(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】パワーモジュール用基板、パワーモジュール、およびパワーモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20240318BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20240318BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/14 R
H05K1/02 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563020
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2022056363
(87)【国際公開番号】W WO2022218624
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マレキ,ミラド
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ルートビヒ,マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン,ダビド
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA02
5E338AA18
5E338BB19
5E338BB25
5E338EE26
5E338EE32
(57)【要約】
本開示は、絶縁層を有するキャリアシート(201)を含むパワーモジュール(210)用基板(200)に関する。基板(200)はさらに、キャリアシート(201)の第1の表面上に形成された第1のメタライゼーション層(202)を含み、第1のメタライゼーション層(202)は、パワーモジュール(210)の少なくとも1つの半導体ダイ(204)を実装するための実装領域(207)を含み、基板(200)はさらに、キャリアシート(201)の第2の表面上に形成され、基板(200)を平坦面に取付けるための取付領域(206)を含む第2のメタライゼーション層(205)を含む。第1のメタライゼーション層(202)の実装領域の少なくとも一部は複数の第1の溝(203)を用いて構造化され、第1の溝(203)は、第1のメタライゼーション層(202)の外面から絶縁層まで延びて、第1のメタライゼーション層(202)を個々の部分(202a,202b,202c)に電気的に分割する。第2のメタライゼーション層(205)の取付領域の少なくとも一部は少なくとも1つの第2の溝(211)を用いて構造化され、第2の溝(211)は、第2のメタライゼーション層(205)の外面から少なくとも部分的に少なくとも1つの絶縁層まで延びている。本開示はさらに、そのような基板(200)を含むパワーモジュール(210)と、対応するパワーモジュール(210)の製造方法とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーモジュール(210)用基板(200)であって、
- 平面に延在し、少なくとも1つの絶縁層を含むキャリアシート(201)と、
- 前記キャリアシート(201)の第1の表面上に直接形成された第1のメタライゼーション層(202)とを備え、前記第1のメタライゼーション層(202)は、パワーモジュール(210)の少なくとも1つの半導体ダイ(204)を実装するための実装領域(207)を含み、前記基板(200)はさらに、
- 前記キャリアシート(201)の第2の表面上に直接形成された第2のメタライゼーション層(205)を備え、前記第2の表面は前記第1の表面と反対側にあり、前記第2のメタライゼーション層(205)は、前記基板(200)を平坦面に取付けるための取付領域(206)を含み、
- 前記キャリアシート(201)の前記平面への前記実装領域(207)および前記取付領域(206)の投影は、少なくとも部分的に重なり合い、
- 前記実装領域(207)は少なくとも1つの第1の溝(203)を用いて構造化され、前記第1の溝(203)は、前記第1のメタライゼーション層(202)の外面から前記少なくとも1つの絶縁層まで延びて、前記第1のメタライゼーション層(202)を個々の部分(202a,202b,202c)に電気的に分割し、
- 前記取付領域(206)は少なくとも1つの第2の溝(211)を用いて構造化され、前記第2の溝(211)は、前記第2のメタライゼーション層(205)の外面から少なくとも部分的に前記少なくとも1つの絶縁層まで延びており、
- 前記少なくとも1つの第2の溝(211)の底部に配置された導電材料(229)が、前記少なくとも1つの第2の溝(211)に隣接する前記第2のメタライゼーション層(205)のそれぞれの部分の端部を相互接続する、基板(200)。
【請求項2】
- 前記キャリアシート(201)は、前記少なくとも1つの絶縁層と前記第2のメタライゼーション層(205)との間に配置された少なくとも1つの第1の導電層をさらに含み、
- 前記少なくとも1つの第2の溝(211)は、前記第2のメタライゼーション層(205)の前記外面から前記少なくとも1つの第1の導電層の表面まで延びており、
- 前記少なくとも1つの第1の導電層は、前記少なくとも1つの第2の溝(211)に隣接する前記第2のメタライゼーション層(205)の前記それぞれの部分の前記端部を相互接続する、請求項1に記載の基板(200)。
【請求項3】
前記基板(200)は活性金属ろう付け基板(214)であり、前記少なくとも1つの導電層は、前記少なくとも1つの絶縁層の表面上に形成されたろう付け層(217)である、請求項2に記載の基板(200)。
【請求項4】
- 前記少なくとも1つの第2の溝(211)は、前記第2のメタライゼーション層(205)の前記外面から前記少なくとも1つの絶縁層まで延びるトレンチ(224)を含み、
- 導電層(225)および弾性導電材料(229)のうちの少なくとも一方が前記トレンチ(224)の少なくとも底部に配置され、これにより、前記少なくとも1つの第2の溝(211)に隣接する前記第2のメタライゼーション層(205)の前記それぞれの部分の前記端部が相互接続される、請求項1に記載の基板(200)。
【請求項5】
- 前記基板(200)は、直接接合銅基板(226)または直接接合アルミニウム基板(220)のうちの一方である、および
- 前記第2のメタライゼーション層(205)は、前記キャリアシート(201)の前記少なくとも1つの絶縁層の表面に直接接合される、
のうちの少なくとも一方である、請求項4に記載の基板(200)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の溝(211)は、前記第2のメタライゼーション層(205)の前記外面から前記絶縁層に向かって部分的にのみ延びるトレンチ(224)を含み、これにより、前記トレンチ(224)の下の前記第2のメタライゼーション層(205)の残りの材料は、前記少なくとも1つの第2の溝(211)に隣接する前記第2のメタライゼーション層(205)の前記それぞれの部分の前記端部を相互接続する、請求項1に記載の基板(200)。
【請求項7】
前記第1のメタライゼーション層(202)は上部銅層(218)を含み、前記第2のメタライゼーション層(205)は下部銅層(219)を含む、請求項1に記載の基板(200)。
【請求項8】
パワーモジュール(210)であって、
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の基板(200)と、
- 前記第1のメタライゼーション層(202)の前記実装領域(207)に実装された少なくとも1つの半導体ダイ(204)とを備える、パワーモジュール(210)。
【請求項9】
キャリア構造をさらに備え、前記取付領域(206)は前記キャリア構造の平坦面に取付けられ、前記キャリア構造は、
- 前記第2のメタライゼーション層(210)と電気的および/もしくは熱的に接触している導電性キャリアプレート、
- 前記第2のメタライゼーション層(210)と熱的に接触しているベースプレート(208)、または
- 前記第2のメタライゼーション層(210)と熱的に接触している冷却器、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のパワーモジュール(210)。
【請求項10】
- 前記少なくとも1つの半導体ダイ(204)が搭載された前記基板(200)の前記第2のメタライゼーション層(205)の前記取付領域(206)が前記基板(200)の熱処理中に本質的に平坦なままであるように、前記少なくとも1つの第1の溝(203)および前記少なくとも1つの第2の溝(211)のパターンはバランスする、
- 前記第1のメタライゼーション層(202)の材料の量は、前記第2のメタライゼーション層(205)の材料の量に対応する、
- 前記少なくとも1つの第1の溝(203)および前記少なくとも1つの第2の溝(211)は、前記キャリアシート(201)の対応する表面領域を覆う、
- 前記少なくとも1つの第1の溝(203)および前記少なくとも1つの第2の溝(211)は、対応する体積を有する、
- 前記第1のメタライゼーション層(202)の厚さは前記第2のメタライゼーション層(205)の厚さに対応し、前記少なくとも1つの第1の溝(203)および前記少なくとも1つの第2の溝(211)は合同である、または
- 前記第1のメタライゼーション層(202)の厚さは前記第2のメタライゼーション層(205)の厚さとは異なり、前記少なくとも1つの第1の溝(203)および前記少なくとも1つの第2の溝(211)の少なくとも一部は合同でない、
のうちの少なくとも1つである、請求項8または9に記載のパワーモジュール(210)。
【請求項11】
パワーモジュール(210)を製造する方法であって、
- 少なくとも1つの絶縁層と、第1のメタライゼーション層(202)と、第2のメタライゼーション層(205)とを含む基板(200)を提供するステップを備え、前記第1および第2のメタライゼーション層(202,205)は前記絶縁層の両側に直接配置されており、前記方法はさらに、
- 少なくとも1つの第1の溝(203)を形成するように前記第1のメタライゼーション層(202)を構造化するステップを備え、前記第1の溝(203)は、前記第1のメタライゼーション層(202)を複数の個々の部分(202a,202b,202c)に電気的に分割し、前記方法はさらに、
- 前記第2のメタライゼーション層(205)の取付領域(206)に少なくとも1つの第2の溝(211)を形成するように前記第2のメタライゼーション層(205)を構造化するステップを備え、前記少なくとも1つの第2の溝(211)は、前記第2のメタライゼーション層(205)の外面から前記絶縁層に向かって少なくとも部分的に延びており、前記少なくとも1つの第2の溝(211)の底部に配置された導電材料(229)が、前記少なくとも1つの第2の溝(211)に隣接する前記第2のメタライゼーション層(205)のそれぞれの部分の端部を相互接続し、前記方法はさらに、
- 少なくとも1つの半導体ダイ(204)を前記第1のメタライゼーション層(202)の実装領域(207)に実装するステップと、
- 前記第2のメタライゼーション層(205)の少なくとも前記取付領域(206)を平坦面に取付けるステップとを備える、方法。
【請求項12】
- 前記基板(200)を提供するステップにおいて、前記絶縁層と前記第2のメタライゼーション層(205)との間に配置された少なくとも1つのさらなる金属層を含む多層基板(200)が提供され、
- 前記第2のメタライゼーション層(205)を構造化するステップにおいて、前記少なくとも1つのさらなる金属層は、エッチングプロセスにおけるエッチストップまたは構造化プロセスにおける加工ストップのうちの少なくとも一方として機能する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
- 前記少なくとも1つの第2の溝(211)の少なくとも底部を導電材料(225)でコーティングまたは充填して、前記少なくとも1つの第2の溝(211)に隣接する前記第2のメタライゼーション層(205)のそれぞれの部分の間に電気的相互接続を形成するステップをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
- 前記第2のメタライゼーション層(205)を構造化するステップにおいて、前記第2のメタライゼーション層(205)はエッチングされ、
- エッチング方法、エッチング時間、エッチング剤、および/またはエッチング液濃度は、前記少なくとも1つの第2の溝(211)が前記絶縁層まで完全には延びないように選択される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャリアシートと、第1のメタライゼーション層と、第2のメタライゼーション層とを含むパワーモジュール用基板に関する。本開示はさらに、そのような基板を含むパワーモジュールと、そのようなパワーモジュールを製造する製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002-344094号公報は、パワーモジュール用回路基板に関し、より具体的には、たとえば自動車用インバータ装置のための、メタライゼーションパターンの端部に隣接して溝を形成することにより熱サイクル挙動が改善されたパワーモジュール用回路基板に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の目的は、製造が比較的容易であり、製造中および動作中の熱応力および/または機械的応力に耐えることができ、高電流および/または高電圧の存在下でも確実に動作する、パワーエレクトロニクスの実現に適した基板およびモジュールと、対応する製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一局面によれば、パワーモジュール用基板が提供される。この基板は、平面に延在し、少なくとも1つの絶縁層を含むキャリアシートと、キャリアシートの第1の表面上に形成された第1のメタライゼーション層とを含み、第1のメタライゼーション層は、パワーモジュールの少なくとも1つの半導体ダイを実装するための実装領域を含み、基板はさらに、キャリアシートの第2の表面上に形成された第2のメタライゼーション層を含み、第2の表面は第1の表面と反対側にあり、第2のメタライゼーション層は、基板を平坦面に取付けるための取付領域を含む。キャリアシートの平面への実装領域および取付領域の投影は、少なくとも部分的に重なり合う。実装領域は少なくとも1つの第1の溝を用いて構造化され、第1の溝は、第1のメタライゼーション層の外面から少なくとも1つの絶縁層まで延びて、第1のメタライゼーション層を個々の部分に電気的に分割する。取付領域は少なくとも1つの第2の溝を用いて構造化され、第2の溝は、第2のメタライゼーション層の外面から少なくとも部分的に少なくとも1つの絶縁層まで延びている。
【0005】
両側の実装領域および取付領域の少なくとも一部を構造化することにより、熱応力または機械的応力サイクル中の、たとえば製造中の、キャリアシートの曲げまたは反りを低減することができるので、完成した基板の湾曲が低減される。そして、基板の湾曲が低減されると、基板といずれかのキャリア構造との間の機械的接続における応力が低減されるので、パワーモジュールなどのアセンブリの信頼性が高まる。
【0006】
さらなる実施形態によれば、たとえば、トレンチの底部に導電層を配置することにより、またはトレンチの少なくとも底部を弾性導電材料で充填することにより、少なくとも1つの第2の溝の底部に導電材料が配置され、導電材料は、少なくとも1つの第2の溝に隣接する第2のメタライゼーション層のそれぞれの部分の端部を相互接続する。
【0007】
第2の溝の側面同士の間に電気的接続を形成することにより、主にメタライゼーション層の端部および角部に発生する、キャリアシートおよび第2の溝における局所的な高電界を回避することができるので、電気的応力が低減され、動作中の部分放電および絶縁破壊が回避される。
【0008】
さらなる実施形態によれば、キャリアシートは、少なくとも1つの絶縁層と第2のメタライゼーション層との間に配置された少なくとも1つの第1の導電層をさらに含む。少なくとも1つの第2の溝は、第2のメタライゼーション層の外面から少なくとも1つの第1の導電層の表面まで延びている。少なくとも1つの第1の導電層は、少なくとも1つの第2の溝に隣接する第2のメタライゼーション層のそれぞれの部分の端部を相互接続する。第1の導電層を元の状態のまま維持することにより、電気的相互接続を確立することができ、これにより第2の溝に関連する電気的悪影響が緩和される。
【0009】
たとえば、基板は活性金属ろう付け(AMB)基板であってもよく、少なくとも1つの導電層は、少なくとも1つの絶縁層の表面上に形成されたろう付け層であってもよい。このような構造は製造が容易である。第2の溝によって第2のメタライゼーション層を分割すると、第1のメタライゼーション層の構造化とのバランスが取れる。同時に、ろう付け層のような追加の導電層が、加工ストップとして、たとえばエッチング中のエッチストップとして使用されてもよく、また、第2のメタライゼーション層のそれぞれの部分の隣接端部を電気的に接続するために使用されてもよい。
【0010】
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つの第2の溝は、第2のメタライゼーション層の外面から少なくとも1つの絶縁層まで延びるトレンチとして形成される。トレンチの底部に導電層が配置され、これにより、少なくとも1つの第2の溝に隣接する第2のメタライゼーション層のそれぞれの部分の端部が相互接続される。少なくとも絶縁層の露出部分をたとえば薄い導電層で覆うことにより、または、少なくとも1つのトレンチの少なくとも底部をたとえば弾性導電材料で充填することにより、電気的相互接続を確立することができ、これにより第2の溝に関連する電気的悪影響が緩和される。
【0011】
たとえば、基板は、直接接合銅(DBC)基板または直接接合アルミニウム(DBA)基板のうちの一方であってもよい。これに代えてまたはこれに加えて、第2のメタライゼーション層は、キャリアシートの少なくとも1つの絶縁層の表面に直接接合されてもよい。このような基板は広く入手可能であり、パワーエレクトロニクスに有利な熱特性を含むさまざまな有利な効果を有する。
【0012】
さらなる局面によれば、実施形態のうちの1つに係る基板と、第1のメタライゼーション層の実装領域に実装された少なくとも1つの半導体ダイとを含むパワーモジュールが提供される。
【0013】
たとえばはんだ付け、焼結または同様の加工ステップによって少なくとも1つの半導体ダイを基板の実装領域に取付けるには、この基板または少なくとも1つの半導体ダイの熱処理が必要であることが多い。第2のメタライゼーション層に少なくとも1つの第2の溝が存在することにより、基板の湾曲が回避または少なくとも緩和されるので、基板に熱が加えられる可能性がある、基板上に少なくとも1つの半導体ダイを実装する際に、および/または、ベースプレート、冷却器などの下層キャリア構造に基板を実装する際に、パワーモジュールの不適切な接合接続が回避または緩和される。
【0014】
さらなる実施形態によれば、パワーモジュールはキャリア構造をさらに含み、取付領域はキャリア構造の平坦面に取付けられる。キャリア構造は、第2のメタライゼーション層と電気的および/もしくは熱的に接触している導電性キャリアプレート、第2のメタライゼーション層と熱的に接触しているベースプレート、または第2のメタライゼーション層と熱的に接触している冷却器、のうちの少なくとも1つを含む。パワーモジュールの基板の湾曲を低減することにより、ベースプレート、電気キャリアプレート、および冷却器のうちの1つ以上を含むキャリア構造のより大きな平坦面領域に基板を取付けることができる。
【0015】
さらなる局面によれば、パワーモジュールの製造方法が提供される。この方法は、少なくとも絶縁層と、第1のメタライゼーション層と、第2のメタライゼーション層とを含む基板を提供するステップを含み、第1および第2のメタライゼーション層は絶縁層の両側に配置されており、方法はさらに、少なくとも1つの第1の溝を形成するように第1のメタライゼーション層を構造化するステップを含み、第1の溝は、第1のメタライゼーション層を複数の個々の部分に電気的に分割し、方法はさらに、第2のメタライゼーション層の取付領域に少なくとも1つの第2の溝を形成するように第2のメタライゼーション層を構造化するステップを含み、少なくとも1つの第2の溝は、第2のメタライゼーション層の外面から絶縁層に向かって少なくとも部分的に延びており、方法はさらに、少なくとも1つの半導体ダイを第1のメタライゼーション層の実装領域に実装するステップと、第2のメタライゼーション層の少なくとも取付領域を平坦面に取付けるステップとを含む。
【0016】
上記のステップによって、本開示の他の局面に関して上記に詳述したように、湾曲が低減されたパワーモジュールが製造される。
【0017】
さらなる実施形態によれば、第2のメタライゼーション層を構造化するステップにおいて、第2のメタライゼーション層はエッチングされ、エッチング方法、エッチング時間、エッチング剤、および/またはエッチング液濃度は、少なくとも1つの第2の溝が絶縁層まで完全には延びないように選択される。適切なエッチングパラメータを使用することにより、第2のメタライゼーション層の部分エッチングを達成することができ、これは、パワーモジュールの動作中に好ましくない電気的影響を緩和するのに役立つ。
【0018】
上記の製造方法は、たとえば、上記のパワーモジュールの基板および対応するパワーモジュールの製造に適している。したがって、基板およびパワーモジュールに関連して記載される特徴および利点は、製造方法に使用することができ、その逆も同様である。
【0019】
本開示は、発明のいくつかの局面を含む。それぞれの特徴が特定の局面の文脈の中で明確に言及されていなくても、1つの局面に関して記載されるすべての特徴は他の局面に関しても本明細書に開示されている。
【0020】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれている。図中、同じ構造および/または機能の要素は、同じ参照符号によって参照される場合がある。図に示される実施形態は説明のための表現であり、必ずしも正確な縮尺ではないことが理解されねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】半導体ダイが搭載された従来の基板の表面メタライゼーション層を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の基板の裏面メタライゼーション層を概略的に示す図である。
【
図4】
図1~
図3の基板と平坦面との間の接触領域を概略的に示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る表面メタライゼーション層を概略的に示す図である。
【
図6】
図5の基板の裏面メタライゼーション層を概略的に示す図である。
【
図8】
図5~
図7の基板と平坦面との間の接触領域を概略的に示す図である。
【
図9】途切れのない第1のメタライゼーション層の下の第2のメタライゼーション層の溝の領域における電界強度のシミュレーションを示す図である。
【
図10】途切れのある第1のメタライゼーション層の下の第2のメタライゼーション層の溝の領域における電界強度のシミュレーションを示す図である。
【
図11】別の実施形態に係る基板の断面を概略的に示す図である。
【
図12】別の実施形態に係る基板の断面を示す図である。
【
図13】途切れのない第1のメタライゼーション層の下の第2のメタライゼーション層の溝の領域における電界強度のシミュレーションを示す図である。
【
図14】途切れのある第1のメタライゼーション層の下の第2のメタライゼーション層の溝の領域における電界強度のシミュレーションを示す図である。
【
図15】別の実施形態に係る基板の断面を概略的に示す図である。
【
図16】別の実施形態に係る基板の断面を概略的に示す図である。
【
図17】パワーモジュールの製造方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明はさまざまな変形例および代替的な形態に適用可能であるが、その詳細が、一例として図面に示されており、詳細に記載される。しかしながら、本発明を記載されている特定の実施形態に限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。それどころか、添付の請求項によって定義される本発明の範囲内にあるすべての変形例、等価物、および代替例をすべてカバーすることを意図している。
【0023】
本開示のさまざまな実施形態をより詳細に記載する前に、まず、従来技術を用いてパワーモジュールを製造する際に起こり得る問題を、
図1~
図4を用いて説明する。
【0024】
図1は、その第1の面または表面に第1のメタライゼーション層102が形成されている、基板100の従来の絶縁キャリアシート101を示す。図示される例では、第1のメタライゼーション層102の材料は、2つの溝103aおよび103bによって3つの個々の部分102a,102bおよび102cに分割されている。溝103aおよび103bは、第1のメタライゼーション層102の外面から第1のメタライゼーション層102の厚さ全体を貫通してキャリアシート101まで延びている。
図3に示す例では、溝103bは、個々の部分102aおよび102bの上面から、第1のメタライゼーション層102の個々の部分102a,102bおよび102cとその下の絶縁キャリアシート101との間の接触界面まで完全に延びている。この上面および接触界面は、第1のメタライゼーション層102の両方の主面に位置している。
【0025】
部分102a~102cの上に、合計4個の半導体ダイ104a,104b,104cおよび104dが実装されている。
図1に示す実施形態では、半導体ダイ104a~104dの各々は、第1のメタライゼーション層102の部分102a~102cのうちの1つに実装されている。さらなるコンタクトが半導体ダイ104a~104dの上面から設けられてもよい。不図示の代替的な実施形態では、半導体ダイ104a~104dのうちの1つ以上、または2つ以上の端子を有するNTC抵抗器などの他の個別素子が、第1のメタライゼーション層102の部分のうちのいくつかにまたがっていてもよい。当然のことながら、第1のメタライゼーション層102の部分の数、それらの間の絶縁溝103の数、およびそれらに取付けられる部品の数は、いかなる形でも限定されず、意図されたモジュールの設計および目的によって異なる。
【0026】
図2は、
図1の基板100のキャリアシート101の反対側の第2の面または裏面を示す。図に見られるように、裏面の大部分は1つの均一な第2のメタライゼーション層105で覆われている。第2のメタライゼーション層105は、本質的に、AlSiCまたはMgSiC等の金属材料または複合材料のような導電材料で作られたキャリアプレートのような平坦面にキャリア基板100を実装するために典型的に使用される取付領域106を形成し、共通の電位、典型的には電気接地、またはヒートシンクとして機能するベースプレートもしくは冷却器の接触領域を提供する。
【0027】
製造中、
図1および
図2に示すような基板100はさまざまな加工ステップを経る。これらの加工ステップのうちのいくつかは、高温でおよび/または機械的な力で実行される。たとえば、半導体ダイ104a~104dは、熱処理を用いて第1のメタライゼーション層102にはんだ付けまたは焼結され得る。焼結の場合、さらに圧力が基板100に加えられる。第1のメタライゼーション層102と第2のメタライゼーション層105との間の物理的アンバランスのために、キャリアシート101と、第1のメタライゼーション層102と、第2のメタライゼーション層105とを含む基板100が熱応力および/または機械的応力に反応して曲がり、
図3に示すような湾曲が生じることがある。この影響は、たとえば、それぞれの電流要件、熱的要件および信頼性要件に対処するために比較的大きなメタライゼーション特徴を有する比較的大きな基板を使用するパワーエレクトロニクスモジュールの設計に関連する。例示的な実施形態では、基板100の中央部107が上向きに、すなわち下層ベースプレート108の平坦面から離れるように曲がり、この平坦面との間に隙間111を形成する。これはいくつかの理由で望ましくない。
【0028】
たとえば、
図4に示すように、第2のメタライゼーション層105がはんだ付けによって下層ベースプレート108に取付けられる場合、はんだ109は、第2のメタライゼーション層105とベースプレート8とを、取付領域106の周辺部110においてのみ接続する。これに対して、取付領域106の中央部107に形成された隙間111は、ベースプレート108と基板100との間の熱的、機械的および/または電気的接続を弱める結果となる。隙間111が形成されなくても、得られるはんだ層は不均一な厚さを有することになり、この結果、熱機械応力に関する信頼性が低下し得る。したがって、このような湾曲は、基板100を下層ベースプレート108に適切かつ均一に接合する上で問題となる。湾曲は、熱抵抗の増加によって熱的問題を引き起こす可能性もある。さらに、基板100が曲がると、その後の加工ステップにおける基板100の取り扱いおよび加工が一般により困難になる。その後、基板100のこのような湾曲によって生じる応力により、熱サイクルに関して、パワーモジュールなどの完成した装置の寿命が短くなる可能性もある。
【0029】
とりわけ、本発明者らは、第2のメタライゼーション層105の取付領域106に少なくとも1つの溝を設けることにより上記の悪影響を緩和できることを見出した。そうすることにより、第1および第2のメタライゼーション層102および105のこの構造化を少なくとも部分的にバランスさせて応力を補償することができるので、基板100の湾曲が低減される。
【0030】
基板200の改善された実施形態を、
図5~
図8に関して説明する。
図5に示す表面メタライゼーション層202および半導体ダイ204a~204dの配置は、
図1に示す基板100の表面に対応する。簡潔にするために、上記の対応部分を参照する。しかしながら、第1のメタライゼーション層202に設けられた2つの溝203aおよび203bを少なくとも部分的にバランスさせるために、
図6に示す第2のメタライゼーション層205もいくつかの第2の溝を含み、この溝は機械的応力を低減するのに役立ち、したがって基板200の湾曲が低減される。
【0031】
第1の溝103に関して上記に詳述したように、第2の溝は、第2のメタライゼーション層205の外面から内向きに、すなわちキャリアシート201に向かって延びている。「外面」という用語は、第2のメタライゼーション層205とキャリアシート201との間の界面と反対側の第2のメタライゼーション層205の表面、すなわち、基板200を実装するための平坦面を向く表面を指す。記載される例では、第2のメタライゼーション層205の外面は、ベースプレート208の平坦面に取付けられている。
【0032】
図示される例では、2つの水平溝211aおよび211bと垂直溝211cとが設けられている。メタライゼーション層202および205の厚さは0.1~5mmであってもよく、たとえば0.1~3mmまたは0.1~1mmであってもよい。記載される例では、第1のメタライゼーション層202の厚さは0.5mmであり、第2のメタライゼーション層205の厚さはそれよりも少し小さい0.4mmである。これに代えて、2つのメタライゼーション層202および205の厚さは同じであってもよい。一般に、応力補償のためには、上側の溝の位置とメタライゼーション層の厚さ比とを考慮すべきである。
【0033】
第1の近似では、第2のメタライゼーション層205によって設けられる裏面メタライゼーションの第2の溝211は、第1のメタライゼーション層202によって設けられる上部メタライゼーションの対応する第1の溝203の下に準備される。それにもかかわらず、
図5および
図6に示すように、これは、たとえば異なるメタライゼーション厚さおよび/または実装された半導体ダイ204によって引き起こされる個々の応力状況が原因で、逸脱する場合がある。
【0034】
第2の溝211a~211cが存在しているにもかかわらず、第2のメタライゼーション層205のすべての部分が同じ電位のままであること、たとえば電気的に接続されることに留意すべきである。
図6に示す実施形態では、これは、すべての溝211a~211cが第2のメタライゼーション層205の材料で囲まれていることで達成される。これはまた、第2のメタライゼーション層205のすべての部分を共通の導電性キャリアプレートに取付けることにより、または後で詳述するように溝211a~211cの底部に導電材料を維持もしくは提供することにより、達成することができる。これに対して、第1のメタライゼーション層202のさまざまな部分202a~202cは、高出力FET、ダイオードまたはIGBT構造のような半導体ダイ204a~204dの所望の動作および制御を可能にするために、互いに電気的に絶縁されている。
【0035】
第2の溝211a~211cの存在は、第1のメタライゼーション層202の第1の溝203aおよび203bの存在とほぼバランスする。さらに、メタライゼーション層202および205の厚さが異なる場合、第2の溝211a~211cは、このアンバランスに起因する影響もバランスさせることができる。その結果、熱処理を行い、半導体ダイ204a~204dを第1のメタライゼーション層202に取付けた後でも、
図7に示すように基板200は本質的に平坦なままである。
【0036】
その結果、取付領域206を形成する第2のメタライゼーション層205の本質的にすべての部分が、下層平坦面と直接接触する。たとえば、基板200は、ベースプレート208および/または半導体ダイ204a~204dを冷却するために使用される冷却器(図示せず)の平坦な金属表面領域に焼結またははんだ付けされ得る。この結果、基板200、その表面に配置された半導体ダイ204a~204dと、その下のいずれかのキャリア構造との間に、機械的により安定した接続がもたらされる。さらに、能動半導体部品と取付けられたいずれかの冷却アセンブリとの間の熱抵抗値Rが低くなる。
【0037】
この状況は、
図8に示す途切れのないはんだ209に示されている。その結果、本質的に平坦な基板200と、基板200の片側の実装領域207に配置された1つまたは複数の半導体ダイ204と、任意に、基板200の反対側の取付領域206に配置されたベースプレート208、導電性キャリアプレートおよび/または冷却器とを含むパワーモジュール210を形成することができる。基板の取付領域206および実装領域207は、基板200の中心平面に投影されると、少なくとも部分的に重なり合う。
【0038】
第1および第2のメタライゼーション層202および205は、同じサイズであってもよいが、
図7に示すように絶対サイズが異なっていてもよい。一般に、溝203aおよび203bは金属パターンを分割しており、このパターンの上に、第1のメタライゼーション層202の個々の部分202a~202cに対応する半導体ダイ204a~204dが実装される。したがって、溝は典型的に基板200の中心部に見られ、基板200の端部にのみ見られるわけではない。これは、第2のメタライゼーション層205の第2の溝211a~211cについても同様である。したがって、取付領域206および実装領域207という用語は、キャリアシート201の端部に近い外側の周辺領域ではなく、それぞれのメタライゼーション層202および205の内側の中心部をそれぞれ指す。たとえば、これらは、キャリアシート201の各側の内表面領域の95,90または80パーセントを覆うと定義されてもよく、逆に、周辺領域と呼ばれ得るキャリアシート201の端部に最も近い外側の5,10または20パーセントをそれぞれ除外すると定義されてもよい。一例では、外側の周辺領域は、基板200の端部から測定して、5mm未満、たとえば2mmの幅を有する境界領域を覆ってもよい。
【0039】
図7に示すように、第2の溝211a~211cは、取付領域206を形成する第2のメタライゼーション層205の下部の外面からキャリアシート201まで完全に延びている。記載される例では、キャリアシート201は全体が絶縁材料で、たとえば高電圧用途向けのセラミックシートまたは他の用途向けの樹脂シートで作られている。上述のように、第2の溝211a~211cの領域における第2のメタライゼーション層205の金属材料のこのような完全な除去は、基板200の湾曲を緩和するために使用することができる。
【0040】
しかしながら、
図9および
図10に関して次に述べるように、本発明者らはまた、キャリアシート201の絶縁材料と下層キャリア構造との間の第2の溝の領域における第2のメタライゼーション層205の導電材料の完全な除去は、そのような基板200を利用するパワーモジュールの動作中に悪影響も及ぼし得ることを発見した。特に、絶縁キャリアシート201の表面が開いていると、第2のメタライゼーション層205の残りの部分の端部に高電界および部分放電が生じることがある。
【0041】
図9は、このような構成における電界強度のシミュレーションを示す。簡単にするために、第2のメタライゼーション層205の単一の溝211のみが示されている。絶縁キャリアシート201の上には、途切れのない第1のメタライゼーション層202が示されている。シミュレーション用に、はんだ209、その下のいずれかのキャリア構造(
図9には図示せず)、および下部の第2のメタライゼーション層205の隣接部分は、低電位、たとえば電気接地に接続されている。上部の第1のメタライゼーション層202は、高電位、たとえば正電圧に接続されている。
図9の左右の側では、すなわち第2の溝211から離れたところでは、電界は絶縁キャリアシート201の内部でほぼ均一であり、電位が一定の勾配を有している。しかしながら、溝211に近づくにつれて、特に、溝211が絶縁キャリアシート201に接する角部212aおよび212bでは、電界の比較的大きな変化を認めることができ、これによって端部の隣および溝211の内部に部分放電が生じる可能性がある。このような部分放電は、得られたパワーモジュールを高電圧および/または高周波数で動作させる際に問題となる可能性があり、その結果、モジュールの寿命が短くなったり、製造時の歩留まりが低下したりする。
【0042】
図10は、
図9に関して上述したのと同様の第2のシミュレーションを示す。
図9の状況とは対照的に、
図10に示す状況では、第1のメタライゼーション層202も、水平方向において第2の溝211と同一場所に配置される第1の溝203によって分割されている。さらに、第1のメタライゼーション層202の左側部分202aはこの場合も高電位に接続されているが、第1のメタライゼーション層202の右側部分202bは、第2のメタライゼーション層205、はんだ209、およびその下のいずれかのキャリア構造(
図10には図示せず)の電位に対応する低電位、たとえば電気接地に接続されている。したがって、
図10の右側部分には、2つのメタライゼーション層202と205との間に電界が実質的に存在しない。
図10の一番左側の部分には、均一な電界強度が観察され得、これは
図9の対応部分に示される電界強度に対応する。この例では、高い電界強度が第2の溝211の左角部212aに観察され得るが、第2の溝11の右角部212bには観察されない。これに対応して、第1の溝203の対応する角部213aを囲む領域は、局所的に非常に高い電界強度を示す。第1の溝203のこれらの領域における電界強度は、重要な位置をポリイミド層でコーティングすることにより、および/またはモジュール内部を誘電体ゲルに埋め込むことにより、低減され得る。さらに、ゲルおよび/またはポリイミドは、構成の絶縁破壊強度を向上させ得る。しかしながら、このアプローチは、実装領域207をベースプレート208または他のキャリア構造にはんだ付けするためのはんだ付けプロセスに干渉することがあるため、第2のメタライゼーション層205の第2の溝211には容易に適用できない。
【0043】
図11は、本開示の実施形態に係る基板のさらなる実施形態を示す。
図11に示す実施形態では、いわゆる活性金属ろう付け(AMB)基板214が提供される。AMB基板14は、上側および下側がろう付け層216および217でそれぞれコーティングされた、基板214の絶縁層として機能する中間セラミック層215を含む。ろう付け層216および217の外面には、上部の第1のメタライゼーション層202および下部の第2のメタライゼーション層205がそれぞれ提供される。記載される実施形態では、第1のメタライゼーション層202は上部銅層218によって提供され、下部の第2のメタライゼーション層205は下部銅層219によって提供される。これに代えて、アルミニウムを使用してメタライゼーション層202および/または205を提供してもよい。電気絶縁セラミック層215と、導電性の上部および下部ろう付け層216および217とは、合わせて、
図7に関して上記に詳述したような基板200のキャリアシート201に対応する。
【0044】
図11に見られるように、上部銅層218および下部銅層219の双方は、たとえば銅層218および219を選択的にエッチングすることにより、それぞれ溝203および211を使用して構造化される。幅C1を有する上部銅層218の上面に設けられた実装領域は、各々が幅Aを有する2つの部分202aおよび202bに分割されている。これら2つの部分202aおよび202bは、幅Bを有する第1の溝203の形態の分離トレンチによって分割されている。下層のろう付け層216は第1の溝203の領域にも存在しておらず、たとえばエッチング除去されていることに留意すべきである。上部銅層218のそれぞれの部分202aおよび202bの上面と、下層のセラミック層215との間に、幅Dを有する移行ゾーンが設けられており、このゾーンでは、上部銅層218は一部のみ欠けており、上部ろう付け層216は元の状態のままである。エッチングの代わりに、他の構造化方法も可能であり、当該方法は、キャリアシート201上に金属片を積層して基板200を形成すること、または、たとえば金属材料を用いた選択的コーティングなどの積層造形法によって基板200を製造することを含む。
【0045】
これに対応して、AMB基板214の下部の第2のメタライゼーション層205も、たとえばエッチングによって、第1のメタライゼーション層202の構造化の存在とバランスするように構造化される。しかしながら、AMB基板214の上面の構造化とは異なり、AMB基板2014の下部銅層219のトレンチは、下部ろう付け層217を貫通していない。代わりに、幅C2の取付領域206の第2の溝211が、たとえばエッチングによって形成される場合、窒化チタン(TiN)、銀(Ag)および/または銀/銅合金(Ag/Cu)などの、第2のメタライゼーション層205以外の材料を典型的に含む下部ろう付け層217は、加工ストップとして、たとえばエッチングプロセスにおけるエッチストップとして使用され、
図11に示すように本質的に元の状態のままである。その結果、第2のメタライゼーション層205の左右の隣接部分205aおよび205bは、下部ろう付け層217によって電気的に接続され続ける。これは、製造時の歩留まりを高め、プロセス安定性を向上させ、従来の半導体処理装置で比較的容易に実現することができる。電気的接続を維持することで、第2の溝211における高い電界強度および部分放電が防止される。
【0046】
図11に示す単一の溝211は、個々の溝211の形成を説明するための例として使用されているに過ぎないことに留意すべきである。実際には、所定のパワーモジュールに使用される基板200の第2のメタライゼーション層205には、より複雑な溝構造が設けられ得る。たとえば、さまざまな厚さおよび長さの1つまたは複数の閉じたおよび/または交差する第2の溝211が設けられてもよい。第2のメタライゼーション層に設けられる第2の溝211の正確な数、向き、接続および幅は、一般に、第1のメタライゼーション層202の構造化に依存し、任意に、この構造化と半導体ダイ204およびその他の部品(図示せず)との占有率、ならびに第1および第2のメタライゼーション層202および205の相対的厚さに依存する。第2のメタライゼーション層205の溝211に適した構造は、実験またはシミュレーションによって得ることができる。
【0047】
基本原則として、キャリアシート201の上に残っている材料の量は、キャリアシートの下に残っている材料の量に対応すべきである。近似として、第1のメタライゼーション層202の材料の量は、第2のメタライゼーション層の材料の量に対応すべきである。逆に、第1および第2のメタライゼーション層が同様のサイズである場合、構造化中に第2のメタライゼーション層205から除去または省略される金属の体積は、第1のメタライゼーション層202から除去される金属の量にほぼ等しいべきである。したがって、メタライゼーション層202および205の厚さが等しい場合、第1の溝203および第2の溝211の表面積は同程度であるべきである。第1のメタライゼーション層202の方が厚い場合、第2のメタライゼーション層205からより多くの材料を除去もしくは省略する必要があり、または、第2のメタライゼーション層205により多くの第2の溝211を組み込む必要がある。これに加えて、第1のメタライゼーション層202上に実装される半導体ダイ204または他の部品も影響を及ぼす可能性があり、1つまたは複数の第2の溝211のサイズおよび位置を決定するために考慮され得る。さらに、基板200の平面に投影すると、第2のメタライゼーション層205の溝構造が第1のメタライゼーション層202の溝構造に少なくとも部分的に重なることが有益であり得る。たとえば、第1のメタライゼーション層202の厚さが第2のメタライゼーション層の厚さに対応する場合、少なくとも1つの第1の溝203および少なくとも1つの第2の溝は合同であってもよい。これに代えて、第1のメタライゼーション層202の厚さが第2のメタライゼーション層205の厚さとは異なる場合、および/または半導体ダイが第1のメタライゼーション層202に接合される場合、少なくとも1つの第1の溝203および少なくとも1つの第2の溝211の少なくとも一部は合同でない。たとえば、少なくとも1つの第1の溝203および少なくとも1つの第2の溝211の位置は同一場所に配置され得るが、少なくとも1つの第1の溝203は少なくとも1つの第2の溝211よりも大きいまたは小さい幅を有し得る。
【0048】
図12は、本開示に係るさらなる実施形態を示す。
図11とは対照的に、
図15に示す実施形態は直接接合アルミニウム(DBA)基板220を示している。同様に、直接接合銅(DBC)が使用されてもよい。記載される実施形態では、上部アルミニウム層221が、絶縁層として機能するセラミック基板222に直接接合されている。同様に、下部アルミニウム層223が、セラミック基板222の下面に直接接合されている。
【0049】
金属材料と、ろう付け層216および217がないこととを除いて、DBA基板220の全体的な構造は、
図11のAMB基板214のそれに対応する。しかしながら、下部ろう付け層217がないため、追加の金属層によって停止されるエッチングまたは他の除去プロセスによって下部アルミニウム223を構造化すると、製造中に下部アルミニウム層223が隣接部分205aと205bとに完全に分割される。上記に詳述したような電界強度の好ましくないスパイクを回避するために、第2の溝211を形成するトレンチ224の底部におけるセラミック基板222の下面の露出部分は、薄い導電層225でコーティングされる。たとえば、トレンチ224を形成した後、この領域に薄い銅、銀または他の金属膜を塗布することができる。これは、たとえば化学蒸着(CVD)またはスパッタリングによる厚膜または薄膜コーティングなど、さまざまな技術を用いて達成することができる。このようにして、第2のメタライゼーション層205の隣接部分205aと205bとの間の直接の電気的接続が再確立されるので、
図13および
図14に関して以下に詳述するように電界分布が改善される。
【0050】
図13および
図14は、
図12に関して上記で説明したような、第2のメタライゼーション層205に溝211を有する基板200における電界強度の電気シミュレーションを示す。
図9および
図10に示す状況とは異なり、第2のメタライゼーション層205の溝211の底部の露出領域は、第2の溝211における高い電界強度および部分放電を回避するために薄い導電層225でコーティングした。
図9および
図10と同様に、
図13では、上部メタライゼーション層202は途切れておらず高電位に接続されており、
図14では、第1の溝203によって第2の溝211の領域で途切れており高電位(左)および低電位(右)にそれぞれ接続されている。
【0051】
図13および
図14に見られるように、第2の溝211の領域において導電層225を介した電気的接続があるため、角部212aおよび212bの近傍では局所的に大きく増大した電界は発生しない。代わりに、絶縁キャリアシート201の内部に均一な電界のみが存在する。したがって、角部212aおよび212bは高い電圧降下を受けない。実際、
図13では、第2の溝211における電界強度は比較的低く一定であるため、製造された基板200およびそれを包含するパワーモジュールの寿命が改善される。
図14に関しては、局所的に大きく増大した電界強度は、電位の異なる金属パターン間の電気的絶縁に必要な第1のメタライゼーション層202の溝の端部213aにのみ生じる。
【0052】
図15は、本開示に係るさらなる実施形態を示す。
図12とは対照的に、
図15に示す実施形態は、基板200として機能する樹脂シート228を示している。記載される実施形態では、第1のメタライゼーション層202の異なる部分202aおよび202bが、たとえば任意の適切な積層造形法によって、基板200の上面に直接堆積される。同様に、第2のメタライゼーション層202の異なる部分205aおよび205bが、基板200の下面に直接堆積される。
【0053】
基板200の全体的な構造は、
図12に示したものに対応する。しかしながら、樹脂シート228の下面の露出部分をコーティングする代わりに、第2の溝211を形成するトレンチ224の底部を導電材料229で充填する。たとえば、トレンチ224を導電性接着剤または他の導電弾性材料で部分的にまたは完全に充填することができる。このようにして、第2のメタライゼーション層205の隣接部分205aと205bとの間の直接の電気的接続が再確立されるので、
図13および
図14に示したのと同じ電界分布が得られる。
【0054】
図16は、本開示に係るさらなる実施形態を示す。これは、上部銅層218および下部銅層219がセラミック基板222に直接接合される直接接合銅(DBC)基板226を示している。
【0055】
図11、
図12および
図15に示す実施形態と同様に、下部メタライゼーション層205に設けられた第2の溝211はセラミック基板222まで完全には延びていない。記載される例では、下部銅層219の第2の溝211はエッチングによって形成し、エッチング方法、エッチング時間、エッチング剤、および/またはエッチング液濃度は、得られる溝224がセラミック基板222まで完全には延びないように選択した。これは、たとえば、異なるプロセスまたはエッチマスクを用いてトレンチ224およびDBC基板226のそれぞれの周辺領域227をエッチングすることにより達成することができる。これに代えて、選択的レーザ切断などの他の構造化方法を用いて、第2のメタライゼーション層205の金属材料を一部のみ除去してもよい。上記のように、得られる構造では、
図13および
図14にそれぞれ示すように電界分布が改善される。
【0056】
上記の例では、薄い導電層225を用いたDBA基板220のトレンチ224のコーティング、および基板200のトレンチ224の充填、およびDBC基板の部分エッチングをそれぞれ説明しているが、これは限定することを意図したものではない。特に、
図15に示す基板200のトレンチ224の底部に薄い導電層を提供すること、DBA基板220またはDBC基板226のトレンチ224を部分的にまたは完全に充填することなども可能である。
【0057】
図17は、ステップS1~S5を用いたパワーモジュール210の製造方法を概略的に示す。ステップS1~S5は異なる順序でおよび/または並行して実行されてもよいことに留意すべきである。たとえば、基板200の裏面が構造化された後に表面が構造化されてもよい。これに代えて、表面および裏面の構造化は並行して、たとえば単一のエッチングステップで実行されてもよい。
【0058】
ステップS1において、少なくとも1つの絶縁層と、第1のメタライゼーション層202と、第2のメタライゼーション205層とを含む基板200が提供される。第1および第2のメタライゼーション層202および205は、絶縁層の両側に配置されている。たとえば、上述したように、DBC基板226、DBA基板220またはAMB基板214が提供されてもよい。
【0059】
ステップS2において、第1のメタライゼーション層202は、第1のメタライゼーション層202を複数の個々の部分に電気的に分割する複数の第1の溝203を形成するように構造化される。たとえば、DBC基板226またはDBA基板220の場合は、たとえばエッチングによって第1のメタライゼーション層203を分割するだけで十分である。AMB基板214の場合は、たとえば、長いエッチング時間もしくはエッチング液濃度を用いたエッチングにより、または化学的にエッチングしにくいろう付け層216を除去するのに適したエッチング剤を用いる別のエッチングステップを実行することにより、上部ろう付け層216も分割する必要がある。
【0060】
ステップS3において、第2のメタライゼーション層205は、第2のメタライゼーション層205の取付領域206に少なくとも1つの第2の溝211を形成するように構造化され、第2の溝211は少なくとも部分的に第2のメタライゼーション層205の外面から絶縁層に向かって延びる。たとえば、上記に説明したように、トレンチ224を、たとえば下部ろう付け層217などのエッチストップまでしか延びないように、またはセラミック基板222などの絶縁層まで完全に延びるように、エッチングしてもよい。最初の構造化ステップが第2のメタライゼーション層205を完全に分割する場合は、少なくともいくつかの実施形態では、トレンチ224を導電材料225で部分的に充填して、トレンチ224の対応する端部間の電気的接続を再確立してもよい。
【0061】
ステップS4において、少なくとも1つの半導体ダイ204が第1のメタライゼーション層202の実装領域に実装される。これは、たとえば、1つまたは複数の半導体ダイ204の金属接触領域を第1のメタライゼーション層202の対応部分にはんだ付け、焼結、拡散はんだ付け、または接着することにより達成され得る。はんだ付けまたは焼結により、基板200に加熱負荷および/または機械的負荷がかかる。
【0062】
ステップS5において、第2のメタライゼーション層205の少なくとも取付領域206が、適切なキャリア構造の平坦面に取付けられる。この場合も、これは、はんだ付け、焼結、または導電性接着剤による接合などのその他の適切な方法によって行われてもよい。たとえば、ベースプレート208、導電性キャリアプレートおよび/または冷却器の平坦面が、パワーモジュール210のキャリア構造として使用されてもよい。この場合も、はんだ付けまたは焼結により、基板200に加熱負荷および/または機械的負荷がかかる。
【0063】
上記の
図1~
図17に示す実施形態は、改善された基板およびパワーモジュールならびにそれらの製造方法の例示的な実施形態を表す。したがって、これらは、改善された装置および方法に係るすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際の装置および方法は、たとえば、配置、装置、方法ステップおよび材料の点で、示された実施形態とは異なる場合がある。
【符号の説明】
【0064】
参照符号
100 基板
101 キャリアシート
102 第1のメタライゼーション層
102a~c (第1のメタライゼーション層の)部分
103,103a~b (第1の)溝
104a~d 半導体ダイ
105 第2のメタライゼーション層
106 取付領域
107 (取付領域の)中央部
108 ベースプレート
109 はんだ
110 (取付領域の)周辺部
111 隙間
200 基板
201 キャリアシート
202 第1のメタライゼーション層
202a~c (第1のメタライゼーション層の)部分
203,203a~b (第1の)溝
204,204a~d 半導体ダイ
205 第2のメタライゼーション層
205a,205b (第2のメタライゼーション層の)部分
206 取付領域
207 実装領域
208 ベースプレート
209 はんだ
210 パワーモジュール
211,211a~c (第2の)溝
212a,212b (第2の溝の)角部
213a,213b (第1の溝の)角部
214 AMB基板
215 (中間)セラミック層
216 (上部)ろう付け層
217 (下部)ろう付け層
218 (上部)銅層
219 (下部)銅層
220 DBA基板
221 (上部)アルミニウム層
222 セラミック基板
223 (下部)アルミニウム層
224 トレンチ
225 導電層
226 DBC基板
227 周辺領域
228 樹脂シート
229 導電材料
S1~S5 方法ステップ
【国際調査報告】