用であり得る。
【0060】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびその抗原結合断片を含むように意図される。抗体は、組換え体供給源由来であってもよく、および/またはトランスジェニック動物において産生されてもよい。本明細書で用いられる用語「抗原結合断片」または「抗体断片」は、非限定的に、Fv(VLおよびVHを含む分子)、一本鎖Fv(scFV;ペプチドリンカーによって接続されたVLおよびVHを含む分子)、Fab、Fab'、F(ab')2、dsFv、ds-scFv、単一ドメイン抗体(sdAB;VHH、VH、VL、およびIgNAR抗原結合可変ドメイン(VNAR)などの、3つ以下のCDRを有する単一の可変ドメインを含む分子)、ならびにこれらの多価提示物を含むように意図される。また、その二量体、ミニボディ、ダイアボディ、および多量体、二重特異性および多重特異性抗原結合断片、ならびにドメイン抗体も含まれる。抗体は、従来の技法を用いて断片化することができる。例えば、F(ab')2断片は、抗体をペプシンで処理することによって生成させることができる。結果として生じたF(ab')2断片を、ジスルフィド架橋を還元するように処理して、Fab'断片を産生させることができる。パパイン消化は、Fab断片の形成をもたらすことができる。Fab、Fab'およびF(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、sdAB、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗原結合断片、および他の断片はまた、組換え技法によって合成することができる。
【0061】
DPEP-1に対する抗体は、当技術分野において公知の技法、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Kohler and Milstein, Nature 256, 495 (1975)によって、ならびに米国特許第RE 32,011号;第4,902,614号;第4,543,439号;および第4,411,993号において記載されているものを用いて調製され得る。(また参照により本明細書に組み入れられる、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, Kennett, McKearn, and Bechtol (eds.), 1980、およびAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988もまた参照されたい)。本開示の文脈内で、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗原結合断片(例えば、Fab、およびF(ab')2)、ならびに組換えで産生される結合パートナーを含むと理解される。
【0062】
単一ドメイン抗体(sdAB)は、単一の単量体可変抗体ドメインを有する。全抗体と同様に、これは、特異的な抗原に選択的に結合することができる。sdABは、わずか12~15 kDaの分子量を有するため、2本のタンパク質重鎖および2本の軽鎖から構成される従来の抗体(150~160 kDa)よりもはるかに小さく、Fab断片(約50 kDa、1本の軽鎖および半分の重鎖)ならびに一本鎖可変断片(約25 kDa、軽鎖由来の1つおよび重鎖由来の1つの、2つの可変ドメイン)よりもさらに小さい(参照により本明細書に組み入れられる、Harmsen MM and De Haard HJ (2007). "Properties, production, and applications of camelid single-domain antibody fragments". Applied Microbiology and Biotechnology. 77 (1): 13-22を参照されたい)。最初のsdABは、ラクダ科動物において見出される重鎖抗体から操作され、VHH断片と呼ばれる。ラクダ科(Camelidae)には、ラクダおよびラマが含まれる。ラクダ科の単一ドメイン抗体は、通常の抗体と同様に特異的であることが示されており、場合によってはより堅牢である。その上、それらは、伝統的な抗体に用いられるのと同じファージパンニング手順を用いて容易に単離され、それによりインビトロで、高濃度で培養することが可能になる。より小さいサイズおよび単一のドメインによって、これらの抗体は、バルク生産のために細菌細胞中に形質転換することがより容易である。sdABは、複数の薬学的応用について研究されており、急性冠症候群、がん、およびアルツハイマー病を含むがそれらに限定されない、無数の疾患の処置における使用について潜在性を有する。sdABは、その小さなサイズ、簡単な産生、および高い親和性のために、治療的使用における広い範囲の応用を可能にする。
【0063】
本開示において、sdABは、当技術分野において公知の技法を用いて、雄のラマ(Lama glama)を、組換えヒトDPEP-1エクトドメイン(17-385)(hDPEP-1;アクセッション番号:P16444;NCBI参照配列:NM_004413)で免疫することによって生成させた(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Baral TN, et al., (2013) Single-domain antibodies and their utility. Curr Protoc Immunol. 2013;103:2-17;Henry KA, et al, (2016) Isolation of TGF-β-neutralizing single-domain antibodies of predetermined epitope specificity using next-generation DNA sequencing. Protein Eng Des Sel. 29:439-43;Henry KA, et al (2015) Identification of cross-reactive single-domain antibodies against serum albumin using next-generation DNA sequencing. Protein Eng Des Sel. 28:379-83を参照されたい)。動物を、200μgのhDPEP-1で3回皮下免疫した(0、21、および28日目)。プライミング免疫は、完全フロイントアジュバントで補強し、ブースト免疫は、不完全フロイントアジュバントで補強した。血液試料を、0、28、および35日目に収集し、凝固後に血清を取得し、末梢血単核細胞を、密度勾配遠心分離によって精製した。結果として生じた血清は、hDPEP-1に特異的であり、2つの異なる供給源(CreativeBioMartおよびSinoBiologicals)由来のヒトDPEP-1に対して強い陽性免疫応答を有することが示された。
【0064】
例えば、ウサギまたはヤギなどの宿主において、宿主を、一般にアジュバントを伴う、かつ必要な場合には担体にカップリングした免疫原または免疫原断片で免疫することによって、ポリクローナル抗体を産生させるための他の方法が、当技術分野において公知であり;免疫原に対する抗体を、血清から収集する。さらに、ポリクローナル抗体を、単一特異性であるように吸収させることができる。すなわち、血清を、いかなる交差反応性抗体も血清中に残らず、単一特異性にするように、関連する免疫原に対して吸収させることができる。
【0065】
モノクローナル抗体を産生させるために、抗体産生細胞(リンパ球)を、免疫動物から採取し、標準的な体細胞融合手順によって骨髄腫細胞と融合させて、これらの細胞を不死化し、ハイブリドーマ細胞を生じさせることができる。そのような技法は、当技術分野において周知であり、例えば、KohlerおよびMilsteinによって最初に開発されたハイブリドーマ技法(Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity. Nature 256:495-497, 1975)、ならびにヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor, D, and Roder, J: The production of monoclonal antibodies from human lymphocytes. Immunology Today 4:3 72-79, 1983)、ヒトモノクローナル抗体を産生するEBVハイブリドーマ技法(Cole et al. Monoclonal Antibodies in Cancer Therapy (1985) Allen R. Bliss, Inc., pages 77-96)、およびコンビナトリアル抗体ライブラリのスクリーニング(Huse, W.D. et al, "Generation of a large combinatorial library of the immunoglobulin repertoire in phage lambda" Science 246:4935 1275-1282, 1989)などの他の技法である。ハイブリドーマ細胞を、タンパク質またはその断片と特異的に反応する抗体の産生について免疫化学的にスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体を単離することができる。
【0066】
キメラ抗体誘導体、すなわち、非ヒト動物可変領域およびヒト定常領域を組み合わせた抗体分子もまた、本開示の範囲内で企図される。キメラ抗体分子は、例えば、マウス、ラット、ラマ、または他の種の抗体由来の抗原結合ドメインを、ヒト定常領域と共に含むことができる。従来の方法が、標的を認識する免疫グロブリン可変領域を含有するキメラ抗体を作製するために用いられ得る(例えば、Morrison et al. (Chimeric Human Antibody Molecules: Mouse Antigen-Binding Domains with Human Constant Region Domains. PNAS 81:21 6851-6855, 1984)、およびTakeda et al. (Construction of chimaeric processed immunoglobulin genes containing mouse variable and human constant region sequences. Nature 314:452-454)、ならびにCabillyらの米国特許第4,816,567号;Bossらの米国特許第4,816,397号;Tanaguchiらの欧州特許公開EP171496;欧州特許公開0173494、英国特許GB 2177096Bの特許を参照されたい)。
【0067】
本明細書に記載されるような標的と特異的に反応するモノクローナル抗体またはキメラ抗体は、可変領域の一部、特に抗原結合ドメインの保存されたフレームワーク領域がヒト起源のものであり、超可変領域のみが非ヒト起源のものである、ヒト定常領域キメラを産生させることによって、さらにヒト化することができる。そのような免疫グロブリン分子は、当技術分野において公知の技法によって作製され得る(例えば、Teng et al. (Construction and Testing of Mouse--Human Heteromyelomas for Human Monoclonal Antibody Production. PNAS 80:12 7308-7312, 1983)、Kozbor et al.、上記;Olsson et al. (Methods in Enzymol, 92:3-16 1982) 、およびPCT公開WO92/06193またはEP 0239400)。ヒト化抗体はまた、商業的に産生させることができる(Scotgen Limited, 2 Holly Road, Twickenham, Middlesex, Great Britain)。
【0068】
組換え抗体を産生させるために(一般に、Huston et al, 1991;Johnson and Bird, 1991;Mernaugh and Mernaugh, 1995を参照されたい)、動物の抗体産生Bリンパ球、またはハイブリドーマ由来のメッセンジャーRNAを逆転写して、相補的DNA(cDNA)を得る。全長または部分長であることができる抗体cDNAを、増幅して、ファージまたはプラスミド中にクローニングする。cDNAは、分離されているかまたはリンカーによって連結された、重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAの部分長であることができる。抗体または抗原結合断片を、適当な発現系を用いて発現させて、組換え抗体を得る。抗体cDNAはまた、適切な発現ライブラリをスクリーニングすることによって得ることができる。
【0069】
III. DPEP-1結合物質および組成物
DPEP-1への結合またはその遮断は、ヒト対象において障害を処置する際または予防する際に有用性を有する。例えば、DPEP-1への結合またはその遮断は、例えば敗血症または急性腎障害中の、肺および腎臓における炎症媒介性疾患を低減させるために有用性を有する。DPEP-1への結合またはその遮断はまた、腫瘍転移を低減させるために有用性を有する。抗体を含むがそれに限定されない、DPEP-1に結合するかまたはそれを遮断する組成物が、本明細書に開示される。DPEP-1は、治療的介入の標的であり、その酵素活性とは独立して、好中球隔離のための物理的接着受容体としての役割を有する(参照により本明細書に組み入れられる、Choudhury, S.R, et al., Cell 178.5 (2019): 1205-1221を参照されたい)。特に、DPEP-1は、肺および肝臓の内皮上の主要な接着受容体であり、例えば、好中球が駆動する肺の炎症性疾患についての治療標的である。DPEP-1はまた、細菌内毒素リポ多糖(LPS)による刺激後に、肝血管系および肺血管系内で好中球に対する接着受容体として作用し、肺内皮上で特定される主要な好中球接着受容体に相当する。ペプチドLSALTは、DPEP-1の結合物質であり、DPEP-1を標的とすることを通して、肺血管系において好中球のLPS誘導性動員を阻害すること、内毒素血症マウスモデルにおいて治療的有益性を提供して、全生存期間を増大させること、マウスにおいて虚血再灌流誘導性急性腎障害を抑止すること、転移性がん細胞を注射した動物において腫瘍負荷を低減させることにおいて、有用であると示されている(Choudhury, S.R, et al., Cell 178.5 (2019): 1205-1221;Lau, A, et al. Science advances 8.5 (2022): eabm0142;US20200223888A1;US10493127B2を参照されたく、各々は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。これらは、DPEP-1に結合する現在開示される抗体が、類似した治療効果を有し、本開示に記載される疾患または障害を処置または予防する際にヒト対象において臨床的有益性を提供することを予測するための、科学的根拠となる。
【0070】
A. DPEP-1結合抗体
DPEP-1に結合する抗体などの結合物質が、本明細書に開示される。これらの方法において使用することができるこれらの結合抗体のバリアントおよび改変された態様もまた、提供される。1つの態様において、抗体は、DPEP-1の活性を調節し、より詳しくは、DPEP-1の活性を競合的または非競合的のいずれかで阻害する。
【0071】
フェーズディスプレイライブラリおよびパンニング戦略を用いて、ヒトDPEP-1(hDPEP-1)に結合する単一ドメイン抗体(sdAB;VHHとしても知られている;すなわち、sdABP01~09;SEQ ID NO: 1~9)を特定した。これらのsdABは、hDPEP-1を提示するHEK293T細胞を認識することができ(sdABP01~07;SEQ ID NO: 1~7)、良好な熱安定性、良好なSPR結合親和性、細胞に提示されるhDPEP-1に対する良好な用量反応結合を有することが示され、エピトープビニングによって特徴決定された(SPRによって:sdABP01~07;ELISAによって:sdABP01~04および07~09)。sdABP01~09の各々は、ビオチン化アクセプターペプチド(BAP)およびHis6タグを含有する。BAPおよびHis6タグを含まないこれらのsdABP01~09のコア配列を、SEQ ID NO: 12~20に示す。
【0072】
一態様において、抗原結合断片は、Fv、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2、dsFv、ds-scFv、sdAB、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、または多量体抗原結合断片である。一態様において、抗原結合断片は、sdABである。
【0073】
いくつかの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、プロテアーゼ耐性、血清安定性、および/または生物学的利用能を増大させるために、1つまたは複数の修飾を含有する。いくつかの態様において、修飾は、抗体または抗原結合断片のペグ化、アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、プレニル化、またはD-アミノ酸および/もしくは非天然アミノ酸での置換から選択される。抗体または抗原結合断片は、安定性、プロテアーゼ耐性、血清安定性、および/または生物学的利用能を増大させるために、例えば、IMGT(ImMunoGeneTics)54位および78位に、1つまたは複数の非正規のジスルフィド結合を含有することができる(参照により本明細書に組み入れられる、Hussack, G et al. "Engineered single-domain antibodies with high protease resistance and thermal stability." PloS ONE 6.11 (2011): e28218を参照されたい)。したがって、いくつかの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、安定性、プロテアーゼ耐性、血清安定性、および/または生物学的利用能を増大させるために、1つまたは複数の非正規のジスルフィド結合を含有する。いくつかの態様において、1つまたは複数の非正規のジスルフィド結合は、IMGT 54位および78位にある。
【0074】
ある特定の態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、1つまたは複数のL-アミノ酸、D-アミノ酸、および/または非標準アミノ酸を含有する。
【0075】
様々な態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、C末端、N末端、またはC末端およびN末端の両方に、1つまたは複数のアミノ酸残基または類似体をさらに含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片の活性を有する配列は、これらの追加アミノ酸の付加によって評価できるほどの影響は受けない。
【0076】
別の態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、N末端に1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基をさらに含む。
【0077】
様々な態様において、抗体または抗原結合断片は、X-抗体もしくはX-抗原結合断片、XX-抗体もしくはXX-抗原結合断片、XXX-抗体もしくはXXX-抗原結合断片、XXXX-抗体もしくはXXXX-抗原結合断片、またはXXXXX-抗体もしくはXXXXX-抗原結合断片から選択され、ここで、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であるか、またはXは、本明細書に記載され、当業者に知られているような非従来のアミノ酸またはアミノ酸類似体である。
【0078】
別の態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、C末端に1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基をさらに含み、抗体-Xもしくは抗原結合断片-X、抗体-XXもしくは抗原結合断片-XX、抗体-XXXもしくは抗原結合断片-XXX、抗体-XXXXもしくは抗原結合断片-XXXX、または抗体-XXXXXもしくは抗原結合断片-XXXXXから選択され、ここで、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であるか、またはXは、本明細書に記載され、当業者に知られているような非従来のアミノ酸またはアミノ酸類似体である。
【0079】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片のN末端およびC末端に1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基をさらに含み、X-抗体もしくは抗原結合断片-X、X-抗体もしくは抗原結合断片-XX、X-抗体もしくは抗原結合断片-XXX、X-抗体もしくは抗原結合断片-XXXX、X-抗体もしくは抗原結合断片-XXXXX、XX-抗体もしくは抗原結合断片-X、XX-抗体もしくは抗原結合断片-XX、XX-抗体もしくは抗原結合断片-XXX、XX-抗体もしくは抗原結合断片-XXXX、XX-抗体もしくは抗原結合断片-XXXXX、XXX-抗体もしくは抗原結合断片-X、XXX-抗体もしくは抗原結合断片-XX、XXX-抗体もしくは抗原結合断片-XXX、XXX-抗体もしくは抗原結合断片-XXXX、XXX-抗体もしくは抗原結合断片-XXXXX、XXXX-抗体もしくは抗原結合断片-X、XXXX-抗体もしくは抗原結合断片-XX、XXXX-抗体もしくは抗原結合断片-XXX、XXXX-抗体もしくは抗原結合断片-XXXX、XXXX-抗体もしくは抗原結合断片-XXXXX、XXXXX-抗体もしくは抗原結合断片-X、XXXXX-抗体もしくは抗原結合断片-XX、XXXXX-抗体もしくは抗原結合断片-XXX、XXXXX-抗体もしくは抗原結合断片-XXXX、またはXXXXX-抗体もしくは抗原結合断片-XXXXXから選択され、ここで、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であるか、またはXは、本明細書に記載され、当業者に知られているような非従来のアミノ酸またはアミノ酸類似体である。
【0080】
DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片の有効量を含む組成物が、本明細書に開示され、該DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、sdABP01、sdABP02、sdABP03、sdABP04、sdABP05、sdABP06、sdABP07、sdABP08、もしくはsdABP09、または誘導体のいずれか1つを含む。
【0081】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 12~20および48~56のいずれか1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 13、15、または18のいずれか1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列における任意の相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0082】
当技術分野において理解されるように、抗体のCDR領域を描写するアミノ酸の位置または境界は、文脈および当技術分野において公知の様々な定義に応じて変動する場合がある。可変領域内のいくつかの位置は、その位置が、1つの基準セットの下ではCDR領域内にあるが、別の基準セットの下ではCDR領域外にあるとみなすことができる、ハイブリッドCDRととらえられる場合がある。いくつかの態様において、前述の可変軽鎖および可変重鎖中のCDRは、IMGT、Kabat、Chothia、AbM、Contact、もしくはParatomeスキーム、または当技術分野において公知の別のスキームを用いて描写することができる。CDRを定義するための「Kabat」アプローチは、配列可変性を用い、最も一般的に用いられる(参照により本明細書に組み入れられる、Kabat et al., 1991,"Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed." NIH 1:688-96l)。「Chothia」は、構造ループの場所を用いる(参照により本明細書に組み入れられる、Chothia and Lesk, 1987, J Mol Biol. 196:901-17;Chothia et al., 1992, J. Mol. Biol. 227: 799-817)。IMGTナンバリングスキームは、Chothiaのナンバリングスキームの改作である(参照により本明細書に組み入れられる、Lefranc et al., 1999, Nucleic Acids Research, 27:209-212; http://imgt.cines.fr)。「AbM」によって定義されるCDRは、KabatとChothiaとの折衷案であり、Oxford Molecular AbM抗体モデリングソフトウェアを用いて描写される(参照により本明細書に組み入れられる、Martin et al., 1989, PNAS, 86:9268を参照されたく、www.bioinf-org.uk/absもまた参照されたい)。「Contact」CDR描写は、既知の抗体-抗原結晶構造の解析に基づく(例えば、MacCallum et al., 1996, J. Mol. Biol. 262, 732-45を参照されたい)。「Paratome」アプローチは、既知の抗体-抗原複合体の非重複セットの構造アラインメントに由来するコンセンサス領域のセットに基づく、計算プログラムを含む(参照により本明細書に組み入れられる、Kunik et al., 2012, Nucl Acids Res. W521-4;また、www.ofranlab.org/paratome/も参照されたい)。本明細書に記載されるCDRは、IMGT定義に基づくが、他の方法に基づくCDRが、本明細書に包含されることになると理解されるべきである。いくつかの態様において、本明細書に記載されるCDRは、IMGTナンバリングに基づく。
【0083】
したがって、本開示は、
(i)SEQ ID NO: 21、22、および23;
(ii)SEQ ID NO: 24、25、および26;
(iii)SEQ ID NO: 27、28、および29;
(iv)SEQ ID NO: 30、31、および32;
(v)SEQ ID NO: 33、34、および35;
(vi)SEQ ID NO: 36、37、および38;
(vii)SEQ ID NO: 39、40、および41;
(viii)SEQ ID NO: 42、43、および44;または
(ix)SEQ ID NO: 45、46、および47
を含む、DPEP-1に結合する結合物質を提供する。
【0084】
いくつかの態様において、結合物質は、抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 21、22、および23のアミノ酸配列を有する、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 24、25、および26のアミノ酸配列を有する、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 27、28、および29のアミノ酸配列を有する、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 30、31、および32のアミノ酸配列を有する、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 33、34、および35のアミノ酸配列を有する、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 36、37、および38のアミノ酸配列を有する、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 39、40、および41のアミノ酸配列を有する、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 42、43、および44のアミノ酸配列を有する、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、結合物質は、SEQ ID NO: 45、46、および47のアミノ酸配列を有する、3つの一連のCDRを含む。
【0085】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 21、22、および23のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む、sdABである。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 21、22、および23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0086】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 13に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 24、25、および26のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む、sdABである。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 13に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 24、25、および26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0087】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 14に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 27、28、および29のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む、sdABである。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 14に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 27、28、および29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0088】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 15に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 30、31、および32のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む、sdABである。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 15に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 30、31、および32のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0089】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 33、34、および35のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む、sdABである。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 33、34、および35のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0090】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 17に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 17のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 36、37、および38のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む、sdABである。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 17に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 36、37、および38のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0091】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 18に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 39、40、および41のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む、sdABである。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 18に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 39、40、および41のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0092】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 19に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 19のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 42、43、および44のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む、sdABである。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 19に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 42、43、および44のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0093】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 20に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 45、46、および47のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む、sdABである。1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 20に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 45、46、および47のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域に限定される。
【0094】
いくつかの態様において、結合物質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはその抗原結合断片である。一態様において、結合物質は、Fcドメインに融合した抗原結合断片である。いくつかの態様において、結合物質は、抗原結合断片であり、かつ該抗原結合断片は、Fv、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2、dsFv、ds-scFv、sdAB、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、または多量体抗原結合断片である。いくつかの態様において、抗原結合断片は、sdABである。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、D-アミノ酸、修飾アミノ酸、アミノ酸類似体、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む。いくつかの態様において、修飾アミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または他の化学基での置換からなる群より選択される修飾を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、ペグ化、アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、またはプレニル化によって修飾される。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、ヒト、マウス、ラマ、ウサギ、ヒツジ、またはヤギの抗体またはその抗原結合断片である。
【0095】
いくつかの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 12~20および48~56のいずれか1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該抗体または抗原結合断片は、1つまたは複数のD-アミノ酸またはL-アミノ酸で置換される。他の態様において、本明細書で提供されるDPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、N末端および/またはC末端から1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が除去されることができる。
【0096】
1つの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 1~9のいずれか1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 1~9のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0097】
いくつかの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、ビオチン化アクセプターペプチド(BAP)および/またはHis6タグを含む。いくつかの態様において、BAPは、
のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、His6タグは、HHHHHH(SEQ ID NO: 11)のアミノ配列を含む。いくつかの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、BAPおよびHis6タグを含む。いくつかの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 10および11のアミノ配列を含む。いくつかの態様において、BAPおよびHis6タグは、LEのアミノ酸配列を有するスペーサーによって連結される。いくつかの態様において、BAPおよびHis6タグは、抗体またはその抗原結合断片のC末端にある。
【0098】
B. 修飾された抗体および抗体類似体
様々な態様において、抗体またはその抗原結合断片は、抗体中のカルボキシ末端アミノ酸および/もしくはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸を含むか、または、PEG化、メチル化、アミド化、アセチル化、プレニル化、および/もしくは抗体もしくは抗原結合断片の循環半減期を、その活性に有害な影響を及ぼすことなく変化させることができる他の化学基での置換によって修飾することができる。非従来または非天然のアミノ酸の例には、シトルリン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、4-(E)-ブテニル-4(R)-メチル-N-メチルスレオニン(MeBmt)、N-メチル-ロイシン(MeLeu)、アミノイソ酪酸、スタチン、およびN-メチル-アラニン(MeAla)が含まれるが、それらに限定されない。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与し得る。ある特定の態様において、アミノ酸は、一般構造H2N--C(H)(R)--COOHを有する。ある特定の態様において、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。ある特定の態様において、アミノ酸は、合成または非天然のアミノ酸(例えば、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸)であり;いくつかの態様において、アミノ酸は、D-アミノ酸であり;ある特定の態様において、アミノ酸は、L-アミノ酸である。
【0099】
断片結晶化可能領域(Fc領域またはFcドメイン)は、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体と相互作用する、抗体の尾部領域である。この特性により、抗体は、免疫系を活性化することが可能になる。IgG、IgA、およびIgD抗体アイソタイプにおいて、Fcドメインは、抗体の2本の重鎖の第2および第3の定常ドメインに由来する、2つの同一のタンパク質断片から構成される。IgMおよびIgEにおいて、それらのFcドメインは、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定数ドメイン(CHドメイン2~4)を含有する。本明細書に記載される抗体またはその抗原結合断片は、Fcドメインに融合していることができ、例えば、二重特異性/バイパラトピック(biparatopic)分子を生成するために、多量体であることもできる。いくつかの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、Fcドメインに融合している。いくつかの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、多量体である。いくつかの態様において、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、Fcドメインに融合しており、多量体である。いくつかの態様において、Fcドメインは、IgG、IgA、IgD、IgM、またはIgE由来である。いくつかの態様において、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。いくつかの態様において、Fcドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来である。
【0100】
また、DPEP-1に結合する抗体またはその抗原結合断片およびFcドメインを含む融合タンパク質も提供される。いくつかの態様において、融合タンパク質は、多量体である。いくつかの態様において、結合物質は、DPEP-1に結合する抗原結合断片およびFcドメインの融合タンパク質である。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 12~20のいずれか1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 12~20のいずれか1つのアミノ酸配列およびFcドメインを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 48~56のいずれか1つに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 48~56のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0101】
1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 48に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 48のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 21、22、および23のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、ならびにFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 21、22、および23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 48に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 21、22、および23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 48のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域またはFcドメインに限定される。
【0102】
1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 13に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 49に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 49のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 24、25、および26のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、ならびにFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 13に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 24、25、および26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 13のアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 49に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 24、25、および26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 49のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域またはFcドメインに限定される。
【0103】
1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 14に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 50に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 50のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 27、28、および29のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、ならびにFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 14に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 27、28、および29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 14のアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 50に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 27、28、および29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 50のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域またはFcドメインに限定される。
【0104】
1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 15に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 51に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 51のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 30、31、および32のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、ならびにFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 15に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 30、31、および32のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 51に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 30、31、および32のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 51のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域またはFcドメインに限定される。
【0105】
1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 52に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 52のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 33、34、および35のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、ならびにFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 33、34、および35のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 52に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 33、34、および35のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 52のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域またはFcドメインに限定される。
【0106】
1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 17に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 53に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 53のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 36、37、および38のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、ならびにFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 17に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 36、37、および38のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 17のアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 53に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 36、37、および38のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 53のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域またはFcドメインに限定される。
【0107】
1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 18に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 54に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 54のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 39、40、および41のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、ならびにFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 18に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 39、40、および41のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 18のアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 54に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 39、40、および41のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 54のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域またはFcドメインに限定される。
【0108】
1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 19に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 55に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 55のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 42、43、および44のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、ならびにFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 19に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 42、43、および44のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 19のアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 55に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 42、43、および44のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 55のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域またはFcドメインに限定される。
【0109】
1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 20に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 56に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 56のアミノ酸配列を含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 45、46、および47のいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDR、ならびにFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 20に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列およびFcドメインを含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 45、56、および47のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 20のアミノ酸配列およびFcドメインを含む。1つの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 56に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、該融合タンパク質は、SEQ ID NO: 45、46、および47のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、3つの一連のCDRを含む。いくつかの態様において、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 56のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列中のいずれかの相違は、フレームワーク領域またはFcドメインに限定される。
【0110】
B. DPEP-1結合抗体の合理的な設計および構造-機能解析
様々な技法により、タンパク質構造についての様々なおよび相補的な情報が与えられる。一次構造は、生化学的方法により、タンパク質からのアミノ酸配列の直接決定によって、または対応する遺伝子もしくはcDNAのヌクレオチド配列からのいずれかで得られる。大きなタンパク質または凝集物の四次構造はまた、電子顕微鏡によって決定することができる。タンパク質内の原子の配置について詳細な情報を必要とする、二次構造および三次構造を得るために、X線結晶学が一般的に用いられる。抗体または断片の構造および機能を評価するための他の構造技術には、水素重水素交換質量分析、バイオNMR、およびクライオEMが含まれる。
【0111】
X線結晶学によってタンパク質の三次元構造を解明するための第一の前提条件は、X線を強く回折する秩序だった結晶である。結晶学的方法は、多くの同一分子の規則的な繰り返すアレイ上にX線のビームを向けて、X線がそこから、個々の分子の構造を引き出すことができるパターンで回折されるようにする。球状タンパク質分子の秩序だった結晶は、不規則な表面を有する大きな球形または楕円形の物体であり、その結晶は、個々の分子の間に形成される大きな穴またはチャネルを含有する。これらのチャネルは、通常、結晶の体積の半分よりも多くを占め、無秩序な溶媒分子で満たされている。タンパク質分子は、少数の小さな領域だけで、互いに接触している。これが、X線結晶学によって決定されるタンパク質の構造が、一般に溶液中のタンパク質の構造と同じである、1つの理由である。
【0112】
X線結晶学を用いて、標的生体分子の既知のリガンドではない化合物を、標的生体分子に結合するその能力についてスクリーニングすることができる。方法は、標的生体分子の結晶を得ること;標的生体分子結晶を、1つまたは複数の試験試料に曝露すること;およびX線結晶回折パターンを得て、リガンド/受容体複合体が形成されるかどうかを判定することを含む。
【0113】
DPEP-1受容体は、1つもしくは複数の試験試料の存在下で生体分子を共結晶化すること、または1つもしくは複数の試験試料の溶液に生体分子結晶を浸すことのいずれかによって、試験抗体に曝露することができる。別の態様において、リガンド/受容体複合体からの構造情報を用いて、より堅く結合する、より特異的に結合する、より良好な生物学的活性を有する、またはより良好な安全性プロファイルを有するリガンドを設計する。これらには、低分子、または抗体などの他の生物治療薬が含まれ得る。
【0114】
本明細書に記載される抗体は、質量分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、およびアミノ酸分析(AAA)を用いて、完全に特徴決定することができる。
【0115】
質量分析は、タンパク質の構造を決定する際に用いられる、タンパク質のアミノ酸残基の間の距離制約を得るために用いられる。
【0116】
いかなる特定の機構にも束縛されないが、三次構造を安定化させる抗体または断片の構造、および任意の修飾は、DPEP-1に対する結合を増強すると考えられる。
【0117】
1つの態様において、DPEP-1抗体または抗原結合断片に結合する鍵となるDPEP-1エピトープを決定することをまた、DPEP-1、白血球接着、およびがん転移を標的とする治療用抗体を開発するために用いることができる。そのような方法の例には、DPEP-1抗体または抗原結合断片に結合したDPEP-1の結晶化、およびX線回折による解析が含まれるが、それらに限定されない。別の態様において、DPEP-1に結合したDPEP-1抗体または抗原結合断片の光化学架橋、それに続くプロテアーゼ消化および質量分析(Ngai et al, J Biol Chem, 269(3), 2165-2172 (1994))が、相互作用に関与する鍵となるDPEP-1抗体または抗原結合断片のアミノ酸およびDPEP-1ドメインを特定するために用いられる。様々な態様において、インシリコモデリングが、新規薬学的組成物を開発するために行われる。
【0118】
別段定義されない限り、本明細書で用いられる科学的および技術的な用語および命名法は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、細胞培養、感染、分子生物学の方法などの手順は、当技術分野において用いられる一般的な方法である。そのような標準的な技法は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001;およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 2001などの参照マニュアルにおいて見出すことができる。
【0119】
IV. 薬学的製剤および薬剤
別の局面において、本明細書に記載される化合物または作用物質、ならびにそのバリアントおよび改変体は、治療的使用のための薬学的組成物として提供される。1つの態様において、薬学的製剤は、単離された抗体または抗原結合断片を含み、表1に列記される配列を含む。別の態様において、薬学的製剤は、ファージウイルスに挿入物として含有される単離された抗体もしくは抗原結合断片を含み、かつ/または、抗体もしくは抗原結合断片配列のN末端および/もしくはC末端に1、2、3、4、5個の追加のアミノ酸残基をさらに含んでもよい。
【0120】
代表的な送達レジメンには、経口、非経口(皮下、筋肉内、および静脈内注射を含む)、直腸、頬(舌下を含む)、経皮、吸入、眼、ならびに鼻内が含まれる。1つの態様において、化合物の送達は、制御放出注射可能製剤の皮下注射を必要とする。いくつかの態様において、本明細書に記載される化合物は、皮下、鼻内、および吸入投与に有用である。
【0121】
正確な用量および組成、ならびに最も適切な送達レジメンの選択は、とりわけ、選択された抗体の薬理学的特性、処置されている状態の性質および重症度、ならびにレシピエントの身体的状態および精神的鋭敏さによって影響を受ける。追加的に、投与の経路は、吸収される物質の異なる量を結果としてもたらす。異なる経路を通した化合物の投与についての生物学的利用能は、特に変動的であり、1%未満から100%近くまでの量が見られる。典型的には、静脈内、腹腔内、または皮下注射以外の経路からの生物学的利用能は、50%以下である。
【0122】
本開示の薬学的組成物または製剤は、薬学的組成物を調製するために、生理学的に許容される担体または賦形剤と共に製剤化することができる。担体および組成物は、無菌であることができる。製剤は、投与の様式、例えば、静脈内投与または皮下投与に適するべきである。組成物を製剤化する方法は、当技術分野において公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceuticals Sciences, 17th Edition, Mack Publishing Co., (Alfonso R. Gennaro, editor) (1989)を参照されたい)。
【0123】
適している薬学的に許容される担体には、水、塩溶液(例えば、NaCl)、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロース、またはデンプン、糖類、例えばマンニトール、スクロースなど、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。薬学的調製物は、望ましい場合には、活性化合物と有害に反応しないかまたはその活性を干渉しない補助剤(例えば、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色物質、および/または芳香物質など)と混合することができる。一態様において、静脈内投与に適している水溶性担体が用いられる。薬学的に許容される塩は、毒性副作用を伴うことなく、親抗体またはその抗原結合断片の望ましい生物学的活性を保持する。
【0124】
組成物または薬剤は、望ましい場合には、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤もまた含有することができる。組成物は、液体溶液、懸濁液、乳濁液、徐放性製剤、または粉末であることができる。組成物はまた、トリグリセリドなどの伝統的な結合剤および担体と共に、坐薬として製剤化することができる。
【0125】
組成物または薬剤は、ヒトへの投与に適合した薬学的組成物として、日常的な手順に従って製剤化することができる。例えば、一態様において、静脈内投与用の組成物は、典型的には、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤、および注射の部位で痛みを和らげるための局所麻酔薬を含んでもよい。一般に、成分は、単位剤形で、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたは小袋などの密閉型容器における乾燥した凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、別々にまたは一緒に混合してのいずれかで供給される。組成物が点滴によって投与されるべき場合、それは、滅菌の医薬グレードの水、生理食塩水、またはデキストロース/水を含有する点滴ボトルで調剤することができる。組成物が注射によって投与される場合、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供して、成分が投与前に混合され得るようにすることができる。
【0126】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス溶液、他の水性の生理学的に平衡な溶液、油、エステル、およびグリコールなどであるがそれらに限定されない、液体担体を含む。
【0127】
本明細書に記載されるような、抗体または抗原結合断片を含む化合物は、中性または塩の形態として製剤化することができる。上述のように、薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの遊離アミノ基で形成されるもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの遊離カルボキシル基で形成されるものが含まれる。
【0128】
本開示の薬学的製剤は、結合物質として、抗体または抗原結合断片を含有し、これは、賦形剤と混合されるか、賦形剤によって希釈されるか、または担体内に封入されてもよく、周知の方法および薬学的組成物に従って、カプセル、小袋、紙、または他の容器の形態にあることができる。組成物は、非経口、静脈内、皮下、または筋肉内投与を含む、結合物質、抗体、または抗原結合断片の投与に適している任意の経路によって投与され得る。典型的には、結合物質、抗体、または抗原結合断片を、0.5~2 ml以下で必要とされる用量を提供するのに十分な濃度で、滅菌注射可能溶液に溶解または懸濁する。非経口投与に適している本開示の薬学的組成物は、本開示の1つまたは複数の化合物を、1つまたは複数の薬学的に許容される滅菌等張の水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくは乳濁液、または使用直前に滅菌の注射可能な溶液または分散液に再構成され得る滅菌粉末と組み合わせて含み、これは、抗酸化剤、緩衝剤、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有し得る。
【0129】
注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーにおいて薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比率、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー注射可能製剤はまた、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を閉じ込めることによって調製される。注射可能な物質は、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過によって滅菌することができる。
【0130】
薬学的組成物は、単位用量または複数用量の密封容器、例えば、アンプルおよびバイアルにおいて与えられてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存されてもよい。即時の注射溶液および懸濁液は、上記のタイプの滅菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製されてもよい。
【0131】
V. 処置および使用の方法
処置および使用の方法は、特に、炎症が組織または臓器に対する虚血/再灌流傷害によって引き起こされる疾患および状態を含む、炎症に関連する疾患および状態について企図される。臓器における虚血およびそれに続く再灌流は、その臓器および他の臓器の組織において構造的および機能的な異常を生じる。好中球浸潤、出血、浮腫、および壊死はすべて、虚血/再灌流傷害後の組織において観察される。DPEP-1標的は、炎症についてのこれまでに記載されていない経路を表し、これは、ジペプチダーゼ阻害剤、例えば本明細書に記載されるものが、炎症によって媒介される疾患および状態を処置または予防するために使用される機会を開く。
【0132】
したがって、1つの態様において、その必要があるヒト対象において炎症性障害を処置または予防する方法であって、本開示の結合物質または薬学的組成物の有効量を該対象に投与する工程を含む方法が提供される。別の態様において、その必要があるヒト対象において炎症性障害を処置または予防するための、本開示の結合物質または薬学的組成物の使用が提供される。さらなる態様において、その必要があるヒト対象において炎症性障害を処置または予防するための薬剤の製造のための、本開示の結合物質または薬学的組成物の使用が提供される。さらなる態様において、その必要があるヒト対象において炎症性障害を処置または予防する際の使用のための、本開示の結合物質または薬学的組成物が提供される。
【0133】
炎症に直接関連する一般的な疾患および医学的問題の非限定的なリストには、関節炎、腎不全、狼瘡、喘息、乾癬、膵炎、アレルギー、線維症、手術合併症、貧血、線維筋痛症が含まれる。慢性炎症に関連する他の疾患には、慢性炎症によって引き起こされるがん;慢性炎症が冠動脈アテローム性動脈硬化症に寄与する心臓発作;慢性炎症が脳細胞を破壊するアルツハイマー病;慢性炎症が心筋の消耗を引き起こすうっ血性心不全;慢性炎症が血栓塞栓事象を促進する脳卒中;および慢性炎症が心臓弁を損傷する大動脈弁狭窄症が含まれる。動脈硬化症、骨粗鬆症、パーキンソン病、感染症(敗血症)、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、ならびに多発性硬化症。
【0134】
特定の態様において、本明細書に記載される方法または使用は、敗血症誘導性傷害、例えば、細菌性またはウイルス性の敗血症誘導性傷害、急性臓器傷害(例えば、低血圧の状況における急性腎障害)などであるがそれらに限定されない、状態に関連する損傷から組織および臓器を保護するために有用である。
【0135】
他の態様において、本明細書に記載される方法または使用は、敗血症誘導性状態、例えば、細菌性もしくはウイルス性の敗血症誘導性状態、急性呼吸窮迫症候群、脳症、敗血症誘導性肝不全、敗血症誘導性腎不全、または敗血症誘導性心不全に関連する損傷から組織および臓器を保護するために有用である。コロナウイルス感染症2019(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる伝染病であり、COVID-19敗血症誘導性状態を結果としてもたらす敗血症などの合併症につながる場合がある。したがって、いくつかの態様において、ウイルス性の敗血症誘導性状態は、COVID-19敗血症誘導性状態を含む。
【0136】
他の態様において、本明細書に記載される方法または使用は、周術期の手順、心不全、肝不全、脳卒中、心筋梗塞、ショック肝、脊髄損傷、脳損傷などであるがそれらに限定されない、虚血再灌流傷害に関連する損傷から組織および臓器を保護するために有用である。これらの結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物はまた、高リスク患者において虚血再灌流傷害を予防または処置するために使用することができる。
【0137】
他の態様において、方法または使用はまた、血管形成術もしくは血栓溶解療法の前、または移植、もしくは手術後の虚血臓器の再灌流、血管形成術もしくは血栓溶解療法の後に有用である。
【0138】
外科手術手順およびこれらの手順中に虚血再灌流傷害のリスクがある臓器の他の例には、頸動脈手術、脳血管手術、ならびに心臓および大動脈の手術中の脳損傷;心臓手術または大きな腹部もしくは胸部の手術中の急性腎障害;肺および心臓の手術中の血栓塞栓切除術または心肺バイパスの使用後の肺損傷;血管再生術(冠動脈バイパス移植手術)後の心臓損傷;腸間膜動脈に対する手術後の腸損傷;ならびに皮膚移植片の採取後の皮膚損傷が含まれるが、それらに限定されない。
【0139】
本開示の結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物のこの方法または使用が有用である追加の外科手術手順には、移植のためのドナー臓器の採取が含まれる。他の態様において、方法または使用はまた、ドナーの調達、エクスビボでの取り扱い、および移植レシピエントへの移植の最中の、同種移植臓器の保護に有用である。本開示の結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物は、移植されるドナー臓器を採取する前に、その最中に、またはその後に、虚血が予想される外科手術手順の前にまたはその最中に、投与または使用することができる。
【0140】
したがって、本開示は、対象において虚血再灌流傷害を予防、限定、または処置するための方法であって、虚血性事象を経験しているか、または虚血事象が差し迫っているか、または虚血事象を有するリスクがある対象を特定する工程、および本明細書に記載される結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物の治療的有効量または予防的有効量を投与する工程を含む方法に関する。本開示はまた、対象において虚血再灌流傷害を予防、限定、または処置するための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用に関する。いくつかの態様において、対象は、虚血性事象を経験しているか、虚血性事象が、対象において差し迫っているか、または対象は、虚血性事象を有するリスクがある。本開示はまた、対象において虚血再灌流傷害を予防、限定、または処置するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用に関する。いくつかの態様において、対象は、虚血性事象を経験しているか、虚血性事象が、対象において差し迫っているか、または対象は、虚血性事象を有するリスクがある。本開示は、さらに、対象において虚血再灌流傷害を予防、限定、または処置する際の使用のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物に関する。いくつかの態様において、対象は、虚血性事象を経験しているか、虚血性事象が、対象において差し迫っているか、または対象は、虚血性事象を有するリスクがある。
【0141】
1つの態様において、ドナーから臓器を摘出するための方法または使用であって、臓器の摘出の前に、本明細書に開示されるDPEP-1に結合する結合物質、抗体、その抗原結合断片、または組成物を該ドナーに投与または使用することを含む方法または使用が開示される。任意で、移植臓器のレシピエントのための方法または使用であって、臓器移植の前に、DPEP-1に結合する結合物質、抗体、その抗原結合断片、または組成物を投与または使用することを含む方法または使用が開示される。方法または使用は、1つまたは複数の炎症マーカーのレベルをモニターして、1つまたは複数のマーカーが、摘出の前に指定されたレベルよりも下であるかどうかを判定すること、すなわち、臓器があらかじめ決められたマーカープロファイルを満たすかどうかを判定することを、さらに含んでもよい。
【0142】
特定の態様において、臓器は、心臓、肝臓、腎臓、脳、腸(大腸または小腸)、膵臓、肺、胃、膀胱、脾臓、卵巣、精巣、骨格筋、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0143】
特定の態様において、ドナーは、マージナルドナーである。1つの態様において、マージナルドナーは、複雑な生存ドナー(complex living donor)、心臓が拍動していないドナー(non-heart beating donor)(NHBD)、または死亡心臓ドナー(deceased cardiac donor)からなる群より選択される。
【0144】
特定の態様において、複雑な生存ドナーは、高齢、例えば、約60歳よりも上、約65歳よりも上、または約70歳よりも上である。
【0145】
別の特定の態様において、複雑な生存ドナーは、肥満、高血圧症、糖尿病、腎石症(腎結石)、伝染性感染症(例えば、ウイルス感染)、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のリスク因子を有する。
【0146】
1つの態様において、方法または使用は、臓器を保存することをさらに含む。任意で、1つまたは複数の炎症マーカーのレベルを、臓器の保存中に1回または複数回測定してもよい。
【0147】
別の態様において、方法または使用は、例えば、移植によって、臓器をレシピエントに提供することをさらに含む。任意で、1つまたは複数の炎症マーカーのレベルを、臓器が提供された後、例えば、再灌流直後の期間中に測定してもよい。
【0148】
炎症マーカーは、IL-12、IP-10、IL-1β、IL-5、GM-CSF、IFNγ、またはIL-1αであることができるが、それらに限定されない。1つの態様において、1つまたは複数の炎症マーカーは、IL-12、IP-10、IL-1β、IL-5、GM-CSF、IFNγ、またはIL-1αからなる群より選択される。
【0149】
任意で、いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の作用物質(例えば、抗酸化剤)が、臓器の摘出の前に、ドナーに投与され得るか、またはドナーにおいて使用され得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の作用物質(例えば、抗酸化剤)が、臓器の移植の前に、レシピエントに投与され得るか、またはレシピエントにおいて使用され得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の作用物質が、DPEP-1に結合する結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物の投与の前に、それと同時に、またはその後に、投与され得るか、または使用され得る。いくつかの態様において、追加の作用物質は、例えば、低分子、生物学的作用物質、または治療ガスであってもよい。
【0150】
ある特定の態様において、本明細書に開示される方法または使用は、移植片機能の改善、移植片機能不全の低減、移植片生存(長期生存を含む)の改善、移植片劣化の低減、移植片機能遅延(DGF)の発生率の低減などを非限定的に含む、より有益な効果の1つを結果としてもたらし得る。
【0151】
1つの態様において、方法または使用は、DPEP-1に結合する結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物が、摘出または移植の前に投与または使用されない移植片の生存と比較して、移植片生存の増大を結果としてもたらす。移植片生存は、例えば、移植後6ヶ月、1年、または3年で測定してもよい。特定の態様において、移植片生存は、約5%、約10%、約15%、約20%、もしくは約25%、またはそれ以上増大する。
【0152】
1つの態様において、臓器を保蔵する方法または使用であって、保存される臓器(すなわち、移植を待つ摘出された臓器)を、本明細書に開示されるDPEP-1に結合する結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物に曝露することを含む方法または使用が開示される。任意で、方法または使用は、炎症マーカーのレベルを1回または複数回モニターして、それらが指定されたレベルよりも下にあたるかどうかを判定することをさらに含む。ある特定の態様において、臓器は、臓器移植溶液中に保存される。ある特定の態様において、臓器は、約0℃~4℃の間の温度で保存される。別の態様において、臓器は、約37℃の温度、すなわち、非高温(non-thermic)条件下で保存される。ある特定の態様において、保存される臓器は、臓器灌流システムに接続されるか、またはそれに関連する。
【0153】
特定の態様において、本明細書に開示される臓器を保蔵する方法または使用は、特定の臓器について、障害を伴うことなく、例えば、移植片機能遅延(DGF)の増大を伴うことなく、最大低温虚血時間の増大を可能にする。ある特定の態様において、約5~約50%の間、より詳しくは、約5~約25%の間、または約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、もしくは約30%、またはそれ以上の増大である。
【0154】
別の態様において、臓器移植患者において虚血再灌流関連傷害を予防する方法であって、臓器を患者に提供する前に、それと同時に、またはその後に、本明細書に開示されるDPEP-1に結合する結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物を投与する工程を含む方法が提供される。別の態様において、臓器移植患者において虚血再灌流関連傷害を予防するための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用であって、臓器を患者に提供する前に、それと同時に、またはその後に、本明細書に開示される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を使用することを含む使用が提供される。別の態様において、臓器移植患者において虚血再灌流関連傷害を予防するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用であって、臓器を患者に提供する前の、それと同時の、またはその後の使用のための、本明細書に開示される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を含む使用が提供される。別の態様において、臓器を患者に提供する前に、それと同時に、またはその後に、本明細書に開示される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を使用することを含む、臓器移植患者において虚血再灌流関連傷害を予防する際の使用のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物が提供される。
【0155】
別の態様において、本明細書に開示されるDPEP-1に結合する結合物質、抗体、その抗原結合断片、または組成物を含む臓器採取キットが開示される。任意で、臓器採取キットは、より多くの追加の作用物質を含有してもよい。
【0156】
いかなる特定の機構にも束縛されないが、本明細書で提供される結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物の保護効果は、DPEP-1標的での結合、ならびにDPEP-1により調節される白血球動員、炎症、および腫瘍細胞接着の直接の低減を通して媒介される。炎症媒介性疾患および腫瘍転移に対する本明細書に記載されるこれらの効果は、DPEP-1ジペプチダーゼ活性または尿細管輸送の調節におけるその役割とは独立して起こる。以前の研究では、抗生物質化合物の半減期を延長して細菌感染症を処置するために、DPEP-1アンタゴニストの組み合わせが必要とされた。他の研究では、化学療法剤、または他の腎毒性物質の腎尿細管取り込みを防ぐことによって臓器損傷を予防または処置するために、DPEP-1アンタゴニストであるシラスタチンを用いている(Humanes et al., Kidney Intl, 82:652-553 (2012);Koller et al., Biochem Biophys Res Comm 131(2):974-979 (1985))。そのため、ある特定の態様において、本明細書に記載される結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物は、腎毒性化合物または化学療法剤などの毒性化合物によって直接誘導される組織損傷を処置するかまたは低減させるために使用されない。他の態様において、本明細書に記載される結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物は、β-ラクタム抗生物質化合物と組み合わせて投与または使用されない。他の態様において、本明細書に記載される結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物は、カルバペネム系抗生物質化合物と組み合わせて投与または使用されない。それにもかかわらず、本明細書に記載される結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物は、腎毒性化合物または化学療法剤などの毒性化合物によって引き起こされる腎臓の炎症を処置するかまたは低減させるために使用することができる。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載される結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物は、腎毒性化合物または化学療法剤などの毒性化合物によって誘導される炎症を処置するかまたは低減させるために使用される。
【0157】
本開示は、炎症を低減させるかまたは調節する方法であって、対象において炎症を低減させるかまたは調節するために、DPEP-1に結合する結合物質、抗体、その抗原結合断片、または組成物の有効量を投与する工程を含む方法を提供する。本開示はまた、対象において炎症を低減させるかまたは調節するための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示はまた、炎症を低減させるかまたは調節するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示は、さらに、炎症を低減させるかまたは調節する際の使用のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を提供する。
【0158】
1つの態様において、組成物は、結合物質、抗体もしくは抗原結合断片、および/または低分子化合物を含む。
【0159】
1つの態様において、炎症は、胃炎、痛風、痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、腎不全、狼瘡、喘息、乾癬、膵炎、アレルギー、線維症、手術合併症、貧血、線維筋痛症、がん、心臓発作、うっ血性心不全、脳卒中、大動脈弁、動脈硬化症、骨粗鬆症、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍、慢性気管支炎、喘息、アレルギー、急性肺傷害、肺炎症、気道過敏症、血管炎、敗血症性ショック、炎症性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、および炎症性腸疾患からなる群より選択される炎症性障害に関連する。いくつかの態様において、炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎である。
【0160】
本開示は、対象の白血球動員を遮断する方法であって、白血球動員を遮断するために、DPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の有効量を投与する工程を含む方法を提供する。本開示はまた、対象の白血球動員を遮断するための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示はまた、対象の白血球動員を遮断するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示は、さらに、対象の白血球動員を遮断する際の使用のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を提供する。
【0161】
1つの態様において、方法または使用は、炎症の低減を必要とすることについて、診断検査によって処置の必要がある対象を特定する工程をさらに含む。いくつかの態様において、処置の適応症には、急性腎障害のリスクがある任意の患者における(手術前、または静脈内造影剤の投与もしくは使用前)、または尿排出量の減少もしくは血清クレアチニンの増加を有する任意の患者における、例えば、全身感染症もしくは低血圧の患者における臨床的徴候および症状が含まれるが、それらに限定されない。
【0162】
本開示は、対象において腫瘍転移を低減させるかまたは予防するための方法であって、DPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の有効量を投与する工程を含み、それによって、腫瘍転移を低減させるかまたは予防する方法を提供する。本開示はまた、対象において腫瘍転移を低減させるかまたは予防するための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示はまた、対象において腫瘍転移を低減させるかまたは予防するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示は、さらに、対象において腫瘍転移を低減させるかまたは予防する際の使用のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を提供する。1つの態様において、DPEP-1は、その酵素活性とは独立して、腫瘍細胞上の白血球に対する接着分子として作用し、本明細書に記載される選択的DPEP-1結合物質によるDPEP-1の結合は、腫瘍転移を低減させるかまたは予防する。別の態様において、DPEP-1は、腫瘍転移を促進する炎症に寄与し、選択的DPEP-1結合物質によるDPEP-1の結合は、腫瘍転移を低減させるかまたは予防する。
【0163】
ある特定の態様において、腫瘍は、転移の可能性を有するか、または現在転移が可能である、がんを引き起こすことが知られている腫瘍から選択される。例えば、がんは、膵臓がん、腎臓がん、泌尿生殖器がん、黒色腫、前立腺癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌、脳がん、卵巣癌、子宮頸がん、子宮内膜癌、原発性腹膜癌、中皮腫、眼がん、筋肉、リンパ腫、食道がん、胃がん、肝臓がん、小腸腫瘍、結腸がん、精巣がん、皮膚がん、または副腎癌であることができる。一態様において、腎臓がんは、腎細胞癌(RCC)である。一態様において、泌尿生殖器がんは、膀胱、腎臓、骨盤、または尿管における尿路上皮癌である。一態様において、肺癌は、非小細胞癌、小細胞癌、または神経内分泌癌である。一態様において、神経内分泌癌は、カルチノイド腫瘍である。一態様において、乳癌は、乳管癌、小葉癌、または乳管癌と小葉癌との混合型である。一態様において、甲状腺癌は、甲状腺乳頭癌、濾胞癌、または髄様癌である。一態様において、脳がんは、髄膜腫、星細胞腫、膠芽腫、小脳腫瘍、または髄芽腫である。一態様において、卵巣癌は、漿液型、粘液型、または子宮内膜型である。一態様において、子宮頸がんは、上皮内扁平上皮癌、浸潤性扁平上皮癌、または子宮頸管内腺癌である。一態様において、子宮内膜癌は、子宮内膜型、漿液型、または粘液型である。一態様において、中皮腫は、胸膜または腹膜である。一態様において、眼がんは、網膜芽細胞腫である。一態様において、筋肉がんは、横紋肉腫または平滑筋肉腫である。一態様において、食道がんは、腺癌または扁平上皮癌である。一態様において、胃がんは、胃腺癌または消化管間質腫瘍である。一態様において、肝臓がんは、肝細胞癌または胆管がんである。一態様において、小腸腫瘍は、小腸間質腫瘍またはカルチノイド腫瘍である。一態様において、結腸がんは、結腸の腺癌、結腸高度異形成、または結腸カルチノイド腫瘍である。一態様において、皮膚がんは、黒色腫または扁平上皮癌である。1つの態様において、方法または使用は、患者の腫瘍上のDPEP-1結合分子の存在を判定することによって、腫瘍転移の低減または予防について必要性を判定するために、診断検査を通して処置の必要がある対象を特定する工程をさらに含む。
【0164】
本開示は、対象において敗血症中の白血球動員および炎症を低減させるかまたは予防するための方法であって、DPEP-1に結合する結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物の有効量を投与する工程を含み、それによって、敗血症の臓器合併症を低減させるかまたは予防する方法を提供する。本開示はまた、対象において敗血症中の白血球動員および炎症を低減させるかまたは予防するための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。いくつかの態様において、使用は、敗血症の臓器合併症を低減させるかまたは予防する。本開示はまた、対象において敗血症中の白血球動員および炎症を低減させるかまたは予防するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。いくつかの態様において、薬剤は、敗血症の臓器合併症を低減させるかまたは予防する。本開示は、さらに、対象において敗血症中の白血球動員および炎症を低減させるかまたは予防する際の使用のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を提供する。いくつかの態様において、DPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、敗血症の臓器合併症を低減させるかまたは予防する際の使用のためのものである。
【0165】
1つの態様において、方法または使用は、虚血再灌流傷害の低減または予防について必要性を判定するために、診断検査を通して処置の必要がある対象を特定する工程をさらに含む。処置の適応症には、虚血再灌流傷害の臨床的徴候および症状、または虚血再灌流傷害のリスクが高い外科手術手順を受けることが含まれるが、それらに限定されない。
【0166】
本開示は、対象において虚血再灌流傷害の症状を処置する方法であって、DPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の薬学的有効量を患者に投与する工程を含む方法を含む。本開示はまた、対象において虚血再灌流傷害の症状を処置するための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を含む。本開示はまた、対象において虚血再灌流傷害の症状を処置するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を含む。本開示は、さらに、対象において虚血再灌流傷害の症状を処置する際の使用のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を含む。
【0167】
1つの態様において、結合物質、抗体もしくは抗原結合断片、または組成物は、虚血再灌流傷害の症状が低減するかまたは改善されるまで、投与または使用される。
【0168】
1つの態様において、単離された結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、またはそのバリアントは、約0.1μg/kg~100 mg/kgの間の投与量で投与または使用される。1つの態様において、投与量は、2μg~10 gの間である。
【0169】
本開示は、対象において虚血再灌流傷害関連障害を低減させるかまたは予防するための方法であって、DPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の有効量を投与する工程を含み、それによって、虚血再灌流傷害を低減させるかまたは予防する方法を提供する。本開示はまた、対象において虚血再灌流傷害関連障害を低減させるかまたは予防するための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示はまた、対象において虚血再灌流傷害関連障害を低減させるかまたは予防するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示は、さらに、対象において虚血再灌流傷害関連障害を低減させるかまたは予防する際の使用のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を提供する。
【0170】
1つの態様において、方法または使用は、虚血再灌流傷害に関連する白血球動員および炎症を低減させるかまたは予防する。
【0171】
1つの態様において、虚血再灌流傷害関連障害は、臓器および組織における虚血性事象および虚血後事象に関連し、障害は、血栓性脳卒中、心筋梗塞、狭心症、塞栓性血管閉塞、末梢血管不全、内臓動脈閉塞、血栓による動脈閉塞、塞栓症による動脈閉塞、非閉塞性プロセスによる動脈閉塞、腸間膜動脈閉塞、腸間膜静脈閉塞;腸間膜微小循環に対する虚血再灌流傷害;虚血性急性腎不全、脳組織に対する虚血再灌流傷害、腸重積、血行動態性ショック、組織機能障害、臓器不全、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、血栓症、血小板凝集、ショック肝、脊髄損傷、または脳損傷からなる群より選択される。一態様において、非閉塞性プロセスによる動脈閉塞は、低い腸間膜流量後または敗血症後の動脈閉塞である。一態様において、臓器不全は、心不全、肝不全、腎不全などである。一態様において、虚血再灌流傷害は、外科手術手順に起因する。一態様において、外科手術手順は、周術期の手順、心臓手術、臓器手術、臓器移植、血管造影、心肺蘇生法、または脳蘇生法である。一態様において、虚血再灌流傷害は、移植のためのドナー臓器の採取に関連する。一態様において、虚血再灌流傷害は、ドナーの調達、エクスビボでの取り扱い、または移植レシピエントへの移植の最中に同種移植臓器に生じる。
【0172】
1つの態様において、虚血再灌流傷害は、移植のためのドナー臓器の採取に関連する。
【0173】
1つの態様において、虚血再灌流傷害は、ドナーの調達、エクスビボでの取り扱い、または移植レシピエントへの移植の最中に同種移植臓器に生じる。
【0174】
様々な態様において、結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物は、(i)移植されるドナー臓器を採取する前に、その最中に、もしくはその後に、または(ii)虚血が予想される外科手術手順の前にもしくはその最中に、投与または使用することができる。
【0175】
本開示は、対象において急性腎障害を低減させるかまたは予防するための方法であって、DPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくは抗原結合断片、または組成物の有効量を投与する工程を含み、それによって、急性腎障害を低減させるかまたは予防する方法を提供する。本開示はまた、対象において急性腎障害を低減させるかまたは予防するための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示はまた、対象において急性腎障害を低減させるかまたは予防するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の使用を提供する。本開示は、さらに、対象において急性腎障害を低減させるかまたは予防する際の使用のための、本明細書に記載される結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を提供する。1つの態様において、方法または使用は、急性腎障害に関連する白血球動員および炎症を低減させるかまたは予防する。
【0176】
1つの態様において、方法または使用は、急性腎障害の低減または予防について必要性を判定するために、診断検査を通して処置の必要がある対象を特定する工程を含む。急性腎障害は、虚血再灌流、敗血症、色素、毒素、または薬物によって引き起こされる場合がある。1つの態様において、方法または使用は、急性腎障害を処置することを含む。1つの態様において、急性腎障害は、虚血再灌流誘導性状態、色素誘導性状態、毒素誘導性状態、または薬物誘導性状態を含む。1つの態様において、急性腎障害は、虚血再灌流の結果である。1つの態様において、急性腎障害は、敗血症の結果である。1つの態様において、急性腎障害は、色素の結果である。1つの態様において、急性腎障害は、毒素の結果である。1つの態様において、急性腎障害は、薬物の結果である。
【0177】
急性腎障害を引き起こす色素は、ミオグロビン、またはヘモグロビンの成分であるヘムであることができる。1つの態様において、急性腎障害は、毒素誘導性腎障害である。1つの態様において、急性腎障害は、薬物誘導性腎障害である。1つの態様において、急性腎障害は、色素誘導性腎障害である。1つの態様において、色素は、ミオグロビンまたはヘモグロビンである。1つの態様において、色素は、ヘムである。
【0178】
1つの態様において、急性腎障害は、造影剤誘導性腎障害である。
【0179】
炎症はまた、慢性腎臓病において役割を果たし、DPEP-1は、慢性腎臓病において炎症を低減させる標的であり得る。したがって、1つの態様において、方法または使用は、慢性腎臓病の低減または予防について必要性を判定するために、診断検査を通して処置の必要がある対象を含む。1つの態様において、方法または使用は、慢性腎臓病を処置することを含む。1つの態様において、慢性腎臓病は、糖尿病、高血圧症、または糸球体腎炎に関連する。1つの態様において、慢性腎臓病は、血管疾患、糸球体疾患、尿細管間質性疾患、または閉塞性腎症である。1つの態様において、慢性腎臓病は、血管疾患である。1つの態様において、血管疾患は、大血管疾患または小血管疾患である。1つの態様において、大血管疾患は、両側腎動脈狭窄症である。1つの態様において、小血管疾患は、虚血性腎症、溶血性尿毒症症候群、または血管炎である。1つの態様において、慢性腎臓病は、糸球体疾患である。1つの態様において、糸球体疾患は、原発性糸球体疾患または続発性糸球体疾患である。1つの態様において、原発性糸球体疾患は、巣状分節性糸球体硬化症またはIgA腎症である。1つの態様において、続発性糸球体疾患は、糖尿病性腎症またはループス腎炎である。1つの態様において、慢性腎臓病は、尿細管間質性疾患である。1つの態様において、尿細管間質性疾患は、薬物誘導性慢性尿細管間質性腎炎、毒素誘導性慢性尿細管間質性腎炎、または逆流性腎症である。1つの態様において、慢性腎臓病は、閉塞性腎症である。1つの態様において、閉塞性腎症は、両側腎結石または前立腺の良性前立腺肥大症である。1つの態様において、慢性腎臓病は、多嚢胞性腎臓病、17q12微小欠失症候群、またはメソアメリカ腎症である。
【0180】
ある特定の態様において、結合物質、抗体、抗原結合断片、または組成物は、1つまたは複数の追加の治療剤と組み合わせて投与または使用され得る。共投与または使用には、別々の組成物における同時投与または使用(並行投与とも呼ばれる)、別々の組成物における異なる時間での投与または使用、または、両方の作用物質が存在する組成物における投与または使用が含まれる
【0181】
1つの態様において、少なくとも1つの追加の治療剤は、化学療法剤または抗増殖剤、抗ウイルス剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤、皮膚軟化薬、全身光線療法、ソラレン光化学療法、レーザー療法、ホルモン補充療法、抗炎症剤、免疫調節剤または免疫抑制剤、神経栄養因子、心血管疾患を処置するための剤、糖尿病を処置するための剤、免疫不全障害を処置するための剤、および免疫チェックポイント阻害剤からなる群より選択される。
【0182】
VI. 投与の経路
本明細書に記載されるようなDPEP-1に結合する結合物質、抗体、またはその抗原結合断片を含む組成物は、任意の適切な経路によって投与または使用され得る。いくつかの態様において、結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、非経口的に投与または使用される。いくつかの態様において、非経口投与は、静脈内、皮内、吸入、経皮(局所)、眼内、筋肉内、皮下、筋肉内、および/または経粘膜投与から選択される。いくつかの態様において、本明細書に記載されるような組成物は、皮下に投与または使用される。本明細書で用いられる場合、用語「皮下組織」は、皮膚のすぐ真下の緩い不規則な結合組織の層として定義される。例えば、皮下投与は、大腿領域、腹部領域、臀部領域、または肩甲骨領域を含むがそれらに限定されない区域中に、組成物を注射することによって行われ得る。いくつかの態様において、本明細書に記載されるような結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、静脈内に投与または使用される。他の態様において、本明細書に記載されるようなDPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、心臓または筋肉(例えば、筋肉内)、腫瘍(腫瘍内)、神経系(例えば、脳中への直接注射;脳室内;くも膜下腔内)などの、標的組織に対する直接投与によって投与または使用される。あるいは、本明細書に記載されるようなDPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物(または本明細書に記載されるようなDPEP-1結合抗体もしくはその抗原結合断片を含有する組成物もしくは薬剤)は、吸入によって、非経口的に、皮内に、経皮的に、または経粘膜的に(例えば、経口的にもしくは経鼻的に)投与または使用することができる。望ましい場合には、1つよりも多い経路を同時に使用することができる。
【0183】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるようなDPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、経口的に投与または使用される。いくつかの態様において、本開示は、(a)DPEP-1に結合する結合物質、抗体、またはその抗原結合断片、(b)少なくとも1つの薬学的に許容されるpH低下剤、(c)DPEP-1に結合する結合物質、抗体、またはその抗原結合断片の生物学的利用能を促進するのに有効な少なくとも1つの吸収エンハンサー、および(d)保護ビヒクルを含む、経口投与のための本明細書に記載されるようなDPEP-1に結合する結合物質、抗体、またはその抗原結合断片の固体剤形を提供する。いくつかの態様において、固体剤形は、カプセルまたは錠剤である。
【0184】
VII. 投薬
関心対象のDPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の有効量が、処置において使用される。本開示に従って使用される抗体またはその断片の投与量は、抗体またはその断片および処置されている状態に応じて変動する。用量は、患者に許容できない毒性を生じることなく、処置される疾患の症状または徴候を改善するのに十分である。一般に、抗体またはその断片の有効量は、症状の主観的な緩和または客観的に特定可能な改善のいずれかを提供するものである。
【0185】
様々な態様は、異なる投薬レジメンを含む。いくつかの態様において、DPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、持続注入を介して投与または使用される。いくつかの態様において、持続注入は、静脈内である。他の態様において、持続注入は、皮下である。代替的にまたは追加的に、いくつかの態様において、DPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物は、隔月、毎月、毎月2回、3週間毎、隔週、毎週、毎週2回、毎週3回、毎日、毎日2回、または別の臨床的に望ましい投薬スケジュールで投与される。単一の対象についての投薬レジメンは、固定された間隔である必要はなく、対象の必要性に応じて経時的に変動させることができる。
【0186】
1つの態様において、局所投与量は、治療結果が達成されるまで、少なくとも1日1回投与または使用される。投与量は、1日2回投与または使用することができるが、より多いかまたはより少ない頻度の投薬を、投与することができる。ひとたび治療結果が達成されると、結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物を、漸減または中止することができる。時折、副作用が、治療の中止を正当化する。関心対象の結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または組成物の有効量が、処置において使用される。
【0187】
本開示の抗体またはその断片は、医薬として使用される場合、薬学的組成物の形態で投与または使用され、これらの薬学的組成物は、本開示のさらなる態様を表す。これらの抗体またはその断片は、経口、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、および鼻腔内を含む様々な経路によって、または気管内滴注もしくはエアロゾル吸入を介して、投与または使用することができる。
【0188】
DPEP-1に結合する抗体、その断片、または組成物は、例えば、肝臓中の、組織の炎症を低減させるか、または炎症プロファイルを改変するのに有用である。投与の様式は、化合物の適用によって定義され、最適な用量を見出すための臨床試験の方法によって決定することができる。
【0189】
1つの態様において、投与量は、約0.01 mg/kg~約100 mg/kgの間の活性結合物質、抗体、またはその抗原結合断片、約0.01 mg/kg~約50 mg/kgの間、約0.01 mg/kg~約25 mg/kgの間、または約0.5 mg/kg~約10 mg/kgの間である。
【0190】
他の態様において、投与量は、約0.1 mg/kg~約100 mg/kgの間、約0.1 mg/kg~約50 mg/kgの間、約0.1 mg/kg~約25 mg/kgの間、または約0.1 mg/kg~約10 mg/kgの間である。
【0191】
他の態様において、投与量は、約0.5 mg/kg~約100 mg/kg、約0.5 mg/kg~約50 mg/kg、約0.5 mg/kg~約25 mg/kg、または約0.5 mg/kg~約10 mg/kgの間である。
【0192】
他の態様において、投与量は、約1.0 mg/kg~約25 mg/kgの間、約1.0 mg/kg~約50 mg/kgの間、約1.0 mg/kg~約70 mg/kgの間、約1.0 mg/kg~約100 mg/kgの間、約5.0 mg/kg~約25 mg/kgの間、約5.0 mg/kg~約50 mg/kgの間、約5.0 mg/kg~約70 mg/kgの間、約5.0 mg/kg~約100 mg/kgの間、約10.0 mg/kg~約25 mg/kgの間、約10.0 mg/kg~約50 mg/kgの間、約10.0 mg/kg~約70 mg/kgの間、または約10.0 mg/kg~約100 mg/kgの間である。
【0193】
1つの態様において、投与量は、約0.2 mg~約10 gの間の活性結合物質、抗体、またはその抗原結合断片、約0.2 mg~約5 gの間、約0.2 mg~約2.5 gの間、約0.2 mg~約2 gの間、約0.2 mg~約1 gの間、約0.2 mg~約500 mgの間、または約0.2 mg~約250 mgの間である。
【0194】
1つの態様において、投与量は、約2 mg~約10 gの間の活性結合物質、抗体、またはその抗原結合断片、約2 mg~約5 gの間、約2 mg~約2.5 gの間、約2 mg~約2 gの間、約2 mg~約1 gの間、約2 mg~約500 mgの間、または約2 mg~約250 mgの間である。
【0195】
1つの態様において、投与量は、約10 mg~約10 gの間の活性結合物質、抗体、またはその抗原結合断片、約10 mg~約5 gの間、約10 mg~約2.5 gの間、約10 mg~約2 gの間、約10 mg~約1 gの間、約10 mg~約500 mgの間、または約10 mg~約250 mgの間である。
【0196】
他の態様において、投与量は、約20 mg~約500 mgの間、約20 mg~約1 gの間、約20 mg~約1.4 gの間、約20 mg~約1.5 gの間、約20 mg~約2 gの間、約20 mg~約2.5 gの間、約20 mg~約5 gの間、約20 mg~約10 gの間、約20 mg~約500 mgの間、約100 mg~約1 gの間、約100 mg~約1.5 gの間、約100 mg~約2 gの間、約100 mg~約2.5 gの間、約100 mg~約5 gの間、約100 mg~約10 gの間、約200 mg~約1 gの間、約200 mg~約1.5 gの間、約200 mg~約2 gの間、約200 mg~約2.5 gの間、約200 mg~約5 gの間、または約200 mg~約10 gの間である。
【0197】
他の態様において、投与量は、約2μg、5μg、10μg、20μg、25μg、50μg、75μg、0.1 mg、0.2 mg、約0.5 mg、約1 mg、約2 mg、約2.5 mg、約5 mg、約10 mg、約20 mg、約25 mg、約50 mg、約75 mg、約100 mg、約150 mg、約200 mg、約250 mg、約300 mg、約400 mg、約500 mg、約750 mg、約800 mg、約1 g、約1.5 g、約2 g、約2.5 g、約3 g、約4 g、約5 g、約6 g、約7 g、約8 g、約9 g、または約10 gである。
【0198】
別の態様において、投与量は、約50μM~約500μMの間である。
【0199】
様々な態様において、本明細書に記載される組成物またはその塩は、1日当たり約0.001~約20 mg/kg体重の間、1日当たり約0.01~約10 mg/kg体重の間、1日当たり約0.1~約1000μg/kg体重の間、または1日当たり約0.1~約100μg/kg体重の間の量で投与または使用される。投与の経路または用法は、変動する。例えば、本明細書に記載される抗体またはその塩は、皮下注射によって、1日当たり約0.1~約1000μg/kg体重の間、または1日当たり約0.1~約100μg/kg体重の間の量で投与または使用される。例として、50 kgのヒト女性対象について、活性成分の1日用量は、約5~約5000μg、または皮下注射によって約5~約5000μgである。投与または使用の経路、抗体の効力、観察される薬物動態プロファイルおよび適用可能な生物学的利用能、ならびに活性物質および処置されている疾患に応じて、異なる用量が必要とされるであろう。投与または使用が吸入による代替の態様において、1日用量は、1000~約20,000μg、1日2回である。他の態様において、投与量は、約2μg/日~約10 g/日の間、約2μg/日、5μg/日、10μg/日、20μg/日、25μg/日、50μg/日、75μg/日、0.1 mg/日、0.2 mg/日、約0.5 mg/日、約1 mg/日、約2 mg/日、約2.5 mg/日、約5 mg/日、約10 mg/日、約20 mg/日、約25 mg/日、約50 mg/日、約75 mg/日、約100 mg/日、約150 mg/日、約200 mg/日、約250 mg/日、約300 mg/日、約400 mg/日、約500 mg/日、約750 mg/日、約800 mg/日、約1 g/日、約1.5 g/日、約2 g/日、約2.5 g/日、約3 g/日、約4 g/日、約5 g/日、約6 g/日、約7 g/日、約8 g/日、約9 g/日、または約10 g/日である。
【0200】
ウマ、イヌ、およびウシなどの他の哺乳動物において、より高い用量が必要とされ得る。この投与量は、最も有効な結果を達成するために必要とされるように、単回投与によって、複数回適用によって、または制御放出を介して、従来の薬学的組成物において送達され得る。
【0201】
VIII. キット
いくつかの態様において、本開示は、さらに、本明細書に記載されるDPEP-1に結合する結合物質、抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的組成物、ならびにその再構成(凍結乾燥の場合)および/または使用のための説明書を含有する、キットまたは他の製造品を提供する。キットまたは他の製造品は、容器、シリンジ、バイアル、および投与(例えば、皮下、吸入による)に有用な任意の他の物品、デバイス、または装置を含んでもよい。適している容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ(例えば、プレフィルドシリンジ)、アンプル、カートリッジ、リザーバー、またはlyo-jectが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。いくつかの態様において、容器は、プレフィルドシリンジである。適しているプレフィルドシリンジには、焼成シリコーンコーティングを伴うホウケイ酸ガラスシリンジ、シリコーンが噴霧されたホウケイ酸ガラスシリンジ、またはシリコーンを伴わないプラスチック樹脂シリンジが含まれるが、それらに限定されない。
【0202】
典型的には、容器は、製剤、ならびに再構成および/または使用の指示を示し得る、容器上のまたは容器に付随したラベルを保持し得る。例えば、ラベルは、製剤が、上記のような濃度に再構成されることを示し得る。ラベルは、製剤が、例えば、皮下投与に有用であるか、またはそのために意図されることを、さらに示し得る。いくつかの態様において、容器は、DPEP-1に結合する抗体、その抗原結合断片、または組成物を含有する安定な製剤の単一用量を含有し得る。様々な態様において、安定な製剤の単一用量は、約15 ml、約10 ml、約5.0 ml、約4.0 ml、約3.5 ml、約3.0 ml、約2.5 ml、約2.0 ml、約1.5 ml、約1.0 ml、または約0.5 ml未満の体積で存在する。あるいは、製剤を保持する容器は、製剤の反復投与(例えば、2~6回の投与)を可能にするマルチユースバイアルであってもよい。キットまたは他の製造品は、適している希釈剤(例えば、BWFI、生理食塩水、緩衝生理食塩水)を含む第2の容器をさらに含んでもよい。希釈剤と製剤との混合時に、再構成された製剤中の最終タンパク質濃度は、少なくとも約0.2μg/ml(例えば、少なくとも約0.5μg/ml、少なくとも約1μg/ml、少なくとも約2μg/ml、少なくとも約5μg/ml、少なくとも約10μg/ml、少なくとも約20μg/ml、少なくとも約25μg/ml、少なくとも約50μg/ml、少なくとも約75μg/ml、少なくとも約0.1 mg/ml、少なくとも約0.2 mg/ml、少なくとも約0.5 mg/ml、少なくとも約1 mg/ml、少なくとも約2 mg/ml、少なくとも約2.5 mg/ml、少なくとも約5 mg/ml、少なくとも約10 mg/ml、少なくとも約20 mg/ml、少なくとも約30 mg/ml、少なくとも約40 mg/ml、少なくとも約50 mg/ml、少なくとも約75 mg/ml、少なくとも約100 mg/ml)であり得る。キットまたは他の製造品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用説明書を伴う添付文書を含む、商業的なおよび使用者の観点から望ましい他の材料を、さらに含んでもよい。いくつかの態様において、キットまたは他の製造品は、自己投与のための説明書を含んでもよい。
【0203】
IX. スクリーニング方法
DPEP-1、例えば、ヒトDPEP-1に結合する抗体を含む、組成物をスクリーニングするための方法が、本明細書に開示される。
【0204】
1つの態様において、方法は、(a)試験抗体のライブラリを、組織中のDPEP-1に結合するその能力についてスクリーニングする工程;および(b)選択的結合親和性を示す抗体を特定する工程を含む。ある特定の態様において、特定された抗体は、1つまたは複数の追加の試験方法に供される。
【0205】
1つの態様において、方法は、(a)試験抗体のライブラリを、組織中のDPEP-1に結合するその能力についてスクリーニングする工程;および(b)選択的結合親和性を示す抗体を特定する工程を含む。ある特定の態様において、特定された抗体は、1つまたは複数の追加の試験方法に供される。
【0206】
1つの態様において、スクリーニング方法は、(a)試験抗体のライブラリを、組織中のDPEP-1に結合するその能力についてスクリーニングする工程;(b)選択的結合親和性を示す候補試験抗体を選択する工程;(c)炎症低減活性について候補抗体を試験する工程、および(d)炎症を減少させる場合には候補抗体を選択し、それによって、炎症を減少させるのに有効な抗体を提供する工程を含む、患者の組織において炎症を減少させるのに有効な抗体を特定することを含む。
【0207】
ライブラリ中の他の試験抗体を上回る選択的結合親和性、例えば、他の抗体を上回る少なくとも10~100倍の結合親和性の増大を示すライブラリ試験抗体について、選択的結合親和性を有する抗体を、以下に詳述する方法に従って、組織において炎症を低減させるその能力についてさらに試験する。組織において炎症を低減させることが示された試験抗体を、次いで、さらなる抗体試験および開発のためのリード抗体として特定する。
【0208】
1つの態様において、組織は、肺組織、肝臓組織、または腎臓組織である。
【0209】
1つの態様において、患者の血管系において白血球動員を遮断するのに有効な抗体を特定するための方法が提供される。
【0210】
1つの態様において、本開示は、患者の組織において炎症を低減させるのに有効な抗体を特定する方法であって、(a)試験抗体のライブラリを、DPEP-1に結合するその能力についてスクリーニングする工程;(b)選択的結合親和性を示す抗体を選択する工程;(c)白血球動員阻害活性について抗体を試験する工程、および(d)組織において炎症を低減させる場合には抗体を選択する工程を含む方法を提供する。
【0211】
1つの態様において、組織は、肺組織、肝臓組織、または腎臓組織である。
【0212】
1つの態様において、方法は、(e)抗体を、固形腫瘍を有する動物において白血球動員を遮断するその能力についてさらに試験する工程;および(f)工程(e)において白血球動員を遮断する場合には抗体を選択する工程をさらに含む。
【0213】
1つの態様において、方法は、(e)抗体を、固形腫瘍を有する動物において腫瘍転移を阻害するその能力についてさらに試験する工程;および(f)工程(e)において腫瘍転移を阻害する場合には抗体を選択する工程をさらに含む。
【0214】
1つの態様において、方法は、(e)抗体を、肺または肝臓に転移することが知られている固形腫瘍を有する動物において、肺および肝臓への腫瘍転移を阻害するその能力についてさらに試験する工程;ならびに(f)工程(e)において腫瘍転移を阻害する場合には抗体を選択する工程をさらに含む。
【0215】
1つの態様において、方法は、(e)抗体を、対象において敗血症を処置するその能力についてさらに試験する工程;および(f)工程(e)において敗血症を処置する場合には抗体を選択する工程をさらに含む。
【0216】
1つの態様において、方法は、(e)抗体を、対象において細菌性敗血症を処置するその能力についてさらに試験する工程;および(f)工程(e)において敗血症を処置する場合には抗体を選択する工程をさらに含む。
【0217】
1つの態様において、方法は、(e)抗体を、対象において急性腎損傷を処置するその能力についてさらに試験する工程;および(f)工程(e)において急性腎損傷を処置する場合には抗体を選択する工程をさらに含む。
【0218】
1つの態様において、方法における工程(a)は、試験抗体のライブラリを、DPEP-1に結合するその能力についてスクリーニングすることを含む。
【0219】
1つの態様において、方法は、DPEP-1に結合する結合物質、抗体、またはその抗原結合断片をタンパク質マイクロアレイにおいて用いることによる、補因子、共受容体、循環因子、およびアクセサリータンパク質を含む、炎症に関与する他の二次標的の特定をさらに含む。
【0220】
以下の非限定的な実施例は、本開示の例証となる。
【実施例】
【0221】
実施例1. ヒトDPEP-1に結合する抗体
雄のラマ(Lama glama)を、組換えヒトDPEP-1(hDPEP-1;アクセッション番号:P16444;NCBI参照配列:NM_004413)エクトドメイン(アミノ酸17-385)で免疫した。簡単に述べると、動物を、200μgのhDPEP-1エクトドメインで3回皮下免疫した(0、21、および28日目)。プライミング免疫は、完全フロイントアジュバントで補強し、ブースト免疫は、不完全フロイントアジュバントで補強した。血液試料を、0、28、および35日目に収集し、凝固後に血清を取得し、末梢血単核細胞(PBMC)を、密度勾配遠心分離によって精製した。免疫した採血から結果として生じた血清は、hDPEP-1に特異的であり、2つの異なる供給源(CreativeBioMartおよびSinoBiologicals)由来のヒトDPEP-1に対して強い陽性免疫応答を有することが示された。PBMCをラマから単離し、ファージミドベクターpMED1中の免疫VHHファージディスプレイライブラリを構築した(参照により本明細書に組み入れられる、Hussack et al., "Neutralization of Clostridium difficile toxin A with single-domain antibodies targeting the cell receptor binding domain." J Biol Chem. 286:8961-8976 (2011)を参照されたい)。94クローンを、モノクローナルファージの生成のために増幅し、hDPEP1に対する特異性を、ELISAによって評価した。特有の配列の特定のために、クローンを、VHH特異的プライマーでシーケンシングし、9つの異なる配列を特定した。これらの配列の移動を、ファージミドベクターから、ビオチン化アクセプターペプチド(BAP)およびHis6タグに融合した単量体VHHの発現を可能にするベクターであるpMRo.BAP.H6に行った(参照により本明細書に組み入れられる、Rossotti 2015 et al, "Streamlined method for parallel identification of single domain antibodies to membrane receptors on whole cells", Biochim Biophys Acta, 1850(7):1397-404を参照されたい)。His6は、NiNTAクロマトグラフィーによる精製用であり、BAPは、ストレプトアビジンによる検出のための部位特異的ビオチン化を可能にする。特定された9つの異なる配列を、表1(BAPおよびHis6タグを有するsdABP01~09;SEQ ID NO: 1~9)および表2A(BAPおよびHis6タグを有しないsdABP01~09;SEQ ID NO: 12~20)に示す。これらのsdABのCDRを、表2Bに示す。
【0222】
(表1)BAPおよびHis6タグを有するsdABP01
下線を引いた配列はV
HHであり、これを、表2Aに別々に示す。V
HHは、短いスペーサーGQAGQGG(クローニング工程中に用いられるSFII制限部位を含む配列によってコードされる)を通してBAP配列に連結されている。BAP配列は、
であり、スペーサー(LE)でHis6タグ(HHHHHH;SEQ ID NO: 11)に連結されている。太字のアミノ酸配列はCDRであり、これを、表2Bに別々に示す。
【0223】
(表2A)短いスペーサー、BAP、およびHis6タグを有しないsdABP01
太字のアミノ酸配列はCDRであり、これを、表2Bに別々に示す。
【0224】
【0225】
実施例2. ヒトDPEP-1特異的V
H
Hの熱安定性(T
m
)
V
HHの熱アンフォールディング中間点温度(T
m)を、100 mMリン酸緩衝液pH 7.4中、200μg/mLの濃度および205 nmの波長でV
HHアンフォールディングを追跡することによって、円偏光二色性分光法を用いて決定した(参照により本明細書に組み入れられる、Henry et al., 2017, Front Immunol 8:1759)。楕円率測定値を、パーセンテージスケールに正規化し、T
mを、フォールディングされた%対温度のプロット、およびデータのボルツマン分布へのフィッティングから決定した。次いで、T
m(変性中間点の温度)を、ボルツマン曲線フィッティングによって決定した(
図1)。V
HH T
mの要約を、表3に示す。クロストリジウム・ディフィシル毒素A特異的A20.1 V
HH(Hussack et al., J Biol Chem., 286: 8961-8976 [2011])を、参照として含めた。これらの結果により、試験したsdABはすべて、良好な熱安定性を有し、sdABP03の熱安定性が、特に良好であることが示される。
【0226】
【0227】
実施例3. ヒトDPEP-1特異的V
H
HのSPR結合親和性
DPEP-1特異的V
HHの結合親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)によって解析した。組換えヒトDPEP-1(hDPEP-1)エクトドメインを、EZ-Link(商標) NHS-LC-LC-Biotin(Thermo Fisher、カタログ番号21343)を用いて、製造業者の指示に従って化学的にビオチン化した。次いで、ビオチン化組換えhDPEP-1エクトドメインを、Biotin CAPture試薬を用いてCM5センサーチップ表面上に捕捉し、続いて、0.625~10 nM(sdABP02)、2.5~40 nM(sdABP03/05/07)、6.25~100 nM(sdABP06)、および12.5~200 nM(sdABP01/04)の範囲の濃度のV
HHを表面にわたって流した。濃い線は、データポイントを表し、薄い線は、データにフィットしている。データは、三連で生成させた。ヒトDPEP-1に結合するV
HHの単一サイクル速度論的解析を示すSPRセンサーグラムを、
図2Aに示す。
図2Aにおいて得られたV
HHの速度論的速度定数k
a、k
dをまとめたオン/オフレートマップを、
図2Bに示す。対角線は、平衡解離定数K
Dを表す。
図2Aにおいて得られたK
D値(平均±SD)を、表4に示す。sdABP01の結合データは、1:1結合モデルに対して不良のフィットを示した。結果として、そのK
Dを、確信をもって決定することはできなかった。異種リガンド結合モデルを用いて、より良好なフィットが観察された。異種結合モデルに由来する親和性(K
D)は、およそ30 nMであり、これは、より伝統的な1:1結合モデルのフィットを用いて得られた親和性と概して一致している。
【0228】
【0229】
実施例4:細胞に提示されたヒトDPEP-1に対するDPEP-1特異的V
H
Hの結合
ヒトDPEP-1に対するDPEP-1特異的V
HHの結合を、フローサイトメトリーによって評価した。全長ヒトDPEP-1を過剰発現するトランスフェクトされたHEK293T細胞を、標的として用い、DPEP-1の発現が欠けている親HEK293T細胞を、対照として用いた。各細胞株を、Accutase(登録商標)溶液を用いて剥離し、洗浄し、次いで、2×10
5個の細胞を、100μLのビオチン化sdAb01~07(100 nMの最終濃度)と共に4℃で1時間インキュベートした。結合を、ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SPE、Thermo Fisher、カタログ番号S866)を用いて検出した。HEK-293T-hDPEP1+の陽性結合は、
図3Aに示すような、各グラフの右側のプロファイルである。クロストリジウム・ディフィシル毒素A特異的A20.1 V
HH(Hussack et al., J Biol Chem., 286: 8961-8976 [2011])を、陰性V
HH対照として含めた(各グラフの左側のプロファイル)。DPEP-1特異的V
HHの場合に見られるような右へのスペクトルシフトは、ヒトDPEP-1に対する結合を示し、幾何平均蛍光強度の増加として定量化される(ヒストグラムの上に記録)。示されたV
HHを、hDPEP-1発現について陰性であるHEK293T-PARENTALに対して試験した場合、結合は見られなかった(すなわち、右へのスペクトルシフトなし)。V
HH結合は、フィコエリトリン標識ストレプトアビジンを用いて検出した。データを、FACScalibur(BD Bioscience)で収集し、続いてFlowJo v10.6.2(TreeStar)で解析した。これらの結果により、試験した7つのsdABはすべて、細胞に提示されたDPEP-1を認識できたことが示される。DPEP-1を発現しない親HEK293T細胞に対しては、1000 nMでも結合が観察されなかった。合わせると、これらの結果により、実施例1において特定されたsdABは、ヒトDPEP-1に特異的であることが示される。
【0230】
実施例5. 細胞に提示されたヒトDPEP-1に対するヒトDPEP-1特異的V
H
Hの用量反応結合
ヒトDPEP-1特異的V
HHの用量反応結合を、細胞に提示されたヒトDPEP-1(hDPEP-1)に対して解析した。ビオチン化V
HHのフローサイトメトリー解析を、(hDPEP-1)を過剰発現するHEK-293-6E細胞に対して、V
HH濃度を増大させて行った(
図3Bを参照されたい)。毒素A特異的A20.1 V
HH(Hussack et al., J Biol Chem., 286: 8961-8976, (2011))を、陰性V
HH対照として含めた。hDPEP-1に対するビオチン化V
HHの結合は、ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SPE)を用いて検出した。抗DPEP-1ウサギpAb(Proteintech、カタログ番号12222-1-AP)陽性対照の結合プロファイルを、挿入図として示す。ウサギpAbの結合は、フィコエリトリンにコンジュゲートされたヤギ抗ウサギIgG抗体(Thermo Fisher、カタログ番号P-2771MP)を用いて検出した。同様の最大蛍光プラトーを有する
図3Bのグラフを、合わせてグループ分けし、
図3Cに示す(A20.1 V
HHを、比較のために示す)。3回の独立した実験を行って、データを、Beckman CytoFLEX Analyzerで収集し、続いてFlowJo v10.6.2(TreeStar)で解析した。EC
50値を、
図3Cから計算し、表5に記録した。フローサイトメトリーによって測定された結合に基づいて、4つの親和性グループ:中間(sdABP01/03)、高い(sdABP02/04/07)、高い~非常に高い(sdABP05)、および非常に高い(sdABP06)が特定され得る。これらの結果は、SPRによって検出された結合を確認し、また、これらのヒトDPEP-1特異的V
HHが、hDPEP-1過剰発現細胞に結合することを示す。
【0231】
次に、全長hDPEP-1を過剰発現するHEK293-6E細胞からのhDPEP-1は、本開示に記載されるV
HHによって免疫沈降されることが示された。個々のビオチン化V
HHを、neutravidin-sepharoseビーズ(Thermo Fisher、カタログ番号29202)上に捕捉し、その後、Triton X-100で可溶化したHEK293T-DPEP-1+細胞とインキュベートした。次いで、プルダウンしたタンパク質を、SDS-PAGEゲル上で分離し、PVDFに移し、抗DPEP-1ウサギpAbでプローブし、SuperSignal(商標) West Pico PLUS Chemiluminescent Substrate(Thermo Fisher、カタログ番号34578)を用いてヤギ抗ウサギ:HRP(Jackson Immunoresearch、カタログ番号111-035-144)で検出した。純粋な組換えhDPEP-1エクトドメイン(30および6 ng/ウェル)を、アッセイにおいて陽性対照として含めた。イムノブロッティングの結果を、
図3Dに示す。これらの結果は、結合を確認し、V
HHが、細胞の表面上のヒトDPEP-1に特異的に結合することを示す。
【0232】
【0233】
実施例6. SPRおよびELISAによるsdABPのエピトープビニング
SPRによって特定されたエピトープビンを、
図4Aにまとめる。sdABP01、sdABP06、sdABP02、およびsdABP07は、それぞれ、ビン(i)、(ii)、(iii)、および(iv)を規定した。sdABP03およびsdABP05は、ビン(iv)と部分的に重複し、一方、sdABP04は、ビン(iii)と部分的に重複する。ELISAによるsdABPのエピトープビニングは、Rossotti 2015 et al(参照により本明細書に組み入れられる、"Streamlined method for parallel identification of single domain antibodies to membrane receptors on whole cells", Biochim Biophys Acta, 1850(7):1397-404)に記載されている通りであった。
図4Bは、エピトープによってV
HHをクラスター化するために行って、V
HHのすべての可能なペアワイズの組み合わせを表示するヒートマップとして表した(7×7=49)、競合サンドイッチ ELISA の概略図である。高い結合シグナルを示す結合ペア(濃い)は、重複しないエピトープを認識し、したがって異なるエピトープビンまたはV
HHクラスターに属すると考えられ、一方、結合シグナルを示さないかまたは弱い結合シグナルを示す結合ペア(無色/薄い)は、重複するエピトープを認識し、したがって同じエピトープビンに属すると考えられた。陰性対照として含めたクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに特異的なA20.1 V
HH(Hussack et al., 2011)は、いかなる結合シグナルも示さなかった。したがって、sdABP02、sdABP03、sdABP04、sdABP05、およびsdABP07は、すべて、1つの一次エピトープの周囲にクラスター化されているように見える。ELISAエピトープビニングの結果は、SPRの結果を確認し、さらに、sdABP08およびsdABP09が、sdABP01と同じビン(i)に属することを示した。
【0234】
実施例7. ヒトDPEP-1特異的sdABPは、LPS誘導性腎炎症を低減させた
sdABP07は、免疫蛍光染色下でヒトDPEP-1に対して有望かつ選択的な結合を示し、およびフローサイトメトリーによってヒトDPEP-1に対して高親和性結合を示すため(
図3Cおよび表5)、この抗体を、LPS誘導性内毒素血症に影響を及ぼすその能力におけるさらなる試験のために選択した。LysM
gfp/gfrマウスを、sdABP07(50μg)の存在下または非存在下で、LPS(5 mg/kg、IV)で処置して、内毒素血症を誘導した。動物の腎臓を、処置後4時間で、生体内顕微鏡によって生きたまま画像化した。
図5Aの免疫蛍光画像により、sdABP07が、LPSで処置したLysM
gfp/gfrマウスの腎臓(右パネル)において、LPS単独で処置したマウス(中央パネル)と比較して単球浸潤を低減させたことが示され、これは、sdABP07がLPS誘導性腎炎症を低減させたことを示す。腎炎症は、これらのマウスの腎臓において、1視野当たりに見出される接着したLysM+単球の数によって定量化した(n=4~5/群、*:p<0.05)(
図5Bを参照されたい)。
【0235】
実施例8. 哺乳動物細胞におけるヒトIgG1ヒンジ-Fcに融合した抗DPEP-1 V
H
H(V
H
H-Fc)の産生
二価VHH-Fc用のコドン最適化遺伝子を合成し(GeneArt, Thermo Fisher)、pTT5-hIgG1Fc中に、ヒトVHリーダー配列およびヒトIgG1ヒンジ/Fc配列の遺伝子の間にクローニングした。VHH-Fc(SEQ ID NO: 48~56)を、Durocher, Y. et al, "High-level and high-throughput recombinant protein production by transient transfection of suspension-growing human 293-EBNA1 cells" Nucleic Acids Res 30, E9 (2002)およびRossotti, M.A. et al. "Camelid single-domain antibodies raised by DNA immunization are potent inhibitors of EGFR signaling" Biochem J 476, 39-50 (2019)(その全体の各々が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるように、HEK293-6E細胞において一過性発現によって産生させ、培養上清からプロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製した。精製されたVHH-Fcを、Amicon(登録商標) Ultra-15 Centrifugal Filter Unit(Millipore、カタログ番号UFC905024)を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH 7.4に対して緩衝液交換した。DPEP-1 VHH-Fcの純度を、4-20% Mini-PROTEAN(登録商標) TGX Stain-Free(商標) Gel(Biorad、カタログ番号17000435)を用いたSDS-PAGEによって確認した。表6は、9つの発現させたDPEP-1 VHH-Fcの配列を列記する。
【0236】
【0237】
実施例9. DPEP-1 V
H
H-Fcのサイズ排除クロマトグラフィー解析
精製されたV
HH-Fcを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供して、それらの凝集抵抗性を評価した。150μgの各V
HH-Fcを、参照により本明細書に組み入れられる、Hussack, G. et al., "Neutralization of Clostridium difficile toxin A with single-domain antibodies targeting the cell receptor binding domain". J Biol Chem 286, 8961-8976 (2011)に以前に記載されているように、AKTA FPLCタンパク質精製システム(Cytiva)に接続されたSuperdex(商標) 200 Increase 10/300 GLカラム(Cytiva)に注入した。PBSを、ランニングバッファーとして0.8 mL/分で用いた。それらのV
HH対応物と類似して、すべてのV
HH-Fcは、いかなる凝集物もなかった(
図6)。
【0238】
実施例10. ELISAによるDPEP-1 V
H
H-Fcの結合検証
DPEP-1に対するV
HH-Fcの結合を、ELISAによって評価した。マイクロタイターウェルプレートを、100μLのPBS中の50 ng/ウェルの組換えヒトDPEP-1エクトドメイン(SinoBiologicals、カタログ番号13543-H08H)で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、PBSC(PBS中、1%カゼイン[w/v];Thermo Fisher、カタログ番号37528)で、室温で1時間ブロッキングし、次いで、PBST(0.1%(v/v)Tween 20を補給したPBS;Thermo Fisher、カタログ番号28352)で5回洗浄して、様々な濃度のV
HH-Fcとインキュベートした。1時間のインキュベーション後に、プレートを、PBSTで10回洗浄し、V
HH-Fcの結合を、1μg/mLのHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(SIGMA、カタログ番号A0170)で1時間プローブした。プレートを、10回洗浄して、100μLのペルオキシダーゼ基質溶液(SeraCare、カタログ番号50-76-00)と、室温で15分間インキュベートした。反応を、50μLの1 M H
2SO
4をウェルに添加することによって止め、その後、吸光度を、Multiskan(商標)FC光度計(Thermo Fisher)を用いて450 nmで測定した。データを、GraphPad Prism version 9(La Jolla, CA)を用いて非線形回帰([アゴニスト]対応答、可変勾配(4パラメータ))にフィットさせた。
図7は、9つのV
HH-Fcすべてが、それらの抗原であるヒトDPEP-1に結合したことを実証する。
【0239】
実施例11. フローサイトメトリーによるDPEP-1 V
H
H-Fcの結合親和性、特異性、および交差反応性の評価
HEK293-6E細胞を、1.5×106細胞/mLの密度に達するまで、Gibco(商標) FreeStyle(商標) F17 Expression Medium(Thermo Fisher、カタログ番号A1383501)において増殖させた。HEK293-6E細胞の一過性トランスフェクションを、100μgのDNAトランスフェクション試薬であるPEIpro(登録商標)(VWR、カタログ番号71002-812)と組み合わせた、全長ヒトDPEP-1、マウスDPEP-1、ラットDPEP-1、またはヒトDPEP-2をコードする100μgのpcDNA3.1発現プラスミドで実施した。DPEP-1またはDPEP-2(DPEP-1/2)の細胞表面発現を、96時間実施した。VHH-Fcの細胞結合をフローサイトメトリーによって評価するために、DPEP-1/2発現細胞を、採取して、PBS遠心分離によって1回洗浄し、PBSB(1%[w/v]BSAおよび0.05%[w/v]アジ化ナトリウム[SIGMA、カタログ番号S2002] を含有するPBS)に1×106細胞/mLで再懸濁した。50μLの個々のDPEP発現細胞を、50μLのVHH-Fc(250 nM)と氷上で1時間インキュベートした。その後、細胞を、1200 rpmで5分間の遠心分離によってPBSBで2回洗浄し、次いで、PBSBに希釈した2μg/mLのR-Phycoerythrin-conjugated AffiniPure Fab Fragment Goat Anti-Human IgG, Fc Fragment Specific(Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-117-008)の50μLと、氷上でさらに1時間インキュベートした。最後の洗浄後に、細胞を、100μLのPBSBに再懸濁し、データを、CytoFLEX Sフローサイトメーター(Beckman Coulter)で取得し、FlowJoソフトウェア(FlowJo LLC, v10.6.2, Ashland)によって解析した。抗ヒトDPEP-1ウサギpAb(Proteintech、カタログ番号12222-1-AP)陽性対照の結合は、R-フィコエリトリンにコンジュゲートされたヤギ抗ウサギIgG抗体(Thermo Fisher、カタログ番号P-2771MP)を用いて検出した。
【0240】
固定されたV
HH-Fc濃度で行ったフローサイトメトリーの結果により、9つのV
HH-Fcすべてが、DPEP-1発現HEK293-6E細胞に結合し、親である非DPEP-1発現細胞には結合しなかったことが示され、これは、V
HH-Fcが、細胞の表面上のDPEP-1を特異的に標的としていることを明らかに実証した(
図8Aおよび
図8E)。フローサイトメトリー実験を、マウスDPEP-1、ラットDPEP-1、およびヒトDPEP-2を発現するHEK293-6E細胞を含むように拡張した。V
HH-Fcのいずれも、ラットDPEP-1またはヒトDPEP-2に結合せず、9つのV
HH-Fcのうち2つ(sdABP05およびsdABP06)のみが、マウスDPEP-1と交差反応したため、結果により、V
HH-Fcの高い特異性が示された(
図8B、
図8C、および
図8D)。
【0241】
ヒトおよびマウスのDPEP-1を発現するHEK293-6E細胞に対して可変濃度のV
HH-Fcで行ったフローサイトメトリー実験により、見かけのEC
50の決定が可能になった。ヒトDPEP-1発現HEK293-6E細胞に対する親和性は、高いと判定された(低いEC
50;範囲:0.6~1.8 nM;中央値:0.9 nM)(
図9;表7)。V
HH(表5)とそれらのV
HH-Fc対応物(表7)とのEC
50の比較により、Fc媒介性二量体化の結果として、最大600倍のV
HHの効力(EC
50)の劇的な増加が明らかになった(表8を参照されたい)。さらに、sdABP05およびsdABP06は、ヒトDPEP-1に対してと類似した高い親和性で、マウスDPEP-1と交差反応すると判定された(
図10;表9)。
【0242】
【0243】
(表8)V
H
H(表5)とそれらのV
H
H-Fc対応物(表7)とのEC
50
の比較
【0244】
【0245】
実施例12. SDS-PAGE/ウエスタンブロット解析によるDPEP-1 V
H
Hのエピトープタイピング
V
HHが、直鎖状エピトープを認識するかまたは立体構造エピトープを認識するかを判定するために、V
HH-Fcを、SDS-PAGE/ウエスタンブロットによるエピトープタイピング実験に供した。1ウェル当たり100 ngの各組換えヒトDPEP-1(Creative biomart、カタログ番号DPEP1-77HまたはSinoBiologicals、カタログ番号13543-H08H)を、SDS-PAGEゲル上で分離し、PVDF膜に移し、100 ngの個々のDPEP-1 V
HH-Fcまたは抗ヒトDPEP-1ウサギpAb対照で、室温で1時間プローブした。膜を、5回洗浄し、V
HH-Fcの結合を、PBS/1%BSAに希釈した1μg/mLのHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(SIGMA、カタログ番号A0170)を用いて検出した。pAb陽性対照の結合は、ヤギ抗ウサギ:HRP(Jackson Immunoresearch、カタログ番号111-035-144)で検出した。1時間のインキュベーション後に、膜を、PBS-0.05% Tween 20で5回洗浄し、ペルオキシダーゼ活性を、化学発光試薬(SuperSignal West Pico PLUS Chemiluminescent Substrate、Thermo Fisher、カタログ番号34580)を用いて検出した。画像を、Molecular Imager(登録商標) Gel Doc(商標) XR System(BioRad、カタログ番号1708195EDU)で取得した。エピトープタイピング実験により、sdABP05、sdABP06、sdABP03、およびsdABP08のV
HH-Fcは、直線状エピトープを認識し、残りは、立体構造エピトープを認識することが示された(
図11)。
【0246】
実施例13. ヒトDPEP-1特異的なsdABPまたはV
H
H-Fcは、インビボで患者由来の肺がん異種移植片における転移を阻害する
患者由来の肺がん異種移植片を、重症複合免疫不全(SCID)マウスにおいて継代によって維持する。ストック腫瘍を、無菌で採取し、切り刻んで1 mm3のサイズの標本にする。6つの標本を、各SCIDマウスの脇腹中に移植する。腫瘍のサイズが約200 mm3になるまで、腫瘍を、無処置で成長させ続ける。本明細書に開示されるsdABPまたはVHH-Fc(sdABP01、02、03、04、05、06、07、08、もしくは09、またはそれらのVHH-Fc)、または対照Ab(A20.1)(10 mg/kg、20 mg/kg、または40 mg/kgの各々)を、静脈内ボーラス注射によって7日間隔で2回投与する。投与量は、投与直前に秤量した個々の動物の体重に基づいて決定する。腫瘍成長を、3~4日毎にカリパス測定することによってモニターする。腫瘍サイズは、幅2×長さ/2として計算し、ここで、幅は最小サイズの値であり、長さは最大サイズの値である。本明細書に開示されるsdABPは、対照と比較した場合に、有意に、SCIDマウスに移植された患者由来の肺がん異種移植片の転移を防ぎ、その成長を阻害する。本明細書に開示されるsdABPは、腫瘍負荷を低減させ、転移を阻害するために有用である。
【0247】
実施例14. sdABPまたはV
H
H-Fcは、インビボで同系動物モデルにおいて黒色腫-肺転移を阻害する
8~10週齢のC57-BL6マウス(Charles River)に、本明細書に開示されるsdABPまたはVHH-Fc(sdABP05、06、またはそれらのVHH-Fc)、または対照Ab(A20.1)(10 mg/kg、20 mg/kg、または40 mg/kgの各々)の尾静脈内注射を介した注射の5分後に、100,000個のB16-F10マウス黒色腫細胞を静脈内注射する。動物を、2週間後に屠殺し、肺を採取する。組織を、組織学のために加工処理し、ヘマトキシリン-エオシン染色を行って、腫瘍負荷を評価する。本明細書に開示されるsdABP、特にsdABP05およびsdABP06、ならびにそれらのVHH-Fc対応物は、腫瘍負荷を低減させ、転移を阻害するために有用である。
【0248】
本開示は、本明細書に記載される具体的な態様によって範囲を限定されるものではなく、それは、そのような態様が、本開示の1つの局面の単一の例示として意図されているに過ぎず、任意の機能的に等価な態様が、本開示の範囲内にあるからである。実際に、本開示の様々な改変が、本明細書に示され、記載されるものに加えて、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。いかに様々な改変が、本開示から逸脱することなく行われ得るかが、認識されるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあたることが意図される。
【0249】
本明細書において参照されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が、その全体が参照により組み入れられるように具体的にかつ個別に示されているのと同じ程度に、その全体が参照により組み入れられる。本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が、本開示に対する先行技術として利用可能であるという承認ではない。
【配列表】
【国際調査報告】