(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】テーラーウェルデッドブランク、熱間成形部材及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/322 20140101AFI20240319BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240319BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20240319BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20240319BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20240319BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B23K26/322
C22C38/00 301T
C22C38/38
C21D9/00 A
C21D1/18 C
B21D22/20 E
B21D22/20 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554778
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 KR2022008080
(87)【国際公開番号】W WO2023013876
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0103057
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オム, サン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム, チョン-ハ
(72)【発明者】
【氏名】ハン, イル-ウク
【テーマコード(参考)】
4E137
4E168
4K042
【Fターム(参考)】
4E137AA02
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC07
4E137CA09
4E137DA03
4E137EA01
4E137EA36
4E137GB01
4E168BA37
4E168BA38
4E168BA40
4E168BA83
4E168BA88
4E168DA40
4E168FB03
4E168FC04
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA02
4K042BA06
4K042BA11
4K042CA01
4K042CA02
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA12
(57)【要約】
【課題】熱間成形後の物性低下を効果的に防止することができる溶接部を有するテーラーウェルデッドブランク及び熱間成形部材、これらの製造方法を提供する。
【解決手段】 第1素地鋼板、及び前記第1素地鋼板の少なくとも一面に第1Al系めっき層を含む第1めっき鋼板、第2素地鋼板、及び前記第2素地鋼板の少なくとも一面に第2Al系めっき層を含む第2めっき鋼板及び前記第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板間に位置して、前記第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板を連結し、下記[関係式1]及び[関係式2]を満たす溶接継ぎ手を含み、前記溶接継ぎ手は、
前記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上の場合、下記[関係式3]を満たし、前記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合、下記[関係式4]を満たすことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1素地鋼板、及び前記第1素地鋼板の少なくとも一面に第1Al系めっき層を含む第1めっき鋼板、
第2素地鋼板、及び前記第2素地鋼板の少なくとも一面に第2Al系めっき層を含む第2めっき鋼板及び
前記第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板間に位置して、前記第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板を連結し、下記[関係式1]及び[関係式2]を満たす溶接継ぎ手を含み、
前記溶接継ぎ手は、
前記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上の場合、下記[関係式3]を満たし、前記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合、下記[関係式4]を満たすことを特徴とするテーラーウェルデッドブランク。
[関係式1]
4.44*[C]+0.355*[Mn]+0.505*[Ni]+0.148*[Cr]-[Al]-1.388>0
[関係式2]
1.0<[Cr]<8.0
[関係式3]
0.8≦[Ni]/[Cr]≦1.2
[関係式4]
0.3≦[Mn]/[Cr]≦1.1
前記[関係式1]~[関係式4]において、[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]及び[Al]は、それぞれ溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr及びAlの含量(重量%)を意味する。
【請求項2】
前記第1Al系めっき層は、Al-Si系めっき層またはAl-Fe系合金化めっき層の中から選択されたいずれか一つであり、
前記第2Al系めっき層は、Al-Si系めっき層またはAl-Fe系合金化めっき層の中から選択されたいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載のテーラーウェルデッドブランク。
【請求項3】
前記第1素地鋼板または第2素地鋼板は、
重量%で、C:0.01~0.15%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、
重量%で、C:0.15%超過0.25%以下、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、
重量%で、C:0.25%超過0.45%以下、Si:0.3~1.0%、Mn:0.3~1.2%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のテーラーウェルデッドブランク。
【請求項4】
第1Al系めっき層及び第2Al系めっき層がそれぞれ第1素地鋼板及び第2素地鋼板の少なくとも一面に形成された第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板を提供する段階、及び
前記第1めっき鋼板と前記第2めっき鋼板が隣接するように位置させ、フィラーワイヤの供給とともにレーザビームを照射して下記[関係式1]及び[関係式2]を満たすように溶接継ぎ手を形成する突合せ溶接段階を含み、
前記フィラーワイヤがNiCr系フィラーワイヤの場合、前記溶接継ぎ手が下記[関係式3]を満たすように突合せ溶接を行い、前記フィラーワイヤがCrMn系フィラーワイヤである場合、前記溶接継ぎ手が下記[関係式4]を満たすように突合せ溶接を行うことを特徴とするテーラーウェルデッドブランクの製造方法。
[関係式1]
4.44*[C]+0.355*[Mn]+0.505*[Ni]+0.148*[Cr]-[Al]-1.388>0
[関係式2]
1.0<[Cr]<8.0
[関係式3]
0.8≦[Ni]/[Cr]≦1.2
[関係式4]
0.3≦[Mn]/[Cr]≦1.1
前記[関係式1]~[関係式4]において、[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]及び[Al]は、それぞれ溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr及びAlの含量(重量%)を意味する。
【請求項5】
前記NiCr系フィラーワイヤは、重量%で、C:0.15~0.40%、Ni:40.0~50.0%、Cr:30.0~40.0%、Mn:4.5%以下(0%含む)、Mo:8%以下(0%含む)、Si:0.4%以下(0%含む)を含み、その他の不可避不純物からなるフィラーワイヤであり、
前記CrMn系フィラーワイヤは、重量%で、C:0.1~0.25%、Cr:30.0~40.0%、Mn:8.0~20.0%、Ni:5.0~15.0%、Si:0.4%以下(0%含む)を含み、その他の不可避不純物からなるフィラーワイヤであることを特徴とする請求項4に記載のテーラーウェルデッドブランクの製造方法。
【請求項6】
前記レーザビームによって形成された溶融プールに提供される前記フィラーワイヤの希釈率は5~20面積%であることを特徴とする請求項4に記載のテーラーウェルデッドブランクの製造方法。
【請求項7】
前記レーザビームの出力は2~10kWであり、
前記レーザビームの溶接速度は1~6m/minであることを特徴とする請求項4に記載のテーラーウェルデッドブランクの製造方法。
【請求項8】
前記第1Al系めっき層または前記第2Al系めっき層は、
Al-Si系めっき浴に前記第1素地鋼板または前記第2素地鋼板を浸漬して形成されたAl-Si系めっき層であるか、
前記Al-Si系めっき層を合金化処理して形成されたAl-Fe系合金化めっき層であることを特徴とする請求項4に記載のテーラーウェルデッドブランクの製造方法。
【請求項9】
前記溶接継ぎ手と隣接する第1めっき層または第2めっき層に対して一部または全部の削磨(ablation)を省略して突合せ溶接を行うことを特徴とする請求項4に記載のテーラーウェルデッドブランクの製造方法。
【請求項10】
前記第1素地鋼板または第2素地鋼板は、
重量%で、C:0.01~0.15%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、
重量%で、C:0.15%超過0.25%以下、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、
重量%で、C:0.25%超過0.45%以下、Si:0.3~1.0%、Mn:0.3~1.2%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなることを特徴とする請求項4に記載のテーラーウェルデッドブランクの製造方法。
【請求項11】
第1素地鋼板、及び前記第1素地鋼板の少なくとも一面に第1Al系めっき層を含む第1めっき鋼板、
第2素地鋼板、及び前記第2素地鋼板の少なくとも一面に第2Al系めっき層を含む第2めっき鋼板、及び
前記第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板間に位置し、下記[関係式1]及び[関係式2]を満たす溶接継ぎ手を含み、
前記第1素地鋼板及び前記第2素地鋼板は、それぞれ90面積%以上のマルテンサイトを微細組織として含み、
前記溶接継ぎ手は、
前記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上の場合、下記[関係式3]を満たし、前記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合、下記[関係式4]を満たすことを特徴とする熱間成形部材。
[関係式1]
4.44*[C]+0.355*[Mn]+0.505*[Ni]+0.148*[Cr]-[Al]-1.388>0
[関係式2]
1.0<[Cr]<8.0
[関係式3]
0.8≦[Ni]/[Cr]≦1.2
[関係式4]
0.3≦[Mn]/[Cr]≦1.1
前記[関係式1]~[関係式4]において、[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]及び[Al]は、それぞれ溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr及びAlの含量(重量%)を意味する。
【請求項12】
前記第1Al系めっき層及び前記第2Al系めっき層は、Al-Fe系合金化めっき層であることを特徴とする請求項11に記載の熱間成形部材。
【請求項13】
前記第1素地鋼板または第2素地鋼板は、
重量%で、C:0.01~0.15%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、
重量%で、C:0.15%超過0.25%以下、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、
重量%で、C:0.25%超過0.45%以下、Si:0.3~1.0%、Mn:0.3~1.2%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなることを特徴とする請求項11に記載の熱間成形部材。
【請求項14】
前記第1素地鋼板と前記第2素地鋼板が同種の鋼板である場合、前記溶接継ぎ手の厚さ中心部で500gfの荷重で0.3mmの間隔に対して硬度値(Hv)を測定したとき、前記溶接継ぎ手の最大硬度値(Hv
max)と前記素地鋼板の平均硬度値(Hv
mean)との差(ΔH
max)の絶対値及び前記溶接継ぎ手の最小硬度値(Hv
min)と前記素地鋼板の平均硬度値(Hv
mean)との差(ΔH
min)の絶対値は70Hv以下であることを特徴とする請求項13に記載の熱間成形部材。
【請求項15】
前記第1素地鋼板と前記第2素地鋼板が異種の鋼板である場合、前記溶接継ぎ手の厚さ中心部で500gfの荷重で0.3mmの間隔に対して硬度値(Hv)を測定したとき、前記溶接継ぎ手の最大硬度値(Hv
max)は、前記第1及び第2素地鋼板のうち「相対的に硬質の素地鋼板の中心部の平均硬度値(Hv
mean1)+50Hv」以下の硬度値を有し、前記溶接継ぎ手の最小硬度値(Hv
min)は、前記第1及び第2素地鋼板のうち「相対的に軟質の素地鋼板の中心部の平均硬度値(Hv
mean2)-50Hv」以上の硬度値を有することを特徴とする請求項13に記載の熱間成形部材。
【請求項16】
前記溶接継ぎ手における破断率は3%未満(0%含む)であることを特徴とする請求項11に記載の熱間成形部材。
【請求項17】
請求項4から10のいずれか一項に記載の製造方法によって提供されるテーラーウェルデッドブランクをオーステナイト化温度以上の温度範囲まで加熱する加熱段階、及び
前記加熱されたテーラーウェルデッドブランクを水冷可能なダイで熱間成形した後、マルテンサイト変態開始以下の温度範囲に直ちに冷却する熱間成形段階を含むことを特徴とする熱間成形部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーラーウェルデッドブランク、熱間成形部材及びこれらの製造方法に係り、より詳しくは、熱間成形後の物性低下を効果的に防止することができる溶接部を有するテーラーウェルデッドブランク、熱間成形部材及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の軽量化による燃費向上及び乗客の安全性確保のために、超高強度熱間成形部材を自動車の構造部材として活用しようとする試みがあり、関連分野で様々な研究が進められている。
【0003】
特許文献1は、このような熱間成形技術について開示する。特許文献1は、Al-Siめっき鋼板をAc1以上の温度範囲で加熱した後、プレスによる熱間成形及び急冷によって母材の組織がマルテンサイトからなるようにして1500MPa以上の引張強度を確保することができる。
【0004】
一方、Al-Siめっき鋼板を用いてテーラーウェルデッドブランクを製造する場合、レーザ溶接時に溶融されためっき層の成分が溶融領域に混入する現象が発生する可能性がある。特に、Alはフェライトの形成を助長する成分であり、溶融領域に混入したAlにより熱間成形後の溶接継ぎ手は目的とするレベルのマルテンサイト化が行われず、最終部品に外力が伝達される場合、溶接継ぎ手または溶接継ぎ手に隣接する熱影響部での破断を引き起こすことがある。特許文献2は、このように溶接継ぎ手にめっき層成分が流入する現象を防止するためにめっき層を合金化処理した後にレーザ溶接を行う技術を開示するが、めっき層の合金化処理によってもめっき層のAl成分が溶接継ぎ手に流入する現象を完全に防止することはできないという限界点が存在する。
【0005】
特許文献3は、溶接継ぎ手にAl成分が混入することを防止するために、レーザ溶接前に溶接部付近のめっき層を一部除去する技術を開示する。このように溶接部付近のめっき層を一部除去する場合、めっき層のAl成分が溶接継ぎ手に流入する現象を一部緩和することはできるが、めっき層を除去するための追加設備の導入が必須であり、溶接部付近のめっき層が一部除去されることによって、溶接部付近の領域での耐食性の低下を伴うことがある。
【0006】
したがって、めっき層の一部又は全部の削磨(ablation)を省略して溶接を行っても、Al成分が溶接継ぎ手に流入することによって溶接継ぎ手または溶接継ぎ手に隣接する熱影響部の物性が低下する現象を効果的に防止することができる技術に対する開発が求められている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0971044号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3805421号明細書
【特許文献3】韓国公開特許第10-2009-0005004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が目的とするところは、熱間成形後の物性低下を効果的に防止することができる溶接部を有するテーラーウェルデッドブランク及び熱間成形部材、これらの製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。通常の技術者であれば、本明細書の全体的な内容から本発明のさらなる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のテーラーウェルデッドブランクは、第1素地鋼板、及び上記第1素地鋼板の少なくとも一面に第1Al系めっき層を含む第1めっき鋼板、第2素地鋼板、及び上記第2素地鋼板の少なくとも一面に第2Al系めっき層を含む第2めっき鋼板、及び上記第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板間に位置して、上記第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板を連結し、下記[関係式1]及び[関係式2]を満たす溶接継ぎ手を含み、上記溶接継ぎ手は、上記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上の場合、下記[関係式3]を満たし、上記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合、下記[関係式4]を満たすことができる。
[関係式1]
4.44*[C]+0.355*[Mn]+0.505*[Ni]+0.148*[Cr]-[Al]-1.388>0
[関係式2]
1.0<[Cr]<8.0
[関係式3]
0.8≦[Ni]/[Cr]≦1.2
[関係式4]
0.3≦[Mn]/[Cr]≦1.1
上記[関係式1]~[関係式4]において、[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]及び[Al]は、それぞれ溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr及びAlの含量(重量%)を意味する。
【0011】
上記溶接継ぎ手は、下記[関係式5]及び[関係式6]のいずれか一つ以上を満たすことができる。
[関係式5]
[Mn]≦4.5
[関係式6]
[Ni]≦9.0
上記[関係式5]及び[関係式6]において、[Mn]及び[Ni]は、溶接継ぎ手に含まれるMn及びNiの含量(重量%)を意味する。
【0012】
上記第1Al系めっき層は、Al-Si系めっき層またはAl-Fe系合金化めっき層の中から選択されたいずれか一つであり、上記第2Al系めっき層は、Al-Si系めっき層またはAl-Fe系合金化めっき層の中から選択されたいずれか一つであることができる。
【0013】
上記第1素地鋼板または第2素地鋼板は、重量%で、C:0.01~0.15%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、重量%で、C:0.15%超過0.25%以下、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、重量%で、C:0.25%超過0.45%以下、Si:0.3~1.0%、Mn:0.3~1.2%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなることができる。
【0014】
本発明のテーラーウェルデッドブランクの製造方法は、第1Al系めっき層及び第2Al系めっき層がそれぞれ第1素地鋼板及び第2素地鋼板の少なくとも一面に形成された第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板を提供する段階、及び上記第1めっき鋼板と上記第2めっき鋼板が隣接するように位置させ、フィラーワイヤの供給と共にレーザビームを照射して下記[関係式1]及び[関係式2]を満たすように溶接継ぎ手を形成する突合せ溶接段階を含み、上記フィラーワイヤがNiCr系フィラーワイヤの場合、上記溶接継ぎ手が下記[関係式3]を満たすように突合せ溶接を行い、上記フィラーワイヤがCrMn系フィラーワイヤである場合、上記溶接継ぎ手が下記[関係式4]を満たすように突合せ溶接を行うことができる。
[関係式1]
4.44*[C]+0.355*[Mn]+0.505*[Ni]+0.148*[Cr]-[Al]-1.388>0
[関係式2]
1.0<[Cr]<8.0
[関係式3]
0.8≦[Ni]/[Cr]≦1.2
[関係式4]
0.3≦[Mn]/[Cr]≦1.1
上記[関係式1]~[関係式4]において、[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]及び[Al]は、それぞれ溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr及びAlの含量(重量%)を意味する。
【0015】
上記突合せ溶接段階は、上記溶接継ぎ手が下記[関係式5]及び[関係式6]のいずれか一つ以上を満たすように突合せ溶接を行うことができる。
[関係式5]
[Mn]≦4.5
[関係式6]
[Ni]≦9.0
上記[関係式5]及び[関係式6]において、[Mn]及び[Ni]は、溶接継ぎ手に含まれるMn及びNiの含量(重量%)を意味する。
【0016】
上記NiCr系フィラーワイヤは、重量%で、C:0.15~0.40%、Ni:40.0~50.0%、Cr:30.0~40.0%、Mn:4.5%以下(0%含む)、Mo:8%以下(0%含む)、Si:0.4%以下(0%含む)を含み、その他の不可避不純物からなるフィラーワイヤであり、上記CrMn系フィラーワイヤは、重量%で、C:0.1~0.25%、Cr:30.0~40.0%、Mn:8.0~20.0%、Ni:5.0~15.0%、Si:0.4%以下(0%含む)を含み、その他の不可避不純物からなるフィラーワイヤであることができる。
【0017】
上記レーザビームによって形成された溶融プールに提供される上記フィラーワイヤの希釈率は5~20面積%であることができる。
【0018】
上記レーザビームの出力は2~10kWであり、上記レーザビームの溶接速度は1~6m/minであることができる。
【0019】
上記第1Al系めっき層または上記第2Al系めっき層は、Al-Si系めっき浴に上記第1素地鋼板または上記第2素地鋼板を浸漬して形成されたAl-Si系めっき層であるか、上記Al-Si系めっき層を合金化処理して形成されたAl-Fe系合金化めっき層であることができる。
【0020】
上記溶接継ぎ手に隣接する第1めっき層または第2めっき層に対して一部または全部の削磨(ablation)を省略して突合せ溶接を行うことができる。
【0021】
上記第1素地鋼板または第2素地鋼板は、重量%で、C:0.01~0.15%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、重量%で、C:0.15%超過0.25%以下、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、重量%で、C:0.25%超過0.45%以下、Si:0.3~1.0%、Mn:0.3~1.2%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなることができる。
【0022】
本発明の熱間成形部材は、第1素地鋼板、及び上記第1素地鋼板の少なくとも一面に第1Al系めっき層を含む第1めっき鋼板、第2素地鋼板、及び上記第2素地鋼板の少なくとも一面に第2Al系めっき層を含む第2めっき鋼板、及び上記第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板間に位置し、下記[関係式1]及び[関係式2]を満たす溶接継ぎ手を含み、上記第1素地鋼板及び上記第2素地鋼板は、それぞれ90面積%以上のマルテンサイトを微細組織として含み、上記溶接継ぎ手は、上記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上である場合、下記[関係式3]を満たし、上記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合、下記[関係式4]を満たすことができる。
[関係式1]
4.44*[C]+0.355*[Mn]+0.505*[Ni]+0.148*[Cr]-[Al]-1.388>0
[関係式2]
1.0<[Cr]<8.0
[関係式3]
0.8≦[Ni]/[Cr]≦1.2
[関係式4]
0.3≦[Mn]/[Cr]≦1.1
上記[関係式1]~[関係式4]において、[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]及び[Al]は、それぞれ溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr及びAlの含量(重量%)を意味する。
【0023】
上記溶接継ぎ手は、下記[関係式5]及び[関係式6]のいずれか一つ以上を満たすことができる。
[関係式5]
[Mn]≦4.5
[関係式6]
[Ni]≦9.0
上記[関係式5]及び[関係式6]において、[Mn]及び[Ni]は、溶接継ぎ手に含まれるMn及びNiの含量(重量%)を意味する。
【0024】
上記第1Al系めっき層及び上記第2Al系めっき層は、Al-Fe系合金化めっき層であることができる。
【0025】
上記第1素地鋼板または第2素地鋼板は、重量%で、C:0.01~0.15%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、重量%で、C:0.15%超過0.25%以下、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるか、重量%で、C:0.25%超過0.45%以下、Si:0.3~1.0%、Mn:0.3~1.2%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなることができる。
【0026】
上記第1素地鋼板と上記第2素地鋼板が同種の鋼板である場合、上記溶接継ぎ手の厚さ中心部で500gfの荷重で0.3mmの間隔に対して硬度値(Hv)を測定したとき、上記溶接継ぎ手の最大硬度値(Hvmax)と上記素地鋼板の平均硬度値(Hvmean)との差(ΔHmax)の絶対値及び上記溶接継ぎ手の最小硬度値(Hvmin)と上記素地鋼板の平均硬度値(Hvmean)との差(ΔHmin)の絶対値は70Hv以下であることができる。
【0027】
上記第1素地鋼板と上記第2素地鋼板が異種鋼板である場合、上記溶接継ぎ手の厚さ中心部で500gfの荷重で0.3mmの間隔に対して硬度値(Hv)を測定したとき、上記溶接継ぎ手の最大硬度値(Hvmax)は上記第1及び第2素地鋼板のうち「相対的に硬質の素地鋼板の中心部の平均硬度値(Hvmean1)+50Hv」以下の硬度値を有し、上記溶接継ぎ手の最小硬度値(Hvmin)は上記第1及び第2素地鋼板のうち「相対的に軟質の素地鋼板の中心部の平均硬度値(Hvmean2)-50Hv」以上の硬度値を有することができる。
【0028】
上記溶接継ぎ手での破断率は3%未満(0%含む)であることができる。
【0029】
本発明の熱間成形部材の製造方法は、上述したテーラーウェルデッドブランクの製造方法によって提供されたテーラーウェルデッドブランクをオーステナイト化温度以上の温度範囲まで加熱する加熱段階、及び上記加熱されたテーラーウェルデッドブランクを水冷可能なダイで熱間成形した後、マルテンサイト変態開始以下の温度範囲に直ちに冷却する熱間成形段階を含むことができる。
【0030】
上記課題の解決手段は、本発明の特徴を全て列挙したものではなく、本発明の様々な特徴及びそれに伴う利点及び効果は、以下の具体的な実施例を参照してより詳細に理解することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、めっき層の一部又は全部の研磨(ablation)を行わずに溶接を行っても熱間成形後の引張試験において溶接継ぎ手または溶接継ぎ手に隣接する熱影響部での破断が発生しないテーラーウェルデッドブランクを提供することができる。
【0032】
本発明によると、高強度特性を有するだけでなく衝突安全性に優れて、自動車の陥没防止(anti-intrusion)部品、エネルギー吸収部品などに適した熱間成形部材を提供することができる。
【0033】
本発明の効果は上述した事項に限定されるものではなく、通常の技術者が本明細書に記載の事項から合理的に推論可能な事項を含むものと解釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】試験片6のビッカース硬度測定結果を示したグラフである。
【
図2】試験片10のビッカース硬度測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、テーラーウェルデッドブランク、熱間成形部材及びこれらの製造方法に関するものであり、以下では、本発明の好ましい実施例を説明する。本発明の実施例は、様々な形に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明される実施例に限定されるものと解釈されてはいけない。本実施例は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに詳細に説明するために提供されるものである。
【0036】
以下、本発明のテーラーウェルデッドブランクについてより詳細に説明する。
【0037】
本発明のテーラーウェルデッドブランクは、第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板と第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板との間で第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板を連結するように備えられる溶接継ぎ手を含むことができる。以下では、2つのめっき鋼板が溶接継ぎ手を介して連結される構造のテーラーウェルデッドブランクを例示的に説明するが、本発明は、3つ以上のめっき鋼板が溶接継ぎ手を介して連結される構造のテーラーウェルデッドブランクを含む概念として解釈することができる。
【0038】
第1めっき鋼板は、第1素地鋼板と第1素地鋼板の少なくとも一面に形成された第1めっき層を含むことができ、第2めっき鋼板は、第2素地鋼板と第2素地鋼板の少なくとも一面に形成された第2めっき層を含むことができる。
【0039】
第1めっき層及び第2めっき層はAl系めっき層であることができ、Al-Si系めっき層、Al-Fe系めっき層のいずれか一つであることができる。第1めっき層及び第2めっき層は、同種または異種のめっき層として提供されることができる。
【0040】
非制限的な例として、Al系めっき層は、重量%で、3~15%のSi、残りのAl及びその他の不可避に流入する不純物を含むことができる。Al系めっき層に不可避に流入する不純物は、素地鉄から流入する成分を含む概念として解釈されることができる。
【0041】
第1めっき層及び第2めっき層の厚さは特に制限されるものではなく、第1めっき層及び第2めっき層は通常のテーラーウェルデッドブランクの製造に用いられるめっき鋼板と対応する厚さで備えられることができる。
【0042】
本発明に提供される第1素地鋼板及び第2素地鋼板は、熱間成形により硬化可能な鋼板であれば特に制限されない。
【0043】
非制限的な例として、第1素地鋼板及び第2素地鋼板は、以下の鋼板1~3の中から選択されたいずれか一つの成分で備えられる鋼板であることができ、第1素地鋼板及び第2素地鋼板は同種または異種の成分として備えられることができる。
【0044】
鋼板1:重量%で、C:0.01~0.15%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなる。
【0045】
鋼板2:重量%で、C:0.15%超過0.25%以下、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなる。
【0046】
鋼板3:重量%で、C:0.25%超過0.45%以下、Si:0.3~1.0%、Mn:0.3~1.2%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなる。
【0047】
例示的に、鋼板1は熱間成形後、約500~1000MPa内外の引張強度を有することができ、鋼板2は熱間成形後、約1500MPa内外の引張強度を有することができ、鋼板3は熱間成形後、約1800MPa~2000MPa内外の引張強度を有することができる。
【0048】
第1素地鋼板及び第2素地鋼板は、同一または異なる厚さで備えられることができ、第1素地鋼板及び第2素地鋼板は通常のテーラーウェルデッドブランクの製造に用いられるめっき鋼板と対応する素地鋼板の厚さを有することができる。例示的に、第1めっき鋼板及び第2めっき鋼板は、0.8~2.8mmの厚さを満たすことができる。
【0049】
本発明の発明者は、めっき層のAl成分が溶接継ぎ手に一部流入しても、熱間成形後の引張試験において溶接継ぎ手または溶接継ぎ手に隣接する熱影響部での破断が発生しない条件について深度ある研究を行い、溶接継ぎ手に含まれる特定合金成分の含量を一定範囲に制御することで熱間成形部材の衝突安全性を確保することができることを認識し、本発明を導出するに至った。
【0050】
以下、本発明のテーラーウェルデッドブランクに含まれる溶接継ぎ手についてより詳細に説明する。
【0051】
本発明のテーラーウェルデッドブランクは、下記[関係式1]及び[関係式2]を全て満たすことができる。
[関係式1]
4.44*[C]+0.355*[Mn]+0.505*[Ni]+0.148*[Cr]-[Al]-1.388>0
[関係式2]
1.0<[Cr]<8.0
上記[関係式1]及び[関係式2]において、[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]及び[Al]は、それぞれ溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr及びAlの含量(重量%)を意味する。
【0052】
本発明の発明者は、熱間成形のための加熱時に安定した溶接継ぎ手のオーステナイト化が溶接継ぎ手の破断率抑制に主要な要素であることを認識し、[関係式1]を導出することになった。フェライト形成元素であるAlが溶接継ぎ手に流入しても、溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr、Alの相対的な含量範囲を[関係式1]のように制御することで、熱間成形過程で溶接継ぎ手を安定してオーステナイト化することができ、溶接継ぎ手に均質なマルテンサイトを形成することができる。すなわち、本発明は溶接継ぎ手の合金成分を[関係式1]のように制御するため、熱間成形後の引張試験時に溶接継ぎ手の破断率を3%未満のレベルに制限することができる。好ましい溶接継ぎ手の破断率は1%以下であることができ、さらに好ましい溶接継ぎ手の破断率は0%であることができる。一方、本発明は[関係式1]の上限を特に制限しないが、経済性確保の観点から[関係式1]の上限を5.0に制限することもできる。
【0053】
本発明の発明者は、溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr及びAlの相対的な含量だけでなく、溶接継ぎ手に含まれるCrの個別含量範囲も溶接継ぎ手の破断率に主要な影響を及ぼす要素であることを確認して[関係式2]を導出することになった。Crは溶接継ぎ手の強度確保に有利な成分であるため、[関係式2]のように1.0重量%以上のレベルで溶接継ぎ手に含まれることができる。好ましいCr含量は2.0重量%以上であることができ、より好ましいCr含量は2.5重量%であることができる。一方、Crはフェライトの形成を促進する成分でもあるため、溶接継ぎ手に含まれるCrの含量を8.0wt%以下に制限することができる。好ましいCr含量は7重量%以下であることができ、より好ましいCr含量は5重量%以下であることができる。
【0054】
本発明のテーラーウェルデッドブランクは溶接継ぎ手に含まれるNi含量に応じて、下記[関係式3]または[関係式4]のいずれか一つをさらに満たすことができる。溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上の場合、下記[関係式3]を満たし、上記溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合、下記[関係式4]を満たすことができる。
[関係式3]
0.8≦[Ni]/[Cr]≦1.2
[関係式4]
0.3≦[Mn]/[Cr]≦1.1
上記[関係式3]及び[関係式4]において、[Mn]、[Ni]及び[Cr]は、それぞれ溶接継ぎ手に含まれるMn、Ni及びCrの含量(重量%)を意味する。
【0055】
本発明の発明者は、溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上である場合において、溶接継ぎ手に含まれるNi及びCrの相対的な含量が溶接継ぎ手の物性確保に主要な要素であることを確認し、[関係式3]を導出した。
【0056】
溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上である場合において、溶接継ぎ手に含まれるCr含量に対するNi含量の割合が過度に低い場合、溶接継ぎ手のオーステナイト形成能が低下し、常温で軟質のフェライトが残存して溶接継ぎ手の物性が劣化して実現することがある。したがって、溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上の場合、溶接継ぎ手の物性確保のために[関係式3]のようにCr含量に対するNi含量の比([Ni]/[Cr])を0.8以上のレベルに制限することができ、より好ましくは0.85以上のレベルであることができる。一方、溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上の場合において、溶接継ぎ手に含まれるCr含量に対するNi含量の割合が過度に高い場合、溶接継ぎ手のオーステナイト安定性が過度であって常温でもオーステナイトが残存する可能性があり、それによって劣化した溶接継ぎ手の物性が実現することがある。したがって、溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%以上の場合、溶接継ぎ手の物性確保のために[関係式3]のようにCr含量に対するNi含量の比([Ni]/[Cr])を1.2以下のレベルに制限することができ、より好ましくは1.1以下のレベルであることができる。
【0057】
溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合において、溶接継ぎ手に含まれるCr含量に対するMn含量の割合が過度に低い場合、溶接継ぎ手のオーステナイト形成能が低下し、常温で軟質のフェライトが残存して溶接継ぎ手の物性が劣化して実現することがある。したがって、溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合、溶接継ぎ手の物性確保のために[関係式4]のようにCr含量に対するMn含量の比([Mn]/[Cr])を0.3以上のレベルに制限することができ、より好ましくは0.4以上のレベルであることができる。一方、溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合において、溶接継ぎ手に含まれるCr含量に対するMn含量の割合が過度に高い場合、溶接継ぎ手のオーステナイト安定性が過度であって常温でもオーステナイトが残存することが可能性があり、それによって劣化した溶接継ぎ手の物性が実現することがある。したがって、溶接継ぎ手に含まれるNi含量が2.2重量%未満の場合、溶接継ぎ手の物性確保のために[関係式4]のようにCr含量に対するMn含量の比([Mn]/[Cr])を1.1以下のレベルに制限することができ、より好ましくは1.0以下のレベルであることができる。
【0058】
本発明のテーラーウェルデッドブランクは、下記[関係式5]及び[関係式6]のいずれか一つ以上を満たすことができる。
[関係式5]
[Mn]≦4.5
[関係式6]
[Ni]≦9.0
上記[関係式5]及び[関係式6]において、[Mn]及び[Ni]は、溶接継ぎ手に含まれるMn及びNi含量(重量%)を意味する。
【0059】
Ni及びMnは、代表的なオーステナイト安定化元素であり、熱間成形のための加熱時に溶接継ぎ手の均一なオーステナイト化に効果的に寄与する元素である。但し、Ni及びMnの含量が一定範囲を超過する場合、過度のオーステナイトの安定性によって常温でもオーステナイトが溶接継ぎ手に存在することがあり、それによって溶接継ぎ手の物性の低下を引き起こす可能性がある。したがって、[関係式5]及び[関係式6]のように溶接継ぎ手に含まれるMn及びNi含量をそれぞれ4.5重量%以下及び9.0重量%以下に制限することができる。
【0060】
本発明のテーラーウェルデッドブランクは上述のように溶接継ぎ手の合金成分を制御するため、めっき層の一部または全部の削磨(ablation)を行わずにめっき鋼板の溶接を行っても、溶接継ぎ手にめっき層のAl成分が流入して発生する物性低下を効果的に抑制することができ、熱間成形後の引張試験において溶接継ぎ手または溶接継ぎ手に隣接する熱影響部での破断を効果的に防止することができる。
【0061】
以下、本発明のテーラーウェルデッドブランクの製造方法についてより詳細に説明する。
【0062】
本発明のテーラーウェルデッドブランクの製造方法は、めっき鋼板を提供する段階及び突合せ溶接を行う段階を含むことができる。
【0063】
めっき鋼板を提供する段階では、第1Al系めっき層が第1素地鋼板の少なくとも一面に形成された第1めっき鋼板及び第2Al系めっき層が第2素地鋼板の少なくとも一面に形成された第2めっき鋼板を提供することができる。
【0064】
第1Al系めっき層及び第2Al系めっき層は、Al-Si系めっき浴に素地鋼板を浸漬して形成されたAl-Si系めっき層であることができ、Al-Si系めっき層形成後に合金化処理を施して提供されるAl-Fe系合金化めっき層であることができる。Al-Si系めっき浴は、3~15重量%のSi、残りのAl及びその他の不可避不純物を含むことができる。
【0065】
第1及び第2素地鋼板、第1めっき層及び第2めっき層に対する具体的な事項は、上述しためっき鋼板に対応するため、テーラーウェルデッドブランクの製造に提供されるめっき鋼板に対する説明は、上述のめっき鋼板の説明に代わる。
【0066】
突合せ溶接段階では、第1めっき鋼板の端部と第2めっき鋼板の端部が互いに隣接するように位置させ、フィラーワイヤの供給とともにレーザビームを照射して溶接継ぎ手を形成することができる。このとき、互いに隣接する領域の第1めっき層または第2めっき層の一部または全部に対して削磨(ablation)を行った後、突合せ溶接を行うことができるが、一部または全部の削磨(ablation)を省略して突合せ溶接を行っても構わない。
【0067】
本発明の突合せ溶接に用いられるフィラーワイヤは、NiCr系フィラーワイヤまたはCrMn系フィラーワイヤであることができる。NiCr系フィラーワイヤは、Ni及びCrを主要成分として含むフィラーワイヤを意味することができる。非制限的な例として、NiCr系フィラーワイヤは、重量%で、C:0.15~0.40%、Ni:40.0~50.0%、Cr:30.0~40.0%、Mn:4.5%以下(0%含む)、Mo:8%以下(0%含む)、Si:0.4%以下(0%含む)を含み、その他の不可避不純物からなることができる。CrMn系フィラーワイヤは、Cr及びMnを主要成分として含むフィラーワイヤを意味することができる。非制限的な例として、CrMn系フィラーワイヤは、重量%で、C:0.1~0.25%、Cr:30.0~40.0%、Mn:8.0~20.0%、Ni:5.0~15.0%、Si:0.4%以下(0%含む)を含み、その他の不可避不純物からなることができる。
【0068】
突合せ溶接段階では、突合せ溶接によって形成される溶接継ぎ手が下記[関係式1]及び[関係式2]を満たすようにレーザ溶接を行うことができ、NiCr系フィラーワイヤを用いて突合せ溶接を行う場合、下記[関係式3]を満たすようにレーザ溶接を行い、CrMn系フィラーワイヤを用いて突合せ溶接を行う場合、下記[関係式4]を満たすようにレーザ溶接を行うことができる。
[関係式1]
4.44*[C]+0.355*[Mn]+0.505*[Ni]+0.148*[Cr]-[Al]-1.388>0
[関係式2]
1.0<[Cr]<8.0
[関係式3]
0.8≦[Ni]/[Cr]≦1.2
[関係式4]
0.3≦[Mn]/[Cr]≦1.1
上記[関係式1]~[関係式4]において、[C]、[Mn]、[Ni]、[Cr]及び[Al]は、それぞれ溶接継ぎ手に含まれるC、Mn、Ni、Cr及びAlの含量(重量%)を意味する。
【0069】
[関係式1]~[関係式4]の制限理由は、上述のテーラーウェルデッドブランクの関係式の制限理由と対応するため、[関係式1]~[関係式4]に対する具体的な説明は上述の説明に代わる。
【0070】
突合せ溶接段階では、溶接継ぎ手が下記[関係式5]及び[関係式6]のいずれか一つ以上を満たすようにレーザ溶接を行うことができる。
[関係式5]
[Mn]≦4.5
[関係式6]
[Ni]≦9.0
上記[関係式5]及び[関係式6]において、[Mn]及び[Ni]は、溶接継ぎ手に含まれるMn及びNi含量(重量%)を意味する。
【0071】
[関係式5]及び[関係式6]の制限理由は、上述のテーラーウェルデッドブランクの関係式の制限理由と対応するため、[関係式5]及び[関係式6]に対する具体的な説明は上述の説明に代わる。
【0072】
溶接継ぎ手の合金成分は、素地鋼板の合金成分及びめっき層の合金成分から一部影響を受けるが、レーザ溶接条件によってより大きな影響を受けることができる。すなわち、溶接継ぎ手の合金成分は、レーザ溶接に用いられるフィラーワイヤの合金成分、フィラーワイヤが溶融プールに希釈される割合、レーザビームの出力及びレーザビームの溶接速度などによって制御されることができる。
【0073】
本発明のテーラーウェルデッドブランクの製造方法は、突合せ溶接により形成される溶接継ぎ手が上述の[関係式1]~[関係式6]を満たすようにレーザ溶接に用いられるフィラーワイヤをNiCr系フィラーワイヤまたはCrMn系フィラーワイヤに制限し、レーザビームによって形成される溶融プールにフィラーワイヤが希釈される割合を5~20面積%の範囲に制限することができる。このとき、レーザビームの出力は2~10kWの範囲を満たすことができ、レーザビームの溶接速度は1~6m/minの範囲を満たすことができる。突合せ溶接時の溶融金属の酸化防止及びフューム(fume)除去などの目的を達成するために、He及びArなどの不活性ガスを保護ガスとして用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0074】
以下、本発明の熱間成形部材及びその製造方法についてより詳細に説明する。
【0075】
本発明の熱間成形部材は、上述したテーラーウェルデッドブランクを熱間成形して提供されることができる。すなわち、本発明の熱間成形部材は、上述したテーラーウェルデッドブランクをオーステナイト化の温度以上の温度範囲まで加熱する加熱段階及び水冷可能なダイで加熱されたテーラーウェルデッドブランクを熱間成形した後、マルテンサイト変態開始以下の温度範囲に直ちに冷却する熱間成形段階を経て製造されることができる。
【0076】
本発明の熱間成形部材は、第1めっき鋼板、第2めっき鋼板、及び第1めっき鋼板と第2めっき鋼板を連結する溶接継ぎ手を含むことができる。本発明の熱間成形部材は、上述したテーラーウェルデッドブランクを熱間成形して提供されるため、上述のテーラーウェルデッドブランクの対比形状、めっき層成分及び素地鋼板の微細組織において差異点が生じることがある。熱間成形過程でめっき層の合金化が行われることができ、素地鋼板の一部成分がめっき層に流入されることができる。熱間成形過程での加熱及び急冷過程を経て素地鋼板のマルテンサイト化が行われることができ、成形部材に備えられる素地鋼板は、約90面積%以上(100%含む)のマルテンサイトを含むことができる。
【0077】
熱間成形工程を経ることによって溶接継ぎ手もマルテンサイト化が行われるが、熱間成形工程の前後で溶接継ぎ手の合金成分には大きな変化が生じない。したがって、本発明の成形部材に備えられる溶接継ぎ手も上述した[関係式1]~[関係式6]を満たすことができる。
【0078】
本発明の成形部材は、素地鋼板と溶接継ぎ手の局地的な物性偏差を緩和するため、成形部材に対する引張試験時の溶接継ぎ手における破断率を3%未満(0%含む)に制御することができる。
【0079】
成形部材に備えられる第1素地鋼板と第2素地鋼板が同種の鋼板である場合、溶接継ぎ手の厚さ中心部で500gfの荷重で0.3mmの間隔に対して硬度値(Hv)を測定したとき、溶接継ぎ手の最大硬度値(Hvmax)と素地鋼板の平均硬度値(Hvmean)との差(ΔHmax)の絶対値及び溶接継ぎ手の最小硬度値(Hvmin)と素地鋼板の平均硬度値(Hvmean)との差(ΔHmin)の絶対値はそれぞれ70Hv以下であることができる。
【0080】
一方、成形部材に備えられる第1素地鋼板と第2素地鋼板が異種の鋼板である場合、溶接継ぎ手の厚さ中心部で500gfの荷重で0.3mmの間隔に対して硬度値(Hv)を測定したとき、上記溶接継ぎ手の最大硬度値(Hvmax)は、第1及び第2素地鋼板のうち、「相対的に硬質の素地鋼板の中心部の平均硬度値(Hvmean1)+50Hv」以下の硬度値を有し、溶接継ぎ手の最小硬度値(Hvmin)は、上記第1及び第2素地鋼板のうち、「相対的に軟質の素地鋼板の中心部の平均硬度値(Hvmean2)-50Hv」以上の硬度値を有することができる。
【0081】
したがって、本発明の成形部材は、高強度特性を有するだけでなく衝突安全性に優れ、自動車の陥没防止(anti-intrusion)部品、エネルギー吸収部品などに適した物性を備えることができる。
【0082】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明のテーラーウェルデッドブランク、熱間成形部材及びこれらの製造方法についてより詳細に説明する。下記実施例は、本発明の理解のためのものにすぎず、本発明の権利範囲を特定するためのものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項と、それから合理的に類推される事項によって決定されることができる。
【実施例】
【0083】
表1に示した溶接条件を適用してテーラーウェルデッドブランク試験片を製作した。
【0084】
表1の素地鋼板Aは、重量%で、C:0.01~0.15%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなる素地鋼板であり、熱間成形後の約1000MPaの引張強度を確保可能な鋼板を意味する。素地鋼板Bは、重量%で、C:0.15%超過0.25%以下、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなる素地鋼板であり、熱間成形後の約1500Mpaの引張強度を確保可能な鋼板を意味する。素地鋼板Cは、重量%で、C:0.25%超過0.45%以下、Si:0.3~1.0%、Mn:0.3~1.2%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.01%以下を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなる素地鋼板であり、熱間成形後の約1800MPaの引張強度を確保可能な鋼板を意味する。素地鋼板A~Cは、それぞれ表1に記載された厚さを満たすように製作された。
【0085】
4~15%重量のSiを含有するアルミニウムめっき浴にそれぞれの素地鋼板を浸漬して、片面基準10~40g/m2のめっき量でめっきを行い、一部については合金化処理をさらに実施した。事前合金化に関して、「○」表示は、レーザ溶接前にめっき層の合金化処理を行った場合を意味し、「×」表示は、レーザ溶接前にめっき層の合金化処理を行っていない場合を意味する。
【0086】
レーザ溶接前の一部の試験片については、めっき鋼板の端部側のめっき層を除去する研磨(ablation)処理を行った。研磨処理に関して「〇」表示は、研磨(ablation)処理を行った場合を意味し、「×」表示は、研磨(ablation)処理を行っていない場合を意味する。
【0087】
出力が3~5kWの範囲で調節されたレーザビームを用いて1~3m/minの溶接速度で突合せ溶接を行い、表1に記載された希釈率でレーザビームによって形成された溶融プールにフィラーワイヤを送給した。表1に記載されたフィラーワイヤのうち、NiCr系フィラーワイヤは、重量%で、C:0.15~0.40%、Ni:40.0~50.0%、Cr:30.0~40.0%、Mn:4.5%以下(0%含む)、Mo:8%以下(0%含む)、Si:0.4%以下(0%含む)を含み、その他の不可避不純物からなるフィラーワイヤを意味し、CrMn系フィラーワイヤは、重量%で、C:0.1~0.25%、Cr:30.0~40.0%、Mn:8.0~20.0%、Ni:5.0~15.0%、Si:0.4%以下(0%含む)を含み、その他の不可避不純物からなる含むフィラーワイヤを意味する。
【0088】
【0089】
表1の各試験片について、870~950℃の温度範囲まで各試験片を加熱した後5分間維持し、内部で水冷が可能な金型を用いたプレスクエンチング(press quenching)で熱間成形を模写した。各試験片を切断して溶接進行方向と垂直の断面を形成し、EPMA及びSEMのEDS定量分析を用いて各試験片の断面における溶接継ぎ手の合金成分を分析した。各試験片の断面で溶接熱影響部を除いた溶接部を8~12個の領域に分割して各領域に対して面分析を行い、各領域で測定された成分含量の平均値を表2に記載した。また、これらの成分含量を関係式1、関係式3及び関係式4の代入結果を表2に併せて記載した。各試験片から複数の引張試験片(ISO 6892-1 Type1、溶接部が平行部の中央から引張荷重に垂直な方向に位置する)を採取して引張試験を行い、引張試験の回数に対して溶接部における破断が発生した引張試験片の個数比率(溶接部破断の引張試験片の数/全体引張試験片の数)を算出して、表2に記載されたように、各試験片の溶接部の破断率を測定した。ビッカース硬度計を用いて溶接継ぎ手の厚さ中心部で500gfの荷重で0.3mmの間隔に対して硬度値(Hv)を測定し、溶接継ぎ手の最大硬度値(Hv
max)と素地鋼板の平均硬度値(Hv
mean)との差(ΔH
max)及び溶接継ぎ手の最小硬度値(Hv
min)と素地鋼板の平均硬度値(Hv
mean)との差(ΔH
min)を算術して表2に併せて記載した。一方、
図1及び
図2は、それぞれ試験片6及び試験片10のビッカース硬度測定結果を示したグラフである。
図1に示したように、試験片6は、第1めっき鋼板の母材部が約490Hvの平均硬度を、第2めっき鋼板の母材部が約390Hvの平均硬度を示し、溶接継ぎ手は446~474Hvの硬度を示すことを確認することができる。また、
図2に示したように、試験片10は、第1めっき鋼板の母材部が約488Hvの平均硬度を、第2めっき鋼板の母材部が約563Hvの平均硬度を示し、溶接継ぎ手は525~551Hvの硬度を示すことが確認できる。すなわち、試験片6及び試験片10は、溶接継ぎ手の最大硬度値(Hv
max)が「相対的に硬質の素地鋼板の中心部の平均硬度値(Hv
mean1)+50Hv」以下の範囲を満たし、溶接継ぎ手の最小硬度値(Hv
min)が「相対的に軟質の素地鋼板の中心部の平均硬度値(Hv
mean2)-50Hv」以上の範囲を満たすため、3%以下のレベルであることが確認できる。
【0090】
【0091】
表1及び表2に示したように、本発明の条件を満たす試験片は、溶接部の破断率が3面積%未満であるのに対し、本発明の条件を満たさない試験片は、溶接部の破断率が3面積%を顕著に超過することが分かる。
【0092】
したがって、本発明のテーラーウェルデッドブランクは、めっき層の一部または全部の削磨(ablation)を行わずに溶接を行っても熱間成形後の引張試験において溶接継ぎ手または溶接継ぎ手に隣接する熱影響部での破断が発生しない熱間成形部材を提供することができる。
【0093】
以上、実施例を介して本発明を詳細に説明したが、これと異なる他の形態の実施例も可能である。したがって、以下に記載される特許請求の範囲の技術的思想及び範囲は実施例に限定されない。
【国際調査報告】