(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】織布又は不織布に耐久性のある撥水性を付与する方法及び撥水性組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 13/203 20060101AFI20240315BHJP
D06M 13/148 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
D06M13/203
D06M13/148
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023561696
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 NL2022050198
(87)【国際公開番号】W WO2022216158
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523379177
【氏名又は名称】ラモラール ホールディング ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】LAMORAL HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】Graafschap Hornelaan 163, 6001AC Weert (NL)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】フェルヴェールデン,テオドロス マテウス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ボーレン-ブーヴェリー,ルシエンヌ
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA05
4L033AA07
4L033AA08
4L033AB05
4L033AB07
4L033AC03
4L033BA12
4L033BA21
(57)【要約】
織布又は不織布に耐久性撥水性を付与するための方法が開示され、(1)(a)少なくとも80w/w%の水と、少なくとも2つの官能性OH基を含む20w/w%以下の水混和性有機溶媒と、を含む水性溶媒、及び(b) b. A
1はH又はCH
3であり、A
2はC
1-C
30の直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、脂環式又は芳香族環を有してもよい炭化水素として、式1:
を有する0.1~40w/w%のアクリル酸エステルであって、前記アクリル酸エステルは、前記水性溶媒中で溶解、乳化又は分散されている、該エステル、を含む、該工程と、(2)処理された布帛を120~200°Cまで熱する工程と、を含む。このような組成物及びこのような組成物で処理された布帛がさらに開示される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布又は不織布に耐久性のある撥水性を付与する方法であって、
i)水性組成物で前記布を処理する工程であって、前記組成物が、
a. 少なくとも80w/w%の水と、少なくとも2つの官能性OH基を含む20w/w%以下の水混和性有機溶媒と、を含む水性溶媒、及び
b. A
1はH又はCH
3であり、A
2はC
1-C
30の直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、脂環式又は芳香族環を有してもよい炭化水素として、式1:
を有する0.1~40w/w%のアクリル酸エステルであって、前記アクリル酸エステルは、前記水性溶媒中で溶解、乳化又は分散されている、該エステル、を含む、該工程と、
ii)前記処理された布を120~200℃に加熱する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記水混和性溶媒が、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール及びヘキシレングリコールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水混和性溶媒がトリプロピレングリコールを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記水性溶媒が、水90~99.9w/w%及び水混和性溶媒0.1~10w/w%、好ましくは、水95~99.8w/w%及び水混和性溶媒0.2~5w/w%、又は水95~99w/w%及び混和性有機溶媒1~5w/w%を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、アクリル酸エステルを0.2~20w/w%、好ましくは0.5~10w/w%、より好ましくは1~6w/w%含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アクリル酸エステルのA
2が12~24個の炭素原子、好ましくは12~21個の炭素原子、より好ましくは18個の炭素原子を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アクリル酸エステルのA
2がアルキルである、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記アクリル酸エステルのA
2が分岐している、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも3つの架橋可能なイソシアネート基を含むポリイソシアネートをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリイソシアネートが水性のブロックポリイソシアネートである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
重量比アクリル酸エステル:イソシアネートが100:5~100、好ましくは100:30~80、より好ましくは100:50~70、最も好ましくは100:60である、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
工程i)の前記処理された布が、工程ii)の前に乾燥される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
前記布を100~140℃にて乾燥させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程ii)において、前記加熱が130~200℃、好ましくは140~200℃、より好ましくは145~200℃、さらに好ましくは145~180℃、さらに好ましくは150~170℃にて行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱工程が30秒~10分間行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物がシリコン及びメラミン化合物を含まない、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物がフッ素フリーである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、末端アクリル基を含むフッ化C
2-C
20アルキル化合物をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記フッ化アルキル化合物がC
6-C
20アルキルであり、前記炭素原子の1~6個がフッ素で完全に置換されている、請求項18記載の方法
【請求項20】
前記フッ化アルキル化合物が分岐している、請求項18又は19に記載の方法
【請求項21】
前記組成物が、w/w%で、非フッ化及びフッ化アクリル酸エステルの両方の等量を含む、請求項18~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記繊維が、ポリエステル、ポリアミド、アクリレート、超高分子量ポリエチレン、綿又はアラミド、又はそれらの2種以上の混合物から選択され、前記繊維が、好ましくは、ポリエステル及び/又はポリアミド、より好ましくはポリエステルを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程i)の前記処理が、前記組成物中に前記布を浸漬すること、又は前記組成物を前記布上に噴霧することから選択される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記処理された布が、乾燥又は加熱される前にパディング加工される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
織物又は不織布に耐久性のある撥水性を付与するための組成物であって、前記組成物は、
a. 少なくとも80w/w%の水、及び、少なくとも2つの官能性OH基を含む20w/w%以下の水混和性有機溶媒を含む水性溶媒、及び
b. A
1はH又はCH
3であり、A
2はC
1-C
30の直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、脂環式又は芳香族環を有してもよい炭化水素として、式1:
を有する0.1~40w/w%のアクリル酸エステルであって、前記アクリル酸エステルは、前記水性溶媒中で溶解、乳化又は分散されている、該エステル
を含む、該組成物。
【請求項26】
前記水混和性溶媒が、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール及びヘキシレングリコールからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記水混和性溶媒がトリプロピレングリコールを含む、請求項26の組成物。
【請求項28】
前記水性溶媒が、90~99.9w/w%の水及び0.1~10w/w%の前記水混和性溶媒、好ましくは95~99.8w/w%の水及び0.2~5w/w%の前記水混和性溶媒、又は95~99w/w%の水及び1~5w/w%の混和性有機溶媒を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、アクリル酸エステルを0.2~20w/w%、好ましくは0.5~10w/w%、より好ましくは1~6w/w%を含む、請求項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記アクリルエステルのA
2が12~24個の炭素原子、好ましくは12~21個の炭素原子、より好ましくは18個の炭素原子を有する、請求項25~29のいずれか一項に記載の組成。
【請求項31】
前記アクリル酸エステルのA
2がアルキルである、請求項25~30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
前記アクリル酸エステルのA
2が分岐している、請求項25~31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
少なくとも3つの架橋可能なイソシアネート基を含むポリイソシアネートをさらに含む、請求項26~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記ポリイソシアネートが水性のブロックポリイソシアネートである、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
重量比アクリルエステル:イソシアネートが100:5~100、好ましくは100:30~80、より好ましくは100:50~70、最も好ましくは100:60である、請求項32又は33に記載の組成物。
【請求項36】
組成物がシリコン及びメラミン化合物を含まない、請求項25~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物がフッ素フリーである、請求項25~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が、末端アクリル基を含むフッ化C
2-C
20アルキル化合物をさらに含む、請求項25~36のいずれか一項記載の組成物。
【請求項39】
前記フッ化アルキル化合物がC
6-C
20アルキルであり、前記炭素原子の1~6個はフッ素で完全に置換されている、請求項38に記載の組成物
【請求項40】
前記フッ化アルキル化合物が分岐している、請求項38又は39に記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物が、w/w%で、非フッ素化及びフッ素化アクリルエステルの両方の等量を含む、請求項38~40のいずれか一項記載の組成物。
【請求項42】
請求項25~41のいずれかの組成物で処理された織布又は不織布。
【請求項43】
前記布が、ポリエステル、ポリアミド、アクリレート、超高分子量ポリエチレン、綿又はアラミド、又はそれらの2種以上の混合物から選択され、前記布は、好ましくは、ポリエステル及び/又はポリアミド、より好ましくは、ポリエステルを含む、請求項42に記載の織物又は不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織布又は不織布に耐久性のある撥水性(water repellence)を付与するための方法、織布又は不織布に耐久性の撥水性を付与するための組成物、及び前記組成物で処理された織布又は不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
織布又は不織布に耐久性のある撥水性を付与する方法は、当該技術分野で公知である。これまで、布(又は、ファブリック)への耐久性のある撥水性の提供は、非常に効果的で耐久性の高いフルオロカーボンベースの処理に頼ってきた。しかし、フッ素界面活性剤やC8、C6フッ素界面活性剤を主成分とする誘導体などの副生成物は毒性があり、環境中に残留するため、性能が優れているにもかかわらず、許容できないほどの組み合わせとなっている。今日、フッ素を含まない多くのコーティング剤は寿命が短い。撥水性雨殻(water repellent rain shell)は衣服自体が摩耗するずっと前に、機能的に風の殻(wind shell)に分解する。
【0003】
JP2020153057には、ポリエステル布帛へのビニルポリマーの化学結合を含む、分子量600以上の特定のジビニル化合物のビニル系重合が記載されている。6個以下の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基で重合されるフッ化コポリマー又はアクリルモノマーを含む追加の膜が適用される。追加の膜はメラミン樹脂によって架橋される。
【0004】
EP3919673には、ハスの花の葉の表面に似た特殊な布表面が記載されており、その撥水作用を模倣している。この人工ロタス様表面は、一般に知られている撥水剤によって処理することができる。
【0005】
WO2016/000831には、繊維に適用して撥水性を付与する組成物が記載されており、ここでは、3つの異なるアクリレートモノマー(そのうちの1つはフッ素を含有する)が、アゾ開始剤の助けによりポリアクリレートに重合される。このようにして得られたポリアクリレートとは別に、組成物はワックスを含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、繊維製品に、撥水用のフッ素成分を組み込む必要がなく、またシリコーン(silicon)、イソシアネート又はメラミンブースターを使用する必要もなく、優れた洗濯(又は、洗浄/washing)、耐久性を有する撥水性を付与できる、織布又は不織布に耐久性のある撥水性を付与する方法及び繊維処理組成物を提供する。本方法は、織布又は不織布に耐久性のある撥水性を付与するための方法であり、その結果、100回以上の機械洗浄後でも影響を受けない、耐久性の高い持続性のある撥水性被覆が布にもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本方法は以下の工程を含む:
i)シリコン化合物フリーの水性組成物で前記布を処理する工程であって、前記組成物が、
a. 少なくとも80w/w%の水と、少なくとも2つの官能性OH基を含む20w/w%以下の水混和性有機溶媒と、を含む水性溶媒、及び
b. A
1はH又はCH
3であり、A
2はC
1-C
30の直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、脂環式又は芳香族環を有してもよい炭化水素として、式1:
を有する0.1~40w/w%のアクリル酸エステルであって、前記アクリル酸エステルは、前記水性溶媒中で溶解、乳化又は分散されている、該エステル、を含む、該工程と、
ii)前記処理された布を120~200℃に加熱する工程。
【0008】
本発明の方法によれば、水混和性溶媒は、その官能性OH基を介してアクリル酸エステルとの化学反応に関与する。
【0009】
熱処理工程ii)により、水混和性溶媒分子とアクリル酸エステルとの間でエステル化反応(エステル交換反応)が開始される。共有結合C-O-Cは、水混和性溶媒分子の少なくとも2つのOH基のうちの1つと、式1のアクリル酸エステルのC=O基の酸素との間で形成される。水混和性溶媒分子は、少なくとも2つの官能性OH基を有するので、アクリル酸エステルは、官能性OH基を獲得し、前記エステルが、水素架橋を介してこのOH基によって布繊維と結合することを可能にする。したがって、「官能性OH基」とは、前記基が前記C-O-C結合を形成し得ることを意味する。上記の反応又は複数の反応が、例えば酸性pHで起こり得るような条件が選択される。
【0010】
いかなる科学的な説明にも拘束されずに、エステル交換反応が進行し、水性溶媒分子がアクリル酸エステルのCH2=C(A1)COO部分(又は、モエティ/moiety)でエステル化され、A2部分が末端OH基に共有結合するようになることもあり得る。後者の場合、A2部分はその新たに獲得された末端OH基の水素架橋により布繊維に結合する。エステル交換反応は、不完全なエステル化と完全なエステル化の両方のプロセスをもたらし、両者は水素架橋を介してそれに結合した疎水性のA2部分を獲得する繊維をもたらす。熱処理の成果は、A2部分が布に結合するようになることであるので、この工程は硬化工程ともみなすことになる。
【0011】
しかしながら、本発明の組成物がアクリレートポリマー、すなわち、例えばアゾ開始剤の使用により互いに重合した複数のアクリレートモノマー、特に3つ以上を含むポリマーを含まないことは明らかである。さらに、上記の定義により、前記アクリルエステルにフッ素基が含まれていないことも明らかである。
【0012】
工程i)b.に関して上記で定義した適当なアクリルエステルは、当該技術分野で公知であり、例えばユニダインXFシリーズ(ダイキン、日本)である。
【0013】
熱処理により、繊維が水素架橋を通して疎水性のA2部分を安定的に結合し、非常に強力で持続的な撥水性を獲得する布が生じる。
【0014】
水混和性溶媒は、2を超える官能性OH基を含むことができるが、2つの官能性OH基の存在が好ましい。したがって、水溶性水性溶媒は、好ましくは、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール及びヘキシレングリコールからなる群から選択される有機水混和性溶媒である。最も好ましいのはトリプロピレングリコールである。
【0015】
水性溶媒は、少なくとも0.1w/w%の水混和性溶媒、好ましくは少なくとも0.2w/w%を含むことが好ましい。
【0016】
水性溶媒は、水90~99.9w/w%及び水混和性溶媒0.1~10w/w%、水95~99.8w/w%及び水混和性溶媒0.2~5w/w%、又は水95~99w/w%及び混和性有機溶媒1~5w/w%を含むことが好ましい。
【0017】
組成物は、好ましくは0.2~20w/w%、より好ましくは0.5~10w/w%、さらにより好ましくは1~6w/w%のアクリル酸エステルを含む。
【0018】
最適な撥水のためには、コーティングの表面張力は約25mN/m2でなければならない。この目的のために、A2部分は好ましくはアルキルである。アクリルエステルのA2部分は、好ましくは12~24個の炭素原子、より好ましくは12~21個の炭素原子、さらに好ましくは18個の炭素原子を有する。-CH2-部分は約31mN/mの2を与え、末端-CH3は22mN/mの2を与えた。これは、より高い-CH3含量が、より低い表面張力を有するコーティング及びより強い撥水性をもたらすことを意味する。炭化水素鎖の分枝数を増やすことにより、より高い-CH3含量を得ることができる。従って、A2部分は直鎖状であり得るが、前記部分は好ましくは分枝状である。
【0019】
上記の方法に従って布に塗布したコーティングは、布に非常に安定して付着したままであることがわかっている。通常の乾燥プログラムで操作された、すなわち加熱を含む、タンブル乾燥機での乾燥が後に続く100回の洗濯サイクルの間、布は完全に保存されたままであることが観察された(又は、100回の洗濯サイクルの後の、通常の、すなわち加熱を含む乾燥プログラムで操作された、タンブル乾燥機での乾燥の間、布は完全に保存されたままであることが観察された)。しかし、加熱せずに乾燥させた場合(いわゆる「ライン乾燥(又は、ラインドライ/line drying)」)、約10回の洗濯サイクル後にコーティングが磨耗し始めることが観察された。
【0020】
コーティングは、水性組成物中に少なくとも3つの架橋イソシアネート基を有するポリイソシアネートを含むことによってさらに改善することができた。驚くべきことに、ポリイソシアネートの存在はコーティングの安定性の有意な増加をもたらし、ライン乾燥が後に続く、30回の洗濯サイクル後、目立った摩耗は生じなかった。水混和性溶媒分子及び上記エステル交換反応の結果として機能性OH基を含むアクリル酸エステルの両方の官能性OH基、ならびにこのようにして得られた官能性OH基を有するA2部分はポリイソシアネートに共有結合し、疎水性炭水化物部分の架橋網を生じ、架橋網は水混和性溶媒分子の官能性OH基と共有結合を介して互いに連結されたポリイソシアネート分子の相互結合によって形成される。これらの分子は2つ以上の官能性OH基を含むので、これらはそれぞれポリイソシアネート分子を互いに結合させ、布繊維と水素架橋結合を形成し、A2部分のアクリルエステルに官能基を与えるように機能する。
【0021】
ポリイソシアネートは、例えば芳香族又は脂肪族であり得、適切なポリイソシアネートが当該技術分野で公知である。ポリイソシアネートは水性組成物、例えば水性(water-based)であるので、ポリイソシアネートは、例えばフェノール、ノニルフェノール、メチルエチルケトキシム(MEKO)、アルコール、?-カプロラクタム、アミド、イミダゾール、又はピラゾールのような当該技術分野で公知のブロッキング基(blocking group)によってブロックされることが好ましい。JP2020007657には、撥水剤及びこのようなブロックポリイソシアネートを含有する繊維処理組成物が記載されている。ブロックポリイソシアネートが活性化されるため、すなわちブロックされない状態になるためには、まず、例えば、乾燥することによって、次いで加熱工程を行うことによって水を除去する。非常に魅力的なイソシアネートは、脂肪族ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、特にHDI三量体(興和、ニューヨーク、米国)をベースとする三量体である。
【0022】
重量比アクリルエステル:イソシアネートは100:5~100、好ましくは100:30~80、より好ましくは100:50~70、最も好ましくは100:60である。比較的高い比のアクリルエステル:イソシアネートが最も安定なコーティングをもたらすことが分かった。
【0023】
工程ii)では、加熱は、130~200℃、より好ましくは140~200℃、より好ましくは145~200℃180℃、さらにより好ましくは145~180℃、さらにより好ましくは150~170℃及び最も好ましくは160℃付近で実施される。このような加熱工程は、成分(水混和性溶媒、アクリル酸エステル、及び存在する場合はポリイソシアネート)間の優れた反応と布への結合をもたらすことがわかっている。組成物中にブロックポリイソシアネートが存在する場合には、前記ポリイソシアネートは同様にそのような温度でブロックされなくなる。
【0024】
最適な加熱温度は、処理された布にも依存する可能性がある。例えば、超高分子量のポリエチレンの場合、加熱温度は140℃以下、特に130℃付近に保つのが好ましく、これは、前記温度を超えると材料の変形が起こり得るからである。より耐熱性である他の布については、乾燥温度は、好ましくは、上記のように、より高く、最も好ましくは、160℃付近である。加熱工程は、熱気流に処理された布を曝露することによって、又は熱チャンバー内に存在させることによって、又は例えばアイロニング(又は、アイロン/ironing)によって行うことができる。当業者は適切な温度選択を知っているであろう。好ましくは、加熱工程は、30秒~10分間、好ましくは1~3分間実施される。
【0025】
工程i)で処理した布は、加熱工程ii)に供する前に乾燥させることが望ましい。このような予備乾燥工程は、架橋反応が水を含まない環境で行われることが好ましいため、ポリイソシアネートの存在下で特に重要になる。組成物中にイソシアネートが存在しない場合には、加熱と乾燥を合わせることも可能となる。しかし、乾燥は通常、加熱よりも低い温度で行うことができる。加熱は、好ましくは、上記のように、例えば、120℃と200℃の間、又は145~200℃で行うが、好ましくは、乾燥は、100~140℃の間、好ましくは140℃以下で行う。したがって、このようなプレ乾燥工程は、より多くのエネルギーを節約することができる。好ましくは、乾燥は、約1~10分間、好ましくは約1~3分間実施する。
【0026】
非常に魅力的な実施形態では、組成物は、シリコン(silicon)及び/又はメラミン化合物を含まず、撥水という唯一の機能に対しては、組成物は、同様にフッ素を含まないことが好ましい。これは、その組成物中に、それらの分子骨格中にフッ素基を有する化合物が存在しないことを意味する。
【0027】
しかしながら、本発明の組成物は、撥水性だけでなく、撥油性である安定した耐摩耗性コーティングを提供するために、例えばJP2020153057に記載されているように、かつ当該技術分野で公知である末端アクリル基を含むフッ化C2-C20アルキル化合物、例えばユニダインTGシリーズ(ダイキン、ジャパン)を、魅力的な実施形態において含む。このようなフッ素アクリル酸エステル(fluor acrylic ester)を組成物中に含めることにより、このフッ素アクリル酸エステルは、上記のように式1のフッ素を含まないアクリル酸エステルとして水混和性溶媒とのエステル交換反応を受けやすく、したがって、水素架橋を介して布繊維に結合したフッ素化炭化水素部分をもたらし、存在する場合、ポリイソシアネートとの架橋に関与することができる。
【0028】
このようなフッ化アクリルエステルの提供により、撥水性だけでなく、撥油性も得られる。非常に魅力的には、フッ化アルキル化合物は式1のフッ素フリーのアクリルエステル(フッ化化合物に関しては、A2部分は、C6-C20アルキルであり、炭素原子の1~6個がフッ素で完全に置換されている)として定義される。用語「フッ素で完全に置換された」は、それぞれの炭素原子の全てのH原子がフッ素原子によって置換されていることを意味する。飽和末端炭素原子は、完全に置換されると、3つのフッ素原子を有し、そして、飽和した内部炭素、すなわち、単結合によって隣接する2つの炭素原子に挟まれた炭素は、2つのフッ素原子を有するであろう。これは、フッ素基がアルキル骨格全体に散在することを意味する。このような化合物は、例えば、WO2016/096128から公知である。非常に魅力的なことに、フッ素化合物のA2はC6アルキルであり、炭素原子の6つすべてがフッ素で完全に置換されている。
【0029】
-CF2-基の表面張力は18mN/m2であり、末端-CF2と-CF3基の表面張力はそれぞれ15mN/m2と6mN/m2であるので、末端-CF2と-CF3基、特に-CF3基を持つ分岐状フッ化アルキル化合物が好ましい。
【0030】
この組成物は、非フッ化及びフッ化アクリル酸エステルの両方の等量をw/w%で含むことが好ましい。組成物は、好ましくは0.2~20w/w%アクリルエステル、より好ましくは0.5~10w/w%、さらに好ましくは1~6w/w%のフッ化C2-C20アルキル化合物を含む。フッ化アクリル酸エステルが存在する場合、イソシアネート(存在する場合)対アクリル酸の重量比は、組成物中に存在するフッ化及びフッ素フリーアクリル酸エステルの両方の合計によって決定される。
【0031】
本発明の方法は、布又は布地(textile)の処理の代わりに、布又は布地に組み立てられる前の布繊維にも適用することができる。このような処理された繊維から布や布地を製造した場合も、同様の撥水性が得られる。
【0032】
繊維及び/又は布は、ポリエステル、ポリアミド、アクリラート、超高分子量ポリエチレン(例えば、ダイニーマ、DSM、オランダ)、綿又はアラミド、又はそれらの2つ以上の混合物から選択されることが好ましい。撥水性コーティング(repellent coating)はこれらのタイプの布に安定かつ強力に結合されることが分かった。この目的のために、布は、ポリエステル及び/又はポリアミド、より好ましくはポリエステルを含むことが好ましい。
【0033】
工程i)の処理は、組成物中に布を浸漬するか、又は組成物を布に噴霧することから選択することが好ましい。浸漬とは、布が組成物に浸かっていることを意味する。浸漬が好ましいが、噴霧は非常に魅力的な家庭用器具であり、布は組成物を含むエアロゾルから噴霧され得、その後、熱処理をアイロニングで行うことができる。工業環境では、処理された布は、過剰な液体組成物を除去するために、浸漬され、続いてパディング加工される(padded)ことが好ましい。
【0034】
別の態様において、本発明は、上述のように、織布又は不織布に耐久性のある撥水性を付与するための組成物に関する。
【0035】
さらに別の態様において、本発明は、特に本明細書に記載されるような、組成物で処理された、本明細書に記載される繊維、織布又は不織布に関する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を、本発明の方法のために可能な工業的設定を示す、実施例及び図を用いてさらに説明する。
【0037】
矢印は、案内ローラー2によって案内される布1の搬送方向を反映している。プロセスは、例えば中断することなく、連続的である。布1は、本発明の組成物4を含むバス3に浸漬される。バス3を離れた後、布4は2つのパディングロール5を通過し、布から過剰な液体組成物を絞り込む。この布は、例えば130℃の温度である乾燥チャンバー6内の熱気で乾燥され、最終的には、温度が例えば160℃である加熱チャンバーに入る。
【0038】
実施例
<撥水>
PES1布135gr/m2及びPES2布190gr/m2(MB Sportswear,アイントホーフェン オランダ)の試料を、Iso 6330 3G又は4Hの方法に従って100回洗濯した。
【0039】
洗濯後、ISO 4920(バージョン2012-12)噴霧法により撥水性を測定する。
業務用の洗濯サイクル:
【0040】
プログラムExpress2.0を用いたMiele Twindos(ドイツ)型の市販の洗濯機と、洗剤Colour Reus extra strong fort stains, extra clean(ヘンケル、ドイツ)を使用する方法に従い、120回洗濯後にIso 4920噴霧法で測定した撥水性。プログラム仕様と洗剤の内容物をそれぞれ表1と表2に示す。
表1:洗濯プログラム
【0041】
<撥油性>
撥油性は、AATCC118法118-1997に従って、上記のように試料を100回洗濯した後で測定する。
【0042】
<試料調製>
布試料はリールから15×15cm、コーティングエマルジョンに布を1分間浸漬して切断した。非コーティング布を重複して(in duplo)秤量した。浸漬後、コーティングした試料を、パディング工程用の手動コーティングユニット(RKプリント)のゴムスリーブ上に置いた。重さ10kgのスムースなローラーを用いて、過剰のエマルジョンを、布の上にローラーを2回ローリングすることによって絞り出した。
【0043】
試料を、強制空気換気を伴うオーブン中で130℃にて3分間乾燥し、続いて、試料を160℃で1分間硬化した。硬化後、試料を再度秤量した(weighted)。
【0044】
実施例1~8で使用できる組成を表3に示す。実験は表4に示した組成で行った。
【0045】
実施例1、3、5-10では、ポリエステルの織布PES135gr/m2(’pique’)(MB Sportswear,アイントホーフェン オランダ)が使用されたが、実施例2及び4では、195gr/m2’smooth’(MB Sportswear,アイントホーフェン オランダ)が使用された。
【0046】
洗濯サイクルと、タンブル乾燥機(AEG Lavatherm Protex plus、AEG、ドイツ、プログラム設定「cotton extra dry」)での乾燥後、全ての実施例がそれらの撥水性を保持することが観察された。初回洗濯前及び100回又は120回の洗濯後の全試料についてグレードiso 5を測定した。グレード5は、上面の付着や湿潤が認められなかったことを意味する。
【0047】
浸漬を噴霧に置き換え、前述のようにパディング加工をタンブル乾燥機でのタンブリングに置き換えた場合も、実施例1と3で同じことが言えた。加熱は、布製造者のアイロン処方に従い、例えば実施例1の150℃(レベル**)及び実施例2の200℃(レベル***)にて、アイロンをかけて行った。また、これらの試料について、初回洗濯前及び100回又は120回の洗濯後の全サンプルについてグレードiso 5を測定した。
【0048】
AATCC118に従って測定した実施例3、4、8~10の撥油性は、100~120回の洗濯、続いて上記のタンブル乾燥後、グレード5~6であった。
【0049】
しかし、ライン乾燥の場合、すなわち乾燥布を加熱しない場合、ポリイソシアネートで架橋したコーティングは、タンブル乾燥後のすべてのコーティングの結果と比較して安定に結合したままであったが、イソシアネート(NCO)架橋を含まないコーティングは、10~12回の洗濯サイクル後に布から剥がれ落ちる傾向があることが観察された。表5を参照のこと。重量比アクリル酸エステル:ポリイソシアネートが30を超えると、最良の結合を与えることを観察した。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布又は不織布に耐久性のある撥水性を付与する方法であって、
i)シリコン化合物フリーの水性組成物で前記布を処理する工程であって、前記組成物が、
a. 少なくとも80w/w%の水と、少なくとも2つの官能性OH基を含む20w/w%以下の水混和性有機溶媒と、を含む水性溶媒、及び
b. A
1はH又はCH
3であり、A
2はC
1-C
30の直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、脂環式又は芳香族環を有してもよい炭化水素として、式1:
を有する0.1~40w/w%のアクリル酸エステルであって、前記アクリル酸エステルは、前記水性溶媒中で溶解、乳化又は分散されている、該エステル、を含む、該工程と、
ii)前記処理された布を120~200℃に加熱する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記水混和性溶媒が、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール及びヘキシレングリコールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも3つの架橋可能なイソシアネート基を含むポリイソシアネートをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
重量比アクリル酸エステル:イソシアネートが100:5~100、好ましくは100:30~80、より好ましくは100:50~70、最も好ましくは100:60である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、末端アクリル基を含むフッ化C
2-C
20アルキル化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
織物又は不織布に耐久性のある撥水性を付与するための、フッ素及びシリコン化合物フリーの組成物であって、前記組成物は、
a. 少なくとも80w/w%の水、及び、少なくとも2つの官能性OH基を含む20w/w%以下の水混和性有機溶媒を含む水性溶媒、及び
b. A
1はH又はCH
3であり、A
2はC
1-C
30の直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、脂環式又は芳香族環を有してもよい炭化水素として、式1
を有する0.1~40w/w%のアクリル酸エステルであって、
前記アクリル酸エステルは、前記水性溶媒中に溶解、乳化又は分散されている、該エステル、を含む、該組成物。
【請求項7】
前記水混和性溶媒が、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール及びヘキシレングリコールからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも3つの架橋可能なイソシアネート基を含むポリイソシアネートをさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
重量比アクリル酸エステル:イソシアネートが100:5~100、好ましくは100:30~80、より好ましくは100:50~70、最も好ましくは100:60である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項6の組成物で処理された織布又は不織布。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
しかし、ライン乾燥の場合、すなわち乾燥布を加熱しない場合、ポリイソシアネートで架橋したコーティングは、タンブル乾燥後のすべてのコーティングの結果と比較して安定に結合したままであったが、イソシアネート(NCO)架橋を含まないコーティングは、10~12回の洗濯サイクル後に布から剥がれ落ちる傾向があることが観察された。表5を参照のこと。重量比アクリル酸エステル:ポリイソシアネートが30を超えると、最良の結合を与えることを観察した。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
織布又は不織布に耐久性のある撥水性を付与する方法であって、
i)水性組成物で前記布を処理する工程であって、前記組成物が、
a. 少なくとも80w/w%の水と、少なくとも2つの官能性OH基を含む20w/w%以下の水混和性有機溶媒と、を含む水性溶媒、及び
b. A
1はH又はCH
3であり、A
2はC
1-C
30の直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、脂環式又は芳香族環を有してもよい炭化水素として、式1:
を有する0.1~40w/w%のアクリル酸エステルであって、前記アクリル酸エステルは、前記水性溶媒中で溶解、乳化又は分散されている、該エステル、を含む、該工程と、
ii)前記処理された布を120~200℃に加熱する工程と、を含む方法。
<請求項2>
前記水混和性溶媒が、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール及びヘキシレングリコールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
<請求項3>
前記水混和性溶媒がトリプロピレングリコールを含む、請求項2記載の方法。
<請求項4>
前記水性溶媒が、水90~99.9w/w%及び水混和性溶媒0.1~10w/w%、好ましくは、水95~99.8w/w%及び水混和性溶媒0.2~5w/w%、又は水95~99w/w%及び混和性有機溶媒1~5w/w%を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
<請求項5>
前記組成物が、アクリル酸エステルを0.2~20w/w%、好ましくは0.5~10w/w%、より好ましくは1~6w/w%含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
<請求項6>
前記アクリル酸エステルのA
2が12~24個の炭素原子、好ましくは12~21個の炭素原子、より好ましくは18個の炭素原子を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
<請求項7>
前記アクリル酸エステルのA
2がアルキルである、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
<請求項8>
前記アクリル酸エステルのA
2が分岐している、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
<請求項9>
少なくとも3つの架橋可能なイソシアネート基を含むポリイソシアネートをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
<請求項10>
前記ポリイソシアネートが水性のブロックポリイソシアネートである、請求項9記載の方法。
<請求項11>
重量比アクリル酸エステル:イソシアネートが100:5~100、好ましくは100:30~80、より好ましくは100:50~70、最も好ましくは100:60である、請求項9又は10記載の方法。
<請求項12>
工程i)の前記処理された布が、工程ii)の前に乾燥される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法
<請求項13>
前記布を100~140℃にて乾燥させる、請求項12に記載の方法。
<請求項14>
工程ii)において、前記加熱が130~200℃、好ましくは140~200℃、より好ましくは145~200℃、さらに好ましくは145~180℃、さらに好ましくは150~170℃にて行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
<請求項15>
前記加熱工程が30秒~10分間行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
<請求項16>
前記組成物がシリコン及びメラミン化合物を含まない、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
<請求項17>
前記組成物がフッ素フリーである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
<請求項18>
前記組成物が、末端アクリル基を含むフッ化C
2-C
20アルキル化合物をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
<請求項19>
前記フッ化アルキル化合物がC
6-C
20アルキルであり、前記炭素原子の1~6個がフッ素で完全に置換されている、請求項18記載の方法
<請求項20>
前記フッ化アルキル化合物が分岐している、請求項18又は19に記載の方法
<請求項21>
前記組成物が、w/w%で、非フッ化及びフッ化アクリル酸エステルの両方の等量を含む、請求項18~20のいずれかに記載の方法。
<請求項22>
前記繊維が、ポリエステル、ポリアミド、アクリレート、超高分子量ポリエチレン、綿又はアラミド、又はそれらの2種以上の混合物から選択され、前記繊維が、好ましくは、ポリエステル及び/又はポリアミド、より好ましくはポリエステルを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
<請求項23>
工程i)の前記処理が、前記組成物中に前記布を浸漬すること、又は前記組成物を前記布上に噴霧することから選択される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
<請求項24>
前記処理された布が、乾燥又は加熱される前にパディング加工される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
<請求項25>
織物又は不織布に耐久性のある撥水性を付与するための組成物であって、前記組成物は、
a. 少なくとも80w/w%の水、及び、少なくとも2つの官能性OH基を含む20w/w%以下の水混和性有機溶媒を含む水性溶媒、及び
b. A
1はH又はCH
3であり、A
2はC
1-C
30の直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、脂環式又は芳香族環を有してもよい炭化水素として、式1:
を有する0.1~40w/w%のアクリル酸エステルであって、前記アクリル酸エステルは、前記水性溶媒中で溶解、乳化又は分散されている、該エステル
を含む、該組成物。
<請求項26>
前記水混和性溶媒が、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール及びヘキシレングリコールからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
<請求項27>
前記水混和性溶媒がトリプロピレングリコールを含む、請求項26の組成物。
<請求項28>
前記水性溶媒が、90~99.9w/w%の水及び0.1~10w/w%の前記水混和性溶媒、好ましくは95~99.8w/w%の水及び0.2~5w/w%の前記水混和性溶媒、又は95~99w/w%の水及び1~5w/w%の混和性有機溶媒を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物。
<請求項29>
前記組成物が、アクリル酸エステルを0.2~20w/w%、好ましくは0.5~10w/w%、より好ましくは1~6w/w%を含む、請求項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
<請求項30>
前記アクリルエステルのA
2が12~24個の炭素原子、好ましくは12~21個の炭素原子、より好ましくは18個の炭素原子を有する、請求項25~29のいずれか一項に記載の組成。
<請求項31>
前記アクリル酸エステルのA
2がアルキルである、請求項25~30のいずれか一項に記載の化合物。
<請求項32>
前記アクリル酸エステルのA
2が分岐している、請求項25~31のいずれか一項に記載の化合物。
<請求項33>
少なくとも3つの架橋可能なイソシアネート基を含むポリイソシアネートをさらに含む、請求項26~32のいずれか一項に記載の組成物。
<請求項34>
前記ポリイソシアネートが水性のブロックポリイソシアネートである、請求項33記載の組成物。
<請求項35>
重量比アクリルエステル:イソシアネートが100:5~100、好ましくは100:30~80、より好ましくは100:50~70、最も好ましくは100:60である、請求項32又は33に記載の組成物。
<請求項36>
組成物がシリコン及びメラミン化合物を含まない、請求項25~35のいずれか一項に記載の組成物。
<請求項37>
前記組成物がフッ素フリーである、請求項25~36のいずれか一項に記載の組成物。
<請求項38>
前記組成物が、末端アクリル基を含むフッ化C
2-C
20アルキル化合物をさらに含む、請求項25~36のいずれか一項記載の組成物。
<請求項39>
前記フッ化アルキル化合物がC
6-C
20アルキルであり、前記炭素原子の1~6個はフッ素で完全に置換されている、請求項38に記載の組成物
<請求項40>
前記フッ化アルキル化合物が分岐している、請求項38又は39に記載の組成物。
<請求項41>
前記組成物が、w/w%で、非フッ素化及びフッ素化アクリルエステルの両方の等量を含む、請求項38~40のいずれか一項記載の組成物。
<請求項42>
請求項25~41のいずれかの組成物で処理された織布又は不織布。
<請求項43>
前記布が、ポリエステル、ポリアミド、アクリレート、超高分子量ポリエチレン、綿又はアラミド、又はそれらの2種以上の混合物から選択され、前記布は、好ましくは、ポリエステル及び/又はポリアミド、より好ましくは、ポリエステルを含む、請求項42に記載の織物又は不織布。
【国際調査報告】