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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】徐放性脂質前駆製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20240315BHJP
   A61K 31/24 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240315BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K31/24
A61K47/12
A61K47/28
A61K47/26
A61K47/44
A61K47/24
A61K31/65
A61K38/17
A61K38/12
A61K38/26
A61K38/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562288
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 KR2022003912
(87)【国際公開番号】W WO2022215899
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0045906
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
3.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】521470629
【氏名又は名称】ティオンラボ・セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドク・ス・イム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュ・イ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
4C076DD24Q
4C076DD37Q
4C076DD38
4C076DD39Q
4C076DD41
4C076DD55Q
4C076DD59Q
4C076DD70
4C076EE06
4C076EE58
4C076FF32
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA17
4C084BA23
4C084BA25
4C084BA26
4C084BA44
4C084DB35
4C084MA05
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA12
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA29
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA12
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA37
4C206MA02
4C206MA05
4C206NA12
(57)【要約】
本発明は、徐放性脂質前駆製剤に関する。本発明による徐放性脂質前駆製剤は、水性媒質への露出時に液状結晶を形成し、薬物の徐放を可能にすることができ、薬物の放出を2週間~1月間持続させることができる。また、形成された液状結晶は、低粘度でも徐放性を有し、注入時に押出力が低いため、使用便宜性に優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)炭素数14~20の不飽和脂肪酸を含む植物性オイルと;
b)コレステロールおよび糖アルコールから成るグループから選ばれた1つ以上の化合物と;を含む、
水性媒質中で液状結晶を形成する徐放性脂質前駆製剤。
【請求項2】
成分a)は、ひまし油(castor oil)、サフラワー油(safflower oil)、綿実油(cotton seed oil)、アーモンドオイル(almond oil)、アボカドオイル(avocado oil)、キャノーラ油(canola oil)、ココナツオイル(coconut oil)、コーンオイル(corn oil)、アマニ油(flaxseed oil)、亜麻仁油(linseed oil)、マカダミアオイル(macadamia oil)、からし油(mustard oil)、オリーブオイル(olive oil)、ヤシ油(palm oil)、落花生油(peanut oil)、パンプキンシードオイル(pumpkin seed oil)、ぬか油(rice bran oil)、ごま油(sesame oil)、大豆油(soybean oil)、ひまわり油(Sunflower oil)、茶油(tea seed oil)およびくるみ油(walnut oil)から成るグループから選ばれた1つ以上である、請求項1に記載の徐放性脂質前駆製剤。
【請求項3】
成分a)の含有量は、徐放性脂質前駆製剤の全重量に対して50~98重量部である、請求項1に記載の徐放性脂質前駆製剤。
【請求項4】
糖アルコールは、マンニトール(mannitol)、ソルビトール(sorbitol)、キシリトール(xylitol)、エリトリトール(erythritol)、マルチトール(maltitol)およびラクチトール(lactitol)から成るグループから選ばれた1つ以上である、請求項1に記載の徐放性脂質前駆製剤。
【請求項5】
成分b)の含有量は、徐放性脂質前駆製剤の全重量に対して2~50重量部である、請求項1に記載の徐放性脂質前駆製剤。
【請求項6】
薬物をさらに含み、
前記薬物は、ナファモスタット(nafamostat)、ドキシサイクリン(doxycycline)、リラグルチド(liraglutide)、セマグルチド(semaglutide)、ランレオチド(lanreotide)およびゴセレリン(goserelin)から成るグループから選ばれた1つ以上である、請求項1に記載の徐放性脂質前駆製剤。
【請求項7】
薬物の含有量は、成分a)100重量部に対して1~80重量部である、請求項6に記載の徐放性脂質前駆製剤。
【請求項8】
安定化剤をさらに含み、
前記安定化剤は、アスコルビン酸ナトリウム(sodium ascorbate)、パルミチン酸アスコルビル(ascorbic palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール(butylated hydroxyanisole,BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene,BHT)、メチオニン(methionine)、モノチオグリセロール(monothioglycerol)、チオ硫酸ナトリウム(sodium thiosulfate)およびメタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulfite)から成るグループから選ばれた1つ以上である、請求項1に記載の徐放性脂質前駆製剤。
【請求項9】
安定化剤の含有量は、成分a)100重量部に対して0.1~10重量部である、請求項8に記載の徐放性脂質前駆製剤。
【請求項10】
粘度が30~650cPであり、
注入力が1~50Nである、請求項1に記載の徐放性脂質前駆製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放性脂質前駆製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放性製剤(sustained-release concentrate)は、単回投与により薬理学的活性物質を持続放出することで、繰り返し投与時に起こり得る副作用を防止し、一定時間または一定期間以上薬理学的活性物質の有効濃度範囲を維持できる製剤である。
【0003】
生分解性を有し、現在使用される代表的な徐放性素材は、食品医薬品安全処(FDA)の承認を受けたPLGA[poly(lactic-co-glycolic acid)]である。米国登録特許5,480,656には、PLGA生体分解性高分子が生体内で一定時間が経過すると、乳酸とグリコール酸に分解され、薬理学的活性物質を持続放出することができることを開示している。しかしながら、PLGAの分解産物である酸性物質は、炎症反応を起こし、細胞増殖率を減少させることができる(K.Athanasiou,G.G.Niederauer,and C.M.Agrawal,Biomaterials,17,93(1996))。また、徐放のために約10~100マイクロメーターのPLGA固体粒子に薬物を封入して注射しなければならないが、この場合、注射時に疼痛や炎症が伴う問題がある。したがって、薬理学的活性物質の有効濃度を一定期間以上提供しつつ、患者コンプライアンスを高めることができる新しい徐放性製剤の開発が要求される。
【0004】
生分解性高分子ベースの製剤の短所を回避できる製剤として、WO2005/117830は、少なくとも1つの中性ジアシル脂質(例えば、グリセリルジオレートのようなジアシルグリセロール)および/または少なくとも1つのトコフェロール;少なくとも1つのリン脂質;および少なくとも1つの生体適合性の酸素を含む低粘度有機溶媒を含む液状デポー製剤(liquid depot formulation)を開示する。しかしながら、グリセリルジオレートのような中性ジアシル脂質を含有する製剤は、低い生分解性の問題を有し、生体由来物質ではないので、生体親和性に限界があり、炎症を誘発する可能性が高い。
【0005】
また、韓国特許登録第10-1494594号は、ソルビタン不飽和脂肪酸エステル;ホスファチジルコリンなどのホスホリピド;およびカルボキシル基またはアミン基のイオン化基を有さず、疎水性部分は、炭素数が15個~40個のトリアシル基を有したり、炭素環構造を有する液状結晶強化剤を含む徐放性脂質前駆製剤(pre-concentrate)を開示する。しかしながら、ソルビタンモノオレートは、高粘度(約2000mPa・s、25℃)を有するので、これを用いて得られた製剤も、高粘度を有し、低い注入力(injectability)を示す問題がある。
【0006】
したがって、2週間以上の長期持続性薬物注射製剤として、初期薬物放出現象を防止することができ、優れた生分解性、生体親和性および注入力を有する徐放性注射用薬学組成物を開発する必要性が当業界に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開特許WO 2005/117830
【特許文献2】韓国特許登録第10-1494594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、脂質溶液形態の徐放性脂質前駆製剤に関し、水性媒質への露出時に自発的に相転移が起こり、液状結晶を形成する徐放性脂質前駆製剤を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、低粘度でも徐放性を有し、粘弾性に優れ、注入時に押出力が低いため、使用便宜性に優れ、2週間~1ヶ月の持続性を有する徐放性脂質前駆製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、a)炭素数14~20の不飽和脂肪酸を含む植物性オイルと;
b)コレステロールおよび糖アルコールから成るグループから選ばれた1つ以上の化合物と;を含む、水性媒質中で液状結晶を形成する徐放性脂質前駆製剤を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による徐放性脂質前駆製剤は、水性媒質への露出時に液状結晶を形成し、薬物の徐放を可能にすることができ、薬物の放出を2週間~1ヶ月間持続することができる。また、前記徐放性脂質前駆製剤により形成された液状結晶は、低粘度でも徐放性を有し、粘弾性に優れ、注入時に押出力が低いため、使用便宜性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、製造例1で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入したときの写真を示す。
図2図2は、製造例2で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入した後、3~5秒間振ったときの写真を示す。
図3図3は、製造例3で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入したときの写真を示す。
図4図4は、製造例4で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入したときの写真を示す。
図5図5は、安定化剤の種類による液状結晶形成化剤の過酸化物価を評価した結果を示す。
図6図6は、製造例5で製造された徐放性脂質前駆製剤の注入力を評価した結果を示す。
図7図7は、製造例5で製造された徐放性脂質前駆製剤の溶出を評価した結果を示す。
図8図8は、製造例6で製造された徐放性脂質前駆製剤の写真およびpH7.4のPBSに注入したときの写真を示す。
図9図9は、製造例7で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入したときの写真を示す。
図10図10は、製造例8で製造された徐放性脂質前駆製剤の溶出を評価した結果を示す。
図11図11は、経時的なセマグルチドの濃度変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
ただし、本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、以下で記述する特定の実施例および説明は、ただ本発明の理解を助けるためのものであり、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではない。本発明の範囲は、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物や代替物を含むものと理解すべきである。
【0014】
本発明は、a)炭素数14~20の不飽和脂肪酸を含む植物性オイルと;b)コレステロールおよび糖アルコールから成るグループから選択された1つ以上の化合物と;を含む、水性媒質中で液状結晶を形成する徐放性脂質前駆製剤に関する。
【0015】
本発明において前駆製剤(pre-concentrate)は、長期間薬物を放出できる剤形であり、徐放性製剤に該当し、より具体的には、徐放性の注射製剤または経口製剤であってもよい。徐放性製剤は、一定期間の間内部の薬物を徐々に意図されたレベルで放出しなければならない。本発明において前駆製剤は、プレ剤形脂質溶液(lipid solution)の形態を有し、水または生体液(biological fluid)などの水性媒質に露出するとき、非ラメラ相、具体的には、非ラメラ液状結晶(以下、液状結晶という)を形成する。
【0016】
一具体例において、徐放性脂質前駆製剤の粘度は、30~650cPであってもよい。前記粘度を有する場合、注射が可能であり、体内で持続可能なゲル(gel)を形成することができ、また、強い液状結晶が形成されると表現することができる。
【0017】
本発明において徐放性脂質前駆製剤は、a)炭素数14~20の不飽和脂肪酸を含む植物性オイルを含む。
【0018】
前記成分a)は、液状結晶形成化剤の役割を行うことができる。すなわち、植物性オイルは、液状結晶形成化剤であり、水性媒質で液状結晶を形成することができる。
【0019】
一具体例において、炭素数14~20の不飽和脂肪酸は、二重結合を1個または2個を有する不飽和脂肪酸であり、優れた生体親和性および生分解性を有することができる。このような不飽和脂肪酸は、低粘度の脂質溶液を迅速に形成することによって、優れた注入力(injectability)を提供することができる。すなわち、本発明の前駆製剤は、水性媒質と接触する場合、強い液状結晶を形成することができる。また、本発明の前駆製剤は、室温(約25℃)で低粘度を有することによって、18ゲージ以上の注射器を介して容易に生体内に導入され得る。
【0020】
一具体例において、成分a)の種類は、特に限定されず、例えば、ひまし油(castor oil)、サフラワー油(safflower oil)、綿実油(cotton seed oil)、アーモンドオイル(almond oil)、アボカドオイル(avocado oil)、キャノーラ油(canola oil)、ココナツオイル(coconut oil)、コーンオイル(corn oil)、アマニ油(flaxseed oil)、亜麻仁油(linseed oil)、マカダミアオイル(macadamia oil)、からし油(mustard oil)、オリーブオイル(olive oil)、ヤシ油(palm oil)、落花生油(peanut oil)、パンプキンシードオイル(pumpkin seed oil)、ぬか油(rice bran oil)、ごま油(sesame oil)、大豆油(soybean oil)、ひまわり油(Sunflower oil)、茶油(tea seed oil)およびくるみ油(walnut oil)から成るグループから選ばれた1つ以上であってもよい。具体的には、本発明では、成分a)として、ひまし油およびサフラワー油の混合物またはひまし油および綿実油の混合物を使用することができる。
【0021】
一具体例において、成分a)の含有量は、特に限定されず、前駆製剤の総重量(100重量部)に対して50~98重量部で含まれ得る。前記成分a)の含有量が50重量部未満であるか、98重量部を超える場合、本発明による徐放性脂質前駆製剤を生体内に注入したとき、液状結晶の形成能が顕著に低下し、有効成分の持続放出能力が低下する。これによって、本発明において所望の2週間以上の放出制御能力を示さない恐れがある。
【0022】
本発明において徐放性脂質前駆製剤は、b)コレステロールおよび糖アルコールから成るグループから選ばれた1つ以上の化合物を含む。
【0023】
前記成分b)は、液状結晶強化剤の役割を行うことができる。すなわち、成分b)は、液状結晶の内部構造を強く維持(stiffening)するのに助けになり、有効成分の放出速度を遅延させる役割をすることができる。
【0024】
一具体例において、糖アルコールは、マンニトール(mannitol)、ソルビトール(sorbitol)、キシリトール(xylitol)、エリトリトール(erythritol)、マルチトール(maltitol)およびラクチトール(lactitol)から成るグループから選ばれた1つ以上を含んでもよい。
【0025】
一具体例において、成分b)の含有量は、特に限定されず、前駆製剤の総重量(100重量部)に対して2~50重量部で含まれ得る。
【0026】
一具体例において、成分b)は、成分a)100重量部に対して1~10重量部または2~5重量部であってもよい。前記含有量の範囲で液状結晶の内部構造を強く維持させることができる。
【0027】
本発明の徐放性脂質前駆製剤は、有効成分をさらに含んでもよい。前記有効成分は、放出目的で使用され、好ましくは、特定の疾患、症状または病気を治療する薬物(drug)であってもよい。
【0028】
一具体例において、薬物は、β-ラクタムまたは大環状(macrocyclic)ペプチド抗生剤のような抗バクテリア剤、ポリエン・マクロライド(例えば、アムホテリシンB)またはアゾール抗菌剤のような抗真菌剤、ヌクレオシド類似体、パクリタキセルおよびそれらの誘導体のような抗がん剤および/または抗ウイルス剤、非ステロイド性抗炎症剤のような抗炎症剤、ナファモスタットのような膵炎治療剤、コレステロール降下剤および血圧降下剤を含む心血管剤、鎮痛剤、麻酔剤、セロトニン吸収抑制剤を含む抗鬱剤、ワクチンおよび骨調節剤を含んでもよい。または、インスリンおよびインスリン類似体、タクロリムスおよびシクロスポリンAのようなヒト成長ホルモン(hgh)免疫抑制剤のような成長ホルモン、オクトレオチド、サケカルシトニン、デスモプレシン、ソマトスタチン、抗体および抗体断片のようなペプチド薬剤、アンチセンスおよび干渉核酸(例えば、siRNAs)を含む核酸およびワクチンを含んでもよい。
【0029】
具体的には、前記薬物は、ナファモスタット(nafamostat)、ドキシサイクリン(doxycycline)、リラグルチド(liraglutide)、セマグルチド(semaglutide)、ランレオチド(lanreotide)およびゴセレリン(goserelin)から成るグループから選ばれた1つ以上であってもよい。
【0030】
一具体例において、薬物の含有量は、特に限定されず、成分a)100重量部に対して1~80重量部または10~30重量部であってもよい。前記含有量の範囲で液状結晶の構造に影響を及ぼさず、2週間~1ヶ月間の持続的な放出が可能である。
【0031】
本発明の徐放性脂質前駆製剤は、安定化剤をさらに含んでもよい。前記安定化剤は、液状結晶の内部構造を維持するのに助けになり、強い液状結晶の製造を可能にする。また、前記安定化剤は、徐放性前駆製剤の粘度を低減する役割をすることができる。
【0032】
一具体例において、安定化剤の種類は、特に限定されず、例えば、アスコルビン酸ナトリウム(sodium ascorbate,ViC_Na)、パルミチン酸アスコルビル(ascorbic palmitate,ViC_palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール(butylated hydroxyanisole,BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene,BHT)、メチオニン(methionine)、モノチオグリセロール(monothioglycerol)、チオ硫酸ナトリウム(sodium thiosulfate)およびメタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulfite)から成るグループから選ばれた1つ以上であってもよい。
【0033】
一具体例において、安定化剤の含有量は、特に限定されず、成分a)100重量部に対して0.1~10重量部であってもよい。
【0034】
本発明の徐放性脂質前駆製剤は、溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、主成分の溶解や注射能を向上させる役割をすることができる。溶媒を含む徐放性脂質前駆製剤を生体内に注射する場合、前記溶媒は、液状結晶が生成される過程で生体液により希釈して除去することができる。
【0035】
一具体例において、溶媒の種類は、特に限定されず、注射剤の形態で人体に導入され得る溶媒を使用することができる。例えば、エタノール(EtOH)、プロピレングリコール、N-メチルピロリドン(NMP)、およびベンジルアルコールから成るグループから選ばれた有機溶媒または前記有機溶媒の水溶液を使用することができる。
【0036】
一具体例において、溶媒は、徐放性脂質前駆製剤の総重量(100重量部)に対して1~30重量部で含まれ得る。
【0037】
本発明の徐放性脂質前駆製剤は、界面活性剤をさらに含んでもよい。前記界面活性剤は、主成分の溶解を向上させる役割をすることができる。
【0038】
一具体例において、界面活性剤の種類は、特に限定されず、例えば、トゥイーン(Tween)、クレモフォール、ソルトール、ブリジ、トリトン(Triton)、糖脂肪酸エステル(例えば、スクロースオレート、スクロースパルミテートおよび/またはスクロースラウレート)、ポリオキシエチレン頭部基を有する界面活性剤から成るグループから選ばれた1つ以上を使用することができる。
【0039】
一具体例において、界面活性剤は、徐放性脂質前駆製剤の総重量(100重量部)に対して0.1~10重量部で含まれ得る。
【0040】
本発明の徐放性脂質前駆製剤は、ジアシルグリセロールおよびソルビタン不飽和脂肪酸エステルを含まなくてもよい。前記ジアシルグリセロールは、グリセリルジパルミテート(glyceryl dipalmitate)、グリセリルジフィタノアート(glyceryl phytanoate)、グリセリルパルミトレート(glyceryl palmitoleate)、グリセリルジステアレート(glyceryl distearate)、グリセリルジオレート(glcyeryl dioleate)、グリセリルジエライジアート(glceryl dielaidiate)およびグリセリルジリノレート(glyceryl dilinoleate)などであってもよく、前記ソルビタン不飽和脂肪酸エステル(sorbitan unsaturated fatty acid ester)は、ソルビタンモノオレート(sorbitan monooleate)、ソルビタンモノリノレート(sorbitan monolinoleate)、ソルビタンモノパルミトレート(sorbitan monopalmitoleate)、ソルビタンモノミリストレート(sorbitan monomyristoleate)、ソルビタンセスキオレート(sorbitan sesquioleate)、ソルビタンセスキリノレート(sorbitan sesquilinoleate)、ソルビタンセスキパルミトレート(sorbitan sesquipalmitoleate)、ソルビタンセスキミリストレート(sorbitan sesquimyristoleate)、ソルビタンジオレート(sorbitan dioleate)、ソルビタンジリノレート(sorbitan dilinoleate)、ソルビタンジパルミトレート(sorbitan dipalmitoleate)およびソルビタンジミリストレート(sorbitan dimyristoleate)などであってもよい。
【0041】
また、本発明の徐放性脂質前駆製剤は、トコフェロールを含まなくてもよい。
【0042】
本発明による徐放性脂質前駆製剤は、下記の理化学的特徴を有していてもよい。
(i)粘度が30~650cPであり、
(ii)注入力が1~50Nである。
【0043】
粘度(viscosity)とは、流体のフローに対する抵抗を意味する粘性のサイズを示す量である。粘度が大きいほど注入力が大きいので、適当な粘度を有することが好ましい。本発明において粘度は、Brookfield社のDV-II+Proを用いて後述する実験例の条件によって測定することができる。
【0044】
本発明において徐放性脂質前駆製剤の粘度は、30~650cPであってもよい。前記粘度の範囲で注射として使用が可能であり、水性媒質で強い液状結晶を形成することができる。
【0045】
注入力(Injectability)は、患者に快適な注射速度での押出力を意味する。「患者に快適な」は、注射時に患者に傷害や過度な痛みを引き起こさない注射速度を定義するのに使用される。本発明において使用される「快適」は、患者の快適だけでなく、医師または医療専門家が組成物を注射する際の快適または能力を含む。本発明において注入力は、INTRONS社の5569装備を用いて後述する実験例の条件によって測定することができる。一般的に、低い注入力を有することが、組成物の注入時に圧痛がなく、コントロールが容易である。
【0046】
本発明において徐放性脂質前駆製剤の注入力は、1~50Nまたは1~12.5N以下であってもよい。
【0047】
また、本発明は、前述した徐放性脂質前駆製剤を製造する方法に関する。
【0048】
本発明では、成分a)および成分b)の混合物を加熱する段階(以下、加熱段階という);および冷却する段階(以下、冷却段階という)を通して徐放性脂質前駆製剤を製造することができる。
【0049】
一具体例において、加熱段階で、加熱温度は、成分a)および成分b)が完全に溶解したり均質化することができる場合、特に限定されず、例えば、40~70℃または45~60℃であってもよい。
【0050】
一具体例において、成分a)および成分b)の混合時に、溶媒、安定化剤および界面活性剤から成るグループから選ばれた1つ以上の成分を共に混合することができる。
【0051】
一具体例において、薬物は、成分a)および成分b)の混合時に、共に混合したり、または冷却段階を行った後、前記薬物を混合することができる。
【0052】
一具体例において、冷却段階は、20~30℃または室温で行われ得る。
【0053】
また、本発明は、前述した徐放性脂質前駆製剤を含む脂質溶液形態の徐放性注射用薬学組成物に関する。
【0054】
一具体例において、徐放性注射用薬学組成物は、皮下または筋肉注射に使用できる。
【0055】
また、本発明は、前述した徐放性脂質前駆製剤を含む経口用薬学組成物に関する。
【0056】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。下記実施例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【実施例
【0057】
実施例
[参考]材料
植物性オイルとして、Croda社のSuper Refined Castor oil-LQ-(MH)、Super Refined Safflower USP-LQ-(MH)、Super Refined Cottonseed NF、Super Refined Sesame NF-LQ-(MH)などを使用した。
【0058】
また、SAFC社のCholesterol,plant-Dervided(USP)、Merk社のD-mannitol(USP)、isomeri-GDO(1,3-GDO)、Sigma社のAscorbic acid-6-palmitate、Sodium ascorbate、Soy-PC、DL-α-Tocopherol acetate、Span80、Oleic acidを使用した。
【0059】
製造例1.薬物としてナファモスタットを含む徐放性脂質前駆製剤の製造
下記表1の成分および含有量によって、薬物としてナファモスタットを含む徐放性脂質前駆製剤を製造した。
【0060】
具体的には、ガラスバイアルに下記表1の成分を添加した後、45~60℃でマグネチック撹拌機で撹拌しながら混合した。得られた混合物に室温で薬物を添加した後、ホモジナイザー(POLYTRON PT1200E、KINEMATICA)で約10,000rpmの条件下で約5分間均質化した後、室温で約3時間放置し、徐放性脂質前駆製剤を製造した。
【0061】
【表1】
【0062】
試験例1.薬物としてナファモスタットを含む徐放性脂質前駆製剤の水相における液状結晶形成能の評価
製造例1で製造された徐放性脂質前駆製剤を1ml注射器に充填し、23ゲージ(23 gauge)の注射針を介して5mlのpH7.4リン酸塩緩衝液(PBS)に注入した。
【0063】
図1は、製造例1で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入したときの写真を示す。
図1に示されたように、コレステロールとひまし油およびサフラワー油を共に使用したり(製造例1-1)、マンニトールとひまし油およびサフラワー油を共に使用した場合(製造例1-2)、水相で液状結晶が形成されたことを確認することができる。前記製造例で形成された液状結晶は、2週間~1ヶ月以上持続性を有することができる。
【0064】
一方、ホスファチジルコリンとspan80またはホスファチジルコリンとオレイン酸を使用した製造例1-3および1-4は、液状結晶が形成されないことを確認することができる。
【0065】
製造例2.コレステロール含有量による徐放性脂質前駆製剤の製造
下記表2の成分および含有量によって、徐放性脂質前駆製剤を製造した。
徐放性脂質前駆製剤は、製造例1の製造方法によって製造した。
【0066】
【表2】
【0067】
試験例2.コレステロールの含有量による徐放性脂質前駆製剤の水相における液状結晶形成能の評価
製造例2で製造された徐放性脂質前駆製剤を1ml注射器に充填し、23ゲージの注射針を介して5mlのpH7.4リン酸塩緩衝液(PBS)に注入した。
【0068】
図2aは、製造例2-1の徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入した後の写真であり、コレステロールを含有しない場合にも、水相で液状結晶が形成されるが、その強度が非常に弱いことを確認することができる。
【0069】
また、図2bは、製造例2で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入した後、3~5秒間振ったときの写真を示す。図2bの左側の容器から製造例2-1、2-2、2-3、2-4および2-5を示す。
図2bに示されたように、製造例2-1の徐放性脂質前駆製剤は、PBSに注入した後、振ったとき、液状結晶の構造を維持せずに分解されることを確認することができる。
【0070】
これに対し、コレステロールを含む場合、PBSに注入した後、振ったときにも、液状結晶の構造を維持し、特にコレステロールの含有量が150mg以上の場合、剤形安定性に優れていることを確認することができる。
【0071】
製造例3.安定化剤をさらに含む徐放性脂質前駆製剤の製造
下記表3の成分および含有量によって、徐放性脂質前駆製剤を製造した。
徐放性脂質前駆製剤は、製造例1の製造方法と同様に製造した。
【0072】
【表3】
【0073】
試験例3.安定化剤の使用による徐放性脂質前駆製剤の水相における液状結晶形成能の評価
製造例3で製造された徐放性脂質前駆製剤を1ml注射器に充填し、23ゲージの注射針を介して5mlのpH7.4リン酸塩緩衝液(PBS)に注入した。
【0074】
図3aは、製造例3で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入したときの写真を示す。
図3aに示されたように、コレステロールおよび植物性オイルを共に含む場合(製造例3-1~3-3および3-6)、液状結晶が形成されたことを確認することができる。ただし、コレステロールの含有量が100mgの場合、形成された液状結晶は、強度が弱いが、安定化剤としてパルミチン酸アスコルビルをさらに含む場合、コレステロールの含有量が100mgであるにもかかわらず、コレステロールを200mg含む場合と同様に、強度が強く、剤形安定性に優れた液状結晶を製造することができることを確認することができる。
【0075】
なお、コレステロールを使用せず、トコフェロールを使用した場合(製造例3-4)、液状結晶が形成されるが、弱い強度の液状結晶が形成されることを確認でき、パルミチン酸アスコルビルを使用した場合(製造例3-5)、液状結晶が形成されないことを確認することができる。
【0076】
また、図3bは、製造例3-2(左側の容器)および製造例3-3(右側の容器)の徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入し、45日後に液状結晶の形態を観察した写真を示す。
図3bに示されたように、安定化剤としてパルミチン酸アスコルビルを追加した製造例3-3は、粘度の影響なく1ヶ月以上の長期間剤形安定性に優れていることを確認することができる。
【0077】
製造例4.液状結晶形成化剤の種類による徐放性脂質前駆製剤の製造
下記表4の成分および含有量によって、徐放性脂質前駆製剤を製造した。
徐放性脂質前駆製剤は、製造例1の製造方法と同様に製造した。
【0078】
【表4】
【0079】
試験例4.液状結晶形成化剤の種類による徐放性脂質前駆製剤の水相における液状結晶形成能の評価
製造例4で製造された徐放性脂質前駆製剤を1ml注射器に充填し、23ゲージの注射針を介して5mlのpH7.4リン酸塩緩衝液(PBS)に注入した。
【0080】
図4は、製造例4で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入したときの写真を示す。
図4に示されたように、液状結晶形成化剤として本発明によるひまし油およびサフラワー油の混合物を使用した製造例4-1(最右側の容器)は、強い液状結晶が形成されたことを確認することができる。
【0081】
しかしながら、span80を使用した製造例4-2(左側から2番目の容器)は、薬物、コレステロールと混ざらず、オレイン酸を使用した製造例4-3(最左側の容器)は、液状結晶が形成されず、Ismmeric GODを使用した製造例4-4(右側から二番目の容器)は、時間が経過するにつれて固くなることを確認することができる。
【0082】
試験例5.安定化剤の種類による液状結晶形成化剤の過酸化物価の評価
サフラワー油(Safflower oil)、ひまし油(Castor oil)、綿実油(Cotton seed oil)およびオレイン酸(Oleic acid)各3gに安定化剤としてトコフェロール、ViC_palmitate、マンニトールおよびViC_Naを各0.3gずつ添加した。Dl後、45~60℃で加熱した後、室温で冷却し、3時間放置した。
【0083】
60℃の厳しい条件で2週間放置し、液状結晶形成化剤の過酸化物価を評価し、測定することによって、酸敗度を評価した。
【0084】
過酸化物価を測定するために、試料0.3gを300ml三角フラスコに秤量した後、クロロホルム:氷酢酸(2:3)溶液30mlを入れた。アルミホイルで臨時に暗所を作った後、KI飽和溶液1mlを入れ、強力に振った後、暗所に5分間放置した。その後、さらに30ml蒸留水を入れ、1%デンプン溶液を1ml入れた後、強力に混合した。その後、マグネットかくはん機で撹拌しつつ、0.01N-Na標準溶液で滴定し、終了点は、デンプンの濃紺色が消失されるときにした。その後、下記の式を用いて試料の過酸化物価を求めた。
【0085】
【数1】
A=本試験の0.01N-Na適正な消費量(ml)
B=対照試験の0.01N- Na適正な消費量(ml)
Sr=試料の重量(g)
Fr=0.01N-Na力価
【0086】
図5は、安定化剤の種類による液状結晶形成化剤の過酸化物価の評価結果を示す。
図5に示されたように、ViC_palmitateを使用した場合、本試験例で使用されたすべての液状結晶形成化剤の過酸化物価が低いことを確認することができる。これは、安定化剤としてViC_palmitateを使用した場合、剤形安定性に優れた液状結晶を製造することができることを示唆する。
【0087】
なお、安定化剤としてトコフェロールを使用した場合、安定化剤を使用しない場合より過酸化物価が高いこと確認することができる。したがって、安定化剤としてトコフェロールを使用しないことが好ましい。
【0088】
製造例5.薬物としてナファモスタットを含む徐放性脂質前駆製剤の製造2
下記表5の成分および含有量によって、徐放性脂質前駆製剤を製造した。
徐放性脂質前駆製剤は、製造例1の製造方法と同様に製造した。
【0089】
【表5】
【0090】
試験例6.注入力(Injectability)の評価
INTRONS社の5569装備に内容物が入っている18ゲージ注射器を装着し、1分当り100mmの速度で加圧したときに測定される荷重(N)で注入力を評価した。
【0091】
図6は、製造例5で製造された徐放性脂質前駆製剤の注入力を評価した結果を示す。
図6に示されたように、オレイン酸またはspan80を使用した場合、注入力は、約13 N以上であるが、本発明のようにひまし油およびサフラワー油の植物性オイルを使用した場合、約12.5N以下の低い注入力を有することを確認することができる。
【0092】
試験例7.溶出の評価
pH7.4 phosphate buffer 900mlを溶出試験器に入れ、USPIバスケット法で50rpmで回転し、120時間溶出した。
【0093】
図7は、製造例5で製造された徐放性脂質前駆製剤の溶出評価結果を示す。
図7に示されたように、ひまし油を使用した場合、持続的な溶出を示すことを確認することができる。
【0094】
Span80を使用した場合、初期に急激な溶出率を示した後、ゲル(液状結晶)を形成することにより溶出試験器のvesselに沈殿し、固くなる。したがって、溶出率が測定されない。また、オレイン酸を使用した場合、ゲルを形成せず、溶出試験器のvesselの溶出液の上にふわふわ浮び上がって、器壁に付着してしまい、溶出率が測定されない。
【0095】
試験例8.液状結晶形成化剤の構成による粘度の評価
液状結晶形成化剤としてひまし油、サフラワー油および綿実油を使用して多様な構成の製剤を製造した。この際、一部の製剤は、溶媒(NMP)をさらに使用した。
【0096】
前記製造された製剤の粘度を測定した。
粘度は、Brookfield社のDV-II+Proを用いて円錐平板を50rpmで回転しながら測定した。
【0097】
前記粘度の測定結果を表6に示した。
【0098】
【表6】
【0099】
前記表に示されたように、液状結晶形成化剤としてひまし油、サフラワー油および綿実油から成るグループから選ばれた1つ以上を使用した場合、34.5℃で650cP以下の粘度を有することを確認することができる。
【0100】
また、溶媒を添加しても、注射用製剤として使用可能であることを確認することができる。
【0101】
製造例6.溶媒を含む徐放性脂質前駆製剤の製造
下記表7の成分および含有量によって、徐放性脂質前駆製剤を製造した。
徐放性脂質前駆製剤は、製造例1の製造方法と同様に製造した。
【0102】
【表7】
【0103】
試験例9.溶媒の使用による徐放性脂質前駆製剤の水相における液状結晶形成能および粘度の評価
製造例6で製造された徐放性脂質前駆製剤を1ml注射器に充填し、23ゲージの注射針を介して5mlのpH7.4リン酸塩緩衝液(PBS)に注入した。
【0104】
図8は、製造例6で製造された徐放性脂質前駆製剤の写真(a)およびpH7.4のPBSに注入したときの写真(b)を示す。
図8に示されたように、徐放性脂質前駆製剤の製造時に溶媒を使用した場合にも、溶媒を使用しない場合と同様に、液状結晶を形成することを確認することができる。
【0105】
なお、下記表8は、製造例6で製造された徐放性脂質前駆製剤の粘度を評価した結果を示す。
【0106】
【表8】
【0107】
前記表8に示されたように、製造例6で製造された徐放性脂質前駆製剤は、650cP以下の粘度を有するので、注射用製剤として使用可能を確認することができる。
【0108】
製造例7.薬物としてゴセレリンを含む徐放性脂質前駆製剤の製造
下記表9の成分および含有量によって、薬物としてゴセレリンを含む徐放性脂質前駆製剤を製造した。
徐放性脂質前駆製剤は、製造例1の製造方法と同様に製造した。
【0109】
【表9】
【0110】
試験例10.薬物としてゴセレリンを含む徐放性脂質前駆製剤の水相における液状結晶形成能および粘度の評価
製造例7で製造された徐放性脂質前駆製剤を1ml注射器に充填し、23ゲージの注射針を介して5mlのpH7.4リン酸塩緩衝液(PBS)に注入した。
【0111】
図9は、製造例7で製造された徐放性脂質前駆製剤をpH7.4のPBSに注入したときの写真を示す。
図9に示されたように、薬物としてゴセレリンを使用した場合にも、液状結晶を形成することを確認することができる。
【0112】
すなわち、本発明による徐放性脂質前駆製剤は、薬物の種類に関係なく、液状結晶を形成することを確認することができる。
【0113】
製造例8.薬物としてセマグルチドを含む徐放性脂質前駆製剤の製造
下記表10の成分および含有量によって、薬物としてセマグルチドを含む徐放性脂質前駆製剤を製造した。
徐放性脂質前駆製剤は、製造例1の製造方法と同様に製造した。
【0114】
【表10】
【0115】
試験例11.薬物としてセマグルチドを含む徐放性脂質前駆製剤の長期溶出の評価
pH7.4 phosphate buffer 900mlを溶出試験器に入れ、USPIバスケット法で37.5℃で50rpmで回転して、28日間サンプリングした後、下記条件下でHPLCで分析した。
<HPLC条件>
カラム:CAPCELL PAK C(4.6×250mm、5.0μm)
移動相:MPA-0.1%TFA:Acetonitrile=90:10(v/v、%)
MPB-0.1%TFA:Acetonitrile=10:90(v/v、%)
Isocratic MP A(%):MP B(%)= 55:45
流速:0.8ml/分
温度:30℃
注入量:6μl
波長:200Nm(紫外吸光光度計)
【0116】
図10は、製造例8で製造された徐放性脂質前駆製剤の溶出評価結果を示す。
【0117】
上記のように溶出評価結果は、試験管内放出試験(in vitro release tests)を行うことで収得され、本発明によって製造された徐放性脂質前駆製剤は、長期間効果的な徐放性放出パターンを示すことを確認することができる。
【0118】
試験例12.in vivoでの初期放出制御および徐放性効果の確認
in vivoで徐放性脂質前駆製剤の薬物放出挙動を確認するための実験を行った。
【0119】
製造例8-2によって製造された徐放性脂質前駆製剤と対照薬としてノボノルディスク社のオゼンピック注(セマグルチドとして0.4mg/kg)を平均300gの8週齢SDラット(雄)5匹の背中に皮下投与した後、0、1、3、6、12、24、48、96、168、336、576および672時間で採血した。
【0120】
その後、SDラットの血漿サンプルで各時間における血中セマグルチドの濃度は、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)を用いて測定した。この際、キットは、GLP-1(active)ELISA(IBL、ドイツ)を使用した。
【0121】
図11は、経時的なセマグルチドの濃度変化を示す。図11は、実験に使用したマウス5匹に対する平均値を記載した図である。
図11に示されたように、セマグルチドが含有された徐放性脂質前駆製剤(製造例8-2)は、対照薬であるオゼンピック注と比較して、生理学的活性物質の最大血中濃度(Cmax)が4.6倍減少し、28日間薬物の血中濃度が維持されることを確認することができる。
【0122】
すなわち、本発明による徐放性脂質前駆製剤が初期放出制御効果を示し、28日まで優れた徐放効果を示すことを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明による徐放性脂質前駆製剤は、水性媒質への露出時に液状結晶を形成し、薬物の徐放を可能にすることができ、薬物の放出を2週間~1ヶ月間持続することができる。また、形成された液状結晶は、低粘度でも徐放性を有し、注入時に押出力が低いため、使用便宜性に優れている。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11
【国際調査報告】