(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】多層複合材料
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20240319BHJP
C01B 32/186 20170101ALI20240319BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20240319BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240319BHJP
A61F 13/00 20240101ALI20240319BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240319BHJP
A61L 15/22 20060101ALI20240319BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240319BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C01B32/186
C01B32/194
B32B7/025
A61F13/00 301Z
A61F13/00 301C
A61F13/00 T
A61P17/02
A61L15/22 310
A61K9/70
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555621
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 SG2022050129
(87)【国際公開番号】W WO2022191782
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】10202102579P
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バルバロス・オージーイルマス
(72)【発明者】
【氏名】ガン・シュ
(72)【発明者】
【氏名】デチアン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】チー・タット・トー
(72)【発明者】
【氏名】チアン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヘン・ソ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4F100
4G146
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076BB31
4C076CC19
4C076EE03
4C076EE05
4C076FF01
4C076FF70
4C081AA12
4C081BA14
4C081BA17
4C081BB02
4C081CA02
4C081CA13
4C081DA02
4C081DC04
4F100AA37A
4F100AD11A
4F100AK01B
4F100AK17B
4F100AK21B
4F100AK46B
4F100BA02
4F100BA08
4F100DC21A
4F100GB66
4F100JG04
4F100JG04B
4F100YY00A
4F100YY00B
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD23
4G146AD40
4G146BC09
4G146BC43
4G146CB19
4G146CB26
4G146CB35
(57)【要約】
第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも1つの炭素層であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いに間隔があけられ、前記第2の方向軸が、同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交している、炭素層と、強誘電性ポリマー層とを含む、多層複合材料が提供される。多層複合材料を製造する方法が更に提供される。多層複合材料を含む包帯又はバイオセンシング装置が更に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも1つの炭素層であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いに間隔があけられており、前記第2の方向軸が、同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交している、炭素層と、強誘電性ポリマー層とを含む、多層複合材料。
【請求項2】
前記炭素層が、2次元の炭素層であり、前記炭素層の炭素は、アモルファス炭素、グラフェン、グラフェン酸化物、還元されたグラフェン酸化物、グラファイト、又はそれらの組み合わせ、グラフェン又はアモルファス炭素からなる群から選択される、請求項1に記載の多層複合材料。
【請求項3】
前記炭素層が、0.34nm~100nmの範囲の厚さを有する、請求項1又は2に記載の多層複合材料。
【請求項4】
前記炭素層の炭素が、バイオ材料又は非有機材料と付着される、請求項1から3のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項5】
前記強誘電性ポリマー層の強誘電性ポリマーが、フルオロポリマー、ポリアミド、ビニルポリマー、それらのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項6】
前記強誘電性ポリマー層が、300nm~2000nmの範囲の厚さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項7】
前記多層複合材料が、導電性であり、前記炭素層及び前記強誘電性ポリマー層からなる二重層1つ当たり、100Ω/sq~200Ω/sqの間のシート抵抗を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項8】
多層複合材料が、各二重層が1つの炭素層及び1つの強誘電性ポリマー層のみからなる、複数の二重層;又は各々の積み重ねられた層が1つより多い炭素層及び1つの強誘電性ポリマー層のみからなる、複数の積み重ねられた層を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項9】
(a)成長基板上に少なくとも1つの炭素層をもたらす工程と、
(b)前記炭素層上に強誘電性ポリマー層を適用する工程と、
(c)前記強誘電性ポリマー層を分極させる工程と、
(d)前記炭素層中に、第1の方向軸に沿った複数のクラックを形成する工程であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いに間隔があけられており、前記第2の方向軸が、前記炭素層の同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交している、工程と
を含む多層複合材料を製造する方法。
【請求項10】
前記形成する工程(d)が、(d1)前記強誘電性ポリマーに0.5N/cm
2を超える、又は少なくとも0.5N/cm
2の圧力を適用する工程;又は(d2)前記成長基板から前記炭素/強誘電性ポリマー層を、引き剥がし速度を増大させて除去する工程;又は工程(d1)及び(d2)の両方を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記適用する工程(d)の前に、
(d3)前記強誘電性ポリマー層に剥離接着剤を適用する工程と、
(d4)任意選択で場合によっては、前記成長基板から前記炭素/強誘電性ポリマー層を除去する工程と
を更に含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記適用する工程(d)の後に、
(d5)前記強誘電性ポリマー層から前記剥離接着剤を除去する工程
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記適用する工程(d)又は適用する工程(d5)が、30℃~160℃の範囲の温度で行われる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記の工程(a)が、
(a1)前記成長基板上に第1の炭素層を適用する工程と、
(a2)前記第1の炭素層上に第2の炭素層を適用する工程と、
(a3)前記適用する工程(a2)を、1~3回繰り返す工程と
を含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(e)工程(a)~(d)を繰り返して、後に続く多層複合材料を形成する工程と、
(f)工程(a)~(d)又は工程(a)~(f)によって先に製造された多層複合材料上に、前記の後に続く多層複合材料を積層する工程と
を更に含む、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記分極させる工程(c)が、前記強誘電性ポリマー層の両方の表面にわたって反対の極性を有する外部電界を導入する工程を含み、前記表面は互いに対して反対側にある、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
多層複合材料を含む包帯であって、前記多層複合材料が、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも炭素層であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いに間隔をあけられ、前記第2の方向軸が、同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交する、炭素層と、強誘電性ポリマー層とを含む、包帯。
【請求項18】
前記多層複合材料内又は前記多層複合材料の表面上の少なくとも1つの点と接触している少なくとも1つの電極を更に含む、請求項17に記載の包帯。
【請求項19】
前記炭素層の前記炭素が、バイオ材料又は非有機材料と付着されている、請求項17又は請求項18に記載の包帯。
【請求項20】
前記バイオ材料又は非有機材料が、前記包帯に電界が適用され次第、前記包帯から剥離されることが可能である、請求項19に記載の包帯。
【請求項21】
前記多層複合材料が、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも炭素層であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いに間隔があけられており、前記第2の方向軸が、同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交している、炭素層と、強誘電性ポリマー層とを含む、多層複合材料を含むバイオセンシング装置。
【請求項22】
前記多層複合材料内又は前記多層複合材料の表面上の少なくとも1つの点と接触している少なくとも1つの電極を更に含む、請求項21に記載のバイオセンシング装置。
【請求項23】
前記電極が、電子装置に接続された、請求項21又は22に記載のバイオセンシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、シンガポール知的財産庁に2021年3月12日に出願されたシンガポール出願第10202102579P号に基づく優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は一般に、炭素層及び強誘電性ポリマー層を含む多層複合材料に関する。本発明はまた、多層複合材料を製造する方法に関する。本発明は更に、多層複合材料を含む包帯に関する。
【背景技術】
【0003】
グラフェン及び他の新規の炭素誘導体は、機械、光学、電子、医学、及び化学分野におけるその実用的用途に関して鋭意検討されている。ナノサイズのグラフェン及びその誘導体が、数多くの態様において、多様な用途を用いて厳密に検討されている一方で、CVDベースの製作手法の厳格な高い要求に起因して、大面積グラフェンシートに関する研究への鋭意さは著しく低い。最先端のグラフェン含有バイオセンサーは、グラフェンをその成長基板から転写するために、CVD製作後、化学エッチング液を必要とする。一般に、グラフェンは、化学エッチング法によって転写され、エッチング液及び中間支持ポリマーフィルムからの汚染物及び残渣を必然的に含有する。ウェット転写手法に関する主な障害は、グラフェンの再現性及び均一性が良くないことである。大面積シートグラフェンの製造のこれらの課題はまた、製造において必要とされるウェット化学プロセスの不利な点に起因して、工業的採用及び用途が限定されている。
【0004】
大面積グラフェンシートがめったに報告されないグラフェンのバイオメディカル用途の態様においても、類似の現象が観察されている。市販されている最先端のグラフェン含有バイオセンサーは、グラフェンの導電性を利用するが、抗細菌性は有していない。他方で、抗細菌性を有するグラフェン酸化物(GO)及び還元されたグラフェン酸化物(rGO)に基づくMXene媒介多孔質グラフェン足場(MXene-mediated porous graphene scaffold)を使用する、慢性創傷の管理のためのスマート包帯がある一方で、この包帯では、導電性が損失されており、物理化学特性が変わり、バイオメディカル環境におけるそのスマートな用途が限定されている。
【0005】
これら2つの特性を同時に有するバイオ材料は極めてまれであるため、抗菌性の透明包帯の市場は著しく小さい。抗菌性要件を満たすために、被覆用品内の微生物を殺傷する抗菌性バリアとなるように、銀が包帯/被覆用品に導入された。しかしながら、銀を含有する殺菌剤の未知の医療問題に起因して、人体における銀ナノ粒子の蓄積は望ましくない。それに代えて、抗菌性保護を与えるために、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)が被覆用品接着剤に組み込まれ、調製された皮膚上での皮膚微生物叢の成長が最大7日まで著しく阻害されることが示された。しかしながら、基板表面上のCHG部分の修飾及び機能化が冗長で多段階の手順であるため、これは、工業的規模の製造を厳しく限定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上で述べた1又は複数の不利な点を克服する、又は少なくとも改善する材料が必要とされている。
【0007】
上で言及している1又は複数の不利な点を克服する、又は少なくとも改善するような材料を製造する方法を提供する必要がある。
【0008】
上で言及している1又は複数の不利な点を克服する、又は少なくとも改善する包帯を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの側面において、本開示は、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも1つの炭素層であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ(互いに空間的に離れており)、前記第2の方向軸が、同じ平面内で前記第1の方向軸に実質的に直交している、多層複合材料を提供する。
【0010】
有利には、複数の巧みに作られた(engineered)周期的クラックを含む多層複合材料は、高被覆率の炭素を有してもよく、これは炭素の連続相と考えうる。巧みに作られた周期的クラックは、少なくとも1つの方向軸において導電性である多層複合材料の製造の再現性及び一貫性を増大させうる。したがって、そのような巧みに作られた周期的クラックを有する多層複合材料は、例えば、ランダムに生成されたクラックを含むグラフェン層(ここでは、クラックがどのように生成されるかが制御されていない)よりも有利であり、その場合はグラフェンの他の領域又は島(アイランド)と連続相を形成していないグラフェンの領域又は島をもたらし、それにより、そのようなランダムに生成されたクラックを横切っての導電性が皆無となる。
【0011】
更に有利には、多層複合材料は少量の化学的混入物を示し、したがって、その純度、及び多様な用途における利用の適切さを向上させてもよい。
【0012】
より更に有利には、多層複合材料は、典型的にはナノサイズ又はミクロサイズである従来のグラフェンと比較して、比較的大きい面積のグラフェンシートを含み、スケールアップが容易になり、機械、光学、電子、及び化学分野における工業規模の製造が可能となりうる。
【0013】
より更に有利には、多層複合材料は、シート抵抗200Ω/sq未満の良好な導電性を示し、したがって、複合材料を用いた電気及び電子用途を可能にしうる。
【0014】
より更に有利には、多層複合材料は、通常の光スペクトルにおいて95%超の光透過率の良好な透過性を示し、したがって、多層複合材料によって被覆された表面の可視性が重要である用途におけるその使用を可能にしうる。
【0015】
より更に有利には、多層複合材料は抗菌活性を示し、したがって、抗菌性材料としてのその使用を可能にしうる。
【0016】
より更に有利には、多層複合材料は、医療用途として使用される場合、細菌又はウイルス感染率を低減し、創傷治癒を速めることができる。
【0017】
より更に有利には、多層複合材料は、ヒト間葉系幹細胞の骨分化の制御及び促進による創傷治癒を促進し、細胞付着及び血管形成を高め、幹細胞移動及び増殖を模擬し、したがって、バイオメディカル材料としての恩恵をもたらしうる。
【0018】
より更に有利には、多層複合材料はバイオ材料を用いて機能化され、したがって、バイオメディカル材料としての恩恵をもたらしうる。
【0019】
別の態様において、本開示は、
(a)成長基板上に少なくとも1つの炭素層を用意する工程と、
(b)前記炭素層上に強誘電性ポリマー層を適用する工程と、
(c)前記強誘電性ポリマー層を分極する工程と、
(d)前記炭素層中に、第1の方向軸に沿った複数のクラックを形成する工程であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ、前記第2の方向軸が、前記炭素層の同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交する、工程と
を含む、多層複合材料を製造する方法を提供する。
【0020】
有利には、多層複合材料を製造する方法は、多層複合材料の炭素層に周期的クラックを導入して多層複合材料の浸透性及び通気性を調整し、したがって、例えば、医療用包帯として使用される場合、多層複合材料の有効性を高めてもよい。巧みに作られた(engineered)周期的クラックを用いて多層複合材料を製造する方法は、更に有利には、少なくとも1つの方向軸において導電性である多層複合材料の製造の再現性及び一貫性を増大させることができてもよい。
【0021】
更に有利には、多層複合材料を製造する方法は、乾式製造法(dry-phase production technique)を提供し、したがって、化学エッチング液を有する複合材料の使用、及び結果として起こり得るその汚染を排除してもよい。
【0022】
より更に有利には、乾式製造法を用いて多層複合材料を製造する方法は、化学エッチング液の使用と比較して、複合材料上にパターニングする可能性、及びより多様な好適なターゲット基板への容易な転写を可能にする。
【0023】
より更に有利には、多層複合材料を製造する方法により、容易な製造法を提供して、大面積グラフェンシート等の大面積炭素積層体を製造し、したがって、グラフェン材料の工業的規模拡大性(スケーラビリティ)を向上させてもよい。
【0024】
より更に有利には、多層複合材料を製造する方法は、大面積グラフェンシート等の大面積炭素層を製造し、したがって、グラフェン材料の工業的スケーラビリティを向上させてもよい。
【0025】
より更に有利には、多層複合材料を製造する方法は、繰り返し可能な手順からなり、複合材料の異なる順序、厚さ、及び形態を得て、したがって、多層複合材料の機械及び物理特性を向上させてもよい。
【0026】
更に別の側面において、本開示は、多層複合材料を含む包帯であって、多層複合材料が、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも1つの炭素層であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ、前記第2の方向軸が、同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交する、炭素層と、強誘電性ポリマー層とを含む包帯を提供する。
【0027】
炭素層中の作られた周期的クラック(engineered periodic cracks)に起因して、上に言及した利点に加えて、作られた周期的クラックにより、包帯におけるガス浸透性及び通気性の制御を増大することが可能になりうる。有利には、多層複合材料を含む包帯は、多層複合材料の導電性に起因して、創傷治癒のための電子的刺激が可能であり、したがって、細胞遊走及び増殖を促進することによって、皮膚の創傷治癒のための恩恵を向上させてもよい。
【0028】
更に有利には、多層複合材料を含む包帯は、多層複合材料の抗菌性に起因して、創傷治癒を促進することが可能であり、したがって、従来の医療用包帯よりも医療的な恩恵を提供しうる。
【0029】
より更に有利には、多層複合材料を含む包帯は、多層複合材料の透過性に起因して、創傷の視覚によるモニタリングが可能であり、したがって、従来の医療用包帯よりも医療的な恩恵を提供しうる。
【0030】
より更に有利には、多層複合材料を含む包帯は、90度より大きい接触角を有する疎水性表面を含み、したがって、包帯による血液吸収及び二次的出血の誘発を低減すること、包帯の除去の容易さを促進すること、不浸透性層として作用することによって血液損失を低減しうること、及び包帯を通る血液浸出を防止することによって血液凝固及び凝集を促進しうることを助け、したがって、従来の医療用包帯よりも医療的な恩恵を提供しうる。
【0031】
更に別の態様において、本開示は、多層複合材料が、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも炭素層であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ、前記第2の方向軸が、同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交する、炭素層と、強誘電性ポリマー層とを含む、多層複合材料を含むバイオセンシング装置を提供する。
【0032】
有利には、多層複合材料を含むバイオセンシング装置は、多層複合材料の導電性及び強度に起因してスマートバイオセンサーとして機能することができ、したがって、従来のバイオセンサーより向上された感度及び低い検出限界値で、バイオデータの感知、並びに排膿、創傷pH、及び温度等のパラメーターの創傷診断等の恩恵を提供しうる。
【0033】
更に有利には、多層複合材料を含む包帯は、抗原、特徴的なタンパク質、DNA、及びRNAを検出する能力に起因して迅速なウイルス感知が可能であり、したがって、従来の医療用包帯よりも医療的な恩恵を提供しうる。
【0034】
[定義]
本明細書で使用される以下の単語及び用語は、以下に示す意味を有する。
【0035】
「多層」という用語は、複合材料又は材料と併せて使用される場合、複合材料又は材料が層になった構造を有することを指すように広く解釈されるべきであり、層になった構造は2つ以上の層からできている。その場合、「二重層」という用語は、2層を有することを指す。
【0036】
「複合材料」という用語は、複数の別々の及び別個の材料からできている製品又は品目を指すように広く解釈されるべきである。
【0037】
「グラフェン」という用語は、炭素の単一又は多層2次元平面シートを指すように広く解釈されるべきであり、各炭素原子は、sp2軌道においてσ結合を介して他の3つの炭素原子と共有結合している。
【0038】
「アモルファス炭素」という用語は、いかなる画定された結晶化度もない、炭素の単一又は多層2次元又は3次元アモルファスシートを指すように広く解釈されるべきであり、炭素原子は、sp、sp2、又はsp3軌道、又はそれらの組み合わせにおいてσ結合を介して他の炭素原子と共有結合していてもよい。
【0039】
「強誘電性ポリマー」という用語は、強誘電性を示すように外部電界を使用して操作することができる任意のポリマーを指すように広く解釈されるべきであり、ポリマーは、極性又は方向が異なる更に別の外部電界に供された場合に切り替えられうる又は反転されうる永久電気分極電荷を表面上で示すことになるようなものである。
【0040】
「成長基板」という用語は、炭素原子が成長して炭素の層を形成する基板と広く解釈されるべきである。
【0041】
「ターゲット基板」という用語は、層状に剥離された多層複合材料が転写される二次的な基板と広く解釈されるべきである。
【0042】
「層状に剥離する」という用語は、分離すること、又は異なる層状要素の複合材料の積み重ねから、要素の個々の若しくは複数の層を分離する行為を指すように広く解釈されるべきである。
【0043】
「包帯」という用語は、任意の体表面上に、それ単体で適用されるか、又は接着テープ、医療用被覆用品、又は縫合等の工夫された手段によって支持されて保持される、材料の細片又はシートを指すように広く解釈されるべきである。
【0044】
「1次元の」という用語は、3次元形状空間において、長さ等の、関心対象である主たる重要な形状寸法が1つのみであり、幅及び高さ等の他の2つの形状寸法が重要でない構造の形状説明を指すように広く解釈されるべきである。
【0045】
「2次元の」という用語は、3次元形状空間において、例が(a)長さ及び幅、又は(b)長さ及び高さ、又は(c)幅及び高さである、関心対象である主たる重要な形状寸法が2つのみであり、(a)高さ、(b)幅、及び(c)高さ等の残りの1つの形状寸法が重要でない構造の形状説明を指すように広く解釈されるべきである。
【0046】
「平面の」という用語は、関心対象である主たる重要な形状寸法が、長さ及び幅である2つのみであり、高さ又は厚さである残りの1つの形状寸法が重要でない、2次元の平坦な構造の形状説明を指すように広く解釈されるべきである。デカルト座標系において、この平坦な表面は、x軸及びy軸によって表されることになり、z軸は存在しないか、又は重要でない。
【0047】
「クラック」という用語は、平面上の、互いが離れた線又は空隙を指すように広く解釈されるべきである。
【0048】
「クラック長さ」という用語は、2次元平面のクラックの長さを指すように広く解釈されるべきである。長さは、クラックの最も重要な形状寸法であるが、その方向は、デカルト座標系上のいかなる特定の軸にも限定されず、その方向ベクトルは、クラックの種々の点で変動してもよい。クラックの方向は変動してもよいが、クラックの両方の終点を通る直線は、その方向ベクトルであり、炭素層の平面における第1の方向軸に沿っている(又はそれに沿って延伸している)と、考えることができる。このようにすると、クラック長さは、第1の方向軸に対して平行であると考えられてもよい。
【0049】
「クラック幅」という用語は、2次元平面のクラックの幅を指すように広く解釈されるべきである。幅は、クラックの長さに次ぐクラックの二次的な形状寸法であり、その方向は、クラックの任意の点で、クラック長さの方向ベクトルに実質的に直交している。
【0050】
「クラック間隙幅」という用語は、近傍にある2つの別々のクラックの幅の間の距離と広く解釈されるべきであり、測定されることになる距離は、近傍にある2つの別々のクラック間の距離がその最大である点におけるものである。その場合、「クラック間隙幅」は、第2の方向軸に沿って周期的に、クラックを互いに開けて配置することと考えられる。
【0051】
「実質的」という単語は、「完全に」を除外しない、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない場合がある。必要である場合、「実質的」という単語は、本発明の定義から省かれてもよい。
【0052】
別段の定めがない限り、「含む(comprising)」及び「含む(comprise)」という用語、及びそれらの文法的変形は、「制限のない」又は「包括的な」言葉を表すことが意図され、それらは、記載される要素を含むだけでなく、記載されていない追加の要素を含むことも可能にするようなものである。
【0053】
本明細書で使用されるように、「約」という用語は、配合物の成分の濃度の文脈において、典型的に、記載される値の±5%、より典型的に、記載される値の±4%、より典型的に、記載される値の±3%、より典型的に、記載される値の±2%、更により典型的に、記載される値の±1%、更により典型的に、記載される値の±0.5%を意味する。
【0054】
本開示全体にわたって、ある特定の実施形態は、範囲形式で開示される場合がある。範囲形式における説明は単に便宜及び簡潔のためのものであり、開示される範囲の範囲に対する変えられない限定と解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の説明は、すべての可能なサブ範囲及びその範囲内の個別の数値を具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1~6等の範囲の説明は、例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等のサブ範囲、並びにその範囲内の個別の数値、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると考えられるべきである。これは、範囲の幅広さに関わらず適用される。
【0055】
本明細書において、ある特定の実施形態は、広くかつ一般的に説明される場合もある。一般的開示のなかにある、より狭い種及び亜属分類のそれぞれも本開示の一部を形成する。これは、削除された題材が具体的に本明細書において記載されているかに関わらず、任意の主題を属から除く条件又は否定的限定を有する実施形態の属の説明を含む。
【発明を実施するための形態】
【0056】
[任意選択的態様の詳細な開示]
ここから、多層複合材料の例示的で非限定的な実施形態が開示される。
【0057】
多層複合材料は、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも1つの炭素層であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ手織り、前記第2の方向軸が、同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交する、炭素層と、強誘電性ポリマー層とを含む。
【0058】
炭素層は2次元の炭素層であってもよい。炭素層は平面の層であってもよい。炭素層は2次元の平面の層であってもよい。
【0059】
炭素層の炭素は、炭素層、アモルファス炭素、グラフェン、グラフェン酸化物、還元されたグラフェン酸化物、グラファイト層、又はそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。アモルファス炭素は、単層アモルファス炭素であってもよい。
【0060】
炭素層は、約0.34nm~約100nm、約0.34nm~約1nm、約0.34nm~約5nm、約0.34nm~約10nm、約0.34nm~約20nm、約0.34nm~約50nm、約1nm~約100nm、約5nm~約100nm、約10nm~約100nm、又は約20nm~約100nmの範囲の厚さを有してもよい。
【0061】
炭素層は、約0.1cm2~約600cm2、約0.1cm2~約600cm2、約10cm2~約600cm2、約50cm2~約600cm2、約100cm2~約600cm2、約300cm2~約600cm2、約0.1cm2~約10cm2、約0.1cm2~約50cm2、約0.1cm2~約100cm2、又は約0.1cm2~約300cm2の範囲の面積を有してもよい。
【0062】
クラックは1次元のクラックであってもよい。クラックは、周期的クラックと考えることができる。
【0063】
クラックは2次元のクラックであってもよい。2次元のクラックは、実質的に類似したクラック長さ及びクラック幅を有してもよい。2次元のクラックの例は、球形、楕円形、又は菱形に似たクラックであってもよい。
【0064】
複数のクラックは、複数の1次元のクラック及び複数の2次元のクラックの組み合わせであってもよい。
【0065】
第1の次元軸に沿ったクラックは、第1の次元軸に沿って延伸するものと考えてもよく、クラックのクラック長さは第1の次元軸に対して平行である。クラックが完全な直線又は完全な2次元の形状ではない場合、クラック長さは、クラックの2つの終点をつなぐ直線であると考えられるべきであり(1次元のクラックであれ2次元のクラックであれ、2つの終点が互いから最も離れた終点であると考えられる)、この直線は、実質的に第1の方向軸に対して平行である。
【0066】
炭素層中のクラックは、約100nm~約100μm、約1μm~約100μm、約10μm~約100μm、約50μm~約100μm、約100nm~約1μm、約100nm~約10μm、又は約100nm~約50μmの範囲のクラック長さを有してもよい。
【0067】
炭素層中のクラックは、約100nm~約10000nm、約200nm~約10000nm、約500nm~約10000nm、約1000nm~約10000nm、約2000nm~約10000nm、約5000nm~約10000nm、約100nm~約200nm、約100nm~約500nm、約100nm~約1000nm、約100nm~約2000nm、又は約100nm~約5000nmの範囲のクラック幅を有してもよい。
【0068】
炭素層中のクラックは、第2の方向軸に沿って間隔を開けられたクラック間隙幅を有してもよく、クラック間隙幅は、約100nm~約100μm、約1μm~約100μm、約10μm~約100μm、約50μm~約100μm、約100nm~約1μm、約100nm~約10μm、又は約100nm~約50μmの範囲である。
【0069】
炭素層は、炭素層上の周期的クラックの存在にもかかわらず、クラックの第1の方向軸、及び第1の方向軸に実質的に直交する第2の方向軸の両方において導電性である連続相と考えてもよい。
【0070】
炭素層は、炭素層上の周期的クラックの存在にもかかわらず、クラックの少なくとも第1の方向軸において導電性である連続相と考えてもよい。
【0071】
炭素層は、約80%~約99%、約90%~約99%、約95%~約99%、約80%~約85%、約80%~約90%、又は約80%~約95%の範囲の炭素被覆を有してもよい。
【0072】
炭素層は、約95%~約99%、約96%~約99%、約97%~約99%、約98%~約99%、約95%~約96%、約95%~約97%、又は約95%~98%の範囲の自然光の光透過率を有してもよい。
【0073】
炭素層の炭素は、バイオ材料と付着されてもよい。バイオ材料は、炭素と結合されてもよい。炭素は、修飾されて、バイオ材料との付着又は結合が可能にされてもよい。炭素は、バイオ材料を用いて機能化されてもよい。バイオ材料は、治療剤又は検出剤であってもよい。治療剤は、多層複合材料が対象の体の表面上に配置される場合、対象への治療効果を発揮させることが可能な薬剤であってもよい。治療剤は、慢性創傷、褥瘡創傷、皮膚切傷、火傷、静脈潰瘍、動脈潰瘍、又は糖尿病(神経障害性足部潰瘍)等のための、促進的な創傷治癒のための、炎症、血管新生、創傷収縮、及び、再構築を刺激することができてもよい。
【0074】
治療剤は、抗がん剤、抗凝固剤、創傷治癒剤、抗炎症剤、抗酸化剤、ビタミン、又は疼痛低減剤(pain reducing agent)であってもよい。治療剤は特に限定されず、例示的な治療剤としては、ジクロフェナク、サリチル酸、スルファメトキシピリダジン、フェノキシメチルペニシリン、フェノールレッド、バルプロ酸、ベザフィブラート、フロセミド、インドメタシン、メフェナム酸、ピロキシカム、トルブタミド、ワルファリン、シスチン、クロモグリク酸ナトリウム、テトラクロロデカオキシド、過酸化水素、カルバミドペルオキシド、塩基性硫酸第二鉄、過ホウ酸ナトリウム、硝酸カリウム、CHS-828、OXI-4503、PX-12、CPI-613、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、メッセンジャーRNA、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0075】
検出剤は、多層複合材料が哺乳動物の体の表面上に配置される場合;又は検出装置にされるか、又はその部分とされる場合等に、ターゲット分析物のためのプローブの働きをしてもよく、ターゲット分析物を検出することが可能であってもよい。検出剤は、抗体、タンパク質、核酸、又はそれらの組み合わせであってもよい。抗体又はタンパク質は、特に限定されず、例示的な抗体又はタンパク質としては、IgG抗体、IgA抗体、IgM抗体、IgE抗体、IgD抗体、SAR-COV2抗体、MERS-COV抗体、ジカウイルス抗体、HIV抗体、ポリオ抗体、破傷風抗体、インフルエンザ抗体、抗核抗体、抗トランスグルタミナーゼ抗体、抗ガングリオシド抗体、抗アクチン抗体、抗甲状腺抗体、スパイク糖タンパク質、スパイクタンパク質、膜タンパク質、エンベロープタンパク多糖体(envelope protein polysaccharide)、ペプチド、抗原、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0076】
炭素層の炭素は、非有機材料に付着されてもよい。非有機材料は、炭素と結合されてもよい。炭素は、修飾されて、非有機材料との付着又は結合が可能にされてもよい。非有機材料は、ナノ金属、ナノ複合材料、又はナノ合金であってもよい。
【0077】
ナノ金属は、抗細菌性、抗ウイルス性、又は抗真菌性を示す金属であってもよい。ナノ金属は、特に限定されず、例示的なナノ金属としては、チタン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、スズ、鉛、銀、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0078】
ナノ複合材料は、マトリックス中で抗細菌性、抗ウイルス性、又は抗真菌性を示す1又は複数のナノ金属を含む複合材料であってもよい。ナノ金属は、特に限定されず、例示的なナノ金属としては、チタン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、スズ、鉛、銀、又はそれらの組み合わせが挙げられる。複合材料マトリックスは、金属、木材、木材派生物、ポリマー、モノマー、合成樹脂、セラミック、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0079】
ナノ合金は、抗細菌性、抗ウイルス性、又は抗真菌性を示す少なくとも1つの金属成分を含む合金であってもよい。ナノ合金成分は、特に限定されず、例示的なナノ金属としては、チタン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、スズ、鉛、鉄、白金、銀、アルミニウム、パラジウム、金、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
強誘電性ポリマー層は、2次元の強誘電性ポリマー層であってもよい。強誘電性ポリマー層は、平面の層であってもよい。強誘電性ポリマー層は、2次元の平面の層であってもよい。
【0081】
強誘電性ポリマー層の強誘電性ポリマーは、フルオロポリマー、ポリアミド、又はそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0082】
強誘電性ポリマー層のフルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ETCFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFAP)、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。フルオロポリマーは、ポリ[(フッ化ビニリデン-co-トリフルオロエチレン](PVDF-TrFE)であってもよい。
【0083】
強誘電性ポリマー層のポリアミドは、ポリアミド5(ナイロン5)、ポリアミド11(ナイロン11)、ポリアミド12(ナイロン12)、ポリアミド66(ナイロン66)、ポリアミド610(ナイロン610)、ポリアミド66/610(ナイロン66/610)、ポリアミド6/12(ナイロン6/12)、ポリアミド666(ナイロン666又は6/66)、ポリアミド6/69(ナイロン6/6.9)、ナイロン1010、ナイロン1012、奇数ナイロン、偶数ナイロン、奇-奇ナイロン、アモルファスポリアミド、ナイロンPACM-12、ポリアクリルアミド、芳香族ポリアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ノーメックス、p-フェニレンテレフタルアミド、ポリフタルアミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0084】
強誘電性ポリマー層のビニルポリマーは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0085】
強誘電性ポリマー層は、約300nm~約2000nm、約500nm~約2000nm、800nm~約2000nm、約1000nm~約2000nm、約1500nm~約2000nm、約300nm~約500nm、約300nm~約800nm、約300nm~約1000nm、約300nm~約1500nm、又は約500nm~約1500nmの範囲の厚さを有してもよい。
【0086】
強誘電性ポリマー層は、約0.1cm2~約600cm2、約0.1cm2~約600cm2、約10cm2~約600cm2、約50cm2~約600cm2、約100cm2~約600cm2、約300cm2~約600cm2、約0.1cm2~約10cm2、約0.1cm2~約50cm2、約0.1cm2~約100cm2、又は約0.1cm2~約300cm2の範囲の面積を有してもよい。
【0087】
強誘電性ポリマー層は、約95%~約99%、約96%~約99%、約97%~約99%、約98%~約99%、約95%~約96%、約95%~約97%、又は約95%~98%の範囲の自然光の光透過率を有してもよい。
【0088】
多層複合材料は、複数の二重層を含んでいてもよく、各二重層は、1つの炭素層及び1つの強誘電性ポリマー層からなる。それに代えて、多層複合材料は、複数の積み重ねられた層を含んでもよく、各積み重ねられた層は、1つより多い炭素層及び1つの強誘電性ポリマー層からなる。積み重ねられた層において、1つの強誘電性ポリマー層当たり2~5つの炭素層があってもよい。積み重ねられた層において、(A)炭素層及び(B)強誘電性ポリマー層を並べるパターンは、各層の少なくとも1つが含まれる限り、所定の数の層の任意の特定の置き換え、例えば、5層の多層複合材料において、AAAAB、AAABB、AAABA、AABBB、AABBA、AABAA、AABAB、ABBBB、ABBBA、ABBAB、ABABB、ABABA、ABABB、ABBAA、ABAAA、ABAAB、BAAAA、BAAAB、BAABB、BABBB、BAABB、BABAB、BBAAB、BAABA、BBAAA、BABAA、BBABA、BBBAA、BBBBA、BBBAB、BABBB、BBABBであってもよい。
【0089】
多層複合材料は、二重層及び積み重ねられた層の混合、又は複数の二重層及び積み重ねられた層の混合、又は二重層と複数の積み重ねられた層との混合、又は複数の二重層及び複数の積み重ねられた層の混合を含んでもよい。
【0090】
二重層又は積み重ねられた層の数は、1~5の範囲であってもよい。多層複合材料は、導電性であってもよい。多層複合材料は、電気分極による表面電荷を有してもよい。表面電荷は、多層複合材料の異なる表面上で、正若しくは負、又は正及び負であってもよい。
【0091】
多層複合材料が正電荷を有する場合、正に帯電した多層複合材料は、細菌の細胞膜を静電的相互作用によって破壊することにより、細菌の成長及び接着を阻害することが可能であってもよい。
【0092】
表面電荷は、約1μC/cm2~約100μC/cm2、約5μC/cm2~約100μC/cm2、約10μC/cm2~約100μC/cm2、約30μC/cm2~約100μC/cm2、約50μC/cm2~約100μC/cm2、約1μC/cm2~約5μC/cm2、約1μC/cm2~約30μC/cm2、約1μC/cm2~約50μC/cm2、1μC/cm2~約20μC/cm2、又は約1μC/cm2~約15μC/cm2の範囲であってもよい。
【0093】
多層複合材料は、約100Ω/sq~約200Ω/sq、約150Ω/sq~約200Ω/sq、又は約100Ω/sq~約150Ω/sqの範囲のシート抵抗を有してもよい。シート抵抗は、各二重層間、又は各積み重ねられた層間で測定される。
【0094】
炭素層又は強誘電性ポリマー層の個々の光透過率と比較して、多層複合材料は、向上した自然光の光透過率を有してもよく、光透過率における向上は、約0.1%~約5%、約0.5%~約5%、約1%~約5%、約2%~約5%、約3%~約5%、約4%~約5%、約0.1%~約0.5%、約0.1%~約1%、約0.1%~約2%、約0.1%~約3%、又は約0.1%~約4%である。
【0095】
多層複合材料は、抗細菌性を示してもよい。多層複合材料は、S・エピデルミス(S.epidermis)、S・アウレウス(S.aureus)、S・ピオゲネス(S.pyogenes)、S・サプロフィチカス(S.saprophyticus)、E・フェカリス(E.faecalis)、S・ニューモニエ(S.pneumoniae)等のグラム陽性細菌、又はそれらの組み合わせに対する抗細菌性を示してもよい。
【0096】
多層複合材料は、抗細菌性を示してもよい。多層複合材料は、E・コリ(E.coli)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)、P・アエルギノーザ(P.aeruginosa)、C・トラコマチス(C.trachomatis)、Y・ペスチス(Y.pestis)、P・ミラビリス(P.mirabilis)、E・クロアカエ(E.cloacae)、S・マルセセンス(S.marcescens)等のグラム陰性細菌、又はそれらの組み合わせに対する抗細菌性を示してもよい。
【0097】
多層複合材料において、強誘電性ポリマー層は、炭素層の上方に配置されてもよい。
【0098】
多層複合材料において、炭素層及び強誘電性ポリマー層は、互いに物理的に接触していてもよい。
【0099】
多層複合材料において、炭素層及び強誘電性ポリマー層は、分子間力、水素結合、イオン誘起双極子力、イオン双極子力、ファンデルワールス力、重力、イオン結合、共有結合、又はそれらの組み合わせによってその場に保持されてもよい。
【0100】
多層複合材料は、約1~約1000ボルト、約10~約1000ボルト、約50~約1000ボルト、約100~約1000ボルト、約200~約1000ボルト、約300~約1000ボルト、約400~約1000ボルト、約500~約1000ボルト、約10~約500ボルト、約50~約500ボルト、約100~約500ボルト、又は約250~約500ボルトの範囲の電源電圧を有する、電気パルスを供給する外部電源に取り付けられるか、接続されてもよい。
【0101】
外部電源は、約1~約1000Hz、約10~約1000Hz、約50~約1000Hz、約100~約1000Hz、約200~約1000Hz、約300~約1000Hz、約400~約1000Hz、約500~約1000Hz、約10~約500Hz、約50~約500Hz、約100~約500Hz、又は約250~約500Hzの範囲の電源パルス速度を有してもよい。
【0102】
ここから、多層複合材料を製造する方法の例示的で非限定的な実施形態を開示する。
【0103】
多層複合材料を製造する方法は、
(a)成長基板上に少なくとも1つの炭素層を設ける工程と、
(b)前記炭素層上に強誘電性ポリマー層を適用する工程と、
(c)前記強誘電性ポリマー層を分極する工程と、
(d)前記炭素層中に、第1の方向軸に沿った複数のクラックを形成する工程であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ、前記第2の方向軸が、前記炭素層の同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交する、工程と
を含む。
【0104】
成長基板は、特に限定されず、例示的な材料は、銅フィルム、銅プレート、銅物品、銅合金、ニッケルフィルム、ニッケルプレート、ニッケル物品、ニッケル合金、白金フィルム、白金プレート、白金物品、白金合金、コバルトフィルム、コバルトプレート、コバルト物品、コバルト合金、ゲルマニウムフィルム、ゲルマニウムプレート、ゲルマニウム物品、ゲルマニウム合金、サファイア、サファイア物品、炭化ケイ素、炭化ケイ素物品、酸化ケイ素、酸化ケイ素フィルム、酸化ケイ素プレート、又は酸化ケイ素物品であってもよい。
【0105】
少なくとも1つの炭素層は、工程(a)において、化学気相堆積(CVD)、物理気相堆積(PVD)、パルスレーザ堆積(PLD)、又は炭素含有材料の高温アニールからのエピタキシャル成長によって、成長基板上に設けられてもよい。
【0106】
強誘電性ポリマー層は、工程(b)において、スピンコーティング、ラングミュアブロジェット法、ディップコーティング、スロットダイ、バーコーティング、ドクターブレード、又はワイヤコーティング等の複数のコーティングプロセスによって炭素層上に適用されてもよい。
【0107】
この方法は、適用する工程(b)後、炭素層上に強誘電性ポリマーをアニール(アニーリング)する工程(b1)を含んでもよい。
【0108】
アニールする工程(b1)は、約50℃~約200℃、約80℃~約200℃、約100℃~約200℃、約120℃~約200℃、約150℃~約200℃、約180℃~約200℃、約50℃~約80℃、約50℃~約100℃、約50℃~約120℃、約50℃~約150℃、約50℃~約180℃、又は約100℃~約150℃の温度で行われてもよい。
【0109】
アニールする工程(b1)は、約1分~約24時間、約1時間~約24時間、約6時間~約24時間、約12時間~約24時間、約18時間~約24時間、約1分~約1時間、約1分~約6時間、約1分~約12時間、約1分~約18時間、又は約1時間~約12時間の継続時間で行われてもよい。
【0110】
強誘電性ポリマー層は、工程(b)において、ローラー、加熱ローラー、又はプレスローラーを使用することによって、炭素層上に適用されてもよい。
【0111】
強誘電性ポリマー層は、工程(c)において、前記強誘電性ポリマー層の両方の表面を交差して反対の極性を有する外部電界を導入することによって分極されてもよく、前記表面は互いに対して反対側にある。分極する工程は、コロナポーリング、プラズマイオン化、直線分極、円分極、及び楕円分極によって行われてもよい。
【0112】
分極する工程(c)の間、強誘電性ポリマー層の温度は、約70℃~約100℃、約80℃~約100℃、約90℃~約100℃、約70℃~約80℃、又は約70℃~約90℃に上げられてもよい。
【0113】
形成する工程(d)は、強誘電性ポリマーに、約0.5N/cm2を超える、又は少なくとも約0.5N/cm2の圧力を適用する工程(d1)であってもよい。圧力は、約0.5N/cm2~約10N/cm2の範囲であってもよい。圧力は、約0.5N/cm2、1N/cm2、約2/N/cm2、約3/N/cm2、約4/N/cm2、約5/N/cm2、約6/N/cm2、約7/N/cm2、約8/N/cm2、又は約9/N/cm2を超過する、又は少なくともそれらで、約10/N/cm2までであってもよい。
【0114】
形成する工程(d)は、成長基板から炭素/強誘電性ポリマー層を、引き剥がし速度を増大させて除去する工程(d2)であってもよい。除去する工程(d2)は、適用する工程(d1)前であってもよく、又は適用する工程(d1)後であってもよく、又は、適用する工程(d1)中であってもよい。複数のクラックは、適用する工程(d1)、除去する工程(d2)、又は適用する工程(d1)及び除去する工程(d2)の両方において、形成されてもよい。
【0115】
除去する工程(d2)は、炭素層中の周期的な線状クラックを誘発してもよい。引き剥がし速度が増大される場合、引き剥がし速度がより小さい場合と比較して、誘発される周期的な線状クラックは、クラック長さがより長くなり、クラック密度がより高くなる。
【0116】
除去する工程(d2)はまた、既存の炭素層中の周期的な線状クラックを増幅してもよい。引き剥がし速度が増大される場合、引き剥がし速度がより小さい場合と比較して、既存の周期的な線状クラックは、クラック長さ及びクラック密度が増幅される。
【0117】
この方法は、適用する工程(d)の前に、
(d3)強誘電性ポリマー層に剥離接着剤を適用する工程と、
(d4)任意選択で場合によっては、成長基板から炭素/強誘電性ポリマー層を除去する工程と
を更に含んでもよい。
【0118】
除去する工程(d2)又は(d4)は、ローラー、加熱ローラー、プレスローラー、又はそれらの組み合わせを使用して行われもよい。
【0119】
除去する工程(d2)又は(d4)は、ローラー補助により機械的に引き剥がす工程と考えてもよい。
【0120】
除去する工程(d2)は、約101mm/s、約150mm/s、約200mm/s、約300mm/s、又は約500mm/sを超える速度、又は少なくともそれらの速度の、約1000mm/sまでの、又は引き剥がし装置(上に言及されるローラー等)の動作許容範囲までの、引き剥がし速度で実施されてもよい。
【0121】
除去する工程(d4)は、約100mm/s、約80mm/s、約50mm/s、約30mm/s、又は約10mm/s以下の引き剥がし速度で実施されてもよい。
【0122】
除去する工程(d4)が存在しない場合、形成する工程(d)は、除去する工程(d2)のみであっても、又は任意の順序における除去する工程(d2)及び適用する工程(d1)の両方であってもよい。除去する工程(d4)が存在する場合、形成する工程(d)は、適用する工程(d1)のみを含んでもよい。クラック形成は除去する工程(d2)によって行われるため、除去する工程(d4)は、クラックを形成しない引き剥がし速度で行われてもよい。
【0123】
この方法は、適用する工程(d)の後に、
(d5)強誘電性ポリマー層から剥離接着剤を除去する工程
を更に含んでもよい。
【0124】
適用する工程(d)又は適用する工程(d5)は、約30℃~約160℃、約50℃~約160℃、約80℃~約160℃、約100℃~約160℃、約120℃~約160℃、約30℃~約50℃、約30℃~約80℃、約30℃~約100℃、約30℃~約120℃、又は約100℃~約140℃の範囲の温度で行われてもよい。
【0125】
工程(d3)及び(d5)における剥離接着剤は、特に限定されず、例示的なテープは、熱剥離テープ、エポキシ剥離テープ、伸張剥離テープ、又は電気剥離テープであってもよい。
【0126】
除去工程(d5)は、機械的引きはがしによって、任意選択により場合によっては、熱、電気、引張力、又は化学的剥離剤の適用によって補助された機械的引き剥がしによって行われてもよい。
【0127】
この方法を使用して、1つより多い炭素層及び1つの強誘電性ポリマー層を含む多層複合材料を形成してもよい。ここで、用意する工程(a)は、
(a1)上記成長基板上に第1の炭素層を適用する工程と、
(a2)前記第1の炭素層上に第2の炭素層を適用する工程と、
(a3)前記適用する工程(a2)を、1~3回等、複数回繰り返す工程と
を含んでもよい。
【0128】
この方法を使用して、各多層複合材料が、1つの炭素層及び1つの強誘電性ポリマー層からなる二重層を含む、複数の多層複合材料を製造してもよい。それに代えて、この方法を使用して、各多層複合材料が、1つより多い炭素層及び1つの強誘電性ポリマー層からなる積み重ねられた層を含む、複数の多層複合材料を製造してもよい。積み重ねられた層において、1つの強誘電性ポリマー層当たり2~5つの炭素層があってもよい。
【0129】
複数の多層複合材料を製造するために、この方法は、
(e)工程(a)~(d)を繰り返して、後に続く多層複合材料を形成する工程と、
(f)前記の後に続く多層複合材料を、工程(a)~(d)又は工程(a)~(f)によって先に製造された多層複合材料上に積層する工程と
を更に含んでもよい。
【0130】
工程(e)及び(f)を、望むように繰り返して、複数の多層複合材料を形成してもよく、その場合、「後に続く多層複合材料」及び「先に製造された多層複合材料(multilayer composite previously produced)」という用語はそれぞれ、次にくる(又は次の)多層複合材料、及び先に製造された多層複合材料(previously produced multilayer composite)と考えられる。したがって、工程(e)及び(f)が繰り返される場合、先に製造された多層複合材料上に、次に続く多層複合材料を積層することになる。
【0131】
複数の多層複合材料は、二重層を有する多層複合材料及び積み重ねられた層を有する多層複合材料の混合、又は二重層を有する複数の多層複合材料及び積み重ねられた層を有する多層複合材料の混合、又は二重層を有する多層複合材料と積み重ねられた層を有する複数の多層複合材料との混合、又は二重層を有する複数の多層複合材料及び積み重ねられた層を有する複数の多層複合材料の混合を含んでもよい。
【0132】
多層複合材料は、工程(d)中、又は工程(d5)及び(f)の後に、ターゲット基板上に適用されても、又は転写されてもよい。ターゲット基板は、特に限定されず、例示的な材料は、金属、木材、木材派生物、ポリマー、モノマー、合成樹脂、セラミック、合金、複合材料、有機材料、サイボーグ、又はそれらの組み合わせであってもよい。ターゲット基板は、固体、液体状態、又は転移相状態のものであってもよい。
【0133】
この方法は、静電補助完全乾式転写法(electrostatic-assisted fully dry transfer technique)と考えられてもよい。化学気相堆積とともに使用されて成長基板上に少なくとも1つの炭素層を堆積させる場合、従来の湿式転写法と比較して、この方法において化学気相堆積及び静電補助完全乾式転写法を使用すると、金属残渣、溶媒残渣、ポリマー残渣、又は化学残渣を最小限有するか、まったく有しない炭素層をもたらしうる。
【0134】
一例において、この方法は、(I)成長基板上に炭素層を成長させる工程;(II)炭素層上に強誘電性ポリマー層を適用し、それにより強誘電性ポリマー層と成長基板との間に炭素層をサンドイッチする工程;(III)適用された強誘電性ポリマー層を分極する工程;(IV)強誘電性分極ポリマー層に剥離テープを適用し、それにより熱剥離テープと炭素層との間に強誘電性ポリマー層をサンドイッチする工程;(V)約101mm/sを超える、又は少なくとも約101mm/sの引き剥がし速度で(この工程においてクラックが望ましい場合)、又は約100mm/s以下の引き剥がし速度で(この工程においてクラックが望ましくない場合)、成長基板から炭素/強誘電性ポリマー層をローラー補助により機械的に引き剥がす工程;及び任意選択により場合によって、(VI)工程(V)を実施する前、工程(V)を実施する間、又は工程(V)を実施した後に、強誘電性ポリマー層に約0.5N/cm2を超える、又は少なくとも約0.5N/cm2の圧力を適用し、炭素層中に第1の方向軸に沿った複数のクラックを形成する工程であって、クラックが第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ、第2の方向軸が、炭素層の同じ平面において第1の方向軸に実質的に直交する、工程;及び(VII)強誘電性ポリマー層から剥離テープを除去する工程を含んでもよい。
【0135】
ここから、多層複合材料を含む包帯の例示的で非限定的な実施形態を開示する。
【0136】
包帯は、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも炭素層であって、クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ、第2の方向軸が、同じ平面において第1の方向軸に実質的に直交する、炭素層と、強誘電性ポリマー層とを含む、多層複合材料を含む。
【0137】
包帯は、ベース基材上に配置された多層複合材料を含んでもよい。ベース基材は、ガーゼ、ケイ素、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、紙、ガラス、又は市販されている包帯であってもよい。ベース基材は、接着剤材料を含んで、対象の体の表面に包帯が接着するのを可能にしてもよい。
【0138】
包帯は、多層複合材料内又はそれの表面上の少なくとも1つの点と係合することが可能な少なくとも1つの電極を更に含んでもよい。少なくとも1つの電極は、使用中に、電源、電子測定器、無線トランスポンダー装置、無線送信装置、又はそれらの組み合わせ等の外部電子装置に接続されていてもよい。
【0139】
炭素層の導電性を十分に活用するために、少なくとも2つの電極は、線状クラック方向に対して平行に、すなわち第1の方向軸に沿って整列されていてもよい。
【0140】
包帯は、S・エピデルミス、S・アウレウス、S・ピオゲネス、S・サプロフィチカス、E・フェカリス、S・ニューモニエ等のグラム陽性細菌、又はそれらの組み合わせに対する抗細菌性を示してもよい。
【0141】
包帯は、E・コリ、サルモネラ属、シゲラ属、エンテロバクター科、P・アエルギノーザ、C・トラコマチス、Y・ペスチス、P・ミラビリス、E・クロアカエ、S・マルセセンス等のグラム陰性細菌、又はそれらの組み合わせに対する抗細菌性を示してもよい。
【0142】
包帯は創傷対向面を有してもよい。創傷対向面は、疎水性であってもよく、約90度超、約95度超、約100度超、約105度超、約110度超、約115度超、約120度超、約125度超、約130度超、約135度超、約140度超、約145度超、又は約150度超の水接触角を有する。
【0143】
包帯の疎水性の性質に起因して、包帯は、出血を低減すること、及び凝集プロセスを速めることを助けうる。血液濡れ性が増大された血液細胞及び血小板の密な層が、包帯上に迅速に形成され、したがって、凝固及び凝集を促進する。それに代えて、疎水性包帯は、包帯を通る血液損失を防止する不浸透性層の働きをしてもよい(又は同様に、被覆用品又はガーゼとともに使用される場合、被覆用品又はガーゼを通る血液損失を防止する)。包帯は、血液損失のない速い凝固、抗細菌性を有すること、及び血餅自己分離(clot self-detachment)を同時に達成することが可能であってもよい。包帯の非濡れ性及び血液忌避特徴は、実質的な血圧に耐え、血液損失及び細菌付着の低減を助長することを助けてもよい。包帯は、血餅と包帯との最小限の接触を示し、血餅成熟及び収縮後の自然な血餅分離をもたらし、これにより、非疎水性包帯と比較して約1~2桁だけ、包帯を引き剥がすのに必要とされる引き剥がし張力を低減する。水及び血液に対する忌避は、薄く被覆された創傷床を損傷することなく、治った創傷から包帯が容易に除去されることを可能にするために、極めて重要で不可欠である。
【0144】
本明細書で開示される包帯は、柔軟性且つ伸縮性である。
【0145】
本明細書で開示される包帯において、炭素層は正電荷を有してもよく、正電荷は、5μC/cm2と10μC/cm2、6μC/cm2と10μC/cm2、7μC/cm2と10μC/cm2、8μC/cm2と10μC/cm2、9μC/cm2と10μC/cm2、5μC/cm2と6μC/cm2、5μC/cm2と7μC/cm2、5μC/cm2と8μC/cm2、又は5μC/cm2と8μC/cm2との間である。
【0146】
正に帯電した包帯は、細菌の細胞膜を静電的相互作用によって破壊することによって、細菌の成長及び接着を阻害することが可能であってもよい。
【0147】
包帯の炭素層において、炭素層の炭素は、バイオ材料と付着されてもよい。バイオ材料は、炭素と結合されてもよい。炭素は、修飾されて、バイオ材料との付着又は結合が可能にされてもよい。炭素は、バイオ材料を用いて機能化されてもよい。バイオ材料は、治療剤又は検出剤であってもよい。
【0148】
治療剤は、多層複合材料が対象の体の表面上に配置される場合、対象への治療効果を作用させることが可能な薬剤であってもよい。治療剤は、慢性創傷、褥瘡創傷、皮膚切傷、火傷、静脈潰瘍、動脈潰瘍、又は糖尿病(神経障害性足部潰瘍)のため等の、促進的な創傷治癒のための、炎症、血管新生、創傷収縮、及び、再構築を刺激することができてもよい。
【0149】
治療剤は、抗がん剤、抗凝固剤、創傷治癒剤、抗炎症剤、抗酸化剤、ビタミン又は疼痛低減剤であってもよい。治療剤は特に限定されず、例示的な治療剤としては、ジクロフェナク、サリチル酸、スルファメトキシピリダジン、フェノキシメチルペニシリン、フェノールレッド、バルプロ酸、ベザフィブラート、フロセミド、インドメタシン、メフェナム酸、ピロキシカム、トルブタミド、ワルファリン、シスチン、クロモグリク酸ナトリウム、テトラクロロデカオキシド、過酸化水素、カルバミドペルオキシド、塩基性硫酸第二鉄、過ホウ酸ナトリウム、硝酸カリウム、CHS-828、OXI-4503、PX-12、CPI-613、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、メッセンジャーRNA、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0150】
検出剤は、多層複合材料が哺乳類の体の表面上に配置される場合;又は検出装置にされるか、又はその部分にされる場合等に、ターゲット分析物のためのプローブの働きをし、ターゲット分析物を検出することが可能であってもよい。検出剤は、抗体、タンパク質、核酸、又はそれらの組み合わせであってもよい。抗体又はタンパク質は、特に限定されず、例示的な抗体又はタンパク質としては、IgG抗体、IgA抗体、IgM抗体、IgE抗体、IgD抗体、SAR-COV2抗体、MERS-COV抗体、ジカウイルス抗体、HIV抗体、ポリオ抗体、破傷風抗体、インフルエンザ抗体、抗核抗体、抗トランスグルタミナーゼ抗体、抗ガングリオシド抗体、抗アクチン抗体、抗甲状腺抗体、スパイク糖タンパク質、スパイクタンパク質、膜タンパク質、エンベロープタンパク多糖体、ペプチド、抗原、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0151】
包帯の炭素は、非有機材料に付着されていてもよい。非有機材料は、炭素と結合されていてもよい。炭素は、修飾されて、非有機材料との付着又は結合が可能にされてもよい。非有機材料は、ナノ金属、ナノ複合材料、又はナノ合金であってもよい。
【0152】
ナノ金属は、抗細菌性、抗ウイルス性、又は抗真菌性を示す金属であってもよい。ナノ金属は、特に限定されず、例示的なナノ金属としては、チタン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、スズ、鉛、銀、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0153】
ナノ複合材料は、マトリックス中で抗細菌性、抗ウイルス性、又は抗真菌性を示す1又は複数のナノ金属を含む複合材料であってもよい。ナノ金属は、特に限定されず、例示的なナノ金属としては、チタン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、スズ、鉛、銀、又はそれらの組み合わせが挙げられる。複合材料マトリックスは、金属、木材、木材派生物、ポリマー、モノマー、プラスチック、セラミック、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0154】
ナノ合金は、抗細菌性、抗ウイルス性、又は抗真菌性を示す少なくとも1つの金属成分を含む合金であってもよい。ナノ合金成分は、特に限定されず、例示的なナノ金属としては、チタン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、スズ、鉛、鉄、白金、銀、アルミニウム、パラジウム、金、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0155】
バイオ材料又は非有機材料は、包帯に外部刺激が適用され次第、包帯から剥離されることが可能であってもよい。剥離の仕方は制御されてもよい。外部刺激は、電気刺激、熱刺激、物理的刺激、化学的刺激、放射性刺激、又は光子刺激、又はそれらの組み合わせであってもよい。したがって、バイオ材料が治療剤(薬物等)である場合、創傷治癒プロセスを促進するために、包帯は、薬物送達、薬物ターゲティング、及び制御可能な薬物放出のために使用されてもよい。
【0156】
包帯(バイオ材料又は非有機材料の有無にかかわらず)は、対象の創傷の上に配置された場合に外部から刺激を受けた包帯が対象の冒された器官から幹細胞を引き付け、包帯への幹細胞の接着を促進することが可能でありうるような、上述のもの等の外部刺激に供されてもよい。それに続いて、皮膚再生誘導因子の予備濃縮効果が優勢になり、幹細胞の皮膚細胞への特異的な分化を著しく速めることができる。このようにして、包帯は、抗細菌性及び電気活性プラットフォームとして働くことができ、創傷治癒プロセス中の細胞移動及び増殖を模擬することが可能である。包帯が上で言及したバイオ材料を含有する場合、特に創傷治癒に関して、包帯の治療効果を高めることを助ける。
【0157】
外部刺激が電気刺激である場合、電気刺激は、包帯を電界に供することよって行われてもよい。これは、包帯が対象の創傷上に配置されており、別の電極が対象の無傷の乾いた皮膚上で近くに配置される場合に、電極(正の又は負の極性の)を包帯に接続することによって行われてもよい。その場合、パルス周波数及び電圧は、要件に応じて望ましいように設定される。一例として、パルス周波数は、100パルス/秒であってもよく、電圧は、約50~約150ボルトの間であってもよい。電圧に応じて、これにより、適度に強いが心地よい、ちくちくする感覚(無感覚皮膚)、又はかろうじて可視である筋肉収縮(脊髄損傷を有する患者におけるように、無感覚皮膚において)を生成することが可能な電流が与えられる。
【0158】
包帯は、創傷治癒中に臨床上の必要に対処するのに望ましいように分極されてもよい。一例として、正極性を使用して、負に帯電した好中球及びマクロファージを引き付けることによって、自己分解を促進してもよく、一方で、負極性を使用して、正に帯電した線維芽細胞を引き付けることによって、肉芽組織の発達を促してもよい。別の例としては、正極性を使用して、負に帯電した上皮細胞を引き付けることによって、創傷表面修復を刺激してもよい。
【0159】
強誘電性ポリマー層によって誘導される、炭素層の上面での定電界も、創傷治癒を促進することが可能である。したがって、柔軟で軽く、かつ高度に導電性である包帯は、促進的な創傷治癒プロセスのための電気刺激装置と一緒に使用することが可能である。
【0160】
ここから、多層複合材料を含むバイオセンシング装置の例示的で非限定的な実施形態を開示する。
【0161】
バイオセンシング装置は、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有する少なくとも炭素層であって、クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ、第2の方向軸が、同じ平面において第1の方向軸に実質的に直交する、炭素層と、強誘電性ポリマー層とを含む、多層複合材料を含む。
【0162】
バイオセンシング装置は、電気バイオセンサーであってもよい。電気バイオセンサーにおいて使用される場合、多層複合材料の強誘電性ポリマー層の自己容量、及び多層複合材料の炭素層の電気抵抗は、創傷床のリアルタイムモニタリングのための2つの異なる信号伝達経路として利用することができる。例えば、炭素層は、強誘電性ポリマー層のための電極として利用することができ、容量値は、多層複合材料に適用される圧力とともに増大される。容量/電圧の増大は、例えば、0.2秒の速い復帰時間で、特定の範囲(0~300mmHg)内の圧力に依存する。それと同時に、強誘電性ポリマー層の存在下、炭素層の電気抵抗は著しく低下し(例えば、200Ω/sqに)、それにより、検出感度を向上させ、検出限界を下げることができる。炭素層の抵抗は、多層複合材料を湾曲させることによって増大することができる。強誘電性ポリマー層と高度に導電性の炭素層との組み合わせに起因して、これは、マルチチャンネル戦略によって、バイオセンサーのバイオセンシング性能を相乗的に高める。
【0163】
バイオセンシング装置は、光学バイオセンサーであってもよい。ここで、強誘電性ポリマー層は、蛍光剤を含んでもよい。蛍光剤は、当業者には容易に知られる蛍光ナノ粒子、蛍光バイオプローブ、又は蛍光量子ドットであってもよい。蛍光剤は、適用された圧力、周囲温度、pH値、又は他のパラメーターの変化に応じて色が変化してもよく、これは、蛍光測定装置又は光学式読み取り器を使用することによって容易に測定することができる。
【0164】
バイオセンシング装置は、電気及び光学バイオセンサーであってもよく、ここで、上で言及したような電気バイオセンサーにおいて、使用される強誘電性ポリマー層は蛍光剤を含有するものである。
【0165】
バイオセンシング装置は、電界効果トランジスタであってもよく、それにより、多層複合材料において、上で言及したように、炭素層の炭素は検出剤と付着される。ここで、バイオセンシング装置を使用して、サンプル中のそれぞれのターゲット分析物の存在を迅速に且つ高感度で探査することができる。
【0166】
バイオセンシング装置の包帯の一部としてであろうとなかろうと、多層複合材料の用途に応じて、多層複合材料の物性を変化させて、多層複合材料が、治療学及び生体医学研究、並びに関連する産業における様々な用途の必要に適合されるために、多層複合材料の厚さ及びサイズは必要に応じて変更されてもよい。
【0167】
添付の図面は、開示されている実施形態を例示し、開示されている実施形態の原理を説明するのに役立つ。しかしながら、図面は、例示目的のためにのみ描かれており、発明の限定の定義としてではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【
図1】炭素層が350nm~800nmの波長の光スペクトル内のグラフェンである本明細書で開示されるような多層複合材料の光透過率特徴付けの概略図である。
【
図2】炭素層がグラフェン及び強誘電性ポリマーである本明細書で開示されるような多層複合材料の薄いフィルムを有するPET基板上の細菌S・エピデルミディス(S.epidermidis)の蛍光顕微鏡画像である。
【
図3】
図2の多層複合材料の薄いフィルムの水接触角プロファイル特徴付けの光学画像である。
【
図4】
図4aは本開示の包帯の概略図である。
図4bは本開示の包帯の概略図である。
【
図5a】多層複合材料に埋設されたスマート包帯のバイオセンシング性能を可能にする回路構成の実施形態の概略図である。
【
図5b】多層複合材料に埋設されたスマート包帯のバイオセンシング性能を可能にする回路構成の別の実施形態の概略図である。
【
図6a】参照用の10μmスケールバーを有する、本明細書で開示されるような方法によって製造されるグラフェンシートの光学顕微鏡画像である。左側の軸は、グラフェンシート上の周期的クラックの第1の方向軸及び第2の方向軸を描くために使用される。
【
図6b】参照用の10μmスケールバーを有する、本明細書で開示されるような方法によって製造されるグラフェンシートの光学顕微鏡画像である。左側の軸は、グラフェンシート上の周期的クラックの第1の方向軸及び第2の方向軸を描くために使用される。
【
図7】P・アエルギノーザNUH9/98菌株に対して種々のサンプルとインキュベーションした後の生存細菌コロニーの数を表すグラフである。
【実施例】
【0169】
本発明の非限定的な例を、具体的な実施例を参照することよってより詳細に更に説明し、これは、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0170】
(実施例1)乾式転写法
本明細書で開示される方法によって提供される乾式転写法は、汚染物を含まないグラフェン製造及び転写適用を提供する。この仕方で製造される多層複合材料は、汎用基板に容易に転写される。多層複合材料を転写することができるターゲット基板には、金属、木材、ポリマー、セラミック、合金、及び複合材料等の材料を含むものがある。
【0171】
シリコンディスク及びウエハー、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、紙、及び市販の包帯を含む様々な固い材料及び柔らかい材料に、本明細書で開示されるような方法によって製造されるPVDF/グラフェンの薄いフィルムを転写した。CVDグラフェンのための伝統的な湿式転写法と比較すると、本明細書で開示されるような方法における乾式転写法は、室温で完全な乾燥条件において完了し、これにより、適用範囲が著しく広がり、基板に対する制限が解かれる。
【0172】
一例において、PVDF-TrFE/グラフェン多層複合材料を調製する。グラフェンをCVDによって銅成長基板上に成長させ、次いで、スピンコーティング法を使用して、強誘電性ポリマーの溶液でコーティングする。
【0173】
ジメチルホルムアミド(DMF)中にPVDFを溶解させて、後にグラフェンにコーティングされる溶液を形成してもよい。この方法を使用してグラフェン層の上面に500nm厚さのPVDFフィルムを形成することができる。
【0174】
コーティング後、フィルムをアニール(アニーリング)して、溶媒を蒸発させ、強誘電性相の形成を促進してもよい。500nm厚さのPVDFフィルム層を、135℃で1分~24時間の間、アニール(アニーリング)してもよい。
【0175】
得られた薄いフィルムのポリマー層は、300nm~2000nmの間の厚さであってもよい。
【0176】
アニール後、強誘電性ポリマーフィルム中の双極子を、フィルムを横切って電界を印加することによって、グラフェンに直交して整列させてもよい。
【0177】
外部電極を使用して電界を印加してフィルムを横切って電圧を印加し、約1kV/cm~約10kV/cmの間の電圧を使用してポリマーの表面をイオン化することができる。500nm程度の厚さのPVDFフィルムにおいて、双極子を、6kV/cmの電圧でポリマーの表面をイオン化することによって整列させてもよい。
【0178】
いくつかの例において、アニール及び分極を単一プロセスにおいて行ってもよい。この工程の別の形において、強誘電性ポリマーを分極する工程は、約50V/μm~約500V/μmの間の電界強度を有する外部電界等の外部電界をポリマー層に印加する工程が含まれていてもよい。強誘電性ポリマーとしてのPVDFの場合、100V/μmほどの電界が、双極子を整列させるのに必要とされてもよい。
【0179】
分極された強誘電性ポリマー層は、約5μC/cm2~約10μC/cm2の間の残留分極を含んでいてもよい。
【0180】
成長基板からのグラフェン/強誘電性ポリマーの引き剥がしは、成長基板に対して垂直の引き剥がし力を適用することによって完了することができる。
【0181】
引き剥がし後、PVDF-TrFE/グラフェン多層複合材料を、別の多層複合材料又はその積み重ねを含む、本明細書で開示されるような任意のターゲット基板上に組み込む又は積層することもできる。
【0182】
(実施例2)多層複合材料の光透過率
本明細書で開示される方法によって製造される本開示の炭素層、強誘電性ポリマー層、及び多層複合材料の複数の例を、それらの光透過率に関して特徴付けする。実験において、(A)グラフェンの単層、(B)二重層グラフェン、(C)PVDF-TrFEの単層及びグラフェンの単層からなる多層複合材料、並びに(D)PVDF-TrFEの単層及び二重層グラフェンからなる多層複合材料を350nm~800nmの波長の可視スペクトルにわたって特性解析をする(
図1)。
【0183】
550nmの波長で特性解析をする場合、(A)グラフェンの単層は97.0%の光透過率を有する、(B)二重層グラフェンは94.4%の光透過率を有する、(C)PVDF-TrFEの単層及びグラフェンの単層からなる多層複合材料は99.5%の光透過率を有する、並びに(D)PVDF-TrFEの単層及び二重層グラフェンからなる多層複合材料は97.0%の光透過率を有する。グラフェン及び多層複合材料のこれらの高い光透過率値は、それらが高い透過性を有し、医療用包帯として使用される場合、創傷の視覚モニタリングに関して効果的であることを意味する。
【0184】
また、(C)PVDF-TrFEの単層及びグラフェンの単層からなる多層複合材料は、(A)グラフェンの単層の97.0%に比べて向上された99.5%の光透過率を示す。また、(D)PVDF-TrFEの単層及び二重層グラフェンからなる多層複合材料は、(B)二重層グラフェンの94.4%に比べて向上された97.0%の光透過率を示す。これは、グラフェン層と組み合わせた強誘電性ポリマー層の使用は、光透過率を向上する相乗効果を有するため、有利であることを示している。
【0185】
(実施例3)抗菌性pドープグラフェン層
強誘電性ポリマー層としてPVDF-TrfEを、及び炭素層としてグラフェンを使用して、本明細書で開示される方法によって製造される本開示の多層複合材料は、抗菌性を発揮する。強誘電性PVDF-TrFE層に起因して、多層複合材料は分極され、且つ高度に帯電され、PVDF-TrFEポリマー層によるpドープに起因して、グラフェンは正電荷を示す。PET基板にOCA層を手作業で整列させて積層することによって、PET/OCA基板を調製する。多層複合材料を、PVDF-TrFEポリマー層を、PET/OCA表面と接触した状態で下向きに配置し、且つ正に帯電したグラフェン層を上向きにして露出させて、PET/OCA基板上に配置した。次いで、1mL当たり107個の細胞のS・エピデルミディス(ATCC36984、American Type Culture Collection社、Manassas、VA)を多層複合材料に曝露露させて、蛍光ベース抗菌性アッセイを多層複合材料に対して行った。蛍光顕微鏡画像(
図2)は、S・エピデルミディスが多層複合材料への曝露4時間後に取り除かれ、60%のS・エピデルミディス細菌が多層複合材料への曝露6時間後に取り除かれたことを示し、したがって、多層複合材料は抗菌性を示すことを示す。最後に、多様な臨床設定及び治療中の感染率が効果的に低減され、これにより、人々の生活及び患者の生活の質を向上することを助けることができる。
【0186】
P・アエルギノーザを用いた一例において、4つの異なるフィルムサンプル、すなわち、PET、PET/グラフェン、PET/PVDF、及びPET/PVDF/グラフェンを調製した。ストリークプレートからのP・アエルギノーザの菌叢を、1mLのPBS中で0.5のOD600に再懸濁させた。実験用サンプルのP・アエルギノーザの初期個体群密度を、約108CFU/mLで維持した。細菌のインキュベーション前、これらのサンプルを30分間照射した。次に、20μLの細菌懸濁液(108CFU/mL)を10μLの液滴として1×1cm2のサンプルに無菌で移した。
【0187】
次いで、実験用サンプルを37℃で20時間、通気しながらインキュベートした。実験処理後、サンプル表面を1mLのPBSに浸漬し、続いて、30秒の激しいボルテックス処理を行って、サンプル表面上に接着した細菌を完全に分離した。その後、回収した溶液をPBSで10倍連続希釈し、LB寒天にスプレッドプレートを2連で行った。37℃で一晩、プレートをインキュベートした後、最終の細菌コロニーを計数し、記録した(
図7)。各サンプルに関してこのアッセイを3連で行った。インキュベーション20時間後に、PET/PVDF/グラフェンフィルムのサンプル表面上で、他の対照サンプルと比較して4ログ(4-log)リダクションが観察されたことにより、PVDF/グラフェンフィルムによって、その抗細菌性に起因して、P・アエルギノーザの99.99%が取り除かれることが示されている。
【0188】
多層複合材料の高い光透過率に起因して、多層複合材料から製造された包帯は、高度に透明であり、且つ抗菌性であって、包帯を除去せずに創傷を直接的に見ることができ、目立たせることができる。多層複合材料から製造された包帯の交換の頻度は、約6日とすることができ、これは、従来の包帯の頻度より6倍長い。
【0189】
(実施例4)グラフェン層の疎水性
強誘電性ポリマー層としてPVDF-TrFEを、及び炭素層としてグラフェンを使用して、本明細書で開示される方法によって製造される本開示の多層複合材料は、疎水性であることを実証した。多層複合材料を、PVDF-TrFEポリマー層を、PET/OCA表面と接触した状態で下向きに配置し、且つグラフェン層を上向きにして露出させて、PET/OCA表面に配置した。次いで、露出したグラフェン表面上に水滴を落すことによって水接触角特徴付け試験を行った。次いで、水滴が安定化した後、高解像度光学測定装置を使用して、水接触角を取り込み、特性解析をした。露出させたグラフェン層の水接触角プロファイルは97度と決定され(
図3)、多層複合材料のグラフェン層の疎水性の性質を示した。
【0190】
(実施例5)多層複合材料のバイオセンシング改変
多層複合材料の良好な柔軟性及び優れた導電性があるため、マルチセンシングウェアラブルバイオセンシング装置が別の適用可能な態様である。スマート包帯は、創傷床の温度、pH値、圧力、膨潤張力、排膿等の関連パラメーター及び信号を検出することによって、創傷の状態を正確にリアルタイムでモニタリングするため、創傷管理のために非常に望ましい。
【0191】
本明細書で開示される方法によって製造された本開示の多層複合材料は、バイオセンシング及び創傷管理性能を有するウェアラブルスマート包帯として使用されてもよい。多層複合材料は、容量、抵抗、並びにオンオフ2値回路構成の変化及び変動の検出によるマルチチャンネルバイオセンシングのために、
図4a及び
図4bと類似であるがそれらに限定されないレイアウトで、
図5a及び
図5bと類似であるがそれらに限定されない回路構成に埋設されてもよい。
【0192】
図4a及び
図4bにおいて、バイオセンシングスマート包帯の例が視覚化されており、ここで、電極10は、多層複合材料50を含む包帯に埋設されうる。グラフェン層30及び強誘電性ポリマー層20を含む多層複合材料50から作製される2片のパッドを、金電極接触子10を介して電子装置40に接続した。電子装置40は、無線により又は電気信号を介して情報を医療提供者に取り次ぎうる、トランスポンダー又は送信器であってもよい。
【0193】
図5aにおいて、多層複合材料50に埋設されたスマート包帯のバイオセンシング性能を可能にする回路構成の例が視覚化されている。電極10接触子は、多層複合材料50にわたって断続的に間隔を開けて配置され、生理食塩水70によって引き起こされる、多層複合材料50にわたる容量及び抵抗における微細な変化を検出することができる。スマート包帯の表面温度及び伸びにおける小幅の変動は、容量及び抵抗における変動を置き換えることによって検出することができる。これらのパラメーターを使用して体温及び創傷の腫脹等のバイオメトリクスについての情報を提供し、したがって、バイオセンシング性能を提供してもよい。
【0194】
図5bにおいて、多層複合材料50に埋設されたスマート包帯のバイオセンシング性能を可能にする回路構成の更に別の例が視覚化されている。電極10接触子は、2つの非接触多層複合材料50の対向する端部に間隔を開けて配置することができる。生理食塩水70によって模擬される膿等の生体液が、2つの非接触多層複合材料50にわたって存在する場合、回路構成は、開回路抵抗の大きい低下を示すことになり、したがって、排膿等のバイオメトリクスについての情報を提供し、血液凝集及び血液排出をモニタリングし、したがって、バイオセンシング性能を提供する。
【0195】
グラフェン層は、圧電PVDF-TrFEフィルムのための電極として利用されてもよく、容量値はフィルムに印加される圧力とともに増大した。容量/電圧の増大は、0.2秒の速い復帰時間で、特定の範囲(0~300mmHg)内の圧力に依存した。それと同時に、PVDF-TrFEポリマー層の存在下、グラフェン層の電気抵抗は約200Ω/sqに著しく低下し、検出感度を向上させ、検出限界を下げることができる。PVDF-TrFE/グラフェンフィルムを湾曲する間、グラフェンフィルムの抵抗は増大し、排膿及び炎症による腫脹等の物理的変化のバイオセンシングを可能にする。
【0196】
マルチチャンネルバイオセンシングの非限定的な例は、以下のとおりである。
1)創傷の温度の変化は、多層複合材料にわたる容量変化によって検出されうる。
2)創傷の腫脹は、前記腫脹に起因して多層複合材料が張力方向に伸びるにしたがう、抵抗の変化によって検出されうる。
3)創傷における排膿は、多層複合材料を含む2つの非接触電極にわたる抵抗の著しい低下によって検出されうる。
4)動的蛍光及び光学読み出し応答を得て、周囲の創傷環境における変化するpHを検出するための、量子蛍光ドットの多層複合材料への組み込み。
【0197】
(実施例6)ひずみによって誘発された、炭素層上の周期的クラック
本明細書で開示される方法によって製造された本開示の多層複合材料は、炭素層の表面上に、積層プロセス中に適用される過度のひずみによって誘発される周期的クラックを含有する。本明細書で開示されるような方法を使用してグラフェンシートを製造し、光学画像顕微鏡法を使用して特性解析をした。グラフェンシートの光学画像(
図6a及び
図6b)は、グラフェンシートにおける高い均一性、及び可視の1次元の周期的クラック(
図6a及び
図6b中の点線によって表される)での被覆を示す。グラフェンシートの光学画像において点線で示されていない線は、グラフェン層の一部が折り重なっているグラフェン上のしわであり、過度のひずみ(又は圧力)、又は成長基板からグラフェン層を、引き剥がし速度を増大させて除去することによって、誘発される周期的クラックではない。
図6a及び
図6bに見られるように、周期的クラックは第1の方向軸に沿っており、クラックは、第2の方向軸に沿って周期的に互いから間隔を開けられ、第2の方向軸は、同じ平面において第1の方向軸に実質的に直交する。これらの周期的クラックは有利には、多層複合材料の浸透性及び通気性の制御を向上させ、したがって、多層複合材料の医療用包帯としての有効性を高めてもよい。
【0198】
(実施例7)創傷治癒の促進
強誘電性ポリマーとしてPVDF-TrFEを、及び炭素層としてグラフェンを用いた、本明細書で開示される方法を使用して製造された多層複合材料は、抗細菌性及び電気活性プラットフォームとして働き、創傷治癒プロセス中の細胞移動及び増殖を模擬して、特に慢性創傷及び褥瘡創傷のための促進的な創傷治癒のための、炎症、血管新生、創傷収縮、及び、再構築を刺激する。グラフェンが創傷に直接接触することにより、関連する細胞増殖及び分化を促進し、したがって、創傷治癒を速めることが可能である。
【0199】
初期状態のグラフェンフィルムはヒト間葉系幹細胞の骨分化を制御及び促進することが確認され、一方で、圧電PVDF-TrFEフィルムは、細胞付着及び血管形成を高め、幹細胞移動及び増殖のための電界を模擬することが報告されている。幹細胞ベースの創傷治癒に関して、幹細胞を導入するのではなく局所組織から成人多能性幹細胞を引き付けることは、後に続く付着、増殖、及び特異的分化に関して高度に効果的及び効率的である。
【0200】
高度にドープされたPVDF-TrFE/グラフェンフィルムからの模擬された電界により、冒されたヒト器官から幹細胞が引き付けられ、包帯へのその接着が促進された。その後、皮膚再生誘導因子の予備濃縮効果が優勢になり、皮膚細胞への特異的な分化が著しく速められた。そのため、多層は、創傷治癒を速め、皮膚切傷、火傷、静脈潰瘍、動脈潰瘍、及び糖尿病(神経障害性足部潰瘍)を含むがこれらに限定されない、異なる種類の創傷に適合されることが高度に推測された。
【0201】
(実施例8)刺激装置
強誘電性ポリマー層としてPVDF-TrFEを、及び炭素層としてグラフェンを含む多層複合材料は、約200Ω/sqのシート抵抗を有して導電性であり、電気及び電子刺激が可能である。PVDF-TrFE/グラフェンフィルムはまた、分極することができ、表面電荷の強度及び極性は種々の必要のケースを満足するように調整されている。創傷包帯としての多層複合材料の使用に関して、PVDF-TrFE/グラフェンフィルムは、多層複合材料上の正電荷を使用して、負に帯電した好中球及びマクロファージを引き付けることによって、自己分解を促進することができる。肉芽組織の発達を促進するために、多層複合材料上の負電荷を使用して、正に帯電した線維芽細胞を引き付けることができる。創傷表面修復を刺激するために、多層複合材料上の正電荷を使用して、負に帯電した上皮細胞を引き付けることができる。
【0202】
極性及び表面電荷を使用する以外に、多層複合材料の導電性により、創傷の直接電気刺激も提供される。電気刺激は、細胞遊走及び増殖を促進することによる皮膚創傷治癒のために有益であることが報告されている。加えて、電気刺激は、毛細血管密度及びかん流を増大させること、創傷への酸素供給を向上させること、及び肉芽形成及び線維芽細胞活性を促進することによって、創傷治癒を速めうる。一例において、創傷上に配置された滅菌導電性PVDF-TrFE/グラフェンパッドに、いずれかの極性の電極を適用した。無傷の乾いた皮膚上近くに、他方の電極の導電性の面を適用した。続いて、パルス周波数を100パルス/秒に設定した。無感覚皮膚に対し適度に強いがちくちくする感覚、又は脊髄損傷を有する患者におけるように無感覚皮膚において、かろうじて可視である筋肉収縮を生成する電流を流すように、電圧を50~150ボルトの間に設定した。
【0203】
多層複合材料の導電性は、多層複合材料を薬物送達プラットフォームとして使用するために利用することができる。非共有結合機能化を、PVDF-TrFE/グラフェン多層複合材料のグラフェン表面の表面機能化のために採用して、溶解度、薬物搭載性能、及び抗生物付着能を提供することができる。加えて、正に帯電したグラフェン表面に起因して、それは、抗がん剤、難溶性薬物、抗生物質、抗体、ペプチド、DNA、RNA、及び遺伝子を含む様々な治療薬を結合、捕捉、及びカプセル化することができる。
【0204】
ドキソルビシン(DOX)を搭載したPVDF-TrFE/グラフェン多層複合材料は、電気刺激に応答して薬物分子を放出することが可能であり、量及び放出速度は、多層複合材料に適用された電気刺激の種類及び強度によって制御される。したがって、PVDF-TrFE/グラフェン多層複合材料プラットフォームの導電性及び薬物搭載性能と、ナノ担体及び薬物放出調節因子の両方として働くその能力とを有するため、本明細書で開示されるような多層複合材料は、バイオメディカル用途のための刺激装置として働くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0205】
多層複合材料は、創傷モニタリングのための透過性、創傷治癒を促進するための抗細菌性、及び創傷の消毒、及び機能的な回路構成設計の実装によってスマートバイオセンシングを可能にするための高い導電性の特長を有する医療用包帯として使用されてもよい。それは、治療担体、電子的刺激因子、及び細胞成長増殖因子としても使用されて、医療産業において創傷のケア及び処置を高めてもよい。
【0206】
当業者にとって、前述の開示を読んだ後、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく本発明の様々な他の修正及び適合が明白となることは明白であり、そのような修正及び適合はすべて、添付の特許請求の範囲の範囲内となることが意図される。
【符号の説明】
【0207】
10 電極
10 電極接触子
20 強誘電性ポリマー層
30 グラフェン層
40 電子装置
50 多層複合材料
70 生理食塩水
【手続補正書】
【提出日】2023-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの炭素
層と強誘電性ポリマー層とを含
む多層複合材料
であって、
前記強誘電性ポリマーが、前記の少なくとも1つの炭素層の一つの側で電界を誘導するように構成されている、多層複合材料。
【請求項2】
前記の少なくとも1つの炭素層が、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有
し、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いに間隔があけられており、前記第2の方向軸が、同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交している
、請求項1に記載の多層複合材料。
【請求項3】
前記の少なくとも1つの炭素層が表面上にクラックを有していない、請求項1に記載の多層複合材料。
【請求項4】
前記の少なくとも1つの炭素層が、表面上にランダムに生成されたクラックを有しており、そのランダムに生成されたクラックが連続相を形成していない、請求項1に記載の多層複合材料。
【請求項5】
前記炭素層が、2次元の炭素層であり、前記炭素層の炭素は、アモルファス炭素、グラフェン、グラフェン酸化物、還元されたグラフェン酸化物、グラファイト、又はそれらの組み合わせ、グラフェン又はアモルファス炭素からなる群から選択される、請求項
1~4のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項6】
前記炭素層が、0.34nm~100nmの範囲の厚さを有する、請求項
1~5のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項7】
前記炭素層の炭素が、バイオ材料又は非有機材料と付着され
ており、かつ、前記強誘電性ポリマー層の強誘電性ポリマーが、フルオロポリマー、ポリアミド、ビニルポリマー、それらのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
1~6のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項8】
前記強誘電性ポリマー層が、300nm~2000nmの範囲の厚さを有する、請求項
1~7のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項9】
前記多層複合材料が、導電性であり、前記炭素層及び前記強誘電性ポリマー層からなる二重層1つ当たり、100Ω/sq~200Ω/sqの間のシート抵抗を示す、請求項
1~8のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項10】
多層複合材料が、各二重層が1つの炭素層及び1つの強誘電性ポリマー層のみからなる、複数の二重層;又は各々の積み重ねられた層が1つより多い炭素層及び1つの強誘電性ポリマー層のみからなる、複数の積み重ねられた層を含む、請求項
1~9のいずれか一項に記載の多層複合材料。
【請求項11】
(a)成長基板上に少なくとも1つの炭素層をもたらす工程と、
(b)前記炭素層上に強誘電性ポリマー層を適用する工程と、
(c)前記強誘電性ポリマー層を分極させる工程と、
(d)前記炭素層中に、第1の方向軸に沿った複数のクラックを形成する工程であって、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いに間隔があけられており、前記第2の方向軸が、前記炭素層の同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交している、工程と
を含む多層複合材料を製造する方法。
【請求項12】
前記形成する工程(d)が、(d1)前記強誘電性ポリマーに0.5N/cm
2を超える、又は少なくとも0.5N/cm
2の圧力を適用する工程;又は(d2)前記成長基板から前記炭素/強誘電性ポリマー層を、引き剥がし速度を増大させて除去する工程;又は工程(d1)及び(d2)の両方を含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記適用する工程(d)の前に、
(d3)前記強誘電性ポリマー層に剥離接着剤を適用する工程と、
(d4)任意選択で場合によっては、前記成長基板から前記炭素/強誘電性ポリマー層を除去する工程と
を更に含む、請求項
11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記適用する工程(d)の後に、
(d5)前記強誘電性ポリマー層から前記剥離接着剤を除去する工程
を更に含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記適用する工程(d)又は適用する工程(d5)が、30℃~160℃の範囲の温度で行われる、請求項
13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記の工程(a)が、
(a1)前記成長基板上に第1の炭素層を適用する工程と、
(a2)前記第1の炭素層上に第2の炭素層を適用する工程と、
(a3)前記適用する工程(a2)を、1~3回繰り返す工程と
を含む、請求項
11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(e)工程(a)~(d)を繰り返して、後に続く多層複合材料を形成する工程と、
(f)工程(a)~(d)又は工程(a)~(f)によって先に製造された多層複合材料上に、前記の後に続く多層複合材料を積層する工程と
を更に含む、請求項
11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記分極させる工程(c)が、前記強誘電性ポリマー層の両方の表面にわたって反対の極性を有する外部電界を導入する工程を含み、前記表面は互いに対して反対側にある、請求項
11から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
多層複合材料を含む
創傷治癒のための包帯であって、前記多層複合材料が、
少なくとも1つの炭素層と強誘電性ポリマー層とを含み、前記強誘電性ポリマーが、前記の少なくとも1つの炭素層の一つの側で電界を誘導するように構成されている、包帯。
【請求項20】
前記の少なくとも1つの炭素層が、第1の方向軸に沿った複数のクラックを有し、前記クラックが、第2の方向軸に沿って周期的に互いに間隔があけられており、前記第2の方向軸が、同じ平面において前記第1の方向軸に実質的に直交している、請求項19に記載の包帯。
【請求項21】
前記の少なくとも1つの炭素層が表面上にクラックを有していない、請求項19に記載の包帯。
【請求項22】
前記多層複合材料内又は前記多層複合材料の表面上の少なくとも1つの点と接触している少なくとも1つの電極を更に含む、請求項
19に記載の包帯。
【請求項23】
前記炭素層の前記炭素が、バイオ材料又は非有機材料と付着されている、請求項
19又は請求項
22に記載の包帯。
【請求項24】
前記バイオ材料又は非有機材料が、前記包帯に
外部刺激が適用され次第、前記包帯から剥離されることが可能である、請求項
23に記載の包帯。
【請求項25】
前記多層複合材料が、グラム陽性細菌又はグラム陰性細菌に対して抗細菌性を有する、請求項19~24のいずれか一項に記載の包帯。
【請求項26】
多層複合材料を含むバイオセンシング装置
であって、前記多層複合材料が、少なくとも1つの炭素層と強誘電性ポリマー層とを含み、前記強誘電性ポリマーが、前記の少なくとも1つの炭素層の一つの側で電界を誘導するように構成されている、装置。
【請求項27】
前記多層複合材料内又は前記多層複合材料の表面上の少なくとも1つの点と接触している少なくとも1つの電極を更に含む、請求項
26に記載のバイオセンシング装置。
【請求項28】
前記電極が、電子装置に接続された、請求項
26又は27に記載のバイオセンシング装置。
【国際調査報告】