(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】成形体を備えるパワー半導体モジュール、およびパワー半導体モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240315BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20240315BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/28 K
H01L21/56 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562573
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022058261
(87)【国際公開番号】W WO2022218690
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キチン,スラボ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】サルバトーレ,ジョバンニ
【テーマコード(参考)】
4M109
5F061
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA03
4M109CA21
4M109CA22
4M109DA10
4M109DB09
4M109EA02
4M109EB11
5F061AA01
5F061BA03
5F061CA21
5F061CA22
5F061CB03
5F061DA00
(57)【要約】
パワー半導体モジュール(10)が提供される。パワー半導体モジュール(10)は、担体(1)と、少なくとも1つのモジュール部材(3)と、ハウジングフレーム(4)と、封入体(2)とを含み、モジュール部材(3)は、担体(1)上に配置されて、ハウジングフレーム(4)によって横方向から囲まれている。ハウジングフレーム(4)は、担体(1)上に配置されて、担体(1)およびモジュール部材(3)を越えて垂直に突き出ている。ハウジングフレーム(4)は、モジュール部材(3)が配置されるハウジングフレーム開口(4C)を有し、ハウジングフレーム開口(4C)は、封入体(2)で充填される。ハウジングフレーム(4)は、封入体(2)によって覆われない少なくとも1つの外側側面(4S)を有し、封入体(2)は成形体であり、成形体は、成形材料からなる物体であって、成形プロセスによって形成される。さらに、そのようなパワー半導体モジュール(10)の製造方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体(1)と、少なくとも1つのモジュール部材(3)と、ハウジングフレーム(4)と、封入体(2)とを備えるパワー半導体モジュール(10)であって、
前記モジュール部材(3)は、前記担体(1)上に配置されて、前記ハウジングフレーム(4)によって横方向から囲まれており、
前記ハウジングフレーム(4)は、前記担体(1)上に配置されて、前記担体(1)および前記モジュール部材(3)を越えて垂直に突き出ており、
前記ハウジングフレーム(4)は、前記モジュール部材(3)が配置されるハウジングフレーム開口(4C)を有し、前記ハウジングフレーム開口(4C)は、前記封入体(2)で少なくとも部分的に充填され、
前記ハウジングフレーム(4)は、前記封入体(2)によって覆われない少なくとも1つの外側側面(4S)を有し、
前記封入体(2)は成形体であり、前記成形体は、成形材料からなる物体であって、成形プロセスによって形成される、パワー半導体モジュール(10)。
【請求項2】
前記ハウジングフレーム(4)の上面(4A)は、成形ツール(9)を受けるように構成される、請求項1に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項3】
前記ハウジングフレーム(4)の上面(4A)は、成形ツール(9)への密接な接続を可能にするための1つの平面領域またはいくつかの平面領域を含む、請求項1に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項4】
前記ハウジングフレーム(4)の上面(4A)または上面(4A)の少なくとも一部は、前記封入体(2)の材料によって覆われない、請求項1に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項5】
前記担体(1)は、ベースプレートであるか、または絶縁基板を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項6】
前記封入体(2)は、マトリックス材料(2M)と、充填材(2F)とを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項7】
前記封入体(2)の充填材含有率は、少なくとも60容量%または重量%である、請求項6に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項8】
前記封入体(2)の充填材含有率は、10~60容量%または重量%である、請求項6に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項9】
前記封入体(2)は、前記ハウジングフレーム開口(4C)内のみに位置しているか、または前記ハウジングフレーム開口(4C)内であって前記ハウジングフレーム(4)の外側ではなく前記ハウジングフレーム(4)上に部分的に位置している、先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項10】
前記ハウジングフレーム(4)内に部分的に組み込まれるとともに前記ハウジングフレーム開口(4C)の外側でアクセス可能である端子(5)を少なくとも備え、前記端子(5)は、外部アクセスエリア(5E)を有し、前記外部アクセスエリア(5E)は、外側からアクセス可能であり、前記ハウジングフレーム開口(4C)の外側に位置しており、電気的接続を受けるための貫通孔を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項11】
前記担体(1)は、前記パワー半導体モジュール(10)を外部担体上に固定するためのねじを受けるように構成された少なくとも1つの担体開口(1C)を有し、前記少なくとも1つの担体開口(1C)は、前記ハウジングフレーム(4)の外側に位置している、先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項12】
前記封入体(2)は、前記モジュール部材(3)に直接隣接して、上面視において前記モジュール部材(3)を完全に覆い、
上面視において、前記パワー半導体モジュール(10)の上側(10A)は、前記封入体(2)の面によって部分的に形成される、先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール(10)。
【請求項13】
担体(1)と、少なくとも1つのモジュール部材(3)と、ハウジングフレーム(4)とを備えるパワー半導体モジュール(10)の製造方法であって、
前記モジュール部材(3)は、前記担体(1)上に配置されて、前記ハウジングフレーム(4)によって横方向から囲まれており、
前記ハウジングフレーム(4)は、前記担体(1)上に配置されて、前記担体(1)および前記モジュール部材(3)を越えて垂直に突き出ており、
前記ハウジングフレーム(4)は、前記モジュール部材(3)が配置されるハウジングフレーム開口(4C)を有し、
前記ハウジングフレーム(4)の上面(4A)は、成形ツール(9)を受けるように構成され、
前記方法は、
前記ハウジングフレーム(4)の前記上面(4A)上に前記成形ツール(9)を適用することによって、前記成形ツール(9)と前記ハウジングフレーム(4)の前記上面(4A)との間の直接接触を形成するステップと、
前記成形ツール(9)を使用した成形プロセスによって封入体(2)を形成するために前記ハウジングフレーム開口(4C)を成形材料(2M,2F)で充填するステップとを備え、前記ハウジングフレーム(4)は、前記成形材料(2M,2F)によって覆われない少なくとも1つの外側側面(4S)を有し、前記成形プロセスは、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形、またはフィルムアシスト成形プロセスである、方法。
【請求項14】
前記成形材料(2M,2F)は、マトリックス材料(2M)と、その中に組み込まれた充填材(2F)とを含み、前記充填材(2F)を含有する前記マトリックス材料(2M)は、前記充填材(2F)なしの前記マトリックス材料(2M)よりも高い粘性を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記成形材料(2M,2F)を前記モジュール部材(3)上に直接適用し、上面視において前記モジュール部材(3)を完全に覆い、
上面視において、前記パワー半導体モジュール(10)の上側(10A)を前記封入体(2)の面によって部分的に形成する、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形体を備えるパワー半導体モジュール、およびパワー半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、一般的な産業用パワー電子モジュールは、電気絶縁体としてシリコーンゲル層を利用しており、シリコーンゲル層は、パワー電子モジュールを環境的および機械的に保護するようにも作用する。シリコーンゲル層は、ポッティングプロセスを使用する最後の製造ステップのうちの1つのステップ中に形成することができる。しかしながら、パワー半導体モジュールの信頼性および環境ロバスト性に関する要求は、絶えず増加している。したがって、新たな解決策または新たなモジュール概念がパワーモジュール製造業者によって必要とされる。あるいは、モジュールは、例えばエポキシ材料などのポッティング樹脂材料からなる硬質の封入材を有していてもよい。
【0003】
文献US 2020/185291 A1、US 2020/211921 A1、US 2019/318996 A1、US 2018/286778 A1には、半導体素子およびそのような素子を製造するための製造方法が記載されている。この素子は、樹脂ケースと、その中に設置された半導体ユニットとを含み得る。樹脂ケースは、フレーム状本体と、このフレーム状本体上に配置された外部接続端子とを有し得る。樹脂ケースは、収納空間と、シーリング材料で充填されるとともにシーリング材料によって封止されたゲートとを含む。文献US 2020/098701 A1は、シーリング樹脂で充填されたハウジング開口を有する部材に関する。文献DE 11 2017 008226 T5には、例えばシリコーンゲルまたはエポキシ樹脂からなる封入材料で完全に充填されたケースを有する部材が記載されている。この文献はさらに、ケースおよび封入材料が、同時に形成される場合には成形樹脂を使用して一体成形されることが可能であることを教示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態は、環境的影響および外部の機械的影響に対して高いロバスト性を有する機械的に安定したパワー半導体モジュールに関する。本開示のさらなる実施形態は、簡略化された効率的なパワー半導体モジュールの製造方法に関する。
【0005】
本開示の実施形態は、先行技術における上記の欠点に全体的または部分的に対処する。パワー半導体モジュールおよびパワー半導体モジュールの製造方法のさらなる実施形態は、さらなる請求項の主題である。
【0006】
パワー半導体モジュールの実施形態によれば、パワー半導体モジュールは、担体と、少なくとも1つのモジュール部材と、ハウジングフレームと、封入体とを備え、上記モジュール部材は、上記担体上に配置されて、上記ハウジングフレームによって横方向から囲まれている。上記ハウジングフレームは、上記担体上に配置されて、上記担体および上記モジュール部材を越えて垂直に突き出ている。上記ハウジングフレームは、上記モジュール部材が配置されるハウジングフレーム開口を有し、上記ハウジングフレーム開口は、上記封入体で充填される。上記ハウジングフレームは、上記封入体によって覆われない少なくとも1つの外側側面を有する。上記封入体は、成形体である。
【0007】
垂直方向は、担体の主延長面に垂直に向けられる方向を意味していると理解される。横方向は、担体の主延長面に平行な方向を意味していると理解される。垂直方向および横方向は、互いに直交している。担体は、ベースプレートまたは基板であり得る。ベースプレートは、電気伝導性または電気絶縁性の基体を有していてもよく、または、その上面および/もしくは裏面上に金属ベースと絶縁層と回路金属被覆とを備えていてもよい。基板は、上部に例えば電気絶縁体(例えば、セラミック)と回路金属被覆とを備え得る。基板の裏面には金属層も形成されてもよい。さらに、基板は、例えばはんだ付けによってベースプレート上に搭載され得る。
【0008】
成形体は、成形材料からなる物体を意味していると理解される。そのような成形体は、成形プロセスによって、例えば射出成形、トランスファー成形、圧縮成形、フィルムアシスト成形などによって形成することができる。成形プロセスは、成形ツールを使用して実行することができる。成形ツールは、例えば成形材料を提供するために使用され得る成形機または成形機の一部である。一般に、成形体は、成形プロセスとは異なるプロセスによって、例えばポッティングプロセスによって形成される樹脂体とは異なる。成形体とポッティング樹脂体との間、または成形体とポッティングプロセスによって形成された物体との間の差は、例えば剛性、材料構造または材料組成に関する特徴特性に反映され得る。そのため、成形体は、ポッティング樹脂体、すなわち樹脂材料からなる物体またはポッティングプロセスによって作られる物体ではない。成形体とポッティング樹脂とを区別する特徴は、成形プロセスを実行した後ではなくポッティングプロセスを実行した後に利用可能である成形材料のメニスカスの形成のような幾何学的特徴によって反映され得る。したがって、成形体は、メニスカス状の幾何学的構造がないであろう。
【0009】
例えば、封入体を形成するための成形材料は、電気絶縁性材料である。電気絶縁性材料は、熱硬化性材料または熱可塑性材料を含み得て、または熱硬化性材料または熱可塑性材料で構成され得る。熱硬化性材料は、エポキシ材料に基づいて作られ得る。熱可塑性材料は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)またはポリアミドイミド(PAI)の群のうちの1つまたは複数の材料を含み得る。熱可塑性材料は、成形プロセスまたはラミネーション中に圧力および熱を加えることによって融解させることができ、冷却および圧力解放時に可逆的に硬化させることができる。
【0010】
成形材料は、ポリマー材料を含み得て、またはポリマー材料で構成され得る。成形材料は、充填または未充填ポリマー材料のうちの少なくとも1つ、例えば充填または未充填熱可塑性材料、充填または未充填熱硬化性材料、充填または未充填ラミネート、繊維強化ラミネート、繊維強化ポリマーラミネート、および充填材粒子でラミネートされた繊維強化ポリマーのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0011】
一例として、成形体は、エポキシ材料などの電気絶縁性マトリックス材料から形成される。成形体の安定性およびロバスト性を向上させるために充填材をマトリックス材料内に組み込み得ることが可能である。充填材は、粒子の形態であってもよく、強化繊維の形態であってもよい。また、充填材は、熱膨張率(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)を調整するため、または封入体の熱伝導率を向上させるために使用され得る。充填材は、マトリックス材料と比較して低いまたは高い熱膨張率を有し得る。
【0012】
さらに、充填材を使用して、封入体の形成プロセス中に封入体の材料の粘性を調整することができ、その結果、封入体をハウジングフレーム開口の中に適用する方法が簡略化される。例えば、成形材料は、封入体を形成するために使用することができ、成形材料は、成形材料の粘性を向上させるために、マトリックス材料と、その中に組み込まれた充填材とを含む。言い換えれば、充填材を含有するマトリックス材料は、充填材なしのマトリックス材料よりも高い粘性を有し得る。これは、封入体の形成プロセスを簡略化するであろう。
【0013】
パワー半導体モジュールのさらなる実施形態によれば、封入体の充填材含有率は、少なくとも60または少なくとも70容量%または重量%である。充填材含有率は、60~95容量%または重量%(60容量%または重量%および95容量%または重量%を含む)、例えば70~90容量%または重量%(70容量%または重量%および90容量%または重量%を含む)、70~85容量%または重量%(70容量%または重量%および85容量%または重量%を含む)、70~80容量%または重量%(70容量%または重量%および80容量%または重量%を含む)、または70~75容量%または重量%(70容量%または重量%および75容量%または重量%を含む)、または60~75容量%または重量%(60容量%または重量%および75容量%または重量%を含む)であり得る。しかしながら、本開示は、封入体の充填材含有率が少なくとも60容量%または重量%である場合に限定されるものではない。封入体の充填材含有率は、60容量%または重量%未満、例えば10~60容量%または重量%、または10~50容量%または重量%、または10~30容量%または重量%であってもよい。例えば、射出成形を使用する場合、充填材含有率は、約10容量%または重量%であってもよい。
【0014】
パワー半導体モジュールのさらなる実施形態によれば、パワー半導体モジュールは、担体上に配置された複数のモジュール部材を備え、上面視において、封入体は、例えば完全にモジュール部材を覆って、モジュール部材同士の間の空間を充填して、環境的影響および外部の機械的影響からモジュール部材を保護する。横方向において、封入体は、少なくとも1つのモジュール部材または複数のモジュール部材を完全に取り囲むことができる。封入体は、電気絶縁性材料から形成される。そのような絶縁性材料は、例えば可視スペクトル範囲内の光に対して不透明な材料であり得る。しかしながら、封入体の材料は、不透明な材料に限定されるものではなく、放射透過性または部分的に放射透過性であってもよい。モジュール部材は、パワー半導体素子または搭載されたパワー半導体素子を有する基板であり得るが、それに限定されるものではない。
【0015】
パワー半導体モジュール、例えば本開示に記載されているパワー半導体モジュールの製造方法の実施形態によれば、この方法は、ハウジングフレームの上面上に成形ツールを適用することによって、成形ツールとハウジングフレームの上面との間の直接接触を形成するステップを含む。例えば、ハウジングフレームの上面は、成形ツールを受けるように構成される。ハウジングフレーム開口は、成形ツールを使用した成形プロセスによって封入体を形成するために成形材料で充填される。ハウジングフレームは、成形材料によって覆われない少なくとも1つの外側側面を有する。
【0016】
例えば、ハウジングフレームの少なくとも2つもしくは3つの外側側面または全ての外側側面は、成形材料または封入体によって覆われない。製造公差の範囲内でハウジングフレームの上面が成形材料または封入体によって覆われないことが可能である。例えば成形ツールを使用した成形プロセスによって形成される封入体は、成形体と称することができる。成形プロセスは、射出成形、トランスファー成形、フォイルアシスト成形、または他の同様の成形方法であり得る。
【0017】
この方法のさらなる実施形態によれば、成形材料は、マトリックス材料と、その中に組み込まれた充填材とを含む。例えば、充填材を含むマトリックス材料は、充填材なしのマトリックス材料よりも高い粘性を有する。成形材料の粘性の上昇により、ハウジングフレーム開口内に位置するモジュール部材上に成形材料を適用するプロセスを、簡略化された正確なやり方で実行することができる。一般に、例えば小さな間隙が存在する場合には、成形プロセスを使用することは、ポッティングプロセスを使用することよりも効果的である。なぜなら、成形プロセスは、特に、小さな間隙でさえも適切に充填することができるように圧力を加えることによって実行されるからである。
【0018】
この方法のさらなる実施形態によれば、成形材料は、モジュール部材上に直接適用され、上面視においてモジュール部材を完全に覆う。上面視において、パワー半導体モジュールの表側、すなわち上側は、封入体の面によって部分的に形成され得る。言い換えれば、パワー半導体モジュールの平面視において、封入体がパワー半導体モジュールのその他の層によって全く覆われないか、または少なくともところどころ覆われないことが可能である。少なくともハウジングフレーム開口の領域において、封入体は、パワー半導体モジュールの最外層であり得る。
【0019】
封入体は、ハウジングフレーム開口を部分的にまたは完全に充填することができる。上面視において、封入体は、ハウジングフレーム開口の底面を完全に覆うことができる。例えば、ハウジングフレーム開口の底面は、1つのモジュール部材または複数のモジュール部材を受けるように構成される。この意味において、ハウジングフレーム開口の底面は、担体の搭載エリアと称することができる。横方向において、そのような搭載エリアは、ハウジングフレームによって囲まれることにより境界を定められている。
【0020】
封入体を成形体として形成することにより、パワー半導体モジュールの信頼性および環境ロバスト性が向上する。例えば充填材が中に組み込まれた成形材料を使用することにより、封入体は、例えば環境保護、機械的ロバスト性、熱膨張率のマッチングに関する特性が向上し、または放熱に関する特性が向上する。さらに、成形プロセスを使用することにより、ポッティング材料と比較して、原材料の価格に関しても製造コストを削減することができる。
【0021】
この方法またはパワー半導体モジュールのさらなる実施形態によれば、ハウジングフレームの上面は、成形ツールを受けるように構成される。幾何学的サイズおよび構造に関して、ハウジングフレームの上面および成形ツールの接触面は、上面上の成形ツールのしっかりと調整された配置、例えば整列された配置を実現するように互いに適合され得る。例えば、上面は、成形ツールをハウジングフレームの上面にしっかりと接続することを可能にするための1つの平面領域またはいくつかの平面領域を備える。
【0022】
本開示は、パワー半導体モジュールおよびパワー半導体モジュールの製造方法のいくつかの局面をそれらの実施形態および例に基づいて含む。これらの局面のうちの1つに関して記載されるどの特徴も、たとえそれぞれの特徴が特定の局面の文脈において明示的に言及されていなくても、他の局面に関しても本明細書に開示される。例えば、本開示に記載されている方法は、ここに記載されているパワー半導体モジュールの実施形態のいずれかの製造に向けられる。そのため、パワー半導体モジュールに関連付けて記載される特徴および利点は、この方法で使用することができ、逆の場合も同様である。
【0023】
本開示は、さまざまな変形例および代替形態が可能であるが、それらの具体的内容は、例として図面に示され、詳細に記載される。しかしながら、本発明は、記載されている特定の実施形態および例に本開示を限定するものではない、ということが理解されるべきである。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲に含まれる全ての変形例、等価物および代替物を包含する。
【0024】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれている。図中、同一の構造および/または機能の要素には同一の参照符号が割り当てられ得る。図面に示される例は、例示的な表現であり、必ずしも縮尺通りではない、ということが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】一例に係る、パワー半導体モジュールの上面図である。
【
図1B】一例に係る、封入体を形成するための成形材料を適用するステップ中のパワー半導体モジュールの断面図である。
【
図1C】さらなる例に係る、封入体を備えるパワー半導体モジュールの断面図である。
【
図2】さらなる例に係る、パワー半導体モジュールの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1Aは、例示的な実施形態に係る、パワー半導体モジュール10の一例の上面図である。パワー半導体モジュール10は、担体1と、少なくとも1つのモジュール部材3と、ハウジングフレーム4とを備え、モジュール部材3は、担体1上に配置され、ハウジングフレーム4によって横方向から囲まれている。パワー半導体モジュール10は、少なくとも2つのモジュール部材3または複数のモジュール部材3を備え得る。ハウジングフレーム4は、担体1上に配置されて、担体1およびモジュール部材3を越えて垂直に突き出ている。ハウジングフレーム4および担体1は、異なる材料から形成され得る。
【0027】
担体1は、例えば
図1Bに示されるように基体1Gを備え得る。担体1または基体1Gの裏側は、パワー半導体モジュール10の裏側10Bを形成する。基本的には、
図1Bは、
図1Aに示されるパワー半導体モジュール10の断面図を示していると考えることができる。しかしながら、
図1Bとは対照的に、分かりやすくするために、
図1Aには封入体2が示されていない。
図1Aに示される主題は、封入体2が形成される前の状態のパワー半導体モジュール10であると考えることもできる。
【0028】
基体1Gは、金属または金属合金で構成され得る。例えば、基体1Gは、CuもしくはAl、または対応する合金で構成されている。代替的に、基体1Gは、例えばアルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)もしくはマグネシウム炭化ケイ素(MgSiC)、またはセラミック材料などの複合材料で構成されることも可能である。しかしながら、基体1Gは、上記の材料に限定されるものではない。
【0029】
図1Bにおいて、担体1は、ベースプレートとして形成され得る。ベースプレートは、基体1G、中間層1Iおよび/または導電層1Lを含む集積金属またはセラミック基板であり得る。中間層1Iは、例えば電気絶縁層である。
【0030】
図1Bから逸脱して、担体1は、基体1Gとして形成された絶縁基板または導電基板であってもよい。部材モジュール3は、担体1上に配置され得る。部材モジュール3は、部材基板、例えばセラミック部材基板と、半導体素子とを備え得て、部材基板は、上部および底部金属被覆層を有し得る。半導体素子は、部材基板上、例えば上部金属被覆層上に配置され得る。
【0031】
図1Bから逸脱して、基体1Gが絶縁基板であることも可能である。絶縁基板は、セラミック体または樹脂絶縁層であり得る。この場合、中間層1Iなしで済ますことが可能である。導電層1Lのうちの1つであり得る上部金属被覆層は、基体1Gの上面上に配置される。部材モジュール3は、上部金属被覆層上に配置され得る。任意に、裏側金属被覆層が基体1Gの裏側に配置されてもよい。
【0032】
図1Bでは、垂直方向において、中間層1Iは、基体1Gと導電層1Lとの間に配置されている。基体1Gが電気絶縁性材料から形成される場合、導電層1Lは、基体1G上に直接形成され得る。
【0033】
中間層1Iは、絶縁層または接続層であり得て、接続層の形態の中間層1Iは、導電層1Lを基体1G上に固定するために使用される。中間層1Iの1つの主な目的は、電気絶縁である。横方向において、導電層1Lは、互いに空間的に分離され得る。
図1Bに示されるように、中間層1Iは、ハウジングフレーム4を担体1上、例えば基体1G上に固定するために使用することができる。中間層1Iは、接着材料または樹脂材料を含み得る。中間層1Iは、ハウジングフレーム4の取り付けに使用されてもよい。代替例として、ハウジングフレーム4が担体1上に直接形成されることが可能である。ハウジングフレーム4と担体1との間の安定的な機械的接続を硬化プロセス中に形成することができる。しかしながら、例えば接着剤のような接合材料を使用する方法、またはねじ留めおよび/もしくはシーリング層の適用のような他の方法などの、他の接合方法も可能である。
【0034】
ハウジングフレーム4は、電気絶縁性材料で構成され得る。例えば、ハウジングフレーム4は、一体の形態を有する。「一体に形成されたハウジングフレーム」は、例えば、ハウジングフレーム4が単一の部品で構成されることを意味する。例えば、ハウジングフレーム4は、例えば接続材料を使用して互いに接続された別々の部品を含まない。もっと正確に言えば、ハウジングフレーム4は、互いに一体接続された、すなわちさらなる接続材料を使用せずに接続された一体部品のみを含む。ハウジングフレーム4のそのような一体部品は、同一の材料から形成され得る。しかしながら、本開示は、ハウジングフレームが一体に形成される場合に限定されるものではない。ハウジングフレームがフレーム部分とカバー部分とを備え得て、カバー部分が下にあるフレーム部分上に形成または固定されることも可能である。
【0035】
ハウジングフレーム4は、取り囲む壁構造、例えば連続的な壁構造として担体1上に形成され得る。横方向において、ハウジングフレーム4は、担体1の全ての端縁に沿って延在している。上面視において、ハウジングフレーム4は、ハウジングフレーム開口4Cを有する。モジュール部材3は、ハウジングフレーム開口4C内に配置される。例えば、パワー半導体モジュール10の全てのモジュール部材3は、ハウジングフレーム開口4C内に配置される。モジュール部材3は、電気または電子部材であり得る。そのような部材は、電子チップ、半導体チップ、埋込半導体チップ、1つもしくはいくつかのチップが配置された基板、ダイオード、Siおよび/またはSiCを含む部材、ディスクリート素子(抵抗器、キャパシタ、誘導素子、および/または、IGBT、MOSFETなどのようなトランジスタ)のうちの1つまたは多数を備え得る。
【0036】
ハウジングフレーム開口4Cは、ハウジングフレーム4によって囲まれた底面1Mを有する。部材3は、底面1M上に固定される。部材3を底面1M上に固定するために、はんだ付け、焼結、糊付け、拡散接合、または遷移的液相接合プロセスを使用することができる。そのため、ハウジングフレーム開口4Cの底面1Mは、モジュール部材3を受けるように構成される。この意味において、底面1Mは、モジュール部材3のための搭載エリアと称することができる。
図1Bに示されるように、ハウジングフレーム開口4Cの底面1Mは、中間層1Iの面によってところどころ形成され、および/または、導電層1Lの面によってところどころ形成されている。例えば、底面1Mは、モジュール部材3を受けるための複数の分離した接合エリアを備え、これらの分離した接合エリアは、例えば空間的に分離した導電層1Lの電気伝導性面であり得る。
【0037】
ハウジングフレーム開口4Cの外側、すなわちハウジングフレーム4の外側に、担体1は、例えば、パワー半導体モジュール10を外部担体、例えば冷却器またはヒートシンクに固定するためのねじを受けるように構成された少なくとも1つの担体開口1Cを有し得る。垂直方向に沿って、担体開口1Cは、基体1G全体に、または担体1全体に延在し得る。そのため、ハウジングフレーム開口4Cの外側に位置する担体1の面は、モジュール部材3を受けるための搭載エリア1Mと称されるのではなく、むしろ担体1またはパワー半導体モジュール10を外部担体に固定するためのアセンブリ面1Zと称される。
【0038】
図1Aによれば、担体1は、担体1の4つの角部に配置された4つの担体開口1Cを有する。担体1の角部において、ハウジングフレーム4は、湾曲して担体1の担体開口1Cの幾何学的形状に適合される。
図1Aから逸脱して、担体開口1Cは、担体1の角部以外の場所に形成されてもよい。しかしながら、担体開口1Cは、ハウジングフレーム開口4Cの外側に位置する。
【0039】
そのため、パワー半導体モジュール10の少なくとも1つの例によれば、担体1は、パワー半導体モジュール10を例えば外部担体上に固定するための少なくとも1つのねじを受けるように構成された少なくとも1つの担体開口1Cまたは2つ以上の担体開口1Cを有する。例えば、担体開口1Cは全て、ハウジングフレーム4の外側に位置する。
【0040】
図1Aに示されるように、パワー半導体モジュール10は、例えば、モジュール部材3を例えば外部電源に電気的に接続するための少なくとも1つの端子5を備える。
図1Bに示されるように、端子5は、ハウジングフレーム4内に部分的に組み込まれており、ハウジングフレーム4の上面4A上でまたはハウジングフレーム4の外側でアクセス可能である。端子5は、外側からアクセス可能である外部アクセスエリア5Eを有し得て、端子5の外部アクセスエリア5Eは、ハウジングフレーム開口4Cの外側に位置する。外部アクセスエリア5Eは、例えば、電気的接続、例えばモジュールをバスバー、ケーブルなどに機械的に取り付けるために使用される取り付けねじを受けるための貫通孔を有し得る。通常、優れた機械的接続は、優れた電気的接続ももたらす。上面視において、外部アクセスエリア5Eは、ハウジングフレーム4の脇および/または担体1の基体1Gの脇に位置し得る。
【0041】
図1Aおよび
図1Bに示されるように、パワー半導体モジュール10は、複数のそのような端子5、例えば2つまたは4つまたは5つ以上のそのような端子5を有し得る。2つの異なる端子5がパワー半導体モジュール10の異なる電気極性に割り当てられてもよい。これら2つの異なる端子5は、担体1の対向する端縁領域上に配置されてもよく、または担体1の同一の端縁領域上に配置されてもよい。さらに、制御または信号端子がモジュールハウジング内に配置され得る。
【0042】
そのため、パワー半導体モジュール10の少なくとも1つの例によれば、パワー半導体モジュール10は、ハウジングフレーム4内に部分的に組み込まれるとともに例えばハウジングフレーム4の上面4A上でアクセス可能である少なくとも1つの端子5を備える。端子5は、外部アクセスエリア5Eにおいてアクセス可能である。
【0043】
ハウジングフレーム開口4C内に、端子5は、配線構造6を受けるため、例えば配線構造6の一部を受けるための内部アクセスエリア5Iを有し得る。配線構造6は、複数の線、例えばボンドワイヤを含み得る。配線構造6を介して、端子5の内部アクセスエリア5Iは、1つもしくはいくつかの導電層1Lおよび/または1つもしくはいくつかのモジュール部材3に電気的に接続され得る。さらに、配線構造6は、導電層1L同士および/またはモジュール部材3同士を互いに電気的に接続するために使用することができる。端子5は、パワー半導体モジュール10のハウジングの一部である主電源または補助端子として形成され得る。端子5は、例えばワイヤボンディングまたは溶接を使用して1つもしくはいくつかの導電層1Lまたは1つもしくはいくつかのモジュール部材3に電気的に接続され得る。しかしながら、場合によっては、端子5は、例えばはんだ付けまたは溶接によって基板に直接接続されてもよい。さらに、端子5は、他のハウジング部品上にも配置されてもよい。さらに、端子5は、ハウジングの横側に位置するピン形状の補助または制御端子であってもよい。これらの端子は、上面の周辺領域から垂直に延在している。
【0044】
ハウジングフレーム4は、成形ツール9を受けるように構成された上面4Aを有する。例えば、ハウジングフレーム4の上面4Aは、パワー半導体モジュール10の表側10A、すなわち上側10Aを部分的に形成する。そのため、ハウジングフレーム4の上面4Aは、外側から自由にアクセス可能である。
【0045】
上面4A、例えばハウジングフレーム4の接触面4Rである上面4Aの一部は、上面4A上の成形ツール9のしっかりと調整された配置、例えば整列された配置を実現するための成形ツール9の接触面のサイズおよび/または幾何学的構造に適合される。例えば、上面4Aまたは面4Aの接触面4Rは、成形ツール9の接触面とハウジングフレーム4の上面4Aとの間の密接な接続を可能にするための1つの平面領域またはいくつかの平面領域を備える。
【0046】
上面視において、成形ツール9を受けるように構成された上面4A、例えば上面4Aの接触面4Rは、端子5の外部アクセスエリア5Eと内部アクセスエリア5Iとの間、および/または、外部アクセスエリア5Eとハウジングフレーム開口との間に延在している。言い換えれば、同一の端子5の外部アクセスエリア5Eおよび内部アクセスエリア5Iは、上面4Aの異なる側に、またはハウジングフレーム4の上面4Aの接触面4Rの異なる側に位置している。そのため、端子5の外部アクセスエリア5Eおよび内部アクセスエリア5Iは、成形ツール9が上面4A上に配置されたときに損傷を受けない。上面視において、接触面4Rは、ハウジングフレーム開口4Cを完全に取り囲むことができる。
【0047】
通常、端子5の向きおよび位置により、ハウジングフレーム開口4C内に封入体2を成形体として形成することに関して、成形設備が非常に複雑になるであろう。成形プロセスは、いくつかのさらなる製造ステップを必要とするであろう。さらに、成形プロセスの高精度に関する要求を常に満たすことはできない。しかしながら、成形ツール9を受けるように構成された上面4Aまたは接触面4Rを有するハウジングフレーム4を使用することにより、正確なやり方で実行することができる成形プロセスが大幅に簡略化されるであろう。
【0048】
図1Bは、封入体2を成形体として形成するための方法ステップを示している。成形ツール9は、ハウジングフレーム4の上面4A上の予め定められた位置に、例えば接触面4R上に直接配置され得る。上面4Aまたは接触面4Rのみが成形ツール9に適合されることになるので、一般的なハウジングフレーム4は、例えば成形ツール9とハウジングフレーム4との間の密接な接続を可能にするための平坦な上面を準備することによって、若干の変更のみを必要とする。この解決策は、成形プロセスがハウジングフレーム4を使用しなければ困難であるかまたは不可能に近い場合にいかなるタイプのパワー半導体モジュール10にも適用することができる。
【0049】
図1Bによれば、ハウジングフレーム開口4Cは、成形プロセスを使用して封入体2を形成するための成形材料で充填される。ハウジングフレーム4は、担体1上に配置されて、担体1およびモジュール部材3を越えて垂直に突き出ているので、ハウジングフレーム開口4Cのみが成形材料で充填されることが可能である。このように形成された封入体2は、成形体と称することができる。例えば、ハウジングフレーム4の少なくとも1つ、少なくとも2つの外側側面4Sまたは全ての外側側面4Sは、封入体2の材料によって覆われない。
【0050】
この方法の一例によれば、成形材料は、マトリックス材料2Mと、その中に組み込まれた充填材2Fとを含み、充填材2Fを含有するマトリックス材料2Mは、充填材2Fなしのマトリックス材料2Mよりも高い粘性を有する。例えば、マトリックス材料2Mは、エポキシ材料である。充填材2Fを含有するマトリックス材料2Mは、例えばロバスト性および熱伝導率に関して、または熱膨張率の調整に関して、優れた特性を有する。成形材料または封入体2の充填材含有率は、少なくとも60、65、70、または少なくとも75容量%または重量%であり得る。
【0051】
そのため、パワー半導体モジュール10の少なくとも1つの例によれば、封入体2は、マトリックス材料2Mと、充填材2Fとを含む。例えば、封入体2の充填材含有率は、少なくとも60容量%または重量%である。封入体2の充填材含有率が10~60容量%または重量%、または10~50容量%または重量%であることも可能である。
【0052】
この方法の少なくとも1つの例によれば、成形材料は、モジュール部材3上に直接適用され、上面視においてモジュール部材3を完全に覆う。成形体は、ハウジングフレーム開口4Cの底面1Mを完全に覆うことができる。しかしながら、ハウジングフレーム4の外側側面4Sおよび/またはハウジングフレーム開口4Cの外側のアセンブリ面1Zは、成形材料がないことが可能であり、すなわち封入体2の材料がないことが可能である。ハウジングフレーム4の上面4Aは、成形プロセス中に成形ツール9によって覆われるので、上面4Aは、少なくとも部分的にまたは完全に、成形材料、すなわち封入体2の材料がないことが可能である。
【0053】
パワー半導体モジュール10の少なくとも1つの例によれば、封入体2は、モジュール部材3に直接隣接しており、上面視においてモジュール部材3を完全に覆うことができる。上面視において、パワー半導体モジュール10の上側10Aは、封入体2の面によって部分的に形成され得る。
【0054】
例えば、封入体2の形成は、モジュール部材3が配線された後、すなわち配線構造6が形成された後に実行される。そのため、ハウジングフレーム開口4C内に位置する端子5の内部アクセスエリア5Iは、少なくとも部分的にまたは完全に、封入体2の材料によって覆われることができる。ハウジングフレーム開口内の配線構造6が少なくとも部分的にまたは完全に封入体2の材料によって覆われることが可能である。
【0055】
パワー半導体モジュール10の少なくとも1つの例によれば、封入体2は、ハウジングフレーム開口4C内に位置しているか、またはハウジングフレーム4の外側ではなくハウジングフレーム4上に部分的に位置している。例えば、上面視において、封入体2は、ハウジングフレーム開口4Cを完全に覆う。一般に、ハウジングフレーム開口4Cの外側のアセンブリ面1Zは、封入体2の材料によって覆われない。
【0056】
この方法の少なくとも1つの例によれば、ハウジングフレーム開口4Cは、部分的にまたは完全に成形材料で充填される。上面視において、パワー半導体モジュール10の上側10Aは、封入体2の面によって部分的に形成される。
【0057】
垂直方向に沿って、封入体2は垂直厚み2Tを有し、垂直厚み2Tは、1mm~40mm(1mmおよび40mmを含む)、1mm~20mm(1mmおよび20mmを含む)、例えば1mm~15mm(1mmおよび15mmを含む)、1mm~10mm(1mmおよび10mmを含む)、または3mm~20mm(3mmおよび20mmを含む)、5mm~20mm(5mmおよび20mmを含む)、または5mm~15mm(5mmおよび15mmを含む)であり得る。例えば、封入体2の厚み2Tは、10mm±3mmである。
【0058】
ハウジングフレーム開口4Cが成形材料によって完全に充填される場合、封入体2の垂直厚み2Tは、少なくとも、ハウジングフレーム開口4Cの垂直深さと同程度の大きさであるか、またはハウジングフレーム開口4Cの垂直深さよりも大きい。後者の場合、封入体2は、ハウジングフレーム4の上面4Aを越えて垂直に突き出ることができる。ハウジングフレーム開口4Cが成形材料によって部分的に充填される場合、封入体2の垂直厚み2Tは、ハウジングフレーム開口4Cの垂直深さよりも小さく、例えばハウジングフレーム開口4Cの垂直深さよりも4mm±2mmだけ小さい。このことから逸脱して、ハウジングフレーム4のハウジングフレーム開口4Cが成形材料で完全に充填されることも可能であり、封入体2の垂直厚み2Tは、ハウジングフレーム開口4Cの垂直深さよりも大きい。
【0059】
図1Cは、成形ツール9が除去された後のパワー半導体モジュール10の別の例を示す図である。
図1Cに示されるパワー半導体モジュール10は、基本的には
図1Bに示されるパワー半導体モジュール10に対応する。対照的に、ハウジングフレーム開口4Cは、封入体2によって完全に充填されない。それ以外、
図1Bまたは
図1Aに示されるパワー半導体モジュール10に関連付けて記載される全ての特徴は、
図1Cに示されるパワー半導体モジュール10に適用することができる。
【0060】
図2は、パワー半導体モジュール10の別の例を示す図である。
図2に示されるパワー半導体モジュール10は、基本的には
図1A、
図1Bまたは
図1Cに示されるパワー半導体モジュール10に対応する。例えば
図1Aに反して、ハウジングフレーム開口4C内の封入体2が明確に示されている。さらに、
図2に示されるように、パワー半導体モジュール10は、少なくとも1つのモジュール部材3またはモジュール部材3を1つだけ含み得る。しかしながら、パワー半導体モジュール10が2つ以上のモジュール部材3を有することが可能である。それ以外、
図1A、
図1Bおよび
図1Cに示されるパワー半導体モジュール10に関連付けて記載される全ての特徴は、
図2に示されるパワー半導体モジュール10に適用することができる。
【0061】
パワー半導体モジュール10の少なくとも1つの例によれば、ハウジングフレーム4の上面4A、例えば上面4Aの一部としての接触面4Rは、成形ツール9を受けるように構成されている。上面4Aは、成形ツール9の密接な接続を可能にするための1つの平面領域またはいくつかの平面領域を含み得る。例えば、上面4Aまたは少なくとも接触面4Rは、封入体2の材料によって覆われない。封入体2は、不透明な材料から作られることができ、例えば可視スペクトル範囲内の光に対して放射透過性でないように形成される。このことから逸脱して、封入体2は、放射透過性または部分的に放射透過性であってもよい。
【0062】
上記の図面に示される実施形態または例は、改良されたパワー半導体モジュールまたはパワー半導体モジュールの改良された製造方法の例示的な実施形態を示している。したがって、これらの実施形態または例は、改良されたパワー半導体モジュールまたは方法に係る全ての実施形態または例の完全なリストを構成するものではない。パワー半導体モジュールまたは方法の実際の構成は、上記の例示的な実施形態から変わる可能性がある。
【0063】
本願は、欧州特許出願EP 21 167 842.0の優先権を主張し、欧州特許出願EP 21 167 842.0の開示内容は、引用によって本明細書に援用される。
【符号の説明】
【0064】
10 パワー半導体モジュール
10A パワー半導体モジュールの上側
10B パワー半導体モジュールの裏側
1 担体
1C 担体の担体開口
1G 担体の基体
1I 中間層、絶縁層、接続層
1M ハウジングフレーム開口の底面
1L 導電層
1Z アセンブリ面
2 封入体
2F 封入体の充填材
2M 封入体のマトリックス材料
2T 封入体の垂直厚み
3 モジュール部材
4 ハウジングフレーム
4A ハウジングフレームの上面
4C ハウジングフレームのハウジングフレーム開口
4S ハウジングフレームの外側側面
5 端子
5E 端子の外部アクセスエリア
5I 端子の内部アクセスエリア
6 配線構造
9 成形ツール
【国際調査報告】