(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】音響機械センサーおよびそのアプリケーション
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
A61B5/11 230
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561365
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2022023397
(87)【国際公開番号】W WO2022216650
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513181894
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTHWESTERN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケウン・サン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ユン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョヨン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エー・ロジャーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュアイ・シュ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB11
4C038VB12
4C038VB13
4C038VC20
(57)【要約】
本発明は一態様において、音響機械センサーに関係し、これは生理学的プロセスの振動および運動シグネチャを動作可能に検出するための少なくとも1つの慣性測定ユニット(IMU)と、少なくとも1つのIMUからデータを受信し、前記受信されたデータを処理するために前記少なくとも1つのIMUに結合されたマイクロコントローラユニットと、ワイヤレスデータ伝送のためのワイヤレス通信システムとを備える複数の電子コンポーネントとを備える。新規性のある音響機械センサーは、掻痒を引き起こす病状に対する薬物の有効性の評価から、疾患の重症度および治療反応のモニタリングに至る幅広いアプリケーションを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響機械センサーであって、
引っ掻く活動または擦る活動を含む生理学的プロセスの振動および運動シグネチャを動作可能に検出するための少なくとも1つの慣性測定ユニット(IMU)と、
前記少なくとも1つのIMUからデータを受信し、前記受信されたデータを処理するために前記少なくとも1つのIMUに結合されたマイクロコントローラユニット(MCU)と、ワイヤレスデータ伝送のためのワイヤレス通信システムとを備える複数の電子コンポーネントとを具備し、
前記音響機械センサーは、前記少なくとも1つのIMUから導出される約100Hz未満の低周波と約100Hzを超える高周波の両方の信号とを測定するように構成されており、
前記音響機械センサーは、高周波信号および低周波信号の両方をキャプチャするために前記少なくとも1つのIMUを皮膚に結合することを可能にするように皮膚装着され、
高周波信号および低周波信号は、引っ掻く活動または擦る活動としての掻痒に対する生理学的反応を表す音響機械センサー。
【請求項2】
前記複数の電子コンポーネントおよび前記少なくとも1つのIMUは、前記複数の電子コンポーネントが前記音響機械センサーの一端にあり、前記少なくとも1つのIMUが前記音響機械センサーの他端にあるように分離される請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項3】
前記少なくとも1つのIMUおよび前記複数の電子コンポーネントをサポートし相互接続するためのフレキシブルプリント回路基板(fPCB)をさらに備える請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項4】
前記fPCBは、前記少なくとも1つのIMUを前記音響機械センサーの他のコンポーネントから機械的に減結合するように設計された、複数の自由に変形可能な、蛇行インターコネクトを含むパターン化されたレイアウトを有し、前記複数の自由に変形可能な、蛇行インターコネクトは、可撓性および伸縮性を有し、前記少なくとも1つのIMUと前記複数の電子コンポーネントとを相互接続するように適合される請求項3に記載の音響機械センサー。
【請求項5】
前記少なくとも1つのIMU、前記複数の電子コンポーネント、および前記fPCBを少なくとも部分的に取り囲み生体に動作可能に取り付けられる組織対向面を形成するエラストマー封緘層をさらに備え、前記エラストマー封緘層の前記組織対向面は、前記生体の皮膚表面にコンフォーマルに適合するように構成される請求項3に記載の音響機械センサー。
【請求項6】
前記封緘層は、薄い低弾性率シリコーンエラストマーから形成され、前記エラストマー封緘層は、生体適合性シリコーンエンクロージャである請求項5に記載の音響機械センサー。
【請求項7】
生体の解剖学的位置に前記音響機械センサーを取り付けるための生体適合性ヒドロゲル接着材をさらに備える請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項8】
前記生体適合性ヒドロゲル接着材は、医療グレードの低刺激性接着材である請求項7に記載の音響機械センサー。
【請求項9】
前記生体適合性ヒドロゲル接着材は、前記生体からの信号が前記少なくとも1つのIMUに動作可能に伝導可能であるように適合される請求項7に記載の音響機械センサー。
【請求項10】
前記ワイヤレス通信システムは、Bluetooth low energy(BLE)無線を備える請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項11】
前記ワイヤレス通信システムは、前記音響機械センサーからの出力信号を外部デバイスに送信するように構成される請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項12】
前記複数の電子コンポーネントは、電力を供給するための少なくとも1つのIMU、前記ワイヤレス通信システム、および前記MCUに結合された電力モジュールをさらに備える請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項13】
前記電力モジュールは、電池を備え、前記電池は、充電式電池である請求項12に記載の音響機械センサー。
【請求項14】
前記電力モジュールは、前記充電式電池をワイヤレスで充電するためのワイヤレス充電モジュールと、電池の誤作動を回避するための短絡保護コンポーネントまたは回路を含む故障防止要素とをさらに備える請求項13に記載の音響機械センサー。
【請求項15】
前記少なくとも1つのIMUは、引っ掻く活動に関連付けられる組織伝導振動および運動を検出するように構成されているミリメートルスケールの3軸加速度計を備える請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項16】
前記3軸加速度計は、第1のサンプルレートでx軸およびy軸に沿った加速度を検出し、第2のサンプルレートでz軸に沿った加速度を検出するように構成され、前記x軸およびy軸は、前記音響機械センサーが取り付けられている皮膚表面に平行に配向され、前記z軸は、前記皮膚表面に垂直であり、前記第1のサンプルレートは約160~240Hzの範囲内にあり、前記第2のサンプルレートは約1,200~2,000Hzの範囲内にある請求項15に記載の音響機械センサー。
【請求項17】
前記3軸加速度計は、16ビットの分解能で約1,600Hzのサンプリングレートおよび約±2gのダイナミックレンジを有するように構成され、ここでgは重力加速度、9.8m/s
2である請求項15に記載の音響機械センサー。
【請求項18】
手背に配置されたときに、前記音響機械センサーは、周囲雑音に影響されない方式で、運動と音響機械信号との組合せを介して前記引っ掻く活動に関連付けられている音響機械信号を検出することができる請求項15に記載の音響機械センサー。
【請求項19】
第二指と第三指の中手骨の間に配置されたときに、前記音響機械センサーは、引っ掻くことそれ自体に関連付けられる高周波振動運動を含む広い一時的帯域幅にわたって手首および/または腕の運動からだけでなく、指および指先からも開始される前記引っ掻く活動を定量化することができる請求項15に記載の音響機械センサー。
【請求項20】
前記引っ掻く活動は、第1および第2のタイプの信号で特徴付けられ、前記第1のタイプの信号は手の全体的な動きに対応し、前記第2のタイプの信号は、前記第1のタイプの信号と時間的に重なり、接触面に対する指先および指の爪の運動によって生成される微妙な振動インパルスから生じる請求項15に記載の音響機械センサー。
【請求項21】
前記第1のタイプの信号は、数Hz以下の範囲内の特性周波数を有し、前記第2のタイプの信号は、数百Hzの範囲にわたる特性周波数を有し、振幅は、前記指に沿って、手の中に入り、最終的には手首を通って腕に達する、位置とともに急速に減衰する請求項20に記載の音響機械センサー。
【請求項22】
前記第1および第2のタイプの信号は、約2Hzのカットオフを有するローパスフィルタおよびハイパスフィルタにデータを通すことによって識別される請求項20に記載の音響機械センサー。
【請求項23】
前記引っ掻く活動を一意的に特徴付ける信号特徴は、前記音響機械センサーの出力信号から抽出され、引っ掻き検出のために機械学習ベースのアルゴリズムを訓練し、検証し、掻痒症の症状を定量化する請求項15に記載の音響機械センサー。
【請求項24】
前記少なくとも1つのIMUから検出された前記データに対して引っ掻きアルゴリズムを実行して前記引っ掻く活動を一意的に特徴付ける信号特徴を取得するように構成される請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項25】
前記音響機械センサー、モバイルデバイス、および/またはスマートウェアラブルデバイスの触覚/音声/視覚的手段を介してユーザおよび/または専門家に通知するように構成される請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項26】
生体の解剖学的位置に装着するための特定の幾何学的極性を有し、可撓性および前記皮膚へのコンフォーマブル性を有する請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項27】
引っ掻きに特有の高周波振動をキャプチャするために第一指および第二指の中足骨を含む重要な骨の上に動作可能に配置される請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項28】
引っ掻きに特有の運動および骨伝導高周波振動の両方をキャプチャし、それにより皮膚上の真の引っ掻きから引っ掻きの運動を区別することができる請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項29】
前記音響機械センサーを手背の曲面上に配置し、関節の関節動作を問わず引っ掻きをキャプチャすることを可能にするロープロファイルコンフォーマブル性を有し、前記引っ掻きは、指の動きのみ、手首の動きのみ、肘の動きのみ、肩の動きのみ、またはこれらの組合せに関連付けられる請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項30】
任意の時間の引っ掻き運動を測定するために、手背、指爪、指、または手首に動作可能に配置される請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項31】
掻痒が診断、治療反応指標、臨床試験エンドポイント、または疾患悪化の早期警告として一症状である任意の病状において使用可能である請求項1に記載の音響機械センサー。
【請求項32】
掻痒症の症状を定量化するための方法であって、
請求項1から31のいずれか一項に記載の音響機械センサーを生体の解剖学的位置に取り付けるステップと、
前記音響機械センサーによって、引っ掻く活動および/または引っ掻きではない活動に関連付けられている信号を検出するステップと、
前記信号を分析して引っ掻きの音響機械シグネチャを評価して掻痒症の症状を定量化するステップとを含む方法。
【請求項33】
前記信号を分析する前記ステップは、
前記信号を前処理して低速の大規模な運動によって引き起こされる低周波基線変動を除去し、それにより前記前処理された信号がz軸加速度に関連付けられたより特異的な高周波信号成分を含むようにするステップと、
オーバーラップのあるn秒ウィンドウをスライドさせることによって前処理済み信号をフレームにセグメント分割するステップと、
各フレームから特徴のセットを抽出するステップと、
予測および検証のために抽出済み特徴のセットにランダムフォレスト(RF)分類器を適用するステップとを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記信号を分析する前記ステップは、
所与のフレーム内のデータ点の約50%未満が引っ掻く活動としてラベル付けされている場合に、各フレームに、引っ掻きではない活動を示す0のラベルを割り当て、そうでない場合に、フレームに、引っ掻く活動を示す1のラベルを割り当てるステップをさらに含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記n秒ウィンドウは、1秒ウィンドウである請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記オーバーラップは、約50%~90%の範囲内のオーバーラップであり、好ましくは約50%である請求項33に記載の方法。
【請求項37】
RF分類器は、訓練データセットにより訓練され、多数の健康な生体から収集された、複数の身体位置からの引っ掻きデータと様々なタイプの引っ掻きではない活動とを含む請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記RF分類器は、前記訓練データセットに適用される被験者1人抜き交差検証(LOSO-CV)からの結果を比較することによって最適化され、前記結果は、前記RF分類器の最適化の基礎をなす請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記最適化のためのパラメータは、前記RF分類器内の決定木の数と、必要最小引っ掻き(MRS)持続時間とを含み、決定木の前記数は約10から約200の範囲内にある請求項38に記載の方法。
【請求項40】
最適化のために、前記RF分類器は、1秒フレームレベルでの予測を返し、出力は、その後、ノイズを伴うアプリケーションの密度ベースの空間クラスタリング(DBSCAN)を使用してクラスタ化され、それにより近接近する2つの引っ掻きフレームを単一の引っ掻き事象として連結し、前記MRS持続時間は、引っ掻き事象のクラスタを形成するフレームの最小数を定義し、前記MRS持続時間は、約1.5から8.5秒の範囲内にある請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記引っ掻く活動および/または引っ掻きではない活動は、前記生体の頭、腕、腹、膝、および/もしくは脚を引っ掻くこと、ならびに/または空中で引っ掻くこと、手を振ること、電話にテキストを入力すること、キーボードを打つこと、および/もしくはマウスをクリックすることをシミュレートすることを含む請求項32に記載の方法。
【請求項42】
前記解剖学的位置は、前記生体の指先、指、手背、および手首である請求項32に記載の方法。
【請求項43】
特徴の前記セットは、x/y/z軸の加速度の変動、高周波スペクトログラム、および/または低周波スペクトログラムを含む請求項33に記載の方法。
【請求項44】
1つまたは複数のプロセッサによって実行されたときに請求項32から43のいずれか一項に記載の前記方法が実行されることを引き起こす命令を記憶する有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究の下での権利に関する陳述
本発明は、米国食品医薬品局から授与された助成金番号1U01FD007001-01に基づく政府支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連特許出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2021年4月6日に出願した米国仮出願第63/171,483号の優先権および利益を主張するものである。
【0003】
本発明は、一般的にバイオセンサーに関し、より具体的には、引っ掻きの特定のシグネチャを評価するための機械学習アルゴリズムによって使用可能にされる皮膚コンフォーマブル、ワイヤレス、デュアルウェアラブルの特徴を有する診断および治療用引っ掻きセンサー(scratch sensor)、掻痒症の症状を定量化するための方法、およびそれらのアプリケーションに関する。
【背景技術】
【0004】
本明細書で与えられている背景の説明は、本発明の文脈を一般的に提示することを目的としている。本発明の背景技術の項において説明されている主題は、本発明の背景技術の項において従来技術について言及した結果として単に従来技術であると仮定されるべきではない。同様に、本発明の背景技術の項で言及されている、または本発明の背景技術の項の主題に関連付けられている問題は、従来技術においてすでに認識されていると仮定されるべきではない。本発明の背景技術の項における主題は、異なるアプローチを単に表しているだけであり、それ自体が発明である場合もある。本発明の背景技術の項において説明されている範囲で、現在名前を挙げられている発明者らの研究、さらには出願時に従来技術として他の何らかの形で適格でない可能性のある説明の態様は、本発明に対して従来技術として明示的にも暗示的にも認められない。
【0005】
掻痒および疼痛は、ヒトにおける侵害受容の主要な2つの例であり、掻痒は引っ掻き反射を、疼痛は引っ込め反射を引き起こすものである。残念ながら、掻痒の原因となる病状は多岐にわたり、全年間外来患者通院の1%が掻痒の症状を伴っているにもかかわらず、臨床現場では掻痒が見逃され、十分な治療が行き渡らないことが多く、著しい世界的疾病負担となっている。掻痒を引き起こす病状は多岐にわたるが(たとえば、腎不全、肝不全、リンパ腫など)、アトピー性皮膚炎(AD)が最も一般的である可能性が高い。また、ADは最も広くみられる小児炎症性皮膚疾患であり、1,000万人の米国小児が罹患し、年間有病率は13%である。ADの顕著な特徴は掻痒であり、罹患児の~60%において慢性睡眠障害に至る罹患率の主な要因である。数百万人の小児に対する結果は、神経認知機能障害および成長低下を含む。中等度から重度のADの患者の生活の質は、一貫して、すべての慢性疾患の中で最低のスコアを付ける。
【0006】
ADおよび掻痒を引き起こす他の病状において、主要な満たされていないニーズは、新しい薬剤の有効性を評価し、疾患重症度を定量化し、治療反応を監視するための掻痒の客観的尺度にある。掻痒は主観的性質のものなので、その定量化には困難が生じる。患者報告視覚アナログ尺度(VAS)などの一般的に使用されている方法は、視覚的に観察される引っ掻き挙動との相関性が低い。そのような自己報告尺度は、感度および定着の両方のバイアスを生じやすい。さらに、これらの主観的方法は、幼児および認知障害のある成人では妥当性に欠ける。
【0007】
引っ掻きに関連付けられている挙動を測定することは、掻痒の重症度および頻度を定量化するための一方法を提供する。ビデオ録画での引っ掻きの直接的目視検査は、最も基準になる方法であるが、そのようなスキームは手間がかかり、臨床診療では実用的ではない。手首挙動記録法は、加速度計を使用して動きを記録する方法であり、手首の運動を測定することによって引っ掻きを推定する。このアプローチは、たとえば手の揺れを引っ掻きから区別することができないので、正確度は最適とは言えない。個人間のばらつきを含む、引っ掻きの様々な特性の追加の態様には、追加の未解決の課題がある。したがって、現在のセンサーおよび戦略は、臨床試験または患者治療で日常的に使用するには十分な性能または実用性をもたらさない。
【0008】
したがって、前述の欠陥および不適切さに対処するために、これまで解決されていなかったニーズが当技術分野に存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の1つは、引っ掻きの音響機械的シグネチャをキャプチャすることができる、軟質の可撓性を有するワイヤレスセンサー、および掻痒症の症状を客観的に定量化するための方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、高度音響機械(ADAM)センサーに関するものであり、これは生理学的プロセスの振動および運動シグネチャを動作可能に検出するための少なくとも1つの慣性測定ユニット(IMU)と、少なくとも1つのIMUからデータを受信し、受信されたデータを処理するために少なくとも1つのIMUに結合されたマイクロコントローラユニット(MCU)と、ワイヤレスデータ伝送のためのワイヤレス通信システムとを備える複数の電子コンポーネントとを具備する。音響機械センサーは、少なくとも1つのIMUから導出される約100Hz未満の低周波と約100Hzを超える高周波の両方の信号を測定するように構成されている。さらに、音響機械センサーは、高周波信号および低周波信号の両方をキャプチャするために少なくとも1つのIMUを皮膚に結合することを可能にするように皮膚装着される。高周波信号および低周波信号は、引っ掻く活動または擦る活動としての掻痒に対する生理学的反応を表す。一実施形態において、生理学的プロセスは、引っ掻く活動を含む。
【0011】
一実施形態において、複数の電子コンポーネントおよび少なくとも1つのIMUは、複数の電子コンポーネントがADAMセンサーの一端にあり、少なくとも1つのIMUがADAMセンサーの他端にあるように空間的に分離される。
【0012】
一実施形態において、ADAMセンサーは、少なくとも1つのIMUおよび複数の電子コンポーネントをサポートし相互接続するためのフレキシブルプリント回路基板(fPCB)をさらに備える。
【0013】
一実施形態において、fPCBは、少なくとも1つのIMUをADAMセンサーの他のコンポーネントから機械的に減結合するように設計された、複数の自由に変形可能な、蛇行インターコネクトを含むパターン化されたレイアウトを採用する。
【0014】
一実施形態において、複数の自由に変形可能な、蛇行インターコネクトは、可撓性および伸縮性を有し、少なくとも1つのIMUと複数の電子コンポーネントとを相互接続するように適合される。
【0015】
一実施形態において、ADAMセンサーは、また、少なくとも1つのIMU、複数の電子コンポーネント、およびfPCBを少なくとも部分的に取り囲み生体に動作可能に取り付けられる組織対向面を形成するエラストマー封緘層も備える。
【0016】
一実施形態において、エラストマー封緘層の組織対向面は、生体の皮膚表面にコンフォーマルに適合するように構成される。
【0017】
一実施形態において、封緘層は、薄い低弾性率シリコーンエラストマーから形成される。
【0018】
一実施形態において、エラストマー封緘層は、生体適合性シリコーンエンクロージャである。
【0019】
一実施形態において、ADAMセンサーは、生体の解剖学的位置にADAMセンサーを取り付けるための生体適合性ヒドロゲル接着材をさらに備える。
【0020】
一実施形態において、生体適合性ヒドロゲル接着材は、医療グレードの低刺激性接着材である。
【0021】
一実施形態において、生体適合性ヒドロゲル接着材は、生体からの信号が少なくとも1つのIMUに動作可能に伝導可能であるように適合される。
【0022】
一実施形態において、ワイヤレス通信システムは、Bluetooth low energy(BLE)無線を備える。
【0023】
一実施形態において、ワイヤレス通信システムは、ADAMセンサーからの出力信号を外部デバイスに送信するように構成される。
【0024】
一実施形態において、複数の電子コンポーネントは、電力を供給するための少なくとも1つのIMU、ワイヤレス通信システム、およびMCUに結合された電力モジュールをさらに備える。
【0025】
一実施形態において、電力モジュールは、電池を備える。
【0026】
一実施形態において、電池は、充電式電池である。
【0027】
一実施形態において、電力モジュールは、充電式電池をワイヤレスで充電するためのワイヤレス充電モジュールをさらに備える。
【0028】
一実施形態において、電力モジュールは、電池の誤作動を回避するための短絡保護コンポーネントまたは回路を含む故障防止要素をさらに備える。
【0029】
一実施形態において、少なくとも1つのIMUは、引っ掻く活動に関連付けられる皮膚伝導振動および運動を検出するように構成されているミリメートルスケールの3軸加速度計を備える。
【0030】
一実施形態において、3軸加速度計は、第1のサンプルレートでx軸およびy軸に沿った加速度を検出し、第2のサンプルレートでz軸に沿った加速度を検出するように構成され、x軸およびy軸は、ADAMセンサーが取り付けられている皮膚表面に平行に配向され、z軸は、皮膚表面に垂直である。
【0031】
一実施形態において、第1のサンプルレートは160~240Hzの範囲内にあり、第2のサンプルレートは1,200~2,000Hzの範囲内にある。
【0032】
一実施形態において、3軸加速度計は、16ビットの分解能で1,600Hzのサンプリングレートおよび±2gのダイナミックレンジを有するように構成され、ここでgは重力加速度、9.8m/s2である。
【0033】
一実施形態において、手背に配置されたとき、ADAMセンサーは、周囲雑音に影響されない方式で、運動と音響機械信号との組合せを介して、引っ掻く活動に関連付けられる音響機械信号を検出することができる。
【0034】
一実施形態において、第二指と第三指の中手骨の間に配置されたときに、ADAMセンサーは、引っ掻くことそれ自体に関連付けられる高周波振動運動を含む広い一時的帯域幅にわたって、手首および/または腕の運動からだけでなく、指および指先からも開始される引っ掻く活動を定量化することができる。
【0035】
一実施形態において、引っ掻く活動は第1および第2のタイプの信号で特徴付けられ、第1のタイプの信号は手の全体的な動きに対応し、第2のタイプの信号は、第1のタイプの信号と時間的に重なり、接触面に対する指先および指の爪の運動によって生成される微妙な振動インパルスから生じる。
【0036】
一実施形態において、第1のタイプの信号は、数Hz以下の範囲内の特性周波数を有し、第2のタイプの信号は、数百Hzの範囲にわたる特性周波数を有し、振幅は、指に沿って、手の中に入り、最終的には手首を通って腕に達する、位置とともに急速に減衰する。
【0037】
一実施形態において、第1および第2のタイプの信号は、2Hzのカットオフを有するローパスフィルタおよびハイパスフィルタにデータを通すことによって識別される。
【0038】
一実施形態において、引っ掻く活動を一意的に特徴付ける音響機械信号特徴のシグネチャが、ADAMセンサーの出力信号から抽出され、引っ掻き検出のために機械学習ベースのアルゴリズムを訓練し、検証し、掻痒症の症状を定量化する。
【0039】
一実施形態において、ADAMセンサーは、無負荷、伸縮可能、ねじり可能、および/または折り曲げ可能である。
【0040】
一実施形態において、ADAMセンサーは、生体の解剖学的位置に装着するための特定の幾何学的極性を有し、可撓性および皮膚へのコンフォーマブル性を有する。
【0041】
一実施形態において、引っ掻きアルゴリズムは、センサーが少なくとも1つのIMUから検出されたデータを処理して、引っ掻く活動を一意的に特徴付ける信号特徴を取得することができるようにセンサー上に埋め込まれる。
【0042】
一実施形態において、ADAMセンサーは、音響機械センサー、モバイルデバイス、および/またはスマートウェアラブルデバイスの音声/視覚的手段を介して、ユーザおよび/または専門家に通知するように構成される。これらの通知は、ユーザによる引っ掻きへの注意を生成するのに十分に強いか、または睡眠時の引っ掻きを止めるが装着者を起こさないように、より穏やかになるように調整可能であり得る。
【0043】
一実施形態において、センサーの手へのコンフォーマブル性は、重要な骨--たとえば、第一および第二指の中足骨--の上に配置することを可能にし、これは引っ掻きに特有の高周波振動をキャプチャする上で鍵となる。
【0044】
一実施形態において、高周波数IMUによって使用可能にされた高周波数信号キャプチャは、引っ掻きに特有の運動および骨伝導高周波振動の両方のキャプチャを可能にする。これは、引っ掻く動作を皮膚上の真の引っ掻きから区別することを可能にする。
【0045】
一実施形態において、センサーのロープロファイルコンフォーマブル性は、音響機械センサーを手背の曲面上に配置することを可能にする。これは、関節の関節動作に関係なく引っ掻きをキャプチャすることを可能にする。前記引っ掻きは、指の動きのみ、手首の動きのみ、肘の動きのみ、肩の動きのみ、またはこれらの組合せに関連付けられ得る。
【0046】
一実施形態において、ADAMセンサーは、任意の時間の引っ掻き運動を測定するために、手背、指爪、指、または手首に動作可能に配置される。
【0047】
一実施形態において、ADAMセンサーは、掻痒が診断、治療反応指標、臨床試験エンドポイント、または疾患悪化の早期警告として一症状である任意の病状において使用可能である。
【0048】
別の態様において、本発明は、高度音響機械(ADAM)センサーを生体の解剖学的位置に取り付けること、ADAMセンサーによって、引っ掻く活動および/または引っ掻きではない活動に関連付けられる信号を検出すること、および引っ掻きの音響機械的シグネチャを評価するために信号を分析、掻痒症の症状を定量化することを含む、掻痒症の症状を定量化するための方法に関する。
【0049】
一実施形態において、信号を前記分析することは、信号を前処理して低速の大規模な運動によって引き起こされる低周波基線変動を除去し、それにより前処理された信号がz軸加速度に関連付けられたより特異的な高周波信号成分を含むようにすることと、オーバーラップのあるn秒ウィンドウをスライドさせることによって前処理済み信号をフレームにセグメント分割することと、各フレームから特徴のセットを抽出することと、予測および検証のために抽出された特徴のセットにランダムフォレスト(RF)分類器を適用することとを含む。一実施形態において、特徴のセットは、x/y/z軸の加速度の変動、高周波スペクトログラム、および/または低周波スペクトログラムを含む。
【0050】
一実施形態において、n秒ウィンドウは1秒ウィンドウである。
【0051】
一実施形態において、オーバーラップは、約50%~90%の範囲内のオーバーラップであり、好ましくは約50%である。
【0052】
一実施形態において、信号を前記分析することは、所与のフレーム内のデータ点の約50%未満が引っ掻く活動としてラベル付けされている場合に、各フレームに、引っ掻きではない活動を示す0のラベルを割り当て、そうでない場合に、フレームに、引っ掻く活動を示す1のラベルを割り当てることをさらに含む。
【0053】
一実施形態において、RF分類器は、多数の健康な生体から収集された、複数の身体位置からの引っ掻きデータと様々なタイプの引っ掻きではない活動を含む訓練データセットにより訓練される。
【0054】
一実施形態において、RF分類器は、訓練データセットに適用される被験者1人抜き交差検証(LOSO-CV)からの結果を比較することによって最適化され、その結果は、RF分類器の最適化の基礎をなす。
【0055】
一実施形態において、最適化のためのパラメータは、RF分類器内の決定木の数と、必要最小引っ掻き(MRS)期間とを含む。
【0056】
一実施形態において、決定木の数は約10から200の範囲内、好ましくは約30である。
【0057】
一実施形態において、最適化のために、RF分類器は、1秒フレームレベルでの予測を返し、出力は、その後、ノイズを伴うアプリケーションの密度ベースの空間クラスタリング(DBSCAN)を使用してクラスタ化され、それにより近接近する2つの引っ掻きフレームを単一の引っ掻き事象として連結し、MRS持続時間は、引っ掻き事象のクラスタを形成するフレームの最小数を定義する。
【0058】
一実施形態において、MRS持続時間は約1.5秒から8.5秒の範囲内であり、好ましくは少なくとも約4.5秒である。
【0059】
一実施形態において、引っ掻く活動および/または引っ掻きではない活動は、生体の頭、腕、腹、膝、および/もしくは脚を引っ掻くこと、ならびに/または空中で引っ掻くこと、手を振ること、電話にテキストを入力すること、キーボードで打つこと、および/もしくはマウスをクリックすることをシミュレートすることを含む。
【0060】
一実施形態において、解剖学的位置は、生体の指先、指、手背、および手首である。
【0061】
本発明のさらに別の態様は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されたときに、上で開示された方法で掻痒症の症状を定量化することを引き起こす命令を記憶する有形の非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【0062】
本発明のこれらおよび他の態様は、次の図面と併せて取った好ましい実施形態の次の説明から明らかになるであろうが、そこに記載されている変更形態および修正形態は本開示の新規性のある概念の精神および範囲から逸脱することなく影響を及ぼされ得る。
【0063】
添付図面は、本発明の1つまたは複数の実施形態を例示しており、書面による説明と併せて、本発明の原理を説明するのに役立つ。可能な限り、図面全体を通して一実施形態の同じまたは類似の要素を指すために同じ参照番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1A】本発明の実施形態によるADAMセンサーおよび信号出力の概要を示す図であって、軟質の可撓性構造物を強調する様々な変形状態のADAMセンサーの写真を伴う図である。
【
図1B】本発明の実施形態によるADAMセンサーおよび信号出力の概要を示す図であって、5つの異なる周波数範囲に焦点を当てた、引っ掻きの運動および振動シグネチャの時空間パターンの測定の結果を示し、実験は、腕を10秒間関節運動させ、次いで最後の10秒間に指だけで引っ掻くことによって引っ掻く際に指先、指、手背、および手首に各々1つずつ配置された4つの加速度センサーを伴い、カラーバーは、各周波数帯域における周波数毎の信号の平均電力を表し、左右の値はそれぞれのプロットの最小値と最大値とを示し、上側空間パターンは腕を関節運動させることによって引っ掻くことからのものであり、下側空間パターンは指だけで引っ掻くことからのものである、図である。
【
図1C】本発明の実施形態によるADAMセンサーおよび信号出力の概要を示す図であって、引っ掻きの経路とおよびセンサーからの結果データ(生データおよびフィルタ処理済みデータ)を示す図である。
【
図1D】本発明の実施形態によるADAMセンサーおよび信号出力の概要を示す図であって、5つの異なる装着位置で引っ掻いているときにキャプチャされた信号の比較を、時系列およびスペクトログラムプロットとして示す図であって、手背は、指だけでの引っ掻きをキャプチャするのに有効な装着位置にあることを示す図である。
【
図2A】本発明の実施形態によるADAMセンサーによって収集されたデータを表す図であって、引っ掻く活動に対応する時系列データとスペクトログラムのサンプルを示し、手背(DH)および前腕(FA)の2つの身体部位で、高(H)および低(L)の2つの強度で引っ掻きの2つのモードが実施されることを示す図である。
【
図2B】本発明の実施形態によるADAMセンサーによって収集されたデータを表す図であって、5つの異なる身体部位が頭(有毛皮膚)、腕(通常の皮膚)、腹(柔らかい皮膚)、膝(骨隆起のある皮膚)、および脚(硬い皮膚)を含む引っ掻く活動の時系列データを示す図である。
【
図2C】本発明の実施形態によるADAMセンサーによって収集されたデータを表す図であって、
図2Bの各時系列データのスペクトログラムを示し、引っ掻く活動に起因する信号は、0~800Hzの周波数範囲内のエネルギーを有することを示す図である。
【
図2D】本発明の実施形態によるADAMセンサーによって収集されたデータを表す図であって、空中で指を動かすこと、手を振ること、テキストメッセージを作成すること、キーボードを打つこと、およびマウスをクリックすることをシミュレートすることを含む広範な引っ掻きではない活動における時系列データを示す図である。
【
図2E】本発明の実施形態によるADAMセンサーによって収集されたデータを表す図であって、
図2Dの各時系列データのスペクトログラムを示し、引っ掻きではない活動に起因する信号は、もっぱら200Hz未満の範囲内のエネルギーを有することを示す図である。
【
図3A】本発明の実施形態による、手に付けたADAMデバイスとItchTracker Mobile Applicationを搭載したAppleWatchとで取得された結果の比較を示す図であって、各活動の間に5秒の休止時間を設けた、様々な引っ掻き(骨隆起のある膝上の皮膚、柔らかい腹の皮膚、複雑な表面の頭部の皮膚)および引っ掻きではない活動(手を振る、空中で引っ掻く運動)に対する時系列データおよびスペクトログラムを示し、手首全体の関節運動による引っ掻きを示し、「ItchTracker」は手を振る動作を引っ掻きと誤分類し、頭の引っ掻きを検出することに失敗していることを示す図である。
【
図3B】本発明の実施形態による、手に付けたADAMデバイスとItchTracker Mobile Applicationを搭載したAppleWatchとで取得された結果の比較を示す図であって、各活動の間に5秒の休止時間を設けた、様々な引っ掻き(骨隆起のある膝上の皮膚、柔らかい腹の皮膚、複雑な表面の頭部の皮膚)および引っ掻きではない活動(手を振る、空中で引っ掻く運動)に対する時系列データおよびスペクトログラムを示し、指だけを関節運動させることによる引っ掻きを示し、ADAMセンサーは、指の関節動作のみを使用して皮膚を引っ掻くことを確実に弁別し、「ItchTracker」は、手首への装着位置にあること、また高周波数情報を記録できないことから、指だけを使用して引っ掻きを検出することはできない、ことを示す図である。
【
図4A】本発明の実施形態によるデータセット、信号処理パイプライン、および検証方法の概要を示す図であって、アルゴリズム検証データは10人の健康な健常志願者から収集されていることを示す図である。
【
図4B】本発明の実施形態によるデータセット、信号処理パイプライン、および検証方法の概要を示す図であって、各参加者によって実行された活動および対応する活動持続時間を示す図である。
【
図4C】本発明の実施形態によるデータセット、信号処理パイプライン、および検証方法の概要を示す図であって、1秒のスライディングウィンドウを適用することによってセットにその後適用され、いくつかのフレームにセグメント分割される前処理を示し、各フレームから特徴のセットが抽出され、訓練フレームから抽出された特徴セットにより、ランダムフォレスト分類器が訓練され、訓練済み分類器は予測および検証のためにテスト特徴セットに適用されたことを示す図である。
【
図4D】本発明の実施形態によるデータセット、信号処理パイプライン、および検証方法の概要を示す図であって、様々な引っ掻く活動および引っ掻きではない活動を実行する単一の被験者による検証コホートの時系列データは各活動の間に5秒の休止期間を含めることを示す図である。
【
図4E】本発明の実施形態によるデータセット、信号処理パイプライン、および検証方法の概要を示す図であって、引っ掻きに対する出力確率は、確率が50%を超える場合に「1:引っ掻き」として特徴付けられ、青線は各フレームに対する引っ掻きの確率であり、赤線は最終的な分類結果を示し、0および1はそれぞれ引っ掻きではないおよび引っ掻くに対応することを示す図である。
【
図5A】本発明の実施形態による検証データの要約および抽出された特徴を示す図であって、臨床検証は、主に小児アトピー性皮膚炎患者(年齢中央値10.5歳)がいる家庭自然環境において実施され、赤外線IRカメラが被験者の引っ掻く挙動を記録するために使用され、2名の臨床研究スタッフメンバーによって手作業で採点された状況を示す図である。
【
図5B】本発明の実施形態による検証データの要約および抽出された特徴を示す図であって、合計11人のAD患者が募集され、プール分析において合計46晩のデータを生成したことを示す図である。
【
図5C】本発明の実施形態による検証データの要約および抽出された特徴を示す図であって、合計9つの特徴がLOSOおよび交差研究検証に使用されており、これらは、ランダムフォレスト分類器から取得された特徴の重要度の順にリストされている、図である。
【
図6A】本発明の実施形態によるワット損を示す図であって、4つのデバイスと2つのデバイスを使用して決定された指先から手首までのワット損を示し、指および手に付けたデバイスは、指先と手首の間の減衰には影響しないことを示す図である。
【
図6B】本発明の実施形態によるワット損を示す図であって、手背から手首までのワット損を示し、
図1Bの4つのセンサーを使用したセンサー取り付け位置に沿った減衰の結果は、
図1Dの結果と一致していることを示す図である。
【
図6C】本発明の実施形態によるワット損を示す図であって、指数法則の周波数および距離依存音響減衰、P(x+Δx)=P(x)exp(-α
0 f
ηΔx)を示す図である。
【
図7】機械的特徴が本発明の実施形態により様々な手の運動においてADAMセンサーが手背に対してコンフォーマブルに適合することを可能にすることを示す図である。
【
図8A】本発明の実施形態による2つの引っ掻きモード(腕を関節動作させながら引っ掻く、および指だけで引っ掻く)および2つの身体部位(手背および前腕)の正規化された時系列およびスペクトル特性を示し、引っ掻きモードと引っ掻き場所が同じであるときに高強度引っ掻き事象と低強度引っ掻き事象のスペクトル特性は、概して同じであり、高強度および低強度の引っ掻きの時系列データプロット、スペクトログラム、およびフーリエ変換を示す図であって、腕を関節動作させることによって手背(DH)を引っ掻くことを示す図である。
【
図8B】本発明の実施形態による2つの引っ掻きモード(腕を関節動作させながら引っ掻く、および指だけで引っ掻く)および2つの身体部位(手背および前腕)の正規化された時系列およびスペクトル特性を示し、引っ掻きモードと引っ掻き場所が同じであるときに高強度引っ掻き事象と低強度引っ掻き事象のスペクトル特性は、概して同じであり、高強度および低強度の引っ掻きの時系列データプロット、スペクトログラム、およびフーリエ変換を示す図であって、腕を関節動作させることによって前腕(FA)を引っ掻くこと示す図である。
【
図8C】本発明の実施形態による2つの引っ掻きモード(腕を関節動作させながら引っ掻く、および指だけで引っ掻く)および2つの身体部位(手背および前腕)の正規化された時系列およびスペクトル特性を示し、引っ掻きモードと引っ掻き場所が同じであるときに高強度引っ掻き事象と低強度引っ掻き事象のスペクトル特性は、概して同じであり、高強度および低強度の引っ掻きの時系列データプロット、スペクトログラム、およびフーリエ変換を示す図であって、指のみでDHを引っ掻くことを示す図である。
【
図8D】本発明の実施形態による2つの引っ掻きモード(腕を関節動作させながら引っ掻く、および指だけで引っ掻く)および2つの身体部位(手背および前腕)の正規化された時系列およびスペクトル特性を示し、引っ掻きモードと引っ掻き場所が同じであるときに高強度引っ掻き事象と低強度引っ掻き事象のスペクトル特性は、概して同じであり、高強度および低強度の引っ掻きの時系列データプロット、スペクトログラム、およびフーリエ変換を示す図であって、指のみでFAを引っ掻くことを示す図である。
【
図9】分類性能に対する木の数の効果を示す図であって、本発明の実施形態により50本より多い木を使用することで得られるメリットは最小であることを示す図である。
【
図10】本発明の実施形態による引っ掻き事象の定義の感度および特異度に対する最小引っ掻き持続時間ウィンドウの効果を示す図であって、最小必要引っ掻き時間が4.5秒のときに最高の性能が達成され、最小必要引っ掻き時間が1.5秒から8.5秒まで延びるにつれ、特異度は高まり、F1スコアは減少することを示す図である。
【
図11】3人のAD患者のサブセットが、本発明の実施形態により長期の引っ掻き挙動を例示するためにセンサーを7日を越えて着用した様子を示す図であって、これらの個人は、治療上のメリットを評価するために新しい局所薬(クリサボロール)も開始し、AD患者の引っ掻き持続時間は、引っ掻き検出アルゴリズムの引っ掻き予測に基づき取得され、AD患者の引っ掻き持続時間は、症状の重症度に基づき患者毎に異なり、単一の患者について複数の夜にわたって有意な変動が観察されたことを示す図である。
【
図12】ADAMセンサーから収集された時系列データが本発明の実施形態に従ってELAN上でIRビデオデータと同期されたことを示す図であって、センサーデータは、家庭自然環境における患者活動の視覚的評価によって注釈されていることを示す図である。
【
図13】本発明の実施形態による引っ掻きではない活動を混乱させる確率を示す図であって、各クラス(引っ掻きまたは引っ掻きではない)の予測確率は、この研究で調査された5つの混乱させる活動から計算され、空中で引っ掻くこと、手を振ること、マウスをクリックすることが引っ掻きではない活動として強く予測された一方で、キーボードを打つこと、携帯電話でテキストを入力することは、引っ掻き誤分類の確率をより大きくしたことを示す図である。
【
図14】引っ掻いている間のADAMセンサーを装着したADの小児患者を例示するビデオのスクリーンショットであって、重度のアトピー性皮膚炎を有する小児患者がADAMセンサーを着用しており、同時に引っ掻きがビデオに記録されており、引っ掻きの強さがビデオ内で変化していることに注意し、アルゴリズムは、センサー応答の振幅を通じて引っ掻き強度を正しく識別していることを示す図である。
【
図15】1,600Hzでサンプリングされたz軸加速度データがオーディオファイルに変換されたビデオのスクリーンショットであって、引っ掻く活動が粗く周期的な音を発生することを示す図である。
【
図16】1,600Hzでサンプリングされたz軸加速度データがオーディオファイルに変換されたビデオのスクリーンショットであって、引っ掻き音と比較して、手を振る運動の音は知覚可能な周期性または音を含んでいないことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
次に、本発明の例示的な実施形態が示されている、添付図面を参照しつつ、本発明についてさらに詳しく以下で説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書で述べられている実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本発明が綿密で完全なものとなるように、また本発明の範囲が当業者に完全に伝わるように提示されている。全体を通して類似の参照番号は、類似の要素を指す。
【0066】
本明細書で使用される用語は、一般に、本発明の文脈内で、および各用語が使用される特定の文脈内で、当技術分野における通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるいくつかの用語は、本発明の説明に関するさらなるガイダンスを当業者に提供するために、以下で、または本明細書の別のところで、説明される。便宜上、いくつかの用語は、たとえば、イタリック体および/または引用符を使用して、強調表示されることがある。強調表示の使用は、用語の範囲および意味に影響を及ぼさず、用語の範囲および意味は、強調表示であろうとなかろうと、同じ文脈において同じである。同じことを複数の仕方で言えることは理解されるであろう。したがって、本明細書で議論されている用語のうちの1つまたは複数について代替的な言い回しおよび同義語が使用されることがあり、用語が本明細書で詳しく説明されているかどうかに特別な意味があるわけではない。いくつかの用語に対する同義語が提供される。1つまたは複数の同義語が記載されていても、他の同義語の使用を排除するものではない。本明細書で説明されている任意の用語の例を含む、本明細書の任意の場所での例の使用は、例示的なものにすぎず、本発明の範囲および意味を決して制限するものではない。同様に、本発明は、本明細書で与えられた様々な実施形態に限定されない。
【0067】
当業者であれば、特に例示されているもの以外の出発材料、生物由来材料、試薬、合成法、精製法、分析手法、アッセイ方法、および生物学的方法は、過度の実験に頼らずとも本発明の実施において使用され得ることを理解するであろう。そのような材料および方法の当技術分野で知られているすべての機能的等価形態は、本発明に含まれることが意図されている。使用されている用語および表現は、制限ではなく説明の表現として使用されており、図示され、説明されている特徴またはその一部の等価形態を除外するそのような用語および表現の使用に意図があるわけではなく、様々な修正形態が請求されている発明の範囲内で可能であることは理解される。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意選択の特徴によって特に開示されているが、当業者であれば最後の手段として本明細書で開示されている概念の修正および変更に訴えることもでき、またそのような修正および変更は、付属の請求項によって定められているように本発明の範囲内にあると考えられることは理解されるべきである。
【0068】
本明細書において範囲、たとえば、温度範囲、時間範囲、または組成もしくは濃度範囲が与えられる場合、すべての中間範囲および部分範囲、さらには与えられた範囲に含まれるすべての個別の値は、本発明に含まれることが意図されている。本明細書の説明に含まれる部分範囲または範囲もしくは部分範囲内の個別の値は、本発明の請求項から除外され得ることは理解されるであろう。
【0069】
本明細書の説明およびこの後の請求項全体を通して使用されているように、「1つの」、またはあえて書かない場合(原文中「a」、「an」、および「the」)の意味は、文脈上明らかに他の意味を示していない限り、複数の指示対象を含むことは理解されるであろう。したがって、たとえば、「セル」への言及は、当業者に知られている複数のそのようなセルおよびその等価物を含む。同様に、「1つの」(英語原文中で「a」または「an」(日本語文中では使用しない場合もある))、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という言い回しは、本明細書では交換可能に使用できる。また、「備える」、「含む」、および「有する」という言い回しは、交換可能に使用できることにも留意されたい。
【0070】
要素が、別の要素の「上に載る(ある)」、別の要素に「取り付けられている」、別の要素に「接続されている」、別の要素と「結合されている」、別の要素に「接触している」などと称されるときに、それは、他の要素の上に直接載る(ある)か、取り付けられているか、接続されているか、結合されているか、もしくは接触しているか、または介在する要素が存在してもよいことは理解されるであろう。対照的に、要素が、別の要素の「上に直接載る(ある)」か、別の要素に「直接取り付けられる」か、別の要素に「直接接続される」か、別の要素と「直接結合される」か、または別の要素に「直接接触する」と称されるときに、介在する要素は存在しない。また、当業者であれば、別の特徴部「に隣接して」配設されている構造または特徴部への参照は、隣接する特徴部の上にあるか、または下にある部分を有し得ることも理解するであろう。
【0071】
第1の、第2の、第3の、などの語は、様々な要素、コンポーネント、領域、層、および/またはセクションを説明するために使用され得るが、これらの要素、コンポーネント、領域、層、および/またはセクションは、これらの語によって制限されるべきでないことは理解されるであろう。これらの語は、一方の要素、コンポーネント、領域、層、またはセクションを他方の要素、コンポーネント、領域、層、またはセクションから区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明されている第1の要素、コンポーネント、領域、層、またはセクションは、本発明の教示から逸脱することなく第2の要素、コンポーネント、領域、層、またはセクションと称され得る。
【0072】
さらに、「下側」または「底部」、および「上側」または「頂部」などの相対語が、図示されているように、1つの要素と他の要素との関係を説明するために、本明細書で使用され得る。相対語は、図に描かれている向きに加えて、デバイスの異なる向きを包含することを意図していることが理解されるであろう。たとえば、図の一方のデバイスがひっくり返されると、他方の要素の「下側」にあると記述されている要素は、他方の要素の「上側」に配向されることになる。したがって、例示的な語「下側」は、図の特定の向きに応じて、「下側」と「上側」の両方の向きを含むことができる。同様に、それらの図のうちの1つにおけるデバイスがひっくり返された場合、他方の要素の「下」または「真下」にあると記述された要素は、他の要素の「上」に配向されるであろう。したがって、例示的な語「下」または「真下」は、上および下の両方の配向を包含することができる。
【0073】
「備える」および/もしくは「備えること」、または「含む」および/もしくは「含むこと」、または「有する」および/もしくは「有すること」、または「持ち運ぶ」および/もしくは「持ち運ぶこと」、または「収容する」および/もしくは「収容すること」、または「伴う」および/もしくは「伴うこと」、「を特徴とする」、および同様の言い回しは、非限定的であると理解されるべきであり、すなわち、限定はしないが含むを意味するとさらに理解されるであろう。本開示において使用されたときに、これらは、述べられた特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、および/またはコンポーネントの存在を指定し、1つまたは複数の他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、および/またはそれらからなる群の存在もしくは追加を除外しない。
【0074】
断りのない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学用語を含む)は、本発明が属している技術分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。一般に使用されている辞書で定義されている用語などの用語は、関連する技術および本発明の文脈においてそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそう定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されないこともさらに理解されるであろう。
【0075】
本開示で使用されるように、「おおよそ」、「約」、「近似的に」、または「実質的に」は、一般に、所定の値または範囲の20パーセント以内、好ましくは10パーセント以内、より好ましくは5パーセント以内を意味するものとする。本明細書に記載されている数量は近似値であり、明示的に記載されていない場合には、「おおよそ」、「約」、「近似的に」、または「実質的に」という言い回しが推測され得ることを意味する。
【0076】
本開示で使用されているように、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」というフレーズは、非排他的論理ORを使用して論理的(AまたはBまたはC)を意味すると解釈されるべきである。本明細書において使用されているように、「および/または」という言い回しは、関連する列挙されている項目のありとあらゆる組合せを含む。
【0077】
本開示で使用されているように、「ワイヤレス通信システム」という用語は、ワイヤレス通信のための近距離無線通信(NFC)、Wi-Fi/インターネット、Bluetooth、Bluetooth low energy(BLE)、およびセルラー通信プロトコルの少なくとも1つの通信プロトコルを使用して信号を受信し、送信する機能を提供する、センサー、ワイヤレスコントローラ、および他の電子コンポーネントのオンボードコンポーネントを指す。この方式で、出力が、クラウドベースデバイス、個人携帯型デバイス、または介護者コンピュータシステムを含む、外部デバイスに提供され得る。同様に、コマンドが、外部デバイスに対応していても、対応していなくてもよい、外部コントローラなどによって、センサーに送信され得る。機械学習アルゴリズムが、信号分析を改善するために使用されてよく、次いで、コマンド信号が、治療に役立つ医療デバイスのユーザに触覚信号を提供するための医療センサーの刺激装置を含む、医療センサーに送信され得る。より一般的に、これらのシステムは、医療センサーの電子デバイスにオンボード配置されるか、またはその電子デバイスから物理的に離れて配置されているマイクロプロセッサなどの、プロセッサに組み込まれ得る。ワイヤレスコントローラの一例は、NFCチップを含む、近距離無線通信(NFC)チップである。NFCは、デバイス間の双方向短距離ワイヤレス通信を可能にする無線技術である。ワイヤレスコントローラのもう1つの例は、Bluetooth(登録商標)チップ、またはBLEシステムオンチップ(SoC)であり、これはケーブル、電線、または直接的なユーザアクションを通してではなく、標準無線周波数を介してデバイスが通信することを可能にする。
【0078】
本開示で使用されているように、「コンフォーマブル」という用語は、下にある表面に実質的な変形力を生じさせることなく、曲面との密接な接触を維持するように巨視的変形を受けるデバイスの能力を指す。そのようなコンフォーマル接触は、皮膚を含む、比較的軽い力の下であっても変形しやすい軟質生体組織の文脈においては特に困難である。そのような望ましくない変形を発生させる力は、下の組織に不快感および刺激を引き起こし得る。そのような問題は、本技術では、貫通部材、光源、および支持基板を特別に構成することによって回避され、それにより、デバイスは全体として可撓性を有し、広範な複雑な形状に対応することができ、それによってコンフォーマル接触が確実に維持される。そのようなコンフォーマル接触は、デバイスと下にある表面との間に著しい離間距離がないという点で、さらに定量化され得る。これは、所望の位置への最大の光照射を確実にすることを助け、不要な光漏れを回避する。コンフォーマブル性は、また、デバイスが「可撓性」を有し、外力の下で所望の曲率を提供するのに適した曲げ係数を有するという観点から説明され得る。コンフォーマブルは、空隙が存在しないような曲げ剛性およびヤング率などの所望の機械的特性に関してさらに説明され、それによって下にある組織への光伝達を最大化し得る。
【0079】
「可撓性」および「曲げ性」という用語は、本開示において使用されているように、材料、構造、デバイス、またはデバイスコンポーネントが材料、構造、デバイス、またはデバイスコンポーネントの破壊点を特徴付ける歪みなどの、著しい歪みを導入する変換を受けることなく湾曲したまたは曲げられた形状に変形される能力を指す。例示的な一実施形態において、可撓性材料、構造、デバイス、またはデバイスコンポーネントは、歪み感応領域において5%以上、いくつかの適用対象については、1%以上、さらに他の適用対象については、0.5%以上の歪みを導入することなく湾曲形状に変形されてよい。本明細書で使用されているように、いくつかの、ただし必ずしもすべてではないが、可撓性構造も延伸可能である。様々な特性が、低縦弾性係数、曲げ剛性、および屈曲剛性などの材料特性、小さい平均厚さ(たとえば、100ミクロン未満、任意選択で10ミクロン未満、および任意選択で1ミクロン未満)などの物理的寸法、ならびに薄膜および開放またはメッシュ幾何学的形状などのデバイス幾何学的形状を含む、本発明の可撓性構造(たとえば、デバイスコンポーネント)を実現する。
【0080】
「曲げ剛性」という用語は、印加される曲げモーメントへの材料、デバイス、または層の抵抗を記述する材料、デバイス、または層の機械的特性を指す。一般的に、曲げ剛性は、材料、デバイス、または層の縦弾性係数と断面2次モーメントとの積として定義される。不均一な曲げ剛性を有する材料は、任意選択で、材料の層全体に対する「バルク」または「平均」曲げ剛性に関して記述され得る。
【0081】
「エラストマー」という用語は、本開示において使用されているように、実質的な永続的変形なしで延伸されるか、または変形され、元の形状に戻ることができるポリマー材料を指す。エラストマーは、一般に、実質的弾性変形を受ける。有用なエラストマーは、ポリマー、コポリマー、複合材料、またはポリマーとコポリマーとの混合物を含むものを含む。エラストマー層は、少なくとも1つのエラストマーを含む層を指す。エラストマー層は、ドーパントおよび他の非エラストマー材料も含み得る。有用なエラストマーは、限定はしないが、熱可塑性エラストマー、スチレン材料、オレフィン材料、ポリオレフィン、ポリウレタン熱可塑性エラストマー、ポリアミド、合成ゴム、PDMS、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレンブタジエンスチレン)、ポリウレタン、ポリクロロプレンおよびシリコーンを含む。例示的なエラストマーは、限定はしないが、ポリ(ジメチルシロキサン)(すなわち、PDMSおよびh-PDMS)、ポリ(メチルシロキサン)、部分的にアルキル化されたポリ(メチルシロキサン)、ポリ(アルキルメチルシロキサン)、およびポリ(フェニルメチルシロキサン)を含むポリシロキサンなどのケイ素含有ポリマー、シリコン変性エラストマー、熱可塑性エラストマー、スチレン材料、オレフィン材料、ポリオレフィン、ポリウレタン熱可塑性エラストマー、ポリアミド、合成ゴム、ポリイソブチレン、ポリ(スチレンブタジエンスチレン)、ポリウレタン、ポリクロロプレン、およびシリコーンを含む。一実施形態において、可撓性ポリマーは、可撓性エラストマーである。
【0082】
「封緘する」または「封緘」は、本開示において使用されているように、それが少なくとも部分的に、およびいくつかの場合には完全に、1つまたは複数の他の構造物によって囲まれるような1つの構造物の配向を指す。「部分的に封緘される」は、1つの構造物が1つまたは複数の他の構造物によって部分的に囲まれるような1つの構造物の配向を指す。「完全に封緘される」は、1つの構造物が1つまたは複数の他の構造物によって完全に囲まれるような1つの構造物の配向を指す。本発明は、部分的にまたは完全に封緘された電子デバイス、デバイスコンポーネント、および/または無機半導体コンポーネントを有するデバイスを含む。
【0083】
本発明の実施形態は、添付図面を参照しつつ、以下で詳細に例示される。以下の説明は、性質上単に例示的であるにすぎず、決して、発明、そのアプリケーション、または使用を制限することを意図していない。本発明の広範な教示は、様々な形態で実装されてよい。したがって、本発明は特定の例を含むが、本発明の真の範囲は、他の修正形態が図面、明細書、および次の請求項を調べた後に明らかになるのでそのように制限されるべきでない。明確にするために、図面中、類似の要素を識別するために同じ参照番号が使用される。方法の中の1つまたは複数のステップは、本発明の原理を改変することなく異なる順序で(または同時に)実施されてもよいことは理解されるであろう。
【0084】
引っ掻きに関連付けられている挙動を測定することは、掻痒の重症度および頻度を定量化するための一方法を提供する。ビデオ録画での引っ掻きの直接的目視検査は、最も基準になる方法であるが、そのようなスキームは手間がかかり、臨床診療では実用的ではない。手首挙動記録法は、加速度計を使用して動きを記録する方法であり、手首の運動を測定することによって引っ掻きを推定し、これはたとえば手の揺れを引っ掻きから区別することができないので正確度は最適とは言えない。個人間のばらつきを含む、引っ掻きの様々な特性の追加の態様には、追加の未解決の課題がある。したがって、既存のセンサーおよび戦略は、臨床試験または患者治療で日常的に使用するには十分な性能または実用性をもたらさない。
【0085】
本発明は、ほかにもあるがとりわけ、生理学的プロセスの振動および運動の両方のシグネチャを臨床グレードのデータ品質でキャプチャすることができる軟質の、可撓性を有する、ワイヤレス方式の、ロープロファイルセンサーを利用する戦略を開示する。このデバイスは、ADAM(ADvanced Acousto-Mechanic)センサーとも称され、皮膚にソフトに結合し、人体からの低周波(たとえば運動)および高周波(音響機械)の両方の信号をキャプチャすることを可能にする。内蔵充電式電池が、1回のワイヤレス充電で7日間の連続動作を可能にする。手背に配置されたときに、ADAMセンサーは、任意のタイプの周囲の音に影響されない方式で、運動と音響機械信号との組合せを介して、引っ掻くことに関連付けられる音響機械信号をキャプチャすることができる。特に、第二指と第三指の中手骨の間に配置されたときに、ADAMセンサーは、引っ掻くことそれ自体に関連付けられる高周波振動運動を含む広い一時的帯域幅にわたって、手首および/または腕の運動からだけでなく、指および指先からも開始される引っ掻く挙動を定量化することができる。センサーデータおよび引っ掻くプロセスの物理学の関連する理解を使用することで、引っ掻く活動を一意的に特徴付ける信号特徴が抽出され、引っ掻き検出のための機械学習ベースのアルゴリズムを訓練し、検証することができる。
【0086】
本発明の一態様において、ADAMセンサーは、生理学的プロセスの振動および運動シグネチャを動作可能に検出するための少なくとも1つの慣性測定ユニット(IMU)と、少なくとも1つのIMUからデータを受信し、受信されたデータを処理するために少なくとも1つのIMUに結合されたマイクロコントローラユニット(MCU)と、ワイヤレスデータ伝送のためのワイヤレス通信システムとを備える。音響機械センサーは、少なくとも1つのIMUから導出される約100Hz未満の低周波と約100Hzを超える高周波の両方の信号を測定するように構成されている。さらに、音響機械センサーは、高周波信号および低周波信号の両方をキャプチャするために少なくとも1つのIMUを皮膚に結合することを可能にするように皮膚装着される。高周波信号および低周波信号は、引っ掻く活動または擦る活動としての掻痒に対する生理学的反応を表す。一実施形態において、生理学的プロセスは、引っ掻く活動を含む。
【0087】
一実施形態において、複数の電子コンポーネントおよび少なくとも1つのIMUは、複数の電子コンポーネントがADAMセンサーの一端にあり、少なくとも1つのIMUがADAMセンサーの他端にあるように分離される。
【0088】
一実施形態において、ADAMセンサーは、無負荷、伸縮可能、ねじり可能、および/または折り曲げ可能である。一実施形態において、ADAMセンサーは、生体の解剖学的位置に装着するための特定の幾何学的極性を有し、可撓性および皮膚へのコンフォーマブル性を有する。
【0089】
一実施形態において、少なくとも1つのIMUは、引っ掻く活動に関連付けられる皮膚伝導振動および運動を検出するように構成されているミリメートルスケールの3軸加速度計を備える。一実施形態において、3軸加速度計は、第1のサンプルレートでx軸およびy軸に沿った加速度を検出し、第2のサンプルレートでz軸に沿った加速度を検出するように構成され、x軸およびy軸は、ADAMセンサーが取り付けられている皮膚表面に平行に配向され、z軸は、皮膚表面に垂直である。一実施形態において、第1のサンプルレートは約160~240Hzの範囲内にあり、第2のサンプルレートは約1,200~2,000Hzの範囲内にある。一実施形態において、3軸加速度計は、16ビットの分解能で約1,600Hzのサンプリングレートおよび約±2gのダイナミックレンジを有するように構成され、ここでgは重力加速度、9.8m/s2である。
【0090】
一実施形態において、ADAMセンサーは、少なくとも1つのIMUおよび複数の電子コンポーネントをサポートし相互接続するためのフレキシブルプリント回路基板(fPCB)をさらに備える。一実施形態において、fPCBは、少なくとも1つのIMUをADAMセンサーの他のコンポーネントから機械的に減結合するように設計された、複数の自由に変形可能な、蛇行インターコネクトを含むパターン化されたレイアウトを採用する。一実施形態において、複数の自由に変形可能な、蛇行インターコネクトは、可撓性および伸縮性を有し、少なくとも1つのIMUと複数の電子コンポーネントとを相互接続するように適合される。
【0091】
一実施形態において、ADAMセンサーは、また、少なくとも1つのIMU、複数の電子コンポーネント、およびfPCBを少なくとも部分的に取り囲み生体に動作可能に取り付けられる組織対向面を形成するエラストマー封緘層も備える。一実施形態において、エラストマー封緘層の組織対向面は、生体の皮膚表面にコンフォーマルに適合するように構成される。一実施形態において、封緘層は、薄い低弾性率シリコーンエラストマーから形成される。一実施形態において、エラストマー封緘層は、生体適合性シリコーンエンクロージャである。
【0092】
一実施形態において、ADAMセンサーは、生体の解剖学的位置にADAMセンサーを取り付けるための生体適合性ヒドロゲル接着材をさらに備える。一実施形態において、生体適合性ヒドロゲル接着材は、医療グレードの接着材である。
【0093】
一実施形態において、ワイヤレス通信システムは、Bluetooth low energy(BLE)無線を備える。一実施形態において、ワイヤレス通信システムは、ADAMセンサーからの出力信号を外部デバイスに送信するように構成される。
【0094】
一実施形態において、複数の電子コンポーネントは、電力を供給するための少なくとも1つのIMU、ワイヤレス通信システム、およびMCUに結合された電力モジュールをさらに備える。一実施形態において、電力モジュールは、電池を備える。一実施形態において、電池は、充電式電池である。一実施形態において、電力モジュールは、充電式電池をワイヤレスで充電するためのワイヤレス充電モジュールをさらに備える。一実施形態において、電力モジュールは、電池の誤作動を回避するための短絡保護コンポーネントまたは回路を含む故障防止要素をさらに備える。
【0095】
一実施形態において、手背に配置されたとき、ADAMセンサーは、周囲雑音に影響されない方式で、運動と音響機械信号との組合せを介して、引っ掻く活動に関連付けられる音響機械信号を検出することができる。一実施形態において、第二指と第三指の中手骨の間に配置されたときに、ADAMセンサーは、引っ掻くことそれ自体に関連付けられる高周波振動運動を含む広い一時的帯域幅にわたって、手首および/または腕の運動からだけでなく、指および指先からも開始される引っ掻く活動を定量化することができる。
【0096】
一実施形態において、引っ掻く活動は第1および第2のタイプの信号で特徴付けられ、第1のタイプの信号は手の全体的な動きに対応し、第2のタイプの信号は、第1のタイプの信号と時間的に重なり、接触面に対する指先および指の爪の運動によって生成される微妙な振動インパルスから生じる。一実施形態において、第1のタイプの信号は、数Hz以下の範囲内の特性周波数を有し、第2のタイプの信号は、数百Hzの範囲にわたる特性周波数を有し、振幅は、指に沿って、手の中に入り、最終的には手首を通って腕に達する、位置とともに急速に減衰する。一実施形態において、第1および第2のタイプの信号は、2Hzのカットオフを有するローパスフィルタおよびハイパスフィルタにデータを通すことによって識別される。
【0097】
一実施形態において、引っ掻く活動を一意的に特徴付ける信号特徴が、ADAMセンサーの出力信号から抽出され、引っ掻き検出のために機械学習ベースのアルゴリズムを訓練し、検証し、掻痒症の症状を定量化する。
【0098】
一実施形態において、ADAMセンサーは、任意の時間の引っ掻き運動を測定するために、手背、指爪、指、または手首に動作可能に配置される。
【0099】
一実施形態において、ADAMセンサーは、掻痒が診断、治療反応指標、臨床試験エンドポイント、または疾患悪化の早期警告として一症状である任意の病状において使用可能である。
【0100】
本発明の別の態様において、掻痒症の症状を定量化するための方法は、高度音響機械(ADAM)センサーを生体の解剖学的位置に取り付けること、ADAMセンサーによって、引っ掻く活動および/または引っ掻きではない活動に関連付けられる信号を検出すること、および引っ掻きの音響機械的シグネチャを評価するために信号を分析、掻痒症の症状を定量化することを含む。
【0101】
一実施形態において、信号を前記分析することは、信号を前処理して低速の大規模な運動によって引き起こされる低周波基線変動を除去し、それにより前処理された信号がz軸加速度に関連付けられたより特異的な高周波信号成分を含むようにすることと、オーバーラップのあるn秒ウィンドウをスライドさせることによって前処理済み信号をフレームにセグメント分割することと、各フレームから特徴のセットを抽出することと、予測および検証のために抽出された特徴のセットにランダムフォレスト(RF)分類器を適用することとを含む。一実施形態において、n秒ウィンドウは1秒ウィンドウである。一実施形態において、オーバーラップは、約50%~90%の範囲内のオーバーラップであり、好ましくは約50%である。
【0102】
一実施形態において、信号を前記分析することは、所与のフレーム内のデータ点の約50%未満が引っ掻く活動としてラベル付けされている場合に、各フレームに、引っ掻きではない活動を示す0のラベルを割り当て、そうでない場合に、フレームに、引っ掻く活動を示す1のラベルを割り当てることをさらに含む。
【0103】
一実施形態において、RF分類器は、訓練データセットにより訓練され、これは多数の健康な生体から収集された、複数の身体位置からの引っ掻きデータと様々なタイプの引っ掻きではない活動を含む。
【0104】
一実施形態において、RF分類器は、訓練データセットに適用される被験者1人抜き交差検証(LOSO-CV)からの結果を比較することによって最適化され、その結果は、RF分類器の最適化の基礎をなす。
【0105】
一実施形態において、最適化のためのパラメータは、RF分類器内の決定木の数と、必要最小引っ掻き(MRS)期間とを含む。
【0106】
一実施形態において、決定木の数は約10から200の範囲内、好ましくは約30である。
【0107】
一実施形態において、最適化のために、RF分類器は、1秒フレームレベルでの予測を返し、出力は、その後、ノイズを伴うアプリケーションの密度ベースの空間クラスタリング(DBSCAN)を使用してクラスタ化され、それにより近接近する2つの引っ掻きフレームを単一の引っ掻き事象として連結し、MRS持続時間は、引っ掻き事象のクラスタを形成するフレームの最小数を定義する。
【0108】
一実施形態において、MRS持続時間は約1.5秒から8.5秒の範囲内であり、好ましくは少なくとも約4.5秒である。
【0109】
一実施形態において、引っ掻く活動および/または引っ掻きではない活動は、生体の頭、腕、腹、膝、および/もしくは脚を引っ掻くこと、ならびに/または空中で引っ掻くこと、手を振ること、電話にテキストを入力すること、キーボードで打つこと、および/もしくはマウスをクリックすることをシミュレートすることを含む。
【0110】
一実施形態において、解剖学的位置は、生体の指先、指、手背、および手首である。
【0111】
本発明の実施形態によるステップの全部または一部は、ハードウェアまたは関連するハードウェアに命令するプログラムによって実装されることに留意されたい。
【0112】
本発明のさらに別の態様は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されたときに、上で開示された方法で掻痒症の症状を定量化することを引き起こす命令を記憶する有形の非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。コンピュータ実行可能命令またはプログラムコードは、上で開示された装置または類似のシステムが上で開示された方法に従って様々な操作を完了することを可能にする。記憶媒体/メモリは、限定はしないが、DRAM、SRAM、DDR RAM、または他のランダム・アクセス・ソリッド・ステート・メモリ・デバイスなどの高速ランダムアクセス媒体/メモリ、および1つまたは複数の磁気ディスク記憶装置デバイス、光ディスク記憶装置デバイス、フラッシュメモリデバイス、もしくは他の不揮発性ソリッドステート記憶装置デバイスなどの不揮発性メモリを含み得る。
【0113】
本発明によれば、非侵襲的技術は、手背からの引っ掻きの音響機械的シグネチャをキャプチャする軟質の可撓性を有するワイヤレス方式のセンサーを介して引っ掻く挙動を客観的に定量化することができる。センサーデータおよび引っ掻くプロセスの物理学の関連する理解を使用することで、引っ掻く活動を一意的に特徴付ける信号特徴が抽出され、引っ掻き検出のための機械学習ベースのアルゴリズムを訓練し、検証することができる。
【0114】
それに加えて、中等度から重度のアトピー性皮膚炎を患っている、主に小児患者のコホート(n=11)における臨床検証は、46回の、合計378.4時間の夜間睡眠を含んでいた。データは、目視観察に対して約99.0%の正確度(約84.3%の感度、約99.3%の特異度)を示している。この研究は、掻痒を引き起こす病状に対する薬物の有効性の評価から、疾患の重症度および治療反応のモニタリングに至るアプリケーションに関連する幅広い能力を示唆している。
【0115】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下でさらに説明される。本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の実施形態による例示的な器具、装置、方法、およびそれらに関係する結果が以下に示される。読者の便宜のために、実施例中でタイトルまたはサブタイトルが使用されることがあるが、これは決して本発明の範囲を限定するものではないことに留意されたい。さらに、本明細書では、特定の理論が提案され、開示されているが、それらが正しいか間違っているかにかかわらず、本発明が特定の理論または動作方式を顧みずに本発明に従って実施される限り、決して本発明の範囲を限定するべきではない。
【0116】
(実施例)
掻痒症の症状を客観的に定量化するための皮膚コンフォーマブルワイヤレスセンサー
この例示的な研究において、われわれは、生理学的プロセスの振動および運動の両方のシグネチャを臨床グレードのデータ品質でキャプチャすることができる軟質の、可撓性を有する、ワイヤレス方式の、ロープロファイルセンサーを利用する戦略を発展させる。このデバイスは、本開示においてADAM(ADvanced Acousto-Mechanic)センサーとも称され、皮膚にソフトに結合し、人体からの低周波(たとえば運動)および高周波(音響機械)の両方の信号をキャプチャすることを可能にする。内蔵充電式電池が、1回のワイヤレス充電で7日間の連続動作を可能にする。手背に配置されたときに、ADAMセンサーは、周囲雑音に影響されない方式で、運動と音響機械信号との組合せを介して、引っ掻くことに関連付けられる音響機械信号をキャプチャすることができる。特に、第二指と第三指の中手骨の間に配置されたときに、ADAMセンサーは、引っ掻くことそれ自体に関連付けられる高周波振動運動を含む広い一時的帯域幅にわたって、手首および/または腕の運動からだけでなく、指および指先からも開始される引っ掻く挙動を定量化することができる。センサーデータおよび引っ掻くプロセスの物理学の関連する理解を使用することで、引っ掻く活動を一意的に特徴付ける信号特徴が抽出され、引っ掻き検出のための機械学習ベースのアルゴリズムを訓練し、検証することができる。
【0117】
内容は、制御された実験のセットにおける引っ掻きのメカニズムに関する系統的な調査の説明から始まり、次いで、2つの被験者研究、すなわちアルゴリズム開発研究(n=10人の健常者)と臨床検証研究(n=11人の主に小児AD患者)における、センサー信号とデータアナリティクスアプローチの併用に関する検証を行う。訓練研究では、引っ掻く挙動を分類し定量化する機械学習(ML)アルゴリズムを開発するために、明確な条件下で引っ掻く場合のデータおよび引っ掻きではない場合のデータを収集することを伴う。臨床研究では、中等度から重度のAD患者のコホートにおいてセンサーおよびアルゴリズムを検証する。性能は、手動でラベル付けされたIRカメラの録画を介した直接的目視観察によって定義されたゴールドスタンダードに匹敵する。
【0118】
研究デザイン
2つのデータセットが、モデル開発(訓練)および検証のために独立して収集された。制御環境下で収集された、訓練データは、引っ掻く挙動を検出するMLアルゴリズムを開発するための基礎として使用された。検証データセットは、自然的家庭環境内のAD患者から収集された(
図5A)。これらのデータは、MLアルゴリズムの一般化可能性を評価するために使用された。合計10人の参加者(男性5人および女性5人)が訓練データ収集に参加し、年齢は22歳から27歳(24±1.6歳)であった。検証データ収集は、中等度から重度のAD患者11人(男性2人および女性9人)を伴い、年齢は4歳から24歳(10±9.1歳)であった。
【0119】
訓練データは、健常人から収集された。参加者は、引っ掻く活動および引っ掻きではない活動を実行し、各々約35秒間続けた。引っ掻く活動は、大腿、腹、上腕、ふくらはぎ、膝、および肩で衣服の上から実行された。各参加者は、次いで、肘の内側、肘の外側、前腕、手背、頬、頭、掌、および首の皮膚を引っ掻いた。擦過は、これらの研究の目的のために引っ掻きのバリエーションとみなされた。これらの引っ掻く活動は、各々、椅子に座っている間に1回、ベッドに横たわっている間に1回の計2回実行された。引っ掻きではない活動については、参加者は、手を振る、友人にテキストメッセージを送信する、ベッドの上で寝返りを打つ、何もせずに座っている、キーボードを打つ、机を叩く動作をした。これらの引っ掻きではない活動は、実際の引っ掻く活動に対する潜在的交絡因子として含まれた。各活動からキャプチャされたデータは、引っ掻くまたは引っ掻きではないの注釈を付けた各活動の説明とともに別々のファイルとして保存された。
【0120】
検証データは、Northwestern UniversityおよびAnn & Robert H. Lurie Children’s Hospital(IRB 2018-2111)のInstitutional Review Boardによって承認された臨床研究の一環として自宅環境内のAD患者から収集された。試験対象患者基準には、2歳より上の軽度から重度のAD患者を含めた。活動性皮膚感染症または全身性感染症の患者は除外された。有資格参加者は、Northwestern Medicine Department of Dermatology、およびAnn & Robert H. Lurie Children’s Hospitalの他の小児皮膚科またはアレルギー科でスクリーニングを受けた。検証データ収集のために合計11人の被験者が募集された(
図5B)。参加に同意した被験者に対して、書面による同意書が最初に取得された。次いで、臨床研究担当者が各患者の湿疹面積および重症度指数(EASI)評価および治験責任医師による全体評価(IGA)を完了した。EASIおよびIGAの完了後、各患者は、ADAMセンサーの操作の手順および夜間データ収集について訓練を受けた。訓練中、患者は、ADAMセンサーを手背に配置し、Coban自己接着ラップで固定する具体的な指示を提供された。次いで、患者は、ADAMセンサー、iPhone(登録商標)、三脚、IRカメラ、充電装置、取扱説明書、およびチェックリストが入ったパッケージを受け取った。検証データの収集中、各患者の夜間活動がIRビデオカメラで録画された。ADAMセンサーデータは、データ注釈のためにIRビデオデータと比較された。この注釈付けプロセスは、データ可視化および注釈付けソフトウェア(
図12)を使用して実行された。
【0121】
センサーの動作および性能
ADAMセンサーは、小型の、軟質で、伸縮性のあるワイヤレスデバイスであり、薄い接着材を使用して手背の曲面上に装着し、一定範囲の可能な解剖学的位置にわたって、様々な配向で位置決めされ得る(
図1A)。いくつかの実施形態において、ADAMセンサーは、センサーの一端にBLE無線、電子機器、および充電式電池を備え、他端に、16ビットの分解能で1,600Hzのサンプリングレートおよび±2gのダイナミックレンジを有するミリメートルスケールの3軸加速度計を備え、gは重力加速度で、9.8m/s
2である。ここで報告されている研究は、皮膚の表面に垂直な方向で測定された加速度に主眼を置いている。薄い低弾性率シリコーンエラストマーは、皮膚適合性を有する封緘パッケージを、これらの様々なコンポーネントを支持し相互接続するフレキシブルプリント回路基板(fPCB)に対する水密エンクロージャとして形成する。fPCBは、自由に変形可能な蛇行インターコネクトの集合体を含むパターン化されたレイアウトを採用しており、加速度計をデバイスの他のコンポーネントから機械的に減結合するために計算モデリングを使用することによって特別に設計されている。この設計は、皮膚表面の微妙な動きを正確に、制約されることなく記録するデバイスの能力を最適化する。
図1Aは、これらの「軟質の」機械的属性および全体的な「パッチ」フォームファクタを強調する画像を示している。
【0122】
ADAMセンサーの高帯域幅3軸加速度計は、引っ掻く挙動に関連付けられる皮膚伝導振動ならびに全体的な運動をキャプチャする。ADAMセンサーは、200Hzのレートでx軸およびy軸に沿った加速度をキャプチャし、z軸の加速度は、1,600Hzのレートでサンプリングされた。x軸およびy軸は皮膚表面に平行に配向され、z軸は皮膚表面に垂直に配向された。高周波成分は、外乱が指先の発生点から指に沿って手、そして最終的には手首へと伝播するにつれて減衰する。ADAMセンサーの位置は、この方式で、信号の性質および質を決定する。装着位置への依存性を調べるための実験は、センサーの異なる配置および配向で繰り返される引っ掻く活動(腕を関節動作させることによる10秒間の引っ掻き動作および10秒間の指引っ掻き動作は、各々5秒間のアイドル状態で区切られて実行された)のセットを伴った。信号の質、および装着性の考慮に基づき、理想的な位置は中手骨の第一指と第二指との間である。
【0123】
引っ掻く活動は2つのタイプの信号を生成する。第1のタイプの信号は、手の全体的な動きに対応し、特徴的な周波数は数Hz以下の範囲内にある。第2のタイプの信号は、第1のタイプの信号と時間的にオーバーラップし、接触面に当たる指先および爪の運動によって発生する微妙な振動インパルスから生じる。ここで、周波数は数百Hzの範囲に及び、指に沿った位置とともに、手の中へ急速に減衰し、最終的に手首を通過して腕に達する。詳細なマルチ加速度計の測定は、触覚インターフェースの文脈ではあるが、この第2のタイプの信号の物理学をほのめかしている。
図1Bに示されているように、指先から手首までの異なる位置における加速度の類似の直接的測定は、引っ掻く挙動に対する信号減衰のスペクトル特性を明らかにしている。測定は、
図1Bに示されている右のフレーム(
図6Aにも示されている)のように、指先、指に沿った中間点、手背、および手首に配置されたワイヤレス加速度計を伴う。テストでは、10秒間腕を関節動作させ、次いで10秒間指のみで引っ掻くことによって皮膚の表面を引っ掻くことに起因する信号をキャプチャする。皮膚の表面における加速度のピークツーピーク振幅は、指と手の表面に沿って手首までの距離が長くなるにつれて減衰する。
図1Bの空間パターンのカラーバーは、各周波数帯域における周波数毎の信号の平均電力を表す。左右の数字は、それぞれのプロットのうちの各々に対する最大値および最小値を示す。腕を関節動作させることによって引っ掻くことについては(空間パターンの第1の行)、10から100Hzの周波数範囲内において電力は開始点である指先での20dB/Hzから、手首での-32dB/Hzまで減衰する。減衰は、周波数とともに急激に増大する。具体的には、信号は、100~200Hzおよび200~400Hzの周波数範囲について、それぞれ、-19dB/Hzから-37dB/Hzに、および-20dB/Hzから-41dB/Hzに減少する。両方のタイプの引っ掻きにおいて、指先から手首までの近似的なワット損失は、0.1から10Hzの周波数範囲内で2dB、10から100Hzの周波数範囲内で12dB、100から200Hzおよび200から400Hzの周波数範囲で20dB、400から800Hzの周波数範囲内で16dBである。予想されるように、低周波での減衰は高周波での減衰よりはるかに小さい。信号の電力は、伝搬距離が長くなるにつれて、また周波数が高くなるにつれて指数関数的に減少する。指数法則の周波数および距離依存音響減衰は、式
P(x+Δx)=P(x)exp(-α
0 f
ηΔx)
を満たし、Pは信号電力であり、fは周波数であり、Δxは波動伝搬距離であり、α
0は減衰係数であり、ηは実験データのフィッティングによって取得される粘弾性材料の周波数依存特性である減衰定数である。
図1Bの実験では、ηは、指先から手背に伝搬する振動の場合に0.38の値を有する(
図6C)。これらの結果は、(1)ADAMセンサーを指先に近接近させて配置し、(2)加速度計を高帯域幅モードで動作させることによって、引っ掻きに関連付けられた非常に重要な高周波数情報が最も効果的にキャプチャされることを示唆している。
【0124】
既存の引っ掻きセンサーは、バンドを使用して手首に結合する剛体エンクロージャ内の比較的低い帯域幅の加速度計(典型的には50Hz以下)および関連付けられた電子機器を使用する。これらの既存のデバイスは、第1のタイプの信号をキャプチャすることはできるが、上で説明されている伝搬の結果と一致する、第2のタイプの信号を十分な忠実度で記録することはできない。この限界は、(1)高周波信号の小さい振幅を有する、手首という理想的でない装着位置、(2)高周波情報をキャプチャするには不十分な測定帯域幅、および(3)皮膚との機械的結合が緩いことに起因する。対照的に、ADAMセンサーは、指先/爪への近接近、高帯域幅動作、および皮膚との密接な機械的界面があることに起因して両方のタイプの信号を高精度で定量化する。結果は、引っ掻き事象を高い特異度および感度で識別する優れた能力である。
図1Cは、左のフレームに例示されているように、対向する手の人差し指で腕を引っ掻くことによって生成される代表的なデータを示している。この運動は、(1)10秒間指を固定位置に置いて手、手首、および腕を並進させ、次いで(2)10秒間指のみを10秒間関節動作させることを伴う。上で説明されている2つのタイプの信号は、2Hzのカットオフを有するローパスフィルタおよびハイパスフィルタにデータを通すことによって識別され得る。第1のタイプの信号は手の動きを表し、引っ掻き事象を検出するための基礎として働き得るが、第2のタイプの信号を含むことなく、分離して使用されるときに、第2のタイプの信号なしで、手を振る、本態性振戦、および引っ掻きに無関係の運動の他のソースからの偽陽性結果を生じ得る。上で説明され
図1Cに示されている赤色矢印によって例示されているように、重要な高周波情報は指先から発せられ、軟組織と中足骨を通ってセンサーの位置まで伝達される。これらの特徴は、指先のスライド、およびいくつかの場合において、手の運動と時間同期され、広範な周波数にわたるエネルギーを含む。身体を透過すると、特に100Hzより高い周波数で減衰が大きくなるが、数センチメートルの距離であれば、複雑な波形はよく保存される。
【0125】
これらの効果は、水平および垂直の両方の配向で手背および手首に、ならびに手首にしっかり固定されたスマートウォッチ(Apple Watch Series 4など)の上に、配置されたADAMセンサーによってキャプチャされた信号の特性の中に現れる。測定は、最初に2.5秒間空中で引っ掻く運動により指を関節動作させ、次いで2.5秒間同じ運動により皮膚の表面を引っ掻くことを伴う。
図1Dのデータの時系列およびスペクトログラム表示は、すべての場合において、空中に対して皮膚を引っ掻くことに関連付けられた高周波成分を明確に示している。
図1Dのスペクトログラムは、0.2秒のフレームサイズと0.19秒のオーバーラップ持続時間を有するハミングウィンドウを使用している。これらの識別特徴は、最高~600Hzまでの周波数で広がり、いくつかのエネルギーはさらに最高800Hzまで広がるが、最も著しい振幅は最高200Hzまでの範囲内にある。この結果は、センサーが手背の橈骨側半分にあるという条件で、装着位置への依存性は控えめであるにすぎないことを示している。前に説明され
図1Dで赤い点で強調されているように、単に加速度計がADAMセンサーの前面にあるという理由から、配向はほとんど影響しない。手首では、高周波数成分はデータ中の弱い特徴としてのみ現れ、
図1B(
図6B)に示されている前の減衰結果と一致する。信号強度が高い手の甲に装着されると、ADAMセンサーの軟質物理的特性および医療グレードの低刺激性使い捨て接着材は、
図7に示されているように、様々な手および手首の運動を伴う多くの日常的活動に、堅牢でありながら適合する、また刺激をもたらさない適合する界面をサポートする。
【0126】
引っ掻きを特徴付ける
引っ掻く活動は、指先を表面に押し当て、指先を動かし、摩擦を引き起こす動きの集まりを指す。指先と表面の間の摩擦は、表面に沿って伝搬する振動を発生する。指先と表面の間の振動は、限定はしないが、引っ掻く速度、引っ掻く強さ、引っ掻くモード(たとえば、指だけを使用するか、腕全体を動かすか)を含む多くの要因に依存するので、引っ掻き信号は、互いに異なり得る。これらの要因に関連付けられる時間および周波数特性を探るための実験は、頭、腕、膝、および脚を引っ掻くこと、ならびに手を振る、テキストメッセージを送る、キーボードを打つ、コンピュータマウスをクリックする、空中で指を動かすなどの様々な引っ掻きではない事象を含んでいた。
図13は、これらの交絡因子に対する予測ラベリングを示している。システムは、空中で指を引っ掻くこと、手を振ること、マウスをクリックすることを区別する上で、最も優れた性能(0.7以上)を示す。
【0127】
引っ掻くことは、内的刺激および外的刺激の両方に反応し、個人差がある。上で要約され
図1B~
図1Dに示されているテストで調べられたように、引っ掻くことは、肘、手首、または指の関節動作だけを介して行われ得る。上腕全体を関わらせるモードでは、指は表面を押して静止し、肘関節で関節動作する前腕の動きが引っ掻き動作を駆動する。他方では、指引っ掻きモードは、主に指の局所的な動きを伴い、前腕または手首の著しい動きは伴わない。これら2つのモードの混合も可能である。引っ掻く場所および掻痒の程度によって、個人は異なる引っ掻きのモードを交換可能に使用する。任意のタイプの引っ掻き動作について、強度も重要である。接触点における力は、指先と表面との間の摩擦を決定し、したがって頻度および速度とともに、引っ掻き事象の強度のメトリックとして考えられ得る。これらの要因は、ADAMセンサーによってキャプチャされる信号の違いに寄与する。様々なタイプの引っ掻く活動に対する系統的研究は、一般化可能な引っ掻き検出アルゴリズムの開発に対する重要な先駆けである。
【0128】
この目的のための対照実験は、
図1Dに示されているように、ADAMセンサーを左手背に付けた状態で、手背(DH)と前腕(FA)(
図2A)の2つの身体位置を伴い、2つの位置は高強度の後に低強度で腕のみを関節動作させ、次いで指のみを関節動作させて引っ掻かれる。
図2Aの青い実線は、引っ掻き運動の平面に直交する方向での、皮膚の表面の振動運動からの時間依存z軸加速度を示している。ピークツーピーク振幅は、予想されるように、低強度の場合に比べて高強度の引っ掻きに対して大きい。たとえば、高強度のFA引っ掻き(45~55秒)に対する信号の振幅は1.5gであり、これは低強度の場合(65~75秒、0.7g)に比べて2倍以上大きい。他の何らかの形で類似のシナリオであるが指だけを関節動作させることによる場合、高(125~135秒)および低(145~155秒)の振幅は、それぞれ、0.4gと0.15gである。腕のみを関節動作させた場合(0~80秒)の結果は、各引っ掻き位置(HD、FA)および強度レベルに対する指の場合(80~160秒)と比べて大きな振幅を示している。これらの信号に関連付けられている周波数領域の内容は、
図1Cと同じウィンドウおよびフレームサイズを使用してプロットされたスペクトログラム(
図2A)として現れる。すべての場合において、指のみで低強度であっても、高周波数成分、特に最高~200Hzまでは、データ中で際立って特徴的である。
図8のように、高強度および低強度の引っ掻き事象の正規化されたスペクトル特性は概して同じである。
【0129】
5つの異なる身体位置(頭、腕、腹、膝、および脚)での引っ掻く活動、ならびに引っ掻きではない活動(空中で指により引っ掻く、手を振る、携帯電話でテキストを作成する、キーボードを打つ、およびマウスをクリックすることをシミュレートする)では、信号の重要な違い、および一連の実用的シナリオにおける高周波数成分の重要性を強調する(
図2Bおよび
図2D)。特に、すべての引っ掻く活動に対するデータは、位置に関係なく、200Hzより高い有意なエネルギーを有する(
図2C)。前の説明に基づき予想されるように、大半の引っ掻きではない活動のスペクトログラムは、この周波数範囲では最小エネルギーを示す(
図2E)。テキストメッセージを作成する、キーボードを打つ、およびコンピュータマウスをクリックすることは例外であり、データはこれらの動作のインパルス成分に起因する100Hzから200Hzの寄与を示している。それにもかかわらず、全周波数にわたるスペクトル成分、信号の時間的特性、および低周波数情報は、そのような活動を引っ掻きから区別するのに役立ち得る。言い換えると、記録された信号の高周波成分は、引っ掻きの重要な指標であるが、これらは、特定の、比較的小さな、交絡活動のセットに対して高い選択性を達成するためにはデータの他の特徴とともに使用されなければならない。さらに、夜間の引っ掻きの測定は、タイピングまたはテキストメッセージの作成などの覚醒時の活動から区別する必要性を軽減する。例示されているように、
図14~
図15は、聴診器からの音に類似した方式で解釈され得るオーディオファイルへの生データの変換を伴う手動信号解析の一形態を強調している。上で説明されているような様々な活動は、この方式で引っ掻きから即座に区別され得る。これらの総合的な考察は、データ分析への機械学習アプローチを動機付け、限定はしないが、高周波数成分を含む、様々な特徴が感度と特異度の比類のない組み合わされたレベルに対する分類スキームに寄与する。
【0130】
手装着対手首装着の引っ掻き感知
上で述べたように、引っ掻く挙動は、指、手首、肘、または肩の関節動作を介して起こり得る。手首装着型センサーの重要な限界は、指のみの引っ掻きに関連付けられた動きを測定することができないことと、手の振りと引っ掻きとの区別が難しいことである。対照研究が、引っ掻きを定量化するためのモバイルアプリケーションが組み込まれた手首固定システム(たとえばApple Watch Series 4)と比較したADAMセンサーの性能を明らかにしている。
【0131】
図3Aの左フレームに示されているように、AppleWatch Series 4は左手首に配置され、ADAMセンサーは左手背に配置された。この構成は、直接的比較を目的として、両方のデバイスから収集されたデータを同期させることを意図されていた。AppleWatch Series 4を左手背にしっかり結合することは、スマートウォッチが手首の周りで自由に回転することができないことを確実にすることによって検証された。同様に、ADAMセンサーをきつく取り付けることは、左手を曲げたり伸ばしたりすることによって検証され、ADAMセンサーが皮膚に接触していることを確実にした。センサーを配置した後、
図3A~
図3Bの左フレームに示されている引っ掻く活動および引っ掻きではない活動のセットが順番に実行された。引っ掻く活動の1つは、腕/手全体の動きを伴うが、他の引っ掻く方法は指のみを使用した。それに加えて、単に手を振る活動は、単純な手の動きを引っ掻く活動から区別する能力を決定するために実行された。
【0132】
この比較は、引っ掻きの2つのモードに主眼を置き、一方のモードは腕の関節運動によるものであり、もう一方は指のみによる引っ掻きである。腕の関節運動による引っ掻く活動を調べるため、
図3Aに示されているように、膝引っ掻き、手振り、腹引っ掻き、および頭引っ掻きを5秒間の休止を挟んで10秒間連続して行うことを含み、青色の線は、生データの時系列を表し、赤色の線は、最終的な二項分類の結果を示し、0および1はそれぞれ引っ掻きではないと引っ掻くに対応する。
図3Aの黒い破線は、アプリItchTrackerからの分類結果を強調したもので、0が引っ掻きではない活動を、0.5が引っ掻く活動を表す。ItchTrackerは膝の引っ掻きと腹の引っ掻きをキャプチャするが、手の振りと頭の引っ掻きを誤分類している。前者は、引っ掻きの検出に対して手の運動に大きく依存していることから生じる。後者は、おそらく、頭を引っ掻くことが手首の短い範囲の運動しか伴わないので生じるのであろう。ADAMセンサーは、これらのおよび他のシナリオのすべてにわたって良好な性能を示している。
【0133】
追加の実験では、指関節動作のみを伴う引っ掻きモードを調べている(
図3B)。腕を使用して引っ掻く前の比較と同様に、これら4つの活動は、膝を引っ掻くこと、空中で引っ掻くことをシミュレートすること、腹を引っ掻くこと、頭を引っ掻くことを含む。これらの活動では、ItchTrackerは、手首の運動の欠如に起因して引っ掻く事例を検出しない。他方では、ADAMセンサーは、すべての事例を検出し、引っ掻きを擬似的引っ掻きからであっても正確に識別する(
図3B)。空中で引っ掻くシミュレートされた運動は、ADAMシステムの追加テストを提供する。引っ掻きと擬似的引っ掻きの大きな違いは、100Hzより高い周波数シグネチャの存在である。ADAMシステムは800Hzと高い周波数をキャプチャすることができるが、Apple Watchなどの大半の手首固定加速度計は、50Hz程度の高さの周波数しか記録しない(すなわち、100Hzのサンプリングレート)。
【0134】
データ分析および検証
この例示的な研究において、引っ掻くことに関する重要な情報は主に面外皮膚振動に関係するのでわれわれはz軸加速度データに主眼を置いた。生z軸加速度データは、
図4Cに例示されているような信号処理パイプラインを通して処理された。第1のステップでは、生データは、前処理ブロックに渡され、低速で大規模な運動によって引き起こされるデータの基線変動を除去した。したがって、低周波基線変動は、信号処理パイプラインから除去され、より固有の高周波数信号成分がより強調され得る。その後、前処理済みz軸加速度データは、オーバーラップを含む1秒ウィンドウをスライドさせることによっていくつかのフレームにセグメント分割された。訓練については、90%のオーバーラップが使用され、テストでは、50%のオーバーラップが使用された。各フレームは、所与のフレーム内のデータ点の50%未満が引っ掻く活動としてラベル付けされた場合に、引っ掻きではない活動を示す0のラベルを割り当てられた。そうでない場合、そのフレームは、引っ掻く活動を示す1のラベルを割り当てられた。各フレームから、
図5Cに示されている特徴のセットが抽出され、これらの特徴は、ランダムフォレスト(RF)分類器を訓練し検証するために使用された。
【0135】
ランダムフォレスト(RF)分類器および被験者1人抜き交差検証(LOSO-CV)の両方が、アルゴリズム検証のための例示的研究で使用されている。交差検証(CV)は、分類モデルを評価するシンプルで効果的な方法を提供するので、多くの機械学習アプリケーションにおいて頻繁に使用される。CVでは、フォールドの数は、データが訓練セットおよびテストセットにどのように分割されるかを指定するパラメータである。LOSO-CVは、現実世界のデータに対してうまく機能することが知られているので、モデルの性能を評価するために使用される。モデルが、訓練データセットで最適化された後、われわれは、訓練済みモデルが自然界で収集された臨床検証データセットに適用される交差研究検証でモデルの性能を評価した。交差研究検証では、訓練データセットおよび検証データセットが独立して収集されたので、アルゴリズムの一般化可能性を検証する。
【0136】
RF分類器は、引っ掻く活動の自動検出を可能にする。訓練データセットは、
図4A~
図4Bに示されているように、10人の健常被験者から収集された15の異なる身体位置および6つのタイプの引っ掻きではない活動からの引っ掻きデータを含む。訓練データセットに適用されたLOSO-CVの結果は、RF分類器の最適化の基礎となる。このプロセスにおいて、単一の参加者からのデータセットがテストデータセットとして働き、残りのデータは訓練を可能にする。すべての参加者にわたってこのプロセスを繰り返すことで、各参加者のデータが1度だけテストに使用されることを可能にする。分類性能は、検証のすべての反復からの平均に対応する。LOSO-CVは、k分割CVアプローチとは異なり、非現実的に高い分類正確度で分類器が被験者のデータセット内の交絡関係を学習することを防ぐ。
【0137】
RFモデルは、LOSO-CVの結果を比較することによって最適化され得る。この最適化のためのパラメータは、RF分類器における木の数、および必要最小限の引っ掻き持続時間を含む。
【0138】
RF分類器は、データセットの様々なサブサンプル上で多数の決定木分類器を当てはめるメタ推定器である。フォレスト内の木の数の選択は、モデルの複雑度と性能の適正なバランスをとる。数を増やすと訓練時間が長くなり、さらにはオーバーフィッティングの潜在的可能性もある。したがって、最適化では、異なる数の推定量、10本から200本の木を調べ、LOSO-CVの性能を比較することに主眼を置く。分類性能は、約30本の決定木で最大値に達する。
【0139】
必要最小引っ掻き(MRS)期間は、もう1つの最適化パラメータである。
図4Cに示されているように、信号処理パイプラインでは、RF分類器は、1秒間フレームレベルでの予測を返す。出力は、その後、ノイズを伴うアプリケーションの密度ベースの空間クラスタリング(DBSCAN)を使用してクラスタリングされる。DBSCANの目的は、近接近する2つの引っ掻きフレームを単一の引っ掻き事象として連結することである。
【0140】
DBSCANでは、クラスタリングルールを定義する2つの重要なパラメータepsおよびmin_samplesが最適化される必要がある。パラメータepsは、あるサンプル(この研究ではフレーム)がクラスタに属するかどうかを決定するためにクラスタが取り得る最大ステップサイズを指定する。たとえば、5フレームのepsは、互いから5以下のフレーム数だけ離れている2つのフレームが単一のクラスタとしてマージされ得ることを意味する。時間的距離の観点では、これはスライディングウィンドウ分析における1秒フレームサイズおよび50%フレームオーバーラップがある3秒に相当する。パラメータmin_samplesは、クラスタを形成するために必要な最小サンプルを決定する。たとえば、5フレームのmin_samplesは、クラスタは5個以上のサンプル(このアプリケーションでは5個のフレーム)を含むことを意味する。5フレームのmin_samplesであることの意味は、システムが一連のフレームを引っ掻く活動として検出するために、フレームとフレームとの間に50%のオーバーラップがあると仮定して3秒に対応する、少なくとも5つの連続する引っ掻きフレームが必要であるということである。最適な値を見つけるため、
図10に示されているように、epsおよびmin_samplesの値が、訓練データおよび検証データセットの両方について、2フレーム(1.5秒)から16フレーム(8.5秒)まで、1フレーム増分で変化させられた。これらの結果は、10フレーム(5.5秒)のeps、および8フレーム(4.5秒)のmin_samplesが、最高の性能を達成することを示唆している。これは、引っ掻く活動を形成するために、最短4.5秒の連続する引っ掻きが必要であることを意味する。このアルゴリズムは、5.5秒未満の引っ掻きではない活動で隔てられる、2つの連続する引っ掻きフレームを同じクラスタとして検出することができる。簡単に言えば、アルゴリズムが引っ掻くことを引っ掻き事象としてクラスタ化するためには少なくとも4.5秒間連続的に引っ掻かなければならず、人は
図10に示されているように、アルゴリズムが引っ掻きを以前に特定された引っ掻き事象から分離することなく5.5秒間まで引っ掻きではない活動に携わることを許される。min_samplesが8フレーム(4.5秒)から3フレーム(1.5秒)に減らされると、
図10に示されているように、F1スコアは90%のままであったが、特異度は80%に低下した。この分析は、引っ掻き感度と特異度との間にトレードオフの関係があることを示している。
【0141】
MRSは、引っ掻き事象のクラスタを形成するフレームの最小数を定義し、パラメータmin_samplesに対応する。
図10に示されているように、1.5から8.5秒のMRS値は、LOSO-CVを使用する異なる分類性能をもたらす。MRS持続時間を最大4.5秒まで延ばすと性能は向上し、その後8.5秒までの値に対しては一定のままである。改善された性能は、MRSのさらなる増加とともに達成され得るが、リターンは減少する。以下の分析では、MRSは少なくとも4.5秒と定義される。
【0142】
最適化されたRF分類器は、単一の被験者が様々な引っ掻き(頭、腕、腹、膝、および脚)ならびに引っ掻きではない活動(空中で引っ掻く、手を振る、電話でテキストを作成する、キーボードを打つ、マウスをクリックすることをシミュレートする)を実行することから収集されたデータに適用される。対応する時系列z軸加速度データは、
図4Dにあり、関連付けられる分類結果は、
図4Eにある。
【0143】
最適化されたRF分類器(30本の木)およびMRS持続時間(4.5秒)により、LOSO-CVは、健常者訓練データセットに適用され、性能を評価することができる。それらの結果は、平均精度が94.4%であり、平均感度が87.8%であることを示している。全体的な正確度は89.1%である。Table 1(表1)は、全体的性能を要約したものである。
【0144】
アルゴリズム検証データセット上で訓練されたRF分類器は、臨床検証研究からの患者データセット上で直接的に使用され得る。この評価は、Table 1(表1)に示されているように、84.3%の感度および99.3%の特異度で、82.5%の平均精度、84.3%の平均感度、99.0%の全体的正確度を明らかにしている。臨床研究は、各被験者の利き手にADAMセンサーが装着された状態で全46夜から手動でラベル付けされたデータセットを含んでいた。
【0145】
【0146】
明らかに、本発明による分類結果は、自動引っ掻き検出に関する先行研究のほとんどからの著しい改善である。Table 2(表2)は、ビデオ録画データで厳密に検証された関連研究の要約である。
図14は、ADAMセンサーを身に着けているAD小児患者が引っ掻いている様子を例示するビデオのスクリーンショットである。IRカメラは、その後コード化される引っ掻く挙動を示している。引っ掻き強度は、引っ掻き事象の始まりから終わりまで変化しており、IRビデオでは厳格な引っ掻き運動として、ADAMセンサーデータでは大きな振幅信号として反映されていることに留意されたい。
【0147】
【0148】
本研究で最適化された目的分類器はRF分類器であったが、ロジスティック回帰および勾配ブースティングなどの他の分類器の性能は、訓練データを使用して、比較のために計算され,Table 3(表3)にリストされている。ロジスティック回帰および勾配ブースティング分類器は、感度が低いことを示した。勾配ブースティング分類器は、低い感度(67%)を有していたが、これは最大の特異度を示した。われわれはRF分類器により最良の感度、F1および正確度を観察したが、最良の特異度は勾配ブースティング分類器で観察された。
【0149】
【0150】
評価者間信頼性
臨床検証研究では、赤外線(IR)ビデオがグランドトゥルースとして使用された。注釈は、目視検査と人間の判断とに基づき実行された。注釈の評価者間信頼性を評価するため、注釈は、検証データセット内の3人の患者からのデータに対して、異なる研究者(EA、HC)によって再び実行された。2人の研究者からのラベルは、フライスのカッパ係数を使用して比較された。カッパの平均は0.88であった。LandisおよびKochによると、このようなカッパ値を有する注釈は、よく呼応していると考えられる。
【0151】
論考
掻痒は、皮膚および皮膚以外の病状にわたって小児と成人の両方に影響を及ぼす最も一般的な臨床疾病症状の1つである。掻痒の有病率およびその生活の質への深刻な影響にもかかわらず、臨床診療および家庭のいずれかでの使用のために、掻痒および掻痒に関連付けられる引っ掻く挙動を完全に特徴付ける正確で便利な方法は存在しない。掻痒を正確かつ確実に評価することができる技術は、薬品を開発する、掻痒重症度を定量化する、および治療反応をモニタリングする上で極めて重要なツールとして働く。
【0152】
手動ラベル付けによるビデオ監視は、引っ掻く挙動の正確な識別および定量化を可能にするのでゴールドスタンダードと考えられている。しかしながら、この技法は手間がかかり、自動化が困難である。これらの欠点は、関連付けられるプライバシーに対する様々な懸念と相まって、このアプローチを日常的に使用するのは現実的ではない。手首固定加速度計は、幅広い臨床研究において客観的データを収集するための一般的なツールを代表し、感度は十分であるが特異度は低い。いくつかの研究では、AD疾病重症度および生活の質との相関が低いことに一部は起因して、挙動記録データの臨床応用性に疑問を投げかけている。機械学習アルゴリズムと組み合わせてスマートウォッチを使用する新しいアプローチは、単純な挙動記録ベースの方法に比べて優れている。しかしながら、これらのシステムでは、指のみの引っ掻きを検出することができず、手を振ることおよび関係するジェスチャーは、引っ掻きとして誤分類される(
図3A~
図3B)。一風変わったアプローチの一例として、Noroらは、骨伝導を通して引っ掻き音を測定する腕時計型音検出システムを開発した。正確度はビデオ分析の正確度に近づけることができるが、マイクロフォンベースのシステムは、プライバシーに対する著しい懸念を伴い、周囲雑音による性能低下がある。
【0153】
ここで報告されているADAMセンサーおよび引っ掻きアルゴリズムは、重要な利点を提供する。第1に、デバイスが軟質可撓性であることは、幅広い患者の手にコンフォーマルに適合することを可能にし、4歳程度の子どもから完全に成長した大人まで、一定範囲の自然な活動の間に柔らかく、しかししっかりと密着したままであることが検証されている。ADAMセンサーのこのような態様は、夜間掻痒症などの病的症状の長期的変化を調べるのに特に適している。たとえば、ADAMセンサーにより、長期間(10日以上)センサーを身に着けたAD患者のサブセットにおいて引っ掻きの夜間変動をわれわれは有意に観察した。このことは、一晩ではなくより持続的な着用期間にわたって引っ掻き持続時間を平均することが必要になる可能性が高いことを意味している(
図11)。第2に、このシステムは、引っ掻きに関連付けられる低周波および高周波の両方の音響機械的シグネチャをキャプチャする。引っ掻きによって発生する「音響」信号を、マイクロフォンを必要とすることなく効果的にキャプチャすることができることから、患者のプライバシーを確実に保護し、騒がしい環境でも信号品質を落とすことなく性能を発揮させる。最後に、このシステムは、防水加工され、ワイヤレス方式を採用し、充電式であり、7日間の連続動作効率を有する。これらの特徴は、臨床診療および研究試験の両方において、使いやすさを高め、ユーザの負担を軽減する。
【0154】
しかしながら、いくつかの限界に注意しなければならない。第1に、ここで報告された臨床検証研究では、IRカメラ撮影時間を評価するのに高度な手作業が必要なことに一部は起因して、n=11人のみの被験者を伴う。しかしながら、これは、データラベリングに要した時間的強度を考慮すると、引っ掻きについてこれまでに研究された最大のコホートのうちの1つを代表する(Table 2(表2))。将来的な作業は、ADを越える幅広い臨床病状にわたって、ここで研究された患者よりもさらに若い患者により、追加患者試験を行うことを含む。それにもかかわらず、本論文で得られた知見は、自発的な引っ掻く活動を実行する健常被験者に対する訓練が、ADに罹患したもっぱら小児科集団における臨床データにうまく適用することができることを明確に示している。これらの結果は、ADAMデバイスからのデータにおける固有の区別する特徴から導き出されたものであり、一般化可能性の顕著なレベル、さらには患者集団に合わせて手直しされたアルゴリズムを開発する機会のあることも示唆する。第2に、ここで説明されている引っ掻きの測定はすべて、被験者の利き手のみに主眼を置いている。反対側の手にもセンサーを追加すれば、追加の情報が提供される。以前の研究は、利き手と利き手でない手の引っ掻き傾向に差がないことを示しており、単一のセンサーで著しい情報損失を引き起こさないことを示唆している。第3に、臨床検証研究は、AD患者のみに主眼を置いている。将来の研究では、掻痒が主症状である他の病状への応用を調査する。最後のコメントとして、ADは、特に小児において、有意な程度で睡眠に影響を及ぼす。ADAMセンサーそれ自体は、睡眠を評価するためのゴールドスタンダードな方法である、睡眠ポリグラフ検査に対して、睡眠段階を繰り返すことができる。追加の研究に対する当面の機会は、付随して引っ掻きおよび睡眠の両方を評価するために、2つの時間同期ADAMセンサーを使用することにある。
【0155】
結論
この例示的な研究は、運動および音響機械信号の両方に関連付けられた特徴をキャプチャする高周波3軸加速度計データを使用して引っ掻く活動を検出するための、固有の、手装着され、軟質の、可撓性のセンサーおよびデータ分析パイプラインを報告している。10人の参加者により実施された訓練研究から、引っ掻く活動の検出は、89.1%の全体的正確度を有し、感度は87.8%、特異度は88.1%である。11人の参加者による臨床検証研究で、家庭自然環境であっても、全体の正確度は99.0%であり、感度は84.3%であり、特異度は99.3%であることを明らかにしている。ADAMセンサーの小型で可撓性を有するという特性および再利用可能性は、研究および臨床ケアの両方の環境での展開を可能にする重要な特徴である。本明細書において提示された有望な結果は、アトピー性皮膚炎患者だけでなく、全身性掻痒疾患を患っている患者においても、引っ掻く活動を正確にキャプチャする潜在的可能性を有する強力な方法論的ツールとしての有用性を強調している。
【0156】
本発明は、ほかにもあるがとりわけ、手背からの引っ掻きの音響機械的シグネチャをキャプチャする軟質の可撓性を有するワイヤレス方式のセンサーを介して引っ掻く挙動を客観的に定量化する非侵襲的技術を介している。健常被験者(n=10)から収集されたデータで検証した機械学習アルゴリズムは、スマートウォッチベースのアプローチと比較して優れた性能を示している。中等度から重度のアトピー性皮膚炎を患っている、主に小児患者のコホート(n=11)における臨床検証は、46回の、合計約378.4時間の夜間睡眠を含んでいた。データは、目視観察に対して約99.0%の正確度(約84.3%の感度、約99.3%の特異度)を示している。この研究は、掻痒を引き起こす病状に対する薬物の有効性の評価から、疾患の重症度および治療反応のモニタリングに至るアプリケーションに関連する幅広い能力を示唆している。
【0157】
本発明の例示的な実施形態の前述の説明は、例示および説明を目的としてのみ提示されており、網羅的であること、または本発明を開示されている正確な形態に制限することを意図されていない。上記の教示に照らして、多数の修正形態および変更形態が可能である。
【0158】
実施形態は、技術の原理およびその実用的用途を説明するために選択され説明されており、それにより当業者が企図された特定の用途に適しているような様々な修正形態とともに本発明および様々な実施形態を利用することを可能にする。代替的実施形態は、その精神および範囲から逸脱することなく本発明が関連する技術分野の当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、前述の説明およびそこに記述されている例示的な実施形態よりもむしろ添付の請求項によって定められる。
【0159】
特許、特許出願、および様々な刊行物を含み得る、いくつかの参考文献は、本発明の説明において引用され、説明される。このような参考文献の引用および/または議論は、本発明の説明を単に明確にするだけのために提供されるものであり、そのような参考文献は本明細書において説明されている発明の「従来技術」であることを認めるものではない。本明細書において引用され、議論されるすべての参考文献は、その全体が参照により、また各参考文献が参照により個別に組み込まれている場合と同じ程度に参照により組み込まれている。
【0160】
(参考文献)
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【国際調査報告】