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特表2024-513533血友病における血友病性関節症の予防及び/又は治療のための方法及び手段
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】血友病における血友病性関節症の予防及び/又は治療のための方法及び手段
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20240315BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240315BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240315BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20240315BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P7/04
A61P19/02
A61K35/76
A61K48/00
A61K9/08
A61K9/19
C12N15/864 100Z
C12N15/12 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564521
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2022060774
(87)【国際公開番号】W WO2022223823
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】21170264.2
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522343120
【氏名又は名称】ユニキュアー バイオファーマ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】UNIQURE BIOPHARMA B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ブラウグ‐ホルブ, エレン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC14
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZA53
4C084ZA96
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA53
4C086ZA96
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA13
4C087ZA53
4C087ZA96
(57)【要約】
本発明は、第IX因子活性を有する凝固因子をコードする核酸を含む、血友病Bを有する患者における関節の血友病性関節症の予防、阻止及び/又は治療における使用のための遺伝子治療ビヒクルに関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第IX因子活性を有する凝固因子をコードする核酸を含む、血友病Bを有する患者における関節の血友病性関節症の予防、阻止及び/又は治療における使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項2】
血友病Bを有する前記患者が1IU/dL未満、又は1~最高5IU/dL、又は5~最高40IU/dLの第IX因子活性レベルを有し;好ましくは、前記患者が1~最高40IU/dLの第IX因子活性の治療前(ベースライン)レベルを有する、請求項1に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項3】
前記ビヒクルがウイルスベクター、好ましくはAAVベースの粒子である、請求項1又は2に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項4】
前記AAVベースの粒子がAAV5粒子である、請求項3に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項5】
前記核酸が野生型第IX因子、又は第IX因子の機能亢進性バリアントを含み;好ましくは、前記核酸が第IX因子の機能亢進性バリアント、例えばFIX-R338Lを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項6】
前記核酸がプロモーター、例えば肝臓特異的プロモーターをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項7】
前記遺伝子治療ビヒクルが8×1010vg/kg~2×1013vg/kgの用量で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項8】
前記遺伝子治療ビヒクルが単回用量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項9】
前記関節が片方若しくは両方の肘、片方若しくは両方の膝、片方若しくは両方の足首、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項10】
前記血友病性関節症が関節出血及び/又は滑膜炎を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項11】
前記患者がヒトである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクルを含む、血友病Bを有する患者における関節の血友病性関節症の予防、阻止及び/又は治療における使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が静脈内注入に適した形態である、請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が液体、又は凍結乾燥固体である、請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子治療ビヒクル又は請求項12~14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物を患者に投与するステップを含む、血友病Bを有する患者における関節の血友病性関節症を予防、阻止及び/又は治療する方法。
【請求項16】
前記使用のための遺伝子治療ビヒクル又は前記使用のための医薬組成物が静脈内注入により投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が治療前ベースラインHJHS2.1スコア及び治療後HJHS2.1スコアを有し、前記治療後HJHS2.1スコアが前記治療前ベースラインHJHS2.1スコアよりも高くない、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記治療後HJHS2.1スコアが前記治療前ベースラインHJHS2.1スコアよりも低い;好ましくは、前記治療後HJHS2.1スコアが前記治療前ベースラインHJHS2.1スコアよりも少なくとも2ポイント低い;より好ましくは、前記治療後HJHS2.1スコアが前記治療前ベースラインHJHS2.1スコアよりも少なくとも4ポイント低い、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記治療後HJHS2.1スコアが、前記使用のための遺伝子治療ビヒクル又は前記使用のための医薬組成物の投与から少なくとも1年後に測定され;好ましくは、前記治療後HJHS2.1スコアが前記使用のための遺伝子治療ビヒクル又は前記使用のための医薬組成物の投与から少なくとも2年後に測定される、請求項17又は18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に血友病として知られる血液凝固障害の分野に関し、より詳細には、軽症、中等症及び/又は重症の血友病患者における血友病性関節症の予防、阻止及び/又は治療に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に血友病は、一連の複雑で多因子的な酵素変換である凝固カスケードにおける(機能的な)因子の欠乏の結果であり、最終的に血栓の形成に至る。よく知られている2つの型の血友病は、それぞれ血友病A及びBとして知られている。血友病Aは(機能的な)第VIII因子の欠乏によって引き起こされ、血友病Bは(機能的な)第IX因子の欠乏によって引き起こされる。どちらの先天性疾患も単一遺伝子欠損症であるため(第VIII因子と第IX因子をコードする遺伝子には様々な変異が知られているが)、遺伝子治療アプローチの「理想的」な候補として長い間考えられてきた。遺伝子治療の初期の試みは、遺伝子欠損を矯正する因子の長期発現を確立できなかったため、失敗に終わった。現在では(コドン使用頻度、プロモーター、キャプシドなど多くの点における)送達ビヒクル及びベクターの改良により、血友病に対する遺伝子治療は、遺伝的欠損の矯正を達成し、出血エピソードのリスクを排除するか、少なくとも実質的に減少させるという約束を果たしつつあるように思われる。
【0003】
軽症、中等症、重症は、活性凝固因子レベルに基づいて定義される(Srivastava Aら、2013)。
【0004】
重症の血友病B患者は、1IU dL-1未満(0.01IU mL-1未満)又は正常値の1%未満のFIX活性レベルを有している。それらの患者は、主に同定可能な止血負荷の非存在下における、関節又は筋肉への自然出血により特徴付けられる。
【0005】
中等症の血友病B患者は、1~5IU dL-1(0.01~0.05IU mL-1)又は正常値の1~5%のFIX活性レベルを有している。それらの患者は、時折起こる自然出血及び/又は軽微な外傷若しくは手術による長引く出血により特徴付けられる。
【0006】
軽症の血友病B患者は、5~40IU dL-1(0.05~0.40IU mL-1)又は正常値の5~40%弱のFIX活性レベルを有している。それらの患者は、大きな外傷又は手術に伴う重度の出血により特徴付けられる。自然出血はまれである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
出血エピソードのリスクは血友病患者の主な負担であるが、このリスクが制御されている場合でも、まだ血友病患者にとって有害な影響がある。それらの影響の1つは、不可逆的な血友病性関節症(関節損傷)である。本発明は、血友病患者における血友病性関節症を改善するための手段及び方法を提供する。
【0008】
血友病性関節症または関節損傷は、重症の血友病及び、いくらか程度は低いものの中等症及び軽症の血友病A若しくはBによく見られる障害を伴う合併症であり、関節への出血が繰り返される結果、しばしば特徴的な関節症が発症する。血友病患者では、関節症につながり得るこれらの関節の変化が、最終的には慢性関節症につながり得る(Knobe Kら、2011)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
血友病性関節症は、関節における内出血、例えば関節内出血及び筋肉内出血によって引き起こされることがあり、これは患者がタンパク質予防療法を受けていても起こる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、血友病における血友病性関節症が、欠失及び/又は欠損している因子を運び、患者の循環中の矯正凝固因子の本質的に一定なレベルをもたらす遺伝子治療を適用することにより、阻止され得るか、又は少なくとも減速され得ると考えている。本発明者らは(理論に拘束されることを望むものではないが)、通常のタンパク質補充療法において見られるピーク及びトラフが関節損傷の根本原因であり、特にこれらのトラフを避けることが血友病性関節症につながる関節内出血を防ぐと信じている。この効果を達成するためには、凝固因子活性レベルのピークとトラフをできるだけ平坦にすることが重要であると思われる。血友病患者の全てのカテゴリー(重症、中等症、軽症)に対して、本発明は、活性レベルをより重症でない群(重症から中等症へ、中等症から軽症へ、軽症から無症状へ)に上昇させ、強化された活性レベルが比較的一定で、血友病Bの重症でないバリアントの下限値よりも上にとどまる場合、そうでなければ血友病患者に生じる関節損傷の少なくとも一部を緩和することもできることを教示している。活性レベルの代わりに、循環中のタンパク質濃度レベルを測定してもよい。野生型凝固因子、特に野生型FIX、及びほとんどの凝固因子バリアント、特にFIXバリアントの場合、濃度と活性の相関は、使用されるバリアントの固有の活性に基づいて与えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、血友病患者における血友病性関節症の進行速度を少なくとも遅らせるための手段及び方法が提供される。血友病性関節症の進行が阻止されることが好ましい。場合によっては、血友病患者の関節の損傷の少なくとも一部を回復させ、健康スコアを改善することも可能であり得る。本発明によれば、関連する凝固因子は、凝固因子の活性レベルが経時的に比較的一定になるように提供される。これは、より詳しく以下に述べるように、遺伝子治療及び/又はタンパク質補充療法によって達成され得る。本発明は特に第IX因子と血友病Bに焦点を当てているが、血友病Aにも十分に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】5年間にわたるAAV5-野生型FIX投与後のFIX活性の持続的増加。FIX活性は、一段階活性化部分トロンボプラスチン時間ベースのアッセイを用いて測定された。最後のFIX濃縮製剤投与から少なくとも10日後の値のみが含められている。FIX予防法は、AAV5-野生型FIXの注入後も継続され、第6週から第12週にかけて漸減された。*患者3、4及び5は、ルシフェラーゼベースのアッセイを用いてAAV5中和抗体が陽性と試験された。患者5はCOVID-19のため4.5年後のフォローアップに出席できず、5年後のフォローアップ採血は出血に対する外因性FIXの使用後10日以内に得られたため、プロトコールに従って除外された。
図1-2】5年間にわたるAAV5-野生型FIX投与後のFIX活性の持続的増加。FIX活性は、一段階活性化部分トロンボプラスチン時間ベースのアッセイを用いて測定された。最後のFIX濃縮製剤投与から少なくとも10日後の値のみが含められている。FIX予防法は、AAV5-野生型FIXの注入後も継続され、第6週から第12週にかけて漸減された。*患者3、4及び5は、ルシフェラーゼベースのアッセイを用いてAAV5中和抗体が陽性と試験された。患者5はCOVID-19のため4.5年後のフォローアップに出席できず、5年後のフォローアップ採血は出血に対する外因性FIXの使用後10日以内に得られたため、プロトコールに従って除外された。
図2】AAV5-PaduaFIX投与後のFIX活性の持続的増加。FIX活性は、一段階活性化部分トロンボプラスチン時間ベースのアッセイを用いて測定された。第0週の時点は、AAV5-PaduaFIX治療前のFIX活性を反映している。第2週までの投与からのサンプルは、外因性FIX補充による活性が含まれている可能性がある。データラベルは、各参加者の第104週における正常なFIX活性の割合を表している。
図3】AAV5-PaduaFIX投与後の関節健康スコア(HJHS2.1による)。
図4-1】AAV5-PaduaFIX投与1年後の関節健康スコア(ΔHJHS2.1)の変化。図4a(Figure 4a)では、ΔHJHS2.1≧-4の場合は関節健康状態が改善、ΔHJHS2.1≧4の場合は悪化、ΔHJHS2.1が-3~3の場合は一定と考えられ、HJHS2.1スコアが得られない場合はNAとされている。
図4-2】AAV5-PaduaFIX投与1年後の関節健康スコア(ΔHJHS2.1)の変化。図4b(Figure 4b)では、ΔHJHS2.1<0の場合は関節健康状態が改善、ΔHJHS2.1>0の場合は悪化、ΔHJHS2.1=0の場合は一定と考えられ、HJHS2.1スコアが得られない場合はNAとされている。
図5-1】AAV5-野生型FIX投与1年後及び5年後の関節健康スコア(ΔHJHS2.1)の変化。図5a(Figure 5a)では、ΔHJHS2.1≧-4の場合は関節健康状態が改善、ΔHJHS2.1≧4の場合は悪化、ΔHJHS2.1が-3~3の場合は一定と考えられ、HJHS2.1スコアが得られない場合はNAとされている。
図5-2】AAV5-野生型FIX投与1年後及び5年後の関節健康スコア(ΔHJHS2.1)の変化。図5b(Figure 5b)では、ΔHJHS2.1<0の場合は関節健康状態が改善、ΔHJHS2.1>0の場合は悪化、ΔHJHS2.1=0の場合は一定と考えられ、HJHS2.1スコアが得られない場合はNAとされている。
図6-1】AAV5-PaduaFIX投与1年後及び2年後の関節健康スコア(ΔHJHS2.1)の変化。図6a(Figure 6a)では、ΔHJHS2.1≧-4の場合は関節健康状態が改善、ΔHJHS2.1≧4の場合は悪化、ΔHJHS2.1が-3~3の場合は一定と考えられ、HJHS2.1スコアが得られない場合はNAとされている。
図6-2】AAV5-PaduaFIX投与1年後及び2年後の関節健康スコア(ΔHJHS2.1)の変化。図6b(Figure 6b)では、ΔHJHS2.1<0の場合は関節健康が改善、ΔHJHS2.1>0の場合は関節健康が悪化、ΔHJHS2.1=0の場合は一定と考えられ、HJHS2.1スコアが得られない場合はNAとされている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1つの態様において、本発明は、第IX因子活性を有する凝固因子をコードする核酸を含む、血友病B患者における関節の血友病性関節症の予防、阻止及び/又は治療における使用のための遺伝子治療ビヒクルを提供する。このようにして第IX因子の長期安定発現が達成され得ることが示された。好ましくは、ピーク及びトラフは、平均活性レベルの上下25%以下、より好ましくは平均活性レベルの上下10%以下である。
【0013】
血友病性関節症は、疼痛、可動域の低下、及び/又は筋萎縮を引き起こし、その結果として、活動性が失われ、社会参加が制限され得る。例えば、血友病性関節症は、関節出血及び/又は滑膜炎を含み得る。
【0014】
血友病Bの患者は、軽症、中等症、又は重症の血友病B患者であり得る。好ましくは、患者は軽症又は中等症の血友病B患者である。例えば、患者は中等症の血友病B患者である。例えば、患者は、1IU/dL未満、又は1~最高5IU/dL、又は5~最高40IU/dLの第IX因子活性の治療前(ベースライン)レベルを有し得る。好ましくは、患者は、1~最高40IU/dL、例えば5~最高40IU/dLの第IX因子活性の治療前(ベースライン)レベルを有する。
【0015】
本発明によれば、遺伝子送達ビヒクルは、目的タンパク質をコードする核酸を含むパッケージである。特許請求の範囲に記載の目的タンパク質は、第IX因子又はその機能的等価物である。第VIII因子も同様に想定される。第VIII因子を用いた遺伝子治療は、目的遺伝子の大きさのために、異なるウイルス送達系に依存し得る。典型的には、全長型第VIII因子用のウイルスベクターはレトロウイルス、特にレンチウイルスベースのものである。しかしながら、切断型第VIII因子バリアントも使用可能であり、AAVのような他のウイルス送達ベクターに適合するであろうことがよく知られている。以下では、特に第IX因子及びそのバリアント、並びにAAV送達に言及して、本発明が説明される。同じ方法及び手段が第VIII因子、例えばレンチウイルスの文脈における第VIII因子にも利用可能である。
【0016】
特許請求の範囲に記載の発明によれば、凝固因子は第IX因子活性を有する。典型的には、本発明に従う使用のための凝固因子は、第IX因子又は血友病Bにおける使用のためのその機能的等価物である。機能的等価物は、凝固カスケードにおいて野生型凝固因子と本質的に同じ機能(種類においてであり、必ずしも量においてではない)を有する。本発明に従う好ましい本質的に定常な状態の活性レベルは、そのような機能亢進性変異体によってより容易に達成されるため、実際には機能亢進性変異体が好ましい。本質的に定常な状態とは、2つの重症度レベル(重症、中等症、軽症)の間の境界線よりも本質的に上に留まり、経時的な変動が平均レベルの25%未満である、活性レベルとして定義される。好ましくは、活性は境界線よりも25%超高い。好ましくは、平均からの偏差は10%未満である。
【0017】
遺伝子治療のためのパッケージは、リポソーム及び/若しくはエクソソームを含むDNA/カチオン性脂質(リポプレックス)、又はDNA/カチオン性ポリマー(ポリプレックス)、又はDNA/カチオン性ポリマー/カチオン性脂質(リピポリプレックス)のような非ウイルス性ビヒクルであってもよいし、或いは、内包された分子を分解から保護するためにサイズ、形状、及び多孔性を変えることができる人工ナノ粒子のような無機粒子である。特定の実施形態において、遺伝子治療ビヒクルは、レンチウイルス又はパルボウイルスベースの粒子又はベクターである。FVIII遺伝子の発現のためのレンチウイルスベクターは、当技術分野で知られている(Kafri Tら、1997を参照)。
【0018】
いくつかの実施形態では、遺伝子治療のためのパッケージはウイルス由来のものであり得る。好ましい実施形態において、パルボウイルスベースの粒子は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースの粒子又はベクター、好ましくは組換えAAV(rAAV)ベースの粒子又はベクターである。最も好ましくはAAV5粒子である。AAVは遺伝子治療のための実績のあるビヒクルであり(Wang Dら、2019)、それに関連した病変は知られておらず、ヒト細胞に適度に感染し、深刻な免疫原性の問題もない。
【0019】
第IX因子活性を有する凝固因子をコードする核酸には、AAVベクターが好ましい。第VIII因子活性を有する全長凝固因子をコードする核酸には、より大きなkb(キロ塩基対、長さの測定単位)のサイズの遺伝子配列を収容する能力が高いことから、レンチウイルスベクターが好ましいかもしれない。しかしながら、第VIII因子の切断型をコードする核酸を有するAAVベクターもまた好ましい。
【0020】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、小さな(直径約25nm)、非エンベロープ型、正20面体の非病原性パルボウイルスである(Wang Dら、2019)。AAVは、受容体を介したプロセスで細胞に感染し、その後、ウイルスDNAが核に輸送される。AAVが複製するには、アデノウイルス又はヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスが必要とされる。野生型AAVは、長さ約4.7キロベース(kb)の直鎖状一本鎖DNAゲノムを有する。ゲノムは、AAVの複製とパッケージングに必要なレプリカーゼ(Repタンパク質)をコードするレプリカーゼ(rep)遺伝子(rep78、rep68、rep52及びrep40をコード)と、キャプシドタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)をコードするキャプシド(cap)遺伝子の2つのコードエレメントから成る。
【0021】
さらなる特定の実施形態では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAV11、並びにそれらのバリアント(例えば、アミノ酸の挿入、付加及び置換を有するキャプシドバリアント、又はハイブリッドキャプシド)由来のキャプシドを含む。AAVキャプシドは典型的には、VP1タンパク質と、本質的にVP1のアミノ末端の切断物であるVP2及びVP3と呼ばれる2つの短いタンパク質を含む。3つのキャプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3は、典型的には、それぞれ1:1:10に近い比率でキャプシド中に存在するが、この比率、特にVP3の比率は有意に変動し得、これを制限と考えるべきではない。
【0022】
野生型AAVのゲノムは典型的には、2つの逆位末端配列(ITR)によって挟まれており、ベクターゲノムの複製とパッケージングの際にRepタンパク質の基質となる。ベクターゲノムは、プラス(+)鎖又はマイナス(-)鎖のどちらかから成る。ベクターゲノムは、3つのウイルスタンパク質、VP1、VP2、及びVP3から成るキャプシド中にパッケージングされる。各キャプシドは、60個の個別のタンパク質から成り、その約80%がVP3である。遺伝子治療目的の場合、AAVは典型的には、組換えにより生成され、典型的には、野生型ベクターゲノムが目的遺伝子で置換される。さらに、典型的には、プロモーター配列、ポリAテール、スタッファー、イントロン及び/又はさらなるエレメントなど、発現に必要なエレメントも存在する。
【0023】
組換えAAV(rAAV)の生成法は、哺乳類又は昆虫細胞系が関わるものであってもよい(Wang Dら、2019;Gao G & Sena-Esteves M、2012;Urabe Mら、2006)。
【0024】
好ましくは、本発明の遺伝子治療ビヒクルは、ウイルスベクター、例えばAAVベースの粒子を含む。
【0025】
目的遺伝子は、パルボウイルス由来の2つのITRの間に配置することで、AAVキャプシド中にパッケージングされ得る。これらのITRは、キャプシドと同じ血清型由来でも、異なる起源のものでもよい。本明細書の実施例は、AAV5のキャプシドとAAV2のITRの組み合わせを開示している。他のハイブリッドもまた、本発明の実施形態である。そのようなハイブリッドは、キャプシドとITRの異なる血清型の組み合わせだけでなく、異なる血清型のキャプシドエレメント、場合によってはさらに他のITRとの組み合わせも含む。
【0026】
患者に投与されるrAAVの用量は、ビヒクル、目的遺伝子、及び/又は投与経路に依存する。典型的には、静脈投与の場合、用量は8×1010vg/kg~5×1013vg/kgの範囲となる。
【0027】
投与量は、使用される血清型(好ましい血清型は、AAV5、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAV10、AAV6、及びこれらの血清型のキャプシドエレメントを含むハイブリッド、例えばAAV2/8である)など、いくつかの要因に依存する。キャプシドの選択の重要性は、主に免疫原性及び/又は標的細胞の感染効力である。本明細書で先に説明したように、AAV遺伝子送達ビヒクルの内部は、外部とは異なる血清型であってもよい。特にITRは、AAV2などの異なる血清型に由来し得る。
【0028】
本発明によれば、AAVベースの粒子はAAV5粒子であり得る。
【0029】
AAVベクターにパッケージングされた核酸配列、すなわちベクターゲノムは、凝固因子をコードする核酸配列を含む。この配列は、例えば、ヒトFIXをコードするヒト野生型配列(Wright JF、2020)と比較して、CpG(シトシン-グアニン)ジヌクレオチドの数を減らすことにより、又は元のコドンを組織特異的なもので置換することにより、コドン最適化されていることが好ましい。他の型のコドン最適化も可能である。一般に、(組織特異的な)コドンの最適化は、導入遺伝子の発現レベルの向上をもたらし得ると考えられている。当技術分野では、コドン最適化を達成するための多くのアルゴリズムが知られている。
【0030】
凝固因子をコードする核酸配列は、第IX因子(FIX)タンパク質を含んでいてもよい。FIXはビタミンK依存性タンパク質であり、セリンプロテアーゼであるFIXaの前駆体として肝細胞により合成される。FIXの遺伝子は8つのエクソンと7つのイントロンから成り、長さは約34kbで、X染色体の長腕Xq27.1に位置している(Thompson 2001に総説あり)。FIXは28残基のシグナルプレペプチドと18残基のリーダープロペプチドを含む461アミノ酸の前駆体タンパク質として合成される。結果として生じる成熟タンパク質は、415残基の一本鎖である。構造的には、FIXはN末端Glaドメイン(残基1~40)、短い疎水性スタック(残基41~46)、2つの上皮成長因子(EGF)様ドメイン(EGF1:残基47~83とEGF2:残基88~127、これらはリンカー残基84~87により連結されている)、活性化ペプチド(残基146~180)、及びC末端プロテアーゼドメイン(残基181~415)を含んでいる(Schmidt AEら、2003)。
【0031】
凝固第IX因子をコードする核酸を含む前記遺伝子治療ビヒクルは、血友病B疾患の治療に使用される。
【0032】
いくつかの実施形態では、FIXタンパク質は野生型であり、他の実施形態では、FIXタンパク質は、タンパク質の凝固活性を変化させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む変異体である。本発明に従う実施形態において、そのような1つ又は複数の置換は、FIX凝固能が増加した機能亢進性変異体を生成する。凝固因子の機能亢進性バリアントが好ましい(Samelson-Jones BJら、2021)。第IX因子の場合、これらのバリアントは、R338L(Padua)、R338Q、及びFIXバリアントCB2679d-GT(R318Y、R338E、T343R)を含む。R338A、R338E又はFIX-Triple A(V86A/E277A/R338A)など、より低い活性のバリアントもまた、本発明による遺伝子治療ビヒクルにおいて有用である。R338LはSimioni Pら、2009に開示されている;R338QはSimioni Pら、2009及びWu Wら、2021に開示されている;CB2679d-GT(R318Y/R338E/T343R)は、Nair Nら、2021に開示されている;R338Eは、Nichols TCら、2020に開示されている;FIX-Triple A(V86A/E277A/R338A)は、Lin CNら、2010に開示されている;R338AはChang Jら、1998に開示されている。
【0033】
好ましくは、核酸はFIX R338Lなどの機能亢進性バリアントを含む。また、FIX-R338Lは、R338L、338L、FIX Padua、FIX-Padua、Padua-FIX、PaduaFIX、又は単にPaduaとも呼ばれる。
【0034】
野生型第IX因子及び好ましい機能亢進性バリアントの塩基配列を以下に示す:
配列番号1
成熟FIX
1 YNSGKLEEFV QGNLERECMEEKCSFEEARE VFENTERTTE FWKQYVDGDQ
51 CESNPCLNGG SCKDDINSYE CWCPFGFEGKNCELDXTCNI KNGRCEQFCK
101 NSADNKVVCS CTEGYRLAEN QKSCEPAVPFPCGRVSVSQT SKLTRAEXVF
151 PDVDYVNSTE AETILDNITQ STQSFNDFTRVVGGEDAKPG QFPWQVVLNG
201 KVDAFCGGSI VNEKWIVTAA HCVETGVKITVVAGEHNIEE TEHTEQKRNV
251 IRIIPHHNYN AAINKYNHDI ALLELDXPLVLNSYVTPICI ADKEYTNIFL
301 KFGSGYVSGW GRVFHKGXSA LVLQYLRVPLVDRATCLXST KFXIYNNMFC
351 AGFHEGGRDS CQGDSGGPHV TEVEGTSFLTGIISWGEECA MKGKYGIYTK
401 VSRYVNWIKE KTKLT
86位において、XはV(wt)又はAであり得る
148位において、XはA(wt)又はT(wt)であり得る
277位において、XはE(wt)又はAであり得る
318位において、XはR(wt)又はYであり得る
338位において、XはR(wt)又はL又はQ又はE又はAであり得る
343位において、XはT(wt)又はRであり得る
上記において、(wt)は野生型を意味する。
【0035】
本発明の文脈において使用されるFIXタンパク質は、この配列を含むか、又はこの配列から成るものであり得る。
【0036】
別の実施形態では、遺伝子治療ビヒクルは、第VIII因子活性を有する凝固因子をコードする核酸を含む。第VIII因子活性を有する凝固因子は、野生型ヒト第VIII因子でも修飾型ヒト第VIII因子のいずれでもあり得る。前記遺伝子治療ビヒクルは、血友病A疾患の治療に使用される。
【0037】
上記のような核酸は、プロモーター/エンハンサー、イントロン、及びポリAテールなどのエレメントをさらに含んでいてもよく、前記エレメントは、特にAAV遺伝子治療ビヒクルの場合、2つの逆位末端配列(ITR)の間に存在してもよい。
【0038】
前記プロモーター/エンハンサーエレメントは、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーター、HCR-hAATハイブリッドプロモーター、及びアポリポタンパク質EプロモーターLP1、Q1プロモーター、Q1-プライム、C14プロモーター、又は国際公開第2020/104424号に記載されているようなプロモーターを含む、肝臓特異的なものの群から選択され得る。好ましくは、プロモーター/エンハンサーエレメントは、国際公開第2006/036502号に記載されているLP1である。
【0039】
本発明に従う好ましいLP1プロモーター/エンハンサーエレメントは、ヒトアポリポタンパク質肝制御領域の連続するセグメントからのコア肝臓特異的エレメント(HCR、GenBankレコードHSU32510の塩基対134~442)及び5’非翻訳領域を含むヒトα-1-アンチトリプシン(hAAT)遺伝子プロモーター(GenBankレコードK02212の塩基対1747~2001)を含む(Nathwani ACら、2006)。肝臓は、血友病の遺伝子治療の標的臓器であるため、肝臓特異的プロモーターが好ましい。
【0040】
前記ITRは、典型的には、ベクターゲノムの左端及び右端(すなわち、それぞれ5’及び3’末端)に配置され得る。各ITRは、可変の長さの核酸配列によって残りの配列から分離され得る。好ましくは、上記のような前記ITRは、アデノ随伴ウイルス(AAV)のITR配列から成る群から選択される。より好ましくは、前記ITR配列は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、又はAAV8のITR配列を含む。任意選択で、前記2つのITR配列は、両方ともAAV1、両方ともAAV2、両方ともAAV5、両方ともAAV6、又は両方ともAAV8のITR配列を含む。また任意選択で、前記核酸配列の5’末端の前記ITR配列は、前記核酸配列の3’末端の前記ITR配列とは異なり、前記ITR配列は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6又はAAV8のITR配列から選択されるものである。
【0041】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは「ハイブリッド」として定義され、これは、ウイルスITRとウイルスキャプシドが異なるAAVパルボウイルス由来であることを意味する。ウイルスITRは好ましくは、AAV2由来であり、キャプシドは好ましくは別のもの、典型的にはAAV5由来である。
【0042】
本発明によれば、必要とされる高い(定常状態の)凝固因子レベルを提供することで、これらの患者における関節損傷が予防又は減少されることから、出血イベントのリスクは低いが、関節への損傷が持続する血友病患者も、本発明による治療の恩恵を受けるであろう。この利益はまた、中等症及び重症の血友病患者にも存在する。
【0043】
本発明によれば、遺伝子治療ビヒクルは、体重1kgあたりのベクターゲノム(vg/kg)で、8×1010vg/kg~5×1013vg/kgの範囲の用量で投与される。範囲は、治療効果を有する定常レベルの活性を達成するのに必要な発現レベル、ウイルスベクターに対する任意の宿主免疫応答、発現されたタンパク質に対する宿主免疫応答、及び発現されたタンパク質の安定性を含むいくつかの要因に依存するが、これらに限定はされない。単回投与のみが与えられることが好ましい。特定の状況では、フォローアップ投与が必要となり得る。この場合、免疫反応の可能性に注意することが特に重要である。これは、異なる血清型を使用するか、又は当業者に公知の他の方法で行われ得る。好ましい投与量は1×1011vg/kg、より好ましくは5×1011vg/kg、最高5×1012vg/kg、又は最高2×1013vg/kgの範囲である。
【0044】
典型的には、遺伝子治療は1回の投与、つまり単回投与として行われる。これは、長期間にわたって、患者は1回のみ治療を受けるということを意味する。好ましくは、長期間とは、少なくとも1年、より好ましくは少なくとも5年、少なくとも10年、又は少なくとも15年を意味する。最も好ましくは、長期間とは患者の寿命を意味する。
【0045】
本発明により達成される効果は、上記で説明したように、異なる重症度段階の間の境界線よりも高いレベルでの、より定常な状態であるため、この効果は必ずしも遺伝子治療によって達成される必要はない。例えば、活性及び/又は半減期の異なる第IX因子バリアントを選択することによって、定常状態が達成されてもよい。そのような技法は、インスリン誘導体を用いる糖尿病分野でよく知られている(Madsbad S、2002)。これらの効果は(糖尿病分野からも知られているように)注入装置を用いても達成され得る。望ましい定常状態レベルに達しなかった遺伝子治療も、このような方法で補充され得る。
【0046】
したがって、さらなる態様において、本発明は、軽症、中等症及び/又は重症の血友病患者における血友病性関節症の予防、阻止及び/又は治療における使用のための凝固因子を提供する。特に、本発明は、第IX因子活性又は第VIII因子活性を有する凝固因子の前記使用を提供する。より具体的には、本発明は、軽症、中等症及び/又は重症の血友病B患者における血友病性関節症の予防、阻止及び/又は治療における使用のためのヒト第IX因子活性を有する凝固因子を提供する。別の態様では、凝固因子は、第VIII因子活性、より詳細にはヒト第VIII因子活性を有し、軽症、中等症及び/又は重症の血友病A患者における血友病性関節症の予防、阻止及び/又は治療に使用される。さらなる実施形態において、第IX因子又は第VIII因子活性のいずれかを有する凝固因子は、増加した半減期を有している。
【0047】
上述のように、より長い半減期によって、より高く、より定常状態に近いレベルが、より達成しやすくなる。したがって、前記凝固因子が、より長い半減期を有することが、本発明の1つの態様である。より長い半減期の凝固因子のバリアントは(Young Gら、2016;Santagostino Eら、2016;Graf L、2018)に記載されている。より長い半減期を有する凝固因子は、さらに機能亢進性バリアントであり得る。定常状態レベルを達成するための最善の方法は、組成物中に異なる半減期の組み合わせを有することである。そのような組成物もまた、本発明の一部である。本発明による全てのタンパク質組成物はまた、より重症度の低い形態の血友病を達成するのには十分でない活性レベルを患者の循環において導く遺伝子治療処置を補うためにも使用され得る。
【0048】
本発明の過程において、そして実施例に示されているように、本発明者らは、驚くべきことに、血友病Bの治療のための遺伝子治療方法が、そのような患者の血友病性関節症を予防、阻止、及び/又は治療することを確立した。
【0049】
いくつかの実施形態において、軽症、中等症及び/又は重症の血友病患者における関節損傷の予防、阻止及び/又は治療における使用のための遺伝子治療ビヒクルは、非ウイルス由来であり得る。
【0050】
本発明に従って治療される患者は、好ましくはヒトである。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、治療上有効な用量のAAVベクターとは、血友病Bのヒト対象に投与した場合に、血友病を重症から中等症又は軽症の血友病に低減させる凝固因子FIX活性の定常状態レベルをもたらすのに十分なものである。前記活性レベルは、少なくとも2~3年間は維持されるべきである。
【0052】
特定の実施形態によれば、治療上有効な用量のAAVベクターとは、血友病のヒト対象において、組換えヒト第IX因子補充療法の必要性を低減又は除去するものである。
【0053】
特定の実施形態では、治療上有効な用量のAAVベクターは、血友病ヒト患者における関節出血の重症度と頻度を低減させることにより、血友病性関節症を予防又は減少させる。
【0054】
関節は、片方若しくは両方の肘、片方若しくは両方の膝、片方若しくは両方の足首、片方若しくは両方の肩、片方若しくは両方の腰、片方若しくは両方の手首、1つ若しくは複数の手の関節、1つ若しくは複数の足の関節、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。好ましくは、関節は、片方又は両方の肘、片方又は両方の膝、片方又は両方の足首、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0055】
関節健康状態は、血友病関節健康スコア(HJHS)により測定され得る。本発明では、HJHSバージョン2.1(HJHS2.1)が使用される。HJHS2.1は、関節レベルに関する8項目のスコアと全体的な歩行スコアから成る。スコアは、関節ごとに0~20の範囲であり、全体的な歩行スコアは0~4の範囲である。肘、膝、及び足首に焦点を絞ると、HJHS2.1の合計スコアは0~124の範囲となる。より高いスコアは、より悪い関節健康状態を指し示す。関節健康状態の変化は、ΔHJHS2.1を用いて定量化され得る。典型的には、治療前(T)にベースラインのHJHS2.1スコアが取得され、治療後の各フォローアップ調査時(T、Tなど)に別のHJHS2.1スコアが取得される。ΔHJHS2.1は、フォローアップ調査時のHJHS2.1からベースラインのHJHS2.1を引いたものと定義される。
【0056】
本発明によれば、患者は0又は0未満のΔHJHS2.1を有する。好ましくは、患者は0未満、-2未満、より好ましくは-4未満のΔHJHS2.1を有する。フォローアップ時間は、遺伝子治療ビヒクルの最終投与後、1年、2年、又は5年であり得る。
【0057】
さらに別の態様において、本発明は、本発明による遺伝子治療ビヒクルを含む、血友病Bを有する患者における関節の血友病性関節症の予防、阻止及び/又は治療における使用のための医薬組成物をさらに提供する。前記医薬組成物は、好ましくはAAV5血清型のAAVベクターである遺伝子治療ビヒクルのヒト患者への投与を可能にする。そのような投与は好ましくは、血流を介した、例えば静脈内注入を介した投与を含む。したがって、好ましくは、医薬組成物は静脈内注入に適した形態である。例えば、医薬組成物は液体であってもよいが、注射のために例えば凍結乾燥製剤などであってもよい。前記液体又は固体は、その後、例えば注射用又は輸液用の溶液と組み合わせられ得る。好ましくは、医薬組成物は単回用量で投与される。
【0058】
さらに別の態様において、本発明は、有効量の本発明による遺伝子治療ビヒクル又は有効量の本発明による医薬組成物を患者に投与するステップを含む、血友病Bを有する患者における関節の血友病性関節症を予防、阻止及び/又は治療するための方法をさらに提供する。
【0059】
本発明の1つの実施形態では、本方法は、患者のHJHS2.1スコアを少なくとも0、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも4ポイント低減させる。本発明の1つの実施形態では、HJHS2.1スコアの低減は、遺伝子治療ビヒクルの投与後、少なくとも1年、又は少なくとも2年、又は少なくとも5年後に生じる。
【0060】
本発明の1つの態様に関して上述した全ての実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも適用される。
【実施例
【0061】
実施例1
この例では、第I/II相臨床試験におけるFIXタンパク質レベルと関節健康状態の評価に関する5年間の有効性の結果について説明する。
【0062】
この試験では、FIX活性が2IU/dL以下の成人血友病Bの対象10人に、肝臓特異的プロモーターによって駆動されるコドンを最適化した野生型ヒト血液凝固第IX因子(FIX)遺伝子をコードするアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)ベクターを単回静脈内投与した。5人の対象には5×1012vg/kgを投与し(コホート1)、残りの5人には2×1013vg/kgを投与した(コホート2)。
【0063】
FIXタンパク質レベルはELISAを用いて推定した(Spronck EAら、2019)。関節健康状態は、血友病関節健康スコア(HJHS)バージョン2.1を用いて評価した(Kuijlaars Iら、2017)。
【0064】
注入後4年における平均FIXタンパク質濃度もまた、持続的な導入遺伝子の発現を確認した;これらのデータはFIX活性とほぼ一致しており、10人の試験参加者のうち7人で、1.37%~10.71%の間で変動した。7人の参加者における平均FIX抗原対活性比の平均は0.85(SD 0.28)であった。残りの3人の患者(交差反応物質陽性と推定される)は9.28、2.42、及び25.56のFIX抗原対活性比を有していた、表1参照。
【0065】
注入後5年において、低用量コホート(コホート1)の平均内因性FIX活性は5.2%、高用量コホート(コホート2)では7.4%であった、図1参照。
【0066】
コホート1における全体的な関節健康状態は改善し、ベースラインの平均スコア24.4(SD 17.5)から5年後には19.2(SD 15.0)に減少していた、表2参照。高用量コホート(コホート2)では、全体的な関節健康状態もある程度改善し、平均スコアは6.8(SD 6.5)から4.4(SD 5)に減少していた。HJHSスコアの合計における4の増加は、関節の悪化と定義されている(Kuijlaars Iら、2017)。
【0067】
結論として、導入遺伝子の発現は5年間維持された。関節健康評価スコアは、コホート1及びコホート2においてそれぞれ約21%及び約35%改善した。
【0068】
実施例2
この例では、第I/II相臨床試験におけるFIX活性レベルと関節健康状態の評価に関する2年間の有効性の結果について説明する。この試験では、成人血友病Bの対象3人に、コドンを最適化したPaduaバリアントヒト第IX因子(Padua-FIX)遺伝子を肝臓特異的プロモーターと共に含む2×1013vg/kgのアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)ベクターを単回静脈内投与した。参加者全員がFIX活性2%以下の重症又は中等症FIX欠損症を有していた。
【0069】
FIX活性は、一段階活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)ベースのアッセイと発色アッセイを用いて評価した。FIX活性は、一段階活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)ベースのアッセイと発色アッセイを用いて測定した(Spronck EAら、2019)。
【0070】
関節健康状態は、血友病関節健康スコア(HJHS)バージョン2.1(Kuijlaars Iら、2017)を用いて、ベースライン時とその後の長期フォローアップ調査の一環として毎年評価した。
【0071】
2年後における内因性FIX活性の平均値は44.2%(最少~最高、36.3%~51.6%)であった(図2)。参加者1及び3は、FIX活性を血友病でない範囲(≧40%)に維持した。参加者2は、FIX活性を高~軽度の範囲に維持した。2年後に測定されたFIX活性(一段階aPTTベースのアッセイを用いて推定)は、FIX抗原レベルよりも10.2倍高かった。
【0072】
ベクター注入後2年目のスコア(それぞれ24、30及び6)と比較すると、3人の参加者中2人の総関節健康スコアがベースライン(参加者1~3について、それぞれ35、36及び1)から低下していた。1という低いベースラインスコアを有していた参加者3は、治療後2年目にはスコアが6に上昇していた、図3参照。HJHSの合計における4以上の増加は、関節の変性を示唆する(Kuijlaars Iら、2017)。
【0073】
結論として、AAV5-Padua-FIXの単回注入により治療された患者は、FIX活性の安定的かつ持続的な増加を生じたことが示されている。参加者1及び2では関節健康状態が改善し、総関節スコアはそれぞれ11及び6減少した(ベースラインからフォローアップ調査2年目まで)。参加者3は、試験期間中に5上昇した(総HJHSスコア)。しかしながら、この患者は無血管性股関節壊死が悪化し、2年間のフォローアップ期間中に2回の手術を必要とした。
【0074】
実施例3
本実施例は、第II/III相臨床試験において本発明による遺伝子治療ビヒクルを投与された血友病B患者における関節健康状態の改善を示すものである。各患者に、関連するFIX遺伝子を肝臓特異的プロモーターと共に含む5×1012又は2×1013vg/kgのアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)ベクターを単回静脈内投与した。HJHS2.1スコアは、Tベースライン(治療前)及びT(投与後1年、2年、又は5年)で取得した。ΔHJHS2.1は、TにおけるHJHS2.1スコアからTにおけるHJHS2.1スコアを引いたものとして定義される。関節健康状態の変化はΔHJHS2.1で評価される。図4a、図5a及び図6aについては、ΔHJHS2.1≧-4の場合は関節健康状態が改善、ΔHJHS2.1≧4の場合は関節健康状態が悪化、ΔHJHS2.1が-3~3の場合は関節健康状態が一定と考えられ、適切なデータがない場合にはNAとされている。図4b、図5b及び図6bについては、ΔHJHS2.1<0の場合は関節健康状態が改善、ΔHJHS2.1>0の場合は関節健康状態が悪化、ΔHJHS2.1=0の場合は関節健康状態が一定と考えられ、適切なデータがない場合にはNAとされている。「改善」、「悪化」、「一定」、「NA」に関連する基準を満たす患者の割合を算出し、図に示してある。
【0075】
図に示されているように、より厳格な基準を用いると、AAV5-PaduaFIXを含む遺伝子治療ビヒクルの投与1年後に関節健康状態が改善した参加者は18.5%(n=54)であった(図4a)。より緩やかな基準を用いると、44.4%の参加者が治療1年後における関節健康状態の改善を報告した(図4b)。より小さな別の群(n=3)(図6a)では、本発明の治療の後、3人の参加者のうち1人が1年後に関節健康状態の改善を報告し、さらに1人が2年後に改善を報告した。参加者3は、試験期間中に5上昇した(総HJHSスコア)。しかしながら、この患者は無血管性股関節壊死が悪化し、2年間のフォローアップ期間中に2回の手術を必要とした。
【0076】
同様に、より厳格な基準を用いると、AAV5-野生型FIXを含む遺伝子治療ビヒクル投与1年後に関節健康状態が改善した参加者は10%(n=10)であり(図5a)、その割合は治療後5年後には50%に増加した。より緩やかな基準を用いると、40%の参加者が治療1年後にすでに関節健康状態の改善を報告した。治療の5年後までに、参加者の80%が関節健康状態の改善を報告した(図5b)。
【表1】

【表2】
【0077】
表及び図の凡例
[表1] AAV5-野生型FIX投与後のFIXタンパク質濃度%平均定常状態。1.23未満の値は、要約統計量の計算のために1.23とされた。汚染値は、計算から除外された。追加/予定外の来院は平均値の計算に含められている。数値はFIX外因性漸減後に得られたものである。CI、信頼区間。*参加者1、2及び9は交差反応物質陽性(CRM+)と推定される。
【0078】
[表2] AAV5-野生型FIX投与後の関節健康スコア関節(HJHS)。HJHSの状態は、血友病関節健康スコアバージョン2.1を用いて評価された。SD、標準偏差;N、参加者数。
【0079】
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図1-2】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
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【配列表】
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【国際調査報告】