(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】二次電池及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240319BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240319BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240319BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240319BHJP
C01B 32/158 20170101ALI20240319BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/02 Z
C01B32/158
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519293
(86)(22)【出願日】2023-02-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2023074533
(87)【国際公開番号】W WO2023169113
(87)【国際公開日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】202210213883.9
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲梅▼▲鋒▼
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC03A
4G146AC03B
4G146AD23
4G146AD25
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050DA10
5H050EA08
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は、二次電池及び電子装置を開示し、電池技術分野に属するものである。二次電池は正極片を含み、前記正極片は、集電体及び正極活物質層を含む。前記正極活物質層は、正極活物質及び炭素材料を含む。前記炭素材料は、アスペクト比が2.5~100であるカーボンナノチューブバンドルを含む。前記カーボンナノチューブバンドルは、複数本の第1カーボンナノチューブを含む。本発明におけるカーボンナノチューブバンドルは、電池の内部抵抗の初期値を減少させ、サイクル中の導電性ネットワークの完備を確保し、内部抵抗の増加を効果的に低下させ、充電速度を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極片を含む二次電池であって、
前記正極片は、集電体及び正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は、正極活物質及び炭素材料を含み、
前記炭素材料は、アスペクト比が2.5~100であるカーボンナノチューブバンドルを含み、
前記カーボンナノチューブバンドルは、複数本の第1カーボンナノチューブを含み、
前記炭素材料は、第2カーボンナノチューブをさらに含み、正極活物質粒子の表面に前記第2カーボンナノチューブがあり、
前記正極片の満充電極片抵抗をR Ωとし、走査型電子顕微鏡で測定する場合、20μm×20μmの範囲内の前記カーボンナノチューブバンドルの本数をmとしたとき、
前記満充電極片抵抗とカーボンナノチューブバンドルの本数とは、
R×m≦5 式I
0<R≦0.5を満たすことを特徴とする、二次電池。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブバンドルは、
(i)前記カーボンナノチューブバンドルの平均長さは2μm~10μmであることと、
(ii)前記カーボンナノチューブバンドルの平均ビーム径は0.01μm~2μmであることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
走査型電子顕微鏡で測定する場合、20μm×20μmの範囲内の前記カーボンナノチューブバンドルの本数をmとしたとき、mは、2≦m≦30を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1カーボンナノチューブは、
(I)前記第1カーボンナノチューブのチューブ径は5nm~40nmであることと、
(II)各前記カーボンナノチューブバンドルにおいて、前記第1カーボンナノチューブの平均本数をnとしたとき、nは、50≦n≦10000を満たすことと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第2カーボンナノチューブは、
(a)前記第2カーボンナノチューブの平均長さは0.1μm~2μmであることと、
(b)前記第2カーボンナノチューブの平均チューブ径は3nm~40nmであることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記正極活物質層の総質量に基づいて、前記カーボンナノチューブバンドルの質量含有量は0.1%~1%であること、及び/又は
前記正極活物質層の総質量に基づいて、前記第2カーボンナノチューブの質量含有量は0.1%~1%であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極活物質層の総質量に基づいて、前記カーボンナノチューブバンドルの質量含有量は、前記第2カーボンナノチューブの質量含有量より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
前記正極活物質層の総質量に基づいて、前記炭素材料の質量含有量は0.1%~1%であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の二次電池を含むことを特徴とする、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年3月7日に提出された、出願番号が202210213883.9、発明の名称が「二次電池及び電子装置」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は引用することにより本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、電池技術分野に関し、具体的には、二次電池及び電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
二次電池の使用中、繰り返しの充放電プロセスにより、正極片が絶えず膨張および収縮するため、一部の導電性ネットワークが破壊され、結果として電池の直流内部抵抗DCRを増加させる。電池のDCRの増加により、電池のレート特性および充電特性が低下し、寿命の減衰が速くなる。従って、DCRの増加を顕著に改善するために努力する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、正極片を含む二次電池を提供し、この正極片は、複数本の第1カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブバンドルを含む。カーボンナノチューブバンドルは、電池の初期DCRを低減させることができるだけでなく、サイクル中の導電性ネットワークの完備を確保することができ、サイクル中のDCRの増加を効果的に低減させ、電池サイクル寿命を改善し、充電速度を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
二次電池は、正極片を含み、前記正極片は集電体及び正極活物質層を含み、前記正極活物質層は正極活物質及び炭素材料を含み、前記炭素材料はアスペクト比が2.5~100であるカーボンナノチューブバンドルを含み、前記カーボンナノチューブバンドルは複数本の第1カーボンナノチューブを含む。
【0006】
任意選択で、前記カーボンナノチューブバンドルは、
(i)前記カーボンナノチューブバンドルの平均長さは2μm~10μmであることと、
(ii)前記カーボンナノチューブバンドルの平均チューブ径は0.01μm~2μmであることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。
【0007】
任意選択で、走査型電子顕微鏡で測定する場合、20μm×20μmの範囲内の前記カーボンナノチューブバンドルの本数をmとしたとき、mは、2≦m≦30を満たす。
【0008】
任意選択で、前記第1カーボンナノチューブは、
(I)前記第1カーボンナノチューブのチューブ径は5nm~40nmであることと、
(II)各前記カーボンナノチューブバンドルにおいて、前記第1カーボンナノチューブの本数をnとしたとき、nは、50≦n≦10000を満たすことと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。
【0009】
任意選択で、前記炭素材料は、第2カーボンナノチューブをさらに含み、前記正極活物質粒子の表面に前記第2カーボンナノチューブがある。
【0010】
任意選択で、前記カーボンナノチューブバンドルの表面に前記第2カーボンナノチューブがある。
【0011】
任意選択で、前記第2カーボンナノチューブは、
(a)前記第2カーボンナノチューブの平均長さは0.1μm~2μmであることと、
(b)前記第2カーボンナノチューブの平均チューブ径は3nm~40nmであることと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。
【0012】
任意選択で、前記正極活物質層の総質量に基づいて、前記カーボンナノチューブバンドルの質量含有量は0.1%~1%であり、及び/又は、
前記正極活物質層の総質量に基づいて、前記第2カーボンナノチューブの質量含有量は0.1%~1%である。
【0013】
任意選択で、前記正極活物質層の総質量に基づいて、前記カーボンナノチューブバンドルの質量含有量は前記第2カーボンナノチューブの質量含有量より小さい。
【0014】
任意選択で、前記正極に対して、満充電極片抵抗をR Ωとし、走査型電子顕微鏡で測定する場合、20μm×20μmの範囲内の前記カーボンナノチューブバンドルの本数をmとしたとき、
前記満充電極片抵抗とカーボンナノチューブバンドルの本数とは、式Iを満たす。
R×m≦5 式I
【0015】
任意選択で、0<R≦0.5である。
【0016】
任意選択で、前記正極活物質層の総質量に基づいて、前記炭素材料の質量含有量は0.1%~2%である。
【0017】
本発明の第2態様によれば、上記のいずれか1項に記載の正極片の製造方法をさらに提供し、
具体的には、正極片の製造方法は、
1)正極活物質、炭素材料、バインダー、溶媒(例えば、脱イオン水、Nーメチルピロリドン)を均一に混合し、スラリーとすること、
2)ステップ1)で得られたスラリーを集電体であるアルミニウム箔の目的領域に塗布すること、
3)溶剤を乾燥することにより、正極活物質層が塗布された一次極片を得ること、及び
4)ステップ3)で得られた一次極片を、乾燥、ロールプレス、分断して、正極片(正極とも呼ばれる)を得ること、を含む。
【0018】
前記炭素材料は、カーボンナノチューブバンドルを含み、又はカーボンナノチューブバンドル及び第2カーボンナノチューブを含む。
【0019】
本発明の第3態様によれば、上記のいずれか1項に記載の二次電池を含む電子装置を更に提供する。
【0020】
本発明が提供する技術的解決策による有益な効果は、少なくとも、
(1)本発明では、正極片に複数本の第1カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブバンドルを含有することにより、電池の直流内部抵抗(DCR)の初期値を減少させるだけでなく、電池のサイクル中の導電性ネットワークの完備をより確保して、サイクル中のDCRの増加を効果的に低減させ、充電速度を向上させることができる。具体的には、電池サイクル中に、正極活物質層の膨張および収縮に伴って、正極活物質層における導電性ネットワークが破壊され、結果として正極活物質粒子間の接触が悪くなり、電子の輸送に影響し、DCRが増大する。本発明は、カーボンナノチューブバンドルを加えることにより、より強固な導電性ネットワークを形成するため、サイクル中の導電性ネットワークの完備を確保し、DCRの増加を低減させることができること、
(2)カーボンナノチューブバンドル及び第2カーボンナノチューブを含む電池は、カーボンナノチューブバンドルを含まない電池、又はカーボンナノチューブバンドル及び第2カーボンナノチューブのパラメータが要件を満たさない電池に比べて、サイクル寿命が改善され、直流内部抵抗が低下すること、
(3)本発明では、炭素材料に第2カーボンナノチューブを添加することにより、電池の寿命をさらに改善する効果を達成できること、及び
(4)本発明では、満充電極片抵抗の値とカーボンナノチューブバンドルの本数との積を≦5とし、満充電極片抵抗を≦0.5Ωとすることにより、電池の低温特性を改善する効果達成できること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下では、本発明の実施形態における技術的解決策をより明確的に説明するために、実施形態に使用される図面を簡単に説明する。以下に説明される図面は、本発明のいくつかの実施形態に過ぎず、創造的努力なしに、これらの図面から他の図面を導出できることは当業者にとって明らかである。
【
図1】
図1は、本発明の実施例1-3が提供する正極片のSEM図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1-3が提供するカーボンナノチューブバンドルのSEM図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1-3が提供する第2カーボンナノチューブのSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
従来技術では、DCRの増加は、電池に、例えば、レート特性の低下、電池の寿命の減少、充電時間の増加などの悪影響をもたらす。従って、通常、正極片の厚さを薄くし、導電剤の添加量を向上させることなどの手段を採用して電池DCRの増加を改善する。しかし、これらの手段を採用すると、常に電池エネルギー密度が大幅に低下し、かつDCRの増加に対する改善が明らかではない。
【0023】
本発明は、集電体及び正極活物質を含む正極片を提供する。前記正極活物質層は正極活物質及び炭素材料を含む。前記炭素材料はアスペクト比が2.5以上100以下であるカーボンナノチューブバンドルを含む。前記カーボンナノチューブバンドルは複数本の第1カーボンナノチューブを含む。
【0024】
具体的には、カーボンナノチューブバンドルのアスペクト比は、5、7、10、12.5、20、25、50、80、100から選択されるいずれか2つの値からなる範囲にある。
【0025】
任意選択で、前記炭素材料はアスペクト比が3以上80以下であるカーボンナノチューブバンドルを含む。
【0026】
任意選択で、前記炭素材料はアスペクト比が3以上70以下であるカーボンナノチューブバンドルを含む。
【0027】
任意選択で、前記炭素材料はアスペクト比が3以上50以下であるカーボンナノチューブバンドルを含む。
【0028】
任意選択で、前記炭素材料はアスペクト比が3以上40以下であるカーボンナノチューブバンドルを含む。
【0029】
ここで、アスペクト比は、カーボンナノチューブバンドルの平均長さと平均チューブ径との比である。
【0030】
本発明のいくつかの実施例において、複数本の第1カーボンナノチューブからカーボンナノチューブバンドルを形成することにより、カーボンナノチューブバンドルのアスペクト比を増大させることができるため、正極片の導電能力を効果的に向上させることができ、かつ、チューブバンドルとチューブバンドルとの間に分散しやすく、正極スラリーの分散の均一性を確保するとともに、バンドルとなるため、一般的な一本のカーボンナノチューブよりも破壊されにくい。
【0031】
任意選択で、前記正極活性物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム酸化物、リン酸鉄リチウム、リチウムマンガン酸化物を含む。
【0032】
任意選択で、前記カーボンナノチューブバンドルの平均長さは2μm~10μmである。
【0033】
具体的には、カーボンナノチューブバンドルの平均長さは、2μm、5μm、8μm、10μmのうちのいずれか2つの値からなる範囲にある。
【0034】
任意選択で、前記カーボンナノチューブバンドルの平均チューブ径は0.01μm~2μmである。
【0035】
具体的には、カーボンナノチューブバンドルの平均チューブ径は、0.01μm、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.4μm、0.5μm、0.7μm、1μm、2μmのうちのいずれか2つの値からなる範囲にある。
【0036】
任意選択で、前記カーボンナノチューブバンドルの平均チューブ径は0.01μm~1.8μmである。
【0037】
任意選択で、前記カーボンナノチューブバンドルの平均チューブ径は0.01μm~1.5μmである。
【0038】
任意選択で、前記カーボンナノチューブバンドルの平均チューブ径は0.05μm~1.2μmである。
【0039】
具体的には、平均長さの測定方法は、走査型電子顕微鏡を用いて測定し、20μm×20μmの範囲内に、カーボンナノチューブバンドルの長さを集計し、この領域における全てのカーボンナノチューブバンドルの長さの平均値を平均長さとする。
【0040】
平均チューブ径の測定方法は、走査型電子顕微鏡を用いて測定し、20μm×20μmの範囲内に、カーボンナノチューブバンドルのチューブ径を集計し、バンドルごとに、3つの異なる位置でそれぞれカーボンナノチューブバンドルの幅を1回測定し、カーボンナノチューブバンドルのチューブ径と記し、この領域における全てのカーボンナノチューブバンドルのチューブ径の平均値を平均チューブ径とする。
【0041】
本発明では、平均長さ、平均チューブ径及びアスペクト比を上記の範囲にすることにより、DCRが小さく、レート特性、低温特性、サイクル寿命などの総合的性能が優れる効果がある。
【0042】
任意選択で、走査型電子顕微鏡で測定する場合、20μm×20μmの範囲内に、前記カーボンナノチューブバンドルの本数をmとしたとき、mは、2≦m≦30を満たす。
【0043】
本発明では、カーボンナノチューブバンドルの本数が多すぎると、正極活物質の表面が全て被覆され、それにより、イオン伝導性に影響を及ぼす。カーボンナノチューブバンドルの本数が少なすぎると、形成された導電性ネットワークが完備ではなくなる。そのため、適切な範囲を選択することにより、導電性ネットワークの完備を確保するとともに、イオン輸送効率を確保する効果を達成できる。
【0044】
任意選択で、前記第1カーボンナノチューブのチューブ径は、5nm~40nmである。
【0045】
第1カーボンナノファイバーのチューブ径は、5nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nmのいずれか2つの値からなる範囲にある。
【0046】
任意選択で、各前記カーボンナノチューブバンドルにおいて、前記第1単層カーボンナノモノチューブの平均本数をnとしたとき、nは、50≦n≦10000を満たす。本発明では、カーボンナノチューブバンドルの断面があるSEM写真を採用し、カーボンナノチューブバンドルの断面での第1単層カーボンナノチューブの本数を読み取り、5本のカーボンナノチューブバンドルにおける第1ナノモノチューブの数を集計し、その平均値を四捨五入した値は、第1単層カーボンナノチューブの平均本数とする。
【0047】
本発明では、第1カーボンナノチューブのチューブ径は5nm~40nmの範囲内に維持される。第1カーボンナノチューブのチューブ径が小さすぎると、分散しにくく、第1カーボンナノチューブのチューブ径が大きすぎると、分散中に破壊されやすいため、高いアスペクト比を維持しにくい。本発明では、第1カーボンナノチューブのチューブ径の測定方法は、測定されるデータが第1カーボンナノチューブのチューブ径であること以外は、第1カーボンナノチューブの平均本数の測定方法と同様である。
【0048】
カーボンナノチューブバンドル中の第1カーボンナノチューブの本数が前記範囲内にあることにより、カーボンナノチューブバンドルのチューブ径、直径及び導電性がいずれも適切な範囲にあり、かつカーボンナノチューブバンドルの正極活物質への過剰な被覆を回避することができ、イオンの輸送への影響を減少させ、かつカーボンナノチューブバンドルがサイクル中に破壊されにくい。
【0049】
任意選択で、前記炭素材料は、前記正極活物質の表面及びカーボンナノチューブバンドルの表面に付着する第2カーボンナノチューブをさらに含む。
【0050】
本発明における第2カーボンナノチューブは、単層カーボンナノモノチューブである。
【0051】
本発明では、カーボンナノチューブバンドルは、電子通路の主な通路を提供し、電子がチューブバンドル内、及びチューブバンドルと正極活性物質との間に迅速に輸送することができる。第2カーボンナノチューブは、チューブバンドルと活性物質を接続ことにより、電子を活性物質の各位置に迅速に輸送する。両者を組み合わせることにより、DCRを低減させ、サイクル寿命を改善する効果を達成することができる。
【0052】
任意選択で、前記第2カーボンナノチューブの平均長さは、0.1μm~2μmである。
【0053】
第2カーボンナノチューブの平均長さは、0.2μm、0.4μm、0.8μm、1.5μm、2μmのいずれか2つの値からなる範囲にある。
【0054】
任意選択で、前記第2カーボンナノチューブの平均チューブ径は、3nm~40nmである。
【0055】
第2カーボンナノチューブの平均チューブ径は、3nm、5nm、10nm、18nm、25nmのいずれか2つの値からなる範囲にある。
【0056】
本願では、第2カーボンナノチューブの平均長さ及び平均チューブ径は適切な範囲を選択することにより、電池サイクル寿命を改善する効果がある。
【0057】
任意選択で、前記正極に対して、満充電極片抵抗をR Ωとし、20μm×20μmの範囲内の前記カーボンナノチューブバンドルの本数をmとしたとき、前記満充電極片抵抗とカーボンナノチューブバンドルの本数は式I及び/又は式IIの要件を満たす。
R×m≦5 式I
0<R≦0.5 式II
【0058】
好ましくは、前記満充電極片抵抗とカーボンナノチューブバンドルの本数は式I-1及び式II-1の要件を満たす。
0.5≦R×m≦1.5 式I-1
0.05≦R≦0.3 式II-1
【0059】
正極の製造方法では、以下を含む。
具体的には、正極片の製造は、
1)正極活物質、炭素材料、バインダー、溶媒(例えば、脱イオン水、Nーメチルピロリドン)を均一に混合し、スラリーとすること、
2)ステップ1)で得られたスラリーを集電体の目的領域に塗布すること、
3)溶剤を乾燥することにより、正極活物質層が塗布された一次極片を得ること、及び
4)ステップ3)で得られた一次極片を、乾燥し、ロールプレスして、正極片を得ること、を含む。
【0060】
具体的には、炭素材料は、カーボンナノチューブバンドルと、導電性カーボンブラック及び第2カーボンナノチューブのうちの少なくとも一つとを混合して得られる導電剤であり得る。
【0061】
任意選択で、正極活物質層は、正極活性物質、カーボンナノチューブバンドル、第2カーボンナノチューブ及びバインダーを含む。
【0062】
任意選択で、正極活物質層は、正極活性物質、カーボンナノチューブバンドル、第2カーボンナノチューブ、SP導電剤、バインダーを含み、それらの質量比率の関係は、96~98:0.1~0.8:0.2~1.0:0.5~1.0:1.0~2.0である。
【0063】
実施例
以下、具体的な実施形態を説明する。
【0064】
各例におけるカーボンナノチューブバンドルのパラメータを表aに示す。このカーボンナノチューブバンドルは、本発明のカーボンナノチューブバンドルのパラメータを満たす限り、市場から購入することができる。
【0065】
【0066】
各例における第2カーボンナノチューブのパラメータを表bに示す。このカーボンナノチューブは、本発明の第2カーボンナノチューブのパラメータを満たす限り、市場から購入することができる。
【0067】
【0068】
実施例1-1
S100 LiCoO2、1#カーボンナノチューブバンドル、PVDFを比率98.2:0.5:1.3で混合し、スラリーを得た。
S200 前記スラリーを集電体(アルミニウム箔)の目的領域に塗布した。
S300 120℃で乾燥させて活物質層が塗布された一次極片を得た。
S400 ステップS300で得られた一次極片を乾燥し、ロールプレスすることにより、前記正極片を得た。
【0069】
実施例1-2
正極片の製造方法は、1#カーボンナノチューブバンドルの含有量が0.3%であること以外は、実施例1-1と同様であった。
【0070】
実施例1-3
1#正極片の製造
S100 LiCoO2、1#カーボンナノチューブバンドル、1#第2カーボンナノチューブ、PVDFを比率に従って混合し、スラリーを得た。
S200 前記スラリーを集電体(アルミニウム箔)の目的領域に塗布した。
S300 120℃で乾燥させて活物質層が塗布された極片を得た、
S400 ステップS300で得られた極片を乾燥し、ロールプレスすることにより、前記正極片を得ることができ、1#正極片と記した。
【0071】
実施例1-3では、正極活物質層におけるPVDFの質量分率は1.3%であり、前記カーボンナノチューブバンドル及び第2カーボンナノチューブの含有量を表1に示し、残りは正極活物質であった。
【0072】
実施例1-4~実施例1-28
正極片の製造方法は、表1に示すこと以外は、実施例1-3と類似した。
【0073】
そのうち、実施例1-4~1-17は、異なるカーボンナノチューブバンドルを用いること以外は、実施例1-1と同様であった。
【0074】
実施例1-18~実施例1-23は、主に20μm×20μmの範囲内のカーボンナノチューブバンドルの本数mの値を調整した。
【0075】
実施例1-24~1-26は、主にカーボンナノチューブバンドルの含有量を調整した。
【0076】
実施例1-27及び1-28では、調整したパラメータの詳細を表1に示した。
【0077】
実施例2-1~実施例2-12
表2に示すこと以外は、実施例1-3における正極片の製造方法と類似した。
ここで、実施例2-1~2-10と実施例1-1との相違点は、主に異なる第2カーボンナノチューブを用いること及び第2カーボンナノチューブの含有量であった。
【0078】
比較例1
カーボンナノチューブバンドルを添加しなかったこと以外は、実施例1-2における正極片の製造方法と類似した。具体的には表3におけるデータを参照した。
【0079】
比較例2
カーボンナノチューブバンドルが異なり、かつ第2カーボンナノチューブを含まないこと以外は、実施例1-3における正極片の製造方法と類似した。具体的には表3におけるデータを参照する。
【0080】
比較例3
カーボンナノチューブバンドルの種類を調整したこと以外は、実施例1-3における正極片の製造方法と類似した。具体的には表3におけるデータを参照した。
【0081】
比較例4
カーボンナノチューブバンドルの種類を調整したこと以外は、実施例1-3における正極片の製造方法と類似した。具体的には表3におけるデータを参照した。
【0082】
正極片における炭素材料の構造特徴
実施例及び比較例における正極片サンプルに対してそれぞれSEMで測定した。
【0083】
実施例1-3における1
#正極片を代表とし、
図1はそのSEM(a)であり、図から分かるように、400本の第1カーボンナノチューブを組み合わせることによりカーボンナノチューブバンドルを形成し、かつ第1カーボンナノチューブのチューブ径が20nmであった。
【0084】
図2は1
#正極片におけるカーボンナノチューブバンドルのSEM(b)であり、20μm×20μmの範囲内に、6本のカーボンナノチューブバンドルがあり、カーボンナノチューブバンドルの平均長さが5μmであり、平均チューブ径が0.4μmであり、アスペクト比が12.5であった。
【0085】
図3は1
#正極片における第2カーボンナノチューブのSEM(c)であり、この図から分かるように、第2カーボンナノチューブの平均長さは0.4μmであり、平均チューブ径は5nmであり、第2カーボンナノチューブは前記正極活物質の表面及びカーボンナノチューブバンドルの表面に付着した。
電池の製造
【0086】
セパレータが正極と負極の間に介在して隔離の役割を果たすように、正極、セパレータ、負極を順に積層して、巻回され、外装に入れ、調製された電解液を注入してパッケージし、化成、脱気、サイドカット(Side Cutting)などのプロセスを経って、電池を得た。
【0087】
満充電極片抵抗の測定
測定方法
1)0.05Cのレートで電圧が4.4Vになるまで定電流充電した後に、電流が0.025C(カットオフ電流)になるまで定電圧充電し、リチウムイオン電池が満充電の状態とした。
【0088】
2)リチウムイオン電池を解体し、正極片を得た。
【0089】
3)2)で得られた正極片を湿度が5%~15%の環境で30min放置した後に密封して、抵抗を測定するための箇所に移行した。
【0090】
4)BER1200型の極片抵抗測定計を用いて、3)で得られた正極片の抵抗を測定し、隣接する測定点の間隔が2mm~3mmであり、異なる点を少なくとも15個測定し、全ての測定点の抵抗の平均値を正極片の満充電での湿潤した極片抵抗と記した。ここで、測定パラメータは、圧子面積153.94mm2、圧力3.5t、維持時間50sであった。
【0091】
測定の結果を表1、表2及び表3に示す。
【0092】
サイクル特性の測定
(25±3)℃の環境で、リチウムイオン電池を0.5Cの電流で電圧が4.4Vになるまで充電した後に、電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。その後、1Cで電圧3.0Vになるまで放電した。500サイクルの後に電池の残存容量と初期容量との比を測定し、容量維持率を得た。
【0093】
測定の結果を表1、表2及び表3に示す。
【0094】
初期DCRの測定及び500サイクル後のDCRの測定
測定方法
(25±3)℃の環境で、リチウムイオン電池を0.5Cの電流で電圧が4.4Vになるまで充電した後に、電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。その後、0.1Cの電流で2時間放電し、1h静置した後、0.1Cの電流(I1)で10s放電し、最後の1sの放電電圧V1を記した後に、1Cの電流(I2)で1s放電し、最後の1sの放電電圧V2を記し、DCR=(V1-V2)/(I2-I1)であった。
【0095】
充電速度の測定
測定方法
(25±3)℃の環境で、電池を3C電流で電圧が4.4Vになるまで充電した後に、電流が0.4Cになるまで定電圧充電し、得られた充電時間を記した。
【0096】
測定の結果を表1、表2及び表3に示す。
【0097】
レート特性の測定
(25±3)℃の環境で、電池を0.5Cの電流で電圧が4.4Vになるまで充電した後に、4.4Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電した後に、それぞれ0.2C及び2Cの電流で満放電して、それぞれ0.2C及び2Cにおける放電容量、2C放電容量/0.2C放電容量を得ることにより、2Cにおける放電レートを得た。
【0098】
測定の結果を表1、表2及び表3に示す。
【0099】
低温特性の測定
(25±3)℃の環境で、電池を0.5Cの電流で、電圧が4.4Vになるまで充電した後に、4.4Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電して、その後、それぞれ25℃及びー20℃の温度で0.2Cの電流で放電し、―20℃での放電容量/25℃での放電容量として低温放電率を得た。
【0100】
測定の結果を表1、表2及び表3に示す。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
表1と比較例1~比較例4との比較から分かるように、正極活物質層がカーボンナノチューブバンドルを含み、かつカーボンナノチューブバンドルのアスペクト比が2.5~100である場合は、カーボンナノチューブバンドルを含まない電池に比べて、電池のDCR、レート特性、低温特性が改善され、充電時間も短縮される。同時に、カーボンナノチューブバンドル及び第2カーボンナノチューブを含み、かつパラメータが条件を満たす電池は、サイクル寿命も向上した。R×m≦5である場合、電池は優れた総合性能を有する。
【0105】
実施例1-1、1-2と実施例1-3との比較から分かるように、第2カーボンナノチューブを含有する電池は、第2カーボンナノチューブを含まない電池に比べて、電池のDCR、レート特性、低温特性が改善され、充電時間も短縮される。
【0106】
実施例1-3~実施例1-17から分かるように、カーボンナノチューブバンドルの平均長さ、平均チューブ径及びアスペクト比を適切な範囲に調整することにより、電池は小さいDCRを有し、レート特性、低温特性、サイクル寿命などの総合的性能が優れる。
【0107】
実施例1-18~実施例1-23から分かるように、20μm×20μmの範囲内のカーボンナノチューブバンドルの本数が2~30である場合、カーボンナノチューブバンドルは活物質の表面を被覆し、イオン伝導性が高く、形成された導電性ネットワークがより完備し、電池全体の性能が優れる。
【0108】
表2から分かるように、第2カーボンナノチューブの平均長さ及び平均チューブ径を適切な範囲に調整することにより、電池の総合性能を改善する効果がある。
【0109】
以上に述べた実施例は本発明の好ましい実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の設計思想から逸脱することなしに、当業者は、本発明の技術的解決策に対して行った様々な変形及び改善は、いずれも本発明の特許請求の範囲によって確定された保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】