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特表2024-513629体外血液循環のための中空繊維質量伝達駆動
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】体外血液循環のための中空繊維質量伝達駆動
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240319BHJP
   A61M 1/18 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61M1/16 120
A61M1/18 525
A61M1/18 513
A61M1/18 515
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542589
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2021136347
(87)【国際公開番号】W WO2023092653
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/264,545
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520414893
【氏名又は名称】深▲せん▼漢諾医療科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】ザニボニ アンドレア
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA03
4C077BB06
4C077CC04
4C077EE01
4C077LL05
(57)【要約】
体外血液循環に用いられる装置であって、複数の円形の中空繊維マット層のうちの少なくとも2つを備える酸素供給器モジュールを備えるポッティング体と、当該複数の円形の中空繊維マット層のうちの少なくとも2つを備える熱交換器モジュールと、当該ポッティング体の第1の端と隣接する血液入口と、当該ポッティング体の第2の端と隣接する血液出口と、を備える。当該装置は、ガス入口及びガス出口と、流体入口及び流体出口と、を備える。当該複数の中空繊維マットのうちの第1の中空繊維マットは、当該複数の中空繊維マットのうちの第2の中空繊維マットの複数本の中空繊維の位置合わせ方向に対して角度をなす方向に位置合わせされる複数の中空繊維を備え、且つ、当該複数の中空繊維マットは、互いに同様な配向を有するように位置合わせされる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液循環と組み合わせて使用するための酸素供給装置であって、
位置合わせ軸線を限定する第1の位置合わせ特徴を備えるポッティング体と、
複数の円形の中空繊維マット層を備える酸素供給器モジュールであって、前記複数の円形の中空繊維マット層は、前記ポッティング体の前記第1の位置合わせ特徴と位置合わせすることによって、前記位置合わせ軸線に対する前記複数の中空繊維マット層のそれぞれの方向を限定させるように構成される第2の位置合わせ特徴を備える酸素供給器モジュールと、
前記複数の円形の中空繊維マット層のうちの少なくとも2つを備える熱交換器モジュールと、
前記ポッティング体の第1の端に近接して位置決めされる血液入口と、
前記ポッティング体の前記第1の端とは反対の第2の端に近接して位置決めされる血液出口と、
前記複数の中空繊維マット層の複数本の中空繊維を通過するようにガス混合物を案内するために構成されるガス入口及びガス出口と、
前記ポッティング体の一部によってH/C流体を供給及び排出するために構成される流体入口及び流体出口と、を備え、
そのうち、前記複数の中空繊維マット層のうちの第1の層は、前記位置合わせ軸線と直交する方向に対して第1の角度で設けられる第1の複数本の平行中空繊維を含み、且つ、前記複数の中空繊維マット層のうちの第2の層は、前記位置合わせ軸線と直交する方向に対して第2の角度で設けられる第2の複数本の平行中空繊維を含み、前記第1の角度及び前記第2の角度は、前記位置合わせ軸線と直交する方向の反対側に設けられる、酸素供給装置。
【請求項2】
前記ガス混合物は、前記酸素供給器モジュールにおける前記複数の中空繊維マット層のうちの前記少なくとも2つを通過するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記H/C流体は、前記熱交換器モジュールにおける前記複数の中空繊維マット層のうちの前記少なくとも2つを通過するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ポッティング体は、前記血液入口と前記熱交換器モジュールとの間に位置決めされる分配グリッドをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ポッティング体は、前記熱交換器モジュールと前記酸素供給器モジュールとの間に位置決めされる分離グリッドをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ポッティング体は、前記酸素供給器モジュールと前記血液出口との間に位置決めされる収集グリッドをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ポッティング体の前記第1の端に近接して配置される第1のケース部分と、前記ポッティング体の前記第2の端に近接して位置決めされる第2のケース部分と、をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の中空繊維マット層のそれぞれは、前記複数本の中空繊維にカップリングされる複数本の糸を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記複数本の糸は、前記複数本の中空繊維の配列と直交しない角度で配列される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
体外血液循環装置に用いられる複数の中空繊維マット層のアセンブリであって、
互いに隣接して位置決めされるとともに、複数本の平行な糸及び複数本の平行な中空繊維をそれぞれ含む第1の中空繊維マット層及び第2の中空繊維マット層を含み、
そのうち、前記第1の中空繊維マット層及び前記第2の中空繊維マット層における前記複数本の糸は、位置合わせ軸線に平行となるように位置決めされるとともに、
そのうち、前記第1の中空繊維マット層の前記複数本の中空繊維は、前記位置合わせ軸線と直交する方向に対して第1の角度で設けられ、それにより第2の軸線を限定し、且つ、前記第2の中空繊維マット層の前記複数本の中空繊維は、前記位置合わせ軸線と直交する方向に対して第2の角度で設けられ、それにより、前記位置合わせ軸線と直交する前記方向において前記第1の角度とは反対の側に位置する第3の軸線を限定する、アセンブリ。
【請求項11】
前記第1の中空繊維マット層及び前記第2の中空繊維マット層の形状は、円形である、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記第2の軸線は、前記第3の軸線に対して0度より大きく50度以下の角度をなしている、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記複数の中空繊維マット層のそれぞれは、互いに隣接して位置決めされる前記中空繊維マット層の前記少なくとも2つの溝と位置合わせされる少なくとも2つの溝を備える、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記複数の中空繊維マット層のそれぞれは、互いに同様な配向を有するように位置合わせされる、請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記複数の中空繊維マット層は、前記第2の中空繊維マット層の真下に位置決めされる第3の中空繊維マット層と、前記第3の中空繊維マット層の真下に位置決めされる第4の中空繊維マット層と、を含む、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記第3の中空繊維マット層の複数本の中空繊維は、前記第2の軸線に沿って位置合わせされ、且つ、前記第4の中空繊維マット層の複数本の中空繊維は、前記第3の軸線に位置合わせされる、請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項17】
体外血液循環と組み合わせて使用するための酸素供給装置であって、
第1の端の近くに設けられる血液入口と、前記第1の端とは反対の第2の端の近くに設けられる血液出口と、位置合わせ軸線を限定する第1の位置合わせ特徴を備える外側面と、を含むポッティング体と、
複数の円形の中空繊維マット層を備える酸素供給器モジュールであって、前記複数の円形の中空繊維マット層は、複数本の糸にカップリングされる複数本の中空繊維を含み、前記層のそれぞれは、前記ポッティング体の前記第1の位置合わせ特徴と位置合わせすることによって、前記位置合わせ軸線に対する前記複数の中空繊維マット層のそれぞれの方向を限定させるように構成される第2の位置合わせ特徴を備える酸素供給器モジュールと、を備え、
そのうち、前記複数の中空繊維マット層のうちの第1の層は、前記位置合わせ軸線と直交する方向に対して第1の位置合わせ角度で設けられる第1の複数本の平行中空繊維を含み、且つ、前記複数の中空繊維マット層のうちの前記第1の層と隣接して設けられる第2の層は、前記位置合わせ軸線と直交する方向に対して第2の位置合わせ角度で設けられる第2の複数本の平行中空繊維を含み、前記第1の角度及び前記第2の角度は、前記位置合わせ軸線と直交する前記方向の反対側に設けられる、酸素供給装置。
【請求項18】
前記第1の角度及び前記第2の角度は、前記位置合わせ軸線に対する対角である、請求項17に記載の酸素供給装置。
【請求項19】
前記第1の角度及び前記第2の角度のうちのいずれも0度より大きく25度以下である、請求項17に記載の酸素供給装置。
【請求項20】
前記中空繊維マット層のそれぞれにおいて、前記複数本の糸は、前記複数本の中空繊維の配列と直交しない角度で設けられる、請求項19に記載の酸素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体外血液循環のための装置の分野に関する。より具体的には、本開示は、体外血液酸素供給器及びその部品、例えば酸素供給器及び熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
体外血液循環のための装置は、半透過性の中空繊維膜の壁を介して血液とガス混合物との間でO及びCOを交換するとともに、血液と加熱又は冷却流体との間で熱量を交換するために、酸素供給器と熱交換器との2つの部分を含むことができる。ガス混合物及び加熱/冷却流体(水溶液)が中空繊維室の内部で循環する場合、血液は、中空繊維の外面に接触する。このような技術を使用する装置では、中空繊維は、異なる方式で編むことができる。それらは、芯を中心に編まれたモノフィラメント又はマルチフィラメントの形態となってもよく、又は芯を中心に巻きつかれたマットと構成されてもよく、又は1層ずつ積み上げられたマット層に積層されてもよい(芯がない)。当該技術の様々な例示は、本技術分野では周知のものである。
【0003】
ところで、依然として血細胞を損害させる可能性のある高い血液側の圧力低下が減少した血液体外循環装置、及び血液中の凝塊の形成を減少させつつ簡単な形成及び製造プロセスを実現する装置を必要とする。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態は、その構造としてより高いガス交換効率及びより良い酸素供給効果を提供すると明確に想定される、積層された中空繊維マット層に編まれた酸素供給中空繊維膜、当該中空繊維膜の製造方法、及びより製造しやすい当該中空繊維膜を用いて製造された酸素供給アセンブリを含む。
【0005】
1つの例示(「例示1」)によれば、体外血液循環と組み合わせて使用するための酸素供給装置は、位置合わせ軸線を限定する第1の位置合わせ特徴を備えるポッティング体と、複数の円形の中空繊維マット層を備える酸素供給器モジュールであって、当該複数の円形の中空繊維マット層は、ポッティング体の第1の位置合わせ特徴と位置合わせすることによって、当該位置合わせ軸線に対する当該複数の中空繊維マット層のそれぞれの方向を限定させるように構成される第2の位置合わせ特徴を備える酸素供給器モジュールと、当該複数の円形の中空繊維マット層のうちの少なくとも2つを備える熱交換器モジュールと、ポッティング体の第1の端に近接して位置決めされる血液入口と、ポッティング体の第1の端とは反対の第2の端に近接して位置決めされる血液出口と、を備える。当該装置は、当該複数の中空繊維マット層の複数本の中空繊維を通過するようにガス混合物を案内するために構成されるガス入口及びガス出口と、ポッティング体の一部によって加熱器/冷却器(H/C)流体を供給及び排出するために構成される流体入口及び流体出口と、をさらに備える。当該装置では、当該複数の中空繊維マット層のうちの第1の層は、位置合わせ軸線に対して第1の角度で設けられる第1の複数本の平行中空繊維を含み、且つ当該複数の中空繊維マット層のうちの第2の層は、位置合わせ軸線に対して第2の角度で設けられる第2の複数本の平行中空繊維を含み、第1の角度及び第2の角度は、位置合わせ軸線の反対側に設けられる。
【0006】
第2の例示(「例示2」)によれば、例示1に記載の装置において、ガス混合物は、酸素供給器モジュールにおける複数の中空繊維マット層のうちの少なくとも2つを通過するように構成される。
【0007】
第3の例示(「例示3」)によれば、例示1に記載の装置において、H/C流体は、熱交換器モジュールにおける複数の中空繊維マット層のうちの少なくとも2つを通過するように構成される。
【0008】
第4の例示(「例示4」)によれば、例示1に記載の装置において、ポッティング体は、血液入口と熱交換器モジュールとの間に位置決めされる血液分配グリッドをさらに備える。
【0009】
第5の例示(「例示5」)によれば、例示1に記載の装置において、ポッティング体は、熱交換器モジュールと酸素供給器モジュールとの間に位置決めされる血液分離グリッドをさらに備える。
【0010】
第6の例示(「例示6」)によれば、例示1に記載の装置において、ポッティング体は、酸素供給器モジュールと血液出口との間に位置決めされる血液収集グリッドをさらに備える。
【0011】
第7の例示(「例示7」)によれば、例示1に記載の装置は、ポッティング体の第1の端に近接して配置される第1のケース部分と、ポッティング体の第2の端に近接して位置決めされる第2のケース部分と、を備える。
【0012】
第8の例示(「例示8」)によれば、例示1に記載の装置において、複数の中空繊維マット層のそれぞれは、複数本の中空繊維にカップリングされる複数本の糸を含む。
【0013】
第9の例示(「例示9」)によれば、例示8に記載の装置において、複数本の糸は、複数本の中空繊維の配列と直交しない角度で配列される。
【0014】
第10の例示(「例示10」)によれば、体外血液循環装置に用いられる複数の中空繊維マット層のアセンブリは、互いに隣接して位置決めされるとともに、複数本の平行な糸及び複数本の平行な中空繊維をそれぞれ含む第1の中空繊維マット層及び第2の中空繊維マット層を含む。当該アセンブリでは、第1の中空繊維マット及び第2の中空繊維マットにおける複数本の糸は、位置合わせ軸線に平行となるように位置決めされるとともに、第1の中空繊維マット層の複数本の中空繊維は、位置合わせ軸線に対して第1の角度で設けられる第2の軸線と平行であり、且つ第2の中空繊維マット層の複数本の中空繊維は、位置合わせ軸線に対して第2の角度で設けられるとともに位置合わせ軸線において第1の角度とは反対の側に位置する第3の軸線と平行である。
【0015】
第11の例示(「例示11」)によれば、例示10に記載のアセンブリにおいて、第1の中空繊維マット層及び第2の中空繊維マット層の形状は、円形である。
【0016】
第12の例示(「例示12」)によれば、例示10に記載のアセンブリにおいて、第2の軸線は、第3の軸線に対して0度より大きく50度以下の角度をなしている。
【0017】
第13の例示(「例示13」)によれば、例示12に記載のアセンブリにおいて、複数の中空繊維マット層のそれぞれは、互いに隣接して位置決めされる中空繊維マット層の少なくとも2つの溝と位置合わせされる少なくとも2つの溝を備える。
【0018】
第14の例示(「例示14」)によれば、例示13に記載のアセンブリにおいて、複数の中空繊維マット層のそれぞれは、互いに同様な配向を有するように位置合わせされる。
【0019】
第15の例示(「例示15」)によれば、例示12に記載のアセンブリにおいて、複数の中空繊維マット層は、第2の中空繊維マット層の真下に位置決めされる第3の中空繊維マット層と、第3の中空繊維マット層の真下に位置決めされる第4の中空繊維マット層と、を含む。
【0020】
第16の例示(「例示16」)によれば、例示15に記載のアセンブリにおいて、第3の中空繊維マット層の複数本の中空繊維は、第2の軸線に沿って位置合わせされ、且つ、第4の中空繊維マット層の複数本の中空繊維は、第3の軸線に位置合わせされる。
【0021】
第17の例示(「例示17」)によれば、体外血液循環と組み合わせて使用するための酸素供給装置は、第1の端の近くに設けられる血液入口と、第1の端とは反対の第2の端の近くに設けられる血液出口と、位置合わせ軸線を限定する第1の位置合わせ特徴を備える側方外面と、を含むポッティング体を備える。当該装置は、複数の円形の中空繊維マット層を備える酸素供給器モジュールであって、当該複数の円形の中空繊維マット層は、複数本の糸にカップリングされる複数本の中空繊維を含み、且つ層のそれぞれは、ポッティング体の第1の位置合わせ特徴と位置合わせすることによって、位置合わせ軸線に対する当該複数の中空繊維マット層のそれぞれの方向を限定させるように構成される第2の位置合わせ特徴を備える酸素供給器モジュールをさらに備える。当該装置は、当該複数本の中空繊維にガス混合物を供給するように構成されるガス入口をさらに備え、且つ、当該複数の中空繊維マット層のうちの第1の層は、位置合わせ軸線に対して第1の角度で設けられる第1の複数本の平行中空繊維を含み、且つ当該複数の中空繊維マット層のうちの第1の層と隣接して設けられる第2の層は、位置合わせ軸線に対して第2の角度で設けられる第2の複数本の平行中空繊維を含み、第1の角度及び第2の角度は、位置合わせ軸線の反対側に設けられる。
【0022】
第18の例示(「例示18」)によれば、例示17に記載の装置において、第1の角度及び第2の角度は、位置合わせ軸線に対する対角である。
【0023】
第19の例示(「例示19」)によれば、例示17に記載の装置において、第1の角度及び第2の角度のうちのいずれも0度より大きく25度以下である。
【0024】
第20の例示(「例示20」)によれば、例示19に記載の装置において、中空繊維マット層のそれぞれにおいて、当該複数本の糸は、複数本の中空繊維の配列と直交しない角度で設けられる。
【0025】
複数の実施形態が開示されているが、例示的な実施形態を示して説明する以下の詳細な説明に基づいて、他の実施形態が当業者にとって明らかになろう。従って、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、限定的なものとして見なすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本明細書は、本発明をさらに理解するために図面を含み、図面は、本明細書に組み合わせられ、且つ本明細書の一部を構成し、図面は、実施形態を例示し、且つ説明と共に本開示の原理を説明するために用いられる。
【0027】
図1】体外血液循環を経験した患者の模式図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態に係る酸素供給器装置の正面模式図である。
図3】本開示の実施形態に係る図2の酸素供給器装置を左側から見た横方向軸側面図である。
図4】酸素供給器装置を図2の線A-Aに沿って切断した横方向断面である。
図5】本開示の実施形態に係る図2の酸素供給器装置の分解図である。
図6】本開示の実施形態に係る図2の酸素供給器装置のポッティング体の斜視図である。
図7】本開示の実施形態に係る複数の中空繊維マット層がポッティング金型に積層されて図6のポッティング体を形成する前の分解図である。
図8】本開示の実施形態に係る図7の複数の中空繊維マット層の第1の要素を示す。
図9】本開示の実施形態に係る図7の複数の中空繊維マット層の第2の要素を示す。
図10】本開示の実施形態に係る図7の複数の中空繊維マット層のうちの切断前の1つを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
当業者であれば容易に理解できるように、本開示の様々な態様は、所期の機能を実行するように配置される任意の数の方法及び装置によって実現することができる。なお、本明細書に言及される図面は、必ずしも比例に応じて描画されているわけではなく、本開示の様々な態様を例示するために誇張される可能性があり、且つ、この点で、図面は、限定的なものとして解釈されるべきではないと注意すべきである。
【0029】
図1は、体外血液循環を必要とする患者10を含むシステムの模式図である。これらの実施形態では、患者10は、第1の管路12によって体外血液循環装置20(当該装置は、本明細書において通常酸素供給器装置20とも呼ばれる)に接続され、第1の管路12を介して血液を患者10から酸素供給器装置20に輸送させることができる。酸素供給器装置20は、装置20内で循環している血液を患者10の体内に戻させるために酸素供給器装置20から患者10まで延びる第2の管路14を備える。これらの実施形態では、本明細書でさらに説明するように、O及びCOは、酸素供給器装置20内で血液とガス混合物との間で交換される。また、酸素供給器装置20は、血液と酸素供給器装置20内の加熱/冷却(H/C)流体との間で温度(高温又は低温)を交換するように構成されている。いくつかの実施形態では、H/C流体は、水又は水溶液である。
【0030】
図2は、酸素供給器モジュール(図示せず)及び熱交換器モジュール(図示せず)を有する酸素供給器装置20の正面図である。酸素供給器装置20は、上部部分26及び下部部分28を有する。様々な実施形態では、酸素供給器20は、ガス混合物を受け入れるために構成されるガス入口30と、ガス混合物を出力するために構成されるガス出口32と、H/C流体を受け入れるためのH/C流体入口34と、H/C流体を出力するためのH/C流体出口36と、患者10(図1)からの血液を受け入れるための血液入口38と、血液を酸素供給器装置20から患者10に出力して戻させるための血液出口(図示せず)と、を備える。酸素供給器装置20は、図3を参照してさらに説明するように、静脈サンプリング口44及び第1の浄化口42aをさらに備える。いくつかの実施形態では、酸素供給器装置20は、酸素供給器装置20の取付及び回転を可能にするためにブラケットアタッチメント46をさらに備える。
【0031】
図3は、酸素供給器装置20の側面図である。図示したように、酸素供給器装置20は、前部部分52及び後部部分54を備える。前部部分52は、第1の管路12(図1)から血液を受け入れるために構成される血液入口38を有する血液入口エンドキャップ56を備え、また、後部部分54は、血液を第2の管路14(図1)を介して患者10(図1)に戻させるために出口を提供するための血液出口40を有する血液出口エンドキャップ58を備える。また、図3に示すように、酸素供給器装置20は、酸素供給器装置20の側面に位置するガス入口30を備える。酸素供給器装置20は、少なくとも第1の浄化口42a及び第2の浄化口42bを含む複数の浄化口42を備える。浄化口42a、42bは、酸素供給器装置20が患者に使用される前の初期潅注段階での空気除去を許容することができる。操作中、すなわち血液及びガスが装置20を流れる場合、浄化口42a、42bは、血液から混入した空気を除去するために再度開くことができる。また、浄化口42a、42bは、装置20から全部の血液を適切に排出して患者に戻させることを確保するように、装置20の操作後、すなわち血液が装置20を流れなくなる時に開くことができる。酸素供給器装置20は、その底面に位置決めされて装置20を支持して安定化するための台座59をさらに備える。
【0032】
図2を参照して前述したように、酸素供給器装置20は、前部部分52及び後部部分54を備える。これらの実施形態では、図3に示すように、前部部分52は、熱交換器モジュール24の少なくとも一部を囲み、また、後部部分54は、酸素供給器モジュール22の少なくとも一部を囲む。
【0033】
図4は、酸素供給器装置20を図2の線A-Aに沿って切断した横方向断面を示すものである。図4の例示的な実施形態では、酸素供給器装置20は、酸素供給器モジュール22と、酸素供給器モジュール22に隣接して位置決めされる熱交換器モジュール24と、を備える。2つのモジュール22、24のいずれにも互いに隣接して鉛直に積層される中空繊維マット層が設けられる。熱交換器モジュール24は、右側で酸素供給器装置20の前部部分52に向かって血液入口分配グリッド60に隣接する。血液入口分配グリッド60は、血液入口38から入力される血液を受け入れ、且つ血液が熱交換器モジュール24に流入する前に血液を血液入口分配グリッド60内で分配する。熱交換器モジュール24は、左側で後部部分54に向かって分離グリッド62に隣接し、当該分離グリッドは、酸素供給器モジュール22と熱交換器モジュール24との間の物理的分離を提供するとともに、熱交換器モジュール24を流れる血液を酸素供給器モジュール22に向かって分配する。そのため、熱交換器モジュール24は、酸素供給器モジュール22に対して分離グリッド62の反対側に位置し、酸素供給器モジュールは、さらに酸素供給器装置20の後部部分54に向かって位置決めされる。熱交換器モジュール24は、H/C流体入口室66の下方に鉛直に位置決めされるとともに、台座59及びH/C流体出口室70の上方に鉛直に位置決められる。酸素供給器モジュール22は、さらに左側で酸素供給器装置20の後部部分54に向かって血液出口収集グリッド64に隣接し、当該血液出口収集グリッドは、血液が血液出口40を介して排出される前に酸素供給器モジュール22から流出した血液を収集するために構成される。図示したように、ガス入口室68及びブラケットアタッチメント46は、酸素供給器モジュール22の上方に鉛直に位置決めされる。ガス出口室72は、酸素供給器モジュール22の下方に鉛直に位置決めされる。
【0034】
このように、酸素供給器モジュール22及び熱交換器モジュール24のそれぞれは、通常2つの部分又は2つの半部を含む。以下でさらに説明するように、酸素供給器モジュール22は、ガス入口室68と連通するために構成される部分と、ガス出口室72と連通するために構成される部分と、を有する。同様に、熱交換器モジュール24は、H/C流体入口室66と連通するために構成される部分と、H/C流体出口室70と連通するために構成される部分と、を有する。図示したように、酸素供給器装置20の前部部分52は血液入口38を備え、また、酸素供給器装置20の後部部分54は血液出口40を備える。このような構造により、血液が熱交換器モジュール24及び酸素供給器モジュール22の両者を通過して血液入口38から血液出口40に流れるように駆動されると、血液は、流体混合物及びガスと接触して(熱交換器モジュール24及び酸素供給器モジュール22に適切な中空繊維膜を挿入することにより)、十分な熱交換及びガス交換を行うことができる。
【0035】
図5は、酸素供給器装置20の分解図であり、ここで酸素供給器装置20内の部品アセンブリを示している。当該図を参照すると、酸素供給器装置20は、血液入口38及び浄化口42aを有する血液入口エンドキャップ56と、ポッティング体80と、血液出口40及び浄化口42bを有する血液出口エンドキャップ58とを含む血液経路を備える。ポッティング体80は、血液入口分配グリッド60、熱交換器モジュール24、分離グリッド62、酸素供給器モジュール22及び血液出口収集グリッド64を備え、これらの部品がともに1つのみの(ポッティング)部品に嵌め込まれる。ポッティング体の外面における中空繊維の開口端により、H/C流体及びガスの熱交換器24及び酸素供給器22のキャビティへの進入が可能となる。
【0036】
血液入口エンドキャップ56には、複数の周辺キャビティ74が設けられ、これらの周辺キャビティは、ポッティング体80の血液入口分配グリッド60における対応する周辺ノッチ61に機械的に嵌合される。血液入口エンドキャップ56と血液入口分配グリッド60との間の気密性は、血液入口エンドキャップ56と血液入口分配グリッド60の2つの円形の接触面に沿って樹脂の鋳込みを行うことにより得られる。同様に、ポッティング体80の反対端において、血液出口エンドキャップ58は、複数の周辺キャビティ76を備え、周辺キャビティは、ポッティング体80の出口収集グリッド64における対応する周辺ノッチ65に機械的に嵌合される。血液出口エンドキャップ58と出口収集グリッド64との間の気密性は、血液出口エンドキャップ58と出口収集グリッド64の円形の接触面に沿って樹脂の鋳込みを行うことにより得られる。このようにして、血液入口エンドキャップ56、血液出口エンドキャップ58及びポッティング体80を含む血液室全体は、1つの気密部材で接合される。
【0037】
血液は、血液入口エンドキャップ56の血液入口38を介して酸素供給器装置20に入り、血液入口分配グリッド60、熱交換器モジュール24を形成するために積層される中空繊維マット層、分離グリッド62、酸素供給器22を形成するために積層される中空繊維マット層、出口収集グリッド64を通過して血液出口エンドキャップ58の血液出口40に到達する。血液入口分配グリッド60、分離グリッド62及び出口収集グリッド64は、円形のプラスチック部品であり、それらの表面を貫通する比較的大きな孔(1mm~8mm)を有し、且つ、熱交換器モジュール24及び酸素供給器モジュール22の要素を適切な位置に保持するとともにそれらを流れる血液が均一に分配されることを確保するために構成される。装置20の残りの部分は、H/C流体室及びガス室を囲む外部ケース、すなわちH/C流体収集器82(H/C流体入口34及びH/C流体出口36を含む)及びガス収集器78(図2に示すように、ガス入口30及びガス出口32を含み、且つブラケットアタッチメント46及び台座59をさらに含む)を含む。
【0038】
H/C流体収集器82は、外部でポッティング体80における熱交換器モジュール24と対応する部分の上方に位置決めされ、且つ、H/C流体室の円形の右側を気密にするように、樹脂の鋳込みによって血液入口エンドキャップ56と組み立てられる。H/C流体収集器82の左側の円形辺縁は、外部で分離グリッド62と対応するように位置決めされ、且つ樹脂の鋳込みによってポッティング体80に気密に接合される。このようにして、H/C流体室の全体は、気密を実現した。H/C流体室は、2つのシールガスケット56a、56bによって2つの半部に分けられ、すなわち、H/C流体入口室66及びH/C流体出口室70(図4に示す)を含み、この2つのシールガスケットは、2つの位置合わせ特徴に沿って挿入され、当該位置合わせ特徴は、例示的にポッティング体80の外面に存在する2つの直径に沿って対向する縦方向溝88である(図6に示す)。H/C流体は、H/C流体室の内部でH/C流体収集器82の内面とポッティング体80の外面との間の隙間を通って熱交換器モジュール24に流れる(及び離れる)ことにより、H/C流体入口室66及びH/C流体出口室70を形成する。
【0039】
同様に、ガス収集器78は、外部で酸素供給器モジュール22とポッティング体80の外面に対して対応して位置決めされ、且つ、装置20のガス室の円形の左側を気密にするように、樹脂の鋳込みによって血液出口エンドキャップ58と組み立てられる。ガス収集器78の右側の円形辺縁は、外部で分離グリッド62と対応してH/C流体収集器82に近接して位置決めされ、且つ樹脂の鋳込みによってポッティング体80に気密に接合される。このようにして、ガス室は、完全に気密となる。また、ガス室は、2つのシールガスケット59a、59bによってガス入口室68とガス出口室72(図4に示す)との2つの半部に分けられ、これらのシールガスケットは、2つの位置合わせ特徴に沿って挿入され、この2つの位置合わせ特徴は、例示的にポッティング体80の外面に設けられる2つの直径に沿って対向する縦方向溝88である(図6を参照)。ガスは、ガス収集器78の内面とポッティング体80の外面との間の隙間で形成されるガス室を通って酸素供給器モジュール22に流入(及び流出)することにより、ガス入口室68及びガス出口室72を形成する。
【0040】
図6は、酸素供給器装置20のポッティング体80がポッティング金型から離型されてポッティング体80の側方外面86をファセットで形成した後の斜視図であり、当該側方外面は、ポッティング体に対してZ軸に沿って延伸する多面型の多角形状を提供するとともに2つのモジュール22及び24の中空繊維の端部を開放し、これにより当該2つのモジュールのキャビティに通じる通路を提供してH/C流体及びガスを循環させる。線84は、ファセットによって得られた多くの面のうちの幾らかの面を示す。円柱形のポッティング金型のZ軸を中心に高速に遠心分離することによりポッティング体80が形成され、当該ポッティング体に複数の中空繊維マット層90(図7に示す)が予め充填され、これらの中空繊維マット層は、1層ずつ積層されて熱交換器モジュール24及び酸素供給器モジュール22の双方を構成する。一定の量の樹脂(通常は、ポリウレタンであってもよく、最初に液体である)を回転金型に注入し、且つ遠心力によって押圧することにより金型の壁に当接して硬化させる。ポッティング外径89とポッティング内径87との差は、通常、7mm~10mmの範囲内(好ましくは、8mm)である。ポッティング外径89は、7cmm~18cmの範囲内にあってもよく、且つ好ましい実施形態では12cmである。従って、ポッティング体80は、血液の流動に対して大きく且つ障害のない内部通路を提供し、これにより、酸素供給器装置20は、血圧降下の値が顕著に低下したという利点を提供する。ポッティング体80は、後端81及び前端83を備える。熱交換器モジュール24の中空繊維マット層は、後端81に向かって位置決めされ、且つ、酸素供給器モジュール22における前端83に向かって位置決めされる中空繊維マット層に隣接して積層される。分離グリッド62は、熱交換器モジュール24と酸素供給器モジュール22との間に挿入される。
【0041】
ポッティング体80は、外面又は外周86を有し、様々な実施形態では、以下でさらに説明するように、当該外面に複数の中空繊維マット層90の位置合わせ特徴と同時に存在する位置合わせ特徴が設けられることにより、酸素供給器装置20全体に対して位置合わせされた配向を与える。実施形態では、ポッティング体80の位置合わせ特徴は、ポッティング体80の外面86に沿って縦方向に延びる少なくとも1つの溝を含む。例えば、図6の実施形態では、位置合わせ特徴は、Z軸に平行となる2つの直径に沿って対向する縦方向溝88を含む。縦方向溝88は、3mm~6mmの深さを有することができる。好ましい実施形態では、縦方向溝88の深さは、4mmであってもよい。図6は、外周86がファセット(スライス)された後のポッティング体80を示し、上述したように、これにより複数のポッティング及び積層される中空繊維マット層90の中空繊維の端部が開かれる(図7を参照)。スライスは、ポリウレタンの外層を除去して複数の中空繊維マット層の複数本の中空繊維のそれぞれの開放キャビティを露出させて、流体(ガス混合物及びH/C流体)を中空繊維キャビティの内部で循環させるために十分な深さを有する必要がある。血液は、中空繊維の周囲(すなわち、その外部)で流れる。スライスの深さは、1mm~4mmの範囲内とすることができる。好ましい実施形態では、スライスの深さは、約2mmであってもよい。
【0042】
様々な実施形態では、ポッティング体80の縦方向溝88によってポッティング体80の2つの略半部を形成する。このような実施形態では、前述したように、ポッティング体80の外周86をスライスした後、酸素供給器装置20の複数の中空繊維マット層の複数本の中空繊維のそれぞれの開口端が酸素供給器装置20の各室に連通する。例えば、酸素供給器モジュール22の第1の半部は、ガス入口室68に連通する中空繊維開放端末を含み、その反対端での中空繊維開放端末(すなわち、他の半部の中空繊維端末)がガス出口室72に連通する。熱交換器モジュール24の複数の中空繊維マット層の複数本の中空繊維は、類似する方式で編まれ、その半分の中空繊維開放端末がH/C流体出口室70内に閉じられ、且つそれらとは反対の開放端がH/C流体入口室66内に閉じられる。上述したように、この4つの室は、2つのシールガスケット56a、56b及び2つのシールガスケット59a、59b(図5)によって互いに分離及び密封され、ガス収集器78及びH/C流体収集器82の内部に位置し、且つ溝88に沿って挿入される。上述したようにガスケットによるのだけでなく、例えば、樹脂(エポキシ樹脂又は他の樹脂)又は他の任意の適切な密封材料によってこれらの室を密封することにより、この4つの室の間の適切な密封装置を得ることもできる。
【0043】
ポッティング体80の様々な要素(すなわち、酸素供給器モジュール22及び熱交換器モジュール24のグリッド及び中空繊維マット層)を一定の順序及び配向に応じて円柱形のポッティング金型に直接的に積層させることにより、当該ポッティング体を製造する。図7図10に示すように、積層する要素90は、平らな円形の層であり、その外径が金型の内径と等しい。それらのそれぞれは2つの直径に沿って対向する溝98を有し、この2つの溝は、ポッティング金型における2つの対応する突起に案内される。まず、血液入口分配グリッド60の層を金型に案内し、その後、熱交換器モジュール24に用いられる複数の中空繊維マット層90を積層する。次に、分離グリッド62の層を金型に挿入し、その後、酸素供給器モジュール22に用いられる複数の中空繊維マット層90を積層し、最後に血液出口収集グリッド64の層を挿入する。複数の積層される中空繊維マット層90の数量は、実現しようとする酸素供給器装置20のサイズに依存する。この場合、充填が完了したポッティング金型を、ポリウレタン樹脂と共に縦方向のZ軸を中心に遠心分離させる。遠心分離の後、円柱形のポッティング体80の離型、スライス(すなわち、その側方外面に小さな面を形成する)を行い、且つ、既に説明したように、酸素供給器装置20の他の部分と組み立てる。
【0044】
以下では、ポッティング体80に積層される複数の中空繊維マット層90について、図7図10を参照しながらさらに詳細に説明する。図7は、ポッティング金型に積層される場合の複数の中空繊維(HF)マット層90のうちの一部の層の分解図を示す。複数の中空繊維マット層90は、円形の形状であり、各層は、複数本の糸92(経糸とも呼ばれる)及び互いに平行な複数本の中空繊維(HF)94を含む。図10を参照しながらさらに説明するように、このようなマット層は、それらの円形の外周に対する熱シール及び切断によって得られる。
【0045】
様々な実施形態では、中空繊維94は、酸素供給器モジュール22において、例えばポリプロピレン又はポリメチルペンテン(これらに限定されるものではない)のような材料で製作される微孔性疎水膜であり、また、熱交換器モジュール24においてポリエチレン又はポリウレタンで製作される非微孔性膜である。酸素供給器モジュール22の複数本の微孔性の中空繊維94は、ガス(O)が中空繊維94の孔隙を通って血液に拡散することが許容されるように構成され、逆も同様である(CO)。熱交換器モジュール24では、複数本の中空繊維94は、血液とH/C流体との間の熱伝達のみを許容する(逆も同様である)。複数本の糸92は、ポリエステル繊維で製作されてもよい。
【0046】
図7図9に示すように、各中空繊維マット層90は、いずれもX軸方向に沿って配向する複数本の平行糸を含み、且つ、位置合わせ特徴を含むことによりポッティング体80の位置合わせ特徴(H/C流体とガス収集器82及び78の室を配向するためのものである)を形成する。図7図9の例示的な実施形態では、位置合わせ特徴は、各マット層90のいずれか1側の少なくとも2つの溝98によって提供され、この2つの溝は、互いに対向して位置合わせるとともに直径に沿って対向することにより横方向のX軸を限定する。このようにして、各マット層90の位置合わせ特徴は、複数本の糸92の方向に平行な方向に沿って位置合わせを行う。2つの溝98の具体的な位置及び配向によって、各層における複数本の中空繊維94が2つの半部(上半部及び下半部)に分けられ、そのうち、各本の単独の繊維は、上半部に1つの端末を有するとともに下半部に別の端末を有する。繊維の「短絡」(すなわち、2つの端末が同一の半部に位置する)がないため、繊維は、交換過程において十分に利用される。一旦、層がポッティングされると、溝98が本体80の溝88を形成し、当該溝も装置20の入口室及び出口室と位置合わせされるため、流体(H/C流体又はガス)は、一端から繊維キャビティに入って、繊維全体に沿って流れて反対端から離れる。
【0047】
図7図9は、別の特性を示し、すなわち、各中空繊維マット層90の複数本の糸92が横方向軸Xの方向に沿って延伸し、複数の中空繊維マット層90のそれぞれの配向を表明するが、複数の中空繊維マット層90のそれぞれの複数本の中空繊維94は、Y軸の方向に対して一定の角度で歪み、ここで、Y軸は、X軸と直交する。従って、複数本の中空繊維94は、その中の糸92がX軸に平行な複数の中空繊維マット層90のそれぞれに位置決めされるが、Y軸に対して歪み、これによりそれらはY軸の方向に対してほぼ角度をなしている。これらの実施形態では、図7に示すように、互いに隣接して位置決めされる中空繊維マット層90と比べてみると、複数本の中空繊維94の方向性は交互の歪み角を有するが、複数本の経糸92の方向は一致し、且つX軸に平行となる。これにより、中空繊維94が交差して配向することが許容され、これは装置20の熱交換及びガス交換の性能の最大化に対して非常に重要である一方、複数のマット層90は、X軸の方向に配向する。
【0048】
例えば、図7において、複数の中空繊維マット層90のうちの第1の中空繊維マット層90aは、X軸に沿って平行に延伸する複数本の糸92とW軸に平行な方向に延伸する複数本の中空繊維94を含み、W軸は、Y軸に対して歪み角αで延伸し、そのうち、αは、0度より大きく25度以下とすることができる。好ましい実施形態では、角αの値の範囲は、12.5度~25度とすることができる。また、複数の中空繊維マット層90のうちの第2の中空繊維マット層90bは、第1の中空繊維マット層90aの下方に配置され、且つ、横方向軸Xに沿って延伸する複数本の糸92及びV軸に略平行な方向に延在する複数本の中空繊維94を有するように示される。これらの実施形態では、V軸は、Y軸に対して角度βをなしている。実施形態では、角α及び角βは、Y軸の反対側に設けられる。様々な実施形態では、角βの値は、0度より大きく25度以下とすることができる。好ましい実施形態では、角βの範囲は、12.5度~25度とすることができる。更なる好ましい実施形態では、角βの値は、角αと等しいとともに方向が角αと逆であってもよい。例えば、角αが10度の値を有してもよく、角βが-10度の値を有してもよい(すなわち、逆の方向にある)。この場合、互いに隣接する第1の中空繊維マット層90a及び第2の中空繊維マット層90bの複数本の中空繊維94は、約α値の2倍又は2×α値(すなわち、20度)の角度をずれる。他の実施形態では、角βの値は、角αの値と異なってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、角αが10度の値を有してもよく、角βが-15度の値を有してもよい。また、角α及び角βが複数の中空繊維マット層90における各層の間で基本的に同じであるように示されるが、それらの値が複数の中空繊維マット層90における各層の間で異なってもよい。
【0049】
互いに隣接する第1の中空繊維マット層90a及び第2の中空繊維マット層90bの中空繊維94をY方向に対して反対となる方向(例えば、図7におけるW及びV方向)に角度をなすことによって、隣接する中空繊維マット層90の中空繊維94同士のズレを増大することができる。積層された中空繊維マット層90における複数本の中空繊維94同士が角度をなすことは、ガス及びH/C流体と酸素供給器装置20を流れる血液との間の最適化した質量伝達を提供するには必要である。
【0050】
複数の中空繊維マット層90のうちの第3の中空繊維マット層90cは、第2の中空繊維マット層90bの下方に配置されている。図7の例示的な実施形態では、第3の中空繊維マット層90cは、第1の中空繊維マット層90aと同様に、横方向軸Xに沿って延伸する複数本の糸92を有し、複数本の中空繊維94がW軸に位置合わせされ、且つ横方向Y軸とW軸との間の角度がαである。また、第4の中空繊維マット層90dは、第3の中空繊維マット層90cの下方に位置決めすることができる。図7の例示的な実施形態では、第4の中空繊維マット層90dは、第2の中空繊維マット90bと同様に、複数本の糸92が横方向軸Xに平行となるとともに、複数本の中空繊維94がV軸にほぼ平行となる(Yと角度βをなす)ように案内される。通常、90c及び90dの角度α及び角度βの値は、第1の中空繊維マット層90a及び第2の中空繊維マット層90bの対応する角度と異なってもよい。
【0051】
複数の中空繊維マット層90同士のこのような交互配向により、複数の中空繊維マット層90のそれぞれにおける複数本の中空繊維94が一定の角度で配向することを可能にし、当該角度は、通常隣接して位置決めされる中空繊維マット層90の複数本の中空繊維94の方向からずれ、同時に全ての積層された中空繊維マット層90における糸92の配向は、装置全体において基本的に平行となっている。複数の中空繊維マット層90において、中空繊維マット層90a~90dは、1層又は1組の複数層(10層に達する)の中空繊維マット層90を含むことができ、各組の層の特徴として、中空繊維94が全ての糸92(全ての糸がいずれも平行である)の方向と直交するY軸に対して異なる角度で歪むことにある。
【0052】
図8は、図7の第1(又は第3)の中空繊維マット層90a(又は90c)の正面図であり、図9は、図7の第2(又は第4)の中空繊維マット層90b(又は90d)の正面図である。図8及び図9は、第1の中空繊維マット層90a及び第2の中空繊維マット層90bの中空繊維94の反対方向における歪み角が等しいとともに糸92の配向が同様であることを示している。環状熱シール、中空繊維マット層90への切断及び円形のHFマット層90と熱シール領域の外部にある中空繊維マット層90の材料との分離を行うことにより、複数の中空繊維マット層90のそれぞれを得る。外周96は、糸92に平行となる2つの直径に沿って対向する溝98を含み、前述したように、これらの溝により、層のポッティング金型内の正確な配向及び位置合わせを可能にし、且つ、その後にポッティング体に縦方向溝88を形成することができる。熱シールは、公知の熱シール装置又は他の適切な熱シール方法によって実現することができる。
【0053】
図10は、切断され、且つ他のマット材料から分離される前(すなわち、図8及び図9に示す段階に至る前)の熱シールされた中空繊維マット層90eを示す。熱シールクラウン領域97は、そのサイズが外周96の2倍であり、切断された後に当該外周のみが適切な位置に保留される。通常、熱シールクラウン領域97の厚さは、2mm~4mmであり、好ましくは3mmである。切断は、例えばスライス、プレス切断又は任意の他の適切な方式などの様々な方式で行うことができる。当該プロセスは、必要に応じて単独のマット層で行われてもよく、又は複数の単独の(又はグループ化された)中空繊維マット層90で一緒に行われてもよい。その後、中空繊維マット層90は、図7に示すように互いに対向してポッティング金型に積層することができる。層を熱シールする前に、糸92をX軸に平行にして、且つ中空繊維94をY方向(Xに直交する)に対して角度α又はβで歪めることにより中空繊維マット材料を正確に位置決めする必要がある。また、熱シール溝98は、互いに直径に沿って対向して、且つX軸に平行となるように配向しなければならない。熱シールを使用して層を得る必要があるのは、このように複数本の中空繊維94と複数本の糸92との間の相対的な位置決めを保持する(すなわち、歪み角を形成する)ことができるからであり、そして、2つの溝98を適切な位置に固定することによりこの2つの溝の正確な位置をマークすることによって、その後の積層プロセスを可能にし、当該積層プロセスにおいて、全ての中空繊維マット層90は、第1の方向に平行な複数本の糸92と位置合わせされ、且つ隣接する層における複数本の中空繊維94は、第1の方向に垂直な方向に対して交互に歪む。要するに、異なる中空繊維マット層90における中空繊維94の間の斜めずれは、中空繊維の間に十分な交差配向を提供したため、複数の中空繊維マット層90の任意の回転を必要とすることなく当該積層プロセスを完了することができ、当該斜めずれは、上記の各層90の特定の形成プロセスにより与えられる。これは、熱伝達及びガス伝達効率を向上させつつ酸素供給器装置20の組み立て(自動化が容易である)の容易性を高めるとともに製造時のばらつきの可能性を低減させる上で重要である。
【0054】
酸素供給器モジュール22は、今まで実施形態では熱交換器モジュール24に近接して積層されるように示されているが、この2つのモジュールは互いに対して任意の回転角度を有さない。他の様々な実施形態も可能であり、例えば、そのうち酸素供給器モジュール22と熱交換器モジュール24が互いに隣接して積層されるが、Z軸を中心に一定の角度回転している。この角度は、0度(図2図6に示す)~90度の範囲内の値を有することができる。このような実施形態では、ポッティング体80は、熱交換器モジュール24と酸素供給器モジュール22とのオフセット位置決めに適応するように、2つのステップに分けてモールド成形され、互いに平行に積層する必要がなくなる。また、H/C流体入口室66とH/C流体出口室70及びガス入口室68とガス出口室72の配向は、それらと酸素供給器モジュール22及び熱交換器モジュール24内の中空繊維端末の対応する半部との連通を保持するように対応して回転する。また、熱交換器モジュール24がなく、且つ装置20が酸素供給器モジュール22のみを備える他の実施形態も可能である。
【0055】
上記の説明において、様々な代替的な手段並びに装置及び/又は方法の構造及び機能の詳細を含め、多くの特徴及び利点を説明した。また、一般的且つ具体的な例示について本開示において提案される様々な概念の発明範囲を説明した。本開示は例示的なものに過ぎないので、網羅的なものではない。例えば、本開示の様々な実施形態は、医学的用途の背景で説明されたが、非医学的用途に用いられてもよい。当業者にとって自明なように、特に構造、材料、要素、部品、形状、サイズ及び部品配置(本発明の原理内の組み合わせを含む)の面で様々な修正を行うことができ、添付の特許請求の範囲で広く、一般的な意味で示される全ての内容を体現する。これらの様々な修正は、添付の特許請求の範囲の実質及び範囲から逸脱しない限り、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】