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特表2024-513600フェノール化合物を含まないバインダー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】フェノール化合物を含まないバインダー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/20 20060101AFI20240318BHJP
   C08H 7/00 20110101ALI20240318BHJP
   C09J 197/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08G8/20 A
C08H7/00
C09J197/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563049
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 FI2021050276
(87)【国際公開番号】W WO2022219227
(87)【国際公開日】2022-10-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514158855
【氏名又は名称】ユー ピー エム キュンメネ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サンナ・ヴァルコネン
【テーマコード(参考)】
4J033
4J040
【Fターム(参考)】
4J033CA02
4J033CA03
4J033CA16
4J033CB02
4J033CC04
4J033CC14
4J033HA03
4J033HB09
4J040BA231
4J040JB03
4J040NA13
(57)【要約】
フェノール類のクラスから選択される化合物を使用せずにバインダー組成物を製造するための方法が開示される。この方法は、(i)リグニン及びリグニンオリゴマーを含む水性組成物を、触媒の存在下で50~95℃の温度で0.25~5時間加熱する工程と、(ii)所定の粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで、架橋剤を(i)からの水性組成物と混合し、これを60~95℃の温度で加熱して、リグニン、リグニンオリゴマー及び架橋剤を重合させる工程とを含み、架橋剤のリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比は0.5~1.8である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類のクラスから選択される化合物を使用せずにバインダー組成物を製造するための方法であって、
(i)2700~9000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するリグニン及び800~2500g/molの重量平均分子量(Mw)を有するリグニンオリゴマーを含む水性組成物を、触媒の存在下で50~95℃の温度で0.25~5時間加熱する工程と、
(ii)所定の粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで、架橋剤を(i)からの水性組成物と混合し、これを60~95℃の温度で加熱して、リグニン、リグニンオリゴマー及び架橋剤を重合させる工程と
を含み、架橋剤のリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比が0.5~1.8である、
方法。
【請求項2】
バインダー組成物を製造するために使用される架橋剤の総量が、バインダー組成物の総質量に対して3~8質量%、又は4~8質量%、又は4~7質量%、又は5~7質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
架橋剤のリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比が0.9~1.7、又は1.0~1.6、又は1.1~1.7、又は1.2~1.6である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
触媒のリグニン及びリグニンオリゴマーに対する質量比が0.20~0.37、又は0.22~0.35、又は0.26~0.33である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
リグニンオリゴマーのリグニンに対する質量比が0.05~1.0、又は0.1~0.43、又は0.15~0.33である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)が、75~90℃、又は70~80℃、又は70~90℃の温度での加熱を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リグニンが、2700~9000g/mol、又は3000~8000g/mol、又は3500~7000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する針葉樹クラフトリグニンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
架橋剤がバイオメタノールから調製されたアルデヒドである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)における加熱を、25℃で測定して200~1000cp、又は250~600cPの粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで継続する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるバインダー組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のバインダー組成物を含む接着剤組成物。
【請求項12】
木材製品又は積層木材製品又は木材パネルの糊付けのため、積層体、シャッターフィルム、ミネラルウール、不織繊維製品、成形繊維製品又は押出繊維製品の製造のための含浸用途における、請求項10に記載のバインダー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダー組成物を製造するための方法に関する。更に、本発明は、バインダー組成物、接着剤組成物、並びにバインダー組成物及び接着剤組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リグニンは、例えば樹木から抽出できる天然ポリマーである。合成材料に代わる糊における成分としてのリグニンの使用が、より環境に優しい接着剤組成物を開発する目的で研究されてきた。特に、フェノールホルムアルデヒド樹脂等の最終的なフェノール樹脂における、化石資源に由来する合成フェノールを代替する能力は、研究の対象であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許出願FI20106073
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Granata, A., Argyropoulos, D., J. Agric. Food Chem. 1995, 43:1538-1544
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者は、さらなる用途のために、フェノールを含まないバインダー組成物をもたらす方法の必要性を認識していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フェノール類のクラスから選択される化合物を使用せずにバインダー組成物を製造するための方法が開示される。この方法は、
(i)2700~9000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するリグニン及び800~2500g/molの重量平均分子量(Mw)を有するリグニンオリゴマーを含む水性組成物を、触媒の存在下で50~95℃の温度で0.25~5時間加熱する工程と、
(ii)所定の粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで、架橋剤を(i)からの水性組成物と混合し、これを60~95℃の温度で加熱して、リグニン、リグニンオリゴマー及び架橋剤を重合させる工程と
を含んでもよく、架橋剤のリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比は0.5~1.8である。
【0007】
更に、本明細書で定義される方法によって得ることができるバインダー組成物が開示される。
【0008】
更に、バインダー組成物を含む接着剤組成物が開示される。
【0009】
更に、木材製品又は積層木材製品又は木材パネルの糊付けのため、積層体、シャッターフィルム(shuttering film)、ミネラルウール、不織繊維製品、成形繊維製品又は押出繊維製品の製造のための含浸用途におけるバインダー組成物の使用が開示される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
フェノール類のクラスから選択される化合物を使用せずにバインダー組成物を製造するための方法が開示される。この方法は、
(i)2700~9000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するリグニン及び800~2500g/molの重量平均分子量(Mw)を有するリグニンオリゴマーを含む水性組成物を、触媒の存在下で50~95℃の温度で0.25~5時間加熱する工程と、
(ii)所定の粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで、架橋剤を(i)からの水性組成物と混合し、これを60~95℃の温度で加熱して、リグニン、リグニンオリゴマー及び架橋剤を重合させる工程と
を含んでいてもよく、架橋剤のリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比は0.5~1.8である。
【0011】
更に、本明細書で定義される方法によって得ることができるバインダー組成物が開示される。
【0012】
一実施形態では、バインダー組成物の遊離架橋剤、例えば遊離ホルムアルデヒドモノマーの量は、多くとも1質量%、又は多くとも0.5質量%、又は多くとも0.3質量%、又は多くとも0.1質量%、又は多くとも0.06質量%である。遊離架橋剤、例えば遊離ホルムアルデヒドの量は、試料が20mlの蒸留水及び70mlの94%エタノールに希釈されることを除き、規格EN-ISO 11402及び塩酸ヒドロキシルアミンの手順に従って決定され得る。
【0013】
一実施形態では、中和前にアルカリ性試料溶液が希釈されることを除き、規格SFS-EN ISO 8974:2002に従ってガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器(GC-FID)法によって決定した場合、バインダー組成物の遊離フェノールの量は0.01質量%未満である。
【0014】
一実施形態では、バインダー組成物の水混和性(許容性)は、規格EN ISO 8989に従って決定した場合、500%超、又は700%超、又は900%超、又は無限である。
【0015】
一実施形態では、バインダー組成物の粘度値は、その製造後に25℃で貯蔵した場合、多くとも400cP/7日、又は多くとも300cP/7日、又は多くとも200cP/7日、又は多くとも100cP/7日増加する。本明細書に開示されるバインダー組成物は、良好な貯蔵安定性を示すというさらなる有用性を有する。
【0016】
本発明者は、驚くべきことに、架橋剤の規定量並びに架橋剤の重合成分、すなわちリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比が、上記の特性を有するバインダー組成物が調製され得るように、製造されたバインダー組成物の特性に影響を及ぼすことを見出した。
【0017】
更に、バインダー組成物を含む接着剤組成物が開示される。
【0018】
更に、木材製品又は積層木材製品又は木材パネルの糊付けのため、積層体、シャッターフィルム、ミネラルウール、不織繊維製品、成形繊維製品又は押出繊維製品の製造のための含浸用途におけるバインダー組成物の使用が開示される。
【0019】
本明細書に開示されるバインダー組成物を使用することによって製造される製品は、以下の特性のうちの1つ又は複数を有することができる:
- ホルムアルデヒド放散量が、デシケーター法EN ISO 12460-4によって測定した場合、0.01~0.5mg/1、又は0.1~0.3mg/1である、
- ホルムアルデヒド放散量が、ガス分析EN ISO 12460-3によって測定した場合、0.01~0.40mg/m2*h、又は0.05~0.30mg/m2*h、又は0.1~0.2mg/m2*hである、
- 結合品質試験法EN314-1及びEN314-2によって測定した場合、最小結合クラス1~4又は2~4又は3~4を満たす。
【0020】
本発明者は、驚くべきことに、本明細書に開示される方法によって、フェノール類のクラスから選択される化合物を使用せずにバインダー組成物を製造できることを見出した。
【0021】
本明細書では、特に断らない限り、「フェノール類のクラスから選択される化合物」という用語は、フェノール類の化石系化合物を意味すると理解されるべきである。すなわち、フェノール類は、1つ又は複数のヒドロキシル(-OH)が結合した単一の芳香環からなる化合物である。
【0022】
フェノール類のクラスから選択されるこのような化合物は、例えばフェノール、クレゾール又はレゾルシノールであり得る。このようなフェノール類は毒性化合物である。一実施形態では、方法は、バインダー組成物を製造するためにフェノール類のクラスから選択される化合物が使用されないという条件を含む。本明細書に開示される方法は、化石由来の材料を含まないバインダー組成物を製造する方法を提供するというさらなる有用性を有する。したがって、製造されるバインダー組成物は、化石系フェノール化合物を含まなくてもよい。特に、方法で使用される重合性物質、すなわちリグニン及びリグニンオリゴマーは、バイオマス又は生体由来のものである。したがって、本明細書に開示されるバインダー組成物は、非毒性バインダー組成物として調製されてもよい。すなわち、毒性又は有害化合物の割合が低減されたバインダー組成物が調製されてもよい。本明細書で開示されるバインダー組成物は、100%生物学的バインダー組成物として調製されてもよい。
【0023】
バインダー組成物を製造するために使用される架橋剤の総量は、バインダー組成物の総質量に対して3~8質量%、又は4~8質量%、又は4~7質量%、又は5~7質量%であってもよい。
【0024】
本明細書における「総質量」は、特に断らない限り、バインダー組成物の乾物と液体部分、例えば水の両方の質量として理解されるべきである。
【0025】
本明細書に開示される方法は、形成されたバインダー組成物の特性に有害に影響を与えることなく、ホルムアルデヒド等の架橋剤の使用量を低減又は少量にできるというさらなる有用性を有する。
【0026】
架橋剤は、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド等のアルデヒドであってもよい。一実施形態では、アルデヒドはバイオメタノールから調製される。したがって、アルデヒドはバイオベース由来のものであってもよい。アルデヒドは、代替的に化石由来のものであってもよい。一実施形態では、アルデヒドはメタノールから調製される。
【0027】
架橋剤のリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比は、0.9~1.7、又は1.0~1.6、又は1.1~1.7、又は1.2~1.6であってもよい。本明細書では、モル比(MR)は、以下:
MR=n(Fa)/(n(Lolig)+n(L))
(式中、
n=モル単位の物質の量
Fa=架橋剤
Lolig=リグニンオリゴマー
L=リグニンである)
のように計算される。
【0028】
モル単位の物質の量は、以下:
n=M/m
(式中、
M=g/mol単位の物質のモル質量
m=グラム単位の物質の質量である)
のように計算される。
【0029】
本明細書では、上記の計算に以下の値が使用される:
M(オリゴマー)=180g/mol(文献及び想定される化学構造に基づく推定値)
M(リグニン)=180g/mol(文献及び想定される化学構造に基づく推定値)
【0030】
リグニンオリゴマーのリグニンに対する質量比は、0.05~1.0、又は0.1~0.43、又は0.15~0.33である。
【0031】
触媒のリグニン及びリグニンオリゴマーに対する質量比は、0.20~0.37、又は0.22~0.35、又は0.26~0.33である。触媒のリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比は、1.0~1.7、又は1.1~1.6、又は1.2~1.5であってもよい。触媒の量は、製造されたバインダー組成物の特性に有益に影響を及ぼす可能性がある。
【0032】
触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩又は水酸化物を含んでもよい。一実施形態では、触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される。一実施形態では、触媒は水酸化ナトリウムである。
【0033】
工程(i)の水性組成物は、触媒の存在下でリグニン及びリグニンオリゴマーを含むか、又はそれからなるか、又は本質的にそれからなってもよい。
【0034】
工程(i)は、リグニン及びリグニンオリゴマーを含む水性組成物を、触媒の存在下で、50~95℃、又は55~95℃、又は60~95℃、又は65~90℃、又は70~85℃の温度で加熱することを含んでもよい。工程(i)は、0.25~5時間、又は2.5~4時間、又は0.25~3時間、又は0.5~2時間、又は0.75~1.5時間継続してもよい。工程(i)の間、使用されるリグニン及びリグニンオリゴマーは水性組成物に溶解される。
【0035】
温度は、水性組成物を冷却及び/又は加熱することによってバインダー組成物の製造中に制御され得る。
【0036】
一実施形態では、工程(i)は、リグニンがそこに添加される前に、リグニンオリゴマーを水性組成物と混合することを含む。一実施形態では、工程(i)は、リグニン及びリグニンオリゴマーを水性組成物に本質的に同時に混合することを含む。
【0037】
工程(ii)の水性組成物は、(i)の水性組成物及び架橋剤を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなってもよい。
【0038】
工程(ii)は、60~95℃、又は75~90℃、又は70~80℃、又は70~90℃の温度での加熱を含んでもよい。工程(ii)の加熱は、25℃で測定して200~1000cp、又は250~600cPの粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで継続してもよい。一実施形態では、工程(ii)は、200~500cP、又は250~400cP、又は300~350cPの粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで継続する。一実施形態では、工程(ii)は、500~1000cP、又は500~800cP、又は550~750cp、又は600~700cPの粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで継続する。
【0039】
粘度は、回転粘度計(ブルックフィールドデジタル粘度計LVDV-II+Pro;コーンスピンドル)を使用することによって25℃の温度で測定することができる。一実施形態では、工程(ii)は、0.5~8時間、又は1~6時間、又は2~5時間継続する。
【0040】
工程(ii)は、段階的に触媒を添加することを含んでもよい。すなわち、工程(i)で使用されるものに加えて、さらなる量の触媒が工程(ii)の間に添加されてもよい。段階的な触媒の添加は、リグニン及びリグニンオリゴマー及び架橋剤を制御された方法で重合させることができるというさらなる有用性を有する。一実施形態では、工程(ii)は、段階的に触媒を添加し、形成された水性組成物を加熱して、リグニン及びリグニンオリゴマー及び架橋剤を制御された方法で重合させることを含む。
【0041】
本明細書の文脈において、「リグニン」という用語は、任意の好適なリグニン源に由来するリグニンを指す場合がある。一実施形態では、リグニンは本質的に純粋なリグニンである。「本質的に純粋なリグニン」という表現は、少なくとも70%純粋なリグニン、又は少なくとも90%純粋なリグニン、又は少なくとも95%純粋なリグニン、又は少なくとも98%純粋なリグニンと理解されるべきである。本質的に純粋なリグニンは、多くとも30%、若しくは多くとも10%、若しくは多くとも5%、若しくは多くとも2%の他の成分及び/又は不純物を含んでもよい。このような他の成分の例として、抽出物及びヘミセルロース等の炭水化物を挙げることができる。
【0042】
一実施形態では、リグニンオリゴマーは本質的に純粋なリグニンオリゴマーである。「本質的に純粋なリグニンオリゴマー」という表現は、少なくとも70%純粋なリグニンオリゴマー、又は少なくとも80%純粋なリグニンオリゴマー、又は少なくとも90%純粋なリグニンオリゴマー、又は少なくとも95%純粋なリグニンオリゴマー、又は少なくとも98%純粋なリグニンオリゴマーと理解されるべきである。本質的に純粋なリグニンオリゴマーは、多くとも30%、若しくは多くとも10%、若しくは多くとも5%、若しくは多くとも2%の他の成分及び/又は不純物を含んでもよい。
【0043】
リグニンは、30質量%未満、又は10質量%未満、又は5質量%未満、又は3質量%未満、又は2.5質量%未満、又は2質量%未満の炭水化物を含有してもよい。リグニンオリゴマーは、30質量%未満、又は10質量%未満、又は5質量%未満、又は3質量%未満、又は2.5質量%未満、又は2質量%未満の炭水化物を含有してもよい。リグニンに存在する炭水化物の量は、規格SCAN-CM71に従い、パルスアンペロメトリック検出器付き高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)によって測定することができる。
【0044】
リグニンの灰分率は、7.5質量%未満、又は5質量%未満、又は3質量%未満、又は1.5質量%未満であり得る。リグニンオリゴマーの灰分率は、15質量%未満、又は10質量%未満、又は5質量%未満であり得る。灰分含量は、以下の方法で決定することができる:まず、試料の乾燥固形分含量を105℃のオーブンで3時間で決定する。セラミックるつぼを700℃に1時間予熱し、冷却後に秤量する。試料(1.5g~2.5g)をセラミックるつぼ中に秤量する。リップ付きるつぼを低温オーブンに入れる。オーブンの温度を上げる:20~200℃、30分→200~600℃、60分→600~700℃、60分。蓋をせずに700℃で60分間燃焼を継続する。るつぼをデシケーターで冷却し、過酸化水素(H2O2、30%)を数滴試料に添加した後、700℃のオーブンで30分間燃焼させる。灰の中に依然として黒点がある場合、過酸化水素処理及び燃焼を繰り返す。るつぼを冷却して秤量する。秤量はすべて0.1mgの精度で、デシケーターで冷却した後に行う。
【0045】
結果の計算
灰分含量%=(100 a x 100)/(b x c)
式中、
a=灰の質量、g
b=試料の質量、g
c=試料の乾燥固形分、%
【0046】
試料の灰分含量は、試料の燃焼及び焼鈍後に残る質量を指し、試料の乾燥含量の百分率として表示される。
【0047】
試料の灰分含量は、試料の燃焼及び焼鈍後に残る質量を指し、試料の乾燥含量の百分率として表示される。
【0048】
バインダー組成物を調製するために使用されるリグニンは、クラフトリグニン、蒸気爆発リグニン、バイオリファイナリーリグニン、超臨界分離リグニン、加水分解リグニン、フラッシュ沈殿リグニン、バイオマス由来リグニン、アルカリパルプ化プロセスからのリグニン、ソーダプロセスからのリグニン、オルガノソルブパルプ化からのリグニン、アルカリプロセスからのリグニン、酵素加水分解プロセスからのリグニン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。一実施形態では、リグニンは木材系リグニンである。リグニンは、針葉樹、広葉樹、一年草、又はそれらの任意の組合せに由来し得る。
【0049】
本明細書において、「クラフトリグニン」は、特に断りのない限り、クラフト黒液に由来するリグニンと理解されるべきである。黒液は、クラフトパルプ化プロセスで使用されるリグニン残渣、ヘミセルロース及び無機化学物質のアルカリ性水溶液である。パルプ化プロセスからの黒液は、異なる針葉樹及び広葉樹種に由来する成分を様々な割合で含む。リグニンは、例えば、沈殿及び濾過を含む異なる技術によって黒液から分離することができる。リグニンは通常、11~12未満のpH値で沈殿し始める。異なる特性を持つリグニン画分を沈殿させるために、異なるpH値を使用することができる。これらのリグニン画分は、分子量分布、例えばMw及びMn、多分散性、ヘミセルロース並びに抽出物含量によって互いに異なる。より高いpH値で沈殿したリグニンのモル質量は、より低いpH値で沈殿したリグニンのモル質量よりも高い。更に、より低いpH値で沈殿したリグニン画分の分子量分布は、より高いpH値で沈殿したリグニン画分のものよりも広い。沈殿したリグニンは、酸性洗浄工程を使用して、無機不純物、ヘミセルロース及び木材抽出物から精製することができる。さらなる精製は、濾過によって達成することができる。
【0050】
本明細書において、「フラッシュ沈殿リグニン」という用語は、二酸化炭素系酸性化剤、好ましくは二酸化炭素を使用して、200~1000kPaの過圧力の影響下で、黒液流のpHをリグニンの沈殿レベルに至るまで低下させ、リグニンを沈殿させるための圧力を突然解放することにより、連続プロセスで黒液から沈殿されたリグニンと理解されるべきである。フラッシュ沈殿リグニンを製造するための方法は、特許出願FI20106073に開示されている。上記方法における滞留時間は300秒未満である。2μm未満の粒径を有するフラッシュ沈殿リグニン粒子は、例えば濾過を使用して黒液から分離することができる凝集体を形成する。フラッシュ沈殿リグニンの利点は、通常のクラフトリグニンに比べて反応性が高いことである。フラッシュ沈殿リグニンは、さらなる加工のために必要に応じて精製及び/又は活性化され得る。
【0051】
リグニンはアルカリプロセスから誘導されてもよい。アルカリプロセスは、バイオマスを強アルカリで液化することから開始し、その後中和プロセスを行うことができる。アルカリ処理後、リグニンは、上記で提示したのと同様の方法で沈殿させることができる。
【0052】
リグニンは水蒸気爆発から誘導されてもよい。水蒸気爆発は、木材及び他の繊維状有機材料に適用できるパルプ化及び抽出技術である。
【0053】
本明細書において、「バイオリファイナリーリグニン」は、特に断りのない限り、バイオマスが燃料、化学物質、及び他の材料に変換される精製施設又はプロセスから回収できるリグニンと理解されるべきである。
【0054】
本明細書において、「超臨界分離リグニン」は、特に断りのない限り、超臨界流体分離又は抽出技術を使用してバイオマスから回収できるリグニンと理解されるべきである。超臨界条件は、所与の物質の臨界点を超える温度及び圧力に相当する。超臨界条件では、明確な液相及び気相は存在しない。超臨界水又は液体抽出は、超臨界条件下で水又は液体を利用してバイオマスを分解し、セルロース糖に変換する方法である。溶媒として作用する水又は液体は、セルロース植物体から糖を抽出し、リグニンは固体粒子として残る。
【0055】
リグニンは、加水分解プロセスから誘導されてもよい。加水分解プロセスから誘導されるリグニンは、紙パルプ又は木材化学プロセスから回収され得る。
【0056】
リグニンは、オルガノソルブプロセスに由来してもよい。オルガノソルブは、有機溶媒を使用してリグニン及びヘミセルロースを可溶化するパルプ化技術である。
【0057】
一実施形態では、リグニンは針葉樹クラフトリグニンからなる。一実施形態では、リグニンは、2700~9000g/mol、又は3000~8000g/mol、又は3500~7000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する針葉樹クラフトリグニンである。
【0058】
一実施形態では、リグニンは、3000~8000g/mol、又は3500~7000g/molの重量平均分子量を有する。リグニン、例えばクラフトリグニンは、2.9~6.0、又は3.0~5.0、又は3.2~4.5の多分散性指数を有してもよい。
【0059】
一実施形態では、リグニンは針葉樹リグニンと広葉樹リグニンの組合せである。一実施形態では、リグニンの多くとも30質量%、又は多くとも25質量%、又は多くとも10質量%、又は多くとも5質量%が広葉樹に由来する。
【0060】
重量平均分子量は、UV検出器(280nm)を備えたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用することにより、以下の方法で決定することができる:試料を0.1M NaOH中に溶解する。試料溶液を0.45ミクロンのPTFEフィルターで濾過する。測定は、PSS MCXプレカラム、1000Å及び100000Åカラムとスルホン化スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを使用し、0,1M NaOH溶離液(0,5ml/分、T=30℃)中で行う。試料の分子量分布は、ポリスチレンスルホン酸Na標準物質(6個)Mw891~65400に関して計算される。値Mw(重量平均分子量)及びMn(数平均分子量)、多分散性指数(PDI、Mw/Mn)は、2つの並行測定に基づいて報告される。
【0061】
針葉樹クラフトリグニンのアルカリ不溶物の量は、10%未満、又は5%未満、又は0.5%未満であってもよい。アルカリ不溶物の量は、以下の方法で決定することができる:まず、試料の乾燥固形分含量を105℃のオーブンで3時間で決定する。試料100gを277gのNaOH-水溶液(pH12~13)中に溶解し、50~60℃で30分間混合する。溶液を、ガラスフィルターを通してブフナー漏斗で濾過する。フィルター上の残渣を0.1M NaOHで洗浄し、最後に水で洗浄する。残渣を含むフィルターをオーブンで乾燥させ、秤量する。次いで、アルカリ不溶物の量を次のように計算する:
アルカリ不溶物、%=[残渣を含むフィルターの質量(乾燥)(g)-フィルターの質量]/[試料の質量(g)*試料の乾燥固形分含量(%)]
【0062】
針葉樹クラフトリグニンの縮合基及びシリンギル(syringul)基の量は、31P NMRで決定した場合、3.0mmol/g未満、又は2.5mmol/g、又は2.0mmol/g未満であってもよい。針葉樹クラフトリグニンの脂肪族OH基の量は、31P NMRで決定した場合、3,0mmol/g未満、又は2.5mmol/g未満であってもよい。針葉樹クラフトリグニンのグアイアシルOHの量は、31P NMRで決定した場合、少なくとも1.5mmol/gであってもよい。
【0063】
ホスフィチル化後の31P NMR分光法によって行われる測定は、官能基(脂肪族及びフェノール性ヒドロキシル基、及びカルボン酸基)の定量に使用され得る。試料の調製及び測定は、Granata及びArgyropoulosによる方法(Granata, A., Argyropoulos, D., J. Agric. Food Chem. 1995, 43:1538-1544) に従って実施される。正確に秤量した試料(約25mg)をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、ピリジン及び内部標準液(ISTD)エンド-N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(e-HNDI)と混合する。ホスフィチル化試薬(200μl)2-クロロ-4,4,5,5-テトラメチル-l,3,2-ジオキサホスホラン(dioxaphopholane)をゆっくり添加し、最後に300μlのCDCl3を添加する。NMR測定を試薬添加直後に実施する。スペクトルを、広帯域検出に最適化されたプローブヘッドを備えた分光計で測定する。
【0064】
一実施形態では、リグニンオリゴマーは、800~2500g/molの重量平均分子量を有する針葉樹リグニンオリゴマーである。一実施形態では、リグニンオリゴマーは、1200~2400g/mol、又は1400~2300g/molの重量平均分子量を有する。オリゴマーリグニンは、2.8~1.0、又は2.6~1.3、又は2.4~1.5の多分散性指数を有してもよい。
【0065】
リグニンは、低分子量リグニンオリゴマーを形成するために、ポリマーの分子量を低下させるために脱重合されてもよい。活性及び反応性は、同時に増加してもよい。
【0066】
したがって、リグニンオリゴマーは、例えば熱化学的又は酵素的分解に基づく異なる技術によるリグニンのデコンポジションによって製造することができる。高分子リグニンの芳香族性は公知であり、ブレイクダウン戦略、例えば熱分解及び水素化分解処理、例えば触媒水素化熱分解、水添分解、水熱法品質向上、塩基触媒分解(BCD)が産業で適用可能である。このような戦略には、分子の複雑さを低減させ、分解生成物の化学反応性を高め、化学反応の自由度数を増加させるという目的がある。しかし、すべての場合において、このような単純なモノマー構造(例えば、リグニンからのベンゼン、フェノール、カテコール及びピロガロール)は、ブレイクダウンプロセスの主要生成物ではない。一般に、モノマー及びオリゴマーの2つの画分が形成される。副生成物は、例えば、ギ酸、酢酸、メタノール及び二酸化炭素である。
【0067】
塩基触媒分解プロセス(BCD)は、他のリグニン分解プロセスに比べてより選択的な開裂プロセスであり、追加の水素を必要としない。分解は、高温圧縮水中(亜臨界及び近臨界条件、T=250~350℃)での強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)によるアリール-アリール-エーテル結合(α-O-4、β-O-4、4-0-5)の触媒開裂に基づく。より穏やかな条件での処理も適用可能である。開裂プロセスは、バッチ反応器、連続撹拌槽型反応器(CSTR)又は栓流反応器(PFR)で実現可能である。プロセスパラメーター(例えば、T、τ、p、t、添加剤、触媒)は、反応及びメチル-アリール-エーテル結合の開裂を導くために調整され得る。これらのパラメーターを調整することにより、リグニンオリゴマーの収率及びリグニンオリゴマー画分の重量平均分子量を所望のレベルに調整し、最適化することができる。下流プロセス、例えば沈殿、濾過、液/液抽出、蒸発は、オリゴマーリグニン画分を生成するためのものである。オリゴマーに富む相は固体物質である。
【0068】
バインダー組成物の製造に必要な成分の組合せ工程及び/又は添加工程の正確な順序は、例えば、形成されるバインダー組成物の要求される特性に応じて変化し得る。必要な成分の組合せ工程及び/又は添加工程の順序の選択は、本明細書に基づいて当業者の知識の範囲内である。バインダー組成物を製造するために使用される成分の正確な量は変化してもよく、異なる成分の量の選択は、本明細書に基づいて当業者の知識の範囲内である。
【0069】
更に、本明細書に開示されるバインダー組成物を含む接着剤組成物が開示される。接着剤組成物は、バインダー組成物に加えて、他のバインダー、増量剤、添加剤、触媒及び充填剤からなる群から選択される1種又は複数の接着剤成分を含むことができる。バインダーは、主にポリマーの成長及び架橋を生じさせ、したがってポリマー系の硬化を補助する役割を担う物質である。増量剤は、例えば水分を結合させることによって物理的特性を調整することにより、バインダーを補助する物質である。添加剤は、充填、軟化、コスト削減、水分の調整、剛性の増加、及び柔軟性の増加等の特性を補助するポリマー又は無機化合物であり得る。触媒は、一般に硬化速度を高め、調整する物質である。本明細書において、「物質」は、化合物又は組成物を含むと理解されるべきである。バインダー組成物は、接着剤組成物において、バインダー、増量剤、添加剤、触媒及び/又は充填剤として機能することができる。
【0070】
バインダー組成物は、接着剤組成物と同様に、木材製品を糊付けするために使用され得る。一実施形態では、木材製品は、木材板、木材単板、及び木材棒からなる群から選択される。
【0071】
本明細書で開示される方法は、例えばフェノール、又はフェノール類のクラスから選択される任意の他の化合物を使用せずにバインダー組成物の製造を可能にするというさらなる有用性を有する。本明細書で開示される方法は、工業的用途に好適な特性、例えば重量平均分子量及び粘度を有する、フェノールを含まないバインダー組成物の製造を可能にするというさらなる有用性を有する
【0072】
更に、本明細書に開示されるバインダー組成物は、前記バインダー組成物を使用することによって製造される最終製品に対して、耐水性、安定した接着及び/又は低いホルムアルデヒド放散をもたらすというさらなる有用性を有する。
【実施例
【0073】
次に、様々な実施形態について詳細に言及する。
【0074】
以下の説明では、当業者が本開示に基づいて実施形態を利用できる程度に詳細に一部の実施形態を開示する。工程又は特徴の多くは、本明細書に基づいて当業者にとって明白であるため、実施形態のすべての工程又は特徴が詳細に開示されるわけではない。
【0075】
(実施例1)
バインダー組成物の調製
この実施例では、リグニン-リグニンオリゴマー-ホルムアルデヒドバインダー組成物を製造した。
【0076】
以下の成分及び量を使用した:
水I 100% 1025kg
NaOH(第I部)50% 400kg
クラフトリグニン66.3%(Mw=5100g/mol) 1050kg
リグニンオリゴマー97%(Mw=1890g/mol) 180kg
NaOH(第II部)50% 160kg
ホルムアルデヒド37.5% 630kg
【0077】
この実施例で使用した成分の百分率(総乾物含量に対する)は以下であった:
NaOH 50% 8,1%
クラフトリグニン66.3% 20.2%
リグニンオリゴマー97% 5.1%
ホルムアルデヒド37.5% 6.9%
【0078】
NaOHのリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比は1.45であった。ホルムアルデヒドのリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比は1.63であった。
【0079】
まず、水とNaOHの第1部 (the first part of NaOH)を室温で混合し、それらの加熱を開始した。温度が75℃に達したところでリグニンオリゴマー及びリグニンを水性組成物に添加した。混合及び加熱を、温度を約90℃に保ちながら約30分間継続した。その後、水性組成物の温度を約60℃まで冷却させ、ホルムアルデヒドを添加した。
【0080】
形成された水性組成物の混合及び加熱を30分間継続し、NaOHの一部 (part of the NaOH)を添加し、再び混合及び加熱を30分間継続し、NaOHの最後の一部 (the last part of the NaOH)を添加した。形成された組成物の混合及び加熱を、温度を約75℃に保ちながら約1時間継続した。形成された組成物の粘度は570cP(25℃で測定して)であった。
【0081】
形成されたバインダー組成物は、以下の測定特性を有していた:
固形分、% 35.7(105℃で3時間)
pH 12.5
粘度、cp 620(25℃で、3日後)
アルカリ度、% 5.55
遊離ホルムアルデヒド、% 0.11
【0082】
(実施例2)
バインダー組成物の調製
この実施例では、リグニン-リグニンオリゴマー-ホルムアルデヒドバインダー組成物を製造した。
【0083】
以下の成分及び量を使用した:
水I 100% 675kg
NaOH(第I部)50% 190kg
クラフトリグニン69.6%(Mw=3900g/mol) 655kg
リグニンオリゴマー97%(Mw=2100g/mol) 120kg
NaOH(第II部)50% 135kg
ホルムアルデヒド37.5% 330kg
【0084】
この例で使用した成分の百分率(総質量に対する)は以下であった:
NaOH) 50% 7,7%
クラフトリグニン66.3% 21.7%
リグニンオリゴマー97% 5.5%
ホルムアルデヒド37.5% 5.9%
【0085】
NaOHのリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比は1.3であった。ホルムアルデヒドのリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比は1.30であった。
【0086】
まず、水とNaOHの第1部 (the first part of NaOH)を室温で混合し、それらの加熱を開始した。温度が75℃に達したところでリグニンオリゴマー及びリグニンを水性組成物に添加した。温度を約90℃に保ちながら、混合及び加熱を30分間継続した。その後、水性組成物の温度を約60℃まで冷却させ、ホルムアルデヒドを添加した。
【0087】
形成された水性組成物の混合及び加熱を30分間継続し、NaOH Iの一部 (the part of the NaOH I)を添加し、再び混合及び加熱を60分間継続し、NaOH IIの一部 (the part of the NaOH II)を添加した。形成された組成物の混合及び加熱を、温度を約70℃に保ちながら約45分間継続した。形成された組成物の粘度は720cP(25℃で測定して)であった。
【0088】
形成されたバインダー組成物は、以下の測定特性を有していた:
固形分、% 37.1(105℃で3時間)
pH 12.6
粘度、cp 860(25℃で、3日後)
アルカリ度、% 5.7
遊離ホルムアルデヒド、% 0.04
【0089】
(実施例3)
合板製品の製造
実施例2で製造したバインダー組成物を使用して接着剤組成物を製造した。接着剤組成物は、バインダー組成物を小麦粉及び石灰石(1:1)と混合し、25℃で6mmのFCで70~100秒の目標粘度に達するように形成した。この接着剤組成物には、固化剤として3%の炭酸ナトリウムを使用した。
【0090】
その後、形成された接着剤組成物を使用して、カバ単板の合板製品を製造した。厚さ1.5mmのカバ単板を接着剤組成物によって接合し、厚さ4.5mmの合板パネルを形成した。接着剤組成物の乾物含量は35~50%であった。接着剤組成物を含む木材単板を、130~170℃の温度でホットプレス技術によりプレスした。接着剤組成物を同時に硬化させた。接着剤組成物は、木材単板を糊付けするために、したがって合板を製造するために好適であることが見出された。結果は、接着剤組成物の糊付け効果が木材単板を糊付けするのに十分良好であり、EN314-1及びEN314-2規格による結合クラス3並びにEN ISO 12460-3によって測定されるホルムアルデヒド放散クラスElの要件を満たすことを示した。
【0091】
【表1】
【0092】
技術の進歩に伴い、基本的な発想が様々な方法で実施され得ることは当業者にとって明らかである。したがって、実施形態は上述の例に限定されず、代わりに特許請求の範囲内で変化してもよい。
【0093】
本明細書で上述した実施形態は、互いに任意の組合せで使用することができる。いくつかの実施形態を一緒に組み合わせてさらなる実施形態を形成してもよい。本明細書で開示される方法、バインダー組成物、接着剤組成物又は使用は、本明細書で上述した実施形態の少なくとも1つを含んでもよい。上述した利益及び利点は、1つの実施形態に関連してもよく、複数の実施形態に関連してもよいことが理解される。実施形態は、記載された問題のいずれか若しくはすべてを解決するもの、又は記載された利益及び利点のいずれか若しくはすべてを有するものに限定されない。「1つの(an)」項目への言及は、それらの項目のうちの1つ以上を指すことが更に理解される。本明細書において、「含む」という用語は、1つ以上の追加の特徴又は行為の存在を排除することなく、その後に続く特徴又は行為を含むことを意味するように使用される。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類のクラスから選択される化合物を使用せずにバインダー組成物を製造するための方法であって、
(i)2700~9000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するリグニン及び800~2500g/molの重量平均分子量(Mw)を有するリグニンオリゴマーを含む水性組成物を、触媒の存在下で50~95℃の温度で0.25~5時間加熱する工程と、
(ii)所定の粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで、架橋剤を(i)からの水性組成物と混合し、これを60~95℃の温度で加熱して、リグニン、リグニンオリゴマー及び架橋剤を重合させる工程と
を含み、架橋剤のリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比が0.5~1.8である、
方法。
【請求項2】
バインダー組成物を製造するために使用される架橋剤の総量が、バインダー組成物の総質量に対して3~8質量%、又は4~8質量%、又は4~7質量%、又は5~7質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
架橋剤のリグニン及びリグニンオリゴマーに対するモル比が0.9~1.7、又は1.0~1.6、又は1.1~1.7、又は1.2~1.6である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
触媒のリグニン及びリグニンオリゴマーに対する質量比が0.20~0.37、又は0.22~0.35、又は0.26~0.33である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
リグニンオリゴマーのリグニンに対する質量比が0.05~1.0、又は0.1~0.43、又は0.15~0.33である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)が、75~90℃、又は70~80℃、又は70~90℃の温度での加熱を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リグニンが、2700~9000g/mol、又は3000~8000g/mol、又は3500~7000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する針葉樹クラフトリグニンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
架橋剤がバイオメタノールから調製されたアルデヒドである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)における加熱を、25℃で測定して200~1000cp、又は250~600cPの粘度値を有するバインダー組成物が形成されるまで継続する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるバインダー組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のバインダー組成物を含む接着剤組成物。
【請求項12】
木材製品又は積層木材製品又は木材パネルの糊付けのため、積層体、シャッターフィルム、ミネラルウール、不織繊維製品、成形繊維製品又は押出繊維製品の製造のための含浸用途における、請求項10に記載のバインダー組成物の使用。
【請求項13】
請求項10に記載のバインダー組成物を使用することによって製造される製品であって、以下の特性:
- ホルムアルデヒド放散量が、デシケーター法EN ISO 12460-4によって測定した場合、0.01~0.5mg/1、又は0.1~0.3mg/1である、
- ホルムアルデヒド放散量が、ガス分析EN ISO 12460-3によって測定した場合、0.01~0.40mg/m 2 *h、又は0.05~0.30mg/m 2 *h、又は0.1~0.2mg/m 2 *hである、
- 結合品質試験法EN314-1及びEN314-2によって測定した場合、最小結合クラス1~4又は2~4又は3~4を満たす
のうちの1つ又は複数を有する、製品。
【国際調査報告】