IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2024-513601ステアリングギヤに対する路面側の衝撃パルスの適切かつ調節可能な補償を備えたパワーステアリング構成群、ならびにパワーステアリング構成群を調整する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ステアリングギヤに対する路面側の衝撃パルスの適切かつ調節可能な補償を備えたパワーステアリング構成群、ならびにパワーステアリング構成群を調整する方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/06 20060101AFI20240318BHJP
   B62D 3/14 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B62D3/06
B62D3/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563055
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022058158
(87)【国際公開番号】W WO2022218682
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】102021109655.3
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディアク レットウ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス-ハウケ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン キアシュバウム
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリ エプシュタイン
(57)【要約】
本発明は、自動車(10)、特に商用車の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群であって、ステアリングギヤ(1)を有し、このステアリングギヤ(1)は、操舵発生機によって、特にステアリングホイール(15)によって、ステアリングギヤ(1)の入力側(2)を介して、特にステアリングギヤ(1)の入力軸(3)を介して導入された回転運動(III)を、ステアリングギヤ(1)の出力側(4)に伝達するように構成されており、パワーステアリング構成群は、ステアリングギヤ(1)の出力側(4)から導出された運動(I)を、自動車(10)の少なくとも1つのホイール(17;19)の、ステアリング軸(18)を中心とした回転運動(V)に変換するように構成されている、パワーステアリング構成群に関する。本提案によれば、自動車(10)のホイール(17;19)を介して取り込まれた路面側の衝撃を少なくとも部分的に吸収するための調節可能な吸収ユニット(23)が設けられていて、かつさらに別個の予荷重ユニット(24)が設けられている。この別個の予荷重ユニット(24)は、所定の予荷重力が調節可能な吸収ユニット(23)に加えられるように、調節可能な吸収ユニット(23)と協働するように構成されている。本発明はさらに、自動車(10)の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群を調整する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(10)、特に商用車の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群であって、
ステアリングギヤ(1)を有し、前記ステアリングギヤ(1)は、操舵発生機によって、特にステアリングホイール(15)によって、前記ステアリングギヤ(1)の入力側(2)から特に前記ステアリングギヤ(1)の入力軸(3)を介して導入された回転運動(III)を、前記ステアリングギヤ(1)の出力側(4)に伝達するように構成されており、
前記パワーステアリング構成群は、前記ステアリングギヤ(1)の前記出力側(4)から導出された運動(I)を、前記自動車(10)の少なくとも1つのホイール(17;19)の、ステアリング軸(18)を中心とした回転運動(V)に変換するように構成されている、
パワーステアリング構成群において、
前記自動車(10)の前記ホイール(17;19)を介して取り込まれた路面側の衝撃を、少なくとも部分的に吸収するための調節可能な吸収ユニット(23)が設けられており、この場合、別個の予荷重ユニット(24)が設けられていて、前記別個の予荷重ユニット(24)は、前記調節可能な吸収ユニット(23)に所定の予荷重力が加えられるように、前記調節可能な吸収ユニット(23)と協働するように構成されていることを特徴とする、パワーステアリング構成群。
【請求項2】
前記別個の予荷重ユニット(24)は、少なくとも1つの第1の補償ディスク(26)を有している、請求項1記載のパワーステアリング構成群。
【請求項3】
前記別個の予荷重ユニット(24)は、特に前記第1の補償ディスク(26)の第1の厚さ(d1)とは好ましくは異なる第2の厚さ(d2)を有する少なくとも1つの第2の補償ディスク(27)をさらに有している、請求項2記載のパワーステアリング構成群。
【請求項4】
前記別個の予荷重ユニット(24)は予荷重ナット(30)を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のパワーステアリング構成群。
【請求項5】
前記別個の予荷重ユニット(24)は、所定の予荷重力が、ねじ山(33)と対応ねじ山(34)とを介して互いに係合させられる2つの構成要素を介して、好ましくは実質的に無段階式に調節可能に、前記調節可能な吸収ユニット(23)と協働するように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のパワーステアリング構成群。
【請求項6】
前記別個の予荷重ユニット(24)と前記調節可能な吸収ユニット(23)とは、組付け状態で、軸方向で互いに相対的に少なくとも部分的に摺動可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載のパワーステアリング構成群。
【請求項7】
前記別個の予荷重ユニット(24)は、組付け状態で、周方向の回転に抗して、特に溝(35)に係合する固定ピン(36)を介して固定されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のパワーステアリング構成群。
【請求項8】
前記別個の予荷重ユニット(24)は、端面(29;32)を有し、前記端面(29;32)は、前記所定の予荷重力を前記調節可能な吸収ユニット(23)に加えるために、前記調節可能な吸収ユニット(23)に直接当接するための接触面を形成している、請求項1から7までのいずれか1項記載のパワーステアリング構成群。
【請求項9】
特に請求項1から8までのいずれか1項記載の、自動車(10)の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群を調整する方法であって、
前記自動車(10)のホイール(17;19)を介して取り込まれた路面側の衝撃を、少なくとも部分的に吸収するための調節可能な吸収ユニット(23)を、前記パワーステアリング構成群全体の操舵運動の変換経路内に組み込み、
別個の予荷重ユニット(24)をさらに設け、
最後に、前記別個の予荷重ユニット(24)が前記調節可能な吸収ユニット(23)を圧縮することにより、前記調節可能な吸収ユニット(23)に加えられる所定の予荷重力を調節する
ことを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記別個の予荷重ユニット(24)として、少なくとも1つの第1の補償ディスク(26)が、前記調節可能な吸収ユニット(23)の適切な圧縮により予荷重をかけるために、前記調節可能な吸収ユニット(23)に隣接して設けられている、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第2の補償ディスク(27)が、前記調節可能な吸収ユニット(23)の適切な圧縮により予荷重をかけるために、前記調節可能な吸収ユニット(23)に隣接してさらに設けられており、好ましくは、前記第2の補償ディスク(27)は、前記第1の補償ディスク(26)の第1の厚さ(d1)とは異なる第2の厚さ(d2)を有している、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記別個の予荷重ユニット(24)として、予荷重ナット(30)が、前記調節可能な吸収ユニット(23)の適切な圧縮により予荷重をかけるために、前記調節可能な吸収ユニット(23)に隣接して設けられている、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記別個の予荷重ユニット(24)の、ねじ山(33)を有する第1の構成要素と、前記第1の構成要素に係合し、対応ねじ山(34)を有する第2の構成要素とを相互に回転させることにより、前記所定の予荷重力を調節する、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記別個の予荷重ユニット(24)を、最終的に、周方向の回動に抗して固定する、請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記固定を、溝(35)内に周方向で形状接続的に係合する固定ピン(36)を設けることにより実施する、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の、自動車の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群に関する。本発明はさらに、請求項9の上位概念に記載の形式の、自動車の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群を調整する方法に関する。
【0002】
パワーステアリング構成群は、多数の従来技術により公知である。この場合、パワーステアリング構成群は、とりわけパワーステアリング構成群内に組み込まれたステアリングギヤに関連して、機械的負荷に敏感な複数の構成要素を含んでいる。すなわち、ステアリングギヤは、例えば通常、スピンドル、ボールもしくはボールチェーンを備えたボール循環ナット、ならびに、セクタ軸のセクタ歯列に係合する、例えばボール循環ナットの外側歯列の形態の歯列対をさらに有している。これらの構成要素は、急激に導入された機械的な力もしくは負荷に対して特に敏感である。
【0003】
急激に導入されるこのような負荷の原因は、例えば、路面側の衝撃パルスである。すなわち、例えば路面の凹凸が、自動車における衝撃につながるおそれがあり、この衝撃は、例えば、パワーステアリング構成群における望ましくない急激な運動をまねくおそれがある。路面側の衝撃の補償のために、従来技術では通常、ホイールサスペンションの衝撃ダンパシステムのみが機能している。しかしながらこのようなシステムは、ステアリングギヤの敏感な構成要素へと導入される負荷もしくは応力をさらに適切に補償もしくは吸収することができるように改良の余地がある。
【0004】
このような問題については、以下で、商用車を例にとって説明するが、これは本発明を限定するものではないと理解されたい。商用車は、通常、ボール循環式ステアリング機構を備えたパワーステアリング構成群を有している。このために、パワーステアリング構成群は、ステアリングギヤを有していて、このステアリングギヤは、操舵発生機によって、すなわち例えばステアリングホイールによって、ステアリングギヤの入力側から導入された回転運動を、ステアリングギヤの出力側に伝達するように構成されている。この場合、入力側は、例えば、入力軸によって、出力側は、例えばセクタ軸の形態の出力軸によって形成されていてもよい。この場合、ステアリングギヤの内側では、例えば入力軸がスピンドルとして形成されていて、スピンドルの回転運動により、スピンドル区分を取り囲むボール循環ナットの並進運動が発生することにより、入力軸の導入された回転運動を所定のように変換することができ、この場合、この並進運動は、ボール循環ナットまたはピストンの軸方向運動とも呼ばれてもよい。ボール循環ナットにはさらに、通常、外側歯列が設けられている。この場合、ボール循環ナットは、セクタ軸のセクタ歯列に噛み合って係合する外側歯列によって、ボール循環ナットの並進運動を、セクタ軸もしくは出力軸の回転運動に変換し、これによりステアリングギヤの出力側に導出するために機能することができる。この出力側に続いて、通常は、ピットマンアームが設けられていて、ピットマンアームに枢着的に接続されてスラストロッドが設けられている。パワーステアリング構成群のスラストロッドは、最終的に、ステアリングギヤの出力側から導出される回転運動を受け取り、操舵過程自体で、所定のように、軸方向運動とも呼ばれる並進的なスラストロッド運動を行う。この場合、この並進的なスラストロッド運動によって、自動車の少なくとも1つのホイールの、ステアリング軸を中心とした所定の回転運動が生じる。
【0005】
このように構成されたパワーステアリング構成群では、路面側の衝撃パルスにより、パワーステアリング構成群の上記構成要素のうちの多数において急激な運動が生じるおそれがあり、この急激な運動はさらに、ステアリングギヤの内部に導入される望ましくない負荷もしくは応力をまねく。これまでのところは、従来技術のパワーステアリング構成群自体におけるこのような力もしくは負荷および応力は、通常は主としてパワーステアリング構成群の液圧により補償されている。
【0006】
通常、従来技術ではさらに、それぞれの具体的な使用例のためのこのようなパワーステアリング構成群の設計のために、大きな手間が必要である。したがって、ステアリングギヤもしくはパワーステアリング構成群のために場合によっては設けられる減衰エレメントの切替え点を正確に規定するために、極めて正確な手間のかかる設計おおび製造方法が必要なことが多い。このことは、基本的に組み込まれている個々の構成要素が正しく構成されていないかまたは製造されていない場合には、間接的な操舵挙動が生じるおそれがあるという問題をまねく。例えば間接的な操舵挙動のようなこのような不都合な作用を回避するためには、パワーステアリング構成群のためのステアリングギヤの、使用例に適合した、時間およびコストのかかる個別の設計を行わなければならない。パワーステアリング構成群を調整するための相応の方法は、このような理由から、従来技術では極めて手間がかかる。
【0007】
このような背景から、本発明の根底にある課題は、冒頭に述べた形式のパワーステアリング構成群を改良して、ステアリングギヤが路面側の衝撃パルスから良好に保護されるようにすることである。さらに、設計および製造のための手間が減じられることが望ましく、間接的な操舵挙動はできるだけ単純な方法で回避されるのが望ましい。したがって、本発明の根底にある課題はさらに、間接的な操舵挙動を効果的に回避するために必要な手間を減じることができる、自動車の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群を調整する方法を提供することである。
【0008】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有するパワーステアリング構成群により解決される。さらにこの課題は、請求項9の特徴部に記載の特徴を有する方法により解決される。本発明の特に有利なさらなる構成は、従属請求項に開示されている。
【0009】
重要であるのは、ステアリングギヤを路面側の衝撃パルスにより生じる負荷もしくは応力から適切に保護するために、パワーステアリング構成群の範囲内に、固有の調節可能な吸収ユニットが所定のように設けられるように、パワーステアリング構成群を構成するという基本思想である。このために、調節可能な吸収ユニットは、調節可能な吸収ユニットにおいて運動エネルギが位置エネルギに変換されることにより、このような運動およびそれに起因する負荷を適切に補償する。調節可能な吸収ユニットが設けられていなければ、実質的には減衰されない、もしくは弱められない、または単にパワーステアリングの液圧によってのみ減衰もしくは補償される、ステアリングギヤにおける力もしくは負荷が減じられる。調節可能な吸収ユニットは、このために、運動エネルギを位置エネルギに変換するように調整されていて、振動が適切にばね的に緩衝、もしくは吸収されるために機能する。好ましくは、調節可能な吸収ユニットは、このために弾性的に形成されている。調節可能な吸収ユニットは、有利には、パワーステアリング構成群の、調節可能な吸収ユニットに隣接する周囲の構成部分の少なくとも小さな相対運動を可能にするように構成されている。
【0010】
さらに、本発明には、調節可能な吸収ユニットの調節のために使用することができる別個の予荷重ユニットが付加的に設けられていることにより、従来技術の上述した欠点を回避することができるという認識が重要である。したがって、別個の予荷重ユニットが単純に、調節可能な吸収ユニットを所望の程度だけ圧縮することにより、調節可能な吸収ユニットにおいて、各使用例に個々に適合した予荷重力を調節することができる。これにより、調節可能な吸収ユニットを簡単に、まさに間接的な操舵挙動を効果的に回避することができるように調節することができる。これにより、パワーステアリング構成群の製造方法における手間、および特にパワーステアリング構成群の設計にかかるコストも大幅に減じられる。したがって、調節可能な吸収ユニットの切替え点を正確に規定するために、極めて正確な手間のかかる設計および製造方法はもはや不要である。これにより、構成部分が正確に構成または製造されていない場合でも、別個の予荷重ユニットによって簡単に、調節可能な吸収ユニットに所望の程度だけ予荷重をかけることによって、間接的な操舵挙動を効果的に回避することができる。
【0011】
特に商用車の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群であってもよい、自動車の電気機械式のパワーステアリング用の本提案によるパワーステアリング構成群は、ステアリングギヤを有している。このステアリングギヤは、操舵発生機によって、ステアリングギヤの入力側から導入された回転運動を、ステアリングギヤの出力側に伝達するように構成されている。操舵発生機は特に、ステアリングホイールであってもよい。導入された回転運動は、特に、ステアリングギヤの入力軸を介して導入されてもよい。本提案によれば、パワーステアリング構成群は、ステアリングギヤの出力側から導出された運動を、自動車の少なくとも1つのホイールの、ステアリング軸を中心とした回転運動に変換するように構成されている。
【0012】
本提案によるパワーステアリング構成群は、自動車のホイールを介して取り込まれた路面側の衝撃を少なくとも部分的に吸収するための調節可能な吸収ユニットが設けられていることを特徴とする。さらに、本提案によれば、別個の予荷重ユニットが設けられていて、この別個の予荷重ユニットは、所定の予荷重力が調節可能な吸収ユニットに加えられるように、調節可能な吸収ユニットと協働するように構成されている。
【0013】
自動車の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群を調整するための本提案による方法は特に、上述したもしくは後述する、例えば請求項1から8までのいずれか1項記載のパワーステアリング構成群のような、本提案によるパワーステアリング構成群を調整する方法である。
【0014】
本提案による方法は、自動車のホイールを介して取り込まれた路面側の衝撃を、少なくとも部分的に吸収するための調節可能な吸収ユニットを、パワーステアリング構成群全体の操舵運動の変換経路内に組み込むことを特徴とする。さらに、本提案によれば、別個の予荷重ユニットが設けられていて、別個の予荷重ユニットが、調節可能な吸収ユニットを圧縮することにより、調節可能な吸収ユニットに加えられる所定の予荷重力を最終的に調節する。
【0015】
基本的には、調節可能な吸収ユニットを、少なくとも部分的に(例えば、少なくとも1つの弾性的なエレメントを、もしくは調節可能な吸収ユニットが、異なるように配置された複数の弾性的なエレメントから形成されている場合には弾性的なエレメントのグループを)任意の所望の所定の程度だけ圧縮することができる。この場合、任意の、とは勿論、特定の境界内における、すなわち、構成スペースに適合された領域内における程度であると理解されたい。具体的には、例えば、所定の厚さの1つの補償ディスクまたは複数の補償ディスクを設けることができ、これらの補償ディスクは、まさにその厚さ分だけ調節可能な吸収ユニットを圧縮する。通常、このためには、好ましくは、補償ディスクを配置することにより、調節可能な吸収ユニットのために残された利用可能な構成スペースは減じられるので、調節可能な吸収ユニットは、単に、別個の予荷重ユニットによって軸方向で圧縮される。代替的には、別個の予荷重ユニットとして、対応ねじ山に係合するねじ山を有する予荷重ナットまたはその他の構成の構成要素が設けられていてもよい。この場合、調節可能な吸収ユニットの圧縮の程度は、有利には、ねじ山を備えた構成要素を、所望の程度だけ対応ねじ山にねじ込み、これにより調節可能な吸収ユニットをその程度だけ圧縮することにより、個別に調節することができる。
【0016】
基本的には、本提案による調節可能な吸収ユニットは、特にパワーステアリング構成群に組み込まれていて、その構成部分である。このために、吸収ユニットは、例えば、アセンブリ全体の操舵運動の変換経路内に、つまり、操舵発生機、すなわち例えばステアリングホイールから、操舵すべきホイールの方向で見て、ステアリングギヤの入力側と、例えば操舵を行わせるスラストロッドとの間に組み込まれてもよい。
【0017】
結果として、有利には、本提案によるパワーステアリング構成群における急激な運動は、調節可能な吸収ユニットによって適切に補償され、その結果生じる負荷は少なくとも部分的に吸収される。これにより、路面からの衝撃パルスもしくはそれにより生じる力が、ホイールを介して、例えばスラストロッドに、そして場合によっては、パワーステアリング構成群の、例えば設けられているスラストロッドに接続された別の構成要素に伝達される場合、またはステアリングギヤのケーシングを介して伝達される場合も、衝撃パルスを適切にばね的に緩衝する、もしくは補償することができる。これにより、もはや、路面側の衝撃パルスのこのような補償のためにパワーステアリング構成群の液圧のみが機能するのではなく、これにより本提案によるパワーステアリング構成群のステアリングギヤは、特にステアリングギヤの内部に配置された敏感な構成要素は、路面側の衝撃パルスに対して良好に保護される。
【0018】
基本的に、ステアリングギヤの入力側は、入力軸によって形成されていてもよく、この場合、入力軸は特にスピンドルとして形成されていてもよい。ステアリングギヤの出力側も、通常、出力軸によって、好ましくはセクタ軸によって形成されていてもよい。ステアリングギヤの出力側から導出される運動は、直接にまたは間接に、出力側から、例えば、セクタ軸を介して、例えばスラストロッドにさらに伝達され得る。そして、出力軸を、例えばピットマンアームに堅固に、特に相対回動不能もしくは回転方向で不動に接続することができる。この場合、ピットマンアームは、出力軸の回転運動を受け取り、同様に回転運動を行うことができる。この場合、例えば、ピットマンアームの、出力軸とは反対側の端部には、ピットマンアームをスラストロッドに接続するボールジョイントが設けられていてもよい。したがって、ボールジョイントは、ステアリングギヤの出力側から導出された、出力軸の回転運動の形態の運動と、したがってピットマンアームの回転運動とを、スラストロッドに伝達して、並進的なスラストロッド運動を行わせる。
【0019】
したがって、スラストロッドを備えたこのような実施形態では、スラストロッドは、ステアリングギヤの出力側から導出された運動を受け取り、並進的なスラストロッド運動を実施するために設けられており、この場合、スラストロッドは、並進的なスラストロッド運動によって、自動車の少なくとも1つのホイールの、ステアリング軸を中心とした回転運動が引き起こされるように、配置されている。
【0020】
調節可能な吸収ユニットは、基本的に有利には、ステアリングギヤ内に組み込まれ、好ましくは、ステアリングギヤの入力側と出力側との間に配置されているように配置されていてもよい。調節可能な吸収ユニットは、基本的に、弾性的なエレメントとして、例えばエラストマーまたはばねパッケージとして形成されていてもよく、もしくは複数の弾性的なエレメントが調節可能な吸収ユニットとして設けられていてもよい。基本的には、隣接する構成要素の相対運動は、調節可能な吸収ユニットの弾性的なエレメントによって可能とすることができ、これにより運動エネルギが調節可能な吸収ユニットによって吸収されて、これにより所望の補償効果が生じる。基本的には、好ましくは、調節可能な吸収ユニットが、少なくとも1つの弾性的なエレメント、特に少なくとも1つの皿ばねおよび/または少なくとも1つのコイルばねおよび/または少なくとも1つのエラストマーから形成されていることが想定されていてもよい。
【0021】
基本的には有利には、ステアリングギヤは、スピンドルとして形成された入力軸と、入力軸の回転運動を並進運動に変換するためのボール循環ナットとを有していて、歯列区分がボール循環ナットを外側から取り囲むように設けられていることが想定されていてもよい。この場合、調節可能な吸収ユニットは、ボール循環ナットの並進運動が、調節可能な吸収ユニットを介して歯列区分に伝達される、またはその逆の伝達が行われるように配置されていることが想定されていてもよい。これにより、路面側の衝撃パルスを、特に有利には、ステアリングギヤ自体において効果的に補償することができる。
【0022】
代替的にまたは補足的に、さらに有利には、ステアリングギヤは、スピンドルとして形成された入力軸と、入力軸の回転運動を並進運動に変換するためのボール循環ナットとを有していて、調節可能な吸収ユニットは少なくとも部分的に、入力軸の弾性的なアキシャルスピンドル軸受として形成されていることが想定されていてもよい。これにより、路面側の衝撃パルスを、特に有利には、ステアリングギヤの入力側で効果的に補償することができる。
【0023】
補足として、有利には、入力軸の弾性的なアキシャルスピンドル軸受として形成された、調節可能な吸収ユニットは、少なくとも1つの弾性的なエレメント、特に少なくとも1つの皿ばねによって形成されており、この場合、少なくとも1つの弾性的なエレメントは、ケーシング内で入力軸を回転可能に支持するための入力軸の軸受アセンブリに隣接して、入力軸の軸受アセンブリが、少なくとも1つの弾性的なエレメントを介して軸方向で弾性的にケーシング内に収容されるように配置されている。軸方向で弾性的にとは、特に、入力軸に関して軸方向であると理解されたい。驚くべきことに、本発明によって、入力軸の軸受アセンブリを補足する形の構造的な手間が増えるにもかかわらず、パワーステアリング構成群全体の経済性をさらに向上させることができることが認識された。なぜならば、有利には、ステアリングギヤの敏感な構成要素を路面側の衝撃パルスから適切に保護し、したがって耐用期間を向上させるからである。
【0024】
基本的には、また有利には、スピンドルとして形成された入力軸が、ボール循環ナットに面した少なくとも1つのスピンドル区分と入力区分とによって複数の部分から形成されていて、スピンドル区分と入力区分とは相対回動不能に、しかしながら、好ましくは少なくとも1つの弾性的なエレメントの形態で、特に好適にはリングばねの形態で、入力軸の弾性的なアキシャルスピンドル軸受として形成された調節可能な吸収ユニットを介して軸方向で弾性的に互いに接続されていることが想定されていてもよい。驚くべきことに、本発明によって、入力軸を分割する形の構造的な手間が増えるにもかかわらず、とりわけ、これに伴い入力軸が、ひいてはパワーステアリング構成群全体が実際には脆弱化するにもかかわらず、パワーステアリング構成群全体の耐用期間をさらに向上させることができることが認識された。なぜならば、有利には、ステアリングギヤの敏感な構成要素が路面側の衝撃パルスから適切に保護されるからである。
【0025】
パワーステアリング構成群の好適な実施形態は、別個の予荷重ユニットが少なくとも1つの第1の補償ディスクを含むことを特徴とする。これにより、特に簡単に、調節可能な吸収ユニットに対する予荷重力が個別に形成可能である。個別の構成要素、特に調節可能な吸収ユニットの弾性的なエレメントの煩雑な設計を行う必要なしに、パワーステアリング構成群の使用例に個別に適合させることができる。さらに、パワーステアリング構成群の製造における不正確性も効果的に補償することができる。好ましくは、第1の補償ディスクは、調節可能な吸収ユニットもしくはそのいくつかの弾性的なエレメントに対する当接面としての直接的な接触面を形成している。
【0026】
付加的に好ましくは、別個の予荷重ユニットは、少なくとも1つの第2の補償ディスクをさらに有していることが想定されていてもよい。特に、第2の補償ディスクは、第1の補償ディスクの第1の厚さとは異なる第2の厚さを有していてもよい。これにより、パワーステアリング構成群のための特定の使用例に特に簡単に適合させることができる。個別の構成要素、特に調節可能な吸収ユニットの弾性的なエレメントの煩雑な設計を行う必要なしに、パワーステアリング構成群の使用例に個別に適合させることができる。さらに、パワーステアリング構成群の製造における不正確性も効果的に補償することができる。好ましくは、第1の補償ディスクと第2の補償ディスクとは、互いに直接当接して配置されている。
【0027】
パワーステアリング構成群の別の実施形態によれば、別個の予荷重ユニットが予荷重ナットを有していることが想定されている。これにより、特に簡単に、調節可能な吸収ユニットに対する予荷重力が個別に形成可能である。個別の構成要素、特に調節可能な吸収ユニットの弾性的なエレメントの煩雑な設計を行う必要なしに、パワーステアリング構成群の使用例に個別に適合させることができる。さらに、パワーステアリング構成群の製造における不正確性も効果的に補償することができる。好ましくは、予荷重力を高めるために、嵌合する対応ねじ山内に予荷重ナットを簡単にさらにねじ込むことができる。さらに好ましくは、予荷重ナットは、調節可能な吸収ユニットもしくはそのいくつかの弾性的なエレメントに対する当接面としての直接的な接触面を形成する端面を有している。
【0028】
パワーステアリング構成群のさらなる実施形態によれば、別個の予荷重ユニットは、所定の予荷重力が、ねじ山と対応ねじ山とを介して互いに係合させられる2つの構成要素を介して、好ましくは実質的に無段階式に調節可能に、調節可能な吸収ユニットと協働するように構成されていることが想定されている。この場合、実質的に無段階とは、任意に高い値または低い値をとることができるということではなく、つまり複数の構成要素が任意の幅で互いに回動可能であるということではなく、特定の範囲だけ互いに回動することができることを意味する。さらに、構成要素が互いに回動する場合、結果として生じる予荷重力において、小さな跳躍的変化が生じる場合もある。その点において、無段階の概念とは、絶対的なものとして理解されるべきではない。これにより、予荷重力の個別の適合は簡単に可能である。
【0029】
パワーステアリング構成群のさらなる実施形態によれば、別個の予荷重ユニットと調節可能な吸収ユニットとは、組付け状態で、軸方向で互いに相対的に少なくとも部分的に摺動可能であることが想定されている。これにより、路面側の衝撃の効果的な補償が、保証される。
【0030】
パワーステアリング構成群のさらなる実施形態によれば、別個の予荷重ユニットは、組付け状態で、周方向の回転に抗して、特に溝に係合する固定ピンを介して固定されていることが想定されている。これにより、調節可能な吸収ユニットの均一な補償作用の確実性が保証される。予荷重力の望ましくない変更が効果的に阻止される。
【0031】
パワーステアリング構成群のさらなる実施形態によれば、別個の予荷重ユニットは端面を有していて、これらの端面は、所定の予荷重力を調節可能な吸収ユニットに加えるために、調節可能な吸収ユニットに直接当接するための接触面を形成していることが想定されている。これにより、調節可能な吸収ユニットに対する予荷重ユニットの予荷重力の効果的かつ均一な伝達が保証される。
【0032】
パワーステアリング構成群を調整する方法の好適な実施形態は、別個の予荷重ユニットとして、少なくとも1つの第1の補償ディスクが、調節可能な吸収ユニットの適切な圧縮により予荷重をかけるために、調節可能な吸収ユニットに隣接して設けられていることを特徴とする。これにより、特に簡単に、調節可能な吸収ユニットに作用する予荷重力が個別に形成可能である。個別の構成要素、特に調節可能な吸収ユニットの弾性的なエレメントの煩雑な設計を行う必要なしに、パワーステアリング構成群の使用例に個別に適合させることができる。さらに、パワーステアリング構成群の製造における不正確性も効果的に補償することができる。したがってこの方法は、効果的かつ簡単である。好ましくは、第1の補償ディスクは、調節可能な吸収ユニットもしくはそのいくつかの弾性的なエレメントに対する当接面としての直接的な接触面を形成している。
【0033】
さらに好ましくは、第2の補償ディスクが、調節可能な吸収ユニットの適切な圧縮により予荷重をかけるために、調節可能な吸収ユニットに隣接してさらに設けられることが想定されていてもよい。この場合、第2の補償ディスクは好ましくは、第1の補償ディスクの第1の厚さとは異なる第2の厚さを有している。これにより、パワーステアリング構成群のための使用例に特に簡単に適合させることができる。個別の構成要素、特に調節可能な吸収ユニットの弾性的なエレメントの煩雑な設計を行う必要なしに、パワーステアリング構成群の使用例に個別に適合させることができる。さらに、パワーステアリング構成群の製造における不正確性も効果的に補償することができる。好ましくは、第1の補償ディスクと第2の補償ディスクとは、互いに直接当接して配置されている。
【0034】
方法のさらなる実施形態によれば、別個の予荷重ユニットとして予荷重ナットが、調節可能な吸収ユニットの適切な圧縮により予荷重をかけるために、調節可能な吸収ユニットに隣接して設けられていることが想定されている。これにより、特に簡単に、調節可能な吸収ユニットに対する予荷重力が個別に形成可能である。個別の構成要素、特に調節可能な吸収ユニットの弾性的なエレメントの煩雑な設計を行う必要なしに、パワーステアリング構成群の使用例に個別に適合させることができる。さらに、パワーステアリング構成群の製造における不正確性も効果的に補償することができる。好ましくは、予荷重力を高めるために、嵌合する対応ねじ山内に予荷重ナットを簡単にさらにねじ込むことができる。さらに好ましくは、予荷重ナットは、調節可能な吸収ユニットもしくはそのいくつかの弾性的なエレメントに対する当接面としての直接的な接触面を形成する端面を有している。
【0035】
方法のさらなる実施形態によれば、別個の予荷重ユニットの、ねじ山を有する第1の構成要素と、第1の構成要素に係合し、対応ねじ山を有する第2の構成要素とを相互に回転させることにより、所定の予荷重力を調節することが想定されている。したがって、好ましくは、予荷重力は、実質的に無段階に調節可能である。この場合、実質的に無段階とは、任意に高い値または低い値をとることができるということではなく、つまり複数の構成要素が任意の幅で互いに回動可能であるということではなく、特定の範囲だけ互いに回動することができることを意味する。さらに、構成要素が互いに回動する場合、結果として生じる予荷重力において、小さな跳躍的変化が生じる場合もある。その点において、無段階の概念とは、絶対的なものとして理解されるべきではない。これにより、予荷重力の個別の適合は簡単に可能である。両構成要素が互いにさらに回動されるほど、いっそう、調節可能な吸収ユニットの圧縮の程度、つまり調節可能な吸収ユニットに作用する予荷重力も高くなる。
【0036】
方法の別の実施形態によれば、別個の予荷重ユニットを、最終的に、周方向の回動に抗して固定することが想定されている。
【0037】
付加的に、好ましくは、この固定を、溝内に周方向で形状接続的に係合する固定ピンを設けることにより実施することが想定されていてもよい。
【0038】
これにより、路面側の衝撃の効果的な補償が保証される。予荷重力の望ましくない変更が効果的に阻止されるので、調節可能な吸収ユニットの均一な補償作用の確実性が保証される。
【0039】
上述したおよび後述される、本提案によるパワーステアリング構成群に関する特徴ならびに結果として生じる利点は、技術的に有意であるところで、本提案による方法に適用可能であり、その逆もまた同様ある。
【0040】
本発明のさらなる特徴および利点は、特許請求の範囲、および以下で図面を参照してもより詳細に説明する、本発明の限定的に理解されるべきではない実施例の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】ステアリングギヤの概略図である。
図2図1のステアリングギヤを備えた自動車の概略図である。
図3a】本提案によるパワーステアリング構成群のステアリングギヤの断面図を部分的に示す概略図である。
図3b図3a)のA-A線に沿った断面図である。
図4】補償ディスクとして形成された別個の予荷重ユニットを示す図である。
図5】本提案によるパワーステアリング構成群のステアリングギヤの断面図を部分的に示す、基本的には図3a)のB-B線に沿った断面図である。
図6】本提案による別のパワーステアリング構成群のステアリングギヤの断面図を部分的に示す、基本的には図3a)のB-B線に沿った断面図である。
図7a】本提案によるパワーステアリング構成群の入力軸を組付け状態で示す斜視図である。
図7b図7a)の方向Bで見た正面図である。
図7c図7b)のA-A線に沿った断面図である。
図8図7a)の本提案によるパワーステアリング構成群の入力軸を、組み付けられていない状態で全ての個々の部品を示す図である。
【0042】
図1には、自動車の電気機械式のパワーステアリング用のパワーステアリング構成群が概略的に示されている。パワーステアリング構成群は、ステアリングギヤ1を有している。例えばステアリングホイール(図1には図示せず)のような操舵発生機により自動車の運転者によって実施される操舵運動は、ステアリングギヤ1を介して変換される。このために、ステアリングギヤ1の入力側2を介して、具体的に図示した場合、入力軸3を介して導入される回転運動が、ステアリングギヤ1の出力側4に伝達される。
【0043】
ステアリングギヤ1の出力側4ではさらに、運動が、具体的に図示した場合、ステアリングギヤ1の、セクタ軸5として形成された出力軸6の回転運動が導出される。図示したこの場合は、湾曲した2つの両方向矢印Iによって示された回転運動である、出力側4で導出されたこの運動は、最終的に、非限定的な図示したこの実施例では、パワーステアリング構成群のスラストロッド7によって受け取られる。これにより、スラストロッド7は、並進的なスラストロッド運動を行う。スラストロッド7の並進的なスラストロッド運動は、図1に両方向矢印IIによって示されている線形運動であり、最終的に、自動車の少なくとも1つのホイールがステアリング軸を中心として回転し(図1には図示せず)、その結果、自動車が所望のカーブ走行を行うことになる。
【0044】
出力側4に導出された回転運動(両方向矢印I)を、スラストロッド7の所望の並進的なスラストロッド運動(両方向矢印II)に変換するために、図示したパワーステアリング構成群は、ピットマンアーム8と、ピットマンアーム8をスラストロッド7に接続する、ボールジョイント9の形態のジョイントとを有している。
【0045】
一般的な操舵過程の以下の説明のために、図1および図2の両方を参照し、図2は、図1に示したステアリングギヤ1を有するパワーステアリング構成群を備えた自動車10を下方から示した概略図を示している。
【0046】
商用車の形態の自動車10のためには、通常、いわゆるボール循環式ステアリング機構(略してKUL)としてボール循環式ステアリングギヤが使用される。このようなアセンブリの運動学は、商用車のために特に好適である。なぜならば、商用車は主として、リジッドアクスルの形態の前車軸を有しているからである。前車軸のトレーリングアームとスラストロッドとが、ほぼ等しい長さで、かつ互いにほぼ平行に配置されている場合には、これらは平行四辺形を形成している。これにより、前車軸のばね運動は全く作用しないか、またはほとんど作用しない。ステアリングギヤ1がフレーム固定に組み付けられている場合には、ステアリングコラムにおける長さ補償は、例えば自動車10のフレームと運転室との間の相応の相対運動により行うことができる。商用車は、本提案によるパワーステアリング構成群が特に適している使用例であるので、以下ではボール循環式ステアリング機構の例について本発明を説明する。
【0047】
ステアリングギヤ1は、所定の区分でスピンドル11として形成された入力軸3と、スピンドル11の領域に配置された、外側歯列12を有するボール循環ナット13とを有している。外側歯列12には、セクタ歯列14が係合している。セクタ歯列14と外側歯列12とは、互いに噛み合うように配置されている。セクタ歯列14は、さらに、回転方向で不動に、すなわち相対回動不能に、出力軸6に接続されており、したがって出力軸は、セクタ軸5として形成されている。出力軸6にはさらに、ピットマンアーム8が、回転方向で不動にもしくは相対回動不能に結合されており、ピットマンアーム8はさらに、既に上述したように、ボールジョイント9を介して可動にスラストロッド7に接続されている。
【0048】
ステアリングギヤ1では、操舵発生機、具体的にはステアリングホイール15(図2)の回転が、ステアリングコラムと入力軸3とを介してスピンドル11へと伝達される。入力軸3は例えば、ステアリングコラムの一部であってもよい。スピンドル11は、ボールねじ、または場合によってはウォームとも呼ばれる。図1において円運動を示す矢印IIIにより示した入力軸3のこの回転運動は、ボール循環ナット13によってボール循環ナット13の直動運動に、ひいてはボール循環ナット13の外側歯列12の直動運動にも変換される。ボール循環ナット13および外側歯列12のこの線形運動は、図1において、両方向矢印IVによって示されている。
【0049】
両方向矢印IVで示した線形運動は、次いで、外側歯列12とセクタ歯列14との歯列対を介して、既に説明した、ステアリングギヤ1の出力側4に導出される、湾曲した両方向矢印Iで示した、出力軸6の回転運動に変換される。したがって、線形運動(両方向矢印IV)は、最終的にピットマンアーム8の回転運動(両方向矢印I)にも変換される。ピットマンアーム8の端部において、再び、スラストロッド7が主として直線的に運動させられる。図2により明らかであるように、スラストロッド7によって、最終的には、ホイールキャリアに取り付けられたステアリングレバー16を介して、操舵すべきホイール17が、ステアリング軸18を中心として旋回させられる。ホイール17のこのような回転運動は、図2において、湾曲した両方向矢印Vによって示されている。この場合、ホイール17とは反対側の別のホイール19は、ステアリングアーム20と剛性的なタイロッド21とを介して共に操舵され得る。
【0050】
図1を参照すると、出力側4から導出された回転運動(両方向矢印I)は、ボールジョイント9を介してスラストロッド7に伝達され、これにより、スラストロッド7は並進的なスラストロッド運動(両方向矢印II)を行い、その結果、ホイール17もしくはホイール17,19の操舵運動が所定のように実施されるようになっていることがわかる。
【0051】
図2にはさらに、互いに平行に配置された2つのサイドメンバの形態の自動車10のフレーム22が示されている。例えばフレーム22のサイドメンバとステアリングギヤ1のケーシングとが固定ねじを介して互いに結合されていることにより、ステアリングギヤ1は、図1および図2には示さない固定装置により自動車10のフレーム22に取り付けられていてもよい。自動車10の走行方向は、図2に、矢印VIによって示されている。
【0052】
ステアリングギヤ1は、好適には、液圧式のパワーアシストを有している。このために、ボール循環ナット13は、ステアリングギヤ1のケーシングに対してシールされている。ボール循環ナット13は、したがって、いわゆる油圧ピストンとして、もしくは単にピストンとも呼ばれるものとして機能することができる。相応に、ボール循環式ステアリング機構は、液圧式のステアリングアシストのために、ピストンの互いに対向する2つの面と、互いに分離されたオイルチャンバとを有する。これにより、運転者から入力軸3にもたらされる操舵トルクを介して、例えばロータリースライドバルブを用いて、ボール循環ナット13の両側の間で差圧を形成することができる。この差圧により、ボール循環ナット13の運動を支援することができる。
【0053】
記載したパワーステアリング構成群は、所望の操舵運動を実現するために、特に、ステアリングギヤ1において、機械的な負荷に対して敏感な複数の構成要素を有している。これらの構成要素は、とりわけ、例えば振動や最終的には望ましくない力がホイール17,19を介してステアリングギヤ1内まで導入されることから生じ得る急激な運動に対して保護されるべきである。このような力もしくは負荷またはシステム内の応力は、例えば、路面の凹凸がホイール17,19を介して導入される衝撃をまねく場合に生じることがある。この点において、ステアリングギヤ1に向かうこのような路面側の衝撃パルスを減衰または補償し、これによりステアリングギヤ1の構成要素の損傷を阻止することが特に求められる。特に、このような有害な衝撃は、図示の実施例では、ホイール17,19、次いでスラストロッド7を介して、さらにはステアリングギヤ1にまで伝達されることがあり、これにより、ステアリングギヤ1の敏感な構成要素の損傷が生じるおそれがある。
【0054】
この場合、本発明により有利には対策が講じられる。このために重要なのは、1つには、自動車10のホイール17,19を介して取り込まれた路面側の衝撃を吸収するための調節可能な吸収ユニット23が設けられていることである。
【0055】
調節可能な吸収ユニット23は、この場合、例えば、図3図8に示した実施例でわかるように、パワーステアリング構成群の様々な個所もしくは節点に設けることができる。調節可能な吸収ユニット23は、この場合、好適には、少なくとも1つのエネルギ吸収エレメントによって形成されていて、運動エネルギを少なくとも部分的に位置エネルギに変換するように調整されている。
【0056】
調節可能な吸収ユニット23は、このために、好適には、パワーステアリング構成群の、調節可能な吸収ユニット23に隣接する構成要素が、少なくとも最小の相互運動を実施することができるように、パワーステアリング構成群内に組み込まれている。このために、調節可能な吸収ユニット23は、好適には弾性的に形成されているか、もしくは特に直接的に隣接する構成要素に比べて高い可撓性を有している。このようにして、パワーステアリング構成群における構成要素の急激な運動を、調節可能な吸収ユニット23で適切に吸収し、この吸収ユニットによってばね的に緩衝するもしくは補償することができる。調節可能な吸収ユニット23の形態の構成部分において適切に許容される相対運動は、適切なエネルギ変換ひいては運動エネルギの補償のために役立つ。このようにして、ステアリングギヤ1における、機械的な負荷に敏感な構成要素の損傷のリスクは著しく減じられる。
【0057】
調節可能な吸収ユニット23の調節可能性は、この場合、別個の予荷重ユニット24によって保証される。この別個の予荷重ユニット24は、調節可能な吸収ユニット23と協働し、これにより、所定の予荷重力が調節可能な吸収ユニット23に加えられる。特に、別個の予荷重ユニット24は、調節可能な吸収ユニット23を、ある程度、収縮させるかもしくは圧縮するために機能する。これにより調節可能な吸収ユニット23は、特に、別個の予荷重ユニット24が存在していないか、もしくは組み付けられていない状態に比べて、別個の予荷重ユニット24が存在している場合には、実質的に、路面側の衝撃により導入される補償すべき力の力流れ方向で、より小さな厚さ寸法を有している。これにより、調節可能な吸収ユニット23において、適切に戻し力が生じる。
【0058】
自動車10のホイール17を介して取り込まれた路面側の衝撃を吸収もしくは補償するための調節可能な吸収ユニット23は、パワーステアリング構成群の様々な個所に設けることができる。しかしながら、図3図5図6図7図8の以下の実施例から明らかであるように、調節可能な吸収ユニット23は、特に効果的にステアリングギヤ1に、もしくはその入力軸3への接続部に組み込むことができる。特に好適には、この場合、調節可能な吸収ユニット23は、ボール循環ナット13の構造に、またはボール循環ナットと入力軸3との相互作用個所に組み込まれる(図3図5参照)、もしくは入力軸3の一連の支持部に(図6参照)、または入力軸3自体の構造(図7図8参照)に設けられる。
【0059】
図3a)には、ステアリングギヤ1が部分的に、それぞれ概略的に示されている。図3b)は、図3a)のA-A断面を示している。図3a)は、(異なる代替的な参照符号が括弧内に付与されている)概略的な概観図として機能し、図5ならびに図6も、基本的には、図3a)のB-B断面を示している。
【0060】
図3b)は、図5に示した実施例と同様に、本提案による相応のパワーステアリング構成群のステアリングギヤ1を部分的に示している。この場合、両実施例では、それぞれ、ステアリングギヤ1は、スピンドル11として形成された入力軸3を有しており、さらに、ボール循環ナット13を有しており、入力軸3の回転運動(矢印III)を並進運動(両方向矢印IV)に変換するためのラック55も有している。
【0061】
この並進運動(両方向矢印IV)をさらに伝達するために、ラック55は、外側に歯列区分56を有し、この歯列区分は、外側歯列12を提供している。次いで歯列区分56もしくは外側歯列12は、ステアリングギヤ1の出力側4を少なくとも部分的に形成するセクタ軸5に係合し、並進運動(両方向矢印IV)によりさらに、セクタ軸5の所望の回転運動(図1の両方向矢印I参照)を生じさせる。さらに、ラック55は、内側に位置するボール循環ナット13対して別個の構成部分を形成している。
【0062】
路面側の衝撃を補償するために、図3b)および図5に示したパワーステアリング構成群の調節可能な吸収ユニット23は、ボール循環ナット13の並進運動(両方向矢印IV)が、調節可能な吸収ユニット23を介して歯列区分56に伝達されるように、そして逆に、つまり歯列区分56の並進運動も、調節可能な吸収ユニット23を介してボール循環ナット13に伝達されるように、配置されている。この場合、調節可能な吸収ユニット23は、少なくとも1つの弾性的なエレメント、すなわち、図5の実施態様では、2つの皿ばね57から形成されていて、もしくは図3b)による実施態様では2つのエラストマー58から形成されている。基本的には、エラストマー、皿ばねまたはコイルばねの組み合わせも可能である。
【0063】
調節可能な吸収ユニット23は、最終的に、各ボール循環ナット13と、セクタ軸6との歯列対のための外側歯列12の機能を担っている歯列区分56との間の接合個所を形成している。
【0064】
ボール循環ナット13の並進運動(両方向矢印IV)に相応する方向で、両構成要素、すなわちボール循環ナット13と歯列区分56を備えたラック55とは、基本的には互いに相対的に可動に構成されている。また、回転方向で、すなわち基本的に入力軸3の回転運動(矢印III)に相応する方向では、両構成要素、すなわちボール循環ナット13と歯列区分56を備えたラック55とは、互いに相対回動不能に固定されている。すなわち、ボール循環ナット13は、ラック55におけるボール循環ナットの収容部内では、回動できない。このために、例えば、固定のために嵌合キーを設けることができる。図5には付加的に、ボール循環式ステアリング機構のボール60が示されており、他方、図3b)では、これらのボールの明示的な図示は省かれている。
【0065】
少なくとも1つの弾性的なエレメントから成る調節可能な吸収ユニット23は、図示した実施例ではそれぞれ、調節可能な吸収ユニット23に隣接する構成要素の相対運動を可能にする。この相対運動は、軸方向で可能である。この場合、調節可能な吸収ユニット23はそれぞれ弾性圧縮される。このようにして、調節可能な吸収ユニット23は、例えば路面側の衝撃により引き起こされるおそれのある、例えば出力軸6の急激な回動時における、過度に強いもしくは急激な運動の際に、所定のように運動エネルギを位置エネルギに変換する。これにより、ステアリングギヤ1の内部に発生する、路面側の衝撃により生じる負荷を、有利には補償することができる。
【0066】
ボール循環ナット13は、図3b)および図5に示した両実施例では、ラック55の、平坦面61を有する中央の孔内に収容され、平坦面61とは反対の側でカバー62によって固定されている。カバー62は、このために、そのヘッド側の環状の載置面でそれぞれ、中央の孔の平坦面61とは反対側に配置されている、ラック55の端面側の端部に当接している。
【0067】
カバー62は、それぞれラック55に堅固に、好適にはそれぞれ、ラック55の、平坦面61とは反対側の端面側の端部を介して結合されている。さらに、図5の実施例によるカバー62は、ラック55の中央孔内に突入する、軸方向に延在する導入区分59を有している。
【0068】
図3b)による実施例では、左側に示されたエラストマー58は、その左側の外側端面で、カバー62の、ヘッド側の環状の載置面の内側部分に当接する。また、図5による実施例では、右側に示された皿ばね57が、その右側の外側面で、カバー62の導入区分59の内側の端面に当接する。
【0069】
以下に、図3b)および図5に示された両実施例の調節可能な吸収ユニット23による、路面側で生じる急激な運動の補償効果を説明する。この場合、具体的にはとりわけ、歯列対(符号12,14,56参照)を介して出力軸6に係合するラック55の急激な線形運動を、両方向矢印IVで示した両方向に相応に生じさせるおそれのある、出力軸6の急激な運動が発生する状況を問題とする。
【0070】
基本的には、図3b)および図5の両実施例では、以下の通りである:左方向へのセクタ軸5の急激な回動、ひいてはラック55の急激な線形運動は、図3b)に示した実施例では、まず右側に示したエラストマー58により補償され、図5に示した実施例では、まず右側に示した皿ばね57により補償される。同じことは、右方向への各ボール循環ナット13の急激な線形運動にも同様に当てはまり、このことは、右側のエラストマー58もしくは右側の皿ばね57の圧縮をまねく。
【0071】
逆の運動方向については逆のことが当てはまる:左方向への各ボール循環ナット13の急激な運動の際には、左側のエラストマー58もしくは左側の皿ばね57が圧縮され、これによりそれぞれ適切に所望の補償が達成される。右方向への出力軸6の、ひいてはセクタ歯列14の急激な変位についても同じことが当てはまる:右方向への各ラック55の急激な線形運動により、左側のエラストマー58もしくは左側の皿ばね57が圧縮され、これによりそれぞれ適切に所望の補償が達成される。
【0072】
詳細には、図3b)の実施例による急激な運動の適切な補償は、以下の通りに行われる:例えば、左方向へのセクタ軸5の突然の旋回により誘発されて例えばラック55が急激に左方向へと動くと、それによりまず右側のエラストマー58が圧縮されることになる。この右側のエラストマー58は、ラック55の中央の収容部25に収容されており、この中央の収容部25の底面には、まず、予荷重ユニット24の(さらに詳しく後述する)補償ディスクが配置されていて、この補償ディスクには、右側のエラストマー58が隣接してさらに当て付けられる。いずれにせよ、ラック55は、中央の収容部25の底面と、予荷重ユニット24とを介して、左方向への急激な運動を、右側のエラストマー58に伝達し、次いで、隣接するリングエレメント63を介してボール循環ナット13に伝達する。
【0073】
ここで説明した、左方向へのラック55の突然の運動の補償は、力の流れに関して逆向きの方向にも、つまり、急激な運動の原因が、上述したように左方向への出力軸6ひいてはセクタ歯列14の変位ではなく、むしろ右方向へのボール循環ナット13の急激な運動である場合でも同様に機能する。なぜならば、この場合、急激に右方向に向かって動くボール循環ナット13が、リングエレメント63を介した運動伝達によって、まず右側のエラストマー58を圧縮し、その後でこのエラストマーが、さらに、この運動を所望のように補償して予荷重ユニット24に、もしくは最終的にラック55に伝達し、最終的にはセクタ歯列14と、出力軸6とに伝達するからである。
【0074】
また、逆方向には、すなわち、右方向への(例えば右方向へのセクタ軸5の急激な変位により引き起こされる)ラック55の急激な運動の際には、まず、図3bの左縁部に示されたカバー62がラック55に堅固に結合されているので、このカバーが右方向へ運動させられる。これにより、まず、隣接する左側のエラストマー58が圧縮されて、その後、この運動が、リングエレメント63を介してボール循環ナット13にさらに伝達される。
【0075】
説明したこの補償は、力の流れに関して逆向きの方向にも、つまり、出発点が、右方向へのラック55の急激な運動ではなく、左方向へのボール循環ナット13の急激な運動である場合でも同様に機能する。なぜならば、この場合、まず、左方向へのボール循環ナット13の運動により、リングエレメント63によって、隣接する左側のエラストマー58が圧縮されて、これにより所望の補償が得られ、その後、力と運動とがカバー62に、ひいてはラック55と出力軸6とにさらに伝達されるからである。
【0076】
図5の実施例による急激な運動の適切な補償は、以下の通りに行われる:例えば、左方向へのセクタ軸5の突然の変位により、例えばラック55が、急激に線形に左方向へ動かされると、まずは、右側の皿ばね57が圧縮される。これは、ラック55と共に、このラックに堅固に結合されたカバー62が、その導入区分59と共に同様に左方向へ動かされることにより起こる。これにより、この場合やはり、まずは右側の皿ばね57が圧縮され、これにより、路面側の衝撃の所望の補償が行われ、その後、最終的に、この運動が、右側の皿ばね57の左側に接続されたボール循環ナット13にさらに伝達される。
【0077】
ここで説明した、左方向へのラック55の突然の運動の補償は、力の流れに関して逆向きの方向にも、つまり、急激な運動の原因が、上述したように左方向への出力軸6ひいてはセクタ歯列14の変位ではなく、むしろ右方向へのボール循環ナット13の急激な運動である場合でも同様に機能する。なぜならば、この場合、急激に右方向に向かって動くボール循環ナット13が、まず右側の皿ばね57を圧縮し、その後でこの皿ばねが、さらに、この運動を補償してカバー62に伝達し、カバーは、この運動を、ラック55に、最終的にはセクタ歯列14に伝達するからである。
【0078】
また、逆方向には、すなわち、図5のラック55が右方向へ突然の運動を行う場合には、まずは、平坦面61の領域に設けられた左側の皿ばね57が圧縮され、その後、相応の負荷が、ボール循環ナット13にさらに伝達される。同様に、左方向へのボール循環ナット13の突然の急激な運動により、まずは左側の皿ばね57が圧縮され、次いで最終的に、平坦面61を介して、力と、ひいては運動とがラック55にさらに伝達され、最終的に、左方向へのセクタ歯列14の変位が、これにより出力軸6の変位が引き起こされる。
【0079】
本提案によるパワーステアリング構成群の特別な利点は、調節可能な吸収ユニット23と協働する別個の予荷重ユニット24が設けられていることである。この別個の予荷重ユニット24から調節可能な吸収ユニット23に、所望の所定の予荷重力が加えられる。
【0080】
図3b)および図5による図示した実施例では、具体的に、それぞれ1つの第1の補償ディスク26が、別個の予荷重ユニット24として使用される。図4は基本的に、このような第1の補償ディスク26を示しており、この場合、第1の補償ディスク26は第1の厚さd1を有している。さらに、異なる、この場合より小さな厚さd2の別の第2の補償ディスク27が示されている。補償ディスク26,27は、それぞれ中央に開口28を有しており、組付け状態で、この開口を通ってボール循環ナット13ならびに入力軸3(図3b)参照)が、もしくは入力軸3のみが(図5参照)延在することができる。
【0081】
基本的には、特に、調節可能な吸収ユニット23に作用すべき所望の予荷重力を適切に調節するために、図3b)および図5に単に例として示されたように、別個の予荷重ユニット24として、第1の補償ディスク26のみが設けられているだけでなく、複数の補償ディスク26,27が設けられていてもよい。
【0082】
具体的には、別個の予荷重ユニット24は、記載した実施形態では、各第1の補償ディスク25を、すなわち、吸収ユニット23のまさに調節、つまり予荷重のために、調節可能な吸収ユニット23との接触面として機能するそれぞれ1つの端面29を有している。第1の補償ディスク25と各調節可能な吸収ユニット23とは、接触面を介して互いに当て付けられて配置されている。
【0083】
具体的には、図3b)では、第1の補償ディスク26が、ラック55の中央の収容部25内に収容されている。中央の収容部25の底面とは反対の側に続いて、さらに、調節可能な吸収ユニット23の右側のエラストマー58が配置されている。右側のエラストマー58は、右側の端面側外面を介して、別個の予荷重ユニット24の第1の補償ディスク26の端面29(図4参照)に接触している。
【0084】
このようにして、第1の補償ディスク26を備えた別個の予荷重ユニット24は、第1の補償ディスク26が設けられていない場合と比較して、調節可能な吸収ユニット23の、もしくは具体的には、右側のエラストマー58の圧縮のために働く。すなわち、所定の予荷重力が、調節可能な吸収ユニット23に加えられ、これによりさらに、この調節可能な吸収ユニット23における戻し力が生じる。
【0085】
すなわち、自動車10の電気機械式のパワーステアリングのためのパワーステアリング構成群を調整するための本提案による方法によって、パワーステアリング構成群を有利に調整することができ、この場合、それはとりわけ、上述したパワーステアリング構成群であってもよく、この場合、まず、自動車10のホイール17もしくは19を介して取り込まれる路面側の衝撃を少なくとも部分的に吸収するための調節可能な吸収ユニット23を、パワーステアリング構成群全体の操舵運動の変換経路内に組み込む。
【0086】
次いで、本提案によれば、別個の予荷重ユニット24が設けられる。この場合、図3図5および図6の実施例のように、別個の予荷重ユニット24として、少なくとも1つの第1の補償ディスク26が、調節可能な吸収ユニット23の適切な圧縮により予荷重をかけるために、調節可能な吸収ユニット23に隣接して設けられていてもよい。さらに、第2の補償ディスク27を、調節可能な吸収ユニット23の適切な圧縮により予荷重をかけるために、調節可能な吸収ユニット23に隣接して設けることも考えられる(図4参照)。この場合、有利には、第2の補償ディスク27は、第1の補償ディスク26の第1の厚さd1とは異なる第2の厚さd2を有していてもよい。
【0087】
このような別個の予荷重ユニット24によって、基本的には、本提案による方法によれば、別個の予荷重ユニット24が調節可能な吸収ユニット23を圧縮することにより、調節可能な吸収ユニット23に加えられる個別の所望の所定の予荷重力が最終的には調節される。この場合、調節可能な吸収ユニット23が所定の程度だけ圧縮される。この程度は、例えば、図3図5および図6の実施例における場合のように、選択された補償ディスク26,27の厚さを介して、例えば、第1の補償ディスク26の第1の厚さd1(図4参照)を介して選択される。圧縮度を、ひいては予荷重力を、例えば予荷重ナット30をねじ込む方法ステップによっても調節することができ、これによりほぼ無段階の調節可能性が保証される(図7および図8および対応する説明参照)。
【0088】
図6図7および図8には、本提案によるパワーステアリング構成群の調節可能な吸収ユニット23の別の実施形態が示されている。図示した実施例では、ステアリングギヤ1は、スピンドル11として形成された入力軸3と、入力軸3の回転運動(矢印III)を並進運動(両方向矢印IV)に変換するためのボール循環ナット13とを有している。この場合、調節可能な吸収ユニット23は、少なくとも部分的に、入力軸3の、弾性的なアキシャルスピンドル軸受として形成されている。
【0089】
図6の実施例では、入力軸3の、弾性的なアキシャルスピンドル軸受として形成された調節可能な吸収ユニット23は、2つの弾性的なエレメント、具体的には皿ばね67ならびに皿ばね68によって形成されている。この場合、皿ばね67および68は、入力軸3を回転可能に支持するために、入力軸3の軸受アセンブリに、具体的には2列のアンギュラ玉軸受69に隣接して、入力軸3の軸受アセンブリが皿ばねを介して軸方向で弾性的にケーシング70内に収容されるように、ケーシング70内に配置されている。左側の皿ばね67とアンギュラ玉軸受69との間には、第1の補償ディスク26を備えた別個の予荷重ユニット24が配置されている。
【0090】
2つの皿ばね67,68の形態の、図示した調節可能な吸収ユニット23によって、例えばセクタ歯列14を備えたセクタ軸6を介して導入され得る路面側の衝撃を適切に補償することができる。したがって、入力軸3(矢印III)と共に、入力軸3を取り囲むスリーブならびにアンギュラ玉軸受69の内レースが回転する。また、アンギュラ玉軸受69の外レースは、ステアリングギヤ1のケーシング70内に、相対回動不能にしかしながら軸方向摺動可能に配置されている。
【0091】
皿ばね67,68の形態の調節可能な吸収ユニット23はさらに、両側で、すなわち左側では皿ばね67が、右側では皿ばね68が、アンギュラ玉軸受69の外レースに当接している。しかしながら、この場合、左側の皿ばね67は、アンギュラ玉軸受69の外レースに直接、当接しているのではなく、間接的にのみ当接している。したがって、皿ばね67とアンギュラ玉軸受69の外レースとの間にはさらに、第1の補償ディスク26が配置されている。
【0092】
本提案によれば、スピンドル側で衝撃が生じた場合、左方向への入力軸3の急激な運動の際には、左側に示された皿ばね67が、ならびに右方向への入力軸3の急激な運動の際には、右側に示された皿ばね68が圧縮されるので、軸方向で減衰された運動が行われる。皿ばね67,68の内径は、スリーブもしくは入力軸3の直径よりも大きい。したがって、図示した調節可能な吸収ユニット23により、パワーステアリング構成群の隣接する構成要素の小さな相対運動が改めて適切に許容され、この相対運動により、さらに、運動エネルギが位置エネルギへ適切に変換され、ひいては路面側の衝撃の補償にも役立つ。第1の補償ディスク26を備えた別個の予荷重ユニット24はこの場合、さらに、ここでは左側に示された皿ばね67の適切な予荷重を提供する。
【0093】
図7および図8の実施例では、スピンドル11として形成された入力軸3は、ボール循環ナット13に面した少なくとも1つのスピンドル区分71と、入力区分72とにより、複数の部分から形成されている。図7a)では、入力軸3が組付け状態で斜視図で示されていて、図7b)では、対応する入力軸3が図7a)の矢印Bの方向で見た正面図で示されている。図7c)では、入力軸3は、この場合、図7b)の断面A-Aに相応の縦断面図で示されている。図8はさらに、同じ入力軸3を示しているが、組み付けられていない状態で、すなわち説明のために個々の構成要素に分解されて示されている。
【0094】
入力軸3のスピンドル区分71と入力区分72とは、相対回動不能に互いに接続されている。しかしながら、スピンドル区分71と入力区分72とは、入力軸3の弾性的なアキシャルスピンドル軸受として形成された、調節可能な吸収ユニット23も介して、軸方向で弾性的に互いに接続されている。この場合、弾性的なアキシャルスピンドル軸受は、弾性的なエレメントによって形成されていて、すなわち、この場合、一方では、左側に示されたリングばね73のパッケージによって、他方では右側のリングばね91のパッケージによって形成されている。
【0095】
左側に示されたリングばね73は、このために、スピンドル区分71と入力区分72との間に配置されている。具体的には、左側に示されたリングばね73は、スピンドル区分71の、入力区分72に面した端部75で中央の収容部74内に収容されている。リングばね73は、収容部74の底面とは反対側で、接続スラストロッド77の端面76に当接している。この接続スラストロッド77も、大部分は、スピンドル区分71の収容部74内に収容されているが、接続スラストロッド77の、入力軸3の入力区分72に面した端部78は収容部74から、ひいてはスピンドル区分71の端部75から突出している。
【0096】
接続スラストロッド77により、入力軸3のスピンドル区分71は入力区分72に相対回動不能に接続されている。このために、接続スラストロッド77は、説明したように、それぞれ、スピンドル区分71の収容部74内と入力区分72の収容部79内とに収容されていて、各構成要素と互いに相対回動不能に接続されている。このために一方では、組付け状態で、スピンドル区分71における長孔81と、接続スラストロッド77におけるスピンドル側の貫通孔82(貫通孔82は、見易さのため図8にのみ示されている)との両方を貫通して延在するスピンドル側の接続ピン80が設けられている。このために、長孔81も貫通孔として形成されている。長孔81とスピンドル側の貫通孔82とは、このために、組付け状態で、互いに一致させられる。長孔81は、入力軸3の軸線に関して、スピンドル側の貫通孔82よりも大きな軸方向の延在を有している。
【0097】
接続スラストロッド77はさらに、入力区分72に面した側で、入力側の貫通孔83(貫通孔83は、見易さのため図8にのみ示されている)を有している。さらに、入力軸3の入力区分72も、組付け状態で、入力側の貫通孔83と一致させられる貫通孔84を有している。入力側の接続ピン85も、組付け状態で、貫通孔84と入力側の貫通孔83との両方を貫通して延在しているので、入力区分72と接続スラストロッド77とは互いに相対回動不能に接続されている。さらに貫通孔84と入力側の貫通孔83とは両方とも実質的に同じ直径を有しており、入力側の接続ピン85も、両構成要素を軸方向で見ても互いに形状接続的に接続するので、入力区分72と接続スラストロッド77とは、軸方向でも互いに不動に接続されている。
【0098】
上述した配置により、入力区分72とスピンドル区分71とは、スピンドル側の接続ピン80、入力側の接続ピン85、ならびに接続スラストロッド77によって、互いに相対回動不能に接続されている。この場合、両構成要素の互いに向き合う両端部の間には、すなわち、スピンドル区分71の、入力区分72に面した端部75と、入力区分72の、スピンドル区分71に面した端部86との間には、スピンドル区分71と入力区分72との間の小さな軸方向相対運動のために十分な運動遊びスペースが存在している。スピンドル側の接続ピン80が、軸方向の遊びスペースを持ってスピンドル区分71の長孔81内に収容されていることによっても、これにより接続スラストロッド77は、スピンドル区分71に対して相対的に軸方向で動くことができる。
【0099】
このような小さな軸方向相対運動は、路面側の衝撃パルスを減衰もしくは補償することができるように所定のように利用される。このために、最終的には、接続スラストロッド77の端面76に当て付けられてスピンドル区分71の収容部74内に配置されている左側に図示されたリングばね73の形態のならびにリングばね91の右側のパッケージの形態の調節可能な吸収ユニット23が機能する。調節可能な吸収ユニット23によって吸収される相対運動により、所定のように、運動エネルギが位置エネルギへと変換され、その結果、路面側の衝撃は補償される。
【0100】
さらに本提案によれば、予荷重ナット30が、別個の予荷重ユニット24として設けられている。予荷重ナット30は、接続スラストロッド77を外側から部分的に取り囲んでいる。右側に示されたリングばね91のパッケージのリングばね91は、軸方向で見て、予荷重ナット30に続いて配置されている。具体的には、右側に示されたリングばね91も、接続スラストロッド77を取り囲むように配置されている。この場合、リングばね91は、左側で、すなわち、スピンドル区分71に向かう方向で、軸方向のスラストロッド当接部31に当て付けられて配置されている。リングばね91は、右側でも、すなわち、入力区分72に向かう方向で、予荷重ナット30の軸方向の端面32に当て付けられて配置されている。すなわち、予荷重ナット30のこの軸方向の端面32は、調節可能な吸収ユニット23のリングばね91と別個の予荷重ユニット24との間の接触面を形成している。
【0101】
別個の予荷重ユニット24の部分は、図7および図8に示された実施例では、互いに係合する2つのねじ山である。すなわち、一方では、予荷重ナット30が、その外周面にねじ山33を有している(見易さのために、図8にのみ矢印で示す)。他方では、入力軸3の、内部で部分的に中空に形成されたスピンドル区分71も、ねじ山33に嵌合する対応ねじ山34を有している。これにより、第1の構成要素としての予荷重ナット30と、第2の構成要素としての入力軸3のスピンドル区分71とが互いに係合する。これにより、別個の予荷重ユニット24は、所定の予荷重力が、ねじ山33と対応ねじ山34とを介して互いに係合させられる予荷重ナット30およびスピンドル区分71の形態の両構成要素を介して調節可能に、調節可能な吸収ユニット23と協働するように構成されている。この場合、両構成要素は、本実施例では実質的に無段階に調節可能である。これにより、予荷重ナット30は、その軸方向の位置を、入力軸3のスピンドル区分71に対して、少なくとも所定の範囲で任意に変化させることができる。
【0102】
予荷重ナット30がスピンドル区分71の収容部74内にどの程度入り込んでいるか(図8では、破線矢印により示されている)、そして最終的に対応ねじ山33内にどの程度ねじ込まれているかに応じて、リングばね91の右側のパッケージは、程度のさこそあれ著しく圧縮される。
【0103】
予荷重ナット30を、対応ねじ山34においてねじ山33が再び回動しないように固定するために、この実施例で示したように、回動防止手段を設けることができる。このために、図7および図8に示された実施例では、予荷重ナットは溝35を有している。予荷重ナット30の周面における様々な個所に複数の溝を設けることもできる。回動防止のために、組付け状態で、予荷重ナット30の溝35と、入力軸3のスピンドル区分71の周面側の孔37との両方に係合する固定ピン36が設けられている(図7c)および図8を共に参照)。孔37における固定ピン36の形状接続的な収容、および同様に溝35における固定ピン36の、周方向で見て形状接続的な収容を介して、予荷重ナット30は回動に抗して固定されていて、すなわち実質的に相対回動不能にもしくは回転方向で不動に、入力軸3のスピンドル区分71に接続されている。
【0104】
軸方向で見て、予荷重ナット30は、予荷重ナット30が、接続スラストロッド77に対して軸方向で相対的に摺動可能に、内側に位置する接続スラストロッド77を取り囲むように配置されている。すなわち、予荷重ナット30は、接続スラストロッド77に対して軸方向の位置を変化させることができる。したがって、既に詳細に説明した通り、スピンドル区分71に対して予荷重ナット30の位置は軸方向および周方向で固定されているにもかかわらず、接続スラストロッド77に対する、したがって入力軸3の入力区分72に対する、入力軸3のスピンドル区分71の少なくとも小さな軸方向相対運動が可能である。軸方向の運動遊びスペースは、溝35が長孔として形成されていて、この長孔内で固定ピン36が軸方向に沿ってある程度往復運動することができることによっても得られる。
【0105】
予荷重ナット30は、その軸方向の端面32で、リングばね91の軸方向の当接面38に当接していて、リングばねを圧縮しており、したがってリングばね91の圧縮により、所望の所定の予荷重力を調節可能な吸収ユニット23に加える。
【0106】
すなわち、図7および図8に部分的に示されたパワーステアリング構成群を調整するための本提案による方法によれば、別個の予荷重ユニット24として、予荷重ナット30が、調節可能な吸収ユニット23の適切な圧縮により予荷重をかけるために、調節可能な吸収ユニット23に隣接して、具体的にはリングばね91の右側のパッケージに、特に、このリングばね91の軸方向の当接面38に隣接して設けられることが想定されている。この場合、予荷重ナット30の形態の別個の予荷重ユニット24の、ねじ山33を有する第1の構成要素と、入力軸3のスピンドル区分71の形態の、第1の構成要素に係合する、対応ねじ山34を有する第2の構成要素とが相互に回転させられることにより、所定の予荷重力が調節される。この場合、ねじ山33を対応ねじ山34内にねじ込む距離により、リングばね91の圧縮の程度が、ひいては調節された予荷重力が規定される。
【0107】
図示したパワーステアリング構成群により、有利には、路面側の衝撃が以下のように、補償される:入力軸3の入力区分72がその位置で、軸方向および半径方向で支持されている。スピンドル11に作用する衝撃は、リングばね73もしくは91のパッケージにより減衰もしくは補償される。例えば、スピンドル11が、入力区分72の方向で右に向かって動かされると、まずは、リングばね73の左側のパッケージが圧縮されて、その後この運動が最終的に接続スラストロッド77に、ひいては入力軸3の入力区分72にさらに伝達される。
【0108】
例えば、入力軸3の入力区分72の、左方向への、すなわちスピンドル区分71の方向への、または右方向への、すなわちスピンドル区分71から離れる方向への急激な運動を結果としてもたらす衝撃は、以下のように補償される:左方向への入力区分72の運動により、接続スラストロッド77も左に向かってに動かされ、これによりさらに、まずはリングばね73における左側のパッケージが圧縮され、その後、この運動がスピンドル区分71にさらに伝達される。逆に、すなわち、入力区分72が右に向かって動かされると、接続スラストロッド77も右に向かって動かされ、これにより、軸方向のスラストロッド当接部31を介してまずはリングばね91における右側のパッケージが圧縮される。その後、この運動は、予荷重ナット30の軸方向の端面32を介して、まさに予荷重ナット30へと、ひいては予荷重ナット30に堅固に接続されたスピンドル区分71にもさらに伝達される。
【0109】
最後に、外側に配置された保護スリーブ87がさらに設けられていて、この保護スリーブも、スピンドル側の貫通孔88と、入力側の貫通孔89とを有している。スピンドル側の貫通孔88は、接続スラストロッド77のスピンドル側の貫通孔82ならびにスピンドル区分71の長孔81に一致させられる。さらに、スピンドル側の接続ピン80は、保護スリーブ87のスピンドル側の貫通孔88も貫通して延在している。入力側の貫通孔89も、接続スラストロッド77の入力側の貫通孔83ならびに入力区分72における貫通孔84に一致させられる。さらに、入力側の接続ピン85は、保護スリーブ87のスピンドル側の貫通孔89も貫通して延在している。
【0110】
したがって、保護スリーブは、特に接続スラストロッド77を、そしてさらにスピンドル区分71と入力区分72との間の軸方向の自由スペースを外側から取り囲んでいる。さらに、保護スリーブは、入力軸3の、互いに分離されて形成された両構成要素、すなわち、スピンドル区分71および入力区分72の外側のガイドも提供する。
【符号の説明】
【0111】
1 ステアリングギヤ
2 (ステアリングギヤ1の)入力側
3 入力軸
4 (ステアリングギヤ1の)出力側
5 セクタ軸
6 出力軸
7 スラストロッド
8 ピットマンアーム
9 ボールジョイント
10 自動車
11 スピンドル
12 (ボール循環ナット13の)外側歯列
13 ボール循環ナット
14 (セクタ軸5の)セクタ歯列
15 ステアリングホイール
16 ステアリングレバー
17,19 (自動車10の)ホイール
18 ステアリング軸
20 ステアリングアーム
21 タイロッド
22 (自動車10の)フレーム
23 調節可能な吸収ユニット
24 予荷重ユニット
25 (ラック55の)中央の収容部
26 第1の補償ディスク
27 第2の補償ディスク
28 開口
29 (予荷重ユニット24の)端面
30 予荷重ナット
31 軸方向のスラストロッド当接部
32 (予荷重ナット30の)端面
33 ねじ山
34 対応ねじ山
35 溝
36 固定ピン
37 (スピンドル区分71の)周面側の孔
38 (リングばね91の)軸方向当接面
55 ラック
56 歯列区分
57 皿ばね
58 エラストマー
59 (カバー61の)軸方向に延在する導入区分
60 ボール
61 (ラック55内の中央の孔の)平坦面
62 カバー
63 リングエレメント
67,68 皿ばね
69 (2列の)アンギュラ玉軸受
70 (ステアリングギヤの)ケーシング
71 (入力軸3の)スピンドル区分
72 (入力軸3の)入力区分
73 リングばね
74 (スピンドル区分71の)収容部
75 (入力区分72に面した)スピンドル区分71の端部
76 (接続スラストロッド77)の端面
77 接続スラストロッド
78 (入力区分72に面した)接続スラストロッド77の端部
79 (入力区分72の)収容部
80 スピンドル側の接続ピン
81 (スピンドル区分71の)長孔
82 (接続スラストロッド77)のスピンドル側の貫通孔
83 (接続スラストロッド77)の入力側の貫通孔
84 (入力区分72の)貫通孔
85 入力側の接続ピン
86 (スピンドル区分71に面した)入力区分72の端部
87 保護スリーブ
88 (保護スリーブ)のスピンドル側の貫通孔
89 (保護スリーブ)の入力側の貫通孔
91 リングばね
図1
図2
図3a)】
図3b)】
図4
図5
図6
図7a)】
図7b)】
図7c)】
図8
【国際調査報告】