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特表2024-513681セラミックを製造するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】セラミックを製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/64 20060101AFI20240319BHJP
   C04B 35/468 20060101ALI20240319BHJP
   C04B 35/47 20060101ALI20240319BHJP
   C04B 35/46 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C04B35/64
C04B35/468
C04B35/47
C04B35/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555543
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022056389
(87)【国際公開番号】W WO2022189655
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021106117.2
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021130349.4
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507413044
【氏名又は名称】テヒニッシェ・ウニヴェルジテート・ダルムシュタット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ポルツ・ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ラインハイマー・ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】シェーラー・ミヒャエル
(57)【要約】
本発明は、セラミック及びセラミック製品を製造するための方法及び装置であって、該方法は、セラミック原料上に光を入射して、それを少なくとも部分的に加熱しそしてそれによってセラミック製品を生成することを含み、ここで、光の入射は、少なくとも0.1mmの表面上に及び/またはセラミック原料の表面のうちの20%超に対し同時に行われ、及び入射された光の出力密度は800W/cm未満であり、及び該装置は、セラミック原料を保持するための少なくとも一つの保持部、及び前記保持部に保持されたまたは保持可能なセラミック原料上に光を入射するための少なくとも一つの光源を含み、ここで、とりわけ、該装置は、セラミック原料上に光を入射して、それを少なくとも部分的に加熱しそしてそれによってセラミック製品を生成するように設計されており、及び前記保持部は絶縁材を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックの製造方法であって、セラミック原料上に光を入射して、このセラミック原料を少なくとも部分的に加熱し、それにより、セラミック製品を生成することを含み、この際、光の入射は、少なくとも0.1mmの表面積に対し及び/または前記セラミック原料の表面積のうちの20%超に対し同時に行い、及び入射される光の出力密度は800W/cm未満である、前記方法。
【請求項2】
セラミック原料の前記の部分的な加熱が、(a)1K/秒以上、特に10K/秒以上、特に100K/秒以上、特に1000K/秒以上、(b)10000K/秒以下、特に5000K/秒以下、特に1000K/秒以下、及び/または(c)10K/秒と5000K/秒との間、特に100K/秒と2000K/秒との間、特に100K/秒と1500K/秒との間、特に100K/秒と1000K/秒との間の加熱速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光の入射によるセラミック原料の加熱、とりわけ部分的な加熱が、(a)少なくとも0.1秒間、少なくとも0.5秒間、少なくとも1秒間、特に少なくとも5秒間、特に少なくとも20秒間、及び/または(b)最長で10分間、特に最長で8分間、特に最長で5分間、特に最長で3分間、特に最長で1分間、特に最長で30秒間、特に最長で10秒間、特に最長で5秒間、特に最長で3秒間、特に最長で1秒間の期間、行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
局所的な転位が、10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に1010/cm以上、特に1011/cm以上の密度で生成される、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)局所的に生成される転位が、セラミック材料の光によって加熱された領域内に存在し;
(ii)入射される光の出力密度が、(a)1W/cmと750W/cmとの間、更に好ましくは25W/cmと175W/cmとの間であり、及び/または(b)規定のまたは規定可能な目標値が、5秒間未満で5%より良好な、好ましくは2秒間未満で2%より良好な、更に好ましくは0.5秒間未満で1%より良好な精度で達成され、その後に安定化され、
及び/または
(iii)出力密度及び/または温度プロファイルを自由に設計できる、
前記方法。
【請求項6】
セラミック原料が、少なくとも一種のセラミック層状複合材、少なくとも一種のセラミックコンポジット材料及び/もしくは少なくとも一種のセラミック粉末を含み、及び/またはフィルム、エンドレステープ、プレス加工品、特に直方形のプレス加工品の形で及び/もしくはソリッドボディとして提供される、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)セラミック原料の厚さが、0.00005mmと20mmとの間、特に0.001mmと10mmとの間、特に0.1mmと5mmとの間、特に0.5mmと4.0mmとの間であり;
(ii)セラミック原料が材料としてSrTiO及び/もしくはTiOを含むかまたはからなり、及び/またはセラミック製品がセラミック膜を含むかまたはセラミック膜であり;
及び/または
(iii)セラミック原料が、以下の材料:
(a)任意のセラミック材料、とりわけ、結晶構造を有する非金属系無機材料;
(b)ペロブスカイト構造、スピネル構造、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造、塩化ナトリウム構造またはフッ化物構造を有するセラミック;
(c)チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、チタン酸ランタンリチウム、ジルコン酸ランタンリチウム、タンタル酸ランタンリチウム、酸化コバルトリチウム、酸化マンガンリチウム、酸化マンガンニッケルリチウム及び/または酸化アルミニウムをベースとし、各々、任意のドープ用添加剤及び/または焼結添加剤並びに複数のこれらの材料の混合物を含む、セラミック;
(d)任意の金属;
または/及び
(e)次のものを含む群からの一種以上の材料:銀、リチウム、パラジウム、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、鉄、ニオブ、クロム、バナジウム、イリジウム、タンタル、オスミウム、レニウム、モリブデン、タングステン、マグネシウムまたは複数のこれらの金属からなる合金;
(f)主として結晶構造を有さず、焼結プロセスを用いてその形状を得る任意の非金属系無機材料;
(g)次のものを含む群からの一種以上の材料:シリケート繊維、ホウケイ酸塩ガラス及びケイ化ホウ素;
のうちの一種以上を含む、
前記方法。
【請求項8】
セラミック原料の少なくとも一つの表面、とりわけ側面、特に主側面が、光によって、特に完全にまたは部分的に照明される、請求項1~7のいずれか一つの記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)とりわけ入射する光に対してセラミック材料を、相対的に、特に連続的に移動させながら、光をセラミック原料の複数の領域、とりわけ表面領域に対し並行に及び/または順次的に入射し、それによって、並行にまたは順次的に、複数の局所的な箇所に転位をセラミック製品において生成し;
(ii)加熱域における照射によって、四角形であるかまたはユーザーによってそれらの形を自由に選択可能に設計できる、規定の幾何学的形状、とりわけ大きな表面積を有する幾何学的形状を形成し;
(iii)照射を、10秒間未満、好ましくは1秒間未満、更に好ましくは0.1秒間未満、好ましくは0.01秒間未満、更に好ましくは1ミリ秒間未満、更に好ましくは0.1ミリ秒間未満の遅れをもって、90%超減少させ、及び/または照射を止めることによって、10K/秒超、更に好ましくは50K/秒超、更に好ましくは200K/秒超の冷却速度が達成される;
及び/または
(iv)温度プロファイルを、局所的にまたは/及び経時的に様々にコントロールすることができる、
前記方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)光が、可視波長範囲または非可視波長範囲、とりわけUV範囲または可視範囲の波長を有し、特に、このような波長のみを有し、
(ii)光が、200から700nmまでの範囲の波長を含み、特にこのような波長のみを有し、
(iii)光が、少なくとも一つの光源、とりわけ少なくとも一つの発光ダイオード、少なくとも一つのレーザー、Xe閃光ランプ、少なくとも一つのハロゲンランプ、少なくとも一つのUVランプ、少なくとも一つの中圧UV放射器、及び/または少なくとも一つの金属蒸気ランプ、少なくとも一つの赤外放射器を含む少なくとも一つの光源によって放射され、
(iv)光が、光学系によってセラミック原料に指向され、及び/もしくは特に加熱されている領域に収束される、
及び/または
(v)光が、セラミック原料を、その表面で及び/または表面に隣接するボリューム領域内で加熱する、
前記方法。
【請求項11】
セラミック原料において及び/またはセラミック製品において、少なくとも1800℃の温度が達成される、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
光の更に別の入射を追加的に含み、ここで前記光の更に別の入射が、少なくとも1500W/cmの出力密度及び最長で50ミリ秒間の期間で行われる、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
エージングステップを含み、このステップでは、セラミック製品は、300℃から1000℃までの範囲の温度で、少なくとも10秒間の期間、維持される、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
800℃から100℃までの温度範囲における冷却速度が、少なくとも100Kの間隔にわたって、1秒間あたり最大で1ケルビンである、請求項1~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
装置、とりわけ、(i)(転位を含むかまたは含まない)セラミックの製造のための、(ii)請求項1~14のいずれか一つに記載の方法を実施するための、及び/または(iii)請求項1~14のいずれか一つに記載の方法を実施するように設計されている、装置であって、
-セラミック原料を保持するための少なくとも一つの保持部、及び
-前記保持部に保持されたまたは保持可能なセラミック原料に対し光を入射するための少なくとも一つの光源、
を含み、
特に、光をセラミック原料上に入射して、このセラミック原料を少なくとも部分的に加熱し、それによって、セラミック製品を生成するように設計されており、及び前記保持部は絶縁材を含む、前記装置。
【請求項16】
絶縁材の熱伝導率が、1400℃で最大で10W/(mK)である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
請求項15または16に記載の装置であって、
a.発光ダイオードがヒートシンク上に搭載され、及び任意に、とりわけ使用した光から環境を保護する扱いやすいハウジング内でセラミック材料を照明するように、マイクロレンズ及び/またはレンズを備え、
b.光出力が少なくとも5W/cmを達成することができ、
c.処理空間がモジュール式に設計されており、及び/または交換可能な絶縁材を有し、及び/または温度を高温計で読み取ることができ、及び/または光源が、石英ガラス板によってセラミック材料から隔離されている、
d.エネルギーバッファが、電気的接続負荷が3.6kW未満である場合であっても、3kW超の光出力を可能にする、及び/または
e.追加的にまたは代替的に、発光ダイオードを配置するために、レーザーダイオードスタックが使用される、
前記装置。
【請求項18】
絶縁材が、ウール、ネット及び/またはフィルムの形で存在する、請求項15~17のいずれか一つに記載の装置。
【請求項19】
絶縁材が、一種以上の貴金属、膨張グラファイト、酸化アルミニウム及びこれらの二種以上の組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項15~18のいずれか一つに記載の装置。
【請求項20】
絶縁材が、0.25から5.0cmまでの範囲の厚さを有する、請求項15~19のいずれか一つに記載の装置。
【請求項21】
絶縁材がガス膜を含む、請求項15~20のいずれか一つに記載の装置。
【請求項22】
とりわけ請求項1~14のいずれか一つに記載の方法及び/または請求項15~21のいずれか一つに記載の装置を用いて製造される及び/または製造可能な、セラミック製品。
【請求項23】
請求項22に記載のセラミック製品であって、
(i)セラミック製品の厚さが、0.0005mmと20mmとの間であり、ここで、セラミック製品はセラミック膜を含むかまたはセラミック膜であり、及び/またはセラミック製品が、材料としてSrTiO及び/もしくはTiOを含むかもしくはからなり;
(ii)セラミック製品が、次の材料の一種以上、すなわち:
(a)任意のセラミック材料、とりわけ、結晶構造を有する非金属系無機材料;
(b)ペロブスカイト構造、スピネル構造、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造、塩化ナトリウム構造またはフッ化物構造を有するセラミック;
(c)チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、チタン酸ランタンリチウム、ジルコン酸ランタンリチウム、タンタル酸ランタンリチウム、酸化コバルトリチウム、酸化マンガンリチウム、酸化マンガンニッケルリチウム及び/または酸化アルミニウムをベースとし、各々、任意のドープ用添加剤及び/または焼結添加剤並びに複数のこれらの材料の混合物を含む、セラミック;
(d)任意の金属;
または/及び
(e)次のものを含む群からの一種以上の材料:銀、リチウム、パラジウム、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、鉄、ニオブ、クロム、バナジウム、イリジウム、タンタル、オスミウム、レニウム、モリブデン、タングステン、マグネシウムまたは複数のこれらの金属からなる合金;
(f)主として結晶構造を有さず、焼結プロセスを用いてその形状を得る任意の非金属系無機材料;
(g)シリケート繊維、ホウケイ酸塩ガラス及びケイ化ホウ素、
を含み:
(iii)セラミック製品が、10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に1010/cm以上、特に1011/cm以上の密度で少なくとも局所的に転位を含み;
及び/または
(iv)セラミック製品が、粒度勾配、テクスチャ、高い耐熱性、もしくは/及び均質な材料特性を有する、
前記セラミック製品。
【請求項24】
請求項22または23に記載のセラミック製品であって、
a.粒度が、50μm未満では一つの方向に5倍超変化し、及び粒度が、直行方向では二倍未満変化し、
b.多孔度が、5μm未満は5%未満、とりわけ開口多孔度がないものから、15%超、とりわけ開口した浸透性多孔度を有するものまで変移し、及び/または
c.粒子の15%超が、主軸からの15°未満の偏差で方向づけされている、
前記セラミック製品。
【請求項25】
複数のレイヤーを有する層状複合材である、請求項22~24のいずれか一つに記載のセラミック製品。
【請求項26】
透過型電子顕微鏡写真において、100μmの表面上で少なくとも4個のナノ孔が存在するような多孔度を有する、請求項22~25のいずれか一つに記載のセラミック製品。
【請求項27】
セラミック製品の飽和分極が、従来技術により焼結された同じ組成のセラミック製品の飽和分極を少なくとも10%上回る、請求項22~26のいずれか一つに記載のセラミック製品。
【請求項28】
セラミック製品の保磁力が、従来技術により焼結された同じ組成のセラミック製品の保磁力の最大で50%である、請求項22~27のいずれか一つに記載のセラミック製品。
【請求項29】
セラミック製品の歪みが、従来技術により焼結された同じ組成のセラミック製品の歪みを少なくとも15%上回る、請求項22~28のいずれか一つに記載のセラミック製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック及びセラミック製品を製造するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックは、通常は、セラミック粉末から、これを次いで焼結して結合させることによって製造されることは既知である。焼結では、粉末の成分が結合されて完成したセラミックとなるように温度が高められる。この目的のためには、この粉末は、典型的には、セラミックが得られるように焼結炉中で加熱される。このことは、いわゆる機能性セラミックでも同様である。これは、特別な技術的特性を有する、特別な部類のセラミック材料に分類される。
【0003】
高温下に焼結してセラミック粉末を圧縮することによりセラミックを製造するためには、特に、耐熱性の炉と、多量のエネルギー消費量及び長いプロセス時間とが必要である。炉は、特に、耐熱性の材料から構築され、そして多量のエネルギー消費量を用いて加熱される。この際、炉の内部空間中でセラミックが加熱され、それにより、焼結プロセスが行われる。しかし、これらの炉の耐熱性にも限界があるので、焼結温度を下げるために、一部では、焼結助剤(例えばSi)を使用しなければならない。一般的に、プロセス時間は数時間の範囲であり、そして多量のエネルギーを必要とする。
【0004】
それ故、セラミック及びそれらの製造をより効率的にする要望がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Theory of dislocations”, 3rd edition Peter M.Anderson,John P.Hirth und Jens Lothe,Cambridge University Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することができかつ特に、より効率的なセラミックを製造することを可能にする方法及び装置を提供することである。本発明の更なる課題は、従来技術の欠点を克服するセラミックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、(転位を含むかまたは含まない)セラミックの製造方法であって、セラミック原料に光を入射して、それを少なくとも部分的に加熱して、それによってセラミック製品を製造することを含み、この際、光の入射は、少なくとも0.1mmの表面積に対して及び/またはセラミック原料の表面積の20%超に対して同時に、すなわち、いちどきに行われ、及び入射される光の出力密度は、800W/cm未満である方法によって、第一の観点による本発明により解消される。
【0008】
光の入射は、例えば、セラミック原料の表面積のうち20%超、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%に対して、特に全面に対して、同時に行うことができる。
【0009】
光の入射は、例えば、少なくとも0.1mm、少なくとも0.2mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.01cm、少なくとも0.02cm、少なくとも0.05cm、少なくとも0.1cm、少なくとも0.2cm、少なくとも0.5cm、または少なくとも1.0cmの表面積に対して、特にセラミック原材料の表面積のうち少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%、例えば全面積に対して、同時に行うことができる。
【0010】
光の入射は、特に、少なくとも0.1秒間、少なくとも0.5秒間、少なくとも1秒間、特に少なくとも5秒間、特に少なくとも20秒間、及び/または最大で10分間、特に最大で8分間、特に最大で5分間、特に最大で3分間、特に最大で1分間、特に最大で30秒間、特に最大で10秒間、行われる。800w/cm未満の出力密度を有する光の入射が、ボリュームボディの焼結に特に役立つ。
【0011】
本発明による方法は、上記の光の入射の他に、より高い出力密度で及びかなりより短い時間でセラミック原料に対して光を入射して、それを少なくとも部分的に加熱し、それによってセラミック製品を生成する更なるステップも更に含むことができ、ここで、光の入射は、セラミック原料の表面積のうちの50%超に対して同時に行い、及び入射される光の出力密度は少なくとも800W/cm、例えば少なくとも1000W/cm、少なくとも2000W/cm、少なくとも4000W/cm、少なくとも10000W/cm、少なくとも15000W/cm、少なくとも50000W/cm、または少なくとも400000W/cm、好ましくは高くとも750,000W/cm、高くとも20000W/cm、高くとも8000W/cm、高くとも10000W/cm、高くとも7000W/cm、または高くとも5000W/cmである。
【0012】
光の入射の前記の更に別のステップは、特に、かなりより短い時間、例えば最長でも100ミリ秒間(ms)、最長でも50ms、最長でも40ms、最長でも30ms、最長でも25ms、または最長でも20ms、及び/または最短でも0.5ms、最短でも1ms、最短でも2ms、最短でも5ms、または最短でも10ms、行われる。前記の光の更に別の入射は、時間が短い故に、閃光とも称することができる。
【0013】
前記更に別のステップでの光の入射は、例えば、セラミック原料の表面積のうちの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%に対して、特に全表面積に対して、同時に行うことができる。
【0014】
前記更に別のステップでの光の入射は、例えば、少なくとも0.1mm、少なくとも0.2mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.01cm、少なくとも0.02cm、少なくとも0.05cm、少なくとも0.1cm、少なくとも0.2cm、少なくとも0.5cm、または少なくとも1.0cmの表面積に対して同時に行うことができ、とりわけ、セラミック原料の表面積のうちの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%に対して、例えば全表面積に対して、同時に行うことができる。
【0015】
すなわち、好ましい実施形態の一つでは、ボリュームボディの焼結のための照明の他に、この焼結工程の前または後にも、好ましくは焼結工程の間にも、その表面を、非常に短い時間でより強く照射する。例えば、Xe閃光ランプからの閃光を、高い出力密度(とりわけ、少なくとも800W/cm、例えば少なくとも1000W/cm、少なくとも1500W/cm、少なくとも2000W/cm、少なくとも2500W/cm、少なくとも3000W/cm、少なくとも3500W/cm、少なくとも4000W/cm、または約4350W/cm)で短時間(とりわけ、最長で50ms、最長で40ms、最長で30ms、最長で25ms、または最長で10ms、例えば約20ms)で用いることにより、表面を、その下にあるボリューム材料よりも明らかに強く加熱することができる。それによって、表面に異なる特性を持つ層が形成される。これは、好ましくは、テクスチャを有し、そしてボリュームボディよりも高い密度及び大きい粒度を有する。更に、この層は、ボリュームボディにおいて配向粒子成長を生じさせるために利用できる。英語では、粒子成長へのこのタイプのコントロールは、「templated grain growth(テンプレート粒子成長)」と称される。
【0016】
好ましくは、層とボリュームボディとの間の縮小による熱的不適合または不適合は、ボリュームボディ自体が高温である間に閃光を使用することによって減少され、特に防止され、この際、セラミックは、高温での応力を特に良好に弱めることができる。
【0017】
粉末材料を加熱するために光を使用することによって、一方では、プロセス時間及びエネルギー消費量を劇的に減少することができ、他方で、加熱速度のパラメータを、非常に確実にコントロールでき、特に調節及び/または能動的に調整することができる。そのため、粉末がどの箇所でどのくらい速く加熱されるかを的確にコントロールすることができる。特に、加熱を大きな表面に対して同時に行うことができ、プロセスを連続的な方法として実現できる。該セラミック材料を、照明によって特に迅速に加熱することができる。この際、照射された領域において、速い加熱速度をセラミック材料において達成することができる。従って、提案された方法は、とりわけ、セラミック材料における出力密度の及びそれ故、温度のはるかにより直接的なコントロールを可能にする。同時に、該方法は、驚くべきことに、セラミックの慣用の製造方法よりもかなりより簡単に実施することができる。同時に、慣用の焼結法では不可能であるかまたはかなり大きな労力をもってしか達成できない観点、特に、以下の観点のうちの一つ以上を実現することができる。
・粒度勾配の生成、
・テクスチャの生成、
・ナノ多孔性の生成、
・特に格別高い温度における、改善された耐熱性の発生、
・均一な材料特性の発生、
・プロセス時間の短縮、
・プロセスのより正確なコントロール可能性、特に非常に拘束なプロファイルの実現、
・比較的厚手のセラミックを製造する場合でさえの、特に少量生産領域におけるエネルギーの節約、及び/または
・特に少量生産の開発の促進、改善、簡素化。
【0018】
粒子勾配及び/またはテクスチャは、異なる温度プロファイルによってセラミックの表面上に及び内部に生成することができる。例えば、該方法は、経時的及び/または空間的出力密度プロファイルを含むことができる。好ましい経時的出力密度プロファイルは、例えば、0.2から200msまで、例えば20msの期間にわたる800W/cmから20,000W/cmまでの範囲の出力密度、例えば4350W/cmの出力密度、及びその後のまたは並行した、1秒間から2分間まで、例えば10秒間の期間にわたる10W/cmから<800W/cmまでの範囲、例えば130W/cmの更なる出力密度を含む。それによって、粒度勾配及び/またはテクスチャを有するセラミック製品を製造できる。とりわけ、緻密に焼結された表面層の下に多孔性のボリュームを含む、セラミック製品を得ることができる。前記の高い第一の出力密度によって、緻密に焼結された表面層の形成をもたらす。第一の出力密度が使用される時間が短いために、緻密に焼結された層は、薄い表面層に限定される。この表面層の厚さは、例えば、10から20μmまでの範囲であることができる。緻密な表面層及びその下にある多孔性のボリュームを有するセラミック製品は、燃料電池での使用に特に適している。粒度及びテクスチャは、それぞれ、機能的及び機械的特性、例えば伝導性及び亀裂の発生し易さに対して作用する。
【0019】
本発明による方法を用いることで、ナノ多孔性も生成できる。ナノ孔とは、ミクロ組織解析を用いて、すなわち、例えばTEM顕微鏡写真を評価して定量化可能な、1μm未満のマーチン経、すなわちナノメータ範囲のマーチン経を有する孔である。本発明によるセラミック製品は、ナノ孔を含むことができる。これは、セラミック製品がTiO、BaTiO、YSZ(英語:“Yttria-stabilized zirconia”(イットリウム安定化ジルコニア))またはLi0.3La0.7TiOを材料として含む場合に、特に該当する。
【0020】
加えて、本発明による方法は、極めて高い温度、例えば500℃から3200℃までの範囲の温度での焼結を可能にする、というのも、炉による最大温度への制限がないからである。それによって、製造されるセラミック製品は、とりわけ、高温下での、例えば1400℃超の温度下での、改善された耐熱性を達成することができる。前記の極めて高いプロセス温度により、焼結助剤の使用の省略を可能とし、より大きな粒子の生成及びそれ故、より良好な耐クリープ性の達成を可能にする。一次拡散経路に依存して、クリープ率は、1/粒度(ナバロ・ヘリングクリープ)または1/粒度(コーブルクリープ)に比例する。それによって、従来製造されたセラミックがそれらのより低い温度安定性の故にその使用が制限される場合もあったセラミック製品の新しい使用分野が開拓され、例えば粒度を10倍にすることによって、同じ温度及び応力で望ましくない歪みレベルを超えない時間を、100から1000倍まで延長することができ、それ故、セラミックの使用期間を同程度延長することができる。
【0021】
本方法では、セラミック原料において及び/またはセラミック製品において、特に、少なくとも1400℃、少なくとも1500℃、少なくとも1600℃、少なくとも1700℃、少なくとも1800℃、少なくとも1900℃、または少なくとも2000℃の温度が達成される。セラミック原料及び/またはセラミック製品における温度は、例えば、500℃から3200℃までの範囲、とりわけ1000℃から3000℃まで、1200℃から2800℃まで、1400℃から2700℃まで、1500℃から2600℃まで、1600℃から2500℃まで、1700から2400℃まで、1800℃から2300℃まで、1900℃から2200℃まで、または2000℃から2100℃までの範囲であることができる。
【0022】
好ましい実施形態の一つでは、該セラミックは、焼結工程の間に、少なくとも1800℃またはそれよりかなり高い温度、例えば2500℃に加熱される。この際、例えば、膨張グラファイト製の絶縁材が使用される。とりわけ、このような極めて高い温度は、多大な技術的労力をかけることなく、通常の雰囲気中で達成することができる。それにより、格別に粗い原料粉末を用いてまたは格別に高い焼結-及び融解温度を用いて材料を製造することができる。これは、例えば炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素または酸化マグネシウムなどのセラミックの製造を促進し、改善しそして簡素化することができる。
【0023】
本発明の方法を用いることにより、例えば粒度、相組成、多孔性、微小亀裂の数及び大きさ、及び伝導性に関しての、明らかにより均一な材料特性を持つセラミック製品を得ることができる。これは、一方では、土台に対して絶縁することによる、例えばガス膜上に浮遊させることによる、グリーンボディの熱的デカップリングにある。他方で、同時の平面的照明は、横方向の温度勾配(例えば、表面に同時には照明されず、その代わりに表面は点毎に走査される選択的レーザー焼結で生じるような温度勾配)が排除されるかまたは少なくとも大きく減少し、それによって材料特性及びそれらの均質性が改善されるという利点を有する。
【0024】
更に、本発明の方法を用いた場合には数秒間内に部材全体が一度に焼結され得るために、選択的レーザー焼結と比べると、プロセス時間が根本的に短縮される。プロセス時間の極端な短縮及び簡素化された取り扱いにより、開発を明らかにより迅速に行うことができる。とりわけ、スパッタターゲットまたはPLDターゲット(英語:Pulsed Laser Deposition(パルスレーザー堆積)(PLD)の場合のような少量生産を、改善及び簡素化することができる。
【0025】
炉の代わりの光の使用は、プロセス時間を1000分の一に短縮することができる。更に、例えば20%から99%までのエネリギーの節約を達成できる。エネルギーの節約は、対応するCO削減に変換できる。更なる利点の一つは、持続的に購入できる電流を使用できる点にある。ガス/油は、COニュートラルでは大規模に得ることはできない。より厚手のセラミック、例えば0.1mmから20mmまで、とりわけ0.5mmから10mmまでまたは>1mmから5mmまでの範囲の厚さを有するセラミックでさえを、数秒間内で、少なくとも90%のエネルギー節約と共に製造することができる。とりわけ、エネルギー節約は、同時にリードタイムを短縮しつつ達成できる。
【0026】
該セラミック原料は、とりわけ、少なくとも0.001mm、少なくとも0.01mm、少なくとも0.1mm、少なくとも0.5mm、少なくとも1.0mm、または少なくとも2.0mmの厚さを有することができる。この厚さは、例えば、0.1から12.0mmまで、とりわけ0.2から10.0mmまで、0.5から8.0mmまで、1.0から5.0mmまで、または1.0から4.0mmまでの範囲である。
【0027】
好ましい実施形態の一つでは、該セラミック原料は、中温度に、例えば焼結工程の間の最大温度の50%まで予熱される。それによって、特に素早く加熱する必要のある温度範囲が大幅に狭くなる。それによって、比較的厚手の材料厚を成功裏に処理でき、特に均質な材料特性を生成することができる。予熱ステップは、実際の焼結ステップよりも、より長い期間にわたるより遅い加熱速度でも行うことができる。更に、ここでは、焼結の場合よりも、かなりより低い出力密度が必要され、そして予熱ステップのために慣用の炉を使用すること、またはこのステップを、バインダー材料の焼尽と組み合わせることも考慮され得る。
【0028】
好ましい実施形態の一つでは、セラミックからの熱を放射は適当な鏡により減少される。とりわけ放射された赤外線を反射するために例えば金でコーティングされた、例えば楕円形にまたは放物線状に形成された鏡を、放出された放射線を生じたセラミックに戻すために使用することができる。これは、温度を維持するために必要な電力を削減することを可能にする。それによって、長い露光時間におけるエネルギー効率を改善できる。
【0029】
好ましい実施形態の一つでは、少なくとも二つの側面から照明される。
【0030】
特に好ましい実施形態の一つでは、0.1から12.0mmまで、とりわけ0.2から10.0mmまで、0.5から8.0mmまで、1.0から5.0mmまでまたは2.0から4.0mmまで、例えば約4mmの材料厚が処理される。この際、好ましくは、二つの側面から照明され、そして予熱ステップが利用される。
【0031】
更に、該方法は、完全な部材、例えば多層キャパシタを焼結プロセスで製造することが可能である。
【0032】
更に別の観点の一つでは、本発明の方法を用いることで、任意に少なくとも局所的な転位を生成することができる。高密度のこのような転位は、それの伝導率の故に、セラミックにおいては特に有利である場合がある。というのも、転位によって、セラミックの機能的及び機械的特性を改善及び/または的確に調節することができるためである。なかでも転位により影響され得る、特に改善され得るセラミックの特性には、なかでも以下のものが挙げられる:
・亀裂に対するセラミックの耐性;
・セラミックの変形可能性、特に高温変形可能性;
・セラミックの破壊靱性;
・セラミックの摩耗挙動;
・セラミックの触媒活性;
・セラミックの電気光学的特性;
・セラミックの電気、イオン及び/または熱伝導性;
及び/または
・セラミックの強誘電的及び/または半導体的特性。
【0033】
しかし、セラミックの二次的特性、例えば層複合体(例えば、キャパシタ、圧電式アクチュエータ、太陽電池、固体バッテリー、燃料電池及び電解セル)における異なる相の共焼結の場合の相互拡散の傾向、または新しいタイプのバッテリーにおける金属リチウムの堆積(リチウム樹状結晶成長)における均質性も、転位により影響を及ぼすことができ、特に改善することができる。
【0034】
それ故、該方法は、後での使用目的に依存して、導入される転位の数及び密度に関してセラミックに影響を及ぼすことを可能にし、そしてそれによって、セラミックの特性、中でも、例えば先に記載したようなそれらの機能的及び機械的特性に、再び的確に影響を及ぼすこと、特に調節及び/または改善することを可能にする。
【0035】
更に、転位は化学的ドーピングを置換及び/または補足することができる。それによって、材料の煩雑さを低減でき、これは、複雑さがより少ない原料サプライチェーン並びにより持続可能でかつ経済的な製造を可能にする。同時に、これは、より簡単なリサイクルの可能性も供する。
【0036】
更に、提案される該方法を用いることにより、焼結後のセラミックの良好な機械的変形性を達成することができる。この特性は、塑性変形可能性、特に湾曲、折り曲げ、深絞り、鍛造及び/または押出を必要とする二次成形のために利用することができる。
【0037】
従って、提案された該方法は、既知のセラミックの特性の大きな改善をもたらすことができる。この際、該方法は、比較的少ない技術的労力で実現可能である。該方法は、技術的な前提条件に関しては僅かな要求しか課さないために、既存の製造プロセスに特に簡単に一体化することもできる。該方法は、非接触式に行われるので(すなわち、これは、中でも、「閃光焼結」の場合のように試料の接触も必要としない)、それの実施は特に簡単に行い得る。それ故、既存の製造工程を、提案された該方法をそこで使用するために、非常に簡単にかつ費用効果的に増備することもできる。この際、光源は、多数のそれ自体慣用の光源から選択することができる。それによって、該方法の実施は、特に費用効果よく行うことができる。また、該方法は、試料の多数の様々な幾何学的形状のためにも使用することができる。とりわけ、材料を照明域に通して連続的に輸送するプロセスが可能である。それにより、提案された該方法は、大量生産に非常に良好に適している。
【0038】
光の入射によって、特に、セラミック内でコントロールされた及び/またはコントロール可能な温度プロファイルを調節することができる。例えば、これは、セラミック内での空間的温度プロファイルであることができる。それにより、この場合も、転位の特に良好で確実なコントロールを、非常に高い転位密度と共に達成でき、これは、再び、セラミックの特性の対応するコントロールを可能にする。また、セラミックの所定の特性の任意の勾配を生成できる、すなわち、特性値が位置と共に徐々に変化する。更に、照射の経時的な出力密度プロファイルを用いて、特性勾配を持つセラミック製品を生成することもできる。高密度の、例えば90%超または95%超の密度の、とりわけ開口のまたは浸透性の多孔性を持たない表面層を有し、かつ浸透性の多孔性を持ち及びそれ故、ガス浸透性を持つ低密度のその下にあるボリュームを有する製品を製造することができる。このような製品は、例えば、燃料電池での使用に関してまたは水分解に関して関心がもたれる。該表面層は、それの高い密度の故に気密性であり、他方で、その下にあるボリュームは、それの多孔性の故に良好な反応空間である。
【0039】
提案された該方法を用いることで、要求が高い使用目的の場合でもセラミックの特性に影響を及ぼすこと、とりわけ改善することができるようにセラミック中で十分な数及び密度をもって転位を生成できることが初めて可能となる。該方法は、任意に、コントロールされた条件下に転位の生成を可能とし、それ故、再現可能でもある。
【0040】
該方法は、とりわけ、短い波長でも特に良好に機能する。その他、添加剤が、長波長でのより良好な吸光及び選択的レーザー焼結でのより良好な結果を保証することが知られている。しかし、一部では不利な添加剤は使用する必要がない方がよい。驚くべきことに、該方法を窒素雰囲気中で行った場合に、本質的により多くのエネルギーが吸収される。ここで、酸素欠乏は、吸光性添加剤と同じように作用する。好ましくは、該方法は、窒素雰囲気中で実施される。好ましくは、該方法は、吸光性添加剤を含まない。
【0041】
例えば、可視光及び/またはUV光を使用することができる。代替的にまたは追加的に、赤外スペクトル範囲の光も使用できる。光、例えば可視及び/またはUV範囲の光を入射することによって、セラミック内の温度プロファイルを非常に正確にコントロール、とりわけ制御することができる。適切な波長を選択することによって、とりわけスペクトル範囲(UV、VIS、IR)を選択することによって、効率を特に確実に調節することができる。特に好ましくは、青色レーザー光、とりわけ200nmから700nmまで、例えば300nmから600nmまでまたは400nmから500nmまでの範囲の波長を有するレーザー光を連続波(非パルス光、英語:「continuous wave」)として使用することができる。
【0042】
例えば450nmの波長を持つレーザーは、2.7eVの光子エネルギーに相当する。光子エネルギーがバンドギャップより大きい場合には、その材料はこの光をほぼ100%吸収する。そうでない場合には、それはほぼ透明である(ガラス参照)。殆どのセラミックにおいて、バンドギャップは2eVと5eVとの間である。殆どの重要な酸化物では、それは2.7eVと3.8eVとの間である。しかし、バンドギャップは温度と共に小さくなり、1200℃では約1eV低下する。それ故、殆どの酸化物では、最大プロセス温度において高効率を達成するためには約2eVで十分である。
【0043】
800nmの波長(1.5eV)を有する赤色レーザーは不利である。この光は効率良く吸収されず、それにより、10から20倍多い出力が必要となる。10000nmの波長(0.15eV)を持つCOレーザーには、効率のよい吸収に関する更に大きな問題が伴う。
【0044】
それ故、好ましくは、光子エネルギーは、少なくとも2eVであり、とりわけ2eVから5eVまで、例えば2.5eVから4.0eVまでまたは2.7eVから3.8eVまでの範囲である。
【0045】
好ましくは、急激な吸収効率の変化を避けるために一つ以上の波長が同時に使用され、それによって、好ましくは、機械的安定性及び均質性が高められる。
【0046】
この際、基本的には、入射光は、セラミックまたはグリーンボディによって、とりわけ、この光が入射する表面でまたはその付近で吸収され、その際、材料の内部も、表面からの熱伝達によって加熱され得る。特に適した実施形態の一つでは、薄いグリーンボディが使用され、この際、光の的確な切断は、非常に速い冷却速度も可能にする。また、層複合体及びコンポジット、とりわけ、固体バッテリー、アクチュエータ、キャパシタ及び燃料電池を、該方法を用いて焼結することができる。
【0047】
この際、グリーンボディは、例えば、焼結プロセス前のセラミック、それ故、セラミック原料のことを指し得る。この用語は、多くの場合に、原料が例えばフィルムであるかまたは圧縮された粉末であるか、及びそれがどのような幾何学的形状を持つかに関しては、制限されない。
【0048】
実施形態の一つでは、該セラミック原料はフィルム状の幾何学的形状を有する。例えば、補償(レーザー)光学系を使用し、それにより、導入される光の出力を正確にかつ迅速に制御することができる。それ故、焼結工程の進行中に起こる緻密化の間に、転位をセラミックに同時に導入することができる。このようにしてコントロール可能な迅速な加熱及び/または冷却速度によって、任意に、転位を高程度にセラミック中に導入することができ、これは、従来のやり方では、例えば炉ではそれの熱慣性の故に可能ではない。その場合、転位によって、セラミックの多数の機能的及び機械的特性を改善することができる。例えば、とりわけセラミックの厚さが薄い場合、例えば厚さが1mm未満の場合には、照射をオフにすることによって冷却速度をコントロールすることができ、とりわけ、それによって、非常に速い冷却速度も達成できる。これは、従来技術のやり方では利用可能ではない設計パラメータである。
【0049】
すなわち、高速な冷却速度は、特に、光源のオフによって、それ故、熱出力の供給の停止によって、達成することもできる。これは、慣用の炉と比べて、迅速な冷却時間を可能にする。任意に慣用の炉は使用されないため、炉の熱慣性は排除される。それによって、セラミックは、全熱慣性を殆ど消失させる。応じて、熱慣性は、薄いセラミックの場合に特に低くすることができる。その結果、迅速かつ正確な温度プロファイルを実行することができる。
【0050】
エージングステップ、すなわち高められた温度での直接的な保持が提供されるように、光を用いて能動的に冷却を制御することが有利であり得る。とりわけ、エージングステップは、例えば300℃から1000℃までの範囲の温度で及び例えば、数秒間、例えば少なくとも10秒間から数分間、例えば少なくとも3分間まで、または更には数時間、例えば最長で3時間までの期間、設けることができる。エージングステップは、点欠陥の平衡化、及びそれ故、セラミック製品の温度依存性の電気伝導性の安定した推移を得るために、とりわけ機能性セラミックにおいて有利である場合がある。しかし、セラミック製品の起こり得る熱衝撃効果またはそれによって発生する亀裂を最小化するためにも、エージングステップを設けて利用することができる。代替的にまたは追加的に、冷却温度を能動的に調整しそして冷却速度を、例えば800℃から100℃までの温度範囲内において、少なくとも100Kの間隔にわたって、例えば1分間あたりで少なくとも5ケルビン、更に好ましくは1分間あたりで少なくとも10ケルビン及び/または1秒間あたりで最大でも1ケルビン、更に好ましくは1分間あたりで最大でも20ケルビンに低下させることも企図できる。800℃から100℃までの温度範囲内の冷却速度は、好ましくは、少なくとも100Kの間隔にわたって、5~60K/分、更に好ましくは10~20K/分の範囲である。800℃から100℃までの温度範囲内の冷却速度は、少なくとも100Kの間隔にわたって、好ましくは少なくとも5K/分、更に好ましくは少なくとも10K/分である。800℃から100℃までの温度範囲内の冷却速度は、少なくとも100Kの間隔にわたって、好ましくは最大でも1K/秒、更に好ましくは最大でも20K/分である。
【0051】
この際、該方法は、燃料電池のための電解質層及び/または層複合体の、電解セルの及び固体バッテリーの並びにセラミックセンサーの焼結のために特に良好に適している。
【0052】
それ故、提案される当該方法を用いることにより、従来のやり方では原料の加熱のために用いられる焼結炉の使用を、完全にまたは少なくとも部分的に省くことができる。これは、多くの重要な利点をもたらす:炉全体を加熱しそして再び冷却する必要がもはやないので、膨大なエネルギー量を節約することができる。更に、光の入射は、セラミック内での極めて動的な温度推移を可能にする。炉の緩慢な加熱及び冷却挙動を克服することができる。従って、加熱バンド、炉または電流とは対照的に、セラミックの温度の非常に効率のよいコントロールを行うことができる。
【0053】
実施形態の一つでは、光の入射の開始前に及び/または光の入射の開始後に、セラミック材料は、焼結炉を用いてまたは他のやり方で焼結される。それ故、提案される該方法は、例えば、高い転位密度が必要とされる場合にのみ、それに切り替えることができる。
【0054】
提案される該方法は、特に、以下の有利な特徴及び特性を有し、これらはそれぞれ単独で、全て一緒に及び/または任意の組み合わせで利用することができる:
・ほぼ任意の幾何学的形状、中でも、1mm未満のまたは1mmから5mmまでの厚さを有する厚さを有する直方形の幾何学的形状のセラミックを、該方法で焼結することができる。
・該方法は、非接触式に行い得る。
・該方法は、スケーラブルである。
・該方法は、特に大表面を同時に処理することができる。
・該方法は、任意に生成された転位によって顕著な特性を得る、セラミック膜のようなセラミックのための最初の工業的にスケーラブルな製造方法である。
・該方法は、わずかな技術的な労力だけで、非常に短いプロセス時間を達成する。
・該方法、とりわけそれと接続された焼結プロセスは、既存の工業的なフィルムキャストプラントに直接統合することができる。
・該方法は、任意に、非常に多数で非常に高密度の転位を可能にする。
・該方法は、大量生産のためにも、良好に拡張可能でありかつ簡単に実施可能である(例えば、入手が容易な照明を使用できる)。
・実験室規模でのプロセス制御は、特に工業的なプロセス制御に類似して設計でき、それにより、更なる開発を特に迅速に実現でき、そして品質管理が単純化される。
・該方法は、僅かな技術しか必要とされないので、既存のプラントにも後から装備できる。
・該方法は、連続的プロセスとして設計できる。
・加熱しそして再び冷却する必要のある炉が必要ないので、製造の際に大幅なエネルギーの節約が可能である。材料それ自体だけが加熱される。
・該方法は良好に再現及びコントロール可能であり、それにより、望ましくない副作用、例えば、セラミック材料中の点欠陥による伝導性の変化も避けられる、というのも、例えば閃光焼結の場合の状況とは異なり、明確に定義された方法パラメータが優先するからである。それによって、該方法は、その煩雑さが低減される。
・該方法は、無加圧で行い得る。
【0055】
この際、該方法は、以下の領域の一つ以上においてセラミックを製造するために特に良好に使用することができる:燃料電池技術、電解セル、固体バッテリー、センサー、固体バッテリー、水素技術、太陽電池、触媒技術、キャパシタ及びアクチュエータ。
【0056】
この際、当然ながら、当業者は、光が入射される間、焼結工程の結果としてのセラミック原料からセラミック製品までの遷移は連続的であることを理解する。
【0057】
この際、本発明は、特に、セラミック原料中に大きな局所的な勾配が発生しないように、温度を調節すること、とりわけ温度プロファイルの横方向の変動を最小化することを可能にする。それにより、焼結された材料は、より耐引き裂き性になる。追加的に、任意に、照明された領域と照明されていない領域との間の遷移を勾配として設計することができる。
【0058】
実施形態の一つでは、材料の1cm以上、特に250cm以上、及び/または2000cm以下、特に100cm以下の表面が同時に照明される。
【0059】
当該方法を用いて製造されたセラミックは、それの任意に高い転位密度の故に、格別高伝導性であり得る。例えば、該方法を用いて、機能性セラミックを製造することができる。機能性セラミックを使用する場合、可能な限り伝導性のセラミックに関心がもたれる、というのも、これは、システム全体(例えばバッテリーの)に有益であるためである。
【0060】
この際、機能性セラミックとしては、特に、例えばキャパシタ、センサーまたはバッテリー膜に関しての格別機能的な特性を有するセラミックのことと理解される。それは、例えば、構造及び機械的特性によって付加価値が決められる構造セラミックとは異なる。
この際、転位は、関連する専門文献、例えば“Theory of dislocations”, 3rd edition Peter M.Anderson,John P.Hirth und Jens Lothe,Cambridge University Press(非特許文献1)において定義されている。本発明の意味での転位は、特に、材料中の一次元結晶欠陥であり、これは主として製造の際に発生し得る。
【0061】
代替的にまたは追加的に、セラミック原料の部分的な加熱が、(a)1K/秒以上、特に10K/秒以上、特に100K/秒以上、特に1000K/秒以上、(b)10000K/秒以下、特に5000K/秒以下、特に1000K/秒以下、及び/または(c)10K/秒と5000K/秒との間、特に100K/秒と2000K/秒との間、特に100K/秒と1500K/秒との間、特に100K/秒と1000K/秒との間の加熱速度で行われることも、企図できる。
【0062】
光の入射によってセラミック材料において然るべき加熱速度が達成されることによって、任意に、多数の及び高密度の転位をセラミック製品中に実現することができる。
【0063】
任意に、加熱速度は、最大で2500K/秒、特に最大で500K/秒、特に最大で150K/秒、特に最大で50K/秒、特に最大で50K/秒である。代替的にまたは追加的に、加熱速度は、1K/秒以上であることもできる。
【0064】
例えば、加熱速度は、一つの実施形態では、1K/秒と5000K/秒との間、特に50K/秒と1000K/秒との間、特に50K/秒と800K/秒との間、特に100K/秒と600K/秒との間である。
【0065】
例えば、一つの実施形態では、目的温度は、500K/秒超の加熱速度を用いた場合には、5秒間未満、好ましくは1秒間未満、更に好ましくは0.1秒間未満で達成される。例えば、目的温度は、10秒間未満内、好ましくは5秒間未満内、更に好ましくは2秒間未満内、更に一層好ましくは1秒間未満内で、±20Kの精度で安定化される。
【0066】
代替的にまたは追加的に、冷却速度は、25000K/秒と50K/秒との間、特に1000K/秒と50K/秒との間である。とりわけ、焼結温度から1000℃の温度への冷却速度は非常に高速であることが好ましい。好ましくは、焼結温度から1000℃の温度までの冷却速度は、50K/秒から1000K/秒までの範囲、例えば100K/秒から500K/秒までの範囲、または150K/秒から250K/秒までの範囲である。
【0067】
冷却速度は、とりわけ、厚さにも依存し得る。例えば、冷却速度と材料の厚さとの商は、25000K/(mm*s)と10K/(mm*s)との間の範囲、特に1000K/(mm*s)と50K/(mm*s)との間の範囲であることができる。
【0068】
非常に短時間でより高い出力密度で光を更に入射する場合、更に一層明らかに高い加熱速度、例えば5,000,000K/秒まで、1,000,000K/秒までまたは500,000K/秒までの加熱速度が生じ得る。例えば、閃光を使用した場合、緻密な層を多孔性の土台上に形成することができる。
【0069】
実施形態の一つでは、加熱速度は、照明された表面上で確認できる。ここで、照明された表面上での温度変化を測定することによって、加熱速度をコントールすることができる。これは、好ましくは、適切な高温計によって非接触式に行うことができる。温度測定のための他の方法、例えば、焼結すべき材料の特性をベースとして熱電素子、抵抗温度センサーまたは非直接的測定法を用いた方法も同様に可能である。好ましい実施形態の一つでは、加熱中の出力密度は、加熱速度をできるだけ高くかつ一定にするため温度を維持するために続いて必要とされるよりも、高く選択される。できるだけ均一な加熱速度を達成するために、加熱の間に出力密度を高めることが好ましい。
【0070】
加熱速度をコントロールするためには、例えば、入射光の出力密度は、パラメータとして直接コントロールすることができる。このコントロールは、任意に、局所的に及び/または経時的に変化する加熱速度を調節することを含み得る。出力密度のパラメータは、測定技術的にも容易に得ることができる。
【0071】
それ故、一つの実施形態では、加熱速度は、入射光の出力密度に基づいてコントロールされる。任意に、出力密度は、2W/cmと750W/cmとの間、好ましくは4W/cmと500W/cmとの間、更により好ましくは5W/cmと200W/cmとの間または10W/cmと150W/cmとの間である。出力密度は、800W/cm未満、例えば最大でも750W/cm、最大でも700W/cm、最大でも650W/cm、最大でも600W/cm、最大で550W/cm、最大でも500W/cm、最大でも450W/cm、最大でも400W/cm、最大でも350W/cm、最大でも300W/cm、最大でも250W/cm、最大でも200W/cm、最大でも150W/cm、最大でも100W/cm、または最大でも75W/cmである。出力密度は、例えば、少なくとも1W/cm、少なくとも2W/cm、少なくとも4W/cm、少なくとも5W/cm、少なくとも10W/cm、少なくとも20W/cm、少なくとも30W/cm、少なくとも40W/cm、少なくとも50W/cm、または少なくとも60W/cmであることができる。
【0072】
時間が短い場合には、先に記載したように(閃光)、明らかにより高い出力密度を入射することもできる。
【0073】
数学的な考察は、セラミック、とりわけグリーンボディの最大温度は、試料温度が入射光の出力密度に従い適合されるやいなや、おおよそ出力密度の4乗根に依存し得ることを示す。例えば、例示的なセラミック試験片、とりわけグリーンボディでは、5W/cmは約750℃に、そして200W/cmは、約1750℃に対応する。出力密度が、目下の温度のために必要な出力密度を上回る場合に、セラミックが加熱される。出力密度が低下すると、セラミックは冷える。高温度では、セラミックから放射される熱エネルギーを補償するために、出力密度の大部分が利用される。
【0074】
この際、出力密度は、とりわけ良好な時間分解能でコントロールされ、それにより、非常に正確に規定された出力密度プロファイルまたは温度プロファイルが可能となる。例えば、セラミックを非常に高い出力密度で加熱することができ、これは次いで、目下の温度に対応するより低い値に迅速に適合される。それによって、セラミックは非常に迅速に加熱することができ、この際、最大温度が、迅速にかつとりわけ非常に正確に達成される。それにより、例えば、温度が目的温度の90%から100%に上昇する時間を、慣用の方法、例えば通常の炉と比べて明らかに短縮でき、特に最短化でき、そして同時に、目的温度からの超過を避けることができる。それ故、出力密度の技術的コントロールによって、ほぼ任意の温度プロファイルが、とりわけ迅速な温度変化をもって可能となる。更に、温度プロファイルの局所的な(及び/または経時的な)変化は、セラミック材料中での局所的に変化する特性及び転位密度を調節することを可能にする。それにより、温度プロファイルの明らかにより自由な設計が使用者に可能になる。それ故、特に、複雑な温度プロファイルも可能である。
【0075】
出力密度は、特に、格別より短い時間的遅れでオン/オフでき、または任意に配量することができる。この際、達成可能なオン/オフ速度は、光及び使用される光学系によって決定され、そして例えば、1秒間以下、特に1ミリ秒以下であることができる。ここで、「オン/オフ速度」とは、特に、照明をオン及び再びオフにするために必要な時間を意味する。代替的にまたは追加的に、オン/オフは、光学系によっても調整することができ、他方で、ランプは連続的に点灯する。
【0076】
任意に、出力密度の変化は、1%/秒と100000%/秒との間、好ましくは100%/秒と10000%/秒との間である。とりわけ、これらの変化率は、焼結温度の50%から100%までの範囲、好ましくは75%から100%までの範囲、更に好ましくは90%から100%までの範囲で達成可能である。
【0077】
任意に、出力密度は、10秒間未満、好ましくは1秒間未満、好ましくは10ミリ秒間未満で、80%超低減することができ、そして好ましくは完全にオフにすることができる。
【0078】
代替的にまたは追加的に、光の入射によるセラミック原料の加熱、特に部分的な加熱は、(a)少なくとも0.25秒間、特に少なくとも3秒間、特に少なくとも20秒間の期間、及び/または(b)最長で10分間、特に最長で8分間、特に最長で5分間、特に最長で3分間、特に最長で1分間、特に最長で30秒間、特に最長で10秒間、特に最長で5秒間、特に最長で3秒間、特に最長で1秒間の期間、行うことを企図することもできる。
【0079】
この短い期間のために、該方法は、大規模生産にも特に良好に適している。
【0080】
任意に、前記期間は、最長で10分間、特に最長で1分間、特に最長で10秒間である。
【0081】
例えば、一つの実施形態では、前記期間は、0.1秒間と10分間との間、特に1秒間と1分間との間、特に2秒間と30秒間との間である。
【0082】
代替的にまたは追加的に、局所的に発生した転位が、10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に1010/cm以上、特に1011/cm以上の密度を有することを企図することもできる。
【0083】
該方法は、実施が特に簡単であるだけでなく、相応して高い転位密度も可能する。
【0084】
例えば、前記の転位密度は、局所的に発生した転位密度である。他の言い方をすれば:例えば、前記の転位密度は、少なくとも局所的に発生した転位が満たす転位密度である。
【0085】
これは、光の入射及び材料の加熱によって、少なくとも局所的に形成された転位よりも広範囲の転位が生じ、この際、これらのより広範囲の生成した転位は、上記の転位密度の全ては満たさず、従って、局所的に生成された転位には含まれないことを意味することができる。例えば、(対応する転位密度を有する)局所的に生成された転位の周りには、更なる転位が存在し得るが、しかしこれらはより小さい密度を有する。
【0086】
例えば、前記転位密度は、セラミックの1μm、1cmまたは1mの面積に関連する。より広い面積では、例えば10個の代表的な箇所でランダムに局所的に密度を試験することができる。
【0087】
代替的にまたは追加的には、以下も企図され得る:
(i)局所的に生成された転位が、セラミック材料の光によって加温された領域内部に存在する;
(ii)入射光の出力密度が、(a)1W/cmと750W/cmとの間、更に好ましくは5W/cmと150W/cmとの間であり、及び/または(b)10%より良好な、5%より良好な、2%より良好なまたは1%より良好な精度での規定または規定可能な目標値を、5秒間未満、好ましくは2秒間未満、更に好ましくは1秒間未満、更に好ましくは0.5秒間未満、更に好ましくは0.1秒間未満で達成し、そしてその後に安定化される;
及び/または
(iii)出力密度及び/または温度プロファイルを、自由に設計できる。
【0088】
すなわち、その結果、セラミック材料の光によって加熱された領域全体は、転位を有する必要はない。及び/またはそれはまた、局所的に生成された設定条件を満たさない転位を有する領域を有する。転位は任意選択事項に過ぎない。本発明は、とりわけ、転位を含まないセラミック製品にも関する。
【0089】
代替的にまたは追加的に、セラミック原料が、少なくとも一種のセラミック層状複合体、少なくとも一種のセラミックコンポジット材料及び/または少なくとも一種のセラミック粉末を含み、及び/またはフィルム、エンドレステープ、好ましくは直方形または円形のプレス加工品の形で及び/またはソリッドボディとして提供されることも企図され得る。
【0090】
該セラミック原料は、プレス加工品としてまたはソリッドボディとして提供されることで、格別良好にかつ確実に取り扱うことができる。
【0091】
プレス加工品は、例えば、セラミックボディに圧縮された粉末状セラミック材料を含むかまたはそのようなセラミック材料であることができる。
【0092】
本発明の意味でのグリーンボディは、例えばプレスプロセスにより製造される、セラミック粉末からの焼結前の未加工品であることができる。本発明の意味でのグリーンボディは、スリップキャスト法などの流体ベースのプロセスを用いて製造される、焼結前の未加工品であることもできる。本発明の意味でのグリーンボディは、キャストフィルムを用いて製造される、焼結前の未加工品であることもできる。
【0093】
実施形態の一つでは、該セラミック原料はエンドレステープの形で提供され及び/または光源に対して動かされる。それによって、広い表面でも、迅速かつ経済的に、従って迅速かつ低廉に処理、特に焼結することができる。
【0094】
代替的にまたは追加的に、以下も企図され得る:
(i)セラミック原料の厚さは、0.00005mmと15.0mmとの間、特に0.001mmと10.0mmとの間、特に0.1mmから5mmまで、特に0.5mmと4.0mmとの間である;
(ii)セラミック原料は、材料としてSrTiO及び/またはTiOを含みまたはからなり、及び/またはセラミック製品はセラミック膜を含むかまたはセラミック膜である;
及び/または
(iii)セラミック原料は、以下の材料のうちの一種以上を含む:
(a)任意のセラミック材料、とりわけ、結晶構造を有する非金属系無機材料;
(b)ペロブスカイト構造、スピネル構造、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造、塩化ナトリウム構造またはフッ化物構造を有するセラミック;
(c)チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、チタン酸ランタンリチウム、ジルコン酸ランタンリチウム、タンタル酸ランタンリチウム、酸化コバルトリチウム、酸化マンガンリチウム、酸化マンガンニッケルリチウム及び/または酸化アルミニウムをベースとし、各々、任意のドープ用添加剤及び/または焼結添加剤並びに複数のこれらの材料の混合物を含む、セラミック;
(d)任意の金属;
または/及び
(e)銀、リチウム、パラジウム、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、鉄、ニオブ、クロム、バナジウム、イリジウム、タンタル、オスミウム、レニウム、モリブデン、タングステン、マグネシウムまたは複数のこれらの金属からなる合金を含む群からの一種または複数種の材料;
(f)主として結晶構造を有さず、焼結プロセスを用いてその形状を得る任意の非金属無機材料;
(g)シリケート繊維、ホウケイ酸塩ガラス及びケイ化四ホウ素。
【0095】
本発明の方法を用いて、焼結工程を、高温下に、非金属無機材料において行うことができる。これは、結晶構造が主として存在しない場合も可能である。それ故、例えば、セラミック繊維またはガラス繊維は、固形で高度に多孔性のブロックへと焼結することができる。一例は、緻密なカバー層を有する高多孔性の埋設ガラス繊維から構成される複合体であり、これは、宇宙船の大気中への再侵入のための熱保護タイルとして使用される。このような部材は、例えばスペースシャトルから知られており、また、例えばスペースXのスターシップなど、新しい将来の宇宙船にも使用されるであろう。伝熱媒体として照明を使用することで、原料を特に迅速にかつ省エネルギー的に製造することができる。更に、カバー層及びボリュームボディは、異なる方法で加熱することができる。追加的に、製造温度は炉によって限定されず、それ故、より高く選択することができる。それにより、材料の選択を改善することができ、そうして、より高い使用温度が可能になる。
【0096】
好ましい厚さを有するセラミックは、通常の用途に重要である。好ましい厚さを有するセラミックは、単純でかつ非常に入手し易い照明器具を用いて焼結でき、高い転位密度を達成することができる。次に、使用される光によるセラミック材料の加熱は、特に良好にコントロールすることができる。その結果、この方法は、薄いセラミックの製造のために使用されることが好ましい。
【0097】
完成したセラミックの厚さが、セラミック原料の厚さとは異なり得ることは当業者には明らかである。例えば40%の厚さの減少が焼結工程の間に起こる。
【0098】
一つの実施形態では、セラミック原料の厚さは、特に20mm以下、5mm以下、特に2mm以下、特に1.0mm以下、特に0.1mm以下、特に0.02mm以下、特に0.01mm以下、特に0.005mm以下である。任意に、厚さは、0.0002mm以上、特に0.002mm以上、特に0.01mm以上、特に0.05mm以上、特に0.1mm以上、例えば0.2mm以上、0.5mm以上、または1.0mm以上である。例えば、セラミックは、0.001mmと5mmとの間、とりわけ0.01mmと2mmとの間の厚さを有することができる。
【0099】
一つの実施形態では、該セラミック製品は、膜、とりわけ薄膜を含むことができる。この膜、とりわけ薄膜は、特に上記の厚さを有することができる。
【0100】
代替的にまたは追加的に、セラミック原料の少なくとも一つの表面、とりわけ側面、特に主側面が、光によって特に完全にまたは部分的に照明されることも企図できる。
【0101】
完全な照明によって、該セラミック材料は、一回の操作でも完全に加熱することができ、それによって、全体が処理され、とりわけ焼結され及び/または転位が供されることができる。
【0102】
主側面とは、特に、セラミック原料、例えばプレス加工品またはソリッドボディの面積が最も広い側面のことと理解されるべきである。
【0103】
代替的にまたは追加的に、以下も企図され得る:
(i)光を、並行に及び/または順次的に、特に入射する光に対してセラミック材料を相対的に特に連続的に移動させつつ、セラミック原料の複数の領域、とりわけ表面領域上に入射し、それによって、セラミック製品における複数の局所的な箇所に並行にまたは順次的に転位が生成される。
(ii)加熱された領域における照射によって、四角形であるかまたはユーザーによってそれらの形を自由に選択可能に設計できる、規定の幾何学的形状、とりわけ大きな表面積を有する幾何学的形状が形成される;
(iii)照射は、10秒間未満、好ましくは1秒間未満、更に好ましくは0.1秒間未満、好ましくは0.01秒間未満、更に好ましくは1ミリ秒間未満、なお更に好ましくは0.1ミリ秒間未満の遅れをもって90%超減少することができる、及び/または照射をオフにすることによって、10K/秒間超、更に好ましくは50K/秒間超、なお更に好ましくは200K/秒間超の冷却速度が達成される;
及び/または
(iv)温度プロファイルを、局所的にまたは/及び経時的に様々にコントロールすることができる。
【0104】
入射を並行に行う場合は、例えば、複数の光源を使用することができる。それより、大きな表面積を素早く処理、とりわけ加熱することができ、及び/または速い加熱速度でさえ、大きな表面積にわたって及び/もしくはその下にあるボリューム領域にわたって達成することができる。
【0105】
代替的にまたは追加的に、セラミック材料に生じた温度プロファイルが、温度勾配及び/または転位密度パターンが得られるように局所的に変化するように、入射を行うことも企図され得る。そのためには、例えば、出力密度を局所的に変化させることができる。
【0106】
代替的にまたは追加的に、以下も企図され得る:
(i)光が、可視波長範囲または非可視波長範囲、特にUV範囲または可視範囲の波長を有し、とりわけこのような波長のみを有し、
(ii)光が、少なくとも一つの光源、とりわけ少なくとも一つの発光ダイオード、少なくとも一つのXe閃光ランプ、少なくとも一つのレーザー、少なくとも一つのUVランプ、少なくとも一つの中圧UV放射器及び/または少なくとも一つの金属蒸気ランプ、少なくとも一つハロゲンランプ、少なくとも一つの赤外線放射器を含む少なくとも一つの光源によって照射される、
(iii)光が、光学系によってセラミック原料に向けて指向され及び/または、特に加熱されている領域に、収束される、
及び/または
(iv)光が、表面で及び/または表面に隣接するボリューム領域内でセラミック原料を加熱する。
【0107】
光が複数の光源から入射される場合、各々の光源は、特に個々のタイプの光源であることができる。
【0108】
光が外部から入射されそしてセラミック原料の表面に当たることで、表面に隣接するボリューム領域も非常に確実に加熱される。
【0109】
この際、光を、とりわけ平坦なセラミックの場合には、上から、下から及び両側から入射することができる。代替的に、光は、一つの側からだけ入射することができる。この際、光が照射されない側は、オープンであるかまたは覆われていることができるか、または鏡が供されていることができる。水平または垂直な配向での実施、並びに任意の角度が可能である。
【0110】
光源は、特に、一つ以上の発光ダイオード、一つ以上のレーザー(とりわけ200nmから700nmまで、例えば300nmから600nmまで、または400nmから500nmまでの範囲の波長を有するもの)、一つ以上のXe閃光ランプ(とりわけ、準連続式マルチパルス作動での一つ以上のXe閃光ランプ)、一つ以上のUVランプ、とりわけ一つ以上の中圧UV放射器、及び/または一つ以上の金属蒸気ランプ、あるいは一つ以上のハロゲンランプ、また赤外放射器を有する。
【0111】
本発明は、光源としてレーザーを用いて実現できる。例えば、ニュアンスを有するパターンを形成できるように、レーザーを、他の光源に対し追加的に及び/または同時に使用することもできる。
【0112】
しかしながら、レーザーの利点の一つは、これは光を強く集束できる点にあり、これにより、レーザー光源が典型的には最適化される。しかし、これは、同時に処理できる面積を小さくする。それ故、レーザー光線は、本発明において使用するためには、特に、先ず広幅化するのがよい。この際、特にダイオードレーザー、特に複数のダイオードからのダイオードレーザー、とりわけダイオードスタックが、均一な強度分布で使用される。
【0113】
こうして、本発明を用いることにより、広い表面領域を同時にかつほぼ均質に照射することができる。それによって、広い表面を迅速にかつ経済的に処理することができる。とりわけ、こうして、エンドレステープを迅速にかつ有利に処理することができる。
【0114】
上記課題は、第二の観点による本発明により、
装置、とりわけ(i)(転位を含むかまたは含まない)セラミックの製造のための、(ii)本発明の第一の観点による方法を実施するための、及び/または(iii)本発明の第一の観点による方法を遂行するように設計されている装置であって、
-セラミック原料を保持するための少なくとの一つの保持部、及び
-前記保持部に保持されたまたは保持可能なセラミック原料に対し光を入射するための少なくとも一つの光源、
を含み、
この際、特に、前記装置は、前記セラミック原料を少なくとも部分的に加熱しそしてそれによってセラミック製品が生成されるように、光を前記セラミック原料に対し入射するように設計されており、及び前記保持部は絶縁材を含む、
前記装置が提供されることによって解消される。
【0115】
前記絶縁材は、必要なプロセス時間での照明に対してでさえ十分に安定しているべきである。
【0116】
前記絶縁材の熱伝導率は、1400℃で、例えば400W/(mK)未満、高くとも50W/(mK)、高くとも20W/(mK)、高くとも10W/(mK)、高くとも5W/(mK)、高くとも2W/(mK)、高くとも1W/(mK)、高くとも0.5W/(mK)、または高くとも0.25W/(mK)であることができる。絶縁材の熱伝導率は、例えば、少なくとも0.01W/(mK)、少なくとも0.05W/(mK)、少なくとも0.1W/(mK)、または少なくとも0.2W/(mK)であることができる。
【0117】
絶縁材の密度は、例えば、0.05から0.25g/cmまでの範囲、とりわけ0.10から0.15g/cmまでの範囲、例えば約0.12g/cmであることができる。
【0118】
絶縁材は、1400℃の温度において、セラミック原料及び/またはセラミック製品からの好ましくは最大でも50W/cm、最大でも15W/cm、または最大でも5W/cmの熱流を可能にする。
【0119】
無重力状態での実施の場合は、土台、及びそれ故、絶縁材は必要ない。
【0120】
絶縁材としては、例えば、セラミックウールまたは膨張グラファイト(英語:「expandable graphite」)を使用することができる。膨張グラファイトが特に好ましい、というのも、これは、セラミックウールほどにはセラミックと反応しないからである。
【0121】
有利な絶縁材の一つは、貴金属を含むかまたは貴金属からなることもできる。特に高融点貴金属が好ましい。絶縁材は、例えば、イリジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスニウム、レニウム、タングステン、タンタル、モリブデン、ハフニウム及びこれらの二種以上の合金からなる群から選択される、材料を含むかまたはこのような材料からなる。イリジウム及び白金並びにこれらの合金が特に好ましい。就中特に好ましいものはイリジウムである。絶縁材は、とりわけ、ウール、ネット及び/またはフィルムの形で存在することができる。
【0122】
絶縁材は、好ましくは、一種以上の貴金属、膨張グラファイト、セラミックウール、とりわけ酸化アルミニウム、及びこれらの二種以上の組み合わせからなる群から選択される材料を含む。
【0123】
絶縁材は、0.25から5.0cmまで、0.5から3.0cmまで、0.75から2.5cmまで、または1.0から2.0cmまでの範囲の厚さを有する。絶縁材の厚さは、例えば、少なくとも0.25cm、少なくとも0.5cm、少なくとも0.75cm、または少なくとも1.0cmであることができる。絶縁材の厚さは、例えば、最大でも5.0cm、最大でも3.0cm、最大でも2.5cm、または最大でも2.0cmであることができる。
【0124】
絶縁材は、ガス膜の形でも実現できる。とりわけ、絶縁はガス膜を含むことができるかまたはガス膜からなることができる。例えば、ガスは金属板中の穴を通して流れて、そうしてガス膜が形成され、その上に、セラミックが浮遊する。
【0125】
絶縁材は、特に均質な温度分布を保証し、これにも再び特に均質な材料特性が伴う。更に、絶縁材は、比較的低い出力密度での該方法の実施を可能にする、というのも、意図しないエネルギー損失を回避できるかまたは少なくとも劇的に減少できるからである。よりによって膨張グラファイトが特に好適であることは驚くべきことである。炉内での慣用の焼結のためには膨張グラファイトは適していない、というのも、これは完全に燃焼してしまうであろうからである。しかしながら、膨張グラファイトは、本発明の短い焼結時間及び比較的低い出力密度には優れて耐える。絶縁性土台としては、その上にセラミックが浮遊するガス膜も使用できる。土台を通して排出される熱量は、温度が変化する時は動的な量である。目的温度が何秒間も保持される場合には、400W/mKの熱伝導率を有する1cm厚の銅土台は、約6000W/cmを放出することができる。それに対して、0.4W/mKの熱伝導率を有するセラミックウールは、6.4W/cmしか放出できなかった。絶縁材を通る熱流は、照射出力密度のほんの一部であり、他方で、金属製土台は、数倍の望ましくない熱流を可能にする。
【0126】
特に比較的長い露光の場合のエネルギー効率を更に改善するためには、焼結の間のセラミックから発せされる熱放射は、ミラーシステムを用いてセラミック上に反射させることができる。この目的のためには、例えば、放射状にまたは楕円状に形成された及び/もしくは金でコーティングされた鏡を使用することができる。
【0127】
本発明による装置を用いることで、高い転位密度を有するセラミックを製造することが可能である。それにより、とりわけ、本発明の第一の観点に従う方法を実施することによって、転位を含むセラミックを製造することが可能である。
【0128】
それ故、本発明の第一の観点に関しても先に記載したのと同じ利点及び同じ使用分野が、装置についても該当する。
【0129】
該装置は、一つの実施形態では、複数の光源を含むことができる。装置が複数の光源を含む場合、各々の光源は、特に個々のタイプの光源であることができる。
【0130】
例えば、複数の光源を用いて、(例えばプレス加工品の形で)提供され及び保持部に保持されたまたは保持可能なセラミック原料の本発明の第一の観点に関連して記載された照明を実施することができる。代替的にまたは追加的に、該装置は光学系も含むことができる。それにより、材料の照射を調節することができる。該光学系は、レンズ、鏡及び/または類似品を含むことができる。
【0131】
該装置は、代替的にまたは追加的に、コントロール手段も含むことができ、これは、加熱の加熱速度、入射の期間、及び/または照明範囲を確定すること、及び光の入射を、とりわけ加熱速度、期間及び/または照明範囲に関して相応してコントロールすること、とりわけ調整及び/または制御することを可能にするものである。
【0132】
特に好ましい実施形態の一つでは、該方法は、特にフレキシブルな装置によって実現される。例えば靴箱に匹敵する小さなサイズ、及び当該装置の通常のソケット接続を用いた駆動可能性(ドイツでは230V、16A)は、例えばテーブル上での、歯科技工所での、工芸品工房での、または空気に敏感な材料のために実験室で使用されるグローブボックスでの、費用効果の高い使用を可能にする。
【0133】
使用される光から環境を保護するハウジング内において、発光ダイオードのスタックが中心構成部材として設置される。これらは、交換可能な絶縁材上に設置されたセラミック製品を照明する。これは簡単に取り出すことができ、この簡単な取り出しは引き出し可能な引き出しによって可能になる。
【0134】
発光ダイオードは、好ましくはUV光、好ましくは375nmまたは450nmの波長を有するUV光を発する。この際、発光ダイオードは、水冷されたヒートシンクに接続されており、ここで、発せられた光は、出力密度を改善するために、マイクロレンズ及びレンズで集束できる。それらは、好ましくはセラミックの上方に配置されており、そして代替的にまたは追加的に、他の角度で取り付けることができる。
【0135】
この際、温度は、適切な高温計で読み出され、ここで、好ましくは、高温計のデータと出力密度との間にはアクティブな制御ループが存在する。
【0136】
発光ダイオードの電力供給系、制御系及び冷却系は、同じハウジング内に収納されていることができるか、または代替的に別個のボックス内に設置することができ、この場合、ケーブル及びホースによる接続が存在する。
【0137】
電力供給系のピーク負荷は、適切なエネルギーバッファによって大きく減少させることができる。80cmの表面上での50W/cmの出力密度のためには、少なくとも4kWの出力が必要である。これは、通常のソケットの最大出力を超える。エネルギーバッファは、例えば8kWを30秒間にわたって提供でき、次いで、明らかにより少ない出力で数分間で再び充電されることができる。この場合、例えば、通常のオートスターターバッテリーを使用することができ、これは、それが要充電状態になるまで、複数回の照明を可能にする。
【0138】
好ましくは、処理空間は、土台を他の装置により交換できるように設計されている。例えば、絶縁材を有する土台を、気密なチャンバ内で使用することができる。これは、上面で石英ガラス窓を通して光を入射させることができるが、例えばガス(例えば、空気、酸素、アルゴン、窒素またはフォーミングガス)を含む連続的なガス流を用いて、雰囲気を的確に制御できる。石英ガラス板はまた、装置を汚染から保護する。
【0139】
上記課題は、第三の観点に従う本発明により、(転位を含むかまたは含まない)セラミック製品、とりわけ、本発明の第一の観点に従う方法を用いて及び/または本発明の第二の観点に従う装置を用いて製造された及び/または製造可能なセラミック製品、とりわけ少なくとも部分的に焼結された微細構造を有するこのようなセラミック製品が提案されることによって、達成される。
【0140】
該セラミック製品は、とりわけ、焼結された微細構造を含むことができる。該セラミック製品は、例えば、部分的に焼結された微細構造または完全に焼結された微細構造を含むことができる。
【0141】
該セラミック製品は、例えば、10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に1010/cm以上、特に1011/cm以上の密度で、少なくとも局所的な転位を含むことができる。
【0142】
このような高い転位密度を有するセラミック製品は、主として本発明による方法を用いて初めて製造することができる。局所的転位密度は、特に10/cm以上、とりわけ1010/cm以上である。
【0143】
本発明によるセラミック製品は、ナノ孔を含むことができる。これは、とりわけセラミック製品がTiO、BaTiO、YSZ(英語:“Yttria-stabilized zirconia”(イットリウム安定化ジルコニア))またはLi0.3La0.7TiOを材料として含む場合に、該当する。
【0144】
好ましくは、該セラミック製品は、とりわけ試料厚さが250nmである場合に、100μmの表面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真で、少なくとも2個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも4個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも8個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも10個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも12個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも15個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも20個のナノ孔が存在するような多孔度を有する。ナノ孔の数は、例えば、100μmの表面上で及びとりわけ250nmの試料厚において、最大でも150個のナノ孔、最大でも100個のナノ孔、最大でも75個のナノ孔、最大でも50個のナノ孔、最大でも40個のナノ孔、または最大でも30個のナノ孔であることができる。ナノ孔の数は、100μmの表面上で及びとりわけ250nmの試料厚において、好ましくは2個から150個までのナノ孔、4個から150個までのナノ孔、8個から100個までのナノ孔、10個から75個までのナノ孔、12個から50個までのナノ孔、15個から40個のナノ孔までの、または20個から30個のナノ孔までの範囲である。
【0145】
TEM写真では、二つのタイプのナノ孔を区別することができる。試料厚全体にわたって存在する孔がある。これらの孔は白く見える。他の孔は、試料厚全体にわたっては存在せず、それ故、暗白色(less white)乃至淡灰色に見える。ナノ孔の数の本発明による評価のためには、両タイプのナノ孔が計数に入れられる。
【0146】
観測されたナノ孔の数は、試料厚に依存する。とりわけ、可視のナノ孔の数は試料厚と共に多くなる。しかし、事実上ゼロの試料厚においても、孔数それ自体はゼロではない。最小限の薄い層も、依然として最小数の孔を示す。試料厚とは無関係に、ナノ孔の数は、100μmの表面上で、好ましくは2個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも4個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも8個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも10個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも12個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも15個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも20個のナノ孔である。250nm試料厚あたりのナノ孔の数は、試料厚とは無関係に、100μmの表面上で、例えば最大でも150個のナノ孔、最大では100個のナノ孔、最大でも75個のナノ孔、最大でも50個のナノ孔、最大でも40個のナノ孔、または最大でも30個のナノ孔であることができる。
【0147】
試料厚全体にわたって存在する孔の観察される数は、試料厚が厚くなるほど減少する。この数がゼロでありかつ同時に、試料厚全体にわたって存在しない多くの孔が観察できる場合には、試料厚は、平均孔径よりも厚いと仮定することができる。これとは逆に、孔の約半分が試料厚全体にわたって存在する場合には、試料厚はおおよそ平均孔径に相当すると結論することができる。更に、厚さ全体にわたって存在しない観察される孔の数は、試料厚と共に連続的に増加する。これとは逆に、試料厚全体にわたって存在する孔が主として観察される場合またはこのような孔のみが観察される場合、試料厚は、平均孔径よりも明らかに薄いと結論することができる。本発明によれば、ナノ孔の数は、250nmの試料厚をベースに記載される。試料厚の表示は、セラミック製品がその厚さを有することを意味するものではない。そうではなく、「試料厚」という記載は、試験した試料の厚さを指す。試料厚は、セラミック製品の厚さよりも明らかに薄くすることができる。試料は、とりわけ、集束イオンビームで薄片を切り出すか、または機械的研磨とその後のアルゴンイオンによる薄膜化によって、該セラミック製品から得ることができる。
【0148】
ナノ孔数の定量化のためには、ナノ孔の数は、それぞれサイズが少なくとも50μmの5つの画像部分で決定される。100μmあたりの試料のナノ孔数は、前記の5つの画像部分の対応する値の平均値として決定される。一つの画像部分における100μmあたりのナノ孔数の決定のためには、この画像部分が、100μmのサイズを有している必要はない。該画像部分は、100μm超のサイズまたは100μm未満のサイズも有することができる。100μmあたりのナノ孔数は、容易に計算により外挿することができる。例えばサイズが50μmの一つの画像部分において8個のナノ孔が認められる場合、この画像部分には100μmあたりでは16個のナノ孔があることになる。例えばサイズが200μmの一つの画像部分において12個のナノ孔が認められる場合、この画像部分には100μmあたりでは6個のナノ孔があることになる。
【0149】
ナノ孔は、より大きな孔に平行に存在することができる。しかし、より大きな孔を有する多孔性は望ましくなく、好ましくは最小化される。これに対して、ナノ孔は驚くべき利点を供する。
【0150】
ナノ孔には、様々な利点、例えばとりわけTiOの場合に、電気伝導性の改善、及び/またはとりわけYSZの場合に、イオン伝導性の改善と結びつく。イオンまたは電気伝導性は、同じ組成を有するが、但しナノ多孔性を持たないセラミックと比べて、例えば10%以上高められ得る。
【0151】
強誘電体製品、例えばBaTiOでは、分極及び歪みに関しての古典的ヒステリシス曲線の変化を観察することができる。外部電場を印加することによって、強誘電体製品において電荷の中心が整列する。セラミック製品の自発分極及び歪みをもたらす同一配向の領域、いわゆるドメインが生じ、これは次いで技術的に利用可能である。自発分極は、ソーヤータワー(Sawyer and Tower)測定回路を用いて測定され、歪みは、光学式変位センサーを用いて同時に測定される。
【0152】
電場を更に高めると、飽和分極に達する。これは、電界強度を弱めると、電界強度がゼロの時に残留分極にまで低下し、そして逆向きの電場を印加すると反転可能であり、その結果、強誘電体製品の特性を本質的に決定するヒステリシスループが生じる。本発明によるセラミック製品は、好ましくは、同じ粉末の従来技術に従い焼結された試料と比べてより高い飽和分極を示す。本発明によるセラミック製品の飽和分極は、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の飽和分極を、好ましくは少なくとも10%、更に好ましくは少なくとも20%、更に好ましくは少なくとも30%、更に好ましくは少なくとも40%上回る。本発明によるセラミック製品の飽和分極は、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の飽和分極を、例えば最大で100%、最大で80%、最大で70%または最大で60%上回る。本発明によるセラミック製品の飽和分極は、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の飽和分極を、例えば10%から100%、20%から80%、30%から70%、または40%から60%上回ることができる。
【0153】
セラミックBaTiOについての「従来技術に従う焼結」とは、本発明では、1分間あたりで10ケルビンの加熱及び冷却速度を用いた、1220℃で5時間の酸素中での焼結のことと理解される。「従来技術に従う焼結」とは、本発明では、より一般的には、1分間あたりで1から200ケルビンまでの範囲の加熱及び冷却速度を用いた、慣用の炉中での90%超の密度までの焼結のことと理解される。比較は、好ましくは、比較用セラミックの粒度が2倍超異ならない場合に好適である。
【0154】
本発明によるセラミック製品は、とりわけ、12μC/cm超の飽和分極を有する。更に好ましくは、本発明によるセラミック製品の飽和分極は、少なくとも14μC/cm、更に好ましくは少なくとも15μC/cm、更に好ましくは少なくとも16μC/cm、更に好ましくは少なくとも17μC/cm、更に好ましくは少なくとも17.5μC/cmである。飽和分極は、例えば最大でも50μC/cm、最大でも40μC/cm、最大でも30μC/cm、最大でも25μC/cm、最大でも20μC/cm、または最大でも18.5μC/cmであることができる。飽和分極は、好ましくは>12から50μC/cmまで、14から40μC/cmまで、15から30μC/cmまで、16から25μC/cmまで、17から20μC/cmまで、または17.5から18.5μC/cmまでの範囲である。飽和分極に関してこの段落に記載した値は、とりわけ、セラミック製品がBaTiOを含むかまたはからなる場合に該当する。
【0155】
歪みを比較すると、本発明によるセラミック製品が、比較用試料と比べてかなりより狭いヒステリシス曲線を示す点が目立つ。これは、本質的により小さな保磁力(歪みが最小)のために、参照試料よりも切り替えがより簡単であり、それ故、例えばアクチュエータの用途により関心が持たれる。
【0156】
本発明によるセラミック製品の保磁力は、好ましくは、従来技術に従い焼結された同じ組成のセラミック製品の保磁力の最大でも50%、更に好ましくは最大で40%、更に好ましくは最大で30%、更に好ましくは最大で25%である。本発明によるセラミック製品の保磁力は、例えば、従来技術に従い焼結された同じ組成のセラミック製品の保磁力の少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%または少なくとも15%であることができる。本発明によるセラミック製品の保磁力は、例えば、従来技術に従い焼結された同じ組成のセラミック製品の保磁力の2%から50%まで、5%から40%まで、10%から30%まで、または15%から25%までであることができる。
【0157】
保磁力は、本発明によるセラミック製品では、好ましくは0.005から<0.19kV/mmまで、0.01から0.15kV/mmまで、0.02から0.10kV/mmまで、または0.03から0.05kV/mmまでの範囲である。保磁力は、好ましくは0.19kV/mm未満、更に好ましくは最大でも0.15kV/mm、更に好ましくは最大でも0.10kV/mm、更に好ましくは最大でも0.05kV/mmである。保磁力は、例えば、少なくとも0.005kV/mm、少なくとも0.01kV/mm、少なくとも0.02kV/mm、または少なくとも0.03kV/mmであることができる。保磁力に関してこの段落に記載した値は、とりわけ、セラミック製品がBaTiOを含むかまたはからなる場合に該当する。
【0158】
本方法によって、生じるドメイン構造に対して顕著な影響を持つ欠陥を導入することができる。これは、図17及び18のドメイン構造の変化から明らかである。ドメイン壁密度は、例えば800℃でのエージングステップの前は低い一方で、その後は目に見えて高くなる。変化は、強誘電体製品の特性に多くの影響を及ぼす。800℃でのエージング及びそれに伴うドメイン構造の微細化によって、セラミック製品の歪みを増大させることができる。これは、エージングされた試料を、図19の元の試料と比較することによって明らかである。そこに示される歪みの推移は、例9に記載のように測定した。唯一の例外は周波数であり、ここでは20Hzである。
【0159】
本発明によるセラミック製品の歪みは、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の歪みを、好ましくは少なくとも15%、更に好ましくは少なくとも25%、更に好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも70%上回る。本発明によるセラミック製品の歪みは、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の歪みを、例えば最大で150%、最大で125%、最大で100%または最大で90%上回ることができる。本発明によるセラミック製品の飽和分極は、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の飽和分極を、例えば15%から150%、25%から125%、50%から100%、または70%から90%上回ることができる。
【0160】
セラミック製品の歪みは、好ましくは>0.07%から0.20%まで、0.075%から0.175%まで、0.10%から0.15%まで、0.11%から0.14%まで、または0.12%から0.13%までの範囲である。セラミック製品の歪みは、好ましくは0.07%超、更に好ましくは少なくとも0.075%、更に好ましくは少なくとも0.10%、更に好ましくは少なくとも0.11%、更に好ましくは少なくとも0.12%である。セラミック製品の歪みは、例えば最大でも0.20%、最大でも0.175%、最大でも0.15%、最大でも0.14%、または最大でも0.13%であることができる。
【0161】
とりわけBaTiOでは、二つのタイプのドメイン、すなわち90°ドメイン及び180°ドメインが生じ得る。本発明によるセラミック製品は、好ましくは高いドメイン壁密度を有する。それによって、多くの強誘電体及び誘電体特性を調整できる。高いドメイン壁密度は、例えば、歪みの増加に寄与し得る。
【0162】
それ故、本発明の第一の観点に関しても先に記載したのと同じ利点及び同じ使用分野が、該セラミック製品についても該当する。
【0163】
例えば、該セラミック製品は、膜、とりわけ薄膜の形で存在することができる。機能性セラミックは、例えば燃料電池、電解セル、センサー、固体バッテリー、ガス分離膜、アクチュエータまたはキャパシタ中で薄膜として使用される。とりわけ、これらの薄膜は、多層として積層されていることができ、また金属電極などのレイヤーも含むことができる。
【0164】
本発明による製品は、特に、燃料電池、電解セル、センサー及び/または固体バッテリー中で使用することができる。
【0165】
代替的にまたは追加的に、以下も企図され得る:
(i)セラミック製品の厚さは、0.00005mmと20mmとの間であり、この際、セラミック製品はセラミック膜を含むかもしくはセラミック膜であり、及び/またはセラミック製品は材料としてSrTiO及び/またはTiOを含むかまたはからなる;
及び/または
(ii)セラミック製品は、以下の材料のうちの一種以上を含む:
(a)任意のセラミック材料、とりわけ、結晶構造を有する非金属系無機材料;
(b)ペロブスカイト構造、スピネル構造、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造、塩化ナトリウム構造またはフッ化物構造を有するセラミック;
(c)チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、チタン酸ランタンリチウム、ジルコン酸ランタンリチウム、タンタル酸ランタンリチウム、酸化コバルトリチウム、酸化マンガンリチウム、酸化マンガンニッケルリチウム及び/または酸化アルミニウムをベースとし、各々、任意のドープ用添加剤及び/または焼結添加剤並びに複数のこれらの材料の混合物を含む、セラミック;
(d)任意の金属;
または/及び
(e)次のものを含む群からの一種以上の材料:銀、リチウム、パラジウム、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、鉄、ニオブ、クロム、バナジウム、イリジウム、タンタル、オスミウム、レニウム、モリブデン、タングステン、マグネシウムまたは複数のこれらの金属からなる合金;
(f)主として結晶構造を有さず、焼結プロセスを用いてその形状を得る任意の非金属系無機材料;
(g)シリケート繊維、ホウケイ酸塩ガラス及びケイ化ホウ素。
【0166】
セラミック材料は、TiO、BaTiO、YSZ、Li0.3La0.7TiO及びこれらの二種以上の組み合わせからなる群から選択される材料を含むかまたはからなることができる。
【0167】
好ましい厚さを有するセラミックは、通常の用途に重要である。
【0168】
一つの実施形態では、セラミック原料の厚さは、特に20mm以下、特に10mm以下、特に5mm以下、特に2mm以下、特に1mm以下、特に0.5mm以下、特に0.05mm以下である。任意に、厚さは、0.001mm以上、特に0.005mm以上、特に0.01mm以上、特に0.05mm以上、特に0.1mm以上である。例えば、セラミックは、0.001mmと20mmとの間、とりわけ0.005mmと15mmとの間、0.1から10.0mmまで、0.2から8.0mmまで、0.5から6.0mmまで、または1.0から5.0mmまで、例えば2.0から4.0mmまでの厚さを有することができる。
【0169】
一つの実施形態では、該セラミック製品は、膜、とりわけ薄膜を含むことができる。この膜、とりわけ薄膜は、特に上記の厚さを有することができる。
【0170】
セラミック製品は、とりわけ、粒度勾配、テクスチャ、高い耐熱性、格別均質な材料特性、及び/またはナノ多孔性を有することができる。
【0171】
粒度は、例えば、一つの方向で、50μm未満では3倍超、好ましくは20μm未満で5超、好ましくは10μm未満では15倍超、変化でき、そして同時に、直交方向では、二倍未満変化することができる。好ましくは、粒度は、とりわけ図4に示されるように、グラジエント状に、またはとりわけ図7に示されるように、段階的に変化することができる。好ましくは、粒度の差は100倍を超えない。
【0172】
多孔度は、例えば、5μm未満が5%未満、とりわけ開口多孔度がないものから、15%強、とりわけ開口した浸透性多孔度まで移り変わることができる。
【0173】
テクスチャは、粒子の15%超が、主軸から15°未満の偏差で、好ましくは粒子の20%超が主軸から10°未満の偏差で整列されると有意であり得る。
【0174】
本発明のセラミック製品は、層状複合体、とりわけ複数のレイヤーを有する層状複合体であることもできる。
【0175】
本発明は、本発明のセラミック製品を含むまたはからなる層状複合体にも関する。
【0176】
本発明は、本発明のセラミック製品を含むかまたはからなるキャパシタにも関する。
【0177】
本発明は、本発明のセラミック製品を含むかまたはからなる固体バッテリーにも関する。
【0178】
本発明は、キャパシタもしくは固体バッテリーとしてまたはキャパシタもしくは固体バッテリー中での、本発明のセラミック製品の使用にも関する。
【0179】
試験
本発明の方法は、任意に、非常に高い密度の転位を可能にする。類別のために、各々記載の結果を有する以下の試験が本発明者らによって行われた:(1.)セラミックカップの単純な焼結は、10/cmまでの転位密度をもたらした。(2.)機械的変形は、10/cmまでの転位密度をもたらした。(3.)閃光焼結は、1010/cmまでの転位密度をもたらした。(4.)提案される該方法は、任意に、1010/cm以上のオーダーの転位密度さえも達成することができる。転位密度は、温度プロファイルの最適化によって改善することができる。
【0180】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明の好ましい実施形態が概略的な図面に基づいて説明されている以下の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0181】
図1】側面から見た場合の、本発明の第二の観点による装置。
図2図1の装置に使用されるセラミック材料。
図3】透視図で示した本発明の第二の観点による更に別の装置。
図4】粒度勾配を有するセラミック製品の光学顕微鏡写真。
図5】テクスチャ及び急な密度勾配を有するセラミック製品の電子顕微鏡写真。
図6】テクスチャ及び急な密度勾配を有するセラミック製品の電子顕微鏡写真。
図7】テクスチャ及び急な密度勾配を有するセラミック製品の電子顕微鏡写真。
図8】テクスチャの定量化の図示。
図9】二つのセラミック原料から製造されたセラミック製品の電子顕微鏡写真。
図10】本発明の方法を用いて製造された多層型キャパシタの電子顕微鏡写真。
図11】本発明の方法を用いたセラミック製品の製造の温度-時間曲線。
図12】本発明の方法を用いたセラミック製品の製造の温度-時間曲線。
図13】透視図で示した本発明の第二の観点による更に別の装置。
図14】ナノ孔を有するセラミック製品の透過型電子顕微鏡画像。
図15】セラミック製品43及び参照試料45の電場依存性分極曲線。
図16】セラミック製品47及び参照試料49の電場依存性歪み曲線。
図17】エージング前の、ピエゾモードでのセラミック製品の原子間力顕微鏡画像。
図18】エージング後の、ピエゾモードでのセラミック製品の原子間力顕微鏡画像。
図19】エージングの前(51)及び後(55)のセラミック製品の並びに参照試料53の電場依存性歪み曲線。
図20】本発明によるBaTiOセラミックの透過型電子顕微鏡写真。
【実施例
【0182】
例1:圧縮されたSrTiO粉末からなるグリーンボディ
99.99%純度のSrTiOでできた円板形グリーンボディを、1mmの厚さ及び6.4mmの直径で、700MPaの圧力下に圧縮する。粉末の初期粒度は約400nmである。次いで、このグリーンボディを、一つの側から、好ましくは上から照射する。下側では、前記グリーンボディは、非常に多孔性の酸化アルミニウムウールの薄い(例えば1cm~2cm厚)の層上にまたはその代わりに、約0.12g/cmの密度を有する膨張グラファイトでできた1cmもしくは2cm厚の層上にある。
【0183】
前記の照射により、前記グリーンボディは、100K/秒から500K/秒までの加熱速度で、1875℃の焼結温度に、またはそれ未満でかつ付近の温度に、またはそれ超の温度に加熱し、そしてその温度で25秒間保持する。この際、好ましくは、温度は、前記焼結温度を15℃未満下回るかまたは上回る。更に、前記焼結温度は、加熱後に、好ましくは6秒間未満で安定化される。その後、照明を止め、そしてグリーンボディを再び室温に冷却する。この際、この冷却は、前記焼結温度から1000℃未満まで、3秒間未満で行われる。照明のためには、好ましくは、450nmの波長を有するダイオードレーザースタック、Xe閃光ランプ、ハロゲンランプ、UV中圧ランプまたは赤外ランプが使用される。前記焼結温度では、出力密度は、450nmの波長を有するダイオードレーザースタックを用いた場合には好ましくは170W/cmである。
【0184】
転位密度は、好ましくは、暗視野透過型電子顕微鏡または電子チャネリングコントラストイメージング(ECCI)を用いて検査することができる。
【0185】
例2:
材料としてのBaTiOでできたフィルムを、フィルムキャスティングによって製造する。この際、平均粒度は、250nm以下である。先ず、バインダーを焼尽する。焼結温度より明らかに低い温度を要し及び、多くの場合に、分間(m)から時間(h)までの範囲の期間を要する温度プロファイルは、対応するバインダーについて従来技術から既知である。このステップは、慣用の炉の代わりに、任意に、照射を用いて実施することもでき、この際、出力密度は、低く、例えば80%低く選択される。バインダーが焼尽されると直ぐに、フィルムは、照明により焼結温度に加熱される。
【0186】
照明の間、前記フィルムは、例えば、反射性表面の上で、薄いガス膜上に浮遊することができるか、またはその代わりに、1cm厚の膨張グラファイト層上に存在でき、そして上から照明することができる。代替的に、フィルムを垂直に吊り下げ、それを二つの側から照射することができ、この際、出力密度は両側から印加する。この際、横方向の測定は、光源のサイズによってのみ制限される。とりわけ、フィルムを光源に対して、または光源をフィルムに対して移動させることができる。それによって、温度プロファイルまたは出力密度は、追加的に、移動プロファイルによって調節することができる。好ましくは、フィルム及び光源の相対的移動は、連続テープの処理を可能にする。
【0187】
フィルムは、400K/秒の照射によって、1150℃から1550℃までの焼結温度に、またはそれ未満でかつ付近の温度に、またはそれ超の温度に加熱され、そしてこの温度に30秒間保持する。この際、好ましくは、温度は、前記焼結温度を15℃未満下回るかまたは上回る。更に、前記焼結温度は、加熱後は、好ましくは6秒間未満、例えば2秒間未満で安定化される。その後、照明を止め、そしてグリーンボディを再び室温に冷却する。この際、この冷却は、前記焼結温度から900℃未満まで、3秒間未満で行われる。照明のためには、好ましくは、450nmの波長を有するダイオードレーザースタック、Xe閃光ランプ、UV中圧ランプ、ハロゲンランプ、または赤外ランプが使用される。前記焼結温度では、出力密度は、450nmの波長を有するダイオードレーザースタックを用いた場合には好ましくは約92W/cmである。
【0188】
例3:
土台に対する横方向に異なる熱接触によって、粒度勾配を生成した。この際、照射は均一であった。代替的に、土台に対する熱接触も均一であり得、そして放射線は変化し得るか、または熱接触も、照射も変化し得る。
【0189】
99.99%純度のTiOでできた約150μmの厚さを有するグリーンボディを圧縮した。これを、銅土台上に配置し、この際、接触は、一つまたは複数の小さな点でのみ存在した。それによって、これらの領域が冷却され、この際、浮遊している領域では、明らかにより少ない熱放出が起こった。これらの領域では、粒度は、より低温の領域に向かう勾配を伴ってかなりより大きい。照明は、450nmの波長のダイオードレーザースタックを用いて、200W/cmで10秒間、行った。
【0190】
図4は、粒度勾配を持つ相応して生成されたセラミック製品を示す。
【0191】
例4:
セラミックの表面上及び内部の異なる温度プロファイルによって、粒度勾配及びテクスチャを生成した。99.99%純度のTiOでできた約150μmの厚さを有するグリーンボディを圧縮した。この異なる温度プロファイルは、20ミリ秒間の期間の4350W/cmの範囲の第一の出力密度、及びその後の、10秒間の期間の100W/cmの範囲の第二の出力密度を有する経時的出力密度プロファイルによって生成された。第一の照明ステップでは、温度は、ボリュームではなく表面だけに達するために、絶縁は必要なかった。第二の照明ステップでは、約0.12g/cmの密度を有する膨張グラファイトでできた約2cm厚の層を絶縁性土台として使用した。
【0192】
この例では、図5、6及び7に示すように、約20μmの厚さ及び約15μmの粒度を有する表面上のほぼ完全に緻密な層、並びにその下にある、明らかなにより小さな粒子及び非常に大きな多孔度を有するより厚手の層が生じる。この際、第一の処理ステップ後の破断面を示す図7では、粒子の大部分が、層の全厚にわたって延在することがわかる。更に、この層中の粒子は、テクスチャと称される主配向を有する。このテクスチャは、電子線後方散乱回折法(英語:「electron backscatter diffraction」)によって5000個以上の粒子について決定した。これは、図8において示されそして定量化されている。代替的に、定量化は、特定の配向範囲の確率によって表すことができ、ここでは、これには、100軸からの15°未満の偏差を有する配向について16%の確率が決定された。
【0193】
更に、第二の照明ステップによって、前記の緻密な層の下に、多孔性の層が、残りの全厚にわたって生じた。これは、好ましくは、ガス透過性である開口の多孔度を特色とし、この層は機械的完全性を有する。
【0194】
格別な特徴の一つは、緻密な層と多孔性層とのこの組み合わせが、事前は完全に均質なグリーンボディから製造できる点である。更に、短くかつ強力な照明ステップ(ここでは第一のステップ)を、より長期間でかつより強度の低い照明ステップの間に行うことができ、それによって、全体的な処理は、一度に、例えば10秒間以下で行うことができる。
【0195】
例5:
本発明の方法を用いて、二つの層で一緒に粉末として圧縮された二つのセラミック原料、すなわちTiO及びBaTiOを、一緒に焼結してセラミック製品とした。鮮明な境界面が得られた。図9は、相応して生成されたセラミック製品を示す。
【0196】
例6:
本発明の方法を用いて多層型キャパシタを製造した(図10参照)。この多層型キャパシタは、セラミックBaTiOと白金電極の薄いレイヤーとからなる。BaTiOからなるレイヤーは、フィルムキャスティングによって製造し、ここで、白金電極はスクリーン印刷(英語:「screen printing」)によって製造した。フィルムキャスティングに必要なバインダー材料は、慣用の炉中で中程度の温度で焼尽した。次いで、前記未加工部材を、膨張グラファイトからなる約2cm厚の絶縁材上に載せ、そして上から照明した。出力密度は、5秒間は47W/cmであり、その後、20秒間は75W/cmであり、その後、更に10秒間は47W/cmであった。
【0197】
図10は、部材厚に沿う研磨された横断面を示す。
【0198】
例7:
例7は、本発明の方法を用いたセラミック製品の製造の様々な温度-時間推移である。
【0199】
図11には、入射光の吸収の温度依存性を示す。高温度では、より長い波長がより強く吸収される。温度の経時的推移は、先ず約800℃の温度において温度プラトーが形成し始め、また温度上昇の顕著な遅延が伴うことを示す。800℃を超える転移点に達すると直ぐに、ほぼ1600℃までの大幅な温度上昇が起こった。転移点未満の温度では、材料による光の吸収は比較的少ない。800℃を超えると、入射光が明らかにより強く吸収される。この例は、リチウムイオン伝導性Li6.4LaZr1.4Ta0.612セラミックでできた1mm厚の圧縮された粉末について行った。
【0200】
これに対して、図12は、入射光の吸収の顕著な温度依存性のない試料の温度-時間推移を示す。この温度曲線は、例1の実験で記録した。
【0201】
例8:
99.99%純度のTiO粉末でできた円板形グリーンボディを、1mmの厚さ及び6.4mmの直径で、700MPaの圧力下に圧縮する。粉末の初期粒度は約300nmである。次いで、このグリーンボディを、一つの側から、好ましくは上から照明する。下側では、前記グリーンボディは、非常に多孔性の酸化アルミニウムウールの薄い(例えば1cm~2cm厚)の層上にまたはその代わりに、約0.12g/cmの密度を有する膨張グラファイトでできた1cmもしくは2cm厚の層上にある。
【0202】
前記の照明により、前記グリーンボディは、100K/秒から500K/秒までの加熱速度で、1600℃の焼結温度に、またはそれ未満でかつ付近の温度に、またはそれ超の温度に加熱し、そしてその温度で10から30秒間保持する。この際、好ましくは、温度は、前記焼結温度を15℃未満下回るかまたは上回る。更に、前記焼結温度は、加熱後に、好ましくは6秒間未満で安定化される。その後、照明を止め、そしてグリーンボディを再び室温に冷却する。この際、この冷却は、前記焼結温度から1000℃未満まで、3秒間未満で行われる。照明のためには、好ましくは、450nmの波長を有するダイオードレーザースタック、Xe閃光ランプ、ハロゲンランプ、UV中圧ランプまたは赤外ランプが使用される。前記焼結温度では、出力密度は、450nmの波長を有するダイオードレーザースタックを用いた場合には好ましくは115から135W/cmである。
【0203】
ナノ多孔度は、好ましくは、透過型電子顕微鏡を用いて、または走査型電子顕微鏡における研磨された表面の顕微鏡画像において検査することができる。図14は、透過型顕微鏡画像を示し、それにはナノ孔を見ることができ、そして個々が標示されている。この際、符号39は、観察された試料厚全体にわたって存在する孔を標示している。観察される孔の総数は、このタイプの孔の数より少なくなることはできない。この際、符号41は、観察された試料厚の一部にわたってのみ存在する孔を標示する。
【0204】
例9:
図15及び16からの強誘電体特性。
【0205】
BaTiO粉末を、化学理論量的に秤量したTiO(99.9%)及びBaCO(99.95%)から慣用の固相合成を用いて885℃で4時間か焼した。これらの原材料は、事前にアトライターミル及びその後に遊星ボールミルで粉砕した。これらの試料を例8に記載のように圧縮し、次いで、参照試料を、酸素中、1220℃で5時間、1分間あたりで10ケルビンの加熱及び冷却速度で焼結した。他の試料を、記載の方法に従い、800W/cm未満の出力密度を有するキセノン閃光ランプを用いて15秒間照射した。
【0206】
分極及び歪みのヒステリシス曲線を、分極についてはソーヤータワーの測定回路を用いて、及び歪みについては光学変位センサーを用いて並行して測定した。更に、測定は、1.5kV/mmまたは-1.5kV/mmの電界強度までバイポーラで行った。図15及び16は、100Hzの周波数を用いて測定した。符号43及び47で標示した実線は、キセノン閃光ランプで焼結した試料の測定された分極及び歪みを表し、符号45及び49は参照試料の分極及び歪みを表す。
【0207】
例10:
図17~19からのドメイン構造の影響。
【0208】
例10では、それぞれ一つの参照試料を従来技術により及び試料をキセノン閃光ランプを用いて焼結した。本発明によるセラミックは、800℃でのエージングステップで後処理し、ここで、加熱及び冷却速度は5K/分であった。他の全ての合成パラメータは、例8及び9に見ることができる。次いで、粒度が15μm、6μm、3μm、1μm及び0.25μmの粒度のダイヤモンドペーストを用いて試料を研磨し、次いで、数時間、振動研磨した。
【0209】
BaTiOでは、二つのタイプのドメイン、すなわち90°ドメイン及び180°ドメインが生じる。両方とも図17に見ることができる。しかし、元の試料のドメイン壁の間隔は、800℃でエージングしたものと比べて明らかに短い点が注目される。より大きなドメイン壁密度ほど、多くの強誘電体及び誘電体特性を変化させることを仮定することができる。例えば、高められたドメイン壁密度は、図19における歪みの上昇に寄与し得ることを仮定することができる。
【0210】
代替的に、ドメイン構造は、図20に示されるように透過型電子顕微鏡を用いても可視化することができる。
[図面の詳細な説明]
図1は、本発明の第二の観点による装置1を示す。
【0211】
装置1は、保持部3を有し、これは、粉末状セラミック原料5を保持する。ここでは、保持部3は土台であり、その上にセラミック材料5が置かれる。このセラミック材料5は直方形のまたはフィルム状のグリーンボディである。
【0212】
更に装置1は光源7を有する。光源7はハロゲンランプであり、これは、赤外波長範囲の光を発する。
【0213】
このためには、装置1は、本発明の第一の観点による方法を実施するように設計されている。
【0214】
このためには、光源7の光9は、セラミック材料5の表面領域11aに入射される。表面領域11aの材料及びその下にあるボリューム領域は、それにより加熱及び焼結される。この際、加熱は素早く行われ、すなわち、焼結後に得られるセラミック製品中に、任意に局所的に、高い密度の転位をそこで生成できるような高加熱速度で行われる。すなわち、これらの任意に局所的に生成される転位は、加熱領域中に存在する。
【0215】
次いで、光源7の光9がセラミック材料5の表面領域11b上に入射し、そしてまったくそれに対応してそこでもセラミック材料5が焼結され、そして任意に高い転位密度が生じるように、光の入射を変化させる。光の入射のこの変化は、例えば、図1には示されていないコントール及び制御ユニットを用いて行われ、これは、一つ以上のセンサー、例えば温度センサー及び光学センサーを有することができる。
【0216】
次いで、セラミック材料5を、その時に製造されたセラミック製品の形で取り出すことができる。
【0217】
図2は、(図2には示されていない)保持部3によって保持されたセラミック材料5の上面図を示す。そこには両表面領域11a及び11bが記載されており、それらは、識別し易くするために、プレス加工品5の縁から隔てて示されている。すなわち、このセラミック材料5は、最初は表面領域11aで、次いで領域11bにおいて、光の入射によって順次的に加熱される(より正確に言えば、当然ながら、なかでも、下にある材料のボリューム領域)。
【0218】
この場合、この際は光の入射は、いわば表面領域11aから表面領域11bへと移行するが、他の実現も可能である。
【0219】
例えば、表面領域11a及び11b上には光を同時に入射することができる。これは、第二の光源を使用することによって、または光源7の光を広幅化することによってである。
【0220】
例えば、グリーンボディ5は、光円錐9に対して相対的に連続的に移動させることもできる。その時、相対的に見ると、グリーンボディ5を光円錐9に向けて移動させることができ、それ故、一定時間後に、表面領域11a内で照明されていることができる。相対的な移動を止めている間、グリーンボディ5は一定時間後に表面領域11b内で照明されていることができ、次いで、グリーンボディ5を、相対的に見て、光円錐9の外に再び移動させることができる。
【0221】
図3は、本発明の第二の観点による装置の一つの実施形態を示し、そこでは、フィルム形態のセラミック材料5は、照明に対して相対的に移動させられる。とりわけ、エンドレステープの形のセラミック材料5を使用でき、この場合、セラミック材料5は層複合体であることもできる。
【0222】
一方のまたは両方の側に、同じまたは(図3において企図形されるように)異なるタイプの光源13が設置されていることができる。光は、各々の光源13に適切な光学系15によって、セラミック材料5の方に向けられる。この際、図3には、ビーム経路17及び照明域19は概略的に描かれている。
【0223】
この際、温度プロファイルは、各々の照明域19の形成、強度の経時的変化によって、及びビーム経路17のまたは光源13の相対的移動、及びセラミック材料によって、個別にコントロールされる。更に、温度プロファイルは、重なり合うようにも使用することができる複数の照明域の使用によって、最適化することができる。
【0224】
図4は、粒度勾配を持つセラミック製品の電子顕微鏡写真を示す。左側には、100μmの範囲の直径を有する大きな粒度が認められる。右側には、明らかにより小さな粒度が認められる。スケールバーは約250μmである。
【0225】
図5及び6は、段階的な密度勾配を有するセラミック製品の電子顕微鏡写真を示す。緻密な表面層の下には、多孔性のボリュームが存在する。スケールバーは図5では100μmであり、図6では50μmである。
【0226】
図7は、図5及び6のセラミック製品への前駆体である、表面だけが処理されたセラミック製品の電子顕微鏡写真を示す。破断面が示されている。ここでは、緻密な層の粒子は、層厚全体にわたって存在することは明らかである。
【0227】
図8は、同様に図5及び6に示されている二酸化チタンのテクスチャの定量化を示す。粒子の結晶構造が一定の方向に配向される確率が示されている。円の中央にあるのは、100方向である。円の縁では、配向は100方向から90°異なっており、ここで、二つの直交方向A1及びA2が記載されている。黒色の線は、或る配向確率が存在する各々の領域を区切っている。これらの線は、それぞれ、統計的確率(英語:「times random」)の倍数の数値を表す。外側から内側への方向に、これらの線の値は、0.71:1:1.41:2:2.83及び4である。
【0228】
図9は、二つのセラミック原料から製造されたセラミック製品の電子顕微鏡写真を示す。鮮明な境界を認めることができる。スケールバーは5μmである。
【0229】
図10は、本発明の方法を用いて製造された多層型キャパシタの電子顕微鏡写真を示す。セラミック部分間には、金属製の導電性構造を認めることができる。スケールバーは200μmである。
【0230】
図11及び12は、本発明の方法を用いたセラミック製品の製造の温度-時間曲線を示す。500℃から3000℃までの温度範囲用の高温計から構成される、温度測定のために使用したデバイスでは、500℃未満の温度は検出できなかった。それ故、この曲線において、≦500℃の温度では、常に500℃の値が示されている。
【0231】
前記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面に開示される特徴は、個々にだけでなく、任意の組み合わせでも、本発明にとってそれの様々な実施形態において本質的である得る。
【0232】
図13は、本発明の第二の観点による装置を示す。
【0233】
この装置は、電力供給系、エネルギーバッファ、制御技術及び水冷系を含み、これらはハウジング21内に収納されることができる。これは、ケーブル及びホースを用いて、別の遮光ハウジング25に接続することができ、その中には、発光ダイオード及びセラミック材料が存在する。
【0234】
発光ダイオード27はできるだけ密に配置され、そして電力供給系の他に、水冷されたヒートシンクと接続されている。発光ダイオード27の配置は、セラミック材料29の簡単な交換のために装置の上方に設置されている。これは、交換可能な絶縁材31から構成され、その上には、セラミック材料33を載せることができる。
【0235】
ハウジング25は、例えば通風機による冷却系35を有することができる。更に、この装置は高温計37を有することができ、これは、セラミックの表面の温度を読み取ることができる。
【0236】
図14は、例8に記載のナノ孔を有する本発明に従い製造されたTiOの適切な透過型電子顕微鏡写真を示す。ナノ孔39及び41は、図14に例示的に標示されている。ナノ孔39は、観察された試料厚全体にわたって存在することができる。代替的に、ナノ孔41も、試料厚の一部のみを占めることができる。スケールバーは2μmである。
【0237】
図15は、本発明によるセラミック製品43についての電場に依存する分極のヒステリシス曲線を示し、この場合、BaTiOであり、及び参照試料45も同様にBaTiOである。
【0238】
図16は、本発明によるセラミック製品43についての電場に依存する歪みのヒステリシス曲線を示し、この場合、BaTiOであり、及び参照試料45も同様にBaTiOである。
【0239】
図17は、エージングステップを用いずに製造された本発明によるセラミックのピエゾモードでの原子間力顕微鏡画像を示す。四角形の画像の一辺の長さは10μmである。コントラストは、伝導性原子間力顕微鏡チップのたわみによって作り出される。交流電圧を印可することによって、逆圧電効果を利用してドメイン構造を描写する。
【0240】
図18は、エージングステップの後の本発明によるBaTiOセラミックの、ピエゾモードにおける原子間力顕微鏡写真を示す。
【0241】
図19は、図16と同様に、エージングステップを経ていない(51)並びにエージングステップを経た(55)、本発明によるセラミック製品についての電場に依存する歪みのヒステリシス曲線を示し、この場合、BaTiOであり、及び参照試料53も同様にBaTiOである。
【0242】
図20は、例9に記載した本発明によるBaTiOセラミックの透過型電子顕微鏡写真を示す。ナノ多孔性及びドメインの両方が確認される。
【符号の説明】
【0243】
1 装置
3 保持部
5 セラミック材料
7 光源
9 光
11a、11b 表面領域
13 光源
15 光学系
17 ビーム経路
19 照明域
21 電力供給系、エネルギーバッファ、制御技術及び水冷のためのハウジング
23 ケーブル及びホースの接続
25 遮光性ハウジング
27 水冷式ヒートシンクを備えた発光ダイオードの配置
29 セラミック材料及び絶縁材の簡単な交換のための装置
31 交換可能な絶縁材
33 セラミック材料
35 冷却
37 高温計
39,41 ナノ孔
43 光焼結された試料の分極
45 参照試料の分極
47 光焼結された試料の歪み
49 参照試料の歪み
51 エージング前の歪み
53 参照例の歪み
55 エージング後の歪み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2023-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックを製造するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックは、通常は、セラミック粉末から、これを次いで焼結して結合させることによって製造されることは既知である。焼結では、粉末の成分が結合されて完成したセラミックとなるように温度が高められる。この目的のためには、この粉末は、典型的には、セラミックが得られるように焼結炉中で加熱される。このことは、いわゆる機能性セラミックでも同様である。これは、特別な技術的特性を有する、特別な部類のセラミック材料に分類される。
【0003】
対応する例は、US2014/295102A1(特許文献1)、DE10260320A1(特許文献2)、CN108751991A(特許文献3)、WO2020/196605A1(特許文献4)、CN109437912A(特許文献5)及びUS2013/140502A1(特許文献6)から知られている。
【0004】
高温下に焼結してセラミック粉末を圧縮することによりセラミックを製造するためには、特に、耐熱性の炉と、多量のエネルギー消費量及び長いプロセス時間とが必要である。炉は、特に、耐熱性の材料から構築され、そして多量のエネルギー消費量を用いて加熱される。この際、炉の内部空間中でセラミックが加熱され、それにより、焼結プロセスが行われる。しかし、これらの炉の耐熱性にも限界があるので、焼結温度を下げるために、一部では、焼結助剤(例えばSi)を使用しなければならない。一般的に、プロセス時間は数時間の範囲であり、そして多量のエネルギーを必要とする。
【0005】
それ故、セラミック及びそれらの製造をより効率的にする要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US2014/295102A1
【特許文献2】DE10260320A1
【特許文献3】CN108751991A
【特許文献4】WO2020/196605A1
【特許文献5】CN109437912A
【特許文献6】US2013/140502A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Theory of dislocations”, 3rd edition Peter M.Anderson,John P.Hirth und Jens Lothe,Cambridge University Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することができかつ特に、より効率的なセラミックを製造することを可能にする方法及び装置を提供することである。本発明の更なる課題は、従来技術の欠点を克服するセラミックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、(転位を含むかまたは含まない)セラミックの製造方法であって、セラミック原料に光を入射して、それを少なくとも部分的に加熱して、それによってセラミック製品を製造することを含み、この際、光の入射は、セラミック原料の表面積の20%超に対して同時に、すなわち、いちどきに行われ、ここで、入射される光の出力密度は、10W/cm と750W/cm との間、更に好ましくは20W/cm と200W/cm との間であり、この光は、200から700nmまでの範囲の波長を有し、及び前記セラミック原料は、絶縁材によって、保持部に対して熱的にデカップリングされている方法を提案することによって、第一の観点による本発明により解消される。
【0010】
光の入射は、例えば、セラミック原料の表面積のうち20%超、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%に対して、特に全面に対して、同時に行うことができる。
【0011】
光の入射は、例えば、少なくとも0.1mm、少なくとも0.2mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.01cm、少なくとも0.02cm、少なくとも0.05cm、少なくとも0.1cm、少なくとも0.2cm、少なくとも0.5cm、または少なくとも1.0cmの表面積に対して、特にセラミック原材料の表面積のうち少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%、例えば全面積に対して、同時に行うことができる。
【0012】
光の入射は、特に、少なくとも0.1秒間、少なくとも0.5秒間、少なくとも1秒間、特に少なくとも5秒間、特に少なくとも20秒間、及び/または最大で10分間、特に最大で8分間、特に最大で5分間、特に最大で3分間、特に最大で1分間、特に最大で30秒間、特に最大で10秒間、行われる。800w/cm未満の出力密度を有する光の入射が、ボリュームボディの焼結に特に役立つ。
【0013】
本発明による方法は、上記の光の入射の他に、より高い出力密度で及びかなりより短い時間でセラミック原料に対して光を入射して、それを少なくとも部分的に加熱し、それによってセラミック製品を生成する更なるステップも更に含むことができ、ここで、光の入射は、セラミック原料の表面積のうちの50%超に対して同時に行い、及び入射される光の出力密度は少なくとも800W/cm、例えば少なくとも1000W/cm、少なくとも2000W/cm、少なくとも4000W/cm、少なくとも10000W/cm、少なくとも15000W/cm、少なくとも50000W/cm、または少なくとも400000W/cm、好ましくは高くとも750,000W/cm、高くとも20000W/cm、高くとも8000W/cm、高くとも10000W/cm、高くとも7000W/cm、または高くとも5000W/cmである。
【0014】
光の入射の前記の更に別のステップは、特に、かなりより短い時間、例えば最長でも100ミリ秒間(ms)、最長でも50ms、最長でも40ms、最長でも30ms、最長でも25ms、または最長でも20ms、及び/または最短でも0.5ms、最短でも1ms、最短でも2ms、最短でも5ms、または最短でも10ms、行われる。前記の光の更に別の入射は、時間が短い故に、閃光とも称することができる。
【0015】
前記更に別のステップでの光の入射は、例えば、セラミック原料の表面積のうちの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%に対して、特に全表面積に対して、同時に行うことができる。
【0016】
前記更に別のステップでの光の入射は、例えば、少なくとも0.1mm、少なくとも0.2mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.01cm、少なくとも0.02cm、少なくとも0.05cm、少なくとも0.1cm、少なくとも0.2cm、少なくとも0.5cm、または少なくとも1.0cmの表面積に対して同時に行うことができ、とりわけ、セラミック原料の表面積のうちの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%に対して、例えば全表面積に対して、同時に行うことができる。
【0017】
すなわち、好ましい実施形態の一つでは、ボリュームボディの焼結のための照明の他に、この焼結工程の前または後にも、好ましくは焼結工程の間にも、その表面を、非常に短い時間でより強く照射する。例えば、Xe閃光ランプからの閃光を、高い出力密度(とりわけ、少なくとも800W/cm、例えば少なくとも1000W/cm、少なくとも1500W/cm、少なくとも2000W/cm、少なくとも2500W/cm、少なくとも3000W/cm、少なくとも3500W/cm、少なくとも4000W/cm、または約4350W/cm)で短時間(とりわけ、最長で50ms、最長で40ms、最長で30ms、最長で25ms、または最長で10ms、例えば約20ms)で用いることにより、表面を、その下にあるボリューム材料よりも明らかに強く加熱することができる。それによって、表面に異なる特性を持つ層が形成される。これは、好ましくは、テクスチャを有し、そしてボリュームボディよりも高い密度及び大きい粒度を有する。更に、この層は、ボリュームボディにおいて配向粒子成長を生じさせるために利用できる。英語では、粒子成長へのこのタイプのコントロールは、「templated grain growth(テンプレート粒子成長)」と称される。
【0018】
好ましくは、層とボリュームボディとの間の縮小による熱的不適合または不適合は、ボリュームボディ自体が高温である間に閃光を使用することによって減少され、特に防止され、この際、セラミックは、高温での応力を特に良好に弱めることができる。
【0019】
粉末材料を加熱するために光を使用することによって、一方では、プロセス時間及びエネルギー消費量を劇的に減少することができ、他方で、加熱速度のパラメータを、非常に確実にコントロールでき、特に調節及び/または能動的に調整することができる。そのため、粉末がどの箇所でどのくらい速く加熱されるかを的確にコントロールすることができる。特に、加熱を大きな表面に対して同時に行うことができ、プロセスを連続的な方法として実現できる。該セラミック材料を、照明によって特に迅速に加熱することができる。この際、照射された領域において、速い加熱速度をセラミック材料において達成することができる。従って、提案された方法は、とりわけ、セラミック材料における出力密度の及びそれ故、温度のはるかにより直接的なコントロールを可能にする。同時に、該方法は、驚くべきことに、セラミックの慣用の製造方法よりもかなりより簡単に実施することができる。同時に、慣用の焼結法では不可能であるかまたはかなり大きな労力をもってしか達成できない観点、特に、以下の観点のうちの一つ以上を実現することができる。
・粒度勾配の生成、
・テクスチャの生成、
・ナノ多孔性の生成、
・特に格別高い温度における、改善された耐熱性の発生、
・均一な材料特性の発生、
・プロセス時間の短縮、
・プロセスのより正確なコントロール可能性、特に非常に拘束なプロファイルの実現、
・比較的厚手のセラミックを製造する場合でさえの、特に少量生産領域におけるエネルギーの節約、及び/または
・特に少量生産の開発の促進、改善、簡素化。
【0020】
粒子勾配及び/またはテクスチャは、異なる温度プロファイルによってセラミックの表面上に及び内部に生成することができる。例えば、該方法は、経時的及び/または空間的出力密度プロファイルを含むことができる。好ましい経時的出力密度プロファイルは、例えば、0.2から200msまで、例えば20msの期間にわたる800W/cmから20,000W/cmまでの範囲の出力密度、例えば4350W/cmの出力密度、及びその後のまたは並行した、1秒間から2分間まで、例えば10秒間の期間にわたる10W/cmから<800W/cmまでの範囲、例えば130W/cmの更なる出力密度を含む。それによって、粒度勾配及び/またはテクスチャを有するセラミック製品を製造できる。とりわけ、緻密に焼結された表面層の下に多孔性のボリュームを含む、セラミック製品を得ることができる。前記の高い第一の出力密度によって、緻密に焼結された表面層の形成をもたらす。第一の出力密度が使用される時間が短いために、緻密に焼結された層は、薄い表面層に限定される。この表面層の厚さは、例えば、10から20μmまでの範囲であることができる。緻密な表面層及びその下にある多孔性のボリュームを有するセラミック製品は、燃料電池での使用に特に適している。粒度及びテクスチャは、それ
ぞれ、機能的及び機械的特性、例えば伝導性及び亀裂の発生し易さに対して作用する。
【0021】
本発明による方法を用いることで、ナノ多孔性も生成できる。ナノ孔とは、ミクロ組織解析を用いて、すなわち、例えばTEM顕微鏡写真を評価して定量化可能な、1μm未満のマーチン経、すなわちナノメータ範囲のマーチン経を有する孔である。本発明によるセラミック製品は、ナノ孔を含むことができる。これは、セラミック製品がTiO、BaTiO、YSZ(英語:“Yttria-stabilized zirconia”(イットリウム安定化ジルコニア))またはLi0.3La0.7TiOを材料として含む場合に、特に該当する。
【0022】
加えて、本発明による方法は、極めて高い温度、例えば500℃から3200℃までの範囲の温度での焼結を可能にする、というのも、炉による最大温度への制限がないからである。それによって、製造されるセラミック製品は、とりわけ、高温下での、例えば1400℃超の温度下での、改善された耐熱性を達成することができる。前記の極めて高いプロセス温度により、焼結助剤の使用の省略を可能とし、より大きな粒子の生成及びそれ故、より良好な耐クリープ性の達成を可能にする。一次拡散経路に依存して、クリープ率は、1/粒度(ナバロ・ヘリングクリープ)または1/粒度(コーブルクリープ)に比例する。それによって、従来製造されたセラミックがそれらのより低い温度安定性の故にその使用が制限される場合もあったセラミック製品の新しい使用分野が開拓され、例えば粒度を10倍にすることによって、同じ温度及び応力で望ましくない歪みレベルを超えない時間を、100から1000倍まで延長することができ、それ故、セラミックの使用期間を同程度延長することができる。
【0023】
本方法では、セラミック原料において及び/またはセラミック製品において、特に、少なくとも1400℃、少なくとも1500℃、少なくとも1600℃、少なくとも1700℃、少なくとも1800℃、少なくとも1900℃、または少なくとも2000℃の温度が達成される。セラミック原料及び/またはセラミック製品における温度は、例えば、500℃から3200℃までの範囲、とりわけ1000℃から3000℃まで、1200℃から2800℃まで、1400℃から2700℃まで、1500℃から2600℃まで、1600℃から2500℃まで、1700から2400℃まで、1800℃から2300℃まで、1900℃から2200℃まで、または2000℃から2100℃までの範囲であることができる。
【0024】
好ましい実施形態の一つでは、該セラミックは、焼結工程の間に、少なくとも1800℃またはそれよりかなり高い温度、例えば2500℃に加熱される。この際、例えば、膨張グラファイト製の絶縁材が使用される。とりわけ、このような極めて高い温度は、多大な技術的労力をかけることなく、通常の雰囲気中で達成することができる。それにより、格別に粗い原料粉末を用いてまたは格別に高い焼結-及び融解温度を用いて材料を製造することができる。これは、例えば炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素または酸化マグネシウムなどのセラミックの製造を促進し、改善しそして簡素化することができる。
【0025】
本発明の方法を用いることにより、例えば粒度、相組成、多孔性、微小亀裂の数及び大きさ、及び伝導性に関しての、明らかにより均一な材料特性を持つセラミック製品を得ることができる。これは、一方では、土台に対して絶縁することによる、例えばガス膜上に浮遊させることによる、グリーンボディの熱的デカップリングにある。他方で、同時の平面的照明は、横方向の温度勾配(例えば、表面に同時には照明されず、その代わりに表面は点毎に走査される選択的レーザー焼結で生じるような温度勾配)が排除されるかまたは少なくとも大きく減少し、それによって材料特性及びそれらの均質性が改善されるという利点を有する。
【0026】
更に、本発明の方法を用いた場合には数秒間内に部材全体が一度に焼結され得るために、選択的レーザー焼結と比べると、プロセス時間が根本的に短縮される。プロセス時間の極端な短縮及び簡素化された取り扱いにより、開発を明らかにより迅速に行うことができる。とりわけ、スパッタターゲットまたはPLDターゲット(英語:Pulsed Laser Deposition(パルスレーザー堆積)(PLD)の場合のような少量生産を、改善及び簡素化することができる。
【0027】
炉の代わりの光の使用は、プロセス時間を1000分の一に短縮することができる。更に、例えば20%から99%までのエネリギーの節約を達成できる。エネルギーの節約は、対応するCO削減に変換できる。更なる利点の一つは、持続的に購入できる電流を使用できる点にある。ガス/油は、COニュートラルでは大規模に得ることはできない。より厚手のセラミック、例えば0.1mmから20mmまで、とりわけ0.5mmから10mmまでまたは>1mmから5mmまでの範囲の厚さを有するセラミックでさえを、数秒間内で、少なくとも90%のエネルギー節約と共に製造することができる。とりわけ、エネルギー節約は、同時にリードタイムを短縮しつつ達成できる。
【0028】
該セラミック原料は、とりわけ、少なくとも0.001mm、少なくとも0.01mm、少なくとも0.1mm、少なくとも0.5mm、少なくとも1.0mm、または少なくとも2.0mmの厚さを有することができる。この厚さは、例えば、0.1から12.0mmまで、とりわけ0.2から10.0mmまで、0.5から8.0mmまで、1.0から5.0mmまで、または1.0から4.0mmまでの範囲である。
【0029】
好ましい実施形態の一つでは、該セラミック原料は、中温度に、例えば焼結工程の間の最大温度の50%まで予熱される。それによって、特に素早く加熱する必要のある温度範囲が大幅に狭くなる。それによって、比較的厚手の材料厚を成功裏に処理でき、特に均質な材料特性を生成することができる。予熱ステップは、実際の焼結ステップよりも、より長い期間にわたるより遅い加熱速度でも行うことができる。更に、ここでは、焼結の場合よりも、かなりより低い出力密度が必要され、そして予熱ステップのために慣用の炉を使用すること、またはこのステップを、バインダー材料の焼尽と組み合わせることも考慮され得る。
【0030】
好ましい実施形態の一つでは、セラミックからの熱を放射は適当な鏡により減少される。とりわけ放射された赤外線を反射するために例えば金でコーティングされた、例えば楕円形にまたは放物線状に形成された鏡を、放出された放射線を生じたセラミックに戻すために使用することができる。これは、温度を維持するために必要な電力を削減することを可能にする。それによって、長い露光時間におけるエネルギー効率を改善できる。
【0031】
好ましい実施形態の一つでは、少なくとも二つの側面から照明される。
【0032】
特に好ましい実施形態の一つでは、0.1から12.0mmまで、とりわけ0.2から10.0mmまで、0.5から8.0mmまで、1.0から5.0mmまでまたは2.0から4.0mmまで、例えば約4mmの材料厚が処理される。この際、好ましくは、二つの側面から照明され、そして予熱ステップが利用される。
【0033】
更に、該方法は、完全な部材、例えば多層キャパシタを焼結プロセスで製造することが可能である。
【0034】
更に別の観点の一つでは、本発明の方法を用いることで、任意に少なくとも局所的な転位を生成することができる。高密度のこのような転位は、それの伝導率の故に、セラミックにおいては特に有利である場合がある。というのも、転位によって、セラミックの機能的及び機械的特性を改善及び/または的確に調節することができるためである。なかでも転位により影響され得る、特に改善され得るセラミックの特性には、なかでも以下のものが挙げられる:
・亀裂に対するセラミックの耐性;
・セラミックの変形可能性、特に高温変形可能性;
・セラミックの破壊靱性;
・セラミックの摩耗挙動;
・セラミックの触媒活性;
・セラミックの電気光学的特性;
・セラミックの電気、イオン及び/または熱伝導性;
及び/または
・セラミックの強誘電的及び/または半導体的特性。
【0035】
しかし、セラミックの二次的特性、例えば層複合体(例えば、キャパシタ、圧電式アクチュエータ、太陽電池、固体バッテリー、燃料電池及び電解セル)における異なる相の共焼結の場合の相互拡散の傾向、または新しいタイプのバッテリーにおける金属リチウムの堆積(リチウム樹状結晶成長)における均質性も、転位により影響を及ぼすことができ、特に改善することができる。
【0036】
それ故、該方法は、後での使用目的に依存して、導入される転位の数及び密度に関してセラミックに影響を及ぼすことを可能にし、そしてそれによって、セラミックの特性、中でも、例えば先に記載したようなそれらの機能的及び機械的特性に、再び的確に影響を及ぼすこと、特に調節及び/または改善することを可能にする。
【0037】
更に、転位は化学的ドーピングを置換及び/または補足することができる。それによって、材料の煩雑さを低減でき、これは、複雑さがより少ない原料サプライチェーン並びにより持続可能でかつ経済的な製造を可能にする。同時に、これは、より簡単なリサイクルの可能性も供する。
【0038】
更に、提案される該方法を用いることにより、焼結後のセラミックの良好な機械的変形性を達成することができる。この特性は、塑性変形可能性、特に湾曲、折り曲げ、深絞り、鍛造及び/または押出を必要とする二次成形のために利用することができる。
【0039】
従って、提案された該方法は、既知のセラミックの特性の大きな改善をもたらすことができる。この際、該方法は、比較的少ない技術的労力で実現可能である。該方法は、技術的な前提条件に関しては僅かな要求しか課さないために、既存の製造プロセスに特に簡単に一体化することもできる。該方法は、非接触式に行われるので(すなわち、これは、中でも、「閃光焼結」の場合のように試料の接触も必要としない)、それの実施は特に簡単に行い得る。それ故、既存の製造工程を、提案された該方法をそこで使用するために、非常に簡単にかつ費用効果的に増備することもできる。この際、光源は、多数のそれ自体慣用の光源から選択することができる。それによって、該方法の実施は、特に費用効果よく行うことができる。また、該方法は、試料の多数の様々な幾何学的形状のためにも使用することができる。とりわけ、材料を照明域に通して連続的に輸送するプロセスが可能である。それにより、提案された該方法は、大量生産に非常に良好に適している。
【0040】
光の入射によって、特に、セラミック内でコントロールされた及び/またはコントロール可能な温度プロファイルを調節することができる。例えば、これは、セラミック内での空間的温度プロファイルであることができる。それにより、この場合も、転位の特に良好で確実なコントロールを、非常に高い転位密度と共に達成でき、これは、再び、セラミックの特性の対応するコントロールを可能にする。また、セラミックの所定の特性の任意の勾配を生成できる、すなわち、特性値が位置と共に徐々に変化する。更に、照射の経時的な出力密度プロファイルを用いて、特性勾配を持つセラミック製品を生成することもできる。高密度の、例えば90%超または95%超の密度の、とりわけ開口のまたは浸透性の多孔性を持たない表面層を有し、かつ浸透性の多孔性を持ち及びそれ故、ガス浸透性を持つ低密度のその下にあるボリュームを有する製品を製造することができる。このような製品は、例えば、燃料電池での使用に関してまたは水分解に関して関心がもたれる。該表面層は、それの高い密度の故に気密性であり、他方で、その下にあるボリュームは、それの多孔性の故に良好な反応空間である。
【0041】
提案された該方法を用いることで、要求が高い使用目的の場合でもセラミックの特性に影響を及ぼすこと、とりわけ改善することができるようにセラミック中で十分な数及び密度をもって転位を生成できることが初めて可能となる。該方法は、任意に、コントロールされた条件下に転位の生成を可能とし、それ故、再現可能でもある。
【0042】
該方法は、とりわけ、短い波長でも特に良好に機能する。その他、添加剤が、長波長でのより良好な吸光及び選択的レーザー焼結でのより良好な結果を保証することが知られている。しかし、一部では不利な添加剤は使用する必要がない方がよい。驚くべきことに、該方法を窒素雰囲気中で行った場合に、本質的により多くのエネルギーが吸収される。ここで、酸素欠乏は、吸光性添加剤と同じように作用する。好ましくは、該方法は、窒素雰囲気中で実施される。好ましくは、該方法は、吸光性添加剤を含まない。
【0043】
例えば、可視光及び/またはUV光を使用することができる。代替的にまたは追加的に、赤外スペクトル範囲の光も使用できる。光、例えば可視及び/またはUV範囲の光を入射することによって、セラミック内の温度プロファイルを非常に正確にコントロール、とりわけ制御することができる。適切な波長を選択することによって、とりわけスペクトル範囲(UV、VIS、IR)を選択することによって、効率を特に確実に調節することができる。特に好ましくは、青色レーザー光、とりわけ200nmから700nmまで、例えば300nmから600nmまでまたは400nmから500nmまでの範囲の波長を有するレーザー光を連続波(非パルス光、英語:「continuous wave」)として使用することができる。
【0044】
例えば450nmの波長を持つレーザーは、2.7eVの光子エネルギーに相当する。光子エネルギーがバンドギャップより大きい場合には、その材料はこの光をほぼ100%吸収する。そうでない場合には、それはほぼ透明である(ガラス参照)。殆どのセラミックにおいて、バンドギャップは2eVと5eVとの間である。殆どの重要な酸化物では、それは2.7eVと3.8eVとの間である。しかし、バンドギャップは温度と共に小さくなり、1200℃では約1eV低下する。それ故、殆どの酸化物では、最大プロセス温度において高効率を達成するためには約2eVで十分である。
【0045】
800nmの波長(1.5eV)を有する赤色レーザーは不利である。この光は効率良く吸収されず、それにより、10から20倍多い出力が必要となる。10000nmの波長(0.15eV)を持つCOレーザーには、効率のよい吸収に関する更に大きな問題が伴う。
【0046】
それ故、好ましくは、光子エネルギーは、少なくとも2eVであり、とりわけ2eVから5eVまで、例えば2.5eVから4.0eVまでまたは2.7eVから3.8eVまでの範囲である。
【0047】
好ましくは、急激な吸収効率の変化を避けるために一つ以上の波長が同時に使用され、それによって、好ましくは、機械的安定性及び均質性が高められる。
【0048】
この際、基本的には、入射光は、セラミックまたはグリーンボディによって、とりわけ、この光が入射する表面でまたはその付近で吸収され、その際、材料の内部も、表面からの熱伝達によって加熱され得る。特に適した実施形態の一つでは、薄いグリーンボディが使用され、この際、光の的確な切断は、非常に速い冷却速度も可能にする。また、層複合体及びコンポジット、とりわけ、固体バッテリー、アクチュエータ、キャパシタ及び燃料電池を、該方法を用いて焼結することができる。
【0049】
この際、グリーンボディは、例えば、焼結プロセス前のセラミック、それ故、セラミック原料のことを指し得る。この用語は、多くの場合に、原料が例えばフィルムであるかまたは圧縮された粉末であるか、及びそれがどのような幾何学的形状を持つかに関しては、制限されない。
【0050】
実施形態の一つでは、該セラミック原料はフィルム状の幾何学的形状を有する。例えば、補償(レーザー)光学系を使用し、それにより、導入される光の出力を正確にかつ迅速に制御することができる。それ故、焼結工程の進行中に起こる緻密化の間に、転位をセラミックに同時に導入することができる。このようにしてコントロール可能な迅速な加熱及び/または冷却速度によって、任意に、転位を高程度にセラミック中に導入することができ、これは、従来のやり方では、例えば炉ではそれの熱慣性の故に可能ではない。その場合、転位によって、セラミックの多数の機能的及び機械的特性を改善することができる。例えば、とりわけセラミックの厚さが薄い場合、例えば厚さが1mm未満の場合には、照射をオフにすることによって冷却速度をコントロールすることができ、とりわけ、それによって、非常に速い冷却速度も達成できる。これは、従来技術のやり方では利用可能ではない設計パラメータである。
【0051】
すなわち、高速な冷却速度は、特に、光源のオフによって、それ故、熱出力の供給の停止によって、達成することもできる。これは、慣用の炉と比べて、迅速な冷却時間を可能にする。任意に慣用の炉は使用されないため、炉の熱慣性は排除される。それによって、セラミックは、全熱慣性を殆ど消失させる。応じて、熱慣性は、薄いセラミックの場合に特に低くすることができる。その結果、迅速かつ正確な温度プロファイルを実行することができる。
【0052】
エージングステップ、すなわち高められた温度での直接的な保持が提供されるように、光を用いて能動的に冷却を制御することが有利であり得る。とりわけ、エージングステップは、例えば300℃から1000℃までの範囲の温度で及び例えば、数秒間、例えば少なくとも10秒間から数分間、例えば少なくとも3分間まで、または更には数時間、例えば最長で3時間までの期間、設けることができる。エージングステップは、点欠陥の平衡化、及びそれ故、セラミック製品の温度依存性の電気伝導性の安定した推移を得るために、とりわけ機能性セラミックにおいて有利である場合がある。しかし、セラミック製品の起こり得る熱衝撃効果またはそれによって発生する亀裂を最小化するためにも、エージングステップを設けて利用することができる。代替的にまたは追加的に、冷却温度を能動的に調整しそして冷却速度を、例えば800℃から100℃までの温度範囲内において、少なくとも100Kの間隔にわたって、例えば1分間あたりで少なくとも5ケルビン、更に好ましくは1分間あたりで少なくとも10ケルビン及び/または1秒間あたりで最大でも1ケルビン、更に好ましくは1分間あたりで最大でも20ケルビンに低下させることも企図できる。800℃から100℃までの温度範囲内の冷却速度は、好ましくは、少なくとも100Kの間隔にわたって、5~60K/分、更に好ましくは10~20K/分の範囲である。800℃から100℃までの温度範囲内の冷却速度は、少なくとも100Kの間隔にわたって、好ましくは少なくとも5K/分、更に好ましくは少なくとも10K/分である。800℃から100℃までの温度範囲内の冷却速度は、少なくとも100Kの間隔にわたって、好ましくは最大でも1K/秒、更に好ましくは最大でも20K/分である。
【0053】
この際、該方法は、燃料電池のための電解質層及び/または層複合体の、電解セルの及び固体バッテリーの並びにセラミックセンサーの焼結のために特に良好に適している。
【0054】
それ故、提案される当該方法を用いることにより、従来のやり方では原料の加熱のために用いられる焼結炉の使用を、完全にまたは少なくとも部分的に省くことができる。これは、多くの重要な利点をもたらす:炉全体を加熱しそして再び冷却する必要がもはやないので、膨大なエネルギー量を節約することができる。更に、光の入射は、セラミック内での極めて動的な温度推移を可能にする。炉の緩慢な加熱及び冷却挙動を克服することができる。従って、加熱バンド、炉または電流とは対照的に、セラミックの温度の非常に効率のよいコントロールを行うことができる。
【0055】
実施形態の一つでは、光の入射の開始前に及び/または光の入射の開始後に、セラミック材料は、焼結炉を用いてまたは他のやり方で焼結される。それ故、提案される該方法は、例えば、高い転位密度が必要とされる場合にのみ、それに切り替えることができる。
【0056】
提案される該方法は、特に、以下の有利な特徴及び特性を有し、これらはそれぞれ単独で、全て一緒に及び/または任意の組み合わせで利用することができる:
・ほぼ任意の幾何学的形状、中でも、1mm未満のまたは1mmから5mmまでの厚さを有する厚さを有する直方形の幾何学的形状のセラミックを、該方法で焼結することができる。
・該方法は、非接触式に行い得る。
・該方法は、スケーラブルである。
・該方法は、特に大表面を同時に処理することができる。
・該方法は、任意に生成された転位によって顕著な特性を得る、セラミック膜のようなセラミックのための最初の工業的にスケーラブルな製造方法である。
・該方法は、わずかな技術的な労力だけで、非常に短いプロセス時間を達成する。
・該方法、とりわけそれと接続された焼結プロセスは、既存の工業的なフィルムキャストプラントに直接統合することができる。
・該方法は、任意に、非常に多数で非常に高密度の転位を可能にする。
・該方法は、大量生産のためにも、良好に拡張可能でありかつ簡単に実施可能である(例えば、入手が容易な照明を使用できる)。
・実験室規模でのプロセス制御は、特に工業的なプロセス制御に類似して設計でき、それにより、更なる開発を特に迅速に実現でき、そして品質管理が単純化される。
・該方法は、僅かな技術しか必要とされないので、既存のプラントにも後から装備できる。
・該方法は、連続的プロセスとして設計できる。
・加熱しそして再び冷却する必要のある炉が必要ないので、製造の際に大幅なエネルギーの節約が可能である。材料それ自体だけが加熱される。
・該方法は良好に再現及びコントロール可能であり、それにより、望ましくない副作用、例えば、セラミック材料中の点欠陥による伝導性の変化も避けられる、というのも、例えば閃光焼結の場合の状況とは異なり、明確に定義された方法パラメータが優先するからである。それによって、該方法は、その煩雑さが低減される。
・該方法は、無加圧で行い得る。
【0057】
この際、該方法は、以下の領域の一つ以上においてセラミックを製造するために特に良好に使用することができる:燃料電池技術、電解セル、固体バッテリー、センサー、固体バッテリー、水素技術、太陽電池、触媒技術、キャパシタ及びアクチュエータ。
【0058】
この際、当然ながら、当業者は、光が入射される間、焼結工程の結果としてのセラミック原料からセラミック製品までの遷移は連続的であることを理解する。
【0059】
この際、本発明は、特に、セラミック原料中に大きな局所的な勾配が発生しないように、温度を調節すること、とりわけ温度プロファイルの横方向の変動を最小化することを可能にする。それにより、焼結された材料は、より耐引き裂き性になる。追加的に、任意に、照明された領域と照明されていない領域との間の遷移を勾配として設計することができる。
【0060】
実施形態の一つでは、材料の1cm以上、特に250cm以上、及び/または2000cm以下、特に100cm以下の表面が同時に照明される。
【0061】
当該方法を用いて製造されたセラミックは、それの任意に高い転位密度の故に、格別高伝導性であり得る。例えば、該方法を用いて、機能性セラミックを製造することができる。機能性セラミックを使用する場合、可能な限り伝導性のセラミックに関心がもたれる、というのも、これは、システム全体(例えばバッテリーの)に有益であるためである。
【0062】
この際、機能性セラミックとしては、特に、例えばキャパシタ、センサーまたはバッテリー膜に関しての格別機能的な特性を有するセラミックのことと理解される。それは、例えば、構造及び機械的特性によって付加価値が決められる構造セラミックとは異なる。
この際、転位は、関連する専門文献、例えば“Theory of dislocations”, 3rd edition Peter M.Anderson,John P.Hirth und Jens Lothe,Cambridge University Press(非特許文献1)において定義されている。本発明の意味での転位は、特に、材料中の一次元結晶欠陥であり、これは主として製造の際に発生し得る。
【0063】
代替的にまたは追加的に、セラミック原料の部分的な加熱が、(a)1K/秒以上、特に10K/秒以上、特に100K/秒以上、特に1000K/秒以上、(b)10000K/秒以下、特に5000K/秒以下、特に1000K/秒以下、及び/または(c)10K/秒と5000K/秒との間、特に100K/秒と2000K/秒との間、特に100K/秒と1500K/秒との間、特に100K/秒と1000K/秒との間の加熱速度で行われることも、企図できる。
【0064】
光の入射によってセラミック材料において然るべき加熱速度が達成されることによって、任意に、多数の及び高密度の転位をセラミック製品中に実現することができる。
【0065】
任意に、加熱速度は、最大で2500K/秒、特に最大で500K/秒、特に最大で150K/秒、特に最大で50K/秒、特に最大で50K/秒である。代替的にまたは追加的に、加熱速度は、1K/秒以上であることもできる。
【0066】
例えば、加熱速度は、一つの実施形態では、1K/秒と5000K/秒との間、特に50K/秒と1000K/秒との間、特に50K/秒と800K/秒との間、特に100K/秒と600K/秒との間である。
【0067】
例えば、一つの実施形態では、目的温度は、500K/秒超の加熱速度を用いた場合には、5秒間未満、好ましくは1秒間未満、更に好ましくは0.1秒間未満で達成される。例えば、目的温度は、10秒間未満内、好ましくは5秒間未満内、更に好ましくは2秒間未満内、更に一層好ましくは1秒間未満内で、±20Kの精度で安定化される。
【0068】
代替的にまたは追加的に、冷却速度は、25000K/秒と50K/秒との間、特に1000K/秒と50K/秒との間である。とりわけ、焼結温度から1000℃の温度への冷却速度は非常に高速であることが好ましい。好ましくは、焼結温度から1000℃の温度までの冷却速度は、50K/秒から1000K/秒までの範囲、例えば100K/秒から500K/秒までの範囲、または150K/秒から250K/秒までの範囲である。
【0069】
冷却速度は、とりわけ、厚さにも依存し得る。例えば、冷却速度と材料の厚さとの商は、25000K/(mm*s)と10K/(mm*s)との間の範囲、特に1000K/(mm*s)と50K/(mm*s)との間の範囲であることができる。
【0070】
非常に短時間でより高い出力密度で光を更に入射する場合、更に一層明らかに高い加熱速度、例えば5,000,000K/秒まで、1,000,000K/秒までまたは500,000K/秒までの加熱速度が生じ得る。例えば、閃光を使用した場合、緻密な層を多孔性の土台上に形成することができる。
【0071】
実施形態の一つでは、加熱速度は、照明された表面上で確認できる。ここで、照明された表面上での温度変化を測定することによって、加熱速度をコントールすることができる。これは、好ましくは、適切な高温計によって非接触式に行うことができる。温度測定のための他の方法、例えば、焼結すべき材料の特性をベースとして熱電素子、抵抗温度センサーまたは非直接的測定法を用いた方法も同様に可能である。好ましい実施形態の一つでは、加熱中の出力密度は、加熱速度をできるだけ高くかつ一定にするため温度を維持するために続いて必要とされるよりも、高く選択される。できるだけ均一な加熱速度を達成するために、加熱の間に出力密度を高めることが好ましい。
【0072】
加熱速度をコントロールするためには、例えば、入射光の出力密度は、パラメータとして直接コントロールすることができる。このコントロールは、任意に、局所的に及び/または経時的に変化する加熱速度を調節することを含み得る。出力密度のパラメータは、測定技術的にも容易に得ることができる。
【0073】
それ故、一つの実施形態では、加熱速度は、入射光の出力密度に基づいてコントロールされる。任意に、出力密度は、2W/cmと750W/cmとの間、好ましくは4W/cmと500W/cmとの間、更により好ましくは5W/cmと200W/cmとの間または10W/cmと150W/cmとの間である。出力密度は、800W/cm未満、例えば最大でも750W/cm、最大でも700W/cm、最大でも650W/cm、最大でも600W/cm、最大で550W/cm、最大でも500W/cm、最大でも450W/cm、最大でも400W/cm、最大でも350W/cm、最大でも300W/cm、最大でも250W/cm、最大でも200W/cm、最大でも150W/cm、最大でも100W/cm、または最大でも75W/cmである。出力密度は、例えば、少なくとも1W/cm、少なくとも2W/cm、少なくとも4W/cm、少なくとも5W/cm、少なくとも10W/cm、少なくとも20W/cm、少なくとも30W/cm、少なくとも40W/cm、少なくとも50W/cm、または少なくとも60W/cmであることができる。
【0074】
時間が短い場合には、先に記載したように(閃光)、明らかにより高い出力密度を入射することもできる。
【0075】
数学的な考察は、セラミック、とりわけグリーンボディの最大温度は、試料温度が入射光の出力密度に従い適合されるやいなや、おおよそ出力密度の4乗根に依存し得ることを示す。例えば、例示的なセラミック試験片、とりわけグリーンボディでは、5W/cmは約750℃に、そして200W/cmは、約1750℃に対応する。出力密度が、目下の温度のために必要な出力密度を上回る場合に、セラミックが加熱される。出力密度が低下すると、セラミックは冷える。高温度では、セラミックから放射される熱エネルギーを補償するために、出力密度の大部分が利用される。
【0076】
この際、出力密度は、とりわけ良好な時間分解能でコントロールされ、それにより、非常に正確に規定された出力密度プロファイルまたは温度プロファイルが可能となる。例えば、セラミックを非常に高い出力密度で加熱することができ、これは次いで、目下の温度に対応するより低い値に迅速に適合される。それによって、セラミックは非常に迅速に加熱することができ、この際、最大温度が、迅速にかつとりわけ非常に正確に達成される。それにより、例えば、温度が目的温度の90%から100%に上昇する時間を、慣用の方法、例えば通常の炉と比べて明らかに短縮でき、特に最短化でき、そして同時に、目的温度からの超過を避けることができる。それ故、出力密度の技術的コントロールによって、ほぼ任意の温度プロファイルが、とりわけ迅速な温度変化をもって可能となる。更に、温度プロファイルの局所的な(及び/または経時的な)変化は、セラミック材料中での局所的に変化する特性及び転位密度を調節することを可能にする。それにより、温度プロファイルの明らかにより自由な設計が使用者に可能になる。それ故、特に、複雑な温度プロファイルも可能である。
【0077】
出力密度は、特に、格別より短い時間的遅れでオン/オフでき、または任意に配量することができる。この際、達成可能なオン/オフ速度は、光及び使用される光学系によって決定され、そして例えば、1秒間以下、特に1ミリ秒以下であることができる。ここで、「オン/オフ速度」とは、特に、照明をオン及び再びオフにするために必要な時間を意味する。代替的にまたは追加的に、オン/オフは、光学系によっても調整することができ、他方で、ランプは連続的に点灯する。
【0078】
任意に、出力密度の変化は、1%/秒と100000%/秒との間、好ましくは100%/秒と10000%/秒との間である。とりわけ、これらの変化率は、焼結温度の50%から100%までの範囲、好ましくは75%から100%までの範囲、更に好ましくは90%から100%までの範囲で達成可能である。
【0079】
任意に、出力密度は、10秒間未満、好ましくは1秒間未満、好ましくは10ミリ秒間未満で、80%超低減することができ、そして好ましくは完全にオフにすることができる。
【0080】
代替的にまたは追加的に、光の入射によるセラミック原料の加熱、特に部分的な加熱は、(a)少なくとも0.25秒間、特に少なくとも3秒間、特に少なくとも20秒間の期間、及び/または(b)最長で10分間、特に最長で8分間、特に最長で5分間、特に最長で3分間、特に最長で1分間、特に最長で30秒間、特に最長で10秒間、特に最長で5秒間、特に最長で3秒間、特に最長で1秒間の期間、行うことを企図することもできる。
【0081】
この短い期間のために、該方法は、大規模生産にも特に良好に適している。
【0082】
任意に、前記期間は、最長で10分間、特に最長で1分間、特に最長で10秒間である。
【0083】
例えば、一つの実施形態では、前記期間は、0.1秒間と10分間との間、特に1秒間と1分間との間、特に2秒間と30秒間との間である。
【0084】
代替的にまたは追加的に、局所的に発生した転位が、10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に1010/cm以上、特に1011/cm以上の密度を有することを企図することもできる。
【0085】
該方法は、実施が特に簡単であるだけでなく、相応して高い転位密度も可能する。
【0086】
例えば、前記の転位密度は、局所的に発生した転位密度である。他の言い方をすれば:例えば、前記の転位密度は、少なくとも局所的に発生した転位が満たす転位密度である。
【0087】
これは、光の入射及び材料の加熱によって、少なくとも局所的に形成された転位よりも広範囲の転位が生じ、この際、これらのより広範囲の生成した転位は、上記の転位密度の全ては満たさず、従って、局所的に生成された転位には含まれないことを意味することができる。例えば、(対応する転位密度を有する)局所的に生成された転位の周りには、更なる転位が存在し得るが、しかしこれらはより小さい密度を有する。
【0088】
例えば、前記転位密度は、セラミックの1μm、1cmまたは1mの面積に関連する。より広い面積では、例えば10個の代表的な箇所でランダムに局所的に密度を試験することができる。
【0089】
代替的にまたは追加的には、以下も企図され得る:
(i)局所的に生成された転位が、セラミック材料の光によって加温された領域内部に存在する;
(ii)入射光の出力密度が、(a)1W/cmと750W/cmとの間、更に好ましくは5W/cmと150W/cmとの間であり、及び/または(b)10%より良好な、5%より良好な、2%より良好なまたは1%より良好な精度での規定または規定可能な目標値を、5秒間未満、好ましくは2秒間未満、更に好ましくは1秒間未満、更に好ましくは0.5秒間未満、更に好ましくは0.1秒間未満で達成し、そしてその後に安定化される;及び/または
(iii)出力密度及び/または温度プロファイルを、自由に設計できる。
【0090】
すなわち、その結果、セラミック材料の光によって加熱された領域全体は、転位を有する必要はない。及び/またはそれはまた、局所的に生成された設定条件を満たさない転位を有する領域を有する。転位は任意選択事項に過ぎない。本発明は、とりわけ、転位を含まないセラミック製品にも関する。
【0091】
代替的にまたは追加的に、セラミック原料が、少なくとも一種のセラミック層状複合体、少なくとも一種のセラミックコンポジット材料及び/または少なくとも一種のセラミック粉末を含み、及び/またはフィルム、エンドレステープ、好ましくは直方形または円形のプレス加工品の形で及び/またはソリッドボディとして提供されることも企図され得る。
【0092】
該セラミック原料は、プレス加工品としてまたはソリッドボディとして提供されることで、格別良好にかつ確実に取り扱うことができる。
【0093】
プレス加工品は、例えば、セラミックボディに圧縮された粉末状セラミック材料を含むかまたはそのようなセラミック材料であることができる。
【0094】
本発明の意味でのグリーンボディは、例えばプレスプロセスにより製造される、セラミック粉末からの焼結前の未加工品であることができる。本発明の意味でのグリーンボディは、スリップキャスト法などの流体ベースのプロセスを用いて製造される、焼結前の未加工品であることもできる。本発明の意味でのグリーンボディは、キャストフィルムを用いて製造される、焼結前の未加工品であることもできる。
【0095】
実施形態の一つでは、該セラミック原料はエンドレステープの形で提供され及び/または光源に対して動かされる。それによって、広い表面でも、迅速かつ経済的に、従って迅速かつ低廉に処理、特に焼結することができる。
【0096】
代替的にまたは追加的に、以下も企図され得る:
(i)セラミック原料の厚さは、0.00005mmと15.0mmとの間、特に0.001mmと10.0mmとの間、特に0.1mmから5mmまで、特に0.5mmと4.0mmとの間である;
(ii)セラミック原料は、材料としてSrTiO及び/またはTiOを含みまたはからなり、及び/またはセラミック製品はセラミック膜を含むかまたはセラミック膜である;及び/または
(iii)セラミック原料は、以下の材料のうちの一種以上を含む:
(a)任意のセラミック材料、とりわけ、結晶構造を有する非金属系無機材料;
(b)ペロブスカイト構造、スピネル構造、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造、塩化ナトリウム構造またはフッ化物構造を有するセラミック;
(c)チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、チタン酸ランタンリチウム、ジルコン酸ランタンリチウム、タンタル酸ランタンリチウム、酸化コバルトリチウム、酸化マンガンリチウム、酸化マンガンニッケルリチウム及び/または酸化アルミニウムをベースとし、各々、任意のドープ用添加剤及び/または焼結添加剤並びに複数のこれらの材料の混合物を含む、セラミック;
(d)任意の金属;または/及び
(e)銀、リチウム、パラジウム、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、鉄、ニオブ、クロム、バナジウム、イリジウム、タンタル、オスミウム、レニウム、モリブデン、タングステン、マグネシウムまたは複数のこれらの金属からなる合金を含む群からの一種または複数種の材料;
(f)主として結晶構造を有さず、焼結プロセスを用いてその形状を得る任意の非金属無機材料;
(g)シリケート繊維、ホウケイ酸塩ガラス及びケイ化四ホウ素。
【0097】
本発明の方法を用いて、焼結工程を、高温下に、非金属無機材料において行うことができる。これは、結晶構造が主として存在しない場合も可能である。それ故、例えば、セラミック繊維またはガラス繊維は、固形で高度に多孔性のブロックへと焼結することができる。一例は、緻密なカバー層を有する高多孔性の埋設ガラス繊維から構成される複合体であり、これは、宇宙船の大気中への再侵入のための熱保護タイルとして使用される。このような部材は、例えばスペースシャトルから知られており、また、例えばスペースXのスターシップなど、新しい将来の宇宙船にも使用されるであろう。伝熱媒体として照明を使用することで、原料を特に迅速にかつ省エネルギー的に製造することができる。更に、カバー層及びボリュームボディは、異なる方法で加熱することができる。追加的に、製造温度は炉によって限定されず、それ故、より高く選択することができる。それにより、材料の選択を改善することができ、そうして、より高い使用温度が可能になる。
【0098】
好ましい厚さを有するセラミックは、通常の用途に重要である。好ましい厚さを有するセラミックは、単純でかつ非常に入手し易い照明器具を用いて焼結でき、高い転位密度を達成することができる。次に、使用される光によるセラミック材料の加熱は、特に良好にコントロールすることができる。その結果、この方法は、薄いセラミックの製造のために使用されることが好ましい。
【0099】
完成したセラミックの厚さが、セラミック原料の厚さとは異なり得ることは当業者には明らかである。例えば40%の厚さの減少が焼結工程の間に起こる。
【0100】
一つの実施形態では、セラミック原料の厚さは、特に20mm以下、5mm以下、特に2mm以下、特に1.0mm以下、特に0.1mm以下、特に0.02mm以下、特に0.01mm以下、特に0.005mm以下である。任意に、厚さは、0.0002mm以上、特に0.002mm以上、特に0.01mm以上、特に0.05mm以上、特に0.1mm以上、例えば0.2mm以上、0.5mm以上、または1.0mm以上である。例えば、セラミックは、0.001mmと5mmとの間、とりわけ0.01mmと2mmとの間の厚さを有することができる。
【0101】
一つの実施形態では、該セラミック製品は、膜、とりわけ薄膜を含むことができる。この膜、とりわけ薄膜は、特に上記の厚さを有することができる。
【0102】
代替的にまたは追加的に、セラミック原料の少なくとも一つの表面、とりわけ側面、特に主側面が、光によって特に完全にまたは部分的に照明されることも企図できる。
【0103】
完全な照明によって、該セラミック材料は、一回の操作でも完全に加熱することができ、それによって、全体が処理され、とりわけ焼結され及び/または転位が供されることができる。
【0104】
主側面とは、特に、セラミック原料、例えばプレス加工品またはソリッドボディの面積が最も広い側面のことと理解されるべきである。
【0105】
代替的にまたは追加的に、以下も企図され得る:
(i)光を、並行に及び/または順次的に、特に入射する光に対してセラミック材料を相対的に特に連続的に移動させつつ、セラミック原料の複数の領域、とりわけ表面領域上に入射し、それによって、セラミック製品における複数の局所的な箇所に並行にまたは順次的に転位が生成される。
(ii)加熱された領域における照射によって、四角形であるかまたはユーザーによってそれらの形を自由に選択可能に設計できる、規定の幾何学的形状、とりわけ大きな表面積を有する幾何学的形状が形成される;
(iii)照射は、10秒間未満、好ましくは1秒間未満、更に好ましくは0.1秒間未満、好ましくは0.01秒間未満、更に好ましくは1ミリ秒間未満、なお更に好ましくは0.1ミリ秒間未満の遅れを用いて90%超短縮することができる、及び/または照射をオフにすることによって、10K/秒間超、更に好ましくは50K/秒間超、なお更に好ましくは200K/秒間超の冷却速度が達成される;及び/または
(iv)温度プロファイルを、局所的にまたは/及び経時的に様々にコントロールすることができる。
【0106】
入射を並行に行う場合は、例えば、複数の光源を使用することができる。それより、大きな表面積を素早く処理、とりわけ加熱することができ、及び/または速い加熱速度でさえ、大きな表面積にわたって及び/もしくはその下にあるボリューム領域にわたって達成することができる。
【0107】
代替的にまたは追加的に、セラミック材料に生じた温度プロファイルが、温度勾配及び/または転位密度パターンが得られるように局所的に変化するように、入射を行うことも企図され得る。そのためには、例えば、出力密度を局所的に変化させることができる。
【0108】
代替的にまたは追加的に、以下も企図され得る:
(i)光が、可視波長範囲または非可視波長範囲、特にUV範囲または可視範囲の波長を有し、とりわけこのような波長のみを有し、
(ii)光が、少なくとも一つの光源、とりわけ少なくとも一つの発光ダイオード、少なくとも一つのXe閃光ランプ、少なくとも一つのレーザー、少なくとも一つのUVランプ、少なくとも一つの中圧UV放射器及び/または少なくとも一つの金属蒸気ランプ、少なくとも一つハロゲンランプ、少なくとも一つの赤外線放射器を含む少なくとも一つの光源によって照射される、
(iii)光が、光学系によってセラミック原料に向けて指向され及び/または、特に加熱されている領域に、収束される、及び/または
(iv)光が、表面で及び/または表面に隣接するボリューム領域内でセラミック原料を加熱する。
【0109】
光が複数の光源から入射される場合、各々の光源は、特に個々のタイプの光源であることができる。
【0110】
光が外部から入射されそしてセラミック原料の表面に当たることで、表面に隣接するボリューム領域も非常に確実に加熱される。
【0111】
この際、光を、とりわけ平坦なセラミックの場合には、上から、下から及び両側から入射することができる。代替的に、光は、一つの側からだけ入射することができる。この際、光が照射されない側は、オープンであるかまたは覆われていることができるか、または鏡が供されていることができる。水平または垂直な配向での実施、並びに任意の角度が可能である。
【0112】
光源は、特に、一つ以上の発光ダイオード、一つ以上のレーザー(とりわけ200nmから700nmまで、例えば300nmから600nmまで、または400nmから500nmまでの範囲の波長を有するもの)、一つ以上のXe閃光ランプ(とりわけ、準連続式マルチパルス作動での一つ以上のXe閃光ランプ)、一つ以上のUVランプ、とりわけ一つ以上の中圧UV放射器、及び/または一つ以上の金属蒸気ランプ、あるいは一つ以上のハロゲンランプ、また赤外放射器を有する。
【0113】
本発明は、光源としてレーザーを用いて実現できる。例えば、ニュアンスを有するパターンを形成できるように、レーザーを、他の光源に対し追加的に及び/または同時に使用することもできる。
【0114】
しかしながら、レーザーの利点の一つは、これは光を強く集束できる点にあり、これにより、レーザー光源が典型的には最適化される。しかし、これは、同時に処理できる面積を小さくする。それ故、レーザー光線は、本発明において使用するためには、特に、先ず広幅化するのがよい。この際、特にダイオードレーザー、特に複数のダイオードからのダイオードレーザー、とりわけダイオードスタックが、均一な強度分布で使用される。
【0115】
こうして、本発明を用いることにより、広い表面領域を同時にかつほぼ均質に照射することができる。それによって、広い表面を迅速にかつ経済的に処理することができる。とりわけ、こうして、エンドレステープを迅速にかつ有利に処理することができる。
【0116】
上記課題は、第二の観点による本発明により、
装置、とりわけ(i)(転位を含むかまたは含まない)セラミックの製造のための、(ii)本発明の第一の観点による方法を実施するための、及び/または(iii)本発明の第一の観点による方法を遂行するように設計されている装置であって、
-セラミック原料を保持するための少なくとの一つの保持部、及び
-前記保持部に保持されたまたは保持可能なセラミック原料に対し光を入射するための少なくとも一つの光源、
を含み、
この際、特に、前記装置は、前記セラミック原料を少なくとも部分的に加熱しそしてそれによってセラミック製品が生成されるように、光を前記セラミック原料に対し入射するように設計されており、及び前記保持部は絶縁材を含む、
前記装置が提供されることによって解消される。
【0117】
前記絶縁材は、必要なプロセス時間での照明に対してでさえ十分に安定しているべきである。
【0118】
前記絶縁材の熱伝導率は、1400℃で、例えば400W/(mK)未満、高くとも50W/(mK)、高くとも20W/(mK)、高くとも10W/(mK)、高くとも5W/(mK)、高くとも2W/(mK)、高くとも1W/(mK)、高くとも0.5W/(mK)、または高くとも0.25W/(mK)であることができる。絶縁材の熱伝導率は、例えば、少なくとも0.01W/(mK)、少なくとも0.05W/(mK)、少なくとも0.1W/(mK)、または少なくとも0.2W/(mK)であることができる。
【0119】
絶縁材の密度は、例えば、0.05から0.25g/cmまでの範囲、とりわけ0.10から0.15g/cmまでの範囲、例えば約0.12g/cmであることができる。
【0120】
絶縁材は、1400℃の温度において、セラミック原料及び/またはセラミック製品からの好ましくは最大でも50W/cm、最大でも15W/cm、または最大でも5W/cmの熱流を可能にする。
【0121】
無重力状態での実施の場合は、土台、及びそれ故、絶縁材は必要ない。
【0122】
絶縁材としては、例えば、セラミックウールまたは膨張グラファイト(英語:「expandable graphite」)を使用することができる。膨張グラファイトが特に好ましい、というのも、これは、セラミックウールほどにはセラミックと反応しないからである。
【0123】
有利な絶縁材の一つは、貴金属を含むかまたは貴金属からなることもできる。特に高融点貴金属が好ましい。絶縁材は、例えば、イリジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスニウム、レニウム、タングステン、タンタル、モリブデン、ハフニウム及びこれらの二種以上の合金からなる群から選択される、材料を含むかまたはこのような材料からなる。イリジウム及び白金並びにこれらの合金が特に好ましい。就中特に好ましいものはイリジウムである。絶縁材は、とりわけ、ウール、ネット及び/またはフィルムの形で存在することができる。
【0124】
絶縁材は、好ましくは、一種以上の貴金属、膨張グラファイト、セラミックウール、とりわけ酸化アルミニウム、及びこれらの二種以上の組み合わせからなる群から選択される材料を含む。
【0125】
絶縁材は、0.25から5.0cmまで、0.5から3.0cmまで、0.75から2.5cmまで、または1.0から2.0cmまでの範囲の厚さを有する。絶縁材の厚さは、例えば、少なくとも0.25cm、少なくとも0.5cm、少なくとも0.75cm、または少なくとも1.0cmであることができる。絶縁材の厚さは、例えば、最大でも5.0cm、最大でも3.0cm、最大でも2.5cm、または最大でも2.0cmであることができる。
【0126】
絶縁材は、ガス膜の形でも実現できる。とりわけ、絶縁はガス膜を含むことができるかまたはガス膜からなることができる。例えば、ガスは金属板中の穴を通して流れて、そうしてガス膜が形成され、その上に、セラミックが浮遊する。
【0127】
絶縁材は、特に均質な温度分布を保証し、これにも再び特に均質な材料特性が伴う。更に、絶縁材は、比較的低い出力密度での該方法の実施を可能にする、というのも、意図しないエネルギー損失を回避できるかまたは少なくとも劇的に減少できるからである。よりによって膨張グラファイトが特に好適であることは驚くべきことである。炉内での慣用の焼結のためには膨張グラファイトは適していない、というのも、これは完全に燃焼してしまうであろうからである。しかしながら、膨張グラファイトは、本発明の短い焼結時間及び比較的低い出力密度には優れて耐える。絶縁性土台としては、その上にセラミックが浮遊するガス膜も使用できる。土台を通して排出される熱量は、温度が変化する時は動的な量である。目的温度が何秒間も保持される場合には、400W/mKの熱伝導率を有する1cm厚の銅土台は、約6000W/cmを放出することができる。それに対して、0.4W/mKの熱伝導率を有するセラミックウールは、6.4W/cmしか放出できなかった。絶縁材を通る熱流は、照射出力密度のほんの一部であり、他方で、金属製土台は、数倍の望ましくない熱流を可能にする。
【0128】
特に比較的長い露光の場合のエネルギー効率を更に改善するためには、焼結の間のセラミックから発せされる熱放射は、ミラーシステムを用いてセラミック上に反射させることができる。この目的のためには、例えば、放射状にまたは楕円状に形成された及び/もしくは金でコーティングされた鏡を使用することができる。
【0129】
本発明による装置を用いることで、高い転位密度を有するセラミックを製造することが可能である。それにより、とりわけ、本発明の第一の観点に従う方法を実施することによって、転位を含むセラミックを製造することが可能である。
【0130】
それ故、本発明の第一の観点に関しても先に記載したのと同じ利点及び同じ使用分野が、装置についても該当する。
【0131】
該装置は、一つの実施形態では、複数の光源を含むことができる。装置が複数の光源を含む場合、各々の光源は、特に個々のタイプの光源であることができる。
【0132】
例えば、複数の光源を用いて、(例えばプレス加工品の形で)提供され及び保持部に保持されたまたは保持可能なセラミック原料の本発明の第一の観点に関連して記載された照明を実施することができる。代替的にまたは追加的に、該装置は光学系も含むことができる。それにより、材料の照射を調節することができる。該光学系は、レンズ、鏡及び/または類似品を含むことができる。
【0133】
該装置は、代替的にまたは追加的に、コントロール手段も含むことができ、これは、加熱の加熱速度、入射の期間、及び/または照明範囲を確定すること、及び光の入射を、とりわけ加熱速度、期間及び/または照明範囲に関して相応してコントロールすること、とりわけ調整及び/または制御することを可能にするものである。
【0134】
特に好ましい実施形態の一つでは、該方法は、特にフレキシブルな装置によって実現される。例えば靴箱に匹敵する小さなサイズ、及び当該装置の通常のソケット接続を用いた駆動可能性(ドイツでは230V、16A)は、例えばテーブル上での、歯科技工所での、工芸品工房での、または空気に敏感な材料のために実験室で使用されるグローブボックスでの、費用効果の高い使用を可能にする。
【0135】
使用される光から環境を保護するハウジング内において、発光ダイオードのスタックが中心構成部材として設置される。これらは、交換可能な絶縁材上に設置されたセラミック製品を照明する。これは簡単に取り出すことができ、この簡単な取り出しは引き出し可能な引き出しによって可能になる。
【0136】
発光ダイオードは、好ましくはUV光、好ましくは375nmまたは450nmの波長を有するUV光を発する。この際、発光ダイオードは、水冷されたヒートシンクに接続されており、ここで、発せられた光は、出力密度を改善するために、マイクロレンズ及びレンズで集束できる。それらは、好ましくはセラミックの上方に配置されており、そして代替的にまたは追加的に、他の角度で取り付けることができる。
【0137】
この際、温度は、適切な高温計で読み出され、ここで、好ましくは、高温計のデータと出力密度との間にはアクティブな制御ループが存在する。
【0138】
発光ダイオードの電力供給系、制御系及び冷却系は、同じハウジング内に収納されていることができるか、または代替的に別個のボックス内に設置することができ、この場合、ケーブル及びホースによる接続が存在する。
【0139】
電力供給系のピーク負荷は、適切なエネルギーバッファによって大きく減少させることができる。80cmの表面上での50W/cmの出力密度のためには、少なくとも4kWの出力が必要である。これは、通常のソケットの最大出力を超える。エネルギーバッファは、例えば8kWを30秒間にわたって提供でき、次いで、明らかにより少ない出力で数分間で再び充電されることができる。この場合、例えば、通常のオートスターターバッテリーを使用することができ、これは、それが要充電状態になるまで、複数回の照明を可能にする。
【0140】
好ましくは、処理空間は、土台を他の装置により交換できるように設計されている。例えば、絶縁材を有する土台を、気密なチャンバ内で使用することができる。これは、上面で石英ガラス窓を通して光を入射させることができるが、例えばガス(例えば、空気、酸素、アルゴン、窒素またはフォーミングガス)を含む連続的なガス流を用いて、雰囲気を的確に制御できる。石英ガラス板はまた、装置を汚染から保護する。
【0141】
上記課題は、第三の観点に従う本発明により、(転位を含むかまたは含まない)セラミック製品、とりわけ、本発明の第一の観点に従う方法を用いて及び/または本発明の第二の観点に従う装置を用いて製造された及び/または製造可能なセラミック製品、とりわけ少なくとも部分的に焼結された微細構造を有するこのようなセラミック製品が提案されることによって、達成される。
【0142】
該セラミック製品は、とりわけ、焼結された微細構造を含むことができる。該セラミック製品は、例えば、部分的に焼結された微細構造または完全に焼結された微細構造を含むことができる。
【0143】
該セラミック製品は、例えば、10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に10/cm以上、特に1010/cm以上、特に1011/cm以上の密度で、少なくとも局所的な転位を含むことができる。
【0144】
このような高い転位密度を有するセラミック製品は、主として本発明による方法を用いて初めて製造することができる。局所的転位密度は、特に10/cm以上、とりわけ1010/cm以上である。
【0145】
本発明によるセラミック製品は、ナノ孔を含むことができる。これは、とりわけセラミック製品がTiO、BaTiO、YSZ(英語:“Yttria-stabilized zirconia”(イットリウム安定化ジルコニア))またはLi0.3La0.7TiOを材料として含む場合に、該当する。
【0146】
好ましくは、該セラミック製品は、とりわけ試料厚さが250nmである場合に、100μmの表面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真で、少なくとも2個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも4個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも8個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも10個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも12個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも15個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも20個のナノ孔が存在するような多孔度を有する。ナノ孔の数は、例えば、100μmの表面上で及びとりわけ250nmの試料厚において、最大でも150個のナノ孔、最大でも100個のナノ孔、最大でも75個のナノ孔、最大でも50個のナノ孔、最大でも40個のナノ孔、または最大でも30個のナノ孔であることができる。ナノ孔の数は、100μmの表面上で及びとりわけ250nmの試料厚において、好ましくは2個から150個までのナノ孔、4個から150個までのナノ孔、8個から100個までのナノ孔、10個から75個までのナノ孔、12個から50個までのナノ孔、15個から40個のナノ孔までの、または20個から30個のナノ孔までの範囲である。
【0147】
TEM写真では、二つのタイプのナノ孔を区別することができる。試料厚全体にわたって存在する孔がある。これらの孔は白く見える。他の孔は、試料厚全体にわたっては存在せず、それ故、暗白色(less white)乃至淡灰色に見える。ナノ孔の数の本発明による評価のためには、両タイプのナノ孔が計数に入れられる。
【0148】
観測されたナノ孔の数は、試料厚に依存する。とりわけ、可視のナノ孔の数は試料厚と共に多くなる。しかし、事実上ゼロの試料厚においても、孔数それ自体はゼロではない。最小限の薄い層も、依然として最小数の孔を示す。試料厚とは無関係に、ナノ孔の数は、100μmの表面上で、好ましくは2個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも4個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも8個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも10個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも12個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも15個のナノ孔、更に好ましくは少なくとも20個のナノ孔である。250nm試料厚あたりのナノ孔の数は、試料厚とは無関係に、100μmの表面上で、例えば最大でも150個のナノ孔、最大では100個のナノ孔、最大でも75個のナノ孔、最大でも50個のナノ孔、最大でも40個のナノ孔、または最大でも30個のナノ孔であることができる。
【0149】
試料厚全体にわたって存在する孔の観察される数は、試料厚が厚くなるほど減少する。この数がゼロでありかつ同時に、試料厚全体にわたって存在しない多くの孔が観察できる場合には、試料厚は、平均孔径よりも厚いと仮定することができる。これとは逆に、孔の約半分が試料厚全体にわたって存在する場合には、試料厚はおおよそ平均孔径に相当すると結論することができる。更に、厚さ全体にわたって存在しない観察される孔の数は、試料厚と共に連続的に増加する。これとは逆に、試料厚全体にわたって存在する孔が主として観察される場合またはこのような孔のみが観察される場合、試料厚は、平均孔径よりも明らかに薄いと結論することができる。本発明によれば、ナノ孔の数は、250nmの試料厚をベースに記載される。試料厚の表示は、セラミック製品がその厚さを有することを意味するものではない。そうではなく、「試料厚」という記載は、試験した試料の厚さを指す。試料厚は、セラミック製品の厚さよりも明らかに薄くすることができる。試料は、とりわけ、集束イオンビームで薄片を切り出すか、または機械的研磨とその後のアルゴンイオンによる薄膜化によって、該セラミック製品から得ることができる。
【0150】
ナノ孔数の定量化のためには、ナノ孔の数は、それぞれサイズが少なくとも50μmの5つの画像部分で決定される。100μmあたりの試料のナノ孔数は、前記の5つの画像部分の対応する値の平均値として決定される。一つの画像部分における100μmあたりのナノ孔数の決定のためには、この画像部分が、100μmのサイズを有している必要はない。該画像部分は、100μm超のサイズまたは100μm未満のサイズも有することができる。100μmあたりのナノ孔数は、容易に計算により外挿することができる。例えばサイズが50μmの一つの画像部分において8個のナノ孔が認められる場合、この画像部分には100μmあたりでは16個のナノ孔があることになる。例えばサイズが200μmの一つの画像部分において12個のナノ孔が認められる場合、この画像部分には100μmあたりでは6個のナノ孔があることになる。
【0151】
ナノ孔は、より大きな孔に平行に存在することができる。しかし、より大きな孔を有する多孔性は望ましくなく、好ましくは最小化される。これに対して、ナノ孔は驚くべき利点を供する。
【0152】
ナノ孔には、様々な利点、例えばとりわけTiOの場合に、電気伝導性の改善、及び/またはとりわけYSZの場合に、イオン伝導性の改善と結びつく。イオンまたは電気伝導性は、同じ組成を有するが、但しナノ多孔性を持たないセラミックと比べて、例えば10%以上高められ得る。
【0153】
強誘電体製品、例えばBaTiOでは、分極及び歪みに関しての古典的ヒステリシス曲線の変化を観察することができる。外部電場を印加することによって、強誘電体製品において電荷の中心が整列する。セラミック製品の自発分極及び歪みをもたらす同一配向の領域、いわゆるドメインが生じ、これは次いで技術的に利用可能である。自発分極は、ソーヤータワー(Sawyer and Tower)測定回路を用いて測定され、歪みは、光学式変位センサーを用いて同時に測定される。
【0154】
電場を更に高めると、飽和分極に達する。これは、電界強度を弱めると、電界強度がゼロの時に残留分極にまで低下し、そして逆向きの電場を印加すると反転可能であり、その結果、強誘電体製品の特性を本質的に決定するヒステリシスループが生じる。本発明によるセラミック製品は、好ましくは、同じ粉末の従来技術に従い焼結された試料と比べてより高い飽和分極を示す。本発明によるセラミック製品の飽和分極は、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の飽和分極を、好ましくは少なくとも10%、更に好ましくは少なくとも20%、更に好ましくは少なくとも30%、更に好ましくは少なくとも40%上回る。本発明によるセラミック製品の飽和分極は、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の飽和分極を、例えば最大で100%、最大で80%、最大で70%または最大で60%上回る。本発明によるセラミック製品の飽和分極は、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の飽和分極を、例えば10%から100%、20%から80%、30%から70%、または40%から60%上回ることができる。
【0155】
セラミックBaTiOについての「従来技術に従う焼結」とは、本発明では、1分間あたりで10ケルビンの加熱及び冷却速度を用いた、1220℃で5時間の酸素中での焼結のことと理解される。「従来技術に従う焼結」とは、本発明では、より一般的には、1分間あたりで1から200ケルビンまでの範囲の加熱及び冷却速度を用いた、慣用の炉中での90%超の密度までの焼結のことと理解される。比較は、好ましくは、比較用セラミックの粒度が2倍超異ならない場合に好適である。
【0156】
本発明によるセラミック製品は、とりわけ、12μC/cm超の飽和分極を有する。更に好ましくは、本発明によるセラミック製品の飽和分極は、少なくとも14μC/cm、更に好ましくは少なくとも15μC/cm、更に好ましくは少なくとも16μC/cm、更に好ましくは少なくとも17μC/cm、更に好ましくは少なくとも17.5μC/cmである。飽和分極は、例えば最大でも50μC/cm、最大でも40μC/cm、最大でも30μC/cm、最大でも25μC/cm、最大でも20μC/cm、または最大でも18.5μC/cmであることができる。飽和分極は、好ましくは>12から50μC/cmまで、14から40μC/cmまで、15から30μC/cmまで、16から25μC/cmまで、17から20μC/cmまで、または17.5から18.5μC/cmまでの範囲である。飽和分極に関してこの段落に記載した値は、とりわけ、セラミック製品がBaTiOを含むかまたはからなる場合に該当する。
【0157】
歪みを比較すると、本発明によるセラミック製品が、比較用試料と比べてかなりより狭いヒステリシス曲線を示す点が目立つ。これは、本質的により小さな保磁力(歪みが最小)のために、参照試料よりも切り替えがより簡単であり、それ故、例えばアクチュエータの用途により関心が持たれる。
【0158】
本発明によるセラミック製品の保磁力は、好ましくは、従来技術に従い焼結された同じ組成のセラミック製品の保磁力の最大でも50%、更に好ましくは最大で40%、更に好ましくは最大で30%、更に好ましくは最大で25%である。本発明によるセラミック製品の保磁力は、例えば、従来技術に従い焼結された同じ組成のセラミック製品の保磁力の少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%または少なくとも15%であることができる。本発明によるセラミック製品の保磁力は、例えば、従来技術に従い焼結された同じ組成のセラミック製品の保磁力の2%から50%まで、5%から40%まで、10%から30%まで、または15%から25%までであることができる。
【0159】
保磁力は、本発明によるセラミック製品では、好ましくは0.005から<0.19kV/mmまで、0.01から0.15kV/mmまで、0.02から0.10kV/mmまで、または0.03から0.05kV/mmまでの範囲である。保磁力は、好ましくは0.19kV/mm未満、更に好ましくは最大でも0.15kV/mm、更に好ましくは最大でも0.10kV/mm、更に好ましくは最大でも0.05kV/mmである。保磁力は、例えば、少なくとも0.005kV/mm、少なくとも0.01kV/mm、少なくとも0.02kV/mm、または少なくとも0.03kV/mmであることができる。保磁力に関してこの段落に記載した値は、とりわけ、セラミック製品がBaTiOを含むかまたはからなる場合に該当する。
【0160】
本方法によって、生じるドメイン構造に対して顕著な影響を持つ欠陥を導入することができる。これは、図17及び18のドメイン構造の変化から明らかである。ドメイン壁密度は、例えば800℃でのエージングステップの前は低い一方で、その後は目に見えて高くなる。変化は、強誘電体製品の特性に多くの影響を及ぼす。800℃でのエージング及びそれに伴うドメイン構造の微細化によって、セラミック製品の歪みを増大させることができる。これは、エージングされた試料を、図19の元の試料と比較することによって明らかである。そこに示される歪みの推移は、例9に記載のように測定した。唯一の例外は周波数であり、ここでは20Hzである。
【0161】
本発明によるセラミック製品の歪みは、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の歪みを、好ましくは少なくとも15%、更に好ましくは少なくとも25%、更に好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも70%上回る。本発明によるセラミック製品の歪みは、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の歪みを、例えば最大で150%、最大で125%、最大で100%または最大で90%上回ることができる。本発明によるセラミック製品の飽和分極は、同じ組成の従来技術に従い焼結されたセラミック製品の飽和分極を、例えば15%から150%、25%から125%、50%から100%、または70%から90%上回ることができる。
【0162】
セラミック製品の歪みは、好ましくは>0.07%から0.20%まで、0.075%から0.175%まで、0.10%から0.15%まで、0.11%から0.14%まで、または0.12%から0.13%までの範囲である。セラミック製品の歪みは、好ましくは0.07%超、更に好ましくは少なくとも0.075%、更に好ましくは少なくとも0.10%、更に好ましくは少なくとも0.11%、更に好ましくは少なくとも0.12%である。セラミック製品の歪みは、例えば最大でも0.20%、最大でも0.175%、最大でも0.15%、最大でも0.14%、または最大でも0.13%であることができる。
【0163】
とりわけBaTiOでは、二つのタイプのドメイン、すなわち90°ドメイン及び180°ドメインが生じ得る。本発明によるセラミック製品は、好ましくは高いドメイン壁密度を有する。それによって、多くの強誘電体及び誘電体特性を調整できる。高いドメイン壁密度は、例えば、歪みの増加に寄与し得る。
【0164】
それ故、本発明の第一の観点に関しても先に記載したのと同じ利点及び同じ使用分野が、該セラミック製品についても該当する。
【0165】
例えば、該セラミック製品は、膜、とりわけ薄膜の形で存在することができる。機能性セラミックは、例えば燃料電池、電解セル、センサー、固体バッテリー、ガス分離膜、アクチュエータまたはキャパシタ中で薄膜として使用される。とりわけ、これらの薄膜は、多層として積層されていることができ、また金属電極などのレイヤーも含むことができる。
【0166】
本発明による製品は、特に、燃料電池、電解セル、センサー及び/または固体バッテリー中で使用することができる。
【0167】
代替的にまたは追加的に、以下も企図され得る:
(i)セラミック製品の厚さは、0.00005mmと20mmとの間であり、この際、セラミック製品はセラミック膜を含むかもしくはセラミック膜であり、及び/またはセラミック製品は材料としてSrTiO及び/またはTiOを含むかまたはからなる;及び/または
(ii)セラミック製品は、以下の材料のうちの一種以上を含む:
(a)任意のセラミック材料、とりわけ、結晶構造を有する非金属系無機材料;
(b)ペロブスカイト構造、スピネル構造、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造、塩化ナトリウム構造またはフッ化物構造を有するセラミック;
(c)チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、チタン酸ランタンリチウム、ジルコン酸ランタンリチウム、タンタル酸ランタンリチウム、酸化コバルトリチウム、酸化マンガンリチウム、酸化マンガンニッケルリチウム及び/または酸化アルミニウムをベースとし、各々、任意のドープ用添加剤及び/または焼結添加剤並びに複数のこれらの材料の混合物を含む、セラミック;
(d)任意の金属;または/及び
(e)次のものを含む群からの一種以上の材料:銀、リチウム、パラジウム、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、鉄、ニオブ、クロム、バナジウム、イリジウム、タンタル、オスミウム、レニウム、モリブデン、タングステン、マグネシウムまたは複数のこれらの金属からなる合金;
(f)主として結晶構造を有さず、焼結プロセスを用いてその形状を得る任意の非金属系無機材料;
(g)シリケート繊維、ホウケイ酸塩ガラス及びケイ化ホウ素。
【0168】
セラミック材料は、TiO、BaTiO、YSZ、Li0.3La0.7TiO及びこれらの二種以上の組み合わせからなる群から選択される材料を含むかまたはからなることができる。
【0169】
好ましい厚さを有するセラミックは、通常の用途に重要である。
【0170】
一つの実施形態では、セラミック原料の厚さは、特に20mm以下、特に10mm以下、特に5mm以下、特に2mm以下、特に1mm以下、特に0.5mm以下、特に0.05mm以下である。任意に、厚さは、0.001mm以上、特に0.005mm以上、特に0.01mm以上、特に0.05mm以上、特に0.1mm以上である。例えば、セラミックは、0.001mmと20mmとの間、とりわけ0.005mmと15mmとの間、0.1から10.0mmまで、0.2から8.0mmまで、0.5から6.0mmまで、または1.0から5.0mmまで、例えば2.0から4.0mmまでの厚さを有することができる。
【0171】
一つの実施形態では、該セラミック製品は、膜、とりわけ薄膜を含むことができる。この膜、とりわけ薄膜は、特に上記の厚さを有することができる。
【0172】
セラミック製品は、とりわけ、粒度勾配、テクスチャ、高い耐熱性、格別均質な材料特性、及び/またはナノ多孔性を有することができる。
【0173】
粒度は、例えば、一つの方向で、50μm未満では3倍超、好ましくは20μm未満で5超、好ましくは10μm未満では15倍超、変化でき、そして同時に、直交方向では、二倍未満変化することができる。好ましくは、粒度は、とりわけ図4に示されるように、グラジエント状に、またはとりわけ図7に示されるように、段階的に変化することができる。好ましくは、粒度の差は100倍を超えない。
【0174】
多孔度は、例えば、5μm未満が5%未満、とりわけ開口多孔度がないものから、15%強、とりわけ開口した浸透性多孔度まで移り変わることができる。
【0175】
テクスチャは、粒子の15%超が、主軸から15°未満の偏差で、好ましくは粒子の20%超が主軸から10°未満の偏差で整列されると有意であり得る。
【0176】
本発明のセラミック製品は、層状複合体、とりわけ複数のレイヤーを有する層状複合体であることもできる。
【0177】
本発明は、本発明のセラミック製品を含むまたはからなる層状複合体にも関する。
【0178】
本発明は、本発明のセラミック製品を含むかまたはからなるキャパシタにも関する。
【0179】
本発明は、本発明のセラミック製品を含むかまたはからなる固体バッテリーにも関する。
【0180】
本発明は、キャパシタもしくは固体バッテリーとしてまたはキャパシタもしくは固体バッテリー中での、本発明のセラミック製品の使用にも関する。
【0181】
試験
本発明の方法は、任意に、非常に高い密度の転位を可能にする。類別のために、各々記載の結果を有する以下の試験が本発明者らによって行われた:(1.)セラミックカップの単純な焼結は、10/cmまでの転位密度をもたらした。(2.)機械的変形は、10/cmまでの転位密度をもたらした。(3.)閃光焼結は、1010/cmまでの転位密度をもたらした。(4.)提案される該方法は、任意に、1010/cm以上のオーダーの転位密度さえも達成することができる。転位密度は、温度プロファイルの最適化によって改善することができる。
【0182】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明の好ましい実施形態が概略的な図面に基づいて説明されている以下の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0183】
図1】側面から見た場合の、本発明の第二の観点による装置。
図2図1の装置に使用されるセラミック材料。
図3】透視図で示した本発明の第二の観点による更に別の装置。
図4】粒度勾配を有するセラミック製品の光学顕微鏡写真。
図5】テクスチャ及び急な密度勾配を有するセラミック製品の電子顕微鏡写真。
図6】テクスチャ及び急な密度勾配を有するセラミック製品の電子顕微鏡写真。
図7】テクスチャ及び急な密度勾配を有するセラミック製品の電子顕微鏡写真。
図8】テクスチャの定量化の図示。
図9】二つのセラミック原料から製造されたセラミック製品の電子顕微鏡写真。
図10】本発明の方法を用いて製造された多層型キャパシタの電子顕微鏡写真。
図11】本発明の方法を用いたセラミック製品の製造の温度-時間曲線。
図12】本発明の方法を用いたセラミック製品の製造の温度-時間曲線。
図13】透視図で示した本発明の第二の観点による更に別の装置。
図14】ナノ孔を有するセラミック製品の透過型電子顕微鏡画像。
図15】セラミック製品43及び参照試料45の電場依存性分極曲線。
図16】セラミック製品47及び参照試料49の電場依存性歪み曲線。
図17】エージング前の、ピエゾモードでのセラミック製品の原子間力顕微鏡画像。
図18】エージング後の、ピエゾモードでのセラミック製品の原子間力顕微鏡画像。
図19】エージングの前(51)及び後(55)のセラミック製品の並びに参照試料53の電場依存性歪み曲線。
図20】本発明によるBaTiOセラミックの透過型電子顕微鏡写真。
【実施例
【0184】
例1:圧縮されたSrTiO粉末からなるグリーンボディ
99.99%純度のSrTiOでできた円板形グリーンボディを、1mmの厚さ及び6.4mmの直径で、700MPaの圧力下に圧縮する。粉末の初期粒度は約400nmである。次いで、このグリーンボディを、一つの側から、好ましくは上から照射する。下側では、前記グリーンボディは、非常に多孔性の酸化アルミニウムウールの薄い(例えば1cm~2cm厚)の層上にまたはその代わりに、約0.12g/cmの密度を有する膨張グラファイトでできた1cmもしくは2cm厚の層上にある。
【0185】
前記の照射により、前記グリーンボディは、100K/秒から500K/秒までの加熱速度で、1875℃の焼結温度に、またはそれ未満でかつ付近の温度に、またはそれ超の温度に加熱し、そしてその温度で25秒間保持する。この際、好ましくは、温度は、前記焼結温度を15℃未満下回るかまたは上回る。更に、前記焼結温度は、加熱後に、好ましくは6秒間未満で安定化される。その後、照明を止め、そしてグリーンボディを再び室温に冷却する。この際、この冷却は、前記焼結温度から1000℃未満まで、3秒間未満で行われる。照明のためには、好ましくは、450nmの波長を有するダイオードレーザースタック、Xe閃光ランプ、ハロゲンランプ、UV中圧ランプまたは赤外ランプが使用される。前記焼結温度では、出力密度は、450nmの波長を有するダイオードレーザースタックを用いた場合には好ましくは170W/cmである。
【0186】
転位密度は、好ましくは、暗視野透過型電子顕微鏡または電子チャネリングコントラストイメージング(ECCI)を用いて検査することができる。
【0187】
例2:
材料としてのBaTiOでできたフィルムを、フィルムキャスティングによって製造する。この際、平均粒度は、250nm以下である。先ず、バインダーを焼尽する。焼結温度より明らかに低い温度を要し及び、多くの場合に、分間(m)から時間(h)までの範囲の期間を要する温度プロファイルは、対応するバインダーについて従来技術から既知である。このステップは、慣用の炉の代わりに、任意に、照射を用いて実施することもでき、この際、出力密度は、低く、例えば80%低く選択される。バインダーが焼尽されると直ぐに、フィルムは、照明により焼結温度に加熱される。
【0188】
照明の間、前記フィルムは、例えば、反射性表面の上で、薄いガス膜上に浮遊することができるか、またはその代わりに、1cm厚の膨張グラファイト層上に存在でき、そして上から照明することができる。代替的に、フィルムを垂直に吊り下げ、それを二つの側から照射することができ、この際、出力密度は両側から印加する。この際、横方向の測定は、光源のサイズによってのみ制限される。とりわけ、フィルムを光源に対して、または光源をフィルムに対して移動させることができる。それによって、温度プロファイルまたは出力密度は、追加的に、移動プロファイルによって調節することができる。好ましくは、フィルム及び光源の相対的移動は、連続テープの処理を可能にする。
【0189】
フィルムは、400K/秒の照射によって、1150℃から1550℃までの焼結温度に、またはそれ未満でかつ付近の温度に、またはそれ超の温度に加熱され、そしてこの温度に30秒間保持する。この際、好ましくは、温度は、前記焼結温度を15℃未満下回るかまたは上回る。更に、前記焼結温度は、加熱後は、好ましくは6秒間未満、例えば2秒間未満で安定化される。その後、照明を止め、そしてグリーンボディを再び室温に冷却する。この際、この冷却は、前記焼結温度から900℃未満まで、3秒間未満で行われる。照明のためには、好ましくは、450nmの波長を有するダイオードレーザースタック、Xe閃光ランプ、UV中圧ランプ、ハロゲンランプ、または赤外ランプが使用される。前記焼結温度では、出力密度は、450nmの波長を有するダイオードレーザースタックを用いた場合には好ましくは約92W/cmである。
【0190】
例3:
土台に対する横方向に異なる熱接触によって、粒度勾配を生成した。この際、照射は均一であった。代替的に、土台に対する熱接触も均一であり得、そして放射線は変化し得るか、または熱接触も、照射も変化し得る。
【0191】
99.99%純度のTiOでできた約150μmの厚さを有するグリーンボディを圧縮した。これを、銅土台上に配置し、この際、接触は、一つまたは複数の小さな点でのみ存在した。それによって、これらの領域が冷却され、この際、浮遊している領域では、明らかにより少ない熱放出が起こった。これらの領域では、粒度は、より低温の領域に向かう勾配を伴ってかなりより大きい。照明は、450nmの波長のダイオードレーザースタックを用いて、200W/cmで10秒間、行った。
【0192】
図4は、粒度勾配を持つ相応して生成されたセラミック製品を示す。
【0193】
例4:
セラミックの表面上及び内部の異なる温度プロファイルによって、粒度勾配及びテクスチャを生成した。99.99%純度のTiOでできた約150μmの厚さを有するグリーンボディを圧縮した。この異なる温度プロファイルは、20ミリ秒間の期間の4350W/cmの範囲の第一の出力密度、及びその後の、10秒間の期間の100W/cmの範囲の第二の出力密度を有する経時的出力密度プロファイルによって生成された。第一の照明ステップでは、温度は、ボリュームではなく表面だけに達するために、絶縁は必要なかった。第二の照明ステップでは、約0.12g/cmの密度を有する膨張グラファイトでできた約2cm厚の層を絶縁性土台として使用した。
【0194】
この例では、図5、6及び7に示すように、約20μmの厚さ及び約15μmの粒度を有する表面上のほぼ完全に緻密な層、並びにその下にある、明らかなにより小さな粒子及び非常に大きな多孔度を有するより厚手の層が生じる。この際、第一の処理ステップ後の破断面を示す図7では、粒子の大部分が、層の全厚にわたって延在することがわかる。更に、この層中の粒子は、テクスチャと称される主配向を有する。このテクスチャは、電子線後方散乱回折法(英語:「electron backscatter diffraction」)によって5000個以上の粒子について決定した。これは、図8において示されそして定量化されている。代替的に、定量化は、特定の配向範囲の確率によって表すことができ、ここでは、これには、100軸からの15°未満の偏差を有する配向について16%の確率が決定された。
【0195】
更に、第二の照明ステップによって、前記の緻密な層の下に、多孔性の層が、残りの全厚にわたって生じた。これは、好ましくは、ガス透過性である開口の多孔度を特色とし、この層は機械的完全性を有する。
【0196】
格別な特徴の一つは、緻密な層と多孔性層とのこの組み合わせが、事前は完全に均質なグリーンボディから製造できる点である。更に、短くかつ強力な照明ステップ(ここでは第一のステップ)を、より長期間でかつより強度の低い照明ステップの間に行うことができ、それによって、全体的な処理は、一度に、例えば10秒間以下で行うことができる。
【0197】
例5:
本発明の方法を用いて、二つの層で一緒に粉末として圧縮された二つのセラミック原料、すなわちTiO及びBaTiOを、一緒に焼結してセラミック製品とした。鮮明な境界面が得られた。図9は、相応して生成されたセラミック製品を示す。
【0198】
例6:
本発明の方法を用いて多層型キャパシタを製造した(図10参照)。この多層型キャパシタは、セラミックBaTiOと白金電極の薄いレイヤーとからなる。BaTiOからなるレイヤーは、フィルムキャスティングによって製造し、ここで、白金電極はスクリーン印刷(英語:「screen printing」)によって製造した。フィルムキャスティングに必要なバインダー材料は、慣用の炉中で中程度の温度で焼尽した。次いで、前記未加工部材を、膨張グラファイトからなる約2cm厚の絶縁材上に載せ、そして上から照明した。出力密度は、5秒間は47W/cmであり、その後、20秒間は75W/cmであり、その後、更に10秒間は47W/cmであった。
【0199】
図10は、部材厚に沿う研磨された横断面を示す。
【0200】
例7:
例7は、本発明の方法を用いたセラミック製品の製造の様々な温度-時間推移である。
【0201】
図11には、入射光の吸収の温度依存性を示す。高温度では、より長い波長がより強く吸収される。温度の経時的推移は、先ず約800℃の温度において温度プラトーが形成し始め、また温度上昇の顕著な遅延が伴うことを示す。800℃を超える転移点に達すると直ぐに、ほぼ1600℃までの大幅な温度上昇が起こった。転移点未満の温度では、材料による光の吸収は比較的少ない。800℃を超えると、入射光が明らかにより強く吸収される。この例は、リチウムイオン伝導性Li6.4LaZr1.4Ta0.612セラミックでできた1mm厚の圧縮された粉末について行った。
【0202】
これに対して、図12は、入射光の吸収の顕著な温度依存性のない試料の温度-時間推移を示す。この温度曲線は、例1の実験で記録した。
【0203】
例8:
99.99%純度のTiO粉末でできた円板形グリーンボディを、1mmの厚さ及び6.4mmの直径で、700MPaの圧力下に圧縮する。粉末の初期粒度は約300nmである。次いで、このグリーンボディを、一つの側から、好ましくは上から照明する。下側では、前記グリーンボディは、非常に多孔性の酸化アルミニウムウールの薄い(例えば1cm~2cm厚)の層上にまたはその代わりに、約0.12g/cmの密度を有する膨張グラファイトでできた1cmもしくは2cm厚の層上にある。
【0204】
前記の照明により、前記グリーンボディは、100K/秒から500K/秒までの加熱速度で、1600℃の焼結温度に、またはそれ未満でかつ付近の温度に、またはそれ超の温度に加熱し、そしてその温度で10から30秒間保持する。この際、好ましくは、温度は、前記焼結温度を15℃未満下回るかまたは上回る。更に、前記焼結温度は、加熱後に、好ましくは6秒間未満で安定化される。その後、照明を止め、そしてグリーンボディを再び室温に冷却する。この際、この冷却は、前記焼結温度から1000℃未満まで、3秒間未満で行われる。照明のためには、好ましくは、450nmの波長を有するダイオードレーザースタック、Xe閃光ランプ、ハロゲンランプ、UV中圧ランプまたは赤外ランプが使用される。前記焼結温度では、出力密度は、450nmの波長を有するダイオードレーザースタックを用いた場合には好ましくは115から135W/cmである。
【0205】
ナノ多孔度は、好ましくは、透過型電子顕微鏡を用いて、または走査型電子顕微鏡における研磨された表面の顕微鏡画像において検査することができる。図14は、透過型顕微鏡画像を示し、それにはナノ孔を見ることができ、そして個々が標示されている。この際、符号39は、観察された試料厚全体にわたって存在する孔を標示している。観察される孔の総数は、このタイプの孔の数より少なくなることはできない。この際、符号41は、観察された試料厚の一部にわたってのみ存在する孔を標示する。
【0206】
例9:
図15及び16からの強誘電体特性。
【0207】
BaTiO粉末を、化学理論量的に秤量したTiO(99.9%)及びBaCO(99.95%)から慣用の固相合成を用いて885℃で4時間か焼した。これらの原材料は、事前にアトライターミル及びその後に遊星ボールミルで粉砕した。これらの試料を例8に記載のように圧縮し、次いで、参照試料を、酸素中、1220℃で5時間、1分間あたりで10ケルビンの加熱及び冷却速度で焼結した。他の試料を、記載の方法に従い、800W/cm未満の出力密度を有するキセノン閃光ランプを用いて15秒間照射した。
【0208】
分極及び歪みのヒステリシス曲線を、分極についてはソーヤータワーの測定回路を用いて、及び歪みについては光学変位センサーを用いて並行して測定した。更に、測定は、1.5kV/mmまたは-1.5kV/mmの電界強度までバイポーラで行った。図15及び16は、100Hzの周波数を用いて測定した。符号43及び47で標示した実線は、キセノン閃光ランプで焼結した試料の測定された分極及び歪みを表し、符号45及び49は参照試料の分極及び歪みを表す。
【0209】
例10:
図17~19からのドメイン構造の影響。
【0210】
例10では、それぞれ一つの参照試料を従来技術により及び試料をキセノン閃光ランプを用いて焼結した。本発明によるセラミックは、800℃でのエージングステップで後処理し、ここで、加熱及び冷却速度は5K/分であった。他の全ての合成パラメータは、例8及び9に見ることができる。次いで、粒度が15μm、6μm、3μm、1μm及び0.25μmの粒度のダイヤモンドペーストを用いて試料を研磨し、次いで、数時間、振動研磨した。
【0211】
BaTiOでは、二つのタイプのドメイン、すなわち90°ドメイン及び180°ドメインが生じる。両方とも図17に見ることができる。しかし、元の試料のドメイン壁の間隔は、800℃でエージングしたものと比べて明らかに短い点が注目される。より大きなドメイン壁密度ほど、多くの強誘電体及び誘電体特性を変化させることを仮定することができる。例えば、高められたドメイン壁密度は、図19における歪みの上昇に寄与し得ることを仮定することができる。
【0212】
代替的に、ドメイン構造は、図20に示されるように透過型電子顕微鏡を用いても可視化することができる。
[図面の詳細な説明]
図1は、本発明の第二の観点による装置1を示す。
【0213】
装置1は、保持部3を有し、これは、粉末状セラミック原料5を保持する。ここでは、保持部3は土台であり、その上にセラミック材料5が置かれる。このセラミック材料5は直方形のまたはフィルム状のグリーンボディである。
【0214】
更に装置1は光源7を有する。光源7はハロゲンランプであり、これは、赤外波長範囲の光を発する。
【0215】
このためには、装置1は、本発明の第一の観点による方法を実施するように設計されている。
【0216】
このためには、光源7の光9は、セラミック材料5の表面領域11aに入射される。表面領域11aの材料及びその下にあるボリューム領域は、それにより加熱及び焼結される。この際、加熱は素早く行われ、すなわち、焼結後に得られるセラミック製品中に、任意に局所的に、高い密度の転位をそこで生成できるような高加熱速度で行われる。すなわち、これらの任意に局所的に生成される転位は、加熱領域中に存在する。
【0217】
次いで、光源7の光9がセラミック材料5の表面領域11b上に入射し、そしてまったくそれに対応してそこでもセラミック材料5が焼結され、そして任意に高い転位密度が生じるように、光の入射を変化させる。光の入射のこの変化は、例えば、図1には示されていないコントール及び制御ユニットを用いて行われ、これは、一つ以上のセンサー、例えば温度センサー及び光学センサーを有することができる。
【0218】
次いで、セラミック材料5を、その時に製造されたセラミック製品の形で取り出すことができる。
【0219】
図2は、(図2には示されていない)保持部3によって保持されたセラミック材料5の上面図を示す。そこには両表面領域11a及び11bが記載されており、それらは、識別し易くするために、プレス加工品5の縁から隔てて示されている。すなわち、このセラミック材料5は、最初は表面領域11aで、次いで領域11bにおいて、光の入射によって順次的に加熱される(より正確に言えば、当然ながら、なかでも、下にある材料のボリューム領域)。
【0220】
この場合、この際は光の入射は、いわば表面領域11aから表面領域11bへと移行するが、他の実現も可能である。
【0221】
例えば、表面領域11a及び11b上には光を同時に入射することができる。これは、第二の光源を使用することによって、または光源7の光を広幅化することによってである。
【0222】
例えば、グリーンボディ5は、光円錐9に対して相対的に連続的に移動させることもできる。その時、相対的に見ると、グリーンボディ5を光円錐9に向けて移動させることができ、それ故、一定時間後に、表面領域11a内で照明されていることができる。相対的な移動を止めている間、グリーンボディ5は一定時間後に表面領域11b内で照明されていることができ、次いで、グリーンボディ5を、相対的に見て、光円錐9の外に再び移動させることができる。
【0223】
図3は、本発明の第二の観点による装置の一つの実施形態を示し、そこでは、フィルム形態のセラミック材料5は、照明に対して相対的に移動させられる。とりわけ、エンドレステープの形のセラミック材料5を使用でき、この場合、セラミック材料5は層複合体であることもできる。
【0224】
一方のまたは両方の側に、同じまたは(図3において企図形されるように)異なるタイプの光源13が設置されていることができる。光は、各々の光源13に適切な光学系15によって、セラミック材料5の方に向けられる。この際、図3には、ビーム経路17及び照明域19は概略的に描かれている。
【0225】
この際、温度プロファイルは、各々の照明域19の形成、強度の経時的変化によって、及びビーム経路17のまたは光源13の相対的移動、及びセラミック材料によって、個別にコントロールされる。更に、温度プロファイルは、重なり合うようにも使用することができる複数の照明域の使用によって、最適化することができる。
【0226】
図4は、粒度勾配を持つセラミック製品の電子顕微鏡写真を示す。左側には、100μmの範囲の直径を有する大きな粒度が認められる。右側には、明らかにより小さな粒度が認められる。スケールバーは約250μmである。
【0227】
図5及び6は、段階的な密度勾配を有するセラミック製品の電子顕微鏡写真を示す。緻密な表面層の下には、多孔性のボリュームが存在する。スケールバーは図5では100μmであり、図6では50μmである。
【0228】
図7は、図5及び6のセラミック製品への前駆体である、表面だけが処理されたセラミック製品の電子顕微鏡写真を示す。破断面が示されている。ここでは、緻密な層の粒子は、層厚全体にわたって存在することは明らかである。
【0229】
図8は、同様に図5及び6に示されている二酸化チタンのテクスチャの定量化を示す。粒子の結晶構造が一定の方向に配向される確率が示されている。円の中央にあるのは、100方向である。円の縁では、配向は100方向から90°異なっており、ここで、二つの直交方向A1及びA2が記載されている。黒色の線は、或る配向確率が存在する各々の領域を区切っている。これらの線は、それぞれ、統計的確率(英語:「times random」)の倍数の数値を表す。外側から内側への方向に、これらの線の値は、0.71:1:1.41:2:2.83及び4である。
【0230】
図9は、二つのセラミック原料から製造されたセラミック製品の電子顕微鏡写真を示す。鮮明な境界を認めることができる。スケールバーは5μmである。
【0231】
図10は、本発明の方法を用いて製造された多層型キャパシタの電子顕微鏡写真を示す。セラミック部分間には、金属製の導電性構造を認めることができる。スケールバーは200μmである。
【0232】
図11及び12は、本発明の方法を用いたセラミック製品の製造の温度-時間曲線を示す。500℃から3000℃までの温度範囲用の高温計から構成される、温度測定のために使用したデバイスでは、500℃未満の温度は検出できなかった。それ故、この曲線において、500℃の温度では、常に500℃の値が示されている。
【0233】
前記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面に開示される特徴は、個々にだけでなく、任意の組み合わせでも、本発明にとってそれの様々な実施形態において本質的である得る。
【0234】
図13は、本発明の第二の観点による装置を示す。
【0235】
この装置は、電力供給系、エネルギーバッファ、制御技術及び水冷系を含み、これらはハウジング21内に収納されることができる。これは、ケーブル及びホースを用いて、別の遮光ハウジング25に接続することができ、その中には、発光ダイオード及びセラミック材料が存在する。
【0236】
発光ダイオード27はできるだけ密に配置され、そして電力供給系の他に、水冷されたヒートシンクと接続されている。発光ダイオード27の配置は、セラミック材料29の簡単な交換のために装置の上方に設置されている。これは、交換可能な絶縁材31から構成され、その上には、セラミック材料33を載せることができる。
【0237】
ハウジング25は、例えば通風機による冷却系35を有することができる。更に、この装置は高温計37を有することができ、これは、セラミックの表面の温度を読み取ることができる。
【0238】
図14は、例8に記載のナノ孔を有する本発明に従い製造されたTiOの適切な透過型電子顕微鏡写真を示す。ナノ孔39及び41は、図14に例示的に標示されている。ナノ孔39は、観察された試料厚全体にわたって存在することができる。代替的に、ナノ孔41も、試料厚の一部のみを占めることができる。スケールバーは2μmである。
【0239】
図15は、本発明によるセラミック製品43についての電場に依存する分極のヒステリシス曲線を示し、この場合、BaTiOであり、及び参照試料45も同様にBaTiOである。
【0240】
図16は、本発明によるセラミック製品43についての電場に依存する歪みのヒステリシス曲線を示し、この場合、BaTiOであり、及び参照試料45も同様にBaTiOである。
【0241】
図17は、エージングステップを用いずに製造された本発明によるセラミックのピエゾモードでの原子間力顕微鏡画像を示す。四角形の画像の一辺の長さは10μmである。コントラストは、伝導性原子間力顕微鏡チップのたわみによって作り出される。交流電圧を印可することによって、逆圧電効果を利用してドメイン構造を描写する。
【0242】
図18は、エージングステップの後の本発明によるBaTiOセラミックの、ピエゾモードにおける原子間力顕微鏡写真を示す。
【0243】
図19は、図16と同様に、エージングステップを経ていない(51)並びにエージングステップを経た(55)、本発明によるセラミック製品についての電場に依存する歪みのヒステリシス曲線を示し、この場合、BaTiOであり、及び参照試料53も同様にBaTiOである。
【0244】
図20は、例9に記載した本発明によるBaTiOセラミックの透過型電子顕微鏡写真を示す。ナノ多孔性及びドメインの両方が確認される。
【0245】
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.セラミックの製造方法であって、セラミック原料上に光を入射して、このセラミック原料を少なくとも部分的に加熱し、それにより、セラミック製品を生成することを含み、この際、光の入射は、少なくとも0.1mm の表面積に対し及び/または前記セラミック原料の表面積のうちの20%超に対し同時に行い、及び入射される光の出力密度は800W/cm 未満である、前記方法。
2.セラミック原料の前記の部分的な加熱が、(a)1K/秒以上、特に10K/秒以上、特に100K/秒以上、特に1000K/秒以上、(b)10000K/秒以下、特に5000K/秒以下、特に1000K/秒以下、及び/または(c)10K/秒と5000K/秒との間、特に100K/秒と2000K/秒との間、特に100K/秒と1500K/秒との間、特に100K/秒と1000K/秒との間の加熱速度で行われる、前記1.に記載の方法。
3.光の入射によるセラミック原料の加熱、とりわけ部分的な加熱が、(a)少なくとも0.1秒間、少なくとも0.5秒間、少なくとも1秒間、特に少なくとも5秒間、特に少なくとも20秒間、及び/または(b)最長で10分間、特に最長で8分間、特に最長で5分間、特に最長で3分間、特に最長で1分間、特に最長で30秒間、特に最長で10秒間、特に最長で5秒間、特に最長で3秒間、特に最長で1秒間の期間、行われる、前記1.または2.に記載の方法。
4.局所的な転位が、10 /cm 以上、特に10 /cm 以上、特に10 /cm 以上、特に10 /cm 以上、特に10 /cm 以上、特に10 10 /cm 以上、特に10 11 /cm 以上の密度で生成される、前記1.~3.のいずれか一つに記載の方法。
5.前記1.~4.のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)局所的に生成される転位が、セラミック材料の光によって加熱された領域内に存在し;
(ii)入射される光の出力密度が、(a)1W/cm と750W/cm との間、更に好ましくは25W/cm と175W/cm との間であり、及び/または(b)規定のまたは規定可能な目標値が、5秒間未満で5%より良好な、好ましくは2秒間未満で2%より良好な、更に好ましくは0.5秒間未満で1%より良好な精度で達成され、その後に安定化され、
及び/または
(iii)出力密度及び/または温度プロファイルを自由に設計できる、
前記方法。
6.セラミック原料が、少なくとも一種のセラミック層状複合材、少なくとも一種のセラミックコンポジット材料及び/もしくは少なくとも一種のセラミック粉末を含み、及び/またはフィルム、エンドレステープ、プレス加工品、特に直方形のプレス加工品の形で及び/もしくはソリッドボディとして提供される、前記1.~5.のいずれか一つに記載の方法。
7.前記1.~6.のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)セラミック原料の厚さが、0.00005mmと20mmとの間、特に0.001mmと10mmとの間、特に0.1mmと5mmとの間、特に0.5mmと4.0mmとの間であり;
(ii)セラミック原料が材料としてSrTiO 及び/もしくはTiO を含むかまたはからなり、及び/またはセラミック製品がセラミック膜を含むかまたはセラミック膜であり;
及び/または
(iii)セラミック原料が、以下の材料:
(a)任意のセラミック材料、とりわけ、結晶構造を有する非金属系無機材料;
(b)ペロブスカイト構造、スピネル構造、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造、塩化ナトリウム構造またはフッ化物構造を有するセラミック;
(c)チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、チタン酸ランタンリチウム、ジルコン酸ランタンリチウム、タンタル酸ランタンリチウム、酸化コバルトリチウム、酸化マンガンリチウム、酸化マンガンニッケルリチウム及び/または酸化アルミニウムをベースとし、各々、任意のドープ用添加剤及び/または焼結添加剤並びに複数のこれらの材料の混合物を含む、セラミック;
(d)任意の金属;
または/及び
(e)次のものを含む群からの一種以上の材料:銀、リチウム、パラジウム、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、鉄、ニオブ、クロム、バナジウム、イリジウム、タンタル、オスミウム、レニウム、モリブデン、タングステン、マグネシウムまたは複数のこれらの金属からなる合金;
(f)主として結晶構造を有さず、焼結プロセスを用いてその形状を得る任意の非金属系無機材料;
(g)次のものを含む群からの一種以上の材料:シリケート繊維、ホウケイ酸塩ガラス及びケイ化ホウ素;
のうちの一種以上を含む、
前記方法。
8.セラミック原料の少なくとも一つの表面、とりわけ側面、特に主側面が、光によって、特に完全にまたは部分的に照明される、前記1.~7.のいずれか一つの記載の方法。
9.前記1.~8.のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)とりわけ入射する光に対してセラミック材料を、相対的に、特に連続的に移動させながら、光をセラミック原料の複数の領域、とりわけ表面領域に対し並行に及び/または順次的に入射し、それによって、並行にまたは順次的に、複数の局所的な箇所に転位をセラミック製品において生成し;
(ii)加熱域における照射によって、四角形であるかまたはユーザーによってそれらの形を自由に選択可能に設計できる、規定の幾何学的形状、とりわけ大きな表面積を有する幾何学的形状を形成し;
(iii)照射を、10秒間未満、好ましくは1秒間未満、更に好ましくは0.1秒間未満、好ましくは0.01秒間未満、更に好ましくは1ミリ秒間未満、更に好ましくは0.1ミリ秒間未満の遅れをもって、90%超減少させ、及び/または照射を止めることによって、10K/秒超、更に好ましくは50K/秒超、更に好ましくは200K/秒超の冷却速度が達成される;
及び/または
(iv)温度プロファイルを、局所的にまたは/及び経時的に様々にコントロールすることができる、
前記方法。
10.前記1.~9.のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)光が、可視波長範囲または非可視波長範囲、とりわけUV範囲または可視範囲の波長を有し、特に、このような波長のみを有し、
(ii)光が、200から700nmまでの範囲の波長を含み、特にこのような波長のみを有し、
(iii)光が、少なくとも一つの光源、とりわけ少なくとも一つの発光ダイオード、少なくとも一つのレーザー、Xe閃光ランプ、少なくとも一つのハロゲンランプ、少なくとも一つのUVランプ、少なくとも一つの中圧UV放射器、及び/または少なくとも一つの金属蒸気ランプ、少なくとも一つの赤外放射器を含む少なくとも一つの光源によって放射され、
(iv)光が、光学系によってセラミック原料に指向され、及び/もしくは特に加熱されている領域に収束される、
及び/または
(v)光が、セラミック原料を、その表面で及び/または表面に隣接するボリューム領域内で加熱する、
前記方法。
11.セラミック原料において及び/またはセラミック製品において、少なくとも1800℃の温度が達成される、前記1.~10.のいずれか一つに記載の方法。
12.光の更に別の入射を追加的に含み、ここで前記光の更に別の入射が、少なくとも1500W/cm の出力密度及び最長で50ミリ秒間の期間で行われる、前記1.~11.のいずれか一つに記載の方法。
13.エージングステップを含み、このステップでは、セラミック製品は、300℃から1000℃までの範囲の温度で、少なくとも10秒間の期間、維持される、前記1.~12.のいずれか一つに記載の方法。
14.800℃から100℃までの温度範囲における冷却速度が、少なくとも100Kの間隔にわたって、1秒間あたり最大で1ケルビンである、前記1.~13.のいずれか一つに記載の方法。
15.装置、とりわけ、(i)(転位を含むかまたは含まない)セラミックの製造のための、(ii)前記1.~14.のいずれか一つに記載の方法を実施するための、及び/または(iii)前記1.~14.のいずれか一つに記載の方法を実施するように設計されている、装置であって、
-セラミック原料を保持するための少なくとも一つの保持部、及び
-前記保持部に保持されたまたは保持可能なセラミック原料に対し光を入射するための少なくとも一つの光源、
を含み、
特に、光をセラミック原料上に入射して、このセラミック原料を少なくとも部分的に加熱し、それによって、セラミック製品を生成するように設計されており、及び前記保持部は絶縁材を含む、前記装置。
16.絶縁材の熱伝導率が、1400℃で最大で10W/(m K)である、前記15.に記載の装置。
17.前記15.または16.に記載の装置であって、
a.発光ダイオードがヒートシンク上に搭載され、及び任意に、とりわけ使用した光から環境を保護する扱いやすいハウジング内でセラミック材料を照明するように、マイクロレンズ及び/またはレンズを備え、
b.光出力が少なくとも5W/cm を達成することができ、
c.処理空間がモジュール式に設計されており、及び/または交換可能な絶縁材を有し、及び/または温度を高温計で読み取ることができ、及び/または光源が、石英ガラス板によってセラミック材料から隔離されている、
d.エネルギーバッファが、電気的接続負荷が3.6kW未満である場合であっても、3kW超の光出力を可能にする、及び/または
e.追加的にまたは代替的に、発光ダイオードを配置するために、レーザーダイオードスタックが使用される、
前記装置。
18.絶縁材が、ウール、ネット及び/またはフィルムの形で存在する、前記15.~17.のいずれか一つに記載の装置。
19.絶縁材が、一種以上の貴金属、膨張グラファイト、酸化アルミニウム及びこれらの二種以上の組み合わせからなる群から選択される材料を含む、前記15.~18.のいずれか一つに記載の装置。
20.絶縁材が、0.25から5.0cmまでの範囲の厚さを有する、前記15.~19.のいずれか一つに記載の装置。
21.絶縁材がガス膜を含む、前記15.~20.のいずれか一つに記載の装置。
22.とりわけ前記1.~14.のいずれか一つに記載の方法及び/または前記15.~21.のいずれか一つに記載の装置を用いて製造される及び/または製造可能な、セラミック製品。
23.前記22.に記載のセラミック製品であって、
(i)セラミック製品の厚さが、0.0005mmと20mmとの間であり、ここで、セラミック製品はセラミック膜を含むかまたはセラミック膜であり、及び/またはセラミック製品が、材料としてSrTiO 及び/もしくはTiO を含むかもしくはからなり;(ii)セラミック製品が、次の材料の一種以上、すなわち:
(a)任意のセラミック材料、とりわけ、結晶構造を有する非金属系無機材料;
(b)ペロブスカイト構造、スピネル構造、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造、塩化ナトリウム構造またはフッ化物構造を有するセラミック;
(c)チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、チタン酸ランタンリチウム、ジルコン酸ランタンリチウム、タンタル酸ランタンリチウム、酸化コバルトリチウム、酸化マンガンリチウム、酸化マンガンニッケルリチウム及び/または酸化アルミニウムをベースとし、各々、任意のドープ用添加剤及び/または焼結添加剤並びに複数のこれらの材料の混合物を含む、セラミック;
(d)任意の金属;
または/及び
(e)次のものを含む群からの一種以上の材料:銀、リチウム、パラジウム、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、鉄、ニオブ、クロム、バナジウム、イリジウム、タンタル、オスミウム、レニウム、モリブデン、タングステン、マグネシウムまたは複数のこれらの金属からなる合金;
(f)主として結晶構造を有さず、焼結プロセスを用いてその形状を得る任意の非金属系無機材料;
(g)シリケート繊維、ホウケイ酸塩ガラス及びケイ化ホウ素、
を含み:
(iii)セラミック製品が、10 /cm 以上、特に10 /cm 以上、特に10 /cm 以上、特に10 /cm 以上、特に10 /cm 以上、特に10 10 /cm 以上、特に10 11 /cm 以上の密度で少なくとも局所的に転位を含み;
及び/または
(iv)セラミック製品が、粒度勾配、テクスチャ、高い耐熱性、もしくは/及び均質な材料特性を有する、
前記セラミック製品。
24.前記22.または23.に記載のセラミック製品であって、
a.粒度が、50μm未満では一つの方向に5倍超変化し、及び粒度が、直行方向では二倍未満変化し、
b.多孔度が、5μm未満は5%未満、とりわけ開口多孔度がないものから、15%超、とりわけ開口した浸透性多孔度を有するものまで変移し、及び/または
c.粒子の15%超が、主軸からの15°未満の偏差で方向づけされている、
前記セラミック製品。
25.複数のレイヤーを有する層状複合材である、前記22.~24.のいずれか一つに記載のセラミック製品。
26.透過型電子顕微鏡写真において、100μm の表面上で少なくとも4個のナノ孔が存在するような多孔度を有する、前記22.~25.のいずれか一つに記載のセラミック製品。
27.セラミック製品の飽和分極が、従来技術により焼結された同じ組成のセラミック製品の飽和分極を少なくとも10%上回る、前記22.~26.のいずれか一つに記載のセラミック製品。
28.セラミック製品の保磁力が、従来技術により焼結された同じ組成のセラミック製品の保磁力の最大で50%である、前記22.~27.のいずれか一つに記載のセラミック製品。
29.セラミック製品の歪みが、従来技術により焼結された同じ組成のセラミック製品の歪みを少なくとも15%上回る、前記22.~28.のいずれか一つに記載のセラミック製品。
【符号の説明】
【0246】
1 装置
3 保持部
5 セラミック材料
7 光源
9 光
11a、11b 表面領域
13 光源
15 光学系
17 ビーム経路
19 照明域
21 電力供給系、エネルギーバッファ、制御技術及び水冷のためのハウジング
23 ケーブル及びホースの接続
25 遮光性ハウジング
27 水冷式ヒートシンクを備えた発光ダイオードの配置
29 セラミック材料及び絶縁材の簡単な交換のための装置
31 交換可能な絶縁材
33 セラミック材料
35 冷却
37 高温計
39,41 ナノ孔
43 光焼結された試料の分極
45 参照試料の分極
47 光焼結された試料の歪み
49 参照試料の歪み
51 エージング前の歪み
53 参照例の歪み
55 エージング後の歪み
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックの製造方法であって、セラミック原料上に光を入射して、このセラミック原料を少なくとも部分的に加熱し、それにより、セラミック製品を生成することを含み
-光の入射は、前記セラミック原料の表面積のうちの20%超に対し同時に行い、
-入射される光の出力密度は10W/cm と750W/cm との間、更に好ましくは20W/cm と200W/cm との間であり、
-前記光は、200から700nmまでの、更に好ましくは300から500nmまでの範囲の波長を有し、及び
-前記セラミック原料は、絶縁材によって、保持部に対し熱的にデカップリングされている、
前記方法。
【請求項2】
セラミック原料の前記の部分的な加熱が、
(a)1K/秒以上、特に10K/秒以上、特に100K/秒以上、特に1000K/秒以上、及び/または
(b)10000K/秒以下、特に5000K/秒以下、特に1000K/秒以下
の加熱速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光の入射によるセラミック原料の加熱、とりわけ部分的な加熱が、
(a)少なくとも0.1秒間、少なくとも0.5秒間、少なくとも1秒間、特に少なくとも5秒間、特に少なくとも20秒間、及び/または
(b)最長で10分間、特に最長で8分間、特に最長で5分間、特に最長で3分間、特に最長で1分間、特に最長で30秒間、特に最長で10秒間、特に最長で5秒間、特に最長で3秒間、特に最長で1秒間、
の期間、行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記セラミック原料が吸光性添加剤を含まない、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
セラミック原料が、少なくとも一種のセラミック層状複合材、少なくとも一種のセラミックコンポジット材料及び/もしくは少なくとも一種のセラミック粉末を含み、及び/またはフィルム、エンドレステープ、プレス加工品、特に直方形のプレス加工品の形で及び/もしくはソリッドボディとして提供される、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)セラミック原料の厚さが、0.00005mmと20mmとの間、特に0.001mmと10mmとの間、特に0.1mmと5mmとの間、特に0.5mmと4.0mmとの間であり;
(ii)セラミック原料が材料としてSrTiO及び/もしくはTiOを含むかまたはからなり、及び/またはセラミック製品がセラミック膜を含むかまたはセラミック膜であり;及び/または
(iii)セラミック原料が、以下の材料:
(a)任意のセラミック材料、とりわけ、結晶構造を有する非金属系無機材料;
(b)ペロブスカイト構造、スピネル構造、閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造、塩化ナトリウム構造またはフッ化物構造を有するセラミック;
(c)チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、二ホウ化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、チタン酸ランタンリチウム、ジルコン酸ランタンリチウム、タンタル酸ランタンリチウム、酸化コバルトリチウム、酸化マンガンリチウム、酸化マンガンニッケルリチウム及び/または酸化アルミニウムをベースとし、各々、任意のドープ用添加剤及び/または焼結添加剤並びに複数のこれらの材料の混合物を含む、セラミック;
(d)任意の金属
e)次のものを含む群からの一種以上の材料:銀、リチウム、パラジウム、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、鉄、ニオブ、クロム、バナジウム、イリジウム、タンタル、オスミウム、レニウム、モリブデン、タングステン、マグネシウムまたは複数のこれらの金属からなる合金;
(f)主として結晶構造を有さず、焼結プロセスを用いてその形状を得る任意の非金属系無機材料;
(g)次のものを含む群からの一種以上の材料:シリケート繊維、ホウケイ酸塩ガラス及びケイ化ホウ素;
のうちの一種以上を含む、
前記方法。
【請求項7】
セラミック原料の少なくとも一つの表面、とりわけ側面、特に主側面が、光によって完全に照明される、請求項1~のいずれか一つの記載の方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一つに記載の方法であって
(i)照射によって、加熱域において、四角形であるかまたはユーザーによってそれらの形を自由に選択可能に設計できる、規定の幾何学的形状、とりわけ大きな表面積を有する幾何学的形状を形成し;
(ii)照射を、10秒間未満、好ましくは1秒間未満、更に好ましくは0.1秒間未満、好ましくは0.01秒間未満、更に好ましくは1ミリ秒間未満、更に好ましくは0.1ミリ秒間未満の遅れをもって、90%超減少させ、及び/または照射を止めることによって、10K/秒超、更に好ましくは50K/秒超、更に好ましくは200K/秒超の冷却速度が達成される;及び/または
(iii)温度プロファイルを、局所的にまたは/及び経時的に様々にコントロールすることができる、
前記方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一つに記載の方法であって
(i)光が、200から700nmまでの範囲の波長のみを有し、
(ii)光が、少なくとも一つの光源、とりわけ少なくとも一つの発光ダイオード、少なくとも一つのレーザー、Xe閃光ランプ、少なくとも一つのハロゲンランプ、少なくとも一つのUVランプ、少なくとも一つの中圧UV放射器、及び/または少なくとも一つの金属蒸気ランプ、少なくとも一つの赤外放射器を含む少なくとも一つの光源によって放射され、
(iii)光が、光学系によってセラミック原料に指向され、及び/もしくは特に加熱されている領域に収束される、及び/または
(iv)光が、セラミック原料を、その表面で及び/または表面に隣接するボリューム領域内で加熱する、
前記方法。
【請求項10】
光の更に別の入射を追加的に含み、ここで前記光の更に別の入射が、少なくとも1500W/cmの出力密度及び最長で50ミリ秒間の期間で行われる、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
エージングステップを含み、このステップでは、セラミック製品は、300℃から1000℃までの範囲の温度で、少なくとも10秒間の期間、維持される、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
800℃から100℃までの温度範囲における冷却速度が、少なくとも100Kの間隔にわたって、1秒間あたり最大で1ケルビンである、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
求項1~12のいずれか一つに記載の方法を実施するように設計されている、装置であって、
-セラミック原料を保持するための少なくとも一つの保持部、及び
-前記保持部に保持されたまたは保持可能なセラミック原料に対し光を入射するための少なくとも一つの光源、
を含み、
特に、光をセラミック原料上に入射して、このセラミック原料を少なくとも部分的に加熱し、それによって、セラミック製品を生成するように設計されており、及び前記保持部は絶縁材を含む、前記装置。
【請求項14】
絶縁材の熱伝導率が、1400℃で最大で10W/(mK)である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の装置であって、
a.発光ダイオードがヒートシンク上に搭載され、及び任意に、とりわけ使用した光から環境を保護する扱いやすいハウジング内でセラミック材料を照明するように、マイクロレンズ及び/またはレンズを備え、
b.光出力が少なくとも10W/cmを達成することができ、
c.処理空間がモジュール式に設計されており、及び/または交換可能な絶縁材を有し、及び/または温度を高温計で読み取ることができ、及び/または光源が、石英ガラス板によってセラミック材料から隔離されている、及び/または
e.追加的にまたは代替的に、発光ダイオードを配置するために、レーザーダイオードスタックが使用される、
前記装置。
【請求項16】
絶縁材がガス膜を含む、請求項1315のいずれか一つに記載の装置。
【国際調査報告】