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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-26
(54)【発明の名称】計測無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
H04L7/00 250
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563167
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 GB2022050855
(87)【国際公開番号】W WO2022219307
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】21168397.4
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アンソニー スタイルズ
(72)【発明者】
【氏名】ポール アンソニー テイラー
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA03
5K047BB01
5K047GG10
(57)【要約】
第1のクロックを有する測定ステーション(10)と第2のクロックを有するインターフェースステーション(20)とを備える周波数ホッピング無線通信システムが説明される。測定プローブの一部を形成し得る測定ステーション(10)は測定イベントから生じる測定情報を送信するように構成され、測定情報は測定イベントを第1のクロックに関連付けるタイミング情報を含む。インターフェースステーション(20)は測定ステーション(10)から測定情報を受信して第2のクロックに対して定義されるタイミング情報を含む測定アウトプットを生成するように構成される。第1と第2のクロックのうちの一方はマスタークロックとして指定され、第1と第2のクロックのうちの他方の定期的なクロック調整が実行されて指定されたマスタークロックとの同期を維持する。インターフェースステーション(20)によって生成される測定アウトプットのタイミング情報は測定イベントの発生と測定アウトプットの生成との間に適用される任意の定期的なクロック調整を斟酌する。この方法でジッタが減少し、計測の業績が改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロックを有する測定ステーションと、第2のクロックを有するインターフェースステーションとを備える周波数ホッピング無線通信システムであって、
前記測定ステーションは、測定イベントから生じる測定情報を送信するように構成され、前記測定情報は、前記測定イベントを前記第1のクロックに関連付けるタイミング情報を含み、
前記インターフェースステーションは、前記測定情報を前記測定ステーションから受信して、前記第2のクロックに対して定義されるタイミング情報を含む測定アウトプットを生成するように構成され、および
前記第1のクロックおよび第2のクロックのうちの一方はマスタークロックとして指定されて、前記第1のクロックおよび前記第2のクロックのうちの他方の定期的なクロック調整が、前記指定されたマスタークロックとの同期を維持するために実行され、
前記インターフェースステーションによって生成される前記測定アウトプットの前記タイミング情報は、前記測定イベントの前記発生と、前記測定アウトプットの前記生成との間で適用される任意の前記定期的なクロック調整を斟酌することを特徴とする、周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項2】
前記測定ステーションによって送信される前記測定情報が、前記第1のクロックによって定義される前記時間に対してタイムスタンプされる、請求項1に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項3】
前記測定ステーションは、一連のフレームを使用して情報を前記インターフェースステーションに送信し、および前記測定情報は、送信されたフレームの前記エッジに対して時間を定義するようにタイムスタンプされる、請求項2に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項4】
前記第1のクロックおよび前記第2のクロックのそれぞれはクロックカウントを生成し、前記第1のクロックおよび前記第2のクロックのうちの一方はマスタークロックとして指定されて、前記定期的なクロック調整が、前記第1のクロックおよび前記第2のクロックのうちの前記他方の前記クロックカウントをインクリメントすること、またはデクリメントすることを備えて、指定された前記マスタークロックとの同期を維持する、先行するいずれかの請求項に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項5】
前記定期的なクロック調整は、前記測定ステーションと、前記インターフェースステーションとの間での、タイミング情報を含むメッセージの前記交換を備える、先行するいずれかの請求項に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項6】
前記定期的なクロック調整は規則的な間隔で実行される、先行するいずれかの請求項に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項7】
前記第2のクロックは前記マスタークロックであって、前記定期的なクロック調整は、前記第1のクロックを調整して、前記第2のクロックと同期した状態を保つことを備える、先行するいずれかの請求項に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項8】
前記測定ステーションは測定デバイスの一部として提供され、前記測定デバイスは、測定センサーもまた含む、先行するいずれかの請求項に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項9】
前記測定センサーはタッチトリガーセンサーを備える、請求項8に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項10】
前記測定イベントは、前記タッチトリガーセンサーによって感知されたタッチトリガーイベントを含む、請求項9に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項11】
前記インターフェースステーションによって生成された前記測定アウトプットは、トリガー信号を備える、請求項10に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項12】
前記測定イベントは非同期の測定イベントを含む、先行するいずれかの請求項に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項13】
前記プローブステーションによって記録された前記非同期の測定イベントと、前記インターフェースステーションによる前記測定アウトプットの前記生成との間の前記遅延は、前記測定イベントと、前記測定アウトプットの前記生成との間で適用される任意の定期的なクロック調整によって影響を受けない、請求項12に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項14】
前記測定ステーションおよび前記プローブステーションは、前記同じホッピングパターンを用いて動作する周波数ホッピングスペクトラム拡散モデムを備える、先行するいずれかの請求項に記載の周波数ホッピング無線通信システム。
【請求項15】
第1のクロックを有する測定ステーションと、第2のクロックを有するインターフェースステーションとを備える周波数ホッピング無線通信システムを使用する方法であって、前記方法は、
測定情報を前記測定ステーションから前記インターフェースステーションに送信するステップであって、前記測定ステーションによって送信される前記測定情報は、測定イベントから生じて前記測定イベントを前記第1のクロックに関連付けるタイミング情報を含む、ステップと、
前記測定情報を前記インターフェースステーションで受信して、前記第2のクロックに関連したタイミング情報を含む測定アウトプットを生成するステップと、
前記第1のクロックおよび第2のクロックのうちの一方をマスタークロックとして指定して、前記第1のクロックおよび前記第2のクロックのうちの他方を定期的に調整して指定された前記マスタークロックとの同期を維持するステップと
を備え、
前記インターフェースステーションによって生成される前記測定アウトプットの前記タイミング情報を生成するとき、前記測定イベントおよび前記測定アウトプットの前記生成の間で適用される任意の定期的なクロック調整を斟酌することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定ステーションおよびインターフェースステーションを備える周波数ホッピング無線通信システムに関する。特に、本発明は、工作機械測定プローブから、関連するプローブインターフェースに計測(測定)データを渡すための周波数ホッピング無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
座標位置決め装置(例えば工作機械)は、測定デバイスをしばしば備え付けられており、例えば加工物の表面上の点の位置を測定するタッチトリガープローブがある。タッチトリガープローブはスタイラスを有し、スタイラスは表面との接触によって偏向する場合、いわゆるトリガー信号を生成する。このトリガー信号は、工作機械の測定スケールの出力を静止するために使用され、それによってプローブの位置を示し、結果として適切な較正をしながら加工物の表面上の点の位置を示す。
【0003】
特定の状況では、例えば、プローブをマシンコントローラに直接配線することが困難な場合、無線伝送システムが使用されてプローブインターフェースを介してトリガー信号をマシンコントローラに対して通信する。特に、プローブとプローブインターフェースとの間で周波数ホッピングスペクトラム拡散(FHSS)通信リンクを用いることが知られている。そのような通信プロトコルは、特許文献1に記載されており、英国、グロスターシャー州ウォットン・アンダー・エッジのレニショウ plcによって販売される工作機械プローブの「RMP」シリーズ、および関連する「RMI」プローブインターフェースにもまた使用されている。同様のFHSS通信プロトコルは、レニショウ plcによってもまた販売されている測定プローブのPrimoシリーズでもまた使用される。上記のFHSSシステムは、しばしば厳しい(RF)動作環境において堅牢な通信を提供することがわかっている。
【0004】
周波数ホッピング通信リンクは、伝送が行われるかどうかにかかわらず、リンクのそれぞれの端部における2つのステーション間で厳密な同期を維持することに依存する。これは、所定のホッピングパターンに従って、2つのステーションが周波数チャネル間で確実に一緒に(すなわち、同期して)ホッピングするようにするためである。そのような周波数チャネルの同期の維持は、測定プローブ、関連するインターフェース間で送信されるトリガーイベント情報などのタイムクリティカル情報を中継するシステムにとって特に重要である。例えば、上述したRMI/RMPシステムでは、インターフェースに提供されるクロックの定期的な調整があって、プローブのマスタークロックとの同期を維持する。
【0005】
しかしながら、本発明者らは、上述したリアルタイムクロック調整プロセスが、トリガー信号などの非同期の測定イベント(asynchronous measurement event)を通信するときに特に、FHSS通信システムの計測精度に影響を与える可能性があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/057552号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2018/134585号パンフレット
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、周波数ホッピング無線通信システムが提供され、第1のクロックを有する測定ステーションと、第2のクロックを有するインターフェースステーションとを備え、
測定ステーションは、測定イベントから生じる測定情報を送信するように構成され、測定情報は、測定イベントを第1のクロックに関連付けるタイミング情報を含み、
インターフェースステーションは、測定情報を測定ステーションから受信して、第2のクロックに対して定義されるタイミング情報を含む測定アウトプットを生成するように構成されて、
第1のクロックおよび第2のクロックのうちの一方はマスタークロックとして指定されて、第1のクロックおよび第2のクロックのうちの他方定期的なクロック調整が、指定されたマスタークロックとの同期を維持するために実行され、
インターフェースステーションによって生成される測定アウトプットのタイミング情報は、測定イベントの発生および測定アウトプットの生成の間で適用される任意の定期的なクロック調整を斟酌することを特徴とする。
【0008】
したがって、本発明は、ワイヤレス(FHSS)無線通信リンクが、測定ステーション(例えば、電池式の測定デバイスの一部として提供される)と、インターフェースステーション(例えば、工作機械に配線で接続されている測定インターフェースの一部として提供される)との間に設けられる周波数ホッピングスペクトラム拡散(FHSS)無線通信システムに関連する。測定ステーションおよびインターフェースステーションの両方は、それぞれ第1のクロックおよび第2のクロックと呼ばれる、測定ステーションおよびインターフェースステーション独自のクロックを含む。以下に説明されるように、第1のクロックおよび第2のクロックは発振器を含んでもよく、同じ名目間隔で一連のクロックパルスを出力するように配置されてもよい。
【0009】
測定ステーションは、測定イベントから生じる測定情報を送信するように構成される。例えば、測定ステーションは、タッチトリガーセンサーによって生成されるタッチトリガーイベントに関する情報を送信し得る。測定情報はまたタイミング情報を含みもし、タイミング情報は、第1のクロックから得られたタイミングに測定イベントをリンクさせる。タイミング情報はデータ(例えば、時間値)として提供されてもよく、および/またはタイミング情報は送信されたメッセージ内で符号化されてもよい(例えば、送信されたフレームのエッジは、第1のクロックに同期されてもよい)。以下に説明される好ましい実施形態では、タイミング情報は、フレーム内で(例えば、そのフレームの開始エッジに関連して)測定イベントが発生した時間を定義するクロックカウントを含む。
【0010】
インターフェースステーションは、測定ステーションから測定情報を受信するように構成される。言い換えれば、インターフェースステーションは、測定ステーションによって(すなわち、FHSSリンクを介して)送信された測定情報を受信するように配置される。インターフェースステーションはまた、第2のクロックに対して定義されたタイミング情報を含む測定アウトプットを生成するように構成されもする。言い換えれば、測定アウトプット(例えば、トリガー信号)は、インターフェースステーションから関連装置(例えば、工作機械)に特定の時間に出力される。インターフェースステーションは、インターフェースステーション自身のクロック(すなわち、第2のクロック)に関連するすべてのイベントの時間を測定し、それゆえに、測定アウトプットは、第2のクロックに対して定義された時間に行われる。
【0011】
上述されたように、測定ステーションおよびインターフェースステーションは、必然的に異なるクロックを使用する。そのようなクロックは名目上同一であるかもしれないが、典型的には、長期間にわたって完全に同期された状態を保つクロックを提供することは非現実的であるか、または不可能である。したがって、周波数ホッピング同期を維持するために、第1のクロックおよび第2のクロックは、定期的に整合または同期される必要がある。これを達成するために、第1のクロックおよび第2のクロックのうちの一方は、マスタークロックとして指定される(すなわち、すべてのシステムタイミングは、このマスタークロックに結び付けられる)。次いで、第1のクロックおよび第2のクロックのうちの他方について定期的なクロック調整が実行されて、指定されたマスタークロックとの同期を維持する。以下に説明されるように、この同期は、測定ステーションとインターフェースステーションとの間で定期的にタイミングメッセージを送信することによって実行されることができる。これらのタイミングメッセージは、規則的な間隔または不規則な間隔で送信され得る。したがって、FHSS通信リンクが測定ステーションとインターフェースステーションとの間で確立されている間に、複数のそのようなタイミングメッセージが送信されることが可能である。そのようなタイミングメッセージは、第1のクロックおよび第2のクロックのリアルタイム同期が維持されることを可能にする。このことは、測定ステーションおよびインターフェースステーションの周波数ホッピングが同期された状態を保つことを確実にし、それによって、さもなければ周波数ホッピング同期が徐々に失われることを引き起こし得るクロックドリフトを防ぐ。クロック同期のこの維持は「オンザフライ(on the fly)」で実行され、すなわち、通信リンクが測定ステーションからインターフェースステーションに測定情報を送信するために使用されている間に、定期的な同期について実行されることができる。
【0012】
上記のような従来技術のFHSSシステムでは、クロックの定期的な同期は、同期された周波数ホッピングを通信リンクの両端で維持するために実行される。しかしながら、測定ステーションからインターフェースステーションへ測定情報を通信することと同時に、またはほぼ同時にそのようなクロック同期ステップを実行することは、計測誤差をもたらす可能性があることが本発明者によってわかっている。言い換えれば、適用されたクロック補正は、測定アウトプットを生成するときに斟酌されない(すなわち、その効果は無視される)。例えば、クロック同期を維持するために第1のクロックカウントをアップまたはダウンさせるようナッジする(nudge)ことは、第1のクロックに対して測定された時間を、第2のクロックに対して測定された時間に誤って変換することにつながる可能性がある(すなわち、クロックカウントへのナッジは、タイミングエラーとして現れるタイミング差をもたらす)。
【0013】
したがって、本発明のシステムは、測定アウトプットが生成されるべき時間(第2のクロックに関連する)を計算するときに、クロック同期を維持するために使用された任意のタイミング変更を斟酌する(すなわち、使用または組み込む)。したがって、インターフェースステーションによって生成された測定アウトプットのタイミング情報が、測定イベントの発生と、測定アウトプットの生成との間に適用される任意の定期的なクロック調整を斟酌する。言い換えれば、測定イベントの発生と、測定アウトプットの生成との間に適用される任意の定期的なクロック調整は、インターフェースステーションによって生成される測定アウトプットのタイミング情報に組み込まれる。したがって、適用される任意のタイミング変化は、測定アウトプットが生成されるべき時間(第2のクロックに関連する)を計算するときに、インターフェースステーションによって算入される。このことは、適用されたタイミング変化を考慮するために、測定アウトプットが生成される時間(第2のクロックに関連する)を補正すると考えられ得る。このようにして、クロック同期は、測定精度を低下させることなくリアルタイムで維持される。
【0014】
有利なこととして、測定ステーションによって送信される測定情報は、第1のクロックによって定義される時間に関連してタイムスタンプされる。例えば、測定情報は、特定の測定イベントがいつ発生したかを定義する時間値(第1のクロックによって定義される)を含み得る。したがって、タイムスタンプは時間を定義するデータを含み得る。好ましい実施形態では、測定ステーションは、一連のフレームを使用してインターフェースステーションに情報を送信し、インターフェースステーションは、同様の一連のフレームを使用して動作する。フレームのそれぞれは、測定ステーションおよびインターフェースステーションの両方に知られている、周期的に繰り返すホッピングパターンまたはシーケンスに従って、周波数チャネルを割り当てられ得る。したがって、測定情報は、測定ステーションによってタイムスタンプされて、フレームのエッジに対する時間を定義し得る。例えば、250μsフレームは、クロックから250カウントに細分化され得る。そのような例では、測定情報に関連付けられたタイムスタンプは、測定イベントが発生した間でのカウント(すなわち、0と249との間の数値として)を定義し得る。
【0015】
有利なこととして、第1のクロックおよび第2のクロックはそれぞれ、クロックカウントを生成する。例えば、クロックのそれぞれは、クロックカウント値をインクリメントする発振器を含み得る。そのようなクロックカウント値は、周期的であり得る。第1のクロックおよび第2のクロックのうちの一方は、マスタークロックとして指定され得る。次いで、定期的なクロック調整は、指定されたマスタークロックとの同期(すなわち、クロックカウントの)を維持するために、第1のクロックおよび第2のクロックのうちの他方のクロックカウントをインクリメント、またはデクリメントすることを含み得る。このようにして、測定ステーションおよびプローブステーションは、互いに調整(同期)された一連のクロックカウントを生成し得る。フレームは、複数のそのようなクロックカウントによって定義され得(例えば、複数のそのようなクロックカウントは、250マイクロ秒フレームを定義する、継続時間1マイクロ秒の250クロックカウントであり得る)、したがって、そのようなフレームのエッジもまた同期された状態を保つ。したがって、システムは、第1のクロックおよび第2のクロックが1ミリ秒以内、より好ましくは250マイクロ秒(μs)以内、より好ましくは100マイクロ秒(μs)以内、またはより好ましくは10マイクロ秒(μs)以内に同期されることを可能にし得る。
【0016】
定期的なクロック調整は、任意の適切な方法で実行され得る。好都合なことに、定期的なクロック調整は、測定ステーションとインターフェースステーションとの間での、タイミング情報を含むメッセージの交換を備える。例えば、測定ステーションは、測定ステーションの現在のクロックカウント値をインターフェースステーションに送信し得る。あるいは、測定ステーションは、測定ステーションの(第1の)クロックによって定義される特定の時間(またはクロックカウント)にメッセージを送信し得る。インターフェースステーションは、プローブステーションからの送信を受信し、インターフェースステーションの(第2の)クロックによって定義された時間内に受信されるメッセージによって提供される、タイミング情報を比較し得る。このことは、第1のクロックと第2のクロックとの間で、任意のカウントの差が決定されることを可能にするであろう。任意のタイミング(例えば、カウント)の差を規定した後、次いで、インターフェースステーションは、プローブステーションの第1のクロックを修正してその差を取り除くようにプローブステーションに指示し得る。例えば、プローブステーションは、フレームにクロックカウントを追加する命令、またはフレーム内のクロックカウントをスキップする命令を受信して、第1のクロックのカウントおよび第2のクロックのカウントの同期を回復することができるだろう。
【0017】
定期的なクロック調整は、例えば、オンデマンドで、またはメッセージ(例えば、測定情報を伝達する)がプローブとインターフェースステーションとの間で交換されるときに、不規則な間隔で実行され得る。定期的なクロック調整は、規則的な(定期的な)間隔で実行されることが好ましい。このことは、プローブとインターフェースステーションとによって他のメッセージが交換されていないときですら、同期が維持されることを保証する。任意の規則的なクロック調整に加えて、(例えば、測定情報を伝えるときに)アドホックなクロック調整(ad hoc clock adjustments)もまた実行され得る。したがって、複数のそのようなクロック調整が実行され得る。
【0018】
第1のクロックまたは第2のクロックは、システムタイミングのためのマスタークロックとして使用され得る。有利なこととして、第2のクロックはマスタークロックであり、定期的なクロック調整は、第1のクロックが第2のクロックと同期された状態を保つように調整することを備える。したがって、マスタークロックは、インターフェースステーションに提供される(第2の)クロックであり得る。第2のクロックはまた、インターフェースステーションが接続されている装置など、システムの他の構成要素のタイミングを定義するために使用される場合もある。
【0019】
有利なこととして、測定ステーションは、測定デバイスの一部として提供され得る。測定デバイスはまた、測定センサーを含み得る。測定センサーは、計測データを生成し得る。測定センサーは、任意の種類であり得る。例えば、測定センサーは、タッチトリガーセンサー、走査センサー、超音波センサー、または撮像センサーのうちの少なくとも1つを含み得る。測定センサーは、寸法、位置、温度などの測定を可能にし得る。測定センサーは、接触センサーであり得(すなわち、測定センサーは、測定されるオブジェクトに物理的に接触し得る)、または測定センサーは、非接触センサーであり得る(例えば、非接触センサーは、光学的感知、誘導性感知、容量性感知などを用い得る)。
【0020】
好ましい実施形態では、測定デバイスの測定センサーは、タッチトリガーセンサーを含む。タッチトリガーセンサーは、オブジェクトの表面上の点と特定の空間的関係に至ったときにトリガーイベントを感知し得る。例えば、スタイラスが偏向するときにトリガーイベントが感知され得る。測定デバイスは、工作機械の測定プローブとして提供され得る。測定デバイスは電池式であり得る。したがって、測定デバイスが、可能な限り少ない電力を使用して電池寿命を最大化することが有利となる。測定プローブはまた、スタイラス、シャンク、および電池のうちの少なくとも1つを含む場合もある。
【0021】
測定ステーションによって送信される測定情報は、タッチトリガーセンサによって感知されるタッチトリガーイベントに関連し得る。そのようなタッチトリガー測定イベントは、任意の時点で発生し得る。インターフェースステーションによって生成された測定アウトプットは、トリガー信号を含み得る。例えば、そのようなタッチトリガー信号は、コントローラのスキップ入力に接続されたラインの電圧をラッチすることによって、またはスキップ入力に渡されるパルスあるいはスキップ入力に渡される一連のパルスを生成することによって出力され得る。あるいは、トリガー信号は、デジタルデータバスを介してコントローラに渡され得る(例えば、特許文献2に記載されているように)。したがって、測定イベントは、非同期の測定イベントを含み得る。言い換えれば、測定は特定の時間に記録されないが、代わりに、測定イベントは定義されていない時点(例えば、スタイラスがオブジェクトに接触するとき)で発生する可能性がある。したがって、そのような測定イベントが発生する時間は、オブジェクトの表面上の点の位置を測定するために使用されることができる。したがって、プローブステーションによって記録されている非同期の測定イベントと、インターフェースステーションによる測定アウトプットの生成との間の遅延は、測定イベントと、測定アウトプットの生成との間に適用される任意の定期的なクロック調整によって影響を受けないことが望ましい。言い換えれば、システムの待ち時間は、定期的なクロック調整プロセスによる影響を受けないことが望ましい。
【0022】
プローブとインターフェースステーションとの間の通信リンクは、双方向通信リンクであることが望ましい。プローブステーションおよびインターフェースステーションは、望ましくは、特定の周波数帯域にわたって(例えば、2.4GHz無線帯域にわたって)拡散する複数の周波数チャネルを介して、無線信号を送信することと受信することとの両方を行うことが望ましい。次いで、データパケットは、指定された周波数チャネル上のフレームのそれぞれの間で送受信され得る。プローブステーションおよびインターフェースステーションは、複数の異なるモードで動作可能であり得る。例えば、異なるフレームレートを使用する複数の通信モードが実装され得る。複数の異なるホッピングパターンもまた使用され得る。例えば、インターフェースステーションは、異なるホッピングパターンを使用して、異なる測定ステーションと通信し得る。しかしながら、互いに通信するプローブステーションおよびインターフェースステーションの両方が、ホッピング同期を維持するために同じホッピングパターンを使用する必要があることを覚えておくべきである。言い換えれば、測定ステーションおよびプローブステーションは、同じホッピングパターンを使用して動作する周波数ホッピングスペクトラム拡散モデムを備えるのが望ましい。アクティブ化メッセージが測定ステーションから受信されるまで、測定ステーションが(チャネル間をホッピングしながら)受動的に情報を受信する取得モードもまた実装され得る。
【0023】
プローブステーションおよびインターフェースステーションは、様々な方法で実装される通信モジュールを含み得る。例えば、そのような通信モジュールは、適切に構成された回路またはプロセッサを含み得る。通信モジュールはまた、RFアンテナを含んでもよく、または関連するRFアンテナに接続可能であってもよい。通信モジュールはまた、ホッピングパターンを(例えば、一意の識別子から)計算するためのプロセッサを含み得る。通信モジュールは、測定プローブ内部および/または測定プローブインターフェース内に取り付けるための回路基板(例えば、FPGA)として形成され得る。回路基板は、周波数ホッピング通信に接続された他の機能、または他のプロセスのための他の機能を実装し得る。他の構成要素は、プローブステーションまたはインターフェースステーション内に含まれ得る。
【0024】
システムによって使用される複数の周波数チャネルは、2.4GHz無線周波数帯域内(2.4000-2.4835GHzにわたる)の周波数チャネルを含み得る。これは、産業科学医療用(ISM)バンドとしてもまた公知であって、ほとんどの国でライセンスフリーである。周波数チャネルのそれぞれは、2MHz幅であり得るが、任意の送信は、チャネルのそれぞれの周波数範囲の一部にわたってでのみあり得ることに留意されたい。好ましい実施形態では、2.404GHzから2.480GHzにわたる39チャネルが提供される(それぞれ2MHz幅)。本発明は、任意の無線周波数帯域で使用され得、ISM帯域動作に限定されないことに留意されたい。システムは、標準的なライセンスフリーの無線周波数帯域で動作するように構成されるのが望ましい。そのような周波数帯域は規制ルールに応じて、国ごとに、または時間の経過とともに変化し得るが、このことは本発明に関連する利点を変更しないことに留意されたい。周波数ホッピング無線通信システムおよびその構成要素は、連邦通信委員会(FCC)の公式な定義により、FHSSシステムではなく、デジタル伝送システム(DTS)またはハイブリッドシステムとして分類され得ることにもまた留意すべきである。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、第1のクロックを有する測定ステーションと、第2のクロックを有するインターフェースステーションとを備える周波数ホッピング無線通信システムを使用する方法が提供され、方法は、測定情報を測定ステーションからインターフェースステーションに送信するステップであって、測定ステーションによって送信される測定情報は、測定イベントから生じて測定イベントを第1のクロックに関連付けるタイミング情報を含むステップと、測定情報をインターフェースステーションで受信して、第2のクロックに関連したタイミング情報を含む測定アウトプットを生成するステップと、第1のクロックおよび第2のクロックのうちの一方をマスタークロックとして指定して、第1のクロックおよび第2のクロックのうちの他方を定期的に調整して指定されたマスタークロックとの同期を維持するステップとを備え、インターフェースステーションによって生成される測定アウトプットのタイミング情報を生成するとき、測定イベントおよび測定アウトプットの生成の間で適用される任意の定期的なクロック調整を斟酌することを特徴とする。言い換えれば、方法は、測定アウトプットのタイミング情報(すなわち、インターフェースステーションによって生成される)に組み込み、測定イベントの発生と測定アウトプットの生成との間に適用される任意の定期的なクロック調整のステップを含み得る。方法はまた関係する装置に関連して、上記の任意の特徴を含んでもよい。
【0026】
本明細書では、周波数ホッピング無線通信システムについてもまた説明される。システムは、測定ステーションを備え得る。測定ステーションは、第1のクロックを有し得る。システムは、インターフェースステーションを備え得る。インターフェースステーションは、第2のクロックを有し得る。測定ステーションは、測定イベント(例えば、タッチトリガーイベント)から生じる測定情報を送信するように構成され得る。測定情報は、測定イベントを第1のクロックに関連付けるタイミング情報を含み得る。インターフェースステーションは、測定ステーションから測定情報を受信するように構成され得る。インターフェースステーションは、測定イベントを第2のクロックに関連付けるタイミング情報を含む測定アウトプットを生成するように構成され得る。第1のクロックおよび第2のクロックのうちの一方は、マスタークロックとして指定される場合があり、第1のクロックおよび第2のクロックのうちの他方の定期的なクロック調整が、指定されたマスタークロックとの同期を維持するために実行され得る。インターフェースステーションによって生成された測定アウトプットのタイミング情報が、測定イベントの発生と、測定アウトプットの生成との間に適用される任意の定期的なクロック調整を斟酌し得る。言い換えれば、クロック調整を斟酌するタイミング補正が実装され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
ここで、添付の図面を参照して、単なる例示の目的で本発明が説明される。
【0028】
図1】工作機械測定プローブおよびプローブインターフェースを説明する図である。
図2】フレームのクロックカウントを示す図である。
図3】プローブのクロックおよびインターフェースのクロックがドリフトする可能性と、これが定期的に補正される方法を説明する図である
図4】プローブによって測定されたトリガーイベントが使用されてインターフェースからのトリガーアウトプットを生成する方法を示す図である
図5】トリガーアウトプットを生成するときに、クロックドリフトの補正が斟酌されることができる方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初に図1を参照すると、工作機械のスピンドル12に取り付けられたタッチトリガー測定プローブ10が説明されている。測定プローブ10は、加工物と接触する先端16を持つ偏位可能なスタイラス14を有する。測定プローブは、通常は測定プローブの本体内に統合されるであろう第1の周波数ホッピング無線通信モジュールまたはステーション18もまた含むが、わかりやすくするために図1においては別々に示されている。測定プローブインターフェース20は、工作機械構造の固定部品22に取り付けられて、工作機械コントローラ24に(通常はケーブルを介して)接続される。測定プローブインターフェース20はまた、第2の周波数ホッピング無線通信モジュールまたはステーション26を含む。
【0030】
データは、第1の周波数ホッピング無線通信モジュール18と第2の周波数ホッピング無線通信モジュール26との間に確立された周波数ホッピング無線通信リンクを介して、測定プローブ10とプローブインターフェース20との間で送信される。上記のように、第1の周波数ホッピング無線通信モジュールおよび第2の周波数ホッピング無線通信モジュールは、通信リンクが確立されることを可能にするために、同期した周波数チャネル間でホッピングする必要がある。様々な異なる周波数チャネルが使用されるシーケンスは、通常「ホッピングパターン」と呼ばれる。従来技術のシステムでは、ホッピングパターンは、異なる周波数チャネルがいつも使用される規則、または異なる周波数チャネルがいつも使用されるシーケンスを説明し、適切な同期の後、無線リンクの両端が確実に同じ時点で同じ周波数チャネルで送受信している(両端が同じフレームレートを使用すると仮定している)ようにするために使用される。言い換えれば、ホッピングパターンは、異なる周波数チャネル間の「ホッピング」のシーケンスを説明する。さらなる情報については特許文献1が参照され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
周波数ホッピングシステムでは、リンクの両端(すなわち、プローブステーションおよびインターフェースステーション)は、厳密な同期を維持する必要がある。あるフレームが次のフレームへ進む(rolls over)につれて、リンクの両端は、伝送が行われるかどうかにかかわらず、ホッピングシーケンスまたはホッピングパターンの次のチャネルに変わる。このことは、リンクの両端が、正しいチャネル上で正しい時間にデータパケットを作成して受信する準備ができることを可能にする。
【0032】
図2を参照すると、プローブステーションの複数のフレーム(F1からF8)が示されている。情報を送受信するために使用される周波数チャネルは、いわゆるホッピングパターンに従って、フレームごとに変更される。この例では、フレームのそれぞれは250マイクロ秒(μs)の継続時間を有する。このフレームの継続時間は、1マイクロ秒(μs)の間隔で0から249までカウントするプローブ内のクロックを使用して時間を決められる。図2への挿入図に示されるように、プローブのクロックによって生成された250カウントは、フレームのそれぞれを定義する。クロックカウントの0は、フレームの開始を定義し、クロックカウントの249は、そのフレームの最後のカウントである。したがって、クロックカウントは、次のフレームの開始のためにゼロにリセットされる前に、0から249までインクリメントする。
【0033】
プローブおよび関連するインターフェースが周波数ホッピングリンクを介して通信している上記のシステムでは、プローブおよびインターフェース内に異なるクロックが存在する。クロック信号を提供するために電子回路で使用されるほとんどの発振器は、特定の定義された条件下で特徴付けられる。これらの定義された動作パラメータでは、発振器は、発振器デバイスごとに異なる許容値(すなわち、理想的な動作周波数からの許容偏差)を有する。定義された条件からの任意の偏差、動作温度のそのような偏差は、発振周波数の差につながる。ユニットの一方が他方と異なる温度となるようにプローブおよびインターフェースが使用される場合、発振周波数の差はさらにより顕著になる。発振器で使用される水晶発振素子はまた、時間がたつにつれて発振周波数が変化(ドリフト)する傾向もある。これはエージングとして公知である。したがって、長年のサービス後でさえも最高度の計測精度に影響が与えられないように、水晶発振素子のドリフトに耐性があるが、動作中にそれを補償することもできるシステムを設計する必要がある。
【0034】
図3を参照すると、プローブおよびインターフェース内にもたらされた、クロックの発振周波数の非常に小さな差の影響が説明されている。プローブのフレームF1~F9が、インターフェースの対応するフレームF1'~F9’と共に示されている。おおよそ時間的に整合しているが、図3への挿入図は、プローブとインターフェースクロックとの間のドリフトが、矢印36によって示される時間だけフレームF2およびF2’の開始を、わずかにずらしたことを示す。このわずかなフレームのずれは、データの通信に影響を与える可能性は低いが、このわずかなフレームのずれは、プローブのフレームと、インターフェースのフレームとがもはや整合しなくなるまで経時的に増加(蓄積)するおそれがあり、その時、プローブおよびインターフェースはもはや同じ周波数チャネルを一緒に使用しておらず(すなわち、周波数ホッピング同期が失われるだろう)、通信は失敗するであろう。
【0035】
クロックドリフトのこの問題は、上記の従来技術の周波数ホッピングシステムで前もって対処されている。特に、プローブとインターフェースとの間(図3では38と標記されている)に定期的な伝送があって、クロックを再同期することが公知となっている。簡単に言えば、プローブは、フレーム内の特定のカウントでメッセージを送信し得る。例えば、プローブは、特定のフレーム内でカウント74でステータスメッセージを送信し得る。インターフェースはこのメッセージを読み取って、プローブのクロックカウントをインターフェース自身のカウントと比較し得る。カウントが異なる場合、インターフェースは、プローブがプローブのクロックカウントを調整して、プローブのクロックカウントをインターフェースのクロックのカウントと同期させるように伝えるメッセージをプローブに返信し得る。例えば、インターフェースは、プローブに次のフレームまでの特定の数のカウントをスキップする、または追加するように伝えて、必要なクロックの再調整を提供する
【0036】
より具体的な例を考慮すると、プローブは、(フレームレートに関係なく)32ミリ秒(ms)ごとに1回、いわゆるハートビートメッセージを、プローブの関連しているインターフェースに送信し得る。メッセージが見落とされた場合、プローブはすべてのフレームを再試行する。インターフェースは、以下の2つのこと、すなわち(a)プローブによって送信されたメッセージがインターフェースによって受信されること、または(b)63ミリ秒(ms)がハートビートメッセージなしで経過し、その場合にインターフェースがエラーを出力することのうちの1つが発生するまで待機する。エラーを出力した後、インターフェースは、再接続するプローブの検索を開始する(すなわち、インターフェースは最初から通信リンクを確立することを試みる)。
【0037】
そのような例に対して、したがって、2つの周期発振器間の最大許容ドリフトは後者の場合の(b)で発生する。このドリフトを計算するには、プローブとインターフェースとの両方でモデムを駆動するために使用される水晶発振素子についてのいくつかの詳細な情報を使用する。例えば、発振周波数は32MHzであって、較正公差は±15ppmである。-20℃~85℃の温度範囲にわたる周波数安定性は±15ppmであって、エージングの影響は±3ppm/年未満である。最悪の場合のシナリオが考慮される場合、以下の、すなわち、(i)プローブおよびインターフェースは、較正公差の対極にあること、(ii)プローブおよびインターフェースは使用可能な温度範囲の対極にあること、および(iii)これは、周波数安定性の範囲の対極にあることと相互に関連があること、という仮定がなされることができる。さらに、(iv)プローブとインターフェースとは両方とも5年前のものであって、最悪の場合のシナリオに従って互いに相対する方向にエージングする。
【0038】
上記のすべてを考慮すると、この例では全ての単一のクロックサイクル上の2つのクロック間で、約2.8ピコ秒(ps)のドリフトが発生する。補正(調整)の間に発生する可能性のあるクロックサイクルの最大数が約200万サイクルであると仮定すると、その時発生した可能性のあるドリフトの量は約5.67マイクロ秒(μs)となる。このドリフトは、プローブが古くなるにつれて悪化し、10年経過したプローブでは最大7.56マイクロ秒(μs)になることもあり得る。
【0039】
上記のこれまでのRMI/RMPおよびPrimo計測プローブシステムは、フレームタイミングおよび堅牢な通信を維持するために、そのようなクロックドリフトを調整するだろう。しかし、これまでのRMI/RMPおよびPrimo計測プローブシステムのわずかな調整は、計測点が近くで、または同時に発生した場合に補償がされなかった。本発明者らは、このことがジッタとして、すなわち、測定位置のわずかな差として現れるスイッチング時間のわずかな変動として現れることがわかっている。最も反復可能で正確なシステムを実現するために、本発明は、計測点が生じるときの任意のタイミング調整を補償する。おおよそ、そして他の効果を無視して、このことは計測イベントのタイミング精度を約20倍向上させることがわかっている。このことは、これからより詳細に説明される。
【0040】
図4を参照すると、上記のプローブおよびインターフェースを使用したタッチトリガー点を集めたものが説明される。上記で概説されたように、プローブとインターフェースとは、一連のフレームを共に巡らせる(cycle through)。図4では、プローブフレームF1~F14は、インターフェースフレームF1'~ F14’と整合して示されている。
【0041】
プローブは、任意の時点でトリガーイベントを感知し得る。この例では、トリガーイベント40は、フレームF2の間に発生する。トリガーイベントの検出時のフレームF2内(すなわち、プローブのクロックを使用して測定される)のクロックカウントが記録される。正確なタッチトリガー測定プロセスは、トリガーイベントが発生した後の特定の(不変の)時間に常にトリガー信号を出すインターフェースに依存する。この例では、トリガー信号44は、インターフェースのフレームF13’の間にインターフェースによって出されている。トリガーイベント40とトリガー信号44との間の遅延(または待ち時間)は、図4において「tlatency」と標記される。
【0042】
トリガーイベントに関する情報は、メッセージの交換によってプローブとインターフェースの間で渡される。例えば、フレームF4では、プローブは、測定イベントが検出され、測定イベントがフレームF2内の特定のクロックカウントで発生したことをインターフェースに通知するメッセージ42を送信し得る。このメッセージは、イベントが発生した後の数フレームである場合があって、特定の周波数チャネル上の通信が失敗した場合(例えば、干渉のため)にメッセージを複数回再送信するオプションがあり得る。インターフェースは、このメッセージの受信を認識することができる(すなわち、プローブは、このメッセージが安全に受信されたことを知る)。次いで、インターフェースは、メッセージ内の情報に作用することができる。次いで、特にインターフェースは、フレームと、トリガーイベントが発生した間に関連付けられたそのフレーム内のクロックカウントとを知る。このことは、トリガー信号44が出されるために必要な時間(すなわち、フレームおよびそのフレーム内のクロックカウント)をインターフェースが計算することを可能にする(すなわち、トリガー信号44が出されるために必要な時間が、トリガーイベントに対するtlatencyの分だけ確実に遅延するようにする)。
【0043】
上記のことは、プローブのクロックおよびインターフェースのクロックが同期されていることに依存する(すなわち、インターフェースは、プローブのクロックのタイミングをそれ自身(インターフェース)のクロックに対するタイミングにマッピングする必要があるためである)。したがって、プローブの状態(すなわち、タッチポイント)の変化が、同期されたフレームエッジの開始に対するタイムスタンプとして送信されるため、プローブおよびインターフェースで使用されるクロックの精度が、システムの最高度の計測能力に直接影響を持つことについて理解されることができる。
【0044】
クロック同期を維持するためのクロック調整は従来使用されていたが、そのような従来技術の技法は、トリガーイベント情報の通信とは別個にクロック同期を扱った。言い換えれば、クロック調整(すなわち、同期)プロセスは、トリガーイベントの通信に対して任意の時点で発生する可能性があった(そのようなトリガーイベントは、任意の時に発生し得る非同期イベントである)。したがって、計測点が記録される時刻に、または計測点が記録される時刻の前後にクロックタイミングの変化がある可能性があった。したがって、クロック調整プロセスは、待ち時間にエラーを加えることが分かっていて、エラーはトリガー信号にジッタとして現れた。これまで詳細に説明されたように、本発明では、トリガー信号を生成するときに任意のクロック調整を考慮に入れることによって、このエラー源を除去する。
【0045】
次に図5を参照すると、プローブからインターフェース(RMI-QEとも呼ばれる)にタッチトリガーイベントを通信するときに、クロック調整およびドリフトを考慮に入れるための技術が説明される。
【0046】
上記で説明されたように、計測システムの目的は、プローブがトリガーを受信した後、RMI-QEのスキップまたはステータス出力(すなわち、インターフェースから出力されるトリガー信号)を固定の待ち時間にアサートすることである。待ち時間はできるだけ短くて、非常に低いジッタを有さなければならない。待ち時間は図にtLATENCYとして示され、この例では2.5ミリ秒(ms)である。
【0047】
プローブおよびインターフェースの両方のフレームタイマーは250マイクロ秒(μs)で動作しているため、2.5ミリ秒(ms)の待ち時間に10フレームある。このことは、トリガーに1フレーム、送信がスケジュールされることを可能にする1「ハウスキーピング(housekeeping)」フレーム、メッセージを送信するための1フレーム、および再試行のための7フレームを可能にする。
【0048】
この例では、プローブは、最初に通常の定期的なメッセージをRMI-QEインターフェースに送信する。プローブからの定期的なメッセージは、常にフレーム内の特定のオフセット(tPROBE_SEND)で送信される。この例では、オフセットは、74マイクロ秒(μs)である。RMI-QEモデム(インターフェース)は、75マイクロ秒の終わりに近づくにつれてこのメッセージを受信し、RMI-QEモデムは、プローブが-1μsの差でずれたことを計算して、2つのフレームタイマーを同期させるために-1μs(tADJUST)の調整を適用する必要がある。RMI-QEは数マイクロ秒後に調整メッセージをプローブに送信してプローブが調整を適用し、この調整は次のフレームの終わりに効力を生じる。
【0049】
次のフレームの終わりに近づくにつれて、トリガーが受信される(tTRIGGER)。これはフレーム内の247マイクロ秒(μs)で示されている。RMI-QEのフレームタイマーとフレーム長を一致させるためのフレーム長の調整はまだ実施されていないことに留意されたい。ジッタを減少させるため、トリガーはプローブのフレームタイマー上247マイクロ秒(μs)で発生したが、RMI-QEはRMI-QE自身のフレームタイマー上249マイクロ秒(μs)でトリガーが発生したことを計算する必要があることが図から明らかである。
【0050】
トリガーが発生した後、2番目のフレームでは、プローブはタイムスタンプ(tTRIGGER)と、プローブが適用した調整(tADJUST)と、RMI-QEについてのモデムに対する再試行回数とを送信する。この例では、プローブのフレームタイマーがドリフトしているため、プローブのフレームタイマーが再び75マイクロ秒にずれ、その結果、RMI-QEは、プローブが1マイクロ秒(μs)の差でずれた(tDRIFT)ことを計算する。
【0051】
トリガーイベント後およびイベント確認応答がRMI-QEインターフェースから受信される前に、フレームタイマー調整がフレームに適用されないことが望ましいことに留意されたい。例えば、トリガーイベントが、プローブの調整する値を含む定期的なメッセージと同じフレームで発生した場合、調整は適用されるべきでない。代わりに、インターフェースは、インターフェースがイベントメッセージを受信したときに必要なドリフト補償を計算し、これは待ち時間を補正するために使用される。
【0052】
イベントメッセージへの確認応答はプローブの調整値を含んでおり、したがって、プローブの調整値は、プローブのクロックを補正するために用いられることができる。そのうちフレームにおいて、シリアル周辺インターフェース(SPI)の間隔(我々の例では225μs)にモデムはこのすべての情報をRMI-QEインターフェースのFPGAに返信する。
送信される情報は以下の通りとなる。
TRIGGER =247
ADJUST =‐1
DRIFT =‐1
RETRIES =0
【0053】
FPGAはこのデータを受信した後、FPGAがスキップ出力(tTIMER)をアサートする必要があるまで残り時間を計算する。これを行うために、FPGAは、待ち時間(tLATENCY=2.5ミリ秒(ms))から送信システムにおけるすべての遅延を差し引く。遅延はtOFFSETとして示されている。図から、tOFFSETは、FPGAが時間を起動するフレーム内のオフセット(例では、tTIMER_START、225マイクロ秒(μs))、タイムスタンプが発生したフレームの終わりからのタイムスタンプ(tTRIGGER)への距離(tTRIGGER_INV)、および発生した任意の再試行から構成されていることについて理解できる。
【0054】
最小限の待ち時間を用いてFPGAでタイマーを実行して、最大限のクロックドリフトを斟酌するためには、イベントデータが受信されるフレームの終端の最低20マイクロ秒(μs)前にタイマーが起動されることもまた必要である:tTIMERSTART_MAX=230μs。これが可能でない場合は、負のタイマー値が要求されるのを防ぐために、ドリフト許容量がタイマーに加味される必要がある。
【0055】
正しいタイムスタンプ(249μs)を得るために、プローブからのタイムスタンプ(tTRIGGER、247μs)が微調整される必要があることにもまた留意されたい。これを行うには、調整する値とドリフト値とがタイムスタンプから差し引かれる必要がある。
【0056】
【数1】
【0057】
したがって、tTIMERを計算するには:
【0058】
【数2】
【0059】
となる。
【0060】
LATENCYの値は、計算がRMI-QEインターフェースで実行されているかどうか次第で変化する。RMI-QEに関して、このことは以下のようになる:
LATENCY=tOUTPUT_LATENCY‐(nFRAMES_BEFORE_RX x tFRAME
LATENCY=2.5ms‐(2x250μs)
LATENCY=2.0ms
【0061】
TRIGGER INVは、トリガータイムスタンプをフレーム長から取り除くことによって計算されることができる。
【0062】
したがって(RMI-QE)は:
TIMER=tLATENCY‐tTIMERSTART‐(tFRAME‐(tTIMESTAMP‐tADJUST‐tDRIFT))‐R x tFRAME
TIMER=2.0ms‐230μs‐(250μs‐(247μs-‐1μs-‐1μs))‐0 x 250μs
TIMER=2000μs‐230μs‐(250μs‐(249μs))
TIMER=2000μs‐(231μs)
TIMER=1769μs
となる。
【0063】
したがって、上記の技術は、プローブのクロックとインターフェースのクロックとが同期した状態を確実に保つためのクロック調整を可能にするが、計測精度に影響を与えることなくこれが行われることができる。特に、クロック調整プロセスに起因する、従来見られたジッタが除去される。
【0064】
上記の例は、タッチトリガー測定プローブおよび関連するプローブインターフェースに関するが、同じ技術が任意の測定データの送信に使用されることができる。例えば、超音波、走査点または他の計測データが送信されることができるだろう。同様に、2.4GHz無線帯域における動作は、単なる例として提供されているにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図されていない。特許文献1の他の特徴もまた、システムに含まれ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】