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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】植物由来の合成生成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240318BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240318BHJP
   C12N 15/74 20060101ALI20240318BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20240318BHJP
   C12N 15/25 20060101ALN20240318BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240318BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20240318BHJP
   C12N 15/15 20060101ALN20240318BHJP
   C12N 15/83 20060101ALN20240318BHJP
   C12N 15/87 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12P21/02 C
C12N15/74 100Z
C12N5/04
C12N15/25
C12N15/12
C12N15/19
C12N15/15
C12N15/83 Z
C12N15/87 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540893
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2022050091
(87)【国際公開番号】W WO2022144468
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/133,591
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.UNIX
3.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523252135
【氏名又は名称】ティアマト サイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アディル,フランス-エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG02
4B064AG04
4B064AG23
4B064CA11
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA88X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BA03
4B065BA30
4B065BD14
4B065BD38
4B065CA24
4B065CA60
(57)【要約】
【解決手段】本開示は、非植物タンパク質の発現のための異種遺伝子の使用による、前記非植物タンパク質の植物由来生産のための組成物、システム、装置、および方法を提供する。非植物タンパク質として、哺乳類タンパク質、サイトカイン、または成長因子を挙げることができるが、これらに限定されない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種プロテアーゼ阻害遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列と、
哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列と
を含む植物細胞。
【請求項2】
前記異種プロテアーゼ阻害遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列、および前記哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列が、細菌ベクターまたはウイルスベクター内にある、請求項1に記載の植物細胞。
【請求項3】
前記細菌ベクターが、アグロバクテリウム種である、請求項2に記載の植物細胞。
【請求項4】
前記ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、請求項2に記載の植物細胞。
【請求項5】
前記哺乳類遺伝子が、TGF-β、IGF-1、IGF-2、ヒトFGF-2、アクチビンA、BMP-4、およびVEGFからなる群より選択される、請求項1に記載の植物細胞。
【請求項6】
前記異種プロテアーゼ阻害遺伝子が、SICYS8である、請求項1に記載の植物細胞。
【請求項7】
前記異種プロテアーゼ阻害遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列、および前記哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列が、RNAまたはDNAである、請求項1に記載の植物細胞。
【請求項8】
ニワトリFGF-2遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列
を含む植物細胞。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチド配列が、細菌ベクターまたはウイルスベクター内にある、請求項8に記載の植物細胞。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号21に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む、請求項9に記載の植物細胞。
【請求項11】
前記機能的バリアントが、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、請求項8に記載の植物細胞。
【請求項12】
前記細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、請求項9に記載の植物細胞。
【請求項13】
前記ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、請求項8に記載の植物細胞。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチド配列が、RNAまたはDNAである、請求項8に記載の植物細胞。
【請求項15】
IL-1β遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列
を含む植物細胞。
【請求項16】
前記ポリヌクレオチド配列が、細菌ベクターまたはウイルスベクター内にある、請求項15に記載の植物細胞。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号27に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む、請求項8に記載の植物細胞。
【請求項18】
前記機能的バリアントが、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、請求項8に記載の植物細胞。
【請求項19】
前記細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、請求項16に記載の植物細胞。
【請求項20】
前記ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、請求項16に記載の植物細胞。
【請求項21】
異種プロテアーゼ阻害タンパク質またはその機能的バリアントと、
哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントと
を含む植物細胞。
【請求項22】
細菌ベクターまたはウイルスベクターをさらに含む、請求項21に記載の植物細胞。
【請求項23】
前記細菌ベクターが、アグロバクテリウム種である、請求項22に記載の植物細胞。
【請求項24】
前記ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、請求項22に記載の植物細胞。
【請求項25】
前記哺乳類タンパク質が、TGF-β、IGF-1、IGF-2、ヒトFGF-2、アクチビンA、BMP-4、およびVEGFからなる群からのものである、請求項21に記載の植物細胞。
【請求項26】
ニワトリFGF-2タンパク質またはその機能的バリアント
を含む植物細胞。
【請求項27】
前記ニワトリFGF-2タンパク質が、配列番号8に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む、請求項26に記載の植物細胞。
【請求項28】
前記機能的バリアントが、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、請求項26に記載の植物細胞。
【請求項29】
ウイルスベクターの細菌をさらに含む、請求項26に記載の植物細胞。
【請求項30】
前記細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、請求項29に記載の植物細胞。
【請求項31】
前記ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、請求項29に記載の植物細胞。
【請求項32】
IL1-βタンパク質またはその機能的バリアント
を含む植物細胞。
【請求項33】
前記IL1-βタンパク質が、配列番号9に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む、請求項32に記載の植物細胞。
【請求項34】
前記機能的バリアントが、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、請求項32に記載の植物細胞。
【請求項35】
ウイルスベクターの細菌をさらに含む、請求項32に記載の植物細胞。
【請求項36】
前記細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、請求項35に記載の植物細胞。
【請求項37】
前記ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、請求項35に記載の植物細胞。
【請求項38】
哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントと、
以下のもの、すなわち、フラボノイド、ルビスコ、植物由来アルカロイド、セルロース、リグノセルロース、レグマリン(legumalin)、ファセリン(phaselin)、11Sレグミンタイプ、7sビシリンタイプ、グリアジン、ゼイン、ホルデイン、セカリン、およびグルテニンのうちの少なくとも1つと
を含む組成物。
【請求項39】
前記哺乳類タンパク質が、TGF-β、IGF-1、IGF-2、ヒトFGF-2、アクチビンA、BMP-4、およびVEGFのうちの少なくとも1つである、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
前記以下のもののうちの少なくとも1つが、前記組成物の0.05%以下を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
前記以下のもののうちの少なくとも1つが、前記組成物の0.03%以下を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
ヘパリンをさらに含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項43】
ヘパリンが、2μg/ml以下で存在する、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
ニワトリFGF-2タンパク質またはその機能的バリアントと、
以下のもの、すなわち、フラボノイド、ルビスコ、植物由来アルカロイド、セルロース、リグノセルロース、レグマリン、ファセリン、11Sレグミンタイプ、7sビシリンタイプ、グリアジン、ゼイン、ホルデイン、セカリン、およびグルテニンのうちの少なくとも1つと
を含む組成物。
【請求項45】
前記以下のもののうちの少なくとも1つが、前記組成物の0.05%以下を含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記以下のもののうちの少なくとも1つが、前記組成物の0.03%以下を含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
ヘパリンをさらに含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項48】
ヘパリンが、2μg/ml以下で存在する、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
ヒトインターロイキン1ベータ(IL1-β)タンパク質またはその機能的バリアントと、
以下のもの、すなわち、フラボノイド、ルビスコ、植物由来アルカロイド、セルロース、リグノセルロース、レグマリン、ファセリン、11Sレグミンタイプ、7sビシリンタイプ、グリアジン、ゼイン、ホルデイン、セカリン、およびグルテニンのうちの少なくとも1つと
を含む組成物。
【請求項50】
前記以下のもののうちの少なくとも1つが、前記組成物の0.05%以下を含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記以下のもののうちの少なくとも1つが、前記組成物の0.03%以下を含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項52】
哺乳類タンパク質を製造する方法であって、
請求項1~20のいずれか一項に記載の植物細胞を培養すること、および
前記哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントによりコードされた哺乳類タンパク質を抽出することにより抽出生成物を生成すること
を含む方法。
【請求項53】
前記抽出生成物が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μgの量で存在する前記哺乳類タンパク質を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記哺乳類タンパク質が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも45μg、50μg、55μgの量で存在する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記培養することが、シリンジまたはスプレー法を用いて細菌ベクターまたはウイルスベクターを前記植物細胞に接触させることを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
哺乳類タンパク質を製造する方法であって、
請求項21~37のいずれか一項に記載の植物細胞を培養すること、および
前記哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントを抽出することにより抽出生成物を生成すること
を含む方法。
【請求項57】
前記抽出生成物が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μgの量で存在する前記哺乳類タンパク質を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記哺乳類タンパク質が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも45μg、50μg、55μgの量で存在する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記培養することが、シリンジまたはスプレー法を用いて細菌ベクターまたはウイルスベクターを前記植物細胞に接触させることを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む植物細胞であって、前記哺乳類遺伝子が、TGF-β、IGF-1、IGF-2、FGF-2、BMP-4、およびVEGFからなる群より選択され、前記植物細胞がイネ由来ではない、植物細胞。
【請求項61】
前記哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列が、細菌ベクターまたはウイルスベクター内にある、請求項60に記載の植物細胞。
【請求項62】
前記細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、請求項61に記載の植物細胞。
【請求項63】
前記ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスを含む、請求項61に記載の植物細胞。
【請求項64】
前記哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列が、RNAまたはDNAである、請求項60~63のいずれか一項に記載の植物細胞。
【請求項65】
前記機能的バリアントが、前記哺乳類遺伝子と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、請求項60~64のいずれか一項に記載の植物細胞。
【請求項66】
哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントを含み、かつイネ由来ではない、植物細胞。
【請求項67】
細菌ベクターまたはウイルスベクターをさらに含む、請求項66に記載の植物細胞。
【請求項68】
前記細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、請求項67に記載の植物細胞。
【請求項69】
前記ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスを含む、請求項67に記載の植物細胞。
【請求項70】
哺乳類タンパク質を製造する方法であって、
請求項60~65のいずれか一項に記載の植物細胞を培養すること、および
前記哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントによりコードされた哺乳類タンパク質を抽出することにより抽出生成物を生成すること
を含む方法。
【請求項71】
前記抽出生成物が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μgの量で存在する前記哺乳類タンパク質を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記哺乳類タンパク質が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも45μg、50μg、55μgの量で存在する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記培養することが、シリンジまたはスプレー法を用いて細菌ベクターまたはウイルスベクターを前記植物細胞に接触させることを含む、請求項70~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
哺乳類タンパク質を製造する方法であって、
請求項66~69のいずれか一項に記載の植物細胞を培養すること、および
前記哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントを抽出することにより抽出生成物を生成すること
を含む方法。
【請求項75】
前記抽出生成物が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μgの量で存在する前記哺乳類タンパク質を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記哺乳類タンパク質が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも45μg、50μg、55μgの量で存在する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記培養することが、シリンジまたはスプレー法を用いて細菌ベクターまたはウイルスベクターを前記植物細胞に接触させることを含む、請求項74~76のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
組換えタンパク質の製造とは、起源となる生体以外の別の構造体内でタンパク質を生産する科学を説明するものである。目的のタンパク質の遺伝子は、増殖能を有する新たな生体内へ挿入される。当該発現プロセスの後、組換えタンパク質は、抽出され、精製される。当該技術は、1980年代初頭より商業規模で実施されてきており、現在は繊維産業に特化した酵素から、科学において一般に用いられる治療、抗体、または成長因子に至るまで広範なタンパク質の生産に広く用いられている。
【0002】
長年にわたり、種々の発現系が開発されてきた。これら発現系は、酵母、細菌、動物細胞、またはヒト細胞を用いた類似の生産工程に依存している。植物分子農業は、組換えタンパク質の製造における緑の革命であり、動物を用いない解決法、効率的な産出、高い融通性、および容易な生産拡大経路を提供する。植物技術により、生産システムのコストが現在の細胞農業の競合他社と比較して40分の1となり、拡大の可能性が培養肉部門の要件を満たす、格別の融通性が可能とされる。植物分子農業は、この課題に対する解決法を提示する。しかし、植物分子農業にかかる生産コストの最大80%が、一次抽出物、植物二次代謝産物、色素、およびフェノールの高い粒子負荷に関連付けられていた。これらの追加の清澄化工程(抽出プロセス)は、コストを大幅に増大させる。したがって、植物分子農業にはより効率的なシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書において、異種プロテアーゼ阻害遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列と、哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列とを含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、異種プロテアーゼ阻害遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列、および哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列が、細菌ベクターまたはウイルスベクター内にある、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターが、アグロバクテリウム種である、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、哺乳類遺伝子が、TGF-β、IGF-1、IGF-2、ヒトFGF-2、アクチビンA、BMP-4、およびVEGFからなる群より選択される、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、異種プロテアーゼ阻害遺伝子が、SICYS8である、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、異種プロテアーゼ阻害遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列、および哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列が、RNAまたはDNAである、植物細胞を提供する。
【0004】
本明細書において、ニワトリFGF-2遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ポリヌクレオチド配列が、細菌ベクターまたはウイルスベクター内にある、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ポリヌクレオチド配列が、配列番号21に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、機能的バリアントが、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ポリヌクレオチド配列が、RNAまたはDNAである、植物細胞を提供する。
【0005】
本明細書において、IL-1β遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ポリヌクレオチド配列が、細菌ベクターまたはウイルスベクター内にある、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ポリヌクレオチド配列が、配列番号27に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、機能的バリアントが、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、植物細胞を提供する。
【0006】
本明細書において、異種プロテアーゼ阻害タンパク質またはその機能的バリアントと、哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントとを含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターまたはウイルスベクターをさらに含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターが、アグロバクテリウム種である、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、哺乳類タンパク質が、TGF-β、IGF-1、IGF-2、ヒトFGF-2、アクチビンA、BMP-4、およびVEGFからなる群からのものである、植物細胞を提供する。
【0007】
本明細書において、ニワトリFGF-2タンパク質またはその機能的バリアントを含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ニワトリFGF-2タンパク質が、配列番号8に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、機能的バリアントが、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターの細菌をさらに含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、植物細胞を提供する。
【0008】
本明細書において、IL1-βタンパク質またはその機能的バリアントを含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、IL1-βタンパク質が、配列番号9に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、機能的バリアントが、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターの細菌をさらに含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスである、植物細胞を提供する。
【0009】
本明細書において、哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントと、以下のもの、すなわち、フラボノイド、ルビスコ、植物由来アルカロイド、セルロース、リグノセルロース、レグマリン(legumalin)、ファセリン(phaselin)、11Sレグミンタイプ、7sビシリンタイプ、グリアジン、ゼイン、ホルデイン、セカリン、およびグルテニンのうちの少なくとも1つとを含む組成物を提供する。さらに、本明細書において、哺乳類タンパク質が、TGF-β、IGF-1、IGF-2、ヒトFGF-2、アクチビンA、BMP-4、およびVEGFのうちの少なくとも1つである、組成物を提供する。さらに、本明細書において、上記以下のもののうちの少なくとも1つが、組成物の0.05%以下を含む、組成物を提供する。さらに、本明細書において、上記以下のもののうちの少なくとも1つが、組成物の0.03%以下を含む、組成物を提供する。さらに、本明細書において、ヘパリンをさらに含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、ヘパリンは、2μg/ml以下で存在する。
【0010】
本明細書において、ニワトリFGF-2タンパク質またはその機能的バリアントと、以下のもの、すなわち、フラボノイド、ルビスコ、植物由来アルカロイド、セルロース、リグノセルロース、レグマリン(legumalin)、ファセリン(phaselin)、11Sレグミンタイプ、7sビシリンタイプ、グリアジン、ゼイン、ホルデイン、セカリン、およびグルテニンのうちの少なくとも1つとを含む組成物を提供する。さらに、本明細書において、上記以下のもののうちの少なくとも1つが、組成物の0.05%以下を含む、組成物を提供する。さらに、本明細書において、上記以下のもののうちの少なくとも1つが、組成物の0.03%以下を含む、組成物を提供する。さらに、本明細書において、ヘパリンをさらに含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、ヘパリンは、2μg/ml以下で存在する。
【0011】
本明細書において、ヒトインターロイキン1ベータ(IL1-β)タンパク質またはその機能的バリアントと、以下のもの、すなわち、フラボノイド、ルビスコ、植物由来アルカロイド、セルロース、リグノセルロース、レグマリン(legumalin)、ファセリン(phaselin)、11Sレグミンタイプ、7sビシリンタイプ、グリアジン、ゼイン、ホルデイン、セカリン、およびグルテニンのうちの少なくとも1つとを含む組成物を提供する。さらに、本明細書において、上記以下のもののうちの少なくとも1つが、組成物の0.05%以下を含む、組成物を提供する。さらに、本明細書において、上記以下のもののうちの少なくとも1つが、組成物の0.03%以下を含む、組成物を提供する。さらに、本明細書において、ヘパリンをさらに含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、ヘパリンは、2μg/ml以下で存在する。
【0012】
本明細書において、哺乳類タンパク質を製造する方法であって、植物細胞を培養すること、および哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントによりコードされた哺乳類タンパク質を抽出することにより抽出生成物を生成することを含む方法を提供する。さらに、本明細書において、抽出生成物が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μgの量で存在する哺乳類タンパク質を含む、方法を提供する。さらに、本明細書において、哺乳類タンパク質が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも45μg、50μg、または55μgの量で存在する、方法を提供する。さらに、本明細書において、培養することが、シリンジまたはスプレー法を用いて細菌ベクターまたはウイルスベクターを植物細胞に接触させることを含む、方法を提供する。
【0013】
本明細書において、哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む植物細胞であって、哺乳類遺伝子が、TGF-β、IGF-1、IGF-2、FGF-2、BMP-4、およびVEGFからなる群より選択され、植物細胞がイネ由来ではない、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列が、細菌ベクターまたはウイルスベクター内にある、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスを含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードするポリヌクレオチド配列が、RNAまたはDNAである、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、機能的バリアントが、哺乳類遺伝子と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む、植物細胞を提供する。
【0014】
本明細書において、哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントを含み、かつイネ由来ではない、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターまたはウイルスベクターを含む植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、細菌ベクターが、アグロバクテリウム種を含む、植物細胞を提供する。さらに、本明細書において、ウイルスベクターが、タバコモザイクウイルスを含む、植物細胞を提供する。
【0015】
本明細書において、哺乳類タンパク質を製造する方法であって、植物細胞を培養すること、および哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントを抽出することにより抽出生成物を生成することを含む方法を提供する。さらに、本明細書において、抽出生成物が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μgの量で存在する哺乳類タンパク質を含む、方法を提供する。さらに、本明細書において、哺乳類タンパク質が、1グラムのバイオマス当たり少なくとも45μg、50μg、55μgの量で存在する、方法を提供する。さらに、本明細書において、培養することが、シリンジまたはスプレー法を用いて細菌ベクターまたはウイルスベクターを植物細胞に接触させることを含む、方法を提供する。
【0016】
参照による組み込み
本明細書において記載される公報、特許および特許出願はすべて、個々の公報、特許または特許出願の各々が、参照により組み込まれると具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の新規な特徴は、添付の請求項において特定して記載されている。例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明を参照することにより、本発明の特徴および利点がよりよく理解されるであろう。当該実施形態では、本発明の原理が利用されており、付随する図面は以下の通りである。
図1】植物をタンパク質発現ファクトリーへと形質転換する植物ベクターを例示する、哺乳類タンパク質の発現のための概略ワークフローを示す図である。発現したタンパク質が、抽出され、精製されることにより、植物由来の精製タンパク質を産出する。
図2】アグロインフィルトレーション(agroinfiltration)による細菌ベクターまたはウイルスベクターの導入を例示する、異種核酸を植物中へ導入する方法についての概略ワークフローを示す図である。細菌ベクターやウイルスベクターを用いずとも、遺伝子銃を用いて、核酸を植物中へ導入することができる。
図3】ヒトFGF-2CDSを示す、アグロバクテリウムにおいて用いられる例示的なプラスミド構築物を示す図である。
図4】収穫された浸潤タバコから得られた発現ヒトFGF-2のウェスタンブロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、非植物タンパク質の植物由来の生産のための組成物、システム、装置および方法を提供する。本明細書中でより詳細に説明するように、(1)異種遺伝子をコードする核酸またはポリヌクレオチド配列の使用、(2)植物中の異種タンパク質の発現、(3)そのようなタンパク質の大規模精製(4)該精製が現在商業的に利用可能な選択肢を上回る安定性および/または収量を有することを示す。いくつかの実施形態において、植物細胞は、異種プロテアーゼ阻害遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列と、哺乳類遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列とを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、哺乳類タンパク質と、ニワトリFGF-2またはIL1-βと、フラボノイド、ルビスコ、植物由来アルカロイド、セルロース、リグノセルロース、レグマリン(legumalin)、ファセリン(phaselin)、11Sレグミンタイプ、7sビシリンタイプ、グリアジン、ゼイン、ホルデイン、セカリン、およびグルテニンのうちの少なくとも1つとを含む。いくつかの実施形態において、哺乳類タンパク質を製造する方法は、植物細胞から哺乳類タンパク質を抽出することを含む。
【0019】
非植物タンパク質の発現は、非植物タンパク質をコードする配列を含む細菌ベクターまたはウイルスベクターの構築により達成可能である。細菌ベクターまたはウイルスベクターは、植物中に導入され、これにより、非植物タンパク質を生産可能な植物を生産する。非植物タンパク質は、抽出され、精製されて、精製非植物タンパク質を産出する。図1に例示されているように、植物ベクターは、植物をタンパク質発現ファクトリーに形質転換する。発現したタンパク質は、抽出され、精製されることにより、植物由来の精製タンパク質を産出する。図2は、核酸の植物への導入に使用されうる方法を説明する。
【0020】
本明細書中で使用されるとき、「約」または「およそ」という用語は、当業者により測定された特定の値に対する許容可能な誤差範囲内を意味することができ、当該値の計測または測定の方法、例えば、計測系の制限に幾分依存するだろう。例えば、「約」は、当該技術における慣例により、プラスまたはマイナス10%を意味することがある。あるいは、「約」は、所与の値のプラスもしくはマイナス20%、プラスもしくはマイナス10%、プラスもしくはマイナス5%、またはプラスもしくはマイナス1%の範囲を意味することがある。あるいは、とりわけ生物学的システムまたはプロセスに関して、当該用語は、ある値の1桁以内、5倍以内、または2倍以内であることを意味することがある。本願および請求項において特定の値が記載されている場合、別段の記載のない限り、「約」という用語は、その特定の値に対する許容可能な誤差範囲内を意味するものと仮定されるべきである。また、値の範囲および/または部分範囲が与えられている場合、当該範囲および/または部分範囲は、その範囲および/または部分範囲のエンドポイントを含みうる。
【0021】
本明細書中で使用されるとき、「含む(comprising)」という用語は、組成物および方法が記載されている構成要素を含むが、その他を排除はしないことを意味するものとする。組成物および方法の定義に用いられるとき、「本質的に~からなる(Consisting essentially of)」は、意図された使用のための組合せに対してあらゆる本質的な重要性を有する他の構成要素を排除することを意味するものとする。したがって、本質的に本明細書中で定義される構成要素からなる組成物は、分離および精製方法からの微量汚染物質、ならびに、リン酸緩衝食塩水、防腐剤などの薬学的に許容可能な担体を排除することはない。「からなる(Consisting of)」は、他の原料の微量構成要素を上回るもの、および本開示の組成物を投与するための実質的な方法工程を排除することを意味するものとする。これらの移行語の各々により定義される実施形態は、本開示の範囲内である。
【0022】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指しうる。相同性は、比較のために並べることのできる各配列における位置を比較することにより決定することができる。比較された配列における位置が、同じ塩基またはアミノ酸により占有可能であるときは、分子は、その位置において相同でありうる。配列間の相同性の程度は、当該配列が共有している一致したまたは相同な位置の数の関数でありうる。「無関係の」または「非相同な」配列は、本開示の配列のうちの1つと40%未満の同一性、あるいは25%未満の同一性を共有する。配列相同性は、基準配列に対して~%の配列同一性を指しうる。実際問題として、任意の特定の配列が、(本明細書中に記載の特定の核酸配列に相当しうる)本明細書中に記載のいずれかの配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有しうるか否かであり、そのような特定のポリペプチド配列は、従来、ベストフィットプログラム(ウィスコンシン配列解析パッケージ、Unix向け第8版、遺伝学コンピュータグループ、ユニバーシティリサーチパーク、575サイエンスドライブ、マディソン、ウィスコンシン 53711)などの公知のコンピュータプログラムを用いて決定可能である。ベストフィットまたはその他任意の配列アラインメントプログラムを用いて、ある特定の配列が基準配列に対して、例えば、95%の同一性を有するか否かを決定するときは、同一性の割合が基準配列の全長にわたって計算できるように、および、全基準配列の5%までの配列相同性ギャップが許容可能なように、パラメータを設定可能である。
【0023】
本明細書中で与えられている範囲は、範囲内の値のすべてに対して簡略化されていると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50からなる群からのあらゆる数値、数値の組合せ、または部分範囲を含むものと理解される。
【0024】
異種核酸送達
異種タンパク質発現は、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をベンサミアナタバコなどの植物の葉に導入することにより行うことができる。ベクターを用いて植物にポリヌクレオチド配列を導入することにより、異種タンパク質を発現可能な植物を産出可能である。後続の下流処理および精製により、精製タンパク質が産出される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、DNAであってもよい。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、RNAであってもよい。
【0025】
分離精製されたポリヌクレオチド断片は、標準的な分子生物学手法を用いて転写調節配列と組み合わされて、発現カセットを産出可能である。典型的には、これらのプラスミドは、プロモーターより下流の種々の制限酵素に対する特異性を有するマルチクローニングサイトを提供するために構築される。分離精製されたDNA断片は、制限酵素を用いてプロモーターより下流でサブクローニングされることにより、DNAの発現が可能なようにプロモーターに対して適正な配向でDNAを確実に挿入できる。一旦、分離精製されたDNA断片が、プロモーターに作動可能に連結すると、そのように形成された発現カセットは、プラスミドまたはその他のベクターにサブクローニング可能である。
【0026】
本明細書において、植物細胞への送達のためのポリヌクレオチド配列を提供する。いくつかの実施形態において、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、哺乳類タンパク質またはその機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態において、機能的バリアントは、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む。いくつかの実施形態において、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、非宿主タンパク質である。いくつかの実施形態において、哺乳類タンパク質は、TGF-β、IGF-1、IGF-2、ヒトFGF-2、IL1-β、アクチビンA、BMP-4、VEGF、またはニワトリFGF-2である。いくつかの実施形態において、ヒトFGF-2をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号23、24、25、26、または28に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、ニワトリFGF-2をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号21に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、IL1-βをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号27に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、ヒトFGF-2をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号23、24、25、26、または28に対して少なくとも75%の配列類似性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、ニワトリFGF-2をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号21に対して少なくとも75%の配列類似性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、IL1-βをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号27に対して少なくとも75%の配列類似性を有する配列を含む。
【0028】
本明細書において、哺乳類遺伝子またはその機能的バリアントをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む植物細胞を提供する。いくつかの実施形態において、機能的バリアントは、全長配列と比較した挿入、欠失、または配列変形を含む。いくつかの実施形態において、植物細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、もしくは6つの哺乳類、非植物遺伝子、またはそのいずれかの機能的バリアントをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、植物細胞は、少なくとも1~6つの哺乳類、非植物遺伝子、またはそのいずれかの機能的バリアントをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む。
【0029】
本明細書において、非植物タンパク質の内在性分解を防ぐためにプロテアーゼ阻害剤をコードするポリヌクレオチド配列を含む植物細胞を提供する。いくつかの実施形態において、プロテアーゼ阻害剤は、植物プロテアーゼ阻害剤または非植物プロテアーゼ阻害剤をコードする遺伝子である。いくつかの実施形態において、プロテアーゼ阻害剤は、配列番号22に対して少なくとも75%の配列類似性を有する。いくつかの実施形態において、プロテアーゼ阻害剤は、SICYS8である。
【0030】
本明細書において、細菌ベクターまたはウイルスベクターを用いて異種ポリヌクレオチド配列を植物中に導入する方法を提供する。いくつかの実施形態において、ベクターは、アグロインフィルトレーションを用いて導入される。いくつかの実施形態において、アグロインフィルトレーションは、シリンジ式方法により行われる。いくつかの実施形態において、アグロインフィルトレーションは、ベクターを含む溶液を植物の表面へ分散させるスプレーを用いることにより、ベクターを植物に接触させて行われる。いくつかの実施形態において、溶液は、湿潤剤を含む。いくつかの実施形態において、湿潤剤は、ツイーン20(Tween20)を含む。
【0031】
異種タンパク質の発現
本明細書において、上記のタンパク質をコードするポリヌクレオチドのいずれかを含む植物を提供する。ポリヌクレオチドは、非植物タンパク質をコードし、当該非植物タンパク質は植物中で発現可能である。いくつかの実施形態において、非植物タンパク質は、哺乳類タンパク質である。いくつかの実施形態において、哺乳類タンパク質は、TGF-β、IGF-1、IGF-2、ヒトFGF-2、IL1-β、アクチビンA、BMP-4、VEGF、またはニワトリFGF-2である。いくつかの実施形態において、植物細胞は、SICYS8および/または前記哺乳類タンパク質を含み、該哺乳類タンパク質は、TGF-β、IGF-1、IGF-2、ヒトFGF-2、IL1-β、アクチビンA、BMP-4、VEGF、またはニワトリFGF-2からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、ヒトFGF-2は、配列番号1、2、3、4、5、または6に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、ニワトリFGF-2は、配列番号8に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、IL1-βは、配列番号9に対して少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトFGF-2は、配列番号1、2、3、4、5、または6に対して少なくとも75%の配列類似性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、ニワトリFGF-2は、配列番号8に対して少なくとも75%の配列類似性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、IL1-βは、配列番号9に対して少なくとも75%の配列類似性を有する配列を含む。
【0032】
本明細書において、植物により発現されるプロテアーゼ阻害剤を提供する。いくつかの実施形態において、植物は、プロテアーゼ阻害剤を発現させる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼ阻害剤は、SICYS8に対して75%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、プロテアーゼ阻害剤は、配列番号7に対して75%の配列類似性を有する。
【0033】
植物細胞は、1つを超える異種タンパク質を含みうる。いくつかの実施形態において、植物細胞は、少なくとも1つのプロテアーゼ阻害タンパク質またはそのいずれかの機能的バリアントと、少なくとも1つの非植物もしくは哺乳類タンパク質またはそのいずれかの機能的バリアントとを含む。いくつかの実施形態において、植物細胞は、SICYS8と、少なくとも1つの非植物または哺乳類タンパク質とを含む。いくつかの実施形態において、植物細胞は、1)SICYS8と、2)ヒトFGF-2、ニワトリFGF-2、IL1-β、またはそのいずれかの組合せとを含む。
【0034】
ベクター
本明細書において、異種ポリヌクレオチドの植物細胞への送達に用いられるベクターを提供する。いくつかの実施形態において、ベクターは、細菌性またはウイルス性である。例示的な細菌ベクターは、アグロバクテリウム種でありうる。例示的なウイルスベクターは、タバコモザイクウイルス(TMV)でありうる。いくつかの実施形態において、細菌ベクターは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、タバコモザイクウイルス(TMV)、タバコ茎壊疽ウイルス(TRV)、タバコエッチ病ウイルス(TEV)、ササゲモザイクウイルス(CPMV)、ジャガイモXウイルス(PVX)、またはそのいずれかのバリアントもしくは株である。
【0035】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスは、植物からの植物細胞を含む植物細胞への異種ポリヌクレオチドの導入に広く用いられる土壌伝染性病原体である。A.ツメファシエンスは、腫瘍誘発(Ti)プラスミドのある特定のポリヌクレオチド断片を感染した宿主細胞の核へ送達する。有利には、異種ポリヌクレオチドは、Tiプラスミドの境界の間に配置し、植物細胞へ送達可能である。
【0036】
目的のポリヌクレオチド配列は、従来の形質転換法を介して核酸送達のためのコンピテントな細菌株(例えば、アグロバクテリウム)中へ導入可能である。細菌株を用いて、植物、植物部位、組織、または細胞へ目的の核酸を導入することができる。アグロバクテリウムの形質転換には、数多くのベクターが利用可能である。これらは典型的には、少なくとも1つのT-DNA境界配列を持ち、かつ、pCambia、pSim24またはそのいずれかのバリアントなどのベクターを含みうる。
【0037】
アグロバクテリウムの形質転換は、宿主アグロバクテリウム株により共在するTiプラスミド上でまたは染色体的に伝達されるvir遺伝子の補体に依存する可能性のあるアグロバクテリウム株への目的の外来核酸を伝達するバイナリーベクターの送達を伴うことがある。アグロバクテリウムへの組換えバイナリーベクターの送達は、組換えバイナリーベクターを伝達する大腸菌、プラスミドを伝達し、かつ、組換えバイナリーベクターを標的アグロバクテリウム株へと可動化することができるヘルパー大腸菌株を用いるトリペアレンタルメイティング法により達成可能である。あるいは、組換えバイナリーベクターは、DNA形質転換によりアグロバクテリウムへ送達可能である。
【0038】
目的のポリヌクレオチドは、本明細書中に開示される方法を用いて、植物の後続の形質転換のために核酸送達にコンピテントなアグロバクテリウム株またはその他の細菌株へと形質転換可能である。いくつかの実施形態において、アグロバクテリウムは、エレクトロポレーションを用いて形質転換される。いくつかの実施形態において、核酸は、本開示のアグロバクテリウム媒介形質転換方法による導入後の植物における目的のポリヌクレオチドの発現を可能とする機能的要素を含む発現カセットを含むポリヌクレオチド構築物である。
【0039】
発現カセットは、形質転換された植物細胞および組織に対する検出、同定または選択に用いることができる特性を与えるポリヌクレオチドをコードする核酸を含むことができる(例えば、形質転換された細胞の選択のためのマーカー)。マーカーをコードする核酸は、目的のヌクレオチド配列と同じ発現カセット上にあっても、別個の発現カセット上で同時形質転換されてもよい。いくつかの実施形態において、マーカーをコードする核酸は、目的のヌクレオチド配列でありうる。したがって、目的の核酸は、選択剤への耐性を与えるヌクレオチド配列をさらに含む発現カセットを含み、よって、選択することは、選択剤を含む培地においてアグロバクテリウムを植え付けた植物組織またはその細胞を培養することと、目的の核酸を含む形質転換した植物組織またはその細胞を選択することとを含む。
【0040】
核酸の運搬
本明細書において、異種タンパク質(すなわち、哺乳類タンパク質または非植物タンパク質)を含むポリヌクレオチド配列などの分離精製されたDNA配列を、植物細胞へ導入して、形質転換された植物細胞を生産することに関する製造工程または方法を開示する。いくつかの実施形態において、形質転換された植物細胞は、異種タンパク質の一過性発現を示す。
【0041】
植物組織源の細胞は、繁殖性のトランスジェニック植物および/または種子を再生可能な胚形成細胞または細胞株でありうる。細胞は、単子葉植物または双子葉植物のいずれに由来していてもよい。植物の適切な例としては、小麦(例えば、トリチカム種)、コメ(例えば、オリザ種)、ニコチアナ(例えば、ベンサミアナタバコ)、アラビドプシス、タバコ(ニコチアナ種)、トウモロコシ(例えば、ゼア種)、ダイズ(例えば、グリシン種)、エンバク(例えば、カラスムギ)などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0042】
形質転換用の植物組織源の選択は、宿主植物の性質および形質転換プロトコールに依ってもよい。有用な組織源としては、カルス、懸濁培養細胞、プロトプラスト、リーフ断片、茎断片、花序、花粉、胚芽、胚軸、塊茎断片、分裂組織部位などが挙げられる。組織源は、形質転換後に全繁殖性植物を再生する能力を保持する、すなわち、全能性細胞を含むように選択され、かつ、形質転換される。
【0043】
形質転換は、選択された植物組織に向けられた条件下で行われる。植物細胞または組織は、分離精製されたDNA配列をある期間伝達するDNAに晒される。これは、プラスミド保有アグロバクテリウム細胞の存在下で数分間から2~15日間の範囲の共培養であってもよい。用いられるバッファーおよび培地は、植物組織源および形質転換プロトコールにより変わることがある。
【0044】
形質転換後、植物中での異種タンパク質の蓄積を可能とするために、植物をある期間成長させる。いくつかの実施形態において、該期間は、約1時間~約15日間である。いくつかの実施形態において、該期間は、1時間、2時間、6時間、12時間または1日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、もしくは15日間である。いくつかの実施形態において、該期間は、1~12時間、1時間~1日間、1~5日間、1~10日間、1~15日間、1~5日間、1~10日間、1~15日間、5~6日間、5~7日間、5~8日間、5~9日間、5~10日間、または5~15日間である。
【0045】
哺乳類タンパク質を製造する方法は、成長培地中で植物細胞を培養することを含む。植物細胞への核酸配列の導入は、植物にタンパク質を発現する能力を与える。タンパク質の発現後、哺乳類タンパク質を抽出して、抽出生成物を生成する。成長培地は、成長または発芽に必要な因子を補った土壌または寒天ベースの培地を含むことができる。
【0046】
植物細胞への核酸の導入は、細菌ベクターまたはウイルスベクターの使用を伴うことがある。いくつかの実施形態において、細菌ベクターは、アグロバクテリウム種である。いくつかの実施形態において、細菌ベクターは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、タバコモザイクウイルス(TMV)、タバコ茎壊疽ウイルス(TRV)、タバコエッチ病ウイルス(TEV)、ササゲモザイクウイルス(CPMV)、ジャガイモXウイルス(PVX)、またはそのいずれかのバリアントもしくは株である。
【0047】
いくつかの実施形態において、細菌ベクターまたはウイルスベクターは、植物細胞を細菌ベクターまたはウイルスベクターに接触させることにより、植物細胞へ導入される。接触させることは、植物細胞と細菌ベクターまたはウイルスベクターとの物理的接触を媒介することを伴ってもよい。いくつかの実施形態において、物理的接触は、シリンジ式システムの使用により媒介される。いくつかの実施形態において、接触させることは、植物の葉に行われ、これにより、浸潤葉を形成する。
【0048】
核酸の導入は、植物細胞への核酸の接触を開始するために溶液を分散させることを含むことができる。いくつかの実施形態において、核酸の導入は、スプレー法を用いることを含んでもよい。スプレー法は、細菌ベクターまたはウイルスベクターを含む溶液を含むことができる。細菌ベクターまたはウイルスベクターは、溶液中に懸濁され、スプレー式ノズルまたはスプリンクラーシステムを用いて吹きかけることで、植物を含む広い領域を包含する霧に溶液を分散させることができる。いくつかの実施形態において、導入は、細菌ベクターまたはウイルスベクターを収容するシリンジを植物細胞に接触させることにより行われる。
【0049】
非植物タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の導入は、ベクター式システムを用いる代わりに、ポリヌクレオチドの導入方法を用いてもよい。いくつかの実施形態において、植物細胞へのポリヌクレオチド配列の導入は、遺伝子銃の使用を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、RNAまたはDNAである。
【0050】
大規模精製
大量のタンパク質の精製は、相当量の非植物タンパク質または哺乳類タンパク質を回収するための大量の植物バイオマスの精製を含みうる。これは、目的のタンパク質を生産する複数の植物を成長させるための測定可能で制御された環境を提供する垂直農場または大型温室における複数の植物の使用を含んでもよい。
【0051】
植物細胞の培養後、哺乳類タンパク質が植物細胞中に蓄積し、抽出されて、哺乳類タンパク質を含む抽出生成物または組成物を生成する。組成物はまた、不純物または非哺乳類成分を含んでもよい。いくつかの実施形態において、不純物は、微量に存在していてもよい。いくつかの実施形態において、不純物は、フラボノイド、ルビスコタンパク質、プロテアーゼ、タンパク質、植物由来アルカロイド、セルロース、リグノセルロース、レグマリン、ファセリン、11Sレドゥミンタイプ、7sビシリンタイプ、グリアジン、ゼイン、ホルデイン、セカリン、またはグルテニンである。精製中、精製されたタンパク質は、微量の植物由来材料または不純物を含みうる。不純物は、組成物の一部を含んでもよい。いくつかの実施形態において、不純物は、組成物の0.1%以下を構成する。いくつかの実施形態において、不純物は、組成物の0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、または0.01%以下を構成する。いくつかの実施形態において、不純物は、組成物の0.0%~0.1%を構成する。
【0052】
いくつかの実施形態において、組成物は、抗凝固剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、抗凝固剤は、ヘパリンまたはその塩である。いくつかの実施形態において、抗凝固剤は、0.1μg/ml~2μg/mlで存在する。いくつかの実施形態において、抗凝固剤は、2μg/ml以下で存在する。
【0053】
哺乳類タンパク質の精製は、当業者により一般的に知られている精製方法により行うことができる。いくつかの実施形態において、哺乳類タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、またはそれらのいずれかの組合せにより精製される。
【0054】
精製後、後処理工程を用いて、精製されたタンパク質の機能性を最適化することができる。いくつかの実施形態において、アフィニティータグは、非植物タンパク質に融合されることで、アフィニティークロマトグラフィーを用いる精製または精製を容易化できる。アフィニティータグは、除去することで、タンパク質の機能とのタグの干渉を防ぐことができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、アフィニティークロマトグラフィーにおいて用いられるアフィニティータグを切断することにより、「タグのない」非植物タンパク質を生成するために用いることができる。いくつかの実施形態において、アフィニティータグは、ポリHisタグ、Strepタグ、Eタグ、または精製に一般的に用いられるその他のエピトープタグでありうる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、エンテロキナーゼである。
【0055】
いくつかの実施形態において、非植物タンパク質または哺乳類タンパク質は、プロタンパク質としてまたはチモーゲンとして生産され、よって、追加の処理工程なしでは機能的でない。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、プロタンパク質を成熟タンパク質とするために用いられる。
【0056】
哺乳類タンパク質の抽出は、他の方法により現在達成可能な収量を上回ることがある。哺乳類タンパク質を抽出することにより、抽出生成物が生成される。いくつかの実施形態において、抽出生成物は、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μgの量で存在する哺乳類タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、抽出生成物は、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μg、41μg、42μg、43μg、44μg、45μg、46μg、47μg、48μg、49μg、50μg、51μg、52μg、53μg、54μg、または55μgの量で存在する哺乳類タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、抽出生成物は、1グラムのバイオマス当たり40~55μgの収量を含む。
【0057】
製造方法
本明細書において、非植物タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む植物細胞から哺乳類タンパク質を製造する方法を提供する。非植物タンパク質または哺乳類タンパク質を含む植物は、所望の量のタンパク質が生産されるまで培養可能である。植物の抽出は、哺乳類タンパク質を含む抽出生成物を生成する。
【0058】
植物細胞を培養することは、成長または種子の発芽に必要な因子を補った土壌または寒天などの適切な成長培地において植物または植物細胞を成長させることにより行うことができる。いくつかの実施形態において、植物細胞の培養または植物の栽培は、温室、または植物の成長を可能とする制御された環境を提供するその他の設備において行われる。測定可能な手法で植物を栽培することは、用いられているのと同じ領域で収穫される可能性のあるバイオマスを増加させうる。いくつかの実施形態において、垂直農法を用いて、植物を成長させる。
【0059】
哺乳類タンパク質の製造方法は、他の方法により現在達成可能な収量を上回ることがある。哺乳類タンパク質を抽出することにより、抽出生成物が生成される。いくつかの実施形態において、抽出生成物は、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μgの量で存在する哺乳類タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、抽出生成物は、1グラムのバイオマス当たり少なくとも40μg、41μg、42μg、43μg、44μg、45μg、46μg、47μg、48μg、49μg、50μg、51μg、52μg、53μg、54μg、または55μgの量で存在する哺乳類タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、抽出生成物は、1グラムのバイオマス当たり40~55μgの収量を含む。
【0060】
精製後、非植物タンパク質または哺乳類タンパク質はさらに除菌することができる。いくつかの実施形態において、除菌は、ろ過、照射、エンドトキシン浄化、またはそれらのいずれかの組合せを含む。
【0061】
本発明の新規な特徴は、添付の請求項において特定して記載されている。例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明を参照することにより、本発明の特徴および利点がよりよく理解されるであろう。当該実施形態では、本発明の原理が利用されており、付随する図面は以下の通りである。
【実施例
【0062】
実施例1:ベンサミアナタバコの苗の発芽
導入遺伝子の導入用のベンサミアナタバコを準備するために、ベンサミアナタバコの種子を、明期16時間と暗期8時間のサイクルでインキュベーター内で摂氏30度の湿潤ジフィーパッド上で3日間インキュベートする。発芽した種子を湿潤土壌へ移し、さらに成長させる。
【0063】
実施例2:植物発現ベクターの調製
コンピテントな大腸菌の調製
【0064】
大腸菌は、プラスミドなどの外来性核酸を取り込むためにはコンピテントでなければならない。このためには、100μLの大腸菌を1mLの液体LBまたはSOCに添加し、37℃、225RPMで一晩インキュベートする。
【0065】
TSSバッファーをLB培地において無菌技術を用いた滅菌条件下で調製し(30mMのMgCl、5%のDMSO、10%のPEG(3350または5000))、層流生化学フード下でろ過する。調製されたバッファーを必要とされるまで4℃で保存する。
【0066】
一晩培養した後、少量の一晩置いた培養物をより大量のLB中にOD600が0.3~0.4に達するまで2~3時間継代培養する。次いで、培養物を4℃で2700xgでの遠心分離に10分間かけ、上清を除去し、ペレット状の細胞を予め冷却した5mlのTSSバッファーに再懸濁する。再懸濁された細胞を氷上で15分間冷却する。冷却後、冷却された細胞を、適切な冷凍チューブに等分し、-80℃で凍結する。
【0067】
細菌ベクターの調製
1μLのpCambia2300(Marker Gene Technologies社、PN:M1709)(プラスミド(~1000pg)を100μLのコンピテントな大腸菌細胞に添加し、よく混合して、4℃で30分間インキュベートする。20mMのグルコースを補った900μLの液体LB培地を冷却された細菌に添加し、37℃、225RPMで1時間インキュベートする。
【0068】
900μLのインキュベートされた細菌を50μg/mLのカナマイシンを補った40mLの液体LB培地に添加し、37℃、225RPMで一晩インキュベートする。製造業者の指示にしたがってGenEluteプラスミドMidiPrep精製キット(Sigma社、PLD35)によりプラスミドを精製する。
【0069】
残りの100μLを適切な抗生物質を補ったLB寒天上に蒔き、4℃で保存する。最終濃度が25%のグリセロールを含むストックを調製することにより、長期保存のための細菌ストックを調製する。
【0070】
実施例3:アグロバクテリウム・ツメファシエンスの形質転換
アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404(Invitrogen社)を核酸ベクターとともにエレクトロポレーションする。アグロバクテリウムへのエレクトロポレーションの前に、核酸ベクターの取込みのために細菌コロニーを検証する。
【0071】
アグロバクテリウムLBA4404を氷上で解凍する。1μLのベクターを20μLのコンピテントな細胞に添加し、穏やかに混合する。細胞:プラスミド混合物を氷上の0.1cmのエレクトロポレーションキュベット(Bio-rad社)に添加する。Gene PulserIIを以下のパラメータ、すなわち25μF、300Ω、および2~2.5kVで構成する。1mLのSOC培地をエレクトロポレーションされた細胞に添加し、1.5mlのチューブに送達し、28℃で1時間インキュベートし、100rpmで振とうする。50~100μlの細胞を50μg/mlのカナマイシンおよび100μg/mlのストレプトマイシンとともにLB寒天プレート上に蒔き、28℃で最長48時間インキュベートする。
【0072】
実施例4:シリンジを介したベンサミアナタバコの浸潤
アグロバクテリウムのクローン集団を、カナマイシンおよびストレプトマイシンとともに5mlのLBにおいて成長させる。一晩置いた1mLの培養物を20μMのアセトシリンゴンを補った25mLのLB中に植え付け、28℃、100rpmで一晩成長させる。50~100μlの細胞を50μg/mlのカナマイシンおよび100μg/mlのストレプトマイシンとともにLB寒天プレート上に28℃で最長48時間蒔く。
【0073】
一晩培養した後、細菌を5000xgで15分間沈降させ、MM培地(10mMのMES、10mMのMgCl2、pH5.6(KOH)とともにOD600が約0.5に等しくなるように再懸濁する。調整後、フラスコを室温で1~3時間または一晩インキュベートする。
【0074】
5mlの針なしシリンジを用いて、シリンジを介した浸潤を行う。指で反対側から対圧をかけながら、シリンジを葉の下側に適用する。浸潤が成功すると、これは葉の広がり(すなわち、濡れ)領域として頻繁に用いられる(overused)。浸潤は、5mlの針なしシリンジを用いてA.ツメファシエンスの懸濁液が背軸部の種々の位置にある状態で、ベンサミアナタバコの葉が完全に拡がっているとき(優先的には、気孔が開いている朝)に行われるべきである。
【0075】
2~5日後、導入遺伝子の発現を観察することで、浸潤の成功が検証できる。
【0076】
実施例5:ベンサミアナタバコのスプレーを媒介した浸潤
アグロバクテリウムの浸潤は、シリンジ式浸潤と比較して測定可能となりうるであろうスプレー法(図2)を用いて行うこともできる。バックアッププレートまたは細菌グリセロールストックから細胞を採取し、5mlの選択的LB培地(ストレプトマイシン/カナマイシン)に植え付ける。28℃、225rpmの振とうで一晩インキュベートする。5mlのアグロバクテリウム培養物を250mlの選択的LB培地(ストレプトマイシン/カナマイシン)に添加し、28℃、225rpmの振とうで48時間から72時間インキュベートする。インキュベート後、細胞を4000xgで10分間遠心分離する。上清を廃棄する。細胞を10mlのMM培地(10mMのMES、10mMのMgCl2、pH5.6(KOH))に再懸濁し、暗所にて室温で1時間インキュベートする。MM培地を添加して、500mlの全量においてODを1.3~1.5に調整し、最終濃度0,1%(v/v)となるようにツイーン20を添加する。23℃でインキュベーター内の植物に溶液を直接吹きかける。毎日水やりをしつつ植物を10~14日間放置して、タンパク質を発現させる。
【0077】
実施例6:タンパク質抽出
精製のために、5:1(v/w)のバッファー:バイオマス比の20mMのクエン酸、20mMのNaHPO、および30mMのNaClを含むバッファーを用いて、植物材料を抽出する。pH4で抽出を実施する。
【0078】
50mlの抽出バッファーを調製するために、192mgのクエン酸、120mgのNaH2PO4、および88mgのNaClを量る。ビーカー中で、50mlの蒸留水に試薬を希釈し、pHをpH4に調整する。抽出バッファーを4℃で保存する。
【0079】
予め冷却された抽出バッファーを補った粉砕した葉材料を、室温で一定の撹拌下で30分間インキュベートした後、10,000xgで15分間遠心分離する。上清をMiraclothを用いてろ過した後、ろ過液を室温で20分間インキュベートし、室温で10,000xgでの遠心分離に30分間かける。
【0080】
ポリ-ヒスチジンタグ付きタンパク質に対しては、Ni-NTAダイナビーズを用いる。ダイナビーズを介した精製の前にタンパク質を調製するために、50μL(2mg)のダイナビーズ(商標)磁気ビーズを微量遠心チューブに送達し、磁石上に2分間配置する。上清を吸引して、廃棄する。(1XBinding/Washバッファー中で調製された)試料をビーズに添加し、室温で(または、タンパク質が室温では不安定な場合はより低い温度で)5分間インキュベートする。インキュベート時間は、10分まで延長してもよい。チューブを2分間磁石上に配置し、次いで、上清を廃棄する。チューブを2分間磁石上に配置し、上清を廃棄することにより、ビーズを300μLの1XBinding/Washバッファーで4回洗浄する。各洗浄工程の間に、ビーズを完全に再懸濁する。他の用途においてビーズ/タンパク質複合体を用いるために、ビーズ/タンパク質複合体を1XのPull-downバッファー(または、任意の下流用途に適したその他のバッファー)の適切な量に再懸濁する。100μLのHis-Elutionバッファーを懸濁液に添加し、ローラ上で室温で(または、タンパク質が室温では不安定な場合はより低い温度で)5分間インキュベートする。磁石を2分間適用し、溶出ヒスチジンタグ付きタンパク質を含む上清を清潔なチューブに送達する。タンパク質濃度を計測するためには、ブラッドフォードアッセイまたはQubit蛍光光度計を用いたタンパク質定量法を用いる。
【0081】
エンテロキナーゼ切断
エンテロキナーゼ保存バッファーの調製10ml(20mMのTris-HCl、200mMのNaCl、2mMのCaCl2および50%のグリセロール)
【0082】
エンテロキナーゼ反応:
【0083】
エンテロキナーゼ切断反応は、反応バッファー(200mMのTris-HCl、500mMのNaCl、20mMのCaCl2、pH8)とエンテロキナーゼ酵素とから構成される反応混合液中に融合タンパク質を混合して準備される。陰性対照を生成し(エンテロキナーゼなし)、ここで5μlの酵素保存バッファーをエンテロキナーゼの代わりに用いる。簡便な遠心分離によりすべての成分を採取する。反応を25℃でインキュベートし、さまざまな時点において分析のためにアリコートを除去し、SDS-PAGEによる分析のためにアリコートを調製する。SDS PAGEを介して各時点における切断および非切断タンパク質の量を比較することにより、切断分析のための最適時間を分析する。別のダイナビーズ精製を行って、あらゆる非切断タンパク質および切断ポリHisタグを除去する。残ったエンテロキナーゼを、エンテロキナーゼ除去キット(Sigma Aldrich社、カタログ番号:PRKE)を用いて除去する。上清のタンパク質濃度を計測するために、ブラッドフォードアッセイまたはQubit蛍光光度計を用いたタンパク質定量法を用いる。
【0084】
実施例7:植物栽培条件
本研究のために、温室または成長容器中で植物を栽培した。
【0085】
温室栽培
Proptek繁殖用231深型セルトレイ(1020型)中に植物を播種し、Speedy Seeder(Carolina Greenhouses社、ノースキャロライナ、米国)を用いてProMix細粒土を充填した。発芽および栽培のための条件を説明する。
【0086】
Percivalチャンバー内で起こる発芽のための150±50μmolのm-2-1
【0087】
昼間は26℃、夜間は25℃に温度を設定した。Svensonクローズは常に上部で閉じられていた。高圧ナトリウム(HPS)により追加照明を植物に与えることで、光周期を完成させ、温室の外部センサがまず150マイクロモル、次いで200マイクロモルを下回ると光を提供した。光周期は、明期16時間および暗期8時間に設定した。環境湿度は、50%に設定して、微生物学的問題を低減した。
【0088】
ストックのMiracleGro24-8-16、ならびに以下の特徴、すなわち、1dS/m±0.2の導電性および5.7±0.2のpHを有する微量栄養素を希釈して得られた栄養液により、種子に灌水した。
【0089】
ストック1リットル当たり200gの肥料を希釈することにより、MiracleGroストックを調製した。移植は、播種後14日目(DAS14)に行う。移植は、播種された平箱から、湿潤調整剤とともにMiracleGro培養土を充填した3.5インチ×3.5インチの正方形のポット内へ手作業で行った。ポットに充填したのは、移植前日であり、圃場容水量に至るまで浸水した。1020トレイを用いた灌水システムを提供するために、異なる二種類の1020平箱を重ね合わせて配置した。穴あきのものと、底部には穴のないものであった。上部において、1020平箱には18個のポットが保持されており、これにより、一度にすべてのポットの充填および排水が可能であった。
【0090】
水やり作業を容易化するためにのみ用いられた台(benches)とともに、温室を設置した。DAS21において初めて植物を離間配置し、平箱当たり18個ではなく9個の植物のみを配置した。
【0091】
DAS28において、22℃±2に温度を下げ、アグロインフェクションの起こる前に平箱当たり5または6個となるように植物を離間配置した。栽培のさらに4日後に植物を収穫し、4日のうち前半の2日間は、低温(22±2℃)とした。後半の2日間は、栽培中に採用した条件(昼間26±2℃および夜間25±2℃)にて栽培した。
【0092】
成長容器での栽培
容器での栽培条件は以下のものであった。すなわち、150±50μmolのm-2-1(播種されたジフィー44とともに発芽ラックに取り込まれる発芽、下記参照)、昼間26℃および夜間25℃に設定された温度、光周期は、明期16時間および暗期8時間に設定され、環境湿度は、発芽中は70%に設定し、次いで、後半段階では50%に設定することにより微生物学的問題の危険性を低減した。
【0093】
予め含水させ、かつ、プラスチックネットに収容したジフィー7プラグを含む1020平箱に、Speedy Seeder(Carolina Greenhouses社、ノースキャロライナ、米国)を用いて、植物を播種した。播種作業の後、45個の播種されたジフィーを受容することができるQuickPot45R内にジフィーを離間配置した。発芽ラック上にQuickpotsトレイを配置し、2~3日後に、発芽が明らかとなるはずである。1週間後、環境湿度は、50%に低下した。2週間後、植物を、Quickpotトレイ当たり5つの植物を配置することにより離間させ、栽培ラック内でさらに2週間成長させ、そこで、アグロバクテリウム・ツメファシエンスを含む溶液でアグロインフェクションする。4日後、トレイを灌水システムから除去し、葉を手作業で摘み取ることにより収穫した。
【0094】
下記の栄養液により、種子および植物を養液栽培し、ここでストックは、表3に示すように調製された希釈肥料から構成される。
































【0095】
【表1】
【0096】
以下の特徴、すなわち、移植後1週目の間は1dS/m±0.2、次いで、後半の成長段階では1.5dS/m±0.2の導電性、および5.7±0.2のpHを有するストックをさらに調製した。
【0097】
実施例8:アグロバクテリウムの形質転換を介したベンサミアナタバコにおけるヒトFGF-2の発現
pCAMBIA0380のバックボーンを用いてGenscriptによりプラスミド構築物pTIA2-hFGF2を合成した(図3)。プラスミド構築物は、6xヒスチジンタグがhFGF-2ポリペプチドのN’末端にあるベンサミアナタバコ(タバコ植物)コドン最適化ヒトFGF-2(配列番号24)の前のTMVオメガエンハンサー配列の発現を促進するために、シロイヌナズナからのユビキチン-10プロモーターを含む。CDSの次にNOSターミネーターが続く。植物特異的な選択可能マーカーは含まれなかった。
【0098】
アグロバクテリウムhFGF-2ストックの調製
プラスミド構築物pTIA2-hFGF2にエレクトロポレーションを行い、実施例3に記載のアグロバクテリウム・ツメファシエンス株GV3101(AbCam)(25μF、300Ω、および2~2.5kV)を得た。200mMのアセトシリンゴン、25mg/Lのリファンピシン、50mg/Lのゲンタマイシン、および100mg/Lのカナマイシンを補ったLB寒天プレート上で、エレクトロポレーションされたアグロバクテリウムを28℃で2日間成長させた。
【0099】
単一のコロニーを選択して使用し、25%のグリセロールストックを調製し、-80Cで凍結した。hFGF-2の有無をPCRにより確認した。
【0100】
ベンサミアナタバコの浸潤のためのアグロバクテリウムの調製
200mMのアセトシリンゴン、25mg/Lのリファンピシン、50mg/Lのゲンタマイシン、および100mg/Lのカナマイシンを補ったLB寒天プレート上で、hFGF-2発現プラスミドを含む形質転換されたアグロバクテリウムの凍結グリセロールストックを筋状配置して、28℃で2~3日間インキュベートした。
【0101】
インキュベート後、単一のコロニーを選択して使用し、200mMのアセトシリンゴン、25mg/Lのリファンピシン、50mg/Lのゲンタマイシン、および100mg/Lのカナマイシンを補った100mLのLBブロスを収容した500mlバッフル付きフラスコに植え付けた。培養物を振とうインキュベーターにおいて220RPMで16~18時間インキュベートした。
【0102】
インキュベート後、100mLの細菌培養物を50mLのファルコンチューブ2本に送達した。ファルコンチューブを4000RPMで30分間遠心分離した。上清を廃棄した。
【0103】
pH5.6の1MのMESを10ml、1MのMgCl2を10ml、200uMのアセトシリンゴンを1ml含む1LのMMA培地を調製し、その1LのMMA培地に細菌ペレットを再懸濁した。再懸濁された細菌を22℃で2時間インキュベートした。
【0104】
インキュベート後、10μMのリポ酸、100mg/LのL-システイン、125mg/LのSTS、75mg/LのDTT、0.002%のプルロニックF-68を再懸濁された培養物に添加した。シルウェットL-77を添加して、濃度を0.01%とした。
【0105】
0.02mPaを1分間印加することにより、真空デシケーター内の4週齢のタバコ植物を真空浸潤した。
【0106】
インキュベートされたベンサミアナタバコ植物を、成長チャンバー内で2日間22℃で、その後3日目は24℃で真空浸潤した。
【0107】
実施例9:タバコの葉からの全可溶性タンパク質(TSP)の抽出
以下の試薬濃度、すなわち、pH7.4で50mMのリン酸ナトリウム、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール、0.1%のTritonX-100、40mMのアスコルビン酸、EDTAフリーのプロテアーゼ阻害剤カクテル錠(製造業者の指示による)を含む溶液を混合することにより、抽出バッファーを調製した。
【0108】
実施例8による(3日間の浸潤後)の浸潤ベンサミアナタバコ植物の葉を収穫し、-80℃で凍結した。
【0109】
2つの11mmメタルビーズおよび氷上の10mLの抽出バッファーとともに、3グラムの凍結葉組織を50mLのSPEXチューブ内に配置した。該チューブをSPEXジェノグラインダー用チューブアダプターに配置した。アダプターを-80℃で予備冷却する。
【0110】
1500RPMで30秒間のバーストを5回とバースト間に30秒の静止時間としてSPEXグラインダーにおいて、凍結葉を粉砕した。
【0111】
粉砕後、チューブを4℃で4000RPMでの遠心分離に10分間かけた。ペレットは、細胞残屑を含む。葉材料および上清を4層のチーズクロスを通して新たなファルコンチューブ内へ注ぎ、4℃で~7000xgでの遠心分離に30分間かけた。全可溶性タンパク質(TSP)を含む上清を新たなファルコンチューブへ送達した。
【0112】
TSPのpHをKOH(水酸化カリウム)により7と8の間の最終pHに調節した。pH調節されたTSPを4℃で~7000xgでの遠心分離に15分間かけた。上清を新たなファルコンチューブへ送達した。
【0113】
実施例10:ヒトFGF-2の検出
タンパク質ゲル:
TGS(25mMのトリス、192mMのグリシン、0.1%のSDS、pH8.6)泳動バッファーにより調製されたTGX(Tris Glycine Extended)4%~15%勾配ゲルを搭載したBioRadゲルリグ。
【0114】
2.5μLの4xのLaemmliバッファーおよび7.5μLのTSP試料を調製した。10ngのhFGF2により陽性対照を調製した。試料を70℃で10分間加熱することにより、試料を変性させた。10μLの試料をウェルにロードし、5μLのPageruler染色済みラダー(Thermofisher社)を少なくとも1つのウェルにロードした。ゲルを200Vで30分間流した。
【0115】
免疫ブロット:
BioRadトランスブロットTurboおよびトランスブロット(登録商標)Turbo(商標)ミニPVDF転写パックを用いて、ゲルからメンブレンへタンパク質を転写した。事前設定された3分間TGXミニゲル転写プロトコールにより、ゲルをメタノール活性化PVDFメンブレンへ転写した。転写されたメンブレンを、0.75グラムの新鮮なウシ血清アルブミンおよび25mLのTBS-Tブロッキングバッファーを収容するブラックボックス内に配置し、穏やかに振とうしつつ室温で1時間または4℃で一晩インキュベートした。
【0116】
ブロッキングバッファーを除去した。25mLのTBSTとともに10μLのモノクローナルマウス抗hFGF2一次抗体(Invitrogen社)(1:2500希釈)をメンブレンに添加し、穏やかに揺動しつつ室温で4時間または4℃で一晩のいずれかでインキュベートした。
【0117】
一次抗体を除去し、TBSTで3回洗浄し、ここで、各洗浄は、50mLのTBS-Tを用いて室温で10分間行った。
【0118】
30mLのTBSTに3ul混合することによる1:10000の抗マウスNIR800を用いて、二次抗体溶液を調製した。該溶液をメンブレンに添加し、穏やかに振とうしつつ室温で1時間インキュベートした。
【0119】
二次抗体溶液を除去し、上記のとおり50mLのTBSTで3回洗浄した。
【0120】
メンブレンを700nm(ラダー)および800nmのh-FGF2において画像化した。ヒトFGF-2(配列番号2)は、およそ18kDaである。R2-V TSP(レーン3)およびR3-V TSP(レーン5)は、ヒトFGF-2の発現を示している(図4)。レーン5において用いられている発現構築物は、図3に示した構築物に由来しているが、TMVオメガエンハンサーが欠如している。
【0121】
hFGF-2の定量化は、Invitrogen社製hu-FGFベーシックELISAキットを用いて行い、かつ、製造業者のプロトコールにしたがって実施した。全可溶性タンパク質(TSP)に対してELISAを行った。2倍および20倍の2種類の希釈度でTSPをテストした。標準曲線に基づき計算された収量は、560~808pg/mlであった。
【0122】
本明細書中で本発明の好適な実施形態を示し、説明したが、そのような実施形態がほんの一例として与えられていることは、当業者であれば自明のことであろう。本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置換えが現在当業者に想定されるであろう。本明細書中で説明した本発明の実施形態のさまざまな代案は、本発明を実施するにあたり使用されてもよいことを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定することと、これら特許請求の範囲内の方法および構成ならびにそれらの均等物が請求項の範囲に包含されることが、意図されている。
【0123】
【表2-1】







【0124】
【表2-2】














【0125】
【表2-3】














【0126】
【表2-4】
【0127】
【表3-1】








【0128】
【表3-2】









【0129】
【表3-3】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024513542000001.app
【国際調査報告】