(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】再生ポリプロピレンのプロセス
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20240318BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240318BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B29B17/00
C08L23/08 ZAB
C08L23/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560769
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2022058988
(87)【国際公開番号】W WO2022214473
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512264611
【氏名又は名称】ネクサム ケミカル エイビー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアソン アーバン
【テーマコード(参考)】
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F401AA10
4F401BA13
4F401CA58
4F401CB01
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4J002BB102
4J002BB121
4J002BN042
(57)【要約】
加水分解性ケイ素含有基を含むエチレンコポリマー(B)を添加することによって再生された消費後および/または工業化後のポリプロピレンの特性を改善する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ポリプロピレン組成物(P)が、
a)少なくとも50重量%の再生ポリプロピレン(A)と、
b)加水分解性ケイ素含有基を含む0.5~15重量%のエチレンコポリマー(B)と
を含み、
前記再生ポリプロピレン組成物(P)を配合するステップを備え、
加水分解性ケイ素含有基を含む0.5~15重量%のエチレンコポリマー(B)によって処理された前記再生ポリプロピレン組成物(P)が、前記再生ポリプロピレン(A)と比較して少なくとも15%低いMFR
2を有する、ポリプロピレン組成物(P)を再生するプロセス。
【請求項2】
前記再生ポリプロピレン組成物(P)が縮合触媒を含まない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記再生ポリプロピレン(A)の量が、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記加水分解性ケイ素含有基を含むコポリマー(B)の量が、2~10重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記配合するステップの温度が、230℃以上、好ましくは240℃以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
加水分解性ケイ素含有基を含むエチレンコポリマー(B)がLDPEである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
加水分解性ケイ素含有基を含むコポリマー(B)が、グラフトされたポリエチレンである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスが、過酸化物および/または過酸化物残留物を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記加水分解性ケイ素含有基を含むコポリマー(B)が、過酸化物または過酸化物残留物を含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
a)少なくとも50重量%の再生ポリプロピレン(A)と、
b)加水分解性ケイ素含有基を含む0.5~15重量%のエチレンコポリマー(B)と
を含み、
再生ポリプロピレン組成物(P)が配合されており、配合後のポリプロピレン組成物(P)が、0.5~5g/10分のMFR
2を有する、再生ポリプロピレン組成物(P)。
【請求項11】
前記再生ポリプロピレン組成物(P)が縮合触媒を含まない、請求項10に記載の再生ポリプロピレン組成物(P)。
【請求項12】
再生ポリプロピレン組成物(P)が、
a)少なくとも50重量%の再生ポリプロピレン(A)と、
b)加水分解性ケイ素含有基を含む0.5~15重量%のエチレンコポリマー(B)と
を含む、再生ポリプロピレン組成物(P)のためのMFR
2改質剤としての、加水分解性ケイ素含有基を含むエチレンコポリマー(B)の使用。
【請求項13】
前記再生ポリプロピレン組成物(P)が縮合触媒を含まない、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費後および/または工業化後のポリプロピレンを再生するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の再生(recycling)は、ここ数十年でますます一般的な慣行になっている。プラスチック材料の再生は重要であり、世界中の多くの工業および家庭で広く行われている。ボトル、袋、および製品パッケージなどの、多くの日用品がプラスチック材料から作製されている。ポリマーを再生し、再利用することが重要である。
【0003】
しかしながら、再生プラスチックの品質を監視し、保証する必要がある。ポリプロピレンの再生において特に重要な目的は、加工特性を満たすことである。ポリプロピレンは様々なプロセスから再生される。再生ポリプロピレン(recycled polypropylene)は少なくとも一度使用されている。再生利用ポリプロピレン(reclaimed polypropylene)は、消費後および/または工業化後の使用に由来する。ほとんどの再生プラスチックは単一のストリームに混合され、資源回収施設(MRF)によって回収され、処理される。MRFでは、材料は選別、洗浄、粒状化され、再販売のためにパッケージングされる。プラスチックは、高密度ポリエチレン(HDPE)もしくはポリ(エチレンテレフタレート)(PET)などの個別の材料、またはポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、およびポリアミド(PA)などの他の一般的なプラスチックの混合ストリームに選別される。次いで単一または混合ストリームはさらに選別、洗浄され、選択された目的に適したペレットに再処理される。
【0004】
再生プラスチックは主に均一なストリームに選別され、水溶液および/または苛性溶液で洗浄されるが、最終的に再処理されたペレットは他のプラスチックおよび様々な特性で汚染されたままである。例えば、再生ポリプロピレンのストリームには常に少量のポリエチレンが存在するであろう。
【0005】
再生ストリームの特性が影響するため、再生ポリプロピレンの有用性は異なる。これに対する1つの解決策は、全てのロットの特性を試験することである。これは困難で、費用がかかり、非現実的である。再生ポリプロピレンストリームの安定した特性を確保するには、再生ポリプロピレンが用途の仕様を満たすことを保証する弾力的な解決策を見つけなければならない。
【0006】
特許文献1は、食品用途のためにポリプロピレン組成物を再生するためのプロセスを開示している。しかしながら、特定の用途向けに、より多用途で有用なポリプロピレン製品を実現するために、再生ポリプロピレンを改質したいという要望が依然として存在する。
【0007】
特許文献2は、加水分解性ケイ素含有基を有するオレフィンホモポリマーまたはコポリマー(A)と、表面にシラノール基またはその前駆体を含有する無機鉱物充填剤(B)とを含むバージンポリオレフィンベース樹脂を含むポリオレフィン組成物に関する。さらに、特許文献2は、加水分解性ケイ素含有基を含むエチレンコポリマー(B)を縮合触媒と組み合わせることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2012/117250 A1号
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0015330号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、再生ポリプロピレンからポリプロピレン組成物(P)を製造するための方法に関する。特に、本発明は、ポリプロピレン組成物(P)の出発材料として使用される再生ポリプロピレンよりも低いメルトフローレート(MFR2)を有する再生ポリプロピレンからポリプロピレン組成物(P)を提供するための方法に関する。再生された消費後および/または工業化後のポリプロピレンの特性は、加水分解性ケイ素含有基を含むエチレンコポリマー(B)を添加することによって改善される。
【0010】
ポリプロピレンを再生すると、MFR2が増加する。多くの用途では低いMFR2が要求されるため、これにより再生ポリプロピレンの有用性が低下する。
【0011】
バージンポリプロピレンの工業生産では、MFR2は生産パラメーターによって制御される。したがって、バージンポリプロピレンのMFR2を変更する必要はない。
【0012】
本発明の目的は、再生ポリプロピレン組成物(P)のMFR2を低下させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
再生されるポリプロピレン製品は、多くの場合、選択された目的に適したペレットに再処理される。ポリプロピレン製品の単一供給源または混合供給源からのプロセスストリームは造粒に使用することができる。造粒は、プラスチックを配合してペレット化することを意味する。これにより、プラスチックのMFR2が増加し、これは一般にプラスチックの劣化と呼ばれる。しかしながら、加水分解性ケイ素含有基を含むエチレンコポリマー(B)を導入することにより、配合中にMFR2が低下することが判明した。適切に使用されるこのようなエチレンコポリマー(B)は、例えば欧州特許第2582743 A1号に開示されている。配合は、ポリマーが混合される配合機中で適切に行われる。配合は、適切な押出機で効率的に混合して行われる。均質なポリマー溶融物および均一なポリマー特性を得るには、適切なレベルの混合が必要とされる。
【0014】
本発明の再生ポリプロピレンは、例えば、様々な用途、例えば、シートおよび熱成形、パイプ、ならびにブロー成形用途を目的としている。これらの全ての用途では、再生ポリプロピレン組成物(P)の低いMFR2を必要とする。
【0015】
ある用途では、再生ポリプロピレンは、典型的には300~2000mmの幅を有するシートに押し出される。シートは切断され、熱成形により所望の形状に成形される。このプロセスは、再生ポリプロピレンのMFR2が低く、制御されていることが必要とされる。再生ポリプロピレンの溶融強度は、再生ポリプロピレン組成物(P)のMFR2に依存する。ポリプロピレンが再生されると鎖の切断が起こる。鎖の切断によって形成された短い鎖により、再生ポリプロピレンのMFR2が増加する。これにより、再生ポリプロピレンの溶融強度が損なわれる。
【0016】
熱成形およびパイプなどの用途のためのMFR2は典型的には5g/10分未満である。再生ポリプロピレンは射出成形などの他の用途に使用することができる。MFR2は、最終製品の加工性および機械的強度にとって重要である。
【0017】
パイプ用途では、パイプの寸法安定性にとって溶融強度が重要である。パイプが押し出されるとき、パイプ壁の内側には溶融ポリマーが存在する。溶融強度が低いと、溶融したポリマーがパイプ壁の内側に流れ込み、パイプの底部が厚くなる。パイプの機械的特性を満たすためには、低いMFR2が必要とされる。
【0018】
したがって、本発明は、再生ポリプロピレン(A)およびコポリマー(B)からポリプロピレン組成物(P)を再生するプロセスに関し、再生ポリプロピレン組成物(P)は、
a)少なくとも50重量%の再生ポリプロピレン(A)と、
b)加水分解性ケイ素含有基を含む0.5~15重量%のエチレンコポリマー(B)と
を含み、
前記再生ポリプロピレン組成物(P)を配合し、加水分解性ケイ素含有基を含む0.5~15重量%のエチレンコポリマー(B)によって処理された再生ポリプロピレン組成物(P)は、再生ポリプロピレン(A)と比較して少なくとも15%低いMFR2を有する。
【0019】
本発明の目的は、再生ポリプロピレン組成物(P)のMFR2を制御することである。再生ポリプロピレン(A)は、様々な再生プロセスにより得られる。このようなプロセスの例は、消費後の再生または工業化後の再生から得られる再生利用ポリプロピレンである。再生ポリプロピレンの物理的特性は供給源によって異なる。したがって、本発明の目的は、再生ポリプロピレンのMFR2の効率的で、単純で、かつ信頼性のある制御を提供することである。この目的は、加水分解性ケイ素含有基を含む十分な量のエチレンコポリマー(B)を添加することにより達成される。
【0020】
ポリプロピレンおよびポリエチレンの配合は十分に安定した技術である。したがって、本発明の1つの利点は、本発明を現在の押出装置で実施できることである。
【0021】
本発明はさらに、再生ポリプロピレン組成物(P)に関し、その再生ポリプロピレン組成物(P)は、
a)少なくとも50重量%の再生ポリプロピレン(A)と、
b)加水分解性ケイ素含有基を含む0.5~15重量%のエチレンコポリマー(B)と
を含み、
再生ポリプロピレン組成物(P)は配合されており、配合後のポリプロピレン組成物(P)は、1~5グラム/10分のMFR2を有する。
【0022】
本発明はまた、再生ポリプロピレン組成物(P)のためのMFR2改質剤としての、加水分解性ケイ素含有基を含むエチレンコポリマー(B)の使用にも関し、その再生ポリプロピレン組成物(P)は、
a)少なくとも50重量%の再生ポリプロピレン(A)と、
b)加水分解性ケイ素含有基を含む0.5~15重量%のエチレンコポリマー(B)と
を含む。
【0023】
本明細書で使用する場合、「再生ポリマー」という用語は、以前の目的のために使用され、その後さらなる処理のために回収されたポリマーを指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「再生ポリプロピレン」という用語は、以前の目的のために使用され、その後さらなる処理のために回収されたポリプロピレンを指す。再生ポリプロピレンは、再生プロセスのために規定されたストリームに選別および集約されなければならない。
【0025】
本明細書で使用する場合、「消費後(post-consumer)」という用語は、最終消費者が消費財または製品に材料を使用した後に発生する材料の供給源を指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、「消費者後再生」(post-consumer recycle:PCR)という用語は、最終消費者が材料を使用し、廃棄物のストリームに材料を廃棄した後に生成される材料を指す。
【0027】
本明細書で使用する場合、「工業化後(post-industrial)」という用語は、商品または製品の製造中に発生する材料の供給源を指す。
【0028】
本明細書で使用する場合、「再生ポリプロピレン(recycled polypropylene)」という用語は、再生利用ポリプロピレン、または消費後の再生ポリプロピレンもしくは工業化後のポリプロピレンから得られる。そして、再生ポリプロピレンは、新たな製品の製造に使用される原材料になる。
【0029】
ポリプロピレンは少なくとも50重量%のプロピレンモノマーを有する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一実施形態では、再生ポリプロピレン(A)の量は、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは90重量%である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、再生ポリプロピレンのMFR2は、再生ポリプロピレン(A)と比較して少なくとも20%低く、より適切には少なくとも30%低い。
【0032】
ポリプロピレン組成物(P)は合計100%となるものとする。ポリプロピレン組成物(P)は、添加物(additivities)、顔料、および他のポリマー画分をさらに含むことができる。ポリプロピレン組成物(P)は、顔料、適切にはカーボンブラックを含むことができる。これにより、再生ポリプロピレン組成物(P)の密度が増加する。添加剤(additives)はマスターバッチによって適切に添加される。さらなるポリマー画分が再生ポリプロピレン組成物(P)に添加される場合、適切なバージンポリプロピレンまたはポリエチレンが添加される。最も適切なのは、さらなるポリマー画分を添加しないことである。
【0033】
一実施形態では、加水分解性ケイ素含有基を含むコポリマー(B)の量は、1~10重量%、より適切には2~7重量%である。コポリマー(B)の量は、再生ポリプロピレン組成物(P)の所望のMFR2に応じて決定される。ポリプロピレン組成物(P)の所望のMFR2は、再生ポリプロピレン組成物(P)の最終用途によって決定される。再生ポリプロピレン組成物(P)のMFR2は、適切には1~10グラム/10分のMFR2、より適切には1~5グラム/10分、最も適切には1~3グラム/10分のMFR2を有する。本発明の目的は、加水分解性ケイ素含有基を含む少量のコポリマー(B)を有することである。これにより、配合プロセスが改善される。これにより、より単純で、より安定し、より均質な組成物が得られる。ポリエチレン中の加水分解性ケイ素含有基の量は、0.1~5重量%、より適切には0.5~2重量%である。
【0034】
本発明の別の実施形態では、配合温度は200℃以上である。再生ポリプロピレン組成物(P)は、配合機内で少なくとも200℃の温度で少なくとも2つのゾーンで配合される。本発明のより適切な実施形態では、少なくとも2つのゾーンは230℃以上であり、さらにより適切な2つのゾーンは240℃以上である。再生ポリプロピレン組成物(P)は、配合機内で270℃未満、より適切には260℃未満の温度で少なくとも2つのゾーンで配合される。配合ユニット内の滞留時間は少なくとも1分以上であるべきである。
【0035】
再生ポリプロピレン(A)は、消費後の再生により得られる。再生ポリプロピレン(A)は、工業化後の再生により得られる。適切な実施形態では、再生ポリプロピレン(A)は、消費後の再生からのものである。再生ポリプロピレン(A)は様々なポリプロピレンの混合物であり、他の一般的なプラスチックの他の混合ストリームから汚染されているため、これはより要求の厳しいプロセスである。
【0036】
本発明の別の実施形態では、加水分解性ケイ素含有基を含むエチレンコポリマー(B)は、低密度ポリエチレン(low-density polyethylene:LDPE)である。LDPEは再生されていてもよいか、またはバージンであってもよい。バージン(virgin)とは、ポリマーが使用されていないことを意味する。加水分解性ケイ素含有基を含む再生エチレンコポリマー(B)の欠如により、バージンの供給源を使用することが最も適切である。LDPEは高圧プロセスで製造される。加水分解性ケイ素含有基を含むバージンエチレンコポリマー(B)を使用する別の理由は、使用により反応性が減少することである。
【0037】
本発明の別の実施形態では、加水分解性ケイ素含有基を含むコポリマー(B)は、グラフト(graft)されたポリエチレンである。ポリエチレンは、周知であるエチレン-ビニルシランなどのシラン含有基でグラフトされる。
【0038】
本発明は、適切には、過酸化物および/または過酸化物残留物を含まない(free from peroxide and/or peroxide residues)。過酸化物および/または過酸化物残留物は、反応性配合の様々なステップから発生する。ポリプロピレンに過酸化物を反応性に配合して、MFR2を増加させることができる。過酸化物はポリプロピレン鎖を切断する。上述したように、再生ポリプロピレンは、通常、少量のポリエチレンを含む。ポリエチレンはバージンポリプロピレンに由来するものであってもよい。エチレンは一般にポリプロピレンのコモノマーであるか、またはポリエチレンが耐衝撃性改良剤としてポリプロピレンに添加されているか、または再生ポリプロピレンの不十分な選別に由来している。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、プロセス全体に過酸化物または過酸化物残留物を含まない。加水分解性ケイ素含有基を含むコポリマー(B)は適切には、過酸化物または過酸化物残留物を含まない。加水分解性ケイ素含有基を含むコポリマー(B)は、ポリエチレン、適切には高圧プロセスで製造されるLDPEであることを意味する。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、再生ポリプロピレン組成物(P)は縮合触媒を含まない(free from condensation catalyst)。縮合触媒の目的は、縮合反応によって加水分解性ケイ素含有基を架橋することである。しかしながら、縮合触媒は環境に有害であるか、または強酸を含むため、縮合触媒を回避することが好ましい。
【0041】
本発明の目的は、再生ポリプロピレン組成物(P)から製造された物品が実質的に臭気がなく、臭いおよび機械的特性に関してバージンポリプロピレンから製造された物品と同等であることである。
【0042】
配合後のポリプロピレン組成物(P)は、適切には1~5グラム/10分のMFR2、より適切には1~3グラム/10分のMFR2、最も適切には1~2グラム/10分のMFR2を有する。
【0043】
再生ポリプロピレンの特性は様々である。再生ポリプロピレンの密度の変動は、890kg/m3~990kg/m3である。色は何でもよいが、ほとんどは黒である。灰分(ash content)は2重量%未満であり、再生ポリプロピレン組成物(P)は、ほとんどがペレットまたは顆粒の形態である。水分含有量は0.1重量%未満である。再生ポリプロピレン組成物(P)の大部分の特性は再生ポリプロピレンと同様である。
【0044】
再生ポリプロピレン組成物(P)は、適切にはシートを押し出してそのシートを熱成形する用途に使用される。
【0045】
本発明はまた、再生ポリプロピレン組成物(P)を添加するプロセスにも関する。酸化防止剤は、加工中の劣化と、完成品のその後の使用中の酸化とを最小限に抑えるために添加される。本発明に関して、加工中にMFRの増加につながる劣化の程度を最小限に抑えるために酸化防止剤の存在が重要であることを強調することが重要である。これは再生ポリプロピレンに有効である。しかしながら、酸化防止剤の存在は、本発明で論じた効果と同様のMFRの増加をもたらさない。さらに、再生材料に酸化防止剤を添加することが適切である。これにより、シラン基含有ポリエチレンの添加に課されるMFRの減少に対抗する鎖切断の効果が減少する。適切なフェノール系酸化防止剤のリストは、Irganox(登録商標) 1010、Irganox B215、Irganox B225、Irganox E210、Songnox 1076、Songnox 1330およびAnox 20である。適切なホスファイト系酸化防止剤のリストは、Irgafos(登録商標) 168、Songnox 1680、Songnox PQおよびAlkanox 240である。好ましい酸化防止剤は、Irganox 1010およびIrgafos 168の組み合わせである。一実施形態では、本発明は、
a)少なくとも50重量%の再生ポリプロピレン(A)と、
b)加水分解性ケイ素含有基を含む0.5~15重量%のエチレンコポリマー(B)と
を含む再生ポリプロピレン組成物(P)のMFR2を制御するためのプロセスであって、
i)再生ポリプロピレン(A)のMFR2を測定するステップと、
ii)加水分解性ケイ素含有基を含むエチレンコポリマー(B)を添加するステップと、
iii)再生ポリプロピレン組成物(P)を配合するステップと
を含み、
エチレンコポリマー(B)の量は、再生ポリプロピレン組成物(P)の所望のMFR2に基づく、プロセスである。
【0046】
測定方法
メルトフローレート(melt flow rate:MFR2)はISO 1133に従って測定され、g/10分で示される。MFR2はポリマーの流動性、したがって加工性の指標である。メルトフローレートが高くなるほど、ポリマーの粘度は低くなる。ポリプロピレンのMFR2は、230℃の温度および2.16kgの荷重で測定され、ポリエチレンのMFR2は、190℃の温度および2.16kgの荷重で測定される。少なくとも50重量%のポリプロピレンを含む組成物の全ての例は230℃で測定される。
【0047】
材料
EVSは、Borealisから市販されているLE-4423である。EVSは、加水分解性ケイ素含有基を含む低密度ポリエチレンコポリマーである。コポリマーは高圧反応器で製造される。ポリマーの密度は923kg/m3であり、1.0g/10分のMFR2を有する。
【0048】
再生ポリプロピレンポリマー1は、2.57g/10分のMFR2を有する。ポリマーは、様々なプラスチックのポリプロピレン物品を収集することによって得られる。ポリプロピレンは消費後のプロセスに由来する。再生ポリプロピレンポリマー1は少量のポリエチレンを有する。
【0049】
再生ポリプロピレンポリマー2は、15.0g/10分のMFR2を有する。ポリマーは様々なポリプロピレン物品を収集することによって得られる。ポリプロピレンは消費後のプロセスに由来する。再生ポリプロピレンポリマー2は少量のポリエチレンを有する。
【0050】
再生ポリプロピレンポリマー3(PPベースの熱可塑性オレフィン)は、2.4g/10分のMFR2を有する。このポリマーは、様々な工業化後のポリプロピレン物品を収集することによって得られる。
【0051】
LDPEは市販されているFA3227である。FA3227は、922kg/m3の密度、および0.3グラム/10分のMFR2を有する低密度ポリエチレンである。
【0052】
10重量%の添加剤を含むIrganox 1010のマスターバッチ。
【0053】
10重量%の添加剤を含むIrgafos 168のマスターバッチ。
【0054】
実施例
表1に示す組成物を、190、220、230、230℃の温度設定で18mmのAxon押出機25Dで配合した。滞留時間は1分20秒である。
【0055】
【0056】
比較例1(比較例1)では、再生ポリプロピレンポリマー1が配合されており、配合後のMFR2がわずかに増加している。これは、配合機内でポリマー鎖の劣化が起こるためである。
【0057】
比較例2では、再生ポリプロピレンポリマー1が、低いMFR2を有するLDPEと一緒に配合されている。LDPEおよびEVSのMFR2は190℃で測定されることに留意されたい。実施例1(inventive example 1)では、LDPEがEVSに変更されている。たとえ半分の量のEVSが添加されていても、EVSがLDPEよりも高いMFR2を有するにもかかわらず、減少したMFR2の効果はより高い。実施例2および3では、さらにEVSが添加されている。実施例4では、別の再生PPを使用した。これは、本発明が再生PPの開始MFR2とは独立して作用することを示している。
【0058】
実施例2および3に示されるように、MFR2の減少は、EVSの量が多いほど大きくなる。
【0059】
相対差は、再生ポリプロピレン組成物(P)のMFR2を再生ポリプロピレン(A)のMFR2で割った比から100%を引いた値として計算される。
【0060】
表2の例は、18mmのAxon押出機25Dで異なる温度設定で配合された:
設定1 170、180、190、190℃
設定2 190、200、210、210℃
設定3 210、220、230、230℃
設定4 230、240、250、250℃
設定5 250、260、270、270℃
【0061】
【0062】
表2では、配合機の温度設定を変更している。温度設定を高くすると、再生ポリプロピレン組成物(P)のMFR2が減少する。実施例9では、MFR2の減少が止まっている。最適温度は250℃である。配合機内の溶融物の温度は、押出機のダイの中央に一時的に挿入されている外部温度装置によって確認されている。
【0063】
表3では、安定剤が添加されている。組成物は、190、220、230、230℃の温度設定で18mmのAxon押出機25Dで配合された。溶融物の滞留時間は1分20秒と推定される。
【0064】
【0065】
比較例4に示されるように、添加剤の添加はMFR2を変化させなかったが、実施例9のように添加物を添加すると、MFR2は、酸化防止剤の添加剤を含まない実施例2と比較して実質的に同じままである。
【0066】
表4に、工業化後のポリプロピレン組成物の例を示す。
【0067】
【0068】
MFR2の変化は、工業化後の再生ポリプロピレン組成物で測定した。
【国際調査報告】