(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】手術部位環境の隔離及び制御のためのポータブルシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 90/40 20160101AFI20240319BHJP
A61B 46/20 20160101ALI20240319BHJP
A61B 50/00 20160101ALI20240319BHJP
A61B 90/30 20160101ALI20240319BHJP
A61G 10/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61B90/40
A61B46/20
A61B50/00
A61B90/30
A61G10/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552261
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 US2021058496
(87)【国際公開番号】W WO2022182394
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523325738
【氏名又は名称】サージボックス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】デビー リン テオドレスク
(72)【発明者】
【氏名】マコーレー リアードン デュプリー ケニー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン サミュエル フィップス
(72)【発明者】
【氏名】マイク ホリア ミハイル テオドレスク
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341KK01
(57)【要約】
手術部位上の手術中の環境を制御するためのポータブル手術システムが開示される。この手術システムは、患者の手術部位に取り付けられるように構成された可撓性手術エンクロージャを含む。このエンクロージャは、手術者が該エンクロージャ内から手術部位の手術を行うことを可能にする。エンクロージャは、肢手術部位が該エンクロージャ内に配置されるように、患者が腕又は脚を該エンクロージャ内に挿入することを可能にするように構成された患者肢ポートをさらに備えることができる。手術システムは、1つ又は複数のセンサを備える環境能動制御ユニットをさらに含み得る。手術システムは、外部環境汚染物質が手術部位に到達することを防止すると共に、手術中に生じる血液への曝露から手術者を保護するバリアを提供する。ポータブル手術システムは、手術室以外の環境、例えば、屋外、テント、コテージ、及び非無菌室で手術を行うために使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して手術を行うためのポータブル手術システムであって:
(a).患者の体に取り付けられるように構成された可撓性手術エンクロージャであって:
胴手術部位の手術が必要である場合、該患者の該胴手術部位を覆うよう該患者の胴に配置されるように構成されたインサイズドレープ;
患者の腕又は脚の手術が必要である場合、肢手術部位が該エンクロージャ内に配置されるよう、該患者が該腕又は該脚を該エンクロージャ内に挿入することを可能にするように構成された患者肢ポート;
該エンクロージャ内に配置された該胴手術部位又は該肢手術部位に手術者がアクセスして手術を行うことを可能にする1つ又は複数の腕ポート;及び
該手術中に、該手術者が該胴手術部位又は該肢手術部位を観察することを可能にする1つ又は複数の透明な材料層を備える、該可撓性手術エンクロージャ;
(b).該可撓性手術エンクロージャに安定性を提供するように構成された、該可撓性手術エンクロージャに取り付けられたフレーム;並びに
(c).該エンクロージャ内及び該手術部位上の無菌環境を保証するために、該エンクロージャ内の空気流及び圧力を供給及び自動制御するように構成された環境空気制御システムであって、該自動制御が、該エンクロージャからのセンサ読み取り値に基づく、該環境空気制御システムを備える、前記ポータブル手術システム。
【請求項2】
前記手術エンクロージャが、前記インサイズドレープの周囲に配置され、シールを形成するように前記患者の前記手術部位の周囲に取り付けられる接着面を備え;該インサイズドレープが取り除かれると、該患者の該手術部位が該エンクロージャ内に含まれて、前記手術者が該エンクロージャの内部からアクセス可能となる一方、該患者の他の表面領域が、該エンクロージャの外部に位置する、請求項1記載のポータブル手術システム。
【請求項3】
前記手術エンクロージャが、手術中に該エンクロージャ内で生じる望ましくない血液及び流体を収集するように構成された流体リザーバをさらに備え;該流体リザーバが、該エンクロージャの下部に配置され、該エンクロージャ材料の折り返し部として形成されている、請求項1記載のポータブル手術システム。
【請求項4】
前記環境制御システムが:
ファン、エアフィルタ、及び制御システムを含む空気供給システム;
前記エンクロージャ内に少なくとも部分的に配置され、該空気供給システムから空気を受け取るように構成された空気管を含み;
該空気管が、該エンクロージャ内に配置され、前記手術部位の上に空気流を発生させるように構成された1つ又は複数の吹き出し口を備える、請求項1記載のポータブル手術システム。
【請求項5】
前記空気供給システムが、前記エンクロージャ内の圧力を測定するように構成された圧力センサをさらに含み;前記制御システムが、該圧力センサから一連の圧力読み取り値を受け取り、該エンクロージャ内の空気圧及び空気流を所望の値に調整するように該空気供給システムを制御するように構成されている、請求項4記載のポータブル手術システム。
【請求項6】
前記圧力センサが、前記エンクロージャの環境を前記圧力センサと接続するように、該エンクロージャに取り付けられた圧力管を介して該エンクロージャに接続されている、請求項5記載のポータブル手術システム。
【請求項7】
前記空気管が管状の一方向弁として機能し、前記手術システムからの空気の喪失を最小限にするために前記空気供給システムが止められたときに該空気管が閉じることを可能にするように、該空気管が可撓性の圧平可能な材料から形成されている、請求項4記載のポータブル手術システム。
【請求項8】
前記患者肢ポートが、平均的な成人の肢のサイズと比較して小さいサイズから大きいサイズまで、異なるサイズの腕又は脚を収容し、前記手術エンクロージャに適切な空気シールを保証するように調整可能なサイズを有するように構成されている、請求項1記載のポータブル手術システム。
【請求項9】
手術者が前記エンクロージャに材料及び器具を出し入れすることを可能にするように構成された1つ又は複数の材料ポートをさらに含み、該材料ポートの少なくとも1つが、該材料ポートの開閉を可能にする磁性ストリップを備える、請求項1記載のポータブル手術システム。
【請求項10】
前記手術エンクロージャが、手術者が該エンクロージャのサイズを調整できるように構成された1つ又は複数の折り返し部を備える、請求項1記載のポータブル手術システム。
【請求項11】
患者に手術を行うためのポータブル手術システムであって:
(a).該患者の手術部位を覆うように配置され、手術者がエンクロージャを介して該手術部位の手術を行うことを可能にするように構成された可撓性手術エンクロージャであって、1つ又は複数の可撓性の透明な層を備える、該可撓性手術エンクロージャ;
(b).該可撓性手術エンクロージャに取り付けられたフレーム;及び
(c).該手術部位上の無菌環境を保証するように該エンクロージャ内に空気流を供給し、制御するように構成された環境制御システムを含み;
該エンクロージャに取り付けられると、該フレームが、該エンクロージャの軸方向の長さにわたって張力を提供し、手術者が該手術部位の手術を行うことを可能にする手術空間を該エンクロージャ内に形成するように構成されている、前記ポータブル手術システム。
【請求項12】
前記フレームが、2つの可撓性テンショナセグメントによって互いに挟まれた2つの剛性スペーサセグメントを含むループ形状を有し、
該テンショナセグメントが、該2つのテンショナセグメントの中間点に力が加えられると該フレームがサドル形状を本質的にとるよう、湾曲するように構成され;
第1のテンショナセグメントの中間点が、前記エンクロージャの軸方向前端部に取り付けられ、第2のテンショナセグメントの中間点が、該エンクロージャの軸方向後端部に取り付けられ;
該エンクロージャの軸方向長さにわたる張力が、該湾曲したテンショナセグメントにおける張力によって発生する、請求項11記載のポータブル手術システム。
【請求項13】
手術のために展開されていると、前記フレームに取り付けられた前記可撓性エンクロージャが、該フレームに張力を発生させるように該フレームに作用して、該フレームを、湾曲したテンショナセグメントを含むサドル形状に維持する、請求項12記載のポータブル手術システム。
【請求項14】
前記フレームが、前記ループ形状のフレームを形成するように互いに接続されるように構成された複数のセグメントを含むモジュール式フレームである、請求項11記載のポータブル手術システム。
【請求項15】
前記エンクロージャが、調整可能な長さの複数の取り付け手段を介して前記フレームに取り付けられ、該エンクロージャの幅が、該取り付け手段の長さを調整することによって調整される、請求項11記載のポータブル手術システム。
【請求項16】
前記エンクロージャが、調整可能な長さの複数の取り付け手段を介して前記フレームに取り付けられ、該エンクロージャの内寸及び該エンクロージャにおける張力が、該取り付け手段の長さを調整することによって調整されるように構成されている、請求項11記載のポータブル手術システム。
【請求項17】
前記フレームの前記セグメントの少なくとも一部が、手術者が該セグメントの長さを調整することによって該フレームの寸法を調整できるように、調整可能な長さを有するように構成されている、請求項14記載のポータブル手術システム。
【請求項18】
前記手術部位を照明するように構成された1つ又は複数のライト、及び該手術部位を撮像するように構成された1つ又は複数のカメラのうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項11記載のポータブル手術システム。
【請求項19】
前記1つ又は複数のライトが、前記エンクロージャ上に配置されるか、又は該エンクロージャに組み込まれるLEDストリップライトである、請求項18記載のポータブル手術システム。
【請求項20】
前記フレームに取り付けられるように構成されたフレーム取り付けセグメントをさらに含み、前記1つ又は複数のライト又は前記1つ又は複数のカメラが、該フレーム取り付けセグメントに取り付けられている、請求項18記載のポータブル手術システム。
【請求項21】
患者に手術を行うためのポータブル手術システムであって:
(a).患者の体に取り付けられるように構成された可撓性手術エンクロージャであって:
該患者の胴手術部位の手術が必要である場合、該胴手術部位を覆うよう該患者の胴上に配置されるように構成されたインサイズドレープ;
患者の腕又は脚の手術が必要である場合、肢手術部位が該エンクロージャ内に配置されるよう、該患者が腕又は脚を該エンクロージャ内に挿入することを可能にするように構成された患者肢ポート;
該エンクロージャ内に配置された該胴手術部位又は該肢手術部位に手術者がアクセスして手術を行うことを可能にする1つ又は複数の腕ポート;及び
該手術中に該手術者が該胴手術部位又は該肢手術部位を観察することを可能にする1つ又は複数の透明な材料層を備える、該可撓性手術エンクロージャ;
(b).該可撓性手術エンクロージャに取り付けられ、該手術エンクロージャ内の圧力よりも高い膨張可能な構造の圧力まで膨張するように構成された膨張可能な構造であって、膨張した状態にあると、該可撓性手術エンクロージャに形状、支持、及び安定性を提供する、該膨張可能な構造;並びに
(c).該エンクロージャ内及び該手術部位上の無菌環境を保証するために、該エンクロージャ内の空気流及び、圧力を供給及び制御するように構成された環境空気制御システムを含む、前記ポータブル手術システム。
【請求項22】
前記膨張可能な構造が、可撓性材料から形成され、前記手術エンクロージャに組み込まれ、該手術エンクロージャと共に折り畳み可能である、請求項21記載のポータブル手術システム。
【請求項23】
前記膨張可能な構造に接続された加圧ガスカートリッジをさらに含み、該ガスカートリッジが、トリガ装置の作動時に、該膨張可能な構造を所望の膨張可能な構造の圧力に膨張させるように構成されている、請求項21記載のポータブル手術システム。
【請求項24】
前記膨張可能な構造が、2つ以上のリブエアビーム及び2つのベースビームを備える、請求項21記載のポータブル手術システム。
【請求項25】
前記空気管が、可撓性で圧平可能な材料からなる2つのフラップから形成され、該空気管が管状の一方向弁として機能することを可能にする一方、空気の喪失を最小限にするよう前記エンクロージャの内部と前記外部環境との間の特定の圧力差で上部フラップが閉じるように、該上部フラップが、下部フラップ材料よりも軽い材料か、又は異なる厚さの材料か、又は異なる可撓性の材料のいずれかから形成される、請求項7記載のポータブル手術システム。
【請求項26】
前記流体リザーバが、該流体リザーバ内の流体体積を推定する際に前記手術者を支援するための物差し又は他の視覚マーキングを備える、請求項3記載のポータブル手術システム。
【請求項27】
前記流体リザーバが、前記手術中の流体の喪失を監視するために無線又は有線手段を介してコンピュータに接続されたセンサを備える、請求項3記載のポータブル手術システム。
【請求項28】
前記手術中に特定のレベルの流体の喪失に到達したときに前記手術者に知らせるためのアラームをさらに含む、請求項27記載のポータブル手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書に十分に記載されたかのように、あらゆる目的のために引用により本明細書中に組み込まれている、2021年2月28日に出願された「実用的作業に基づいた容器及び膨張可能な隔離チャンバ(UTILITARIAN TASK-BASED CONTAINER AND INFLATABLE ISOLATION CHAMBER)」と題する米国仮特許出願第63/154,761号、及び2021年9月23日に出願された「手術部位環境の隔離及び制御のためのポータブルシステム(PORTABLE SYSTEM FOR ISOLATION AND REGULATION OF SURGICAL SITE ENVIRONMENTS)」と題する米国仮特許出願第63/247,545号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
(発明の背景)
I. 発明の分野
本発明の例示的な実施態様は、手術部位上の手術中の環境を制御するためのポータブル手術システム並びにそれを実施及び使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
II. 背景の議論
世界の疾病負担の25%超が、外科的治療を必要とし、これは、毎年1800万を超える死亡を防止することができる。これらの範囲は、産科的合併症から外傷、感染症、癌、及びその他と多岐にわたる。なお20億人が、安全な外科的治療を有意に利用することができず、20~30億人超が、汚染された環境での非無菌手術しか利用することができず、異常に高い割合の外科感染症をもたらしている。この分野のイノベーションは、典型的には、手術室及び手術室換気システムを、テント形式などのより運びやすいものにすることに焦点を当てている。しかしながら、そのようなシステムは、依然として購入及び維持の費用が高い。さらに、そのようなシステムは、遠隔地に迅速に輸送することが困難である。同時に、毎年85,000人を超える医療提供者が患者の体液によって感染し、世界中の感染した医療提供者の90%が、低資源の環境で働いている間にさらされていた。個人を保護する機器は、これらのリスクをある程度軽減するが、保護レベルとコスト及び使用者快適性の両方との間には明確なトレードオフがあり、これは、使用者のコンプライアンスに対応するために十分に文書化されている。
【0004】
本発明の例示的な実施態様は、切開部とより大きな手術領域との間の汚染物質の交換に対する超軽量で内蔵型の受動的及び能動的な双方向バリアを実施することによって、患者及び提供者の両者が手術中に感染リスク及び浮遊微粒子にさらされるという課題に対処することを目的とする。
【0005】
この背景セクションで開示された上記の情報は、本発明の背景の理解を促進することのみを目的としており、従って、先行技術のいかなる部分も構成しない情報を含み得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明の例示的な実施態様は、手術部位上の手術中の環境を調節するためのポータブル手術システムを提供する。本明細書に開示されるポータブル手術システムは、患者及び手術者の両者が手術中に感染リスクにさらされるという課題に対処する。加えて、本明細書のポータブル手術システムは、外科手術に付随する流体(例えば、血液及び他の体液)及び浮遊微粒子(例えば、環境中の塵、胞子、ウイルス、細菌)にさらされることから、患者及び手術者の両者を保護する。
【0007】
手術システムは、外部環境(即ち、手術エンクロージャの外部)からの汚染物質が手術部位に到達するのを防止することによって該手術部位が無菌に維持されるようにする。また、手術システムは、患者の体の他の領域上の汚染物質が手術部位に到達しないように構成されている。手術システムは、手術中にエンクロージャ内で生じる汚染物質(例えば、血液)への曝露から手術者を保護するバリアを提供する。ポータブル手術システムは、手術室以外の環境、例えば、野外、屋外、テント、コテージ、居住室などで手術を行うために使用することができる。
【0008】
ポータブル手術システムは、患者の体に取り付けられるように構成された可撓性手術エンクロージャを含み得る。このエンクロージャは、患者の胴手術部位の手術が必要である場合、該患者の胴手術部位を覆うよう該患者の胴に配置されるように構成されたインサイズドレープを備えることができる。エンクロージャは、患者の腕又は脚の手術が必要である場合、肢手術部位を該エンクロージャ内に配置されるよう、該患者が該腕又は該脚を該エンクロージャ内に挿入することを可能にするように構成された患者肢ポートをさらに備えることができる。
【0009】
エンクロージャは、手術者が該エンクロージャ内に配置された胴手術部位又は肢手術部位にアクセスして手術を行うことを可能にする1つ又は複数の腕ポート及び腕スリーブをさらに備えることができる。エンクロージャは、手術中に手術者が胴手術部位又は肢手術部位を観察することを可能にする1つ又は複数の透明な層をさらに備えることができる。手術エンクロージャは、インサイズドレープの周囲に配置され、シールを形成するように患者の手術部位の周囲に取り付けられる接着面を備えることができる。インサイズドレープが取り除かれると、患者の手術部位がエンクロージャ内に含まれて、手術者がエンクロージャの内部からアクセス可能になる一方、該患者の他の表面領域は、エンクロージャの外部に位置する。手術エンクロージャは、当技術分野で公知の様々な方法、例えば、ガンマ線滅菌、ガス滅菌、UV滅菌などによって滅菌することができる。手術エンクロージャのパッケージングは、該エンクロージャの無菌性を維持するように多種多様な方法に従って設計することができる。インサイズドレープは、エンクロージャの内部を含む気密環境を維持するように当技術分野で公知の様々な方法によって設計することができ、接着剤、ベルト、ベルクロ取り付け具などによって該エンクロージャの患者の手術部位に取り付けられる。
【0010】
手術エンクロージャは、手術中に該エンクロージャ内で生じる望ましくない血液及び流体を収集するように構成された流体リザーバを備えることができる。流体リザーバは、エンクロージャの下部に配置され、エンクロージャ材料の折り返し部として形成することができる。流体リザーバは、充填センサ、及び手術中に失われた流体の量を手術者に示すための物差し又は他の目視測定補助具を備えることができる。これは、処置中の失血を示すことができる。流体リザーバはまた、手術部位の周囲に残存するのではなく、望ましくない流体がリザーバ内に蓄積するため、手術エンクロージャの使用中の視界を改善するために使用することができる。流体リザーバは、流体の流れが重力によって該リザーバ内に誘導されるように配置してもよいし、又は低重力環境において望ましくない流体をリザーバ内に廃棄することになる吸引装置の使用などによって能動的に管理してもよい。吸引ラインを、一方向弁制御システムを介して流体リザーバに取り付けることができる。
【0011】
ポータブル手術システムは、エンクロージャ内及び手術部位上の無菌環境を保証するために、該エンクロージャ内の空気流及び圧力を供給及び制御するように構成された環境制御システムを含み得る。環境制御システムは、ファン、エアフィルタ、エンクロージャ内の圧力を測定するように構成された圧力センサ、制御システム、及びエンクロージャ内に少なくとも部分的に配置された空気管を含み得る。空気管は、空気供給システムから空気を受け取るように構成されている。空気管は、エンクロージャ内に配置され、手術部位上に空気流を発生させるように構成された1つ又は複数の吹き出し口を備えることができる。制御システムは、圧力センサから一連の圧力読み取り値を受け取り、エンクロージャ内の空気圧及び空気流を所望の値に制御するように構成することができる。制御システムは、センサ制御ループを介してエンクロージャ内の所望の圧力、空気流、温度、又はその他の環境パラメータを維持するようにカスタマイズされたプログラムを搭載した1つ又はいくつかのマイクロプロセッサを含み得る。制御システムは、1つ又はいくつかの圧力制御ループ、1つ又はいくつかの温度制御ループ、1つ又はいくつかの湿度制御ループ、及び1つ又はいくつかの空気流制御ループを含み得る。後者の場合、制御システムは、環境制御システムを支持する膨張可能なフレーム内で、手術エンクロージャ内の圧力とは異なる圧力を維持することができる。制御システムは、外部の温度、圧力、及び風速に関係なく、手術エンクロージャ環境内の所望のパラメータを維持することになる、該エンクロージャの外部の環境パラメータ、例えば、差圧、温度、及び空気流センサに基づいて調整することができる。制御システムは、いくつかのシナリオを挙げると、外部環境の条件、例えば、高地での使用、低温条件での使用、又は風の強い条件を緩和することができる。
【0012】
手術システムは、可撓性手術エンクロージャに取り付けられたフレームを含み得る。このフレームは、可撓性手術エンクロージャを通した視界を妨げることなく、該手術エンクロージャに安定性を提供するように構成されている。このフレームは、エンクロージャの軸方向の長さにわたって張力を提供し、手術者が手術部位で手術を行うことを可能にする手術空間をエンクロージャ内に形成するように構成されている。このフレームは、2つの可撓性テンショナセグメントによって挟まれた2つの剛性スペーサセグメントを含むループ形状を有することができる。このテンショナセグメントは、フレームが本質的にサドル形状をとるよう湾曲するように構成されている。手術のために展開されていると、フレームに取り付けられた可撓性エンクロージャがフレームに作用して、該フレームを、湾曲したテンショナセグメントを含むサドル形状に維持する。このエンクロージャは、長さが調節可能な複数の取り付け手段を介してフレームに取り付けることができる。エンクロージャの幅及び他の寸法は、取り付け手段の長さを調整することによって調整することができる。フレームは、複数のセグメントを備えることができ、該フレームの該セグメントの少なくとも一部は、手術者が該セグメントの長さを調整することによって該フレームの寸法を調整できるよう調整可能な長さを有するように構成されている。
【0013】
ポータブル手術システムは、手術部位を照明するように構成された1つ又は複数のライト、及び該手術部位を撮像するように構成された1つ又は複数のカメラをさらに含み得る。1つ又は複数のライトは、エンクロージャ上に配置されるか又は該エンクロージャに組み込まれるLEDストリップライトであり得る。
【0014】
この手術システムは、屋外(例えば、戦場で負傷した兵士、辺境の住民、荒野での救助活動など)及び病院の手術室の無菌性が欠如している環境(例えば、テント、コテージ、居住室、病院の非手術室など)で手術を行うために使用されるように構成されている。手術システムは、持ち運び可能で軽量、そして人間工学的であり、且つ設置が容易であるように構成されている。手術システムは、現場での持ち運びが容易になるように、ポータブルバッグ(例えば、バックパック)に梱包されるように構成することができる。
【0015】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は共に、例示的且つ説明的なものであり、特許請求の範囲に記載される本発明のさらなる説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
(図面の簡単な説明)
本発明のさらなる理解を提供するために含められ、本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、本発明の実施態様を例示し、詳細な説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0017】
【
図1】
図1は、病院施設とは異なる環境で行うことができる手術を受ける患者の体に配置されたポータブル手術システムの斜視図を示す。
【
図2】
図2は、
図1のポータブル手術システムの例示的な一実施態様のプロトタイプの写真を示す。
【
図3】
図3(a)は、患者に手術を行うために手術者によって使用されているときのポータブル手術システムの例示的な一実施態様の図を示す。
図3(b)は、患者に手術を行うために手術者によって使用されているときのポータブル手術システムの例示的な一実施態様の別の図を示す。
【
図4】
図4は、ポータブル手術システムの例示的な一実施態様のフレーム及び手術エンクロージャの斜め前方斜視図を示す。
【
図5】
図5は、ポータブル手術システムの例示的な一実施態様のフレーム及び手術エンクロージャの正面図を示す。
【
図6】
図6は、ポータブル手術システムの例示的な一実施態様のフレーム及び手術エンクロージャの側面図を示す。
【
図7】
図7は、ポータブル手術システムの例示的な一実施態様のフレーム及び手術エンクロージャの斜め後方図を示す。
【
図8】
図8は、ポータブル手術システムの例示的な一実施態様のフレーム及び手術エンクロージャの後面図を示す。
【
図9】
図9は、ポータブル手術システムの例示的な一実施態様のフレーム及び手術エンクロージャの上面図を示す。
【
図10】
図10は、ポータブル手術システムの例示的な一実施態様のフレーム及び手術エンクロージャの上面図を示す。
【
図11】
図11(a)は、分離された状態の手術エンクロージャとフレームとの間の取り付け手段の構成を示す。
図11(b)は、手術エンクロージャとフレームとを接続/取り付ける取り付け手段の構成を示す。
【
図12】
図12(a)は、手術エンクロージャに取り付けられる前、且つ張力が加えられる前のフレームの例示的な一実施態様を示す。
図12(b)は、手術エンクロージャに取り付けられたときにとる張力がかかった状態にあるフレームの例示的な一実施態様を示す。
【
図13】
図13は、フレームに取り付けられた手術エンクロージャ、該エンクロージャによってフレームに加えられる力、及び該フレームによって該エンクロージャに生じた張力を示す。
【
図14】
図14は、フレームが取り付け手段を介して手術エンクロージャを所望の幅に伸長しているときの該エンクロージャ及び該フレームの後面を示す。
【
図15】
図15は、調節可能な長さ及び幅を有するように構成されたフレームの例示的な一実施態様を示す。
【
図16】
図16は、フレームに容易に組み立てられるように構成された複数のポータブル式の梱包可能なフレームモジュールの例示的な一実施態様を示す。
【
図17】
図17は、剛性フレームの代わりに膨張可能な構造を使用する手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図18】
図18は、剛性フレームの代わりに、エンクロージャ内に配置された膨張可能な構造を使用する手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図19】
図19は、リブエアビーム及び上部エアビームを備える膨張可能な構造を使用する手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図20】
図20は、リブエアビーム及び基部エアビームを備える膨張可能な構造を使用する手術システムの別の例示的な一実施態様を示す。
【
図21】
図21は、手術部位にアクセスするために手術者によって使用されるように構成されたスリーブの例示的な一実施態様を示す。
【
図22】
図22は、手術部位にアクセスするために手術者によって使用されるように構成されたスリーブの別の例示的な一実施態様を示す。
【
図23】
図23は、患者の手又は腕を手術するために使用されているときの手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図24】
図24は、患者の脚又は足を手術するために使用されているときの手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図25】
図25は、腕/脚ポートの代替の技術的設計を含む手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図26】
図26は、腕/脚ポートの代替の技術的設計を含む手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図27】
図27は、腕/脚ポートの代替の技術的設計を含む手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図28】
図28は、腕/脚ポートの代替の技術的設計を含む手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図29】
図29は、器具、トレイ、装置、及び材料を手術エンクロージャの内外に移動できるように構成された材料ポートを含む手術システムの例示的な一実施態様を示す。
【
図30】
図30(a)は、ラインポートのアセンブリを含む手術システムの正面図を示す。
図30(b)は、
図30(a)と同様のラインポートアセンブリの例示的な一実施態様を示す。
図30(c)は、
図30(b)のラインポートのアセンブリの第1の層を示す。
図30(d)は、
図30(b)のラインポートのアセンブリの第2の層を示す。
【
図31】
図31(a)は、手術中にエンクロージャ内で生じる血液などの望ましくない流体を収集するように構成された流体リザーバの例示的な一実施態様を示す。
図31(b)は、
図31(a)の流体リザーバの部分/一部を示す。
図31(c)は、目盛りを備える
図31(a)の流体リザーバの部分/一部を示す。
図31(d)は、歪みセンサを備える
図31(a)の流体リザーバの部分/一部を示す。
【
図32】
図32は、インサイズドレープ及び接着領域を含む手術システムの底面の例示的な一実施態様を示す。
【
図33】
図33は、無菌手術環境を作り出すためにエンクロージャ内に空気流を発生させるように構成された環境制御システムを含む手術システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
本発明は、本発明の実施態様が示されている添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施態様に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は、本開示が完全であり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるために提供される。図面において、層及び領域のサイズ及び相対的なサイズは、明確にするために誇張されことがある。図面中の同様の符号は、同様の要素を示す。
【0019】
以下の詳細な説明は、本明細書に記載の方法、装置、及び/又はシステムの包括的な理解を得るために提供される。本明細書に記載されるシステム、装置、及び/又は方法の様々な変更、修正、及び均等物は、当業者には自明であろう。明確さ及び簡潔さを高めるために、周知の機能及び構造の説明を省略する。
【0020】
要素若しくは層が別の要素若しくは層の「上にある」又はこれらに「接続されている」と言われる場合、該要素若しくは層が、他の要素若しくは層の上に直接存在しても、これらに直接接続されてもよいし、又は介在する要素若しくは層が存在してもよいことを理解されたい。対照的に、要素若しくは層が別の要素若しくは層の「上に直接ある」又はこれらに「直接接続されている」と言われる場合、介在する要素も層も存在しない。本開示の目的のために、「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」は、Xのみ、Yのみ、Zのみ、又は2つ以上の項目X、Y、及びZの任意の組み合わせ(例えば、XYZ、XY、YY、YZ、ZZ)として解釈できることを理解されたい。
【0021】
膨張可能なポータブル手術システム(全体の構成)
ポータブル手術システムの例示的な一実施態様の構成を、
図1~
図3を参照して以下に説明する。ポータブル手術システムは、可撓性手術エンクロージャ1、フレーム2、及び環境制御システム3を備えることができる。
【0022】
手術エンクロージャは、1人又は複数人の手術者5(例えば、外科医、看護師など)が、該エンクロージャの内部から患者4の予定された手術部位7、例えば、腹部、胸部、背中などにアクセスして外科手術を行うことができるように、該患者の体の上に配置するように構成されている(
図3を参照)。予定された手術部位は、以降、手術野と呼ぶことがある。手術エンクロージャ1は、手術者が手術野を観察できるように、少なくとも部分的に透明な可撓性材料(則ち、透明な材料層)から形成される。
【0023】
エンクロージャは、使用者が手術野にアクセスすることができるように、外科手術を行う前に取り除かれるように構成された1つ又は複数のインサイズドレープをさらに備えることができる。エンクロージャは、手術中に患者4の手術部位7を取り囲むために該患者に接着されるように構成された接着面を備えることができる。エンクロージャの接着面は、該エンクロージャが患者に取り付けられた後に、該エンクロージャの1つ又は複数のインサイズドレープを取り除き、それにより該エンクロージャの内側から手術部位を露出させることができるように該1つ又は複数のインサイズドレープを備えることができる。このようにして、手術者は、エンクロージャの内側から手術部位にアクセスして手術することができる。
【0024】
手術エンクロージャは、手術野の上にエンクロージャによって取り囲まれた内部無菌空間/環境を形成するように環境制御システム3を介して空気が供給され、それにより使用者(例えば、外科医)が無菌環境で手術を行うことができるように構成されている。手術エンクロージャは、陽圧下で空気が供給されるように構成することができる。ポータブル手術システムは、除菌空気がエンクロージャ内に吹き込まれるように構成することができる。
【0025】
エンクロージャ1は、腕ポート6を一体化して、手術者の腕、又は腹腔鏡やロボットなどの腕の代わりとなる拡張器具のいずれかによるエンクロージャの内部へのアクセスを可能にする。繰り返し開閉することができる材料ポートは、エンクロージャの環境保全性を維持するが、処置中に解剖学的材料、器具、及び他の材料の該エンクロージャへの出入りを可能にするために使用される。手術システムは、手術部位に近接してエンクロージャ内に、外科手術中に必要とされる材料及び器具を含めることができる。
【0026】
エンクロージャは、少なくとも部分的に剛性であるフレーム2に取り付けることができる。フレームは、可撓性手術エンクロージャ1に支持を提供するように構成され、且つ該エンクロージャを所望の形状にすることができる。フレームは、モジュール式にすることができ、剛性材料、例えば、プラスチック、硬質ポリビニル管、アルミニウム管などを含み得る。
【0027】
例示的な一実施態様では、ポータブル手術システムは、フレーム2などの剛性フレームを備えなくてもよい。例示的な一実施態様では、ポータブル手術システムは、相対的な剛性を付与し、且つエンクロージャに形状及び支持を提供するために相対的に高い圧力で膨張するように構成された1つ又は複数の膨張可能なビーム又は膨張可能な構造を備えることができる。膨張可能なビーム及び膨張可能な構造は、可撓性エンクロージャに組み込んでもよいし、又は取り付けてもよい。
【0028】
ポータブル手術システムは、環境及び患者からの汚染物質が手術部位に到達するのを防止することによって、該手術部位を無菌状態に維持しながら手術者が外科手術を行うことを可能にする。同時に、エンクロージャは、外科手術中に生じる生体物質(例えば、血液)が該エンクロージャから出て手術者に到達することを防止するバリアを形成し、それにより該手術者を保護する。
【0029】
例示的な一実施態様では、手術エンクロージャは、1回用の使い捨てエンクロージャであり得る。例示的な一実施態様では、手術エンクロージャは、手術のためのセットアップ/展開の前に、手術ガウンのように折り畳んで提供され、現場での保管及び持ち運びが容易になるように梱包することができる。
【0030】
手術エンクロージャ
手術エンクロージャの様々な特徴及び構成を、
図4~
図10を参照して以下に説明する。
図4は、フレーム及び手術エンクロージャの斜め前方斜視図を示す。
図5は、フレーム及び手術エンクロージャの正面図を示す。
図6は、フレーム及び手術エンクロージャの側面図を示す。
図7は、フレーム及び手術エンクロージャの斜め後方図を示す。
図8は、フレーム及び手術エンクロージャの後面図を示す。
図9は、フレーム及び手術エンクロージャの上面図を示す。
図10は、フレーム及び手術エンクロージャの上面図を示す。
【0031】
エンクロージャは、該エンクロージャを構成する上部10を備えることができ、該上部10は、ほぼ半円筒形状を有することができ、該エンクロージャの上部及び側面の両方を含み得る。
【0032】
上部は、手術者がエンクロージャの内部を観察できるように、ポリ塩化ビニル及び/又は熱可塑性ポリウレタン(TPU)などの光学的に透明なプラスチックを含む透明なエンクロージャ材料の1つ又は複数の上面及び側面の観察領域又はパネルを備えることができる。例示的な一実施態様では、透明なエンクロージャ材料は、約2ミル、又は4ミル、又は6ミル、又は8ミル、又は10ミル、又は12ミル、又はそれよりも厚い、又は製造可能性、使用の容易さ、視認性、可撓性、若しくは当技術分野で公知の他の望ましい材料特性から適切であり得る他の値の厚さの熱可塑性ポリウレタン(TPU)であり得る。透明なエンクロージャ材料は、良好な反発性、耐摩耗性、加水分解安定性、及び微生物による攻撃に対する耐性;耐久性(穿刺、引き裂き抵抗に対する);透明性(最適な観察のため);及び粘着性のうちの1つ又は複数の性質を有するように構成することができる。
【0033】
手術エンクロージャの残りの部分は、低密度ポリエチレン及び/又は不透明なTPUなどの可撓性で不透過性のプラスチックを含み得る。例示的な一実施態様では、手術エンクロージャ材料の残りの部分は、約2ミル、又は4ミル、又は6ミル、又は8ミル、又は10ミルの厚さ、又はエンクロージャの製造性、視認性、及び可撓性が妥当な任意の他の材料厚の不透明な熱可塑性ポリウレタン(TPU)であり得る。透明なエンクロージャ材料は、良好な反発性、耐摩耗性、加水分解安定性、及び微生物による攻撃に対する耐性;粘着性(例えば、空気流を促進し、管内でのねじれを防止する非常に低い粘着性)、及び耐久性(穿刺、引き裂き抵抗に対する)のうちの1つ又は複数の性質を有するように構成することができる。
【0034】
エンクロージャは、患者の頭部に近接して配置される前面11(
図1、
図4~
図6を参照)及び該患者の足に近接して配置される後面12を備えることができる(
図6~
図8を参照)。エンクロージャは、手術部位へのアクセスを可能にするように、患者の体に接触して配置されて取り付けられる底面13(
図10を参照)をさらに備えることができる。上部10、前部11、後部12、及び底部13は、同じ連続シート材料から形成してもよいし、又はRF溶接、熱溶接、縫合、超音波接着などを介して互いに取り付けられた複数のシートから形成してもよい。
【0035】
エンクロージャは、手術者が手術部位にアクセスできるように構成された複数の腕ポート6及びスリーブ40を備えることができる。手術エンクロージャは、該エンクロージャの内部環境と外部環境との間で材料が移動できるように構成された1つ又は複数の材料ポートをさらに備えることができる。手術エンクロージャは、外部リソースへのアクセスを必要とするライン、管、ワイヤ、及びドレイン(例えば、麻酔及び呼吸管、医療器具のワイヤ、患者を監視するセンサのワイヤ)への継続的なアクセスを提供するように構成された1つ又は複数のラインポートをさらに備えることができる。
【0036】
フレーム及びエンクロージャへの取り付け
図4~
図10を参照すると、手術エンクロージャ1は、1つ又は複数の取り付け手段17を介してフレーム2に取り付けられている。取り付け手段17は、エンクロージャとフレームとの間の所望の取り付けを達成するように該フレームの周囲の複数の位置に配置することができる(例えば、
図4~
図10を参照)。例えば、取り付け具17aをエンクロージャの側面に配置し、それにより該エンクロージャをフレームの下側に取り付けることができる(例えば、
図8及び
図9を参照)。取り付け具17bは、エンクロージャの前面上側に配置し、それにより該エンクロージャをフレームの上側に取り付けることができる(例えば、
図4及び
図6を参照)。取り付け具17cは、エンクロージャの後面上側に配置し、それにより該エンクロージャをフレームの上側に取り付けることができる(例えば、
図4、
図6、
図7を参照)。
【0037】
図11(a)を参照すると、取り付け手段は、エンクロージャの下側に取り付けられた(例えば、縫合又は溶接された)材料スラブ18、及び該材料スラブ18に取り付けられた1つ又は複数のベルクロパッド19を備えることができる。
図11(a)は、取り付け手段がフレーム2に取り付けられていない構成を示す。
図11(b)は、材料スラブ18がフレーム2の一部に巻き付けられて、ベルクロパッド19が互いに取り付けられ、それによりエンクロージャ1が該フレーム2の一部に取り付けられている構成を示す。フレームとエンクロージャとの間の距離は、ベルクロパッドの位置を互いに対して調整することによって所望の長さ「L1」に調整することができる。
【0038】
取り付け具17aのためのフレーム部分は、真直な円筒形状を有し、スラブは、フレームの形状に従ってきれいに一致し得るが、取り付け具17b及び17cのためのフレーム部分は、矩形のスラブが一致しない湾曲した円筒形状を有し得る。取り付け具17b及び17cは、フレームの上側の前面及び後面における該フレームの湾曲した形状に一致するように設計することができる。本発明の精神を変更することなく、様々な他の取り付け手段を使用できることを理解されたい。
【0039】
図12は、フレーム2の例示的な一実施態様を示す。フレーム2は、閉じたループを形成するように互いに接続されたスペーサ部21及びテンショナ部22を備えることができる。スペーサ部21は、本質的に剛性である(形状が変化しない)が、テンショナ部は、外力が加えられたときに形状を変化させ、ばねのような抵抗/力を提供するように構成されている。拘束又は外力がフレーム2にかかっていない場合、該フレームは、
図12(a)に示される平面状態/形態をとる。外力「F」がテンショナ22に加えられ、力「F1」がスペーサ21に加えられると、ループは湾曲して、
図12(b)に示されるサドル形状をとることができる。力「F」により、テンショナ部とスペーサ部22の平坦面とによって形成された角度「α」が決まる。力F1により、スペーサ21とテンショナ22の円弧との間の間隔が決まる。逆に、
図12(b)の湾曲した形状に張力がかけられた、テンショナ22のばね状フレーム材料は、力「F」及び「F1」とは反対の張力「T」及び「T1」を発生させるように構成されている。
【0040】
本発明の例示的な一実施態様では、フレームの各テンショナセグメントは、双曲放物面(
図12(c)の表面など)と楕円形断面を有する円筒面の半分の部分との間の交差部に形成された形状を実質的にほぼとることができる。2つのテンショナ22はそれぞれ、サドル形状の半分を構成し、2つのスペーサ21によって挟まれ、それにより細長いサドル形状を形成する。数学的用語では、テンショナセグメントは、以下の式を満たす線に実質的に従うことができる:
【数1】
【0041】
図13を参照すると、例示的な一実施態様では、第1のテンショナセグメントの中点P1は、エンクロージャの前軸端部に存在し、第2のテンショナセグメントの中点P2は、エンクロージャの後軸端部に存在する。エンクロージャの軸方向長さにわたる張力は、湾曲したテンショナセグメントの張力によって生じる。手術エンクロージャ1が、少なくとも取り付け手段17b及び17cを介して、P1及びP2でフレーム2に取り付けられると、細長いサドル形状に曲げられたフレーム2に生じる張力「T」を使用して、エンクロージャをその軸方向長さ「L」に伸張させて所望の体積及び形状にする。手術エンクロージャ1は、該エンクロージャの上部材料の軸方向長さ「L」(取り付け具17b及び17cの幅を含む)が、フレーム形状の2つの上部サドル点P1とP2との間の長さにほぼ等しいように構成されている。エンクロージャの軸方向長さ「L」により、フレーム2の形状の長さが制約される。言い換えると、エンクロージャ材料1により力「F」がフレーム2に作用し、それにより該フレームがそのサドル形状に維持するが、該フレーム2により力Tが手術エンクロージャ1に作用し、それにより該エンクロージャが、所望の軸方向の長さ及び形状に伸長する。取り付け点17aを介してフレーム2とエンクロージャ1との間に同様の張力-拘束関係が生じ:該エンクロージャが、力F1を該フレーム2に加え、該フレーム2が、反力T1を該エンクロージャに加える。
【0042】
上述のように張力がかけられたサドル形フレームは、手術者にとって最適な手術条件になる最適な形状を手術エンクロージャに提供することが本明細書の発明者らによって見出された。この構成により、軽量で持ち運び可能な張力がかけられたサドル形フレームを設計することが可能になる(フレームは、他の方法による必要な剛性フレームではなく、ばね定数を介して加えられる相互張力-拘束力を使用する)。
【0043】
図14を参照すると、フレーム2の下部を、取り付け手段17cを介して手術エンクロージャに接続し、それにより該エンクロージャをその幅に沿って伸張させることができる。手術エンクロージャの幅「W」及び該エンクロージャの底面の伸張は、取り付け手段17cの長さを調整することによって調整することができる。
【0044】
可撓性手術エンクロージャ1の形状(例えば、該可撓性手術エンクロージャの様々な部品間の構成及び距離)は、17などの取り付け手段を介して制御することができる。複数の取り付け手段により、可撓性手術エンクロージャ1の所望の形態及び形状を提供するように、該エンクロージャの様々な部分をフレーム2の様々な部分に接続することができる。手術エンクロージャの形状及びエンクロージャ材料の張力を、取り付け手段17の長さを調整することによってさらに調整することができる。
【0045】
例示的な一実施態様では、フレーム長「Lframe」及びフレーム幅「Wframe」(
図15を参照)は、調整可能な長さのスペーサ部及びテンショナ部を提供することによって調整可能にすることができる。可撓性エンクロージャのサイズ、体積、及び形状は、フレーム長「Lframe」及びフレーム幅「Wframe」を調整することによって調整することができる。同様に、エンクロージャ材料の特定の部分における弛み及び張力も、フレーム長「Lframe」及びフレーム幅「Wframe」を調整することによって調整することができる。
【0046】
例示的な一実施態様では、可撓性エンクロージャの特定の部分における形状、体積、及び弛み/張力は、異なるサイズ及び異なる解剖学的構造の患者に適合するように調整可能にすることができる。例えば、胸部が平均よりも広い成人患者の場合、底面13の幅及び/又は弛みは、該患者の胸部に適合するように(例えば、取り付け手段17のフレーム幅及び/又は長さを調整することによって)調整することができる。子供などの若い患者の場合、底面13の幅及び/又は弛みは、該患者に適合するように(例えば、取り付け手段17のフレーム幅及び/又は長さを調整することによって)サイズダウン調整することができる。
【0047】
例示的な一実施態様では、エンクロージャの底面は、該底面13に異なる幅(
図15を参照)を提供するように展開できる材料の折り返し部18を備えることができる。全く折り返されていない状態では、底面の幅は最大Wmaxである。完全に折り返された状態では、底面の幅は最小Wminである。折り返しの中間状態は、底面に中間の幅を提供する。同様の折り返し部を、エンクロージャの様々な位置及び異なる部分(例えば、上面10、前面11、後面12)に設け、それにより手術/処置の必要性に応じて該エンクロージャの体積、形状、及び様々な他の寸法を調整するための手段を提供することができる。
【0048】
モジュール式フレーム
図16を参照すると、例示的な一実施態様では、フレーム2は、該フレーム2に組み込まれるように構成されたいくつかのモジュールセグメントを備えることができる。例えば、フレームは、ストリング23を介して互いに連結されたスペーサ21及び2つのテンショナ部22a及び22bを備えることができる。フレームセグメントは、ストリング23を介して2つの部分24に互いに連結することができる。組み立てられると、部分22a及び22bはテンショナ22を形成する。フレーム2は、セグメントを部分24に接続した後、2つの部分24と湾曲部分22とを接続して
図12(a)のフレームを形成することによって形成することができる。
【0049】
膨張可能な構造フレーム
図17~
図20を参照して以下に説明するように、ポータブル手術システムの例示的な実施態様は、相対的な剛性を付与し、エンクロージャに形状及び支持を提供するよう相対的に高い圧力で膨張するように構成された1つ又は複数の膨張可能な構造25(剛性材料又はばね状材料から形成されたフレーム2などのフレームの代わりに)を備えることができる。膨張可能な構造25は、可撓性材料(例えば、エンクロージャ材料と同じ材料、又はより厚い材料、ポリエチレン、プラスチックシート、ポリマーフィルム、織布、積層織物、不織布など)から形成することができ、且つ気密にすることができる。このような膨張可能な構造は、気密ブラダーを形成する内層、及び所定の形状にパターニングされた外層を有する単層又は多層であり得る。膨張可能な構造25は、可撓性エンクロージャに組み込んでもよいし、又は該エンクロージャに取り付けてもよい。
【0050】
膨張可能な構造25は、膨張ポートをさらに備えることができる。空気/ガス源29(例えば、圧縮ガスカートリッジ、ポンプ)は、膨張ポートを介して膨張可能な構造25に取り付けることができ、加圧ガス(例えば、CO2、窒素、圧縮された空気)を該膨張可能な構造に供給して、該膨張可能な構造に比較的高い圧力を発生させることができる。膨張可能な構造25は、手術エンクロージャ1の内部圧力よりもかなり高い圧力で膨張するように構成することができる。膨張可能な構造25は、エンクロージャ材料よりも高い圧力に耐え、より破壊されにくい可撓性材料(例えば、厚いプラスチック/ポリマー層又は織物層)から形成することができる。膨張可能な構造材料は、エンクロージャの内部の観察を妨げないように透明な材料であり得る。
【0051】
ガス源29は、CO2などの加圧ガスを含む圧縮ガスカートリッジ又はキャニスタを含み得る。ガス源29は、容器に含まれる2つ又はいくつかの化合物間の化学反応によって発生する加圧ガスを提供することができる。このような容器は、フレームに直接取り付けることができ、複数の入れ子容器を備え、該入れ子容器は、破裂可能であり、膨張をもたらす化学反応を開始する圧縮トリガ機構を共に備えるように設計されている。ガス源29は、外気又はガスポンプを含み得る。ガス源29は、加圧ガスの膨張可能な構造25への放出を開始し、それにより該膨張可能な構造を自律的かつ迅速に膨張させるように構成されたトリガ装置を備えることができる。ガスカートリッジは、トリガ装置の作動時に膨張可能な構造を所望の膨張可能な構造の圧力まで膨張させるように構成されている。ガス源29は、膨張可能な構造25内に適切な圧力を発生させること、及び膨張可能な構造内の過剰な圧力を防止することを確実にする1つ又は複数の圧力制御装置(例えば、圧力計、過圧弁、調整弁、遮断弁)を備えることができる。加圧ガスカートリッジは、小型軽量で使用が容易であり、所望の圧力で膨張可能な構造に迅速に膨張させるという利点を有する。
【0052】
図17は、サドルを有する膨張可能な構造25を含む例示的な一実施態様を示す。膨張した状態である場合(例えば、手術システムが使用中などである場合)、膨張可能な構造25の形状は、
図1~
図16を参照して説明したフレーム2の形状と実質的に同一又は同様であり得る。膨張可能な構造は、エンクロージャの外部に配置することができ、該エンクロージャに形状及び構造を提供するように該エンクロージャの材料(例えば、該エンクロージャの周縁部の周り)に取り付けることができる。膨張可能な構造は、17などの取り付け手段を介してエンクロージャに取り付けることができる。膨張可能な構造は、エンクロージャ1の縁部及び膨張可能な構造の縁部に沿った縫合又は熱/RF溶接などの取り付け手段を介して該エンクロージャ内に直接組み込むことができる。膨張した状態である場合は、膨張可能な構造は、相対剛性を付与し、且つエンクロージャに形状及び支持を提供するように構成されている。
【0053】
図18は、エンクロージャ1の内部に実質的に配置された膨張可能な構造25を含むポータブル手術システムの例示的な一実施態様を示す。膨張可能な構造25は、エンクロージャの一部に組み込んでもよいし、エンクロージャ材料に取り付けてもよい。膨張可能な構造25は、(例えば、
図18に示す)サドル形状又は様々な他の形状を有することができる。
【0054】
図19は、膨張可能な構造25が上部エアビーム26及び2つのリブエアビーム27を備える例示的な一実施態様を示す。上部エアビーム26は、エンクロージャ1の上に軸方向に配置することができ、リブエアビームは、(
図19に示す)該エンクロージャ1の後及び前に配置して取り付けることができる。膨張可能な構造25は、エンクロージャの一部に組み込んでもよいし、且つ/又は該エンクロージャ1に取り付けてもよい。
【0055】
図20は、膨張可能な構造25が2つの底部エアビーム28及び3つのリブエアビーム27を備える例示的な一実施態様を示す。2つの底部エアビーム28は、エンクロージャ1の底部に沿って軸方向に配置することができ、リブエアビームは、(
図20に示す)該エンクロージャ1の後、中間、前に配置して取り付けることができる。膨張可能な構造25は、エンクロージャ1に取り付けてもよいし、該エンクロージャの一部に組み込んでもよい。
【0056】
収縮した状態では、膨張可能な構造25は、折り畳み可能な可撓性構造に折り畳むことができる。前述のように、手術エンクロージャ1は、手術のためのセットアップ/展開の前に、手術ガウンのように折り畳むことができる。折り畳まれた状態では、膨張可能な構造25は、エンクロージャ1と一緒に折り畳むことができる。膨張可能な構造25が所望の圧力で膨張すると、該膨張可能な構造は、所望の形状(例えば、サドル)をとり、外科手術を行うための所望の拡張された手術形状にエンクロージャを伸長する。膨張可能な構造は、エンクロージャの壁を支持し、該エンクロージャを所望の形状に補強する。
【0057】
本明細書の発明は、膨張可能な構造の特定の形状及び構成に限定されるものではない。当業者であれば、様々な形状、構成、及び材料を使用することができ、発明の範囲内であることを理解するであろう。
【0058】
腕ポート及びスリーブ
手術エンクロージャ1は、
図1~
図10に示すように、手術者が該エンクロージャの内側から手術部位にアクセスすることを可能にする複数の腕ポート6を備えることができる。例示的な一実施態様では、手術エンクロージャは、該エンクロージャの上部の各側にいくつかの腕ポート(例えば、
図4及び
図6の31及び32)を備えることができる。腕ポートは、直線又は角度をなす線に沿ってエンクロージャ材料を切断することによって形成することができる。例えば、腕ポート31は、エンクロージャの軸に垂直な直線に沿ってエンクロージャ材料を切断することによって形成され、腕ポート32は、該エンクロージャの軸と平行な直線を通って該エンクロージャ材料を切断することによって形成される。
【0059】
エンクロージャは、手術者が手術部位でアクセスして手術することを可能にする複数のスリーブ40をさらに備えることができる(
図3、
図6、
図9を参照)。スリーブは、縫合、熱溶接、RF溶接、超音波接着などの様々な手段によって(
図21及び
図22に示す)腕ポートに接続することができる。スリーブは、手術部位に対して手術を行うために手術者の腕を収容するように構成されている。スリーブは、手術者の手又は腕にスリーブを固定するための手段、例えば:ストラップ、弾性バンド、ストリング、糸、材料の孔などをさらに備えることができる。本発明の例示的な一実施態様では、スリーブのいくつかは、(
図22に示す)右手の親指を収容する第1の孔35及び左手の親指を収容する第2の孔36をスリーブの側面に備えることができる。腕ポート及びスリーブは、これらを介して流体がエンクロージャの内側と外側との間を移動することを防止するように、患者の腕にスリーブ材料又は他の材料をシールするための手段(例えば、ストラップ、弾性バンド、ストリングなど)を備えることができる。
【0060】
手術中に、手術者(複数可)がいくつかのスリーブのみを使用してもよく、他のスリーブを使用しなくてもよいことを理解されたい。手術中に使用されないスリーブは、折り畳まれたスリーブが手術部位の視界を遮らず、手術者の邪魔にならず、且つエンクロージャの内側と外側との間を、スリーブを通って空気が流れないように、該エンクロージャの側面に折り畳んで配置(又は取り付け)することができる。
【0061】
スリーブの材料は、両面材料にすることができ;該スリーブの内側は、手術者によって使用されているときに該手術者の腕及び手に面し;且つ該スリーブの外側は、エンクロージャ環境に面する。スリーブの内側は、接触時に快適である(例えば、柔軟、水分を吸収する)ように構成することができる。スリーブの外側は、血液などの流体に対して不透過性であるように構成することができる。スリーブの材料は、ポリウレタンラミネートスパンボンド不織布であり得る。スリーブ材料は、使用の容易さ、手術者の快適さ、又は製造可能性に適切であると認めることができる約2ミル、4ミル、6ミル、8ミル、10ミルの厚さ、又は他の標準的な材料の厚さを有し得る。スリーブ材料は、防水医療用布であり得る。スリーブ材料は、以下の品質のうちの1つ又は複数を有するように構成することができる:快適さ;患者と医師との間の空気/水の移動を防止するための不透過性;及びエンクロージャの材料への取り付けやすさ。
【0062】
患者肢ポート
手術エンクロージャは、
図7、
図8、
図18、及び
図19に示すように、エンクロージャ1の後面12に配置された1つ又は複数のポート33を備えることができる。ポート33は、腕ポートとして使用することができ、それにより手術者が後面からエンクロージャにアクセスすることが可能になる。例示的な一実施態様では、ポート33は、患者の腕、手、脚、又は足に対する手術を行うために使用することができる。ポート33は、以降、患者肢ポートと呼ぶことがあり、肢の手術部位は、肢手術部位と呼ぶことがある。
【0063】
図23を参照すると、患者4は、地面又はいくつかの他の表面の上に仰向けになることができる。手術システムは、患者が手術エンクロージャの中に(手術される)腕を該手術エンクロージャ1の後面に配置されたポート33を介して挿入することができるように、該患者に隣接して配置することができる。1人又は複数人の手術者が、ポート31及び32を介して患者の腕又は手の手術を行うことができる。ポート33は、流体がスリーブ及びポートを介してエンクロージャの内部と外部との間を移動することを防止するために、スリーブ材料又は他の材料を患者の腕にシールするための手段(例えば、ストラップ、弾性バンド、ストリングなど)を備えることができる。
【0064】
図24を参照すると、患者4は、地面上又は他のいくつかの表面上に仰臥することができる。手術システムは、患者が手術エンクロージャの中に脚を、該手術エンクロージャ1の後面に配置されたポート33を介して挿入することができるように、該患者に隣接して配置することができる。1人又は複数人の手術者が、ポート31及び32を介して患者の脚又は足の手術を行うことができる。ポート33は、様々な脚及び腕のサイズに対応するように調整可能なサイズに形成することができる。
【0065】
図25~
図27は、エンクロージャ1の後面12に配置された腕及び脚ポート(例えば、
図8、
図23、
図24のポート33)が二層ポート80である手術システムの代替の一実施態様を示す。
図26に示すように、二層ポート80は、患者の腕、手、脚、又は足の手術を行うために使用することができる。ポート80はまた、腕ポートとして使用することができ、それにより手術者が後面からエンクロージャにアクセスすることが可能になる。
【0066】
図28(a)~(c)を参照すると、二層ポート80は、(
図28(b)に示す)下層81及び(
図28(c)に示す)上層83を備えることができる。上層83は、気密にすることができる十字カットパターン84を有し、該十字カットパターン84は、手術者がパターン線に沿って破壊することができる細いカットパターンを含む。下層81は、円形とすることができるカット孔82を備える。上層83は、下層81の上に配置することができ、該下層は、エンクロージャ1の後面12に取り付けてもよいし、又は組み込んでもよい。十字カットパターン84は、実質的に中心に孔82を備えることができる。カット孔82の直径は、十字カットパターン84の切断線の長さよりも小さくすることができる。上層83及び下層81は、可撓性プラスチック材料層(例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エンクロージャ材料と同じ材料など)から形成することができる。下層81は、上層83よりも伸縮性が高い及び/又は厚い材料(例えば、様々なミル及びタイプのTPUを使用することができる)から形成することができる。
【0067】
細いカットパターン84は気密であるため、使用する前に、二層ポート80を実質的に気密封止することができる。二層ポート80は、細いカットパターンに沿って十字カットパターン84を破壊することによって手術中に開けることができる。腕又は脚は、上層83の破壊された十字カットパターン84及び下層81の孔82を通ってエンクロージャ1の中に挿入することができる(
図26に示す)。
【0068】
材料ポート
手術エンクロージャは、該エンクロージャの内部と外部環境との間の材料及び器具の移動を可能にするように構成された1つ又は複数の材料ポート15をさらに備えることができる(
図7、
図8、及び
図29に示す)。例えば、材料ポート15は、エンクロージャの後面12に配置することができる。材料ポート15は、線形(例えば、エンクロージャ材料に線形カットを形成することによって形成される)とすることができ、且つ該ポートの両側のそれぞれに配置された2つの磁性ストリップを備えることができ、該2つの磁性ストリップが、互いの上/互いに対して接触して配置されている場合は、該ポートが閉じた状態にあるが、該ストリップが接続されていない場合は、該ポートが開いている。ポートは、2つの磁性ストリップの接続及び分離によって開閉することができる。
【0069】
図29を参照すると、材料ポートは、器具トレイ38をエンクロージャの内外に移動させることができるように構成することができる。材料ポートのサイズは、患者の材料、より大きな装置、器具、及びトレイの移動を可能にするように構成することができる。
【0070】
ラインポート
手術エンクロージャは、外部リソースへのアクセスを必要とする医療器具の配線、管、ワイヤ、及びドレイン(例えば、麻酔及び呼吸管、医療器具用のワイヤ、患者を監視するセンサ用のワイヤ)のための進行中のアクセスを提供するように構成された1つ又は複数のラインポート16をさらに備えることができる。
図30(a)に示すように、複数のラインポート16は、エンクロージャの前面に配置することができ、ラインポートアセンブリ41内に配置することができる。
図30(b)は、6つのラインポート16を含むラインポートアセンブリ41の例示的な一実施態様を示す。ラインポートアセンブリは、第1の層42(
図30(c)に示す)、及び第2の層43(
図30(d)に示す)を備えることができ、該第2の層43の上に該第1の層42が本質的に配置され、互いに接触している。第1の層及び第2の層は、縁部44の周りで接続(例えば、縫合、RF溶接、熱溶接、超音波接着)することができる。
【0071】
第1の層42は、一連の円形穿孔45を備えることができる。第2の層43は、
図30(b)に示すように、円形領域45の上に本質的に配置される一連の十字穿孔46を備えることができる。ラインポートは、円形穿孔及びその対応する十字穿孔を開けることによって形成することができる。第1の層42又は第2の層43のいずれかは、エンクロージャ材料と連続であってもよいし、又は該エンクロージャ材料の一部であってもよい。
【0072】
様々なライン(例えば、電線、管、インキュベーションライン、麻酔ラインなど)は、例えば、円形穿孔及びその対応する十字穿孔を貫通/開口することによって、外部からエンクロージャ内に挿入することができる。ラインポート16は、管、ライン、ワイヤをエンクロージャの中に挿入するための容易かつ効率的な方法を提供する。同時に、ラインポートは、内部環境と外部環境との間の必要なバリアを提供して必要な空気封止を確実にするために、ライン/管と層材料42~43との間に十分な密封を保証する。
【0073】
流体リザーバ
本発明の例示的な実施態様では、手術エンクロージャは、
図31(a)~(b)を参照して説明する1つ又は複数の流体リザーバ50を備えることができる。流体リザーバ50は、手術中にエンクロージャ内に生じる血液などの望ましくない流体51を収集するために、該エンクロージャの下部に配置することができる。流体リザーバは、手術エンクロージャの下部及び側面に配置された材料の折り返し部又はポケットとして形成することができる。流体リザーバは、エンクロージャの中に生じる流体が該リザーバ内に入るように該エンクロージャに接続されている。
【0074】
流体リザーバは、手術者が、手術中にどの程度の血液/流体が蓄積されたかを確認できるように、透明なエンクロージャ材料のポケット又は折り返し部として形成することができる(例えば、該流体リザーバは、該透明なエンクロージャと同じシートから形成することができる)。
図31(b)は、エンクロージャの透明な材料の折り返し部として形成されたリザーバ50の一部を示し、該折り返し部は、いくつかの点53における該折り返し部の2つの部分を溶接することによって形成される。溶接点53は、
図31(b)に矢印で示すように、流体が手術エンクロージャの内部から溶接点53間の領域のポケット内に移動することを可能にするリザーバの該ポケット/折り返し部を形成する。
【0075】
図31(c)を参照すると、例示的な一実施態様では、流体リザーバ50は、該リザーバ内に収集された流体51(例えば、血液)の量を示す、該リザーバの側面に塗装された目盛り55を備えることができる。
【0076】
図31(d)を参照すると、例示的な一実施態様では、流体リザーバは、該リザーバの材料に取り付けられ、該リザーバ材料の歪みを測定するように構成された歪みセンサ(例えば、当分野で周知の「ホイル歪みゲージ」及び他のゲージ/センサなど)を備えることができる。流体51のリザーバへの蓄積は、歪みセンサによって測定される歪みをリザーバ材料に発生させる。測定された歪みは、蓄積された流体51の量に比例する/相応する。コンピュータなどの装置は、歪みセンサから歪み測定値を受け取り、リザーバ内の流体の量を計算し、流体の量をモニタに表示するように構成することができる。このようにして、手術者は、流体リザーバ50内に蓄積した流体(例えば、血液)の量を監視することができる。
【0077】
インサイズドレープ
図32及び
図10を参照すると、エンクロージャは、該エンクロージャの底部13に組み込まれた1つ又は複数の手術インサイズドレープ60をさらに備えることができる。エンクロージャの底部は、手術中に患者の手術部位を取り囲むよう患者に接着されるように構成された接着面61をさらに備えることができる。エンクロージャの接着面は、該エンクロージャの1つ又は複数のインサイズドレープを取り囲むことができ、該エンクロージャが患者に取り付けられた後に、該1つ又は複数のドレープが取り除かれ、それにより該エンクロージャの内側から手術部位を露出させることができる。インサイズドレープは、該インサイズドレープの取り除きを可能にする穿孔外周線を介して底部に接続することができる。インサイズドレープの取り除きにより、患者の手術部位上のエンクロージャに開口が形成される。従って、手術者は、エンクロージャの内側から、インサイズドレープの取り除きによって形成された開口を介して手術部位の手術を行うことができる。
【0078】
インサイズドレープは、患者の体との境界面としての役割を果たす。インサイズドレープ60のサイズ及び形状は、手術部位の外側の体表面を本質的に除く患者の体(例えば、胴又は背中)の手術部位を覆うように構成することができる。胴の手術部位は、以降、胴手術部位と呼ぶことがある。そのため、患者の体の手術部位(則ち、インサイズドレープ60によって覆われた領域)のみが、手術エンクロージャ内に含まれ、該患者の体の残りの部分は、手術野(可能な限り無菌性を維持することができる)から除外される。患者の体表面がエンクロージャ内部の環境汚染の一因であるため、不要な体表面を手術エンクロージャから除外することによって、システムの有効性が著しく改善される。特に、中咽頭又は生殖器などの高汚染物質領域の除外は、システムの有効性を著しく改善する可能性が高い。手術エンクロージャは、異なる形状及びサイズの1つ又は複数のインサイズドレープを備えることができ、該インサイズドレープは、異なるタイプの医療処置の必要性に適合するように該手術エンクロージャの異なる位置に配置することができる。手術エンクロージャの底部は、さらなる安定化のために患者又は手術台にエンクロージャを固定するためのストラップを備えることができる。
【0079】
環境制御システム
図33は、環境制御システム3の構成及び機能が示されている手術システムの底面図を概略的に示す。環境制御システムは、外部空気供給システム、内部空気供給システム、及び圧力感知システムを含み得る。
【0080】
外部空気供給システムは、ファン、バッテリ、エアフィルタ(例えば、HEPAフィルタ)、制御システム、接続管71を備えることができる。ファン、バッテリ、及び制御システムは、制御装置70に組み込むことができる。内部空気供給システムは、接続管71に接続されるように構成された吸気口73を備える空気管72を含み得る。この管72は、前端部の近傍のエンクロージャの底部に配置することができ、該エンクロージャの所望の領域に空気流を供給するように配置された1つ又は複数の空気吹き出し口74を備えることができる。手術中、ファンによって供給される空気は、吸気口73を介して接続管71を通って管72の中に誘導され、さらに空気吹き出し口74を介して手術エンクロージャ内に供給される。空気吹き出し口74は、手術部位7上に空気流が誘導されるように配置することができる。
図33に示すように、例示的な一実施態様では、空気吹き出し口74は、ほぼ底部軸上に配置され、矢印で示すように、空気流を前面から後面に向かって、そして手術部位の上に誘導するように構成されている。空気管72は、軸に対してほぼ垂直に、且つ手術エンクロージャの前面に近接して配置される。
【0081】
圧力感知システムは、圧力センサ(制御装置70内に配置することができる)、及びエンクロージャからの空気圧が圧力センサによって測定できるようにコネクタ76を介して該エンクロージャに接続された圧力管75を含み得る(
図4及び
図5を参照)。制御システムは、圧力センサを制御し、且つ測定された圧力を該圧力センサから受け取るように構成されている。制御システムは、手術エンクロージャへの空気の供給、センサから受け取った圧力読み取り値の機能を制御して、該エンクロージャ内に所望の空気圧を提供するようにさらに構成されている。例示的な一実施態様では、制御システムは、空気が主に手術エンクロージャの内部から外部環境に流れること、及び該エンクロージャが適切に膨張することを確実にするように、該手術エンクロージャ内を陽圧(則ち、該エンクロージャ内部の圧力が外部の圧力よりも大きい)に維持するように構成されている。別の実施態様では、制御システムは、壁内に配置された別個のセンサによって測定されるか、又は圧力読み取りによって推定される特定の材料張力を手術エンクロージャの壁内で維持するように構成されている。別の実施態様では、圧力センサは、差圧センサであり得、エンクロージャ内の環境は、予め設定された最小及び最大の圧力読み取り値内である、外部環境の圧力に関係ない設定圧力(センサの仕様;高高度低温環境などの極限としての外部環境の分類;又は他の指標に起因し得るが、必ずしもこれらに限定されない)に維持することができる。
【0082】
空気管72は、可撓性で圧平可能である壁を含む可撓性プラスチック材料層(例えば、エンクロージャ材料と同じ材料、ポリエチレン、PVCなど)から形成することができる。空気管の壁は、管状の二方向弁として機能し得る。例えば、空気管内の圧力が管外よりも大きい場合は、該空気管は、空気が該管内を通って流れるのを可能にする開いた状態に拡張される。逆に、空気管内の圧力が管外よりも小さい場合は、該空気管の壁が、該管を通る空気流を防止及び/又は最小限に抑える閉じた状態に圧平される。
【0083】
LEDストリップライト及びカメラ
ポータブル手術システムは、手術部位及び手術エンクロージャの内部を照明するように配置された複数のLEDライトを含み得る。例示的な一実施態様では、LEDライトは、LEDストリップライトであり得る。LEDストリップライトは、手術エンクロージャの内部及び手術部位を照明するように該エンクロージャの上部に配置することができる。LEDライトは、制御装置70のバッテリによって給電することができる。
【0084】
ポータブル手術システムは、画像(例えば、ビデオ又は静止画)を受け取り、手術部位を監視するように構成された1つ又は複数のカメラをさらに含み得る。カメラは、コンピュータに接続することができ、それにより手術者が該カメラで撮影された画像を確認することが可能になる。カメラは、エンクロージャの内部又は外部のいずれかに配置することができる。カメラ及びLEDライトは、フレームに取り付けられるように構成されたフレーム取り付けセグメントに配置することができる。
【0085】
手術システムを設定する方法
本出願に開示される手術システムは、患者の胴、腕/手、及び脚/足の上に外科手術を行うように構成され、手術者が使用することができる。本発明の例示的な一実施態様は、手術システムを設定して使用する方法も開示する。この方法は、以降に説明するステップを含み得る。手術者は、手術するべき手術部位を識別して、該手術部位上の患者の皮膚を消毒する。可撓性エンクロージャを展開して、患者の上に、又は該患者に隣接して配置する。手術システムが(
図1~
図16に示されるような)剛性フレームを使用する場合、該フレームが、モジュールセグメントを接続することによって組み立て、可撓性エンクロージャを、取り付け手段を介して該フレームに取り付ける。手術システムが、(例えば、
図17~
図20に示されるような)膨張可能な構造を使用する場合、該膨張可能な構造を、加圧ガスカートリッジによって膨張させ、それによりエンクロージャを所望の形状にすることができる。手術エンクロージャは、インサイズドレープが手術部位の上に配置され、該エンクロージャが該ドレープを取り囲む接着剤を介して患者に取り付けられるように、該患者の上に配置する。環境制御システムを組み立て、エンクロージャに取り付け、そして該エンクロージャ内の気圧及び環境を制御するように接続する。エンクロージャ及びフレームは、ストラップ、テープ、フックなどの固定手段によって患者の体(及び/又は地面)の上にさらに取り付ける/固定することができる。材料、装置、及び器具は、材料ポート又は腕ポートを介してエンクロージャ内に導入することができる。医療器具の管及びラインは、ラインポートを介してエンクロージャ内に挿入することができる。手術エンクロージャ内の環境は、必要な圧力及び膨張を達成する。この時点で、手術者は、エンクロージャ内のスリーブを介して腕を挿入し、手袋を着用することができ、手術部位からドレープを取り除くことができ、手術ドレープを介して切開を行うことができ、そして外科手術を行うことができる。
【0086】
本明細書に記載の方法は、上述した特定のステップ及ステップの順序に限定されるものではない。当業者であれば、本明細書に記載の手順/ステップが、発明の精神から逸脱することなく、異なる順序で実行できることを理解するであろう。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、本明細書に記載のステップ及び手順に多くの変更が可能であり得ることを理解するであろう。
【0087】
様々な環境での使用に適した、梱包されて折り畳まれたポータブルシステム
本明細書に開示されるポータブル手術システムは、患者及び手術者の両方が手術中に感染リスクにさらされるという課題に対処する。手術システムは、汚染物質が外部環境(則ち、手術エンクロージャの外部)から手術部位に到達するのを防止することによって、該手術部位が比較的無菌状態(例えば、条件下で可能な限り無菌)に維持されることを保証する。胴の手術を行うために使用される場合、手術システムは、手術部位を除く患者の体のすべての表面領域がエンクロージャの外部に維持されるため、該患者の体の汚染物質が、該手術部位に到達しないように構成されている。手術システムは、エンクロージャ内で手術中に生じる汚染物質(例えば、血液、膿など)への曝露から手術者を保護するバリアを提供する。
【0088】
手術システムは、例えば、戦場で負傷した兵士に対して、辺境の住民に対して、荒野での救助活動中に、及び病院の手術室の無菌性が欠如している環境(例えば、テント、コテージ、居住室、病院の非手術室など)において屋外で手術を行うために使用されるように構成されている。手術システムは、手術中に必要とされ得る環境制御システム及び他の装置に給電するように構成されたバッテリを含む。従って、手術システムは、送電網へのアクセスを必要としない。
【0089】
使用前に、手術システムは、現場で持ち運びしやすいようポータブルバッグ(例えば、バックパック)に梱包されるように構成されている。梱包中は、手術エンクロージャは、手術ガウンのように折り畳むことができ、フレームは、そのモジュールに分解することができる。手術システムは、軽量で人間工学的であり、且つ設置が容易であるように構成されている。
【0090】
手術エンクロージャ1は、使い捨てである(則ち、使用後に廃棄される)ように構成されているが、フレーム2及び外気供給システムは、複数回使用することができる。
【0091】
本発明の実施態様は、本発明の理想的な実施態様(及び中間構造)の概略図である図面及び例示を参照して本明細書で説明されている。このため、例えば、製造技術及び/又は公差の結果としての例示の形状との差異が予測される。従って、本発明の実施態様は、本明細書に例示される領域の特定の形状に限定されるものとして解釈されるべきではなく、例えば、製造に起因する形状の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0092】
本出願における本発明の態様は、開示される手術及び手術の順序に限定されるものではない。例えば、手術は、様々な要素及び構成要素によって行うことができ、統合することができ、省略することができ、そして本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更することができる。
【0093】
本明細書に開示されるポータブル手術システムは、例えば、追加の器具用トレイ又は使用者を収容するように、手順のニーズに基づいて追加できる代替又は追加の部分を含み得る。本開示で提示される上述の実施態様は、例示的な実施態様としての役割を果たすに過ぎず、発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明の様々な修正及び変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。
【0094】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施態様を説明することが目的であり、本開示の限定を意図するものではない。本明細書の発明は、多数の異なる形態で具現することができ、本明細書に記載される例示的な実施態様に限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの例示的な実施態様は、本開示が完全であるように、そして本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0095】
以下の参考文献は、以降、本明細書に完全に記載されたかのように組み込まれる:「手術部位環境の手術中の隔離及び制御のための超軽量システム(Ultraportable system for intraoperative isolative and regulation of surgical site environments)」と題するPCT国際特許出願第PCT/US2017/04226号;「ポータブル手術システムのための無菌スリーブ(Sterile sleeves for portable surgical systems)」と題するPCT国際特許出願第PCT/US2019/032148号;「手術部位環境の手術中の隔離及び制御のためのシステム及び方法(Systems and methods for intraoperative isolation and control of surgical site environments)」と題するPCT国際特許出願第PCT/US2020/032280号;及び「ポータブル手術エンクロージャのためのデータ分析及びインターフェースプラットフォーム(Data analytics and interface platform for portable surgical enclosure)」と題するPCT国際特許出願第PCT/US2019/051502号。
【国際調査報告】