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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】電極を形成するための乾式プロセス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240315BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240315BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/1393
H01M4/1395
H01M4/1397
H01M4/1391
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/48
H01M4/505
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561865
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 US2022021676
(87)【国際公開番号】W WO2022216460
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/172,274
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/273,287
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/702,154
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520363317
【氏名又は名称】リベント ユーエスエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シア、ジアン
(72)【発明者】
【氏名】フィッチ、ケネス ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブレワ、マリナ
(72)【発明者】
【氏名】ブラック、レベッカ エヌ.
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE01
5H017EE07
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ08
5H029CJ15
5H029CJ18
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029DJ07
5H029HJ01
5H029HJ14
5H029HJ15
5H029HJ19
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA04
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA24
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA16
5H050GA20
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA14
5H050HA15
5H050HA19
(57)【要約】
電極を形成するためのワンステップ乾式プロセスが提供される。プロセスは、電極活物質、バインダー及び導電材料を有する活性成分をプレリチウム化剤と乾式混合して、乾燥電極材料混合物を形成することを含み得る。プレリチウム化剤は、印刷可能リチウム組成物であり得、リチウム金属粉末、リチウム金属粉末と適合するポリマーバインダー、及びリチウム金属粉末と適合するレオロジー調整剤を含み得る。乾燥電極材料混合物は、電極を形成するために非自己支持層として基板に適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレリチウム化電極を形成するための乾式プロセスであって、
a)電極活物質、バインダー、及び導電材料を含む活性成分と、これと混合した
b)リチウム金属粉末、前記リチウム金属粉末と適合するポリマーバインダー、及び乾燥電極材料混合物を形成するための前記リチウム金属粉末と適合するレオロジー調整剤を含むプレリチウム化印刷可能リチウム組成物と、
を含む乾燥電極材料混合物を調製することと、
前記乾燥電極材料混合物を非自己支持層又は界面として基板に堆積させて、プレリチウム化電極を形成することと、
を含む、プレリチウム化電極を形成するための乾式プロセス。
【請求項2】
前記乾燥電極材料混合物を前記基板に適用することが、前記乾燥電極材料混合物を前記基板上に堆積させて前記非自己支持層を形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記乾燥電極材料混合物を前記基板に堆積させることが、押出、ロール圧縮、静電堆積及びそれらの組合せからなる群から選択される方法によって行われる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記基板が接着促進剤で処理される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記接着促進剤が、不飽和エラストマー、飽和エラストマー、熱可塑性樹脂、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、及びポリ酢酸ビニル.ポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリラートゴム、ケイ素ゴム、ニトリルゴム、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレンプロピレンジエンターモノマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンターポリマー、ポリブテン、ワックス及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記乾燥電極材料混合物を前記基板に適用することが、約80から約180℃の温度及び約5000から約50000PSIの圧力で前記乾燥電極材料混合物を前記基板上にプレスすることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記基板が、集電体、ポリマーフィルム及び固体電解質からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記電極活物質がアノード活物質である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アノード活物質が、グラファイト、カーボンブラック、ハードカーボン、炭素合金、及びそれらの組合せからなる群から選択される炭素系材料を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アノード活物質が、グラファイト-SiOx複合材料、SiO、SiO、Si粉末、SiC、Si/C複合材料、Si系合金、グラファイト-SnO、Sn/C複合材料、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記電極活物質がカソード活物質である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記カソード活物質が、MnO、V、MoS、金属フッ化物、硫黄、硫黄複合材料、スズ及びそれらの組合せからなる群から選択される非リチウム化材料である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記印刷可能リチウム組成物が、溶液ベースで、約0.5重量%から約50重量%の前記リチウム金属粉末と、約0.1重量%から約20重量%の前記ポリマーバインダー及び前記レオロジー調整剤とを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記印刷可能リチウム組成物が、溶液ベースで、約10重量%~約30重量%の前記リチウム金属粉末、約0.1重量%から約5重量%の前記ポリマーバインダー、及び約0.5%~約5%の前記レオロジー調整剤を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記リチウム金属粉末が安定化リチウム金属粉末である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記レオロジー調整剤が導電材料である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記導電材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びグラフェンからなる群から選択される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記レオロジー調整剤が改善された容量を提供し、電気化学的に活性である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
改善された容量を提供する前記レオロジー調整剤が、シリコンナノチューブ、グラファイト、ハードカーボン及びグラフェンからなる群から選択される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記レオロジー調整剤が改善された安定性を提供する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記レオロジー調整剤が、炭素質材料、ケイ素含有材料、スズ含有材料、IIA族酸化物、IIIA族酸化物、IVB族酸化物、VB族酸化物及びVIA族酸化物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
前記炭素質材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、ハードカーボン、及びグラフェンからなる群から選択される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
本質的に溶媒を含まない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
ワンステッププロセスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項25】
前記プロセスの温度がリチウムの融点未満である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項26】
請求項1に記載のプロセスによって製造されたプレリチウム化電極。
【請求項27】
前記ケイ素含有材料が、ケイ素ナノチューブ及びヒュームドシリカからなる群から選択される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項28】
前記ポリマーバインダーが、1,000から8,000,000の分子量を有し、不飽和エラストマー、飽和エラストマー、熱可塑性樹脂、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン及びポリ酢酸ビニルからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項29】
前記不飽和エラストマーが、ブタジエンゴム、イソブチレン及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記飽和エラストマーが、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム及びエチレン-酢酸ビニルからなる群から選択される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項31】
前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン、ポリエチレン及びエチレンオキシドのポリマーからなる群から選択される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項32】
前記エチレンオキシドのポリマーが、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(エチレンオキシド)からなる群から選択される、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記乾燥電極材料混合物を前記基板に適用した後24時間以内に固体電解質界面層を形成することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項34】
請求項1に記載のプロセスから形成されたカソード及びアノードを有する電池。
【請求項35】
約80%を超える第1のサイクル効率を有する、請求項34に記載の電池。
【請求項36】
前記第1のサイクル効率が90%より大きい、請求項34に記載の電池。
【請求項37】
請求項1に記載のプロセスによって製造されたプレリチウム化電極。
【請求項38】
a)電極活物質、バインダー、及び導電材料を含む活性成分と、これと混合した
b)リチウム金属粉末、前記リチウム金属粉末と適合するポリマーバインダー、乾燥電極材料混合物を形成するための、前記リチウム金属粉末と適合するレオロジー調整剤を含むプレリチウム化印刷可能リチウム組成物と、
を含む電極材料混合物であって、
前記乾燥電極材料混合物が約20%未満の溶媒含有量を有する、
電極材料混合物。
【請求項39】
前記乾燥電極材料が約10%未満の溶媒含有量を有する、請求項38に記載の電極材料。
【請求項40】
前記乾燥電極材料が約1%未満の溶媒含有量を有する、請求項38に記載の電極材料。
【請求項41】
a)電極基板と、
b)層又は界面として前記電極基板に適用された乾燥電極材料混合物であって、前記乾燥電極混合物は、電極活物質、バインダー、及び導電材料を含む活性成分と、それと混合したリチウム金属粉末、前記リチウム金属粉末と適合するポリマーバインダー、及び前記リチウム金属粉末と適合するレオロジー調整剤を含むプレリチウム化リチウム組成物とを含み、前記電極基板上の前記乾燥電極混合物は溶媒を本質的に含まない、乾燥電極材料混合物と、
を含む、プレリチウム化電極。
【請求項42】
請求項41に記載のプレリチウム化電極を含む電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年4月8日に出願された米国仮特許出願第63/172,274号及び2021年10月29日に出願された米国仮特許出願第63/273,287号に関し、その開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、単一の処理工程で電極を形成するためのプロセスに関し、電極を形成するための乾式プロセスを提供し、すなわち、溶媒の使用は本質的又は実質的に排除される。
【背景技術】
【0003】
リチウム及びリチウムイオン二次電池又は充電式電池は、携帯電話、カムコーダ、及びラップトップコンピュータ等の特定の用途で使用が見出され、更により最近では、電気自動車及びハイブリッド電気自動車等のより大きな電力用途で使用が見出されている。これらの用途では、二次電池は可能な限り最高の比容量を有するが、依然として安全な動作条件及び良好なサイクル性を提供して、後続の再充電及び放電サイクルで高い比容量が維持されることが好ましい。
【0004】
二次電池には様々な構造が存在するが、各構造は、正極(又はカソード)、負極(又はアノード)、カソードとアノードとを分離するセパレータ、カソード及びアノードと電気化学的に連通する電解質を含む。二次リチウム電池の場合、リチウムイオンは、二次電池が放電されている時、すなわちその特定の用途に使用されている時、電解質を介してアノードからカソードに移動する。放電プロセス中、電子はアノードから回収され、外部回路を通ってカソードに進む。二次電池が充電又は再充電されている時、リチウムイオンは電解質を介してカソードからアノードに移動する。
【0005】
新しいリチウムイオンセル又は電池は、最初は放電状態にある。リチウムイオンセルの最初の充電中、リチウムはカソード材料からアノード活物質(例えば、グラファイト)に移動する。カソードからアノードに移動するリチウムは、グラファイトアノードの表面で電解質材料と反応し、アノード上にパッシベーション界面を形成する。グラファイトアノードに形成されたパッシベーション界面は、固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface:SEI)とも呼ばれる。その後の放電時に、SEIの形成によって消費されたリチウムはカソードに戻されない。これは、リチウムの一部がSEIの形成によって消費されたため、初期充電容量と比較してより小さい容量を有するリチウムイオンセルをもたらす。最初のサイクルで利用可能なリチウムが部分的に消費されると、リチウムイオンセルの容量が減少する。この現象は不可逆容量損失と呼ばれ、リチウムイオンセルの容量の約10%~20%超を消費することが知られている。したがって、リチウムイオンセルの最初の充電後、リチウムイオンセルはその容量の約10%~20%超を望ましくないことに失う。
【0006】
1つの解決策は、安定化されたリチウム金属粉末を使用してアノードをプレリチウム化することであった。例えば、リチウム粉末は、金属粉末表面を二酸化炭素で不動態化することによって安定化することができ、例えば、米国特許第5,567,474号、同第5,776,369号、及び同第5,976,403号に記載されており、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。CO不動態化リチウム金属粉末は、リチウム金属と空気との反応のためにリチウム金属含有物が消失する前に、限られた期間、水分レベルが低い空気中でのみ使用することができるため、理想的ではない可能性がある。別の解決策は、例えば、米国特許第7,588,623号、同第8,021,496号、同第8,377,236号及び米国特許出願公開第2017/0149052号に記載されているように、フッ素、ワックス、リン又はポリマー等のコーティングをリチウム金属粉末に適用することであり、その開示は参照によりその全体が組み込まれる。これらのコーティングは、ドライルーム環境でリチウム粉末により高い安定性をもたらす。
【0007】
別の解決策は、リチウム箔を使用することである。リチウム箔をプレリチウム化に使用し、電極の表面に直接積層すると、加えられた積層圧力による「短絡」リチウム化の結果として、潜在的に大きな熱が発生する可能性がある。このプレリチウム化技術がロールtoロール(roll to roll)プロセスで実施される場合、熱はロールの中心に蓄積する可能性があり、散逸させるのが困難になる可能性がある。この熱の蓄積は、例えば、電極の機械的損傷、より重要なことには、潜在的な熱暴走を導く可能性がある。
【0008】
別の既知の電池の問題はリチウムめっきであり、これは、デンドライトと呼ばれるリチウム堆積物が電極表面に蓄積すると、急速充電中に一般的に起こり、電池の短絡及び故障を導く可能性がある。リチウムめっきは、低電圧又は低温で、アノードへのLiイオンのインターカレーションと並行して行われる[Proc.Natl Acad.Sci.USA 115,7266-7271(2018)]。Liイオンのインターカレーションの速度論を改善するために、より低い電荷移動抵抗が好ましい。充電率を高めるために、研究者らは材料の導電率を改善することに焦点を当ててきた。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,037,581号は、シリコン結晶子が二酸化ケイ素中に分散している構造の粒子が炭素で被覆され、満足できるサイクル性能をもたらす導電性シリコン複合材料の合成を記載している。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0148774号は、エステル等の粘性の低い電解質成分の使用による急速充電リチウムイオン電池の改善を記載している。しかしながら、これらの方法は全てトレードオフを有し、安全性及びエネルギー密度を維持しながら急速充電特性を改善することは非常に困難である。
【0009】
電極は、典型的にはスラリーから形成され、活物質、バインダー、導電材料並びに溶媒からなり得る。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)はカソードスラリーに最も一般的に使用される溶媒であるが、水はグラファイト系アノードスラリーにより広く使用されるようになってきている。NMPは高い沸点(202℃)を有するので、NMPの除去はかなりのエネルギー消費を必要とする。更に、NMPはリチウムと反応性であり、有毒である可能性があり、潜在的な環境ハザードを低減するために溶媒回収システムを必要とし、電池電極製造プロセスにコストを更に追加する。水ベースの手法は、より環境に優しく、溶媒回収システムの必要性を排除する。いくつかの研究グループは、水系手法を使用して作製された電極が、NMPベースの手法を使用して作製された電極と同様の性能を達成できることを示している[Electrochim Acta 114(2013),1-6]。しかしながら、水系スラリーは濡れ性が悪く、集電体の腐食を引き起こす。どちらの場合も、高温オーブン及び長い乾燥時間が必要であり、製造コストが増加し、生産スループットが低下する。
【0010】
より低い溶媒使用量を有する製造プロセスは、パルスレーザ堆積、静電噴霧堆積(ESD)並びに摩擦帯電ガンプロセスによって達成されてきた。例えば、Ludwig et al.[Adv.Mater.Interfaces 2017,4,1700570]は、約30%の多孔度を有する90:5:5の比のLCO:炭素添加剤:PVDFを含有する厚さ40~130mmのカソードを作製するためのESDの使用、その後の熱間圧延処理を報告し、これは0.1Cの充電速度で121mAh g-1の比容量をもたらす。
【0011】
しかしながら、電極製造のための既存の乾式方法は、効率を低下させる複数の工程を必要とする。例えば、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,547,057号は、集電体上に積層する前に独立型フィルムを製造することを必要とする電極の製造方法を開示している。更に、電極を形成する現在の乾式方法は、リチウム金属の融点を超える、すなわち180.5℃を超える高温プロセスを使用することを必要とする。そのような高温及び高圧も使用する場合、アノード活物質の機械的リチウム化が起こり、不安定な又は発火反応生成物(例えば、リチウム化ケイ素又はグラファイト)を生成し、したがって、単一の処理工程でプレリチウム化乾燥電極の生成を妨げる可能性がある。
【発明の概要】
【0012】
この目的のために、本発明は、プレリチウム化剤を組み込みながら、溶媒、特にリチウムと反応性である溶媒の使用を本質的又は実質的に排除する、電極を形成するためのワンステップ及び乾式プロセスに関する。プレリチウム化剤中に存在するものを除いて、追加の溶媒は不要であり得る。プロセスはまた、不可逆容量が排除され得るワンステップの高度な電極製造を可能にする。独立した自己支持型のフィルム又は箔を最初に形成し、次いで別個の工程で基板(例えば、集電体又は前処理された集電体)に積層する必要はない。乾燥電極材料層又は界面は、非自己支持層として基板に適用されてもよい。
【0013】
一実施形態では、電極は、ワンステップ乾式プロセスを使用して形成される。プロセスは、電極活物質(active electrode material)、バインダー、及び導電材料を含む活性成分と、それと混合した、乾燥電極材料混合物を形成するための、印刷可能リチウム組成物(printable lithium composition)等のプレリチウム化剤とを含む乾燥活物質を調製することを含み得る。印刷可能リチウム組成物は、リチウム金属粉末、リチウム金属粉末と適合する(compatible with)ポリマーバインダー、及びリチウム金属粉末と適合するレオロジー調整剤を含んでもよく、本質的に溶媒を含まなくてもよい。乾燥電極材料混合物は、電極を形成するために基板に適用されてもよい。乾燥電極材料混合物は、独立したフィルム又は箔を形成する必要なく、溶媒を最小限に使用して、すなわち、プロセスが本質的に溶媒を含まずに、乾燥電極材料混合物を層又は界面として基板上に直接堆積させることによって基板に適用され得る。次いで、乾燥電極材料混合物を基板上にプレスして、例えばロールtoロール(roll to roll)プロセスを使用してプレリチウム化電極を形成することができる。
【0014】
本発明の他の特徴及び態様は、以下の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による例示的なプロセスの概略図である。
【0016】
図2】両方とも例1による乾式電極プロセスを使用して形成された、印刷可能リチウム組成物を組み込んだ電極を有するセルに対するベースラインセルの第1サイクル電圧曲線を比較するプロットである。
【0017】
図3】例1に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルに対するベースラインセルの電圧曲線を比較するプロットである。
【0018】
図4】ベースラインと、例1に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルとの間の初回充電中の差分容量(dQ/dV)対電位(V)を比較するプロットである。
【0019】
図5】ベースラインと、例2に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルとの間の初回充電中の差分容量(dQ/dV)対電位(V)を比較するプロットである。
【0020】
図6】ベースラインと、例3に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルとの間の初回充電中の差分容量(dQ/dV)対電位(V)を比較するプロットである。
【0021】
図7】例4による印刷可能リチウム組成物を組み込んだ電極を有するセルに対するベースラインの電圧曲線を比較するプロットである。
【0022】
図8】ベースラインと、例4に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルとの間の初回充電中の差分容量(dQ/dV)対電位(V)を比較するプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、本発明の前述及び他の態様を、本明細書で提供される説明及び方法論に関してより詳細に説明する。本発明は、異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されるべきである。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であるように提供され、本発明の範囲を当業者に十分に伝える。
【0024】
本明細書における本発明の説明で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の実施形態及び添付の特許請求の範囲の説明で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。また、本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数の任意及び全ての可能な組合せを指し、包含する。
【0025】
化合物の量、用量、時間、温度等の測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、又は更には0.1%の変動を包含することを意味する。他に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise、comprises)、含むこと(comprising)、含む(include、includes)及び含むこと(including)」という用語は、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【0027】
本明細書で使用される場合、本発明の組成物及び方法に適用される「本質的になる(consists essentially of)」という用語(及びその文法上の変形)は、追加の構成要素が組成物/方法を実質的に変化させない限り、組成物/方法が追加の構成要素を含有し得ることを意味する。組成物/方法に適用される「実質的に変化する」という用語は、組成物/方法の有効性の少なくとも約20%以上の増加又は減少を指す。
【0028】
本明細書を通して言及される全ての特許、特許出願及び刊行物は、それらの全体が参照により組み込まれる。用語が矛盾する場合、本明細書を優先する。
【0029】
本発明によれば、電極を形成するためのプロセスが提供される。プロセスは、電極活物質、バインダー及び導電材料を含む活性成分を、リチウム金属粉末、リチウム金属粉末と適合するポリマーバインダー、及び乾燥電極材料混合物を形成するための、リチウム金属粉末と適合するレオロジー調整剤を含む印刷可能リチウム組成物等のプレリチウム化剤と乾式混合することを含む。乾式混合は、混合プロセスで、本質的に若しくは実質的に溶媒を使用しないこと、又は本質的に若しくは実質的に少量の溶媒を使用することを意味することを意図している。一実施形態では、存在する唯一の溶媒は、プレリチウム化剤に由来する。
【0030】
次いで、乾燥電極材料混合物を基板に適用して、電極を非自己支持層又は界面として形成することができる。非自己支持層又は界面は、自立できない層又は界面又はコーティングであり、独立型のフィルム又は箔とは対照的である。
【0031】
基板は、アノード(例えば、集電体)、カソード、又は固体電池用の固体電解質用の基板であってもよい。プロセスから形成されたカソード及びアノードを有する電池は、約80%を超える第1のサイクル効率を有し得、場合によっては90%を超える可能性がある。
【0032】
乾式混合は、当技術分野で公知の従来の技術を使用して実施することができる。例えば、乾式混合は、高シアーミキサー、プラネタリーミキサー、リボンミキサー、ドラムミキサー、スクリューミキサー、コニカルミキサー、多軸ミキサー及びスタティックミキサーを用いて行うことができる。
【0033】
乾燥電極材料混合物は、様々な技術を使用して基板に適用することができる。例えば、乾燥電極材料混合物は、乾式粉末適用技術を使用して非自己支持層として基板上に堆積されてもよい。乾燥粉末を堆積させるための方法の一般的な例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2021/0050584号に開示されている。乾燥電極材料混合物を基板に堆積させる方法は、ふるい分け、噴霧、押出、ロール圧縮、静電堆積、及びそれらの組合せを含み得る。次いで、堆積した乾燥電極材料混合物を基板上にプレスすることができ、例えば、約80~180℃の温度及び約500~50000PSIの圧力である。
【0034】
一実施形態では、基板は、コーティング(例えば、ポリイソブチレン等のポリマーコーティング)の有無にかかわらず、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、銀、グラフェン等の箔、フィルムメッシュ又は発泡体等の集電体であり得る。
【0035】
別の実施形態では、基板は、固体電池用の固体電解質用であってもよい。例えば、例示的な固体電解質としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレン酸化物、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン等に由来するポリマーフィルムが挙げられる。別の実施形態では、固体電解質は、酸化物、硫化物及びホスファートの形態のセラミックであってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、活物質は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/359,707号及び第16/573,587号に記載されているような印刷可能リチウム組成物等のプレリチウム化剤と混合することができる。印刷可能リチウム組成物は、リチウム金属粉末、ポリマーバインダー、レオロジー調整剤を含んでもよく、溶媒を更に含んでも含まなくてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、乾燥電極材料混合物は、溶媒、特にリチウムに対して反応性である溶媒を含まなくてもよい。リチウムと反応性であり、回避されるべき例示的な溶媒は、N-メチル1,2ピロリドン(NMP)及びγ-ブチロラクトン(GBL)等の極性溶媒である。例えば、活物質は、追加の溶媒なしでプレリチウム化剤(印刷可能リチウム組成物)と混合されてもよく、すなわちプレリチウム化剤は本質的に溶媒を含まない。いくつかの実施形態では、得られた乾燥電極材料混合物は、印刷可能リチウム組成物から形成され得、乾燥活物質と混合される溶媒を含み得る。印刷可能リチウム組成物中の溶媒の量は、活物質(例えば、ケイ素含有量又は不可逆容量)の特性及び印刷可能な配合物中のリチウム金属粉末の量に依存し得る。したがって、溶媒の量を制御することができる。
【0038】
表1に示すように、乾燥電極材料混合物中の溶媒比(重量%)は、乾燥電極混合物のプレリチウム化剤及び活物質中に存在するリチウム粉末の量に基づいて変化し、制御され得る。
【表1】

Si含有量が高いほど、リチウム損失を補償するために印刷可能リチウム組成物中により多くのリチウム金属粉末が必要とされ、したがって、混合物に導入される印刷可能リチウム材料中により多くの溶媒が必要とされ得る。逆に、印刷可能組成物中のリチウム金属粉末含有量が高いほど、必要とされる印刷可能リチウム組成物は少なくなり、必要とされる溶媒は少なくなる。これらの実施形態では、得られた乾燥電極混合物は、印刷可能リチウム組成物からの溶媒含有量が約20%未満、しばしば約10%未満、時には約1%未満であり得、本質的に又は実質的に溶媒を含まなくてもよい。この実施形態における溶媒は、適用プロセス中に蒸発することが認識されるべきである。したがって、乾燥電極混合物は、基板(例えば、集電体)に適用されると、1%未満、多くの場合0.5%未満、好ましくは約0%を有し、溶媒を本質的に含まなくてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、基板は、例えばポリマーコーティングとして、接着促進剤で処理されてもよい。接着促進剤の例には、不飽和エラストマー、飽和エラストマー、熱可塑性樹脂、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、及びポリ酢酸ビニル.ポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリラートゴム、ケイ素ゴム、ニトリルゴム、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレンプロピレンジエンターモノマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンターポリマー、ポリブテン、ワックス及びそれらの組合せが含まれ得る。
【0040】
一実施形態では、活性成分の例示的な電極活物質は、グラファイト、カーボンブラック、ハードカーボン、炭素合金及びそれらの組合せ等のアノード活物質を含み得る。あるいは、アノード活物質は、グラファイト-SiOx複合材料、SiO、SiO、Si粉末、SiC、SiC複合材料、Si系合金、グラファイト-SNO、SN C複合材料及びそれらの組合せであってもよい。
【0041】
別の実施形態では、電極活物質は、MnO、V、MoS、金属フッ化物、硫黄、硫黄複合材料、スズ、及びそれらの組合せを含む非リチウム化材料等のリチウム化され得るカソード活物質であり得る。しかし、更にリチウム化することができるLiMn及びLiMO(式中、MはNi、Co又はMnである)等のリチウム化材料も使用することができる。非リチウム化活物質は、一般に、リチウム化活物質を含む従来の二次電池よりも高いエネルギー及び出力を提供することができるこの構造において、より高い比容量、より低いコスト及びカソード材料のより広い選択を有するため好ましい。
【0042】
いくつかの実施形態では、リチウム金属粉末は、微粉化された粉末の形態であってもよい。リチウム金属粉末は、典型的には、約80μm未満、しばしば約40μm未満、時には約20μm未満の中程度の粒径を有する。リチウム金属粉末は、Livent USA Corp.から入手可能な非発火性安定化リチウム金属パワー(SLMP(登録商標))であってもよい。リチウム金属粉末はまた、フッ素、ワックス、リン若しくはポリマー又はそれらの組合せの実質的に連続した層又はコーティングを含んでもよい(米国特許第5,567,474号、同第5,776,369号、及び同第5,976,403号に開示され、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。安定化されたリチウム金属粉末は、水分及び空気との反応性が著しく低い。
【0043】
リチウム金属粉末はまた、金属と合金化していてもよい。例えば、リチウム金属粉末は、I-VIII族元素と合金化されていてもよい。IB族からの適切な元素は、例えば、銀又は金を含み得る。IIB族からの適切な元素は、例えば、亜鉛、カドミウム、又は水銀を含み得る。周期表のIIA族の適切な元素は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びラジウムを含み得る。本発明で使用することができるIIIA族の元素は、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、又はタリウムを含み得る。本発明で使用され得るIVA族元素は、例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、又は鉛を含み得る。本発明で使用され得るVA族の元素は、例えば、窒素、リン、又はビスマスを含み得る。VIIIB族からの適切な元素は、例えば、パラジウム又は白金を含み得る。
【0044】
印刷可能リチウム組成物のためのポリマーバインダーは、リチウム金属粉末と適合するように選択される。「と適合する」又は「適合性」は、ポリマーバインダーがリチウム金属粉末と激しく反応して安全上の問題をもたらさないことを伝えることを意図している。リチウム金属粉末及びポリマーバインダーは反応してリチウム-ポリマー複合体を形成し得るが、このような複合体は様々な温度で安定であるべきである。リチウム及びポリマーバインダーの量(濃度)は、安定性及び反応性に寄与することが認識されている。ポリマーバインダーは、約1,000~約8,000,000の分子量を有してもよく、多くの場合、2,000,000~5,000,000の分子量を有する。適切なポリマーバインダーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリラートゴム、ケイ素ゴム、ニトリルゴム、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレンプロピレンジエンターモノマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンターポリマー、ポリブテンの1つ又は複数を含み得る。バインダーはワックスであってもよい。好ましくは、バインダーは乾燥粉末として添加される。
【0045】
レオロジー調整剤は、リチウム金属粉末及びポリマーバインダーと適合し、組成物中に分散可能であるように選択される。一実施形態では、レオロジー調整剤は炭素系である。例えば、レオロジー調整剤は、コーティングされた電極のための構造を提供するためにカーボンナノチューブから構成され得る。別の実施形態では、カーボンブラックをレオロジー調整剤として添加してもよい。
【0046】
印刷可能リチウム組成物の好ましい実施形態は、カーボンナノチューブ等の炭素系レオロジー調整剤を含む。カーボンナノチューブの使用はまた、印刷可能リチウム組成物でコーティングされた際にリチウムアノードのための三次元支持構造及び導電性ネットワークを提供し、その表面積を増加させ得る。別の支持構造は、Cui et al.[Science Advances,Vol.4,no.7,page 5168,DOI:10.1126/sciadv.aat5168]によって記載されているようなものであってもよく、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、これは、寄生反応を防止し、改善されたサイクル挙動をもたらす安定な宿主として中空炭素球を使用する。更に別の支持構造は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,090,512号に記載されているようなナノワイヤであってもよい。他の適合性炭素系レオロジー調整剤には、カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン及びそれらの混合物又はブレンドが含まれる。
【0047】
適切なレオロジー調整剤の他の例としては、酸化チタン及び酸化ケイ素を含む非炭素系材料を挙げることができる。例えば、ナノチューブ又はナノ粒子等のケイ素ナノ構造をレオロジー調整剤として添加して、三次元構造及び/又は付加容量を提供することができる。レオロジー調整剤はまた、機械的劣化を防止することによって印刷可能リチウム組成物から形成された層(すなわち、コーティング、箔又は膜)の耐久性を高めることができ、より速い充電を可能にし得る。
【0048】
追加のレオロジー調整剤を組成物に添加して、剪断条件下での粘度及び流動等の特性を調整することができる。レオロジー調整剤はまた、レオロジー調整剤の選択に応じて、導電率、容量の改善及び/又は安定性/安全性の改善を提供し得る。この目的のために、レオロジー調整剤は、異なる特性を提供するように、又は添加特性を提供するように、2つ以上の化合物の組合せであってもよい。例示的なレオロジー調整剤は、ケイ素ナノチューブ、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム並びに他のIIA族、IIIA族、IVB族、VB族及びVIA族元素/化合物並びにそれらの混合物又はブレンドのうちの1つ又は複数を含み得る。リチウムイオン導電率を高めることを意図した他の添加剤、例えば、リチウムペルクロラート(LiClO)、リチウムヘキサフルオロホスファート(LiPF)、リチウムジフルオロ(オキサラート)ボラート(LiDFOB)、リチウムテトラフルオロボラート(LiBF)、硝酸リチウム(LiNO)、リチウムビス(オキサラート)ボラート(LiBOB)、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等の電気化学素子電解質塩を使用することができる。
【0049】
一般に、印刷可能リチウム組成物中のリチウム金属粉末は、当業者に公知の分散/混合技術を使用して、乾式電極の活性成分及び不活性成分と共に均一に分散され得る。集電体への乾燥粉末の積層中、リチウム金属粉末は、アノード活物質と密接に接触する。電解質を添加すると、リチウム金属粉末はアノード活物質と反応してリチウム化化合物を生成する。リチウム金属粉末粒子が存在していた空間は、部分的に空になり、多孔質構造となる。リチウム金属粉末の濃度が高いほど、より多孔性の構造が得られる。レオロジー調整剤を印刷可能なリチウム配合物に含めて、多孔性及び全体的な三次元支持構造を所望に応じて変更することができる。そのような調製剤の例としては、Electrochemical and Solid-State Letters,12,5,A107-A110,2009に記載されているカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン又はポリアクリラートを挙げることができる。
【0050】
使用される場合の溶媒は、リチウムと適合性であるべきであり、一実施形態では、非極性溶媒、例えば、非環式炭化水素、環式炭化水素、芳香族炭化水素、対称エーテル、非対称エーテル、環式エーテル、アルカン、スルホン、鉱油、及びそれらの混合物、ブレンド又は共溶媒を挙げることができる。適切な非環式及び環式炭化水素の例としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン等が挙げられる。好適な芳香族炭化水素の例としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、イソプロピルベンゼン(クメン)等が挙げられる。適切な対称、非対称及び環式エーテルの例としては、ジ-n-ブチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、グリム等が挙げられる。Shell Sol(登録商標)(Shell Chemicals)又はIsopar(登録商標)(Exxon)等の調整された沸点範囲を有する市販のイソパラフィン系合成炭化水素溶媒も適している。
【0051】
ポリマーバインダー及び溶媒は、互いに及びリチウム金属粉末と適合性であるように選択される。一般に、バインダー又は溶媒は、リチウム金属粉末と非反応性であるか、又はいずれの反応も最小限に保たれ、激しい反応が回避されるような量であるべきである。バインダー及び溶媒は、印刷可能リチウム組成物が作製され、使用される温度で互いに適合性でなければならない。一実施形態において、溶媒は、空気中の水分の引力が最小限であるという点で吸湿性が低い。したがって、非極性溶媒は本発明によく適している。これに対して、極性溶媒は吸湿性が高く、バインダー、特にリチウム金属との反応性及び非相溶性を有する。N-メチル1,2ピロリドン(NMP)及びγ-ブチロラクトン(GBL)のような極性溶媒は、リチウムと高度に反応性であり、暴走し、潜在的に壊滅的な燃焼反応を引き起こすため、避けるべきである。好ましくは、溶媒(又は共溶媒)は、印刷可能リチウム組成物(例えば、スラリー形態で)から容易に蒸発して、適用後に印刷可能リチウム組成物(スラリー)を乾燥させ、乾燥形態の電極材料を提供するのに十分な揮発性を有する。
【0052】
別の実施形態では、ポリマーバインダー、レオロジー調整剤、コーティング試薬、及びリチウム金属粉末の他の潜在的な添加剤の混合物を形成し、リチウム融点を超える温度で、又はリチウム分散液が冷却した後のより低い温度で、分散中にリチウム液滴と接触するように導入することができ、米国特許第7,588,623号に記載されている通りであり、その開示は参照によりその全体が組み込まれる。このように修飾されたリチウム金属は、乾燥粉末形態で、又は選択された溶媒中の溶液形態で導入され得る。異なるプロセスパラメータの組合せを使用して、特定の用途のための特定のコーティング及びリチウム粉末特性を達成することができることが理解される。
【0053】
印刷可能リチウム組成物の構成要素は、高濃度の固体を有するようにスラリー又はペーストとして一緒に混合されてもよい。乾燥リチウム粉末は、標準的な技術によって分散させることができ、その選択は当業者によって行われ得る。したがって、スラリー/ペーストは、堆積又は適用の時間の前に必ずしも全ての溶媒が添加されるわけではない濃縮物の形態であってもよい。一実施形態では、リチウム金属粉末は、適用又は堆積された時にリチウム金属粉末の実質的に均一な分布が堆積又は適用されるように、任意のレオロジー調整剤と共に溶媒中に均一に懸濁されてもよい。リチウム金属粉末の実質的に均一な分布では、粉末は、懸濁液の上部から底部までリチウム金属粉末含有量に定性的な変動がないように溶媒に懸濁されてもよい。
【0054】
本発明による印刷可能リチウム組成物の実施形態は、乾燥基準で最大20%等の高いバインダー比に対応することができる。粘度及び流動性等の印刷可能リチウム組成物の様々な特性は、リチウムの電気化学的活性を失うことなく、バインダー及び調整剤の含有量を50%乾燥基準まで増加させることによって調整することができる。バインダー含有量を増加させると、印刷可能リチウム組成物の充填及び乾燥適用(コーティング)プロセス中の流れが容易になる。印刷可能リチウム組成物は、乾燥重量基準で、約50重量%~約98重量%のリチウム金属粉末と、約2重量%~約50重量%のポリマーバインダー及びレオロジー調整剤とを含み得る。一実施形態では、印刷可能リチウム組成物は、約60重量%~約90重量%のリチウム金属粉末と、約10重量%~約40重量%のポリマーバインダー及びレオロジー調整剤とを含む。
【0055】
印刷可能リチウム組成物の重要な態様は、懸濁液のレオロジー安定性である。リチウム金属は0.534g/ccの低い密度を有するため、リチウム粉末が溶媒懸濁液から分離するのを防ぐことは困難である。リチウム金属粉末充填量、ポリマーバインダー及び従来の調整剤の種類及び量、粘度及びレオロジーを選択することにより、本発明の安定な懸濁液を作製するように調整することができる。好ましい実施形態は、90日超で分離を示さない。これは、1x10cps~1x10cpsの範囲でゼロ剪断粘度を有する組成物を設計することによって達成され得、このようなゼロ剪断粘度は、特に貯蔵中にリチウムを懸濁状態に維持する。剪断が適用されると、懸濁液粘度は、印刷又はコーティング用途での使用に適したレベルまで低下する。
【0056】
得られた印刷可能リチウム組成物は、好ましくは、10s-1で約20~約20,000cpsの粘度、時には約100~約2,000cpsの粘度、しばしば約700~約1,100cpsの粘度を有し得る。このような粘度では、印刷可能リチウム組成物は流動性懸濁液又はゲルである。印刷可能リチウム組成物は、好ましくは室温で長期の貯蔵寿命を有し、60℃まで、多くの場合120℃まで、時には180℃までの温度で金属リチウム損失に対して安定である。印刷可能リチウム組成物は、経時的にいくらか分離し得るが、穏やかな撹拌及び/又は熱の適用によって懸濁液に戻すことができる。
【0057】
一実施形態では、活性成分と混合する前のプレリチウム化剤のリチウム金属粉末は、溶液ベースで約0.5~約100%、好ましくは約0.5%~約50%、より好ましくは約10~30%を含む。リチウム金属粉末は、他の添加剤を用いずに単独で活性成分に添加してもよい。別の実施形態では、活性成分と混合する前の印刷可能リチウム組成物は、溶液ベースで約0.0~約20%、好ましくは約0.1%~10%、最も好ましくは約0.1%~約5%のポリマーバインダーを含む。別の実施形態では、活性成分と混合する前の印刷可能リチウム組成物は、溶液ベースで約0.0~約20%、好ましくは約0.1%~10%、最も好ましくは約0.5%~約5%のレオロジー調整剤を含む。別の実施形態では、活性成分と混合する前の印刷可能リチウム組成物は、溶液ベースで約0%~約95%、好ましくは約40%~95%、最も好ましくは約65%~約90%の溶媒を含む。
【0058】
図1を参照すると、一実施形態では、電極を製造するためのプロセスは、ノズル15を介して活性成分(電極活物質、バインダー及び導電材料)及び印刷可能リチウム組成物の乾燥電極混合物10を堆積させることを伴い得る。基板20上に堆積された乾燥電極混合物の厚さ(例えば、集電体として示されている)は、テンプレート(図示せず)を使用して制御することができる。乾燥電極混合物10は、電極40を形成するために、ローラー30、続いてカレンダー(calendar)35を使用して基板20上にプレスすることができる。
【0059】
一実施形態では、アノード活物質及び印刷可能リチウム組成物は一緒に提供され、集電体(例えば、銅、ニッケル等)上に堆積される。例えば、アノード活物質及び印刷可能リチウム組成物を混合し、一緒に堆積することができる。一実施形態では、ビューラー連続ミキサーを使用することができる。別の実施形態において、アノード活物質及び印刷可能リチウム組成物は、基板(例えば、固体電池のアノード用又は固体電解質上の集電体)上に印刷可能リチウム組成物の層を形成するために共押出される。上記の押出技術を含む印刷可能リチウム組成物の堆積は、多種多様なパターン(例えば、ドット、ストライプ)、厚さ、幅等として堆積することを含んでもよい。例えば、印刷可能リチウム組成物及びアノード活物質は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0186519号に記載されているように、一連のストライプとして堆積されてもよい。ストライプは、リチウム化中のアノード活物質の膨張を説明する3D構造を形成する。例えば、ケイ素は、リチウム化中に300~400%膨張し得る。このような膨潤は、アノード及びその性能に悪影響を及ぼす可能性がある。ケイ素アノードストライプ間の交互パターンとしてY平面内に薄いストライプとして印刷可能なリチウムを堆積させることにより、ケイ素アノード材料はX平面内で膨張し、電気化学的研削及び粒子電気的接触の喪失を緩和することができる。したがって、この印刷方法は、膨張のための緩衝を提供することができる。印刷可能リチウム配合物がアノードを形成するために使用される別の例では、それはカソード及びセパレータと共に層状に共押出され、全固体電池をもたらすことができる。
【0060】
追加の実施形態では、印刷可能リチウム組成物の少なくとも一部を、電池の形成プロセスの前にアノード活物質に供給することができる。例えば、アノードは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0269471号に記載されているような部分的にリチウムを充填されたケイ素系活物質を含んでもよく、ここで部分的に充填された活物質は、インターカレーション/合金化等によって選択された程度のリチウムの充填量を有する。いくつかの実施形態では、アノード活物質は、印刷可能リチウム組成物で機械的にリチウム化されてもよい。例えば、印刷可能リチウム組成物がその表面に適用されると、機械的リチウム化を誘発するように選択された力でアノード活物質をプレスすることができる。
【0061】
以下、本発明の好ましい例及び比較例について説明する。しかしながら、以下の例は、本発明の好ましい例示的な実施形態に過ぎず、本発明はこれに限定されない。例は、コインセル及びより大きなパウチセルの形成の説明を提供する。
【0062】

例1
85%グラファイト、5%カーボンブラック、及び10%PVDFを、THINKY ARE 250自転公転式ミキサー内で1000rpmで5分間乾式混合する。Liovix(商標)としてのLivent USA Corp.からの、全アノード容量の約20%のリチウム当量を有する10%印刷可能リチウム組成物を加え、THINKY ARE 250自転公転式ミキサーで更に1分間混合する。得られた乾燥混合物をポリマーコーティング銅基板上に堆積させ、160℃、15000PSI無極性でプレスする。
【0063】
例2
85%のグラファイト/10%酸化ケイ素混合物、5%のカーボンブラック及び10%のPVDFを、THINKY ARE 250自転公転式ミキサー内で1000rpmで5分間乾式混合する。Liovix(商標)としてのLivent USA Corp.から入手可能な、全アノード容量の約20%のリチウム当量を有する10%印刷可能リチウム組成物を加え、THINKY ARE 250自転公転式ミキサーで更に1分間混合する。得られた乾燥混合物をポリマーコーティング銅基板上に堆積させ、160℃、15000PSIでプレスする。
【0064】
例3
85%のグラファイト/25%酸化ケイ素混合物、5%のカーボンブラック及び10%のPVDFを、THINKY ARE 250自転公転式ミキサー内で1000rpmで5分間乾式混合する。Liovix(商標)としてのLivent USA Corp.から入手可能な、全アノード容量の約20%のリチウム当量を有する10%印刷可能リチウム組成物を加え、THINKY ARE 250自転公転式ミキサーで更に1分間混合する。得られた乾燥混合物をポリマーコーティング銅基板上に堆積させ、160℃、15000PSIでプレスする。
【0065】
乾燥及びカレンダー加工(calendering)後、例1~3の電極を、1M LiPFを含むEC:FEC:EMC:DMC1:1:2:6(体積比)電解質を使用して、リチウム金属対電極(Graphite/Cellgard 3501/Li半電池)を備えたコイン電池形式の半電池に組み立てる。セルは、Maccorシリーズ4000サイクラーで以下のプロトコルを用いて試験される:1)45℃で24時間休止、2)1.5C~0.005Vで放電、3)電流が0.01Cに低下するまで定電圧工程、及び4)0.1C~1.5Vで充電。
【0066】
図2及び図3は、ベースラインセル及び例1に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルの電圧曲線を示す。電圧曲線は、印刷可能リチウム組成物が組み込まれたセルがより低い開始開回路電圧を有することを実証しており、これは、電極が印刷可能リチウム組成物によって部分的にリチウム化されていることを示している。平均充電電圧と平均放電電圧との間の差は、ベースラインセルと比較して、印刷可能リチウム組成物が組み込まれたセルについてより低く、より低いDC抵抗を示す。
【0067】
図4図6は、1回目の充電中、ベースラインとそれぞれ例1~3に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルとの間の差分容量(dQ/dV)対電位(V)を比較するプロットである。電気化学的結果は、従来の手法を使用して製造された電極の結果と同様である。図4図6に見られるように、印刷可能リチウム組成物の組込みは、固体電解質界面の形成が乾燥電極材料混合物を基板に適用した24時間以内に起こったので、電解質溶媒還元ピークを排除する。
【表2】
【0068】
表2は、ベースラインセルと例1に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルとの間の第1のサイクル効率の比較を提供する。表2に見られるように、ベースラインセルの第1のサイクル効率(CE)は平均して約84.0%であるが、印刷可能リチウム組成物を有するセルの第1のCEは平均して約95.8%であり、約12%の増加を表す。
表3:グラファイト-10%SiO/Li半電池における、ベースラインセルとの印刷可能リチウム組成物を有するセルとの性能比較(例2)
表2は、ベースラインセルと例2に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルとの間の第1のサイクル効率の比較を提供する。
【表3】
【0069】
表3に見られるように、ベースラインセルの第1のサイクル効率(CE)は平均約78.0%であるのに対して、印刷可能リチウム組成物が組み込まれたセルの第1のCEは平均約86.3%であり、約8.3%の増加を表す。
表4:グラファイト-25%SiO/Li半電池における、ベースラインセルと印刷可能リチウム組成物を有するセルとの性能比較(例3)
表4は、ベースラインセルと例3に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルとの間の第1のサイクル効率の比較を提供する。
【表4】
【0070】
表4に見られるように、ベースラインセルの第1のサイクル効率(CE)は平均約64.6%であるのに対して、印刷可能リチウム組成物が組み込まれたセルの第1のCEは平均約76.4%であり、約11.8%の増加を表す。
【0071】
例4
本発明のプロセスをスケールアップする能力を実証するために、パウチセルを作製した。例1の乾燥混合物をポリマー被覆銅基板上に堆積させ、160℃、15000PSIでプレスして、4.6cmx4.3cmの寸法を有するパウチセルを形成した。
【0072】
乾燥及びカレンダー加工(calendering)後、例4の電極を、リチウム金属対電極(Graphite/Cellgard3501/Li半電池)及びEC:FEC:EMC:DMC1:1:2:6(体積比)電解質中1MのLiPFを有するパウチセル形式の半電池に組み立てる。セルは、Maccorシリーズ4000サイクラーで以下のプロトコルを用いて試験される:1)45℃で24時間休止、2)1.5C~0.005Vで放電、3)電流が0.01Cに低下するまで定電圧工程、及び4)0.1C~1.5Vで充電。
【0073】
図7は、ベースラインパウチセル及び例4に従って組み込まれた印刷可能なリチウム位置を有するセルの電圧曲線を示す。
【0074】
図8は、ベースラインと、例4に従って組み込まれた印刷可能リチウム組成物を有するセルとの間の差分容量(dQ/dV)対電位(V)を比較するプロットである。電圧曲線は、印刷可能リチウム組成物が組み込まれたセルがより低い開始開回路電圧を有することを実証しており、これは、電極が印刷可能リチウム組成物によって部分的にリチウム化されていることを示している。
【表5】

このデータは、本発明のプロセスがコインセルからより大きな商業規模にスケールアップされ得る11.6%の増加を裏付けている。
【0075】
本手法は、好ましい実施形態及びその特定の例を参照して本明細書で例示及び説明されているが、他の実施形態及び例が同様の機能を実行し、及び/又は同様の結果を達成することができることは、当業者には容易に明らかであろう。そのような同等の実施形態及び例は全て、本手法の趣旨及び範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレリチウム化電極を形成するための乾式プロセスであって、
a)電極活物質、バインダー、及び導電材料を含む活性成分と、これと混合した
b)乾燥重量基準で50~98重量%のリチウム金属粉末、及び2~50重量%の前記リチウム金属粉末と適合するポリマーバインダー、及び乾燥電極材料混合物を形成するための、前記リチウム金属粉末と適合するレオロジー調整剤を含むプレリチウム化印刷可能リチウム組成物と、
を含む乾燥電極材料混合物を調製することと、
前記乾燥電極材料混合物を非自己支持層又は界面として基板に堆積させて、プレリチウム化電極を形成することと、
を含む、プレリチウム化電極を形成するための乾式プロセス。
【請求項2】
前記乾燥電極材料混合物を前記基板に堆積させることが、押出、ロール圧縮、静電堆積及びそれらの組合せからなる群から選択される方法によって行われる、請求項1に記載のプロセス
【請求項3】
前記接着促進剤が、不飽和エラストマー、飽和エラストマー、熱可塑性樹脂、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、及びポリ酢酸ビニル.ポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリラートゴム、ケイ素ゴム、ニトリルゴム、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレンプロピレンジエンターモノマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンターポリマー、ポリブテン、ワックス及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス
【請求項4】
前記乾燥電極材料混合物を前記基板に適用することが、約80から約180℃の温度及び約5000から約50000PSIの圧力で前記乾燥電極材料混合物を前記基板上にプレスすることを含む、請求項1に記載のプロセス
【請求項5】
前記基板が、集電体、ポリマーフィルム及び固体電解質からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス
【請求項6】
前記電極活物質がアノード活物質であり、前記バインダーがポリイソブチレン又はポリフッ化ビニリデンであり、前記導電材料がカーボンブラックである、請求項1に記載のプロセス
【請求項7】
前記アノード活物質が、グラファイト又はグラファイト/酸化ケイ素混合物を含む、請求項6に記載のプロセス
【請求項8】
前記電極活物質がカソード活物質である、請求項1に記載のプロセス
【請求項9】
前記カソード活物質が、MnO 、V 、MoS 、金属フッ化物、硫黄、硫黄複合材料、スズ及びそれらの組合せからなる群から選択される非リチウム化材料である、請求項8に記載のプロセス
【請求項10】
前記リチウム金属粉末が、安定化されたリチウム金属粉末であり、80μm未満のメジアン粒径を有する、請求項1に記載のプロセス
【請求項11】
前記レオロジー調整剤が導電材料である、請求項1に記載のプロセス
【請求項12】
前記導電材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びグラフェンからなる群から選択される、請求項11に記載のプロセス
【請求項13】
前記レオロジー調整剤が改善された容量を提供し、シリコンナノチューブ、グラファイト、ハードカーボン及びグラフェンからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス
【請求項14】
前記レオロジー調整剤が、炭素質材料、ケイ素含有材料、スズ含有材料、IIA族酸化物、IIIA族酸化物、IVB族酸化物、VB族酸化物及びVIA族酸化物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス
【請求項15】
ワンステッププロセスである、請求項1に記載のプロセス
【請求項16】
前記プロセスの温度がリチウムの融点未満である、請求項1に記載のプロセス
【請求項17】
請求項1に記載のプロセスによって製造されたプレリチウム化電極
【請求項18】
前記乾燥電極材料混合物を前記基板に適用した後24時間以内に固体電解質界面層を形成することを更に含む、請求項1に記載のプロセス
【請求項19】
請求項1に記載のプロセスから形成されたカソード及びアノードを有する電池
【請求項20】
約80%を超える第1のサイクル効率を有する、請求項19に記載の電池
【請求項21】
前記第1のサイクル効率が90%より大きい、請求項20に記載の電池
【請求項22】
a)電極活物質、バインダー、及び導電材料を含む活性成分と、これと混合した
b)前記活性成分と混合する前に溶液ベースで0.5から50%のリチウム金属粉末、前記リチウム金属粉末と適合する0.1から10%のポリマーバインダー、前記リチウム金属粉末と適合する0.1から10%のレオロジー調整剤、及び乾燥電極材料混合物を形成するための約40から95%の非極性溶媒を含むプレリチウム化印刷可能リチウム組成物と、
を含む電極材料混合物であって、
前記乾燥電極材料混合物は、乾燥後、約20%未満の溶媒含有量を有する、
電極材料混合物
【請求項23】
前記乾燥電極材料が約10%未満の溶媒含有量を有する、請求項22に記載の電極材料
【請求項24】
前記乾燥電極材料が約1%未満の溶媒含有量を有する、請求項22に記載の電極材料
【請求項25】
請求項22に記載のプレリチウム化電極を含む電池
【国際調査報告】