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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】マイクロ流体システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20240318BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G01N1/00 101L
G01N1/00 101M
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560765
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 GB2022050889
(87)【国際公開番号】W WO2022214828
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】2105032.3
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513066122
【氏名又は名称】クロメック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KROMEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー トーマス メイチン
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート ジェイムズ マーセイ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ダンカン ウッド
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AD26
2G052AD46
2G052CA03
2G052CA04
2G052CA14
2G052CA35
2G052HC09
2G052HC25
2G052JA07
(57)【要約】
複数の流体で接続されたマイクロ流体チャンバであって、各マイクロ流体チャンバは、流体試料の入口と、流体試料の出口と、前記チャンバからガスを排出することを可能にするように動作可能である選択的に閉鎖可能なバルブと、を備える、マイクロ流体チャンバと、流体が最も上流である1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバに、過剰圧力を加えるように作動可能である加圧システムと、を備える、マイクロ流体システムについて説明する。流体試料を流体が最も上流である前記1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバを介してマイクロ流体システムに供給するステップと、前記1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバに過剰圧力をかけるための前記加圧システムを動作するステップと、前記流体で接続されたマイクロ流体チャンバの前記バルブを選択的に動作して、前記流体試料を前記マイクロ流体チャンバの間で連続的に動かすようにするステップと、を有するマイクロ流体方法についても説明する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体システムであって、該マイクロ流体システムは、
複数の流体で接続されたマイクロ流体チャンバであって、各マイクロ流体チャンバは、
流体試料の入口と、
流体試料の出口と、
前記チャンバからガスを排出することを可能にするように動作可能である選択的に閉鎖可能なバルブと、を備える、マイクロ流体チャンバと、
流体が最も上流である1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバに、過剰圧力を加えるように作動可能である加圧システムと、を備える、マイクロ流体システム。
【請求項2】
各マイクロ流体チャンバは、
処理容積を画定し、処理機能を有するマイクロ流体反応器を備え、
前記マイクロ流体チャンバは、流体で連続して配置され、これらの機能の性能を連続的に可能にする、請求項1に記載のマイクロ流体システム。
【請求項3】
各マイクロ流体チャンバは、追加の入口/出口を含むが、そうでなければ前記マイクロ流体システムの周囲環境に対して密封される、請求項1または2に記載のマイクロ流体システム。
【請求項4】
処理すべき流体試料を受け取るように作動可能な1つ以上のマイクロ流体チャンバを備える流体試料入力側と、
処理された流体試料がそこから出力され得る1以上のマイクロ流体チャンバを備える流体試料出力側と、
それらの間に中間に流体で接続されたマイクロ流体チャンバのネットワークであって、前記加圧システムは、前記流体試料入力側の前記1つ以上のマイクロ流体チャンバに過剰圧力を加えるように動作可能であるように構成される、ネットワークと、を画定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項5】
複数のマイクロ流体チャンバを備えるマイクロ流体システムであって、
流体で接続されたネットワークを備える前記チャンバは、
流体が最も上流である1つ以上の入力チャンバであって、各入力チャンバは、その流体試料の入口が処理されるべき流体試料を受け取るように配置されるように構成される、1つ以上の入力チャンバと、
流体が最も下流である1つ以上の出力チャンバであって、各出力チャンバは、その流体試料の出口が処理された流体試料を出力するように配置されるように構成される、1つ以上の出力チャンバと、
複数の中間チャンバであって、各中間チャンバは、前記ネットワーク内の先行チャンバと後続チャンバとの間に流動的に配置され、その流体試料の入口が前記先行チャンバの前記流体試料の出口にマイクロ流体経路によって接続されるように、かつ、その流体試料の出口が先行チャンバの流体試料の入口にマイクロ流体経路によって接続されるようにされる、複数の中間チャンバとを含み、
前記加圧システムは各入力チャンバに過剰圧力を加えるように動作可能である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項6】
各マイクロ流体チャンバは、流体試料の入口、流体試料の出口、および選択的に閉鎖可能なバルブの構成を共に有し、使用時には、過剰圧力が、前記入口で発生する状態で、先行チャンバを介して加え得る場合には、前記バルブが開放構成にある場合には、前記チャンバからガスを排出することによって均等化されるが、前記バルブが閉鎖構成にある場合には、その過剰圧力は、流体が前記チャンバから前記流体試料の出口に押し込まれ、それによって後続チャンバに押し込まれる傾向がある、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項7】
前記マイクロ流体システムは、水平に対する固定の動作方位のために構成され、各マイクロ流体チャンバは、前記バルブが最上に位置し、前記流体試料の出口が最下に位置し、かつ前記流体試料の入口が中間の高さに位置するように、前記流体試料の入口、前記流体試料の出口、および選択的に閉鎖可能な前記バルブの構成を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項8】
前記複数の流体で接続されたマイクロ流体チャンバのうちの少なくとも1つは、第1の処理機能性を有するマイクロ流体反応器を備え、前記マイクロ流体チャンバのうちの少なくとも1つの他のマイクロ流体反応器は、前記第1の処理機能性とは異なる第2の処理機能性を有するマイクロ流体反応器を備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項9】
前記加圧システムは、流体が最も下流である前記マイクロ流体チャンバのうちの1つ以上に過剰圧力を加えるように追加的に作動可能である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項10】
前記マイクロ流体チャンバは、マイクロ流体フィードバック経路内に任意に1以上のさらなるマイクロ流体チャンバを備える前記マイクロ流体フィードバック経路を含むネットワークを形成し、前記マイクロ流体フィードバック経路を通って、流体試料を流体がより下流のチャンバから流体がより上流のチャンバに送ることができる、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項11】
前記加圧システムは、前記マイクロ流体システムの周囲圧力に対して過剰圧力下にあるガス源を備える、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項12】
前記加圧システムは、過剰圧力下で前記マイクロ流体システムのすぐ外部の環境から前記マイクロ流体システムにガスを押し込むように動作可能である、インペラーを備える、請求項11に記載のマイクロ流体システム。
【請求項13】
各々マイクロ流体チャンバを含む複数のマイクロ流体反応器モジュールと、
各マイクロ流体モジュールが受け取られて、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のマイクロ流体システムを形成し得るマイクロ流体フレームワークと、を備える、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のモジュラーマイクロ流体システム。
【請求項14】
各マイクロ流体モジュールが、前記フレームワーク内で交換可能であり、それによって交換可能なモジュールの流体で連続するネットワークを形成するように十分な構造的類似性を有するように構成される、請求項13に記載のモジュラーマイクロ流体システム。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のマイクロ流体システムを提供するステップと、
流体試料を流体が最も上流である前記1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバに供給するステップと、
前記1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバに過剰圧力をかけるための前記加圧システムを動作するステップと、
前記流体で接続されたマイクロ流体チャンバの前記バルブを選択的に動作して、前記流体試料を前記マイクロ流体チャンバの間で連続的に動かすようにするステップと、を有するマイクロ流体方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体システムおよび方法に関する。本発明は、特に、異なる機能を有する複数のマイクロ流体反応器を介して水性試料などの液体試料を連続的にマイクロ流体処理することに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、分析のための処理に関連して特定の利用可能性を見出し、及び任意に、さらに、採取された化学試料又は生物試料の分析を、専用の実験施設から離れた部位、例えば、試料採取部位に近接した、空間的又は時間的に近接した部位、例えば、収集システムとインラインで分析することができる。本発明は、採取された空中浮遊化学種又は生物学的種の処理及び分析に関連して、例えば、空中に浮遊する危険を特定するための特定の利用可能性を見出す。本発明は、分析のための処理、及び任意に、さらに生物試料の分析、および、例えば、遺伝物質を含む試料の処理、及び任意に、さらにシークエンシングによる遺伝物質の分析に対する特定の利用可能性を見出す。
【0003】
化学物質と生体物質の両方の分析のための実験室ベースの技術は比較的十分に確立されている。実験室での適用では、バッチ処理方法論に従うのが一般的であり、試料は現場で採取され、分析のために実験室に送られる。後続の分析のための試料の効率的かつ効果的な収集、特に、その後続の分析のための、どの標的化学種または生物学種も十分な濃度の収集が常に望ましい。
【0004】
本発明は、例えば、環境条件を監視するために、特に、そのような実験室から離れた標的環境における化学物質と生体物質の採取に関するものであり、例えば、大気質を監視し、および/または化学的または生物学的危険性を監視するために、採取した空中の化学種または生物学的種に関するものである。
【0005】
従来の実験室で分散した位置から採取した試料のバッチ処理は、非効率的で遅い場合がある。分析のための処理および任意にさらに採取された化学試料または生物試料の分析を少なくとも部分的に自動化することができるか、および/または、専用の実験施設から離れて実施するように、適合させることができる場合に、特定の利点が生じることができる。これらのステップが、試料採取地点に近接して、例えば、収集システムとインラインで、空間的または時間的に近接して実施することができる場合、特定の利点が生じることができる。
【0006】
これらおよび他の理由から、マイクロ流体「ラボオンチップ」システムは、分析のための処理および一連のシナリオにおける化学試料または生物試料の分析に関連して、増大する適用を見いだし、このような処理が、上記で論じたものを含むがこれらに限定されない従来の本格的な実験室分析を超える利点を生み出す可能性がある。
【0007】
一般に、マイクロ流体工学は確立された概念であり、当業者は、本出願人の発明が対象とするシステムのマイクロ流体準拠と、より大きなスケールの実験室バッチプロセスモジュールとの間の差異を容易に理解するであろう。マイクロ流体システムは、少量の流体を操作し、輸送し、混合し、分離し、または他の方法で、少量の流体を小さい(典型的には、サブミリメートル)スケールで処理する、おなじみのシステムを含み、部分的または完全にラボオンチップ原理に基づく部分的または完全なソリューションを提供する。マイクロ流体工学は、したがって、ラボオンチップ概念が実行されることを可能にする重要な技術である。
【0008】
化学試料及び生物試料を処理する場合、多くのプロセスが、多くの場合、試料に行われる。多くの場合、プロセスごとに異なるハードウェアを実行する必要がある。異なる処理モジュール内に一連のプロセスステップを含むマイクロ流体システムでは、試料を劣化させないタイムリーで効率的な方法で、各モジュールの間に流体を輸送する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
流体試料を輸送する際に克服すべき課題は数多くある。試料の粘度は、全てのステップを通って流体を輸送するのに十分大きな力を必要とし得る。1つのステップの特性を変更すると、他のステップにかかる力に影響が出るため、すべてのコンポーネントに相互依存性があり、最適化が困難になる。
【0010】
これらの課題の1つの結果は、流体がマイクロ流体工学プロセスの段階にいつ到達したかを知ることの困難さである。異なる段階間の異なる圧力降下は、段階間の輸送時間が異なることを意味し、したがって、液体が輸送を受けたかどうかを判断するためにタイミング情報のみに頼ることは最適ではない(また、これは長い輸送時間を許容することをも必要とする。)。
【0011】
これは、センサの使用によってしばしば克服されるが、これらは、システムにタイムラグを追加し、また、余分な構成要素の使用を必要とする。
【0012】
本発明は、これらの欠点の一部または全部を軽減するマイクロ流体システムおよび方法の提供を目的とする。
【0013】
本発明は、特に、分析のための効果的な処理、および、任意にさらに、異なる機能を有する複数のマイクロ流体反応器を連続的に経て収集された化学試料または生物試料分析のためのマイクロ流体システムおよび方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、特に、異なる機能を有するそのような複数のマイクロ流体反応器を連続的に経たマイクロ流体試料を有効に輸送するためのマイクロ流体システムおよび方法を提供することを目的とする。
【0015】
本発明は、特に、分析のための効果的な処理、さらに、任意に、近接した空間的または時間的に試料採取場所に近く、例えば、収集システムとインラインであり、使用するのに役立つ、収集された化学試料または生物試料の分析のためのマイクロ流体システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
最も一般的な第1の態様における本発明によれば、マイクロ流体システムは、
複数の流体で接続されたマイクロ流体チャンバであって、各マイクロ流体チャンバは、
流体試料の入口と、
流体試料の出口と、
前記チャンバからガスを排出することを可能にするように動作可能である選択的に閉鎖可能なバルブと、を備える、マイクロ流体チャンバと、
流体が最も上流である1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバに、過剰圧力を加えるように作動可能である加圧システムと、を備える。
【0017】
各マイクロ流体チャンバは、処理容積を画定し、処理機能を有するマイクロ流体反応器を備えてもよく、前記マイクロ流体チャンバは、連続的に流動的に配置され、これらの機能の性能を連続的に可能にする。各マイクロ流体チャンバは、バルブが開位置にあるとき、チャンバ内の圧力が均等になるように動作可能であるように構成されたバルブ付き出口を備えるが、しかし、そうでなければ前記マイクロ流体システムの周囲環境に対して密封される。マイクロ流体チャンバは、試薬およびそのような機能に関連する出力のための追加の入口/出口を含んでもよいが、しかし、これらは前記マイクロ流体システムの周囲環境に閉鎖されるように再度配置される(ここで、周囲環境は、周囲大気であるか、または閉鎖され、例えば不活性ガスシステムであるかにかかわらず、前記マイクロ流体システムの直ぐ外部の環境を意味する)。
【0018】
このように、システムは、連続したアレイを形成するために一緒に接続された、一連の個々の密封されたマイクロ流体反応器を備える。これはよく知られている。本発明は、第一チャンバに過剰圧力を加えるための加圧システムの提供によって、およびマイクロ流体チャンバからガスを排出することを可能にするように作動可能な各マイクロ流体チャンバ内のバルブの提供によって特徴付けられ、したがって各マイクロ流体チャンバ内の圧力をシステムの周囲環境の圧力と同等にするためにそれを開けるときに作動可能である。
【0019】
使用時には、加圧システムは、好ましくは一定の過剰圧力を、流体が最も上流であるチャンバの内の少なくとも第1のチャンバに加える。これは、一連のチャンバの、上流の流体の端部と下流の流体の端部との間に一定の圧力差を作り出す。次いで、単に、バルブを選択的に開閉することによって、1つのチャンバから次のチャンバへ、および、例えば、1つのプロセスから次のプロセスへ、流体試料を輸送することが可能である。
【0020】
この輸送は、一連のチャンバを介して連続的に、適切に順次バルブの動作によって、および、加圧の作用によって、達成される。チャンバがそのバルブを開く場合、入口における何らかの過剰圧力が、チャンバからのガスのベントによって均等化される場合、流体は、チャンバ内に留まり、流体は、その中に生成される反応器容積のプロセスによって作用され得ることが分かる。バルブが閉じると、チャンバ内の圧力の上昇は、流体をチャンバの出口を介して、それに流体直列の後続チャンバの入口に押し込み、それに先行チャンバの出口が流体的に接続される。従って、典型的な場合には一連のマイクロ流体反応器体積を含む一連のマイクロ流体チャンバを使用して、流体に作用する一連のプロセスのマイクロ流体連鎖を作り出すことができる。
【0021】
類似して、本発明の第2の態様では、マイクロ流体方法は、複数の流体で接続されたマイクロ流体チャンバを提供するステップであって、各マイクロ流体チャンバは、
流体試料の入口と、
流体試料の出口と、
前記チャンバからガスを排出することを可能にするように動作可能である選択的に閉鎖可能なバルブと、を備える、ステップと、
流体が最も上流である1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバに、過剰圧力を加えるように作動可能である加圧システムを提供するステップと、
流体試料を流体が最も上流である前記1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバに供給するステップと、
前記1つ以上の第1のマイクロ流体チャンバに過剰圧力をかけるための前記加圧システムを動作するステップと、
前記流体で接続されたマイクロ流体チャンバの前記バルブを選択的に動作して、前記流体試料を前記マイクロ流体チャンバの間で連続的に動かすようにするステップと、を有する。
【0022】
有利には、第1の態様のシステムおよび第2の態様の方法は、例えば、異なる機能を有する連続したマイクロ流体反応器を備える、連続したマイクロ流体チャンバを通る流体試料の輸送を、効率よく効果的に、しかも可動部品が少なく、提供する。
【0023】
さらに、有利には、流体試料が特定のチャンバに入ったことを感知する必要はない。その位置は、バルブの動作の現在の状態および履歴によって決定することができるからである。したがって、追加のセンサは、流体を追跡するために必要ではなく、プロセス中のタイミング待ち時間が減少する。
【0024】
さらに、有利には、このシステムおよび方法は、準備された自動化の影響を受けやすい。このシステムおよび方法は、分析のための効果的な処理のための遠隔試料収集場所で使用するためのラボオンチップシステムの提供に適用可能であり、所望により、さらに、収集された化学試料または生物試料の分析を、サイトに近い空間的または時間的に、例えば収集システムに沿って、行うことが可能である。
【0025】
本発明の2つの態様の好ましい特徴は、本明細書の考察から理解されるであろう。特に、本発明の第1の態様のシステムおよびその動作の好ましい特性を示す特徴を以下に論じる。本発明の第2の態様の方法のステップの好ましい特性を示す特徴を、類似によって理解することができる。
【0026】
ここでの流体の直列を備える、または連続的または直列的などに接続されるマイクロ流体チャンバへの参照は、本発明が単一の直列アレイに限定されることを必要とすると解釈すべきではない。本発明の原理は、分岐経路および収束経路を有する配置、複数のマイクロ流体チャンバが並列に設けられる配置、フィードバックループを含む配置など、各種より複雑なネットワーク配置に役立つ。
【0027】
本発明の原理をマイクロ流体チャンバのそのようなネットワークに適用するためには、単に、処理すべき流体試料を受け取るように作動可能な1以上のマイクロ流体チャンバを備える流体試料入力側が存在することが必要であり、処理された流体試料が出力され得る1以上のマイクロ流体チャンバを備える流体試料出力側が存在することが必要であり、および、その間に中間的に流体で接続されたマイクロ流体チャンバのネットワークが存在することが必要であり、加圧システムを備えることが必要であり、加圧システムは、流体試料入力側の流体が最も上流であるマイクロ流体チャンバに、過剰圧力を加えるように作動可能であるように構成され、流体試料入力側の流体が最も上流であるマイクロ流体チャンバと、流体試料出入力側の流体が最も下流であるマイクロ流体チャンバとの間に、圧力差を作り出す。
【0028】
従って、本発明の典型的な実施態様において、マイクロ流体システムは複数のマイクロ流体チャンバを備えるマイクロ流体システムであって、流体で接続されたネットワークを備える前記チャンバは、流体が最も上流である1つ以上の入力チャンバであって、各入力チャンバは、その流体試料の入口が処理されるべき流体試料を受け取るように配置されるように構成される、1つ以上の入力チャンバと、流体が最も下流である1つ以上の出力チャンバであって、各出力チャンバは、その流体試料の出口が処理された流体試料を出力するように配置されるように構成される、1つ以上の出力チャンバと、複数の中間チャンバであって、各中間チャンバは、前記ネットワーク内の先行チャンバと後続チャンバとの間に流動的に配置され、その流体試料の入口が前記先行チャンバの前記流体試料の出口にマイクロ流体経路によって接続されるように、かつ、その流体試料の出口が先行チャンバの流体試料の入口にマイクロ流体経路によって接続されるようにされる、複数の中間チャンバとを含み、前記加圧システムは各入力チャンバに過剰圧力を加えるように動作可能である。
【0029】
このようなネットワーク内のチャンバは、単一のこのような先行チャンバおよび単一のこのような後続チャンバに接続されてもよく、または、複数のこのような先行チャンバおよび/または複数のこのような後続チャンバに接続されてもよい。
【0030】
一般的に言えば、マイクロ流体工学は確立された概念であり、当業者は、本出願人の発明を含むモジュールのマイクロ流体準拠と、より大きなスケールの実験室バッチプロセスモジュールとの間の差異を完全に理解するであろう。マイクロ流体システムは、少量の流体を操作し、輸送し、混合し、分離し、または他の方法で、小さい(典型的には、サブミリメートル)スケールで処理する、おなじみのシステムを含む。本発明のシステムの各チャンバは、いくつかのそのようなマイクロ流体機能性を有するという点で、マイクロ流体反応器として適合する。各マイクロ流体チャンバは、マイクロ流体プロセスが実施され得る反応器容積を規定し、したがって、マイクロ流体反応器と称され得る。本発明は、公知のそのようなマイクロ流体反応器に適用可能であり、特に、複数の機能性を有する複数の反応器を含むことが好ましい。マイクロ流体フローチャネルはマイクロ流体反応器を接続する。
【0031】
本発明の原理による各マイクロ流体チャンバは流体試料入口、流体試料出口、および選択的に閉鎖可能なバルブの構成を有し、その構成は、使用時に、一緒に用意され、過剰圧力が流体試料入口で発生する状態で、先行チャンバを介して加え得る場合には、バルブが開放構成にあるときには、チャンバからガスを排出することによって過剰圧力が均等化されるが、バルブが閉鎖構成にあるときには、過剰圧力は、チャンバから流体試料出口内に流体を押し込み、それによって後続チャンバに流体を押し込む傾向がある。
【0032】
可能な配置では、マイクロ流体チャンバは、流体試料入口、流体試料出口、およびバルブの適宜並置によって、必要な効果を供するように構成される。例えば、システムは、水平に対して固定された動作方向に構成され、バルブへのチャンバ出口が最上に配置され、流体試料出口が最下に配置され、流体試料入口が中間高さにあり、全てがその動作方向を基準とする。
【0033】
加えてまたは別法として、マイクロ流体チャンバの構成の他の特徴、および/または、例えば、マイクロ流体チャンバの流体試料入口および/または流体試料出口を通る流れを選択的に制限するための流量制御アクチュエータなどの他の二次アクチュエータが提供されてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の特に有利な特徴は、本発明のシステムにおいて、複数の異なるマイクロ流体プロセスを連続する反応器のステージで行うことを可能にすることである。
【0035】
したがって、本システムの好ましい実施態様では、複数の流体で接続されたマイクロ流体チャンバのうちの少なくとも1つは、第1のプロセス機能を有するマイクロ流体反応器を備え、前記マイクロ流体チャンバのうちの少なくとも1つの他のものは、第1のプロセス機能とは異なる第2のプロセス機能を有するマイクロ流体反応器を備える。さらにより好ましい実施態様では、複数の異なる機能性を提供することができる。
【0036】
このようにして、連続するプロセス機能性を連続するチャンバに設けることができる。これは、複数のチャンバが同じ機能性も有するシステムの提供を排除しない。例えば、複数のチャンバは、直列および/または同等の機能を有する並列に設けられてもよい。
【0037】
任意の実施態様では、加圧システムは、流体が最も下流であるマイクロ流体チャンバのうちの1つ以上に過剰圧力を加えるように付加的に動作可能であってもよい。
【0038】
これの発明は、一連のチャンバの、流体の上流端部と流体の下流端部との間に、逆方向に一定の圧力差を作り出すことを可能にすることであり、より高い圧力は、流体の下流端部にある。有利には、システム内の流体の移動方向は、したがって、例えば、所与のチャンバまたは一連のチャンバの処理機能を複数の機会に使用することが所望される場合、使用時には、逆にすることができる。
【0039】
マイクロ流体チャンバのネットワークは、マイクロ流体フィードバック経路を含んでもよく、フィードバック経路内に1以上のさらなるマイクロ流体チャンバを任意に備え、この経路を通して、圧力差が上記のように逆方向にある場合、またはその反対で、流体試料は、流体がより下流のチャンバから流体がより上流のチャンバへ送られ得る。
【0040】
流体がより上流の側への流体がより下流の側に対して、この文脈の参照がなされる場合は理解されるであろうし、これは、未処理流体の初期入力から処理流体の最終出力までの流れの基本方向を基準とし、反対の流れに関しては逆方向を有し、含む。圧力差に対する逆圧力差はこの反対方向において過剰圧力を含む。
【0041】
加圧システムは、例えば、圧力源と、任意選択的にさらに圧力調整器とを備える。圧力源は、例えば、システムの周囲圧力に対する過剰圧力下にあるガス源である。加圧システムは、例えば、インペラーを備えており、加圧システムは、例えば、インペラーであり、インペラーは、過剰圧力のガスをマイクロ流体システムのすぐ外部の環境からマイクロ流体システムにガスを押し込んで、加圧すべきチャンバ内に押し込むように動作可能であるように構成することができる。
【0042】
有利には、本発明のマイクロ流体システムは、モジュラーシステムとして開発されることに特に適している。
【0043】
例えば、特に好ましい実施態様では、マイクロ流体システムは、本明細書に記載されるように各々マイクロ流体チャンバを含み、特定の処理機能をモジュール化する更なる部品を任意選択的にさらに含む、複数のマイクロ流体反応器モジュールと、各マイクロ流体モジュールが受け取られて、本発明の第1の態様によるマイクロ流体システムを形成し得るマイクロ流体フレームワークと、を備える、
【0044】
都合のよいことに、各そのようなマイクロ流体モジュールは、フレームワーク内で交換可能であり、それによって交換可能なモジュールの流体で連続するネットワークを形成するために、十分な構造的類似性を有するように構成される。このようにして、所望により、異なる処理機能を有する複数のモジュールを交換することにより、複数の異なる機能性を付与することができる標準的なフレームワークを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
以下、添付図面の図1乃至図5を参照して、本発明を例として説明する。
【0046】
図1】左から右への流体の流れを伴う、本発明の原理に従ったマイクロ流体反応器の直鎖の単純な概略図である。
図2】この概念の適用例を示す。
図3図2の実施例で使用するためのバイオ反応器の実施例を示す。
図4】追加の逆流体流動機能を有するマイクロ流体反応器の直鎖の単純な概略図を示す。
図5】マイクロ流体反応器の異なる配列された鎖への図4の概念の適用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、バイオ反応器を含むマイクロ流体反応器の簡単な配置を参照して論じられる。これは一例としてであり、本発明の原理は、任意の処理機能性のマイクロ流体処理チャンバ、特に、分析のための処理および調製、および/または流体化したおよび例えば任意の源の含水の化学試料および生物試料の分析のための処および調製に適用されることが容易に理解されるであろう。議論されるシステムは、特に、自動化処理および例えば、それらの収集の部位に近接する環境試料の分析に適しており、適切な試料収集システムに合致して、例えば、直接的な流体と関連して提供され得る。
【0048】
図1の基本的な概略図は、個々の密閉されたマイクロバイオ反応器の単純な直列配置を示しており、図示のように一緒にマイクロ流体的に接続され、各々をバルブ出口と共に、それを通って、バルブが開いた状態で、チャンバに排出孔をつけることができる(図1には示されていない)。圧力手段(図1には示されていない)が左側への圧力が高い差分の圧力を作り出す。連鎖の一方の端部から他方の端部までに一定の圧力差を有することによって、バルブを開閉することによって、一方のバイオ反応器から次のバイオ反応器に流体を移すことができる。
【0049】
最初の例では、バイオ反応器のバルブが環境に対して開いている場合、圧力源は、その入口を介してバイオ反応器に液体を押し込むことができる。バルブを開くと、流体はバイオ反応器内に留まり、流体はバイオ反応器のプロセスによって作用することができる。バルブを閉じると、圧力がバイオ反応器内に蓄積され、流体は、連鎖内の次のバイオ反応器に向かってバイオ反応器の出口に押しやられる。したがって、一連のバイオ反応器を使用して、流体に作用する一連のプロセスのマイクロ流体鎖を作り出すことができる。
【0050】
バルブと例えば適切なインペラーである圧力源を示すセットアップ例を図2に示し、異なる機能を有する異なるバイオ反応器の例を図3に示す。
【0051】
この基本的なセットアップでは、2つ以上の密閉バイオ反応器を直列に実装し、そのうちの一定の圧力源は第一の反応器に接続し、各バイオ反応器は、最低限、バイオ反応器から空気を排出することを可能にする入口、出口および制御可能なバルブを含む。
【0052】
この設定により、特定のバイオ反応器に流体がいつ入ったかを感知する必要はない。その位置は、バルブの開および閉構成の電流および履歴によって決定することができるからである。従って、流体を追跡するために付加的なセンサが必要とされず、プロセスにおいてタイミング待ち時間が短い。
【0053】
図2および図3に示すようなバイオ反応器のオプションとしての追加は、追加の入口/出口を設けることである。例えば、第二の入口は試薬をバイオ反応器に加えることを可能にし、又は第二の出口はバイオ反応器からの廃棄物を集めるために使用することができる。いくつかの実施形態では、これは、追加の入口または出口の両方として作用するバイオ反応器への第4の接続部であってもよく、または、バイオ反応器専用の第4および第5の接続部であってもよい。追加の入口および出口は、望まない場合に流体が漏出するのを防止するのに十分な抵抗を有するように設計されるべきである。
【0054】
任意の実施形態では、バイオ反応器のシリーズにわたる圧力差の方向を切り替えることができるので、例えば、バイオ反応器の機能を複数の機会に使用したい場合に、流体の移動方向を逆にすることができる。これは、図4の単純な概略図に示されている。
【0055】
各種任意の実施形態において、例えば、これを利用するために、バイオ反応器の連鎖は直線状でなく、同じバイオ反応器の複数の使用を促進するために異なる分岐を含むか、あるいは、以前のバイオ反応器での結果に応じて、流体が取るために異なる経路を選択することができる。図5に示されている精密化は、逆のマイクロ流体流路内に構築され、この場合は、さらなるバイオ反応器を含み、このバイオ反応器を介して、その逆方向の流れがもたらされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】