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特表2024-513618感染症及び敗血症の個別化された予測のための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】感染症及び敗血症の個別化された予測のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20240319BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531021
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 SG2021050193
(87)【国際公開番号】W WO2022216220
(87)【国際公開日】2022-10-13
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】520368161
【氏名又は名称】バイオサインズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セルヴァラージ、ナンダクマール
(72)【発明者】
【氏名】ペッティナティ、マイケル ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】シャー、ミラン
(72)【発明者】
【氏名】ラージプート、クルディープ シン
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
患者の敗血症及び感染症の早期発見のためのコンピュータ処理システム及び方法は、個別化された検出モデルを使用する。このシステムは、医療記録や、ウェアラブルセンサ/パーソナルセンサから得られた症状、バイタルサイン及び病状を含む、複数の患者の患者健康データを記憶する。次に、類似性尺度又はスコアを用いて類似する患者のコホートを識別することに基づいて、複数の敗血症の予測モデルが訓練される。各モデルは、異なるコホート又は類似性尺度を用いて学習される。次に、患者が監視され、患者を監視し、敗血症を識別するために、最も類似する患者のセットで訓練されたモデルが選択される。さらに、患者の症状やバイタルサインの変化に応じて、最も類似する患者及び関連するモデルの選択が再評価され、患者の現在の状態に基づく最も適切なモデルが選択される。これにより、患者の症状の変化に応じて、最適なモデルを使用して敗血症の可能性を評価し、迅速かつ適切な介入が保証される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症及び敗血症を検出するためのコンピュータ処理方法であって、
複数の患者について患者健康データをデータストアに記憶するステップであって、患者の前記患者健康データは、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データ項目と、1つ以上のウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、前記患者から取得された複数の症状とを含む複数のデータ項目を含む、記憶するステップと、
各々が記憶された前記患者健康データを用いて訓練された複数の敗血症予測モデル及び一般母集団の敗血症予測モデルを生成及び記憶するステップであって、前記一般母集団の敗血症予測モデルは、前記複数の患者から引き出された患者の一般母集団で敗血症予測モデルを訓練することによって生成され、前記複数の敗血症予測モデルの各々を生成することは、
患者類似性尺度に従って、類似する患者の訓練コホートを識別することであって、各患者類似性尺度が、前記患者健康データにおけるデータ項目の異なる組み合わせ、1つ以上の類似性関数、及び/又は1つ以上の類似性基準を用いて決定される、類似する患者の訓練コホートを識別することと、
類似する患者の前記訓練コホートを用いて敗血症予測モデルを訓練することと、
を含む、生成及び記憶するステップと、
監視対象の患者について患者健康データを取得するステップであって、前記患者健康データは、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データ項目と、1つ以上のウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、前記患者から取得された複数の症状とを含む、取得するステップと、
前記監視対象の患者を監視するための前記複数の敗血症予測モデルから1つの敗血症予測モデルを選択するステップであって、前記敗血症予測モデルが、前記監視対象の患者に最も類似する前記訓練コホートを有する前記敗血症予測モデルを識別することによって選択され、類似する訓練コホートが識別されない場合には、前記一般母集団の敗血症予測モデルを選択する、選択するステップと、
選択された前記敗血症予測モデルを用いて前記監視対象の患者を監視して、感染症及び敗血症事象を検出し、感染症及び敗血症事象が検出された場合に、電子アラートを生成するステップと、
前記監視対象の患者の前記患者健康データの経時的な変化に応じて、前記選択するステップを繰り返すステップと、
検出された感染症及び敗血症事象の1つ以上の確認に応じて、前記生成及び記憶ステップを繰り返すステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の臨床データソースは、電子医療記録と、臨床医から臨床メモを受け取るように構成された臨床医ユーザインタフェースと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記監視対象の患者から取得される前記複数の患者測定値データのうちの1つ以上は、1つ以上のバイタルサインの繰り返し測定を含み、それぞれの測定は、関連する時間を有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の個別的で家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサが、1つ以上のウェアラブルセンサ及びバイタルサインセンサを含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記監視対象の患者から取得される患者の前記複数の症状のうちの1つ以上は、モバイルコンピューティング装置上で実行される患者ユーザインタフェースを用いて取得され且つ入力される、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
各敗血症予測モデルは、前記監視対象の患者の患者健康データの更新を監視し、感染症及び敗血症事象が検出された場合にアラートを生成するように構成された機械学習分類器である、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記監視対象の患者に最も類似する訓練コホートを有する前記敗血症予測モデルを識別することは、
前記複数の敗血症予測モデルをフィルタリングして、前記監視対象の患者の1つ以上の現在の症状、1つ以上の現在の病状、及び1つ以上の現在のバイタルサインに基づいて、類似モデルのセットを識別することと、
前記患者の訓練コホートが前記監視対象の患者と最も類似した疾患のセットを有する類似モデルのセット内のモデルに基づいて、前記類似モデルのセットから1つのモデルを選択することと、を含む、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の敗血症予測モデルのフィルタリングは、各モデルについて、前記監視対象の患者の1つ以上の現在の症状、1つ以上の現在の疾患、及び1つ以上の現在のバイタルサイン測定値と、前記各モデルの前記訓練コホート内の患者の対応する1つ以上の現在の症状、及び1つ以上の現在のバイタルサイン測定値との間の類似度の重み付け和である類似性スコアを計算することによって行われ、
前記類似モデルのセットから1つのモデルを選択することは、
前記類似性スコアのセットの各モデルについて、1つ以上の疾患について、前記監視対象の患者の疾患と、前記各モデルの前記訓練コホート内の各患者の対応する疾患との間の類似性スコアを決定し、前記類似性スコアに前記疾患の重みを掛けて、重み付き類似性スコアの各々を合計して総類似性スコアを得ることにより、前記総類似性スコアを計算することと、
前記総類似性スコアが最も高いモデルを選択することと、によって実行される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数のトリガ条件を記憶するステップをさらに含み、
前記選択するステップを繰り返すステップは、前記トリガ条件の1つ以上を満たす患者健康データの更新に応じて実行される、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記電子アラートは、臨床医ユーザインタフェースを介した臨床医へのアラートを含み、前記臨床医ユーザインタフェースは、前記臨床医が前記感染症及び敗血症事象の有効性を確認することを可能にするように構成され、1つ以上の確認は、前記生成及び記憶するステップの繰り返しをトリガするために使用される、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
監視対象の患者の感染症及び敗血症を検出するように構成されたコンピュータ処理装置であって、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに動作可能に関連付けられた1つ以上のメモリと、
複数の患者に関する患者健康データを記憶するように構成されたデータストアであって、患者の前記患者健康データは、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データ項目と、1つ以上のウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、前記患者から取得された複数の症状とを含む複数のデータ項目を含む、データストアと、
を含み、
前記1つ以上のメモリは、以下の動作を行うように前記1つ以上のプロセッサを構成するための命令を含む、
前記データストアから取得された前記データストアに記憶された前記患者健康データを用いて訓練された複数の敗血症予測モデル及び一般母集団の敗血症予測モデルを生成して前記データストアに記憶し、前記一般母集団の敗血症予測モデルが、前記複数の患者から引き出された患者の一般母集団で敗血症予測モデルを訓練することによって生成され、前記複数の敗血症予測モデルの各々を生成することは、
患者類似性尺度に従って、類似する患者の訓練コホートを識別することであって、各患者類似性尺度が、前記患者健康データにおけるデータ項目の異なる組み合わせ、1つ以上の類似性関数、及び/又は1つ以上の類似性基準を用いて決定される、類似する患者の訓練コホートを識別することと、
類似する患者の前記訓練コホートを用いて敗血症予測モデルを訓練することと、
を含み、
監視対象の患者について患者健康データを取得し、前記患者健康データは、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データ項目と、1つ以上のウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、前記患者から取得された複数の症状とを含み、
前記監視対象の患者を監視するための前記複数の敗血症予測モデルから1つの敗血症予測モデルを選択し、前記敗血症予測モデルが、前記監視対象の患者に最も類似する前記訓練コホートを有する前記敗血症予測モデルを識別することによって選択され、類似する訓練コホートが識別されない場合には、前記一般母集団の敗血症予測モデルを選択し、
選択された前記敗血症予測モデルを用いて前記監視対象の患者を監視して、感染症及び敗血症事象を検出し、感染症及び敗血症事象が検出された場合に、電子アラートを生成し、
前記監視対象の患者の前記患者健康データの経時的な変化に応じて、前記選択するステップを繰り返し、
検出された感染症及び敗血症事象の1つ以上の確認に応じて、前記生成及び記憶ステップを繰り返す、
コンピュータ処理装置。
【請求項12】
前記1つ以上のメモリは、臨床医ユーザインタフェースを提供するように前記1つ以上のプロセッサを構成する命令をさらに含み、前記1つ以上の臨床データソースは、電子医療記録を含み、前記臨床医ユーザインタフェースは、臨床医から臨床メモを受け取るように構成される、請求項11に記載のコンピュータ処理装置。
【請求項13】
前記監視対象の患者から取得される前記複数の患者測定値データのうちの1つ以上は、1つ以上のバイタルサインの繰り返し測定を含み、それぞれの測定は、関連する時間を有する、請求項11又は請求項12に記載のコンピュータ処理装置。
【請求項14】
前記1つ以上の個別的で家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサが、1つ以上のウェアラブルセンサ及びバイタルサインセンサを含む、請求項11から請求項13までのいずれか1項に記載のコンピュータ処理装置。
【請求項15】
前記監視対象の患者から取得される患者の前記複数の症状のうちの1つ以上は、モバイルコンピューティング装置上で実行される患者ユーザインタフェースを用いて取得され且つ入力される、請求項11から請求項14までのいずれか1項に記載のコンピュータ処理装置。
【請求項16】
各敗血症予測モデルは、前記監視対象の患者の患者健康データの更新を監視し、感染症及び敗血症事象が検出された場合にアラートを生成するように構成された機械学習分類器である、請求項11から請求項15までのいずれか1項に記載のコンピュータ処理装置。
【請求項17】
前記監視対象の患者に最も類似する訓練コホートを有する前記敗血症予測モデルを識別することは、
前記複数の敗血症予測モデルをフィルタリングして、前記監視対象の患者の1つ以上の現在の症状、1つ以上の現在の病状、及び1つ以上の現在のバイタルサインに基づいて、類似モデルのセットを識別することと、
前記患者の訓練コホートが前記監視対象の患者と最も類似した疾患のセットを有する類似モデルのセット内のモデルに基づいて、前記類似モデルのセットから1つのモデルを選択することと、を含む、
請求項11から請求項16までのいずれか1項に記載のコンピュータ処理装置。
【請求項18】
前記複数の敗血症予測モデルのフィルタリングは、各モデルについて、前記監視対象の患者の1つ以上の現在の症状、1つ以上の現在の疾患、及び1つ以上の現在のバイタルサイン測定値と、前記各モデルの前記訓練コホート内の患者の対応する1つ以上の現在の症状、及び1つ以上の現在のバイタルサイン測定値との間の類似度の重み付け和である類似性スコアを計算することによって行われ、
前記類似モデルのセットから1つのモデルを選択することは、
前記類似性スコアのセットの各モデルについて、1つ以上の疾患について、前記監視対象の患者の疾患と、前記各モデルの前記訓練コホート内の各患者の対応する疾患との間の類似性スコアを決定し、前記類似性スコアに前記疾患の重みを掛けて、重み付き類似性スコアの各々を合計して総類似性スコアを得ることにより、前記総類似性スコアを計算することと、
前記総類似性スコアが最も高いモデルを選択することと、によって実行される、
請求項17に記載のコンピュータ処理装置。
【請求項19】
前記1つ以上のメモリは、複数のトリガ条件を記憶するようにさらに構成され、
前記選択するステップを繰り返すステップは、前記トリガ条件の1つ以上を満たす患者健康データの更新に応じて実行される、請求項11から請求項18までのいずれか1項に記載のコンピュータ処理装置。
【請求項20】
前記1つ以上のメモリは、臨床医ユーザインタフェースを提供するように前記1つ以上のプロセッサを構成する命令をさらに含み、前記電子アラートは、臨床医ユーザインタフェースを介した臨床医へのアラートを含み、前記臨床医ユーザインタフェースは、前記臨床医が前記感染症及び敗血症事象の有効性を確認することを可能にするように構成され、1つ以上の確認は、前記生成及び記憶するステップの繰り返しをトリガするために使用される、請求項11から請求項19までのいずれか1項に記載のコンピュータ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、敗血症の早期発見に関する。本開示は、特定の形態で敗血症を発見するための機械学習/人工知能ベースの個別化された医療システムを詳述する。
【背景技術】
【0002】
敗血症は、感染によって引き起こされる生理学的、病理学的、及び生化学的な異常からなる臨床症候群であり、生命を脅かす急性臓器機能不全に至る。敗血症を含む感染性の病因は、入院、30日間の病院再入院、及び病院における死亡率のかなりの割合を占めている。敗血症の治療を成功させ、費用対効果を高めるために重要なことは、できるだけ早期に治療を開始することである。主要臓器の感染又は機能不全が進行し、患者が敗血症性ショックに陥ると、転帰(outcome)が悪化し、費用も大幅に増加する。敗血症に関連した院内死亡の発生率はかなり高く、関連する医療費は途方もない額である。これらの統計の顕著な影響因子は、患者の症例が遅れて発見されたことである。
【0003】
臨床的には、敗血症は、感染に対する宿主の全身性炎症反応症候群(SIRS)として認識されている。臓器機能不全に至る感染症は「重症敗血症」と呼ばれ、十分な輸液蘇生にもかかわらず敗血症による低血圧が持続する場合、その状態は「敗血症性ショック」と呼ばれている。最近、第3回国際コンセンサスは、重症敗血症の条件を削除することにより、敗血症及び敗血症性ショック状態の定義(sepsis-3基準)を更新し、定義及び用語の一貫した使用のための明確性を提供した。したがって、敗血症は、現在では、「感染に対する宿主反応の調節不全によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能不全」と定義されており、その臨床診断は、2以上のSOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコアの急性変化に基づいている。
【0004】
救急救命ユニット及び集中治療ユニットでの敗血症の発見は、一般的に他の環境よりも成功率が高い。なぜなら、救急救命ユニット及び集中治療ユニットは、通常、ベッドサイドでのバイタルサインの継続的なモニタリングを実装しており、モニタリングを臨床検査やそのようなユニットの臨床専門知識と組み合わせると、一般に敗血症を発見し、臨床転帰の悪化を防止することに成功するからである。しかしながら、救急救命ユニット及び集中治療ユニット(ICU)以外では、敗血症の早期発見が問題となる。
【0005】
第一に、救急救命ユニット及び集中治療ユニット以外では、患者の監視は非常に限られていることが多く、敗血症の発見に関する専門知識もより限定的である。したがって、一般病棟からの院内感染を発症した患者は、敗血症の初期段階で認識されて適切な介入が実施される可能性が低い。臨床医を支援するために、sepsis-3基準に基づいてqSOFA(quick SOFA)スコアが開発され、救急救命ユニット及び集中治療ユニット以外で敗血症のリスクのある患者を迅速にスクリーニングするためのベッドサイドツールとして機能するようになった。
【0006】
したがって、患者が以下の3つの基準のうち2つを満たす場合、qSOFA測定値は陽性となる。(i)呼吸数が1分当たり22回以上、(ii)グラスゴー・コーマ・スケールが15未満の意識状態の変容、及び(iii)収縮期血圧(SBP:systolic blood pressure)が100mmHg以下。しかしながら、SOFAスコア及びqSOFAスコアの複雑さ、sepsis-3基準の有効性に関する臨床エビデンスの不足、広範な臨床診療への適用可能性、及び必要な測定や臨床検査を促す勧告とのギャップに関する懸念がある。さらに、敗血症予測におけるSIRS、SOFA、qSOFAの予後精度(prognostic accuracy)は、様々なレトロスペクティブな臨床検査の間で大きく異なり、敗血症の早期発見のためのそれらの使用には限界があると思われる。
【0007】
現状では、敗血症の発見及び治療の質は、病院間で大きく異なっている。コンプライアンスの高い病院で処方される治療レジメンは、極めて厳格であり、費用もかかる。集中治療レジメンに組み入れられる、敗血症が誤って疑われた人(すなわち、偽陽性)の数を増やすと、既存の問題を悪化させることになる。例えば、敗血症が疑われる患者は、抗生物質が過剰に処方されたり、抗ウイルス薬の処方が不十分だったりすることが多く、患者は、誤診によって一定期間不適切な治療を受ける可能性がある。
【0008】
敗血症を識別する精度及び確度を向上させるために、様々な試みがなされてきた。例えば、患者から採取された検体中の特定のバイオマーカを識別する一連の診断検査が開発されており、特定の部分母集団(例えば、最近、外科的処置を受けた人)に対するものや、バイオマーカの時間的変化を検出するものを含む。これらのアプローチは、敗血症を可能な限り正確に、可能な限り事前に予測すること、及び、敗血症を臓器不全や全身性炎症に関連する他の疾患から区別して、敗血症患者の状態を監視すること(例えば、予後情報や、患者の階層化のための情報を提供すること)を主な目的としている。
【0009】
しかしながら、1つの欠点は、これらの検査は、侵襲性検査(例えば、血液検査)を使用して検体(複数可)を取得する必要があるため、臨床環境以外で、典型的には病院環境以外で実施される可能性が低いことである。さらに、これらの検査は、疾患の存在を確認するためにかなりの時間(通常、数時間から数日)を要することが多い。そのため、これらの検査は、主に病院環境内での使用に限定され、これらの検査の処方には、経験豊かで注意深い臨床医が必要である。さらに複雑な要因は、入院中の患者の多くが、最初は、そのような検査を処方できないか、処方に許可を必要とする経験の浅い臨床医に診察されることである。これは、発見と治療をさらに遅らせ、結果として患者に有害な結果をもたらす。
【0010】
もうひとつの重大な問題は、敗血症の症例の非常に高い割合は、SOFA/qSOFAに必要な臨床検査や監視へのアクセスがはるかに制限されている病院環境の外で始まることである。病院環境の外で感染症に掛かる患者は、患者が非常に具合が悪く不快に感じ、症状が明らかに認識できるようになる(そして生命を脅かし、治療に費用がかかる)後期の中等度又は重度の段階に疾患が進行するまで、治療を受けない可能性がある。
【0011】
したがって、一連のコンピュータベースの予測システムが開発されてきた。これらのシステムの中には、専門的知識を取り入れたものもある。しかしながら、これらのシステムは、静的な推論/ルールを含むことが多い。病院で既に採用されている現在のルールベースのシステム(例えば、SIRS、SOFA、qSOFA)と同様に、これらは精度の欠如に悩まされている。最近では、機械学習及び人工知能(AI)ベースのシステムが提案されており、そのようなシステムは、広範なデータソースから敗血症を予測することを学習することができる。これらの方法は可能性を示す一方で、それらの広範な使用を制限する多くの欠点に悩まされている。
【0012】
特に、多くの機械学習及びAIシステムは、通常、救急救命環境及び集中治療環境においてのみ収集されるデータ又は情報に依存しており、したがって、敗血症の発症が最も多く見られる他の環境(例えば、地域社会や病院の病棟)での使用に対して十分にロバストではないか、又は適していない。例えば、臨床環境以外でのバイタルサインの測定や追跡を可能にする非侵襲的な医療機器や消費者向け機器を使用するなど、一部の機械学習及びAIシステムは、より客観的で容易に取得できる測定値を使用するように設計されているが、現在までのところ、このようなシステムは、一般社会において敗血症患者と非敗血症患者とを区別するために必要な精度を欠いていた。
【0013】
さらに、機械学習及びAIシステムは、訓練データに関連する問題に悩まされている。敗血症は、患者にさまざまな形で現れるため、機械学習及びAIシステムは、多くの異なる母集団グループにおいて敗血症を確実に予測することができなければならない。しかしながら、多くのシステムは不均質な母集団(例えば、ICUの患者)についてのみ訓練されており、予測が行われる母集団によっては、この不均質性が精度に関して制限となる可能性があることが最近示唆されている。
【0014】
最近、他の疾患(ICU死亡率や糖尿病)を研究している一部の研究者が、類似性尺度を用いて類似する患者(like patients)を識別することを提案し、類似する患者のより小さなグループで訓練されたモデルが、不均質な母集団を有する完全なデータセットで訓練されたモデルよりも優れた性能を発揮することが示された。しかしながら、この研究は初期段階にあり、この研究を他の疾患、特に敗血症のような複雑な病態にまで拡大するには、例えば、類似する母集団の大きさや類似性尺度の選択など、多くの不確定要素が残されている。さらに、この研究は静的なデータセットを使用しており、そのような性能が、患者の測定が繰り返し行われ、動的で/更新される完全に自動化されたライブシステムにおいて達成されるかどうかは不明である。
【0015】
さらに、機械学習モデルを評価するために使用される母集団は、文献に見られる標準的な性能指標を歪曲するように操作することができ、したがって、提案されたモデルの実際的な使用を誤って表現する可能性がある。例えば、同じ予測モデルは、特徴セットのどのような組み合わせが使用されるか、ならびに不均質な(heterogenous)又は均質な(homogenous)研究用の母集団が訓練及び検査に使用されるかどうかに基づいて、全く異なる予測結果を生成することが可能である。非ロバストモデルの展開は、高い偽陽性率(低い陽性予測値)につながる可能性があり、高い偽陽性率は、このような技術の採用及び有用性に悪影響を及ぼすことが示されている。
【0016】
敗血症は、最も致命的で費用のかかる疾患(medical conditions)の1つであり、一般社会及び一般病棟に居る患者の敗血症を正確かつ確実に早期発見する方法及びシステムを開発するか、又は少なくとも既存の方法及びシステムに代わる有用な方法及びシステムを提供する必要がある。このような方法及びシステムによれば、迅速な識別とタイムリーな介入とが可能になり、全体的な臨床転帰の改善、費用の削減、そしてより重要なことには患者の生存率の向上につながるであろう。
【発明の概要】
【0017】
第1の態様によれば、感染症及び敗血症を検出するためのコンピュータ処理方法が提供される。この方法は、
複数の患者について患者健康データをデータストアに記憶するステップであって、患者の前記患者健康データは、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データ項目と、1つ以上のウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、前記患者から取得された複数の症状とを含む複数のデータ項目を含む、記憶するステップと、
各々が記憶された前記患者健康データを用いて訓練された複数の敗血症予測モデル及び一般母集団の敗血症予測モデルを生成及び記憶するステップであって、前記一般母集団の敗血症予測モデルは、前記複数の患者から引き出された患者の一般母集団で敗血症予測モデルを訓練することによって生成され、前記複数の敗血症予測モデルの各々を生成することは、
患者類似性尺度に従って、類似する患者の訓練コホートを識別することであって、各患者類似性尺度が、前記患者健康データにおけるデータ項目の異なる組み合わせ、1つ以上の類似性関数、及び/又は1つ以上の類似性基準を用いて決定される、類似する患者の訓練コホートを識別することと、
類似する患者の前記訓練コホートを用いて敗血症予測モデルを訓練することと、
を含む、生成及び記憶するステップと、
監視対象の患者について患者健康データを取得するステップであって、前記患者健康データは、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データ項目と、1つ以上のウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、前記患者から取得された複数の症状とを含む、取得するステップと、
前記監視対象の患者を監視するための前記複数の敗血症予測モデルから1つの敗血症予測モデルを選択するステップであって、前記敗血症予測モデルが、前記監視対象の患者に最も類似する前記訓練コホートを有する前記敗血症予測モデルを識別することによって選択され、類似する訓練コホートが識別されない場合には、前記一般母集団の敗血症予測モデルを選択する、選択するステップと、
選択された前記敗血症予測モデルを用いて前記監視対象の患者を監視して、感染症及び敗血症事象を検出し、感染症及び敗血症事象が検出された場合に、電子アラートを生成するステップと、
前記監視対象の患者の前記患者健康データの経時的な変化に応じて、前記選択するステップを繰り返すステップと、
検出された感染症及び敗血症事象の1つ以上の確認に応じて、前記生成及び記憶ステップを繰り返すステップと、
を含む。
【0018】
一形態では、前記1つ以上の臨床データソースは、電子医療記録と、臨床医から臨床メモを受け取るように構成された臨床医ユーザインタフェースと、を含み得る。
【0019】
一形態では、前記監視対象の患者から取得される前記複数の患者測定値データのうちの1つ以上は、1つ以上のバイタルサインの繰り返し測定を含み、それぞれの測定は、関連する時間を有し得る。
【0020】
一形態では、前記1つ以上の個別的で家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサが、1つ以上のウェアラブルセンサ及びバイタルサインセンサを含み得る。
【0021】
一形態では、前記監視対象の患者から取得される患者の前記複数の症状のうちの1つ以上は、モバイルコンピューティング装置上で実行される患者ユーザインタフェースを用いて取得され且つ入力され得る。
【0022】
一形態では、各敗血症予測モデルは、前記監視対象の患者の患者健康データの更新を監視し、感染症及び敗血症事象が検出された場合にアラートを生成するように構成された機械学習分類器であってもよい。
【0023】
一形態では、前記監視対象の患者に最も類似する訓練コホートを有する前記敗血症予測モデルを識別することは、
前記複数の敗血症予測モデルをフィルタリングして、前記監視対象の患者の1つ以上の現在の症状、1つ以上の現在の病状、及び1つ以上の現在のバイタルサインに基づいて、類似モデルのセットを識別することと、
前記患者の訓練コホートが前記監視対象の患者と最も類似した疾患のセットを有する類似モデルのセット内のモデルに基づいて、前記類似モデルのセットから1つのモデルを選択することと、を含み得る。
【0024】
さらなる形態では、前記複数の敗血症予測モデルのフィルタリングは、各モデルについて、前記監視対象の患者の1つ以上の現在の症状、1つ以上の現在の疾患、及び1つ以上の現在のバイタルサイン測定値と、前記各モデルの前記訓練コホート内の患者の対応する1つ以上の現在の症状、及び1つ以上の現在のバイタルサイン測定値との間の類似度の重み付け和である類似性スコアを計算することによって行われ、
前記類似モデルのセットから1つのモデルを選択することは、
前記類似性スコアのセットの各モデルについて、1つ以上の疾患について、前記監視対象の患者の疾患と、前記各モデルの前記訓練コホート内の各患者の対応する疾患との間の類似性スコアを決定し、前記類似性スコアに前記疾患の重みを掛けて、重み付き類似性スコアの各々を合計して総類似性スコアを得ることにより、前記総類似性スコアを計算することと、
前記総類似性スコアが最も高いモデルを選択することと、によって実行され得る。
【0025】
一形態では、複数のトリガ条件を記憶するステップをさらに含み、前記選択するステップを繰り返すステップは、前記トリガ条件の1つ以上を満たす患者健康データの更新に応じて実行され得る。
【0026】
一形態では、前記電子アラートは、臨床医ユーザインタフェースを介した臨床医へのアラートを含み、前記臨床医ユーザインタフェースは、前記臨床医が前記感染症及び敗血症事象の有効性を確認することを可能にするように構成され、1つ以上の確認は、前記生成及び記憶するステップの繰り返しをトリガするために使用され得る。
【0027】
第2の態様によれば、監視対象の患者の感染症及び敗血症を検出するように構成されたコンピュータ処理装置が提供される。この装置は、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに動作可能に関連付けられた1つ以上のメモリと、
複数の患者に関する患者健康データを記憶するように構成されたデータストアであって、患者の前記患者健康データは、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データ項目と、1つ以上のウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、前記患者から取得された複数の症状とを含む複数のデータ項目を含む、データストアと、
を含み、
前記1つ以上のメモリは、以下の動作を行うように前記1つ以上のプロセッサを構成するための命令を含む、
前記データストアから取得された前記データストアに記憶された前記患者健康データを用いて訓練された複数の敗血症予測モデル及び一般母集団の敗血症予測モデルを生成して前記モデルストアに記憶し、前記一般母集団の敗血症予測モデルが、前記複数の患者から引き出された患者の一般母集団で敗血症予測モデルを訓練することによって生成され、前記複数の敗血症予測モデルの各々を生成することは、
患者類似性尺度に従って、類似する患者の訓練コホートを識別することであって、各患者類似性尺度が、前記患者健康データにおけるデータ項目の異なる組み合わせ、1つ以上の類似性関数、及び/又は1つ以上の類似性基準を用いて決定される、類似する患者の訓練コホートを識別することと、
類似する患者の前記訓練コホートを用いて敗血症予測モデルを訓練することと、
を含み、
監視対象の患者について患者健康データを取得し、前記患者健康データは、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データ項目と、1つ以上のウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、前記患者から取得された複数の症状とを含み、
前記監視対象の患者を監視するための前記複数の敗血症予測モデルから1つの敗血症予測モデルを選択し、前記敗血症予測モデルが、前記監視対象の患者に最も類似する前記訓練コホートを有する前記敗血症予測モデルを識別することによって選択され、類似する訓練コホートが識別されない場合には、前記一般母集団の敗血症予測モデルを選択し、
選択された前記敗血症予測モデルを用いて前記監視対象の患者を監視して、感染症及び敗血症事象を検出し、感染症及び敗血症事象が検出された場合に、電子アラートを生成し、
前記監視対象の患者の前記患者健康データの経時的な変化に応じて、前記選択するステップを繰り返し、
検出された感染症及び敗血症事象の1つ以上の確認に応じて、前記生成及び記憶ステップを繰り返す。
【0028】
一形態では、前記1つ以上のメモリは、臨床医ユーザインタフェースを提供するように前記1つ以上のプロセッサを構成する命令をさらに含み、前記1つ以上の臨床データソースは、電子医療記録を含み、前記臨床医ユーザインタフェースは、臨床医から臨床メモを受け取るように構成され得る。
【0029】
一形態では、前記監視対象の患者から取得される前記複数の患者測定値データのうちの1つ以上は、1つ以上のバイタルサインの繰り返し測定を含み、それぞれの測定は、関連する時間を有し得る。
【0030】
一形態では、前記1つ以上の個別的で家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサが、1つ以上のウェアラブルセンサ及びバイタルサインセンサを含み得る。
【0031】
一形態では、前記監視対象の患者から取得される患者の前記複数の症状のうちの1つ以上は、モバイルコンピューティング装置上で実行される患者ユーザインタフェースを用いて取得され且つ入力され得る。
【0032】
一形態では、各敗血症予測モデルは、前記監視対象の患者の患者健康データの更新を監視し、感染症及び敗血症事象が検出された場合にアラートを生成するように構成された機械学習分類器であってもよい。
【0033】
一形態では、前記監視対象の患者に最も類似する訓練コホートを有する前記敗血症予測モデルを識別することは、
前記複数の敗血症予測モデルをフィルタリングして、前記監視対象の患者の1つ以上の現在の症状、1つ以上の現在の病状、及び1つ以上の現在のバイタルサインに基づいて、類似モデルのセットを識別することと、
前記患者の訓練コホートが前記監視対象の患者と最も類似した疾患のセットを有する類似モデルのセット内のモデルに基づいて、前記類似モデルのセットから1つのモデルを選択することと、を含み得る。
【0034】
さらなる形態では、前記複数の敗血症予測モデルのフィルタリングは、各モデルについて、前記監視対象の患者の1つ以上の現在の症状、1つ以上の現在の疾患、及び1つ以上の現在のバイタルサイン測定値と、前記各モデルの前記訓練コホート内の患者の対応する1つ以上の現在の症状、及び1つ以上の現在のバイタルサイン測定値との間の類似度の重み付け和である類似性スコアを計算することによって行われ、
前記類似モデルのセットから1つのモデルを選択することは、
前記類似性スコアのセットの各モデルについて、1つ以上の疾患について、前記監視対象の患者の疾患と、前記各モデルの前記訓練コホート内の各患者の対応する疾患との間の類似性スコアを決定し、前記類似性スコアに前記疾患の重みを掛けて、重み付き類似性スコアの各々を合計して総類似性スコアを得ることにより、前記総類似性スコアを計算することと、
前記総類似性スコアが最も高いモデルを選択することと、によって実行され得る。
【0035】
一形態では、前記1つ以上のメモリは、複数のトリガ条件を記憶するようにさらに構成され、前記選択するステップを繰り返すステップは、前記トリガ条件の1つ以上を満たす患者健康データの更新に応じて実行され得る。
【0036】
一形態では、前記1つ以上のメモリは、臨床医ユーザインタフェースを提供するように前記1つ以上のプロセッサを構成する命令をさらに含み、前記電子アラートは、臨床医ユーザインタフェースを介した臨床医へのアラートを含み、前記臨床医ユーザインタフェースは、前記臨床医が前記感染症及び敗血症事象の有効性を確認することを可能にするように構成され、1つ以上の確認は、前記生成及び記憶するステップの繰り返しをトリガするために使用され得る。
【0037】
本開示の実施形態は、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一実施形態による感染症及び敗血症の検出方法のフローチャートである。
図2】一実施形態による感染症及び敗血症を検出するためのシステムの概略図である。
図3】一実施形態による感染症及び敗血症を検出するためのシステムの様々な構成要素間の情報の交換を示す、高レベルのプロセスワークフローを示す概略図である。
図4】一実施形態による患者を分類するための最も適切なモデルを選択するために使用される感染症及び敗血症の予測モジュールの概略図である。
図5】一実施形態による感染症及び敗血症予測装置内の分類器コンポーネントのデータフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の説明において、同様の参照文字は、図面全体を通して同様の又は対応する部分を示す。
【0040】
ここで、図1及び図2を参照すると、一実施形態による感染症及び敗血症を検出するための方法100のフローチャート、及びシステム1の概略図が示されており、システム1の実施形態は、方法100を実施するように構成されてもよい。本実施形態により、患者における感染症及び敗血症の個別化された予測を可能にして、より正確かつロバストな早期発見を可能にし、その結果、患者の転帰を改善することができる。システムの実施形態は、複数の患者についての患者健康データを記憶するように構成される(110)。
【0041】
患者健康データは、データストア10に記憶されてもよい。データストア10は、ローカルに、ネットワークに、又はクラウドベースの記憶装置に記憶された、1つのデータベース又は接続された複数のデータベースであってもよい。患者の患者健康データは、複数のデータ項目を含み、複数のデータ項目には、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データ項目と、ウェアラブルなバイタルサインセンサ34などの1つ以上のウェアラブルな家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、例えば患者によって使用されるモバイルコンピューティングデバイス34上で実行される患者ユーザインタフェース30を介して患者から取得された複数の症状と、が含まれる。
【0042】
複数の患者は、過去の患者と監視対象の患者(monitored patients)の両方を含むことができる。過去の患者とは、過去の患者健康データが利用可能な患者であり、以前に監視された患者を含んでいてもよい。以下の説明の文脈では、監視対象の患者に焦点が当てれらると共に、監視対象の患者に個別化されたモデルを使用して感染症及び敗血症を監視及び検出するために、本システムをどのように使用するかに焦点が当てられる。しかしながら、本実施形態は、各々が個別化された監視モデルを用いて、多くの患者を同時に監視するために使用され得ることが理解されよう。
【0043】
システム及び方法は、記憶された患者健康データを用いて訓練された複数の敗血症予測モデル及び一般母集団の敗血症予測モデルを生成するように構成される(120)。これらのモデルは、分類器モデルのような機械学習又はAIベースのモデルであってもよく、データベース又はファイルストアのようなモデルストア20に格納されてもよい。モデルストア20は、格納されたモデルを後で使用できるように、(例えば、訓練済みモデルをエクスポートすることによって)、関連するモデルパラメータ及び構成を電子的に記憶する。
【0044】
複数の敗血症予測モデルの各々を生成することは、患者類似性尺度に従って類似する患者の訓練コホート(training cohort)を識別し(122)、次に、類似する患者の訓練コホートを使用して敗血症予測モデルを訓練する(124)ことを含み得る。これが実行されるたびに、患者健康データにおけるデータ項目の異なる組み合わせ、1つ以上の類似性関数、及び/又は1つ以上の類似性基準に基づいて、異なる類似性尺度が使用され、異なる訓練コホート、ひいては異なるモデルが生成される。
【0045】
データ項目には、様々な症状、測定されたバイタルサイン、及び病状(disease conditions)などがある。したがって、各類似性尺度は、別個のモデルの生成を可能にするための別個の尺度であり、このプロセスを繰り返すことによって、複数の別個の(又は固有の)モデルを生成することができる。患者の類似性尺度は、症状、測定されたバイタルサイン、及び病状などのデータ項目の様々な組み合わせに適用される、1つ以上の類似性スコア、類似性メトリック、類似性関数、又は類似性基準(1つ又は複数)(、又はこれらの様々な組み合わせ)を用いて決定され得る。
【0046】
次に、患者の類似性尺度を用いて、類似する患者を識別する。例えば、第1の類似性尺度は、10個のデータ項目のセットを使用して計算されたスコアリング関数を使用して決定することができ、一方、別の類似性尺度は、20個のデータ項目のセットを使用して計算することができる。2つのモデルは、各モデルにおいて、モデルを訓練/構築するためにデータ項目の異なる組み合わせを使用して、同じ訓練コホートの患者を使用し得ることに留意されたい。
【0047】
いくつかの実施形態では、類似性関数を使用して類似性スコアを生成することができ、類似性スコアは、閾値を超えるスコアを有することに基づいて選択された類似する患者との類似性尺度として直接使用することができる。この実施形態では、閾値は類似性基準であり、したがって、類似する患者の異なるグループは、同じスコアリング関数を使用するが、異なる閾値(すなわち、異なる類似性基準)を使用して識別され得る。別の実施形態では、類似性尺度がすべての患者について計算され、最も高い類似性スコアを有するN人(例えば、500人、1000人、5000人、10000人)の患者が選択されてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、類似性スコアを変換又は組み合わせて、数値的な類似性尺度を取得することができる。例えば、スコアを類似確率に変換したり、スコアを[0,1]のような予め定義された範囲に正規化したりする。
【0049】
いくつかの実施形態では、単一の類似性スコアは、特定の類似性関数を使用して計算され得るが、一方、他の実施形態では、複数の類似性スコアは、それぞれ異なる類似性関数を用いて計算され、それらの類似性スコアを加算することができる。異なるスコアは、単純加算又は何らかの加重結合(線形結合及び非線形結合を含む)を用いて組み合わせることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、類似性基準(1つ又は複数)は、特定の疾患(例えば、糖尿病)を要求又は重み付けするために使用され得、これは、類似性スコアに対する乗数として適用され得るし、又はこの乗数がスコアを計算するために使用される類似性関数に組み込まれ得る。重み付け係数は、特定の基準の存在を強制するための2値(0,1)とすることができ、或いは、各類似性基準は、特定のユースケース(use-case)構成に対して予め定義されるか、又はデータセットから自律的に学習され、データセットによって継続的に適応され得る[0,1]などのある範囲の数値を有し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、類似性尺度は、数値ではなくクラスであってもよい。例えば、患者は、例えば訓練済みの類似性分類器モデルを使用することによって、クラスを直接割り当てられてもよく、又は類似性スコアが計算され、類似性クラスに割り当てられてもよい。類似性クラスのセットは、2値(類似、非類似)又はマルチクラス(非常に類似、類似、非類似、又は非常に非類似)とすることができる。
【0052】
次に、類似する患者は、そのクラスに基づいて、例えば、類似の患者のみ、非常に類似の患者のみ、又は非常に類似若しくは類似の患者、又は非常に非類似の患者でさえ、識別され得る。ランダム又は部分的にランダムなプロセスを使用して、患者の類似性尺度を作成することができる。例えば、患者の類似性尺度(又はスコア)を決定するために使用されるデータ項目の数を変化させて、いくつかの一般的な類似性尺度と狭い類似性尺度とを導き出すことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、データ項目はすべてのデータ項目からランダムに選択され、他の実施形態では、患者の類似性基準(1つ又は複数)は、少なくとも1つの臨床データ項目、少なくとも1つの患者測定値(例えば、生理学的データ)、及び少なくとも1つの症状などの、患者健康データの異なるサブセットからランダムに選択することによって決定される。さらに、所与のサブセットは、さらにサブタイプ(又はレベル)に分割され得る。例えば、臨床データ項目は、患者の人口統計学的/記述的データ(年齢、体重、性別、喫煙状況など)、既存の疾患(糖尿病、心臓疾患、アレルギーなど)、及び臨床観察/メモにさらに分割することができる。患者間の類似性は、相関尺度、スコアリングシステム、距離尺度などに基づいて評価することができる。
【0054】
(類似性尺度/患者の類似グループを生成するために使用される)データ項目、類似性関数、及び/又は類似性基準(1つ又は複数)の特定の組み合わせを生成する場合に、現在の組み合わせが別のセット(例えば、選択された少なくとも3つの異なるデータ項目)と十分に異なることを保証するためにチェックを実行することができる。同様に、異なる類似性尺度を用いて複数の類似する患者グループが識別された後、このセットをフィルタリングして、別の患者グループとあまりにも類似している患者グループを除外し、類似する患者グループの多様性、ひいては敗血症モデルの多様性を保証することができる。モデルは、患者に関するすべての利用可能なデータを使用して(例えば、深層学習トレーニング方法を使用して)訓練されてもよく、又は類似する患者がどのように識別されたかに基づいて決定され得る特定のデータ項目(例えば、類似性の計算に使用されるのと同じデータ項目のセット)を使用して訓練されてもよい。
【0055】
また、一般母集団の敗血症予測モデルは、複数の患者から引き出された患者の一般母集団に関して敗血症予測モデルを訓練することによって生成される。これは、データストア内のすべての患者であってもよいし、ランダムな又は代表的なサンプルであってもよい。サンプルが一般母集団を反映していることを保証するために、サンプル内の患者間で類似性尺度が計算され得る(例えば、平均類似度が低いことを要求することによって)。すなわち、モデルは、一般的な不均質な母集団に基づくモデルだけではなく、類似の健康データを有する均質な部分母集団の範囲でも訓練される。
【0056】
上述のように、本システムは、感染症を検出し、敗血症の発症を十分に前もって予測するために、患者を監視するのに使用され得る。以下では、特定の患者の監視について検討する。システムは、監視対象の患者の患者健康データを取得するように構成される(140)。上記で概説したように、患者健康データは、1つ以上の臨床データソースから取得された複数の臨床データと、ウェアラブルセンサ及び/又はバイタルサインセンサ(非侵襲性及び侵襲性バイタルサインセンサを含む)などの1つ以上のウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサから取得された複数の患者測定値データと、患者から取得された複数の症状と、を含むことができる。患者が最初に監視されるときに、患者健康データは、電子健康記録及び臨床記録システムからキャプチャ又はインポートされるか、或いは電子健康記録又はシステムへのアクセスが提供されてもよい。
【0057】
その後、システムは、患者を継続的に監視し、ウェアラブルで家庭及び地域社会ベースのバイタルサインセンサからの患者健康データ及び症状を、定期的又はアドホックに収集することができる。また、臨床検査結果、治療、及び臨床医のメモなどの臨床データソースから、更新情報が取得されてもよい。システムは、監視対象の患者を監視するために、複数の敗血症予測モデルから1つの敗血症予測モデルを選択するように構成される。これは、監視対象の患者に最も類似した(すなわち、「類似する患者(like patients)」)訓練コホートを有する敗血症予測モデルを識別し、類似の訓練コホートを識別できない場合には、一般母集団の敗血症予測モデルを選択することによって行われる(140)。
【0058】
次に、選択された敗血症予測モデルは、例えば、患者健康データに対する新規/更新を処理することによって、感染症及び敗血症事象を検出するために、監視対象の患者を監視する(150)ために使用される。これは、感染症及び敗血症事象が検出された場合に、電子的アラートを生成する(152)ために使用され得る。
【0059】
また、このシステムは、監視対象の患者の患者健康データの経時的な変化に対応して、最も類似した敗血症予測モデルを選択するステップ(140)を繰り返すことができる(154)。これにより、システムは、例えば、監視対象の患者が感染症又は敗血症の徴候を示し始める等、患者の測定値及び症状が変化しても、最も類似した(かつ、間違いなく関連する)患者コホートを使用し続けることができる。
【0060】
さらに、システムは、複数の敗血症予測モデルを生成し(156)、記憶するステップ(120)を繰り返すようにトリガされてもよい。これは、検出された感染症や敗血症の事象が1つ以上確認されたこと、閾値の時間が経過したこと、又はシステムに登録された追加患者数が閾値を超えたことに対応するものであってもよい。これにより、新しい情報及び患者を受け入れたときに、システムを継続的に適応させて更新することができるようになる。
【0061】
本開示のシステムの実施形態は、図2図5にさらに示されている。このシステムは、1つ以上のプロセッサ70と1つ以上のメモリ71とを備えるコンピューティング装置上に実装され得る。コンピューティング装置は、1つ以上のクラウドベースサーバ又は他の分散コンピューティング環境を含む1つ以上のサーバを含むことができる。メモリは、モデルの訓練、データ収集及びインタフェース、並びにアラートの生成を制御することを含む方法を実装するためのソフトウェア又は命令を記憶することができる。
【0062】
監視対象の患者から患者健康データを取得するために、患者インタフェース30が提供され、例えば、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、又はデスクトップコンピュータなどの患者によって使用されるコンピューティング装置上で実行される患者ユーザインタフェースによって、ウェアラブル及び/又はバイタルサインセンサ32から取得された患者測定値データ、並びに症状34の収集を可能にする。患者ユーザインタフェースは、スマートフォン又はタブレットにインストールされたアプリケーション(アプリ)として提供されてもよい。
【0063】
患者は、1つ以上の家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサによって断続的又は継続的に監視される。バイオメディカルセンサには、患者の身体活動、患者の生理学的バイタルサイン、及び患者の健康に関連する他のパラメータを測定する1つ以上のウェアラブルデバイスが含まれ得る。身体活動の測定値には、身体の加速度、歩数、姿勢、活動強度、歩行(ambulation)、足取り(gait)、及び関連する持続時間を含まれ得るが、これらに限定されるものではない。生理学的測定値には、心拍数(又は脈拍数)、心拍変動、呼吸数、体温、及び派生パラメータが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。追加のパラメータには、体重や四肢のサイズなど、浮腫や腫脹に関連するパラメータが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0064】
データは、家庭、地域医療クリニック又は一般開業医のオフィス(すなわち、病院以外)で提供される非侵襲性バイタルサインセンサ(例えば、血圧モニタや心拍数モニタ)から収集され得る。データは、血糖値の監視に使用されるような皮下埋め込み型センサなど、個人用/家庭用の侵襲性/半侵襲性のセンサ、又はサンプルベースのセンサから収集され得る。これらは一般に、(病院ベースの監視設備とは異なる)家庭及び地域社会ベースのバイオメディカルセンサとして分類され得る。患者インタフェースは、センサに接続し、センサからデータをダウンロードするために提供される。ダウンロードは、例えば、ローカルのスマートフォン又はコンピューティングデバイス上で実行されるアプリケーションを介して、センサから直接であってもよく、又はクラウドストレージソースなどの他のストレージソースからでもよい。
【0065】
また、患者の症状の収集を可能にするために、ユーザインタフェース34が提供される。ユーザインタフェース34は、患者のスマートフォン又はタブレット(又は他のコンピューティングデバイス)にインストールされたアプリケーションであってもよく、患者が、咳、発熱、痛み、鼻づまり、息切れ及び他の徴候など、患者自身の健康に関連する一般的に経験される症状を、随時入力できるようにする。この患者健康データは、患者データストア10に、送信又はアップロードされる(35)。患者データストア10は、サーバ又はクラウドストレージサービス上の専用ハードディスクを含むが、これらに限定されないセキュアなデータストレージであってもよい。これは、リアルタイムで、定期的に、又はバッチで送信されてもよい。監視データは、継続的であっても断続的であってもよく、1つ以上のバイタルサインの繰り返し測定を含んでもよく、各測定は関連する時間を有する。
【0066】
また、臨床医インタフェース40は、電子医療記録及び臨床医ユーザインタフェースのような1つ以上の臨床データソースとインタフェースで接続するために提供される。また、臨床医ユーザインタフェースは、臨床医(医師、外科医、医療専門家、及びその他の医療専門家やサービスプロバイダを含む)が、モバイルアプリケーション又はウェブサイトポータル上のダッシュボード又は要約ページ又はグラフィックイラストレーションのセットから患者健康データ及び傾向にアクセス、又は患者健康データ及び傾向を視覚化すること(42)を可能にする。臨床医は、適切なユーザインタフェースを介して、臨床的な解釈及び観察メモをシステムに入力することができ、患者状態(patient status)や対話のテキストサマリを提出することができる。ラボ(lab)の検査報告書、画像、及び文書もまた、閲覧又はインポート、アップロード、又はアクセス許可(44)されてもよい。
【0067】
以下に説明するように、臨床医は、敗血症検出器50の出力に関するアラートのプッシュ通知とウェアラブルセンサの通知とを確認し、生成されたアラートが、真に陽性であることを示すアラートであるか、又は誤報の可能性があるアラートであるかに関する臨床フィードバックを提供すること(48)ができる。臨床医の入力及びメモはすべて、システムのセキュアなクラウド/データストレージ10に転送される(47)。また、臨床医インタフェース40は、病院、診療所、又は他の医療提供者によって保存された電子医療記録(患者の人口統計学的特性プロファイル(すなわち、患者メタデータ)と、感染症、治療及び入院の転帰を含む臨床履歴とを含む)にアクセスするように構成されてもよい。感染症及び敗血症事象に関連するこのような転帰は、敗血症予測モデルを訓練するために使用されてもよい。人口統計学的情報、一般的な健康特性、及び既存の疾患などの患者メタデータは、患者ユーザインタフェース又は臨床医ユーザインタフェースを介して入力されてもよい。
【0068】
また、患者健康データを記憶するために使用されるデータストア10は、個別化された敗血症予測モデルを使用して患者を監視し、感染症及び敗血症事象を検出するために使用される感染症及び敗血症予測装置50にデータを提供する。データストレージ10と、臨床医インタフェース40及び患者インタフェース30との間のデータ転送は双方向であり、データは、取り出され、新しいデータをプッシュされ、又は既存のデータ内容を更新され得る。
【0069】
上記に概説したように、システムは、監視対象の患者の患者健康データ(訓練コホートの各々に対する、患者の病歴、症状、及び継続的に更新されるバイタルサイン及び測定記録など)に基づいて類似性スコアなどの患者類似性尺度を決定し(22)、次に、これらのスコアを用いて、モデルストア20に記憶された訓練済みの敗血症予測モデルのセットから、個別化された敗血症予測モデルを選択する(24)。上記のように、これらのモデルの各々は、それぞれのモデルのための訓練コホートと呼ばれる、類似する患者(「類似する患者」)のセットについて、病歴、併存する疾患、症状、生理学的測定値、及び臨床検査値を含む健康特性から計算された類似性尺度を用いて、事前に訓練される。上述したように、類似性尺度を計算するプロセスは、患者健康データのデータ項目(又は符号)、類似性関数/メトリック(類似性スコアを生成可能である)、及び/又は類似性基準(1つ又は複数)のいずれか1つ又は組み合わせを使用することができる。
【0070】
また、様々なパラメータの類似性を評価する方法や、これらの類似性関数/スコア/基準をどのように組み合わせて、又はどのように適用して患者の類似性尺度を得るかについても制限はない。図2に示すように、一致する個別化された敗血症予測モデルが存在する場合(26)、予測モデルパラメータは、感染症及び敗血症予測装置50に入力され、感染症及び敗血症予測装置50は、データストレージから関連する患者の病歴、症状及びバイタルレコードを抽出し、同様に臨床医インタフェースツールから加工された健康データの傾向、臨床検査の結果、臨床医のメモを抽出する。
【0071】
また、上記の通り、モデルストア20には一般母集団について予め訓練されたモデルも含まれている。入力された患者特性が非常にユニークな滅多にないケース(corner cases)である場合、又は既存の以前の患者プールとの類似性が低いことが判明した場合、又は入力された患者特性に対して一致する個別化された予測モデルが存在しない場合には、一般母集団ベースのモデルが選択され(28)、それぞれのモデルパラメータが感染症及び敗血症予測装置50に入力される。
【0072】
感染症及び敗血症予測装置50は、選択された敗血症予測モデルを使用して、入力される患者データを監視する。敗血症予測モデルは、監視データに基づいて感染症及び敗血症事象のリスクを評価する、ルールベースの感染症及び敗血症事象検出器、2値又はマルチクラス分類器、又は多変量リグレッサ(multivariate regressor)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせであってもよい。敗血症予測モデルは、入力される患者健康データを分析し、1つ以上の感染症及び敗血症事象のリスクを示す出力を生成するように構成されている。この出力は、2値の結果、尤度スコア、又は確率尺度とすることができる。感染症及び敗血症に関連する陽性事象又はクラス又はリスクの決定は、アラート及び通知の生成58につながる。一実施形態では、各敗血症予測モデルは、監視対象の患者の患者健康データの更新を監視し、感染症及び敗血症事象が検出された場合にアラートを生成するように構成された機械学習分類器である。
【0073】
アラート59は、例えば、潜在的に深刻な感染又は悪化事象を患者に警告するために、患者ユーザインタフェース34を介して患者又はその介護者に送信され得る。アラート59はまた、臨床医、医療提供者、及び関連当事者に通知するために臨床医インタフェースに送信されてもよく、例えば、モバイルアプリケーション及び/又はウェブポータル上の臨床医ユーザインタフェースに表示されてもよい。健康傾向データなどの追加のデータが、アラートに含まれてもよい。
【0074】
臨床医は生成された陽性アラート59、対応する健康傾向データを確認することができ、生成されたアラートの有効性を検証し、感染症及び敗血症事象に真の陽性又は偽陽性であると注釈を付ける際に、フィードバックを提供することができる(48)。新たな臨床事象の場合、臨床医インタフェースにより、臨床医は、深刻な有害事象及び投薬の変更を含む臨床事象のエントリを行うことができる。生成された感染症及び敗血症事象に対する臨床医のフィードバック又は臨床事象の新規エントリは、所与の患者の健康情報、測定値及び症状に対応する参照データとしてプッシュされ、更新される(54)。
【0075】
データリポジトリの適応及び更新(54)の際に、感染症及び敗血症予測モデルの再訓練の決定(56)が、所望の周期的な時間間隔で自動的に得られるか、又は臨床インタフェースツールを使用した手動確認入力によって得られる。再訓練の自動決定ロジックは、所望の予め設定された基準(1つ又は複数)に応じて、有効又は無効にすることができる。
【0076】
一実施形態では、生成された陽性の感染症及び敗血症事象のフィードバックエントリ、及び/又は適格な臨床事象の新しいエントリが、予め設定された閾値を超える場合、再訓練(58)の決定ロジックが有効化され、その結果、特許情報、連続的及び/又は離散的な患者測定値、並びにエピソード症状及び参照事象を含む所与のデータリポジトリに対する感染症及び敗血症予測モデルの適応又は再生がもたらされる(60)。モデルを再訓練(156)した後、更新されたモデル(62)は、例えば現在記憶されているモデルを置き換えて、モデルストア20に記憶される。
【0077】
これは更に図3に示されており、図3は、一実施形態による、感染症及び敗血症の検出におけるシステムの様々な構成要素間の情報のやり取りを示す高レベルのプロセスワークフローを示す概略図である。
【0078】
図3の右側に示すように、患者インタフェース30は、一般的なバイタルサイン32を測定する1つ以上のウェアラブルデバイスによって患者を継続的に監視するように構成されている。また、患者は、スマートフォン又はタブレット上でコンパニオンアプリケーション34を使用して、症状、アンケート入力及び結果測定値を、自発的に報告することができる。このような情報に対する要求、リマインダ、又は通知は、患者のソーシャルメディアフィード又はソーシャルメディアアプリケーションにプッシュされてもよい。自己報告とバイタルとは、潜在的に深刻な感染及び悪化事象に対する患者及び/又は患者の介護者へのアラートを担う、感染症及び敗血症予測装置50への入力の一部となる。
【0079】
図3の左側に示すように、患者の電子健康記録12は、この患者監視システムへの入力としても機能する。担当の介護者47によって新たな情報が追加され、臨床検査及びメモ45が医療記録12に追加されると、これらの更新は、感染症及び敗血症予測装置50にプッシュされ得る。アラート59により、患者及び介護者は、感染症が進行しないように、早期に検査及び治療を受けるための積極的な決定を行うことが可能になる。これらのアラートに基づく患者及び介護者からのフィードバックは、ループを閉じ、新規患者が既存の敗血症分類器に組み込まれるにつれて、感染症及び敗血症予測装置が継続的に学習し、改善することを可能にする。
【0080】
バイタルサインは、敗血症の発症を識別して予測する目的のための予測力を示しており、個人が、これらの信号を継続的に測定することができるデバイスを日常生活に取り入れることは、ますます一般的で且つ容易になってきている。例えば、単一のウェアラブルデバイスに、心臓血管系の健康状態、呼吸、及び体温調節に関連する一連のパラメータを測定するセンサを組み込むことができる。これらのデバイスは、これらの信号のタイムコード化された(タイムスタンプが付けられた)読み取り値を、感染症及び敗血症予測装置50に継続的に送信することができる。
【0081】
一実施形態では、感染症及び敗血症予測装置は、機械学習分類器モデルである。敗血症分類器は、以前の患者のデータからパラメータ(例えば、勾配ブースティング決定木の閾値)を学習したこれらのデータストリームに、訓練済みモデルを適用する。分類器は、これらの設定パラメータ(閾値)を使用して、この患者に関する評価を略リアルタイムで行い、患者又は介護者に、差し迫った悪化事象の可能性について警告する必要があるかどうかを決定できるようになる。このシステムは、設定パラメータモデルを使用するのではなく、現在の測定値及び症状に基づいて最も類似した訓練コホートを識別し、それに基づいて、最も適切な訓練済み予測モデルを継続的に識別して選択する。これにより、動的で個別化された予測システムが提供される。さらに、さらなるデータ及び患者が追加されると、システムは、複数のモデルを再生成し、再生成されたモデル(及び類似の患者の訓練コホート)に対して最も類似したモデルを選択することによって動的に適応する。
【0082】
次に、最も類似したモデル(というより、最も類似した訓練コホートに基づくモデル)がどのように選択されるかと、再選択/更新プロセス及び再生成/適応プロセスとについての実施形態が説明される。
【0083】
敗血症予測の問題とこの疾患の転帰は、患者が闘病中の感染症の種類と重症度や、敗血症の様々な種類とステージの違いに応じて異なるものとなる。患者が尿路感染症(UTI)ではなく呼吸器感染症と闘っている場合、患者が敗血症になるかどうかを識別する分類器は、同様の感染症疾患と闘っている患者からそのパラメータを学習したモデルを用いるべきであることは、理にかなっている。
【0084】
本実施形態では、患者は、患者が何らかの感染症と闘っていることを示す良好な指標である症状(例えば、発熱)を報告することができる。なぜなら、これらは、存在する唯一の種類の症状である可能性があるからである。しかしながら、さらに、患者は、特定の種類の感染症を示す症状(例えば、呼吸器感染症のための呼吸困難)を報告することができる。本実施例では、患者は、(ユーザインタフェース34を介して)症状をその重症度と共に報告することができる。ここで患者の自己報告及び症状の重症度を評価する方法は例示的なものであり、他の実施形態では変更されてもよい。
【0085】
重症度と同様に、複数の症状を、患者に対して列挙することができる。例えば、咳は、乾性、又は湿性/喀痰を伴う湿性(wet/productive)であり得、発熱は、微熱(99~100°F)、高熱(100~102°F)、又は危険(>103°F)などであり得る。症状は、2値(存在するか、存在しないか)、連続的な重症度スケール等で、代替的に符号化され得る。次に、これらを使用して、同様の症状、バイタルを有し、現在の患者と同様の疾患経過を有する可能性が高い患者を識別して、最も類似した患者コホートで訓練されたモデルの選択を可能にする。
【0086】
これは、一実施形態に従って患者を分類するための最も適切なモデルを選択するために使用される感染症及び敗血症予測モジュールの概略図である図4にさらに説明される。図4に示すように、感染症及び敗血症予測装置50内には、現在の患者のバイタル、症状35及び病歴データ(medical history data)16を使用して、敗血症予測モデル(この実施形態では機械学習ベースの分類器55である)を選択するモデル選択コンポーネント52がある。
【0087】
モデル選択52は、1つの訓練済みモデル/分類器を、別の訓練済みモデル/分類器に置き換えることによって行われる(すなわち、1つの母集団から学習されたパラメータ/閾値は、別の(より類似した)母集団から学習されたパラメータ/閾値によって置換される)。患者の症状が自己報告アプリケーション34によって更新される場合、又は患者の電子的な病歴が更新される場合に、使用されるモデル/分類器が更新されるか、又は再選択される。これは、患者が、現在最も「類似する患者」と比較されていることを保証するためである。
【0088】
この実施形態では、監視対象の患者に最も類似した訓練コホートを有する敗血症予測モデルを識別することは、2段階プロセスであり、複数の敗血症予測モデルは、まずステップ53でフィルタリングされて、監視対象の患者の1つ以上の現在の症状と1つ以上の現在のバイタルサインとに基づいて、類似するモデルのセットを識別する。次に、ステップ54において、患者の訓練コホートが監視対象の患者と最も類似する疾患のセットを有する、類似するモデルのセット内のモデルに基づいて、類似したモデルのセットから1つのモデルが選択される。
【0089】
第1のステップ53は、現在の患者のデータを分類するために使用されるモデルが、類似するバイタル及び症状を有する患者を用いて構築されていること(パラメータ/閾値が設定されたこと)を、保証することである。この類似性計算の例では、これらの2つの特徴タイプが使用されるが、他の実施形態では、追加の情報を組み込むことができる。上述したように、敗血症の発症は、その人が闘っている感染症の種類に依存する可能性が高い。呼吸器感染症と闘っている患者は、皮膚/組織感染症を患っている患者と比較して、はっきりとした症状、バイタル、体験を持つようになる。両者とも発熱を伴う可能性があるが、一方は、切り傷/創傷の部分に痛みがあるのに対し、他方は、息切れしたり、発症時から湿性の咳が出ることがある。
【0090】
第2のステップ54は、この実施例では、現在の患者を監視するために選択されたモデルが、現在の患者と類似する病歴を共有する患者を用いて構築されていることを、保証することである。現在の患者が、感染症と闘う能力を損なう慢性疾患(例えば、免疫応答を損なう化学療法で治療されているある種の癌)を持っている場合、類似する患者と比較することが重要である。同様に、患者が、バイタルサインを有意に変化させる疾患(例えば、慢性心不全、高血圧、慢性閉塞性肺疾患(COPD))を有する場合、これらのシステムが同様に損なわれている患者と比較され得る。
【0091】
図4に示す実施形態では、訓練済みモデル毎に、類似性スコアが計算される。この類似性スコアが計算される方法は、計算のために特徴が符号化される方法を含めて、本実施例に特有のものであり、他の実施形態では異なる方法で計算され得る。
【0092】
本実施形態では、第1のステップ53における複数の敗血症予測モデルのフィルタリングは、バイタル及び症状の類似性スコアを、第1のフィルタとして使用して実行される。これは、各モデルの類似性スコアを計算することによって行われる。この類似性スコアは、監視対象の患者の1つ以上の現在の症状と1つ以上の現在のバイタルサイン測定値と、それぞれのモデルの訓練コホート内の患者の対応する1つ以上の症状と1つ以上のバイタルサイン測定値と、の間の類似性の重み付け和である。すなわち、特定のモデルのバイタル及び症状の類似性スコアは、現在の患者のバイタル及び症状と、それぞれのモデルを訓練するために使用された患者のバイタル及び症状との類似性の重み付け和である。
【0093】
現在の患者が報告している各症状値(最近、患者自身の電子記録に追加された各検査結果及び現在のバイタルサインを含む)は、以前の患者から報告されたその症状の値(介護者から報告された臨床検査値及び以前の患者について記録されたバイタルサインを含む)と比較される。ある症状(臨床検査値及びバイタル)が以前の患者の症状とどの程度対応しているかは、その症状(臨床検査値、バイタルサイン)に固有の関数によって決定される。その症状(臨床検査、バイタルサイン)の類似値(similarity values)は、既存のモデルのすべての患者について合計される。この合計値に、症状(臨床検査、バイタルサイン)の重みを乗じる。
【0094】
特定の症状に対する重みは、現在の患者におけるその重症度と、感染症の種類に関するその独自性とに依存する。モデルの最終的な症状の類似性スコアは、これらの重み付けされた個々の症状(臨床検査、バイタルサイン)のスコアの合計である。すべてのモデルで症状の類似性スコアが計算されると、設定された閾値を超えるスコアを有するモデルがさらに考慮される。設定された閾値未満の類似性スコアを有するモデルは捨てられ、この例ではこれ以上は考慮されない。
【0095】
第2のステップ54では、類似性スコアのセット内の各モデルについて、1つ以上の疾患について、監視対象の患者の疾患とそれぞれのモデルの訓練コホート内の各患者の対応する疾患との間の類似性スコアを決定し、類似性スコアに疾患に対する重みを乗じ、次に重み付けされた類似性スコアをそれぞれ合計して総類似性スコアを得ることにより、総類似性スコアを計算するステップと、最も高い総類似性スコアを有するモデルを選択するステップとによって、類似モデルのセットから1つのモデルが選択される。
【0096】
したがって、第2のステップ54は、第1のステップ53と非常によく似ている。残りのモデルの各々は、計算された既存の疾患の類似性スコアを有する。この類似性スコアも重み付け和である。現在の患者の電子健康記録で与えられている各既存の疾患は、検討中のモデルを構成している患者の既存の疾患と比較される。現在の患者の既存の疾患を1つずつ考慮する。以前の患者が、類似する既存の疾患を有していた場合(ここでも、類似性は各既存の疾患に固有の関数によって決定される)、類似性スコアは現在までの合計に加算される。合計されたスコアは、その既存の疾患に対する重みが乗じられる。重みは、患者の免疫系を損なうか、又はバイタルサインに影響を及ぼす可能性のある疾患に依存する。これらの重み付けされた既存の疾患スコアは、最終スコアについて合計される。現在の患者を監視するために、既存の疾患の類似性スコアが最も高いモデルが選択される。
【0097】
これをさらに説明するために、次に、上述のより高いレベルの例を反映するピボットケース(pivot case)について説明する。この場合も、これはサブセットに過ぎず、他の実施形態では他の変形例を使用することができる。表1は、患者が報告される可能性がある5つの異なる症状と、その潜在的な重症度レベルとを列挙したものである。また、表1は、遠隔監視デバイスから指摘され得る、疾患に関連する1つのバイタルサインも有している。また、表1は、各症状の類似性を評価するための類似性関数も示している。このケースでは、症状値は、同じとしてマークされた場合(1を加算)、又はマークされていない場合(0を加算)のいずれかである。なお、これは、実装可能な症状、バイタル及び重症度レベルの実際のリストの小さなサブセットであることに留意されたい。
【0098】
本実施形態では、呼吸器感染症を有し、遠隔でかつ継続的に監視されている患者のケースが検討される。患者は、乾性の咳、軽度の発熱(100°F)及び軽度の吐き気から始まることがある。患者がこれらを報告する場合、システムは、その分類器を適応させ、患者を監視する。プレコンパイルされた各モデルの症状の類似性スコアは、式1に従ってこれら3つの症状の重み付け和となる。それぞれの症状が順番に考慮され、プレコンパイルされたモデルの各患者が順番に考慮される。以前の患者が現在の患者と同じ症状の重症度の値を持っている場合は、類似性スコアに1が加算される。それらが同じ値を持っていない場合は、類似性スコアに0が加算される。図4に示す式は、表1で与えられる値及び定義に基づいて式1となる。上述したように、重みは、症状の重症度と、感染症を鑑別する際にその症状がどの程度ユニークであるかと、によって決まる。
【0099】
【数1】
【0100】
これらの症状はどの感染症にもよくみられ、かなり軽度であるため、重みは低くなる。より不均質な母集団について訓練されたモデルが選択されることになる。しかしながら、発熱が悪化して高熱(102°F)になり、患者が軽度の息切れを経験し始めたとすると、「類似する患者」に対する類似性関数は、式2に変わるだろう。
【0101】
【数2】
【0102】
選択されたモデルには、(現在の患者と同様)高熱のある患者と息切れのある患者とが多く含まれるようになる。これには、おそらく呼吸器感染症と闘うより多くの患者が含まれるであろう。設定された閾値を超える類似性スコアを有するモデルは、選択プロセスのステップ2においてさらに考慮される。
【0103】
表1
患者から報告される可能性がある5つの異なる症状とその重症度レベルと、バイタルサイン監視デバイスから得ることができる疾患に関連する1つのバイタルサインと、関連する重みと、現在の患者と以前の患者とを比較するために使用した類似性関数。
【0104】
【表1】
【0105】
表2は、患者が有する可能性があるいくつかの異なる慢性疾患、その重み、及び現在の患者と以前の患者とを比較するために用いた関数をまとめたものである。このステップは、前のステップと非常によく似ている。患者が慢性心不全のみを有すると仮定した場合、患者を監視するために選択されるモデルは、慢性心不全の患者が最も多いモデルとなる。
【0106】
【数3】
【0107】
患者が慢性心不全及び高血圧(HTN)を有する場合、選択されるモデルは、これら両方の疾患を有する患者に偏ると考えられる。両方を併せ持つ患者は、類似性スコアに2回加算されることに留意されたい。
【0108】
【数4】
【0109】
次いで、既存の疾患の類似性が最も高いモデルが選択され、患者を監視するために使用される。
【0110】
表2
患者が有する可能性があるいくつかの異なる慢性疾患、その重み、及び現在の患者と以前の患者とを比較するために用いた関数のまとめ。
【0111】
【表2】
【0112】
図5は、敗血症予測モデルのデータフローを示し、この実施形態では、この下位レベルの例では、感染症及び敗血症予測装置50内の機械学習ベースの分類器コンポーネント55が、このモデルに相当する。この分類器は、単に、患者のウェアラブルデバイスからバイタルサインデータ45を継続的に受信しているだけである。それは、現在のモデルのパラメータ(閾値)をこのデータストリームに適用して、感染症に関連する悪化事象を識別する。分類器が悪化事象(敗血症の発症)の可能性が高いことを発見/判断した場合(56)、患者と介護者にこの事実を警告することができる(58)。
【0113】
感染症による悪化の可能性が低いと判断した場合(57)には、単に監視を継続することができる。上述したモデル更新/再選択コンポーネントは、患者の症状が変化する場合、必要に応じてモデルを変更する(すなわち、モデルストア20から新しいモデルを選択する)。患者及び介護者に与えられるアラートは、それぞれが必要であると判断する程度の情報を提供することができる(これは予め設定することができる)。患者には、患者自身の感染症が悪化する可能性があることを伝え、治療が必要である可能性が高いとアドバイスするだけでよい。
【0114】
介護者又は臨床医は、患者の疾患を悪化させる可能性があるとモデルが判断する理由(バイタルサインのどのような特徴がそのことを予測しているか)に関する情報と、この予測を行うモデルを構成する「類似する患者」に関する情報とを、提供されてもよい。臨床医/介護者は、システムがその予測を更新し、将来の監視で現在の患者を使用することを可能にするために、アラートの際と追加のテストが完了した際とにアーキテクチャにフィードバックを提供する(すなわち、訓練で使用され得る事象に関する転帰データ(outcome data)を提供する)。
【0115】
より個別化されたベースで感染症及び敗血症を予測するための、本明細書に開示されるシステム及び方法の実装は、ハードウェア要素とソフトウェア要素の両方を組み合わせることができる。患者の測定値に関係するハードウェア要素32は、ウェアラブルで家庭及び地域社会ベースの様々なバイオメディカルセンサであってもよい。これには、アナログセンサ及びデジタルセンサ、侵襲性デバイス及び非侵襲性デバイス、消費者グレードデバイス及び医療グレードデバイス、任意の形態(アームバンド、リストバンド、時計、接着センサなど)のウェアラブルセンサ、及び任意の検知モダリティ(電気、光学及び熱、音響、高周波システムなど)のバイオセンサを含み得るが、これらに限定されない。
【0116】
採用される消費者用又は医療用のウェアラブルデバイス又はモニタは、一例では、電池又は電源、タイマ、マイクロプロセッサユニット、揮発性又は不揮発性メモリユニット(読み取り専用メモリ、ランダムアクセスモリ、分散メモリストレージ、及びセキュアメモリカード又はカートリッジを含む)、ユーザインタフェース、通信ポート及び回路、トランシーバ、及びデジタルディスプレイユニットから構成される組み込み型システムである。システムの実施形態の患者及び臨床医インタフェースのハードウェア要素は、モバイルスマートフォン、タブレット、ベッドサイドモニタ、壁取り付けリレー、デジタルディスプレイ、物のインターネット(IOT)、エッジコンピューティングデバイス、リモートデータセンタ、及びサーバを含むことができるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書に開示される方法の例示的な実施形態は、ファームウェアライブラリ、アプリケーションソフトウェア、又はアプリケーションプログラマブルインタフェースを含むが、これらに限定されないソフトウェア要素を含んでもよい。感染症及び敗血症予測装置50のための最適化された予測モデルは、モバイルアプリケーションプログラミングインタフェース(API)又はアプリケーションソフトウェアとして、あるいはコンピューティングデバイスのウェブブラウザ上で実行されるウェブAPI又はアプリケーションソフトウェアとして展開することができる。一例では、感染症及び敗血症を検出し、臨床行動を促すためのアルゴリズムワークフローは、データセンタのクラウドコンピューティングに展開することができ、構成された予測モデルの訓練、すなわち学習は、任意のリモートクラウドサービスで行うことができる。
【0118】
システムの実施形態は、分散コンピューティング及びクラウドベースの装置を含み、1つ以上のプロセッサ70及び1つ以上のメモリ71を備えるコンピューティング装置を使用して実装することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のプロセッサ70は、方法のステップの一部を実行するように構成された1つ以上の中央処理装置(CPU)又はグラフィカル処理装置(GPU)を備えることができる。CPUは、入出力インタフェース、演算論理ユニット(ALU)、制御ユニット、及びプログラムカウンタ要素を備えており、入出力インタフェースを介して入力装置及び出力装置と通信することができる。入力/出力インタフェースは、予め定義された通信プロトコル(例えば、IEEE 802.11、IEEE 802.15、4G/5G、TCP/IP、UDPなど)を使用して別の装置内の同等の通信モジュールと通信するためのネットワークインタフェース及び/又は通信モジュールを含むことができる。
【0119】
コンピューティング装置は、単一のCPU(コア)又は複数のCPU(マルチコア)を備えていてもよく、又は複数のプロセッサを備えていてもよい。コンピューティング装置は、通常、GPUクラスタを使用するクラウドベースのコンピューティング装置であるが、並列プロセッサ、ベクトルプロセッサ、又は分散コンピューティングデバイスであってもよい。メモリは、プロセッサ(複数可)に動作可能に接続され、RAM及びROMコンポーネントを含んでいてもよく、デバイス又はプロセッサモジュールの内部又は外部に設けられてもよい。メモリは、オペレーティングシステム及び追加のソフトウェアモジュール又は命令を記憶するために使用されてもよい。プロセッサは、メモリに記憶されたソフトウェアモジュール又は命令をロードして実行するように構成されてもよい。
【0120】
コンピュータプログラム、コンピュータコード、又は命令としても知られるソフトウェアモジュールは、複数のソースコード又はオブジェクトコードセグメント又は命令を含むことができ、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ブルーレイ(登録商標)ディスク、又はその他の形式のコンピュータ可読媒体などの任意のコンピュータ可読媒体上に存在することができる。いくつかの態様では、コンピュータ可読媒体は、非一時的なコンピュータ可読媒体(例えば、有形の(tangible)媒体)を含み得る。
【0121】
さらに、他の態様では、コンピュータ可読媒体は、一時的なコンピュータ可読媒体(たとえば、信号)を含み得る。また、上記の組み合わせも、コンピュータ可読媒体の範囲に含まれるべきである。別の態様では、コンピュータ可読媒体は、プロセッサと一体化されていてもよい。プロセッサ及びコンピュータ可読媒体は、ASIC又は関連デバイス内に存在してもよい。ソフトウェアコードは、メモリユニットに記憶されていてもよく、プロセッサは、それらを実行するように構成されてもよい。メモリユニットは、プロセッサ内に実装されてもよいし、プロセッサの外部に実装されてもよく、その場合、当該技術分野で知られているように、メモリユニットは様々な手段を介してプロセッサに通信可能に接続され得る。
【0122】
モバイル、デスクトップ、及びウェブアプリケーションは、Qtなどのツールキットの使用を含む、C++、JAVA(登録商標)などの高級言語を使用して開発及び構築され得る。本開示の方法の実施形態は、機械学習を使用して、テストセット及びトレーニングセットを含む参照データセットを使用して分類器(1つ又は複数)などのモデルを構築する。機械学習という用語は、教師あり学習法、及び畳み込みニューラルネットを含む人工知能(AI)法、ならびに複数の階層化された分類器及び/又は複数のニューラルネットを使用する深層学習法を含む、様々なアルゴリズム/方法/技法を幅広くカバーするために使用される。分類器は、特徴抽出、検出/セグメンテーション、数理形態学的方法、デジタル画像処理、オブジェクト認識、特徴ベクトル等の、様々なデータ処理及び統計的技術を使用して、分類器を構築することができる。
【0123】
線形分類器、回帰アルゴリズム、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワークなどを含む、様々なアルゴリズムが使用され得る。コンピュータビジョン又は画像処理ライブラリは、Computer Vision System Toolbox、MATLAB(登録商標)ライブラリ、OpenCV C++ライブラリ、ccv C++ CVライブラリ、又はImageJ Java(登録商標)CVライブラリ、及び機械学習ライブラリ(Tensorflow、Caffe、Keras、PyTorch、deeplearn、Theanoなど)などの分類器を構築するために使用可能な関数を提供している。
【0124】
機械学習と人工知能は、様々なアルゴリズムをカバーする。これらのアルゴリズムは、ラベル付けされた訓練データから、特定のクラスに属する特定のエンティティを示すパターンを見つける、教師あり分類器を含む。ここで、ラベル付けとは、患者のセットについて、その患者が属するクラスが既知であることを示す。例えば、教師あり分類器は、訓練データから抽出された特徴に基づいて、患者が敗血症であるか否かの指標を見つけることができる。訓練データは、例えば、患者のバイタルサインであってもよい。これは、様々な特徴の組み合わせに対して、異なる重み付けを探索することによって行われる。
【0125】
結果として得られる訓練済みモデルは、訓練セット内のエンティティを複数の(潜在的に多数の)クラスのうちの1つに配置するために、最良の、又は最も正確なパターンを数学的に取得する。これらの特徴は、研究者によって導出され得るか、又は当該技術分野で公知のアルゴリズムを使用して自動的に導出され得る。次に、訓練データを最もよく分割するこれらの特徴の重みを、正しいクラスが不明である患者に適用して、未知のエンティティがどのクラスに適合するかを予測することができる。
【0126】
機械学習は、ラベル付けされた訓練データのパターンを学習する教師あり機械学習や、単純な教師あり学習法(simply supervised learning methods)を含む。訓練中、各データポイント(画像)のラベル又は注釈は、新しい未知のデータを分類するために使用できる予測モデル又は分類器を作成するために、クラスのセットに関連付けられる。ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、決定木、ニューラルネットワーク、k-最近傍法、線形判別分析、単純ベイズ、及び回帰法など、様々な教師あり学習法が使用され得る。
【0127】
通常、特徴記述子のセットが(例えば、コンピュータビジョン又は画像処理ライブラリを使用して)データセット又は画像から抽出(又は計算)され、機械学習法は、新しいデータを区別して分類するために使用することができるデータ項目のデータセットの主要な特徴を識別するために訓練される。機械学習の訓練中、モデルは、入力データをうまく分類するモデルを見つけるために、様々な特徴の組み合わせを使用して構築される。
【0128】
深層学習は、人間の神経システムの機能を模倣するために開発された機械学習/AIの一形態である。深層学習モデルは、通常、人工的な「ニューラルネットワーク」からなり、典型的には、入力と出力との間に多数の中間層を含み、各層はサブモデルとみなされ、それぞれがデータの異なる解釈を提供する畳み込みニューラルネットワークからなる。多くの機械学習分類方法が、訓練中に特徴記述子及びラベルの(定義された)セットを計算して使用するのとは対照的に、深層学習法は、入力データから特徴表現を「学習」し、次にこれを使用して、他の未知のデータセットから特徴やオブジェクトを識別することができる。すなわち、生データは深層学習ネットワークを介して層ごとに送信され、各層は、データの分類に使用できる入力データ項目の特定の(数値)特徴又は組合せを定義するように学習することになる。
【0129】
残差ネットワーク(例えば、ResNet-18、ResNet-50、及びResNet-101)、密に接続されたネットワーク(例えば、DenseNet-121、及びDenseNet-161)、及びその他のバリエーション(例えば、InceptionV4、及びInception-ResNetV2)など、異なるアーキテクチャ(即ち、層の数や層間の接続が異なる)を有する様々な深層学習モデルが利用可能である。訓練には、入力画像の解像度、オプティマイザの選択、学習率の値とスケジューリング、モメンタムの値、ドロップアウト、及び重みの初期化(事前訓練)を含む、モデルパラメータ及びハイパーパラメータの様々な組み合わせを試すことが含まれる。

モデルの性能を評価するために損失関数が定義されてもよく、訓練中に、深層学習モデルは、学習率を変化させてネットワークの重みパラメータの更新メカニズムを駆動し、目的/損失関数を最小化することによって最適化される。
【0130】
機械学習分類器の訓練は、通常、以下を含む。
a)関連する分類ラベル(例えば、転帰)と共にデータセットを取得すること、
b)データを前処理すること(任意のラベルノイズ又は不良データを除去するためのデータ品質技術/データクリーニングを含む)と、訓練及び検証に利用できるようにデータを準備すること、
c)特徴又は特徴記述子のセットを抽出すること(これは訓練中に省略又は実行されてもよく、モデルがデータセットを分類するために使用する特徴を選択してもよい)、
d)モデルの構成(モデルタイプ/アーキテクチャ及び機械学習ハイパーパラメータを含む)を選択すること、
e)データセットを、訓練データセット、検証データセット、及び/又はテストデータセットに分割すること、
f)訓練データセットで機械学習アルゴリズム(ニューラルネットワーク及び深層学習アルゴリズムの使用を含む)を使用することによってモデルを訓練すること(通常、訓練プロセス中に、精度メトリックに従ってモデルの性能を最適化するためにモデルの構成を調節及び調整することによって、多くのモデルが生成される。)、及び、
g)検証データセットにおけるモデルの性能に基づいて、最適な「最終」モデルを選択すること(このモデルは、次に「未知の」テストデータセットに適用され、最終的な機械学習モデルの性能が検証される。)。
【0131】
通常、精度は、ブラインドテストセットを用いて、各カテゴリーにおいて正しく識別された事象の合計を、事象の総数で割った値を計算することによって評価される。当業者には明らかであるように、上記の訓練方法論又は性能測定値に関する多数の変形を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、データセットが訓練データセットで訓練され、得られたモデルがテストデータセットに適用されて精度が評価される、検証データセット及びテストデータセットのみが使用され得る。
【0132】
他の場合には、機械学習分類器の訓練は、複数の訓練-検証サイクル(Train-Validate Cycles)を含むことができる。訓練データは前処理され、バッチに分割される(各バッチにおけるデータ量は自由なモデルパラメータであるが、アルゴリズムがどの程度速く、どの程度安定して学習するかを制御する)。各バッチの後で、ネットワークの重みが調整され、これまでの累積合計精度(running total accuracy)が評価される。
【0133】
いくつかの実施形態では、重みは、例えば勾配累積(gradient accumulation)を使用して、バッチの間に更新される。すべての患者が評価されると、1つのエポックが実行され、訓練セットがシャッフルされ(すなわち、セットによる新たなランダム化が得られ)、次のエポックについて、訓練がトップから再び開始する。訓練中には、データセットのサイズ、データの複雑さ、及び訓練されるモデルの複雑さに応じて、複数のエポックが実行され得る。各エポックの後は、モデルは訓練を行わずに検証セットで実行されて、モデルの正確さの進歩の指標が提供されると共に、より多くのエポックが実行されるべきか、或いはより多くのエポックが実行されると過剰訓練となるかどうかが、ユーザに案内される。検証セットは、モデル全体のパラメータ、すなわちハイパーパラメータの選択をガイドするものであり、したがって真のブラインドセットではない。したがって、訓練の最後に、モデルの精度をブラインドテストデータセットで評価することができる。
【0134】
モデルが訓練されると、訓練済みモデルは、一連のモデルの重み及び関連するデータ(例えば、モデルタイプ)を含む電子データファイルとしてエクスポートされ、データストア20に記憶され得る。次に、展開中に、モデルデータファイルをロードして、感染症及び敗血症予測装置50内のデータを分類するための機械学習分類器を構成することができる。
【0135】
敗血症の予測は困難な課題である。敗血症の診断のタイミングは最も重要であり、それは患者の臨床転帰だけでなく、医療の利用及び費用にも重大な影響を及ぼす。敗血症の重症度レベルによって、また入院時に敗血症と診断されない場合や患者の疾患が悪化する場合には、治療費用はますます高額になる。したがって、敗血症の正確で信頼性の高い早期診断は、敗血症に関連する死亡率と医療費とを低下させるために重要である。
【0136】
特に、感染症及び敗血症を発症しやすい心不全などの慢性的で複雑な疾患の患者を管理する場合、感染症及び敗血症の早期発見は、最適な医学的治療法によるタイムリーな介入のために特に重要である。敗血症の症例の大部分は、近年ではバイタルサインのモニタリングや症状と転帰に関する患者情報の収集が進歩している病院環境の外で発生している。こうした進歩があっても、病院外の医療環境では、敗血症による悪化を事前に発見し、介入することは依然として非常に困難である。敗血症に関連する院内死亡の発生率はかなり高く、関連する医療費は膨大な額となっている。これらの統計に顕著に影響しているのは、発見が遅れた患者の症例である。
【0137】
提案されている多くのシステムは、患者がすでに厳重な監視下にある臨床環境でのみ利用可能な敗血症を予測するための特徴を使用しており、敗血症の発症が最も蔓延している可能性のある環境で収集することは非現実的であるため、本質的に不適当である。対照的に、本開示の方法の実施形態は、これらの臨床環境以外でもアクセス可能であり、重要なことに予測力を有するバイタルサインなどの測定値を使用する。このように、臨床環境以外で利用可能な特徴について訓練されたモデルの使用は、患者及び介護者が感染症に対するより早期のより成功的な介入を確実にするのを支援するために利用され得る。
【0138】
多くの提案されたシステムに関する別の問題は、機械学習モデルを評価するために使用される母集団は、オフライン分析で操作されることができ、文献に見られる標準的な測定基準を歪めて、このようなシステムの実際の使用を誤って表すことができること、すなわち、訓練用の母集団及び測定基準の選択を制御することによって、モデルの有効性を膨張させることができ、現実世界の展開に対して十分にロバストであるとは言えないことである。例えば、敗血症の発生率が低い母集団を使用してモデルを検証し、偽陽性を過小評価する統計を使用して、提案されたシステムの実用性を歪めることができる。
【0139】
対照的に、本明細書に記載されるシステム及び方法の実施形態は、所与の患者測定値及び健康データ記録の訓練用の母集団に対する類似性に基づくなど、最も適合する均質な患者の母集団(最も「類似する患者」)で選択された訓練済みモデルを使用して、モデルの精度の向上と感染症及び敗血症疾患の予測とを可能にし、さらに陽性事象及び患者悪化の場合に臨床医及び医療提供者にタイムリーに警告する。
【0140】
したがって、本システムの実施形態は、敗血症の予測のためのオンラインで、適応性があり、かつ実用的なプラットフォームを提供する。本明細書に記載される方法及びシステムの実施形態は、感染症及び敗血症のリアルタイムの未来予測のための、入力/出力、処理、及び自動化された意思決定のカスケード接続された段階(cascaded stages)を含むことができ、救命救急、一般病棟、病院外又は家庭環境などの任意の患者監視環境に適用可能である。実施態様はさらに、患者インタフェースと臨床医インタフェース、派生入力、及び患者測定値を効果的に組み合わせる方法、現在の患者の類似性尺度(又はスコア)を決定する方法、患者の類似性尺度に基づいて個別化された又は母集団ベースの訓練済みの敗血症予測モデルを選択する方法、感染症又は敗血症疾患を予測する方法、臨床医インタフェースツールに表示される通知を生成する方法、臨床医からの入力でデータリポジトリを更新する方法、及び予測モデルを随時適応/再訓練する方法を説明する。
【0141】
本明細書に記載されているように、既存のシステムの現在の限界を克服するために、敗血症の早期発見のための洗練されたソリューションが記載されてきた。本開示は、便利で継続的なバイタルサインのモニタリング、症状及び徴候の自己報告を入力するための患者インタフェース、及び推論検証の入力と患者管理のための臨床医インタフェースを使用する、個別化された感染症及び敗血症検出システムの実施形態について説明する。したがって、本明細書に記載される方法及びシステムの実施形態は、個別化された継続的な患者の監視を通じて、敗血症の個別化された正確な予測を可能にする。
【0142】
このシステムは、様々な電子健康記録、患者の症状、及び生理学的パラメータや活動パラメータのリアルタイム収集と、介護者への警告と、臨床判断の入力などを可能にする、完全に統合された遠隔患者監視ソリューションとして実装され得る。最も類似する患者コホートを用いて訓練されたモデルを識別することに加えて、最も類似する患者コホートの選択及び関連するモデルは、感染症の進行や敗血症の発症の軌跡及び関連する臨床パラメータに基づいて更新される(つまり、最良のモデルが再選択される)。すなわち、患者又は患者の介護者から追加のデータを受信した後、利用可能なデータに応じてモデルを適合させる(個別化する)ことができる。さらに、新しいデータ及び患者が取得されると、モデルが再訓練され得る。
【0143】
当業者には、情報及び信号が様々な技術及び技法のいずれかを使用して表現され得ることが理解されよう。例えば、データ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、記号、及びチップは、上記の説明を通して参照され得るし、電圧、電流、電磁波、磁場又は磁性粒子、光場又は光粒子、あるいはそれらの任意の組み合わせによって表現され得る。
【0144】
当業者には、本明細書に開示された実施形態に関連して説明される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、及びアルゴリズムのステップが、電子的なハードウェア、コンピュータソフトウェア又は命令、ミドルウェア、プラットフォーム、又はハードウェアとソフトウェアの組合せとして実装され得ることがさらに理解されよう。ハードウェアとソフトウェアのこの互換性を明確に示すために、様々な例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、回路、及びステップが、一般にそれらの機能の点から上述されてきた。このような機能がハードウェアとして実装されるか、又はソフトウェアとして実装されるかは、特定の用途とシステム全体に課される設計上の制約とに依存する。当業者であれば、上述した機能を、特定の用途毎に様々な方法で実装することができるが、そのような実装の決定は、本発明の範囲からの逸脱を引き起こすものと解釈されるべきではない。
【0145】
本明細書に開示された実施形態に関連して説明される方法又はアルゴリズムのステップは、ハードウェアで、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで、又はクラウドベースシステムを含むハードウェアとソフトウェアの組合せで、直接的に具現化されてもよい。ハードウェアによる実装の場合、処理は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、又は本明細書に記載の機能を実行するように設計された他の電子ユニット内、又はそれらの組合せ内に、実装され得る。様々なミドルウェア及びコンピューティングプラットフォームが使用され得る。
【0146】
さらに、本明細書に記載される方法及び技法を実行するためのモジュール及び/又は他の適切な手段は、コンピューティング装置によってダウンロード及び/又は他の方法で取得され得ることを理解されたい。例えば、そのようなコンピューティング装置は、本明細書に記載の方法を実行するための手段の転送を容易にするために、サーバに接続され得る。或いは、本明細書に記載の様々な方法は、コンピューティングデバイスが、記憶手段を自装置に接続又は提供する際に様々な方法を得ることができるように、記憶手段(例えば、RAM、ROM、コンパクトディスク(CD)又はフロッピー(登録商標)ディスクなどの物理的記憶媒体)を介して提供され得る。さらに、本明細書に記載の方法及び技法を装置に提供するために、任意の他の適切な技法を利用することができる。
【0147】
本明細書に開示される方法は、記載された方法を実現するための1つ以上のステップ又は動作を含んでいる。方法のステップ及び/又は動作は、特許請求の範囲から逸脱することなく、互いに入れ替えることができる。換言すれば、ステップ又は動作の特定の順序が指定されていない限り、特定のステップ及び/又は動作の順序及び/又は使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく変更され得る。
【0148】
本明細書で使用される「含む(comprise)」及び「含む(include)」という用語、ならびにそれらの派生語のいずれか(例えば、comprise、comprising、includes、including)は、その用語が言及する特徴を包むものと解釈されるべきであり、別段の記載又は示唆がない限り、任意の追加の特徴の存在を排除することを意味しないことが理解されよう。
【0149】
本明細書における先行技術への言及は、そのような先行技術が共通の一般知識の一部を形成しているといういかなる形式の示唆をも認めるものではなく、またそのように解釈されるべきものでもない。
【0150】
本開示は、その使用において、記載された特定の用途(1つ又は複数)に限定されないことが、当業者には理解されよう。また、本開示は、その好ましい実施形態において、本明細書に記載又は図示されている特定の要素及び/又は特徴に限定されるものではない。本開示は、開示された実施形態(1つ又は複数)に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲によって記載及び定義される範囲から逸脱することなく、多数の再構成、修正及び置換が可能であることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】