IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-R-T-B磁石及びその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】R-T-B磁石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20240319BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240319BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240319BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20240319BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20240319BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20240319BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20240319BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20240319BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240319BHJP
【FI】
H01F1/057
H01F1/057 170
H01F1/057 130
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
C21D6/00 B
B22F3/00 F
B22F3/24 B
B22F3/24 K
B22F9/04 C
B22F9/04 E
C22C33/02 J
B22F1/00 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544209
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2022072253
(87)【国際公開番号】W WO2022193820
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】202110287760.5
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】福建省金龍稀土股分有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】陳大崑
(72)【発明者】
【氏名】牟維国
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB06
4K017BB08
4K017BB09
4K017BB12
4K017BB13
4K017CA07
4K017DA04
4K017EA03
4K017EA08
4K018AA27
4K018BA18
4K018CA04
4K018CA11
4K018DA21
4K018DA30
4K018FA08
4K018FA11
4K018KA45
5E040AA04
5E040AA19
5E040BD01
5E040CA01
5E040HB03
5E040HB06
5E040HB11
5E040HB15
5E040NN01
5E040NN06
5E040NN17
5E040NN18
5E062CD04
5E062CF01
5E062CG02
5E062CG03
5E062CG05
(57)【要約】
【課題】本発明は、R-T-B磁石及びその製造方法を開示する。
【解決手段】当該R-T-B磁石は、下記の成分を含み、R:≧30.0wt.%、Rは希土類元素であり、Nb:0.1~0.3wt.%、B:0.955~1.2wt.%、Fe:58~69wt.%、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、上記のR-T-B磁石は、CoとTiをさらに含み、前記R-T-B磁石において、前記Coの質量含有量と、「前記Nb及び前記Ti」の総質量含有量との比が4~10である。本発明は、R-T-B磁石における各成分間の配合関係をさらに最適化して、残留磁束密度、保磁力及び角型比等の磁気特性がいずれも高いレベルにある磁石材料として製造されることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
R-T-B磁石であって、下記の成分を含み、
R:≧30.0wt.%、Rは希土類元素であり、
Nb:0.1~0.3wt.%、
B:0.955~1.2wt.%、
Fe:58~69wt.%、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、
上記のR-T-B磁石は、CoとTiをさらに含み、前記R-T-B磁石において、前記Coの質量含有量と、「前記Nb及び前記Ti」の総質量含有量との比が4~10である、
ことを特徴とするR-T-B磁石。
【請求項2】
前記Rの含有量は、30~32wt.%であり、例えば30.5wt.%、30.6wt.%又は30.7wt.%であり、
及び/又は、前記Rは、Ndをさらに含み、
ここで、前記Ndの含有量は、好ましくは、22~32wt.%であり、例えば28.2wt.%、28.4wt.%、29.2wt.%、29.3wt.%、29.4wt.%、29.5wt.%、29.8wt.%、29.9wt.%又は30.3wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率であり、
及び/又は、前記Rの種類は、Pr及び/又はRHをさらに含み、前記RHは、重希土類元素であり、
ここで、前記Prの含有量は、好ましくは、0.3wt.%以下であり、例えば0.2wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率であり、
ここで、前記RHの含有量は、好ましくは、3wt.%以下であり、例えば0.2wt.%、0.6wt.%、0.8wt.%、1.1wt.%、1.2wt.%、1.4wt.%、2.3wt.%又は2.5wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率であり、
ここで、前記RHの種類は、好ましくは、Tb又はDyを含み、
上記のRHがTbを含む場合、前記Tbの含有量は、好ましくは、0.2~1.1wt.%であり、例えば0.2wt.%、0.5wt.%、0.6wt.%、0.8wt.%又は1.1wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率であり、
上記のRHがDyを含む場合、前記Dyの含有量は、好ましくは、0.5~2.5wt.%であり、例えば0.6wt.%、1.2wt.%、1.8wt.%又は2.5wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率であり、
ここで、前記RHの原子百分率含有量と、前記Rの原子百分率含有量との比は、好ましくは、0.1以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B磁石。
【請求項3】
前記Nbの含有量は、0.15~0.25wt.%であり、例えば0.16wt.%、0.18wt.%、0.2wt.%、0.22wt.%、0.23wt.%又は0.24wt.%であり、
及び/又は、前記Coの質量含有量と、「前記Nb及び前記Ti」の総質量含有量との比は、4.6~8.4、例えば4.6、5.3、5.5、6.5、6.6、6.7、6.8、7.9又は8.4、好ましくは、4~7であり、
及び/又は、前記Coの含有量は、1.5~3.5wt.%であり、例えば2wt.%、2.5wt.%、2.6wt.%、2.8wt.%又は3wt.%であり、
及び/又は、前記Tiの含有量は、0.15~0.35wt.%であり、例えば0.15wt.%、0.18wt.%、0.23wt.%、0.25wt.%又は0.35wt.%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B磁石。
【請求項4】
前記Bの含有量は、0.955~1.1wt.%であり、例えば0.99wt.%であり、
及び/又は、前記Bの原子百分率含有量と、前記R-T-B磁石におけるRの原子百分率含有量との比は、0.38以上であり、
及び/又は、前記Feの含有量は、65~66wt.%、例えば64.67wt.%、64.71wt.%、64.88wt.%、64.89wt.%、64.98wt.%、65.07wt.%、65.13wt.%、65.14wt.%、65.33wt.%、65.38wt.%又は65.64wt.%であり、
及び/又は、上記のR-T-B磁石は、Cuをさらに含み、
ここで、前記Cuの含有量は、好ましくは、0.1~0.4wt.%であり、例えば0.1wt.%、0.15wt.%、0.25wt.%、0.3wt.%、0.36wt.%又は0.39wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B磁石。
【請求項5】
上記のR-T-B磁石はさらに、Co-Ti-Nb相を含み、上記のCo-Ti-Nb相は、結晶粒間三角領域に位置し、前記結晶粒間三角領域におけるCo-Ti-Nb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.1~2.5%であり、
ここで、上記のCo-Ti-Nb相は、好ましくは、CoTiNb相であり、
ここで、前記結晶粒間三角領域におけるCo-Ti-Nb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、例えば1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%又は2%である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のR-T-B磁石。
【請求項6】
上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、2%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.23wt.%のTi、0.24wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.98wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.8%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.35wt.%のTi、0.22wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.88wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.7%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.15wt.%のTi、0.16wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.14wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、3wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.67wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、2%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.8wt.%のNd、0.8wt.%のTb、0.3wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.13wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.9%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.9wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.25wt.%のCu、2.5wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.38wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、2%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、30.3wt.%のNd、0.2wt.%のTb、0.39wt.%のCu、2.8wt.%のCo、0.23wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.89wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.8%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、28.2wt.%のNd、2.5wt.%のDy、0.15wt.%のCu、3wt.%のCo、0.25wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.71wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb的面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.8%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、28.4wt.%のNd、0.5wt.%のTb、1.8wt.%のDy、0.1wt.%のCu、2.5wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.33wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.8%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、1.2wt.%のDy、0.39wt.%のCu、2wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.64wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.7%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.2wt.%のNd、0.8wt.%のTb、0.6wt.%のDy、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.6%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.3wt.%のNd、0.2wt.%のPr、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.7%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.2%であり、
又は、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.1%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B磁石。
【請求項7】
R-T-B磁石の製造方法であって、
請求項1~4及び6のいずれか一項に記載のR-T-B磁石の各成分の原料混合物に対して焼結処理を行った後、空気ブラスト冷却処理及び時効処理を順次行う、
ことを特徴とするR-T-B磁石の製造方法。
【請求項8】
前記焼結処理の温度は、1000~1100℃、例えば1080℃であり、
及び/又は、前記焼結処理の時間は、4~8h、例えば6hであり、
及び/又は、前記空気ブラスト冷却処理の温度は、550~950℃、例えば550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃又は950℃であり、
及び/又は、前記時効処理は、1段目時効処理及び2段目時効処理を含み、
ここで、前記1段目時効処理の温度は、好ましくは、860~920℃、例えば880℃又は900℃であり、
ここで、前記1段目時効処理の時間は、好ましくは、2.5~4h、例えば3hであり、
ここで、前記2段目時効処理の温度は、好ましくは、460~530℃、例えば500℃、510℃又は520℃であり、
ここで、前記2段目時効処理の時間は、好ましくは、2.5~4h、例えば3hであり、
及び/又は、前記R-T-B磁石が重希土類元素を含む場合、前記時効処理の後に、粒界拡散をさらに含み、
ここで、前記粒界拡散の温度は、好ましくは、800~900℃、例えば850℃であり、
ここで、前記粒界拡散の時間は、好ましくは、5~10h、例えば8hであり、
ここで、前記R-T-B磁石における重希土類元素の添加方式は、好ましくは、0~80%の重希土類元素を溶解製錬時に添加し、且つ残部の重希土類元素を粒界拡散時に添加する方式を採用し、例えば、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTbであり、且つTbが0.5wt.%より大きい場合、25~67%のTbを溶解製錬時に添加し、残部を粒界拡散時に添加し、又は、例えば、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTb及びDyである場合、前記Tbを溶解製錬時に添加し、前記Dyを粒界拡散時に添加し、又は、例えば、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTbであり、且つTbが0.5wt.%以下である場合又は前記R-T-B磁石内の重希土類元素がDyである場合、前記R-T-B磁石内の重希土類元素を粒界拡散時に添加する、
ことを特徴とする請求項7に記載のR-T-B磁石の製造方法。
【請求項9】
前記焼結処理の前に、溶解製錬、鋳造、水素破砕、微粉砕及び成形処理をさらに含み、
ここで、前記溶解製錬の温度は、例えば1550℃以下であり、
ここで、前記鋳造の温度は、好ましくは、1410~1440℃、例えば1430℃であり、
ここで、前記鋳造後に得られた合金鋳片の厚さは、好ましくは、0.25~0.40mm、例えば0.29mmであり、
ここで、前記水素破砕の工程は、好ましくは、水素吸収、脱水素、冷却処理の順で行い、
ここで、前記磁場成形の磁場強度は、好ましくは、1.8T以上、例えば1.8~2.5Tである、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のR-T-B磁石の製造方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載のR-T-B磁石の製造方法によって製造された、
ことを特徴とするR-T-B磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R-T-B磁石及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、重要な稀土類機能材料として、優れた総合磁気特性を有し、電子業界、電気自動車等の多くの分野に広く適用されている。しかしながら、現在のネオジウム鉄ホウ素磁石材料の総合的な磁気特性が悪く、特性がより優れた製品を製造して得ることが難しく、社会的需要を満足することができない。
【0003】
例えば、中国特許文献CN106158204Aには、重量百分率が15~30%のPrNd、3~6%のGd、0.05~0.15%のGa、0.5~1.2%のB、0.6~1.2%のCo、0.3~0.8%のAl、0.05~0.3%のCu、0.05~0.3%のMo、0.05~0.3%のTi、残部はFeである成分からなるネオジム鉄ホウ素磁石材料が開示される。当該特許文献では、上記の成分で添加することにより、細い結晶粒組織を獲得し、低融点金属はまず粒間で溶解し、液相での高融点金属の溶解性を向上させ、高融点金属を粒間領域に均一に分布させるが、高融点金属は、結晶粒の成長を阻害し、結晶粒を微細化することができる。しかしながら、当該成分でのネオジウム鉄ホウ素磁石の残留磁束密度と保磁力は依然として低いレベルにある。
【0004】
現在の高要求分野での応用に合致するように、残留磁束密度、保磁力及び角型比などの磁気特性がいずれも高いレベルに維持されるネオジウム鉄ホウ素磁石の成分を求めるのが現在解決すべき技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、R-T-B磁石の成分の相乗効果が悪く、得られた磁石材料の残留磁束密度、保磁力及び角型比が同時に高いレベルに達することができないという従来技術に存在する欠陥を解決するために、R-T-B磁石及びその製造方法を提供する。本発明におけるR-T-B磁石内の各成分間の特定の配合によって、残留磁束密度、保磁力及び角型比などの磁気特性がいずれも高いレベルに達する磁石材料を製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、主に、下記の技術考案により、上記の技術的課題を解決する。
【0007】
本発明により提供されるR-T-B磁石は、下記の成分を含み、
R:≧30.0wt.%、Rは希土類元素であり、
Nb:0.1~0.3wt.%、
B:0.955~1.2wt.%、
Fe:58~69wt.%、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、上記のR-T-B磁石は、CoとTiをさらに含み、前記R-T-B磁石において、前記Coの質量含有量と、「前記Nb及び前記Ti」の総質量含有量との比が4~10である。
【0008】
本発明において、上記のR-T-B磁石によれば、上記の各成分の総質量は、Co及びTiの質量含有量を含むことが分かる。
【0009】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは、30~32wt.%であり、例えば30.5wt.%、30.6wt.%又は30.7wt.%である。
【0010】
本発明において、前記Rは、一般的にNdをさらに含むことができる。
【0011】
ここで、前記Ndの含有量は、当分野の通常のものであってもよく、前記Ndは、好ましくは、22~32wt.%であり、例えば28.2wt.%、28.4wt.%、29.2wt.%、29.3wt.%、29.4wt.%、29.5wt.%、29.8wt.%、29.9wt.%又は30.3wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率である。
【0012】
本発明において、前記Rの種類は、一般的にPr及び/又はRHをさらに含み、前記RHは、重希土類元素である。
【0013】
ここで、前記Prの含有量は、好ましくは、0.3wt.%以下であり、例えば0.2wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率である。
【0014】
ここで、前記RHの含有量は、好ましくは、3wt.%以下であり、例えば0.2wt.%、0.6wt.%、0.8wt.%、1.1wt.%、1.2wt.%、1.4wt.%、2.3wt.%又は2.5wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率である。
【0015】
ここで、上記のRHの種類は、好ましくは、Tb又はDyを含む。
【0016】
上記のRHがTbを含む場合、前記Tbの含有量は、好ましくは、0.2~1.1wt.%であり、例えば0.2wt.%、0.5wt.%、0.6wt.%、0.8wt.%又は1.1wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率である。
【0017】
上記のRHがDyを含む場合、前記Dyの含有量は、好ましくは、0.5~2.5wt.%、例えば0.6wt.%、1.2wt.%、1.8wt.%又は2.5wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率である。
【0018】
ここで、前記RHの原子百分率含有量と、前記Rの原子百分率含有量との比は、0.1以下であってもよく、例えば0.02、0.04、0.06又は0.08であり、上記の原子百分率含有量は、各成分の合計含有量に占める原子パーセントを意味する。
【0019】
本発明において、前記Nbの含有量は、好ましくは、0.15~0.25wt.%であり、例えば0.16wt.%、0.18wt.%、0.2wt.%、0.22wt.%、0.23wt.%又は0.24wt.%である。
【0020】
本発明において、前記R-T-B磁石において、前記Coの質量含有量と、「前記Nb及び前記Ti」の総質量含有量との比は、好ましくは、4.6~8.4であり、例えば4.6、5.3、5.5、6.5、6.6、6.7、6.8、7.9又は8.4であり、より好ましくは、4~7である。
【0021】
本発明において、前記Coの含有量は、好ましくは、1.5~3.5wt.%であり、例えば2wt.%、2.5wt.%、2.6wt.%、2.8wt.%又は3wt.%である。
【0022】
本発明において、前記Tiの含有量は、好ましくは、0.15~0.35wt.%であり、例えば0.15wt.%、0.18wt.%、0.23wt.%、0.25wt.%又は0.35wt.%である。
【0023】
本発明において、前記Bの含有量は、好ましくは、0.955~1.1wt.%であり、例えば0.99wt.%である。
【0024】
本発明において、前記Bの原子百分率含有量と、前記R-T-B磁石におけるRの原子百分率含有量との比は、0.38以上であってもよく、例えば0.41、0.42、0.43又は0.44であり、上記の原子百分率含有量は、各成分の合計含有量に占める原子パーセントを意味する。
【0025】
本発明において、前記Feの含有量は、好ましくは、65~66wt.%であり、例えば64.67wt.%、64.71wt.%、64.88wt.%、64.89wt.%、64.98wt.%、65.07wt.%、65.13wt.%、65.14wt.%、65.33wt.%、65.38wt.%又は65.64wt.%である。
【0026】
本発明において、上記のR-T-B磁石は、Cuをさらに含んでもよい。
【0027】
ここで、前記Cuの含有量は、0.1~0.4wt.%であってもよく、例えば0.1wt.%、0.15wt.%、0.25wt.%、0.3wt.%、0.36wt.%又は0.39wt.%であり、wt.%は、各成分総質量で占める百分率である。
【0028】
本発明において、一般的に、製造過程中に前記R-T-B磁石に、例えばC、O及びMnのうちの1つ又は複数の不可避的な不純物がさらに導入されることを当業者に知られている。
【0029】
発明者らは、上記の元素及びその含有量間の特定配合関係の磁石成分配合では、R-T-B磁石として製造された後、得られた磁石材料の保磁力、残留磁束密度及び角型比などの磁気特性は、いずれも高いレベルにあることを発見した。さらに分析したところ、当該成分でのR-T-B磁石は、当該成分でない磁石材料に比べて、結晶粒間三角領域にCo-Ti-Nb相が形成されていることが分かる。前記Co-Ti-Nb相の存在によって、結晶粒成長を著しく阻害する。
【0030】
本発明において、上記のR-T-B磁石は、好ましくは、Co-Ti-Nbをさらに含み、前記Co-Ti-Nb相は、結晶粒間三角領域に位置し、前記結晶粒間三角領域におけるCo-Ti-Nb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.1~2.5%である。ここで、上記の結晶粒間三角領域は、当分野で一般的に理解されている意味であってもよく、一般的に、3つ以上の主相粒子間に形成される粒界相を意味する。前記Co-Ti-Nb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積は、一般的に、FE-EPMA検出時に、検出された前記R-T-B磁石の断面にそれぞれ占める面積を意味する。
【0031】
ここで、上記のCo-Ti-Nb相において、Co、Ti、Nbの間の原子百分率含有量の比は、8:1:1に近い。上記のCo-Ti-Nb相は、好ましくは、CoTiNb相である。
【0032】
ここで、前記結晶粒間三角領域におけるCo-Ti-Nb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、例えば1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%又は2%である。
【0033】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、2%である。
【0034】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.23wt.%のTi、0.24wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.98wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.8%である。
【0035】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.35wt.%のTi、0.22wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.88wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.7%である。
【0036】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.15wt.%のTi、0.16wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.14wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%である。
【0037】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、3wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.67wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、2%である。
【0038】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.8wt.%のNd、0.8wt.%のTb、0.3wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.13wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.9%である。
【0039】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.9wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.25wt.%のCu、2.5wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.38wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、2%である。
【0040】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、30.3wt.%のNd、0.2wt.%のTb、0.39wt.%のCu、2.8wt.%のCo、0.23wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.89wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.8%である。
【0041】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、28.2wt.%のNd、2.5wt.%のDy、0.15wt.%のCu、3wt.%のCo、0.25wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.71wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.8%である。
【0042】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、28.4wt.%のNd、0.5wt.%のTb、1.8wt.%のDy、0.1wt.%のCu、2.5wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.33wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.8%である。
【0043】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、1.2wt.%のDy、0.39wt.%のCu、2wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.64wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.7%である。
【0044】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.2wt.%のNd、0.8wt.%のTb、0.6wt.%のDy、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.6%である。
【0045】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.3wt.%のNd、0.2wt.%のPr、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.7%である。
【0046】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.2%である。
【0047】
本発明の1つの好適な実施例において、上記のR-T-B磁石は、29.5wt.%のNd、1.1wt.%のTb、0.36wt.%のCu、2.6wt.%のCo、0.18wt.%のTi、0.2wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分を含み、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CoTiNb相が含まれ、前記CoTiNb相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.1%である。
【0048】
本発明は、上記のR-T-B磁石の各成分の原料混合物を焼結処理した後、空気ブラスト冷却処理及び時効処理を順次行うことを含む、R-T-B磁石の製造方法を提供する。
【0049】
本発明において、前記焼結処理の工程は、当分野における通常のものであることができる。
【0050】
ここで、前記焼結処理の温度は、好ましくは、1000~1100℃、例えば1080℃である。
【0051】
ここで、前記焼結は、好ましくは、真空条件下、例えば5×10-3Paの真空条件で行われる。
【0052】
ここで、前記焼結処理の時間は、当分野における通常のものを採用することができ、4~8hであってもよく、例えば6hである。
【0053】
本発明において、前記空気ブラスト冷却処理の温度は、好ましくは、550~950℃、例えば550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃又は950℃である。
【0054】
本発明において、当業者が分かるように、前記空気ブラスト冷却処理の温度は、一般的に、前記焼結処理の後に前記空気ブラスト冷却処理の温度まで自然冷却されたときに、空気ブロワーをオンにして室温まで急速冷却する温度を意味する。本発明における前記空気ブラスト冷却処理の時間は、特に限定されず、異なる前記空気ブラスト冷却処理の温度に応じて適宜調節されればよい。
【0055】
本発明において、上記の時効処理は、当分野における通常の時効工程を採用することができ、一般的に1段目時効と2段目時効を含む。
【0056】
ここで、前記1段目時効処理の温度は、860~920℃であってもよく、例えば880℃又は900℃である。
【0057】
ここで、前記1段目時効処理の時間は、2.5~4hであってもよく、例えば3hである。
【0058】
ここで、前記2段目時効処理の温度は、460~530℃であってもよく、例えば500℃、510℃又は520℃である。
【0059】
ここで、前記2段目時効処理の時間は、2.5~4hであってもよく、例えば3hである。
【0060】
本発明において、上記のR-T-B磁石に重希土類元素が含まれる場合、前記時効処理の後に通常粒界拡散を行うこともできる。
【0061】
ここで、前記粒界拡散は、当分野における通常の工程であってもよく、一般的に重希土類元素に対して粒界拡散を行う。
【0062】
前記粒界拡散の温度は、800~900℃であってもよく、例えば850℃である。前記粒界拡散の時間は、5~10hであってもよく、例えば8hである。
【0063】
ここで、前記R-T-B磁石内の重希土類元素の添加方式は、当分野における通常のものを参照すればよく、一般的に、0~80%の重希土類元素を溶解製錬時に添加し且つ残部を溶解製錬時に添加する方式を採用し、例えば25%、30%、40%、50%又は67%である。溶解製錬時に添加される重希土類元素は、例えばTbである。
【0064】
例えば、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTbであり且つTbが0.5wt.%より大きい場合、25~67%のTbを溶解製錬時に添加し、残部を粒界拡散時に添加する。例えば、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTb及びDyである場合、上記のTbを溶解製錬時に添加し、上記のDyを粒界拡散時に添加する。例えば、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTbであり且つTbが0.5wt.%以下である場合、又は前記R-T-B磁石内の重希土類元素がDyである場合、前記R-T-B磁石内の重希土類元素を粒界拡散時に添加する。
【0065】
前記粒界拡散の温度が800~900℃であってもよく、例えば850℃である。前記粒界拡散の時間は5~10hであってもよく、例えば8hである。
【0066】
本発明において、前記焼結処理の前に、一般的に、前記R-T-B磁石の各成分の原料混合物に対して溶解製錬、鋳造、水素破砕、微粉砕及び磁場成形を順に行うことをさらに含む。
【0067】
ここで、前記溶解製錬は、当分野における通常の溶解製錬工程を採用することができる。
【0068】
前記溶解製錬の真空度は、例えば5×10-2Paである。
【0069】
前記溶解製錬の温度は、例えば1550℃以下である。
【0070】
上記の溶解製錬は、一般的に、高周波真空誘導溶解炉で行われる。
【0071】
ここで、前記鋳造の工程は、当分野における通常のものを採用することができる。
【0072】
前記鋳造の工程は、例えばストリップ鋳造方法を採用することができる。
【0073】
前記鋳造の温度は、1390~1460℃であってもよく、好ましくは、1410~1440℃、例えば1430℃である。
【0074】
前記鋳造後に得られた合金鋳片の厚さは、0.25~0.40mmであってもよく、例えば0.29mmである。
【0075】
ここで、前記水素破砕の工程は、一般的に、水素吸収、脱水素、冷却処理を順に行うことであってもよい。
【0076】
前記水素吸収は、0.085MPaの水素圧力の条件下で行ってもよい。
【0077】
前記脱水素は、真空引きしながら昇温する条件下で行ってもよい。前記脱水素の温度は480-520℃であってもよく、例えば500℃である。
【0078】
ここで、前記微粉砕の工程は、例えばジェットミル粉砕などの当分野における通常の工程を採用してもよい。
【0079】
前記微粉砕時のガス雰囲気は、酸化ガス含有量が1000ppm以下であってもよく、前記酸化ガス含有量は、酸素又は水分の含有量を意味する。
【0080】
前記微粉砕時の圧力は、例えば0.68MPaである。
【0081】
前記微粉砕の後、一般的に例えばステアリン酸亜鉛などの潤滑剤をさらに添加する。
【0082】
前記潤滑剤の添加量は、前記微粉砕後に得られた粉体質量の0.05~0.15%であってもよく、例えば0.12%である。
【0083】
ここで、前記磁場成形の工程は、当分野における通常の工程を採用してもよい。
【0084】
前記磁場成形は、1.8T以上の磁場強度と窒素雰囲気保護下で行ってもよい。例えば1.8~2.5Tの磁場強度で行う。
【0085】
本発明はさらに、上記の製造方法によって製造されたR-T-B磁石を提供する。
【0086】
当分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各好適な条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各好適な具現例を得ることができる。
【0087】
本発明で使用される試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0088】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にあり、即ち、本発明は、特定の配合関係のCo、Ti及びNb、並びにBなどの元素を提供することにより、R-T-B磁石の成分をさらに最適化し、得られたR-T-B磁石の保磁力が著しく向上し、残留磁束密度、高安定性能及び角型比などの磁気特性も同時に高いレベルにある。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】実施例1におけるR-T-B磁石のSEM図である。図1中の矢印Aは、結晶粒間三角領域における単点定量分析のCo-Ti-Nb相を示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明は上記の実施例の範囲に制限されるものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常の方法および条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
実施例1
【0091】
下記表1に示す実施例1のR-T-B磁石の成分に従って原料を調製し、原料混合物(表1の成分において、0.4wt.%のTbを溶解製錬時に添加する)に対して溶解製錬、鋳造、水素破砕、微粉砕、磁場成形、焼結処理、空気ブラスト冷却処理、時効処理及び粒界拡散を順に行って得られた。
【0092】
当該R-T-B磁石の製造工程は、以下の通りである。
【0093】
(1)溶解製錬:5×10-2Paの真空度の高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬し、溶解製錬の温度は1550℃以下である。
【0094】
(2)鋳造:ストリップ鋳造方法を採用して、厚さが0.29mmである合金鋳片を獲得し、鋳込みの温度は、1430℃である。
【0095】
(3)水素破砕:水素吸収、脱水素、冷却処理を行った。水素吸収は、0.085MPaの水素圧力の条件下で行った。脱水素は、真空引きしながら昇温する条件下で行い、脱水素温度は、500℃である。
【0096】
(4)微粉砕工程:酸化ガス含有量が100ppm以下である雰囲気下でジェットミル粉砕を行い、酸化ガスは、酸素又は水分含有量を意味する。ジェットミル粉砕の研磨室の圧力は、0.68MPaである。粉砕後に、潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を添加し、添加量は、混合後の粉末重量の0.12%である。
【0097】
(6)磁場成形:1.8~2.5Tの磁場強度と窒素雰囲気保護下で行った。
【0098】
(7)焼結処理:5×10-3Paの真空条件下、1080℃下で6hの焼結を行い、冷却前にArガスを導入して気圧が0.05MPaに達するようにした。
【0099】
(8)空気ブラスト冷却処理:焼結処理終了後、650℃まで自然冷却し、空気ブロワーをオンにして室温まで急速冷却した。
【0100】
(9)時効処理:1段目時効の温度は900℃、時間は3hであり、2段目時効の温度は510℃、時間は3hである。
【0101】
(10)粒界拡散:残りの重希土類元素(0.7wt.%のTb)を溶融した後、材料表面に付着して、850℃下で8hの粒界拡散を行った。
【0102】
2、実施例2~15及び比較例1~4におけるR-T-B磁石の原料及び空気ブラスト冷却処理の温度は、下記表1に示す通りであり、その他の製造工程は実施例1と同様である。ここで、実施例2~7、13~15及び比較例1~4には、いずれも溶解製錬時に0.4wt%のTbを添加し、残りのTbは粒界拡散によりR-T-B磁石に入り込み、実施例8、9及び11における重希土類元素は、いずれも粒界拡散時に添加されてR-T-B磁石に入り込み、実施例10及び12におけるTbは、溶解製錬時に添加され、Dyは、粒界拡散によりR-T-B磁石に入り込む。
効果実施例1
【0103】
1、成分測定:実施例1~15及び比較例1~4におけるR-T-B磁石は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で測定した。試験結果は、下記表1に示す通りである。
【0104】
【表1】

備考:/は、当該元素が添加されていないことを示す。上記の各実施例及び比較例のR-T-B磁石ではGa及びZrが検出されず、最終製品のR-T-B磁石は、製造中にC、O及びMnが不可避的に導入され、各実施例及び比較例に記載された含有量百分率は、これらの不純物を含まない。
2、磁気特性試験
【0105】
実施例1~15及び比較例1~4におけるR-B-T磁石は、室温20℃条件下で、PFMパルス式BH減磁曲線試験装置で試験されて、残留磁束密度(Br)、固有保磁力(Hcj)、最大エネルギー積(BHmax)、角型比(Hk/Hcj)のデータを得ており、試験結果は、下記表2に示す。
【0106】
【表2】

3、ミクロ構造の試験
【0107】
FE-EPMAによる検出:実施例1~15及び比較例1~4におけるR-T-B磁石の垂直配向面を研磨し、電界放出電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA,日本電子株式会社(JEOL),8530F)を採用して検出した。まず、FE-EPMA面走査によりR-T-B磁石内のCo、Ti及びNb元素の分布を決定し、次にFE-EPMA単点定量分析によりCo-Ti-Nb相中の各元素の含有量を決定し、試験条件は、加速電圧15kv、プローブビーム電流50nAである。検出により、実施例1~15におけるCo-Ti-Nb相のCo、Ti及びNb元素の原子百分率含有量の比は、8:1:8に近い。試験結果は、下記の表3に示す。
【0108】
図1に示すように、図1は、実施例1におけるR-T-B磁石がFE-EPMAによって検出されたSEM図のミクロ構造図である。図1の矢印Aが示す位置は、結晶粒間三角領域における単点定量分析のCo-Ti-Nb相である。検出及び計算から、本発明のR-T-B磁石の結晶粒間三角領域にCoTiNb相が形成され、且つ結晶粒間三角領域における当該物相の面積と結晶粒間三角領域総面積との比(以下、CoTiNb相の面積が占める比率と称する)が2%であることを得る。ここで、CoTiNb相の面積と結晶粒間三角領域の面積は、検出された断面(上記の垂直配向面)に占める面積をそれぞれ意味する。実施例2~15及び比較例1~4の試験結果は、下記の表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
上記の実験データから分かるように、発明者らが設計した上記のR-T-B磁石の成分は、磁石材料として製造された後、残留磁束密度、保磁力、高温安定性、磁気エネルギー積、角型比がいずれも高いレベルにあり、総合的な磁気特性に優れた磁石材料を得ることができ、高要求の分野への適用を満足することができる。さらなるミクロ構造の解析により、発明者らは、上記の特定の成分のR-T-B磁石が磁石材料として製造された後、磁石の結晶粒間三角領域に特定面積の比率を有するCoTiNb相を形成し、当該物相の存在によって、結晶粒成長を著しく阻害し、さらにR-T-B磁石の保磁力及びその他の磁気特性を向上させることを見出した。本発明におけるR-T-B磁石の成分が本発明の範囲外であると、CoTiNb相又は少ない含有量の当該物相が得られず、R-T-B磁石の磁気特性を著しく向上させることが困難となる。

図1
【国際調査報告】