(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】血管内血液ポンプロータ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/174 20210101AFI20240315BHJP
A61M 60/221 20210101ALI20240315BHJP
A61M 60/419 20210101ALI20240315BHJP
A61M 60/411 20210101ALI20240315BHJP
A61M 60/824 20210101ALI20240315BHJP
A61M 60/82 20210101ALI20240315BHJP
A61M 60/806 20210101ALI20240315BHJP
【FI】
A61M60/174
A61M60/221
A61M60/419
A61M60/411
A61M60/824
A61M60/82
A61M60/806
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561861
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2022023486
(87)【国際公開番号】W WO2022216713
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グラウウィンケル,マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジム-ポウ
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホフス,ウルフギャング
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077BB10
4C077DD10
4C077EE01
4C077KK23
(57)【要約】
開示されるのは、血液ポンプロータ、及びロータを用いる血管内血液ポンプである。血液ポンプロータは、回転軸の周りを回転するように構成されるとともに先端部分と基端部分とを含む。先端部分は、先端方向において先細になっているロータハブを含む。ロータハブは、ロータハブから外向きに延在する少なくとも1つのブレードを有する。さらに、前記ロータハブの先端部は、少なくとも1つのブレードの最先端部分を越えて先端側に延在する。先端部分に接続される基端部分は、先端方向における磁束より大きい基端方向における磁束を有する磁界を生じる修正ハルバッハ配列を形成するように配置された永久磁石を有し、前記第1磁束は前記第2磁束より大きい。ハルバッハ配列は、(a)少なくとも1つの軸方向着磁磁石が、少なくとも1つの円周方向着磁磁石の表面の最も基端側のポイント又は部分と比べて前記先端部から異なる距離の表面の最も基端側のポイント又は部分を有する、(b)少なくとも1つの軸方向着磁磁石が、少なくとも1つの円周方向着磁磁石の対応する物理的寸法と異なる物理的寸法を有する、又は(c)その組合せのいずれかであるように修正される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内血液ポンプロータであって、
先端方向において先細であるとともに回転軸の周りを回転するように構成されたロータハブを有する先端部分であって、少なくとも1つのブレードが前記ロータハブから外向きに延在し、前記ロータハブの先端部が、前記少なくとも1つのブレードの最先端部分を越えて先端側に延在する、先端部分と、
基端方向における第1磁束と先端方向における第2磁束とを有する磁界を生じる修正ハルバッハ配列を形成するように配置された永久磁石を有する前記先端部分に接続された基端部分であって、前記第1磁束が前記第2磁束より大きく、前記修正ハルバッハ配列が、軸方向着磁磁石と円周方向着磁磁石との交互の配置構成を含む、基端部分と
を含み、
前記軸方向着磁磁石の少なくとも1つが、前記円周方向着磁磁石の少なくとも1つの表面の最も基端側のポイント又は部分と比べて前記先端部から異なる距離の表面の最も基端側のポイント又は部分を有する血管内血液ポンプロータ。
【請求項2】
各円周方向着磁磁石の基端面が前記先端部から軸方向に第1距離のところにあり、各軸方向着磁磁石の基端面が前記先端部から軸方向に第2距離のところにあり、前記第2距離が前記第1距離より大きい、請求項1に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項3】
前記第1距離と前記第2距離との差が1~7mmである、請求項1に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項4】
前記円周方向着磁磁石の前記基端面のうちの少なくとも2つが同一平面にない、請求項1に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項5】
血流入口と血流出口とを有するポンプケーシングと、
請求項1に記載の血管内血液ポンプロータと、
前記血管内血液ポンプロータと磁気的に相互作用することができる電気駆動ユニットと
を含む血管内血液ポンプ。
【請求項6】
前記電気駆動ユニットが2、4、又は6極の固定子を含む、請求項5に記載の血管内血液ポンプ。
【請求項7】
各円周方向着磁磁石が、各軸方向着磁磁石よりも前記電気駆動ユニットの先端部からさらに離れている、請求項5に記載の血管内血液ポンプ。
【請求項8】
前記血管内血液ポンプが軸方向タイプの血液ポンプである、請求項5に記載の血管内血液ポンプ。
【請求項9】
血管内血液ポンプロータであって、
先端方向において先細であるとともに回転軸の周りを回転するように構成されたロータハブを有する先端部分であって、少なくとも1つのブレードが前記ロータハブから外向きに延在し、前記ロータハブの先端部が、前記少なくとも1つのブレードの最先端部分を越えて先端側に延在する、先端部分と、
基端方向における第1磁束と先端方向における第2磁束とを有する磁界を生じる修正ハルバッハ配列を形成するように配置された永久磁石を有する前記先端部分に接続された基端部分であって、前記第1磁束が前記第2磁束より大きく、前記修正ハルバッハ配列が、軸方向着磁磁石と円周方向着磁磁石との交互の配置構成を含む、基端部分と
を含み、
前記軸方向着磁磁石の少なくとも1つが、前記円周方向着磁磁石の少なくとも1つの対応する物理的寸法と異なる物理的寸法を有する血管内血液ポンプロータ。
【請求項10】
前記永久磁石の各々が、前記回転軸から離れるように半径方向に延在する2つの側面を含み、前記複数の永久磁石の各々の前記2つの側面が、2つの平行な平面、2つの非平行な平面、又は凹形曲面及び凸形曲面のいずれかを形成する、請求項9に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項11】
前記永久磁石が各々、前記回転軸を中心とした円の弧を形成する断面形状を備えた外面を有し、前記回転軸から各弧がなす角度が1°~89°である、請求項9に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項12】
前記永久磁石が第1磁石と第2磁石とを含み、前記第1磁石から弧がなす角度が、前記第2磁石から弧がなす角度と異なる、請求項11に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項13】
前記角度の少なくとも1つが45°より大きい、請求項12に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項14】
前記角度の少なくとも1つが45°未満である、請求項13に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項15】
前記物理的寸法が、各磁石の外面の断面により形成された弧の長さを含む、請求項9に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項16】
前記物理的寸法が軸方向における各磁石の長さを含む、請求項9に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項17】
前記物理的寸法が、各磁石の外面の断面により形成された弧の長さと、軸方向における各磁石の長さとを含む、請求項9に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項18】
少なくとも1つの円周方向着磁磁石の基端面に、基端方向において軸方向に延在するブレードをさらに含む、請求項9に記載の血管内血液ポンプロータ。
【請求項19】
血流入口と血流出口とを有するポンプケーシングと、
請求項9に記載の血管内血液ポンプロータと、
前記血管内血液ポンプロータと磁気的に相互作用することができる電気駆動ユニットと
を含む血管内血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2021年4月8日に出願された米国仮特許出願第63/172,393号の優先権を主張し、この仮特許出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
本開示は、患者の血管における血流を支持するための血液ポンプ、特に、患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプのためのロータに関する。血液ポンプは、効率が高まり血液ポンプの外径が減少することを可能にする改良されたロータを有する。
【背景技術】
【0003】
異なるタイプの血液ポンプ、例えば軸方向血液ポンプ、遠心力(すなわち半径方向)血液ポンプ又は混合タイプの血液ポンプが知られており、血流は軸方向力及び半径方向力の両方により引き起こされる。血管内血液ポンプはカテーテルにより患者の血管、例えば大動脈に挿入される。血液ポンプは典型的には、通路により接続された血流入口と血流出口とを有するポンプケーシングを含む。血流入口から血流出口への通路に沿った血流を引き起こすために、ロータがポンプケーシング内に回転可能に支持され、ロータには血液を搬送するためのブレードが設けられる。
【0004】
血液ポンプは典型的には、電気モータであり得る駆動ユニットにより駆動される。例えば、米国特許出願公開第2011/0238172Al号は、電気モータ磁気的に結合され得る羽根車を有する体外血液ポンプを開示する。ロータは、電気モータにおける磁石に隣接して配置された磁石を含む。羽根車及びモータにおける磁石間の引力を原因として、モータの回転がロータに伝えられる。回転部品の数を減らすために、回転磁界を用いることが米国特許出願公開第2011/0238172Al号から同様に知られており、駆動ユニットは回転軸を中心として配置された複数の静止ポストを有し、各ポストは、巻き付いており磁気コアとして機能するワイヤコイルを担持する。制御ユニットが電圧をコイル巻線に順次供給して回転磁界を作り出す。十分に強い磁気的結合を提供するために、磁力は十分に高くなければならず、これは駆動ユニットに供給された十分に大きい電流により又は大きい磁石を提供することにより達成され得るが、しかしながらこれにより血液ポンプの全径が大きくなる。しかしながら、高いエネルギー消費及び発熱がそのような駆動ユニットにおいて生じ得る。
【0005】
駆動効率を高めるため、血液ポンプは、典型的には、一般に強磁性鉄からなるとともにロータと固定子の組合せの両側に配置された磁気ヨークを用いる。例えば、米国特許第8,870,552号は、前側及び後ろ側巻線の間に挟まれたロータを備えた回転血液ポンプを開示し、ポンプは、前側巻線の外側に円すい形強磁性鉄ヨーク、及び後ろ側巻線の外側に環状の鉄の強磁性ヨークを使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
概要
したがって、駆動ユニットと羽根車との間に磁気的結合を有する血液ポンプ、好ましくは血管内血液ポンプ又は経弁血液ポンプを提供することが本開示の目的であり、血液ポンプは、血液ポンプが経血管的に、経静脈的に、経動脈的に又は経弁的に挿入されることを可能にするようにコンパクトな設計、特に十分に小さい外径を有する。さらに、血液ポンプが長期間にわたる用途にとって特に有用である、磁気ヨークを必要とせずに患者の可動性を提供するためにバッテリ駆動式であり得る血液ポンプの熱及びエネルギー消費を減少させることが本開示の目的である。
【0007】
この目的は、独立項の特徴を有する血液ポンプロータにより本開示により達成される。本開示の好ましい実施形態及びさらなる展開形態はそれに従属するクレームにおいて特定される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によると、血液ポンプロータは回転軸の周りを回転するように構成される。これは先端部分と基端部分とを含む。先端部分は、先端方向において先細になっているロータハブを含む。ロータハブは、ロータハブから外向きに延在する少なくとも1つのブレードを有する。さらに、前記ロータハブの先端部は、少なくとも1つのブレードの最先端部分を越えて先端側に延在する。先端部分に接続される基端部分は、先端方向における磁束より大きい基端方向における磁束を有する磁界を生じる修正ハルバッハ配列を形成するように配置された永久磁石を有し、前記第1磁束は前記第2磁束より大きい。
【0009】
修正ハルバッハ配列は、軸方向着磁磁石と円周方向着磁磁石との交互の配置構成を用い、ハルバッハ配列は、3つの方法のうちの1つで修正され得る。
【0010】
第1態様において、少なくとも1つの軸方向着磁磁石は、少なくとも1つの円周方向着磁磁石の最も基端側の面と比べて先端部から異なる距離の最も基端側の面を有する。第1態様の好ましい実施形態において、各円周方向着磁磁石の表面の最も基端側のポイントは、各軸方向着磁磁石の表面の最も基端側のポイントよりも先端部により近く、一般に1mm~7mmの範囲でより近い。換言すると、軸方向着磁磁石は、円周方向着磁磁石よりも血液ポンプの電気駆動ユニットのより近くにあるように構成される。さらに、基端面は回転軸に直交し得るが、いくつかの実施形態において、磁石の基端面は成形されてもよく、したがって、基端面は非回転軸に直交してもよく、場合により、円周方向着磁磁石の少なくとも2つは同一平面上になくてもよい。
【0011】
非修正ハルバッハ配置構成において、配列における各磁石の物理的寸法は同一であり、磁化の方向のみ異なる。修正ハルバッハ配列の第2態様において、少なくとも1つの軸方向着磁磁石は、少なくとも1つの円周方向着磁磁石の対応する物理的寸法と異なる物理的寸法を有する。例えば、いくつかの実施形態において、各永久磁石は回転軸から離れるように半径方向に延在する2つの側面を含み、各磁石のための2つの側面は、(a)2つの平行な平面、(b)2つの非平行な平面、又は(c)凹形曲面及び凸形曲面のいずれかを形成する。
【0012】
磁石に沿った所与の軸方向距離において、半径方向における各磁石の外面は、磁石間で長さが異なり得る弧を形成し(すなわち外面は回転軸を中心とした円の弧を形成する断面形状を有する)。いくつかの実施形態において、回転軸から各弧がなす角度は1°~89°であり、2つの異なる磁石はなす角度が異なり得る。いくつかの実施形態において、角度の少なくとも1つは45度より大きく、及び/又は角度の少なくとも1つは45度未満である。追加的に、又は代替的に、磁石の1つ又は複数は、軸方向において、配列における1つ又は複数の他の磁石より長くてもよい。
【0013】
第3態様において、第1及び第2態様が組み合わされる、すなわち、少なくとも1つの軸方向着磁磁石は、少なくとも1つの円周方向着磁磁石の最も基端側の面と比べて先端部から異なる距離である最も基端側の面を有し、少なくとも1つの軸方向着磁磁石は、少なくとも1つの円周方向着磁磁石の対応する物理的寸法と異なる物理的寸法を有する。
【0014】
これらの血液ポンプロータは、部分的に軸方向に及び部分的に半径方向に圧送する軸方向血液ポンプ又は斜流血液ポンプであり得る血管内血液ポンプに組み込まれることができる、(純粋な遠心力血液ポンプの直径は、通常は血管内用途には大きすぎる)。典型的には、血液ポンプは、血流入口と血流出口とを有するポンプケーシング、血管内血液ポンプロータ、及び前記血管内血液ポンプロータと磁気的に相互作用することができる電気駆動ユニット(これは2、4、又は6極の固定子を含み得る)を含む。いくつかの実施形態において、各円周方向着磁磁石は、各軸方向着磁磁石よりも電気駆動ユニットの先端部からさらに離れている。
【0015】
電気駆動ユニットは回転電磁界を作り出し、一般的な電気モータと比べて移動部品の数を減らすことにより血液ポンプのメカニクスの単純化を可能にする。これはまた、電気モータのための接触軸受が必要無いため摩耗を減少させる。駆動ユニットと羽根車との間の磁気的結合は、羽根車の回転を引き起こすだけでなく、羽根車の正しい整列も可能にする。
【0016】
駆動ユニットの先端面は、平らであり得る又は回転軸に直交し得る、又は斜め又は傾斜し得る。駆動ユニットの先端面は、回転軸を含む平面に沿った断面において実質的に三角形又は台形である。組み立てられた状態において、駆動ユニットの先端面は、円すい形表面又は実質的に円すい形の表面、例えば小平面を有するが略円すい形の表面を形成する表面を形成し得る。概して、形成された表面の形状は凸形であり得る。例証として言えば、駆動ユニットの部分は、円すい形頂部表面を有する円形の配置構成を形成するようにパイのスライスのように合わせられ得る。
【0017】
ロータの磁石は、駆動ユニットの先端面により形成された円すい形表面にサイズ及び形状において実質的に対応する円すい形又は実質的に円すい形の凹部を有し得るか形成し得る。概して、磁石は、駆動ユニットにより形成された凸形表面の方を向いている凹形表面を形成し得、磁気的結合を向上させ得る。別の実施形態において、凹形及び凸形表面の配置構成は逆もまた同様であり得る、すなわち、ロータ磁石が凸形円すい形表面を形成する一方で、駆動ユニットの先端面は円すい形凹部を形成し得る。
【0018】
駆動ユニットの先端面及び基端面はロータは間隙により分離される。ロータと駆動ユニットとの間の間隙の形状及び寸法は流体力学軸受能力に寄与し得る。
【0019】
ハルバッハ配列は一般に、複数の磁石、例えば4つ以上、及び好ましくは少なくとも8つの磁石として提供される。様々な実施形態は、回転軸を中心として羽根車において配置された6つの磁石、8つ、10個、12個、14個、16個、又は24個の磁石を用いる。好ましくは、偶数の磁石が提供される、より好ましくは、固定子の極の数の倍数の数がデッドゾーンを回避する又は最小化するのに有利である。磁気材料の量を増加するために、磁石は、個々の磁石間に間隙が実質的に無い状態で配置され得る。しかしながら、磁石が間隙、特に半径方向に延在する間隙により分離される場合、磁気的結合の効率は低減しないことが分かっている。これは磁界の特徴及び駆動ユニットと羽根車との間の間隙のためである。ロータにおける磁石が互いに近くにある場合、1つの磁石(北)から隣接する磁石(南)へ弧を描いて延在する最内磁界線は、駆動ユニットと羽根車との間の間隙を越えて延在せず、したがって、駆動ユニットに到達しない、すなわち、それらは羽根車の駆動に寄与しない。したがって、羽根車における磁石の間に提供される場合、効率の損失は無い。駆動の効率の損失無しに設けられ得る羽根車における磁石間の間隙のサイズは、当業者が算出し得るとおり、羽根車と駆動ユニットとの間の間隙のサイズに依存する。羽根車磁石間の間隙はこのとき、例えば洗い出しチャネルとして使用され得る。
【0020】
ロータと駆動ユニットとの間の間隙を通る洗い出し流を高めるために、ブレードの補助セットがロータに提供され得る。特に、補助ブレードが、駆動ユニットの方を向く1つ又は複数の磁石の側面に、すなわち、ロータと駆動ユニットとの間の間隙において提供され得る。好ましい実施形態において、円周方向着磁磁石の1つ又は複数は、磁石の基端面に接続されたか磁石の基端面上で形成された1つ又は複数の補助ブレードを含み得る、基端方向において基端面から離れるように軸方向に延在する。軸方向及び円周方向着磁磁石の基端面が駆動ユニットから異なる距離にある実施形態において、補助ブレードは好ましくは、軸方向着磁磁石の最も基端側の部分を越えて延在しない。
【0021】
洗い出し流は、追加的に又は代替的に、駆動ユニットの方を向いた磁石の表面において凹まされたチャネルにより増加し得る。チャネルは例えば半径方向に又はらせん状に延在し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図面の簡単な説明
【
図1】血液ポンプロータ及び駆動ユニットの実施形態の図である。
【
図2A】円筒形ハルバッハ配列を形成する磁石の配置構成の図である。
【
図2B】ハルバッハ配列をもたらす磁石の磁化のための一実施形態及び結果としての磁束の図である。
【
図3A】配列の端部分に焦点を合わせた、修正ハルバッハ配列の実施形態の投影図である。
【
図3B】修正ハルバッハ配列の一実施形態の側面図の単純化した図である。
【
図3C】修正ハルバッハ配列の代替的実施形態の側面図の単純化した図である。
【
図3D】配列の端部分に焦点を合わせた、修正ハルバッハ配列の別の実施形態の投影図である。
【
図4A】修正ハルバッハ配列の実施形態における磁石の単純化した図である。
【
図4B】修正ハルバッハ配列の実施形態のための磁石の代替的構成の断面図である。
【
図4C】修正ハルバッハ配列の実施形態のための磁石の代替的構成の断面図である。
【
図4D】修正ハルバッハ配列の実施形態のための磁石の代替的構成の断面図である。
【
図4E】修正ハルバッハ配列の実施形態のための磁石の代替的構成の断面図である。
【
図4F】修正ハルバッハ配列の実施形態のための磁石の代替的構成の断面図である。
【
図5A】修正ハルバッハ配列の代替実施形態の投影図である。
【
図5B】修正ハルバッハ配列の代替実施形態の投影図である。
【
図5C】修正ハルバッハ配列の代替実施形態の投影図である。
【
図6A】補助ブレードが円周方向着磁磁石にある修正ハルバッハ配列の一実施形態の投影図である。
【
図6B】補助ブレードの代替的実施形態の断面図を示す。
【
図6C】補助ブレードの代替的実施形態の断面図を示す。
【
図6D】補助ブレードの代替的実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
図1Aを参照すると、血管内血液ポンプロータの断面図が示されている。ロータ1は先端部分10と基端部分20とを有する。基端部分20は先端部分10の基端に接続される。
【0024】
ロータ1(これは羽根車と呼ばれることもあり得る)は、第1軸受31及び第2軸受32により回転軸5を中心として回転するように構成される。軸受31、32は両方ともこの実施形態において接触タイプの軸受である。しかしながら、軸受31、32の少なくとも1つは、磁気又は流体力学軸受など非接触タイプの軸受であり得る。第1軸受31は、いくらかの程度枢動運動のみならず回転運動も可能にする球状の軸受表面を有する枢動軸受である。
【0025】
先端部分10は、ロータハブ11の最先端部12に向かって先端方向において先細であるロータハブ11を含む。第2軸受32は典型的には、ロータハブ11の最先端部12でロータ1に接続される。ロータ1が回転したときに血液を搬送するために、少なくとも1つのブレード15がロータ1に提供される。ブレード15はいずれも、一般にロータハブ11に接続される。ロータハブ11の先端部12は、ブレード15の最先端部分を越えて先端側に延在する。
【0026】
基端部分20は、修正ハルバッハ配列を形成するように配置された永久磁石21を含む。
【0027】
図2Aを手短に参照すると、標準的な円筒形ハルバッハ配列は典型的には複数の磁石51、52、53、54からなる。各磁石は一般に磁化方向を除いて同一である。標準的な円筒形ハルバッハ配列において、全ての磁石の基端面は概ね整列させられており、各磁石は、外面55と、回転軸5に最も近い内面58と、回転軸5から離れるように半径方向に延在する2つの側面56、57とを有する。各磁石の外面55は、概して、回転軸5を中心とした円の弧を形成する断面形状を有し、各回転軸5から弧がなす角度59がある。
【0028】
図2Bを参照すると、従来のハルバッハ配列100は、円周方向着磁磁石101(例えば2つの極105、106が実質的に円周方向に分離されている)及び軸方向着磁磁石102(例えば2つの極が実質的に軸方向に分離されている)の交互の配置構成を含む。各磁石の基端面103及び先端面104は、配列における他の磁石の基端及び先端面と(形状及び軸方向/半径方向位置において)実質的に同一である。全ての磁石の基端面103は、配列におけるどの磁石のいずれの部分も配列における別の磁石のそれぞれの部分を越えて延在しないように、典型的には実質的に整列させられている。この配置構成において、ハルバッハ配列は、一方側で比較的強い磁束及び反対側で比較的弱い磁束を呈する。
【0029】
強い/弱い磁束を、典型的になされるように半径方向に生じさせるよりむしろ、本開示の修正ハルバッハ配列は、これらの強い/弱い磁束を軸方向に生じさせる。すなわち、ここで開示されたロータにおける修正ハルバッハ配列は、基端方向における第1磁束120と先端方向における第2磁束110とを有する磁界を生じさせる。第1磁束120は第2磁束110より大きい。
【0030】
追加的に、
図2A及び2Bに示された従来の円筒形ハルバッハ配列は、本開示における使用のために3つの方法のうちの1つで修正される。
【0031】
第1修正アプローチ
第1修正アプローチは軸方向における磁石の配置構成を修正することである。この技術は、ハルバッハ配列における軸方向及び円周方向着磁磁石の基端面の位置付け及び/又は向きに違いを作り出すことを伴う。
【0032】
特に、
図3Aに示されるとおり、本開示のハルバッハ配列200は、回転軸220の周りで円筒形配置構成になっている交互の円周方向着磁磁石201と軸方向着磁磁石202とを含む。少なくとも1つの軸方向着磁磁石202の基端面212は、少なくとも1つの円周方向着磁磁石201の基端面211とは軸方向に沿って異なる距離である。
図3Aにおいて分かるとおり、軸方向着磁磁石の外面205の一部は、少なくとも1つの円周方向着磁磁石201の基端面211を越えて基端側に延在し得る。
【0033】
これの様々な実施形態は、
図3B、3C、及び3Dを参照して示され得る。これらの2つの図は、本開示による修正ハルバッハ配列の実施形態における磁石の最も基端側の部分の単純化された図である。
【0034】
特に、
図3Bは、2つの軸方向着磁磁石301、305及び1つの円周方向着磁磁石303の基端部の側面図を示す単純化された図を提供し、各磁石の最も基端側の面は回転軸310に直交する。この実施形態における各磁石の基端面は回転軸に直交しているため、基端面の任意のポイント又は部分が当該磁石の最も基端側のポイント又は部分とみなされることに留意されたい。
【0035】
図における最も基端側の面302、304、305が平らであるため、任意のポイントが最も基端側の部分とみなされることができ、したがって、軸方向着磁磁石301及び円周方向着磁磁石303の最も基端側の部分の軸方向位置の差309が容易に決められ得る。
【0036】
磁石の物理的寸法が同一である場合、軸方向位置付けのこの差は、単純に円周方向着磁磁石と比較して軸方向着磁磁石の軸方向位置付けをオフセットすることにより作り出され得る。これは
図3Bに示されており、磁石301の最も先端側の面307は磁石303の最も先端側の面308から軸方向にオフセットされている。
【0037】
図3Bは同様の図を提供するが、この実施形態においては、軸方向着磁磁石313及び円周方向着磁磁石311、315の最も基端側の面312、314、316は成形されるとともに必ずしも回転軸に直交しない。本例において、成形された面は単純な角度が付いた平面として示されているが、当業者は曲線又は複雑な形が適切な場合は容易に組み込まれ得ることを認める。回転軸320及びロータの回転321の方向もまた参照のために提供されている。
【0038】
図3Bにおいて分かるとおり、軸方向着磁磁石313の最も基端側のポイント又は部分318(ここでは、磁石の後縁)が円周方向着磁磁石311の最も基端側の部分317に加えて特定される。好ましい実施形態において、円周方向着磁磁石の最も基端側のポイント又は部分317は、軸方向着磁磁石の最も基端側のポイント又は部分318と基端面の同じ相対的位置にある。例えば、軸方向着磁磁石の最も基端側のポイント又は部分318が軸方向着磁磁石の最外面の後縁(ロータの回転321の方向による)にある場合、円周方向着磁磁石の最も基端側のポイント又は部分317は好ましくは、円周方向着磁磁石の最外面の後縁にある。最も基端側のポイント又は部分317、318の軸方向位置の差319はしたがって、決定され得る。
図3Aにおける実施形態と同様に、磁石の物理的寸法が同一である場合、軸方向位置付けのこの差は、単純に円周方向着磁磁石と比較して軸方向着磁磁石の軸方向位置付けをオフセットすることにより位置し得る。
【0039】
好ましい実施形態において、軸方向位置の差は1mm~7mmである。換言すると、円周方向着磁磁石の最も基端側の部分は好ましくは、軸方向着磁磁石の最も基端側の部分よりロータの先端部に1mm~7mmより近い。いくつかの実施形態において、この差は、少なくとも0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、又は5mm、及び10mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、又は2mm以下であり、全ての可能な組合せ及びその部分的な範囲を含む。
【0040】
好ましい実施形態において、各円周方向着磁磁石の最も基端側の部分はロータの先端部から同一距離であり、各軸方向着磁磁石の最も基端側の部分はロータの先端部から同一距離である。しかしながら、いくつかの実施形態において、これは望ましくない場合があり、したがって他の組合せも想定される。
【0041】
例えば、いくつかの実施形態において、円周方向着磁磁石の最も基端側の面はロータの先端部から全てが均一に離れているわけではない一方で、全ての軸方向着磁磁石の最も基端側の面はそうである。他の実施形態において、逆も真実であり、全ての円周方向着磁磁石の最も基端側の面がロータの先端部から等しい距離にある一方で、軸方向着磁磁石の最も基端側の面の少なくとも一部はそうではない。そして、なお他の実施形態において、円周方向着磁磁石の最も基端側の面はロータの先端部から全てが均一に離れているわけではなく、全ての軸方向着磁磁石の最も基端側の面もまたロータの先端部から全てが均一に離れているわけではない。
【0042】
追加的に、いくつかの実施形態において、円周方向着磁磁石の最も基端側の面の少なくとも2つは同一平面にない。これは、例えば、円周方向及び/又は半径方向において角度が付いている又は湾曲している基端面を有する磁石に起因し得る。例えば、
図3Bにおいて分かるとおり、円周方向着磁磁石311、315(これらは同一の物理的寸法を有する)の基端面312、316は円周方向において角度が付いており、したがって同一平面にない。代替的に、磁石の基端面が円すい形又は実質的に円すい形の面を形成するとき、基端面は同一平面にないことは明らかである。
【0043】
図3Cにおいて、
図3A及び3Bにおいて見られた特徴のいくつかを組み合わせた実施形態が見られ得る。具体的には、
図3Dにおいて分かるとおり、磁石は、中心軸331の周りで時計回りの方向332に回転するように配置される。内面333は第1直径を有する中心開口を画定し、外面334は、第1直径より大きい第2直径を有する磁石配列の外縁を画定する。この図において、いくつかの第1部分335はいくつかの第2部分340と交互になっている。各第1部分は実質的に平らであるとともに回転軸331に直交している。各第2部分340は第1部分335から軸方向にオフセットされている。第2部分は先導面344と後面345とを有する。
【0044】
各第2部分340の最も基端側の面の第1下位部分343は第1部分に平行であり得る。すなわち、いくつかの実施形態において、圧力が表面上で分配され得るとともに流体が第2部分340から流れ出得る平らな振れゾーンがあってもよい。
【0045】
各セクション部分340の最も基端側の面の第2下位部分342は曲線を付けて作られ得る。いくつかの実施形態において、輪郭は反時計回りの方向(回転方向の反対)における上昇曲線である。輪郭は、最も先端側のポイント349(例えば先導面344に近いポイント)から最も基端側のポイント350(例えば後面345又は第1下位部分343の又は近くのポイント)への距離348だけ先細になり得る。すなわち、第2部分340の最も基端側の面の1つの部分(例えば参照符号349)は、第2部分の最も基端側の面の第2部分(例えば参照符号350)よりも距離348だけ軸方向において第1部分335により近くてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、第2下位部分342のどの部分も第1下位部分343と同一平面にない。いくつかの実施形態において、第2下位部分342は湾曲した面(例えば凹形又は凸形面)を含む。いくつかの実施形態において、第2下位部分342は、第1部分340に対して固定された角度で実質的に平らな面を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、第2下位部分340は、側壁、例えば後面345の後側壁346、又は配列の外面334の外壁347を含み得る。これらの側壁は、血流を制御する、半径方向における血流を低減させるなどのために使用され得る。
【0048】
さらに、当業者は、図に示された磁石は鋭角を有しているとして示されているが、縁は完全に又は部分的に傾斜した形、面取りした形、丸い形などであってもよいことを認める。
【0049】
第2修正アプローチ
第2修正アプローチは、少なくとも1つの軸方向着磁磁石の物理的寸法を少なくとも1つの円周方向着磁磁石の対応する物理的寸法と異なるように構成することである。すなわち、全ての磁石が磁化方向を除けば概ね同一であるよりむしろ、物理的寸法は、軸方向着磁磁石が円周方向着磁磁石と物理的に異なるように微調整される。
【0050】
図4Aを参照すると、修正ハルバッハ配列における個々の磁石401の図が提供されている。各磁石401について、外面402、内面407、及び回転軸499から離れるように半径方向に外向きに延在する側面403、404がある。各磁石はまた基端面406を有する。
【0051】
好ましい実施形態において、各永久磁石は、前記回転軸499を中心とした円の弧を形成する断面形状を備えた外面402を有する。弧の物理的寸法は、回転軸499から各弧がなす角度405が最も好ましくは1°~89°であるようなものである。いくつかの実施形態において、角度は、少なくとも1°、5°、10°、15°又は20°、及び89°、80°、70°、60°、50°、又は40°以下であり、全ての可能な組合せ及びその部分的な範囲を含む。例えば、いくつかの実施形態において、角度は5°~70°、10°~80°、又は20°~70°である。
【0052】
いくつかの実施形態において、磁石が修正ハルバッハ配列において配置されるとき、配列における第1磁石の外面の弧がなす角度は、配列における第2磁石の外面の弧がなす角度と異なる。いくつかの実施形態において、角度の少なくとも1つはしきい値より大きく、角度の少なくとも1つはしきい値未満である。しきい値は360°/nに等しく、nは配列における磁石の数である。したがって8つの磁石からなるハルバッハ配列について、しきい値は45°であり、16個の磁石の場合はしきい値は22.5°であり、24個の磁石の場合はしきい値は15°である。いくつかの実施形態において、全ての軸方向着磁磁石は、全ての円周方向着磁磁石とは異なるそれらの弧がなす角度を有する。いくつかの実施形態において、全ての軸方向着磁磁石は、全ての円周方向着磁磁石より大きいそれらの弧がなす角度を有する。いくつかの実施形態において、全ての軸方向着磁磁石は、全ての円周方向着磁磁石より小さいそれらの弧がなす角度を有する。
【0053】
いくつかの実施形態において、円周方向着磁磁石又は軸方向着磁磁石(しかし両方ではない)の角度は40°未満である。いくつかの実施形態において、角度は30°未満である。いくつかの実施形態において、角度は未満20°未満である。いくつかの実施形態において、角度は10°未満である。
【0054】
弧を形成する外面402はまた、磁石によって異なり得る最大弧長さ408(すなわち、回転軸に直交する平面により形成され得る外面の最も長い弧長さ)を有する。好ましい実施形態において、配列における各磁石の弧長さは1mm~5mmである。いくつかの実施形態において、配列における各磁石の弧長さは1mm~4mm又は1mm~3mmである。いくつかの実施形態において、配列における各磁石の弧長さは2~3mmである。第2の技術を使用する最も好ましい実施形態において、少なくとも1つの軸方向着磁磁石の最大弧長さは少なくとも1つの円周方向着磁磁石の最大弧長さと異なる。
【0055】
各磁石の基端面406は表面積を有する。好ましい実施形態において、少なくとも1つの軸方向着磁磁石の表面積は少なくとも1つの円周方向着磁磁石の表面積と異なる。
【0056】
最も好ましい実施形態において、各軸方向着磁磁石は、(a)各円周方向着磁磁石より大きい最大弧長さ及びより大きい表面積を有するか、又は(b)各円周方向着磁磁石より小さい最大弧長さ及びより小さい表面積を有するかのいずれかである。
【0057】
各磁石401はまた、軸方向長さ409(すなわち、磁石の最も基端側のポイントと磁石の最も先端側のポイントとの間の距離)を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの軸方向着磁磁石の軸方向長さは少なくとも1つの円周方向着磁磁石の軸方向長さと異なる。
【0058】
修正ハルバッハ配列において配置されるとき、配列は実質的に円筒形の断面を有する。修正ハルバッハ配列の最大外径は、概して7mm未満、例えば6.75mm以下、又は6.5mm以下である。この構成において、各磁石の内面は、修正ハルバッハ配列を少なくとも部分的に通って延在し得る、好ましくは修正ハルバッハ配列全体を通って延在する開口を形成する。開口は概して0.5mm~2mmの直径を有する。したがって、各磁石の内面407は、0.25mm~1mmの回転軸499からの距離410である。
【0059】
追加的に、各側面403、404は内面と外面との間に延在する長さを有する。
図4Aにおいて、側面403は、内面407から外面402へ測定する長さ411を有するとして示される。この長さは内面からの外面の半径方向距離と同じであっても無くてもよいことが認められ、例えば、側面が湾曲している場合、長さ411は内面と外面との間の半径方向距離より大きくなる。一般に、各磁石の各側面は1mm~5mm、例えば1mm~4mm、又は2mm~4mmの長さを有する。
【0060】
当業者は、物理的寸法のこれらの違いのいくつかの全ては、単一の配列において組み合わせられ得ることを認める。例えば、いくつかの実施形態において、弧長さ及び軸方向長さの両方が軸方向着磁磁石と円周方向着磁磁石との間で異なり得る。
【0061】
図4B~4Eを参照すると、修正ハルバッハ配列における磁石の様々な代替的物理的構成が示されている。
【0062】
図4Bにおいて、修正ハルバッハ配列は、回転軸499の周りに構成された円周方向着磁磁石421及び軸方向着磁磁石431の交互の配置構成を有するとして示されており、配列における各磁石421、431は、各磁石の内面427から、回転軸499から離れるように半径方向に外向きに延在する2つの非平行な平らな側面423、424、433、434を有する。各磁石は外面422、432と、最も基端側の面426、436とを有する。外面422、432は、前記回転軸499を中心とする、回転軸499から各弧がなす角度405、415の円の弧を形成する断面形状を有する。好ましい実施形態において、各側面は、配列における所与の磁石の側面に沿って延在する架空の平面が回転の角度と交差するように、外面に実質的に垂直であるように構成される。
【0063】
図4Bは、軸方向着磁磁石431より大きい弧がなす角度及び/又はより大きい弧長さを有する円周方向着磁磁石421を有するとして示されている。しかしながら、当業者は、反対もまた真実であり得ること-軸方向着磁磁石は円周方向着磁磁石より大きいそれらの弧がなす角度及び/又はより大きい弧長さを有し得ること、を認める。
【0064】
好ましい実施形態において、各側面は、外面に実質的に垂直であるように構成されず、所与の磁石の各平らな側面に沿って延在する架空の平面は回転の角度と交差しない。
【0065】
図4Cにおいて、修正ハルバッハ配列は、回転軸499の周りで構成された円周方向着磁磁石441及び軸方向着磁磁石451の代替的配置構成を有するとして示されているが、ここでは軸方向着磁磁石451が平行な平らな側面453、454を有する一方で、円周方向着磁磁石441は非平行な平らな側面443、444を有する。当業者は、反対もまた真実であり得ること-軸方向着磁磁石が非平行な平らな側面を有し得る一方で、円周方向着磁磁石は平行な平らな側面を有すること、を認める。
【0066】
修正ハルバッハ配列は、回転軸499により外面442、442の弧がなす角度445、455を有する。例えば角度405(
図4Bから)及び角度445(
図4Cから)が同一である一方、側面の長さが極めて異なり得ることが可能であることが認められるべきである。
【0067】
図4Dにおいて、修正ハルバッハ配列は、回転軸499の周りで構成された円周方向着磁磁石461及び軸方向着磁磁石471の交互の配置構成を有するとして示されているが、ここでは各磁石461、471は2つの平らでない側面463、464、473、474を有する。特に、各磁石は凹形曲面463、473と凸形曲面464、474とを有する。
【0068】
当業者は、変更形態は様々な実施形態において組み合わせられ得ることを認める。例えば、
図4Eにおいて分かるとおり、修正ハルバッハ配列は、円周方向着磁磁石482及び軸方向着磁磁石481、483の交互の配置構成を有するとして示されている。しかしながら、第1磁石481は2つの平行な平らな側面483、486を有する。第2磁石482は、磁石の外面に垂直でない1つの平らな側面484を有する(すなわち、平らな側面に沿って延在する架空の平面が回転軸と交差しない)。第2磁石482はまた凹形曲面487を有する。第3磁石483は凹形曲面488と凸形曲面485とを有する。
【0069】
図4Fにおいて、別の配置構成が見られる。ここで、全ての磁石が平行な平らな側を有している一方で、当該側は、
図4Cにおいて見られるとおり中心に置かれていない。むしろ、第1磁石491の1つの側492により画定される平面は、回転軸499と交差するように構成される一方で、第1磁石491の他の側493により画定される平面は磁石の内面407と接線方向に交差するように構成される。
【0070】
第3修正アプローチ
第3修正アプローチは第1及び第2修正アプローチを組み合わせる。すなわち、基端面の軸方向位置付けを第1修正技術により達成されるとおりに操作することに加え、これは磁石の物理的寸法の調整も含む。
【0071】
例えば、
図5Aは、各軸方向着磁磁石の基端面501が各円周方向着磁磁石の基端面502よりも(ロータの基端部に向かって)回転軸にさらに沿って位置し、各軸方向着磁磁石の外面は各円周方向着磁磁石の外面の弧長さより大きい弧長さを有する磁石の配置構成を示す。各磁石は2つの非平行な平らな側面を有する。
【0072】
図5Bにおいて、各軸方向着磁磁石の基端面503は各円周方向着磁磁石の基端面504より(ロータの基端部に向かって)回転軸にさらに沿って位置し、各軸方向着磁磁石の外面は各円周方向着磁磁石の外面の弧長さより小さい弧長さを有する。
【0073】
図5Cは各磁石が凹形側面と凸形側面とを有する磁石の配置構成を示す。各軸方向着磁磁石の基端面505は、各円周方向着磁磁石の基端面506より(ロータの基端部に向かって)回転軸にさらに沿って位置する。各軸方向着磁磁石の外面は、各円周方向着磁磁石の外面の弧長さより大きい弧長さを有する。
【0074】
さらに、他の修正形態が作られ得る。例えば、いくつかの実施形態において、基端方向において軸方向に延在する少なくとも1つの補助ブレードが、少なくとも1つの円周方向着磁磁石の基端面に提供される。
【0075】
ハルバッハ配列の実施形態の基端面の図が
図6Aに示される。特に、修正配列は、軸方向着磁磁石601であって、各円周方向着磁磁石602の最も基端側の面604よりも基端方向において回転軸699にさらに沿って軸方向に延在する最も基端側の面603を有する軸方向着磁磁石601を含む。各ブレード605の最も基端側の面606は好ましくは各軸方向着磁磁石601の最も基端側の面603を越えて延在しない。
【0076】
ブレードの断面形状は半径方向及び/又は軸方向において変わり得る。例えば、いくつかの実施形態において、各ブレード605は、ブレードが回転軸699から離れるように延在する際、半径方向において僅かに先細になっている。いくつかの実施形態において、各ブレード605は、ブレードが円周方向着磁磁石602の基端面604から離れるように延在する際、軸方向において僅かに先細になっている。いくつかの実施形態において、ブレードは半径方向及び軸方向の両方において先細になっている。いくつかの実施形態において、基端面606は、ブレード605の基端面606の、回転軸に最も近い部分607が、ブレード605の基端面606の、回転軸699からさらに離れる部分608よりも円周方向着磁磁石の基端面604からさらに離れるように、角度が付いている。換言すると、回転軸699に近い部分607でのブレード605の高さは、回転軸から半径方向にさらに離れる部分608でのブレード605の高さより大きい。
【0077】
ブレードのおおよその断面形状は、必要に応じて著しく変わり得る。例えば、各ブレードが略長方形であってもよい一方で、他のブレードは曲がった形、台形若しくは三角形、楕円形、又はさらには均一な幾何学的スタジアム形を有してもよい。
【0078】
好ましい実施形態において、各ブレードは同じ形状を有するが、いくつかの実施形態において、1つ又は複数のブレードは形状が異なり得る。
【0079】
さらに、いくつかの実施形態において、補助ブレードが用いられる場合、各円周方向着磁磁石での補助ブレードの数は、好ましくは同一である。しかしながら、他の実施形態において、各円周方向着磁磁石は独立して0、1、2、又は3つのブレードを有し得る。
【0080】
図6Bは、磁石の基端面611及び補助ブレード615を見る円周方向着磁磁石610の断面図を示す。ブレードの形状は、磁石の内面から距離617だけ半径方向にオフセットされた略長方形であり、ブレードの外面616は磁石の外面612と実質的に同一平面にある。
【0081】
好ましい実施形態においてはいずれのブレードも少なくとも内面から半径方向にオフセットされているが、磁石の内面及び/又は外面から半径方向にオフセットされたブレードを有することは不要であることが認められるべきである。ブレードが内面及び/又は外面からオフセットされているとき、いずれの半径方向オフセット距離も好ましくは磁石の基端面の半径方向長さの25%未満であり、典型的には1mm以下である。
【0082】
図6Cは磁石620の基端面621の同様の図を示す。しかしながら、ここで、磁石は2つの補助ブレード625、626を有し、各々は異なる形状(この実施形態において、長方形ブレード625及び任意の湾曲したブレード626が示されている)である。長方形ブレード625は磁石620の外面622と実質的に同一平面にある外縁又は表面を有するが、曲線ブレード626は磁石の外面から距離628だけ半径方向にオフセットされている。両方のブレードは磁石の内面から半径方向にオフセットされている。
【0083】
図6Dは磁石630の基端面631の同様の図を示す。しかしながら、ここで、磁石は2つの同一の補助ブレード635、636を有し、各補助ブレードは幾何学的スタジアム形である。補助ブレード635、636は両方とも磁石630の内面及び外面の両方から半径方向にオフセットされている。
【0084】
これらの補助ブレードの使用、及び磁石の基端面の輪郭形成又は成形は、1つ又は複数の軸受への軸方向の力を減少させるように構成され得る。理解されるとおり、軸受にかかる力が大きいほど、摩擦力などを原因として回転により生じる熱は増加する。ポンプの増大した摩損を超えると、血液への熱伝達はさらなる複雑さの原因となり得る。したがって、いくつかの実施形態において、磁石の基端面は曲線を付けて作られるか1つ又は複数の補助ブレードを含むかのいずれかであり、このことは1つ又は複数の軸受への軸方向の負荷を減少させるように構成され得る。いくつかの実施形態において、回転速度が高いほど負荷の減少は大きくなる。
【0085】
図7を参照すると、血液ポンプ700の断面図が示されている。血液ポンプ700は上述のとおりのロータ711と、電気駆動ユニット750とを含む。血液ポンプ700は、血流入口741と血流出口742とを備えたポンプケーシング702をさらに含む。血液ポンプ700は、カテーテルポンプとも呼ばれる血管内ポンプとして設計されるとともに、カテーテル745により患者の血管内に展開される。血流入口741は、使用中心臓弁、例えば大動脈バルブを通じて配置され得る可撓性カニューレ743の端にある。血流出口742は、ポンプケーシング702の側面に位置するとともに、心臓血管、例えば大動脈に配置され得る。血液ポンプ700は、駆動ユニット750によりポンプ700を駆動するために血液ポンプ700に電力を供給するためのカテーテル745を通じて延在する電気ライン746と電気的に接続される。
【0086】
血液ポンプ700が、長期間にわたる用途において、すなわち、血液ポンプ700が数週間又はさらには数か月にわたって患者に埋め込まれる状況において使用されることを意図されている場合、電力は好ましくはバッテリにより供給される。患者がケーブルによりベースステーションに接続されないため、これは患者が移動可能であることを可能にする。バッテリは、患者により担持され得るとともに、電線を血液ポンプ700へ、例えば無線により供給し得る。
【0087】
血液は、血流入口741及び血流出口742を接続する通路744に沿って搬送される(血流は矢印により示される)。上述のとおりのロータ711は、通路744に沿って血液を搬送するために提供されるとともに、第1軸受731及び第2軸受732によりポンプケーシング702内で回転軸705を中心として回転可能となるように取り付けられる。回転軸705は好ましくは羽根車711の長手方向軸である。軸受731、732は両方ともこの実施形態において接触タイプの軸受である。軸受731、732の少なくとも1つは非接触タイプの軸受であり得るが、しかしながら、例えば磁気又は流体力学軸受である。第1軸受731は、いくらかの程度枢動運動のみならず回転運動も可能にする球状の軸受表面を有する枢動軸受である。軸受表面のうちの1つを形成するピン733が提供される。第2軸受732は、羽根車711の回転を安定されるために支持部材713に配置され、支持部材713は、血流のための少なくとも1つの開口714を有する。ブレード715は、ロータ711が回転すると血液を搬送するためにロータ711に提供される。ロータ711の回転は、ロータ711の基端部で磁石731に磁気的に結合された駆動ユニット750により引き起こされる。図示された血液ポンプ700は、血流の主方向が軸方向である混合タイプの血液ポンプである。ロータ711、及び特にブレード715の配置構成に依存して、血液ポンプ700はまた、純粋に軸方向血液ポンプであり得ることが理解されよう。
【0088】
当業者は、前記血管内血液ポンプロータと磁気的に相互作用することができるように電気駆動ユニットをどのように構成するかを理解する。
【0089】
開示されたロータで作業可能とするために。電気駆動ユニットは、ロータ711に隣接しているがロータ711から物理的に分離されるように構成されなければならない。好ましい実施形態において、電気駆動ユニットは、2、4、又は6極の固定子を含む又はから本質的になる。
【0090】
図8Aは、
図7の血液ポンプの一実施形態のより詳細な内部を示す。特に、血液ポンプ801の内部は羽根車811と駆動ユニット860とを含む。いくつかの実施形態において、駆動ユニット860は複数のポスト850、例えば6つのポスト850を含み、そのうち2つのみが
図8Aの断面図において見えている。ポスト850はシャフト部分851とヘッド部分852とを有する。ヘッド部分852は、駆動ユニット860をロータ811に磁気的に結合するために、ロータ811に隣接して配置されるがロータ811から分離されている。この目的のために、ロータ811は、上述のとおり修正ハルバッハ配列821を有する。磁石821は、駆動ユニット860の方を向くロータ811の端に配置される。すなわち、磁石821はロータ811の基端部にある。駆動ユニットの形状を原因として、磁石821は、駆動ユニットの形状を実質的にミラーリングする傾斜した基端面を有する。
【0091】
ポスト850は、血液ポンプ800の駆動のための回転磁界を作り出すために、制御ユニット(図示せず)により順次制御される。磁石821は、回転軸805を中心としたロータ811の回転を引き起こすように回転磁界と相互作用するように配置される。コイル巻線はポスト850のシャフト部分851を中心として配置される。ポスト850は回転軸805に平行に配置され、より具体的には、ポスト850の各々の長手方向軸は回転軸805に平行である。
【0092】
磁束経路を閉鎖するために、バックプレート859が典型的には使用される。バックプレート859は、ヘッド部分852の反対側にあるシャフト部分851の端に位置する。ポスト850は、磁気コアとして機能するとともに、好適な材料、特に、やわらかい磁気材料、例えば鋼又は好適な合金、特にコバルト鋼でできている。同様に、バックプレート859は、好適なやわらかい磁気材料、例えばコバルト鋼でできている。バックプレート859は磁束を強化し、これは血液ポンプ800の直径全体の減少を可能にし、このことは血管内血液ポンプにとって重要である。修正ハルバッハ配列の使用を原因として、ロータ磁石821の他の側には磁気ヨークは求められない。
【0093】
図8Bは、磁石821の方を向くヘッド部分852の上面が傾斜しておらず回転軸に垂直な平面に延在することを除いて
図8Aの実施形態と実質的に同様の代替的実施形態を示す。相応して、磁石821は傾斜した基端面を有しない。磁石821の基端面と駆動ユニット860の先端面との間の最小間隙839は容易に測定され得る。いくつかの実施形態において、各円周方向着磁磁石の最も基端側の面は、各軸方向着磁磁石の最も基端側の面よりも前記電気駆動ユニットの先端部からさらに離れる。
【0094】
当業者は、通常の実験のみを使用して本明細書において説明された本開示の特定の実施形態の多くの均等物を認めるか解明することができる。そのような均等物は以下の特許請求の範囲に包含されることを意図される。
【国際調査報告】