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▶ トルンプフ レーザー− ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2024-513586開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用
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  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図1
  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図2
  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図3
  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図4
  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図5
  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図6a
  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図6b
  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図7
  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図8a
  • 特表-開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用 図8b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】開始段階と終了段階における強度の再分配を伴う、曲げられた金属含有バー型導体をレーザ溶接する方法、対応するバー型導体の配置、そのようなバー型導体の配置の使用
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20240318BHJP
   B23K 26/32 20140101ALI20240318BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240318BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240318BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240318BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B23K26/21 L
B23K26/32
B23K26/00 N
B23K26/082
B23K26/064 K
H01R43/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562977
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022059224
(87)【国際公開番号】W WO2022218804
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】102021109623.5
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ボックスロッカー
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ シュペーカー
(72)【発明者】
【氏名】ティム ヘッセ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ベラネーク
【テーマコード(参考)】
4E168
5E063
【Fターム(参考)】
4E168BA06
4E168BA28
4E168BA87
4E168CB04
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA40
4E168EA17
4E168KA04
5E063GA10
5E063XA01
(57)【要約】
本発明は、バー型導体(1a、1b)をレーザ溶接する方法に関し、バー型導体(1a、1b)は、アルミニウム含有量が少なくとも75重量%のアルミニウム含有棒状導体材料からなる。2本のバー型導体(1a、1b)は、少なくとも一部が重なるように隣接して配置され、加工用レーザビーム(11)によって溶接される。互いに隣接するバー型導体(1a、1b)の共通のベース面(7)に溶接ビード(19)が形成され、溶接ビードがバー型導体(1a、1b)を互いに接続する。本発明は、加工レーザビーム(11)の溶接輪郭(12)がバー型導体(1a、1b)に対して相対的に配置されるように、バー型導体(1a、1b)がレーザ溶接されている間に加工レーザビーム(11)が案内される。バー型導体(1a、1b)に対する溶接輪郭(12)に沿った加工レーザービーム(11)の進行速度vは、バー型導体(1a、1b)がレーザ溶接されている間に選択され、バー型導体(1a、1b)がレーザ溶接されている間、溶接ビード(19)は、液体バー型導体材料(15)が蓄積する非液体酸化皮膜(14)を有し、バー型導体(1a、1b)がレーザ溶接されている間、非液体酸化皮膜(14)は、溶接輪郭(12)に対応する方法で、加工用レーザビーム(11)によって、上方を向く溶接ビード(19)の端面(20)のみで部分的に破断され、バー型導体(1a、1b)がレーザ溶接されている間、非液体酸化皮膜(14)は、溶接ビード(19)の周囲領域(21)において損傷されないままであり、周囲領域は、上端面(20)から離れ、バー型導体(1a、1b)に向かって下方に延び、溶接ビード(19)全体について延びている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バー型導体(1a、1b)、好ましくは、曲げられたバー型導体(1a、1b)、特に、電動機又は発電機用のヘアピンをレーザ溶接する方法であって、
前記バー型導体(1a、1b)は、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%のアルミニウム含有量を有するアルミニウム含有バー型導体材料からなり、
2つのバー型導体(1a、1b)は、部分的なオーバラップ部を有して互いに隣り合って配置されており、加工用レーザビーム(11)によって互いに溶接され、前記バー型導体(1a、1b)を互いに接続する溶接ビード(19)が、互いに隣り合う前記バー型導体(1a、1b)の共通のベース表面(7)上に形成され、
特に、前記共通のベース表面(7)は、水平に整列しており、
前記バー型導体(1a、1b)のレーザ溶接中、前記加工用レーザビーム(11)は案内され、このプロセスにおいて、前記加工用レーザビーム(11)の溶接輪郭(12)が前記バー型導体(1a、1b)に対して配置され、前記バー型導体(1a、1b)に対する前記溶接輪郭(12)に沿った前記加工用レーザビーム(11)の進行速度vは、
- 前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接中、前記溶接ビード(19)は非液体酸化物膜(14)を有し、前記非液体酸化物膜(14)の内側に液体バー型導体材料(15)が蓄積し、
- 前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接中、前記非液体酸化物膜(14)は、前記溶接輪郭(12)に対応するように、前記溶接ビード(19)の上向きの端面(20)上のみが、前記加工用レーザビーム(11)によって部分的に破壊されて開口し、
- 前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接中、前記非液体酸化物膜(14)は、上端面(20)から下方に、前記バー型導体(1a、1b)に向かって、前記溶接ビード(19)の全体の周りに延びる前記溶接ビード(19)の周囲領域(21)内において無傷のままである
ように選択される、
方法。
【請求項2】
前記加工用レーザビーム(11)の前記溶接輪郭(12)は、前記共通のベース表面(7)の外周部(18)から前記溶接輪郭(12)の最小距離d、及び前記最小距離dが位置する方向に沿った前記共通のベース表面(7)の範囲Lに関して、
d≧0.15*L、好ましくは、d≧0.20*L、特に好ましくは、d≧0.25*Lが成り立つように、前記バー型導体(1a、1b)に対して配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加工用レーザビーム(11)の前記溶接輪郭(12)は、前記共通のベース表面(7)の外周部(18)から前記溶接輪郭(12)の最小距離dに関して、
d≧0.6mm、好ましくは、d≧0.8mm、特に好ましくはd≧1.0mm
が成り立つように、前記バー型導体(1a、1b)に対して配置される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記バー型導体(1a、1b)に対する前記加工用レーザビーム(11)の前記溶接輪郭(12)に沿った前記加工用レーザビーム(11)の前記進行速度vに関して、
v≦1600mm/s、好ましくは、v≦1200mm/s、特に好ましくは、v≦800mm/s
が成り立つ、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザ溶接は、酸素含有雰囲気、特に空気中で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の少なくとも時間的に後半に、前記非液体酸化物膜(14)が無傷のままの前記周囲領域(21)は、前記溶接ビード(19)の高さ(Hsp)の少なくとも3/4にわたって、好ましくは、前記溶接ビード(19)の前記高さ(Hsp)の少なくとも9/10にわたって延びる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記2つのバー型導体(1a、1b)は、端部領域(5a、5b)が互いに平行に、互いに対して載置された状態で配置され、
特に、前記バー型導体(1a、1b)の前記端部領域(5a、5b)は、互いに広範に押し付けられ、
前記バー型導体(1a、1b)の正面側端面(6a、6b)は、前記バー型導体(1a、1b)の前記端部領域(5a、5b)の長手方向範囲の方向に対してほぼ同じ高さに位置し、
前記加工用レーザビーム(11)は、前記バー型導体(1a、1b)の前記正面側端面(6a、6b)に向けられ、したがって、前記正面側端面(6a、6b)は、前記溶接ビード(19)が形成される前記共通のベース表面(7)を提供する
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記バー型導体(1a、1b)の前記端部領域(5a、5b)はほぼ垂直上方に向けられ、
特に、前記正面側端面(6a、6b)は、ほぼ水平に整列される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加工用レーザビーム(11)は、前記正面側端面(6a、6b)にほぼ垂直に入射する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記バー型導体(1a、1b)は、前記共通のベース表面(7)の少なくとも近傍に、特に、各端部領域(5a、5b)に、それぞれ、縁長さ(Lkurz、L)が0.2mm~10mm、好ましくは1mm~8mm、特に好ましくは2mm~6mmの矩形の断面(9a、9b)を有し、
特に、各バー型導体(1a、1b)の場合、長縁の長さLは、短縁の長さLkurzの2倍であり、互いに溶接される前記2つのバー型導体(1a、1b)の前記断面(9a、9b)は同じである、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
各長縁(16)の方向における前記溶接輪郭(12)と前記共通のベース表面(7)の外周部(18)との間の最小距離dは、対応する前記長縁の長さLの20%~40%、好ましくは25%~35%であり、各短縁(17)の方向における前記溶接輪郭(12)と前記共通のベース表面(7)の前記外周部(18)との間の最小距離dは、前記短縁の長さLの2倍の20%~40%、好ましくは25%~35%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加工用レーザビーム(11)は、
0.5kW≦P≦20kW、
好ましくは2kW≦P≦10kW、
特に好ましくは4kW≦P≦8kW
のレーザ出力Pを有し、
及び/又は前記加工用レーザビーム(11)の波長は、400nm~1200nmである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶接輪郭(12)は、線形、円形、又は楕円形であるように選択され、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接中に複数回通過され、
特に、前記溶接輪郭(12)は、スキャナ光学ユニットによって生成される
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コア部分(23)と、前記コア部分(23)を環状に取り囲むリング部分(24)とを有する成形レーザビーム(11a)が、加工用レーザビーム(11)として少なくとも一時的に選択され、
特に、前記成形レーザビーム(11a)は、11μm≦KFD≦300μm、好ましくは、50μm≦KFD≦100μmのコアファイバー直径KFDを有し、50μm≦RFD≦1000μm、好ましくは200μm≦RFD≦400μmのリングファイバー直径RFDを有する2イン1ファイバー(27)によって生成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記コア部分(23)のレーザ出力の出力コンポーネントPkernは、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の主段階(HP)中よりも、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の時間的に第1の段階(EP)中に小さくなるように選択され、
特に、前記コア部分(23)の前記レーザ出力の前記出力コンポーネントPkernは、第1の段階(EP)中に連続的に増加し、
特に、前記第1の段階(EP)は、1ms~30msの持続時間を有する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コア部分(23)のレーザ出力の出力コンポーネントPkernは、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の主段階(HP)中よりも、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の時間的に最後の段階(LP)中により小さく、
特に、前記コア部分(23)の前記レーザ出力の前記出力コンポーネントPkernは、前記最後の段階(LP)中に連続的に減少し、
特に、前記最後の段階(LP)は、1ms~30msの持続時間を有する、
請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって溶接された少なくとも2つのバー型導体(1a、1b)を含む、バー型導体配置。
【請求項18】
バー型導体配置の使用であって、前記バー型導体配置はそれぞれ、2つの各バー型導体(1a、1b)を請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって溶接することによって作製され、前記バー型導体配置は、電動機又は発電機に取り付けられる、
バー型導体配置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バー型導体、好ましくは、曲げられたバー型導体、特に、電動機又は発電機用のヘアピンをレーザ溶接する方法であって、
バー型導体は、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%のアルミニウム含有量を有するアルミニウム含有バー型導体材料からなり、
2つのバー型導体は、部分的なオーバラップ部を有して互いに隣り合って配置されており、加工用レーザビームによって互いに溶接され、バー型導体を互いに接続する溶接ビードが、互いに隣り合うバー型導体の共通のベース表面上に形成され、
特に、共通のベース表面は、水平に整列している
方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、オンライン出版物(非特許文献1)によって開示されている。
【0003】
電動機又は電子発生器(electronic generator)の製造においては、巻線ステータに加えて、近頃は、金属製の通常は曲げられたバー状の導体(「バー型導体」)、特にヘアピンと呼ばれるものから形成されたステータも使用されている。バー型導体は、意図した電気接続に対応するように配置され、その後、互いに溶接されて、このようにして、電磁石を形成する。巻線ステータとは対照的に、ヘアピン技術は、重量、コスト、及び効率の観点における利点を可能にする。
【0004】
バー型導体は、レーザビームを使用して溶接されることが多い。この目的のために、レーザビームは、典型的には、多くの場合は互いに対して載置された2つの重なり合ったバー型導体の正面側端面に向けられる。その結果、バー型導体に熱が導入され、バー型導体が溶融し、凝固した後、バー型導体は、凝固した溶接ビードによって互いに接続される。
【0005】
溶接中、十分に広い断面積を作成する必要があり、この断面積を介して、2つのバー型導体間に電流が流れることができる。溶接が適切に実施されなければ、動作中に、オーム加熱、有効性の喪失、又は使用不能な電気力学的機械が生じる可能性がある。
【0006】
これまでは、主に銅製のバー型導体が使用されてきた。銅含有バー型導体の溶接の例は、その後に公開された(特許文献1)によって開示されている。
【0007】
前述のオンライン出版物において、Clean-Lasersysteme社は、銅の代わりにアルミニウムのヘアピンを直接加工することを提案している。この目的のために、アルミニウムのヘアピンは、真空中で互いに溶接される。アルミニウムのヘアピンの使用は、特に、コスト上の利点を提供するはずである。方法に関する更なる詳細については言及されていない。
【0008】
しかしながら、アルミニウムのヘアピンの溶接は、実際には困難であることが判明している。レーザビームによって作成された溶接ビードは、溶接作業中に容易に流れる可能性があり、したがって、電流の伝導のためには不十分な断面積が得られることが多く、溶接は使用不能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2020 113 179.8号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“STATOR HAIRPINS AUS ALUMINIUM ENTLACKEN UND SCHWEISSEN-GROSSES EINSPARPOTENZIAL”[“Stripping and welding stator hairpins of aluminum - great savings potential”]by Clean-Lasersysteme,Herzogenrath(North Rhine-Westphalia,DE),cf.https://www.cleanlaser.de/de/news/hairpins-aluminium/,dated 05.03.2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、特に、電流の伝導のために十分に広い断面積を得るために、使用可能な溶接接続を、高い信頼性を持って作成するために、アルミニウム含有合金のバー型導体をレーザ溶接する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、導入部で言及したタイプの方法によって本発明に従って達成される。本方法は、
バー型導体のレーザ溶接中、加工用レーザビームは案内され、このプロセスにおいて、加工用レーザビームの溶接輪郭がバー型導体に対して配置され、バー型導体に対する溶接輪郭に沿った加工用レーザビームの進行速度vは、
- バー型導体のレーザ溶接中、溶接ビードは非液体酸化物膜を有し、バー型導体のレーザ溶接中に、非液体酸化物膜の内側に液体バー型導体材料が蓄積し、
- バー型導体のレーザ溶接中、非液体酸化物膜は、溶接輪郭に対応するように、溶接ビードの上向きの端面のみが、加工用レーザビームによって部分的に破壊されて開口し、
- バー型導体のレーザ溶接中、非液体酸化物膜は、上端面から下方に、バー型導体に向かって、溶接ビードの全体の周りに延びる溶接ビードの周囲領域内において無傷のままである
ように選択されることが認められる。
【0013】
本発明による方法の文脈内においては、プロセスゾーンの領域内に非液体酸化膜(「酸化物膜」)が形成され、本方法中は安定に保たれるという効果を有するために、2つのアルミニウム含有バー型導体を溶接するプロセスを実施する適切な手法を使用することが提案される。その後、酸化物膜の下に、液体バー型導体材料が形成され、液体バー型導体材料は、酸化物膜によって、溶接ビードの画定された形態に保たれる。これにより、使用可能な溶接接続を確実に生成することを可能にする。
【0014】
2つの金属含有バー型導体を溶接する場合、得られる溶接ビードの品質がバー型導体間の電流伝導特性に影響を及ぼすため、寸法的に安定した溶接ビードの作成が重要である。アルミニウムは、溶融温度において銅よりも大幅に低い粘度及び表面張力を有する。このため、溶接中、アルミニウム含有合金の低粘度の溶融物は、溶接が実施されるプロセスゾーンの領域から制御されない状態で流出する傾向にある。このことは、溶接ビードの大きな変形又は不完全な形成、ひいては、電流が流れることができるバー型導体間の断面積の減少につながる可能性がある。
【0015】
したがって、上ですでに述べたコスト削減のみならず重量削減(元素形態の銅の密度8.96g/cmは、元素形態のアルミニウムの密度2.7g/cmの3倍超である)などのアルミニウム含有バー型導体の使用からもたらされる利点は、欠陥又はバー型導体間の過度に小さい断面積という欠点によって相殺される可能性がある。
【0016】
本発明による方法では、プロセスを実施する手法は、バー型導体のレーザ溶接中、プロセスゾーンの領域内に非液体酸化膜(「酸化物膜」)が存在するように選択される。酸化物膜により、アルミニウム含有合金の溶融物の低い粘度及び表面張力という欠点を回避する。酸化物膜は、溶融物の形状を均一に保ち、溶融物を上向きに整列させ、側面で境界画定する周囲領域(「側面」)を形成する。これにより、均一な溶接ビードを作成し、溶融物が側面に流れることを防止する。したがって、溶融物の粘度及び表面張力はもはや問題ではない。
【0017】
空気中にあるアルミニウムは、酸化アルミニウムの薄層を自発的に形成し(自己不動態化)、バー型導体材料を腐食から保護する。したがって、溶接方法の開始時に、バー型導体材料は、酸化物膜によってすでに被覆されており、酸化物膜の下に、液体溶融物が形成され、蓄積され得る。レーザ溶接中、特にレーザ溶接中に達する温度の結果、従来の中実バー型導体の酸化物膜の厚さに比べて酸化物膜の厚さを増加させることができる。更に、本方法中、溶融アルミニウムが露出している位置に、特に、加工用レーザビームによって破壊されて開口する酸化物膜の位置に、新たな酸化アルミニウムが自発的に形成され得る。本方法が実行される間、酸化物膜は、レーザ溶接の開始前に存在する酸化物膜及び/又はレーザ溶接中に新たに形成される酸化物膜を使用して、形成される又は大きくなる溶接ビードを境界画定するために、実質的に全時間にわたって残る。
【0018】
プロセスは、本発明の文脈内では、溶融物のダイナミクスが特に周囲領域の近傍で制限されるとともに、不均一な溶接ビードをもたらす、溶融物が制御されない状態で出ることができるクラックが周囲領域内に形成されるのを防止するように実施される。溶融プールのダイナミクスを制限するために、加工用レーザビームは、特に十分に低い進行速度で溶接輪郭をたどることができる。更に、溶接ビードの酸化物膜の周囲領域内のクラックを回避するために、溶接輪郭は、バー型導体の周囲から(又はレーザビームに面するバー型導体の面である「端面」の周囲から)十分に間隔を空けるように選択され得る。酸化物膜の安定性は、これらの条件下で促進される。
【0019】
バー型導体のレーザ溶接の過程で、酸化物膜の下に溶融プールが作成される。これは、元素形態のアルミニウムの溶融温度である約660℃が、酸化アルミニウムの溶融温度である約2070℃よりも大幅に低いために可能である(大気条件によっては、加工用レーザビームは、溶融ではなくAlの分離も生じさせることがある)。溶融プールは、所望の量の液体アルミニウムが得られるまで加熱される。これにより、最終凝固時のバー型導体間の断面積が、電流の十分に高い伝導を得るほど十分に大きくなることが確実になる。
【0020】
加工用レーザビームは、実質的に、加工用レーザビームが酸化物膜上に入射する領域内でのみ酸化物膜と相互作用する。加工用レーザビームは、酸化物膜をその溶接輪郭に沿ってのみ破壊して開口し、したがって、溶接輪郭は、破壊されて開口した(すなわち液体)軌道を作成し、場合により、溶接輪郭の内側の破壊されて開口した(又は液体)領域も有する。それ以外の全ての点において、酸化物膜は維持され、溶融バー型導体材料をまとめて、形状を保つ。
【0021】
加工用レーザビームの作用が完了した後、酸化物膜によってなお形状が保たれている溶融プールは冷却される。したがって、凝固時に、接続されたバー型導体が十分に広い断面積を有し、電流の十分に良好な伝導を確実にする画定された溶接ビードがもたらされる。使用可能な溶接接続が確実に作成される。
【0022】
本発明の好ましい変形例
本発明による方法の好ましい変形例では、加工用レーザビームの溶接輪郭は、共通のベース表面の外周部から溶接輪郭の最小距離d、及び最小距離dが位置する方向に沿った共通のベース表面の範囲Lに関して、d≧0.15*L、好ましくは、d≧0.20*L、特に好ましくは、d≧0.25*Lが成り立つように、バー型導体に対して配置されるようになっている。これには、実際に成功が証明されており、酸化物膜、特に周囲領域の損傷の確率が最小限になる距離dを伴う。
【0023】
加工用レーザビームの溶接輪郭が、共通のベース表面の外周部から溶接輪郭の最小距離dに関して、d≧0.6mm、好ましくは、d≧0.8mm、特に好ましくはd≧1.0mmが成り立つように、バー型導体に対して配置される変形例が特に好ましい。これにも、実際に成功が証明されており、酸化物膜、特に周囲領域の損傷の確率が最小限になる距離dを伴う。
【0024】
有利な変形例では、バー型導体に対する加工用レーザビームの溶接輪郭に沿った加工用レーザビームの進行速度vに関して、v≦1600mm/s、好ましくは、v≦1200mm/s、特に好ましくは、v≦800mm/sが成り立つ。進行速度vは、非液体酸化物膜の下に生成される溶融物のダイナミクスに影響を及ぼす。指定された進行速度を用いて、実際に、酸化物膜は良好な安定性を呈し、均一な形状の溶接ビードが形成される。
【0025】
レーザ溶接が、酸素含有雰囲気、特に空気中で行われる変形例が好ましい。酸素含有雰囲気は、溶接ビードの酸化物膜を安定させ、例えば加工用レーザビームの軌道内の露出したアルミニウム溶融物上における酸化アルミニウムの迅速な再構成を促進する。更に、酸素含有雰囲気は、特に空気が使用される場合には容易にセットアップすることができ、追加の構造は必要ない。
【0026】
本発明による方法の好ましい変形例では、バー型導体のレーザ溶接の少なくとも時間的に後半に、非液体酸化物膜が無傷のままの周囲領域が、溶接ビードの高さの少なくとも3/4にわたって、好ましくは、溶接ビードの高さの少なくとも9/10にわたって延びるようになっている。これにより、溶接ビードの利用可能な断面積にわたって、バー型導体間の実際に十分な電流の電気伝導を確立する高さを有する寸法的に安定且つ均一な溶接ビードの形成を確実にする。通常、周囲領域は、事実上、溶接ビードの高さ全体にわたって延びる。
【0027】
2つのバー型導体が、端部領域が互いに平行に、互いに対して載置された状態で配置され、特に、バー型導体の端部領域は、互いに広範に押し付けられ、バー型導体の正面側端面は、バー型導体の端部領域の長手方向範囲の方向に対してほぼ同じ高さに位置し、加工用レーザビームは、バー型導体の正面側端面に向けられ、したがって、正面側端面は、溶接ビードが形成される共通のベース表面を提供する変形例も好ましい。ほぼ同じ高さに端面を配置すると、加工用レーザビームによって端面に形成される各溶融物が問題なく組み合わされて、共通の均一な形状の(球形の)溶接ビードを形成することができる効果を有し、特に、共通の溶接ビードは斜面を形成する必要はない。互いに対して載置された端部領域により、共通の溶接ビードの溶融物がバー型導体の間に流出するリスクが低下する。端部領域を互いに押し付けることにより、互いに対して載置された端部領域間に残る隙間を最小限にすることができる。
【0028】
有利なのは、バー型導体の端部領域がほぼ垂直上方に向けられ、特に、正面側端面が、ほぼ水平に整列されることになるこの変形例の更なる発展形態である。この配置において、端面は、加工用レーザビームによって容易にアクセスされ得る。端面の水平整列は、形成される溶融物がいかなる下り勾配力(downhill-slope force)も受けず、溶接ビードを安定させることができるという効果を有する。
【0029】
同様に好ましいのは、加工用レーザビームが正面側端面にほぼ垂直に入射する更なる発展形態である。これは、特に安定した蒸気キャピラリーの効果を有し、溶融プールのダイナミクスが減少する。画定された溶接ビードをより容易に形成することができる。
【0030】
好ましいのは、バー型導体は、共通のベース表面の少なくとも近傍に、特に、各端部領域に、それぞれ、縁長さが0.2mm~10mm、好ましくは1mm~8mm、特に好ましくは2mm~6mmの矩形の断面を有し、特に、各バー型導体の場合、長縁の長さLは、短縁の長さLkurzの2倍であり、互いに溶接される2つのバー型導体の断面は同じであるようになっている変形例である。これらの寸法は、特に電動機の構造に関して実際に成功が証明されている。典型的には、バー型導体の長縁は、互いに対して載置されており、これにより、バー型導体が互いに接続され得る溶接ビードの断面積を最大化する。長縁が短縁の2倍の長さになるように選択された場合、同じ断面を有する正方形のベース表面がバー型導体に提供され得る。特に円形溶接輪郭によって、加工用レーザビームからのエネルギーをこのベース表面に特に均一に導入することができる。
【0031】
更に好ましいのは、各長縁の方向における溶接輪郭と共通のベース表面の外周部との間の最小距離dは、対応する長縁の長さLの20%~40%、好ましくは25%~35%であり、各短縁の方向における溶接輪郭と共通のベース表面の外周部との間の最小距離dは、短縁の長さLの2倍の20%~40%、好ましくは25%~35%であるようになっている変形例である。これには、実際に成功が証明されており、酸化物膜、特に周囲領域の損傷の確率が最小限になる距離d及びdを伴う。
【0032】
有利な変形例では、加工用レーザビームは、
0.5kW≦P≦20kW、
好ましくは2kW≦P≦10kW、
特に好ましくは4kW≦P≦8kW
のレーザ出力Pを有し、
及び/又は加工用レーザビームの波長は、400nm~1200nmである。これらのレーザ出力及び加工用レーザビームの波長は、本発明による方法に関して実際に特に成功が証明されている。特に、溶接プロセス中に溶接ビードの均一な形成を得ることが可能である。
【0033】
特に好ましいのは、溶接輪郭が、線形、円形、又は楕円形であるように選択され、バー型導体のレーザ溶接中に複数回通過される変形例である。特に、溶接輪郭は、スキャナ光学ユニットによって生成される。バー型導体のレーザ溶接中に溶接輪郭を複数回通過させることで、加工用レーザビームからのエネルギーを均一に分布すること、及びプロセスにおいて、対応する通過の数によって、事実上あらゆる所望の量のエネルギーをバー型導体に導入することを可能にする。局所過熱は回避される。全般的に、溶接ビードの特に均一な形成を達成することができる。ミラー及び2つのピエゾアクチュエータを有して典型的に形成されるスキャナ光学ユニットは、バー型導体又は溶接ビード上に溶接輪郭を低コストで確立すること、及び溶接輪郭を正確に、特にまた、到達することが不可能な又は工作物若しくはレーザを機械的に移動させることにより辛うじてしか到達できない速度で通過させることを可能にする。溶接輪郭の形状は、溶接されるバー型導体の形状及びアライメントに適合させることができる。
【0034】
更に好ましいのは、コア部分と、コア部分を環状に取り囲むリング部分とを有する成形レーザビームが、加工用レーザビームとして少なくとも一時的に選択され、特に、成形レーザビームは、11μm≦KFD≦300μm、好ましくは、50μm≦KFD≦100μmのコアファイバー直径KFDを有し、50μm≦RFD≦1000μm、好ましくは200μm≦RFD≦400μmのリングファイバー直径RFDを有する2イン1ファイバーによって生成される変形例である。成形レーザビームの使用により、溶融プールのダイナミクスを全体的に低減することを可能にし、特に本方法の開始時及び終了時におけるスパッタ形成又は気孔形成などの溶接の欠陥が最小限になる。コアのレーザ出力部分の出力コンポーネントは、20%~100%、好ましくは20%~80%、特に好ましくは40%~60%で選択又は変化させてもよい。コア部分とリング部分との間のレーザ出力の分布は、必要に応じて、溶接プロセスの全体を通して一定になるように選択され得る。その場合、通常、コア部分の出力コンポーネントPkernは40~60%である。或いは、バー型導体のレーザ溶接の第1の段階(初期段階)、主段階、及び最後の段階(最終段階)で出力コンポーネントPkernが異なるように選択することも可能である。必要に応じて、レーザ溶接の主段階(初期段階と最終段階との間)において、プロセス速度を増加するために、100%のコア部分の出力コンポーネントPkernを選択することができ、第1の段階(初期段階)及び/又は最後の段階(最終段階)において、溶接の欠陥を最小限にするために、コア部分の出力コンポーネントPkernは、小さくなるように、特に、連続的に変化するように選択することができる。
【0035】
この変形例の好ましい更なる発展形態では、コア部分のレーザ出力の出力コンポーネントPkernは、バー型導体のレーザ溶接の主段階中よりも、バー型導体のレーザ溶接の時間的に第1の段階中に小さくなるように選択され、特に、コア部分のレーザ出力の出力コンポーネントPkernは、第1の段階中に連続的に増加し、特に、第1の段階は、1ms~30msの持続時間を有する。加工用レーザビームが通過する際(初期段階の開始)、小さくなるように選択された出力コンポーネントPkernにより、スパッタ形成の低減を確実にし、したがって、比較的多量の液体溶融物及び非液体酸化物膜が初期段階の開始時に早期にプロセスゾーンから排出されること(これは、均一な溶接ビードの形成をより困難にする)を防止する。通過後、出力コンポーネントPkernは、主段階の所望の出力まで連続的に増加させることができる。典型的には、第1の段階(初期段階)は、全溶接持続時間の10~30%の割合を含む。第1の段階中に、蒸気キャピラリーが形成される。第1の段階は、典型的には、蒸気キャピラリーがバー型導体のレーザ溶接中にその最大キャピラリー深さの少なくとも30%に到達するのにかかる長さだけ少なくとも継続する。
【0036】
同様に好ましいのは、コア部分のレーザ出力の出力コンポーネントPkernが、バー型導体のレーザ溶接の主段階中よりも、バー型導体のレーザ溶接の時間的に最後の段階中に小さくなるように選択され、特に、コア部分のレーザ出力の出力コンポーネントPkernは、最後の段階中に連続的に減少し、特に、最後の段階が、1ms~30msの持続時間を有する更なる発展形態である。最後の段階(最終段階)において、小さくなるように選択された出力コンポーネントPkernは、蒸気キャピラリーが制御された状態で減少し得ることを確実にし、連続的に減少する出力コンポーネントPkernにより、蒸気キャピラリーの特に緩やかな後退を生じさせることができる。これは、溶接ビード内に気孔が形成されない、又は小さな気孔がわずかしか形成されないという効果を有する。これにより、確実に使用可能な溶接接続を確保する。典型的には、最後の段階(最終段階)は、全溶接持続時間の10~30%の割合を含む。
【0037】
本発明による上記の方法によって溶接された少なくとも2つのバー型導体を含むバー型導体配置も本発明の文脈内に包含される。溶接中に形成される溶接ビードは、均一な形状であり、溶接されたバー型導体の間を電流が流れるための十分な断面積を確実に提供する。典型的には、多数のバー型導体が(例えば、ステータキャリア内で)連続的に溶接され、バー型導体は、両脚部で更に別のバー型導体に(又は、端子バー型導体の場合は電力接続部に)溶接される。
【0038】
更に、本発明は、バー型導体配置の使用であって、バー型導体配置はそれぞれ、上記の本発明による方法によって2つの各バー型導体を溶接することによって作製され、バー型導体配置は、電動機又は発電機に取り付けられる、バー型導体配置の使用を含む。バー型導体の溶接接続は特に信頼性が高く、したがって、電動機及び発電機で発生する高電流強度にも容易に適用できる。移動用途(例えば電気自動車)のために提供される電動機の場合、アルミニウム含有バー型導体材料のバー型導体の固有の重量の低さは、特に有利である。
【0039】
本発明の更なる利点は、説明及び図面から明らかになるであろう。同様に、本発明によれば、上述の特徴及びこれから詳述する特徴は、いずれの場合においても、単独で個別に使用され得る又は任意の所望の組み合わせで一緒に使用され得る。図示及び説明される実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ本発明を概説するための例示的な特徴のものである。
【0040】
本発明を、図面に示し、例示的な実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の文脈内では互いに溶接されることになる部分的に重なり合った配置の2つの曲げられたバー型導体の概略側面図を示す。
図2】本発明によるレーザ溶接を開始する前の図1の2つのバー型導体の、互いに対して載置されている端部領域の概略斜視図を示す。
図3】形成されている溶接ビードとともに、本発明によるレーザ溶接中の図2の2つのバー型導体の概略側面図を示す。
図4図2の2つのバー型導体の端部領域の概略平面図を示す。
図5】共通のベース表面が正方形である変形例における2つのバー型導体の端部領域の概略平面図を示す。
図6a】コア部分及びリング部分を有する本発明の加工用成形レーザビームの断面の概略図を示す。
図6b】コアファイバー及びリングファイバーを有する、本発明によるレーザ溶接のための成形レーザビームの提供を可能にする本発明の例示的な2イン1ファイバーの断面の概略図を示す。
図7】時間の関数として、2つのバー型導体のレーザ溶接中の本発明の加工用成形レーザビームのレーザ出力のコア部分の図を示す。
図8a】溶接ビードの酸化物膜が繰り返し裂けて開口し、不均一な溶接ビードが形成されている条件下における、2つのアルミニウム含有バー型導体のレーザ溶接の終了直後の実験の画像を示す。
図8b】周囲領域内の溶接ビードの酸化物膜が無傷のままで、均一な溶接ビードが形成されている本発明による方法の条件下における、2つのアルミニウム含有バー型導体のレーザ溶接の終了直後の実験の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、2つの曲げられたアルミニウム含有バー型導体1a、1bの概略側面図を示す。バー型導体1a、1bは、ヘアピンと呼ばれる形態のものであり、電動機又は発電機などの電気力学的機械の製造に使用されている。バー型導体1a、1bはそれぞれ、略U字形であり、それぞれ、2つの脚部2a、3a及び2b、3bと、それぞれの脚部の対を互いに接続する中間部品4a、4bとを有する。
【0043】
バー型導体1a、1bは、互いに導電的に接続されることを意図している。この目的のために、本発明によれば、バー型導体1a、1bは、それらの端部領域5a、5bにおいて互いに溶接されている。溶接のために、第1のバー型導体1aの脚部3a及び第2のバー型導体1bの脚部3bは、オーバラップ部を有して配置されており、ここに示す変形例では、互いに対して載置されている。
【0044】
バー型導体1a、1bに関しては、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%のアルミニウム含有量を有するアルミニウム含有バー型導体材料が使用される。考慮される可能なアルミニウム含有バー型導体材料は、例えば、1000~6000シリーズのアルミニウム合金群(例えば、材料EN AW-1050A)である。
【0045】
図2は、本発明による、レーザ溶接を開始する前のバー型導体1a、1bの端部領域5a、5bの概略斜視図を示す。座標系は、x軸が右を向き、y軸が図面の平面内に向き、z軸が上を向くように選択されている。ここでは、2つのバー型導体1a、1bの正面側端面6a、6bはほぼ同じ高さにあり、水平に整列している。2つのバー型導体1a、1bの正面側端面6a、6bは一緒に、共通のベース表面7を形成している。バー型導体1a、1bの端部領域5a、5bはそれぞれ、xy平面内に矩形の断面を有する。バー型導体1a、1bの断面の長辺8a、8bは、脚部3a、3bの端部領域5a、5b内で互いに対して載置され、脚部3a、3bは、互いに押し付けられている(詳細に図示せず)。脚部3a、3bは、2つの端面6a、6b、したがって、共通のベース表面7が上向きに整列するように、垂直方向に整列し、互いに平行である。
【0046】
2つの端部領域5a、5bは、加工用レーザビーム11を使用して溶接される。この目的のために、溶接輪郭12が共通のベース表面7上に画定され、その後、溶接輪郭12を加工用レーザビーム11が複数回通過する。ここに示す実施形態では、溶接輪郭12は、楕円形であるように選択されている。バー型導体がどのような寸法にされるか、及び考えられる溶接の要件が何であるかに応じて、線形溶接輪郭(ここでは図示せず)又は円形溶接輪郭(図5を参照)を選択することも可能である。点線領域13は、加工用レーザビーム11の作用によって溶融されることになるバー型導体1a、1bの領域を示す。有利な実施形態では、加工用レーザビーム11のビームは、スキャナ光学ユニット(詳細に図示せず)により溶接輪郭12に沿って案内され得る。
【0047】
加工用レーザビーム11は、共通のベース表面7にほぼ垂直に入射する。バー型導体1a、1bの異なる対の製造中、通常、ステータキャリア(詳細に図示せず)内に配置されているバー型導体1a、1bをあまり頻繁に移動させる必要がないように、加工用レーザビーム11の入射角を、通常、わずかに変化させることができることに留意されたい。加工用レーザビーム11は、典型的には、ベース表面7への垂直入射から40°を超えて、好ましくは20°を超えずに逸脱しない。
【0048】
加工用レーザビーム11のレーザ出力Pは、0.5kW≦P≦20kW、好ましくは2kW≦P≦10kW、特に好ましくは4kW≦P≦8kWが成り立つように選択され得る。実際には、これにより良好な結果を得ることが可能となる。例えば、6kWの出力Pを使用して、2つのアルミニウム含有バー型導体1a、1bを溶接することができる。加工用レーザビーム11の波長は、400nm~1200nmであってもよい。この例は、450nm(青色)、515nm(緑色)、900±100nm(ダイオード、NIR)、1030nm(NIR)、1064nm(NIR)、及び1070nm(NIR)の波長である。
【0049】
図3は、本発明による、図2の2つのバー型導体1a、1bの概略側面図を、レーザ溶接の後半における溶接ビード19とともに示す。座標系は、x軸が図面の平面から外を向き、y軸が右を向き、及びz軸が上を向くように選択されている。示されているのは、レーザ溶接中におけるバー型導体1a、1bの端部領域5a、5bであり、溶接ビード19は端部領域5a、5bの端部、この場合は上端部に形成されている。
【0050】
加工用レーザビーム11は、溶接ビード19の上端面20に位置する溶接輪郭12に沿って移動することが意図されている。これにより、アルミニウム含有バー型導体材料に熱を導入する。このプロセスでは、非液体酸化物膜14の下に、液体バー型導体材料15(液体バー型導体材料15は非液体酸化物膜14の下に隠れているため、破線の基準線)、すなわち、アルミニウム含有溶融物が形成され、蓄積する。その後、非液体酸化物膜14は、溶接ビード19の境界部を形成し、液体バー型導体材料15の形状が維持されることを確実とし、液体バー型導体材料15が流れることを防止する。非液体酸化物膜14は、加工用レーザビーム11によって局所的に破壊されて開口し、加工用レーザビーム11は、図示の変形例では、溶接輪郭12に沿って破壊されて開口した軌道12aを残す。これにより、破壊されて開口した領域内の軌道12aに沿って液体バー型導体材料15が一時的に露出する。加工用レーザビーム11の後ろで、液体バー型導体材料15は再度酸化し始め、結果的に、新たな酸化物膜14が形成され、軌道12aは再び閉じる。図示の変形例では、軌道12aは、非液体酸化物膜14が軌道12aを覆って再び完全に成長する前に、溶接輪郭12の周囲の約1/3にわたって延びている。本発明による方法は、典型的には、酸素含有雰囲気(例えば空気)中で行われ、したがって、非液体酸化物膜14は、破壊されて開口した領域における酸化によって特に迅速に再生させることができる。
【0051】
非液体酸化物膜14は、上端面20から下方に、バー型導体1a、1bの未だ固体の端部領域5a、5bまで、及び溶接ビード19全体の周りの、溶接ビード19の周囲領域21内に延びる。ここに示す変形例では、非液体酸化物膜14は、溶接輪郭12に沿って破壊されて開口し、加工用レーザビーム11は、溶接輪郭12に沿って、軌道12a(黒色で示す)の領域内を移動する。露出した液体バー型導体材料15は、酸素含有雰囲気によって再び酸化される(図3の黒色の輪郭12の塗りつぶされていない領域)。ここに示す変形例では、上端面20の非液体酸化物膜14は、無傷のままである。他の変形例では、溶接プロセス中に、溶接輪郭12の内側領域の全体が破壊されて開口し、実質的に破壊されて開口したままであることも可能である(この可能性はここでは図示しない)。
【0052】
溶接ビード19は、z方向に(バー型導体1a、1bの端部領域5a、5bの範囲の方向に沿って)全高Hspを有し、非液体酸化物膜14が無傷のままの溶接ビード19の周囲領域21は、高さHunvを有する。高さHunvは、全般的に、溶接ビード19の下端部から加工用レーザビーム11が溶接輪郭12に沿って移動する領域まで延びる。加工用レーザビーム11は、非液体酸化物膜14を部分的に破壊して開口し、それにより液体バー型導体材料15を露出させるため、溶接輪郭12の内側の上端面20の領域は、周囲領域21の無傷の部分であるとはもはやみなされない。ここに示す変形例では、Hunvは、Hspの高さの約4/5にわたって延びる。画定された溶接ビード19を形成することができるためには、高さHunvは、高さHspの少なくとも3/4にわたって、好ましくは高さHspの少なくとも9/10にわたって延びると有利であることが示されている。多くの使用事例において、端面20に概ね平坦な形態を有する溶接ビード19の場合、Hunvは、事実上、高さHspの全体にわたって延びる(詳細に図示せず)。
【0053】
溶接の終了時、加工用レーザビーム11の作用が完了した後、液体バー型導体材料15は、非液体酸化物膜14によって形状を維持し続けながら、冷却され、最終的に凝固する。その後、バー型導体1a、1bは、溶接ビード19によって互いに導電的に接続される。このプロセスでは、溶接ビード19は、両方のバー型導体1a、1b上に配置され、バー型導体1a、1bをそれらの端部の全表面積にわたって覆っている。2つのバー型導体1a、1b間の導電接続の品質は、接続断面積22によって実質的に決定される。接続断面積22は、第1のバー型導体1aから第2のバー型導体1bへの電流の導電が可能となる表面積である。図3に示される良好に画定された溶接ビード19の場合、接続断面積22は、バー型導体1a、1bの脚部3a、3bの、互いに対して載置された長辺の接触面における溶接ビード19の断面積に相当する。
【0054】
図4は、図2の2つのバー型導体1a、1bの端部領域6a、6bの概略平面図を示す。座標系は、x軸が右を向き、y軸が上を向き、z軸が図面の平面から外を向くように選択されている。正面側端面6a、6bは、共通のベース表面7を形成しており、共通のベース表面7上に楕円形の溶接輪郭12が示されている。バー型導体1a、1bはそれぞれ、端部領域5a、5b内のここで見える各端面6a、6bに対応する各矩形の断面9a、9bを形成している。本変形例では、2つのバー型導体1a、1bの端部領域5a、5bの矩形の断面9a、9bは同じである。実際には、断面9a、9bの縁の長さは、通常、0.2mm~10mm、好ましくは1mm~8mm、特に好ましくは2mm~6mmである。
【0055】
矩形の正面側端面6a、6bはそれぞれ、長縁の長さLと短縁の長さLkurzとを有する。共通のベース表面7は、長縁の長さLと短縁の長さの2倍であるLによって表される。より明確にするために、図3では正面側端面6aと正面側端面6bとの間に狭い隙間が示されていることに留意されたい。実際には、バー型導体1a、1bは、互いに対して載置されており、結果的に、距離は事実上ゼロであり、したがって、2*Lkurz=Lである。
【0056】
短縁17の(に沿った)方向における溶接輪郭12と共通のベース表面7の外周部18との間の最小距離は、最小距離dと呼ばれる。長縁16の(に沿った)方向における溶接輪郭12と共通のベース表面7の外周部18との間の最小距離は、最小距離dと呼ばれる。実際には、dが、Lの長さの20%~40%、好ましくはLの長さの25%~35%であるように選択され、dが、Lの長さの20%~40%、好ましくはLの長さの25%~35%であるように選択される場合、溶接中に、非液体酸化物膜の側面はほぼ無傷のままであることが示されている。
【0057】
図5は、共通のベース表面7が正方形の形状を有する変形例における、図4に示されたものと同様の2つのバー型導体1a、1bの正面側端面6a、6bの概略平面図を示す。座標系は、x軸が右を向き、y軸が上を向き、z軸が図面の平面から外を向くように選択されている。正面側端面6a、6bは、長縁8a、8bで互いに密着して配置されている。円形溶接輪郭12と共通のベース表面7の外縁18との間の最小距離は、最小距離dと呼ばれる。共通のベース表面7は、最小距離dが位置する方向に沿って範囲Lを有する。ここに示す変形例では、d=0.25*Lがほぼ成り立つ。実際には、溶接輪郭12と共通のベース表面7の外周部18との間の最小距離dは、dがLの長さの15%以上、好ましくはLの長さの20%以上、特に好ましくはLの長さの25%以上であるように選択される。これにより、溶接中に非液体酸化物膜が周囲領域において裂けて開口するリスクを最小限にする。例えば、範囲L=4mmを有する一対のバー型導体1a、1bが選択される場合(これは、実際には従来の寸法決めに相当する)、最小距離dは、0.6mm以上、好ましくは0.8mm以上、特に好ましくは1mm以上であり得る。
【0058】
図5はまた、溶接輪郭12上の加工用レーザビーム11を示す。レーザビームは、溶接輪郭12に沿って進行速度vで移動する。実際には、加工用レーザビーム11に関して、進行速度vは、vが1600mm/s以下、好ましくはvが1200mm/s以下、特に好ましくはvが800mm/s以下となるように有利に選択することができることが示されている。このように選択した進行速度v(例えば、800mm/s)の場合、非液体酸化物膜内の液体バー型導体材料のダイナミクスは小さく、非液体酸化物膜の周囲領域内にクラックが形成されるリスクが特に低い。
【0059】
本発明による方法の文脈内では、加工用レーザビーム11を、少なくとも一時的にコア部分23とリング部分24とを有する成形レーザビーム11aとして選択すると有利である。図6aは、そのような成形レーザビーム11aのビーム断面の一例を示す。リング部分24は、コア部分23を取り囲んでいる。これにより、特に、レーザ溶接の開始時とレーザ溶接の終了時の溶接の欠陥を低減することが可能になる。
【0060】
成形レーザビーム11aは、例えば2イン1ファイバー27によって生成される。図6bは、本発明による方法のための成形レーザビームを提供することができる例示的な2イン1ファイバー27の断面を示す。2イン1ファイバー27は、コアファイバー25と、コアファイバーを取り囲むリングファイバー26とを有する。そのような2イン1ファイバー27のコアファイバー直径KFDに関しては、例えば、11μm≦KFD≦300μm、好ましくは50μm≦KFD≦100μmを選択することが可能であり、そのような2イン1ファイバー27のリングファイバー直径RFDに関しては、例えば、50μm≦RFD≦1000μm、好ましくは200μm≦RFD≦400μmを選択することが可能である。
【0061】
コア部分の出力コンポーネントPkern及びリング部分の出力コンポーネントPringは、例えば光学くさび(詳細に図示せず)を元のレーザビームに部分的に押し込むことで、元のレーザビームが、コアファイバー25に部分的に供給され、リングファイバー26に部分的に供給されるように設定することができる。本発明の文脈内において、コア部分とリング部分との間の出力分布は、バー型導体のレーザ溶接の持続時間の全体を通して一定であるように選択され得る、或いは、変化させることができる。典型的には、Pkernは、加工用レーザビームの総レーザ出力Pgesの20%~100%、好ましくは20%~80%、特に好ましくは40%~60%である。コアファイバー25及びリングファイバー26に供給される元のレーザビームのコンポーネントを、例えば光学くさび(より詳細に図示せず)をシフトさせることにより修正することで、出力コンポーネントPkern、Pringを変化させることを可能にする。典型的には、総レーザ出力Pges=Pkern+Pringは、溶接持続時間の全体を通して一定であるように選択される。
【0062】
時間tの関数として、一定の総出力Pgesの出力コンポーネントPkernの図の形態で図7に示されている、本発明によるレーザ溶接の有利な変形例においては、以下の手順がとられる。
【0063】
2つのバー型導体のレーザ溶接は、第1の段階(初期段階)EPと、主段階HPと、最後の段階(最終段階)LPとを含み、この間に、移動が溶接輪郭に沿って行われる(例えば、楕円形経路又は円形経路を複数回通過する)。ここでは、進行速度は、典型的には、溶接持続時間GDの全体を通して一定であるように選択され得る。バー型導体のレーザ溶接の時間的に第1の段階EP(時点t0と時点t1の間)及び時間的に最後の段階LP(時点t2と時点t3の間)において、コアのレーザ出力の出力コンポーネントPkernは、間の(時点t1と時点t2との間)主段階HPよりも低くなるように選択される。
【0064】
時間的に第1の段階EPの開始時(時点t0)に成形レーザビーム11aが通過する際、コアにおけるレーザ出力Pkernが低いと、スパッタ形成を低減し、したがって、比較的多量の非液体酸化物膜(及び液体溶融物)が排出されるのを防止する。コアの出力コンポーネントPkernは、ここでは、30%で開始し、その後、時間的に第1の段階EP内で、主段階HPの目標値に達するまで(この例では直線的に)増加する。例えば、第1の段階EPの持続時間の選択は、成形レーザビームによって生成される蒸気キャピラリーが特定のキャピラリー深さ(例えば、その最大キャピラリー深さの30%)に達したかどうかに依存する場合がある。レーザ溶接の時間的に第1の段階EPは、多くの場合、2つのバー型導体の溶接の総溶接持続時間GDの10~30%のコンポーネントを含み、例えば、1ms~30ms継続し得る。
【0065】
その後、主段階HP(時点t1と時点t2との間)において、コアのレーザ出力の所望のコンポーネントPkernで、溶接輪郭12に沿って再び移動が実施される。図示の変形例では、主段階において、Pkernは100%である。すなわち、リングコンポーネントは照射されない。或いは、Pkernが、例えば、60%~90%になるように選択することも可能である。
【0066】
主段階HPの後(時点t2から)、コアのレーザ出力のコンポーネントPkernは、目標値(この場合続いて30%)に達するまで再び(この場合直線的に)減少する。これによって達成される効果は、成形レーザビームによって生成される蒸気キャピラリーが均一に減少し、その結果、冷却されたバー型導体材料中に得られる気孔はわずかしかなく、もしあるとしたら非常に少ないというものである。レーザ溶接の時間的に最後の段階LPは、多くの場合、溶接の総溶接持続時間GDの10~30%のコンポーネントを含み、1ms~30ms継続し得る。
【0067】
図8aは、不均一な溶接ビードが形成されている、レーザ溶接の終了直後(すなわち、溶接ビードが凝固する前及び加工用レーザビームが作用した後)の2つのアルミニウム含有バー型導体の実験の画像を示す。本例では、加工用レーザビームの進行速度vについてはv=3200mm/sを選択し、加工用レーザビームのレーザ出力PについてはP=6kWを選択した。レーザ波長は1030nm、総溶接時間は85msであり、バー型導体は、アルミニウム合金EN AW-1050Aで製造し、個々のヘアピンの断面は2x4mmであり、直径2mmの円形の溶接輪郭が、ヘアピンの、互いに対して載置された端面の中央にある。高い進行速度vは、溶融物の高いダイナミクスを引き起こす。これにより、酸化膜が複数箇所で破壊されて開口し、その凝集力が破壊され、低粘度の溶融物が制御されない状態で流れる。このように、ほぼ球形の形状を有する画定された溶接ビードを得ることはできない。これは、図8aに、不規則な形状の溶接ビード及び乱れた端面で見ることができる。
【0068】
対照的に、図8bは、均一な溶接ビードが形成されている、本発明による方法の条件下の、レーザ溶接の終了直後(溶接ビードが凝固する前及び加工用レーザビームが作用した後)の2つのアルミニウム含有バー型導体の実験の画像を示す。本例では、加工用レーザビームの進行速度vについてはv=800mm/sを選択し、加工用レーザビームのレーザ出力PについてはP=6kWを選択した。レーザ波長は1030nm、総溶接時間は85msであり、バー型導体は、アルミニウム合金EN AW-1050Aで製造し、個々のヘアピンの断面は2x4mmであり、直径2mmの円形の溶接輪郭が、ヘアピンの、互いに対して載置された端面の中央にある。ここで選択した進行速度vにおいて、加工用レーザビームによって加工された場合、周囲領域内の非液体酸化物膜は無傷のままである。最後に、非液体酸化物膜は、加工用レーザビームの軌道内で部分的に破壊されて開口する。このように、図8bに明確に見ることができるように、無傷の非液体酸化物膜及びほぼ球形の形状を有する画定された溶接ビードを得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1a、1b バー型導体
2a、2b (外側)脚部
3a、3b (内側)脚部
4a、4b 中間部品
5a、5b 端部領域
6a、6b 正面側端面
7 共通のベース表面
8a、8b 長辺
9a、9b 断面
11 加工用レーザビーム
11a 成形レーザビーム
12 溶接輪郭
13 領域
14 非液体酸化物膜
15 液体バー型導体材料
16 長縁
17 短縁
18 外周部
19 溶接ビード
20 正面端部側
21 周囲領域
22 接続された断面積
23 コア部分
24 リング部分
25 コアファイバー
26 リングファイバー
27 2イン1ファイバー
d 最小距離
最小距離(短縁の方向の)
最小距離(長縁の方向の)
EP 第1の段階(初期段階)
HP 主段階
sp 溶接ビードの高さ
unv 無傷の周囲領域の高さ
KFD コアファイバー直径
LP 最後の段階(最終段階)
L 範囲(最小距離dの方向の)
短縁の長さの2倍
長縁の長さ
kurz 短縁の長さ
P レーザ出力
ges 総レーザ出力
kern コア部分のレーザ出力
ring リング部分のレーザ出力
RFD リングファイバー直径
v 進行速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バー型導体(1a、1b)、好ましくは、曲げられたバー型導体(1a、1b)、特に、電動機又は発電機用のヘアピンをレーザ溶接する方法であって、
前記バー型導体(1a、1b)は、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%のアルミニウム含有量を有するアルミニウム含有バー型導体材料からなり、
2つのバー型導体(1a、1b)は、部分的なオーバラップ部を有して互いに隣り合って配置されており、加工用レーザビーム(11)によって互いに溶接され、前記バー型導体(1a、1b)を互いに接続する溶接ビード(19)が、互いに隣り合う前記バー型導体(1a、1b)の共通のベース表面(7)上に形成され、
特に、前記共通のベース表面(7)は、水平に整列しており、
前記バー型導体(1a、1b)のレーザ溶接中、前記加工用レーザビーム(11)は案内され、このプロセスにおいて、前記加工用レーザビーム(11)の溶接輪郭(12)が前記バー型導体(1a、1b)に対して配置され、前記バー型導体(1a、1b)に対する前記溶接輪郭(12)に沿った前記加工用レーザビーム(11)の進行速度vは、
- 前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接中、前記溶接ビード(19)は非液体酸化物膜(14)を有し、前記非液体酸化物膜(14)の内側に液体バー型導体材料(15)が蓄積し、
- 前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接中、前記非液体酸化物膜(14)は、前記溶接輪郭(12)に対応するように、前記溶接ビード(19)の上向きの端面(20)上のみが、前記加工用レーザビーム(11)によって部分的に破壊されて開口し、
- 前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接中、前記非液体酸化物膜(14)は、上端面(20)から下方に、前記バー型導体(1a、1b)に向かって、前記溶接ビード(19)の全体の周りに延びる前記溶接ビード(19)の周囲領域(21)内において無傷のままである
ように選択される、
方法。
【請求項2】
前記加工用レーザビーム(11)の前記溶接輪郭(12)は、前記共通のベース表面(7)の外周部(18)から前記溶接輪郭(12)の最小距離d、及び前記最小距離dが位置する方向に沿った前記共通のベース表面(7)の範囲Lに関して、
d≧0.15*L、好ましくは、d≧0.20*L、特に好ましくは、d≧0.25*Lが成り立つように、前記バー型導体(1a、1b)に対して配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加工用レーザビーム(11)の前記溶接輪郭(12)は、前記共通のベース表面(7)の外周部(18)から前記溶接輪郭(12)の最小距離dに関して、
d≧0.6mm、好ましくは、d≧0.8mm、特に好ましくはd≧1.0mm
が成り立つように、前記バー型導体(1a、1b)に対して配置される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記バー型導体(1a、1b)に対する前記加工用レーザビーム(11)の前記溶接輪郭(12)に沿った前記加工用レーザビーム(11)の前記進行速度vに関して、
v≦1600mm/s、好ましくは、v≦1200mm/s、特に好ましくは、v≦800mm/s
が成り立つ、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザ溶接は、酸素含有雰囲気、特に空気中で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の少なくとも時間的に後半に、前記非液体酸化物膜(14)が無傷のままの前記周囲領域(21)は、前記溶接ビード(19)の高さ(Hsp)の少なくとも3/4にわたって、好ましくは、前記溶接ビード(19)の前記高さ(Hsp)の少なくとも9/10にわたって延びる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記2つのバー型導体(1a、1b)は、端部領域(5a、5b)が互いに平行に、互いに対して載置された状態で配置され、
特に、前記バー型導体(1a、1b)の前記端部領域(5a、5b)は、互いに広範に押し付けられ、
前記バー型導体(1a、1b)の正面側端面(6a、6b)は、前記バー型導体(1a、1b)の前記端部領域(5a、5b)の長手方向範囲の方向に対してほぼ同じ高さに位置し、
前記加工用レーザビーム(11)は、前記バー型導体(1a、1b)の前記正面側端面(6a、6b)に向けられ、したがって、前記正面側端面(6a、6b)は、前記溶接ビード(19)が形成される前記共通のベース表面(7)を提供する
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記バー型導体(1a、1b)の前記端部領域(5a、5b)はほぼ垂直上方に向けられ、
特に、前記正面側端面(6a、6b)は、ほぼ水平に整列される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加工用レーザビーム(11)は、前記正面側端面(6a、6b)にほぼ垂直に入射する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記バー型導体(1a、1b)は、前記共通のベース表面(7)の少なくとも近傍に、特に、各端部領域(5a、5b)に、それぞれ、縁長さ(Lkurz、L)が0.2mm~10mm、好ましくは1mm~8mm、特に好ましくは2mm~6mmの矩形の断面(9a、9b)を有し、
特に、各バー型導体(1a、1b)の場合、長縁の長さLは、短縁の長さLkurzの2倍であり、互いに溶接される前記2つのバー型導体(1a、1b)の前記断面(9a、9b)は同じである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
各長縁(16)の方向における前記溶接輪郭(12)と前記共通のベース表面(7)の外周部(18)との間の最小距離dは、対応する前記長縁の長さLの20%~40%、好ましくは25%~35%であり、各短縁(17)の方向における前記溶接輪郭(12)と前記共通のベース表面(7)の前記外周部(18)との間の最小距離dは、前記短縁の長さLの2倍の20%~40%、好ましくは25%~35%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加工用レーザビーム(11)は、
0.5kW≦P≦20kW、
好ましくは2kW≦P≦10kW、
特に好ましくは4kW≦P≦8kW
のレーザ出力Pを有し、
及び/又は前記加工用レーザビーム(11)の波長は、400nm~1200nmである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記溶接輪郭(12)は、線形、円形、又は楕円形であるように選択され、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接中に複数回通過され、
特に、前記溶接輪郭(12)は、スキャナ光学ユニットによって生成される
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
コア部分(23)と、前記コア部分(23)を環状に取り囲むリング部分(24)とを有する成形レーザビーム(11a)が、加工用レーザビーム(11)として少なくとも一時的に選択され、
特に、前記成形レーザビーム(11a)は、11μm≦KFD≦300μm、好ましくは、50μm≦KFD≦100μmのコアファイバー直径KFDを有し、50μm≦RFD≦1000μm、好ましくは200μm≦RFD≦400μmのリングファイバー直径RFDを有する2イン1ファイバー(27)によって生成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
前記コア部分(23)のレーザ出力の出力コンポーネントPkernは、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の主段階(HP)中よりも、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の時間的に第1の段階(EP)中に小さくなるように選択され、
特に、前記コア部分(23)の前記レーザ出力の前記出力コンポーネントPkernは、第1の段階(EP)中に連続的に増加し、
特に、前記第1の段階(EP)は、1ms~30msの持続時間を有する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コア部分(23)のレーザ出力の出力コンポーネントPkernは、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の主段階(HP)中よりも、前記バー型導体(1a、1b)の前記レーザ溶接の時間的に最後の段階(LP)中により小さく、
特に、前記コア部分(23)の前記レーザ出力の前記出力コンポーネントPkernは、前記最後の段階(LP)中に連続的に減少し、
特に、前記最後の段階(LP)は、1ms~30msの持続時間を有する、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1又は2に記載の方法によって溶接された少なくとも2つのバー型導体(1a、1b)を含む、バー型導体配置。
【請求項18】
バー型導体配置の使用であって、前記バー型導体配置はそれぞれ、2つの各バー型導体(1a、1b)を請求項1又は2に記載の方法によって溶接することによって作製され、前記バー型導体配置は、電動機又は発電機に取り付けられる、
バー型導体配置の使用。
【国際調査報告】