(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】測定システム用無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H04W 72/044 20230101AFI20240318BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20240318BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20240318BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20240318BHJP
【FI】
H04W72/044 110
H04W72/0453
H04W24/04
H04W4/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563166
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 GB2022050853
(87)【国際公開番号】W WO2022219305
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アンソニー スタイルズ
(72)【発明者】
【氏名】ポール アンソニー テイラー
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA43
5K067BB27
5K067CC02
5K067EE02
5K067LL11
(57)【要約】
測定システムのための周波数ホッピング無線通信モジュール(18、26)が記載されている。測定システムは、工作機械のための測定プローブ(10)及びインターフェース(20)を含み得る。 通信モジュール(18、26)は、少なくとも10の周波数チャネルを使用して無線信号を送信及び/または受信するように構成され、測定データを通信するための少なくとも計測モード及びスタンバイモードで動作することができる。スタンバイモードでの動作は、計測モードでの動作よりも少ない周波数チャネル間でホッピングすることを含む。特に、スタンバイモードでの動作は、第2のホッピングパターンに従って少なくとも10の周波数チャネルのうちの3つの間でホッピングすることを含み、前記3つの周波数チャネルは、周波数帯域の異なる3分の1からのものである。これにより、より高速な周波数ホッピング同期を実現し、バッテリ寿命を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定システム用の周波数ホッピング無線通信モジュールであって、前記通信モジュールは、周波数帯域内の少なくとも10の異なる周波数チャネルを使用して無線信号を送信及び/または受信し、少なくとも測定データを通信するための計測モード、及びスタンバイモードで動作するように構成され、前記スタンバイモードでの動作は、前記計測モードでの動作よりも少ない周波数チャネル間でホッピングすることを含み、
前記計測モードでの動作は、第1のホッピングパターンに従って前記少なくとも10の周波数チャネル間でホッピングすることを含み、
スタンバイモードでの動作は、第2のホッピングパターンに従って前記少なくとも10の周波数チャネルのうちの3つの周波数チャネル間でホッピングすることを含み、前記3つの周波数チャネルは、前記周波数帯域の異なる3分の1からのものである通信モジュール。
【請求項2】
スタンバイモードで動作するときに使用される前記3つの周波数チャネルが、前記周波数帯域にわたって間隔をあけて配置される、請求項1に記載の通信モジュール。
【請求項3】
前記第1及び第2のホッピングパターンは、一意の識別子から導出される、請求項1または2に記載の通信モジュール。
【請求項4】
前記少なくとも10の周波数チャネルが、少なくとも30の周波数チャネルを含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の通信モジュール。
【請求項5】
前記少なくとも10の周波数チャネルが、39または79の周波数チャネルを含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の通信モジュール。
【請求項6】
前記スタンバイモードで通信される情報が、前記計測モードで周波数ホッピング通信リンクを確立することを可能にする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の通信モジュール。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の周波数ホッピング無線通信モジュールと、計測データを生成するための測定センサとを含み、前記測定センサによって生成された前記計測データは、前記計測モードで動作する前記周波数ホッピング無線通信モジュールによって送信される、測定デバイス。
【請求項8】
測定データを受信し、前記測定データを関連する機械に渡すための出力を有する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の通信モジュールを備える測定インターフェース。
【請求項9】
請求項7に記載の測定デバイスと、請求項8に記載の測定インターフェースとを含む測定システム。
【請求項10】
前記第1及び第2のホッピングパターンは、初期パートナリングプロセスの間に、前記測定インターフェースによって前記測定デバイスに送信される、請求項9に記載の測定システム。
【請求項11】
前記測定デバイスの前記通信モジュールは、スタンバイモードで送信スレーブとして機能する、請求項9または10に記載の測定システム。
【請求項12】
前記測定デバイスの前記通信モジュールは、前記測定インターフェースから適切な起動メッセージを受信すると、前記スタンバイモードから前記計測モードに切り替わる、請求項11に記載の測定システム。
【請求項13】
前記測定インターフェースによって送信される前記起動メッセージは、計測モードに入ると、前記測定インターフェースと周波数ホッピング同期が確立されることを可能にする情報を含む、請求項12に記載の測定システム。
【請求項14】
前記測定デバイスの前記通信モジュールは、前記計測モードで動作するとき前記送信マスターとして機能する、請求項9ないし13のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項15】
前記測定デバイスの前記測定センサは、オブジェクトの表面上の点と所定の空間関係に到達するとトリガ信号を生成するタッチトリガセンサを含み、前記トリガ信号は、前記計測モードを使用して前記測定デバイスから前記測定インターフェースに渡される、請求項9ないし14のいずれか一項に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システムで使用するための周波数ホッピング無線通信モジュールに関する。特に、本発明は、工作機械測定プローブ及び/または関連するプローブインターフェースで使用するためのそのような周波数ホッピング無線通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
座標位置決め装置(例えば工作機械)は、多くの場合、測定デバイス、例えば、ワークピースの表面上の点の位置を測定するタッチトリガープローブを備えている。タッチトリガープローブは、表面との接触によって偏向されると、いわゆるトリガ信号を生成するスタイラスを有する。このトリガ信号は、工作機械の測定スケールの出力をフリーズ(freeze)するために使用され、それによってプローブの位置が示され、したがって、適切な較正で、ワークピースの表面上の点の位置が示される。
【0003】
特定の状況では、例えば、プローブをマシンコントローラに直接配線することが困難な場合、プローブインターフェースを介してトリガ信号をマシンコントローラに通信するために、無線伝送システムが使用される。特に、プローブとプローブインターフェースとの間で周波数ホッピングスペクトル拡散(FHSS)通信を使用することが知られている。そのような通信プロトコルは、国際公開第2004/057552号(WO2004/057552:特許文献1)に記載されており、英国、グロスターシャー州、ウォットン・アンダー・エッジのレニショウ plc(Renishaw plc)が販売する工作機械プローブの「RMP」シリーズ及び関連する「RMI」プローブインターフェースにも使用されている。同様のFHSS通信プロトコルは、レニショウ plcも販売する測定プローブのPrimoシリーズでも使用されている。
【0004】
上記のFHSSシステムは、しばしば過酷な(RF)動作環境において堅牢な通信を提供することが判明している。FHSSは通常、一度動作すると最良の選択肢であるが、低電力の「スタンバイ」(バッテリ節約)モードから計測の「動作」モードに移行する際に、通信を確立するための課題が生じる。特に、同期が確立される前は、プローブ及びインターフェースの両方は、他方がどのチャネルで動作しているかを知らない。そのため、データを首尾よく交換するために、リンクの両端(プローブ及びインターフェース)が同時に同じチャネルに到達することを確実にすることができる適切な技術を採用する必要がある。
【0005】
レニショウのRMPシステムは、1msのフレームタイムで79の個別のチャンネルで動作する。通信を確立するために、インターフェースはホッピングシーケンスの各チャネルに79ms留まり、プローブはホッピングシーケンス全体をホップしてチャネルを変更し、1msごとに送信する。これにより、少なくとも79msごとに通信の機会があることが保証される(特定のチャネルがすでに占有されていない場合)。レニショウのPrimoシステムは、フレームタイム1.024msで、79の個別のチャンネルで動作する。通信を確立するために、プローブはフレーム時間を1.2msに調整し、各フレームを送信する。最終的に、「スキュー」タイミングの違いにより、プローブとインターフェースは、同時に同じチャネルに到達し、通信を確立することができる。さらに、調整(aligned)されたチャネルがブロックされている場合、次のホップが依然として通信を確立するために利用可能である。
【0006】
RMPとPRIMOシステムはFHHS通信を確実に確立することができるが、これは最大4分の1秒かかる場合があり、その間プローブは各フレームを送信している。本発明者らは、これが時間的に非効率的であり、バッテリ消費電力の観点から望ましくなく、RF環境に輻輳を加えることを見出した。
【0007】
国際公開第2014/091202号(WO2014/091202:特許文献2)は、プローブインターフェースがプライマリモデム及びセカンダリモデムを含む、特許文献1(WO2004/057552)に記載されているFHSS技術の変形例を記載している。プライマリモデムは、第1の周波数ホッピングスペクトル拡散無線リンクを介してアクティブな測定プローブ(すなわち、測定値を取得するために使用されているプローブ)と通信するために使用される。セカンダリモデムは、異なる周波数ホッピングスペクトル拡散無線リンクを介して、その他の測定プローブデバイスと通信するために使用される。セカンダリモデムによって提供される通信リンクは、その他の測定プローブデバイスとの周波数ホッピング同期が維持されることを可能にするためにのみ使用される(すなわち、測定データはセカンダリモデムによって受信されない)。この構成は、必要な同期情報がインターフェースに既に知られているため、異なる測定プローブデバイスがプライマリモデムと共に使用されるたびに周波数ホッピング同期を確立する必要性を排除する。したがって、プライマリモデムを素早く切り替えて、異なる測定プローブデバイスと通信することが可能である。特許文献2(WO2014/091202)の技術は、周波数ホッピング同期を再確立する必要性を低減するが、バッテリ電力を消費し、定期的な伝送は、RF環境に輻輳を加える。さらに、スタンバイプローブとの通信が失われた場合(例えば、そのプローブが受信機の範囲外に移動された場合)、完全な周波数ホッピング同期が再確立されなければならない。
【0008】
周波数ホッピングシステムは、測定に特化しない、一般的な用途でも知られている。国際公開第99/60718号(WO99/60718:特許文献3)は、ハイブリッド直接シーケンス及び周波数ホッピング通信プロトコルを記載している。米国特許第4606040号明細書(US4606040:特許文献4)は、高速及び低速スキップの法則を採用する周波数ホッピングシステムを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2004/057552号
【特許文献2】国際公開第2014/091202号
【特許文献3】国際公開第99/60718号
【特許文献4】米国特許第4606040号明細書
【特許文献5】国際公開第2018/134585号
【発明の概要】
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、測定システム用の周波数ホッピング無線通信モジュールを含み、通信モジュールは、周波数帯域内の少なくとも10の異なる周波数チャネルを使用して無線信号を送信及び/または受信し、少なくとも測定データを送信するための計測モード及びスタンバイモードで動作するように構成され、スタンバイモードでの動作は、計測モードでの動作よりも少ない周波数チャネル間でホッピングすることを含み、
計測モードでの動作は、第1のホッピングパターンに従って少なくとも10の周波数チャネル間でホッピングすることを含み、
スタンバイモードでの動作は、第2のホッピングパターンに従って少なくとも10の周波数チャネルのうちの3つの間でホッピングすることを含み、3つの周波数チャネルは、周波数帯域の異なる3分の1からのものである。
【0011】
したがって、本発明は、異なるシステム構成要素間のFHSS(ワイヤレス)無線通信リンクを確立するために測定システムで使用することができる周波数ホッピングスペクトル拡散(FHSS)無線通信モジュールに関する。好ましい実施形態では、本発明の通信モジュールは、複数のバッテリ駆動の測定プローブから工作機械に物理的に接続された(hardwired)測定インターフェースへの測定データの無線通信に使用され得る。通信モジュールは、特定の周波数帯域内(例えば、2.4GHzの無線帯域にわたって拡散する)の複数の周波数チャネルを介して無線信号を送信及び/または受信する。
【0012】
通信モジュールは、少なくとも2つの異なるモード、すなわち、計測(第1の)モード及びスタンバイ(第2の)モードで動作可能である。計測モード及びスタンバイモードの両方は、周波数ホッピング通信プロトコルを実装し、したがって、使用中は、所定のホッピングパターンに従って異なる周波数チャネル間でホップする。データパケットは、そのような各周波数チャネル上で送信及び/または受信され得る。
【0013】
計測モードは、測定データの送信のために構成される。例えば、計測モードは、測定デバイスから測定インターフェースへの測定データの無線送信を可能にするように構成され得る。測定データは、例えば、測定デバイスの一部として提供される測定センサのタイプに応じて、タッチトリガイベント情報、位置測定、超音波測定、温度測定などを含み得る。したがって、計測モードは、多くの他の無線デバイスまたはRF干渉の存在下であっても、信頼性が高く堅牢な通信を確保するのに十分な周波数チャネルを使用することが好ましい。特に、計測モードは、少なくとも10の異なる周波数チャネルを使用する。したがって、計測モードでは、特許文献1(WO2004/057552)に記載されているものと同様の周波数ホッピングスキームが実装され得る。
【0014】
スタンバイモードは、測定データ伝送を意図するものではなく、代わりに、2つの通信モジュール間の周波数ホッピング同期を確立するために使用することができる。例えば、複数の測定デバイスは、それらが測定目的のために現在必要とされていないときにスタンバイモードに配置される通信モジュールを含み得る。その時、そのような各測定デバイスの通信モジュールは、関連する測定インターフェースの通信モジュールから「オン」信号を受信するのを待って、周波数チャネル間でホップし得る。
【0015】
上述したように、スタンバイモードは、周波数ホッピングを実装するが、計測モードよりも少ない周波数チャネルを使用する。特に、スタンバイモードの周波数は、3チャネル間でホップする。好ましい実施形態では、計測モードは、39チャネルまたは79チャネルの間でホップし得る。スタンバイモードで使用される周波数チャネルが少ない(すなわち、3つ)ことは、通信リンクを迅速に確立できる(これは測定システムにとって重要である)が、干渉に対して依然として強いことを意味する。例えば、通信モジュールがすべての周波数チャネルを介して1サイクルの間周期的に待ち受け(listen)する必要がある場合、3つの周波数チャネルのみが使用されるとき、より速く、より少ない電力を使用する。この省電力は、測定システムのバッテリ駆動部品にとって特に重要である。スタンバイモードは、オン命令を受信するとすぐに終了し得る。好ましい実施形態では、オン命令はまた、計測モードで周波数ホッピング同期を確立するために必要な情報を提供する。
【0016】
本発明の通信モジュールは、様々な方法で実装され得ることに留意されたい。例えば、通信モジュールは、適切に構成された回路またはプロセッサ(例えば、トランシーバなど)を含み得る。通信モジュールはまた、RFアンテナを含み得、または、関連するRFアンテナに接続可能であり得る。以下に説明するように、通信モジュールは、測定デバイス(例えば、測定プローブ)、及び/またはそのような測定デバイスと通信するためのインターフェースに組み込まれ得る。他の構成要素は、通信モジュール内に含まれ得る。
【0017】
FHSSシステムでは、いわゆるホッピングパターンは、通信に使用される周波数チャネルを、それらのチャネルが使用される順序(すなわち、それらの間でホッピングされる順序)と共に定義する。計測モードでの動作は、第1のホッピングパターンに従って周波数チャネル間でホッピングすることを含む。第1のホッピングパターンは、少なくとも10の周波数チャネルのそれぞれを含み得る。言い換えれば、すべての使用可能な周波数チャネルは、第1のホッピングパターンに含まれ得る。代替的に、すべての使用可能な周波数チャネルのサブセットのみを使用することが可能であろう。異なる第1のホッピングパターンは、異なる通信モジュールに対して使用され得る。特に、チャネルの順序は、通信衝突(communications clashes)を防止するために、異なる通信モジュールに対して異なり得る。第1のホッピングパターンは、一意の識別子から導出され得る。例えば、プローブIDまたはシリアル番号などの通信モジュールまたは測定デバイスの一意の識別子。このようにして、異なる第1のホッピングパターンが併設される(co-located)システムに使用され得、それによって、多くの異なるホッピングパターンが作成されることを可能にすることによって、隣接するシステムとの競合の可能性を低減し得る。
【0018】
スタンバイモードでの動作は、第2のホッピングパターンに従って3つの周波数チャネル間でホッピングすることを含む。上述したように、第2のホッピングパターンは、第1のホッピングパターンよりも少ないチャネルを含む。第2のホッピングパターンは、複数の周波数チャネルのサブセットを含む。言い換えれば、利用可能な周波数チャネルのうちの3つが第2のホッピングパターンを形成する。第2のホッピングパターンで使用される周波数チャネルのすべては、第1のホッピングパターンでも使用され得る。言い換えれば、スタンバイモード通信のためだけに周波数チャネルを確保する必要はない。異なる第2のホッピングパターンは、異なる通信モジュールに対して使用され得る。特に、使用されるチャネル及びチャネルの順序は、通信衝突を防止するために、異なる通信モジュールに対して異なり得る。同じ数のチャネルが、それぞれの第2のホッピングパターンで使用され得る。第2のホッピングパターンは、一意の識別子から導出され得る。例えば、プローブIDまたはシリアル番号などの通信モジュールまたは測定デバイスの一意の識別子。上記と同様の理由により、隣接するシステムとの競合の可能性が低減される。
【0019】
有利には、第2のホッピングパターンの周波数チャネルは、動作周波数帯域にわたって間隔をあけて配置される。3つの周波数チャネルは、周波数帯域の異なる3分の1から選択される。これは、特定の干渉源(例えば、Wi-Fi(登録商標)チャネル)からの任意の干渉が、周波数帯域の異なる3分の1の間をホッピングすることによって回避される可能性を高めることを確実にすることに役立つ。
【0020】
上述したように、計測モードは、信頼性が高く、堅牢な無線通信リンクを提供するために、できるだけ多くのチャネルを使用することが好ましい。したがって、計測モードでの動作は、少なくとも10、または、より好ましくは少なくとも20、またはより好ましくは少なくとも30の異なる周波数チャネルの間でホッピングすることを含む。スタンバイモードでの動作は、3つの周波数チャネル間のホッピングを含む。好ましい実施形態では、3つの周波数チャネルがスタンバイモードで使用され、39または79の周波数チャネルが計測モードで使用される。これにより、計測モードでは良好な耐障害性(resilience)を提供し、スタンバイモードでは高速な通信取得(同期)時間が提供される。スタンバイモード及び計測モードでは、異なるフレームレートが使用され得ることに留意されたい。例えば、より短いフレームレートがスタンバイモードであり得る一方で、計測モードのフレームレートは、異なるタイプのデータの通信に対応するために調整可能な長さを有し得る。
【0021】
スタンバイモードは、好ましくは、測定データの転送を伴わない2つの通信モジュール間の通信のために使用される。有利には、スタンバイモードで通信される情報は、計測モードで通信リンクを確立することを可能にする。例えば、スタンバイモードで動作するマスター通信モジュールは、同様にスタンバイモードで動作するスレーブ通信モジュールとの周波数ホッピング通信リンクを確立し得る。この通信リンクは、両方のモジュールが同期して計測モードに入ることを可能にするマスターモジュールとスレーブモジュールとの間の同期情報を渡す(pass)ために使用され得る。例えば、マスターモジュール及びスレーブモジュールのクロックを揃え(aligned)、第1のホッピングパターンの開始チャネルを指定し得る。その時、両方のモジュールは、第1のホッピングパターンに従って(すなわち、計測モードで動作する)次のフレームからホッピングを開始し、指定された周波数チャネルから開始し得る。
【0022】
本発明はまた、上述した周波数ホッピング無線通信モジュールを含む測定デバイスにも及ぶ。測定デバイスはまた、計測データを生成するための測定センサを含み得る。測定センサは、任意のタイプであり得る。例えば、寸法、位置、温度などの測定を可能にし得る。センサは、接触センサであり得(すなわち、測定されるオブジェクトに物理的に接触し得る)、または非接触センサであり得る(例えば、それは、光学的、誘導的、容量的などの検知を使用し得る)。好ましい実施形態では、測定センサは、スタイラスの偏位を測定するためのタッチトリガセンサである(すなわち、測定デバイスは、タッチトリガープローブを含む)。測定センサによって生成された計測データは、好ましくは、計測モードで動作する測定デバイスの周波数ホッピング無線通信モジュールを使用して、関連するインターフェースに送信される。
【0023】
ある所与の通信モジュールのシステムでは、周波数チャネル間の協調ホッピングを可能にするために同じホッピングパターンが使用される。上述したように、異なるシステム(すなわち、通信モジュールの異なるセット)によって使用される通信は、異なるホッピングパターンを使用して、そのようなシステムが併設されている場合の干渉の可能性を低減することが有益である。好ましい実施形態では、測定デバイスは、一意の識別子を含む。例えば、各測定デバイスには、一意の識別コードが割り当てられ得る。その時、計測モード及びスタンバイモードで使用される第1及び/または第2のホッピングパターンは、その一意のコードから導出され得る。そのような例では、一意の識別子は、測定デバイスによって、及び関連するインターフェースによって(例えば、事前プログラミングによって、または以前のペアリングプロセスを介して)知られているべきということになる。これにより、通信リンクの両端が、計測モード及びスタンバイモードでそれぞれ使用するために、同じ第1及び/または第2のホッピングパターンを導出することを可能にし得る。代替的に、1つの通信モジュールは、初期ペアリングまたはパートナリングプロセス中に、ホッピングパターンまたはパターンを他方の通信モジュールに送信し得る。例えば、測定デバイスは、関連するインターフェースから、計測モード及び/またはスタンバイモードで使用されるホッピングパターンを受信し得る。この情報の送信は、初期パートナリングプロセス中に実行され得る。
【0024】
測定デバイスは、バッテリ駆動であり得る。したがって、測定デバイスがバッテリ寿命を最大化するために可能な限り少ない電力を使用することが有利である。したがって、測定デバイスの通信モジュールは、起動メッセージ(activation message)が関連する測定インターフェースから受信されるまで、(チャネル間をホッピングしながら)受動的に情報を受信するように構成され得る。起動メッセージを受動的に待ち受けている(listening)ときに使用されるフレームレートは、関連する測定インターフェースのフレームレートよりも大きくし得る。特に、測定デバイスによって使用される各フレームの期間は、関連する測定インターフェースが各周波数チャネルを一巡(例えば、第2のホッピングパターンを一巡)するのにかかる時間に少なくとも等しいように設定され得る。起動メッセージが受信されると、測定デバイスは、(例えば、起動メッセージの受信を確認するために)情報を測定インターフェースに送信し得る。
【0025】
測定デバイスの通信モジュールは、送信マスターまたは送信スレーブとして機能し得る。計測モード及びスタンバイモードは、通信リンクを制御するために異なる送信マスターを使用し得る。好ましくは、測定デバイスの通信モジュールは、スタンバイモードで送信スレーブとして機能する。その結果、関連する測定インターフェースの通信モジュールは、送信マスターとして機能し得る。上述のように、測定デバイスの通信モジュールは、起動メッセージが測定インターフェースから受信されるまで、第2のホッピングパターンに従って周波数チャネル間をホッピングしながら、受動的に信号を受信し得る。その時、測定デバイスの通信モジュールは、関連する測定インターフェースから適切な起動メッセージを受信すると、スタンバイモードから計測モードに切り替えられ得る。起動メッセージは、計測モードに入る際に関連するインターフェースとの周波数ホッピング同期を確立することを可能にする情報を含み得る。計測モードに入ると、測定デバイスの通信モジュールは、送信マスターとして機能し得る(すなわち、測定インターフェースが送信スレーブになる)。これは、測定デバイスが非同期測定イベントから情報を送信する必要がある場合に特に有利である。
【0026】
また、通信プロトコルは、干渉などによるメッセージの非受信から保護するための冗長性(例えば、再送信など)を備えた適切な確認応答のシーケンスを含み得ることに留意されたい。
【0027】
好ましい実施形態では、測定デバイスの測定センサは、タッチトリガセンサを含む。タッチトリガセンサは、オブジェクトの表面上の点と所定(certain)の空間関係に到達するとトリガ信号を生成し得る。例えば、トリガ信号は、スタイラスが偏位されたときに生成され得る。測定プローブは、工作機械用であり得る。このトリガ信号は、通信モジュールが計測モードで動作しているときに関連するインターフェースに通信され得る。測定プローブはまた、スタイラス、シャンク、及びバッテリのうちの少なくとも1つを含み得る。そのようなトリガ信号(または任意の測定データ)の送信は、スタンバイモードで動作するときには不可能であってもよい。測定デバイスは、複数の測定センサ(例えば、タッチトリガセンサ及び温度センサ)を含み得る。
【0028】
本発明は、また、上述した通信モジュールを含む測定インターフェースにも及ぶ。測定インターフェースは、関連する機械に物理的に接続され得る(すなわち、バッテリ駆動ではない)。例えば、測定インターフェースは、工作機械コントローラに接続(物理的に接続)され得る。有利には、測定インターフェースは、複数の関連する測定デバイスと通信するためのものである。測定インターフェースは、関連する測定デバイスから受信された測定データを関連する機械(例えば、工作機械または産業用PCなど)に渡すための出力または複数の出力を有し得る。測定インターフェースは、異なるタイプの測定データのための複数の異なる出力を含み得る。アナログプローブデータは、イーサネット(登録商標)または産業用イーサネットリンクを介して処理するために産業用PCに渡され得る。タッチトリガセンサによって生成されたトリガ信号は、リアルタイムリンクを介してインターフェースから工作機械コントローラに直接渡され得る。例えば、そのようなタッチトリガ信号は、コントローラのSKIP入力に接続されたラインの電圧をラッチすることによって、またはSKIP入力に渡されるパルスまたは一連のパルスを生成することによって出力され得る。トリガ信号は、代替的に、デジタルデータバスを介してコントローラ30に渡され得る(例えば、国際公開第2018/134585号(WO2018/134585:特許文献5)に記載されているように)。
【0029】
測定インターフェースの通信モジュールは、送信マスターまたは送信スレーブとして機能し得る。計測モード及びスタンバイモードは、通信リンクを制御するために異なる送信マスターを使用し得る。好ましくは、測定インターフェースの通信モジュールは、スタンバイモードで送信マスターとして機能する。したがって、関連する測定デバイスの通信モジュールは、スタンバイモードで送信スレーブとして機能し得る。測定インターフェースは、スタンバイモードで動作するとき、必要な測定デバイスについてのオン命令またはメッセージを送信し得る。このオンまたは起動命令は、それらのスタンバイモードで動作している複数の測定デバイスからの1つの測定デバイスに固有のものであり得る。したがって、測定インターフェースは、オンにされる測定デバイスのために第2のホッピングパターンを使用する。オンメッセージは、また、起動される測定デバイスについての情報を含むヘッダを含み得る(例えば、プローブIDを含み得る)。測定インターフェースの通信モジュールは、また、起動された測定デバイスから確認応答を受信するように構成され得る。オンメッセージが正常に送信されると、測定インターフェースの通信モジュールは、計測モードに入り得る。オンメッセージは、計測モードに入る際に関連する測定デバイスとの周波数ホッピング同期を確立することを可能にする情報を含み得る。計測モードに入ると、測定インターフェースの通信モジュールは、送信スレーブとして機能し得る(すなわち、測定デバイスが送信マスターになる)。
【0030】
測定インターフェースは、第2のホッピングパターンを格納するメモリを含み得る。測定インターフェース及び複数の関連する測定デバイスのそれぞれは、同じ第2のホッピングパターンを格納し得る。代替的に、複数の関連する測定デバイスのそれぞれは、異なる第2のホッピングパターンを格納し得、測定インターフェースは、第2のホッピングパターンのそれぞれを格納し得る。このようにして、複数の関連する測定デバイスのうちの任意の選択された1つを起動させ、計測モードに入ることができ、それによって測定データ通信を可能にする。メモリはまた、第1のホッピングパターンを格納し得る。測定インターフェース及び複数の関連する測定デバイスのそれぞれは、同じ第1のホッピングパターンを格納し得る。代替的に、複数の関連する測定デバイスのそれぞれは、異なる第1のホッピングパターンを格納し得、測定インターフェースは、第1のホッピングパターンのそれぞれを格納し得る。格納されたホッピングパターンは、(例えば、製造中に)事前に計算され得る。ホッピングパターンは、例えば、モジュールとは別に生成された後に、モジュールにロードされ得る。一実施形態では、第1及び/または第2のホッピングパターンは、測定インターフェースによって格納され得、初期パートナリングまたはペアリングプロセス中に関連する測定デバイスに通信され得る。代替的に、モジュールは、ホッピングパターンを計算するためのプロセッサを含む。ホッピングパターンは、一度計算され、次いで、将来の使用のためにメモリに格納され得る。代替的に、ホッピングパターンは、それが必要とされるたびに(例えば、電源投入時に)計算され得る。
【0031】
本発明はまた、1つまたは複数の測定デバイス(すなわち、測定デバイスまたは複数の測定デバイス)及び測定インターフェースを含む測定システムにも及ぶ。測定システムの各構成要素(すなわち、各測定デバイス及び測定インターフェース)は、本発明の通信モジュールを含み得る。レガシー通信プロトコルも、そのような構成要素に提供され得る。好ましい実施形態では、測定システムは、工作機械上で使用するためのものである。
【0032】
測定デバイス及び測定インターフェースに関連して上述したように、測定システムの第1及び第2のホッピングパターンは、初期パートナリングプロセス中に測定インターフェースによって測定デバイスに送信され得る。測定デバイスの通信モジュールは、スタンバイモードで送信スレーブとして機能し得る。測定デバイスの通信モジュールは、測定インターフェースから適切な起動メッセージを受信すると、スタンバイモードから計測モードに切り替えられ得る。測定インターフェースによって送信される起動メッセージは、計測モードに入ると測定インターフェースとの周波数ホッピング同期が確立されることを可能にする情報を含み得る。測定デバイスの通信モジュールは、計測モードで動作するときに送信マスターとして機能し得る。測定デバイスの測定センサは、オブジェクトの表面上の点との所定の空間関係(certain spatial relationship)に到達するとトリガ信号を生成するタッチトリガセンサを含み得、トリガ信号は、計測モードを使用して測定デバイスから測定インターフェースに渡される。
【0033】
通信モジュールによって使用される複数の周波数チャネルは、2.4GHz無線周波数帯域内(2.4000-2.4835GHzにわたる)の周波数チャネルを含み得る。これは、産業、科学、医療(ISM )バンドとしても知られており、ほとんどの国でライセンスフリーである。各周波数チャネルは、2MHz幅であり得るが、いかなる送信も、各チャネルの周波数範囲の一部にわたってのみであり得ることに留意されたい。好ましい実施形態では、2.404GHzから2.480GHzにわたる39チャネル(それぞれ2MHz幅)が提供される。
【0034】
本発明は、任意の無線周波数帯域で使用され得、ISM帯域動作に限定されないことに留意されたい。好ましくは、モジュールは、標準的なライセンスフリーの無線周波数帯域で動作するように構成される。そのような周波数帯域は、規制ルールに応じて、国ごとに、または時間の経過とともに変化し得るが、これは本発明に関連する利点を変更しないことに留意されたい。また、通信モジュールは、正式な連邦通信委員会(FCC)の定義に従って、FHSSシステムではなく、デジタル伝送システム(DTS)またはハイブリッドシステムとして分類され得ることに留意すべきである。
【0035】
通信モジュールは、任意の適切な方法で形成され得る。例えば、モジュールは、測定プローブ内及び/または測定プローブインターフェース内に取り付けるための回路基板(例えば、FPGAモジュール)として形成され得る。回路基板は、周波数ホッピング通信につながる、または他のプロセスのための他の機能を実装し得る。モジュールはまた、特許文献1(WO2004/057552)に記載されている特徴のうちのいずれか1つまたは複数を含み得る。
【0036】
また、本明細書に記載されるのは、複数の周波数チャネルを使用して無線信号を送信及び/または受信するための周波数ホッピング無線通信モジュールであり、通信モジュールは、少なくとも第1のモード及び第2のモードで動作可能であり、第2のモードは、第1のモードよりも少ない周波数チャネル間でホッピングすることを含む。モジュールは、測定または任意の他の目的のために使用され得る。
【0037】
また、本明細書に記載されるのは、測定データの通信のために周波数ホッピング無線通信モジュールを使用する方法である。方法は、複数の周波数チャネルを使用して無線信号を送信及び/または受信するステップを含む。方法は、少なくとも、測定データを通信するための計測モード、及びスタンバイモードで動作するステップをさらに含む。スタンバイモードで動作するステップは、計測モードで動作するステップよりも少ない周波数チャネル間でホッピングすることを含み得る。方法は、類似の装置について上述した特徴のうちのいずれか1つまたは複数を含み得る。
【0038】
また、本明細書に記載されるのは、測定データを生成するための測定センサと、複数の周波数チャネルを使用して無線信号を送信及び/または受信し、少なくとも測定データを通信するための計測モード、及びスタンバイモードで動作するように構成された周波数ホッピング無線通信モジュールとを含む測定デバイスであって、スタンバイモードでの動作は、測定モードでの動作よりも少ない周波数チャネル間でホッピングすることを含む測定デバイスである。測定デバイスは、上述した特徴のうちのいずれか1つまたは複数を有し得る。
【0039】
また、本明細書で記載されるのは、複数の周波数チャネルを使用して無線信号を送信及び/または受信し、少なくとも測定データを通信するための計測モード、及びスタンバイモードで動作するように構成された通信モジュールを含む測定インターフェースであって、スタンバイモードでの動作は、計測モードでの動作よりも少ない周波数チャネル間でホッピングすることを含み、測定インターフェースはまた、関連する測定デバイスから受信した測定データを関連する機械に渡すための出力(または複数の出力)を含む、測定インターフェースである。キットは、測定インターフェースを含み、測定プローブも提供され得る。
【0040】
また、本明細書に記載されるのは、測定システム用の周波数ホッピング無線通信モジュールであって、通信モジュールは、複数の周波数チャネルを使用して無線信号を送信及び/または受信し、少なくとも測定データを通信するための計測モード、及びスタンバイモードで動作するように構成され、スタンバイモードでの動作は、計測モードでの動作よりも少ない周波数チャネル間でホッピングすることを含む測定システム用の周波数ホッピング無線通信モジュールである。スタンバイモードでの動作は、10以下、より好ましくは5以下、またはより好ましくは3以下の周波数チャネル間でホッピングすることを含む。そのような周波数ホッピング無線通信モジュールは、上述した特徴のうちのいずれか1つまたは複数を有し得る。
【0041】
つぎに、添付の図面を参照して、単に一例としてのみ本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、工作機械測定プローブ及びプローブインターフェースを示す図である。
【
図2A】
図2Aは、(従来技術の)周波数ホッピングパターンを示す図である。
【
図2B】
図2Bは、(従来技術の)周波数ホッピングパターンを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1(計測モード)及び第2(スタンバイモード)のホッピングパターンを示す図である。
【
図4】
図4は、スタンバイモードでの通信の確立を示す図である。
【
図5】
図5は、スタンバイモード通信から計測モード通信への即時の成功した移行を示す図である。
【
図6】
図6は、スタンバイから計測モード通信への移行にどのように信頼性を組み込むことができるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、工作機械のスピンドル12に取り付けられたタッチトリガ測定プローブ10を示している。測定プローブ10は、ワークピースと接触する先端16を備える偏位可能なスタイラス14を有する。測定プローブは、典型的には測定プローブの本体内に統合されるが、わかりやすくするために
図1において別々に示す第1の周波数ホッピング無線通信モジュール18も含む。測定プローブインターフェース20は、工作機械構造の固定部品22に取り付けられ、工作機械コントローラ24に(典型的にはケーブルを介して)接続される。測定プローブインターフェース20は、また、第2の周波数ホッピング無線通信モジュール26を含む。
【0044】
データは、第1の周波数ホッピング無線通信モジュール18と第2の周波数ホッピング無線通信モジュール26との間に確立された周波数ホッピング無線通信リンクを介して、測定プローブ10とプローブインターフェース20との間で送信される。上述したように、第1及び第2の周波数ホッピング無線通信モジュールは、通信リンクが確立されることを可能にするために、同期した周波数チャネル間でホップする必要がある。様々な異なる周波数チャネルが使用されるシーケンスは、通常「ホッピングパターン」と呼ばれる。したがって、ホッピングパターンは、異なる周波数チャネルが使用される順序を記述し、無線リンクの両端が同じ時点で同じ周波数チャネルで送受信していることを(適切な同期の後に)保証する。言い換えれば、ホッピングパターンは、異なる周波数チャネル間の「ホッピング」のシーケンスを記述する。ホッピングパターンはまた、通信に使用される周波数チャネルのセットを定義する。
【0045】
以下により詳細に説明されるように、本発明は、異なるホッピングパターンを用いる計測モード及びスタンバイモードを使用することを対象とする。したがって、同期された周波数ホッピングを確実にするために通信タイミングがどのように確立されるか、及びデータの再送信を可能にすることによって、測定プローブからプローブインターフェースへの測定データの通信の信頼性をどのように向上させることができるかなどの、システムの追加の詳細は、本明細書においてはいかなる詳細も説明されない。そのような特徴のさらなる詳細については、特許文献1(WO2004/057552)を参照し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
図2A及び
図2Bを参照すると、上記の特許文献1(WO2004/057552)に記載されているタイプの無線プローブ及びプローブインターフェースシステムのための単一のホッピングパターンがどのように確立されるかが示されている。
【0047】
周波数ホッピング無線システムは、2.4GHzの周波数帯域内の79個の離散周波数チャネルを使用して動作する。周波数チャネルは、便宜上、チャネル1から79まで順次番号付けされており、周波数チャネル1が最低周波数であり、周波数チャネル79が最高周波数である。
図2Aに示されるように、周波数チャネルはすべて、約1MHzの同じ幅を有する。
図2Aは、図示を簡略化するために、チャネルの一部のみを示していることに留意されたい。
【0048】
インクリメント値は、測定プローブのプローブ識別コード(「プローブIDコード」)のデータビットのセットから生成される。したがって、このプローブIDコードは、測定プローブの一意の識別子である。その時、ホッピングパターンは、シーケンスにおける次のチャネルを確立するために、インクリメント値(例えば、整数「I」)を現在のチャネルに加算することによって計算される。たとえば、Iは4という値を取り得る。
図2Aを見ればわかるように、ホッピングパターンの第1の周波数チャネルはチャネル1であり、次はチャネル5であり、次はチャネル9などである。シーケンスはまた、
図2Aに示される例では、チャネル2がチャネル77の後に続くように、それ自身に折り返す(wrap back)。インクリメント値(この場合は4)が78回適用された後、すべての周波数チャネルが使用される。さらに、79が素数であるため、どのチャネルもホッピングパターンに2回以上含まれない。したがって、Iの値に関係なく、79個のチャネルすべてがホッピングパターンに一度だけ含まれることがわかる。特許文献1(WO2004/057552)に記載されている技術の代替として、上記のRMI/RMP製品のバージョンは、アルゴリズムを使用し、一意のデータ(プローブ識別コードなど)を共有して、ランダム化(シャッフル)されたホッピングパターンを生成する。
【0049】
図2Bは、
図2Aを参照して説明した方法を使用して導出されるホッピングパターンの開始を示す。上述したように、完全なホッピングパターンは、インクリメント値(I)によって決定される順序で79のチャネルすべてを含む。その時、このホッピングパターンは、測定プローブとインターフェースとの間のすべての通信で使用される。タイミング同期が失われた場合、通信が可能になる前に再確立しなければならない。79の個々のチャネルを介した通信は、1msのフレーム時間(すなわち、チャネル上で送信または受信する時間)で実行される。通信を確立または再確立するために、インターフェースはホッピングシーケンスの各チャネルに79ms留まり、プローブはホッピングシーケンス全体をホップして1msごとにチャネルを変更し、送信する。これにより、少なくとも79msごとに通信の機会があることが保証される(特定のチャネルがすでに占有されていない場合)。実際には、通信を確立するのに最大0.25秒かかることがわかっており、この間、プローブはすべてのフレームで送信している。これは時間的に非効率的であり、バッテリ消費電力からは望ましくない。また、RF環境の輻輳を増やす。
【0050】
周波数ホッピング通信リンクの確立をスピードアップするために、固定チャネルシステムを使用して通信プロセスを開始することが可能であろう。しかしながら、固定チャネルシステムには多くの潜在的な欠点がある。これらには、併設システムの必要な計画と調整、及び干渉とマルチパスの影響に対する耐性の欠如が含まれる。しかしながら、プローブとインターフェースの両方が同じチャネル上にあるため、通信同期が高速になる利点がある。Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)は、このような固定チャネルアプローチを使用して通信を開始する。特に、いわゆる「アドバータイズチャネル(advertising channels)」として3つのチャネルを確保している。これらの3つのチャネルは、BLEプロトコルによって事前に定義され、WIFI(登録商標)干渉を回避するために、無線スペクトル上で互いに間隔をあけて配置される。固定チャネル通信は、順番に各チャネルで繰り返され、完全なBluetooth(すなわち、FHSS)通信リンクを確立することを可能にする情報は、各固定チャネルを介して提供される。
【0051】
次に
図3から
図6を参照すると、本発明の通信プロトコルが説明される。
【0052】
本発明の通信リンクは、計測モード及びスタンバイモードで動作可能である。これらの異なるモードは、異なるホッピングパターンを使用し、スタンバイモードのホッピングパターンは、数個の(すなわち、3つの)周波数チャネルのみを含む。計測モードのホッピングパターンは、すべての利用可能な周波数チャネルを含み得、これらの周波数チャネルは、従来技術のシステムと同様の方法で(例えば、プローブIDコードに基づいて)順序付けされ得、または適切な(例えば、シャッフル)アルゴリズムを使用して事前に導出され得る。スタンバイモードの3つのサブチャネルはまた、プローブとインターフェースが一緒に組み合わされるときにプローブとインターフェースとの間で交換される一意のデータ(例えば、プローブIDコード)から抽出され得、または、事前に定義され得る。一実施形態では、ホッピングパターンは、初期パートナリングプロセス中に、インターフェースからプローブに(または、その逆に)渡され得る。3つのサブチャネルを導出するために使用されるプロセスまたはアルゴリズムは、好ましくは、スタンバイモードで使用される3つのチャネルのそれぞれが利用可能な帯域の異なる3分の1からのものであることを確実にする。これにより、干渉が3つのチャネルのうちの1つに存在する場合、他の2つのチャネルは、代わりにこれらのチャネルで通信を行うことができるように十分な間隔があることを確実にする。また、3つのチャネルの波長を十分に異なるように強制することによって、マルチパス問題にも対処している。
【0053】
最初に
図3を参照すると、図面の最上段に、
図2A及び
図2Bを参照して上述した方法で選択された順序の39チャネルを含む第1のホッピングパターンが示されている。また、3つのチャネル(「スタンバイチャネル」と表示された)のみを含む第2のホッピングパターンも示されている。
【0054】
次に
図4を参照して、スタンバイモードのときの通信リンクを確立することについて説明する。特に、スタンバイ中、測定プローブ及びプローブインターフェースの両方は、0.25ミリ秒のフレーム時間周期で3つのサブチャネル(すなわち、この例ではチャネル4、23及び35)上でのみ動作する(すなわち、それらの間をジャンプする)。プローブが計測動作に必要な場合(すなわち、計測モードでの動作が測定データを通信するために必要な場合)、プローブインターフェースは、3つのチャネルのそれぞれで「開始」要求ビーコンを順番に送信する。インターフェースによって採用されたこの周波数チャネルのシーケンスは、
図4の最上段に示されている。この期間中のプローブは、次へホップする前に、4つのフレーム期間(すなわち、1ms)の間、同じ3つの個々のチャネルのそれぞれに留まっている。プローブによって採用された周波数チャネルのシーケンスは、
図4の最下段に示されている。
【0055】
したがって、周波数チャネル上の通信のうちの少なくとも1つが受信されたと仮定すると、通信が3ms以内に確立されることがわかる。これは、全体的な電流消費(プローブ内の)に利益をもたらす、大幅に短くなる「オン時間」を表し、その結果、クラスをリードするバッテリ寿命を可能にする。いったん通信が確立されると、プローブとインターフェースの両方が0.5msのフレーム時間に切り替わり、プローブが通信マスターとして機能する、帯域全体にわたる周波数ホッピング通信に戻る。言い換えれば、いったん通信がスタンバイモードで確立されると、データは、計測モード(すなわち、第1のホッピングパターンに従ってすべての周波数チャネル間にホッピングがある場合)で通信を可能にするインターフェースとプローブとの間で渡される。
【0056】
この配置は、スタンバイプローブが、動作を開始するかどうかを決定するために不要な照会スキャンを行うことによって、RF環境を汚染しないという利点を有する。さらに、プローブのオン時間が大幅に短縮され、マシンのサイクルタイムを短縮できる。3つのサブチャネルは、好ましくは、マシンごとに異なることが好ましく、これは、異なるマシンから同時に複数のプローブをオンにしようとするときの通信衝突を防止するのに役立つ。さらに、プローブは非常に短時間しか受信しないため、バッテリ寿命が大幅に改善される。
【0057】
図5を参照すると、スタンバイモード中の通信の正常な受信と、計測モードへの移行が示されている。特に、インターフェース及びプローブは、第1のタイムスロット中に周波数チャネル4を介して通信することが分かる。通信は双方向であり、プローブがメッセージを受信し、それがインターフェースによって安全に受信されたという確認を送信することを含む。インターフェースからプローブによって受信されたメッセージは、特定のチャネル(この例ではチャネル10)上のメイン動作バンドに移動するようにそれに指示し、それによってプローブはまた、送信スレーブから送信マスターに移行する。その時、プローブ及びインターフェースは、第1の周波数ホッピングパターンを使用してチャネル間で同期してホップする。すなわち、計測モードでの通信は、スタンバイモードで交換された情報を使用して確立される。
【0058】
次に
図6を参照すると、送信されたメッセージへの応答がインターフェースによって受信されることを保証することは不可能であり、プローブへの元のメッセージが失われたか、または応答だけであるかを確実にすることが不可能であることを覚えておくべきである。したがって、通信の堅牢性がどのように確実なものとなるかの例が提供される。
【0059】
図6は、インターフェースによって使用される周波数チャネルと、プローブの対応する周波数チャネルを示している。チャネル4上のインターフェースによる第1の送信がプローブによって受信されない場合、インターフェースは、第2のホッピングパターンの周波数チャネルを循環し続ける。プローブ及びインターフェースの両方がチャネル23上にあるとき、送信はプローブによって受信されるが、プローブの応答はインターフェースによって受信されないことがわかる。したがって、プローブは、指示された開始チャネル(チャネル34)にジャンプし、第1のホッピングパターンを通してホッピングを開始する(すなわち、プローブは計測モードに入る)が、インターフェースは依然として第2のホッピングパターンを循環している。
【0060】
指示された開始チャネル(
図6の最上段に示される)は、第1のホッピングパターンに従って変化する。特に、各後続のオンメッセージは、プローブが計測モードでメインバンドを通ってホッピングするかのように動作を開始するように要求されているチャネルをインクリメントする。インターフェースが、第2のホッピングパターンを所定の回数循環した後に測定プローブとの通信を確立できない場合、プローブは計測モードに入ったに違いないと仮定する。しかしながら、インターフェースは、プローブが先行するスロットのいずれかの間に計測モードに入った場合に第1のホッピングパターンに従うことになるため、プローブが動作するチャネルを知っている。したがって、インターフェースは、最新の目的地チャネル(この例ではチャネル1)にジャンプして、プローブがその周波数チャネル上でアクティブであるかどうかを確認する。特に、オンメッセージを送信するすべての試みがインターフェースによって送信された後、それはまた、動作ホッピングシーケンスの次のチャネル上の送信スレーブとして計測モードに移行する(すなわち、プローブがそれらのいずれかを受信した場合、チャネルはオン送信ごとに対して更新されたため、プローブ及びインターフェースはメインバンド上で同期されたままである)。
【0061】
上記の例は、測定プローブ及びプローブインターフェースに関するが、同じ周波数ホッピング無線通信モジュールを他の測定デバイスで使用することができる。同様に、79または39の周波数チャネルの使用、及び2.4GHz無線帯域における動作は、単なる例として提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。また、測定プローブ及びプローブインターフェースの周波数ホッピング無線通信モジュールは、同じホッピングパターンを共有すべきであるが、そのようなモジュールがすべての態様で完全に同一である必要はないことに留意されたい。例えば、1つまたはすべてのモジュールは、特許文献1(WO2004/057552号に記載されている他の特徴を含み得る。
【国際調査報告】