(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(54)【発明の名称】構成要素マッチング決定サポートツール
(51)【国際特許分類】
G06N 20/20 20190101AFI20240319BHJP
G06F 18/214 20230101ALI20240319BHJP
【FI】
G06N20/20
G06F18/214
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556504
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 US2022020113
(87)【国際公開番号】W WO2022197579
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュルク,レビ
(72)【発明者】
【氏名】コスタ,ヒラリー・ドゥセット
(72)【発明者】
【氏名】モンテス,ルイス・イー
(57)【要約】
組合せ装置のばらつきを低減する方法は、少なくとも第1及び第2の構成要素の潜在的な組合せを識別することを含み、各組合せは組合せ装置の1つ又は複数のユニットを形成することができる。方法は、潜在的な各組合せについて、少なくとも組合せの第1の構成要素の1つ又は複数の特性の値及び組合せの第2の構成要素の1つ又は複数の特性の値を予測モデルへの入力として適用することにより、組合せの少なくとも第1及び第2の構成要素から形成される場合の組合せ装置のユニットの特質又は結果を予測することも含む。方法は、潜在的な組合せの予測された特質又は結果に基づいて、潜在的な組合せの中から組合せのサブセットを選択すること及び組合せの選択されたサブセットの指示を提供することも含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組合せ装置のばらつきを低減する方法であって、
1つ又は複数のプロセッサにより、少なくとも第1の構成要素及び第2の構成要素の複数の潜在的な組合せを識別することであって、前記潜在的な組合せの各組合せは組合せ装置の1つ又は複数のユニットを形成することができる、識別することと、
前記潜在的な組合せの各組合せについて、前記1つ又は複数のプロセッサにより、少なくとも(i)前記組合せの前記第1の構成要素の1つ又は複数の特性の値及び(ii)前記組合せの前記第2の構成要素の1つ又は複数の特性の値を予測モデルへの入力として適用することにより、前記組合せの少なくとも前記第1及び第2の構成要素から形成される場合の前記組合せ装置の前記ユニットの特質又は結果を予測することと、
前記1つ又は複数のプロセッサにより、前記潜在的な組合せの前記予測された特質又は結果に基づいて、前記潜在的な組合せの中から組合せのサブセットを選択することと、
前記1つ又は複数のプロセッサにより、組合せの前記選択されたサブセットの指示を提供することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記潜在的な組合せの各組合せは、(i)前記第1の構成要素のバッチ及び(ii)前記第2の構成要素のバッチからなる異なる対であり、
前記潜在的な組合せの各組合せについて、
前記第1の構成要素の前記1つ又は複数の特性のそれぞれの値は、前記第1の構成要素のそれぞれのバッチを統計的に表し、
前記第2の構成要素の前記1つ又は複数の特性のそれぞれの値は、前記第2の構成要素のそれぞれのバッチを統計的に表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の潜在的な組合せを識別することは、
前記第1の構成要素の異なるバッチの識別子の第1のセットを受信することと、
前記第2の構成要素の異なるバッチの識別の第2のセットを受信することと、
各々が前記第1のセットの識別子及び前記第2のセットの識別子からなる異なる対を形成することにより、前記複数の潜在的な組合せを識別することと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の潜在的な組合せを識別することは、実現不可能な組合せを省くことを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の潜在的な組合せを識別することは、前記複数の潜在的な組合せの各々の指示を受信することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組合せの前記サブセットを選択することは、前記潜在的な組合せの前記予測された特質又は結果を目的関数への入力として使用して、前記目的関数を解くことを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記潜在的な組合せの各組合せについて、1つ又は複数の追加の予測モデルを使用して、前記組合せの前記第1及び第2の構成要素から形成される場合の前記組合せ装置の前記ユニットの1つ又は複数の追加の特質又は結果を予測することを更に含み、
前記目的関数は、各々が前記組合せ装置の異なる特質又は結果に対応する複数の機能項を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組合せ装置は充填されたシリンジであり、
前記第1の構成要素はシリンジであり、
前記第2の構成要素は流体製薬である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の構成要素の前記1つ又は複数の特性は、グライド力、シールド除去力、外筒直径、破壊試験結果、押子直径、又は押子重量のうちの1つ又は複数を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の構成要素の前記1つ又は複数の特性は、粘度、密度、又はタンパク質濃度のうちの1つ又は複数を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記組合せ装置は自動注入器であり、
前記第1の構成要素はプレフィルドシリンジであり、
前記第2の構成要素は自動注入器サブアセンブリである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の構成要素の前記1つ又は複数の特性は、押出力、摺動降伏応力、タンパク質濃度、又は粒子特性のうちの1つ又は複数を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の構成要素の前記1つ又は複数の特性は、仕様番号、生理食塩水リリース試験結果、注入時間、作動力、又はばね力のうちの1つ又は複数を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記組合せ装置の前記ユニットの前記特質又は結果を予測することは、前記組合せ装置の前記ユニットにわたる注入時間又は作動力のばらつきを示す値を予測することを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組合せ装置の前記ユニットの前記特質又は結果を予測することは、前記組合せ装置の前記ユニットにわたる前記組合せ装置の特性の確率分布を予測することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組合せ装置の前記ユニットの前記特質又は結果を予測することは、前記組合せ装置の前記ユニットと関連するユーザ苦情の、存在、量、頻度、又は尤度を予測することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記予測モデルは勾配ブーストツリーモデル又はニューラルネットワークである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
組合せの前記選択されたサブセットの前記指示を提供することは、ディスプレイに組合せの前記選択されたサブセットをユーザに示させることを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記組合せの前記選択されたサブセットの前記指示を提供することは、組合せの前記選択されたサブセットを示すデータを計算システム又はアプリケーションに送信することを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
組合せの前記選択されたサブセットに従って前記組合せ装置の複数のユニットを組み立てることを更に含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体であって、
1つ又は複数のプロセッサにより実行されると、前記1つ又は複数のプロセッサに、
少なくとも第1の構成要素及び第2の構成要素の複数の潜在的な組合せを識別することであって、前記潜在的な組合せの各組合せは組合せ装置の1つ又は複数のユニットを形成することができる、識別することと、
前記潜在的な組合せの各組合せについて、少なくとも(i)前記組合せの前記第1の構成要素の1つ又は複数の特性の値及び(ii)前記組合せの前記第2の構成要素の1つ又は複数の特性の値を予測モデルへの入力として適用することにより、前記組合せの少なくとも前記第1及び第2の構成要素から形成される場合の前記組合せ装置の前記ユニットの特質又は結果を予測することと、
前記潜在的な組合せの前記予測された特質又は結果に基づいて、前記潜在的な組合せの中から組合せのサブセットを選択することと、
組合せの前記選択されたサブセットの指示を提供することと、
を行わせる命令を記憶した、1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項22】
前記潜在的な組合せの各組合せは、(i)前記第1の構成要素のバッチ及び(ii)前記第2の構成要素のバッチからなる異なる対であり、
前記潜在的な組合せの各組合せについて、
前記第1の構成要素の前記1つ又は複数の特性のそれぞれの値は、前記第1の構成要素のそれぞれのバッチを統計的に表し、
前記第2の構成要素の前記1つ又は複数の特性のそれぞれの値は、前記第2の構成要素のそれぞれのバッチを統計的に表す、請求項21に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記複数の潜在的な組合せを識別することは、実現不可能な組合せを省くことを含む、請求項22に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項24】
前記組合せの前記サブセットを選択することは、前記潜在的な組合せの前記予測された特質又は結果を目的関数への入力として使用して、前記目的関数を解くことを含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記組合せ装置は充填されたシリンジであり、
前記第1の構成要素はシリンジであり、
前記第2の構成要素は流体製薬である、請求項21~24のいずれか一項に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記第1の構成要素の前記1つ又は複数の特性は、グライド力、シールド除去力、外筒直径、破壊試験結果、押子直径、又は押子重量のうちの1つ又は複数を含む、請求項24に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記第2の構成要素の前記1つ又は複数の特性は、粘度、密度、又はタンパク質濃度のうちの1つ又は複数を含む、請求項25又は26に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項28】
前記組合せ装置は自動注入器であり、
前記第1の構成要素はプレフィルドシリンジであり、
前記第2の構成要素は自動注入器サブアセンブリである、請求項21~24のいずれか一項に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項29】
前記第1の構成要素の前記1つ又は複数の特性は、押出力、摺動降伏応力、タンパク質濃度、又は粒子特性のうちの1つ又は複数を含む、請求項28に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項30】
前記第2の構成要素の前記1つ又は複数の特性は、仕様番号、生理食塩水リリース試験結果、注入時間、作動力、又はばね力のうちの1つ又は複数を含む、請求項28又は29に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項31】
前記組合せ装置の前記ユニットの前記特質又は結果を予測することは、前記組合せ装置の前記ユニットにわたる注入時間又は作動力のばらつきを示す値を予測することを含む、請求項25~30のいずれか一項に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項32】
前記組合せ装置の前記ユニットの前記特質又は結果を予測することは、前記組合せ装置の前記ユニットにわたる前記組合せ装置の特性の確率分布を予測することを含む、請求項21~31のいずれか一項に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項33】
前記組合せ装置の前記ユニットの前記特質又は結果を予測することは、前記組合せ装置の前記ユニットと関連するユーザ苦情の、存在、量、頻度、又は尤度を予測することを含む、請求項21~30のいずれか一項に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項34】
前記予測モデルは勾配ブーストツリーモデル又はニューラルネットワークである、請求項21~33のいずれか一項に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項35】
組合せの前記選択されたサブセットの前記指示を提供することは、
ディスプレイに組合せの前記選択されたサブセットをユーザに示させること、又は
組合せの前記選択されたサブセットを示すデータを計算システム又はアプリケーションに送信すること
のうちの少なくとも一方を含む、請求項21~34のいずれか一項に記載の1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般的には装置の組み立て又は製造に関し、より詳細には、装置を組み立てるか又は製造するときに使用すべき特定の構成要素又は構成要素バッチ/ロットの選択の技法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの製造/生産状況で、異なるタイプの構成要素が組み合わせられて、組合せ装置を形成する。製薬業では、例えば流体製薬は多くの場合、シリンジと組み合わせられて(即ち充填に使用されて)、流体充填シリンジを製造する。別の例として、流体充填シリンジを自動注入サブアセンブリと組み合わせて(即ち充填して)、完全な自動注入装置を製造することができる。更に別の例として、凍結乾燥製薬をバイアル又は他の容器と組み合わせる(即ち、充填に使用する)ことができる。これら及び他の状況の各々で、各構成要素の複数のバッチが、互いとの組合せに利用可能であり得る(例えば在庫にあり得る)。構成要素のばらつき(例えばバッチレベルのばらつき)に起因して、組合せ装置の所与のユニットに向けて任意の2つの構成要素がペアリング(又はより一般には、2つ以上の構成要素がマッチング)される様式は、個々の構成要素の許容差が最終製品で「積み重」なる様式に影響を及ぼし得、酌み交わせ装置の特性の可能な値(例えば、自動注入装置の注入時間等の装置の機能出力の値)の分布が広がることに繋がり得る。個々の構成要素の許容差が厳しく制御される場合であっても、最終製品の特性は比較的広範囲の値を示し得、拒絶率の増大、より多くのユーザ(例えば、顧客又は患者)苦情、及び/又は他の問題に繋がる恐れがある。更に、個々の構成要素の許容差を最終製品における許容差標的を満たすのに十分に厳しくすることは、法外なほどに高価であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
現在/従来の実施の上記欠点の幾つかに対処するために、本明細書に記載の実施形態は、異なる構成要素と関連付けられたデータ(例えば、異なる構成要素のバッチ固有又はユニット固有データ)を使用して、組合せ装置を製造又は組み立てるとき、それらの構成要素(例えば、特定の構成要素又は構成要素の特定のバッチ)をよりよくペアリング又はマッチングするシステム及び方法を含む。このようにして、組合せ装置の(例えば公称仕様前後の)ばらつきを低減することができ、それにより、従来のプロセス制御手段と比較してよりよい一貫性の製品性能(例えば、欠陥がより少なく及び/又はユーザ苦情がより少ない)を提供する。「構成要素」という用語は、その使用状況によりより具体的な意味が明らかに示される場合を除き、組合せ装置の任意の物理的部分(例えば、構造的部分構成要素、原材料、又は容器として作用する別の構成要素の充填に使用される流体、凍結乾燥薬剤、若しくは他の物質等)を指すために本明細書では広く使用される。更に、「組合せ装置」という用語は、その使用状況によりより具体的な意味が明らかに示される場合を除き、2つ以上の構成要素を使用して製造又は組み立てられ、(例えば、販売又は流通の)「最終」製品又は製品の中間段階であり得る任意の装置を指すために本明細書では広く使用される。
【0004】
本明細書に開示される技法では、予測機械学習モデルは、組合せ装置の形成に使用し得る構成要素の幾つかの異なる組合せ(例えば、構成要素Aのバッチ1と構成要素Bのバッチ1及び構成要素Aのバッチ1と構成要素Bのバッチ2等)の各々について、その組合せ装置のユニットの少なくとも1つの特質又は結果を予測する。予測される特質は、例えば、装置の品質又は性能の尺度(例えば、製造された複数のユニットにわたる組合せ装置の特性の標準偏差)であり得る。別の例として、予測される結果は、ユーザ苦情(ユーザ苦情一般又は特定のタイプのユーザ苦情)が発生することになるか否か又はそのような苦情がどの程度の頻度で生じることになるか等の指示であり得る。各予測を行うために、モデルは、組合せに考慮される各構成要素の1つ又は複数の特性の値に対して働く(即ち、入力として受け入れる)。これらのモデル入力は、構成要素と関連付けられた(例えば、特定の構成要素バッチと関連付けられた)実測値、識別子、他の予測(又は推測)値、及び/又は他のタイプの上流製造データを含み得る。モデルが種々の構成要素組合せの各々の特質又は結果(又は複数の特質及び/又は結果)を予測した後、オプティマイザ(例えば線形オプティマイザ)が予測値に対して動作して、装置の品質又は性能の所望の尺度(例えば、モデルにより予測された1つの特質/複数の特質及び/又は1つの結果/複数の結果の所望の値)を「最良」に(例えば最適に)満たすためにどの構成要素(又は構成要素バッチ等)をマッチングすべきかを判断する。
【0005】
特に、プレフィルドシリンジバッチを自動注入装置サブアセンブリバッチとペアリングする目的で本明細書に開示の技法を使用すると、バッチをランダムにペアリングする従来のプロセスと比較して平均注入時間のロット毎のばらつきを30%~45%低減することができることが示されている。一般に、利用可能な構成要素バッチ/ロットの数が増えるにつれて及び/又は特定の組合せ装置の製造/組み立てに必要な構成要素数が増えるにつれて、本明細書に開示される技法を使用してそれらの構成要素のバッチ/ロットをマッチングする恩恵もそれに対応して増大することができる。更に、本明細書に記載の技法を実施するソフトウェアツールは、構成要素又は構成要素バッチの特定の組合せが何故有利であるかの人間ユーザによる理解を促進することができる。例えば、そのようなツールを使用して、ユーザは、ばらつきの異なる原因を相殺する構成要素の直観的なペアリングを可能にする1組のヒューリスティック又は「経験則」を開発することができる。一般に、本明細書に記載の技法は、製造された組合せ装置にけるロット毎のばらつきを低減し及び/又はユーザ(例えば、顧客及び/又は患者)経験を改良するのに役立つことができる。
【0006】
当業者は、本明細書に記述される図が例示を目的として含まれ、且つ本開示を限定するものではないことを理解するであろう。図面は、必ずしも縮尺が正確ではなく、代わりに本開示の原理を図示することに重点が置かれている。幾つかの例では、記載される実装形態の理解を促進するために、記載される実装形態の様々な態様が誇張又は拡大された状態で示される場合があることを理解されたい。図面では、様々な図を通して、同様の参照符号は、全般的に、機能的に類似の且つ/又は構造的に類似の構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】構成要素マッチングツールを実施して、製造された組合せ装置のユニットにわたるばらつきを低減するように構成要素をマッチングする一例のシステムの簡略化されたブロック図である。
【
図2A】
図1の構成要素マッチングツールが特定の構成要素又は特定の構成要素バッチをマッチングし得る例としての組合せ装置の構成要素を示す。
【
図2B】
図1の構成要素マッチングツールが特定の構成要素又は特定の構成要素バッチをマッチングし得る例としての組合せ装置の構成要素を示す。
【
図3A】
図1の計算システムにより少なくとも部分的に実装され得る一例のプロセスを示す。
【
図3B】一例の製造プロセスにおけるペアリング決定段階を示す。
【
図4】
図1の構成要素マッチングツールにより生成及び/又は投入され得る一例のユーザインタフェースを示す。
【
図5】潜在的なシリンジストッパ、シリンジ外筒、及び薬剤組合せの平均注入時間及び平均作動力の予測例を示すプロットを示す。
【
図6】自動注入装置構成要素をランダムにマッチングした場合、ヒューリスティックルールを使用して自動注入装置構成要素をマッチングした場合、及び線形オプティマイザを使用して自動注入器構成要素をマッチングした場合の自動注入装置の予測平均注入時間を比較したプロットを示す。
【
図7】組合せ装置が自動注入装置である一実施態様での一例としてのSHAP及び特徴重要値のプロットを示す。
【
図8】組合せ装置のばらつきを低減するための一例の方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記で導入として説明され、以下でより詳細に論じられる様々な概念は、多くの方法のいずれかで実施することができ、記載される概念は、いかなる特定の実装形態の様式にも限定されない。実装形態の例は、例証を目的として提供される。
【0009】
図1は、本明細書に開示の技法が実施され得る一例のシステム100の簡略化されたブロック図である。一例のシステム100は、M個のバッチ102Aでの構成要素Aのユニットと、N個のバッチ102Bでの構成要素Bのユニットとを含む(M及びNは同じ又は異なる整数であり、数の一方又は両方は1よりも大きい)。構成要素A及び構成要素Bは、互いと組み合わせられ/組み立てられて、組合せ装置を形成することができる任意の物理的構成要素であり得る。組合せ装置は、2つ以上のそのような構成要素を使用して製造又は組み立てられる任意の装置であり得、(例えば、販売又は流通の)「最終」装置/製品であってもよく又は装置/製品の中間段階(例えば、機器のサブアセンブリ)であってもよい。
図2A及び
図2Bは、構成要素A及び/又は構成要素Bの特定の非限定的な例を提供する。例えば、構成要素Aは
図2Aのシリンジ200であり得、シリンジ200は外筒202、押子/ストッパ204、フランジ206、ニードル208、及び恐らくはニードルシールド210を含み、構成要素Bは、結果として生成される組合せ装置が流体充填シリンジであるように、シリンジ200を充填する流体製薬であり得る。別の例として、構成要素Aは
図2Aの外筒202(フランジ206と一体化される)と(プレステークド)ニードル208との組合せであり得、構成要素Bは
図2Aの押子/ストッパ204であり得る。
【0010】
図2Bは、構成要素Aが流体充填シリンジ222であり、構成要素Bが前部自動注入装置サブアセンブリ224及び後部自動注入装置サブアセンブリ226の両方を含み、組合せ装置が完全な自動注入装置である、続く製造/組み立て段階に対応する更に別の例を示す。代替的には、システム100は、サブアセンブリ224及び226を別個の構成要素として扱い、流体充填シリンジ222(構成要素A)のバッチ、前部自動注入装置サブアセンブリ224(構成要素B)のバッチ、及び後部自動注入装置サブアセンブリ226(構成要素C、
図1に示されず)のバッチをマッチングし得る。本明細書に記載の技法が任意の数の構成要素に適用可能であり、連続した製造段階で複数回適用可能(例えば、流体充填シリンジのばらつきを低減するため及び続く製造段階でも最終自動注入装置のばらつきを低減するために)なことが理解される。
【0011】
幾つかの実施形態では、システム100は、1組の複数のバッチを別の組の1つ又は複数のバッチとマッチングする。例えば、バッチ102Aは、1組10個のバッチの構成要素Aに対応し得、一方、バッチ102Bは構成要素Bの1つのバッチ(又は10個のバッチ、20個のバッチ等)に対応し得る。本明細書における説明は主に、構成要素の異なるロット又はバッチのマッチングに関連する(例えば、各「バッチ」は同じプロセスラン及び/又は同じ時間窓等及び同じ設備で製造されたユニットからなる)が、幾つかの実施形態では、システム100は代わりに、ユニット単位で構成要素をマッチングする(例えば、測定のためにバッチユニットのサブセットを単にサンプリングするのではなく、各構成要素の全てのユニットがテストされて、解析することができる測定データを提供する場合)。したがって、「バッチ」のマッチングに関して本明細書に記載される実施形態は、代わりに単一のユニットをマッチングしてもよく、任意のサイズのユニットの集まり(例えば、製造プロセスにより定義される「バッチ」に対応しない集まり)をマッチングしてもよく、又は複数のバッチのセットをマッチングしてもよいことが理解される。
【0012】
更に、本明細書に記載の大半の実施形態は、異なるタイプの構成要素のマッチングに関わるが、幾つかの実施形態では、組合せ装置は、全く同じ構成要素の少なくとも2つのユニットから形成され、バッチ102A及び102Bは、その構成要素の全バッチのサブセットである(即ち、構成要素A及びBは同じ構成要素である)。更に、本明細書に記載の大半の実施形態は医薬装置(例えば自動注入装置)に関わるが、他の実施形態では、組合せ装置は非医薬装置、例えば、家電又は家電サブアセンブリ、自動車又は自動車サブアセンブリ、医療機器又は医療機器サブアセンブリ等である。例えば、自動車実施形態では、構成要素A及びBはそれぞれ、エンジンのシリンダヘッド及びピストンであり得る。
【0013】
一般に、本明細書に記載のマッチング技法は、製造プロセス内の構成要素系譜の任意のレベル(例えば、1つ又は複数のサブアセンブリ又は部分構成要素及び最終アセンブリ/製品を各々含む1つ又は複数の階層レベル)での構成要素のマッチングに使用し得る。以下を含む特定の状況及び/又は品質は、所与の製造プロセスを、本明細書に開示の技法を通した改良により適したものにし得る:(1)プロセスの1つ又は複数の構成要素からのデータ(例えば製造データ)は、対応する製造状態が開始される前、利用可能であり、(2)どの濃い悪阻が所与の最終製品又は最終製品バッチで使用されるかをリンクするバッチ(又は他のグループ分け)系譜データが利用可能であり、(3)利用可能なプロセス構成要素データは最終製品の関心のある特性を予測することができ、(4)大半の予測特性は、組み合わせられることになる2つ以上の構成要素(いかなるペアリング決定も行う機会もない1つのみの構成要素ではなく)の特性を含む。
【0014】
図2Cは、1つのそのような装置/製品系譜250の一例を示し、異なる構成要素の異なるバッチが組み合わせられて、サブアセンブリが作製され、最終的に最終製品の異なるロットが作製される。「構成要素」という用語が本明細書で使用される場合、「最終製品」層下の全ての枠(例えば、「構成要素C」、「サブアセンブリAB」等)は組合せ可能な構成要素として見ることができることが理解される。したがって、系譜250は、第1のレベルが3つの別体の構成要素を含み、第2のレベルが4つの別体の構成要素を含む(2つのバッチが「構成要素C」に示され、2つのバッチが「構成要素D」が示される)製造プロセスを表す。
【0015】
幾つかの実施形態では、1つの構成要素(例えば、構成要素A又は構成要素B)の異なるバッチは、同じ一般構成要素タイプであるが、全く同じであるわけではない。再び
図1を参照すると、例えば、構成要素Aの全てのバッチ102Aは同じシリンジのバッチ(例えば、同じ部品番号又は部品番号のアセンブリ)であり得、一方、構成要素Bの異なるバッチ102Bは異なる流体製薬であり得る。即ち、本明細書に記載の技法は、単一のシリンジタイプの異なるバッチを異なる製薬と組み合わせるのに使用し得る。これは、一般に、異なる薬剤特質(例えば、粘度、タンパク質濃度等)に起因して、構成要素のばらつきの影響が異なる薬剤にわたり一定ではないことが分かっているため、有利であることができる。したがって、異なる容器バッチとの薬剤タイプの最適なマッチング及び/又は異なる自動注入装置サブアセンブリバッチとの異なる薬剤タイプを含むプレフィルドシリンジの最適なマッチングは、最終自動注入装置のばらつきを低減することができる。
【0016】
システム100は、各バッチ102A及び各バッチ102Bの1つ又は複数の特性を表すデータを測定及び/又は収集するように一般に構成された特性付けシステム104を含む。特性付けシステム104は、2つのバッチ102A、102Bの特性を測定するために別個の装置を含み得る(例えば、構成要素A及び構成要素Bの種類が、異なる測定機器を必要とするのに十分に異なる場合又は構成要素A及び構成要素Bが異なる場所で製造される場合等)。構成要素Aがシリンジであり、構成要素Bが流体製薬である場合、例えば、特性付けシステム104は、構成要素Aのユニットの外筒内径を自動的及び/又は手動で測定する第1のセンサ(例えばカメラ)及び関連付けられた機器(例えば、光学コンパレータ及び測定値を記憶する計算装置)と、製薬粘度を自動的及び/又は手動で測定する第2のセンサ(例えば粘度計)及び関連付けられた機器(例えば、測定値を記憶する計算装置)とを含み得る。特性付けシステム104は、複数のデータソース(例えば、異なる組織、システム等)を含み得及び/又は複数のデータソースからデータを収集し得、データは1つ又は複数の時間期間に対応することができる。
【0017】
幾つかの実施形態では、特性付けシステム104は、各バッチでのユニットのサブセットのみをサンプリングし、そのバッチの代表の特性値(例えば、平均外筒内径、平均粘度等)を特定する。一般に、特性値は、平均、中央値、最小、最大、標準偏差、及び特定の四分位数値等の、異なる構成要素の各々と関連付けられた1つ又は複数のテスト及び/又はプロセスからの要約統計量であり得る。
【0018】
他の実施形態(例えば、構成要素がバッチ単位ではなく個々にマッチングされる場合)では、特性付けシステム104は、構成要素Aのあらゆるユニット及び構成要素Bのあらゆるユニットを測定する。幾つかの実施形態では、特性付けシステム104は、特定の特性の値を間接的に測定する(即ち「ソフトセンス」)装置及び関連付けられた機器(例えば、センサコントローラ、計算装置等)を含む。例えば、特性付けシステム104は、流体製薬のラマンスキャンを解析して、化学組成及び分子構造を示す値を特定するラマン分光計を含み得る。
【0019】
システム100は、特性付けシステム104に結合された計算システム110も含む。計算システム110は、単一の計算装置又は同じ位置に配置された若しくは互いに遠隔に配置された複数の計算装置(例えば、1つ又は複数のサーバ及び1つ又は複数のクライアント装置)を含んでもよい。
図1に示す一例の実施形態では、計算システム110は、1つ又は複数のプロセッサ120、ネットワークインタフェース122、ディスプレイ124、ユーザ入力装置126、及びメモリ128を含む。幾つかの実施形態では、計算システム110は特性付けシステム104の一部分を含む。
【0020】
プロセッサ120の各々は、メモリ128に記憶されたソフトウェア命令を実行して、本明細書に記載のように、計算システム110の機能の幾つか又は全てを実行するプログラム可能なマイクロプロセッサであってもよい。代わりに、プロセッサ120の1つ又は複数は、他のタイプのプロセッサ(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等)であってもよい。
【0021】
ネットワークインタフェース122は、1つ又は複数の通信プロトコルを使用して外部装置及び/又はシステム(例えば、特性付けシステム104、計算システム110から最適な組合せの指示を受信する別の計算システム、又は計算システム110と特性付けシステム104との間にインタフェースを提供するサーバ等)と通信するように構成された任意の適したハードウェア(例えば、フロントエンド送信器及び受信器ハードウェア)、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含んでもよい。例えば、ネットワークインタフェース122は、イーサネットインタフェースであってもよく、又はイーサネットインタフェースを含んでいてもよい。
図1には示されないが、計算システム110は、単一の通信ネットワークを介して又は1つ若しくは複数のタイプの複数の通信ネットワーク(例えば、1つ若しくは複数の有線及び/又は無線ローカルエリアネットワーク(LAN)、及び/又は1つ若しくは複数の有線及び/又は無線ワイドエリアネットワーク(WAN)、例えばインターネット若しくはイントラネット等)を介して、特性付けシステム104及び/又は計算システム110と特性付けシステム104との間にインタフェースを提供する任意の装置と通信してもよい。
【0022】
ディスプレイ124は、情報をユーザに提示するために任意の適切な表示技術(例えば、LED、OLED、LCD等)を使用してもよく、ユーザ入力装置126は、キーボード又は他の適切な入力装置であってもよい。幾つかの実施形態では、ディスプレイ124及びユーザ入力装置126は、単一の装置(例えば、タッチスクリーンディスプレイ)内に一体化される。一般に、ディスプレイ124及びユーザ入力装置126を組み合わせて、例えば、推奨される構成要素バッチ組合せをユーザに通知する等の目的のため、計算システム110により出力された視覚プレゼンテーション(例えば、グラフィカルユーザインタフェース又は表示された情報)をユーザが見ること及び/又はそれと相互作用することを可能にしてもよい。
【0023】
メモリ128は、揮発性及び/又は不揮発性メモリを含む1つ又は複数の物理メモリ装置又はユニットを含んでもよく、計算システム110の様々な計算装置に位置するメモリを含んでもよい。読み取り専用メモリ(ROM)、ソリッドステートドライブ(SSD)、ハードディスクドライブ(HDD)等の任意の適した1つ又は複数のタイプのメモリが使用されてもよい。メモリ128は、構成要素マッチングツール130を含む1つ又は複数のソフトウェアアプリケーションの命令を記憶する。構成要素マッチングツール130は、プロセッサ120の幾つか又は全てにより実行されると、一般に、(1)特性付けシステム104により生成された構成要素バッチデータを収集し、(2)バッチ102Aと102Bのどの組合せが、組合せ装置のユニットによりよい特質及び/又は結果(例えば、組合せ装置の特定の特性の分布が狭い及び/又はユーザ苦情がより少ない等)を提供するはずであるかを判断し、(3)それらの組合せの指示をユーザ及び/又は別の計算システム又はアプリケーションに提供することを行うように構成される。このために、構成要素マッチングツール130は、トレーニングモジュール140、組合せ識別モジュール142、予測モジュール144、及び最適化モジュール146を含む。モジュール140~146は、構成要素マッチングツール130の別個のソフトウェア構成要素若しくはモジュールであってもよく、又は単に、異なる構成要素/モジュールの間で必ずしも分割されていない、構成要素マッチングツール130の機能を表してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、予測モジュール144及びトレーニングモジュール140は、単一のソフトウェアモジュールに含まれる。更には、幾つかの実施形態では、異なるモジュール140~146は、構成要素マッチングツール130の複数のコピー間で(例えば、計算システム110における異なる装置で実行されて)又は計算システム110の1つ若しくは複数の装置に記憶され実行される異なるタイプのアプリケーション間で分散されてもよい。モジュール140~146の各々の動作は、システム100の動作を参照して以下で更に詳述する。
【0024】
これもまた更に以下詳述するように、計算システム110は、トレーニング目的で履歴データベース150にアクセスするように構成される。履歴データベース150は、特性付けシステム104により収集され及び/又は他の同様の装置又はシステムにより収集された過去の特性データと関連付けられたパラメータ値を記憶し得る。例えば、履歴データベース150は、流体製薬の個々の(又は平均、算術平均等)粘度及び/又はタンパク質濃度、シリンジの外筒直径及び/又はグライド力等、及び恐らくは他の関連パラメータの値(例えば時間)も記憶し得る。幾つかの実施形態では、履歴データベース150は、追加又は代替として、薬剤流体バッチが、閾値サイズを超えた(例えば20μmを超えた)粒子を含むと観測されたか否かを示すデータ等の特定の構成要素又は構成要素バッチのカテゴリ値を記憶する。履歴データベース150は、異なる構成要素のバッチの特定の組合せから形成された組合せ装置のユニットの実際の特質及び/又は結果を表す「ラベル」情報を記憶することもできる。幾つかの実施形態では、各ラベルは、組合せ装置の結果としてのロットと関連付けられた実測数値である。例えば、各ラベルは、構成要素バッチの特定の組合せを使用して形成された自動注入装置のバッチの平均注入時間若しくは平均作動力であってもよく、又は自動注入装置のバッチの注入時間若しくは作動力の確率分布を定義する1つの値若しくは1組の値等であってもよい。これに代えて又は加えて、各ラベルは、特定のタイプのユーザ苦情(例えば、患者苦情、顧客苦情等)又はユーザ苦情全般が、結果としての組合せ装置で何らかの閾値数若しくは頻度を超えたか否かの指示、又はそのような苦情の厳密な数、頻度、及び/又は尤度等であり得る。データベース150は、メモリ128の永久的メモリ、計算システム110の異なる永久的メモリ、又は別の装置若しくはシステムに記憶し得る。幾つかの実施形態では、計算システム110は、ネットワークインタフェース122を使用してインターネットを介してデータベース150にアクセスする。
【0025】
構成要素マッチングツール130のトレーニングモジュール140は、履歴データベース150に記憶されている特性(例えば測定)データ及び関連付けられたラベルを使用して、予測モデル132をトレーニングし、これは次いで予測モジュール144により使用されて、構成要素バッチの特定の組合せから生じる組合せ装置のユニットの予測を行う。予測モデル132は、決定木アンサンブルモデル(例えば、勾配ブーストツリーモデル)、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン(SVM)モデル、決定木モデル、又は任意の他の適したタイプのモデルであり得る。より具体的な例として、予測モデル132はXGブーストモデルであり得、このモデルは、特定の他の予測モデルタイプ(例えば、線形回帰、LASSO、及びランダムフォレストモデル)と比較して、開示された技法に優れた性能を届けることが分かっている。予測モデル132は、例えば、構成要素バッチの特定の組合せの結果として生成される組合せ装置の特定の分類(例えば、「仕様許容差内にある」若しくは「仕様許容差内にない」若しくは「良好なユーザ経験」、「中程度のユーザ経験」、及び「悪いユーザ経験」等)を予測する分類器、特定の1つ又は複数の数値(例えば、平均注入時間、注入時間の標準偏差、注入時間の四分位範囲等)を予測するモデル、又は完全確率分布を予測するモデル(例えば、予測モデル132がモジュール式ニューラルネットワーク(MNN)を含む場合)を含み得る。予測モデル132は、例えば、オープンソースPythonライブラリを使用して作成し得る。
【0026】
幾つかの実施形態では、予測モデル132は再トレーニング/改良され、又は新しい予測モデルが特定の使用事例に向けてトレーニングされる。例えば、予測モデル132又は新しいモデルは、使用すべき製造場所、製造されている製薬の改訂/バージョン又はタイプ、特定の時間期間等に固有の履歴データを使用してトレーニングし得る。更に、1つ又は複数のラベルがユーザ経験を表す実施形態では、ラベルは、特に、関連する地理(例えば、世界、米国、又は非米国)、年齢群、最終使用環境(例えば、サンプル装置、販売用装置、又は医療用途装置)等に制限し得る。
【0027】
予測モデル132の生成(例えば、恐らくは何らかのユーザ入力と共に、部分的又は全体的にトレーニングモジュール140による)は、例えば、以下を含み得る:(1)前処理データ(特徴を正規化及びスケーリングし、データ型を変換し、欠損データを入力することにより、予測モデル132により使用されるように履歴データを準備する)、(2)前処理されたデータをトレーニングセット及びテスト/検証セットに分け(データの過学習を回避し、見知らぬデータで予測モデル132の性能を推定するため)、(3)モデルタイプを選択し(所与の予測にどの教師あり機械学習アルゴリズムを使用するかを決定する)、(4)ハイパーパラメータを選択して相互検証し(特定のデータセットに向けて所与のモデルを調整するために裁量のパラメータを決定する)、(5)モデルフィッティングを実行し(トレーニングデータ及び調整パラメータを使用して、最小化すべき最適な損失関数を選択する能力を有する予測モデルを作成する)、(6)予測モデル132を評価し(トレーニング済みの予測モデル132を使用して、テストセットで予測を行うことによりモデル性能を評価する)、(7)特徴重要度を決定する(トレーニング済み予測モデル132が入力データに基づいて予測出力値にいかに到達するかの視覚的表現を提供する)。XGブーストモデルの調整パラメータは、例えば、最大深度、推定子数、最小子重み、学習速度、ツリーによるカラムサンプル(column sample by tree)、サブサンプル、アルファ、ガンマ、及びラムダを含み得る。モデル性能は、例えば、決定係数(R2)メトリックを使用して評価し得る。
【0028】
更に詳細に以下考察するように、組合せ識別モジュール142は一般に、構成要素バッチの特定の組合せ(例えば、各々がバッチ102Aの1つをバッチ102Bの1つとペアリングする異なる組合せ)を識別するように構成され、予側モジュール144は次いで、その組合せから生じる組合せ装置の1つ又は複数の特質及び/又は結果を予測することになる。これもまた更に詳細に以下考察するように、最適化モジュール146は一般に、予測モジュール144により出力された組合せ固有の予測を処理して、製造/組み立てで使用すべき組合せのセット又は製造/組み立てに推奨される組合せのセットを生成するように構成される。
【0029】
上述したように、計算システム110は、1つの装置又は複数の装置を含んでもよく、複数の装置を含む場合、同じ位置に配置されてもよく、又は遠隔に分散されてもよい(例えば、異なる装置間のイーサネット及び/又はインターネット通信を有して)。一実施形態では、例えば、計算システム110の第1のサーバ(モジュール140を含む)は、予測モデル132をトレーニングし、計算システム110の第2のサーバは、特性付けシステム104から測定値及び/又は他のデータを収集し、計算システム110の第3のサーバ(モジュール142、144、146を含む)は、第2のサーバから測定値及び/又は他のデータを受信し、トレーニングされた予測モデル132のコピーを使用して、受信した測定値及び/又は他のデータに基づいて予測を生成する。別の例として、上記例の第3のサーバは、トレーニングされた予測モデル132のコピーを記憶せず、代わりに、第2のサーバに測定値を提供することにより予測モデル132を利用する(例えば、予測モデル132がウェブサービス構成を介して利用可能な場合)。本明細書で使用する場合、用語の使用状況が明らかに別のことを示さない限り、モデル(例えば予測モデル132)を「実行する」、「使用する」、「実施する」等の用語は、ローカルに記憶されたモデルを直接実行する又は他の装置(例えば、リモートサーバ)にモデルを実行させるように要求するという代替形態を包含するように広く使用される。
図1に示し及び/又は本明細書に記載されるものを超える機能の更なる他の構成及び分散も可能であり、本明細書に開示される本発明の範囲内にあることが理解される。
【0030】
ここで、
図1の構成要素及び
図3Aに示すプロセス300の両方を参照してシステム100の動作を更に詳細に説明する。初期トレーニング段階302において、構成要素マッチングツール130は、履歴データベース150から履歴データ304(例えば、過去の構成要素測定値及び関連付けられたラベル)を取り出し、トレーニングモジュール140は、取り出された履歴データ304を使用して予測モデル132をトレーニングする。例えば、構成要素Aがシリンジであり、構成要素Bが製薬である場合、履歴データ304は以下を含み得る: (1)履歴データベース150において表されたシリンジの各バッチについて、グライド力、シールド除去力(shield removal force)、外筒内径、破壊試験結果、押子のトリム最大外径、押子の最大外径、及び/又は押子のシリコーン重量を示すデータ、例えばバッチの平均値、及び(2)履歴データベース150において表される薬剤の各バッチ及び/又はタイプについて、薬剤識別子並びに/或いは例えば適切な場合には平均値を用いる薬剤粘度、タンパク質濃度、製造場所、及び/又は密度等の他の情報。別の例として、構成要素Aがプレフィルドシリンジであり、構成要素Bが後部自動注入装置サブアセンブリを含む場合、履歴データ304は以下を含み得る:(1)履歴データベース150において表されるプレフィルドシリンジの各バッチについて、押出力、ブレークルーズ力、タンパク質濃度、特性(例えば、特定のサイズを超える粒子が製薬中で観測されたか否か)、及び/又は上記シリンジ固有特性のいずれか(例えば、グライド力、外筒内径等)を示すデータ、例えばバッチの平均値、及び(2)履歴データベース150において表される後部自動注入装置サブアセンブリの各バッチについて、例えば適切な場合には平均値を用いた、仕様番号、生理食塩水リリース試験結果(注入時間及び/又は作動力)、並びに/或いはばねデータ(例えばばね力)。
【0031】
トレーニングモジュール140は、注入時間又は作動力等の組合せ装置の特定の特質を予測するように予測モデル132をトレーニングする(例えば、組合せ装置がプレフィルドシリンジ又は完全な自動注入装置である場合)。値は、例えば、特定の組合せ(例えば、構成要素Aのバッチ1と構成要素Bのバッチ2との組合せ)と関連付けられた特定のバッチから形成される全ての組合せ装置の特性の予期される平均値であってもよく又は特性のばらつきを示す予期されるメトリック(例えば、予測される標準偏差)であってもよい。他の実施形態では、トレーニングモジュール140は、構成要素の特定の組合せから形成された場合の組合せ装置の確率分布を予測するように予測モデル132をトレーニングする。
【0032】
幾つかの実施形態では、予測モデル132は1つ又は複数の予備モデル段階を含む。例えば、予測モデル132の第1のモデル段階は、履歴データ150からの入力を、寸法の縮小セットを反映した値に変換し得る。より具体的な例として、予測モデル132は主成分分析(PCA)技法を入力のセット又はサブセットに適用して、そのセット又はサブセットをn次元に縮小し、次いでn個の値(1次元に1つずつ)を入力として、予測値を出力する後続モデル段階(例えば、決定木アンサンブルモデル又はニューラルネットワーク)に適用し得る。そのような実施形態では、トレーニングモジュール140は、段階302において次元縮小を実行し、それから、トレーニングを目的として入力を予測モデル132の残りの部分に適用し得る。
【0033】
段階302は、(例えば、トレーニングに使用されなかった履歴データ304の一部分を使用して)トレーニングされた予測モデル132を検証及び/又は認定することを含むこともできる。満足のいくようにトレーニングされ、恐らくは検証/認定されると、構成要素マッチングツール130の予測モジュール144は、段階310において予測モデル132を使用して、考慮されている構成要素又は構成要素バッチの各組合せの1つ又は複数の組合せ装置特性の値を予測することができる。しかしながら、段階310の前、構成要素マッチングツール130の組合せ識別モジュール142は、構成要素バッチのどの組合せ(ひいては新しいデータ306のどのサブセット)を分析すべきかを判断する。新しいデータ306は、組合せ装置の新しいユニットを形成するために組み立てられるべき構成要素バッチの特性を示すデータを含み、履歴データ304に関して上述したものと同じタイプの測定値及び/又は他の構成要素データ(例えば、シリンジグライド力、製薬識別子等)を含んでもよい。
【0034】
組合せ識別モジュール142は、例えば、ユーザにより(例えばユーザ入力装置126を介して)手動で入力されたか、又は別の計算システム、記憶装置、若しくはアプリケーションからの異なる構成要素(例えば、構成要素A及び構成要素B)のバッチ識別子のリストを受信し、次いで、バッチ識別子リストに基づいて可能な各順列を自動的に生成することにより、考慮すべき組合せを決定し得る。他の実施形態では、段階308における組合せ識別モジュール142は、段階310において処理リソースを無駄にしないように、実現可能ではないか、又は実用的ではない(例えば、製造プロセスのタイミング/シーケンシングに起因して、2つのバッチを組み合わせることが可能ではない)組合せもフィルタリングして除外する(省く)。他の実施形態では、組合せ識別モジュール142は、単に考慮すべき適切な構成要素/バッチ組合せの指示を(例えば、ユーザにより手動で入力されるか、又は別の計算システム、記憶装置、若しくはアプリケーションから)受信することにより、考慮すべき適切な構成要素/バッチ組合せを識別/決定する。幾つかの実施形態及び/又は状況では、組合せ識別モジュール142の出力(及び/又は組合せ識別モジュール142への入力)は、例えば、製造プロセスへの大きな混乱を回避するために、構成要素バッチを限られた時間しか「保持」エリアに確保することができないように、時間に基づいて制限される。
【0035】
段階310において、予測モジュール144は、ブロック308において識別された組合せの構成要素/バッチに対応する新しいデータ306の一部分/サブセットを予測モデル132への入力として適用する。予測モジュール144は、識別された各組合せについて順次、即ち、ある組合せの関心のある特質又は結果を予測し、それから次の組合せを処理することにより、データ306に対して動作し得る。代替的には(例えば、プロセッサ120が予測モジュール144の複数のインスタンスを実施することができる場合)、構成要素マッチングツール130は複数の組合せの予測を並列して行い得る。上述したように、予測モデル132は、幾つかの実施形態では、次元縮小段階を含むことができ、その場合、段階310は、次元縮小データを予測モデル132に入力する前に、データ次元を縮小することを含む。
【0036】
段階310における出力は、段階308において識別された各組合せの1つ又は複数の特質及び/又は結果(即ち、トレーニング段階302で使用されたラベルにより表されるものと同じタイプの特質及び/又は結果)の予測を含む。段階312において、最適化モジュール146は、識別された全ての組合せの予測された特質及び/又は結果をオプティマイザへの入力として適用して、組合せのどのセットが「最良」(例えば最適な)性能を提供するかを判断する。オプティマイザは線形オプティマイザであり得る。例えば、最適化モジュール146はPuLP(Python線形プログラミングアプリケーションプログラミングインタフェース(API))を使用して、目的関数を定義し、外部ソルバを呼び出し得る。
【0037】
予測モジュール144が1つのみの特質(例えば、特定の構成要素組合せから生じた全ての組合せ装置ユニットにわたる注入時間の標準偏差)を予測する幾つかの実施形態では、最適化モジュール146は以下の目的関数を解き:
【数1】
式中、J
iは第iの組合せの予測平均組合せ装置特質(例えば平均注入時間)であり、J
meanは、所与の薬剤を使用した場合の実際の(例えば実測又は既知の)平均組合せ装置特質であり、X
iは、考慮されている順列及びiの値に応じてゼロ又は1のいずれかである。整数nは、段階308において識別された組合せの順列の総数を表す。例えば、構成要素Aの12個のバッチ及び構成要素Bの20個のバッチが利用可能であり、組合せ識別モジュール142がいずれの組合せも除外しない場合、n=12×20=240である。上記目的関数を最小化する場合、最適化モジュール146は、任意の所与の和に2つの相互に排他的な組合せが選択されないようにX
iの値を設定する。比較的簡単な例として、構成要素Aの2つのバッチ及び構成要素Bの3つのバッチが利用可能な場合、最適化モジュール146は、以下のようにX
iを設定することにより、上記目的関数の合算部分を計算し得る。
【0038】
【0039】
この例において目的関数を最小化するために、最適化モジュール146は、列X1~X6のいずれが最小和に繋がるかを判断し、それを組合せの所望のセットとして選択する。
【0040】
幾つかの実施形態では、最適化モジュール146は、例えば、予測モジュール144により予測される各特質又は結果に1つの項を有する、上記関数に示される項と各々同様の複数の項を含む目的関数を最小化する。例えば、目的関数は、平均注入時間に対応する第1の項と、苦情の平均数(例えば、10ユニット当たりで1つの苦情が予測される場合、0.1)に対応する第2の項とを含み得る。目的関数の個々の項の幾つか又は全ては、組合せ装置の全体性能に対する各項の知覚される重要性に応じて加重し得る。
【0041】
最適化モジュール146は、目的関数を最小化する組合せのセット/順列を示す出力を提供し、段階314において、組合せ装置のロットが、示された組合せを使用して(例えば、商業規模の生産機器を使用して)製造される。幾つかの実施形態では、組合せマッチングツール130は、結果として生成された組合せをユーザに示すユーザインタフェースをディスプレイ(例えばディスプレイ124)に提示させ、ユーザは次いで(恐らくは手動レビュー/確認の後)、1つ又は複数の行動をとり、段階314における製造がそれらの組合せを使用することを保証する。他の実施形態では、組合せマッチングツール130は、結果として生成された組合せを示すデータを別の計算システム又はアプリケーションに送信し、そして計算システム又はアプリケーションは、製造プロセスにそれらの組合せを自動的に使用させる(例えば、適切な運搬/ルーティング機器を制御することにより)。
【0042】
幾つかの実施形態では、段階314において製造された組合せ装置の測定値は手動又は自動的に取得され、段階310において行われた予測と突き合わせて比較するためにラベルとして使用される。1つ又は複数のバッチ組合せの各々について、例えば、対応するラベルと共に予測モデル132に適用された(新しいデータ306からの)対応する入力データは、トレーニングモジュール140にフィードバックすることができ、トレーニングモジュール140はそのデータ及びラベルを使用して、更なるトレーニングを通して予測モデル132を改良/更新し得る。
【0043】
図3Bは、一例の製造プロセス320におけるペアリング決定段階を示す。第1の段階において、異なる薬剤(及び恐らくは各薬剤の異なるバッチ)が、他の構成要素(及び恐らくはそれらの他の構成要素の異なるバッチ)とペアリングされる。例えば、異なる流体製薬を異なるタイプの組み立てられたシリンジ及び/又はそれらのシリンジの異なるバッチとペアリングし得る。
図3Bに示される第2の段階は、例えば、特定の充填されたシリンジと特定の自動注入装置サブアセンブリとのペアリングを表し得る。構成要素マッチングツール130は、ガラス破損確率の最小化、所望の注入時間からの標準偏差の最小化等の1つ又は複数の特性値を最適化しようとして、構成要素及び/又はバッチをマッチングし得る(
図3Bにおいて破線で示されるように)。典型的には、段階の番号が上がるにつれて(即ち、最終製品に近づくにつれて)、データ可用性及び予測力は大きくなるが、マッチング決定を通した改良機会は少なくなる。
【0044】
図4は、幾つかの実施形態における、
図1の構成要素マッチングツール130又は同様のアプリケーションにより生成及び/又は投入し得る一例のユーザインタフェース400を示す。
図4は、構成要素マッチングが2つの連続した段階で実行される一実施形態を表す:空のシリンジのバッチ/ロットが異なる製薬(「薬剤1」、「薬剤2」、及び「薬剤3」)とマッチングされる充填前段階及びそれらの充填された(「プレフィルド」)シリンジが自動注入装置サブアセンブリのバッチ/ロットとマッチングされる充填後段階。
図4に示される数量は純粋に例示を目的とし、必ずしも現実的な値ではない。更に、値に任意の適した単位を関連付け得る(例えば、平均作動力及びシリンジグライド力にはニュートン、平均注入時間には秒又はミリ秒等)ことが理解される。
【0045】
「所望の仕様及び数量」と記されたユーザインタフェース400の行において、ユーザは、考慮すべき特定の薬剤(図示の例では、「薬剤1」及び「薬剤2」)を選択することができる(例えば、ユーザ入力装置126を介して)。「充填前データ」と記された行において、ユーザは、選択された薬剤の特定のロット/バッチと関連付けられた特性の値及びそれらの薬剤の保持に使用することができるシリンジの特定のロット/バッチと関連付けられた特性の値を入力(例えば、ユーザ入力装置126を介して)及び/又は閲覧(例えば、ディスプレイ124を介して)することができる。図示の例では、押子ロット/バッチの特性の値も表示され、構成要素マッチングツール130は、薬剤、シリンジ、及び押子のバッチをマッチングする。例えば、
図1を参照すると、薬剤は構成要素Aであり、シリンジは構成要素Bであり、一方、押子は
図1に示されていない構成要素Cであり得る。「充填後データ」と記された行において、ユーザは、(薬剤毎の)プレフィルドシリンジの特定のロット/バッチと関連付けられた特性の値及び自動注入装置サブアセンブリの特定のロット/バッチと関連付けられた特性の値を入力(例えば、ユーザ入力装置126を介して)及び/又は閲覧(例えば、ディスプレイ124を介して)することができる。
【0046】
一例のユーザインタフェース400において、選択された各薬剤の結果が最初の2行に示される。特に、最初の行は、薬剤とシリンジ及び押子との最適化されたバッチペアリング並びに(選択された薬剤毎の)予測注入時間及び作動力のプロットを示し、2番目の行は、選択された薬剤毎の予測平均注入時間及び平均作動力の値を示す。
【0047】
図5は、潜在的なシリンジストッパ、シリンジ外筒、及び薬剤の組合せでの平均注入時間及び平均作動力の予想例を示すプロット500を示す。幾つかの実施形態では、組合せマッチングツール130は、例えば、異なる薬剤が構成要素バッチのばらつきにいかに影響するかをユーザが理解するのを助けるために、プロット500と同様のプロットを含む可視化を生成及び/又は可視化に投入する。
図5において、各円はシリンジストッパ/外筒バッチ及び薬剤タイプの異なる組合せを表し、拡大された円は、シリンジ外筒の1つの特定のバッチ/ロットを使用する組合せを表す。
図5から分かるように、この特定のバッチからのシリンジ外筒に(場所502において)薬剤3で表される薬剤を充填することが、最短注入時間に繋がる。
【0048】
図6は、自動注入装置構成要素をランダムにマッチングした場合(即ち、従来の手法と同様)、ヒューリスティックルールを使用して自動注入装置構成要素をマッチングした場合(即ち、プレフィルドシリンジ及び自動注入装置サブアセンブリの注入時間寄与の相殺を試みるヒューリスティックルール)、及び線形オプティマイザを使用して自動注入器構成要素をマッチングした場合(即ち、構成要素マッチングツール130と同様のツール)の自動注入器の平均注入時間の予測標準偏差を比較するプロット600を示す。特に、
図6に示されるように、シミュレーションは、プレフィルドシリンジを自動注入器サブアセンブリと最適にペアリングする場合、算術平均注入時間のロット毎のばらつきが30~45%低減することを示す。
【0049】
上記考察は、構成要素マッチングの決定にどの特性値を使用すべきか(即ち、予測モデル132への入力として使用するために値を測定/収集すべき特性)が既に既知であると仮定する。しかしながら、どの特性値(及び種々の系譜レベルにおけるどの構成要素)が最終装置/製品の特性と最も強く相関するかを理解することは難しいことがある。更に、そのような相関は、時間、製造場所、製品改訂等にわたって変化し得る。したがって、利用可能なデータの代表的な面にわたる相関を素早く識別する一般化ツールが必要とされる。
【0050】
このために、構成要素マッチングツール130(又は別のソフトウェアツール)は、
図7のプロット700として示される等の可視化を生成及び/又は可視化に投入し得る。プロット700は、組合せ装置が自動注入装置である一実施態様でのSHAP(Shapley additive explanation)及び特徴重要値の例を表す。プロット700は、特定の構成要素特性の重要性及び例えば互いに弱め合うためにそれらをいかに使用し得るかをユーザ理解するのを助けることができる。例えば、サブアセンブリ平均注入時間の正SHAP値の過剰集中及びPFS(プレフィルドシリンジ)押出力の負SHAP値の過剰集中は、互いを相殺して最終自動注入装置のばらつき低減を達成するために2つの特性が特に有用であり得ることを示唆する。ユーザはそのような情報を適用して、例えば、自動注入装置構成要素のバッチをマッチングするためのヒューリスティックルールを作成若しくは改良し、又は自動注入装置の構成要素製造時にフォーカスするエリア(例えば、仕様許容差を厳しくするエリア)を識別することが可能であり得る。構成要素マッチングツール130(又は別のソフトウェアツール)は、これに加えて又は代えて、相関ヒートマップ又はペアプロット等の1つ又は複数の他のタイプの可視化を生成及び/又は可視化に投入し得る。例えば、相関ヒートマップは、組み立て日間の相関、算術平均顧客苦情メトリック、1つ又は複数のプロセスパラメータ、1つ又は複数の最終ロットパラメータの1つ又は複数の統計(例えば、平均及び標準偏差)、1つ又は複数の構成要素パラメータの1つ又は複数の統計(例えば、平均及び標準偏差)等を視覚的に示し得る(例えば、配色を用いて)。
【0051】
幾つかの実施形態では、予測モデル132を作成するために以下のプロセスが実施される(構成要素マッチングツール130又は他のソフトウェアにより):(1)予測モデル132はまず、データ特徴(特性)のオリジナル入力セットを使用してトレーニングされて評価され、(2)特徴は、SHAPを使用して計算されたように重要度により順序付けられ、(3)重要度の最も低い入力データ特徴が、包含される特徴から除去され、(4)予測モデル132がデータ特徴/特性の新しくより小さなセットを用いて再トレーニングされ、(5)入力データ特徴リストが所望の長さに達するまで、ステップ2~4が繰り返され、(6)プロセス全体が(任意選択的に)繰り返されて、ラン間のトレーニング及びテストセットのランダムシーディングにより生じるモデル性能と選択された特徴/特性との間の差を特定する。
【0052】
図8は、組合せ装置のばらつきを低減するための一例の方法800の流れ図である。方法800は、全部又はその一部が、例えば、
図1の計算システム110等の計算システム(例えば、1つ又は複数の計算装置)により(例えば、構成要素マッチングツール130の命令を実行するプロセッサ120により)実施されてもよい。
【0053】
ブロック802において、第1の構成要素及び第2の構成要素(例えば、
図1の構成要素A及びB)の潜在的な組合せが識別される。潜在的な各組合せは、組合せ装置(例えば自動注入装置)の1つ又は複数のユニットを形成することができる。例えば、潜在的な各組合せは、第1の構成要素の特定のバッチと第2の構成要素の特定のバッチとの組合せであり得る。ブロック802は、第1の構成要素の異なるバッチの第1の組の識別子及び第2の構成要素の異なるバッチの第2の組の識別子を受信し、各々第1の組の識別子及び第2の組の識別子からなる異なるペア/順列を形成することを含んでもよく、又は単に潜在的な各組合せの指示を受信することを含んでもよい。幾つかの実施形態では、ブロック802は、構成要素の実現不可能な組合せを選択的に省くことを含む。
【0054】
ブロック804において、ブロック802において識別された潜在的な組合せの各組合せについて、(その組合せの第1及び第2の構成要素から形成された場合の)組合せ装置のユニットの特質又は結果が予測される。ブロック804は、組合せの第1の構成要素の1つ又は複数の特性の値及び組合せの第2の構成要素の1つ又は複数の特性の値を予測モデル(例えば予測モデル132)への入力として適用することを含む。潜在的な組合せが、第1及び第2の構成要素のバッチ(即ち、2つ以上のセット)の組合せである実施形態では、特性は、各バッチを統計的に表す特性(例えば、平均外筒内径等)であり得る。ブロック804は、例えば、数値(例えば平均値又は標準偏差)、カテゴリ(例えば、「高頻度の苦情の可能性が高い」若しくは「高頻度の苦情の可能性が低い」)、又は特定の特性の確率分布を含み得る。
【0055】
ブロック806において、潜在的な組合せの予測された特質又は結果に基づいて(即ち、ブロック804において予測された特質又は結果に基づいて)、ブロック802において識別された潜在的な組合せの中から組合せのサブセットが選択される。ブロック806は、予測された特質又は結果を目的関数への入力として使用して目的関数を解くことを含み得る。幾つかの実施形態では、ブロック806は、1つ又は複数の特質(例えば、注入時間標準偏差)及び1つ又は複数の結果(例えば、ユーザ苦情の存在、量、頻度、又は尤度)に基づいて、サブセットを選択することを含む。
【0056】
ブロック808において、組合せの選択されたサブセットの指示が提供される。例えば、ブロック808は、ディスプレイ(例えばディスプレイ124)に、組合せの選択されたサブセットをユーザに対して示させることを含んでもよく、及び/又は組合せの選択されたサブセットを示すデータを計算システム若しくはアプリケーションに送信することを含んでもよい。
【0057】
幾つかの実施形態では、方法800は、
図8に示していない1個又は複数個の追加ブロックも含む。例えば、方法800は、潜在的な組合せの各組合せについて、1つ又は複数の追加の予測モデルを使用して、組合せ装置の(組合せの第1及び第2の構成要素から形成された場合の)ユニットの1つ又は複数の追加の特質又は結果を予測することを更に含み得る。これらの実施形態では、目的関数は、組合せ装置の異なる特質又は結果に各々対応する複数の関数項を含み得る。
【0058】
別の例として、方法800は、ブロック808の後、追加のブロックを含み得、追加のブロックにおいて、製造機器(例えば、商業用生産機器)が、ブロック806において選択され、ブロック808において示された組合せのサブセットに従って、組合せ装置の複数のユニットを組み立てる。
【0059】
本開示の実施形態は、様々なコンピュータ実装動作を遂行するためのコンピュータコードを有する非一時的なコンピュータ可読格納媒体に関する。「コンピュータ可読格納媒体」という用語は、本明細書に記載される動作、手法及び技法を遂行するための一連の命令又はコンピュータコードを格納又は符号化することができる任意の媒体を含むように本明細書において使用される。媒体及びコンピュータコードは、本開示の実施形態を目的として特別に設計及び構築されたものであり得るか、又はコンピュータソフトウェア技術の当業者に周知且つ利用可能な種類のものであり得る。コンピュータ可読格納媒体の例としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM及びホログラフィデバイス等の光媒体、光ディスク等の光磁気媒体並びにASIC、プログラマブルロジックデバイス(「PLD」)及びROMやRAMデバイス等のプログラムコードを格納及び実行するために特別に構成されたハードウェア装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
コンピュータコードの例としては、コンパイラにより生成されるもの等の機械コード及びインタープリタ又はコンパイラを用いてコンピュータにより実行される相対的に高水準のコードを含むファイルが挙げられる。例えば、本開示の一実施形態は、Java、C++又は他のオブジェクト指向プログラミング言語及び開発ツールを用いて実装され得る。コンピュータコードの更なる例としては、暗号化コード及び圧縮コードが挙げられる。更に、本開示の一実施形態は、コンピュータプログラム製品としてダウンロードされ得、これは、リモートコンピュータ(例えば、サーバコンピュータ)から送信チャネルを介して要求元コンピュータ(例えば、クライアントコンピュータ又は異なるサーバコンピュータ)に転送され得る。本開示の別の実施形態は、機械実行可能なソフトウェア命令の代わりに又はそれと組み合わせてハードワイヤード回路に実装され得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、別途文脈が明確に示さない限り、複数の参照物を含み得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「接続する」、「接続された」及び「接続」という用語は、動作可能な結合又はリンク付けを指す(並びに図面に描かれた接続がそれを表す)。接続されたコンポーネントは、例えば、別のコンポーネントの組を通して互いに直接又は間接的に結合され得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ほぼ」、「実質的に」、「実質的な」、及び「約」という用語は、小さい変動を記述及び説明するために用いられる。事象又は状況と併せて使用される場合、これらの用語は、事象又は状況が厳密に生じている場合だけでなく、極めて近い事象又は状況が生じている場合も指す場合がある。例えば、数値と併せて使用される場合、これらの用語は、その数値の±10%以下、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下又は±0.05%以下等の変動幅を指す場合がある。例えば、2つの数値の差がこれらの数値の平均の±10%以下、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下又は±0.05%以下であれば、2つの数値は、「実質的に」同一とみなすことができる。
【0064】
更に、本明細書では、量、比及び他の数値は、範囲形式で提示される場合がある。このような範囲形式は、利便性及び簡潔性を目的として使用され、且つ範囲の限界値として明示的に指定された数値を含むが、その範囲に包含される全ての個々の数値又は部分範囲も、あたかも各数値及び部分範囲が明示的に指定されているように含むものとして柔軟に理解されるべきであることを理解されたい。
【0065】
本開示について、その具体的な実施形態を参照しながら記載及び例証してきたが、これらの記載及び例証は、本開示を限定するものではない。当業者は、添付の特許請求の範囲により規定される本開示の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更形態がなされ得、且つ均等物で代替され得ることを理解するはずである。図示は、必ずしもその縮尺が正確でない場合がある。製造プロセス、公差及び/又は他の理由に起因して、本開示における技術的表現と実際の装置との間に差異が存在し得る。具体的に例証されていない本開示の他の実施形態が存在し得る。(特許請求の範囲以外の)本明細書及び図面は、限定的ではなく、例証的なものとみなされるべきである。特定の状況、材料、物質の組成、技法又はプロセスを本開示の目的、趣旨及び範囲に適合させるために変更がなされ得る。そのような変更形態の全ては、本明細書に添付する特許請求の範囲内であるように意図される。本明細書に開示される技法について、特定の順序で遂行される特定の動作を参照して記載してきたが、これらの動作は、本開示の教示から逸脱することなく、均等な技法を形成するために組み合わされるか、細分化されるか又は再順序付けされ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書において具体的に示されていない限り、動作の順序及びグループ分けは、本開示を限定するものではない。
【国際調査報告】