IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェイアイオー・プラットフォームズ・リミテッドの特許一覧

特表2024-513625ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別するためのシステムおよび方法
<>
  • 特表-ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別するためのシステムおよび方法 図1
  • 特表-ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別するためのシステムおよび方法 図2
  • 特表-ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別するためのシステムおよび方法 図3
  • 特表-ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別するためのシステムおよび方法 図4
  • 特表-ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別するためのシステムおよび方法 図5
  • 特表-ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別するためのシステムおよび方法 図6
  • 特表-ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別するためのシステムおよび方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/08 20090101AFI20240319BHJP
   H04W 16/32 20090101ALI20240319BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W16/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520011
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 IB2022052824
(87)【国際公開番号】W WO2022208303
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202121015428
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
(71)【出願人】
【識別番号】523112747
【氏名又は名称】ジェイアイオー・プラットフォームズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・クマール・グプタ
(72)【発明者】
【氏名】アルン・ナーイル
(72)【発明者】
【氏名】アディティヤ・ガネシュ
(72)【発明者】
【氏名】アアユーシュ・バトナガー
(72)【発明者】
【氏名】アヴィナッシュ・バルドワージ
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067LL01
5K067LL05
(57)【要約】
本開示は、従来は常に、ネットワーク要素の主要性能指標(KPI)を測定し改善することによって主導されてきた、電気通信ネットワークにおけるネットワーク最適化のための新規な解決策であって、エクスペリエンスの劣化したカスタマの識別、およびこれらのカスタマの空間クラスタの識別を促進して、問題の正確な位置を正確に特定し、それによって、よりターゲットを絞ったネットワーク最適化を可能にすることに関する、新規な解決策を提供する。本発明に含まれるシステムおよび方法は、エクスペリエンスの劣化したこれらのカスタマの識別を可能にし、これらのカスタマの空間クラスタを識別して、問題の正確な位置を正確に特定し、それによって、よりターゲットを絞ったネットワーク最適化を可能にする。本開示は、ユーザの音声、データ、およびカバレッジのエクスペリエンスに関連する多数のメトリクスを集約すること、ならびに単一のKPIを得ることによって、ユーザのエクスペリエンスのベンチマークをし、それに応じてユーザのエクスペリエンスを追跡し、改善することが可能になる解決策を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のワイヤレスサービスにおけるエクスペリエンスの劣化の、ヘテロジーニアスネットワーク内の1人または複数のユーザによる識別を容易にするシステムであって、
前記ヘテロジーニアスネットワークに通信可能に結合された1つまたは複数のユーザ機器
を備え、前記ヘテロジーニアスネットワークが、
複数のノード、および前記1人または複数のユーザにワイヤレスサービスを提供するように構成された1つまたは複数のネットワークアクセスポイントと、
前記ヘテロジーニアスネットワークに動作可能に結合され、メモリ内に記憶された実行可能命令のセットを実行するプロセッサを備える分析サーバと
を備え、前記プロセッサが、前記実行可能命令のセットを実行すると、前記分析サーバに、
前記複数のノードから、前記1つまたは複数のユーザ機器によってアクセスされる前記1つまたは複数のワイヤレスサービスに関連する信号に関係するデータパケットのセットを受信することであって、前記データパケットのセットが事前定義の期間にわたって受信される、受信すること、
前記データパケットのセットから属性の第1のセットを抽出することであって、前記属性の第1のセットが、前記1つまたは複数のワイヤレスサービスの信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断およびミュートの発生に関連するパラメータに関係する、抽出すること、
抽出した前記属性の第1のセットを、ルーティングサーバの知識ベース内に記憶されたパラメータの所定のセットと比較することであって、前記パラメータの所定のセットが、前記1つまたは複数のワイヤレスサービスの信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断およびミュートの発生についてのパラメータのしきい値セットを含む、比較すること、
抽出した前記属性の第1のセットと前記パラメータの所定のセットとの前記比較に基づいて、受信した前記データパケットのセットを事前定義のいくつかのカテゴリにカテゴリ分けすること、
抽出した前記属性の第1のセットと前記パラメータの所定のセットとの前記比較に基づいて、カスタマエクスペリエンス(CE)スコアを算出すること、ならびに
算出した前記CEスコアに基づいて、エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザを識別すること
を行わせる、システム。
【請求項2】
前記ユーザのそれぞれについて算出された前記カスタマエクスペリエンススコアのnパーセンタイル値未満であるCEスコアに基づいて、前記エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザが識別される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記分析サーバが、
前記エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザに属する1つまたは複数の信号サンプルを、事前定義のサイズを各グリッドが有する1つまたは複数の空間グリッドにマッピングすること、
各グリッドの1つまたは複数の信号サンプルを、前記1つまたは複数の空間グリッドにわたるグリッド当たりの信号サンプル数のnパーセンタイルと比較すること、および
比較後に、グリッドクラスタのセットを、前記グリッドのセットの1つまたは複数の信号サンプルが前記1つまたは複数の空間グリッドにわたる前記グリッド当たりの信号サンプル数を下回る場合、選択すること
を行うようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記選択されたグリッドのセットから、最小クラスタ面積および最小測定サンプル密度に基づいて複数のグリッドクラスタを構築するために、命令のセットが実行される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
各グリッドクラスタの周りに、それぞれの前記グリッドクラスタをユーザエクスペリエンスの劣化したエリアを表す空間的ホールとして表すために、凹形境界が構築される、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記グリッドクラスタのセットが、視覚化および報告のためにストレージモジュール内に記憶される、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザが、視覚化および報告のためにストレージモジュール内に記憶される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記分析サーバが、クラスタリングすることに加えて、ユーザエクスペリエンスを直接的に測定し、追跡し、改善するようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
信号サンプルが、ユーザの音声、データ、およびカバレッジのエクスペリエンスに関連するメトリクスの集約物を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記分析サーバが、ユーザエクスペリエンスを継続して監視および追跡するように構成され、前記分析サーバがさらに、最も大きな被害を受けた任意の位置を識別し、ターゲットを絞った解決策を採用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
1つまたは複数のワイヤレスサービスにおけるエクスペリエンスの劣化の、ヘテロジーニアスネットワーク内の1人または複数のユーザによる識別を容易にする方法であって、
分析サーバによって、前記複数のノードから、1人または複数のユーザに関連する1つまたは複数のユーザ機器によってアクセスされる1つまたは複数のワイヤレスサービスに関連する信号に関係するデータパケットのセットを受信するステップであって、前記データパケットのセットが事前定義の期間にわたって受信され、前記分析サーバが、ヘテロジーニアスネットワークに動作可能に結合され、前記ヘテロジーニアスネットワークが、複数のノード、および1つまたは複数のネットワークアクセスポイントを備え、前記1つまたは複数のアクセスポイントが、前記1人または複数のユーザにワイヤレスサービスを提供するように構成されている、ステップと、
前記分析サーバによって、前記データパケットのセットから属性の第1のセットを抽出するステップであって、前記属性の第1のセットが、前記1つまたは複数のワイヤレスサービスの信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断およびミュートの発生に関連するパラメータに関係する、ステップと、
前記分析サーバによって、抽出した前記属性の第1のセットをルーティングサーバの知識ベース内に記憶されたパラメータの所定のセットと比較するステップであって、前記パラメータの所定のセットが、前記1つまたは複数のワイヤレスサービスの信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断およびミュートの発生についてのパラメータのしきい値セットを含む、ステップと、
抽出した前記属性の第1のセットと前記パラメータの所定のセットとの前記比較に基づいて、前記分析サーバによって、受信した前記データパケットのセットを事前定義のいくつかのカテゴリにカテゴリ分けするステップと、
前記分析サーバによって、抽出した前記属性の第1のセットと前記パラメータの所定のセットとの前記比較に基づいて、カスタマエクスペリエンス(CE)スコアを算出するステップと、
前記分析サーバによって、算出した前記CEスコアに基づいて、エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザを識別するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記分析サーバによって、前記ユーザのそれぞれについて算出された前記カスタマエクスペリエンススコアのnパーセンタイル値未満であるCEスコアに基づいて、前記エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザを識別するステップ
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分析サーバによって、前記エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザに属する1つまたは複数の信号サンプルを、事前定義のサイズを各グリッドが有する1つまたは複数の空間グリッドにマッピングするステップと、
前記分析サーバによって、各グリッドの1つまたは複数の信号サンプルを、前記1つまたは複数の空間グリッドにわたるグリッド当たりの信号サンプル数のnパーセンタイルと比較するステップと、
比較後に、前記分析サーバによって、グリッドクラスタのセットを、前記グリッドのセットの1つまたは複数の信号サンプルが前記1つまたは複数の空間グリッドにわたる前記グリッド当たりの信号サンプル数を下回る場合、選択するステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記選択されたグリッドのセットから、最小クラスタ面積および最小測定サンプル密度に基づいて複数のグリッドクラスタを構築するために、命令のセットを実行するステップ
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
各グリッドクラスタの周りに、それぞれの前記グリッドクラスタをユーザエクスペリエンスの劣化したエリアを表す空間的ホールとして表すために、凹形境界を構築するステップ
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記グリッドクラスタのセットを、視覚化および報告のためにストレージモジュール内に記憶するステップ
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザを、視覚化および報告のためにストレージモジュール内に記憶するステップ
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
クラスタリングすることに加えて、ユーザエクスペリエンスを直接的に測定し、追跡し、改善するようにさらに構成されている前記分析サーバを、構成するステップ
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
信号サンプルが、ユーザの音声、データ、およびカバレッジのエクスペリエンスに関連するメトリクスの集約物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記分析サーバを、ユーザエクスペリエンスを継続して監視および追跡するように構成するステップであって、前記分析サーバがさらに、最も大きな被害を受けた任意の位置を識別し、ターゲットを絞った解決策を採用する、ステップ
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
権利の留保
本特許文献の開示の一部は、限定はしないが、Jio Platforms Limited(JPL)またはその関連会社(以後所有者と呼ばれる)に属する著作権、意匠、商標、ICレイアウト設計、および/またはトレードドレス保護などの知的財産権の対象となる事項を含む。所有者は、特許商標庁の特許ファイルまたは記録に現れるとおりの、本特許文献または本特許開示の何人による複製にも異議はないが、そうでない場合は、全ての権利を何であれ留保する。そのような知的財産に対するあらゆる権利は、所有者によって完全に留保される。
【0002】
本開示は、電気通信に関し、より詳細には、ヘテロジーニアスネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したユーザの空間クラスタを識別することに関し、電気通信ネットワーク内のエクスペリエンスが最適に満たないユーザのクラスタを識別するための空間クラスタリングに使用されることが意図されている。
【背景技術】
【0003】
関連技術についての以下の説明は、本開示の分野に属する背景情報を提供することが意図されている。本セクションは、本開示のさまざまな特徴に関係することのある、当技術分野のいくつかの態様を含むことがある。しかし、本セクションは、従来技術を認めるものとして使用されるのではなく、読者の本開示に対する理解を高めるために使用されるにすぎないことを理解されたい。
【0004】
今日、GSM、EDGE、HSPA、LTEなどのようなワイヤレス技術の出現とともに、ワイヤレスネットワーク内の全ての通信は、音声、ビデオ、データ、広告、コンテンツ、メッセージング、ブロードキャストなどのさまざまな通信サービスを提供している。そのようなネットワークの一例が、発展型ユニバーサル地上無線アクセス(E-UTRA)であり、これは、3GPP(登録商標)リリース5以降において規定されたUMTSおよびHSDPA/HSUPA技術の置き換えとなるための無線アクセスネットワーク標準である。E-UTRAは、モバイルネットワーク向けの3GPPのロングタームエボリューション(LTE)アップグレードパスのエアインターフェースである。LTEのE-UTRAは、HSPAとは異なり、W-CDMAとは無関係であるとともに互換性のない、全く新しいエアインターフェースシステムである。E-UTRAは、より高いデータレート、より小さなレイテンシを可能にし、パケットデータについて最適化されている。グローバルシステムフォーモバイルコミュニケーションズ(GSM)技術の後継であるUMTSは、現在、広帯域-符号分割多元接続(W-CDMA)、時分割-符号分割多元接続(TD-CDMA)、および時分割-同期符号分割多元接続(TD-SCDMA)などのさまざまなエアインターフェース標準をサポートしている。UMTSは、高速パケットアクセス(HSPA)など、拡張された3Gデータ通信プロトコルもサポートしており、これにより、関連するUMTSネットワークに、より高いデータ転送速度およびより大きな容量がもたらされる。容量およびより高いデータ転送速度に伴って、セルおよびセルの最適化に関連する多くの問題が生じている。
【0005】
5Gセルラー配備では、マクロセルがさまざまなスモールセルとともに、ターゲットエリアにわたるカバレッジおよび容量の解決策を提供するように計画される。したがって、ネットワークにとってサイト間距離がより狭くなる。さらに、新興のネットワークにおける発達しつつあるデータ需要を軽減するために、より多数のサイト/eノードBが必要となり、それにより、大都市において高密度から超高密度の無線アクセスネットワークが形成される。
【0006】
電気通信ネットワークにおけるネットワーク最適化は、従来は常に、ヘテロジーニアスネットワーク内のネットワーク要素の主要性能指標(KPI)を測定し改善することによって主導されてきた。この手法では、性能の悪いネットワーク要素によって影響を受けたカスタマの実際の位置が無視される。
【0007】
現在、ネットワーク最適化の既存の手法は、ヘテロジーニアスネットワーク要素の性能を改善することにのみ焦点を当てて、カスタマが直面する実際の問題を考慮に入れていない。ネットワーク最適化アクティビティの結果は、カスタマのエクスペリエンスの直接的な改善に常に対応しているとは限らない。問題の核心は、エクスペリエンスの劣化したこれらのカスタマがどこに位置するかをオペレータが識別できないこと、およびこれらのユーザのクラスタを識別できないことにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、エクスペリエンスの劣化したカスタマの識別、およびこれらのカスタマの空間クラスタの識別を促進して、問題の正確な位置を正確に特定し、それによって、よりターゲットを絞ったネットワーク最適化を可能にすることが必要とされている。
【0009】
本開示は、エクスペリエンスの劣化したカスタマが集中する特定のエリアを、ネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したカスタマを識別すること、次いで、ヘテロジーニアスネットワーク内のこれらのユーザが集中する凹包で囲まれたクラスタを識別することによって、直接的に正確に特定するための解決策を可能にする。
【0010】
主要な目的の1つは、本発明が、組織がネットワーク要素主導の性能最適化からユーザ主導の性能改善に方向転換するのを助け、それにより、組織が、クラスタリングすることに加えて、ユーザエクスペリエンスを直接的に測定し、追跡し、改善できるようにすることである。
【0011】
本発明の別の目的は、各カスタマについてのカスタマエクスペリエンスを測定し解析することが、カスタマエクスペリエンスが集約され、クラスタリングされて、対処すべきエリアが得られない限り、有用な結果をもたらさないことに対する解決策を、本発明により提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ユーザの音声、データ、およびカバレッジのエクスペリエンスに関連する多数のメトリクスを集約すること、ならびに単一のKPIを得ることによって、ユーザのエクスペリエンスのベンチマークをし、それに応じてユーザのエクスペリエンスを追跡し、改善することが可能になる解決策を、本発明により提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、電気通信サービスプロバイダが、最も大きな被害を受けた位置を識別し、ターゲットを絞った解決策を採用するための解決策を、本発明により提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様では、本開示は、1つまたは複数のワイヤレスサービスにおけるエクスペリエンスの劣化の、ヘテロジーニアスネットワーク内の1人または複数のユーザによる識別を容易にするシステムを提供する。システムは、ヘテロジーニアスネットワークに通信可能に結合された1つまたは複数のユーザ機器を含むことができ、ヘテロジーニアスネットワークは、複数のノード、および1人または複数のユーザにワイヤレスサービスを提供するように構成された1つまたは複数のネットワークアクセスポイントをさらに含むことができる。システムは、ヘテロジーニアスネットワークに動作可能に結合された分析サーバをさらに含むことができる。分析サーバは、メモリ内に記憶された実行可能命令のセットを実行するプロセッサをさらに含むことができ、プロセッサは、実行可能命令のセットを実行すると、分析サーバに、複数のノードから、1つまたは複数のユーザ機器によってアクセスされる1つまたは複数のワイヤレスサービスに関連する信号に関係するデータパケットのセットであって、事前定義の期間にわたって受信されるデータパケットのセットを受信することを行わせる。分析サーバは、データパケットのセットから属性の第1のセットを抽出することであって、属性の第1のセットが、1つまたは複数のワイヤレスサービスの信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断(drop)およびミュート(mute)の発生に関連するパラメータに関係する、抽出すること、および次いで、抽出した属性の第1のセットを、ルーティングサーバの知識ベース内に記憶されたパラメータの所定のセットと比較することであって、パラメータの所定のセットが、1つまたは複数のワイヤレスサービスの信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断およびミュートの発生についてのパラメータのしきい値セットを含む、比較することを行うことができる。次いで、分析サーバは、抽出した属性の第1のセットとパラメータの所定のセットとの比較に基づいて、受信したデータパケットのセットを事前定義のいくつかのカテゴリにカテゴリ分けすること、および抽出した属性の第1のセットとパラメータの所定のセットとの比較に基づいて、カスタマエクスペリエンス(CE)スコアを算出することを行うことができる。さらに、分析サーバは、算出したCEスコアに基づいて、エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザを識別することを行うことができる。
【0015】
一態様では、本開示は、1つまたは複数のワイヤレスサービスにおけるエクスペリエンスの劣化の、ヘテロジーニアスネットワーク内の1人または複数のユーザによる識別を容易にする方法を提供する。方法は、分析サーバによって、複数のノードから、1人または複数のユーザに関連する1つまたは複数のユーザ機器によってアクセスされる1つまたは複数のワイヤレスサービスに関連する信号に関係するデータパケットのセットを受信するステップを含むことができる。データパケットのセットは、事前定義の期間にわたって受信されてよい。分析サーバは、複数のノード、および1人または複数のユーザにワイヤレスサービスを提供するように構成された1つまたは複数のネットワークアクセスポイントを備える、ヘテロジーニアスネットワークに動作可能に結合されてよい。方法は、分析サーバによって、データパケットのセットから属性の第1のセットを抽出するステップであって、属性の第1のセットが、1つまたは複数のワイヤレスサービスの信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断およびミュートの発生に関連するパラメータに関係する、ステップと、分析サーバによって、抽出した属性の第1のセットをルーティングサーバの知識ベース内に記憶されたパラメータの所定のセットと比較するステップとをさらに含むことができる。パラメータの所定のセットは、1つまたは複数のワイヤレスサービスの信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断およびミュートの発生についてのパラメータのしきい値セットを含む。方法は、抽出した属性の第1のセットとパラメータの所定のセットとの比較に基づいて、分析サーバによって、受信したデータパケットのセットを事前定義のいくつかのカテゴリにカテゴリ分けし、次いで、抽出した属性の第1のセットとパラメータの所定のセットとの比較に基づいて、カスタマエクスペリエンス(CE)スコアを算出するステップを含むことができる。さらに、方法は、分析サーバによって、算出したCEスコアに基づいて、エクスペリエンスの劣化した1人または複数のユーザを識別するステップを含むことができる。
【0016】
本明細書に組み込まれ、本開示の一部をなす添付の図面は、開示される方法およびシステムの例示的な実施形態を示し、図面では、同様の参照番号がさまざまな図面全体を通して同じ部分を指す。図面中のコンポーネントは必ずしも原寸に比例しておらず、その代わりに、本開示の原理を明確に示すことに重点が置かれている。いくつかの図面は、ブロック図を使用してコンポーネントを示していることがあり、各コンポーネントの内部回路を表していないことがある。そのような図面の開示は、そのようなコンポーネントを実装するために一般に使用される電気部品または回路の開示を含むことが、当業者には理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施形態による、既存の典型的なヘテロジーニアス電気通信配備を示す図である。
図2】本開示の一実施形態による、提案される例示的なカスタマエクスペリエンススコア算出およびエクスペリエンスの劣化したユーザの識別を示す図である。
図3】本開示の一実施形態による、提案される例示的な、高密度ブロック図の識別されたグリッドの空間クラスタリングを示す図である。
図4】本開示の一実施形態による、提案される例示的な、ヘテロジーニアスネットワークのエリアA内のエクスペリエンスの劣化したクラスタを示す図である。
図5】本開示の一実施形態による、提案される例示的なシステム図である。
図6】本開示の一実施形態による、提案される例示的なサンプルKPI分類を示す図である。
図7】本開示の一実施形態による、提案される例示的なサンプルスコア集約を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明では、説明を目的として、本発明の実施形態の完全な理解をもたらすためにさまざまな具体的詳細が記載される。しかし、本発明の実施形態はこれらの具体的詳細がなくても実践できることが、明らかとなろう。以後説明するいくつかの特徴をそれぞれ、互いに独立して使用することもでき、あるいは他の特徴との任意の併用で使用することもできる。個々の特徴は、上で論じた課題のいずれにも対処しないこともあり、上で論じた課題のいくつかのみに対処することもある。上で論じた課題のいくつかは、本明細書において説明する特徴のいずれかによって完全に対処されるとは限らないことがある。本発明の例示的な実施形態については以下に、さまざまな図面内に示される通りに説明し、図面では、同様の参照番号がさまざまな図面全体を通して同じ部分を指す。
【0019】
一態様では、本開示は、エクスペリエンスの劣化したカスタマを識別するとともにこれらのカスタマの空間クラスタを識別して、問題の正確な位置を正確に特定し、それによって、ヘテロジーニアスネットワーク内でよりターゲットを絞ったネットワーク最適化をコスト効率の良い方法で可能にすることに関する。本開示は、エクスペリエンスの劣化したカスタマが集中する特定のエリアを、ネットワーク内のエクスペリエンスの劣化したカスタマを識別すること、次いで、これらのユーザが集中する凹包で囲まれたクラスタを識別することによって、直接的に正確に特定するための解決策を可能にする。
【0020】
一態様において、図1は、エリアA内で動作する典型的なヘテロジーニアスネットワークを示す。電気通信ネットワークは、ユーザにワイヤレスサービスを提供するために、マクロセル[101]、スモールセル[102]、およびWi-Fiアクセスポイント[103]のような無線ネットワーク要素から構成される。ネットワークは、ユーザ[104]によってアクセスされ、ユーザ[104]は人間またはマシンとすることができる。典型的なIPベースの電気通信ネットワークでは、ユーザはネットワークに無線ネットワーク要素を介して接続し、必要に応じて必要なときにIPベースのデータサービスまたは音声サービスを使用する。音声またはデータに関係する使用インスタンス(usage instance)がそれぞれ、電気通信コア内に位置する呼ログサーバ(call logs server)[105]によって収集される、ジオロケートされた(geolocated)空間測定サンプル内に捕捉される。他のモジュールが、集中型エンティティ105に、特定の時間間隔に対応する測定サンプルの収集を要求することができる。ジオロケートされた測定サンプルは、以下のうちの1つまたは複数を含むことができる。
IMSI(カスタマ識別子)
CELL ID(マクロセル/マイクロセル/Wi-Fi識別子)
緯度/経度(ユーザの推定位置)
音声/データフラグ
セッション持続時間
RSRP(信号強度)
RSRQ(信号品質)
SINR(信号対干渉雑音比)
呼切断フラグ(Call Drop Flag)(音声フラグが真である場合)
呼ミュートスタット(Call Mute Stat)(音声フラグが真である場合)
【0021】
別の実施形態において、図2は、本発明のさまざまな実施形態による、エクスペリエンスの劣化したユーザの識別について説明している。この識別は[201]から開始し、[201]では、指定の期間にわたって測定サンプルを収集する。次いで、[202]に示すように、サンプルを、信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断およびミュートの発生のバケットにカテゴリ分けする。カテゴリ分け後、[204]に示すように、サンプルをカスタマ別に集約して、信号品質、信号強度、干渉、セルスループット、切断およびミュートの発生のバケットの、カスタマごとの集約後の値を得る。これらのバケットをカスタマ別に組み合わせると、カスタマのそれぞれについて、全体的なカスタマエクスペリエンス値が算出される。最後に、[205]に示すように、そのスコアがカスタマのそれぞれについて算出されたカスタマエクスペリエンススコアのnパーセンタイル値未満である必要のあるようなカスタマエクスペリエンススコアに基づいて、エクスペリエンスの劣化したカスタマを識別する。
【0022】
別の実施形態において、図3は、図2に従って算出された全てのカスタマにわたるカスタマエクスペリエンススコアの下位nパーセンタイルの部分であると識別された、エクスペリエンスの劣化したカスタマに属する空間測定サンプルを、クラスタリングするプロセスについて説明している。クラスタリングのプロセスは[301]から開始し、[301]では、エクスペリエンスの劣化したものとして識別されたカスタマに属するサンプルを、サイズSを各グリッドが有する空間グリッドにマッピングする。該当する全てのサンプルを対応する空間グリッドにマッピングした後で、[302]に従って、クラスタリングのためにグリッドのセットを選択し、この選択は、選択されたグリッドのサンプル数が、エクスペリエンスの劣化したカスタマの空間測定値をマッピングした結果として生じた全てのグリッドにわたる、グリッド当たりのサンプル数のnパーセンタイルを下回るべきであるという基準に基づく。クラスタリングのためのグリッドを選択した後で、[303]に従って、グリッドベースのDBSCANアルゴリズムを実行して、グリッドクラスタを構築する。さらに、DBSCANアルゴリズムには2つの構成可能なパラメータを与え、それらはそれぞれ、最小クラスタ面積および最小測定サンプル密度である。オプションで、各クラスタの周りに、それぞれのクラスタをカスタマエクスペリエンスの劣化したエリアを表す空間的ホール(spatial hole)として表すために、凹形境界(concave boundary)も構築する。エクスペリエンスの劣化したカスタマの空間クラスタを算出した後で、[304]では、クラスタのそれぞれについての1つまたは複数のパラメータを、それぞれのクラスタに属するグリッドのそれぞれにマッピングされた、空間測定されたサンプルのさまざまなフィールド/パラメータを集約することによって算出する。
【0023】
別の実施形態において、図4は、本発明のさまざまな態様による、エクスペリエンスの劣化した識別されたカスタマの空間測定サンプルに対して図3において説明した空間クラスタリングプロセスを実行した後でエリアAの内側に識別された空間クラスタ[401]を示す。
【0024】
別の実施形態において、図5は、本発明のさまざまな態様による、分析サーバのブロック図および主要コンポーネントを表す。501は、エリアAに対応する空間測定サンプルが電気通信コアからフェッチされ、解析のために記憶される、ストレージモジュールを示す。502は、CEC(カスタマエクスペリエンス算出器)モジュールを表し、このモジュールは、本発明のさまざまな態様に従ってカスタマエクスペリエンススコアを算出し、算出したカスタマエクスペリエンススコアを、後に使用できるようにストレージモジュール501内に記憶する。モジュール504は、本発明のさまざまな態様に従ってエクスペリエンスの劣化したカスタマを識別し、識別したカスタマを、後に使用できるようにストレージモジュール501内に記憶する。モジュール503は、地理空間クラスタリングモジュールを表し、503は、501内に記憶された空間測定サンプルの集まりおよびエクスペリエンスの劣化したカスタマのリストを取り出し、サンプルの集まりをフィルタリングして、エクスペリエンスの劣化したカスタマに対応するサンプルのみを選択し、本発明のさまざまな態様に従って、エクスペリエンスの劣化したカスタマの空間クラスタを、各クラスタについてのさまざまなパラメータとともに算出する。算出したエクスペリエンスの劣化したカスタマのクラスタは、503によって、視覚化および報告のためにストレージモジュール501内に最終的に記憶される。505および506はそれぞれ、501、502、503、および504によってそれらのそれぞれの計算の必要性のためにアクセスされる、CPUおよびRAMを表す。
【0025】
あるカスタマについてのCEスコア算出が、図6および図7に示されている。CEスコア算出は、サンプル分類器[603]およびサンプルスコア集約器[701]を備える。CEスコア算出は、そのカスタマに属する空間測定サンプル[602]のそれぞれについての主要性能指標[601]をバケットに、最悪を1、最良を5として、分類することから開始する。各KPIについて算出されたバケットは、空間測定サンプル[602]についてのそのKPIのスコア[604]と呼ばれる。この分類は、サンプル分類器[603]を通じて行われ、サンプル分類器[603]は、そのカスタマについての各サンプルをパースし、その値が属すべき適切なバケットを識別する。
【0026】
別の実施形態において、次いで、あるカスタマに属する全てのサンプル[602]およびそれらの対応するKPIスコア[604]を、サンプルスコア集約器[701]に供給して、特定の時間間隔にわたるそのカスタマについてのカスタマエクスペリエンススコア[702]を算出する。カスタマエクスペリエンススコアを算出するためにサンプルスコア集約器によって使用される式は、次の通りである。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、Sは、所与の時間間隔にわたるそのカスタマの全てのサンプルにわたって集約されたあるKPIの平均スコアを表す。このスコアが、各KPIについて算出され、Σwi=1であるような、そのKPIについての正規化された重み付け係数(weightage factor)wiと乗算される。得られた和がnで除算され、ただしnは、指定の持続時間にわたってそのユーザについて得られたゼロでないSの数である。
【0029】
以上、本明細書において、開示した実施形態に大きな重点を置いてきたが、多くの実施形態を作成できること、また本発明の原理から逸脱することなく、実施形態に多くの変更を加えることができることが理解されよう。本発明の実施形態の上記および他の変更は、当業者に明らかとなろう。それにより、実装される前述の説明事項は例示的かつ非限定的であることを理解されたい。
【0030】
本開示の利点
主要な利点の1つは、本発明が、組織がネットワーク要素主導の性能最適化からユーザ主導の性能改善に方向転換するのを助け、それにより、組織が、クラスタリングすることに加えて、ユーザエクスペリエンスを直接的に測定し、追跡し、改善できるようにすることである。
【0031】
本発明の別の利点は、各カスタマについてのカスタマエクスペリエンスを測定し解析することが、カスタマエクスペリエンスが集約され、クラスタリングされて、対処すべきエリアが得られない限り、有用な結果をもたらさないことに対する解決策を、本発明により提供することである。
【0032】
本発明の別の利点は、ユーザの音声、データ、およびカバレッジのエクスペリエンスに関連する多数のメトリクスを集約すること、ならびに単一のKPIを得ることによって、ユーザのエクスペリエンスのベンチマークをし、それに応じてユーザのエクスペリエンスを追跡し、改善することが可能になる解決策を、本発明により提供することである。
【0033】
本発明の別の利点は、電気通信サービスプロバイダが、最も大きな被害を受けた位置を識別し、ターゲットを絞った解決策を採用するための解決策を、本発明により提供することである。
【符号の説明】
【0034】
101 マクロセル
102 スモールセル
103 Wi-Fiアクセスポイント
104 ユーザ
105 呼ログサーバ、集中型エンティティ
401 空間クラスタ
501 ストレージモジュール
502 CEC(カスタマエクスペリエンス算出器)モジュール
503 地理空間クラスタリングモジュール
504 モジュール
505 CPU
506 RAM
601 主要性能指標
602 空間測定サンプル
603 サンプル分類器
604 そのKPIのスコア、KPIスコア
701 サンプルスコア集約器
702 カスタマエクスペリエンススコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】